説明

複素環型ペリレン誘導体及び有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】色純度がよく実用的な発光効率と寿命を有する有機EL素子を提供する。
【解決手段】下記式(1)又は式(2)で表されるペリレン誘導体。及び、陰極と陽極と、これらの間に発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有し、有機薄膜層の少なくとも一層が、上記のペリレン誘導体、及び核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。


(式中、Ar,Ar,Arは、それぞれ独立に芳香環又は芳香複素環であり、Xは炭素原子又はヘテロ原子である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環型ペリレン誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
【0003】
イーストマン・コダック社のC.W.Tangらによる積層型素子による低電圧駆動有機EL素子の報告(非特許文献1参照)がなされて以来、有機材料を構成材料とする有機EL素子に関する研究が盛んに行われている。
【0004】
Tangらは、トリス(8−キノリノール)アルミニウムを発光層に、トリフェニルジアミン誘導体を正孔輸送層に用いた積層構造を採用している。積層構造の利点としては、発光層への正孔の注入効率を高めることができ、陰極に注入された電子をブロックして再結合により生成する励起子の生成効率を高めることができ、発光層内で生成した励起子を閉じこめることができる等が挙げられる。この例のように、有機EL素子の素子構造としては、正孔輸送(注入)層、電子輸送発光層の2層型、又は正孔輸送(注入)層、発光層、電子輸送(注入)層の3層型構造等がよく知られている。こうした積層型構造素子では注入された正孔と電子の再結合効率を高めるために、素子構造や形成方法に種々の工夫がなされている。
【0005】
特許文献1には、ジシアノアントラセン誘導体とインデノペリレン誘導体を発光層に、金属錯体を電子輸送層に用いた素子が開示されている。しかしながら、CIE色度が(0.63,0.37)であるため発光色が純赤色ではなく、赤橙色であった。この素子には発光層を突き抜けた正孔が電子輸送層に注入されており、その結果電子輸送層においても電子と正孔が再結合し、電子輸送層である金属錯体が微少発光することによる色度の悪化があった。さらに正孔耐久性が低い電子輸送層が劣化することにより、寿命が著しく短くなっていた。
【0006】
特許文献2には、ナフタセン誘導体とインデノペリレン誘導体を発光層に、電子輸送層にナフタセン誘導体を用いた赤色素子が開示されている。この素子は色純度が高く、実用的な寿命も有している。しかしながら、この素子は色純度向上と長寿命化を図るため、発光層と陰極の間に機能を分離した2層の有機層(電子輸送層と電子注入層)を必要とし、素子構成が複雑であった。
【0007】
特許文献3には、電子輸送層の発光を抑制する為に、発光層及び電子輸送層のバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有する発光防止層が提案されている。しかし、この発光素子は、発光効率が約1cd/Aと不十分であった。
【特許文献1】特開2001−307885号公報
【特許文献2】特開2003−338377号公報
【特許文献3】特開2005−235564号公報
【非特許文献1】C.W.Tang,S.A.Vanslyke、Applied Physics Letters、51巻、913頁、1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、色純度がよく実用的な発光効率と寿命を有する有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、少なくとも1つの複素環構造を有するペリレン誘導体が有機EL素子の有機薄膜層材料として優れており、この化合物と、特定の縮合芳香族環を有する化合物を組み合わせて有機薄膜層を形成することにより、発光効率及び寿命が向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下のペリレン誘導体及び有機EL素子が提供される。
1.下記式(1)又は式(2)で表されるペリレン誘導体。
【化9】

[式中、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に置換又は無置換の芳香環あるいは芳香族複素環である。Xは、それぞれ炭素原子又はヘテロ環を構成可能な原子であり、置換基が結合していてもよい。Ar〜Ar又はXの置換基は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオ基、芳香環含有アルキル基、芳香環含有アルキルオキシ基、芳香環含有アルキルチオ基、芳香環基、芳香族複素環基、芳香環オキシ基、芳香環チオ基、芳香環アルケニル基、アルケニル芳香環基、アミノ基、シアノ基、水酸基、−COOR1’(R1’は水素、アルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基又は芳香環基である。)、−COR2’(R2’は水素、アルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基、芳香環基又はアミノ基である)、又は−OCOR3’(R3’はアルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基又は芳香環基である)である。隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。但し、Xの少なくとも1つがヘテロ環を構成可能な原子であるか、又はAr〜Arの少なくとも1つが芳香族複素環である。]
2.前記式(1)又は式(2)で表されるペリレン誘導体が、下記式(3)〜(7)で表される構造を有する1に記載のペリレン誘導体。
【化10】

[式中、Xはそれぞれ炭素原子又はヘテロ環を構成可能な原子であり、置換基が結合していてもよい。Xの少なくとも1つはヘテロ環を構成可能な原子である。]
3.陰極と陽極と、これらの間に発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有し、前記有機薄膜層の少なくとも一層が、1又は2に記載のペリレン誘導体、及び核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物が、下記式(8)で表わされるアントラセン誘導体、下記式(9)で表わされる非対称アントラセン誘導体、下記式(10)で表わされる非対称ピレン誘導体、下記式(11)で表わされる非対称ジフェニルアントラセン誘導体、又は下記式(12)で表されるビスピレン誘導体である3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化11】

[式(3)中、X11〜X13は、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10〜50の縮合芳香族基であり、Ar又はArの少なくとも一方は、下記式(8a)で表される1−ナフチル基又は下記式(8b)で表される2−ナフチル基である。
【化12】

(R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基であり、R〜Rのうち隣接する少なくとも一組は、互いに結合して環状構造を形成している。)
a、b、cはそれぞれ0〜4の整数であり、dは1〜3の整数である。dが2以上の場合、式中[ ]内は同じでも異なっていてもよい。]
【化13】

[式(9)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10〜20の縮合芳香族炭化水素環基であり、Ar及びArは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基であり、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基であり、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。Ar、Ar、R16及びR17は、それぞれA又はAに複数結合していてもよく、隣接するもの同士で飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。但し、中心のアントラセンの9位及び10位に、アントラセン上に示すX−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。]
【化14】

[式(10)中、Ar及びArは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基であり、L及びLは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基、置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。mは0〜2の整数、nは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。L又はArは、ピレンの1〜5位の何れかに結合し、L又はArは、ピレンの6〜10位の何れかに結合する。
但し、n+tが偶数の時、Ar、Ar、L、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar≠Ar及び/又はL≠L(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar=ArかつL=Lの時
(2−1)m≠s及び/又はn≠t、又は
(2−2)m=sかつn=tの時、
(2−2−1)L及びL、又はピレンが、それぞれAr及びAr上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L及びL、又はピレンが、Ar及びAr上の同じ結合位置で結合している場合、L及びL、又はAr及びArのピレンにおける置換位置が対称関係になることはない。]
【化15】

[式(11)中、Ar10及びAr11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基であり、m’及びn’は、それぞれ1〜4の整数である。但し、m’=n’=1で、Ar10とAr11のベンゼン環への結合位置が左右対称型の場合には、Ar10とAr11は同一ではなく、m’又はn’が2〜4の整数の場合にはm’とn’は異なる整数である。
18〜R25は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。]
(A−(X14−(Ar12−(Y−(B (12)
[式(12)中、X14は、それぞれ独立に、置換あるいは無置換のピレン残基であり、A及びBは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基であり、Ar12は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基であり、Yは、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基である。fは1〜3の整数、e及びiはそれぞれ独立に0〜4の整数、hは0〜3の整数、gは1〜5の整数である。]
5.前記核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物が、下記式(13)で表される化合物である3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
21−(Y)j (13)
[式中、X21は炭素環が2以上の縮合芳香族環基であり、Yは、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアルキル基、又は置換もしくは無置換のアルキル基である。jは1〜6の整数である。jが2以上の場合、Yはそれぞれ同じでも異なってもよい。]
6.前記式(13)のX21が、ナフタセン、ピレン、ベンゾアントラセン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、ベンゾフルオレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフチルフルオランテン、ジベンゾフルオレン、ジベンゾピレン、ジベンゾフルオランテン及びアセナフチルフルオランテンからなる群から選択される骨格を有する5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.前記式(13)で表される化合物が、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、ジベンゾアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ベンゾピレン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾフルオレン誘導体、フルオランテン誘導体、ベンゾフルオランテン誘導体、ジベンゾフルオランテン誘導体、ナフチルフルオランテン誘導体、アセナフチルフルオランテン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物である5記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.前記発光層が、前記ペリレン誘導体と核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物とを含有する3〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
9.前記有機薄膜層が電子輸送層を含み、この電子輸送層が下記式(14)で表される芳香族炭化水素化合物を含有する3〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
−B (14)
[式(14)中、Aは炭素環2以上の芳香族炭化水素基であり、Bは置換又は無置換の複素環基である。]
10.前記式(14)のAが、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン、クリセン、ベンゾアントラセン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフソフルオランテン、ジベンゾフルオレン、ジベンゾピレン及びジベンゾフルオランテンからなる群から選択される一つ以上の骨格を有する9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
11.前記式(14)で表される化合物が、含窒素複素環化合物である9又は10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
12.前記含窒素複素環化合物が、下記式(15)又は式(16)で表される化合物である11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化16】

[式中、R26は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基又置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、kは0〜4の整数であり、R27は、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R28は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、置換もしくは無置換のキノリニレン基又は置換もしくは無置換のフルオレニレン基であり、Ar13は、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、又は置換もしくは無置換のキノリニレン基である。]
13.前記含窒素複素環化合物が、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、アクリジン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン及びフェナントロリンからなる群から選択される1つ以上の骨格を有する化合物である11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
14.発光色が橙色乃至赤色である3〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
15.前記発光層がドーパント材料を含有し、発光層に占めるドーパント材料の濃度が0.1〜10重量%である3〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
16.前記ドーパント材料の濃度が0.5〜2重量%である15に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機EL素子の有機薄膜層材料として好適なペリレン誘導体を提供できる。
また、本発明によれば、色純度、発光効率が優れており、また、長寿命である有機EL素子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
はじめに本発明のペリレン誘導体について説明する。
本発明のペリレン誘導体は、下記式(1)又は式(2)で表される少なくとも1つの複素環構造を有するペリレン誘導体である。
【化17】

[式中、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に置換又は無置換の芳香環あるいは芳香族複素環である。Xは、それぞれ炭素原子又はヘテロ環を構成可能な原子であり、置換基が結合していてもよい。Ar〜Ar又はXの置換基は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオ基、芳香環含有アルキル基、芳香環含有アルキルオキシ基、芳香環含有アルキルチオ基、芳香環基、芳香族複素環基、芳香環オキシ基、芳香環チオ基、芳香環アルケニル基、アルケニル芳香環基、アミノ基、シアノ基、水酸基、−COOR1’(R1’は水素、アルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基又は芳香環基である。)、−COR2’(R2’は水素、アルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基、芳香環基又はアミノ基である)、又は−OCOR3’(R3’はアルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基又は芳香環基である)である。隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0013】
式(1)又は(2)においては、中心骨格であるペリレン環を構成するXの少なくとも1つがヘテロ環を構成可能な原子であるか、又はAr〜Arの少なくとも1つが芳香族複素環である。
Ar〜Arの芳香環の好適例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
Ar〜Arの芳香族複素環の好適例としては、ピリジン環、ピラジン環、ナフチリジン環等が挙げられる。
【0014】
Xであるヘテロ環を構成可能な原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0015】
Ar〜Ar又はXの置換基の好適例としては、置換あるいは無置換のフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アントリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、フルオロ基、ブロモ基、トリフルオロアルキル基、フェニルオキシ基、ベンゼンスルホニル基、ピリジニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。また、これらの置換基は、さらに同様の置換基を有していても良い。
尚、上述した好適例の他、後述する式(8)〜(12)で例示するアルキル基やアルコキシ基等の各基も結合できる。
また、隣接する置換基は、上述した芳香環や芳香族複素環、又はシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン等の環構造を形成してもよい。
【0016】
式(1)又は式(2)で表されるペリレン誘導体は、下記式(3)〜(7)で表される構造を有することが好ましい。
【化18】

[式中、Xはそれぞれ炭素原子又はヘテロ環を構成可能な原子であり、Xの少なくとも1つはヘテロ環を構成可能な原子水素である。]
尚、Xには上記式(1)又は(2)で例示した置換基が結合していてもよい。
【0017】
本発明のペリレン誘導体の基本骨格の核炭素数は、45〜100であることが好ましい。45未満では耐熱性に劣る場合があり、100より大きいと素子を作製する時に蒸気圧が不足するため蒸着法等で成膜できない場合や、溶液を調整することが困難なことから塗布法による成膜が困難となるおそれがある。
【0018】
本発明のペリレン誘導体は、例えば、原料化合物を塩基又は酸の存在下で縮合環化させてピリジン環を形成する反応(Friedlander反応)により製造することができる(Orgnic Reactions, 28巻.37頁)。
原料化合物は、公知の製造方法により製造することができる[J.Org.Chem.,40.2566(1975) ; Can.J.Chem.,46.715(1968)参照]。尚、ペリレン誘導体の合成例については、後述する実施例にて説明する。
本発明のペリレン誘導体の具体例を以下に示す。
【0019】
【化19】






【0020】
続いて、本発明の有機EL素子について説明する。
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極と、これら電極の間に発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有する。
図1は、本発明の有機EL素子の一例を示す断面図である。
有機EL素子1は、基板10上に、陽極20、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60、電子注入層70及び陰極80を、この順に積層した構成をしている。この素子において、有機薄膜層は、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60及び電子注入層70である。
【0021】
本発明においては、有機薄膜層の少なくとも一層が、上述した式(1)又は(2)で示されるペリレン誘導体(化合物A)、及び核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物(化合物B)を含有する。これら化合物を組み合わせて用いることで、色純度に優れた高効率な赤色系発光の有機EL素子が得られる。
【0022】
核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物(化合物B)において、核炭素数10〜50の縮合芳香族環としては、例えば、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン等が挙げられ、アントラセン、ピレンが好ましい。
本発明においては、下記式(8)で表わされるアントラセン誘導体、下記式(9)で表わされる非対称アントラセン誘導体、下記式(10)で表わされる非対称ピレン誘導体、下記式(11)で表わされる非対称ジフェニルアントラセン誘導体、又は下記式(12)で表されるビスピレン誘導体が好ましい。
【0023】
【化20】

[式(8)中、X11〜X13は、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10〜50の縮合芳香族基であり、Ar又はArの少なくとも一方は、下記式(8a)で表される1−ナフチル基又は下記式(8b)で表される2−ナフチル基である。
【化21】

(R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基であり、R〜Rのうち隣接する少なくとも一組は、互いに結合して環状構造を形成している。)
a、b、cはそれぞれ0〜4の整数であり、dは1〜3の整数である。dが2以上の場合、式中[ ]内は同じでも異なっていてもよい。]
【0024】
11〜X13の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、9−(10−フェニル)アントリル基、9−(10−ナフチル−1 −イル)アントリル基、9−(10−ナフチル−2−イル)アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、6−クリセニル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基等が挙げられる。
【0025】
芳香族複素環基としては、例えば、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、1−イミダゾリル基,2−イミダゾリル基,1−ピラゾリル基,1−インドリジニル基,2−インドリジニル基,3−インドリジニル基,5−インドリジニル基,6−インドリジニル基,7−インドリジニル基,8−インドリジニル基,2−イミダゾピリジニル基,3−イミダゾピリジニル基,5−イミダゾピリジニル基,6−イミダゾピリジニル基,7−イミダゾピリジニル基,8−イミダゾピリジニル基,3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、β−カルボリン−1−イル,β−カルボリン−3−イル,β−カルボリン−4−イル,β−カルボリン−5−イル,β−カルボリン−6−イル,β−カルボリン−7−イル,β−カルボリン−6−イル,β−カルボリン−9−イル,1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0026】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0027】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられる。
置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基としては、−OYで表される基であり、Yの例としては、前記アルキル基で説明したものと同様の例が挙げられる。
【0028】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0029】
アリールオキシ基は−OY’と表され、Y’の例としては前記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様の例が挙げられる。
アリールチオ基は−SY’と表され、Y’の例としては前記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基と同様の例が挙げられる。
アルコキシカルボニル基は−COOYで表される基であり、Yの例としては、前記アルキル基で説明したものと同様の例が挙げられる。
シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0030】
Ar及びArの縮合芳香族環基としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ペリレン等が挙げられる。
〜Rのアルキル基としては、X11〜X13で挙げたものと同様の例が挙げられる。R〜Rが形成する環状構造としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン等の炭素数4〜12のシクロアルカンが挙げられる。
【0031】
【化22】

[式(9)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10〜20の縮合芳香族炭化水素環基であり、Ar及びArは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基であり、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基であり、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。Ar、Ar、R16及びR17は、それぞれA又はAに複数結合していてもよく、隣接するもの同士で飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。但し、中心のアントラセンの9位及び10位に、アントラセン上に示すX−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。]
【0032】
及びAの縮合芳香族環としては、式(8)のAr及びArで挙げた例うち炭素数が適合するものが挙げられる。
Ar、Ar及びR〜R17の各基の例、Ar、Ar、R16及びR17が形成していてもよい環状構造の例としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン等の炭素数4〜12のシクロアルカン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の炭素数4〜12のシクロアルケン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等の炭素数6〜12のシクロアルカジエン、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、クリセン、アセナフチレン等の炭素数6〜50の芳香族環、イミダゾール、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン等の炭素数5〜50の複素環等が挙げられる。
【0033】
【化23】

[式(10)中、Ar及びArは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基であり、L及びLは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基、置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。mは0〜2の整数、nは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。L又はArは、ピレンの1〜5位の何れかに結合し、L又はArは、ピレンの6〜10位の何れかに結合する。
但し、n+tが偶数の時、Ar、Ar、L、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar≠Ar及び/又はL≠L(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar=ArかつL=Lの時
(2−1)m≠s及び/又はn≠t、又は
(2−2)m=sかつn=tの時、
(2−2−1)L及びL、又はピレンが、それぞれAr及びAr上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L及びL、又はピレンが、Ar及びAr上の同じ結合位置で結合している場合、L及びL、又はAr及びArのピレンにおける置換位置が対称関係になることはない。]
【0034】
Ar及びArの芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例としては、式(8)等で挙げたものと同様の例が挙げられる。
【0035】
【化24】

[式(11)中、Ar10及びAr11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基であり、m’及びn’は、それぞれ1〜4の整数である。但し、m’=n’=1で、Ar10とAr11のベンゼン環への結合位置が左右対称型の場合には、Ar10とAr11は同一ではなく、m’又はn’が2〜4の整数の場合にはm’とn’は異なる整数である。
18〜R25は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。]
【0036】
Ar10、Ar11及びR18〜R27の各基の例としては、式(8)等で挙げたものと同様の例が挙げられる。
【0037】
(A−(X14−(Ar12−(Y−(B (12)
[式(12)中、X14は、それぞれ独立に、置換あるいは無置換のピレン残基であり、A及びBは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基であり、Ar12は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基であり、Yは、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基である。fは1〜3の整数、e及びiはそれぞれ独立に0〜4の整数、hは0〜3の整数、gは1〜5の整数である。]
【0038】
、B及びAr12の各基の例としては、式(8)等で挙げたものと同様の例が挙げられる。
尚、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基としては、スチリル基が挙げられる。
の核炭素数5〜50の縮合環基又は縮合複素環基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、クリセニル基が挙げられる。
【0039】
尚、上記式(8)〜(12)の各基の置換基としては、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0040】
また、化合物Bとして、下記式(13)で表される化合物も好ましく使用できる。
21−(Y (13)
[式中、X21は炭素環が2以上の縮合芳香族環基であり、Yは、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアルキル基、又は置換もしくは無置換のアルキル基である。jは1〜6の整数である。jが2以上の場合、Yはそれぞれ同じでも異なってもよい。]
【0041】
式(13)においてX21は、ナフタセン、ピレン、ベンゾアントラセン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、ベンゾフルオレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフチルフルオランテン、ジベンゾフルオレン、ジベンゾピレン、ジベンゾフルオランテン及びアセナフチルフルオランテンからなる群から選択される1種以上の骨格を含有することが好ましい。
は、好ましくは炭素数12〜60のアリール基、ジアリールアミノ基であり、より好ましくは炭素数12〜20のアリール基又は炭素数12〜40のジアリールアミノ基である。nは好ましくは2である。
【0042】
また、化合物Bとして、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物も好ましい。
【0043】
本発明においては、有機薄膜層のうち発光層が上記化合物A及び化合物Bを含有することが好ましい。上記化合物Aはホスト材料として、上記化合物Bはドーパント材料として機能するため、発光層に用いることで発光効率が向上する。また、本発明の有機EL素子においては、化合物Aと化合物Bとの使用割合によって、発光層の電子輸送性及び正孔輸送性が共に良好となり、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層等の中間層を省略することが可能となる。
【0044】
本発明の有機EL素子においては、化合物Aと化合物Bを組み合わせることにより、長波長を発光する効果が損なわれずに色純度の高い赤色発光が得られる。また、化合物Bのような核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有し非対称構造である化合物、特に前記したような特定の末端置換基を有する化合物は、化合物同士の立体障害が高くなり、分子会合による濃度消光を防止できると共に、さらなる長寿命化が可能になることから、高発光効率、長寿命でありながら、色純度の高い赤色発光が得られるのである。
尚、有機EL素子における赤色の発光色は、発光スペクトルの最大発光波長で区分でき、橙色(585〜595nm)、赤色(最大発光波長:595〜620nm)、純赤色(最大発光波長:620〜700nm)である。
黄色〜橙色又は赤色を示す赤色系発光素子において、赤色発光とは、CIE色度座標におけるCIExの値が0.62以上(好ましくは0.62以上0.73未満)であり、橙色発光とはCIExの値が0.54以上0.62未満である。
【0045】
本発明の有機EL素子では、電子輸送層が形成されていることが好ましい。電子輸送層を形成する材料としては下記式(14)で表される化合物が好ましい。
−B (14)
(式中、Aは炭素環2以上の芳香族炭化水素基であり、Bは置換又は無置換の複素環基である。)
【0046】
式(14)の化合物は、好ましくは、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン、クリセン、ベンゾアントラセン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフソフルオランテン、ジベンゾフルオレン、ジベンゾピレン及びジベンゾフルオランテンから選択される1以上の骨格を分子中に有する複素環化合物である。
より好ましくは、含窒素複素環化合物である。
【0047】
含窒素複素環化合物は、さらに好ましくは、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、アクリジン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン及びフェナントロリンから選択される1以上の骨格を分子中に有する含窒素複素環化合物を1種以上含有する。
含窒素複素環化合物として、下記式(15)又は(16)で表されるベンゾイミダゾール誘導体を例示できる。
【化25】

[式中、R26は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基又置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、kは0〜4の整数であり、R27は、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R28は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、置換もしくは無置換のキノリニレン基又は置換もしくは無置換のフルオレニレン基であり、Ar13は、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、又は置換もしくは無置換のキノリニレン基である。]
【0048】
式(15)、(16)で表されるベンゾイミダゾール誘導体は、好ましくは、kが0、R28がアリール基、Lが炭素数6〜30(より好ましくは炭素数6〜20)のアリール基及びAr13が炭素数6〜30のアリール基である。
このような化合物を含む電子輸送層を形成することによって、特に、電子注入性が良くなり好ましい。
【0049】
本発明の有機EL素子では、上述したとおり、有機薄膜層の少なくとも1層が上記化合物A及び化合物Bを含有していればよく、他の構成については、従来公知の構成を採用することができる。以下、説明する。
【0050】
[有機EL素子の構成]
本発明に用いられる有機EL素子の代表的な構成例を示す。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(5)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(6)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(7)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
(9)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(10)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/絶縁層/陰極
等の構造を挙げることができる。
これらの中で通常(1)(2)(3)(4)(7)(8)(10)の構成が好ましく用いられる。
尚、本発明において、上記構成(3)(4)(9)及び(10)のように、電子輸送層及び電子注入層をそれぞれ形成してもよいが、他の構成のように電子輸送層のみを形成した場合も、従来の素子と比べて寿命を向上できる。
【0051】
[透光性基板]
本発明の有機EL素子は透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で、平滑な基板が好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
尚、素子が形成されている基板から光を取り出さない形式(例えば、トップエミッション型素子)では、基板は必ずしも透明である必要はない。
【0052】
[陽極]
有機薄膜EL素子の陽極は、正孔を正孔輸送層又は発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。本発明に用いられる陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛合金(IZO)、金、銀、白金、銅等が適用できる。
これら材料は単独で用いることもできるが、これら材料同士の合金や、その他の元素を添加した材料も適宜選択して用いることができる。
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0053】
[正孔注入層・正孔輸送層]
正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔注入・輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば104 〜106
V/cmの電界印加時に、少なくとも10-6cm2 /V・秒であるものが好ましい。このような材料としては、従来、光導伝材料において正孔の輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
そして、この正孔注入・輸送層を形成するには、正孔注入・輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化すればよい。この場合、正孔注入・輸送層としての膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
【0054】
[発光層]
有機EL素子の発光層は以下の機能を併せ持つものである。即ち、
(i)注入機能:電界印加時に陽極又は正孔注入・輸送層より正孔を注入することができ、陰極又は電子注入・輸送層より電子を注入することができる機能
(ii)輸送機能:注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
(iii)発光機能:電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
がある。
但し、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさに違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよいが、どちらか一方の電荷を移動することが好ましい。
【0055】
この発光層を形成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、LB法等の公知の方法を適用することができる。発光層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。
ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態又は液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また、特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
【0056】
発光層は主にホスト材料とドーパント材料からなる。発光層が含有するドーパント材料のドープ濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは、0.5〜2重量%である。本発明では、上述の通り化合物Bをドーパント材料として、化合物Aをホスト材料として使用することが好ましい。
【0057】
[電子注入層・電子輸送層]
電子注入層・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい。本発明においては、上述した式(14)〜(16)の化合物が好ましい。
また、電子注入・輸送層であり、特に陰極との付着が良い材料からなる付着改善層を形成してもよい。
【0058】
本発明の好ましい形態に、電子を輸送する領域又は陰極と有機層の界面領域に、還元性ドーパントを含有する素子がある。ここで、還元性ドーパントとは、電子輸送性化合物を還元ができる物質と定義される。従って、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体、希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を好適に使用することができる。
【0059】
また、より具体的に、好ましい還元性ドーパントとしては、Na(仕事関数:2.36eV)、K(仕事関数:2.28eV)、Rb(仕事関数:2.16eV)及びCs(仕事関数:1.95eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属や、Ca(仕事関数:2.9eV)、Sr(仕事関数:2.0〜2.5eV)、及びBa(仕事関数:2.52eV)からなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属が挙げられる仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性ドーパントは、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも一つのアルカリ金属であり、さらに好ましくは、Rb又はCsであり、最も好ましのは、Csである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性ドーパントとして、これら2種以上のアルカリ金属の組合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb又はCsとNaとKとの組み合わせであることが好ましい。Csを組み合わせて含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子注入域への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
【0060】
本発明においては陰極と有機層の間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層をさらに設けてもよい。この時、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF及びBeFといったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0061】
また、電子注入層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポット等の画素欠陥を減少させることができる。尚、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0062】
[陰極]
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属等が挙げられる。
【0063】
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
ここで発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0064】
[絶縁層]
有機ELは超薄膜に電界を印可するために、リークやショートによる画素欠陥が生じやすい。これを防止するために、一対の電極間に絶縁性の薄膜層を挿入することが好ましい。
【0065】
絶縁層に用いられる材料としては、例えば酸化アルミニウム、弗化リチウム、酸化リチウム、弗化セシウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、弗化マグネシウム、酸化カルシウム、弗化カルシウム、弗化セシウム、炭酸セシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化バナジウム等が挙げられる。
これらの混合物や積層物を用いてもよい。
【0066】
[有機EL素子の作製例]
以上例示した材料及び方法により陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、必要に応じて正孔注入層、及び必要に応じて電子注入層を形成し、さらに陰極を形成することにより有機EL素子を作製することができる。また陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【0067】
以下、透光性基板上に陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子の作製例を記載する。
まず、適当な透光性基板上に陽極材料からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲の膜厚になるように蒸着やスパッタリング等の方法により形成して陽極を作製する。次にこの陽極上に正孔輸送層を設ける。正孔輸送層の形成は、前述したように真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物、目的とする正孔輸送層の結晶構造や再結合構造等により異なるが、一般に蒸着源温度50〜450℃、真空度10−7〜10−3torr、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜選択することが好ましい。
【0068】
次に、正孔輸送層上に発光層を設ける発光層の形成も、所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により有機発光材料を薄膜化することにより形成できるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが発生しにくい等の点から真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物により異なるが、一般的に正孔輸送層と同じような条件範囲の中から選択することができる。
【0069】
次に、この発光層上に電子輸送層を設ける。正孔輸送層、発光層と同様、均質な膜を得る必要から真空蒸着法により形成することが好ましい。蒸着条件は正孔輸送層、発光層と同様の条件範囲から選択することができる。
最後に陰極を積層して有機EL素子を得ることができる。
【0070】
陰極は金属から構成されるもので、蒸着法、スパッタリングを用いることができる。しかし、下地の有機物層を製膜時の損傷から守るためには真空蒸着法が好ましい。
これまで記載してきた有機EL素子の作製は一回の真空引きで一貫して陽極から陰極まで作製することが好ましい。
【0071】
本発明の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、分子線蒸着法、スピンコーティング法、ディッピング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等による形成方法を用いることができる。
【0072】
本発明の有機EL素子の各有機層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、逆に厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。
【実施例】
【0073】
[ペリレン誘導体]
実施例1
以下の合成により、式(B−1)で示されるペリレン誘導体を得た。
【化26】

【0074】
原料であるアミノ誘導体とα−メチレンカルボニル化合物から、中間体である1,8−ナフチリジン誘導体を合成した。この合成は特開2006−016363に準じて合成した。尚、原料化合物の合成は、J.Org.Chem.,40.2566(1975) ; Can.J.Chem.,46.715(1968)を参照した。
【0075】
中間体からの(B−1)の合成は、特開平10−330295に準じて合成した。具体的には、中間体5gと三フッ化コバルト7gをトリフルオロ酢酸(150ml)中、36時間、加熱、還流した。トリフルオロ酢酸を減圧下で留去した後、残渣に水(100ml)を加えた後、固体を濾過した。この固体をアセトンで洗浄した後、アルミナカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン)で処理した。トルエンを減圧下で留去した後、残渣をトルエンとアセトンの混合溶媒より再結晶し、(B−1)を赤紫色の結晶として2.7g得た。
電界脱離質量分析法(FD−MS)での測定の結果、C5032=809, m/z=809(M,100)であった。
【0076】
実施例2
以下の合成により、式(B−2)で示されるペリレン誘導体を得た。
【化27】

【0077】
通常のザンドマイヤー反応、鈴木カップリング反応にて中間体aを合成した。100mlの三つ口フラスコに、中間体a10.9g(30mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン5.04g(18mmol)、Pd(dba)2.75g(3mmol)を入れ容器内をアルゴン置換した。ここで、「dba」は、
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを意味する。さらに、ジメチルホルムアミドを200ml、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン‐7を18.3g(120mmol)加え、100℃のオイルバスで4時間加熱還流した。
一晩後、水を加え析出物をろ別し、イオン交換水、エタノールで洗浄、精製し、中間体bを得た。収量は5.33g(18.9mmol)であった。
電界脱離質量分析法(FD−MS)での測定の結果、C6346=282, m/z=282(M,100)であった。
【0078】
中間体bを用いた中間体cの合成は、通常の鈴木カップリング反応で行い、中間体cを用いた(B−2)の合成は、実施例1と同様に行った。
FD−MSでの測定の結果、C4824=657, m/z=657(M,100)であった。
【0079】
実施例3
以下の合成により、式(B−3)で示されるペリレン誘導体を得た。尚、出発原料が異なる他は、合成は実施例2と同様行った。
FD−MSでの測定の結果、C5025=655, m/z=655(M,100)であった。
【化28】

【0080】
[有機EL素子]
実施例4
素子の作製
25mm×75mm×0.7mmサイズのガラス基板上に、膜厚120nmのインジウムスズ酸化物からなる透明電極を設けた。このガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行ない、真空蒸着装置にこの基板を設置した。
その基板に、まず、正孔注入層として、N’,N’’−ビス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−N’,N’’−ジフェニルビフェニル−4,4’−ジアミンを60nmの厚さに蒸着した後、その上に正孔輸送層として、N,N’−ビス[4’−{N−(ナフチル−1−イル)−N−フェニル}アミノビフェニル−4−イル]−N−フェニルアミンを10nmの厚さに蒸着した。
次いで発光層として、ナフタセン誘導体である下記化合物(A−1)と実施例1で合成したペリレン誘導体(B−1)を重量比40:0.4で同時蒸着し、40nmの厚さに蒸着した。
次に、電子輸送層として、下記化合物(C−1)を30nmの厚さに蒸着した。
【0081】
【化29】

【0082】
次に、弗化リチウムを0.3nmの厚さに蒸着し、次いでアルミニウムを150nmの厚さに蒸着した。このアルミニウム/弗化リチウムは陰極として働く。このようにして有機EL素子を作製した。
【0083】
得られた素子に通電試験を行なったところ、電流密度10mA/cmにて、駆動電圧4.1V、発光輝度1135cd/mの赤色発光が得られ、色度座標は(0.67,0.33)、効率は10.07cd/Aであった。また、初期輝度5000cd/mでの直流の連続通電試験を行なったところ、初期輝度の80%に達したときの駆動時間は2010時間であった。
【0084】
実施例5,6
ペリレン誘導体(B−1)の代わりに、実施例2又は3で合成したペリレン誘導体(B−2)、(B−3)を用いた他は、実施例4と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。得られた素子の評価結果を表1に記載する。
【0085】
実施例7−10
化合物(A−1)の代わりに下記化合物(A−2)〜(A−5)を用いた他は、実施例4と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。得られた素子の評価結果を表1に記載する。
【0086】
【化30】

【0087】
比較例1
実施例1において、(B−1)の代わりに下記式(b−1)で示される化合物を用い、(C−1)の代わりに下記のAlq3を用いた以外は同様にして有機EL素子を作製し、評価した。
【0088】
【化31】

【0089】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のペリレン誘導体は、有機EL素子の有機薄膜層の材料として好適である。
本発明の有機EL素子は、各種表示装置、ディスプレイ、バックライト、照明光源、標識、看板、インテリア等の分野に適用でき、特にカラーディスプレイの表示素子として適している。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の有機EL素子に係る一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 有機EL素子
10 基板
20 陽極
30 正孔注入層
40 正孔輸送層
50 発光層
60 電子輸送層
70 電子注入層
80 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は式(2)で表されるペリレン誘導体。
【化1】

[式中、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に置換又は無置換の芳香環あるいは芳香族複素環である。Xは、それぞれ炭素原子又はヘテロ環を構成可能な原子であり、置換基が結合していてもよい。Ar〜Ar又はXの置換基は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケニルチオ基、芳香環含有アルキル基、芳香環含有アルキルオキシ基、芳香環含有アルキルチオ基、芳香環基、芳香族複素環基、芳香環オキシ基、芳香環チオ基、芳香環アルケニル基、アルケニル芳香環基、アミノ基、シアノ基、水酸基、−COOR1’(R1’は水素、アルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基又は芳香環基である。)、−COR2’(R2’は水素、アルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基、芳香環基又はアミノ基である)、又は−OCOR3’(R3’はアルキル基、アルケニル基、芳香環含有アルキル基又は芳香環基である)である。隣接する置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。但し、Xの少なくとも1つがヘテロ環を構成可能な原子であるか、又はAr〜Arの少なくとも1つが芳香族複素環である。]
【請求項2】
前記式(1)又は式(2)で表されるペリレン誘導体が、下記式(3)〜(7)で表される構造を有する請求項1に記載のペリレン誘導体。
【化2】

[式中、Xはそれぞれ炭素原子又はヘテロ環を構成可能な原子であり、置換基が結合していてもよい。Xの少なくとも1つはヘテロ環を構成可能な原子である。]
【請求項3】
陰極と陽極と、これらの間に発光層を含む一層又は複数層からなる有機薄膜層とを有し、
前記有機薄膜層の少なくとも一層が、請求項1又は2に記載のペリレン誘導体、及び核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物が、下記式(8)で表わされるアントラセン誘導体、下記式(9)で表わされる非対称アントラセン誘導体、下記式(10)で表わされる非対称ピレン誘導体、下記式(11)で表わされる非対称ジフェニルアントラセン誘導体、又は下記式(12)で表されるビスピレン誘導体である請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】

[式(3)中、X11〜X13は、それぞれ水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10〜50の縮合芳香族基であり、Ar又はArの少なくとも一方は、下記式(8a)で表される1−ナフチル基又は下記式(8b)で表される2−ナフチル基である。
【化4】

(R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基であり、R〜Rのうち隣接する少なくとも一組は、互いに結合して環状構造を形成している。)
a、b、cはそれぞれ0〜4の整数であり、dは1〜3の整数である。dが2以上の場合、式中[ ]内は同じでも異なっていてもよい。]
【化5】

[式(9)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数10〜20の縮合芳香族炭化水素環基であり、Ar及びArは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基であり、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基であり、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。Ar、Ar、R16及びR17は、それぞれA又はAに複数結合していてもよく、隣接するもの同士で飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。但し、中心のアントラセンの9位及び10位に、アントラセン上に示すX−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。]
【化6】

[式(10)中、Ar及びArは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族基であり、L及びLは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基、置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。mは0〜2の整数、nは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。L又はArは、ピレンの1〜5位の何れかに結合し、L又はArは、ピレンの6〜10位の何れかに結合する。
但し、n+tが偶数の時、Ar、Ar、L、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar≠Ar及び/又はL≠L(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar=ArかつL=Lの時
(2−1)m≠s及び/又はn≠t、又は
(2−2)m=sかつn=tの時、
(2−2−1)L及びL、又はピレンが、それぞれAr及びAr上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L及びL、又はピレンが、Ar及びAr上の同じ結合位置で結合している場合、L及びL、又はAr及びArのピレンにおける置換位置が対称関係になることはない。]
【化7】

[式(11)中、Ar10及びAr11は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基であり、m’及びn’は、それぞれ1〜4の整数である。但し、m’=n’=1で、Ar10とAr11のベンゼン環への結合位置が左右対称型の場合には、Ar10とAr11は同一ではなく、m’又はn’が2〜4の整数の場合にはm’とn’は異なる整数である。
18〜R25は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の核炭素数5〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。
26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基である。]
(A−(X14−(Ar12−(Y−(B (12)
[式(12)中、X14は、それぞれ独立に、置換あるいは無置換のピレン残基であり、A及びBは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基あるいはアルキレン基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルケニル基あるいはアルケニレン基であり、Ar12は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の核炭素数3〜50の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の核炭素数1〜50の芳香族複素環基であり、Yは、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基である。fは1〜3の整数、e及びiはそれぞれ独立に0〜4の整数、hは0〜3の整数、gは1〜5の整数である。]
【請求項5】
前記核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物が、下記式(13)で表される化合物である請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
21−(Y)j (13)
[式中、X21は炭素環が2以上の縮合芳香族環基であり、Yは、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、置換もしくは無置換のアリールアルキル基、又は置換もしくは無置換のアルキル基である。jは1〜6の整数である。jが2以上の場合、Yはそれぞれ同じでも異なってもよい。]
【請求項6】
前記式(13)のX21が、ナフタセン、ピレン、ベンゾアントラセン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、ベンゾフルオレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフチルフルオランテン、ジベンゾフルオレン、ジベンゾピレン、ジベンゾフルオランテン及びアセナフチルフルオランテンからなる群から選択される骨格を有する請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記式(13)で表される化合物が、ナフタセン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、ジベンゾアントラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ビスアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ビスピレン誘導体、ベンゾピレン誘導体、ジベンゾピレン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ジベンゾフルオレン誘導体、フルオランテン誘導体、ベンゾフルオランテン誘導体、ジベンゾフルオランテン誘導体、ナフチルフルオランテン誘導体、アセナフチルフルオランテン誘導体、ジアミノアントラセン誘導体、ナフソフルオランテン誘導体、ジアミノピレン誘導体、ジアミノペリレン誘導体、ジベンジジン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノピレン誘導体及びジベンゾクリセン誘導体からなる群から選択される1種以上の化合物である請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記発光層が、前記ペリレン誘導体と核炭素数10〜50の縮合芳香族環を有する化合物とを含有する請求項3〜7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記有機薄膜層が電子輸送層を含み、この電子輸送層が下記式(14)で表される芳香族炭化水素化合物を含有する請求項3〜8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
−B (14)
[式(14)中、Aは炭素環2以上の芳香族炭化水素基であり、Bは置換又は無置換の複素環基である。]
【請求項10】
前記式(14)のAが、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ピレン、クリセン、ベンゾアントラセン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフソフルオランテン、ジベンゾフルオレン、ジベンゾピレン及びジベンゾフルオランテンからなる群から選択される一つ以上の骨格を有する請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記式(14)で表される化合物が、含窒素複素環化合物である請求項9又は10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記含窒素複素環化合物が、下記式(15)又は式(16)で表される化合物である請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化8】

[式中、R26は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基又置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、kは0〜4の整数であり、R27は、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R28は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリール基、置換もしくは無置換のピリジル基、置換もしくは無置換のキノリル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基であり、Lは、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、置換もしくは無置換のキノリニレン基又は置換もしくは無置換のフルオレニレン基であり、Ar13は、置換もしくは無置換の炭素数6〜60のアリーレン基、置換もしくは無置換のピリジニレン基、又は置換もしくは無置換のキノリニレン基である。]
【請求項13】
前記含窒素複素環化合物が、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、アクリジン、イミダゾピリジン、イミダゾピリミジン及びフェナントロリンからなる群から選択される1つ以上の骨格を有する化合物である請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
発光色が橙色乃至赤色である請求項3〜13のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記発光層がドーパント材料を含有し、発光層に占めるドーパント材料の濃度が0.1〜10重量%である請求項3〜14のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記ドーパント材料の濃度が0.5〜2重量%である請求項15に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2007−230887(P2007−230887A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52313(P2006−52313)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】