要因分析方法、要因分析装置、及び記録媒体
【課題】空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる要因分析方法を提供すること。
【解決手段】複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、特性分布データの各々に対して、複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する(S1)。算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する(S2)。選択された構成成分に関する重み係数とプロセス項目毎に取得された製造データとに基づいて、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する(S3)。
【解決手段】複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、特性分布データの各々に対して、複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する(S1)。算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する(S2)。選択された構成成分に関する重み係数とプロセス項目毎に取得された製造データとに基づいて、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する(S3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は要因分析方法に関し、より詳しくは、空間的な広がりをもつ製造物について欠陥や特性値の分布の変動発生要因を分析する要因分析方法および要因分析装置に関する。
【0002】
また、この発明は、上記要因分析方法を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
各種製品の生産工程において、高品質な製品を高い歩留りで生産するためには、生産工程における現象を分析し、それを基に生産工程をコントロールすることが重要である。その1つには、各種製品の生産工程において、不良発生時に不良の要因分析を行い、それを生産工程へフィードバックする方法がある。この不良要因分析には、生産工程のうちの製造工程から取得できる製造データと、検査工程から取得できる検査データをデータベースに保存し、それらのデータについて統計的手法を適用し、不良の要因を抽出する手法がある。
【0004】
半導体ウェハ、半導体ディスプレイ、半導体発光素子などの薄膜により構成される電子デバイスの生産工程においても、同様に歩留りの向上や安定化を目的として様々な検査が実施される。これらの検査には、例えば基板上に付着した異物等によって生じる回路パターンの欠陥を検査するようなパターン検査や、製造プロセス後の電気的・物理的な各種特性を基板面内に沿って複数箇所計測する特性値の分布の検査が含まれている。これらの検査によって、基板面内における欠陥や特性値の分布状態を確認することができる。基板面内における欠陥は、基板から製造される製造物の特性値に影響を及ぼし、製品の歩留りや特性の低下に繋がる。同じように、基板面内における特性値の分布の変動も、製造物の特性値のばらつきに影響を与えるため、歩留りや特性の低下に繋がる。このため、特性値の分布検査の結果を基にして調査・解析を行い、迅速に特性値の分布の変動発生要因を特定して対策を施すことで、特性ばらつき、歩留り低下を抑制することが重要となる。
【0005】
このような、平面に沿って分布する欠陥や特性値の分布の変動は、特定の要因によって特定の分布パターンとして発生することが多い。このため、特許文献1(WO2007/125941号公報)では基板上の欠陥の分布を抽出して分類し、製品不良等の原因となる異常な工程や装置を特定できる原因装置特定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/125941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1(WO2007/125941号公報)の方法を用いた場合、原因となる工程又は装置しか特定することができない。各工程や装置には、製造条件を設定すべきプロセス項目が多数存在する。一般的にプロセス項目は、工程や装置の管理を行う作業者が手作業で評価が可能な数個程度の項目数ではなく、数十個から多いものでは百個を超えるものもある。このため、その中から、欠陥や特性値の分布の変動を生じさせている要因を特定しようとしても分析が粗くなって、生産工程における要因分析としては不十分であった。
【0008】
上述の課題は、基板にプロセスを施した製造品を製造する場合に限らず発生する。例えば、空間的な広がりをもつ製造物について、上記製造物の部位毎に同一の検査を行ない、その検査データの分布状態を検査結果とする検査工程が存在すれば、同様の課題が生ずる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる要因分析方法および要因分析装置を提供することにある。なお、本段落以降では、「特性値」という用語を、電気的・物理的な特性だけでなく、欠陥数を含む広い概念をもつものとして用いる。
【0010】
また、この発明の課題は、そのような要因分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の要因分析方法は、複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析方法であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出ステップと、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択ステップと、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出ステップと、
を有する。
【0012】
本明細書で、「製造物」とは、完成品だけでなく、仕掛品も含む。
【0013】
また、「空間的な広がり」とは、平面的な広がりのほか、立体的な広がりも含む。
【0014】
また、「プロセス項目」とは、上記製造プロセスに含まれる工程又は装置に設定される製造条件の項目を指す。
【0015】
また、製造物の「部位」は、座標点で表現される製造物に含まれる点を示す場合と、製造物を特定の基準に従って空間的に区画した場合のその一つの領域を示す場合との両方を含む。
【0016】
また、既述のように、「特性値」は、電気的・物理的な特性だけでなく、欠陥数を含む広い概念を意味する。
【0017】
「入力指示」とは、ユーザ(要因分析装置を操作する操作者や製造プロセスのメンテナンス担当者を含む。)による指示を意味する。
【0018】
この発明の要因分析方法では、上記構成成分抽出ステップで算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記構成成分選択ステップで、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を絞り込む。したがって、分析が粗くなるのを防止できる。そして、プロセス項目抽出ステップで、上記選択された構成成分に関する重み係数に基づいて、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0019】
一実施形態の要因分析方法では、上記製造物の上記部位は、上記製造物の座標点、または上記製造物の表面を格子状に区画して設定された格子点若しくは矩形領域であることを特徴とする。
【0020】
この一実施形態の要因分析方法では、上記製造物の特性分布データを好ましく取得できる。
【0021】
一実施形態の要因分析方法では、上記複数の構成成分は統計的に互いに独立していることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の要因分析方法では、上記構成成分選択ステップで、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を容易に絞り込むことができる。
【0023】
一実施形態の要因分析方法では、上記パターン分類手法は、上記複数の製造物の特性分布データを重ね合わせ、その重ね合わされた特性分布データにおける特性値の分布の偏りを上記構成成分として分類するクラスタリング手法であることを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の要因分析方法では、上記複数の構成成分を好ましく抽出できる。
【0025】
一実施形態の要因分析方法では、上記構成成分選択ステップでは、上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出し、上記分析対象とすべき構成成分として、上記成分指標値が最も大きい構成成分、又は上記成分指標値が最も小さい構成成分を選択することを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の要因分析方法では、上記成分指標値によって上記分析対象とすべき構成成分を正確に選択できる。
【0027】
一実施形態の要因分析方法では、
上記プロセス項目抽出ステップでは、
上記複数の製造物の特性分布データのうち、上記選択された構成成分の重み係数が予め定められた閾値を超えている製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データとして分類する一方、上記選択された構成成分の重み係数が上記閾値以下である製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとして分類し、
上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データと上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとの間で上記製造データの傾向が異なるプロセス項目を、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目として抽出することを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の要因分析方法では、上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データと上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとを分類しているので、上記変動発生要因としてのプロセス項目をより正確に抽出できる。
【0029】
一実施形態の要因分析方法では、
上記プロセス項目抽出ステップの前に、上記重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有し、
上記プロセス項目抽出ステップでは、上記抽出された質的変数のカテゴリに含まれるプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出することを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の要因分析方法では、上記カテゴリ抽出ステップで上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを絞り込んでいる。したがって、分析が粗くなるのをさらに有効に防止でき、上記変動発生要因としてのプロセス項目をより正確に抽出できる。また、要因分析および分析結果の判断に必要な時間の短縮となり、効率よく要因分析を行うことができる。
【0031】
一実施形態の要因分析方法では、
上記プロセス項目抽出ステップの後、さらに、
上記抽出されたプロセス項目を含む質的変数の中から、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有することを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の要因分析方法では、上記カテゴリ抽出ステップによって上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出できる。また、要因分析および分析結果の判断に必要な時間の短縮となり、効率よく要因分析を行うことができる。
【0033】
この発明の要因分析装置は、複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択部と、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出部と、
を備える。
【0034】
この発明の要因分析装置では、上記構成成分抽出部で算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記構成成分選択部が、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を絞り込む。したがって、分析が粗くなるのを防止できる。そして、プロセス項目抽出部は、上記選択された構成成分に関する重み係数に基づいて、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0035】
この発明の記録媒体は、上記要因分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0036】
この発明の記録媒体によれば、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み取らせることで、上記コンピュータに上記要因分析方法を実行させることができる。
【0037】
別の局面では、この発明の要因分析装置は、複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す構成成分を複数抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出する成分指標値算出部と、
上記構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する上記成分指標値とを、所定の表示画面に表示する処理を行う表示処理部と、
を備える。
【0038】
この一実施形態の要因分析装置では、表示画面に、上記構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する上記成分指標値とが表示される。したがって、ユーザは、上記表示画面を見ることによって、複数の構成成分のうちどの構成成分が複数の製造物の特性分布データの変動に最も寄与しているかを、確認することができる。したがって、ユーザは、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を選択する判断を、適切に行うことができる。
【0039】
一実施形態の要因分析装置では、上記構成成分を表す画像は、上記製造物の空間的な広がりに対応する表示空間で、上記構成成分のパターンおよび値に応じた図形要素を配して構成されていることを特徴とする。
【0040】
この一実施形態の要因分析装置では、ユーザは、上記表示画面を見ることによって、複数の構成成分のうちどの構成成分が複数の製造物の特性分布データの変動に最も寄与しているかを、上記視覚を通して容易に確認することができる。したがって、ユーザは、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を選択する判断を、さらに適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
以上より明らかなように、本発明の要因分析方法および要因分析装置によれば、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0042】
また、本発明の記録媒体によれば、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み取らせることで、上記コンピュータに上記要因分析方法を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の第1実施形態の要因分析装置の構成を、生産装置の構成と併せて示す図である。
【図2】図1の要因分析装置によって実行される要因分析方法の概略フローを示す図である。
【図3】図2中の構成成分抽出ステップS1の詳細フローを示す図である。
【図4A】製造物の複数の部位毎に計測された特性値の分布を例示する図である。
【図4B】製造物の複数の部位毎に計測された特性値の分布を平面的な図形要素を用いて例示する図である。
【図5】抽出された構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する成分指標値とが、表示装置の表示画面に表示された例を示す図である。
【図6】製造物の部位毎に特性値を計測して得られた特性分布データを、上記構成成分と重み係数との積の1次結合で表す概念を説明する図である。
【図7】複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を選択するためのデータセットを例示する図である。
【図8】製造物毎に、製造物の特性分布データに対して上記選択された構成成分がもつ重み係数を示す図である。
【図9】各プロセス項目について、上記選択された構成成分が変動要因であるかを評価するための要因指標値の一覧結果を示す図である。
【図10】上記要因分析方法によって、変動要因として特定されたプロセス項目の製造データと重み係数との間の関係を、製造物毎にプロットして示す図である。
【図11】この発明の第2実施形態の要因分析装置の構成を、生産装置の構成と併せて示す図である。
【図12】図11の要因分析装置によって実行される要因分析方法のフローを示す図である。
【図13】上記要因分析方法における要因分析Aによって、上記選択された構成成分の発生要因を分析した結果として、製造工程毎に要因指標値を示す図である。
【図14】上記要因分析Aによって選択された製造工程の製造装置毎に、製造物の特性分布データに対して上記選択された構成成分がもつ重み係数を示す図である。
【図15】上記要因分析方法における要因分析Bによって、変動要因として特定されたプロセス項目の製造データと重み係数との間の関係を、製造物毎にプロットして示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態の要因分析装置104の構成を、生産ラインに設けられた生産装置101の構成と併せて示している。概略、生産装置101は要因分析方法に用いられるデータを提供し、要因分析装置104は生産装置101から提供されたデータを取得して要因分析を実行する。
【0046】
生産装置101は、製造プロセス装置102と検査プロセス装置103とを含んでいる。製造プロセス装置102は、成膜工程、露光工程、エッチング工程等をそれぞれ実行する図示しない複数種類の製造装置を含んでいる。製造物は、製造物(この例では、基板をロット単位とする。)毎に順次、それらの製造装置による処理を受ける。また、製造プロセス装置102は、製造データを測定するための図示しない測定装置を含んでいる。この測定装置は、製造物毎に各工程を実行する装置内の温度、圧力、投入電力量等の製造条件に関する項目(プロセス項目)のデータを測定する。製造プロセス装置102は、それらのプロセス項目毎に取得された製造データを、ロット番号(基板番号)と対応づけて、製造データとして要因分析装置104へ送信する。
【0047】
検査プロセス装置103は、製造プロセス装置102によって実行される所定の工程を経た製造物に対して検査を行う。この例では、検査プロセス装置103は、図4Aに示すように、製造プロセス装置102により処理された製造物80の1つの基板面を縦横それぞれ所定の数で格子状に区画し、区画されたn個(ただし、nは2以上の自然数である。)の矩形領域81毎に特性値を計測して取得する。図4A中の幾つかの矩形領域81には、理解の容易のため、その矩形領域について測定された特性値が表されている。
【0048】
この例では、製造物80の特性分布データとして、特性値が各矩形領域81において低く、均一であるのが望ましいものとする。製造プロセス装置102に含まれた何れかの製造装置において異変が起こると、特性値は高くなり、特性分布データが様々な分布形状に変動する。このため、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を特定して、対策を立案、実施することが必要となる。
【0049】
検査プロセス装置103は、複数の製造物80について製造物毎に得られた特性分布データX1,X2,X3,…(図4Bに例示する。)をそれぞれロット番号(基板番号)と対応づけて、順次図1中に示す要因分析装置104へ送信する。なお、図4Bの特性分布データX1,X2,X3,…を表す画像は、製造物80の空間的な広がりに対応する表示空間90で、製造物80の各矩形領域81に対応する桝目91に図形要素としての濃度を付与して構成されている。各桝目91の濃度は、対応する矩形領域81について測定された特性値に応じて可変して設定されている。
【0050】
図1中に示す要因分析装置104は、概略、データベース105と、演算装置106と、表示装置107と、入力装置108とを備えている。
【0051】
データベース105は、ハードディスクドライブなどの記憶装置からなり、製造プロセス装置102から受けた製造データと、検査プロセス装置103から受けた特性分布データとを、製造物80毎にロット番号で関連付けて格納する。
【0052】
演算装置106は、この例では、構成成分抽出部106a、構成成分選択部106b、プロセス項目抽出部106c、および表示処理部106dを備えている。演算装置106は、概略、データベース105から製造データと特性分布データとを含む各種データを取得し、後述の要因分析方法を実行して、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を特定する。演算装置106の各部106a〜106dは、CPU(中央演算処理装置)とそれを動作させるソフトウェア(コンピュータプログラム)によって構成されている。この演算装置106の各部106a〜106dの働きについては、後述の要因分析方法の説明の中で述べる。
【0053】
なお、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータに付属のハードディスクドライブに記憶させておいても良いし、または、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(コンパクトディスク(CD)やデジタル万能ディスク(DVD)など)に記録しておき、プログラム実行に際して再生装置(CDドライブやDVDドライブなど)で読み出すようにしても良い。
【0054】
表示装置107は、この例ではLCD(液晶表示素子)からなり、演算装置106の表示処理部106dから受けた画像データを表示画面に表示する。なお、表示装置107は、要因分析装置104の外部に設けられたCRT(陰極線管)等のディスプレイ装置であっても良い。
【0055】
入力装置108は、この例ではキーボードやマウスからなり、ユーザによるコマンドやデータの入力、指定などを受ける。
【0056】
なお、表示装置107と入力装置108は、例えばユーザがペンで表示画面の或る箇所をタッチして入力を行う公知のタッチパネル式LCDとして構成されても良い。
【0057】
図2は、上記演算装置106によって実行される要因分析方法の概略フローを示している。
【0058】
まず、ステップS1(構成成分抽出ステップ)で、構成成分抽出部106aが、データベース105に格納された複数の製造物80の特性分布データX1,X2,X3,…(図4Bに例示する。)に基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動の特徴を表す複数の構成成分P1,P2,P3,…(図5に例示する。)を抽出する。
【0059】
上記パターン分類手法としては、特性分布データについての特徴空間の基底となるデータを構成成分として抽出する独立成分分析や主成分分析、各製造物の特性分布データを重ね合わせそのデータに対して特性値の分布の偏りを構成成分として分類するクラスタリング手法であるK平均(k-means)法や自己組織化マップ(SOM)を用いることができる。
【0060】
ここで、図5の例では、構成成分P1,P2,P3,…を表す画像は、図4Bの特性分布データX1,X2,X3,…を表す画像と同様に、製造物80の空間的な広がりに対応する表示空間90で、製造物80の各矩形領域81に対応する桝目91に図形要素としての濃度を付与して構成されている。各桝目91の濃度は、対応する矩形領域81について測定された特性値に応じて可変して設定されている。図5から分かるように、構成成分P1,P2,P3,…は、特性分布データX1,X2,X3,…に現れた変動の特徴的なパターンに相当する。
【0061】
さらに、このステップS1では、構成成分抽出部106aが、上記特性分布データX1,X2,X3,…の各々に対して、上記複数の構成成分P1,P2,P3,…がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数s11,s12,s13,…;s21,s22,s23,…;s31,s32,s33,…をそれぞれ算出する。
【0062】
ここで、図6に示すように、特性分布データX1,X2,…は、例えばステップS1で抽出された構成成分が4つである場合、上記構成成分と重み係数との積の1次結合によって、次のように表される。
X1=P1×s11+P2×s12+P3×s13+P4×s14
X2=P1×s21+P2×s22+P3×s23+P4×s24
…
【0063】
次に、図2中のステップS2(構成成分選択ステップ)では、構成成分選択部106bが、それらの重み係数に基づいて、上記複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する。なお、構成成分選択部106bは、上記複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち、図1中の入力装置108を通してユーザによって入力指示された構成成分を選択しても良い。
【0064】
次に、図2中のステップS3(プロセス項目抽出ステップ)で、プロセス項目抽出部106cが、上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0065】
これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0066】
次に、図2中のステップS1,S2,S3における処理を、より具体的に説明する。
【0067】
図2中のステップS1(構成成分抽出ステップ)では、まず、図3中のステップS101に示すように、構成成分抽出部106aは、データベース105からm個(ただし、mは2以上の自然数である。)の製造物の特性分布データX1,X2,…,Xmを取得する。ここで、特性分布データXi(ただし、iはm以下の自然数である。)をn個(ただし、nは自然数である。)の特性値xi1,xi2,…,xinを成分とする特性ベクトルXi=(xi1,xi2,…,xin)とすると、全製造物の特性分布データXは、
として求められる。
【0068】
次に、ステップS102に示すように、この例では上記パターン分類手法として独立成分分析を用いて、全製造物の特性分布データXから統計的に互いに独立したp個(ただし、pは2以上の自然数である。)の構成成分P1,P2,…,Ppを抽出する。既述のように、構成成分Pj(ただし、jはp以下の自然数である。)は、特性分布データXiの基底となる特性値の分布に相当する。
【0069】
次に、ステップS103に示すように、構成成分抽出部106aは、特性分布データXiに対して構成成分Pjがもつ重み係数sijを算出する。ここで、重み係数sijは、複数の構成成分P1,P2,P3,…がその特性分布データXiを表すのに寄与する程度を表し、特性分布データXiと構成成分Pjがどれだけ似ているかを示す。
【0070】
全製造物の特性分布データXは、上記重み係数sijの行列と構成成分Pjの列ベクトルとを用いて、
と表される。
【0071】
図2中のステップS2(構成成分選択ステップ)では、構成成分選択部106bが、まず成分指標値算出部として働いて、上記構成成分P1,P2,P3,…を評価するための成分指標値を算出する。具体的には、特性分布データX1,X2,X3,…に対して構成成分Pjがもつ重み係数s1j,s2j,…,smjと、予め定めてある閾値(これを「成分選択閾値a」と呼ぶ。)とを、各構成成分Pj毎に比較する。そして、成分選択閾値aを上回る重み係数の個数を、それぞれの構成成分Pjを評価するための成分指標値ajとして規定して、算出する。分かるように、構成成分Pjが多くの特性分布データXiの変動に寄与していれば、成分指標値ajの値は大きくなる。一方、構成成分Pjが変動に寄与している特性分布データXiの数が少なければ、成分指標値ajの値は小さくなる。
【0072】
なお、成分指標値ajの規定の仕方は、上の例に限るものではない。例えば、特性値が高い方が望ましい場合は、成分選択閾値aを下回る重み係数の個数を成分指標値ajとしてもよい。また、上記特性分布データX1,X2,X3,…に対して構成成分Pjがもつ重み係数s1j,s2j,…,smjの総和を成分指標値ajとしてもよい。
【0073】
この例では、表示処理部106dが、図5に例示したような、上記構成成分P1,P2,P3,…を表す画像と、それらの構成成分に対応する成分指標値a1,a2,a3,…とをそれぞれ対応させて、図1中の表示装置107の表示画面に表示する。ユーザは、この表示画面を見ることによって、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうちどの構成成分が特性分布データX1,X2,X3,…の変動に最も寄与しているかを、視覚を通して容易に確認することができる。
【0074】
このステップS2では、構成成分選択部106bは、さらに、成分指標値a1,a2,a3,…に基づいて、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち分析対象とすべき1つの構成成分Po(ただし、oはp以下の自然数である。)を選択する。この例では、構成成分選択部106bは、p個の成分指標値a1,a2,…,apのうち最も大きい成分指標値(これをamaxとする。)を与える1つの構成成分Pmaxを分析対象として選択する。
【0075】
この例では、上記構成成分P1,P2,…,Ppが統計的に互いに独立しているので、それぞれ成分指標値ajを算出することによって、分析対象とすべき構成成分を正確に選択でき、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を容易に絞り込むことができる。
【0076】
なお、上述のように、ユーザは、上記表示装置107の表示画面を見ることによって、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうちどの構成成分が特性分布データX1,X2,X3,…の変動に最も寄与しているかを、容易に確認できる。そこで、このステップS2での構成成分の選択は、ユーザによる入力装置108を通した入力指示に応じて行っても良い。
【0077】
また、分析対象とする構成成分Poとして、最も小さい成分指標値aminを与える構成成分Pminを選択してもよい。
【0078】
最後に、図2中のステップS3(プロセス項目抽出ステップ)では、プロセス項目抽出部106cが、上記選択された構成成分Poに関する重み係数s1o,s2o,…,smoと、上記データベース105からプロセス項目毎に取得された製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0079】
例えば、特性分布データに異常な変動が発生した場合は、プロセス項目から異常発生の要因を抽出する。このとき、図7に例示するように、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち、選択された構成成分Poを目的変数とし、上記選択された構成成分Poに関する重み係数s1o,s2o,…,smoを目的変数データとする。また、複数のプロセス項目Y1,Y2,…を説明変数とし、それらのプロセス項目Y1,Y2,…に対応する製造条件のデータを説明変数データとする。プロセス項目の製造条件の値(製造データ)は、プロセス項目毎に単位や数値の桁が異なるため、標準化処理を行う。この標準化したデータを説明変数データとする。このような設定で、図7に例示するデータセットを用いて、上記変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0080】
プロセス項目を抽出する方法としては、主成分分析、主成分回帰、PLS(Partial Least Squares)回帰、多重回帰分析などの多変量解析や、ニューラルネット、ベイズモデリングなど非線形な解析モデル、目的変数と各説明変数における相関分析の単変量解析などを用いることができる。また、目的変数データを予め設定された閾値(bとする。)を基準として2値化し、目的変数に対して、分散分析、決定木分析のような分析を行っても良い。
【0081】
この例では、上記目的変数データを2値化した上で、主成分分析の手法を応用して、プロセス項目を抽出するものとする。
【0082】
具体的には、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち、ステップS2で選択された構成成分PoはP2であったものとする。このとき、特性分布データX1,X2,X3,…に対して上記選択された構成成分P2がもつ重み係数s12,s22,…,sm2は、図8に例示するようになっていたものとする(図8の横軸は製造物のロット番号である。)。ここで、閾値bを6に設定する。そして、特性分布データX1,X2,X3,…のうち、重み係数si2が閾値6を超えている製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分P2の影響を受けている製造物の特性分布データとして分類して、不良品とする。一方、重み係数si2が閾値6以下である製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分P2の影響を受けていない製造物の特性分布データとして、良品として分類する。そして、主成分分析によって、各プロセス項目について、上記選択された構成成分P2が変動要因であるかどうかを評価するための指標値(これを「要因指標値c」と呼ぶ。)を求める。上記選択された構成成分P2の影響を受けている製造物と、受けていない製造物との間で傾向の異なるプロセス項目を抽出する方法として、この例では主成分分析を使用したが、傾向の違いを評価する手法はこれに留まるものではなく、前述した多変量解析および、非線形モデルによる統計的な評価指標値に基づく方法、f検定、χ2検定に代表される統計検定による方法、各種クラスタリング手法による各クラスタの特徴量に基づく方法を用いても良い。
【0083】
これにより、例えば図9に示すような要因指標値cの一覧結果が得られる(図9の横軸はプロセス項目の番号である。)。この要因指標値cが大きいほど、対応するプロセス項目の影響度が高いと推定される。この例では、プロセス項目152が要因指標値cの最大値Maxを与えている。したがって、このプロセス項目152が上記選択された構成成分P2の発生要因であると推定されて抽出される。
【0084】
図10は、上記抽出されたプロセス項目152の製造データと、重み係数s12,s22,…,sm2との間の関係を、製造品毎にプロットして示している。図10中の□印は、重み係数si2が閾値6を超えている1個の不良品を表している。一方、○印は、重み係数si2が閾値6以下である1個の良品を表している。図10から分かるように、プロセス項目152の製造データが大きいと、不良品が多く発生していることが分かる(不良品が多く発生している範囲を801で示す。)。
【0085】
この結果、構成成分P2の発生を抑えるためには、プロセス項目152の製造データを小さくするように、プロセスを制御することが必要であることが分かる。これにより、実際の生産ラインに対して有効な改善案を立案、実施することが可能となり、高効率、高品質な生産を実現できる。
【0086】
このように、本実施形態の要因分析方法では、構成成分抽出ステップS1で算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、構成成分選択ステップS2で、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を絞り込む。したがって、分析が粗くなるのを防止できる。そして、プロセス項目抽出ステップS3で、上記選択された構成成分に関する重み係数に基づいて、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0087】
なお、「特性値」は、電気的・物理的な特性だけでなく、欠陥数を含む広い概念を意味する。欠陥検査の場合は、製造物における欠陥の座標位置を特性分布データとしても良く、製造物を特定の大きさの格子状に区画し、1つの格子内に含まれる欠陥数や欠陥面積を検査プロセスの特性値としても良い。
【0088】
また、本実施形態では、製造物80は基板であるものとし、検査プロセス装置103は製造物80の1つの基板面を測定するものとしたが、これに限られるものではない。製造物は立体的な構造を有していても良い。その場合、検査プロセス装置103は製造物の各面を測定することで、本発明を実施することができる。
【0089】
(第2実施形態)
図11は、本発明の一実施形態の要因分析装置904の構成を、生産ラインに設けられた生産装置901の構成と併せて示している。なお、図1中の構成要素と同じものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0090】
生産装置901は、製造プロセス装置902と検査プロセス装置103とを含んでいる。製造プロセス装置902は、図1中の製造プロセス装置102と同様に、成膜工程、露光工程、エッチング工程等をそれぞれ実行する図示しない複数種類の製造装置を含んでいる。製造物は、製造物(この例では、基板をロット単位とする。)毎に順次、それらの製造装置による処理を受ける。また、製造プロセス装置902は、図1中の製造プロセス装置102と同様に、製造データを測定するための図示しない測定装置を含んでいる。この測定装置は、製造物毎に各工程を実行する装置内の温度、圧力、投入電力量等の製造条件に関する項目(プロセス項目)のデータを測定する。製造プロセス装置902は、それらのプロセス項目毎に取得されたデータの他に、各製造物に対して処理を行った製造装置を特定する装置番号のような、複数のカテゴリで区分された項目を、ロット番号(基板番号)と対応づけて、製造データとして要因分析装置104へ送信する。
【0091】
要因分析装置904は、概略、データベース905と、演算装置906と、表示装置107と、入力装置108とを備えている。
【0092】
データベース905は、ハードウェアとしては図1中のデータベース105と同様であるが、記憶する製造データの中に、複数のカテゴリで区分された項目が含まれている点が異なっている。
【0093】
演算装置906は、この例では、構成成分抽出部906a、構成成分選択部906b、カテゴリ抽出部906c、データセット作成部906d、プロセス項目抽出部906e、および表示処理部906fを備えている。演算装置906は、概略、図1中の演算装置106と同様に、データベース905から製造データと特性分布データとを含む各種データを取得し、後述の要因分析方法を実行して、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を特定する。演算装置906の各部906a〜906fは、CPU(中央演算処理装置)とそれを動作させるソフトウェア(コンピュータプログラム)によって構成されている。この演算装置906の各部906a〜906fの働きについては、後述の要因分析方法の説明の中で述べる。
【0094】
なお、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータに付属のハードディスクドライブに記憶させておいても良いし、または、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(コンパクトディスク(CD)やデジタル万能ディスク(DVD)など)に記録しておき、プログラム実行に際して再生装置(CDドライブやDVDドライブなど)で読み出すようにしても良い。
【0095】
図12は、上記演算装置906によって実行される要因分析方法の概略フローを示している。
【0096】
まず、構成成分抽出部906aがステップS11(構成成分抽出ステップ)、構成成分選択部106bがステップS12(構成成分選択ステップ)を、図2中のステップS1、ステップS2と同様に順次実行する。重複を避けるため、それらの詳細な説明は省略する。なお、表示処理部906fは、図1中の表示処理部106dと同様に働く。
【0097】
次に、図12中のステップS13(カテゴリ抽出ステップ)では、カテゴリ抽出部906cが、上記選択された構成成分に関する重み係数と上記カテゴリで区分された項目を含む製造データとに基づいて、上記複数のカテゴリで区分された項目(以下「質的変数」と呼ぶ。)の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としての特定の質的変数を抽出する。すなわち、質的変数を、第1実施形態のステップS3で記載した説明変数とし、第1実施形態のステップS3で記載した目的変数に対する分析を行う。この分析を、以下では「要因分析A」と記載する。この要因分析Aにより、特性分布データの構成成分を発生させている要因、もしくはその可能性の高い候補となる質的変数を抽出する。
【0098】
この要因分析Aにおける、複数の質的変数の中から特定の質的変数を抽出する方法としては、分散分析、決定木のような統計手法を使うことができる。または、質的変数の各変数におけるカテゴリ別に製造物についての重み係数の平均値をとり、各カテゴリの平均値の差がある閾値を超えるものを要因候補とするように、統計値をユーザが予め定めた閾値を基に判別する分析手法を使うこともできる。
【0099】
次に、図12中のステップS14(データセット作成ステップ)では、データセット作成部906dが、ステップS13で抽出された質的変数のカテゴリに基づいて、データセットを作成する。このデータセットは、後述するステップS15で分析に用いられるべきデータの集合である。第1実施形態の場合では全製造物の重み係数と全プロセス項目の製造データであったが、このステップS14では、第1実施形態のデータセットから絞り込みを行う。
【0100】
データセットの絞り込みには次の2種類がある。一つ目の方法は、プロセス項目の製造データをステップS13で抽出した要因となる質的変数が持っているプロセス項目の製造データに絞り込む方法である。例えば、ステップS13で特定の製造装置を抽出した場合、説明変数としては抽出した製造装置で取得できる各種プロセス項目のみが説明変数となる。二つ目の方法は、製造物の重み係数をステップS13で抽出した要因となる質的変数のカテゴリに含まれる製造物の重み係数に絞り込む方法である。例えば、ステップS13で特定の製造装置を抽出した場合、その製造装置により処理された製造物の重み係数のみで下記要因分析Bを行う。なお、これらのデータセットの絞り込みは、どちらかを用いるだけでなく、両方用いてもよい。
【0101】
次に、図12中のステップS15(プロセス項目抽出ステップ)では、プロセス項目抽出部906eが、ステップS14で作成されたデータセットを用いた分析を行う。この分析を「要因分析B」と呼ぶ。要因分析Bの手法は、第1実施形態のステップS3の手順と同じである。
【0102】
このように、各製造物における特性値の特性分布データを構成成分と重み係数で表現することにより、プロセス項目についての要因分析を行う前に、質的変数に対する要因カテゴリを抽出する分析を実施することが可能となる。これにより、要因分析Bにおいて、要因分析Aで抽出した要因カテゴリに該当する製造物のみで分析を行うことができ、特定の条件に当てはまる製造物を対象にした分析が可能となる。したがって、要因分析Bにおいてノイズを低減でき、より正確な要因分析を実施できる。もしくは、要因分析Bにおいて、要因分析Aで抽出した要因カテゴリに含まれるプロセス項目のみが説明変数となるため、要因分析Bにおいて他のカテゴリに含まれるプロセス項目による影響を考慮する必要が無くなり、分析におけるノイズを抑えることができる。以上により、特性値の分布に対するより正確な要因分析を実施することが可能となる。
【0103】
次に、図12中のステップS11〜S15における処理、特に、ステップS13,S14,S15における処理を、より具体的に説明する。
【0104】
上記ステップS11(構成成分抽出ステップ)、構成成分選択部106bがステップS12(構成成分選択ステップ)の後、ステップS13(カテゴリ抽出ステップ)では、この例では第1実施形態の図5の構成成分P2を選択し、構成成分P2に対して要因分析Aを実施する。
【0105】
この要因分析Aでは、説明変数として製造プロセス装置902に含まれる工程α,β,γ,δ,…の各装置を設定する。これにより、製造工程の装置の違いを起因とする重み係数の差異を分析し、構成成分P2の発生要因であるプロセス項目が設定されている装置を抽出することができる。ここで、質的変数の中から特定のカテゴリを抽出する方法として分散分析によるF値を比較する手法を用いた。F値の計算式は次式の通りである。F値が大きい方が装置の差の影響が大きいとされる。
【0106】
ここで、STは全製造物の残差平方和、Seは質的変数の各カテゴリに含まれる製造物の残差平方和、νTは全製造物の自由度、νeは質的変数の各カテゴリに含まれる製造物の自由度を表す。
【0107】
その結果は、例えば図13に示すように得られる。図13の横軸は工程α,β,γ,δ,…を表し、縦軸は上記工程α,β,γ,δ,…が構成成分P2の発生要因であるかどうかを評価するための指標値(これを「要因指標値d」と呼ぶ。)を表している。図13から、工程αについての要因指標値dが他の工程β,γ,δ,…のものよりも大きく、工程αが発生要因である可能性が高いことが分かる。
【0108】
この例では、製造データによると、工程αでは2つの製造装置α1,α2で製造品に対するプロセス処理が行われていた。図14は、特性分布データX1,X2,X3,…に対してステップS12で選択された構成成分P2がもつ重み係数を、装置α1,α2毎に、プロットして示している。図14から分かるように、装置α1で処理された製造物の重み係数のばらつきが装置α2のものよりも大きいことが分かる(重み係数のばらつきの範囲を1201で示す。)。そこで、この例では、上記構成成分P2の発生要因として工程α及び装置α1を抽出する。
【0109】
次に、ステップS14(データセット作成ステップ)では、データベース905に記憶されている製造データ、検査データのうち、上記ステップS13で抽出された装置α1で処理された製造物の重み係数に絞り、かつ、工程αのプロセス項目の製造データに絞り込んで、次のステップS15で分析に用いられるべきデータセットを作成する。
【0110】
この例では、特性分布データX1,X2,X3,…に対して上記選択された構成成分P2がもつ重み係数s12,s22,…,sm2に絞り、かつ、工程αのプロセス項目の製造データに絞り込んで、上記データセットを作成する。
【0111】
次に、ステップS15(プロセス項目抽出ステップ)では、ステップS14で作成されたデータセットを用いて要因分析Bを実施する。これにより、第1実施形態におけるのと同様に、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0112】
この例では、第1実施形態におけるのと同様に、上記構成成分P2の発生要因としてプロセス項目152(図9参照)を抽出した。このとき、ステップS14で分析対象のデータセットを絞り込んでいるので、変動発生要因としてのプロセス項目を効率的に判別することができる。
【0113】
図15は、ステップS14で作成されたデータセットを用いて、図10におけるのと同様に、上記抽出されたプロセス項目152の製造データと、重み係数s12,s22,…,sm2との間の関係を、製造品毎にプロットして示している。図10におけるのと同様に、重み係数si2が閾値6を超えているものを不良品であるとした場合、図15から分かるように、プロセス項目152の製造データが大きいと、不良品が多く発生していることが分かる(不良品が多く発生している範囲を1301で示す。)。この図15では、ステップS14で分析対象のデータセットを絞り込んでいるので、図10では存在したプロセス項目の製造データが小さい領域に現れていたノイズが存在しなくなっている。したがって、より正確な要因分析を行うことができたことが分かる。
【0114】
本実施形態では、質的変数のカテゴリを抽出し、そのカテゴリに含まれるプロセス項目の中から製造物の特性値に影響を与えるプロセス項目を抽出しているが、それに代えて、プロセス項目を抽出してからそのプロセス項目を含む質的変数の中から上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出してもよい。プロセス項目のデータ数が質的変数のデータ数より多い場合、先に質的変数のカテゴリを抽出しそのカテゴリに含まれるプロセス項目の中から要因となるプロセス項目を抽出するのが望ましい。一方、プロセス項目のデータ数が質的変数のデータ数より少ない場合は、先にプロセス項目を抽出しそのプロセス項目を含む質的変数の中から要因となる質的変数のカテゴリを抽出するのが望ましい。そのようにした場合、要因分析および分析結果の判断に必要な時間の短縮となり、効率よく要因分析を行うことができる。
【0115】
以上に説明したとおり、本実施形態によれば、製品の特性や歩留りに影響を与える特性値の分布パターンの発生要因となっている質的変数を抽出し、抽出した質的変数のカテゴリに基づいて元のデータセットを絞り込んで要因分析を行うことができる。これにより、より正確な要因分析を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、電子デバイス、電子機器、機械、鉄鋼、金属など、複数のプロセス項目を含む製造プロセスによって製造品に処理を施す分野で、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因を分析するのに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
101,901 生産装置
102,902 製造プロセス装置
103 検査プロセス装置
104,904 要因分析装置
105,905 データベース
106,906 演算装置
107 表示装置
108 入力装置
【技術分野】
【0001】
この発明は要因分析方法に関し、より詳しくは、空間的な広がりをもつ製造物について欠陥や特性値の分布の変動発生要因を分析する要因分析方法および要因分析装置に関する。
【0002】
また、この発明は、上記要因分析方法を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
各種製品の生産工程において、高品質な製品を高い歩留りで生産するためには、生産工程における現象を分析し、それを基に生産工程をコントロールすることが重要である。その1つには、各種製品の生産工程において、不良発生時に不良の要因分析を行い、それを生産工程へフィードバックする方法がある。この不良要因分析には、生産工程のうちの製造工程から取得できる製造データと、検査工程から取得できる検査データをデータベースに保存し、それらのデータについて統計的手法を適用し、不良の要因を抽出する手法がある。
【0004】
半導体ウェハ、半導体ディスプレイ、半導体発光素子などの薄膜により構成される電子デバイスの生産工程においても、同様に歩留りの向上や安定化を目的として様々な検査が実施される。これらの検査には、例えば基板上に付着した異物等によって生じる回路パターンの欠陥を検査するようなパターン検査や、製造プロセス後の電気的・物理的な各種特性を基板面内に沿って複数箇所計測する特性値の分布の検査が含まれている。これらの検査によって、基板面内における欠陥や特性値の分布状態を確認することができる。基板面内における欠陥は、基板から製造される製造物の特性値に影響を及ぼし、製品の歩留りや特性の低下に繋がる。同じように、基板面内における特性値の分布の変動も、製造物の特性値のばらつきに影響を与えるため、歩留りや特性の低下に繋がる。このため、特性値の分布検査の結果を基にして調査・解析を行い、迅速に特性値の分布の変動発生要因を特定して対策を施すことで、特性ばらつき、歩留り低下を抑制することが重要となる。
【0005】
このような、平面に沿って分布する欠陥や特性値の分布の変動は、特定の要因によって特定の分布パターンとして発生することが多い。このため、特許文献1(WO2007/125941号公報)では基板上の欠陥の分布を抽出して分類し、製品不良等の原因となる異常な工程や装置を特定できる原因装置特定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/125941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1(WO2007/125941号公報)の方法を用いた場合、原因となる工程又は装置しか特定することができない。各工程や装置には、製造条件を設定すべきプロセス項目が多数存在する。一般的にプロセス項目は、工程や装置の管理を行う作業者が手作業で評価が可能な数個程度の項目数ではなく、数十個から多いものでは百個を超えるものもある。このため、その中から、欠陥や特性値の分布の変動を生じさせている要因を特定しようとしても分析が粗くなって、生産工程における要因分析としては不十分であった。
【0008】
上述の課題は、基板にプロセスを施した製造品を製造する場合に限らず発生する。例えば、空間的な広がりをもつ製造物について、上記製造物の部位毎に同一の検査を行ない、その検査データの分布状態を検査結果とする検査工程が存在すれば、同様の課題が生ずる。
【0009】
そこで、この発明の課題は、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる要因分析方法および要因分析装置を提供することにある。なお、本段落以降では、「特性値」という用語を、電気的・物理的な特性だけでなく、欠陥数を含む広い概念をもつものとして用いる。
【0010】
また、この発明の課題は、そのような要因分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の要因分析方法は、複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析方法であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出ステップと、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択ステップと、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出ステップと、
を有する。
【0012】
本明細書で、「製造物」とは、完成品だけでなく、仕掛品も含む。
【0013】
また、「空間的な広がり」とは、平面的な広がりのほか、立体的な広がりも含む。
【0014】
また、「プロセス項目」とは、上記製造プロセスに含まれる工程又は装置に設定される製造条件の項目を指す。
【0015】
また、製造物の「部位」は、座標点で表現される製造物に含まれる点を示す場合と、製造物を特定の基準に従って空間的に区画した場合のその一つの領域を示す場合との両方を含む。
【0016】
また、既述のように、「特性値」は、電気的・物理的な特性だけでなく、欠陥数を含む広い概念を意味する。
【0017】
「入力指示」とは、ユーザ(要因分析装置を操作する操作者や製造プロセスのメンテナンス担当者を含む。)による指示を意味する。
【0018】
この発明の要因分析方法では、上記構成成分抽出ステップで算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記構成成分選択ステップで、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を絞り込む。したがって、分析が粗くなるのを防止できる。そして、プロセス項目抽出ステップで、上記選択された構成成分に関する重み係数に基づいて、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0019】
一実施形態の要因分析方法では、上記製造物の上記部位は、上記製造物の座標点、または上記製造物の表面を格子状に区画して設定された格子点若しくは矩形領域であることを特徴とする。
【0020】
この一実施形態の要因分析方法では、上記製造物の特性分布データを好ましく取得できる。
【0021】
一実施形態の要因分析方法では、上記複数の構成成分は統計的に互いに独立していることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の要因分析方法では、上記構成成分選択ステップで、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を容易に絞り込むことができる。
【0023】
一実施形態の要因分析方法では、上記パターン分類手法は、上記複数の製造物の特性分布データを重ね合わせ、その重ね合わされた特性分布データにおける特性値の分布の偏りを上記構成成分として分類するクラスタリング手法であることを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の要因分析方法では、上記複数の構成成分を好ましく抽出できる。
【0025】
一実施形態の要因分析方法では、上記構成成分選択ステップでは、上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出し、上記分析対象とすべき構成成分として、上記成分指標値が最も大きい構成成分、又は上記成分指標値が最も小さい構成成分を選択することを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の要因分析方法では、上記成分指標値によって上記分析対象とすべき構成成分を正確に選択できる。
【0027】
一実施形態の要因分析方法では、
上記プロセス項目抽出ステップでは、
上記複数の製造物の特性分布データのうち、上記選択された構成成分の重み係数が予め定められた閾値を超えている製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データとして分類する一方、上記選択された構成成分の重み係数が上記閾値以下である製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとして分類し、
上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データと上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとの間で上記製造データの傾向が異なるプロセス項目を、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目として抽出することを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の要因分析方法では、上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データと上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとを分類しているので、上記変動発生要因としてのプロセス項目をより正確に抽出できる。
【0029】
一実施形態の要因分析方法では、
上記プロセス項目抽出ステップの前に、上記重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有し、
上記プロセス項目抽出ステップでは、上記抽出された質的変数のカテゴリに含まれるプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出することを特徴とする。
【0030】
この一実施形態の要因分析方法では、上記カテゴリ抽出ステップで上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを絞り込んでいる。したがって、分析が粗くなるのをさらに有効に防止でき、上記変動発生要因としてのプロセス項目をより正確に抽出できる。また、要因分析および分析結果の判断に必要な時間の短縮となり、効率よく要因分析を行うことができる。
【0031】
一実施形態の要因分析方法では、
上記プロセス項目抽出ステップの後、さらに、
上記抽出されたプロセス項目を含む質的変数の中から、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有することを特徴とする。
【0032】
この一実施形態の要因分析方法では、上記カテゴリ抽出ステップによって上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出できる。また、要因分析および分析結果の判断に必要な時間の短縮となり、効率よく要因分析を行うことができる。
【0033】
この発明の要因分析装置は、複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択部と、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出部と、
を備える。
【0034】
この発明の要因分析装置では、上記構成成分抽出部で算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記構成成分選択部が、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を絞り込む。したがって、分析が粗くなるのを防止できる。そして、プロセス項目抽出部は、上記選択された構成成分に関する重み係数に基づいて、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0035】
この発明の記録媒体は、上記要因分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0036】
この発明の記録媒体によれば、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み取らせることで、上記コンピュータに上記要因分析方法を実行させることができる。
【0037】
別の局面では、この発明の要因分析装置は、複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す構成成分を複数抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出する成分指標値算出部と、
上記構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する上記成分指標値とを、所定の表示画面に表示する処理を行う表示処理部と、
を備える。
【0038】
この一実施形態の要因分析装置では、表示画面に、上記構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する上記成分指標値とが表示される。したがって、ユーザは、上記表示画面を見ることによって、複数の構成成分のうちどの構成成分が複数の製造物の特性分布データの変動に最も寄与しているかを、確認することができる。したがって、ユーザは、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を選択する判断を、適切に行うことができる。
【0039】
一実施形態の要因分析装置では、上記構成成分を表す画像は、上記製造物の空間的な広がりに対応する表示空間で、上記構成成分のパターンおよび値に応じた図形要素を配して構成されていることを特徴とする。
【0040】
この一実施形態の要因分析装置では、ユーザは、上記表示画面を見ることによって、複数の構成成分のうちどの構成成分が複数の製造物の特性分布データの変動に最も寄与しているかを、上記視覚を通して容易に確認することができる。したがって、ユーザは、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を選択する判断を、さらに適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
以上より明らかなように、本発明の要因分析方法および要因分析装置によれば、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0042】
また、本発明の記録媒体によれば、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み取らせることで、上記コンピュータに上記要因分析方法を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の第1実施形態の要因分析装置の構成を、生産装置の構成と併せて示す図である。
【図2】図1の要因分析装置によって実行される要因分析方法の概略フローを示す図である。
【図3】図2中の構成成分抽出ステップS1の詳細フローを示す図である。
【図4A】製造物の複数の部位毎に計測された特性値の分布を例示する図である。
【図4B】製造物の複数の部位毎に計測された特性値の分布を平面的な図形要素を用いて例示する図である。
【図5】抽出された構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する成分指標値とが、表示装置の表示画面に表示された例を示す図である。
【図6】製造物の部位毎に特性値を計測して得られた特性分布データを、上記構成成分と重み係数との積の1次結合で表す概念を説明する図である。
【図7】複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を選択するためのデータセットを例示する図である。
【図8】製造物毎に、製造物の特性分布データに対して上記選択された構成成分がもつ重み係数を示す図である。
【図9】各プロセス項目について、上記選択された構成成分が変動要因であるかを評価するための要因指標値の一覧結果を示す図である。
【図10】上記要因分析方法によって、変動要因として特定されたプロセス項目の製造データと重み係数との間の関係を、製造物毎にプロットして示す図である。
【図11】この発明の第2実施形態の要因分析装置の構成を、生産装置の構成と併せて示す図である。
【図12】図11の要因分析装置によって実行される要因分析方法のフローを示す図である。
【図13】上記要因分析方法における要因分析Aによって、上記選択された構成成分の発生要因を分析した結果として、製造工程毎に要因指標値を示す図である。
【図14】上記要因分析Aによって選択された製造工程の製造装置毎に、製造物の特性分布データに対して上記選択された構成成分がもつ重み係数を示す図である。
【図15】上記要因分析方法における要因分析Bによって、変動要因として特定されたプロセス項目の製造データと重み係数との間の関係を、製造物毎にプロットして示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態の要因分析装置104の構成を、生産ラインに設けられた生産装置101の構成と併せて示している。概略、生産装置101は要因分析方法に用いられるデータを提供し、要因分析装置104は生産装置101から提供されたデータを取得して要因分析を実行する。
【0046】
生産装置101は、製造プロセス装置102と検査プロセス装置103とを含んでいる。製造プロセス装置102は、成膜工程、露光工程、エッチング工程等をそれぞれ実行する図示しない複数種類の製造装置を含んでいる。製造物は、製造物(この例では、基板をロット単位とする。)毎に順次、それらの製造装置による処理を受ける。また、製造プロセス装置102は、製造データを測定するための図示しない測定装置を含んでいる。この測定装置は、製造物毎に各工程を実行する装置内の温度、圧力、投入電力量等の製造条件に関する項目(プロセス項目)のデータを測定する。製造プロセス装置102は、それらのプロセス項目毎に取得された製造データを、ロット番号(基板番号)と対応づけて、製造データとして要因分析装置104へ送信する。
【0047】
検査プロセス装置103は、製造プロセス装置102によって実行される所定の工程を経た製造物に対して検査を行う。この例では、検査プロセス装置103は、図4Aに示すように、製造プロセス装置102により処理された製造物80の1つの基板面を縦横それぞれ所定の数で格子状に区画し、区画されたn個(ただし、nは2以上の自然数である。)の矩形領域81毎に特性値を計測して取得する。図4A中の幾つかの矩形領域81には、理解の容易のため、その矩形領域について測定された特性値が表されている。
【0048】
この例では、製造物80の特性分布データとして、特性値が各矩形領域81において低く、均一であるのが望ましいものとする。製造プロセス装置102に含まれた何れかの製造装置において異変が起こると、特性値は高くなり、特性分布データが様々な分布形状に変動する。このため、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を特定して、対策を立案、実施することが必要となる。
【0049】
検査プロセス装置103は、複数の製造物80について製造物毎に得られた特性分布データX1,X2,X3,…(図4Bに例示する。)をそれぞれロット番号(基板番号)と対応づけて、順次図1中に示す要因分析装置104へ送信する。なお、図4Bの特性分布データX1,X2,X3,…を表す画像は、製造物80の空間的な広がりに対応する表示空間90で、製造物80の各矩形領域81に対応する桝目91に図形要素としての濃度を付与して構成されている。各桝目91の濃度は、対応する矩形領域81について測定された特性値に応じて可変して設定されている。
【0050】
図1中に示す要因分析装置104は、概略、データベース105と、演算装置106と、表示装置107と、入力装置108とを備えている。
【0051】
データベース105は、ハードディスクドライブなどの記憶装置からなり、製造プロセス装置102から受けた製造データと、検査プロセス装置103から受けた特性分布データとを、製造物80毎にロット番号で関連付けて格納する。
【0052】
演算装置106は、この例では、構成成分抽出部106a、構成成分選択部106b、プロセス項目抽出部106c、および表示処理部106dを備えている。演算装置106は、概略、データベース105から製造データと特性分布データとを含む各種データを取得し、後述の要因分析方法を実行して、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を特定する。演算装置106の各部106a〜106dは、CPU(中央演算処理装置)とそれを動作させるソフトウェア(コンピュータプログラム)によって構成されている。この演算装置106の各部106a〜106dの働きについては、後述の要因分析方法の説明の中で述べる。
【0053】
なお、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータに付属のハードディスクドライブに記憶させておいても良いし、または、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(コンパクトディスク(CD)やデジタル万能ディスク(DVD)など)に記録しておき、プログラム実行に際して再生装置(CDドライブやDVDドライブなど)で読み出すようにしても良い。
【0054】
表示装置107は、この例ではLCD(液晶表示素子)からなり、演算装置106の表示処理部106dから受けた画像データを表示画面に表示する。なお、表示装置107は、要因分析装置104の外部に設けられたCRT(陰極線管)等のディスプレイ装置であっても良い。
【0055】
入力装置108は、この例ではキーボードやマウスからなり、ユーザによるコマンドやデータの入力、指定などを受ける。
【0056】
なお、表示装置107と入力装置108は、例えばユーザがペンで表示画面の或る箇所をタッチして入力を行う公知のタッチパネル式LCDとして構成されても良い。
【0057】
図2は、上記演算装置106によって実行される要因分析方法の概略フローを示している。
【0058】
まず、ステップS1(構成成分抽出ステップ)で、構成成分抽出部106aが、データベース105に格納された複数の製造物80の特性分布データX1,X2,X3,…(図4Bに例示する。)に基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動の特徴を表す複数の構成成分P1,P2,P3,…(図5に例示する。)を抽出する。
【0059】
上記パターン分類手法としては、特性分布データについての特徴空間の基底となるデータを構成成分として抽出する独立成分分析や主成分分析、各製造物の特性分布データを重ね合わせそのデータに対して特性値の分布の偏りを構成成分として分類するクラスタリング手法であるK平均(k-means)法や自己組織化マップ(SOM)を用いることができる。
【0060】
ここで、図5の例では、構成成分P1,P2,P3,…を表す画像は、図4Bの特性分布データX1,X2,X3,…を表す画像と同様に、製造物80の空間的な広がりに対応する表示空間90で、製造物80の各矩形領域81に対応する桝目91に図形要素としての濃度を付与して構成されている。各桝目91の濃度は、対応する矩形領域81について測定された特性値に応じて可変して設定されている。図5から分かるように、構成成分P1,P2,P3,…は、特性分布データX1,X2,X3,…に現れた変動の特徴的なパターンに相当する。
【0061】
さらに、このステップS1では、構成成分抽出部106aが、上記特性分布データX1,X2,X3,…の各々に対して、上記複数の構成成分P1,P2,P3,…がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数s11,s12,s13,…;s21,s22,s23,…;s31,s32,s33,…をそれぞれ算出する。
【0062】
ここで、図6に示すように、特性分布データX1,X2,…は、例えばステップS1で抽出された構成成分が4つである場合、上記構成成分と重み係数との積の1次結合によって、次のように表される。
X1=P1×s11+P2×s12+P3×s13+P4×s14
X2=P1×s21+P2×s22+P3×s23+P4×s24
…
【0063】
次に、図2中のステップS2(構成成分選択ステップ)では、構成成分選択部106bが、それらの重み係数に基づいて、上記複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する。なお、構成成分選択部106bは、上記複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち、図1中の入力装置108を通してユーザによって入力指示された構成成分を選択しても良い。
【0064】
次に、図2中のステップS3(プロセス項目抽出ステップ)で、プロセス項目抽出部106cが、上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0065】
これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0066】
次に、図2中のステップS1,S2,S3における処理を、より具体的に説明する。
【0067】
図2中のステップS1(構成成分抽出ステップ)では、まず、図3中のステップS101に示すように、構成成分抽出部106aは、データベース105からm個(ただし、mは2以上の自然数である。)の製造物の特性分布データX1,X2,…,Xmを取得する。ここで、特性分布データXi(ただし、iはm以下の自然数である。)をn個(ただし、nは自然数である。)の特性値xi1,xi2,…,xinを成分とする特性ベクトルXi=(xi1,xi2,…,xin)とすると、全製造物の特性分布データXは、
として求められる。
【0068】
次に、ステップS102に示すように、この例では上記パターン分類手法として独立成分分析を用いて、全製造物の特性分布データXから統計的に互いに独立したp個(ただし、pは2以上の自然数である。)の構成成分P1,P2,…,Ppを抽出する。既述のように、構成成分Pj(ただし、jはp以下の自然数である。)は、特性分布データXiの基底となる特性値の分布に相当する。
【0069】
次に、ステップS103に示すように、構成成分抽出部106aは、特性分布データXiに対して構成成分Pjがもつ重み係数sijを算出する。ここで、重み係数sijは、複数の構成成分P1,P2,P3,…がその特性分布データXiを表すのに寄与する程度を表し、特性分布データXiと構成成分Pjがどれだけ似ているかを示す。
【0070】
全製造物の特性分布データXは、上記重み係数sijの行列と構成成分Pjの列ベクトルとを用いて、
と表される。
【0071】
図2中のステップS2(構成成分選択ステップ)では、構成成分選択部106bが、まず成分指標値算出部として働いて、上記構成成分P1,P2,P3,…を評価するための成分指標値を算出する。具体的には、特性分布データX1,X2,X3,…に対して構成成分Pjがもつ重み係数s1j,s2j,…,smjと、予め定めてある閾値(これを「成分選択閾値a」と呼ぶ。)とを、各構成成分Pj毎に比較する。そして、成分選択閾値aを上回る重み係数の個数を、それぞれの構成成分Pjを評価するための成分指標値ajとして規定して、算出する。分かるように、構成成分Pjが多くの特性分布データXiの変動に寄与していれば、成分指標値ajの値は大きくなる。一方、構成成分Pjが変動に寄与している特性分布データXiの数が少なければ、成分指標値ajの値は小さくなる。
【0072】
なお、成分指標値ajの規定の仕方は、上の例に限るものではない。例えば、特性値が高い方が望ましい場合は、成分選択閾値aを下回る重み係数の個数を成分指標値ajとしてもよい。また、上記特性分布データX1,X2,X3,…に対して構成成分Pjがもつ重み係数s1j,s2j,…,smjの総和を成分指標値ajとしてもよい。
【0073】
この例では、表示処理部106dが、図5に例示したような、上記構成成分P1,P2,P3,…を表す画像と、それらの構成成分に対応する成分指標値a1,a2,a3,…とをそれぞれ対応させて、図1中の表示装置107の表示画面に表示する。ユーザは、この表示画面を見ることによって、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうちどの構成成分が特性分布データX1,X2,X3,…の変動に最も寄与しているかを、視覚を通して容易に確認することができる。
【0074】
このステップS2では、構成成分選択部106bは、さらに、成分指標値a1,a2,a3,…に基づいて、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち分析対象とすべき1つの構成成分Po(ただし、oはp以下の自然数である。)を選択する。この例では、構成成分選択部106bは、p個の成分指標値a1,a2,…,apのうち最も大きい成分指標値(これをamaxとする。)を与える1つの構成成分Pmaxを分析対象として選択する。
【0075】
この例では、上記構成成分P1,P2,…,Ppが統計的に互いに独立しているので、それぞれ成分指標値ajを算出することによって、分析対象とすべき構成成分を正確に選択でき、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を容易に絞り込むことができる。
【0076】
なお、上述のように、ユーザは、上記表示装置107の表示画面を見ることによって、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうちどの構成成分が特性分布データX1,X2,X3,…の変動に最も寄与しているかを、容易に確認できる。そこで、このステップS2での構成成分の選択は、ユーザによる入力装置108を通した入力指示に応じて行っても良い。
【0077】
また、分析対象とする構成成分Poとして、最も小さい成分指標値aminを与える構成成分Pminを選択してもよい。
【0078】
最後に、図2中のステップS3(プロセス項目抽出ステップ)では、プロセス項目抽出部106cが、上記選択された構成成分Poに関する重み係数s1o,s2o,…,smoと、上記データベース105からプロセス項目毎に取得された製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0079】
例えば、特性分布データに異常な変動が発生した場合は、プロセス項目から異常発生の要因を抽出する。このとき、図7に例示するように、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち、選択された構成成分Poを目的変数とし、上記選択された構成成分Poに関する重み係数s1o,s2o,…,smoを目的変数データとする。また、複数のプロセス項目Y1,Y2,…を説明変数とし、それらのプロセス項目Y1,Y2,…に対応する製造条件のデータを説明変数データとする。プロセス項目の製造条件の値(製造データ)は、プロセス項目毎に単位や数値の桁が異なるため、標準化処理を行う。この標準化したデータを説明変数データとする。このような設定で、図7に例示するデータセットを用いて、上記変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0080】
プロセス項目を抽出する方法としては、主成分分析、主成分回帰、PLS(Partial Least Squares)回帰、多重回帰分析などの多変量解析や、ニューラルネット、ベイズモデリングなど非線形な解析モデル、目的変数と各説明変数における相関分析の単変量解析などを用いることができる。また、目的変数データを予め設定された閾値(bとする。)を基準として2値化し、目的変数に対して、分散分析、決定木分析のような分析を行っても良い。
【0081】
この例では、上記目的変数データを2値化した上で、主成分分析の手法を応用して、プロセス項目を抽出するものとする。
【0082】
具体的には、複数の構成成分P1,P2,P3,…のうち、ステップS2で選択された構成成分PoはP2であったものとする。このとき、特性分布データX1,X2,X3,…に対して上記選択された構成成分P2がもつ重み係数s12,s22,…,sm2は、図8に例示するようになっていたものとする(図8の横軸は製造物のロット番号である。)。ここで、閾値bを6に設定する。そして、特性分布データX1,X2,X3,…のうち、重み係数si2が閾値6を超えている製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分P2の影響を受けている製造物の特性分布データとして分類して、不良品とする。一方、重み係数si2が閾値6以下である製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分P2の影響を受けていない製造物の特性分布データとして、良品として分類する。そして、主成分分析によって、各プロセス項目について、上記選択された構成成分P2が変動要因であるかどうかを評価するための指標値(これを「要因指標値c」と呼ぶ。)を求める。上記選択された構成成分P2の影響を受けている製造物と、受けていない製造物との間で傾向の異なるプロセス項目を抽出する方法として、この例では主成分分析を使用したが、傾向の違いを評価する手法はこれに留まるものではなく、前述した多変量解析および、非線形モデルによる統計的な評価指標値に基づく方法、f検定、χ2検定に代表される統計検定による方法、各種クラスタリング手法による各クラスタの特徴量に基づく方法を用いても良い。
【0083】
これにより、例えば図9に示すような要因指標値cの一覧結果が得られる(図9の横軸はプロセス項目の番号である。)。この要因指標値cが大きいほど、対応するプロセス項目の影響度が高いと推定される。この例では、プロセス項目152が要因指標値cの最大値Maxを与えている。したがって、このプロセス項目152が上記選択された構成成分P2の発生要因であると推定されて抽出される。
【0084】
図10は、上記抽出されたプロセス項目152の製造データと、重み係数s12,s22,…,sm2との間の関係を、製造品毎にプロットして示している。図10中の□印は、重み係数si2が閾値6を超えている1個の不良品を表している。一方、○印は、重み係数si2が閾値6以下である1個の良品を表している。図10から分かるように、プロセス項目152の製造データが大きいと、不良品が多く発生していることが分かる(不良品が多く発生している範囲を801で示す。)。
【0085】
この結果、構成成分P2の発生を抑えるためには、プロセス項目152の製造データを小さくするように、プロセスを制御することが必要であることが分かる。これにより、実際の生産ラインに対して有効な改善案を立案、実施することが可能となり、高効率、高品質な生産を実現できる。
【0086】
このように、本実施形態の要因分析方法では、構成成分抽出ステップS1で算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、構成成分選択ステップS2で、上記特性分布データにおける変動発生要因に関連する構成成分を絞り込む。したがって、分析が粗くなるのを防止できる。そして、プロセス項目抽出ステップS3で、上記選択された構成成分に関する重み係数に基づいて、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。これにより、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因としてプロセス項目を特定できる。
【0087】
なお、「特性値」は、電気的・物理的な特性だけでなく、欠陥数を含む広い概念を意味する。欠陥検査の場合は、製造物における欠陥の座標位置を特性分布データとしても良く、製造物を特定の大きさの格子状に区画し、1つの格子内に含まれる欠陥数や欠陥面積を検査プロセスの特性値としても良い。
【0088】
また、本実施形態では、製造物80は基板であるものとし、検査プロセス装置103は製造物80の1つの基板面を測定するものとしたが、これに限られるものではない。製造物は立体的な構造を有していても良い。その場合、検査プロセス装置103は製造物の各面を測定することで、本発明を実施することができる。
【0089】
(第2実施形態)
図11は、本発明の一実施形態の要因分析装置904の構成を、生産ラインに設けられた生産装置901の構成と併せて示している。なお、図1中の構成要素と同じものについては同じ符号を付して説明を省略する。
【0090】
生産装置901は、製造プロセス装置902と検査プロセス装置103とを含んでいる。製造プロセス装置902は、図1中の製造プロセス装置102と同様に、成膜工程、露光工程、エッチング工程等をそれぞれ実行する図示しない複数種類の製造装置を含んでいる。製造物は、製造物(この例では、基板をロット単位とする。)毎に順次、それらの製造装置による処理を受ける。また、製造プロセス装置902は、図1中の製造プロセス装置102と同様に、製造データを測定するための図示しない測定装置を含んでいる。この測定装置は、製造物毎に各工程を実行する装置内の温度、圧力、投入電力量等の製造条件に関する項目(プロセス項目)のデータを測定する。製造プロセス装置902は、それらのプロセス項目毎に取得されたデータの他に、各製造物に対して処理を行った製造装置を特定する装置番号のような、複数のカテゴリで区分された項目を、ロット番号(基板番号)と対応づけて、製造データとして要因分析装置104へ送信する。
【0091】
要因分析装置904は、概略、データベース905と、演算装置906と、表示装置107と、入力装置108とを備えている。
【0092】
データベース905は、ハードウェアとしては図1中のデータベース105と同様であるが、記憶する製造データの中に、複数のカテゴリで区分された項目が含まれている点が異なっている。
【0093】
演算装置906は、この例では、構成成分抽出部906a、構成成分選択部906b、カテゴリ抽出部906c、データセット作成部906d、プロセス項目抽出部906e、および表示処理部906fを備えている。演算装置906は、概略、図1中の演算装置106と同様に、データベース905から製造データと特性分布データとを含む各種データを取得し、後述の要因分析方法を実行して、特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を特定する。演算装置906の各部906a〜906fは、CPU(中央演算処理装置)とそれを動作させるソフトウェア(コンピュータプログラム)によって構成されている。この演算装置906の各部906a〜906fの働きについては、後述の要因分析方法の説明の中で述べる。
【0094】
なお、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータに付属のハードディスクドライブに記憶させておいても良いし、または、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(コンパクトディスク(CD)やデジタル万能ディスク(DVD)など)に記録しておき、プログラム実行に際して再生装置(CDドライブやDVDドライブなど)で読み出すようにしても良い。
【0095】
図12は、上記演算装置906によって実行される要因分析方法の概略フローを示している。
【0096】
まず、構成成分抽出部906aがステップS11(構成成分抽出ステップ)、構成成分選択部106bがステップS12(構成成分選択ステップ)を、図2中のステップS1、ステップS2と同様に順次実行する。重複を避けるため、それらの詳細な説明は省略する。なお、表示処理部906fは、図1中の表示処理部106dと同様に働く。
【0097】
次に、図12中のステップS13(カテゴリ抽出ステップ)では、カテゴリ抽出部906cが、上記選択された構成成分に関する重み係数と上記カテゴリで区分された項目を含む製造データとに基づいて、上記複数のカテゴリで区分された項目(以下「質的変数」と呼ぶ。)の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としての特定の質的変数を抽出する。すなわち、質的変数を、第1実施形態のステップS3で記載した説明変数とし、第1実施形態のステップS3で記載した目的変数に対する分析を行う。この分析を、以下では「要因分析A」と記載する。この要因分析Aにより、特性分布データの構成成分を発生させている要因、もしくはその可能性の高い候補となる質的変数を抽出する。
【0098】
この要因分析Aにおける、複数の質的変数の中から特定の質的変数を抽出する方法としては、分散分析、決定木のような統計手法を使うことができる。または、質的変数の各変数におけるカテゴリ別に製造物についての重み係数の平均値をとり、各カテゴリの平均値の差がある閾値を超えるものを要因候補とするように、統計値をユーザが予め定めた閾値を基に判別する分析手法を使うこともできる。
【0099】
次に、図12中のステップS14(データセット作成ステップ)では、データセット作成部906dが、ステップS13で抽出された質的変数のカテゴリに基づいて、データセットを作成する。このデータセットは、後述するステップS15で分析に用いられるべきデータの集合である。第1実施形態の場合では全製造物の重み係数と全プロセス項目の製造データであったが、このステップS14では、第1実施形態のデータセットから絞り込みを行う。
【0100】
データセットの絞り込みには次の2種類がある。一つ目の方法は、プロセス項目の製造データをステップS13で抽出した要因となる質的変数が持っているプロセス項目の製造データに絞り込む方法である。例えば、ステップS13で特定の製造装置を抽出した場合、説明変数としては抽出した製造装置で取得できる各種プロセス項目のみが説明変数となる。二つ目の方法は、製造物の重み係数をステップS13で抽出した要因となる質的変数のカテゴリに含まれる製造物の重み係数に絞り込む方法である。例えば、ステップS13で特定の製造装置を抽出した場合、その製造装置により処理された製造物の重み係数のみで下記要因分析Bを行う。なお、これらのデータセットの絞り込みは、どちらかを用いるだけでなく、両方用いてもよい。
【0101】
次に、図12中のステップS15(プロセス項目抽出ステップ)では、プロセス項目抽出部906eが、ステップS14で作成されたデータセットを用いた分析を行う。この分析を「要因分析B」と呼ぶ。要因分析Bの手法は、第1実施形態のステップS3の手順と同じである。
【0102】
このように、各製造物における特性値の特性分布データを構成成分と重み係数で表現することにより、プロセス項目についての要因分析を行う前に、質的変数に対する要因カテゴリを抽出する分析を実施することが可能となる。これにより、要因分析Bにおいて、要因分析Aで抽出した要因カテゴリに該当する製造物のみで分析を行うことができ、特定の条件に当てはまる製造物を対象にした分析が可能となる。したがって、要因分析Bにおいてノイズを低減でき、より正確な要因分析を実施できる。もしくは、要因分析Bにおいて、要因分析Aで抽出した要因カテゴリに含まれるプロセス項目のみが説明変数となるため、要因分析Bにおいて他のカテゴリに含まれるプロセス項目による影響を考慮する必要が無くなり、分析におけるノイズを抑えることができる。以上により、特性値の分布に対するより正確な要因分析を実施することが可能となる。
【0103】
次に、図12中のステップS11〜S15における処理、特に、ステップS13,S14,S15における処理を、より具体的に説明する。
【0104】
上記ステップS11(構成成分抽出ステップ)、構成成分選択部106bがステップS12(構成成分選択ステップ)の後、ステップS13(カテゴリ抽出ステップ)では、この例では第1実施形態の図5の構成成分P2を選択し、構成成分P2に対して要因分析Aを実施する。
【0105】
この要因分析Aでは、説明変数として製造プロセス装置902に含まれる工程α,β,γ,δ,…の各装置を設定する。これにより、製造工程の装置の違いを起因とする重み係数の差異を分析し、構成成分P2の発生要因であるプロセス項目が設定されている装置を抽出することができる。ここで、質的変数の中から特定のカテゴリを抽出する方法として分散分析によるF値を比較する手法を用いた。F値の計算式は次式の通りである。F値が大きい方が装置の差の影響が大きいとされる。
【0106】
ここで、STは全製造物の残差平方和、Seは質的変数の各カテゴリに含まれる製造物の残差平方和、νTは全製造物の自由度、νeは質的変数の各カテゴリに含まれる製造物の自由度を表す。
【0107】
その結果は、例えば図13に示すように得られる。図13の横軸は工程α,β,γ,δ,…を表し、縦軸は上記工程α,β,γ,δ,…が構成成分P2の発生要因であるかどうかを評価するための指標値(これを「要因指標値d」と呼ぶ。)を表している。図13から、工程αについての要因指標値dが他の工程β,γ,δ,…のものよりも大きく、工程αが発生要因である可能性が高いことが分かる。
【0108】
この例では、製造データによると、工程αでは2つの製造装置α1,α2で製造品に対するプロセス処理が行われていた。図14は、特性分布データX1,X2,X3,…に対してステップS12で選択された構成成分P2がもつ重み係数を、装置α1,α2毎に、プロットして示している。図14から分かるように、装置α1で処理された製造物の重み係数のばらつきが装置α2のものよりも大きいことが分かる(重み係数のばらつきの範囲を1201で示す。)。そこで、この例では、上記構成成分P2の発生要因として工程α及び装置α1を抽出する。
【0109】
次に、ステップS14(データセット作成ステップ)では、データベース905に記憶されている製造データ、検査データのうち、上記ステップS13で抽出された装置α1で処理された製造物の重み係数に絞り、かつ、工程αのプロセス項目の製造データに絞り込んで、次のステップS15で分析に用いられるべきデータセットを作成する。
【0110】
この例では、特性分布データX1,X2,X3,…に対して上記選択された構成成分P2がもつ重み係数s12,s22,…,sm2に絞り、かつ、工程αのプロセス項目の製造データに絞り込んで、上記データセットを作成する。
【0111】
次に、ステップS15(プロセス項目抽出ステップ)では、ステップS14で作成されたデータセットを用いて要因分析Bを実施する。これにより、第1実施形態におけるのと同様に、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データX1,X2,X3,…における変動発生要因としてのプロセス項目を抽出する。
【0112】
この例では、第1実施形態におけるのと同様に、上記構成成分P2の発生要因としてプロセス項目152(図9参照)を抽出した。このとき、ステップS14で分析対象のデータセットを絞り込んでいるので、変動発生要因としてのプロセス項目を効率的に判別することができる。
【0113】
図15は、ステップS14で作成されたデータセットを用いて、図10におけるのと同様に、上記抽出されたプロセス項目152の製造データと、重み係数s12,s22,…,sm2との間の関係を、製造品毎にプロットして示している。図10におけるのと同様に、重み係数si2が閾値6を超えているものを不良品であるとした場合、図15から分かるように、プロセス項目152の製造データが大きいと、不良品が多く発生していることが分かる(不良品が多く発生している範囲を1301で示す。)。この図15では、ステップS14で分析対象のデータセットを絞り込んでいるので、図10では存在したプロセス項目の製造データが小さい領域に現れていたノイズが存在しなくなっている。したがって、より正確な要因分析を行うことができたことが分かる。
【0114】
本実施形態では、質的変数のカテゴリを抽出し、そのカテゴリに含まれるプロセス項目の中から製造物の特性値に影響を与えるプロセス項目を抽出しているが、それに代えて、プロセス項目を抽出してからそのプロセス項目を含む質的変数の中から上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出してもよい。プロセス項目のデータ数が質的変数のデータ数より多い場合、先に質的変数のカテゴリを抽出しそのカテゴリに含まれるプロセス項目の中から要因となるプロセス項目を抽出するのが望ましい。一方、プロセス項目のデータ数が質的変数のデータ数より少ない場合は、先にプロセス項目を抽出しそのプロセス項目を含む質的変数の中から要因となる質的変数のカテゴリを抽出するのが望ましい。そのようにした場合、要因分析および分析結果の判断に必要な時間の短縮となり、効率よく要因分析を行うことができる。
【0115】
以上に説明したとおり、本実施形態によれば、製品の特性や歩留りに影響を与える特性値の分布パターンの発生要因となっている質的変数を抽出し、抽出した質的変数のカテゴリに基づいて元のデータセットを絞り込んで要因分析を行うことができる。これにより、より正確な要因分析を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、電子デバイス、電子機器、機械、鉄鋼、金属など、複数のプロセス項目を含む製造プロセスによって製造品に処理を施す分野で、空間的な広がりをもつ製造物について特性値の分布の変動発生要因を分析するのに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0117】
101,901 生産装置
102,902 製造プロセス装置
103 検査プロセス装置
104,904 要因分析装置
105,905 データベース
106,906 演算装置
107 表示装置
108 入力装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析方法であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出ステップと、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択ステップと、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出ステップと、
を有する要因分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記製造物の上記部位は、上記製造物の座標点、または上記製造物を格子状に区画して設定された格子点若しくは矩形領域であることを特徴とする要因分析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記複数の構成成分は統計的に互いに独立していることを特徴とする要因分析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記パターン分類手法は、上記複数の製造物の特性分布データを重ね合わせ、その重ね合わされた特性分布データにおける特性値の分布の偏りを上記構成成分として分類するクラスタリング手法であることを特徴とする要因分析方法。
【請求項5】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記構成成分選択ステップでは、上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出し、上記分析対象とすべき構成成分として、上記成分指標値が最も大きい構成成分、又は上記成分指標値が最も小さい構成成分を選択することを特徴とする要因分析方法。
【請求項6】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記プロセス項目抽出ステップでは、
上記複数の製造物の特性分布データのうち、上記選択された構成成分の重み係数が予め定められた閾値を超えている製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データとして分類する一方、上記選択された構成成分の重み係数が上記閾値以下である製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとして分類し、
上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データと上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとの間で上記製造データの傾向が異なるプロセス項目を、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目として抽出することを特徴とする要因分析方法。
【請求項7】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記プロセス項目抽出ステップの前に、上記重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有し、
上記プロセス項目抽出ステップでは、上記抽出された質的変数のカテゴリに含まれるプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出することを特徴とする要因分析方法。
【請求項8】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記プロセス項目抽出ステップの後、さらに、
上記抽出されたプロセス項目を含む質的変数の中から、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有することを特徴とする要因分析方法。
【請求項9】
複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択部と、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出部と、
を備えた要因分析装置。
【請求項10】
請求項1から8に記載の要因分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す構成成分を複数抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出する成分指標値算出部と、
上記構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する上記成分指標値とを、所定の表示画面に表示する処理を行う表示処理部と、
を備えた要因分析装置。
【請求項12】
請求項11に記載の要因分析装置において、
上記構成成分を表す画像は、上記製造物の空間的な広がりに対応する表示空間で、上記構成成分のパターンおよび値に応じた図形要素を配して構成されていることを特徴とする要因分析装置。
【請求項1】
複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析方法であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出ステップと、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択ステップと、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出ステップと、
を有する要因分析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記製造物の上記部位は、上記製造物の座標点、または上記製造物を格子状に区画して設定された格子点若しくは矩形領域であることを特徴とする要因分析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記複数の構成成分は統計的に互いに独立していることを特徴とする要因分析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記パターン分類手法は、上記複数の製造物の特性分布データを重ね合わせ、その重ね合わされた特性分布データにおける特性値の分布の偏りを上記構成成分として分類するクラスタリング手法であることを特徴とする要因分析方法。
【請求項5】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記構成成分選択ステップでは、上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出し、上記分析対象とすべき構成成分として、上記成分指標値が最も大きい構成成分、又は上記成分指標値が最も小さい構成成分を選択することを特徴とする要因分析方法。
【請求項6】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記プロセス項目抽出ステップでは、
上記複数の製造物の特性分布データのうち、上記選択された構成成分の重み係数が予め定められた閾値を超えている製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データとして分類する一方、上記選択された構成成分の重み係数が上記閾値以下である製造物の特性分布データを、上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとして分類し、
上記選択された構成成分の影響を受けている製造物の特性分布データと上記選択された構成成分の影響を受けていない製造物の特性分布データとの間で上記製造データの傾向が異なるプロセス項目を、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目として抽出することを特徴とする要因分析方法。
【請求項7】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記プロセス項目抽出ステップの前に、上記重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有し、
上記プロセス項目抽出ステップでは、上記抽出された質的変数のカテゴリに含まれるプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出することを特徴とする要因分析方法。
【請求項8】
請求項1に記載の要因分析方法において、
上記プロセス項目抽出ステップの後、さらに、
上記抽出されたプロセス項目を含む質的変数の中から、上記製造物の特性値に影響を与える質的変数のカテゴリを抽出するカテゴリ抽出ステップを有することを特徴とする要因分析方法。
【請求項9】
複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す複数の構成成分を抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記算出された重み係数に基づいてまたは入力指示に応じて、上記複数の構成成分のうち分析対象とすべき構成成分を少なくとも一つ選択する構成成分選択部と、
上記選択された構成成分に関する重み係数と上記プロセス項目毎に取得された上記製造データとに基づいて、上記複数のプロセス項目の中から、上記特性分布データにおける変動発生要因としてのプロセス項目を抽出するプロセス項目抽出部と、
を備えた要因分析装置。
【請求項10】
請求項1から8に記載の要因分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
複数のプロセス項目を含む製造プロセスにより処理された空間的な広がりをもつ製造物について、上記プロセス項目毎に製造条件を表す製造データを取得するとともに、上記製造物の部位毎に特性値を計測して上記製造物上の上記特性値の分布を表す特性分布データを取得し、上記特性分布データにおける変動発生要因を分析する要因分析装置であって、
複数の製造物の特性分布データに基づいて、パターン分類手法によって、上記特性分布データにおける変動の特徴を表す構成成分を複数抽出するとともに、上記特性分布データの各々に対して、上記複数の構成成分がその特性分布データを表すのに寄与する重み係数をそれぞれ算出する構成成分抽出部と、
上記複数の構成成分のそれぞれについて、上記重み係数に基づいて上記構成成分を評価するための成分指標値を算出する成分指標値算出部と、
上記構成成分を表す画像と、上記構成成分に対応する上記成分指標値とを、所定の表示画面に表示する処理を行う表示処理部と、
を備えた要因分析装置。
【請求項12】
請求項11に記載の要因分析装置において、
上記構成成分を表す画像は、上記製造物の空間的な広がりに対応する表示空間で、上記構成成分のパターンおよび値に応じた図形要素を配して構成されていることを特徴とする要因分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【公開番号】特開2012−63928(P2012−63928A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206990(P2010−206990)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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