説明

視覚障害者用点字タイル

【課題】 型枠使用などの煩雑な作業を要せず短時間に寸法安定性よく強固に敷設面に貼り付けた点字タイルの提供。
【解決手段】 少なくともアクリル系モノマー、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートから選ばれた多官能モノマー及び重合体成分を含むアクリルシロップの硬化性混合物を硬化させた複数突起を持つ樹脂製シートからなる点字タイルを、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物で接着する方法で敷設面に接着された点字タイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者用点字タイルおよびその敷設方法に関する。さらに詳しくは、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる視覚障害者用点字タイルが敷設面に接着されている点字タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
路上、各種通路、駅のプラットホームなどにおいては、視覚障害者に通路状況を知らせるために複数の各種突起を有する誘導用ブロック(点字ブロック)を用いて、誘導路が敷設されている。視覚障害者がその点字ブロックの上を歩いて、足裏の凹凸の触覚を得たり、杖の先端から伝わる凹凸感を感たりすることにより誘導や、警告の情報が伝達されるようになっている。
【0003】
点字ブロックを敷設面に設置する方法として、上面に複数の突起を突設した矩形状のコンクリートブロックを予め工場で生産して、このブロックを施工現場の敷設面に埋設する方法が知られている。この方法ではブロックを埋設するために敷設面を掘削する必要があるので、施工作業が大がかりとなって、多大の時間と経費を要するという問題がある。
【0004】
また、熱溶融性塗料を用いて、施工機により施工現場で直接敷設面に突起を突設したラインを一体状に形成する方法も提案されている。これは施工機の流出口から熱溶融性塗料を間歇的に流出させて、突起を一体形成するようにしたものである。この方法では、敷設面に突起を強固に固着させることが困難である。
【0005】
さらに施工現場で突起を形成させる他の方法として、型枠を用いて硬化性樹脂を施工面に流延し硬化させて施工面の表面に立体模様を形成させる方法が知られている(特開昭60−233264号公報、特開平3−235874号公報など)。この方法では、施工面にプライマーで型枠を貼着するなどして型枠を取り付けた後樹脂が注入されるが、型枠の取りつけや除去に熟練と時間を要するとともに、現場施工であるため寸法安定性を確保することが容易でないという特徴を有している。
【0006】
また、上面に複数の突起を突設した平面矩形状の樹脂や合成ゴム製シートを製作し、該シートを敷設面上に接着材により貼付ける方法も知られている。この方法は、施工作業を比較的に容易に行なえるという利点を有するが、従来の方法では、前記シートをアスファルトやコンクリートなどからなる敷設面に剥離しないように貼付けることが技術的に困難であるし、耐久性にも乏しいという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平3−235874号公報
【特許文献2】特開昭60−233264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、施工現場で型枠を使用するなどの煩雑で熟練を要する作業を必要とせずに、短時間の施工作業で、寸法安定性よくかつ敷設面に強固に貼り付ついた点字タイルを形成させる技術の開発を目指して鋭意研究を続けた結果本発明に到達した。
本発明は、敷設面に強固に貼り付けることができる点字タイルを提供することを目的とする。
本発明はまた、施工現場で型枠を使用することなく、寸法安定性よくかつ敷設面に強固に貼り付ついた点字タイルを形成させる方法を提供することを目的とする。
本発明は、敷設面に強固に貼り付ついた点字タイルを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、寸法安定性よくかつ敷設面に強固に貼り付けることができる、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを提供する。
本発明はさらに、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを、迅速にかつすぐれた接着信頼性をもって敷設面に接着する方法を提供する。
本発明はまた敷設面に強固に貼り付いた上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくともアクリル系モノマー、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種の多官能モノマー及び重合体成分を含むアクリルシロップであるアクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られる、上面に突設した複数の突起を有する、アクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートからなる点字タイルを、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を用いて敷設面に接着する方法で敷設面に接着されている点字タイル。
【0011】
前記樹脂製シートが、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られるものである、前記点字タイルは好ましい態様である。
【0012】
樹脂製シートが、熱可塑性アクリル樹脂を成形して得られるものである、前記点字タイルは好ましい態様である。
【0013】
本発明により、上面に突設した複数の突起を有する、アクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートからなる点字タイルを、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を用いて敷設面に接着されている点字タイルが提供される。
【0014】
前記アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物が、少なくともアクリル系モノマー、多官能モノマー及び重合体成分を含むアクリルシロップである、前記点字タイルは、本発明の好ましい態様である。
【0015】
前記多官能モノマーが、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーである前記点字タイルは、本発明の好ましい態様である。
【0016】
前記分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーが、アクリルシロップに含まれるアクリルモノマーまたはビニルモノマーの総量のうち0.2〜15重量%である前記点字タイルは、本発明の好ましい態様である。
【0017】
前記硬化性混合物が、さらに骨材及び充填材を含むものである前記した点字タイルは、本発明の好ましい態様である。
【0018】
前記樹脂製シートが、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物の注型成形によって成形されている前記点字タイルは、本発明の好ましい態様である。
【0019】
前記接着に使用する硬化性混合物がアクリルシロップである、前記した点字タイルは本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、短時間の施工作業で、寸法安定性よくかつ敷設面に強固に貼り付けることができる、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルが提供される。
本発明の上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルによって、敷設面に強固に貼り付いた点字タイルを提供することができる。
本発明によって、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを敷設面に強固に接着する方法が提供される。
【0021】
本発明の点字タイルを敷設面に接着する方法は、施工現場で型枠の使用など煩雑な作業を必要としないので、従来公知の方法に比して簡便な作業によって点字タイルの敷設を可能とする方法である。
本発明の点字タイルを敷設面に接着する方法はまた、幅広い温度領域で実施することができる方法であるので、屋外の敷設を可能とする方法である。
さらに本発明の点字タイルを敷設面に接着する方法は、迅速に、かつすぐれた接着信頼性をもって接着を達成することができるので、車道上の敷設をも可能とする方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、上面に突設した複数の突起を有する、アクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートからなる点字タイルを提供する。また、本発明は、敷設面に強固に貼り付いた上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを提供する。
本発明はさらに、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを、迅速にかつすぐれた接着信頼性をもって敷設面に接着する方法を提供する。
【0023】
まず本発明の点字タイルについて説明する。
本発明の上面に突設した複数の突起を有する、アクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートからなる点字タイルは、予め成形された樹脂製シートであるので、施工現場で型枠を使用するなどの煩雑な作業を必要とすることなく点字タイルの敷設を可能とするものである。
【0024】
アクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートとは、アクリル系樹脂が主たる成分として含まれている樹脂製シートをいう。該樹脂製シートに、骨材、充填材およびその他の添加剤などが含まれていてもよい。
【0025】
アクリル系樹脂とは、アクリル系モノマーを用いて得られる樹脂をいう。アクリル系樹脂の例として、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られる樹脂やポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル系モノマーの熱可塑性樹脂である熱可塑性アクリル系樹脂を挙げることができる。
【0026】
アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られる樹脂の例としてアクリル系モノマーおよび多官能性モノマーを含む硬化性混合物を硬化剤によって硬化させて得られる樹脂を挙げることができる。硬化性混合物には、充填材、骨材およびその他の添加剤を混合してもよく、これらを存在させることにより、これらを含有するアクリル系樹脂を含む硬化物を得ることができる。
【0027】
上記したアクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物として、さらにアクリル系モノマーの単独重合体もしくは共重合体のプレポリマーまたはポリマーを重合体成分として含有させた、いわゆるアクリルシロップを用いることもできる。
【0028】
アクリルシロップ中の重合体成分は、シロップの粘度を調節する働きをするが、粘度調節の機能を果たすものであれば、アクリル系モノマーの単独重合体もしくは共重合体以外の重合体成分を用いることもできる。アクリルシロップ中の重合体成分の量は、モノマー及び重合体成分の総量に対して10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%程度が望ましく、アクリルシロップの粘度が所望の値となるよう選択することができる。
【0029】
アクリルシロップを調製するために重合体成分を含有させる方法としては、例えば、アクリル系モノマーを主体とする不飽和モノマーを部分的に重合する方法、アクリル系モノマーの単独重合体または共重合体などの高分子成分を硬化性混合物に溶解させる方法などが挙げられる。
【0030】
硬化性混合物をアクリルシロップとすることにより、取り扱いが容易な粘度とすることができる。また、硬化性混合物の成分を溶解させたり、粘度を調節する目的でベンゼン、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いることができる。硬化性混合物の粘度は、10〜1000Pa・s程度が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0031】
アクリル系モノマーとしては、アクリル酸エステルなどのアクリレート系モノマーまたはメタクリル酸エステルなどのメタクリル系モノマーが好ましい。具体的には、アクリレート系モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレートなどを、またメタクリレート系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどを挙げることができる。中でもメタクリル酸エステルが好ましく、特には、メチルメタクリレートが好ましい。
また、アクリル系モノマーのほかに、それと共重合可能な他の単量体を存在させてもよい。
【0032】
多官能モノマーの例として、分子内に2個以上の二重結合を有するモノマーを挙げることができる。好ましくは分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーを挙げることができる。具体的には、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
【0033】
多官能モノマーは、架橋剤として硬化物を架橋構造にする働きをし、その量と種類を選択することによって得られる点字タイルの圧縮強度、破断伸度などの物性を調節することができる。硬化性混合物中の多官能モノマーの量は、混合物中のモノマー総量に対して、0.2〜15重量%、好ましくは1〜5重量%であることが望ましい。なお、架橋剤の量が多くなると、得られる硬化物の耐溶剤性が増す結果、接着材による接着力を低下させる傾向があるので、この点にも留意して多官能モノマーの量を選択するのが望ましい。
【0034】
アクリルシロップ成分にあって、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーを、アクリルシロップに含まれるアクリルモノマーまたはビニルモノマーの総量のうち0.2〜15重量%とすることは、本発明の好ましい態様である。
【0035】
硬化剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物等の重合開始剤、あるいは重合開始剤と促進剤の組合せになるレドックス重合触媒などが挙げられる。重合触媒として重合開始剤のみを使用する場合には、硬化性混合物を加熱して硬化させることができる。また、レドックス重合触媒を使用する場合には、室温、または室温付近の温度でも硬化させるができる。
【0036】
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ジカプリルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジステアロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0037】
アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0038】
レドックス重合触媒としては、例えば、前記の有機過酸化物と、第3級アミン、第一鉄塩、メルカプタン、ナフテン酸塩等との組合せ、あるいは過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組合せなどを挙げることができるが、特に有機過酸化物と第3級アミンとの組合せが好ましい。
【0039】
前記第3級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−m−トルイジン、N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等を挙げることができる。
【0040】
レドックス重合触媒を使用するときには、あらかじめ促進剤である第3級アミンなどを硬化性混合物に添加しておき、該混合物と骨材、充填材などを混練する直前に過酸化物等の重合開始剤を加えることによって硬化を開始させることができる。また、重合開始剤を予め硬化性混合物に添加しておき、骨材との混練り直前に促進剤を加える方法や、混練り直前に重合開始剤と促進剤とを加える方法を採用してもよい。
【0041】
レドックス系触媒を用いてこのような混合方法を採用すると、硬化性混合物を骨材、充填材などと混練する直前に開始され、硬化が室温付近で進行するので、所望の形状の点字タイルを容易に成形することができる。レドックス重合触媒は好適に使用できる硬化剤の例である。
【0042】
硬化剤の使用量は、重合開始剤を単独で用いる場合は硬化性混合物に対して0.1〜10容量%程度の割合が好ましく、レドックス重合触媒を用いる場合は、前記の重合開始剤の使用割合にさらに促進剤を0.1〜5容量%程度の割合が好ましい。
【0043】
本発明の硬化性混合物に骨材を混合すると、成形した点字タイルの収縮の低減し、強度を向上させることができる。骨材の平均粒径は、通常0.5〜3mm程度ものが好ましい。具体例としては、珪砂、ガーネット、エメリーなどの硬質骨材、クロム鉱屑、粉砕したセラミックスなどを挙げることができる。中でも、色調や耐磨耗性など物性の面で白色セラミックスが好ましく使用することができる。
【0044】
本発明の硬化性混合物に充填材を混合すると、樹脂と骨材の分離を防止する働きをする。その結果、得られるタイルの表面の傷、磨耗、変形を減少させることができるので、硬化性混合物に一定量の充填材を混合することが好ましい。充填材としては、平均粒径が0.01〜50μm、好ましくは0.5〜5μmのものが好ましく使用することができる。
充填材の好ましい具体例として、重質炭酸カルシウム、タルク、アルミナ粉、ベントナイト、微紛シリカ、クレーおよびカオリンなどのカオリナイト質粘土、マイカ、ウォラストナイト、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、セビオライトなどを挙げることができる。中でもカオリナイト質粘土は、樹脂と骨材の分離を抑制効果と粘度上昇のバランスの点で、好ましい充填材である。
充填材は、有機物への分散性を向上させる目的で、有機酸、シランカップリング剤などのカップリング剤などで表面を処理して使用してもよい。
【0045】
本発明の硬化性混合物には、骨材および充填材を混合することが好ましい。骨材および充填材は、硬化性混合物全体に対して容量でそれぞれ、30〜60%および1〜10%、好ましくは35〜50%および2〜8%の割合で使用するのが好ましい。骨材および充填材がこの範囲にあると、樹脂と骨材が分離して不均一となり、物性上好ましくない結果を生じることを防ぐことができる。
【0046】
点字タイルの色は任意に選択することができる。点字タイルの着色のために、顔料や染料などの任意の着色剤を使用することができる。顔料としては、シアニンブルーのような有機顔料も、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料も使用することができ、その添加量は、硬化性混合物に対して、5重量%以下程度、より好ましくは4〜1重量%程度とすることが望ましい。
【0047】
顔料を使用するとき、上記した白色セラミックスを骨材とすると、調色への影響が少なく使いやすいので、白色セラミックスを骨材とし、着色剤を顔料とする組合せは好ましい態様の一つである。
【0048】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて消泡剤、レベリング改良剤、粘性調製剤、安定剤、可塑剤、パラフィンワックスなどの他の添加剤を添加することができる。
【0049】
アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られるアクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートは、従来公知の成形法で所望の形状に成形することによって得ることができる。例えば硬化性混合物に硬化剤を加えて、硬化するまでに型枠へ流し込み、注型成形によって成形する方法を好ましい方法として挙げることができる。樹脂製シートの大きさ、厚さなどは敷設する環境、目的などの要請に応じて適宜選択することができる。
【0050】
本発明の点字タイルは、実用環境に耐えるために、一定以上の圧縮強度と適度な伸びを有していることが望まれる。圧縮強度としては、少なくとも10N/mm以上、好ましくは15〜50N/mm、より好ましくは30〜50N/mmの範囲であることが望ましい。
【0051】
また伸びは、硬化性混合物のみを硬化させた樹脂について測定した物性として、破断伸度(JIS)が20%以上、好ましくは50〜400%、より好ましくは50〜200%であることが望ましい。
【0052】
本発明により、好適な圧縮強度(常温時、60℃時)と破断伸度のバランスを有する点字タイルを提供することができるが、好ましい圧縮強度および破断伸度は、硬化性混合物のアクリル系モノマー、多官能モノマーの種類と量、および必要によって配合する添加剤の種類や量により調整することができる。
【0053】
アクリル系樹脂の他の例として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル系モノマーの熱可塑性樹脂である熱可塑性アクリル系樹脂を挙げることができる。熱可塑性アクリル系樹脂を、成形することによってアクリル系樹脂成形体にすることができる。成形に際しては、充填材、骨材およびその他の添加剤を、混合して成形体とすることが好ましい。成形方法としては、射出成形やプレスなど従来公知の方法から適宜選択することができるが、中でもプレス成形が好ましい。
【0054】
プレス成形によって成形する際は、熱可塑性アクリル系樹脂のパウダーと充填材、骨材などをドライブレンドしそのまま成形してもいいし、バンバリーミキサー、ロールミキサーなどで予備混合したのち成形してもよい。熱可塑性アクリル系樹脂は、市販のものから適宜選択して使用してもよい。
【0055】
本発明の樹脂製シートの上面には、複数の突起が突設されている。突起の形状は、円柱状、半球状、裁頭円錐形状、平面視正方形または長方形の四角柱状または裁頭四角錐形状など任意形状とすることができる。樹脂製シートの上面にこのような突起を突設させることにより好適な点字タイルとなる。
【0056】
次に、前記した本発明の上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを敷設面に接着する方法について説明する。
【0057】
敷設面とは、本発明の点字タイルが敷設される道路、各種通路、駅のプラットホームなどの外面であって、通常コンクリート、テラゾー、アスファルトなどによって構成されている。
【0058】
本発明の点字タイルを、敷設面に接着するための好ましい接着材としては、上記したアクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を挙げることがてきる。該硬化性混合物としては、上記したアクリルシロップとすることが特に好ましい。
【0059】
本発明者らは、本発明のアクリル樹脂を含むコンパウンドから形成される上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを、敷設面に接着するための接着材としてアクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物、好ましくはアクリルシロップを用いると、強固に接着させることができることを見出した。
【0060】
接着材に用いる硬化性混合物には、必要に応じて骨材、充填材および他の添加剤などを配合して調製する。アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物の粘度は50〜1000mPa・S程度が適当である。アクリルシロップに充填材などを適量添加して糊状とすると、一定厚みを塗りつけることが容易になるので、作業性に合せて粘度を適宜選択することができる。
【0061】
接着材に用いるアクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物に配合しうる骨材、充填材および他の添加剤としては、前記例示から適宜選択することができるし、他のものを採用することもできる。
【0062】
アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物には、硬化剤を配合し硬化させる。硬化のメカニズムはタイルについて上記で説明した硬化と同様である。アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物で点字タイルを接着する作業は通常現場で行われるので、この場合硬化剤は現場で配合して硬化させるのが好ましい。
【0063】
本発明の点字タイルが、該硬化性混合物によって敷設面に強固に接着されるという優れた効果が得られる。その理由は、接着材とタイルが同質のため、相溶性に富むので、接着材に触れたタイルの部分の表層に接着材が一部膨潤浸透または相溶化しその後硬化するために一体化し強固に接着しているものと推定される。
【0064】
本発明によれば、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを、敷設面に接着する作業を、幅広い温度領域で実施することができる。点字タイルを適用する場所としては、歩道や車道などの路上、各種通路、駅のプラットホームなど幅広く選択することができる。
【0065】
点字タイルを、敷設面に接着する際、適用場所および季節によって、環境が大きく異なる。例えば、道路表面は夏場においては60〜70℃まで上昇することがあるし、冬場では氷点下に下がることがある。本発明はこのような広い環境に適用できる点字タイルおよび接着方法を提供するので、特に屋外における敷設作業が可能となる。さらに、オールシーズン施工が可能となる。
【0066】
本発明の点字タイルの接着に用いる接着材は速硬化性である。そのため、作業を効率的に行なうことができ、道路上の敷設作業にあっては作業に伴う交通遮断時間を最小限にすることができる。
【0067】
次に本発明の点字タイルを敷設面に接着する作業について説明する。接着材としては、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物の好ましい態様であるアクリルシロップを用いて説明する。
【0068】
通常コンクリート、テラゾー、アスファルト等の敷設面は平坦ではなく凹凸があるので、下地調整材で下地を平坦に調整する作業が行われる。下地調整材は、金コテやヘラを用いて敷設面が平坦になるように薄く塗りつけられる。下地調整材としては、通常常用されている下地調整材を使用することができるが、本発明の接着材であるアクリルシロップまたはそれに骨材や充填材を配合した樹脂モルタルを下地調整材とて使用してもよい。
【0069】
下地調整材が乾燥または硬化した後、アクリルシロップを接着材として下地面にローラー、糊ヘラなどを用いて塗りつける。接着材に用いるアクリルシロップの粘度は前記したように50〜1000mPa・S程度であると、糊状となって一定厚みを塗りつけることが容易になる。アクリルシロップには、前記したように塗布前に硬化剤または硬化促進剤を混合してから塗布作業を行うのが好ましい。
【0070】
接着材の塗布量は、下地の凹凸により適量が変わってくるが、まんべんなく接着界面に行き渡らせ、余分の接着材がはみ出させないという観点から、通常200〜2000g/m程度、好ましくは400〜1500g/m、より好ましくは400〜800g/mであることが望ましい。
【0071】
接着材を塗布した後、接着材面に点字タイルを所定の位置に載置し、接着材の硬化によって、接着が完了する。その際、点字タイルを載置後、ローラーなどによって点字タイルを押えつけことによって、より強固な接着を得ることができる。
【0072】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
1.点字タイルの成形
アクリルモノマーとしてメタクリル酸メチルを200g、メタクリル酸n−ブチルを40g、多官能アクリルモノマーとして1,4−ブタンジオールジメタクリレートを20g、アクリルポリマーとしてポリメタクリル酸メチル(商品名 デルペット 60N 旭化成(株)社製)を300g、可塑剤としてフタル酸ジ2−エチルヘキシルを50g、パラフィンワックス(融点52℃品)を3g、ジメチルパラトルイジン3gを混合し60℃に加熱攪拌しアクリルシロップAを調合した。
得られたアクリルシロップA200gに、黄色粉体顔料(三井化学産資(株)製PG−101)を20g、骨材として白色骨材(商品名 カラーセルベンホワイト3−2m/m 日本銀砂(株)製)を350g、充填材としてカオリナイト質粘土(商品名:アクティジルMAM 独国ホフマンミネラル社製、平均粒径2μm、密度2.6g/cc)を40g配合し、十分に攪拌混合して配合物Aを得た。
配合物に硬化剤として市販の50%濃度過酸化ベンゾイル粉末状希釈物を15g加え十分に攪拌溶解させ、常温にて型枠に流し込み硬化させ、上面に長方形の突起を同一方向に4本有する縦300mm×横300mで突起部の高さが5mm、幅27mm、長さ290mm(JIS T9251に準拠)の点字タイルを成形した。
【0074】
2.接着材の調製
上記のアクリルシロップA1kgに、グレー色粉体顔料(三井化学産資(株)製 PG−505 50g)、ベントナイト系充填材(三井化学産資(株)製 AV 50g)を加え十分に攪拌して均−とし接着材Aを得た。
【0075】
3.点字タイルの設置工事
通常のアスファルトコンクリートで舗装した路面上に、幅340mm 長さ3.2mの長方形の施工場所を、その周囲を粘着テープで覆うことにより設定した。
バキュームクリーナーで施工場所を清掃した後、2の接着材A1.2kgをペール缶に入れ、市販の50%濃度過酸化ベンゾイルを60g加えハンドミキサーにて十分に攪拌し溶解させた。ただちに施工場所へ供給し、金テコにて接着材をこすりつけ、凹凸を埋めたあとに残りの接着材をくし目コテにて均一に塗り広げた。
次に上記1.で成形した点字タイルを、ただちに接着材上へ設置し、軽く押さえ込むようにして貼り付けた。続けて計10枚の点字タイルを直線的に設置した。1時間後、接着材が硬化していることを確施し粘着テープを剥がした。
【0076】
4.接着性の確認
施工した点字タイルにダイヤモンドカッターにて、タイル端部より30mm幅で5本の長さ60mmの下地アスファルトに達する切れこみを入れ、皮スキを端部から切れ込みの方向へ接着面にあて、ハンマーで衝撃を加えて引き剥がした。4箇所で引き剥がしを行なったが、いずれも下地アスファルトの表層部が破壊し剥がれが発生した。
接着材とタイルの界面に剥がれが起こることは無かった。
【0077】
(実施例2)
ポリメタクリル酸メチル(クラレ(株)製、G1000P)250gに、黄色粉体顔料(三井化学産資(株)製PG−101)20g、骨材として白色骨材(商品名 カラーセルベンホワイト3−2m/m 日本銀砂(株)製)500gをポリエチレン製袋中でドライブレンドして配合して配合物Bを得た。
金属製型枠の中に配合物Bを均一に供給し、プレス成形機にて、200℃で、4分間、50MPaの圧をかけた後冷却して、上面に長方形の突起を同一方向に4本有する縦300mm×横300mmで突起部の高さが5mm、幅27mm、長さ290mm(JIS T9251に準拠)の点字タイルを成形した。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の上面に突設した複数の突起を有するアクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートからなる点字タイルは、予め成形された樹脂製シートであるので、本発明により施工現場で型枠を使用するなどの煩雑な作業を必要とすることなく、短時間の施工作業で、寸法安定性よくかつ敷設面に強固に貼り付ついた点字タイルが提供される。
本発明により、敷設面に強固に接着した上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルが提供される。
本発明によって、上面に複数の突起を突設した樹脂製シートからなる点字タイルを敷設面に強固に接着する方法により敷設面に接着されている点字タイルが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアクリル系モノマー、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種の多官能モノマー及び重合体成分を含むアクリルシロップであるアクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られる、上面に突設した複数の突起を有する、アクリル系樹脂を含んで形成される樹脂製シートからなる点字タイルを、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を用いて接着する方法で敷設面に接着されている点字タイル。
【請求項2】
前記多官能モノマーが、アクリルシロップに含まれるアクリルモノマーまたはビニルモノマーの総量のうち0.2〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載の点字タイル。
【請求項3】
前記硬化性混合物が、さらに骨材及び充填材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の点字タイル。
【請求項4】
前記充填材が、平均粒径0.01〜50μmの無機系微粒子である請求項3に記載の点字タイル。
【請求項5】
前記骨材及び充填材が、硬化性混合物に対して容量でそれぞれ、30〜60%及び1〜10%であることを特徴とする請求項3または4に記載の点字タイル。
【請求項6】
前記樹脂製シートが、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物の注型成形によって成形されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の点字タイル。
【請求項7】
前記接着に用いる硬化性混合物が、アクリルシロップである請求項1〜6のいずれかに記載の点字タイル。
【請求項8】
前記アクリルシロップが、少なくともアクリル系モノマー、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーである多官能モノマー及び重合体成分を含むアクリルシロップである請求項7に記載の点字タイル
【請求項9】
前記多官能モノマーが、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリルモノマーまたはビニルモノマーであることを特徴とする請求項8に記載の点字タイル。
【請求項10】
前記分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーが、アクリルシロップに含まれるアクリルモノマーまたはビニルモノマーの総量のうち0.2〜15重量%であることを特徴とする請求項9に記載の点字タイル。
【請求項11】
前記硬化性混合物が、さらに骨材及び充填材を含むことを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の点字タイル。

【公開番号】特開2012−82685(P2012−82685A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8389(P2012−8389)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【分割の表示】特願2008−10971(P2008−10971)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(594139012)財団法人安全交通試験研究センター (7)
【出願人】(000175021)三井化学産資株式会社 (47)
【Fターム(参考)】