説明

覚醒時データ生成装置、覚醒時データ生成方法、覚醒時データ生成プログラム及び覚醒度判定装置

【課題】覚醒時データを簡易に生成すること。
【解決手段】覚醒時データ生成装置は、第1の算出部と、第1の推定部と、第2の算出部と、第2の推定部と、生成部とを備える。第1の算出部は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。第1の推定部は、予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の算出部により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。第2の推定部は、予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の算出部により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定する。生成部は、第1の推定部により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、第2の推定部により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒時データ生成装置、覚醒時データ生成方法、覚醒時データ生成プログラム及び覚醒度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の生体情報を用いることで、被験者に負担をかけることなく被験者の覚醒度を判定する技術がある。例えば、この技術を車両に適用することで、運転者の覚醒度を判定し、危険性を報知することができる。
【0003】
例えば、被験者の心拍信号から周波数解析によって算出される極大周波数及び極大スペクトル密度の変化を追跡することで、被験者の覚醒度を判定する従来技術がある。この従来技術では、覚醒時、つまり眠気がない状態の極大周波数及び極大スペクトル密度を示す覚醒時データを覚醒度の基準として生成する。そして、被験者の心拍信号を取得するごとに極大周波数及び極大スペクトル密度を算出し、算出した値の覚醒時データに対する変化量に基づいて、被験者の覚醒度をリアルタイムに判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/65724号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、覚醒時データを生成することが難しいという問題があった。
【0006】
例えば、従来技術では、覚醒時データを生成する過程で周波数解析を実行していた。この周波数解析には、安定した覚醒時データを生成するために数分間分の心拍信号を用いる。よって、心拍信号を検出する際に、被験者は覚醒状態を数分間持続させる必要があった。また、被験者が覚醒状態を数分間持続できない場合には、正確な覚醒時データを生成できず、覚醒度を正確に判定できなかった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、覚醒時データを簡易に生成することができる覚醒時データ生成装置、覚醒時データ生成方法、覚醒時データ生成プログラム及び覚醒度判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する技術は、一つの態様において、第1の算出部と、第1の推定部と、第2の算出部と、第2の推定部と、生成部とを備える。第1の算出部は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。第1の推定部は、予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の算出部により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。第2の算出部は、心拍信号から心拍数を算出する。第2の推定部は、予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の算出部により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定する。生成部は、第1の推定部により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、第2の推定部により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する技術の一つの態様によれば、覚醒時データを簡易に生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、検出部により検出される心拍信号の一例を示す図である。
【図3】図3は、心拍間隔を算出する処理を説明するための図である。
【図4】図4は、心拍間隔データの一例を示す図である。
【図5】図5は、呼吸性洞性不整脈について説明するための図である。
【図6】図6は、RSA値について説明するための図である。
【図7】図7は、RSA値について説明するための図である。
【図8】図8は、RSA値について説明するための図である。
【図9】図9は、呼吸性洞性不整脈の生理的メカニズムを説明するための図である。
【図10】図10は、覚醒時のRSA値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係を示す図である。
【図11】図11は、呼吸周期と心拍周期との比を算出する方法の一例を示す図である。
【図12】図12は、本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本実施例2にかかる覚醒度判定装置の構成を示す図である。
【図14】図14は、覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との相関関係を示す図である。
【図15】図15は、覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との相関関係を示す図である。
【図16】図16は、スケールの一例を示す図である。
【図17】図17は、スケールを生成する処理を説明するための図である。
【図18】図18は、算出部により生成されるスペクトル密度データの一例を示す図である。
【図19】図19は、極大周波数を時系列で表した図である。
【図20】図20は、極大スペクトル密度を時系列で表した図である。
【図21】図21は、スケールを全体的に拡張する処理を説明するための図である。
【図22】図22は、スケールを部分的に拡張する処理を説明するための図である。
【図23】図23は、本実施例2にかかる覚醒度判定装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図24】図24は、年齢ごとの基礎代謝量を示すテーブルの一例を示す図である。
【図25】図25は、年齢とRSA値との相関関係を示す図である。
【図26】図26は、年齢ごとのRSA値を示すテーブルの一例を示す図である。
【図27】図27は、本実施例1にかかる覚醒時データ生成プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する覚醒時データ生成装置、覚醒時データ生成方法、覚醒時データ生成プログラム及び覚醒度判定装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0012】
本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置の構成の一例について説明する。図1は、本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置の構成を示す図である。図1に示すように、この覚醒時データ生成装置100は、検出部110と、第1の算出部120と、第1の推定部130と、第2の算出部140と、第2の推定部150と、生成部160と、出力部170とを有する。
【0013】
検出部110は、被験者の心拍信号を検出する。例えば、検出部110は、被験者に接触する電極に対して電圧を印加し、被験者の心拍信号を各電極の電位差から取得する。なお、検出部110によって用いられる電極は、例えば、腕時計型の小型機器に埋め込まれた電極に対応する。
【0014】
図2は、検出部により検出される心拍信号の一例を示す図である。図2の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心電の強さを示す。図2に示すように、健常者の心電信号は、一般的に4つの波形を有し、時系列順にP波、QRS波、T波、U波と呼ばれる。特に、QRS波は、鋭角なピークとして検出され、ピーク開始点であるQ波、ピーク頂点であるR波、ピーク終了点であるS波を含む。P波からU波までの各波形一回分は、心拍一回分に対応する。R波から次のR波までの間隔として算出されるRRI(R-R Interval)2aは、心拍の時間間隔を示す心拍間隔に対応する。検出部110は、検出した心拍信号のデータを心拍信号データとして第1の算出部120と第2の算出部140とに出力する。
【0015】
第1の算出部120は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。そして、第1の算出部120は、算出した心拍間隔の変動値を第1の推定部130に出力する。以下では、第1の算出部120の処理を詳細に説明する。
【0016】
例えば、第1の算出部120は、検出部110により入力された心拍信号データから心拍間隔を算出する。図3は、心拍間隔を算出する処理を説明するための図である。図3の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心電の強さを示す。図3に示すように、第1の算出部120は、心拍信号の振幅が閾値以上となる振幅ピークをR波として検出する。そして、第1の算出部120は、R波を検出するごとに、検出した各R波の出現時間から心拍間隔3aを算出する。なお、振幅ピークの検出方法は、上述の方法に限定されるものではない。例えば、第1の算出部120は、心拍信号の微分係数が正から負に変わるゼロクロス点を用いる方法や、パターンマッチングを行って振幅ピークを検出する方法などを用いても良い。
【0017】
例えば、第1の算出部120は、算出した心拍間隔の時間経過による変動を示す心拍間隔データを生成する。図4は、心拍間隔データの一例を示す図である。図4の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心拍間隔を示す。図4に示すように、例えば、第1の算出部120は、算出した心拍間隔とR波の検出時間とを対応づけて心拍間隔データを生成する。
【0018】
例えば、第1の算出部120は、生成した心拍間隔データから心拍間隔の変動値を算出する。なお、第1の算出部120が算出する心拍間隔の変動値は、例えば、RSA(Respiratory Sinus Arrhythmia:呼吸性洞性不整脈)値に対応する。
【0019】
図5〜9を用いて、呼吸性洞性不整脈(RSA)及びRSA値について説明する。図5は、呼吸性洞性不整脈について説明するための図である。図5の横軸は時間の経過を示し、縦軸は心電の強さを示す。RSAは、吸気時に頻拍となり、呼気時に徐拍となる生理的な不整脈である。つまり、RSAは、図5に示すように、吸気時5aには心拍間隔が短縮して心拍間隔5bとなり、呼気時5cには心拍間隔が延長して心拍間隔5dとなる心拍間隔の変動として検出される。心拍間隔5dと心拍間隔5bとの差分はRSA値を示し、RSAの程度を定量的に評価する指標となる。
【0020】
RSA値は、覚醒時と非覚醒時とで変化することが知られている。図6〜8は、RSA値について説明するための図である。図6〜8の横軸は時間の経過[sec]*4を示し、縦軸は心拍間隔[sec]を示す。図6は、眠気がない状態、つまり覚醒時の心拍間隔データの一例を示し、図7は、眠気が強くなった状態、つまり非覚醒時の心拍間隔データの一例を示す。図8は、図6に示した波形6aの拡大図を示す。各波形のピーク値は呼気時の心拍間隔に対応し、最小値は吸気時の心拍間隔に対応する。つまり、各波形の振幅8aは、RSA値に対応する。また、各波形の波長8bは、一回の呼吸周期に対応する。図6及び図7に示すように、被験者の状態が覚醒状態から非覚醒状態に変化すると、各波形のRSA値は大きくなる。
【0021】
RSA値が変化するのは、非特許文献(生体リズムの加齢変化、早野順一郎、95CLINICIAN、94No.429)などに開示されているように、種々の生理的メカニズムによる制御を受けるからである。図9は、呼吸性洞性不整脈の生理的メカニズムを説明するための図である。図9に示すように、RSA9aは、心臓迷走神経活動9bの活動レベルに応じて現れる。心臓迷走神経活動9bの活動レベルは、呼吸中枢からの干渉9cと、圧受容体及び化学受容体反射による興奮性刺激9dと、中枢性迷走神経興奮性刺激9eとの3種類の制御を受ける。このうち、呼吸中枢からの干渉9cは、吸気時の抑制性刺激と呼気時の興奮性刺激とを含む。覚醒時には、RSA9aは、圧受容体及び化学受容体反射による興奮性刺激9d及び中枢性迷走神経興奮性刺激9eによる制御を受けにくく、呼吸中枢からの干渉9cの制御のみを強く受ける。
【0022】
発明者は、呼吸によるRRIの変動、つまり心拍間隔の変動値(RSA)は、被験者の覚醒度の影響を受けることに着目した。少なくとも1呼吸分の心拍信号を取得できる場合に、覚醒状態の影響を強く受ける心拍間隔の変動値を算出することが可能となる。そして、心拍間隔の変動値を用い、後述の方式により覚醒時のデータを生成することが可能となる。心拍間隔の変動値から生成した覚醒時のデータは、従来の方式で同程度の時間(1呼吸程度)の心拍データから生成した覚醒時データと比較して、安定な覚醒時データとなる。つまりは、短時間で生成した覚醒時データであっても、覚醒時の被験者の状態を高い確度で推定できると考えられる。
【0023】
図6に示すように、第1の算出部120は、例えば、覚醒時の心拍間隔データからRSA値を算出する。例えば、第1の算出部120は、心拍間隔データの微分係数が負から正に変わるゼロクロス点の心拍間隔を最小値として取得し、微分係数が正から負に変わるゼロクロス点の心拍間隔をピーク値として取得する。そして、第1の算出部120は、ピーク値を取得するごとに、取得したピーク値と直前に取得した最小値との差分をRSA値として算出する。なお、RSA値の算出方法は、上述の方法に限定されるものではない。例えば、パターンマッチングを行って各波形を検出し、検出した波形の振幅を算出する方法を用いても良い。
【0024】
図1の説明に戻る。第1の推定部130は、予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、第1の算出部120により算出された変動値から、被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。例えば、第1の推定部130は、覚醒時のRSA値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係を用いて、覚醒時のRSA値から覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。
【0025】
ここで、第1の推定部130が用いる相関関係について説明する。図10は、覚醒時のRSA値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係を示す図である。図10の横軸は覚醒時の極大スペクトル密度[V/Hz]を示し、縦軸は覚醒時のRSA値[msec]を示す。図10に示すように、各被験者の覚醒時のRSA値と覚醒時の極大スペクトル密度とを実際に測定し、測定結果をプロットすると、回帰直線が得られる。なお、相関関係を表す回帰直線を事前に生成するためには、覚醒状態の被験者複数人に対して、心拍信号を取得し、取得した心拍信号からRSA値と極大スペクトル密度を算出することとなる。また、この回帰直線は、PSDを極大スペクトル密度とし、RSAをRSA値とすると、
【数1】

によって表される。
【0026】
例えば、第1の推定部130は、被験者の覚醒時のRSA値を第1の算出部120から取得する。そして、第1の推定部130は、取得した覚醒時のRSA値を上記の式(1)に代入することで、覚醒時の極大スペクトル密度を算出する。
【0027】
第2の算出部140は、被験者の心拍信号から心拍数を算出する。例えば、第2の算出部140は、検出部110により入力された心拍信号データから心拍間隔を算出する。第2の算出部140が心拍間隔を算出する処理は、第1の算出部120が心拍間隔を算出する処理と同様であるので、説明を省略する。第2の算出部140は、算出した心拍間隔の逆数をとり、1分当りの数値に換算することで、心拍数[回/min]を算出する。そして、第2の算出部140は、算出した心拍数を第2の推定部150に出力する。
【0028】
第2の推定部150は、予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、第2の算出部140により算出された心拍数から、被験者の覚醒時の極大周波数を推定する。例えば、第2の推定部150は、心拍数と呼吸数との相関関係に基づいて、覚醒時の心拍数から覚醒時の呼吸数を算出する。そして、第2の推定部150は、呼吸数から求まる呼吸周期が極大周波数に対応することを利用して、覚醒時の呼吸数から覚醒時の極大周波数を算出する。なお、極大周波数は、例えば、図6に示した心拍間隔データを周波数解析することで得られる極大点の周波数である。つまり、極大周波数は、図6に示した各波形の波長の平均値、すなわち呼吸周期に対応する。
【0029】
ここで、第2の推定部150が用いる心拍数と呼吸数との相関関係について説明する。この相関関係は、Bnを呼吸数[回/min]とし、HRを心拍数[回/min]とすると、
【数2】

によって表される。なお、「C」は定数であり、心拍間隔データにおける呼吸周期と心拍周期との比に対応する。図11は、呼吸周期と心拍周期との比を算出する方法の一例を示す図である。図11の横軸は時間の経過[sec]*4を示し、縦軸は心拍間隔[sec]を示す。図11に示すように、呼吸周期は、各波形の波長11aの平均値に対応し、複数の被験者のデータを用いて算出された平均値は約7[sec]*4、つまり約1.8[sec]である。心拍周期は、基線11bに示した心拍間隔の平均値に対応し、複数の被験者のデータを用いて算出された平均値は約0.55[sec]である。つまり、式(2)の定数Cは、呼吸周期を心拍周期で除算することで、約3.3と算出される。なお、定数Cについては、この例示に限るものではなく、覚醒時データ生成装置100を利用する者が任意の値に設定して良い。例えば、成人の平均的な呼吸数は16〜18[回/min]であり、平均的な心拍数は60〜70[回/min]である。このため、定数Cは、約3〜4の範囲内で被験者に応じた任意の値に設定して良い。
【0030】
例えば、第2の推定部150は、第2の算出部140により算出された心拍数を上記の式(2)に代入することで、覚醒時の呼吸数を算出する。そして、第2の推定部150は、覚醒時の呼吸数を下記の式(3)に代入することで、覚醒時の極大周波数を算出する。
【数3】

なお、式(3)のFは覚醒時の極大周波数を示す。
【0031】
生成部160は、第1の推定部130により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、第2の推定部150により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する。例えば、生成部160は、覚醒時の極大スペクトル密度を第1の推定部130から取得し、覚醒時の極大周波数を第2の推定部150から取得する。そして、生成部160は、取得した覚醒時の極大スペクトル密度及び覚醒時の極大周波数を含む覚醒時データを生成する。この覚醒時データは、被験者の覚醒度を判定する際に基準となるデータである。
【0032】
出力部170は、生成部160により生成された覚醒時データを出力する。出力部170は、例えば、インターフェース装置である。例えば、出力部170は、生成部160により生成された覚醒時データを外部装置に送信する。
【0033】
次に、本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置100の処理手順について説明する。図12は、本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置の処理手順を示すフローチャートである。図12に示す処理は、例えば、覚醒時データ生成装置100が利用者からの処理開始命令を受け付けたことを契機として実行される。
【0034】
図12に示すように、処理タイミングになると(ステップS101,Yes)、検出部110は、被験者の心拍信号を検出する(ステップS102)。第1の算出部120は、被験者の心拍信号から心拍間隔を算出する(ステップS103)。ここで、検出部110は、覚醒時データ作成のために、少なくとも1呼吸程度の時間にわたって、心拍信号を取得するとともに、第1の算出部120は、検出部110が少なくとも1呼吸程度にわたって取得した心拍信号から心拍間隔を算出する。さらに第1の算出部120は、心拍間隔の変動値を算出する(ステップS104)。
【0035】
第1の推定部130は、第1の算出部120により算出された変動値から覚醒時の極大スペクトル密度を推定する(ステップS105)。例えば、第1の推定部130は、覚醒時のRSA値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係を用いて、覚醒時のRSA値から覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。
【0036】
第2の算出部140は、被験者の心拍信号から心拍数を算出する(ステップS106)。第2の推定部150は、第2の算出部140により算出された心拍数から覚醒時の極大周波数を推定する(ステップS107)。例えば、第2の推定部150は、心拍数と呼吸数との相関関係に基づいて、覚醒時の心拍数から覚醒時の呼吸数を算出する。そして、第2の推定部150は、呼吸数から求まる呼吸周期が極大周波数に対応することを利用して、覚醒時の呼吸数から覚醒時の極大周波数を算出する。
【0037】
生成部160は、ステップS105の処理において推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、ステップS107の処理において推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する(ステップS108)。出力部170は、生成部160により生成された覚醒時データを出力する(ステップS109)。
【0038】
なお、上述した処理手順は、必ずしも上記の順序で実行されなくても良い。例えば、覚醒時の極大周波数を推定する処理が実行された後に、覚醒時の極大スペクトル密度を推定する処理が実行されても良い。つまり、ステップS102の処理が実行された後にステップS106〜S107の処理が実行され、続いて、ステップS103〜S105の処理が実行されても良い。また、覚醒時の極大周波数を推定する処理及び覚醒時の極大スペクトル密度を推定する処理は、平行して実行されても良い。つまり、ステップS102の処理が実行された後に、ステップS106〜S107の処理及びステップS103〜S105の処理が平行して実行されても良い。
【0039】
次に、本実施例1にかかる覚醒時データ生成装置100の効果について説明する。覚醒時データ生成装置100は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。覚醒時データ生成装置100は、予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、算出した変動値から被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。覚醒時データ生成装置100は、心拍信号から心拍数を算出する。覚醒時データ生成装置100は、予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、算出した心拍数から被験者の覚醒時の極大周波数を推定する。覚醒時データ生成装置100は、推定した覚醒時の極大スペクトル密度及び覚醒時の極大周波数を含む覚醒時データを生成する。このようなことから、覚醒時データ生成装置100は、覚醒時データを簡易に生成することができる。
【0040】
例えば、覚醒時データ生成装置100は、数十秒分の心拍信号を用いることで覚醒時データを生成できる。このため、心拍信号を検出する際に、被験者は覚醒状態を数十秒間持続させるだけで良いので、覚醒時データ生成装置100は、正確な覚醒時データを簡易に生成することができる。
【0041】
なお、上述した第1の算出部120、第1の推定部130、第2の算出部140、第2の推定部150と、生成部160の各処理部は、例えば、次のような装置に対応する。すなわち、これらの各処理部は、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)やField Programmable Gate Array(FPGA)などの集積装置に対応する。また、これらの各処理部は、Central Processing Unit(CPU)やMicro Processing Unit(MPU)などの電子回路に対応する。
【実施例2】
【0042】
本実施例2にかかる覚醒度判定装置の構成の一例について説明する。図13は、本実施例2にかかる覚醒度判定装置の構成を示す図である。図13に示すように、この覚醒度判定装置200は、検出部210と、生成部220と、推定部230と、スケール生成部240と、記憶部250と、算出部260と、判定部270と、拡張部280と、出力部290とを有する。
【0043】
検出部210は、被験者の心拍信号を検出する。例えば、検出部210は、被験者に接触する電極に対して電圧を印加し、被験者の心拍信号を各電極の電位差から取得する。なお、被験者は、例えば、車両を運転する運転者に対応する。また、検出部210によって用いられる電極は、例えば、車両のハンドルに埋め込まれた電極に対応する。検出部210が実行する処理は検出部110が実行する処理と同様であるので、検出部210の説明は省略する。
【0044】
生成部220は、被験者のスケールが設定されていない場合に、覚醒時データを生成する。例えば、生成部220は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。生成部220は、予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、算出した変動値から被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。生成部220は、心拍信号から心拍数を算出する。生成部220は、予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、算出した心拍数から被験者の覚醒時の極大周波数を推定する。生成部220は、推定した覚醒時の極大スペクトル密度及び覚醒時の極大周波数を含む覚醒時データを生成する。なお、生成部220が実行する処理は、第1の算出部120、第1の推定部130、第2の算出部140、第2の推定部150、生成部160が実行する各処理と同様であるので、生成部220の説明は省略する。また、生成部220は、第1の算出部、第1の推定部、第2の算出部、第2の推定部、第1の生成部の一例である。
【0045】
推定部230は、生成部220により生成された覚醒時データに基づいて、非覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを推定する。例えば、推定部230は、予め記録された覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、生成部220により生成された覚醒時の極大スペクトル密度から、被験者の非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。推定部230は、予め記録された覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、生成部220により生成された覚醒時の極大周波数から、被験者の非覚醒時の極大周波数を推定する。推定部230は、推定した非覚醒時の極大スペクトル密度と、推定した非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成する。なお、推定部230は、第2の推定部、第4の推定部、第2の生成部の一例である。
【0046】
ここで、推定部230が用いる相関関係について説明する。図14は、覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との相関関係を示す図である。図14の横軸は非覚醒時の極大周波数を示し、縦軸は覚醒時の極大周波数を示す。図15は、覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との相関関係を示す図である。図15の横軸は非覚醒時の極大スペクトル密度を示し、縦軸は覚醒時の極大スペクトル密度を示す。
【0047】
図14及び図15は、ドライビングシミュレータを用いて被験者の心拍信号を取得する実験を行った実験結果の一例である。図14及び図15に示すように、各被験者の覚醒時の値と非覚醒時の値とをプロットすると、回帰直線が得られる。この実験結果は、極大周波数及び極大スペクトル密度が覚醒時と非覚醒時とで相関することを示す。なお、図14及び図15に示す例では、極大周波数の相関係数は0.78であり、極大スペクトル密度の相関係数は0.85である。
【0048】
例えば、推定部230は、覚醒時データを生成部220から取得する。推定部230は、取得した覚醒時データに含まれる覚醒時の極大周波数を、図14に示した回帰直線の式に代入することで、非覚醒時の極大周波数を算出する。推定部230は、取得した覚醒時データに含まれる覚醒時の極大スペクトル密度を、図15に示した回帰直線の式に代入することで、非覚醒時の極大スペクトル密度を算出する。推定部230は、算出した非覚醒時の極大周波数及び非覚醒時の極大スペクトル密度を非覚醒時データとして生成する。そして、推定部230は、覚醒時データと非覚醒時データとをスケール生成部240に出力する。
【0049】
図13の説明に戻る。スケール生成部240は、生成部220により生成された覚醒時データと、推定部230により推定された非覚醒時データとを用いて覚醒度の指標を生成する。例えば、スケール生成部240は、覚醒時データから非覚醒時データまでの間で周波数及びスペクトル密度が変化しうる範囲を覚醒度の指標となるスケールとして生成する。なお、スケール生成部240は、第3の生成部の一例である。
【0050】
ここで、スケール生成部240により設定されるスケールについて説明する。図16は、スケールの一例を示す図である。図16の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。図16に示す例では、スケール16aは、眠気方向16bに示すように、右上ほど眠気がなく、左下ほど眠気が強くなるように設定される。この場合、スケール16aは、右上から左下へと5つの領域に分割され、5つの領域それぞれに5段階の眠気レベルが割り当てられる。つまり、スケール16aにより判定される眠気レベルは、レベル1からレベル5の順に眠気が強くなり、覚醒度が低くなる。スケール生成部240は、図16に示すように、正規化されたスケール16aを保持する。スケール生成部240により設定されるスケールのデータは、例えば、スケール内の各領域の境界を示す式と眠気レベル値とを含むデータである。なお、図16では、正規化されたスケール16aの各領域の幅が等間隔である場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、正規化されたスケール16aの各領域の幅は、眠気レベルが高くなるほど狭くなるように調整されても良い。また、スケールのデータは、上述の構成に限定されるものではなく、例えば、覚醒時データの周波数及びスペクトル密度と、非覚醒時データの周波数及びスペクトル密度とで構成されても良い。
【0051】
続いて、スケール生成部240がスケールを設定する処理を説明する。図17は、スケールを生成する処理を説明するための図である。図17の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。図17に示すように、スケール生成部240は、覚醒時データ17aと非覚醒時データ17bとを用いて、スケール17cを設定する。例えば、スケール生成部240は、図16に示した正規化されたスケール16aの周波数の最大値を覚醒時データ17aの極大周波数に対応させる。スケール生成部240は、スケール16aのスペクトル密度の最小値を覚醒時データ17aの極大スペクトル密度に対応させる。スケール生成部240は、スケール16aの周波数の最小値を非覚醒時データ17bの極大周波数に対応させる。スケール生成部240は、スケール16aのスペクトル密度の最大値を非覚醒時データ17bの極大スペクトル密度に対応させる。スケール生成部240は、対応させたスケール16aを5等分し、眠気レベルに対応する各領域を設定する。スケール生成部240は、設定したスケール16aの各領域の境界を示す式を算出することで、被験者のスケール17cを生成する。そして、スケール生成部240は、生成したスケール17cを記憶部250に格納する。
【0052】
図13の説明に戻る。記憶部250は、スケール生成部240により生成された覚醒度の指標を記憶する。例えば、記憶部250は、スケール生成部240により生成された被験者のスケールを、被験者を識別する識別情報に対応付けて記憶する。
【0053】
算出部260は、被験者の心拍信号から極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。例えば、算出部260は、検出部210により入力された心拍信号データに基づいてスペクトル密度データの極大点を取得し、取得した極大点の極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。なお、算出部260は、第3の算出部の一例である。
【0054】
以下において、算出部260が実行する処理を詳細に説明する。算出部260は、検出部210により入力された心拍信号データから心拍間隔を算出する。算出部260は、算出した心拍間隔に基づいて、心拍間隔の時間経過による変化を示す心拍間隔データを生成する。なお、算出部260が心拍間隔を算出する処理と心拍間隔データを生成する処理は、第1の算出部120が実行する処理と同様であるので、これらの処理についての説明は省略する。
【0055】
また、算出部260は、心拍間隔データに対して周波数解析を行うことで、周波数ごとのスペクトル密度を算出する。例えば、算出部260は、Auto Regressive(AR)モデルを用いてスペクトル密度を算出する。ARモデルは、非特許文献(佐藤俊輔、吉川昭、木竜徹、“生体信号処理の基礎”、コロナ社)などに開示されているように、ある時点の状態を過去の時系列データの線形和で表すモデルである。ARモデルは、フーリエ変換と比較して少ないデータ数でも明瞭な極大点が得られるという特徴がある。
【0056】
時系列x(s)のp次のARモデルは、過去の値に対する重みであるAR係数a(m)及び誤差項e(s)を用いて、
【数4】

によって表される。なお、理想的には、e(s)は、ホワイトノイズである。
【0057】
そして、pを同定次数、fをサンプリング周波数、εを同定誤差とし、
【数5】

をk次のAR係数とすると、スペクトル密度PAR(f)は、
【数6】

によって表される。算出部260は、式(5)及び心拍間隔データに基づいて、スペクトル密度を算出する。なお、スペクトル密度の算出方法は、上述の方法に限定されるものではない。例えば、算出部260は、フーリエ変換を用いることでスペクトル密度を算出しても良い。
【0058】
算出部260は、スペクトル密度を算出するごとに、周波数ごとのスペクトル密度を示すスペクトル密度データを生成する。図18は、算出部により生成されるスペクトル密度データの一例を示す図である。図18の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。例えば、0.05〜0.15Hz近辺の領域に現れるスペクトル密度の成分は、交感神経の活動状態を反映するLow Frequency(LF)成分である。また、例えば、0.15〜0.4Hz近辺の領域に現れるスペクトル密度の成分は、副交感神経の活動状態を反映するHigh Frequency(HF)成分である。
【0059】
算出部260は、スペクトル密度データのスペクトル密度が極大となる極大点を取得する。例えば、算出部260は、
【数7】

となる周波数fを極大点の周波数として算出し、この極大点の周波数を式(5)に代入することによって極大点のスペクトル密度を算出する。図18に示す例では、算出部260は、4つの極大点18a、18b、18c、18dを取得する。なお、極大点の周波数を「極大周波数」と表記し、極大点のスペクトル密度を「極大スペクトル密度」と表記する。
【0060】
算出部260は、取得した極大点18a、18b、18c、18dのうち、HF成分に含まれる極大点を1つ選択する。図18に示すように、HF成分に極大点が複数含まれる場合には、算出部260は、最も周波数が低い極大点18bを選択する。これは、HF成分に含まれる極大点のうち低周波側の極大点を選択することで、被験者の眠気をより正確に判定できるからである。なお、HF成分に極大点が含まれない場合には、算出部260は、0.4Hzより高周波側の領域から最も周波数が低い極大点を1つ選択する。また、HF成分に極大点が1つ含まれる場合には、算出部260は、該当極大点を選択する。
【0061】
算出部260は、取得した極大点における極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。図19は、極大周波数を時系列で表した図である。図19の横軸は時間の経過を示し、縦軸は周波数を示す。図20は、極大スペクトル密度を時系列で表した図である。図20の横軸は時間の経過を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。算出部260が10秒間隔でスペクトル密度データを算出する場合には、図19及び図20に示す時系列方向の点の間隔は10秒間隔である。図19及び図20に示すように、算出部260は、一定時間ごとに極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。
【0062】
図13の説明に戻る。判定部270は、算出部260により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度と、スケール生成部240により生成された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を判定する。例えば、判定部270は、被験者による識別情報の入力を受け付けて、識別情報に対応するスケールを記憶部250から読み出す。判定部270は、算出部260により算出された極大点と読み出したスケールとを比較することで、被験者の覚醒度を判定する。具体的には、例えば、判定部270は、スケールの各領域を表す式に極大点の極大周波数及び極大スペクトル密度を代入することで、算出された極大点が含まれる領域を判定する。判定部270は、極大点が含まれると判定された領域に応じて、被験者の眠気レベルを判定する。そして、判定部270は、判定結果を出力部290に出力する。なお、識別情報の受け付け方法は、上述の方法に限定されるものではない。例えば、判定部270は、現在の被験者を撮影したカメラ画像から識別情報を取得する方法や、心拍信号のうち個人に特徴的な領域を用いて判定する方法などを利用しても良い。
【0063】
拡張部280は、算出部260により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度が予め設定された覚醒度の指標の範囲外である場合に、覚醒度の指標を拡張する。例えば、拡張部280は、極大周波数及び極大スペクトル密度を算出部260から取得すると、取得した値が記憶部250に記憶された被験者のスケール外であるか否かを判定する。
【0064】
取得した値がスケール外である場合には、拡張部280は、取得した値とスケールとの距離が閾値以上であるか否かを判定する。距離が閾値以上でない場合には、拡張部280は、被験者のスケールを拡張し、拡張したスケールを記憶部250に格納する。一方、距離が閾値以上である場合には、拡張部280は、再び極大周波数及び極大スペクトル密度を取得するまで待機する。なお、ここで用いられる閾値は、心拍信号解析時のエラーを除外するための値であり、例えば、極大周波数の値に対して閾値を0.1とする。これはスケールに対して、極大周波数の値が0.1以上外れている場合、異なる極大点を検出していると判断するためである。閾値については、この例示に限定されるものではなく、覚醒度判定装置200を利用する者が任意の値に設定して良い。
【0065】
拡張部280がスケールを拡張する処理について説明する。例えば、拡張部280は、予め設定されたスケールがスケール外の値を含むようにスケールの各辺を移動させる。そして、拡張部280は、各辺に対して正規化したスケールを当てはめてスケールを設定することで、スケールを全体的に拡張する。図21は、スケールを全体的に拡張する処理を説明するための図である。図21の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。図21に示すように、拡張部280は、予め設定されたスケール21aがスケール外の値21bを含むようにスケール21aの上辺と右辺とを移動させる。そして、拡張部280は、各辺に対して正規化したスケールを当てはめてスケール21cを設定することで、スケール21aを全体的に拡張する。
【0066】
また、例えば、拡張部280は、予め設定されたスケールのうち、スケール外の値に近い領域のみを部分的に拡張する。図22は、スケールを部分的に拡張する処理を説明するための図である。図22の横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル密度を示す。図22に示すように、例えば、拡張部280は、スケール22aの右上方向にスケール外の値22bが存在する場合には、スケール外の値22bに対してレベル1の領域のみを拡張する。また、例えば、拡張部280は、スケール22aの左下方向にスケール外の値22cが存在する場合には、スケール外の値22cに対してレベル5の領域のみを拡張する。
【0067】
なお、拡張部280がスケールを拡張するのは、算出部260により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度がスケール外である場合には、判定部270が眠気レベルを判定できないからである。このため、拡張部280は、算出された極大周波数及び極大スペクトル密度がスケール外であっても、眠気レベルを判定するために、スケールを拡張する。
【0068】
出力部290は、判定部270により判定された判定結果を出力する。出力部290は、例えば、モニタやスピーカなどに対応する。例えば、出力部290は、被験者の覚醒度が低下した旨の情報を被験者や被験者の周囲の者などに報知する。
【0069】
次に、本実施例2にかかる覚醒度判定装置200の処理手順について説明する。図23は、本実施例2にかかる覚醒度判定装置の処理手順を示すフローチャートである。図23に示す処理は、例えば、覚醒度判定装置200を搭載した車両のシステムが起動したことを契機として実行される。
【0070】
図23に示すように、処理タイミングになると(ステップS201,Yes)、生成部220は、被験者のスケールが設定されているか否かを判定する(ステップS202)。スケールが設定されていない場合には(ステップS202,No)、生成部220は、覚醒時データを生成する(ステップS203)。つまり、生成部220は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。生成部220は、算出した変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、変動値から覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。生成部220は、心拍信号から心拍数を算出し、算出した心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、覚醒時の極大周波数を推定する。生成部220は、推定した覚醒時の極大スペクトル密度及び覚醒時の極大周波数を含む覚醒時データを生成する。なお、ステップS203の処理は、図12に示したステップS103からステップS108までの処理に対応する。
【0071】
推定部230は、生成部220により生成された覚醒時データに基づいて、非覚醒時データを推定する(ステップS204)。つまり、推定部230は、生成部220により生成された覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、覚醒時の極大スペクトル密度から非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。推定部230は、生成部220により生成された覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、覚醒時の極大周波数から非覚醒時の極大周波数を推定する。推定部230は、推定した非覚醒時の極大スペクトル密度と、推定した非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成する。
【0072】
スケール生成部240は、覚醒時データと非覚醒時データとを用いてスケールを生成し(ステップS205)、生成したスケールを記憶部250に格納する。
【0073】
検出部210は、被験者の心拍信号を検出し(ステップS206)、心拍信号データを算出部260に出力する。算出部260は、検出部210により入力された心拍信号データから心拍間隔を算出する(ステップS207)。算出部260は、算出した心拍間隔に基づいて、心拍間隔の時間経過による変化を示す心拍間隔データを生成する(ステップS208)。
【0074】
算出部260は、心拍間隔データに対して周波数解析を行うことで、各周波数に対応するスペクトル密度を算出する(ステップS209)。算出部260は、スペクトル密度が極大となる極大点のうち、HF成分に含まれる極大点を1つ選択する(ステップS210)。つまり、算出部260は、スペクトル密度を算出するごとに、周波数ごとのスペクトル密度を示すスペクトル密度データを生成し、スペクトル密度データのスペクトル密度が極大となる極大点のうち、HF成分に含まれる極大点を1つ選択する。
【0075】
判定部270は、選択された極大点の極大周波数及び極大スペクトル密度を取得する(ステップS211)。つまり、判定部270は、算出部260により選択された極大点を取得する。取得した極大点がスケール外でない場合には(ステップS212,No)、判定部270は、被験者の覚醒度を判定する(ステップS213)。つまり、判定部270は、被験者による識別情報の入力を受け付けて、識別情報に対応するスケールを記憶部250から読み出す。判定部270は、算出部260により算出された極大点と読み出したスケールとを比較することで、被験者の覚醒度を判定する。そして、出力部290は、判定部270により判定された判定結果を出力する。
【0076】
一方、取得した極大点がスケール外である場合には(ステップS212,Yes)、拡張部280は、取得した極大点とスケールとの距離が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS214)。距離が閾値以上でない場合には(ステップS214,No)、拡張部280は、被験者のスケールを拡張し(ステップS215)、ステップS213に移行する。
【0077】
一方、距離が閾値以上である場合には(ステップS214,Yes)、拡張部280は、スケールを拡張する処理を終了し、ステップS217に移行する。
【0078】
一方、被験者のスケールが設定されている場合には(ステップS202,Yes)、判定部270は、被験者による識別情報の入力を受け付けて、識別情報に対応するスケールを記憶部250から読み出し(ステップS216)、ステップS206に移行する。
【0079】
終了タイミングになるまで(ステップS217,No)、覚醒度判定装置200は、ステップS206からステップS217までの処理を繰り返す。終了タイミングになると(ステップS217,Yes)、覚醒度判定装置200は、処理を終了する。例えば、覚醒度判定装置200は、覚醒度判定装置200を搭載した車両のシステムが終了したことを契機として図23の処理を終了する。
【0080】
次に、本実施例2にかかる覚醒度判定装置200の効果について説明する。覚醒度判定装置200は、被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する。覚醒度判定装置200は、算出した変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、変動値から覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。覚醒度判定装置200は、心拍信号から心拍数を算出し、算出した心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、覚醒時の極大周波数を推定する。覚醒度判定装置200は、推定した覚醒時の極大スペクトル密度及び覚醒時の極大周波数を含む覚醒時データを生成する。覚醒度判定装置200は、推定した覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する。覚醒度判定装置200は、推定した覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、非覚醒時の極大周波数を推定する。覚醒度判定装置200は、推定した非覚醒時の極大スペクトル密度と、推定した非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成する。覚醒度判定装置200は、覚醒時データと非覚醒時データとを用いて覚醒度の指標を生成する。覚醒度判定装置200は、被験者の心拍信号を検出するごとに、心拍信号から極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する。覚醒度判定装置200は、算出した極大周波数及び極大スペクトル密度と、生成した覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を判定する。このようなことから、覚醒度判定装置200は、正確な覚醒時データを生成することができ、正確なスケールを簡易に生成することができる。このため、覚醒度判定装置200は、被験者の覚醒度を正確に判定することができる。
【0081】
なお、上述した生成部220、推定部230、スケール生成部240、算出部260、判定部270、拡張部280の各処理部は、例えば、次のような装置に対応する。すなわち、これらの各処理部は、ASICやFPGAなどの集積装置に対応する。また、これらの各処理部は、CPUやMPUなどの電子回路に対応する。
【0082】
また、記憶部250は、例えば、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクや光ディスクの記憶装置に対応する。
【実施例3】
【0083】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、その他の実施例にて実施されても良い。そこで、以下では、その他の実施例について説明する。
【0084】
例えば、上述した実施例1では、覚醒時データ生成装置100が被験者の心拍信号から算出した心拍数を用いて覚醒時の極大周波数を推定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、覚醒時データ生成装置100は、被験者から覚醒時の心拍数の入力を受け付けて、受け付けた心拍数を用いて覚醒時の極大周波数を推定することができる。例えば、覚醒時データ生成装置100の第2の推定部150は、被験者から受け付けた覚醒時の心拍数を式(2)に代入することで、覚醒時の呼吸数を算出する。そして、第2の推定部150は、算出した覚醒時の呼吸数を式(3)に代入することで、覚醒時の極大周波数を算出する。
【0085】
また、例えば、上述した実施例1では、覚醒時データ生成装置100が被験者の呼吸数を用いて覚醒時の極大周波数を推定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、覚醒時データ生成装置100は、被験者の基礎代謝量[キロカロリー/日]を用いて覚醒時の極大周波数を推定することができる。これは、呼吸数と基礎代謝量との間に相関関係があることが知られているからである。例えば、覚醒時データ生成装置100の第2の推定部150は、下記の式(7)を用いて、覚醒時の極大周波数Fを算出する。
【数8】

なお、式(7)の「0.15」は、交感神経の活動状態を反映するLF成分と、副交感神経の活動状態を反映するHF成分との間の境界周波数である。また、Cは、複数の被験者の統計データに基づいて予め設定された定数である。例えば、Cは、Cを目的変数とし、覚醒時の極大周波数と基礎代謝量とを説明変数とした回帰分析を実行することにより得られる。
【0086】
例えば、覚醒時データ生成装置100は、被験者から性別と年齢とを示す情報を受け付けて、受け付けた情報に基づいて基礎代謝量を取得する。図24は、年齢ごとの基礎代謝量を示すテーブルの一例を示す図である。このテーブルは、年齢と、男性の基礎代謝量と、女性の基礎代謝量とを対応付けて記憶する。例えば、テーブルは、年齢「18〜29歳」と、男性の基礎代謝量「1550」と、女性の基礎代謝量「1210」とを対応付けて記憶する。つまり、テーブルは、18〜29歳の男性の基礎代謝量が1550[キロカロリー/日]であり、18〜29歳の女性の基礎代謝量が1210[キロカロリー/日]であることを示す。例えば、覚醒時データ生成装置100は、図24に示したテーブルに基づいて基礎代謝量を取得し、取得した基礎代謝量を上記の式(7)に代入することで、覚醒時の極大周波数Fを算出する。なお、基礎代謝量を取得する方法は、上記のテーブルを用いた方法に限定されるものではない。例えば、覚醒時データ生成装置100は、被験者の性別と、年齢と、身長と、体重とに基づいて基礎代謝量を算出する関係式を用いて、基礎代謝量を取得しても良い。
【0087】
また、例えば、上述した実施例1では、覚醒時データ生成装置100が被験者の心拍信号データを用いて覚醒時の極大スペクトル密度を推定する場合を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、覚醒時データ生成装置100は、被験者の年齢を用いて覚醒時の極大スペクトル密度を推定することができる。これは、年齢とRSA値との間に相関関係があることが知られているからである。図25は、年齢とRSA値との相関関係を示す図である。図25の横軸は年齢[yr]を示し、縦軸はRSA値[msec]を示す。図25に示すように、複数の被験者について、年齢と覚醒時のRSA値とをプロットすると、回帰直線25aが得られる。例えば、覚醒時データ生成装置100は、被験者の年齢を回帰直線25aの式に代入することで、覚醒時のRSA値を算出する。そして、覚醒時データ生成装置100は、算出した覚醒時のRSA値を式(1)に代入することで、覚醒時の極大スペクトル密度を算出する。なお、被験者の年齢から覚醒時のRSA値を求める方法は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、覚醒時データ生成装置100は、図26に示すように、年齢と覚醒時のRSA値とを対応付けたテーブルを用いて、被験者の年齢から覚醒時のRSA値を求めても良い。図26は、年齢ごとのRSA値を示すテーブルの一例を示す図である。
【0088】
実施例1及び2において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。例えば、図23に示した覚醒度判定装置200の一連の処理は、覚醒度判定装置200を搭載した車両のシステムが起動した後に、運転者による指示を受け付けることを契機として実行されても良い。
【0089】
また、上述文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、スケール生成部240により生成されるスケールのデータは、覚醒時データの周波数及びスペクトル密度と、非覚醒時データの周波数及びスペクトル密度とで構成されても良い。この場合、記憶部250には覚醒時データ及び非覚醒時データの値が格納されるので、判定部270は、記憶部250から読み出した覚醒時データ及び非覚醒時データの値に正規化されたスケールを当てはめて、スケールを再生成した後に、眠気レベルを判定する。
【0090】
また、図1及び図13に示した覚醒時データ生成装置100及び覚醒度判定装置200の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、覚醒時データ生成装置100及び覚醒度判定装置200の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図13に示した生成部220の機能を外部装置に持たせ、かかる外部装置にて生成された覚醒時データを覚醒度判定装置200が受け付けてスケールを生成するようにしても良い。
【0091】
また、覚醒時データ生成装置100及び覚醒度判定装置200は、覚醒時データ生成装置100及び覚醒度判定装置200の各機能を既知の情報処理装置に搭載することによって実現することもできる。既知の情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、携帯電話、Personal Handy-phone System(PHS)端末、移動体通信端末またはPersonal Digital Assistant(PDA)などの装置に対応する。
【0092】
図27は、本実施例1にかかる覚醒時データ生成プログラムを実行するコンピュータを示す図である。図27に示すように、コンピュータ300は、ユーザからデータの入力を受け付ける入力装置301と、モニタ302と、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読み取り装置303と、他の装置とデータの授受を行うインターフェース装置304とを有する。また、コンピュータ300は、各種演算処理を実行するCPU305と、各種情報を一時記憶するRAM306と、ハードディスク装置307を有する。また、各装置301〜307は、バス308に接続される。また、コンピュータ300は、被験者の心拍信号を検出する心拍センサ310と、スピーカ320と、インターフェース装置304を介して接続される。
【0093】
ハードディスク装置307は、図1に示した、第1の算出部120、第1の推定部130、第2の算出部140、第2の推定部150と、生成部160の各処理部と同様の機能を有する各種プログラムを記憶する。また、ハードディスク装置307は、被験者のスケールを、被験者を識別する識別情報に対応付けて記憶する。
【0094】
CPU305が各種プログラムをハードディスク装置307から読み出してRAM306に展開して実行することにより、各種プログラムは、各種プロセスとして機能する。すなわち、各種プログラムは、第1の算出部120、第1の推定部130、第2の算出部140、第2の推定部150と、生成部160の各処理部と同様のプロセスとして機能する。
【0095】
なお、上記の各種プログラムは、必ずしもハードディスク装置307に記憶されている必要はない。例えば、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記憶されたプログラムを、コンピュータ300が読み出して実行するようにしても良い。コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、例えば、CD−ROMやDVDディスク、USBメモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、Local Area Network(LAN)、Wide Area Network(WAN)等に接続された装置にこのプログラムを記憶させておき、コンピュータ300がこれらからプログラムを読み出して実行するようにしても良い。
【0096】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0097】
(付記1)被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する第1の算出部と、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の算出部により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する第1の推定部と、
前記心拍信号から心拍数を算出する第2の算出部と、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の算出部により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定する第2の推定部と、
前記第1の推定部により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記第2の推定部により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する生成部と
を備えたことを特徴とする覚醒時データ生成装置。
【0098】
(付記2)コンピュータが実行する推定方法であって、
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出し、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記変動値を算出する処理により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
前記心拍信号から心拍数を算出し、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記心拍数を算出する処理により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定し、
前記極大スペクトル密度を推定する処理により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記極大周波数を推定する処理により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する
ことを特徴とする覚醒時データ生成方法。
【0099】
(付記3)コンピュータに、
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出し、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記変動値を算出する処理により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
前記心拍信号から心拍数を算出し、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記心拍数を算出する処理により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定し、
前記極大スペクトル密度を推定する処理により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記極大周波数を推定する処理により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する
処理を実行させることを特徴とする覚醒時データ生成プログラム。
【0100】
(付記4)被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する第1の算出部と、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の算出部により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する第1の推定部と、
前記心拍信号から心拍数を算出する第2の算出部と、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の算出部により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定する第2の推定部と、
前記第1の推定部により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記第2の推定部により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する第1の生成部と、
予め記録された覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の推定部により推定された前記覚醒時の極大スペクトル密度から、前記被験者の非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する第3の推定部と、
予め記録された覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の推定部により推定された前記覚醒時の極大周波数から、前記被験者の非覚醒時の極大周波数を推定する第4の推定部と、
前記第3の推定部により推定された非覚醒時の極大スペクトル密度と、前記第4の推定部により推定された非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成する第2の生成部と、
第1の生成部により生成された覚醒時データと、第2の生成部により生成された非覚醒時データとを用いて覚醒度の指標を生成する第3の生成部と、
被験者の心拍信号を検出するごとに、当該心拍信号から極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する第3の算出部と、
前記第3の算出部により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度と、前記第3の生成部により生成された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を判定する判定部と
を備えたことを特徴とする覚醒度判定装置。
【0101】
(付記5)コンピュータが実行する推定方法であって、
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出し、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記変動値を算出する処理により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
前記心拍信号から心拍数を算出し、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記心拍数を算出する処理により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定し、
前記極大スペクトル密度を推定する処理により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記極大周波数を推定する処理により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成し、
予め記録された覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記覚醒時の極大スペクトル密度を推定する処理により推定された前記覚醒時の極大スペクトル密度から、前記被験者の非覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
予め記録された覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記覚醒時の極大周波数を推定する処理により推定された前記覚醒時の極大周波数から、前記被験者の非覚醒時の極大周波数を推定し、
前記非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する処理により推定された非覚醒時の極大スペクトル密度と、前記非覚醒時の極大周波数を推定する処理により推定された非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成し、
前記覚醒時データを生成する処理により生成された覚醒時データと、前記非覚醒時データを生成する処理により生成された非覚醒時データとを用いて覚醒度の指標を生成し、
被験者の心拍信号を検出するごとに、当該心拍信号から極大周波数及び極大スペクトル密度を算出し、
前記極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する処理により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度と、前記覚醒度の指標を生成する処理により生成された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を判定する
ことを特徴とする覚醒度判定方法。
【0102】
(付記6)コンピュータに、
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出し、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記変動値を算出する処理により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
前記心拍信号から心拍数を算出し、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記心拍数を算出する処理により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定し、
前記極大スペクトル密度を推定する処理により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記極大周波数を推定する処理により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成し、
予め記録された覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記覚醒時の極大スペクトル密度を推定する処理により推定された前記覚醒時の極大スペクトル密度から、前記被験者の非覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
予め記録された覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記覚醒時の極大周波数を推定する処理により推定された前記覚醒時の極大周波数から、前記被験者の非覚醒時の極大周波数を推定し、
前記非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する処理により推定された非覚醒時の極大スペクトル密度と、前記非覚醒時の極大周波数を推定する処理により推定された非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成し、
前記覚醒時データを生成する処理により生成された覚醒時データと、前記非覚醒時データを生成する処理により生成された非覚醒時データとを用いて覚醒度の指標を生成し、
被験者の心拍信号を検出するごとに、当該心拍信号から極大周波数及び極大スペクトル密度を算出し、
前記極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する処理により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度と、前記覚醒度の指標を生成する処理により生成された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を判定する
処理を実行させることを特徴とする覚醒度判定プログラム。
【符号の説明】
【0103】
100 覚醒時データ生成装置
110 検出部
120 第1の算出部
130 第1の推定部
140 第2の算出部
150 第2の推定部
160 生成部
170 出力部
200 覚醒度判定装置
210 検出部
220 生成部
230 推定部
240 スケール生成部
250 記憶部
260 算出部
270 判定部
280 拡張部
290 出力部
300 コンピュータ
301 入力装置
302 モニタ
303 媒体読み取り装置
304 インターフェース装置
305 CPU
306 RAM
307 ハードディスク装置
308 バス
310 心拍センサ
320 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する第1の算出部と、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の算出部により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する第1の推定部と、
前記心拍信号から心拍数を算出する第2の算出部と、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の算出部により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定する第2の推定部と、
前記第1の推定部により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記第2の推定部により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する生成部と
を備えたことを特徴とする覚醒時データ生成装置。
【請求項2】
コンピュータが実行する推定方法であって、
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出し、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記変動値を算出する処理により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
前記心拍信号から心拍数を算出し、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記心拍数を算出する処理により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定し、
前記極大スペクトル密度を推定する処理により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記極大周波数を推定する処理により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する
ことを特徴とする覚醒時データ生成方法。
【請求項3】
コンピュータに、
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出し、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記変動値を算出する処理により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定し、
前記心拍信号から心拍数を算出し、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記心拍数を算出する処理により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定し、
前記極大スペクトル密度を推定する処理により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記極大周波数を推定する処理により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する
処理を実行させることを特徴とする覚醒時データ生成プログラム。
【請求項4】
被験者の心拍信号から心拍間隔の変動値を算出する第1の算出部と、
予め記録された変動値と覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の算出部により算出された前記変動値から、前記被験者の覚醒時の極大スペクトル密度を推定する第1の推定部と、
前記心拍信号から心拍数を算出する第2の算出部と、
予め記録された心拍数と覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の算出部により算出された前記心拍数から、前記被験者の覚醒時の極大周波数を推定する第2の推定部と、
前記第1の推定部により推定された覚醒時の極大スペクトル密度と、前記第2の推定部により推定された覚醒時の極大周波数とを含む覚醒時データを生成する第1の生成部と、
予め記録された覚醒時の極大スペクトル密度と非覚醒時の極大スペクトル密度との間の相関関係に基づいて、前記第1の推定部により推定された前記覚醒時の極大スペクトル密度から、前記被験者の非覚醒時の極大スペクトル密度を推定する第3の推定部と、
予め記録された覚醒時の極大周波数と非覚醒時の極大周波数との間の相関関係に基づいて、前記第2の推定部により推定された前記覚醒時の極大周波数から、前記被験者の非覚醒時の極大周波数を推定する第4の推定部と、
前記第3の推定部により推定された非覚醒時の極大スペクトル密度と、前記第4の推定部により推定された非覚醒時の極大周波数とを含む非覚醒時データを生成する第2の生成部と、
第1の生成部により生成された覚醒時データと、第2の生成部により生成された非覚醒時データとを用いて覚醒度の指標を生成する第3の生成部と、
被験者の心拍信号を検出するごとに、当該心拍信号から極大周波数及び極大スペクトル密度を算出する第3の算出部と、
前記第3の算出部により算出された極大周波数及び極大スペクトル密度と、前記第3の生成部により生成された覚醒度の指標とを比較することで、被験者の覚醒度を判定する判定部と
を備えたことを特徴とする覚醒度判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−152458(P2012−152458A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15485(P2011−15485)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】