説明

親水性組成物及びそれを用いた親水性部材

【課題】基板表面に防汚性、水などの速乾性、耐水性、防錆性に優れた親水膜を形成するのに用いられる親水性組成物、及び、該親水膜を有する防汚性、水などの速乾性に優れ、良好な耐水性、防錆性を有する親水性部材を提供する。
【解決手段】基板と相互作用可能な官能基を有するポリマー、及び界面活性剤を含有する親水性組成物であって、該親水性組成物を用いて基板上に膜を形成した場合の該膜の表面自由エネルギーが75mN/m以上であることを特徴とする親水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に防汚性、水などの速乾性、耐水性、防錆性に優れた親水性膜を形成するのに用いられる親水性組成物、及び、該親水性膜を有する防汚性、水などの速乾性に優れ、良好な耐水性、防錆性を有する親水性部材に関する。とくに、アルミニウム製の基板を用いた場合に優れた上記効果を発揮する親水性組成物、親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムを主体とする材料は、熱交換器のフィンや自動車のボディー、飲料用容器と様々な用途に使用されている。これらの用途においては、外部の汚れが付着し、性能が劣化したり、外観を損ねたりと、材料への防汚性が課題となっており、現在研究が行われている。例えば、特許文献1ではフッ素系のポリマーによる撥水性で防汚性を付与している。しかしながら、親水性が不十分で、一度汚れが付着すると取れなくなってしまうという問題があった。
【0003】
そこで特許文献2〜4では、アルミ基板表面に光触媒からなる被膜を形成することで、非常に高い親水性を付与し、汚れが付着しても、降雨や流水で剥れ落とし、防汚性を発現していた。しかし、光触媒は高い活性から、アルミ表面を腐食してしまい、密着性が保てなく、また紫外線があたる場所のみでしか使用できないため、屋内の材料には不適用であった。
【特許文献1】特開平10−264288号公報
【特許文献2】特開平9−71897号公報
【特許文献3】特開平11−140433号公報
【特許文献4】特開2001−88247号公報
【0004】
このような問題から、より高い親水性を有し、基板の腐食が少なく、さらに屋外・屋内に関係なく利用できる材料が切望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基板表面に防汚性、水などの速乾性、耐水性、防錆性に優れた親水膜を形成するのに用いられる親水性組成物、及び、該親水膜を有する防汚性、水などの速乾性に優れ、良好な耐水性、防錆性を有する親水性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は以下の手段により解決された。
1.
基板と相互作用可能な官能基を有するポリマー(A)、及び(E)界面活性剤を含有する親水性組成物であって、該親水性組成物を用いて基板上に膜を形成した場合の該膜の表面自由エネルギーが75mN/m以上であることを特徴とする親水性組成物。
2.
前記ポリマー(A)が加水分解性シリル基を有することを特徴とする上記1に記載の親水性組成物。
3.
前記ポリマー(A)が、親水性であることを特徴とする上記1または2に記載の親水性組成物。
4.
さらに、親水性ポリマー(B)を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
5.
前記親水性ポリマー(B)が加水分解性シリル基を有することを特徴とする上記4に記載の親水性組成物。
6.
さらに、(C)硬化触媒を含有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の親水性組成物。
7.
さらに、(D)Si、Ti,Zr、Alから選択されるいずれかの元素を含むアルコキシド化合物を含有することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の親水性組成物。
8.
前記基板と相互作用可能な官能基が、下記に示す官能基のいずれか少なくとも1種であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の親水性組成物。
【化1】


上記式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、またはアルケニル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に、水素原子、金属原子、またはアンモニウム基を表し、X-はカウンターアニオンを表す。
9.
前記(E)界面活性剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の親水性組成物。
10.
前記親水性ポリマー(B)が下記一般式(B−II)で示される構造または下記一般式(B−III)で示される構造のいずれか少なくとも1種を有することを特徴とする上記5〜9のいずれかに記載の親水性組成物。
【化2】


一般式(B−II)中、R201〜R208はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。L201は単結合又は多価の有機連結基を表す。L202は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【化3】


一般式(B−III)中、R301〜R311は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。L301、L302及びL303は、それぞれ独立に、単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
11.
さらに下記一般式(B−I)で示される構造または下記一般式(B−IV)で示される構造のいずれか少なくとも1種を有する親水性ポリマーを含むことを特徴とする上記10に記載の親水性組成物。
【化4】


一般式(B−I)中、R101,R102、R103、R104、R105はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。mは1〜3の整数を表し、L101、L102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【化5】


一般式(B−IV)中、R401〜R408はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。L401、L402及びL403は単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。A401は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
12.
前記基板がアルミニウム製基板であることを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の親水性組成物。
13.
基板上に上記1〜12のいずれかに記載の親水性組成物を塗設して、親水性層を形成したことを特徴とする親水性部材。
14.
基板上に下塗り層として、上記1〜12のいずれかに記載の親水性組成物を塗設して形成した親水性層(1)を有し、その上にさらに別の親水性層(2)を有することを特徴とする親水性部材。
15.
前記親水性層(2)が親水性ポリマー(B)を含有する親水性組成物を塗設して形成したものであることを特徴とする上記14に記載の親水性部材。
16.
前記親水性組成物が(C)硬化触媒を含有することを特徴とする上記13〜15のいずれかに記載の親水性部材。
17.
前記親水性組成物が(D)Si、Ti,Zr、Alから選択されるいずれかの元素のアルコキシド化合物を含有することを特徴とする上記13〜16のいずれかに記載の親水性部材。
18.
前記基板がアルミニウム製であることを特徴とする上記13〜17のいずれかに記載の親水性部材。
19.
上記13〜18のいずれかに記載の親水性部材において、前記基板がフィン材であることを特徴とするフィン材。
20.
上記19に記載のフィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
21.
上記20に記載の熱交換器を用いたことを特徴とするエアコン。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種の基板表面に防錆性、防汚性、耐水性、水などの速乾性に優れた親水膜を形成するために用いられる親水性組成物、及び、該親水性組成物を用いて形成した親水性膜を有する親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の親水性組成物は、基板と相互作用可能な官能基を有するポリマー(A)を含有する親水性組成物であって、該親水性組成物を用いて基板上に膜を形成した場合の該膜の表面自由エネルギーが75mN/m以上であることを特徴とする。さらにポリマー(A)は加水分解性シリル基を有することが好ましく、親水性であることがより好ましい。
【0009】
本発明のポリマー(A)は基板と相互作用可能な官能基を有するため、基板に対して非常に優れた密着性を発現することが可能である。さらに親水性基と加水分解性シリル基(水酸基及び/又は加水分解性官能基を有する珪素原子を含む基)を有するポリマー(A)(特定ポリマー(A)とも呼ぶ。)においては、加水分解性シリル基(便宜シランカップリング基とも呼ぶ。)の加水分解、重縮合により形成された架橋構造を形成し、無機の架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成されているため、高強度かつ高親水性の被膜となる。具体的には、特定ポリマー(A)を適当な溶媒に溶解させ、攪拌することで、系中で加水分解・重縮合が進行し、ゾル状の親水性膜形成用組成物が得られ、それを基板上に被膜し、乾燥することにより基板表面上に親水性の官能基を有する。また、硬化触媒(C)を添加することでシランカップリング基の加水分解、重縮合を加速し、さらに高強度な被膜を形成する。特定ポリマー(A)に加えて、さらに親水性ポリマー(B)を用いることも可能であり、さらに優れた親水性を発現できる。
【0010】
加水分解性シリル基は、下記一般式で表されるものが好ましい。
−SiR213-m(OR22
ここで、R21、R22は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは1〜3で表される整数である。
加水分解性シリル基の加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成することにより、強固な膜を形成することが可能となる。
【0011】
本発明では、さらにSi、Ti,Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物(D)(以後、便宜特定アルコキシド(D)とも呼ぶ。)を含むことで、系中における加水分解・重縮合において、特定ポリマー(A)のシランカップリング基と架橋を形成する反応サイトが増加し、より高密度で強固な架橋構造を有する有機無機複合体皮膜が形成されるため、得られる親水性層の塗膜はさらに高強度となり、優れた耐磨耗性が発現し、高い表面親水性を長期間保持し得るものと考えられる。また、親水性が非常に高い表面は水が付着した場合、水が広がるために空気界面との表面積が増加し、水の乾燥速度が非常に速くなり、速乾性に優れた塗膜となる。
【0012】
さらに本発明の特定ポリマーを有する親水性層は下塗層としても機能する。基板上に被膜を形成する際に、基板と被膜との間に本発明のポリマー(A)を含有する組成物を硬化させた被膜を設けることで優れた密着性を発現し、高い耐摩耗性、耐傷性を有する部材を提供できる。
【0013】
以下に、本発明の親水性組成物に含まれる各成分について説明する。
〔ポリマー(A)〕
本発明で使用することのできるポリマー(A)は、基板と相互作用可能な官能基を有することを特徴とする。ポリマー(A)は下記一般式(I−1)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0014】
【化6】

【0015】
一般式(I−1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数8以下)を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Qは基板と相互作用する官能基(以下、適宜「特定官能基」とも呼ぶ。)である。
【0016】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。
【0017】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0018】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0019】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0020】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0021】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0022】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0023】
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とQが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0024】
【化7】

【0025】
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0026】
特定官能基Qとしては、様々な基板上に存在する水酸基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、スルホン酸(塩)基、リン酸(塩)基等と配位結合、イオン結合、水素結合などの相互作用が可能な基が挙げられる。相互作用可能な官能基とは化学的・物理的に基板と結合可能なものを言い、その結合を実現可能な官能基として、好ましくは配位結合、イオン結合、水素結合などの相互作用が可能な基がより好ましい。
特定官能基の具体例を以下に挙げるが、限定されるものではない。
【0027】
【化8】

【0028】
上記式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、またはアルケニル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に、水素原子、金属原子、またはアンモニウム基を表し、X-はカウンターアニオンを表す。これらの官能基は基板表面と配位結合、イオン結合、水素結合などの相互作用で結合することから、密着性の観点からは同様の効果が期待できる。さらに、これらのなかでも特定官能基としては、アンモニウム基、ピリジニウム基等のオニウム塩基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホウ酸基、アセチルアセトン基などのβ−ジケトン基などがその他の効果が期待できる観点で好適である。さらにホスホン酸基は親水性が高い官能基であるため、アルミまたはその合金基板等に密着する効果に加え、親水性が向上する観点から、さらに好ましい。また、カルボニル基を2つ有するアセチルアセトン基などのβ−ジケトン基はアルミまたはその合金基板等に密着する効果に加え、特定ポリマー中のシランカップリング基に配位結合することで縮合反応を抑制し、親水性組成物の経時安定性を向上させる観点から、特に好ましい。
【0029】
一般式(I−1)で表される構造単位は、基板への密着性を確保するためにポリマー(A)を構成する全構成単位中、1〜90モル%の範囲であり、2〜80モル%であることが好ましく、5〜75モル%であることがより好ましい。
【0030】
本発明に係るポリマーは、さらに加水分解性シリル基を有することが好ましく、下記一般式(I−2)で表される構造単位を有するか、下記一般式(I−3)で表される部分構造をポリマー主鎖の末端に有することがより好ましい。
【0031】
【化9】

【0032】
〜R10はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。LおよびLはそれぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。
【0033】
〜R10としては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。R〜R10はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0034】
およびLはそれぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表し、具体的にはLで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0035】
一般式(I−2)で表される構造単位は、親水膜の硬化性の観点からポリマー(A)を構成する全構成単位中、1〜60モル%の範囲であり、2〜70モル%であることが好ましく、5〜50モル%であることがより好ましい。一般式(I−3)で表される部分構造は、ポリマー主鎖の末端に位置し、ポリマー鎖1本あたり、1〜10個であり、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜5個である。
【0036】
本発明に係るポリマー(A)は、さらに親水性であることが好ましく、下記一般式(I−4)で表される構造単位を有することがより好ましい。
【0037】
【化10】

【0038】
一般式(I−4)中、R11〜R13はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数8以下)を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Aは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRiは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0039】
11〜R13としては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。R11〜R13はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0040】
は単結合又は多価の有機連結基を表し、具体的にはLで挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0041】
Aは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRiは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0042】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなAとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましい。
【0043】
一般式(I−4)で表される構造単位は、親水性の観点からポリマー(A)を構成する全構成単位中、10〜99モル%の範囲であり、20〜98モル%であることが好ましく、30〜95モル%であることがより好ましい。
【0044】
ポリマー(A)の質量平均分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0045】
本発明に係るポリマー(A)は、本発明の親水性膜形成用組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。ここで、不揮発成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。
【0046】
以下に、ポリマー(A)の具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0047】
【化11】

【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
【化15】

【0052】
〔(B)親水性ポリマー〕
本発明の親水性組成物は、前記ポリマー(A)の他に、(B)親水性ポリマーを含有してもよい。
(B)親水性ポリマーは、下記一般式(B−I)で表される構造を有するものでもよい。一般式(B−I)において、右側に記載された構成単位は、親水性ポリマーの主鎖を構成する繰り返し単位であり、左側に記載された官能基は、重合反応後のポリマー鎖の末端に存在する。
【0053】
【化16】

【0054】
一般式(B−I)中、R101,R102、R103、R104、R105はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。mは1〜3の整数を表し、L101、L102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0055】
101〜R105が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、前記一般式(I−1)におけるR〜Rと同様のものである。R101〜R105はさらに置換基を有してもよく、導入可能な置換基としは前記一般式(I−1)におけるR〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0056】
101、L102はそれぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。
102は具体的には前記一般式(I−1)におけるLと同様のものが挙げられる。
101としては前記一般式(I−4)におけるAと同様のものが挙げられる。
【0057】
以下に、一般式(B−I)で表される構造を有するポリマーの具体例〔例示化合物(B−I−1)〜(B−I−90)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。また、n、m、kで示される値は各構造単位が含まれる数を意味し、n、m、kが複数記載されている場合は各構造単位が記載された個数でランダム共重合体を形成していることを意味する。
【0058】
【化17】

【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
一般式(B−I)で表される構造単位を有する親水性ポリマーは、公知の方法で合成することができる。詳細は特開2007−138105号公報に記載されている。
【0068】
また、上記特定親水性ポリマーは、後述するような他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0069】
アクリル酸エステル類の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、(n−またはi−)プロピルアクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ヒドロキシフェネチルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート、スルファモイルフェニルアクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルアクリレート等が挙げられる。
【0070】
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n−またはi−)プロピルメタクリレート、(n−、i−、sec−またはt−)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート、スルファモイルフェニルメタクリレート、2−(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0071】
アクリルアミド類の具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−トリルアクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)アクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)アクリルアミド、N−(トリルスルホニル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0072】
メタクリルアミド類の具体例としては、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−トリルメタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(スルファモイルフェニル)メタクリルアミド、N−(フェニルスルホニル)メタクリルアミド、N−(トリルスルホニル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−フェニルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0073】
ビニルエステル類の具体例としては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルベンゾエート等が挙げられる。
スチレン類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、シクロヘキシルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン、メトキシスチレン、ジメトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、カルボキシスチレン等が挙げられる。
【0074】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(A)特定親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(B)親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0075】
本発明で使用することのできる(B)特定親水性ポリマーは、下記一般式(B−II)で示される構造単位を有するものでもよい。
【0076】
【化26】

【0077】
一般式(B−II)中、R201〜R208はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。L201は単結合又は多価の有機連結基を表す。L202は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100であり、A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0078】
201〜R208が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、前記一般式(I−1)におけるR〜Rと同様のものである。R201〜R208はさらに置換基を有してもよく、導入可能な置換基としは前記一般式(I−1)におけるR〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0079】
201は具体的には前記一般式(I−1)におけるLと同様のものが挙げられる。
201としては前記一般式(I−4)におけるAと同様のものが挙げられる。
【0080】
202は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
【0081】
x及びyは各構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<0である。xは10<x<99の範囲であることが好ましく、50<x<99の範囲であることがさらに好ましい。yは1<y<90の範囲であることが好ましく、1<y<50の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する各構造単位は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよい。
【0082】
以下に、一般式(B−II)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(B−II−1)〜(B−II−90)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。また、n、m、kで示される値は各構造単位が含まれる数を意味し、n、m、kが複数記載されている場合は各構造単位が記載された個数でランダム共重合体を形成していることを意味する。
【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
【化30】

【0087】
【化31】

【0088】
【化32】

【0089】
【化33】

【0090】
【化34】

【0091】
【化35】

【0092】
一般式(B−II)で表される親水性ポリマーを合成するためのモノマーの各化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
一般式(B−II)で表される親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0093】
また、上記特定親水性ポリマーは、前述の一般式(B−I)で表される親水性ポリマーのところで記載したような他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(B)特定親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(B)特定親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0094】
本発明で使用することのできる(B)特定親水性ポリマーは、下記一般式(B−III)で示される構造単位を有するものでもよい。
【0095】
【化36】

【0096】
一般式(B−III)中、R301〜R311は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。L301、L302及びL303は、それぞれ独立に、単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0097】
301〜R311が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、前記一般式(I−1)におけるR〜Rと同様のものである。R301〜R311はさらに置換基を有してもよく、導入可能な置換基としは前記一般式(I−1)におけるR〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0098】
301、L302及びL303は具体的には前記一般式(I−1)におけるLと同様のものが挙げられる。
また、A301は親水基であって、具体的には前記一般式(I−4)におけるAと同様のものが挙げられる。
【0099】
x及びyは各構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<0である。xは10<x<99の範囲であることが好ましく、50<x<99の範囲であることがさらに好ましい。yは1<y<90の範囲であることが好ましく、1<y<50の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する各構造単位は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよい。
【0100】
グラフトポリマーの合成方法としては、基本的に1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.枝高分子重合部位を導入し重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これら3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる(A)特定親水性ポリマーを合成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0101】
マクロモノマー(マクロマー)を使用したグラフトポリマーの合成は‘‘新高分子実験学2、高分子の合成・反応’’高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また、山下雄也著‘‘マクロモノマーの化学と工業’’アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用される(B)親水性ポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性マクロモノマー(特定親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と(D)特定アルコキシドと反応し得る官能基を有する連鎖移動剤での重合により合成することができる。
【0102】
また、上記特定親水性ポリマーは、前述の一般式(B−I)で表される親水性ポリマーのところで記載したような他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、(B)特定親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、(B)特定親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0103】
以下に、一般式(B−III)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(B−III−1)〜(B−III−50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例において、ポリマー主鎖上の各構造単位の括弧の横に記載の数値は各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを示す。また、n、m、kで示される値は各構造単位が含まれる数を意味し、n、m、kが複数記載されている場合は各構造単位が記載された個数でランダム共重合体を形成していることを意味する。
【0104】
【化37】

【0105】
【化38】

【0106】
【化39】

【0107】
【化40】

【0108】
【化41】

【0109】
本発明で使用することのできる(B)特定親水性ポリマーは、下記一般式(B−IV)で示される構造単位を有するものでもよい。該親水性ポリマーは、一般式(B−IV)における右側の構造単位を含んでなるポリマー鎖の末端に左側の部分構造を有するポリマーである。
【0110】
【化42】

【0111】
一般式(B−IV)中、R401〜R408はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基(好ましくは炭素数1〜8)を表す。L401、L402及びL403は単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。A401は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【0112】
401〜R408が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、前記一般式(I−1)におけるR〜Rと同様のものである。R401〜R408はさらに置換基を有してもよく、導入可能な置換基としは前記一般式(I−1)におけるR〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0113】
401、L402及びL403は具体的には前記一般式(I−1)におけるLと同様のものが挙げられる。
また、A401は親水基であって、具体的には前記一般式(I−4)におけるAと同様のものが挙げられる。
【0114】
一般式(B−IV)で表されるポリマーの合成方法は、前記一般式(B−III)で表されるポリマーの合成方法と同様である。
【0115】
また、上記特定親水性ポリマーは、前述の一般式(B−I)で表される親水性ポリマーのところで記載したような他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0116】
以下に、一般式(B−IV)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(B−IV−1)〜(B−IV−50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。また、n、m、kで示される値は各構造単位が含まれる数を意味し、n、m、kが複数記載されている場合は各構造単位が記載された個数でランダム共重合体を形成していることを意味する。
【0117】
【化43】

【0118】
【化44】

【0119】
【化45】

【0120】
【化46】

【0121】
【化47】

【0122】
親水性ポリマー(B)は、本発明の親水性膜形成用組成物の不揮発性成分に対して、親水性の観点から、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは15〜85質量%、最も好ましくは20〜75質量%の範囲で含有される。ここで、不揮発成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。親水性ポリマー(B)1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0123】
(B)親水性ポリマーの質量平均分子量としては1,000〜10,000,000の範囲であり、好ましい範囲は5,000〜5,000,000であり、より好ましくは10,000〜2,000,000である。
【0124】
前述した(B)特定親水性ポリマーは単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。一般式(B−I)で表される特定親水性ポリマー((B−I)特定親水性ポリマー)と一般式(B−II)で表される特定親水性ポリマー((B−II)特定親水性ポリマー)を混合して用いる場合、親水性組成物中に含まれる(B−I)親水性ポリマーと(B−II)親水性ポリマーの質量比((B−I)親水性ポリマー/(B−II)親水性ポリマー)は5/95〜50/50の範囲であることが好ましい。8/92〜45/55であることがより好ましく、10/90〜40/60であることがさらに好ましい。
一般式(B−III)で表される特定親水性ポリマー((B−III)特定親水性ポリマー)と一般式(B−IV)で表される特定親水性ポリマー((B−IV)特定親水性ポリマー)を混合して用いる場合、親水性組成物中に含まれる(B−III)親水性ポリマーと(B−IV)親水性ポリマーの質量比((B−III)親水性ポリマー/(B−IV)親水性ポリマー)は95/5〜50/50の範囲であることが好ましい。92/8〜55/45であることがより好ましく、90/10〜60/40であることがさらに好ましい。
【0125】
〔(C)硬化触媒〕
本発明の親水性組成物においては、ポリマー(A)、さらに(D)特定アルコキシドなどの架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、このような(C)硬化触媒を含有させることが好ましい。
【0126】
本発明で用いられる(C)硬化触媒としては、下記(D)アルコキシド化合物を加水分解、重縮合し、(A)特定ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0127】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0128】
金属錯体からなるルイス酸触媒もまた好ましく使用できる。特に好ましい触媒は、金属錯体触媒であり、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,Sr,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0129】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0130】
好ましい配位子はアセチルアセトンまたはアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0131】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0132】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0133】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。
金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec.16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0134】
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0135】
本発明に係る(C)触媒は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、(C)触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0136】
〔(D)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物〕
本発明で用いられる(D)特定アルコキシドであるSi、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、(A)ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な被膜を形成する。
(D)特定アルコキシドは、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましく、親水性膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記(A)ポリマー、(D)一般式(II)で表される特定アルコキシドを混合して基板表面に被覆し、加熱、乾燥する。
【0137】
【化48】

【0138】
一般式(II)中、R501は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R502はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R501及びR502がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0139】
以下に、一般式(II)で表される特定アルコキシドの具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
YがSiの場合、即ち、特定アルコキシド中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0140】
YがAlである場合、即ち、特定アルコキシド中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシドが被膜性の観点から好ましい。
【0141】
本発明に係る(D)特定アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
(D)特定アルコキシドは、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
特定アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0142】
〔(E)界面活性剤〕
さらに本発明の親水性組成物は(E)界面活性剤を有する。(E)界面活性剤は基板上に被膜を形成する際の被膜面状を向上する効果のみならず、親水性を向上させる効果がある。界面活性剤による親水性向上は、界面活性剤自身が溶け出すことによるものが一般的であるが、本発明での(E)界面活性剤はその他の効果がある。被膜形成時に(E)界面活性剤が表面へ偏在する際、(E)界面活性剤の親水性官能基が特定ポリマー(A)、親水性ポリマー(B)中の親水性官能基と相互作用し、特定ポリマー(A)、親水性ポリマー(B)中の親水性官能基も同時に表面に偏在させることができる。これにより本発明では非常に高い親水性を発現できる。また、形成された被膜の表面自由エネルギーが75mN/m以上となることで、被膜表面に付着した汚れ成分と被膜の間に水が入り込み優れた防汚性を発現できる。好ましくは80mN/m以上であり、特に好ましくは83mN/m以上である。表面自由エネルギーが83mN/m以上となることで、水との親和性が高くなり、より防汚性に優れた親水性部材となる。
【0143】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。(E)界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0144】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0145】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0146】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0147】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0148】
好ましい界面活性剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0149】
【化49】

【0150】
本発明の親水性組成物には、前記成分に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
【0151】
〔抗菌剤〕
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性塗布液組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤または、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0152】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10'−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N'−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2'−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0153】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0154】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水層や塗布液に対して安定に分散することができ、親水層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0155】
抗菌剤の含有量は、一般的には、親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0156】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性組成物には、形成される親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性向上のために無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が、好ましくは5nm〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmであるのがよい。上記範囲であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、親水性に優れる膜を形成することができる。上述したような無機微粒子はコロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
【0157】
本発明に係る無機微粒子は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の範囲で使用される。また、無機微粒子は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0158】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0159】
〔酸化防止剤〕
本発明の親水性部材の安定性向上のため、親水性層形成用塗布液に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0160】
〔溶剤〕
本発明の親水性部材の親水性層形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性部材形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0161】
〔高分子化合物〕
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0162】
〔その他の添加剤〕
さらにこの他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0163】
本発明の親水性部材の親水性層形成用塗布液には、耐摩耗性、耐酸性及び耐アルカリ性の観点から、ジルコニアの塩化物、硝酸塩、アルコキシド類および有機錯体を含有することができる。ジルコニアの塩化物としては、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム(8水和物)、塩素含有ジルコニウムアルコキシドZr(OC2m+1)Cl(m、x、y:整数、x+y=4)などが挙げられ、ジルコニウムの硝酸塩としては、オキシ硝酸ジルコニウム(2水和物)が挙げられ、ジルコニウムのアルコキシドとしては、ジルコニウムエトキシド,ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシドなどが挙げられ、有機錯体としては、アセチルアセトン誘導体が挙げられ、具体的にはテトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナト)ジルコニウムジブトキシド、ビス(アセチルアセトナト)ジルコニウムジクロリド、テトラキス(3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウム、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ジルコニウムジイソプロポキシドなどが挙げられる。
上記ジルコニウム化合物は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分として、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。
【0164】
〔親水性部材〕
本発明の親水性部材は、ポリマー(A)、好ましくはさらに親水性ポリマー(B)、(C)触媒、(D)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物を含有する親水性組成物を塗布し、加熱、乾燥することにより形成された親水成膜を有する。基板と親水膜との間に下塗層を有することがより好ましい。
【0165】
〔下塗層〕
基板と親水性層の間に一層以上の下塗り層を設けることができる。
本発明の親水性組成物を用いて形成した親水性層1は下塗り層として使用されることが好ましい。その場合、該下塗り層の上に、さらに別の親水性層2を形成することができる。親水性層2は、前記親水性ポリマー(B)を含有する組成物を塗布、乾燥して形成されたものであることがより好ましい。
【0166】
下塗り層の素材としては、その他、例えば、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
【0167】
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0168】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m2 が好ましく、0.1〜10g/m2 がより好ましい。
【0169】
本発明の親水性部材の下塗層は不揮発性の触媒を含有することが好ましい。不揮発性の触媒とは、沸点が125℃未満のもの以外のものであり、換言すれば、沸点が125℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等である。
本発明に用いられる不揮発性の触媒としては、特に限定されないが、金属のキレート化合物やシランカップリング剤が挙げられる。
【0170】
前記金属のキレート化合物(以下、金属錯体とも称する)としては、特に限定されないが、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体がある。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,St,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
具体的は(C)触媒で示された金属錯体で示されたものと同様のものが挙げられる。
【0171】
本発明において、不揮発性の触媒として用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、酸性またはアルカリ性を示す官能基を有するものが挙げられ、さらに詳細には、ペルオキソ酸、カルボン酸、カルボヒドラゾン酸、カルボキシミド酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、セレノン酸、セレニン酸、セレネン酸、テルロン酸、及び上記のアルカリ金属塩などといった酸性を示す官能基、或いは、アミノ基などといった塩基性を示す官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0172】
下塗層はSi、Ti,Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させたものであることが好ましい。Si、Ti,Zr、Alから選択される元素のアルコキシド化合物とは(B)特定アルコキシドで示されたものと同様のものが挙げられる。
【0173】
このようにして得られた下塗層は、その中に不揮発性の触媒が活性を失わずに含有されて存在し、特にその表面にも存在することにより、該下塗層上にさらに親水性層を設けた場合には、該下塗層と親水性層の界面における密着性が極めて高いものとなる。
【0174】
また、下塗層は、プラズマエッチングまたは金属粒子を混入させて微細凹凸を設けることにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性をさらに高いものとすることができる。
【0175】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、(A)ポリマー、好ましくは親水性ポリマー(B)、(C)触媒、(D)特定アルコキシドをエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0176】
親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、前記含有成分を均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0177】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
このような本発明の親水性組成物を含む溶液を、適切な基板上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、基板上に、前記本発明の親水性組成物を被膜し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜を有するものである。
親水性膜の形成において、親水性組成物を含む溶液を被膜した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0178】
また、本発明の親水性部材は、親水性層及び下塗層を基板上に被膜する場合、触媒を基板に被膜する直前に混合することができる。具体的には触媒混合直後〜1時間以内で塗設することが好ましい。触媒を混合し、長時間放置したのちに塗設すると親水性組成物の粘度があがり、塗布むら等の欠陥を生じることがある。その他の成分も塗設直前に混合することが好ましいが混合後、長時間保存してもかまわない。
【0179】
〔基板〕
本発明に用いられる基板は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。好ましい基板は、金属基板であり、特に好ましくはアルミニウム製の基板である。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、または、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0180】
基板の厚さは0.05〜0.6mmであるのが好ましく、0.08〜0.4mmであるのがより好ましい。
【0181】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および光重合層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0182】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いてもかまわない。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0183】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0184】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/m2であるのが好ましく、1.5〜4.0g/m2であるのがより好ましい。
【0185】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性の一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理および親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろんこれら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。
たとえば封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0186】
<封孔処理>
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、中でも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0187】
<無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理>
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。中でも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0188】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0189】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、更に、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組合せは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0190】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0191】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回または複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0192】
<水蒸気による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧または常圧の水蒸気を連続的にまたは非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.00×105〜1.043×105Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0193】
<熱水による封孔処理>
水蒸気による封孔処理は、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)または有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0194】
<親水化処理>
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理し、または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
【0195】
本発明の親水性組成物は、アルミニウム製フィン材に塗布して、親水膜を形成し、エアコンの熱交換器に用いることが好ましい。
エアコンとは、エアーコンディショナー(Air Conditioner)の略で、調温、調湿、調和する装置で、クーラーとヒーターを組み合わせた空気調和装置、すなわち冷暖房機のことであり、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコンなどの総称を指す。
熱交換器とは、高温の流体がもつ熱エネルギーを低温の流体に伝える装置であり、直接接触方式、隔板や蓄熱器を用いる方式があり、加熱器・冷却器・蒸発器・凝縮器などに使用することができる。熱交換器の用途として、例えば室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー(油圧作動の建設機械用オイルを冷却)、自動車のラジエーター(エンジンの過熱や加冷を防ぎ、一定温度に保つもの)、コンデンサー(圧縮された高圧ガスは、圧縮熱で暖かくなっているので、この高圧ガスを前面冷却風で冷やし液化状態に戻すもの)、エバポレーター(エアコン関係の中にあり、冷媒のガスを気化させ、廻りの温度を下げるもの)、インタークーラー、車両用ヒーター等が挙げられる。熱交換器はエアコンの部品であり、熱媒体を移動させるパイプと空気中の熱を吸収または熱媒体中の熱を放散させるフィン材から構成される。フィン材表面は結露水によるフィンピッチ間のブリッジ生成を防止するため、親水処理がなされている。近年は汚染物質が存在する環境でも長期間親水性が維持されるフィン材が強く求められている(参考文献:特殊機能コーティング技術 p215〜226 2007年 CMC出版、特開2003−201577号公報)。
フィン材にはアルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。該アルミニウム材はアルミニウム純度99%以上、150μm以下の厚み、表面粗さ0.1〜0.4μmのものが好ましく用いられる。また、フィン材に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン材は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
例えば、熱交換器用フィン材に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシートおよびコイルのいずれでも良い。
【0196】
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0197】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(特定ポリマー(A−1)の合成)
300ml三口フラスコにホスマーPE(ユニケミカル社製)19.8g、アクリルアミド6.8g、アクリルアミド−3−(トリエトキシシリル)プロピル10.6g、及び1−メトキシ−2−プロパノール160gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.3gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。n−ヘキサン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をn−ヘキサンにて洗浄後、前記例示化合物である特定ポリマー(A−1)を得た。乾燥後の質量は34.6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量22,000のポリマーであった。
以後、実施例にて使用した特定ポリマーは上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。
【0198】
(実施例1)
〔親水性ゾルゲル液〕
精製水100gに対して、特定ポリマー(A−1)10gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液120gに下記アニオン系界面活性剤1の5質量%水溶液2.5gを混合し、親水性組成物とした。
【0199】
【化50】

【0200】
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に前記親水性組成物をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成した。
【0201】
(実施例2〜4)
特定ポリマー(A−1)を下記のものに変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
実施例2:特定ポリマー(A−2)
実施例3:特定ポリマー(A−3)
実施例4:特定ポリマー(A−4)
【0202】
(実施例5)
〔親水性ゾルゲル液〕
エチルアルコール2g、硬化触媒(C)として1N塩酸水溶液0.05g、精製水100g中に、特定ポリマー(A−1)10gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液120gに上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液2.5gを混合し、親水性組成物とした。
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に前記親水性組成物をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成した。
【0203】
(実施例6)
硬化触媒(C)を下記のものに変更した以外は実施例5と同様の親水性部材を作成した。
実施例6:チタンアセチルアセトナート1g
アセチルアセトン0.5g、オルトチタン酸テトラエチル0.5gを親水性ゾルゲル液に加えて調製した。
【0204】
(実施例7〜9)
特定ポリマー(A−1)を下記のものに変更した以外は実施例6と同様に親水性部材を作成した。
実施例7:特定ポリマー(A−2)
実施例8:特定ポリマー(A−3)
実施例9:特定ポリマー(A−4)
【0205】
(比較例1)
前記実施例6において、本発明の特定ポリマー(A−1)に代えて、下記構造を有する本発明の範囲外の比較親水性ポリマー(i)(質量平均分子量15000)を用いた他は、同様にして比較例1の表面親水性部材を得た。
【0206】
【化51】

【0207】
(比較例2)
前記実施例6において、本発明の特定ポリマー(A−1)に代えて、下記構造を有する本発明の範囲外の比較親水性ポリマー(ii)(質量平均分子量20000)を用いた他は、同様にして比較例2の表面親水性部材を得た。
【0208】
【化52】

【0209】
(実施例10)
〔親水性ゾルゲル液〕
エチルアルコール20g、硬化触媒(C)としてアセチルアセトン1g、オルトチタン酸テトラエチル1g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン12gと特定ポリマー(A−1)4gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液140gに上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液4g、精製水60gを混合し、親水性組成物とした。
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に前記親水性組成物をバー塗布し、100℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成した。
【0210】
(実施例11〜13)
特定アルコキシド(D)を下記のものに変更した以外は実施例11と同様に親水性部材を作成した。
実施例11:トリエトキシアルミネート
実施例12:テトラエトキシジルコネート
実施例13:テトラエトキシチタネート
【0211】
(実施例14〜16)
特定ポリマー(A−1)を下記のものに変更した以外は実施例11と同様に親水性部材を作成した。
実施例14:特定ポリマー(A−2)
実施例15:特定ポリマー(A−3)
実施例16:特定ポリマー(A−4)
【0212】
(比較例3)
前記実施10において、本発明の特定ポリマー(A−1)に代えて、前記構造を有する本発明の範囲外の比較親水性ポリマー(i)(質量平均分子量15000)を用いた他は、同様にして比較例1の表面親水性部材を得た。
(比較例4)
前記実施例10において、本発明の特定ポリマー(A−1)に代えて、前記構造を有する本発明の範囲外の比較親水性ポリマー(ii)(質量平均分子量20000)を用いた他は、同様にして比較例4の表面親水性部材を得た。
【0213】
(実施例17)
〔親水性ゾルゲル液〕
エチルアルコール2g、硬化触媒(C)としてアセチルアセトン0.1g、オルトチタン酸テトラエチル0.1g、精製水100g中に、特定ポリマー(A−1)8g、特定親水性ポリマー(B−I−1)2gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液120gに上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液2.5gを混合し、親水性組成物とした。
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に前記親水性組成物をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成した。
【0214】
(実施例18〜20)
特定親水性ポリマー(B−I−1)を下記のものに変更した以外は実施例17と同様に親水性部材を作成した。
実施例18:特定親水性ポリマー(B−II−1)
実施例19:特定親水性ポリマー(B−III−1)
実施例20:特定親水性ポリマー(B−IV−1)
【0215】
(実施例21)
〔親水性ゾルゲル液〕
エチルアルコール20g、硬化触媒(C)としてアセチルアセトン1g、オルトチタン酸テトラエチル1g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン12gと特定ポリマー(A−1)3g、特定親水性ポリマー(B−II−1)1gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液140gに上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液4g、精製水60gを混合し、親水性組成物とした。
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に前記親水性組成物をバー塗布し、100℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性層を形成した。
【0216】
(実施例22)
特定親水性ポリマー(B−II−1)を下記のものに変更した以外は実施例21と同様に親水性部材を作成した。
実施例22:特定親水性ポリマー(B−III−1)
【0217】
(実施例23〜28)
特定親水性ポリマー(B−I−1)を下記の混合物に変更した以外は実施例17と同様に親水性部材を作成した。
実施例23:特定親水性ポリマー(B−I−1)0.5g、特定親水性ポリマー(B−II−1)1.5g
実施例24:特定親水性ポリマー(B−I−1)0.1g、特定親水性ポリマー(B−II−1)1.9g
実施例25:特定親水性ポリマー(B−I−1)1.0g、特定親水性ポリマー(B−II−1)1.0g
実施例26:特定親水性ポリマー(B−III−1)1.5g、特定親水性ポリマー(B−IV−1)0.5g
実施例27:特定親水性ポリマー(B−III−1)1.9g、特定親水性ポリマー(B−IV−1)0.1g
実施例28:特定親水性ポリマー(B−III−1)1.0g、特定親水性ポリマー(B−IV−1)1.0g
【0218】
(実施例29、30)
特定親水性ポリマー(B−II−1)を下記の混合物に変更した以外は実施例21と同様に親水性部材を作成した。
実施例23:特定親水性ポリマー(B−I−1)0.5g、特定親水性ポリマー(B−II−1)1.5g
実施例24:特定親水性ポリマー(B−III−1)1.5g、特定親水性ポリマー(B−IV−1)0.5g
【0219】
(実施例31)
〔下塗り層用ゾルゲル液〕
エチルアルコール2g、精製水100gに対して、特定ポリマー(A−1)10g、硬化触媒(C)としてアセチルアセトン0.5g、オルトチタン酸テトラエチル0.5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔下塗り層用組成物〕
前記下塗り層用ゾルゲル液120gに上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液2.5gを混合し、親水性組成物とした。
【0220】
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に上記下塗り層用組成物をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.2g/m2の下塗り層を形成した。室温まで十分冷却した後に、下塗り層上に実施例18と同様の親水性層を形成し、実施例31の親水性部材を得た。
【0221】
(実施例32〜34)
実施例31の親水性層を下記実施例の親水性層に変更した以外は実施例31と同様に親水性部材を作成した。
実施例32:実施例21の親水性層
実施例33:実施例23の親水性層
実施例34:実施例29の親水性層
【0222】
(実施例35)
〔下塗り層用ゾルゲル液〕
エチルアルコール20g、硬化触媒(C)としてアセチルアセトン1g、オルトチタン酸テトラエチル1g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン12gと特定ポリマー(A−1)4gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
〔下塗り層用組成物〕
前記親水性ゾルゲル液140gに上記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液4g、精製水60gを混合し、親水性組成物とした。
【0223】
〔塗布方法〕
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、該アルミ基板に上記下塗り層用組成物をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.2g/m2の親水性層を形成した。室温まで十分冷却した後に、下塗り層上に実施例18の親水性層を形成し、実施例35の親水性部材を得た。
【0224】
(実施例36〜38)
実施例35の親水性層を下記実施例の親水性層に変更した以外は実施例35と同様に親水性部材を作成した。
実施例36:実施例21の親水性層
実施例37:実施例23の親水性層
実施例38:実施例29の親水性層
【0225】
〔親水性部材の評価〕
〔表面自由エネルギー〕
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角(協和界面科学(株)製、DropMaster500)で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
【0226】
〔防錆性の評価〕
JIS Z2371に記載の方法に準じて、塩水噴霧試験を行った。見た目の変化を目視により観察する。
◎:変化が観察されない
○:10点未満の白化が観察される
△:10点以上、15点未満の白化が観察される
×:上記以上の白化が観察される
【0227】
〔防汚性の評価〕
上記で得られた親水性部材表面に油性インク(三菱鉛筆株式会社製油性マーカー)で線を書き、水を掛け続け、流れ落ちるかを感能評価した。
◎:インクが1分以内に取れる
○:インクが1分を超え2分以内に取れる
△:インクが2分を超え5分以内に取れる
×:5分を超え10分間にわたり実施してもインクがとれない
【0228】
〔耐水性の評価〕
上記で得られた親水性部材を精製水に80℃、60時間浸漬させ、風乾した後に水滴接触角(協和界面科学(株)製、DropMaster500)で測定した。
◎:初期水滴接触角との差が5°未満
○:初期水滴接触角との差が5°以上、7°未満
△:初期水滴接触角との差が7°以上、10°未満
×:初期水滴接触角との差が10°以上
【0229】
〔水の乾燥速度評価〕
上記で得られた親水性部材に約1cm3の純水を滴下し、25℃50%RH環境下で静置させ、水滴が乾くまでの時間を5分おきに目視観察して測定した。
【0230】
〔液安定性〕
上記親水性部材を作成するのに用いた親水性組成物を25℃、45RH%の環境下で2週間静置させ、その液の変化を観察した。
各評価結果は下記表1〜表4に示す。
【0231】
【表1】

【0232】
表1に明らかなように、本発明の親水性組成物を用いて形成した親水性膜は、防錆性、耐水性、速乾性に優れる。さらに触媒を添加することで、加水分解・縮合反応が進行し、非常に優れた防錆性、耐水性を示す親水性部材を提供できる。リン酸基を有する特定ポリマーを用いた場合はアルミ基板との密着性向上だけでなく、比較的高い親水性を示した。また、アセトアセチル基を有する特定ポリマーを用いた場合は、液安定性に優れていた。本発明の(A)特定ポリマーを用いても界面活性剤が無い場合は、表面自由エネルギーが低下し、十分な防汚性を有さないことが明らかとなった。さらに、アルミ基板と相互作用をする官能基を有していない比較ポリマーを用いた比較例2,3、4は、表面自由エネルギー及び密着性不足により防錆性、防汚性、耐水性に劣る。
【0233】
【表2】

【0234】
表2に明らかなように、親水性組成物中に特定アルコキシド化合物を添加しても優れた防錆性、耐水性、速乾性を示す。比較ポリマーを用いた比較例5〜7はゾルゲル架橋構造の中にポリマーが閉じこめられるため、被膜として機能を果たし、ポリマー単独に比べると防錆性が良くなるものの、密着性が不足しているため耐水性が不十分であった。
【0235】
【表3】

【0236】
表3に明らかなように、さらに、本発明の親水性組成物および親水性部材は特定親水性ポリマーを添加することで、親水性が向上し、防汚性が向上する。
【0237】
【表4】

【0238】
表4に明らかなように、本発明の親水性組成物からなる被膜を下塗り層として用い、その上にさらに別の親水性組成物を用いて親水性層を形成することで、密着性、親水性が非常に向上し、防錆性、耐水性、防汚性、速乾性に優れた親水性部材を提供できることが明らかとなった。
【0239】
表5〜8に、実施例および比較例で使用した各材料をまとめて記載した。
【0240】
【表5】

【0241】
【表6】

【0242】
【表7】

【0243】
【表8】

【0244】
(注)Si(OMe):テトラメトキシシラン
Al(OEt):トリエトキシアルミネート
Zr(OEt):テトラエトキシジルコネート
Ti(OEt):テトラエトキシチタネート
HCl:塩酸
Ti:アセチルアセトンおよびオルトチタン酸テトラエチルからなる触媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と相互作用可能な官能基を有するポリマー(A)、及び(E)界面活性剤を含有する親水性組成物であって、該親水性組成物を用いて基板上に膜を形成した場合の該膜の表面自由エネルギーが75mN/m以上であることを特徴とする親水性組成物。
【請求項2】
前記ポリマー(A)が加水分解性シリル基を有することを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
【請求項3】
前記ポリマー(A)が、親水性であることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性組成物。
【請求項4】
さらに、親水性ポリマー(B)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項5】
前記親水性ポリマー(B)が加水分解性シリル基を有することを特徴とする請求項4に記載の親水性組成物。
【請求項6】
さらに、(C)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項7】
さらに、(D)Si、Ti,Zr、Alから選択されるいずれかの元素を含むアルコキシド化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項8】
前記基板と相互作用可能な官能基が、下記に示す官能基のいずれか少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の親水性組成物。
【化1】

上記式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、またはアルケニル基を表し、MおよびMはそれぞれ独立に、水素原子、金属原子、またはアンモニウム基を表し、X-はカウンターアニオンを表す。
【請求項9】
前記(E)界面活性剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項10】
前記親水性ポリマー(B)が下記一般式(B−II)で示される構造または下記一般式(B−III)で示される構造のいずれか少なくとも1種を有することを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の親水性組成物。
【化2】


一般式(B−II)中、R201〜R208はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。L201は単結合又は多価の有機連結基を表す。L202は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【化3】


一般式(B−III)中、R301〜R311は、それぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。L301、L302及びL303は、それぞれ独立に、単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100である。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項11】
さらに下記一般式(B−I)で示される構造または下記一般式(B−IV)で示される構造のいずれか少なくとも1種を有する親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求項10に記載の親水性組成物。
【化4】


一般式(B−I)中、R101,R102、R103、R104、R105はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。mは1〜3の整数を表し、L101、L102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【化5】


一般式(B−IV)中、R401〜R408はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。L401、L402及びL403は単結合又は多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。A401は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子または直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはオニウムを表し、Rは、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、または有機アニオンを表す。
【請求項12】
前記基板がアルミニウム製基板であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項13】
基板上に請求項1〜12のいずれかに記載の親水性組成物を塗設して、親水性層を形成したことを特徴とする親水性部材。
【請求項14】
基板上に下塗り層として、請求項1〜12のいずれかに記載の親水性組成物を塗設して形成した親水性層(1)を有し、その上にさらに別の親水性層(2)を有することを特徴とする親水性部材。
【請求項15】
前記親水性層(2)が親水性ポリマー(B)を含有する親水性組成物を塗設して形成したものであることを特徴とする請求項14に記載の親水性部材。
【請求項16】
前記親水性組成物が(C)硬化触媒を含有することを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項17】
前記親水性組成物が(D)Si、Ti,Zr、Alから選択されるいずれかの元素のアルコキシド化合物を含有することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項18】
前記基板がアルミニウム製であることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の親水性部材。
【請求項19】
請求項13〜18のいずれかに記載の親水性部材において、前記基板がフィン材であることを特徴とするフィン材。
【請求項20】
請求項19に記載のフィン材を用いたことを特徴とする熱交換器。
【請求項21】
請求項20に記載の熱交換器を用いたことを特徴とするエアコン。

【公開番号】特開2009−256578(P2009−256578A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238537(P2008−238537)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】