説明

観察光学系およびレーザ加工装置

【課題】対象物の位置決め用の印と濃淡パターンの両方を良好に観察する。
【解決手段】照明装置117の光源から発せられた照明光は、集光レンズ118を透過し、ハーフミラー120により反射され、ダイクロイックミラー115を透過し、対物レンズ116の瞳において結像された後、対物レンズ116を介して太陽電池パネル102に照射される。太陽電池パネル102からの反射光は、対物レンズ116、ダイクロイックミラー115、ハーフミラー120を透過し、結像レンズ121により結像される。遮光体119は、照明光の波長をλ、太陽電池パネル102のアライメントマークの線幅をwとした場合、対物レンズ116の略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する照明光を遮断する。本発明は、例えば、レーザ加工装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察光学系およびレーザ加工装置に関し、特に、対象物の位置決め用の印と濃淡パターンを良好に観察できるようにした観察光学系およびレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板等の対象物に設けられている位置決め用のアライメントマークの観察に用いる観察光学系として、明視野光学系が用いられている。しかし、従来の明視野光学系では、対象物からの反射光に含まれるアライメントマークの信号光が、その他の雑音光に比べて小さくて、低いコントラストでしかアライメントマークを観察できないことがあった。
【0003】
そこで、高いコントラストでアライメントマークを観察できる暗視野光学系が用いられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−306609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の暗視野光学系では、例えば滑らかな平面など、対象物の散乱光が発生しない領域(以下、非散乱領域と称する)が真っ暗になり、その領域の濃淡パターンを観察することができない。そのため、非散乱領域の濃淡パターンを観察するためには、使用する光学系を暗視野光学系から明視野光学系に切替えなければならなかった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、対象物のアライメントマークと濃淡パターンの両方を良好に観察できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面の観察光学系は、対象物の位置決め用の印を観察するための観察光学系において、対物レンズと、光源から発せられる照明光を前記対物レンズの瞳において結像させる集光レンズと、前記対物レンズを介して前記照明光が照射された前記対象物からの反射光であって、前記対物レンズを透過した後の反射光を結像する結像レンズと、前記集光レンズと前記対物レンズの間、かつ、前記対物レンズと前記結像レンズの間において、前記照明光と前記反射光の光路を分岐する分岐手段と、前記照明光の波長をλ、前記位置決め用の印の最も狭い部分の幅をwとした場合、前記集光レンズと前記分岐手段の間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記照明光を遮断する遮光手段、および、前記分岐手段と前記対物レンズの間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記反射光を遮断する遮光手段のうち少なくとも一方とを備える。
【0008】
本発明の第1の側面の観察光学系においては、照明光が、対物レンズの瞳において結像され、対物レンズを介して対象物に照射され、対象物からの反射光が、対物レンズを透過し、結像レンズにより結像される。また、対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する照明光または反射光が遮断される。
【0009】
従って、対象物の位置決め用の印と濃淡パターンの両方を良好に観察することができる。また、対象物の位置決め精度が向上するとともに、位置決め時間が短縮される。
【0010】
この光源は、例えば、LEDにより構成される。この分岐手段は、例えば、ハーフミラーにより構成される。この遮光手段は、例えば、金属板からなる遮光体、または、ガラス板に遮光膜を成膜した遮光体により構成される。
【0011】
この遮光手段は、前記照明光の断面と略同じ形状の遮光領域を有するようにすることができる。
【0012】
これにより、対象物に照射する照明光のムラをなくすることができる。
【0013】
この照明光は単色光にすることができる。
【0014】
これにより、位置決め用の印をより鮮明に観察することができる。
【0015】
本発明の第2の側面のレーザ加工装置は、対象物の位置決め用の印を観察するための観察光学系と、前記対象物に加工用のレーザ光を照射するための加工光学系とを備えるレーザ加工装置において、前記観察光学系は、照明光を発する光源と、対物レンズと、前記照明光を前記対物レンズの瞳において結像させる集光レンズと、前記対物レンズを介して前記照明光が照射された前記対象物からの反射光であって、前記対物レンズを透過した後の反射光を結像する結像レンズと、前記集光レンズと前記対物レンズの間、かつ、前記対物レンズと前記結像レンズの間において、前記照明光と前記反射光の光路を分岐する分岐手段と、前記照明光の波長をλ、前記位置決め用の印の最も狭い部分の幅をwとした場合、前記集光レンズと前記分岐手段の間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記照明光を遮断する遮光手段、および、前記分岐手段と前記対物レンズの間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記反射光を遮断する遮光手段のうち少なくとも一方とを備える。
【0016】
従って、対象物の位置決め用の印と濃淡パターンの両方を良好に観察することができる。また、対象物の位置決め精度が向上するとともに、位置決め時間が短縮される。その結果、レーザ加工の加工精度が向上するとともに、加工時間が短縮される。
【0017】
この光源は、例えば、LEDにより構成される。この分岐手段は、例えば、ハーフミラーにより構成される。この遮光手段は、例えば、金属板からなる遮光体、または、ガラス板に遮光膜を成膜した遮光体により構成される。
【0018】
このレーザ光は、前記対物レンズを介して前記対象物に照射されるようにすることができる。
【0019】
これにより、観察光学系と加工光学系の対物レンズを共通化することができ、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の側面または第2の側面によれば、観察する対象となる対象物の位置決め用の印と濃淡パターンの両方を良好に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を適用したレーザ加工装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】遮光体の第1の例を示す図である。
【図3】遮光体の第2の例を示す図である。
【図4】遮光体の第3の例を示す図である。
【図5】遮光体の第4の例を示す図である。
【図6】アライメントマークの例を示す図である。
【図7】アライメントマークを観察可能にする条件を説明するための図である。
【図8】対物レンズのOTF特性の例を示すグラフである。
【図9】対物レンズの中央の領域を除いたOTF特性の例を示すグラフである。
【図10】レーザ加工装置の作用効果について説明するための図である。
【図11】レーザ加工装置の作用効果について説明するための図である。
【図12】レーザ加工装置の作用効果について説明するための図である。
【図13】レーザ加工装置の作用効果について説明するための図である。
【図14】レーザ加工装置の作用効果について説明するための図である。
【図15】照明光の断面の例を示す図である。
【図16】集光レンズを透過した後の照明光の断面の例を示す図である。
【図17】円形の遮光領域を有する遮光体を通過した後の照明光の断面の例を示す図である。
【図18】矩形の遮光領域を有する遮光体を通過した後の照明光の断面の例を示す図である。
【図19】遮光体の第5の例を示す図である。
【図20】遮光体の第6の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0023】
<1.実施の形態>
[レーザ加工装置の構成例]
図1は、本発明を適用したレーザ加工装置101の光学系の一実施の形態を示す図である。
【0024】
レーザ加工装置101は、基板等の加工対象物のレーザ加工を行う装置である。なお、以下、加工対象物の一例として、太陽電池パネル102を挙げて説明する。
【0025】
レーザ加工装置101の光学系は、レーザ発振器111、ビームエキスパンダ112、スリット113、結像レンズ114、ダイクロイックミラー115、対物レンズ116、照明装置117、集光レンズ118、遮光体119、ハーフミラー120、結像レンズ121、および、CCD(Charge Coupled Device)カメラ122を含むように構成される。そのうち、レーザ発振器111、ビームエキスパンダ112、スリット113、結像レンズ114、ダイクロイックミラー115、および、対物レンズ116により、太陽電池パネル102に加工用のレーザ光を照射するための加工光学系が構成される。また、対物レンズ116、照明装置117、集光レンズ118、遮光体119、ハーフミラー120、結像レンズ121、および、CCDカメラ122により、太陽電池パネル102を観察するための観察光学系が構成される。
【0026】
まず、加工光学系の作用について説明する。
【0027】
レーザ発振器111から射出されたレーザ光は、ビームエキスパンダ112によりビーム径が広げられるとともにコリメートされ、スリット113を通過することにより、ビーム径が所定の大きさに制限される。スリット113を通過したレーザ光は、結像レンズ114によりコリメートされ、ダイクロイックミラー115により対物レンズ116の方向に反射され、対物レンズ116により、太陽電池パネル102の加工面において集光される。また、レーザ光は、ガルバノメータミラーなどの走査手段(不図示)により、太陽電池パネル102の加工面上を走査される。そして、このレーザ光により、太陽電池パネル102の加工面が加工される。
【0028】
次に、観察光学系の作用について説明する。
【0029】
照明装置117は、例えば、所定の波長(例えば、0.6μm)の単色のLED(Light Emitting Diode)からなる円形の光源を備えている。なお、本発明の光源は面光源と考えることができる。そして、照明装置117の光源から射出された断面が円形の照明光は、集光レンズ118により集光され、ハーフミラー120により対物レンズ116の方向に反射され、対物レンズ116の瞳において結像される。対物レンズ116の瞳において結像した照明光は、対物レンズ116によりフーリエ変換されて、太陽電池パネル102に照射される。
【0030】
太陽電池パネル102において反射された光(以下、反射光と称する)は、対物レンズ116、ダイクロイックミラー115、ハーフミラー120、および、結像レンズ121を透過して、CCDカメラ122に入射する。このとき、反射光は、対物レンズ116を透過した後、結像レンズ121により、CCDカメラ122のCCDイメージセンサ(不図示)の受光面上で結像され、反射光による像がCCDカメラ122により撮像される。
【0031】
また、集光レンズ118と対物レンズ116の間において、集光レンズ118のハーフミラー120側の近傍に遮光体119が設けられている。遮光体119は、例えば、ステンレス鋼などの金属板を加工したものであり、集光レンズ118を透過する照明光のうち、集光レンズ118の光軸近傍の光を遮断する。
【0032】
[遮光体の構成例]
ここで、図2乃至図5を参照して、レーザ加工装置101に用いられる遮光体の構成例について説明する。なお、図2乃至図5において、入射する照明光を遮断する遮光領域を網掛けで示している。
【0033】
図2の遮光体151には、円形の遮光領域151Aが中央に設けられている。また、遮光領域151Aを支持するために、遮光領域151Aとリング状の外周部151Bとが、直線状の接続部151C乃至151Fを介して接続されている。この遮光体151の中心を集光レンズ118の光軸と一致するように配置することにより、集光レンズ118を透過する照明光のうち、集光レンズ118の光軸近傍の円形の遮光領域151Aに入射する光が遮断される。
【0034】
図3の遮光体152には、複数の同じ大きさの円形の開口部が、中央の略円形の遮光領域152Aを取り囲むようにリング状に等間隔に並べられている。この遮光体152の中心を集光レンズ118の光軸と一致するように配置することにより、集光レンズ118を透過する照明光のうち、集光レンズ118の光軸近傍の略円形の遮光領域152Aに入射する光が遮断される。
【0035】
また、図2の遮光体151では、接続部151C乃至151Fに入射する光が遮断されるため、遮光体151を通過する光の明るさに、光軸からの方向によるバラツキが生じるが、遮光体152を通過する光は、そのような明るさのバラツキが生じず、ほぼ均等な明るさになる。
【0036】
図4の遮光体153および図5の遮光体154は、図3の遮光体152の変形例である。図4の遮光体153では、複数の同じ大きさの円形の開口部が、中央の略円形の遮光領域153Aを取り囲むように二重にリング状に等間隔に並べられている。図5の遮光体154では、複数の円形の開口部が、中央の略円形の遮光領域154Aを取り囲むように二重にリング状に等間隔に並べられるとともに、外側の開口部の方が内側の開口部より大きくなっている。このように、円形の開口部の大きさや配列を調整することにより、中央の遮光領域の大きさ等を調整することが可能である。
【0037】
[遮光体119の遮光範囲]
次に、図6乃至図9を参照して、遮光体119の遮光範囲について検討する。
【0038】
図6は、太陽電池パネル102に位置決め用の印として設けられているアライメントマーク201の例を示している。アライメントマーク201は、幅w(例えば、20μm)、長さl(例えば、120μm)、厚さt(例えば、2μm)の線分を十字に交差させた形状を有している。アライメントマーク201は、例えば、アルミニウムの薄膜を太陽電池パネル102のガラス基板に蒸着させたり、あるいは、太陽電池パネル102の製造工程において、積層された薄膜を一部除去したりすることにより形成される。なお、以下では、主に蒸着によりアライメントマーク201を形成した場合について説明する。
【0039】
この線幅wのアライメントマーク201を観察するためには、シャノンの情報化定理により、レーザ加工装置101の観察光学系が、ピッチp≦w/2の凹凸パターンを観察できる能力を有する必要がある。この条件について、図7を参照して簡単に説明する。
【0040】
図7の回折格子211のピッチp=w/2、回折格子211の1次の回折光の回折角をα、照明光の波長をλとすると、次式が成り立つ。
【0041】
sinα=λ/p=2λ/w ・・・(1)
【0042】
従って、対物レンズ116の空気中の開口数(NA)をsinβとすると、sinβ≧sinα=2λ/wとすることにより、ピッチp=w/2の凹凸パターンを観察することが可能になる。なお、角度βは、対物レンズ116の最大見込み角である。
【0043】
また、式(1)より、回折格子211の1次の回折角αは、ピッチpが小さくなるほど大きくなり、ピッチpが大きくなるほど小さくなる。従って、太陽電池パネル102の表面の細かい(空間周波数が高い)凹凸パターンの情報を含む光は、対物レンズ116の周辺の領域、すなわち、太陽電池パネル102から見て光軸に対する角度(見込み角)が大きな領域を通過する。一方、太陽電池パネル102の表面の粗い(空間周波数が低い)凹凸パターンの情報は、対物レンズ116の中央の領域、すなわち、見込み角が小さな領域を通過する。
【0044】
図8は、対物レンズ116のOptical Transfer Function(以下、OTFと称する)の例を示すグラフである。横軸は空間周波数(単位はcycle/mm)を示し、縦軸はOTFを示している。また、曲線221は、対物レンズ116全体のOTF曲線を示し、曲線222は、見込み角θ<αとなる対物レンズ116の中央の領域(以下、中央領域αと称する)、換言すれば、対物レンズ116のsinα(=2λ/w)未満の開口数の範囲内の領域に対するOTF曲線を示している。OTF曲線222は、OTF曲線221と比較して空間周波数の帯域が狭くなり、具体的には、0から1/p(=2/w)までの範囲となる。
【0045】
また、対物レンズ116の中央領域αを遮光した場合のOTF曲線、すなわち、見込み角θ≧αとなる対物レンズ116の周辺の領域のOTF曲線は、曲線221から曲線222を減算することにより求められ、具体的には、図9に示される曲線231となる。このOTF曲線231は、空間周波数が1/p(=2/w)においてピークとなる特性を有する。
【0046】
従って、対物レンズ116の中央領域αを遮光することにより、空間周波数が2/w未満の凹凸パターンを減衰させ、アライメントマーク201の線幅wと同じピッチの凹凸パターンを強調して観察することができる。その結果、線幅wのアライメントマーク201を強調して観察することができる。
【0047】
そこで、レーザ加工装置101では、対物レンズ116の中央領域αに照明光が入射しないように、遮光体119により照明光の一部を遮断する。すなわち、集光レンズ118を透過した照明光は、光軸近傍の範囲が遮光体119により遮断され、対物レンズ116の瞳において結像された後、対物レンズ116の中央領域αより外側の領域に入射し、太陽電池パネル102を照射する。従って、遮光体119により照明光の一部を遮断しない場合と比較して、太陽電池パネル102の観察面(=加工面)の凹凸パターンのうち、空間周波数が2/w未満の低周波成分が弱く励起され、空間周波数が2/w以上の高周波成分がほぼ同じ強さで励起される。これにより、対物レンズ116のOTF特性が、実質的に図9に示されるものとほぼ同じ特性となり、アライメントマーク201を強調して観察することが可能になる。
【0048】
[レーザ加工装置101の作用効果]
ここで、図10乃至図14を参照して、レーザ加工装置101の作用効果についてさらに詳しく説明する。
【0049】
図10に示されるように、対物レンズ116から射出された照明光は、太陽電池パネル102の観察面においてほぼ平行な波面として集光され、観察面で反射された反射光が、対物レンズ116に戻る。
【0050】
図11および図12は、図10の点線で囲まれる集光点付近の範囲251の拡大図である。なお、図11は、製作途中の太陽電池パネル102に照明光が入射する様子を模式的に示し、図12は、製作途中の太陽電池パネル102において照明光が反射される様子を模式的に示している。
【0051】
図11および図12の例において、太陽電池パネル102は、下から層102A、層102B、層102Cの3層により構成され、層102Bおよび層102Cにより、発電領域が形成される。層102Bは、層102Cより反射率が高く、層102Cが形成されている領域と、層102Cが形成されずに層102Bが表面に現れている領域とにより、濃淡パターンが形成される。なお、照明光の波長λは、層102Bと層102Cの間の段差L1(例えば、0.3μm)より大きい値に設定される。
【0052】
また、図内の右端の層102Bおよび層102Cが形成されていない領域において、層102Aの上面に、アライメントマーク201が形成されている。なお、照明光の波長λは、アライメントマーク201と層102Aの間の段差L2(例えば、2.0μm)より小さい値に設定される。
【0053】
太陽電池パネル102の観察面に平行な波面で入射した照明光は、太陽電池パネル102の観察面において変調されて反射光となる。反射光のうち、層102Bと層102Cによる形成される濃淡パターン上で反射される光には、濃淡情報が重畳される。濃淡情報が重畳された反射光は、段差L1が波長λ未満なので、図12の点線で囲まれる範囲261内に示されるように、入射角に対して反射角がほとんど変化せずに、振幅だけが変化する。なお、この図では、振幅の変化を線の太さで表している。一方、反射光のうち、アライメントマーク201付近で反射される光には、濃淡情報に加えて凹凸情報が重畳される。凹凸情報が重畳された反射光は、段差L2が波長λより大きいので、図12の点線で囲まれる範囲262内に示されるように、振幅が変化するとともに、入射角に対して反射角が変化する。
【0054】
これを、集光点近傍のニアフィールドから、対物レンズ116近傍のファーフィールドに立ち戻って考え、図13に示されるように照明光A1の入射角をθi、反射光B1の反射角をθoとすると、太陽電池パネル102の観察面において濃淡情報のみが重畳され、凹凸情報が重畳されない場合、入射角θi=反射角θoとなる。一方、太陽電池パネル102の観察面において凹凸情報が重畳される場合、入射角θi≠反射角θoとなる。
【0055】
従来の暗視野光学系では、入射角θi=反射角θoとなる、濃淡情報のみが重畳された反射光は、対物レンズの外側をすり抜けるか、あるいは、途中で遮断され、観察されない。一方、入射角θi≠反射角θoとなる、凹凸情報が重畳された反射光は、その一部が対物レンズに入射し、途中で遮断されずに観察される。従って、従来の暗視野光学系を用いれば、高いSNRで太陽電池パネル102の観察面の凹凸パターンを観察することができ、当然、アライメントマーク201も高いSNRで観察することができる。一方、太陽電池パネル102の観察面の濃淡パターンを観察することはできない。
【0056】
また、従来の明視野光学系では、濃淡情報のみが重畳された反射光も、凹凸情報が重畳された反射光も、その一部が対物レンズに入射し、観察される。従って、従来の明視野光学系を用いれば、太陽電池パネル102の観察面の濃淡パターンと凹凸パターンの両方を観察することができる。その反面、太陽電池パネル102の観察面の凹凸パターンのSNRが低下し、暗視野光学系と比較して、アライメントマーク201を高いSNRで観察することができない。
【0057】
一方、レーザ加工装置101では、反射角θoが入射角θiと異なるか否かに関わらず、α≦θo≦βの範囲内であれば、反射光が対物レンズ116に入射し、観察することができる。例えば、図14の例において、入射光A11に対して反射角θoが等しい反射光B11および反射角θoが異なる反射光B12の両方とも対物レンズ116に入射し、観察することができる。従って、太陽電池パネル102の観察面の濃淡パターンと凹凸パターンの両方を観察することができる。
【0058】
なお、図14の反射角θo>βとなる反射光B13のような光は、対物レンズ116に入射しないため、従来の暗視野光学系および明視野光学系と同様に、観察することができない。
【0059】
また、図14内の斜線で示される中央領域αに照明光が入射しないため、反射角θo≦αとなる反射光が実質的に減光される。従って、太陽電池パネル102の観察面の凹凸パターンのうち、アライメントマーク201の線幅wに対応する空間周波数より低い成分を減衰することができる。従って、アライメントマーク201を高いSNRで強調して観察することができる。
【0060】
さらに、例えば、太陽電池パネル102の薄膜の一部を除去することによりアライメントマーク201を形成した場合、レーザ加工による濃淡パターンがアライメントマーク201内に形成されるときがある。レーザ加工装置101では、このようなアライメントマーク201内の濃淡パターンも観察することができ、その結果、より鮮明にアライメントマーク201を観察することができる。
【0061】
以上のように、レーザ加工装置101では、太陽電池パネル102のアライメントマーク201と濃淡パターンの両方を良好に観察することができる。また、アライメントマーク201を良好に観察できることにより、太陽電池パネル102の位置決め精度が向上するとともに、位置決めに要する時間を短縮することができる。その結果、太陽電池パネル102の加工精度が向上するとともに、加工時間を短縮することが可能になる。
【0062】
<2.変形例>
なお、以上の説明では、集光レンズ118とハーフミラー120の間に遮光体119を設ける例を示したが、ハーフミラー120と対物レンズ116の間、より厳密には、ハーフミラー120とダイクロイックミラー115の間に、対物レンズ116の中央領域αに入射する照明光を遮断するように遮光体を設けるようにしてもよい。これにより、対物レンズ116のOTF特性が、実質的に図9に示されるものとほぼ同じ特性となる。その結果、上述した実施の形態と同様に、太陽電池パネル102の濃淡パターンと凹凸パターンの両方を観察できるとともに、アライメントマーク201を強調して観察できるようになる。
【0063】
また、この場合、中央領域αに入射する照明光だけでなく、太陽電池パネル102からの反射光のうち、対物レンズ116の光軸付近を通過する光も遮断することができる。従って、太陽電池パネル102の観察面の凹凸パターンのうち、アライメントマーク201の線幅wに対応する空間周波数より低い成分をより多く遮断することができ、アライメントマーク201をより強調して観察することが可能になる。
【0064】
また、以上の説明では、照明装置117に円形の光源を設ける例を示したが、他の形状の光源を設けるようにしてもよい。例えば、図15に示されるように、断面が矩形の照明光を発する光源を設けるようにしてもよい。ただし、この場合、以下に述べるように、遮光体の遮光領域の形状を円形ではなく、矩形にするのが望ましい。
【0065】
図16は、断面が図15に示される形状の照明光が集光レンズ118を透過した後の断面の形状の例を示している。集光レンズ118を透過した後の照明光の断面は、照明装置117における照明光の断面と比較して、角が少し丸くなっている。
【0066】
図17は、図16に示される照明光を、図2乃至図5を参照して上述したような、略円形の遮光領域を有する遮光体を用いて遮光した場合において、遮光される領域と遮光されない領域の例を示している。なお、図中網掛けで示される領域が遮光される領域を示している。この図に示されるように、断面が略矩形の照明光を円形の遮光領域で遮光した場合、遮光体を通過した後の照明光の明るさに、位置によるバラツキが生じる。すなわち、照明光の断面の四隅に近づくほど、遮光体を通過する照明光が増え、四隅から遠ざかるほど、遮光体を通過する照明光が減る。従って、照明光の明るさは、断面の四隅に近づくほど明るくなり、四隅から遠ざかるほど暗くなる。その結果、太陽電池パネル102に照射される照明光の明るさにムラが生じる。
【0067】
従って、図18に示されるように、照明光の断面に合わせて、照明光の中央の矩形の領域を遮光するようにすることが望ましい。
【0068】
図19および図20は、照明光の中央の矩形の領域を遮光する遮光体の例を示す図である。図19の遮光体301には、矩形の遮光領域301Aが中央に設けられている。また、遮光領域301Aを支持するために、遮光領域301Aの角部とリング状の外周部301Bとが、直線状の支持部材301C乃至301Fにより接続されている。図20の遮光体311にも、遮光体301と同様に、矩形の遮光領域311Aが中央に設けられている。また、遮光領域311Aを支持するために、遮光領域311Aの各辺の中央部とリング状の外周部311Bとが、直線状の支持部材311C乃至311Fにより接続されている。
【0069】
この遮光体301または遮光体311の中心を集光レンズ118の光軸と一致するように配置することにより、集光レンズ118を透過する照明光のうち、集光レンズ118の光軸近傍の矩形の遮光領域301Aまたは遮光領域311Aに入射する光が遮断される。
【0070】
このように、遮光体の遮光領域の形状は、照明光の断面の形状と略同じにするのが望ましい。
【0071】
また、以上の説明では、遮光体119を金属板により構成する例を示したが、例えば、ガラスなどの透明な部材に遮光膜などによる遮光領域を形成した遮光体を用いるようにしてもよい。さらに、対物レンズ116または集光レンズ118に直接遮光膜を成膜するようにしてもよい。
【0072】
また、以上の説明では、本発明をレーザ加工装置101に適用する例を示したが、本発明は、アライメントマークに基づいて対象物の位置決めを行う装置全般に適用することが可能である。さらに、本発明の観察対象となる対象物も、太陽電池パネル102に限定されるものではなく、アライメントマークが設けられる各種の基板等を対象物とすることが可能である。
【0073】
また、以上の説明では、照明装置117の光源にLEDを用いる例を示したが、他の種類の光源を用いることも可能である。
【0074】
また、以上の説明では、照明光を単色光とする例を示したが、所定の波長幅を持つ照明光を用いるようにしてもよい。この場合、上述した式(1)等に用いる照明光の波長λには、照明光の代表波長、例えば、ピーク波長、中心波長、最大波長などを用いるようにすればよい。例えば、白色光を照明光として用いる場合、中央の緑の波長(546.1nm)を用いることが考えられる。
【0075】
なお、照明光を単色光とした方が、より鮮明にアライメントマークを観察することができるようになる。一方、照明光を白色光とした場合、対象物の濃淡パターンだけでなく、対象物の色彩も観察することができるようになる。
【0076】
さらに、以上の説明では、アライメントマークの形状を十字形にする例を示したが、この例に限定されるものではなく、任意の形状を採用することができる。なお、アライメントマークの形状を十字形以外の形状とした場合、上述した式(1)等に用いる幅wには、例えば、アライメントマークの最も狭い部分の幅が用いられる。
【0077】
また、以上の説明では、ハーフミラー120により照明光の方向を変えることにより、照明装置117からハーフミラー120までの照明光の光路と、ハーフミラー120からCCDカメラ122までの反射光の光路を分岐する例を示したが、反射光の方向を変えたり、照明光と反射光の両方の方向を変えることにより、2つの光路を分岐するようにしてもよい。
【0078】
また、レーザ発振器111、照明装置117、および、CCDカメラ122は、レーザ加工装置101とは別に、レーザ加工装置101の外部に外付けするようにすることも可能である。
【0079】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
101 レーザ加工装置
102 太陽電池パネル
111 レーザ発振器
112 ビームエキスパンダ
113 スリット
114 結像レンズ
115 ダイクロイックミラー
116 対物レンズ
117 照明装置
118 集光レンズ
119 遮光体
120 ハーフミラー
121 結像レンズ
122 CCDカメラ
151乃至154 遮光体
151A乃至154A 遮光領域
201 アライメントマーク
301 遮光体
301A 遮光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の位置決め用の印を観察するための観察光学系において、
対物レンズと、
光源から発せられる照明光を前記対物レンズの瞳において結像させる集光レンズと、
前記対物レンズを介して前記照明光が照射された前記対象物からの反射光であって、前記対物レンズを透過した後の反射光を結像する結像レンズと、
前記集光レンズと前記対物レンズの間、かつ、前記対物レンズと前記結像レンズの間において、前記照明光と前記反射光の光路を分岐する分岐手段と、
前記照明光の波長をλ、前記位置決め用の印の最も狭い部分の幅をwとした場合、前記集光レンズと前記分岐手段の間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記照明光を遮断する遮光手段、および、前記分岐手段と前記対物レンズの間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記反射光を遮断する遮光手段のうち少なくとも一方と
を備えることを特徴とする観察光学系。
【請求項2】
前記遮光手段は、前記照明光の断面と略同じ形状の遮光領域を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項3】
前記照明光は単色光である
ことを特徴とする請求項1に記載の観察光学系。
【請求項4】
対象物の位置決め用の印を観察するための観察光学系と、前記対象物に加工用のレーザ光を照射するための加工光学系とを備えるレーザ加工装置において、
前記観察光学系は、
照明光を発する光源と、
対物レンズと、
前記照明光を前記対物レンズの瞳において結像させる集光レンズと、
前記対物レンズを介して前記照明光が照射された前記対象物からの反射光であって、前記対物レンズを透過した後の反射光を結像する結像レンズと、
前記集光レンズと前記対物レンズの間、かつ、前記対物レンズと前記結像レンズの間において、前記照明光と前記反射光の光路を分岐する分岐手段と、
前記照明光の波長をλ、前記位置決め用の印の最も狭い部分の幅をwとした場合、前記集光レンズと前記分岐手段の間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記照明光を遮断する遮光手段、および、前記分岐手段と前記対物レンズの間に設けられ、前記対物レンズの略2λ/w未満の開口数の範囲内に入射する前記反射光を遮断する遮光手段のうち少なくとも一方と
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ光は、前記対物レンズを介して前記対象物に照射される
ことを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−63382(P2012−63382A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205146(P2010−205146)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】