観察装置
【課題】高速に移動する対象物の像を得ることができる観察装置を提供することを目的とする。
【解決手段】観察装置1は、光源部10、周波数変調部20、検出部40、及び演算部50を備える。周波数変調部は、第1の光又は第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数Ωnだけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調する。検出部40は、対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。演算部50は、検出部40からの出力に対して、特定周波数Ωnに基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物2の像として得る。
【解決手段】観察装置1は、光源部10、周波数変調部20、検出部40、及び演算部50を備える。周波数変調部は、第1の光又は第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数Ωnだけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調する。検出部40は、対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。演算部50は、検出部40からの出力に対して、特定周波数Ωnに基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物2の像として得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の像を観察する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動する対象物の像を観察して定量的情報を得る技術として、特許文献1や非特許文献1に記載された位相シフト法を用いたものが知られている。これらの位相シフト法に拠る観察装置では、光源から出力された波長λの光が2分岐され、一方の分岐光が対象物を透過して物体光とされ、他方の分岐光が参照光とされて、これら物体光と参照光との干渉による2次元像が撮像される。そして、参照光の光路長がλ/4ずつ異なるものとされて4枚の2次元画像が得られ、これら4枚の2次元画像について所定の演算が行われて、対象物の振幅像及び位相像が得られる。ここで、特許文献1や非特許文献1に記載の装置では、空間的画素構造を2次元に持つ2次元光検出器を用いて2次元画像を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3471556号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F. Le Clerc, et al, "Numerical heterodyne holography withtwo-dimensional photodetector arrays," Optics Letters, Vol.25, No.10, pp.716-718,(2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1や非特許文献2に記載された位相シフト法を用いた観察装置では、4枚の2次元画像を得る間、対象物は静止している状態であることが必要である。移動している対象物の像を得るには、フレームレートが高く高速撮像が可能な光検出器を用いて、対象物が静止していると見做し得る期間に4枚の2次元画像を得ることが必要である。しかし、高速撮像が可能な光検出器は、高額であり、或いは、画素数が少なく空間分解能が劣る。特に、特許文献1や非特許文献1に記載された観察装置では、受光器のデータ更新レートが遅い2次元光検出器を用いて2次元画像を得る必要があるため、対象物の移動が高速である場合には、対象物が静止していると見做し得る期間内に2次元画像を取得することが困難である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、高速に移動する対象物の像を得ることができる観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観察装置は、移動している対象物へ光を照射する光源部と、光源部から出力された光を入力して、当該入力された光を、その入力した光を対象物の前段で2分割して第1の光及び第2の光とし、所定平面上で第1の光と第2の光とをヘテロダイン干渉させる光学系と、対象物の移動に因るドップラーシフト効果が一定となる所定平面上の方向であって、対象物の移動方向に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向に直交する所定平面上の方向であって、対象物の移動方向に平行な方向を第2方向としたときに、第1の光又は第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調する周波数変調部と、所定平面上に位置する検出部であって、対象物で生じた散乱光のうち、検出部に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する検出部と、検出部から出力されたデータに対して、特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物の像として得る演算部と、を備える。
【0008】
観察装置は、光源部、周波数変調部、検出部、及び演算部を備える。第1の光又は第2の光を入力して、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調する。つまり、変調後の光は、第1方向において、変調前の光から特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において、変調前の光と同じ周波数を有する。検出部は、所定平面上に位置し、対象物で生じた散乱光のうち、検出部に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。演算部は、検出部からの出力に対して、特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物の像として得る。このような構成によれば、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有する光を用いることで、対象物の第2方向の像を混信することなく復元することができる。ドップラー効果により、対象物の空間周波数が時間周波数に変換されることで、検出器の次元を1次元減少できる。また周波数変調部により、対象物の像が時間周波数に変換されることで、検出器の次元を1次元減少できる。このため、この観察装置では、撮像した画像の次元よりも低い次元数を有する検出部を用いて、所望の画像を得ることができる。例えば、0次元の光検出器を有する検出部を用いて2次元画像を得ることができ、1次元の光検出器を有する検出部を用いて3次元画像を得ることができる。このため、検出器の読み出し時間が短縮され、高速に移動する対象物の像を得ることができる。
【0009】
また、周波数変調部が、第1の光の光路上に配置され、第1の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を、第1の光の光路上に位置する対象物または対象物の像に照射してもよい。
【0010】
また、周波数変調部が、第2の光の光路上に配置され、第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調してもよい。
【0011】
また、検出部が、単画素の光検出器であってもよい。
【0012】
また、光源部と対象物との間に配置され、光源部からの光を入力して、対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、検出部が、所定平面に受光面を有し、該受光面において第1方向に画素構造を有する光検出器であってもよい。
【0013】
また、光源部と対象物との間に配置され、光源部からの光を入力して、対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、周波数変調部が、第1の周波数変調部と、第2の周波数変調部とを備え、第1の周波数変調部が、第1の光の光路上に配置され、第1の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数である第1特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を対象物に照射し、第2の周波数変調部が、第2の光の光路上に配置され、第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数である第2特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、検出部が、単画素の光検出器であり、演算部が、検出部から出力されたデータに対して、第1特定周波数及び第2特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物の像として得てもよい。
【0014】
また、演算部が、検出部から出力されるデータを、特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する分波器と、分波器により分割されたデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、第1フーリエ変換部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含んでもよい。
【0015】
また、演算部が、検出部から出力されるデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、第1フーリエ変換部から出力されたデータを、特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する周波数分割部と、分割部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含んでもよい。
【0016】
また、演算部が、検出部から出力されるデータを、検出部が配置される位置により定まる値である2次位相で除する2次位相除算部を更に備えていてもよい。
【0017】
また、対象物の移動速度を検出する速度検出部を更に備え、演算部が、速度検出部により検出された対象物の速度に基づいて、フーリエ変換の際に対象物の速度変化に関する補正を行うこととしてもよい。
【0018】
また、対象物への光の照射が、透過照明の光学配置によって行われてもよいし、対象物への光の照射が、反射照明の光学配置によって行われてもよい。また、光源部が、単一縦モードの光を生成する光源であってもよいし、光源部が、広帯域の光を生成してもよい。さらに、光源部が、モードロックレーザーであってもよい。
【0019】
光源部が、広帯域の光を生成してもよい。
【0020】
光源部が、光としてパルス波を生成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高速に移動する対象物の像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の観察装置による対象物の像の取得の原理を説明する図である。
【図2】対象物で生じる散乱光の散乱方向を説明する図である。
【図3】対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。
【図4】対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を更に説明する図である。
【図5】対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。
【図6】対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達するまでの光路長の変化を説明する図である。
【図7】対象物で生じる散乱光の散乱方向単位ベクトルと移動する対象物の速度ベクトルの成す角度を説明する図である。
【図8】第1実施形態の観察装置1の構成を示す図である。
【図9】周波数変調部20の構成の一例を示す図である。
【図10】変調器22の画素構造を示す図である。
【図11】検出部40において観察される信号の例を示す図である。
【図12】演算部50の構成を示す図である。
【図13】本実施形態の観察装置1における対象物2、集光レンズ32及び検出部40の間の配置の関係を説明する図である。
【図14】第2実施形態の観察装置1Aの構成を示す図である。
【図15】第3実施形態の観察装置1Bの構成を示す図である。
【図16】第4実施形態の観察装置1Cの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
本実施形態の観察装置は、移動している対象物に光を照射して、対象物の像を取得するものである。初めに、発明の理解を容易にするために、図1〜図7を用いて、本実施形態の観察装置による対象物の位相像の取得について原理的な事項について説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の観察装置による対象物の位相像の取得の原理を説明する図である。この図には、ξη座標系,xy座標系及びuv座標系が示されている。ξ軸,η軸,x軸,y軸,u軸及びv軸は、何れも集光レンズ32の光軸に垂直である。ξ軸,x軸及びu軸は、互いに平行である。η軸,y軸及びv軸は、互いに平行である。観察対象である対象物2はξη平面上に存在する。集光レンズ32はxy平面上に存在する。また、集光レンズ32の後焦点面はuv平面と一致する。ξη平面とxy平面との間の距離はdである。xy平面とuv平面との間の距離は集光レンズ32の焦点距離fと一致する。本明細書において、ξ軸方向、x軸方向、第1方向に対して平行な向きをX軸方向といい、η軸方向、y軸方向、第2方向に平行な向きをY軸という場合がある。
【0026】
対象物2はξη平面上で−η方向に移動しているものとする。ξη平面に垂直なζ方向に進む光L0が対象物2に照射されるとする。この光L0は例えば平面波である。対象物2に光L0が照射されることにより生じる散乱光L1〜L3は、様々な方向に進み、また、対象物2の移動によりドップラーシフトを受ける。対象物2の移動方向と同じ方向に散乱方向ベクトル成分を有する散乱光L1は、光周波数が高くなる。対象物2の移動方向に散乱方向ベクトル成分を有しない散乱光L2は、光周波数が変化しない。対象物2の移動方向と逆の方向に散乱方向ベクトル成分を有する散乱光L3は、光周波数が低くなる。これらの散乱光L1〜L3は、集光レンズ32を経てuv平面に到達する。
【0027】
図2は、対象物で生じる散乱光の散乱方向を説明する図である。対象物2で生じる散乱光の散乱方向を表現するには、仰角θ及び方位角φの2つの変数で記述する必要がある。対象物2内に仮想的に配置した点光源をξηζ座標系の原点とする。そして、その原点に位置する点光源からの散乱光の方向ベクトルとζ軸とがなす角度を仰角θとする。また、その散乱方向ベクトルのξη平面への投影ベクトルとξ軸とがなす角度を方位角φとする。
【0028】
図3は、対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。光L0が対象物2に照射されることにより生じる散乱光は、ホイヘンスの原理により2次波として扱うことができ、対象物2内に仮想的に配置した点光源から発した光として扱うことができる。同図では、対象物2内に5個の仮想的な点光源が配置されている。これらの点光源は、集光レンズ32の前焦点面上だけでなく、集光レンズ32の前焦点面の前後にも存在する場合がある。
【0029】
これらの点光源から発した光のうち同じ仰角θ及び方位角φを有する散乱光L1〜L3は、集光レンズ32の後焦点面上の一点Paに到達する。また、他の同じ仰角θ及び方位角φを有する散乱光L4〜L6は、集光レンズ32の後焦点面上の他の一点Pbに到達する。なお、光線L2,L5は、集光レンズ32の前焦点位置の点光源から発した光であるので、集光レンズ32以降では集光レンズ32の光軸に平行に進む。光L0のうち対象物2により散乱されなかった光は、集光レンズ32の光軸に平行に進んで集光レンズ32に入射されるので、集光レンズ32の後焦点位置Poに集光される。
【0030】
対象物2がξη平面上で−η方向に移動している場合、ドップラーシフト効果により、点Paで観測される光周波数は元の光周波数fbより小さく、点Pbで観測される光周波数は元の光周波数fbより大きい。散乱角(仰角θ,方位角φ)がレンズ後焦点面上に展開されることから、レンズ後焦点面での像は角度スペクトルと呼ばれることがある。大きな仰角θを有する光線は、レンズ後焦点面上において中心点Poから遠い位置に集光される。まとめると、異なる仮想点光源であっても同じ散乱角を有する散乱光はレンズ後焦点面上で一点に集光される。
【0031】
図4は、対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を更に説明する図である。ここでは、対象物2中のレンズ前焦点面上に存在する異なる仮想点光源から、異なる散乱角で散乱光L1〜L3が発するものとする。集光レンズ32の前焦点位置の仮想点光源から発した散乱光L4は、集光レンズ32以降では集光レンズ32の光軸に平行に進み、集光レンズ32の後焦点面上の点Psを通過する。集光レンズ32の前焦点面上の或る仮想点光源から発した散乱光L1は、集光レンズ32の前焦点位置の仮想点光源から発した散乱光L4と散乱角が同じであるとすると、集光レンズ32の後焦点面上の点Psを通過する。集光レンズ32の前焦点位置の仮想点光源から発した散乱光L2は、L4とは散乱角が異なるため、集光レンズ32以降では集光レンズ32の光軸に平行に進むが、点Psを通過しない。集光レンズ32の前焦点面上の他の或る仮想点光源から発した散乱光L3は、集光レンズ32の中心を通過するものとすると、集光レンズ32の入射の前後で進行方向が変わらない。結局、光線L1〜L3は、レンズ後焦点面より更に後方の点Prに集光される。異なる散乱角を有する散乱光はレンズ後焦点面では1点で交わらない。
【0032】
図5は、対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。ここでは、各位置に移動した対象物2a〜2eが示されている。また、対象物2a〜2e中に仮想点光源が存在するものとする。対象物2a中の仮想点光源はレンズ前焦点位置に存在する。対象物2b,2c中の仮想点光源は、対象物2a中の仮想点光源の位置に対して上下に存在する。対象物2d,2e中の仮想点光源は、対象物2a中の仮想点光源の位置に対して前後に存在する。空間的に一様な光L0が対象物2a〜2eに照射されるので、対象物2a〜2e中の各点光源で発する散乱光の角度スペクトルの強度分布は一定である。すなわち、対象物2が移動したとしても、レンズ後焦点面における角度スペクトルの強度分布は一定である。
【0033】
対象物2が移動することによって光の位相が変化する。例えば、レンズ前焦点面上の対象物2b,2c中の各点光源で発した光L1b,L1cがレンズ後焦点面上の位置Paに到達するまでの光路長差は以下のようになる。対象物2b中の点光源で発した光L1bが集光レンズ32の入射面に達するまでの光路長と、対象物2c中の点光源で発した光L1cが集光レンズ32の入射面に達するまでの光路長とは、互いに等しい。しかし、集光レンズ32の肉厚差により、集光レンズ32の入射面から点Paに到達するまでの光L1b,L1cそれぞれの光路長は異なるものとなる。対象物2が等速移動することにより、この光路長差は時間的に直線的に変化する。
【0034】
図6は、対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達するまでの光路長の変化を説明する図である。ただし、ここでは、集光レンズ32を用いることなく無限遠方にて散乱光を観察する場合を想定する。対象物2がレンズ前焦点面上において対象物2b位置から対象物2c位置へ移動する場合、点Paで散乱光を観測する場合と無限遠方にて散乱光を観測する場合とは互いに等しい。
【0035】
対象物2がξη平面上で−η方向に移動しているとき、対象物2から発せられる散乱光が無限遠方のuv平面上の点Ppに達するまでの光路長の単位時間当たりの変化量ΔLは、下記(1)式で表される。ここで、eprは散乱方向単位ベクトルであり、vpは対象物2の速度ベクトルである。この単位時間当たりの光路長変化量ΔLを用いると、位相差すなわち光周波数の変化量fdは下記(2)式で表される。λは光の波長である。uv平面上の位置Ppで散乱光を観測する場合、対象物2が移動することにより、位置Ppに到達する散乱光の光路長が変化して光周波数が変化する。これがドップラーシフトの原因である。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
ドップラーシフトは、フーリエ変換の性質の一つである時間軸移動によっても説明することができる。対象物2の複素振幅をg(x)で表し、対象物2のフーリエ変換をG(k)で表す。対象物2が位置x0から位置(x0+x)へ移動したとき、移動後の対象物2のフーリエ変換G'(x)は下記(3)式で表される。この(3)式の右辺の指数関数内の項は位相を表している。対象物2が移動することにより、この位相が波数ベクトルkに比例して回転することから、周波数シフトが生じる。指数関数内の位相をφとすると、周波数シフトfdは下記(4)式で表される。eprは波数ベクトルkの単位ベクトルである。vpは位置xの時間微分すなわち対象物2の速度を表す。この(4)式は、前述した単位時間当たりの光路長変化から説明される周波数シフト式(2)と合致する。
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
図7は、対象物で生じる散乱光の散乱方向単位ベクトルと対象物2の速度ベクトルの成す角度を説明する図である。散乱方向単位ベクトルeprをηζ平面へ投影したベクトルとζ軸とがなす角度をθ'と表す。このとき、散乱方向単位ベクトルeprと対象物2の速度ベクトルvpとがなす角度はθ'+π/2となる。このことから、(2)式または(4)式の右辺の散乱ベクトルと速度ベクトルとの内積は下記(5)式で表される。Vは対象物2の移動の速さである。集光レンズ32の開口数NAはsinθ'で定義されるので、ボケのない画像を得るためのナイキスト周波数fnyqは下記(6)式で表される。
【0042】
【数5】
【0043】
【数6】
【0044】
次に、具体的な数値を当てはめて、ドップラーシフトによる光周波数の変化量fdを見積もる。現在市販されているフローサイトメーターにより対象物2が流れるものとして、対象物2の移動速度が1m/秒であるとする。対象物2に照射される光L0は、波長633nmのHeNeレーザ光であるとする。集光レンズ32は、NAが0.45であり、倍率が20倍相当であるとする。このような集光レンズ32を使用する場合、速度ベクトルvpに対する散乱角θ'の正弦の最大値は0.45をとる。したがって、最大ドップラーシフト周波数は、(5)式から710kHzと見積もられる。また、速度100μm/秒の場合であれば、最大71Hzのドップラーシフト周波数が観測される。
【0045】
散乱角θ'を有する散乱光は、焦点距離fの集光レンズ32により、uv平面上の下記(7)式で表される位置に到達する。したがって、(5)式,(7)式を用い、角度θ'が小さい場合に成り立つtanθ'≒sinθ' の近似の式を用いると、ドップラーシフト周波数fdは、下記(8)式のようにv座標値の関数として表現され得る。なお、近似を用いない場合には、下記(9)式で表される。
【0046】
【数7】
【0047】
【数8】
【0048】
【数9】
【0049】
(第1実施形態)
以下の実施形態に係る観察装置は、以上に説明した原理に基づいて、対象物2の像を取得する装置である。本実施形態の観察装置1では、単画素の0次元光検出器を用いて、対象物2の2次元画像を得る。図8は、本実施形態の観察装置1の構成を示す図である。本実施形態の観察装置1は、光源部10、ビームスプリッタHM1、周波数変調部20、集光レンズ32、照明レンズ31、ビームスプリッタHM2、ミラーM1、ミラーM2、検出部40、及び演算部50を備える。
【0050】
光源部10は、例えばHeNeレーザ光源であり、対象物2に照射されるべき光(光周波数fb)を出力する。ビームスプリッタHM1は、光源部10から出力された光を入力し、この光を2分割して第1の光及び第2の光とし、そのうちの第1の光を周波数変調部20へ出力し、第2の光をミラーM1へ出力する。ミラーM1へ出力された光は、ミラーM1、M2により順次に反射され、ビームスプリッタHM2へ出力される。
【0051】
周波数変調部20は、光源部10から出力された光を、X軸方向において互いに異なる複数の周波数を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調し、この変調した光を照明レンズ31を介して対象物2に照射する。図9に示すように、周波数変調部20は、レンズ21、ビームスプリッタHM3、及び変調器22を備えている。レンズ21は、ビームスプリッタHM1から出力された光のビーム径を変調器22と同じ程度の大きさに調整した上で、変調器22に出力する。照明レンズ31は、周波数変調部20によってX軸方向に互いに直交する周波数を配置された物体光断面を、対象物2が存在するξ−η面に結像する作用を持つ。すなわち照明レンズ31は、周波数変調部20からの出力をξ−η面へ照明する。なお、照明レンズ31はξ−η面と等価な(共役な)対象物の結像面へ照明してもよい。
【0052】
変調器22としては、例えば図10に示すように、X軸方向に画素構造dn(n=1,2,...,N)を持つ空間光変調器(Spatial Light Modulator)が用いられる。空間光変調器は、入射してきた光に位相変調を与える装置である。変調器22は、その各画素dnに入射された光を、各画素dn毎に異なる変調周波数Ωn(n=1,2,...,N)(特定周波数)により変調し、その変調した光をビームスプリッタHM3へ出力する。ここで、変調周波数Ωnは、以下の(10)式を満たす周波数である。(10)式におけるBwは、以下の(11)式に示す最大ドップラーシフト周波数Bwである。(11)式において、λは光の波長、Vは移動物体の速度、θmaxは集光レンズ32が対象物2からの散乱光を取りうる最大散乱角である。
【0053】
【数10】
【0054】
【数11】
【0055】
変調器22からは、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光が出力される。ビームスプリッタHM3は、変調器22から出力された光を周波数変調部20の出力として、照明レンズ31を介して対象物2に出力する。なお、変調器22としては、X軸方向に画素構造dnを持つ空間光変調器ではなく、X方向に並設された音響光学素子を用いてもよい。
【0056】
周波数変調部20から出力された光は、照明レンズ31を介して対象物2へ照射される。集光レンズ32は、周波数変調部20からの光照射により対象物2で生じた散乱光を入力して、検出部40の受光面において対象物2のフランフォーファー回折像を形成する。集光レンズ32は、周波数変調部20から出力された光をビームスプリッタHM2へ出力する。
【0057】
ビームスプリッタHM2は、集光レンズ32から到達した光(第1の光)と、ミラーM2から到達した光(第2の光)とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を受光面上でヘテロダイン干渉させる。以下、本明細書では、対象物2が配置される光路を通過する光を物体光といい、対象物2が配置されていない光路を通過する光を参照光ということがある。本実施形態では、第1の光が物体光であり、第2の光が参照光である。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0058】
対象物2はξη平面上で−η方向に移動しているものとすると、集光レンズ32を経て検出部40の受光面に到達した光において対象物2の移動に因るドップラーシフト周波数が一定となる第1方向は、ξ軸に平行なu方向である。すなわち、第1方向は、対象物2の移動方向に垂直な方向である。この第1方向に直交する受光面上の第2方向は、η軸に平行なv方向である。すなわち、第2方向は、対象物2の移動方向に平行な方向である。
【0059】
検出部40は、周波数変調部20による光照射により対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40の受光面に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。検出部40は、単画素からなる0次元光検出素子である。光検出素子としては、フォトダイオード(PD)や光電子増倍管(PMT)が用いられる。検出部40の受光面は、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置される。
【0060】
図11は、検出部40において観測される信号の例を示した図である。図11において横軸は周波数である。図11に示すように、検出部40では、物体光と参照光との干渉ビート信号であるΩnを中心として、その前後に移動物体からの散乱光によるドップラーシフト周波数fdを含む信号が観測される。検出部40は、検出した信号を演算部50に出力する。
【0061】
演算部50は、検出部40から出力された時刻を変数とするデータについて所定の演算を行って対象物2の像を得る。図12に示すように、演算部50は、第1フーリエ変換部51、周波数分割部52及び第2フーリエ変換部53を備えている。第1フーリエ変換部51は、検出部40からの出力される時刻を変数とするデータについて時刻に関する1次元フーリエ変換を行う。周波数分割部52は、第1フーリエ変換部51から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数帯域に分割する。具体的には、第1フーリエ変換部51から出力された信号、変調周波数Ωnを中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むN個の周波数領域毎に分割して出力する。第2フーリエ変換部53は、周波数分割部52から出力されたN個のデータについて周波数に関する1次元フーリエ変換を行う。
【0062】
本実施形態の観察装置1では、検出部40の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置されているが、検出部40の受光面は、本実施形態とは異なる位置に配置されてもよい。図13は、本実施形態の観察装置1における対象物2、集光レンズ32及び検出部40の配置の関係を説明する図である。同図(a)はη方向に見た図であり、同図(b)はξ方向に見た図である。同図では、集光レンズ32の前焦点位置に原点を有するξη座標系、集光レンズ32の中心に原点を有するxy座標系、集光レンズ32の後焦点位置に原点を有するuv座標系、集光レンズ32による結像面中心位置に原点を有するu'v'座標系、及び、集光レンズ32の光軸上の任意位置に原点を有するu"v"座標系、が示されている。以下では、検出部40の受光面をuv平面に一致させた配置を第1配置例といい、検出部40の受光面をu'v'平面に一致させた配置を第2配置例といい、検出部40の受光面をu"v"平面に一致させた配置を第3配置例という。
【0063】
同図(b)に示されるように、対象物2中の仮想点光源g1〜g3で同じ角度で発生した光線L4〜L6は、レンズ後焦点面であるuv平面上の一点aで交わり、やがて発散していき、レンズ結像面であるu'v'平面上の点h,g,fに到達する。これらの光線L4〜L6は、同じ散乱角θ'を有することから、同じ量のドップラーシフトを受ける。
【0064】
第1配置例及び第2配置例それぞれの場合に検出部40により受光される信号の相違について説明すると以下のとおりである。第1配置例では、周波数シフトがv方向に規則正しく観測され、v方向の位置と周波数シフト量との間には1対1の対応関係が存在する。これに対して、第2配置例では、周波数シフトがv'方向に規則正しく配置されず、v'方向の位置と周波数シフト量との間には1対1の対応関係が存在しない。
【0065】
ここで、第2配置例においてv'方向に不規則に配置された周波数シフト量を順序正しくする(すなわち、第1配置例で検出部40の受光面で観測されるような順序にする)には,u'v'平面上の点f,g,hで観測される波形を合波(和算)した後にフーリエ変換を施せばよく、このようにすることにより、その周波数軸が線形となり、かつその振幅及び位相が得られる。
【0066】
つまり、対象物2によりドップラーシフトを受けた散乱光をカバーするだけの大きさの受光面を検出部40が有していれば、どの位置に配置された検出部40により受光しようとも得られる信号は変わらず、かつ、周波数にエンコードされているので、第1配置例の検出部40の受光面で得られる分布を回復することが可能である。
【0067】
一方、同図(a)に示されるように、u方向に関してはドップラーシフトを受けないことから、u方向に信号を積分しても、演算等により分布を回復することはできない。そこで、本実施形態の観察装置1では、物体光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、参照光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。物体光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、検出器受光面の各領域が出力する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40が単画素からなる0次元光検出素子であっても、観察装置1は2次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、単画素からなる0次元光検出素子を用いて対象物の像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
第1実施形態では、周波数変調部20が物体光路上(第1の光の光路上)に配置されていた。第2実施形態の観察装置1Aでは、周波数変調部20が参照光路上(第2の光の光路上)に配置される点で、第1実施形態と異なる。それ以外の点では、第1実施形態と同じである。以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一である点については説明を省略する。
【0069】
図14は、第2実施形態の観察装置1Aの構成を示す図である。本実施形態の観察装置1Aは、第1実施形態と同じように、光源部10、ビームスプリッタHM1、周波数変調部20、集光レンズ32、照明レンズ31、ビームスプリッタHM2、ミラーM1、ミラーM2、検出部40、及び演算部50を備える。ただし、観察装置1Aでは、周波数変調部20が参照光路上に配置されている。
【0070】
光源部10は、移動している対象物へ光を照射する。集光レンズ32は、光源部10からの光照射により対象物2で生じた散乱光を入力して、検出部40の受光面において対象物2のフランフォーファー回折像を形成する。集光レンズ32は、周波数変調部20から出力された光をビームスプリッタHM2へ出力する。
【0071】
周波数変調部20は、光源部10から出力された光をビームスプリッタHM1、ミラーM1を介して入力し、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光に変調し、この変調した光を照明レンズ31を介してビームスプリッタHM2に出力する。照明レンズ31は、周波数変調部20によってX軸方向に互いに直交する周波数を配置された参照光断面を、検出部40の受光面に結像する作用を持つ。すなわち照明レンズ31は、周波数変調部20からの出力を検出部40の受光面へ照明する。
【0072】
ビームスプリッタHM2は、集光レンズ32から到達した光(物体光)と、集光レンズ33から到達した光(参照光)とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を受光面上でヘテロダイン干渉させる。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0073】
本実施形態の検出部40で観測される干渉ビート信号は、第1実施形態で観測されるものと同じである。つまり、検出部40では、図11に示される、物体光と参照光との干渉ビート信号であるΩnを中心として、その前後に移動物体からの散乱光によるドップラーシフト周波数fdを含む信号が観測される。したがって、検出部40の後段に配置される演算部50の機能は第1実施形態と同じであり、再度の説明は省略する。
【0074】
本実施形態の観察装置1Aにおいても、参照光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。参照光路断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、検出器受光面の各領域が出力する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40が単画素からなる0次元光検出素子であっても、観察装置1は2次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、単画素からなる0次元光検出素子を用いて対象物の2次元像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0075】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態の観察装置1、1Aでは、単画素からなる0次元光検出素子を用いて、対象物2の2次元画像を得た。第3実施形態の観察装置1Bは、X軸方向に画素構造を有する1次元光検出器を用いて、対象物2の3次元画像を得る。以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一である点については説明を省略する。
【0076】
まず、3次元画像を得るための一般的な原理について説明する。対象物2に多方向から光が対象物2に照射されるとする。この場合、速度ベクトルVで移動する対象物2に周波数fをもつ光を照射すると、対象物2で生じる散乱波の周波数は、ドップラー効果により下記(12)式で表されるドップラーシフト周波数fdだけ変化する。(12)式では、対象物2に対する入射光の入射単位ベクトルをs0とし、対象物2で生じた散乱波の散乱方向を示す散乱単位ベクトルをsとしている。(12)式において、λは光の波長である。(12)式はドップラーシフト量fdは、(s−s0)と移動物体の速度ベクトルVの内積に比例することを表している。
【0077】
【数12】
【0078】
式(12)より、速度Vと散乱単位ベクトルsが一定である場合、ある位置で観測される回折波のドップラーシフト周波数fdは、入射単位ベクトルs0と一対一で対応することが分かる。このように、ドップラーシフト周波数fdは、入射波の入射角θ0に依存するものである。
【0079】
入射角θ0を変数とする複素振幅像から、フーリエ回折定理等を用いて3次元複素振幅像を得ることは公知の手法である。例えば、このような手法としては、「W. Choi, C. Fang-Yen, K. Badizadegan, S. Oh, N. Lue, R. R. Dasari,and M. S. Feld, "Tomographic phase microscopy," Nature Methods 4,717-719 (2007)」に開示されている。したがって、本明細書では、入射角θ0を変数とする複素振幅像の取得手順について説明し、入射角θ0を変数とする複素振幅像から3次元画像を生成する方法についての説明は省略する。
【0080】
図15は、第3実施形態の観察装置1Bの構成を示す図である。本実施形態の観察装置1Bは、図15に示すように、光源部10、ビームスプリッタHM1、周波数変調部20、照明レンズ31、集光レンズ32、ビームスプリッタHM2、ミラーM1、ミラーM2、検出部40、及び演算部50を備える。
【0081】
周波数変調部20は、光源部10から出力された光を入力し、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光に変調し、この変調した光を照明レンズ31に出力する。
【0082】
照明レンズ31は、周波数変調部20から出力された光を受光し、X軸方向に種々の方向を持ち、Y軸方向に一定の方向を持つ光を対象物2に照射する。照明レンズ31としては、シリンドリカルレンズが用いられる。照明レンズ31は、曲率を有する面がX軸方向と平行に配置され、曲率を有さない面がY軸方向と平行に配置される。このような照明レンズ31により、対象物2にはX軸方向が収束光又は発散光であって、Y軸方向が平行光である光が照射される。つまり、対象物2には、X軸方向において多方向から光が照射される。このような照明レンズ31により、周波数変調部20によりX軸方向において異なる周波数で変調されて出力されたそれぞれの光fb+Ωnは、それぞれ異なる入射角θ0で対象物2に照射されることとなる。
【0083】
集光レンズ32は、照明レンズ31から出力された光の照射により対象物2で生じた散乱光を入力して、検出部40の受光面において対象物2のフランフォーファー回折像を形成する。集光レンズ32は、周波数変調部20から出力された光をビームスプリッタHM2へ出力する。
【0084】
ビームスプリッタHM1から第2の光として、ミラーM1へ出力された光は、ミラーM1,M2に順次反射され、ビームスプリッタHM2へ出力される。ビームスプリッタHM2は、集光レンズ32から到達した光(物体光)と、ミラーM2から到達した光(参照光)とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を受光面上でヘテロダイン干渉させる。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0085】
検出部40は、対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。検出部40の受光面は、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置される。よって、同じ散乱角を有す散乱光は、検出部40の一点に集光される。検出部40は、u方向に画素d1〜dnが配列された画素構造を有し、各画素dnの光感応領域がv方向に長尺な形状をなす。
【0086】
演算部50は、各画素dnから出力されるデータのそれぞれについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行い、変調周波数Ωnに基づいて複数の周波数領域に分割し、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物2の像として得る。
【0087】
本実施形態の観察装置1Bの演算部50の構成は、図12に示すものと同じである。すなわち、演算部50は、第1フーリエ変換部51、周波数分割部52及び第2フーリエ変換部53を備えている。第1フーリエ変換部51は、検出部40からの出力される時刻を変数とするデータについて時刻に関する1次元フーリエ変換を行う。周波数分割部52は、第1フーリエ変換部51から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数帯域に分割する。具体的には、変調周波数Ωnを中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むN個の周波数帯域を分割して出力する。第3フーリエ変換部53は、周波数分割部52から出力されたN個のデータについて周波数に関する1次元フーリエ変換を行う。
【0088】
このようにして演算部50により得られるデータは、入射角θ0を変数とする複素振幅像である。上記のように、入射角θ0を変数とする複素振幅像から、フーリエ回折定理等を用いて3次元複素振幅像を得ることは公知の手法である。したがって、本明細書では、入射角θ0を変数とする複素振幅像から3次元画像を生成する方法についての説明は省略する。
【0089】
本実施形態の観察装置1Bにおいても、物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、参照光との干渉信号を得ることで、入射光の角度毎の光に対する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40がX軸方向に画素構造を持つ1次元光検出器であっても、観察装置1は3次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、X軸方向に画素構造を持つ1次元光検出器を用いて対象物の3次元像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0090】
(第4実施形態)
第1,第2実施形態の観察装置1,1Aは、単画素からなる0次元光検出素子を用いて、対象物2の2次元画像を得た。第3実施形態の観察装置1Bは、X軸方向に画素構造を有する1次元光検出器を用いて、対象物2の3次元画像を得た。第4実施形態の観察装置1Cは、単画素からなる0次元光検出素子を用いて、対象物2の3次元画像を得るものである。
【0091】
図16は、第4実施形態の観察装置1Cの構成を示す図である。図16に示すように、本実施形態の観察装置1Cは、観察装置1Bの周波数変調部20に代えて、第1周波数変調部20Aを備えている。また、実施形態の観察装置1Cでは、参照光路に第2周波数変調部20Bを備えている。その他の構成は観察装置1Bと同じである。以下では、主に観察装置1Bとの相違点についてのみ説明し、観察装置1Bと同一と見做し得る点については説明を省略する。
【0092】
第1周波数変調部20Aは、ビームスプリッタHM1を介して光源部10から出力される光を入力して、X軸方向において複数の互いに異なる周波数を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を出力する。第1周波数変調部20Aは、X軸方向に画素構造dn(n=1,2,…,N)を備えている。第1周波数変調部20Aには、互いに異なる変調周波数Ωnの変調信号が入力される。第1周波数変調部20Aは、各画素dnに入力された光を変調周波数Ωn(第1特定周波数)だけ周波数遷移させて出力する。第1周波数変調部20Aは、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を照明レンズ31に出力する。照明レンズ31は、第1周波数変調部20Aから出力された光をX軸方向に収束又は発散する光とし、Y軸方向に平行光として対象物2に照射する。
【0093】
第2周波数変調部20Bは、ビームスプリッタHM1を介して光源部10から出力される光を入力して、X軸方向において複数の互いに異なる周波数を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を出力する。第2周波数変調部20Bは、X軸方向に画素構造dm(m=1,2,…,M)を備えている。第2周波数変調部20Bには、互いに異なる変調周波数Ωm’(第2特定周波数)の変調信号が入力される。第2周波数変調部20Bは、各画素dmに入力された光を変調周波数Ωm’だけ周波数遷移させて出力する。第1周波数変調部20Aは、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1’〜fb+ΩM’を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を照明レンズ33に出力する。
【0094】
ビームスプリッタHM2は、物体光と、参照光とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉させる。集光レンズ32から出力されて検出部40の受光面に入射される光は、第1周波数変調部20Aの作用によりf+Ωnの周波数を持つ。照明レンズ33から出力されて検出部40の受光面に入射される光は、第2周波数変調部20B作用によりf+ΩM’の周波数を持つ。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0095】
検出部40は、周波数変調部20による光照射により対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。検出部40は、単画素からなる0次元光検出素子である。検出部40の受光面は、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置される。
【0096】
演算部50は、検出部40から出力されるデータのそれぞれについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行い、変調周波数Ωnおよび変調周波数Ωm’に基づいて複数の周波数領域に分割し、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物2の像として得る。
【0097】
本実施形態の観察装置1Cの演算部50の構成は、図12に示すものと同じである。すなわち、演算部50は、第1フーリエ変換部51、周波数分割部52及び第2フーリエ変換部53を備えている。第1フーリエ変換部51は、検出部40からの出力される時刻を変数とするデータについて時刻に関する1次元フーリエ変換を行う。周波数分割部52は、第1フーリエ変換部51から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数帯域に分割する。具体的には、変調周波数Ωn,Ωm’を中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むNxM個の周波数帯域を抽出して出力する。
【0098】
第3フーリエ変換部53は、周波数分割部52から出力されたN個のデータについて周波数に関する1次元フーリエ変換を行う。なお、第1フーリエ変換部61及び第3フーリエ変換部53は、互いに入れ替えて任意の順序で配置されてもよい。
【0099】
このようにして演算部50により得られるデータは、入射角θ0を変数とする複素振幅像である。上記のように、入射角θ0を変数とする複素振幅像から、フーリエ回折定理等を用いて3次元複素振幅像を得ることは公知の手法である。したがって、本明細書では、入射角θ0を変数とする複素振幅像から3次元画像を生成する方法についての説明は省略する。
【0100】
本実施形態の観察装置1Bにおいても、物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、参照光との干渉信号を得ることで、入射光の角度毎の光に対する信号は混信することなく復元することができる。また参照光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。参照光路断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、検出器受光面の各領域が出力する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40が単画素からなる0次元光検出素子であっても、観察装置1は3次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、単画素の0次元光検出素子を用いて対象物の3次元像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0101】
(変形例)
本配置例では、検出部50の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に配置されている。しかし、検出部50の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に配置されていない場合であっても、所定の演算を行うことにより、検出部50の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に配置された場合と同じ複素振幅像を得ることができる。ただし、検出部50がフレネル回折像面に配置されると、像のボケとして2次位相H(u)が現れる。この場合、検出部50の出力を、第1方向に1次元フーリエ変換を行った後、2次位相H(u)で除する2次位相除算部を演算部50に備えることが好ましい。2次位相H(u)は、検出部50が配置される位置により決まる値であり、下記(13)式で表される。(13)式において、αは定数である。
【0102】
【数13】
【0103】
上記実施形態では、演算部50の周波数分割部52が、変調周波数Ωnを中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むN個の周波数帯域を分割したが、別の方法で周波数帯域の分割を行ってもよい。例えば、検出器の後段に分波器を設け、検出部40から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数毎に分割してもよい。このような分波器としては、X軸方向に並設されたN個のバンドパスフィルターが用いられる。
【0104】
本実施形態の観察装置1では、対象物2の速度が変化するとドップラー信号に周波数変調が生じて、最終的に得られる対象物2の像が流れ方向に伸縮する。このような伸縮を補正するために、本実施形態の観察装置1は、対象物2の移動速度を検出する速度検出部を更に備えるのが好適である。そして、演算部50は、速度検出部により検出された対象物2の速度に基づいて、時間方向の1次元フーリエ変換または2次元フーリエ変換の際に対象物2の速度変化に関する補正を行うのが好適である。または、速度検出部より検出された対象物2の速度に基づいて、検出部40の撮影タイミングを図ってもよい。
【0105】
この速度検出部は、任意のものが用いられ得るが、移動速度とドップラーシフト量との間の関係を利用して、集光レンズ32の後焦点面の散乱光到達位置における信号の周波数を検出することでも対象物2の移動速度を求めることができる。この場合、速度検出部は、ビームスプリッタHM2から検出部40へ向う光の一部が分岐されたものをフーリエ面上で検出してもよいし、或いは、検出部40の受光面の一部に独立に設けられた画素を含むものであってもよい。その画素の大きさは、対象物2の移動速度Vとドップラー周波数fdとの関係から導かれる移動速度の分解能を有する面積を持つことが好ましい。
【0106】
以上の説明では、光源の対象物の位相像を透過照明で取得する実施例を主に示したが、反射照明で取得してもよいことは、明らかである。光源として、ドップラーシフト量を感度よく検出する上では、単一縦モードの光の利用が好適であるが、これに限定されない。例えば、広帯域の光を用いることで、位相物体の深さに関する情報も取得可能となる。各波長成分のドップラーシフトを計測するためには、広帯域の光として、波長成分間の位相関係が一定であるものを用いるのが好適である。このような光源として、例えばモードロックレーザーを用いることができる。モードロックレーザーは、離散的な波長成分を有するため、ドップラーシフト量の検出する用途において、非常に有効な光源である。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B,1C…観察装置、2…対象物、10…光源部、20…周波数変調部、20A…第1周波数変調部、20B…第2周波数変調部、31,33…照明レンズ、32…集光レンズ、40…検出部、50…演算部、51…第1フーリエ変換部、52…周波数分割部、52…第2フーリエ変換部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の像を観察する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動する対象物の像を観察して定量的情報を得る技術として、特許文献1や非特許文献1に記載された位相シフト法を用いたものが知られている。これらの位相シフト法に拠る観察装置では、光源から出力された波長λの光が2分岐され、一方の分岐光が対象物を透過して物体光とされ、他方の分岐光が参照光とされて、これら物体光と参照光との干渉による2次元像が撮像される。そして、参照光の光路長がλ/4ずつ異なるものとされて4枚の2次元画像が得られ、これら4枚の2次元画像について所定の演算が行われて、対象物の振幅像及び位相像が得られる。ここで、特許文献1や非特許文献1に記載の装置では、空間的画素構造を2次元に持つ2次元光検出器を用いて2次元画像を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3471556号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F. Le Clerc, et al, "Numerical heterodyne holography withtwo-dimensional photodetector arrays," Optics Letters, Vol.25, No.10, pp.716-718,(2000).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1や非特許文献2に記載された位相シフト法を用いた観察装置では、4枚の2次元画像を得る間、対象物は静止している状態であることが必要である。移動している対象物の像を得るには、フレームレートが高く高速撮像が可能な光検出器を用いて、対象物が静止していると見做し得る期間に4枚の2次元画像を得ることが必要である。しかし、高速撮像が可能な光検出器は、高額であり、或いは、画素数が少なく空間分解能が劣る。特に、特許文献1や非特許文献1に記載された観察装置では、受光器のデータ更新レートが遅い2次元光検出器を用いて2次元画像を得る必要があるため、対象物の移動が高速である場合には、対象物が静止していると見做し得る期間内に2次元画像を取得することが困難である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、高速に移動する対象物の像を得ることができる観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の観察装置は、移動している対象物へ光を照射する光源部と、光源部から出力された光を入力して、当該入力された光を、その入力した光を対象物の前段で2分割して第1の光及び第2の光とし、所定平面上で第1の光と第2の光とをヘテロダイン干渉させる光学系と、対象物の移動に因るドップラーシフト効果が一定となる所定平面上の方向であって、対象物の移動方向に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向に直交する所定平面上の方向であって、対象物の移動方向に平行な方向を第2方向としたときに、第1の光又は第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調する周波数変調部と、所定平面上に位置する検出部であって、対象物で生じた散乱光のうち、検出部に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する検出部と、検出部から出力されたデータに対して、特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物の像として得る演算部と、を備える。
【0008】
観察装置は、光源部、周波数変調部、検出部、及び演算部を備える。第1の光又は第2の光を入力して、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調する。つまり、変調後の光は、第1方向において、変調前の光から特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において、変調前の光と同じ周波数を有する。検出部は、所定平面上に位置し、対象物で生じた散乱光のうち、検出部に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。演算部は、検出部からの出力に対して、特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物の像として得る。このような構成によれば、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有する光を用いることで、対象物の第2方向の像を混信することなく復元することができる。ドップラー効果により、対象物の空間周波数が時間周波数に変換されることで、検出器の次元を1次元減少できる。また周波数変調部により、対象物の像が時間周波数に変換されることで、検出器の次元を1次元減少できる。このため、この観察装置では、撮像した画像の次元よりも低い次元数を有する検出部を用いて、所望の画像を得ることができる。例えば、0次元の光検出器を有する検出部を用いて2次元画像を得ることができ、1次元の光検出器を有する検出部を用いて3次元画像を得ることができる。このため、検出器の読み出し時間が短縮され、高速に移動する対象物の像を得ることができる。
【0009】
また、周波数変調部が、第1の光の光路上に配置され、第1の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を、第1の光の光路上に位置する対象物または対象物の像に照射してもよい。
【0010】
また、周波数変調部が、第2の光の光路上に配置され、第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調してもよい。
【0011】
また、検出部が、単画素の光検出器であってもよい。
【0012】
また、光源部と対象物との間に配置され、光源部からの光を入力して、対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、検出部が、所定平面に受光面を有し、該受光面において第1方向に画素構造を有する光検出器であってもよい。
【0013】
また、光源部と対象物との間に配置され、光源部からの光を入力して、対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、周波数変調部が、第1の周波数変調部と、第2の周波数変調部とを備え、第1の周波数変調部が、第1の光の光路上に配置され、第1の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数である第1特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を対象物に照射し、第2の周波数変調部が、第2の光の光路上に配置され、第2の光を入力して、当該入力した光を、第1方向において互いに異なる複数の特定周波数である第2特定周波数だけ遷移された周波数を有し、第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、検出部が、単画素の光検出器であり、演算部が、検出部から出力されたデータに対して、第1特定周波数及び第2特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物の像として得てもよい。
【0014】
また、演算部が、検出部から出力されるデータを、特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する分波器と、分波器により分割されたデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、第1フーリエ変換部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含んでもよい。
【0015】
また、演算部が、検出部から出力されるデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、第1フーリエ変換部から出力されたデータを、特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する周波数分割部と、分割部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含んでもよい。
【0016】
また、演算部が、検出部から出力されるデータを、検出部が配置される位置により定まる値である2次位相で除する2次位相除算部を更に備えていてもよい。
【0017】
また、対象物の移動速度を検出する速度検出部を更に備え、演算部が、速度検出部により検出された対象物の速度に基づいて、フーリエ変換の際に対象物の速度変化に関する補正を行うこととしてもよい。
【0018】
また、対象物への光の照射が、透過照明の光学配置によって行われてもよいし、対象物への光の照射が、反射照明の光学配置によって行われてもよい。また、光源部が、単一縦モードの光を生成する光源であってもよいし、光源部が、広帯域の光を生成してもよい。さらに、光源部が、モードロックレーザーであってもよい。
【0019】
光源部が、広帯域の光を生成してもよい。
【0020】
光源部が、光としてパルス波を生成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高速に移動する対象物の像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の観察装置による対象物の像の取得の原理を説明する図である。
【図2】対象物で生じる散乱光の散乱方向を説明する図である。
【図3】対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。
【図4】対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を更に説明する図である。
【図5】対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。
【図6】対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達するまでの光路長の変化を説明する図である。
【図7】対象物で生じる散乱光の散乱方向単位ベクトルと移動する対象物の速度ベクトルの成す角度を説明する図である。
【図8】第1実施形態の観察装置1の構成を示す図である。
【図9】周波数変調部20の構成の一例を示す図である。
【図10】変調器22の画素構造を示す図である。
【図11】検出部40において観察される信号の例を示す図である。
【図12】演算部50の構成を示す図である。
【図13】本実施形態の観察装置1における対象物2、集光レンズ32及び検出部40の間の配置の関係を説明する図である。
【図14】第2実施形態の観察装置1Aの構成を示す図である。
【図15】第3実施形態の観察装置1Bの構成を示す図である。
【図16】第4実施形態の観察装置1Cの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
本実施形態の観察装置は、移動している対象物に光を照射して、対象物の像を取得するものである。初めに、発明の理解を容易にするために、図1〜図7を用いて、本実施形態の観察装置による対象物の位相像の取得について原理的な事項について説明する。
【0025】
図1は、本実施形態の観察装置による対象物の位相像の取得の原理を説明する図である。この図には、ξη座標系,xy座標系及びuv座標系が示されている。ξ軸,η軸,x軸,y軸,u軸及びv軸は、何れも集光レンズ32の光軸に垂直である。ξ軸,x軸及びu軸は、互いに平行である。η軸,y軸及びv軸は、互いに平行である。観察対象である対象物2はξη平面上に存在する。集光レンズ32はxy平面上に存在する。また、集光レンズ32の後焦点面はuv平面と一致する。ξη平面とxy平面との間の距離はdである。xy平面とuv平面との間の距離は集光レンズ32の焦点距離fと一致する。本明細書において、ξ軸方向、x軸方向、第1方向に対して平行な向きをX軸方向といい、η軸方向、y軸方向、第2方向に平行な向きをY軸という場合がある。
【0026】
対象物2はξη平面上で−η方向に移動しているものとする。ξη平面に垂直なζ方向に進む光L0が対象物2に照射されるとする。この光L0は例えば平面波である。対象物2に光L0が照射されることにより生じる散乱光L1〜L3は、様々な方向に進み、また、対象物2の移動によりドップラーシフトを受ける。対象物2の移動方向と同じ方向に散乱方向ベクトル成分を有する散乱光L1は、光周波数が高くなる。対象物2の移動方向に散乱方向ベクトル成分を有しない散乱光L2は、光周波数が変化しない。対象物2の移動方向と逆の方向に散乱方向ベクトル成分を有する散乱光L3は、光周波数が低くなる。これらの散乱光L1〜L3は、集光レンズ32を経てuv平面に到達する。
【0027】
図2は、対象物で生じる散乱光の散乱方向を説明する図である。対象物2で生じる散乱光の散乱方向を表現するには、仰角θ及び方位角φの2つの変数で記述する必要がある。対象物2内に仮想的に配置した点光源をξηζ座標系の原点とする。そして、その原点に位置する点光源からの散乱光の方向ベクトルとζ軸とがなす角度を仰角θとする。また、その散乱方向ベクトルのξη平面への投影ベクトルとξ軸とがなす角度を方位角φとする。
【0028】
図3は、対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。光L0が対象物2に照射されることにより生じる散乱光は、ホイヘンスの原理により2次波として扱うことができ、対象物2内に仮想的に配置した点光源から発した光として扱うことができる。同図では、対象物2内に5個の仮想的な点光源が配置されている。これらの点光源は、集光レンズ32の前焦点面上だけでなく、集光レンズ32の前焦点面の前後にも存在する場合がある。
【0029】
これらの点光源から発した光のうち同じ仰角θ及び方位角φを有する散乱光L1〜L3は、集光レンズ32の後焦点面上の一点Paに到達する。また、他の同じ仰角θ及び方位角φを有する散乱光L4〜L6は、集光レンズ32の後焦点面上の他の一点Pbに到達する。なお、光線L2,L5は、集光レンズ32の前焦点位置の点光源から発した光であるので、集光レンズ32以降では集光レンズ32の光軸に平行に進む。光L0のうち対象物2により散乱されなかった光は、集光レンズ32の光軸に平行に進んで集光レンズ32に入射されるので、集光レンズ32の後焦点位置Poに集光される。
【0030】
対象物2がξη平面上で−η方向に移動している場合、ドップラーシフト効果により、点Paで観測される光周波数は元の光周波数fbより小さく、点Pbで観測される光周波数は元の光周波数fbより大きい。散乱角(仰角θ,方位角φ)がレンズ後焦点面上に展開されることから、レンズ後焦点面での像は角度スペクトルと呼ばれることがある。大きな仰角θを有する光線は、レンズ後焦点面上において中心点Poから遠い位置に集光される。まとめると、異なる仮想点光源であっても同じ散乱角を有する散乱光はレンズ後焦点面上で一点に集光される。
【0031】
図4は、対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を更に説明する図である。ここでは、対象物2中のレンズ前焦点面上に存在する異なる仮想点光源から、異なる散乱角で散乱光L1〜L3が発するものとする。集光レンズ32の前焦点位置の仮想点光源から発した散乱光L4は、集光レンズ32以降では集光レンズ32の光軸に平行に進み、集光レンズ32の後焦点面上の点Psを通過する。集光レンズ32の前焦点面上の或る仮想点光源から発した散乱光L1は、集光レンズ32の前焦点位置の仮想点光源から発した散乱光L4と散乱角が同じであるとすると、集光レンズ32の後焦点面上の点Psを通過する。集光レンズ32の前焦点位置の仮想点光源から発した散乱光L2は、L4とは散乱角が異なるため、集光レンズ32以降では集光レンズ32の光軸に平行に進むが、点Psを通過しない。集光レンズ32の前焦点面上の他の或る仮想点光源から発した散乱光L3は、集光レンズ32の中心を通過するものとすると、集光レンズ32の入射の前後で進行方向が変わらない。結局、光線L1〜L3は、レンズ後焦点面より更に後方の点Prに集光される。異なる散乱角を有する散乱光はレンズ後焦点面では1点で交わらない。
【0032】
図5は、対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達する位置を説明する図である。ここでは、各位置に移動した対象物2a〜2eが示されている。また、対象物2a〜2e中に仮想点光源が存在するものとする。対象物2a中の仮想点光源はレンズ前焦点位置に存在する。対象物2b,2c中の仮想点光源は、対象物2a中の仮想点光源の位置に対して上下に存在する。対象物2d,2e中の仮想点光源は、対象物2a中の仮想点光源の位置に対して前後に存在する。空間的に一様な光L0が対象物2a〜2eに照射されるので、対象物2a〜2e中の各点光源で発する散乱光の角度スペクトルの強度分布は一定である。すなわち、対象物2が移動したとしても、レンズ後焦点面における角度スペクトルの強度分布は一定である。
【0033】
対象物2が移動することによって光の位相が変化する。例えば、レンズ前焦点面上の対象物2b,2c中の各点光源で発した光L1b,L1cがレンズ後焦点面上の位置Paに到達するまでの光路長差は以下のようになる。対象物2b中の点光源で発した光L1bが集光レンズ32の入射面に達するまでの光路長と、対象物2c中の点光源で発した光L1cが集光レンズ32の入射面に達するまでの光路長とは、互いに等しい。しかし、集光レンズ32の肉厚差により、集光レンズ32の入射面から点Paに到達するまでの光L1b,L1cそれぞれの光路長は異なるものとなる。対象物2が等速移動することにより、この光路長差は時間的に直線的に変化する。
【0034】
図6は、対象物が移動する場合に対象物で生じる散乱光がレンズの後焦点面に到達するまでの光路長の変化を説明する図である。ただし、ここでは、集光レンズ32を用いることなく無限遠方にて散乱光を観察する場合を想定する。対象物2がレンズ前焦点面上において対象物2b位置から対象物2c位置へ移動する場合、点Paで散乱光を観測する場合と無限遠方にて散乱光を観測する場合とは互いに等しい。
【0035】
対象物2がξη平面上で−η方向に移動しているとき、対象物2から発せられる散乱光が無限遠方のuv平面上の点Ppに達するまでの光路長の単位時間当たりの変化量ΔLは、下記(1)式で表される。ここで、eprは散乱方向単位ベクトルであり、vpは対象物2の速度ベクトルである。この単位時間当たりの光路長変化量ΔLを用いると、位相差すなわち光周波数の変化量fdは下記(2)式で表される。λは光の波長である。uv平面上の位置Ppで散乱光を観測する場合、対象物2が移動することにより、位置Ppに到達する散乱光の光路長が変化して光周波数が変化する。これがドップラーシフトの原因である。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
ドップラーシフトは、フーリエ変換の性質の一つである時間軸移動によっても説明することができる。対象物2の複素振幅をg(x)で表し、対象物2のフーリエ変換をG(k)で表す。対象物2が位置x0から位置(x0+x)へ移動したとき、移動後の対象物2のフーリエ変換G'(x)は下記(3)式で表される。この(3)式の右辺の指数関数内の項は位相を表している。対象物2が移動することにより、この位相が波数ベクトルkに比例して回転することから、周波数シフトが生じる。指数関数内の位相をφとすると、周波数シフトfdは下記(4)式で表される。eprは波数ベクトルkの単位ベクトルである。vpは位置xの時間微分すなわち対象物2の速度を表す。この(4)式は、前述した単位時間当たりの光路長変化から説明される周波数シフト式(2)と合致する。
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
図7は、対象物で生じる散乱光の散乱方向単位ベクトルと対象物2の速度ベクトルの成す角度を説明する図である。散乱方向単位ベクトルeprをηζ平面へ投影したベクトルとζ軸とがなす角度をθ'と表す。このとき、散乱方向単位ベクトルeprと対象物2の速度ベクトルvpとがなす角度はθ'+π/2となる。このことから、(2)式または(4)式の右辺の散乱ベクトルと速度ベクトルとの内積は下記(5)式で表される。Vは対象物2の移動の速さである。集光レンズ32の開口数NAはsinθ'で定義されるので、ボケのない画像を得るためのナイキスト周波数fnyqは下記(6)式で表される。
【0042】
【数5】
【0043】
【数6】
【0044】
次に、具体的な数値を当てはめて、ドップラーシフトによる光周波数の変化量fdを見積もる。現在市販されているフローサイトメーターにより対象物2が流れるものとして、対象物2の移動速度が1m/秒であるとする。対象物2に照射される光L0は、波長633nmのHeNeレーザ光であるとする。集光レンズ32は、NAが0.45であり、倍率が20倍相当であるとする。このような集光レンズ32を使用する場合、速度ベクトルvpに対する散乱角θ'の正弦の最大値は0.45をとる。したがって、最大ドップラーシフト周波数は、(5)式から710kHzと見積もられる。また、速度100μm/秒の場合であれば、最大71Hzのドップラーシフト周波数が観測される。
【0045】
散乱角θ'を有する散乱光は、焦点距離fの集光レンズ32により、uv平面上の下記(7)式で表される位置に到達する。したがって、(5)式,(7)式を用い、角度θ'が小さい場合に成り立つtanθ'≒sinθ' の近似の式を用いると、ドップラーシフト周波数fdは、下記(8)式のようにv座標値の関数として表現され得る。なお、近似を用いない場合には、下記(9)式で表される。
【0046】
【数7】
【0047】
【数8】
【0048】
【数9】
【0049】
(第1実施形態)
以下の実施形態に係る観察装置は、以上に説明した原理に基づいて、対象物2の像を取得する装置である。本実施形態の観察装置1では、単画素の0次元光検出器を用いて、対象物2の2次元画像を得る。図8は、本実施形態の観察装置1の構成を示す図である。本実施形態の観察装置1は、光源部10、ビームスプリッタHM1、周波数変調部20、集光レンズ32、照明レンズ31、ビームスプリッタHM2、ミラーM1、ミラーM2、検出部40、及び演算部50を備える。
【0050】
光源部10は、例えばHeNeレーザ光源であり、対象物2に照射されるべき光(光周波数fb)を出力する。ビームスプリッタHM1は、光源部10から出力された光を入力し、この光を2分割して第1の光及び第2の光とし、そのうちの第1の光を周波数変調部20へ出力し、第2の光をミラーM1へ出力する。ミラーM1へ出力された光は、ミラーM1、M2により順次に反射され、ビームスプリッタHM2へ出力される。
【0051】
周波数変調部20は、光源部10から出力された光を、X軸方向において互いに異なる複数の周波数を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調し、この変調した光を照明レンズ31を介して対象物2に照射する。図9に示すように、周波数変調部20は、レンズ21、ビームスプリッタHM3、及び変調器22を備えている。レンズ21は、ビームスプリッタHM1から出力された光のビーム径を変調器22と同じ程度の大きさに調整した上で、変調器22に出力する。照明レンズ31は、周波数変調部20によってX軸方向に互いに直交する周波数を配置された物体光断面を、対象物2が存在するξ−η面に結像する作用を持つ。すなわち照明レンズ31は、周波数変調部20からの出力をξ−η面へ照明する。なお、照明レンズ31はξ−η面と等価な(共役な)対象物の結像面へ照明してもよい。
【0052】
変調器22としては、例えば図10に示すように、X軸方向に画素構造dn(n=1,2,...,N)を持つ空間光変調器(Spatial Light Modulator)が用いられる。空間光変調器は、入射してきた光に位相変調を与える装置である。変調器22は、その各画素dnに入射された光を、各画素dn毎に異なる変調周波数Ωn(n=1,2,...,N)(特定周波数)により変調し、その変調した光をビームスプリッタHM3へ出力する。ここで、変調周波数Ωnは、以下の(10)式を満たす周波数である。(10)式におけるBwは、以下の(11)式に示す最大ドップラーシフト周波数Bwである。(11)式において、λは光の波長、Vは移動物体の速度、θmaxは集光レンズ32が対象物2からの散乱光を取りうる最大散乱角である。
【0053】
【数10】
【0054】
【数11】
【0055】
変調器22からは、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光が出力される。ビームスプリッタHM3は、変調器22から出力された光を周波数変調部20の出力として、照明レンズ31を介して対象物2に出力する。なお、変調器22としては、X軸方向に画素構造dnを持つ空間光変調器ではなく、X方向に並設された音響光学素子を用いてもよい。
【0056】
周波数変調部20から出力された光は、照明レンズ31を介して対象物2へ照射される。集光レンズ32は、周波数変調部20からの光照射により対象物2で生じた散乱光を入力して、検出部40の受光面において対象物2のフランフォーファー回折像を形成する。集光レンズ32は、周波数変調部20から出力された光をビームスプリッタHM2へ出力する。
【0057】
ビームスプリッタHM2は、集光レンズ32から到達した光(第1の光)と、ミラーM2から到達した光(第2の光)とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を受光面上でヘテロダイン干渉させる。以下、本明細書では、対象物2が配置される光路を通過する光を物体光といい、対象物2が配置されていない光路を通過する光を参照光ということがある。本実施形態では、第1の光が物体光であり、第2の光が参照光である。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0058】
対象物2はξη平面上で−η方向に移動しているものとすると、集光レンズ32を経て検出部40の受光面に到達した光において対象物2の移動に因るドップラーシフト周波数が一定となる第1方向は、ξ軸に平行なu方向である。すなわち、第1方向は、対象物2の移動方向に垂直な方向である。この第1方向に直交する受光面上の第2方向は、η軸に平行なv方向である。すなわち、第2方向は、対象物2の移動方向に平行な方向である。
【0059】
検出部40は、周波数変調部20による光照射により対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40の受光面に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。検出部40は、単画素からなる0次元光検出素子である。光検出素子としては、フォトダイオード(PD)や光電子増倍管(PMT)が用いられる。検出部40の受光面は、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置される。
【0060】
図11は、検出部40において観測される信号の例を示した図である。図11において横軸は周波数である。図11に示すように、検出部40では、物体光と参照光との干渉ビート信号であるΩnを中心として、その前後に移動物体からの散乱光によるドップラーシフト周波数fdを含む信号が観測される。検出部40は、検出した信号を演算部50に出力する。
【0061】
演算部50は、検出部40から出力された時刻を変数とするデータについて所定の演算を行って対象物2の像を得る。図12に示すように、演算部50は、第1フーリエ変換部51、周波数分割部52及び第2フーリエ変換部53を備えている。第1フーリエ変換部51は、検出部40からの出力される時刻を変数とするデータについて時刻に関する1次元フーリエ変換を行う。周波数分割部52は、第1フーリエ変換部51から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数帯域に分割する。具体的には、第1フーリエ変換部51から出力された信号、変調周波数Ωnを中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むN個の周波数領域毎に分割して出力する。第2フーリエ変換部53は、周波数分割部52から出力されたN個のデータについて周波数に関する1次元フーリエ変換を行う。
【0062】
本実施形態の観察装置1では、検出部40の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置されているが、検出部40の受光面は、本実施形態とは異なる位置に配置されてもよい。図13は、本実施形態の観察装置1における対象物2、集光レンズ32及び検出部40の配置の関係を説明する図である。同図(a)はη方向に見た図であり、同図(b)はξ方向に見た図である。同図では、集光レンズ32の前焦点位置に原点を有するξη座標系、集光レンズ32の中心に原点を有するxy座標系、集光レンズ32の後焦点位置に原点を有するuv座標系、集光レンズ32による結像面中心位置に原点を有するu'v'座標系、及び、集光レンズ32の光軸上の任意位置に原点を有するu"v"座標系、が示されている。以下では、検出部40の受光面をuv平面に一致させた配置を第1配置例といい、検出部40の受光面をu'v'平面に一致させた配置を第2配置例といい、検出部40の受光面をu"v"平面に一致させた配置を第3配置例という。
【0063】
同図(b)に示されるように、対象物2中の仮想点光源g1〜g3で同じ角度で発生した光線L4〜L6は、レンズ後焦点面であるuv平面上の一点aで交わり、やがて発散していき、レンズ結像面であるu'v'平面上の点h,g,fに到達する。これらの光線L4〜L6は、同じ散乱角θ'を有することから、同じ量のドップラーシフトを受ける。
【0064】
第1配置例及び第2配置例それぞれの場合に検出部40により受光される信号の相違について説明すると以下のとおりである。第1配置例では、周波数シフトがv方向に規則正しく観測され、v方向の位置と周波数シフト量との間には1対1の対応関係が存在する。これに対して、第2配置例では、周波数シフトがv'方向に規則正しく配置されず、v'方向の位置と周波数シフト量との間には1対1の対応関係が存在しない。
【0065】
ここで、第2配置例においてv'方向に不規則に配置された周波数シフト量を順序正しくする(すなわち、第1配置例で検出部40の受光面で観測されるような順序にする)には,u'v'平面上の点f,g,hで観測される波形を合波(和算)した後にフーリエ変換を施せばよく、このようにすることにより、その周波数軸が線形となり、かつその振幅及び位相が得られる。
【0066】
つまり、対象物2によりドップラーシフトを受けた散乱光をカバーするだけの大きさの受光面を検出部40が有していれば、どの位置に配置された検出部40により受光しようとも得られる信号は変わらず、かつ、周波数にエンコードされているので、第1配置例の検出部40の受光面で得られる分布を回復することが可能である。
【0067】
一方、同図(a)に示されるように、u方向に関してはドップラーシフトを受けないことから、u方向に信号を積分しても、演算等により分布を回復することはできない。そこで、本実施形態の観察装置1では、物体光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、参照光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。物体光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、検出器受光面の各領域が出力する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40が単画素からなる0次元光検出素子であっても、観察装置1は2次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、単画素からなる0次元光検出素子を用いて対象物の像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0068】
(第2実施形態)
第1実施形態では、周波数変調部20が物体光路上(第1の光の光路上)に配置されていた。第2実施形態の観察装置1Aでは、周波数変調部20が参照光路上(第2の光の光路上)に配置される点で、第1実施形態と異なる。それ以外の点では、第1実施形態と同じである。以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一である点については説明を省略する。
【0069】
図14は、第2実施形態の観察装置1Aの構成を示す図である。本実施形態の観察装置1Aは、第1実施形態と同じように、光源部10、ビームスプリッタHM1、周波数変調部20、集光レンズ32、照明レンズ31、ビームスプリッタHM2、ミラーM1、ミラーM2、検出部40、及び演算部50を備える。ただし、観察装置1Aでは、周波数変調部20が参照光路上に配置されている。
【0070】
光源部10は、移動している対象物へ光を照射する。集光レンズ32は、光源部10からの光照射により対象物2で生じた散乱光を入力して、検出部40の受光面において対象物2のフランフォーファー回折像を形成する。集光レンズ32は、周波数変調部20から出力された光をビームスプリッタHM2へ出力する。
【0071】
周波数変調部20は、光源部10から出力された光をビームスプリッタHM1、ミラーM1を介して入力し、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光に変調し、この変調した光を照明レンズ31を介してビームスプリッタHM2に出力する。照明レンズ31は、周波数変調部20によってX軸方向に互いに直交する周波数を配置された参照光断面を、検出部40の受光面に結像する作用を持つ。すなわち照明レンズ31は、周波数変調部20からの出力を検出部40の受光面へ照明する。
【0072】
ビームスプリッタHM2は、集光レンズ32から到達した光(物体光)と、集光レンズ33から到達した光(参照光)とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を受光面上でヘテロダイン干渉させる。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0073】
本実施形態の検出部40で観測される干渉ビート信号は、第1実施形態で観測されるものと同じである。つまり、検出部40では、図11に示される、物体光と参照光との干渉ビート信号であるΩnを中心として、その前後に移動物体からの散乱光によるドップラーシフト周波数fdを含む信号が観測される。したがって、検出部40の後段に配置される演算部50の機能は第1実施形態と同じであり、再度の説明は省略する。
【0074】
本実施形態の観察装置1Aにおいても、参照光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。参照光路断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、検出器受光面の各領域が出力する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40が単画素からなる0次元光検出素子であっても、観察装置1は2次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、単画素からなる0次元光検出素子を用いて対象物の2次元像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0075】
(第3実施形態)
上記第1、第2実施形態の観察装置1、1Aでは、単画素からなる0次元光検出素子を用いて、対象物2の2次元画像を得た。第3実施形態の観察装置1Bは、X軸方向に画素構造を有する1次元光検出器を用いて、対象物2の3次元画像を得る。以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同一である点については説明を省略する。
【0076】
まず、3次元画像を得るための一般的な原理について説明する。対象物2に多方向から光が対象物2に照射されるとする。この場合、速度ベクトルVで移動する対象物2に周波数fをもつ光を照射すると、対象物2で生じる散乱波の周波数は、ドップラー効果により下記(12)式で表されるドップラーシフト周波数fdだけ変化する。(12)式では、対象物2に対する入射光の入射単位ベクトルをs0とし、対象物2で生じた散乱波の散乱方向を示す散乱単位ベクトルをsとしている。(12)式において、λは光の波長である。(12)式はドップラーシフト量fdは、(s−s0)と移動物体の速度ベクトルVの内積に比例することを表している。
【0077】
【数12】
【0078】
式(12)より、速度Vと散乱単位ベクトルsが一定である場合、ある位置で観測される回折波のドップラーシフト周波数fdは、入射単位ベクトルs0と一対一で対応することが分かる。このように、ドップラーシフト周波数fdは、入射波の入射角θ0に依存するものである。
【0079】
入射角θ0を変数とする複素振幅像から、フーリエ回折定理等を用いて3次元複素振幅像を得ることは公知の手法である。例えば、このような手法としては、「W. Choi, C. Fang-Yen, K. Badizadegan, S. Oh, N. Lue, R. R. Dasari,and M. S. Feld, "Tomographic phase microscopy," Nature Methods 4,717-719 (2007)」に開示されている。したがって、本明細書では、入射角θ0を変数とする複素振幅像の取得手順について説明し、入射角θ0を変数とする複素振幅像から3次元画像を生成する方法についての説明は省略する。
【0080】
図15は、第3実施形態の観察装置1Bの構成を示す図である。本実施形態の観察装置1Bは、図15に示すように、光源部10、ビームスプリッタHM1、周波数変調部20、照明レンズ31、集光レンズ32、ビームスプリッタHM2、ミラーM1、ミラーM2、検出部40、及び演算部50を備える。
【0081】
周波数変調部20は、光源部10から出力された光を入力し、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光に変調し、この変調した光を照明レンズ31に出力する。
【0082】
照明レンズ31は、周波数変調部20から出力された光を受光し、X軸方向に種々の方向を持ち、Y軸方向に一定の方向を持つ光を対象物2に照射する。照明レンズ31としては、シリンドリカルレンズが用いられる。照明レンズ31は、曲率を有する面がX軸方向と平行に配置され、曲率を有さない面がY軸方向と平行に配置される。このような照明レンズ31により、対象物2にはX軸方向が収束光又は発散光であって、Y軸方向が平行光である光が照射される。つまり、対象物2には、X軸方向において多方向から光が照射される。このような照明レンズ31により、周波数変調部20によりX軸方向において異なる周波数で変調されて出力されたそれぞれの光fb+Ωnは、それぞれ異なる入射角θ0で対象物2に照射されることとなる。
【0083】
集光レンズ32は、照明レンズ31から出力された光の照射により対象物2で生じた散乱光を入力して、検出部40の受光面において対象物2のフランフォーファー回折像を形成する。集光レンズ32は、周波数変調部20から出力された光をビームスプリッタHM2へ出力する。
【0084】
ビームスプリッタHM1から第2の光として、ミラーM1へ出力された光は、ミラーM1,M2に順次反射され、ビームスプリッタHM2へ出力される。ビームスプリッタHM2は、集光レンズ32から到達した光(物体光)と、ミラーM2から到達した光(参照光)とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を受光面上でヘテロダイン干渉させる。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0085】
検出部40は、対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。検出部40の受光面は、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置される。よって、同じ散乱角を有す散乱光は、検出部40の一点に集光される。検出部40は、u方向に画素d1〜dnが配列された画素構造を有し、各画素dnの光感応領域がv方向に長尺な形状をなす。
【0086】
演算部50は、各画素dnから出力されるデータのそれぞれについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行い、変調周波数Ωnに基づいて複数の周波数領域に分割し、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物2の像として得る。
【0087】
本実施形態の観察装置1Bの演算部50の構成は、図12に示すものと同じである。すなわち、演算部50は、第1フーリエ変換部51、周波数分割部52及び第2フーリエ変換部53を備えている。第1フーリエ変換部51は、検出部40からの出力される時刻を変数とするデータについて時刻に関する1次元フーリエ変換を行う。周波数分割部52は、第1フーリエ変換部51から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数帯域に分割する。具体的には、変調周波数Ωnを中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むN個の周波数帯域を分割して出力する。第3フーリエ変換部53は、周波数分割部52から出力されたN個のデータについて周波数に関する1次元フーリエ変換を行う。
【0088】
このようにして演算部50により得られるデータは、入射角θ0を変数とする複素振幅像である。上記のように、入射角θ0を変数とする複素振幅像から、フーリエ回折定理等を用いて3次元複素振幅像を得ることは公知の手法である。したがって、本明細書では、入射角θ0を変数とする複素振幅像から3次元画像を生成する方法についての説明は省略する。
【0089】
本実施形態の観察装置1Bにおいても、物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、参照光との干渉信号を得ることで、入射光の角度毎の光に対する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40がX軸方向に画素構造を持つ1次元光検出器であっても、観察装置1は3次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、X軸方向に画素構造を持つ1次元光検出器を用いて対象物の3次元像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0090】
(第4実施形態)
第1,第2実施形態の観察装置1,1Aは、単画素からなる0次元光検出素子を用いて、対象物2の2次元画像を得た。第3実施形態の観察装置1Bは、X軸方向に画素構造を有する1次元光検出器を用いて、対象物2の3次元画像を得た。第4実施形態の観察装置1Cは、単画素からなる0次元光検出素子を用いて、対象物2の3次元画像を得るものである。
【0091】
図16は、第4実施形態の観察装置1Cの構成を示す図である。図16に示すように、本実施形態の観察装置1Cは、観察装置1Bの周波数変調部20に代えて、第1周波数変調部20Aを備えている。また、実施形態の観察装置1Cでは、参照光路に第2周波数変調部20Bを備えている。その他の構成は観察装置1Bと同じである。以下では、主に観察装置1Bとの相違点についてのみ説明し、観察装置1Bと同一と見做し得る点については説明を省略する。
【0092】
第1周波数変調部20Aは、ビームスプリッタHM1を介して光源部10から出力される光を入力して、X軸方向において複数の互いに異なる周波数を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を出力する。第1周波数変調部20Aは、X軸方向に画素構造dn(n=1,2,…,N)を備えている。第1周波数変調部20Aには、互いに異なる変調周波数Ωnの変調信号が入力される。第1周波数変調部20Aは、各画素dnに入力された光を変調周波数Ωn(第1特定周波数)だけ周波数遷移させて出力する。第1周波数変調部20Aは、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1〜fb+ΩNを持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を照明レンズ31に出力する。照明レンズ31は、第1周波数変調部20Aから出力された光をX軸方向に収束又は発散する光とし、Y軸方向に平行光として対象物2に照射する。
【0093】
第2周波数変調部20Bは、ビームスプリッタHM1を介して光源部10から出力される光を入力して、X軸方向において複数の互いに異なる周波数を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を出力する。第2周波数変調部20Bは、X軸方向に画素構造dm(m=1,2,…,M)を備えている。第2周波数変調部20Bには、互いに異なる変調周波数Ωm’(第2特定周波数)の変調信号が入力される。第2周波数変調部20Bは、各画素dmに入力された光を変調周波数Ωm’だけ周波数遷移させて出力する。第1周波数変調部20Aは、X軸方向において互いに異なる複数の周波数fb+Ω1’〜fb+ΩM’を持ち、Y軸方向において同一の周波数を持つ光に変調した光を照明レンズ33に出力する。
【0094】
ビームスプリッタHM2は、物体光と、参照光とを検出部40の受光面へ入射させて、両光を検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉させる。集光レンズ32から出力されて検出部40の受光面に入射される光は、第1周波数変調部20Aの作用によりf+Ωnの周波数を持つ。照明レンズ33から出力されて検出部40の受光面に入射される光は、第2周波数変調部20B作用によりf+ΩM’の周波数を持つ。物体光と参照光とが検出部40の受光面上でヘテロダイン干渉されることで、検出部40では物体光と参照光との干渉ビート信号が観測される。
【0095】
検出部40は、周波数変調部20による光照射により対象物2で生じた散乱光のうち、検出部40に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する。検出部40は、単画素からなる0次元光検出素子である。検出部40の受光面は、集光レンズ32の後焦点面に一致する位置に配置される。
【0096】
演算部50は、検出部40から出力されるデータのそれぞれについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行い、変調周波数Ωnおよび変調周波数Ωm’に基づいて複数の周波数領域に分割し、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを対象物2の像として得る。
【0097】
本実施形態の観察装置1Cの演算部50の構成は、図12に示すものと同じである。すなわち、演算部50は、第1フーリエ変換部51、周波数分割部52及び第2フーリエ変換部53を備えている。第1フーリエ変換部51は、検出部40からの出力される時刻を変数とするデータについて時刻に関する1次元フーリエ変換を行う。周波数分割部52は、第1フーリエ変換部51から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数帯域に分割する。具体的には、変調周波数Ωn,Ωm’を中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むNxM個の周波数帯域を抽出して出力する。
【0098】
第3フーリエ変換部53は、周波数分割部52から出力されたN個のデータについて周波数に関する1次元フーリエ変換を行う。なお、第1フーリエ変換部61及び第3フーリエ変換部53は、互いに入れ替えて任意の順序で配置されてもよい。
【0099】
このようにして演算部50により得られるデータは、入射角θ0を変数とする複素振幅像である。上記のように、入射角θ0を変数とする複素振幅像から、フーリエ回折定理等を用いて3次元複素振幅像を得ることは公知の手法である。したがって、本明細書では、入射角θ0を変数とする複素振幅像から3次元画像を生成する方法についての説明は省略する。
【0100】
本実施形態の観察装置1Bにおいても、物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。物体光において対象物への入射光の角度方向に互いに直交する周波数を配置し、参照光との干渉信号を得ることで、入射光の角度毎の光に対する信号は混信することなく復元することができる。また参照光断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、時間方向に展開されたY方向の1次元像が混信することなく復元することができる。参照光路断面においてX軸方向に互いに直交する周波数を配置し、物体光との干渉信号を得ることで、検出器受光面の各領域が出力する信号は混信することなく復元することができる。そのため、検出部40が単画素からなる0次元光検出素子であっても、観察装置1は3次元画像を得ることができる。このように、本実施形態の観察装置によれば、単画素の0次元光検出素子を用いて対象物の3次元像を得ることができるため、高速で移動する対象物の像を得ることができる。
【0101】
(変形例)
本配置例では、検出部50の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に配置されている。しかし、検出部50の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に配置されていない場合であっても、所定の演算を行うことにより、検出部50の受光面が、集光レンズ32の後焦点面に配置された場合と同じ複素振幅像を得ることができる。ただし、検出部50がフレネル回折像面に配置されると、像のボケとして2次位相H(u)が現れる。この場合、検出部50の出力を、第1方向に1次元フーリエ変換を行った後、2次位相H(u)で除する2次位相除算部を演算部50に備えることが好ましい。2次位相H(u)は、検出部50が配置される位置により決まる値であり、下記(13)式で表される。(13)式において、αは定数である。
【0102】
【数13】
【0103】
上記実施形態では、演算部50の周波数分割部52が、変調周波数Ωnを中心として、その前後に最大ドップラーシフト周波数Bwを含むN個の周波数帯域を分割したが、別の方法で周波数帯域の分割を行ってもよい。例えば、検出器の後段に分波器を設け、検出部40から出力された信号を入力し、その信号を所定の周波数毎に分割してもよい。このような分波器としては、X軸方向に並設されたN個のバンドパスフィルターが用いられる。
【0104】
本実施形態の観察装置1では、対象物2の速度が変化するとドップラー信号に周波数変調が生じて、最終的に得られる対象物2の像が流れ方向に伸縮する。このような伸縮を補正するために、本実施形態の観察装置1は、対象物2の移動速度を検出する速度検出部を更に備えるのが好適である。そして、演算部50は、速度検出部により検出された対象物2の速度に基づいて、時間方向の1次元フーリエ変換または2次元フーリエ変換の際に対象物2の速度変化に関する補正を行うのが好適である。または、速度検出部より検出された対象物2の速度に基づいて、検出部40の撮影タイミングを図ってもよい。
【0105】
この速度検出部は、任意のものが用いられ得るが、移動速度とドップラーシフト量との間の関係を利用して、集光レンズ32の後焦点面の散乱光到達位置における信号の周波数を検出することでも対象物2の移動速度を求めることができる。この場合、速度検出部は、ビームスプリッタHM2から検出部40へ向う光の一部が分岐されたものをフーリエ面上で検出してもよいし、或いは、検出部40の受光面の一部に独立に設けられた画素を含むものであってもよい。その画素の大きさは、対象物2の移動速度Vとドップラー周波数fdとの関係から導かれる移動速度の分解能を有する面積を持つことが好ましい。
【0106】
以上の説明では、光源の対象物の位相像を透過照明で取得する実施例を主に示したが、反射照明で取得してもよいことは、明らかである。光源として、ドップラーシフト量を感度よく検出する上では、単一縦モードの光の利用が好適であるが、これに限定されない。例えば、広帯域の光を用いることで、位相物体の深さに関する情報も取得可能となる。各波長成分のドップラーシフトを計測するためには、広帯域の光として、波長成分間の位相関係が一定であるものを用いるのが好適である。このような光源として、例えばモードロックレーザーを用いることができる。モードロックレーザーは、離散的な波長成分を有するため、ドップラーシフト量の検出する用途において、非常に有効な光源である。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B,1C…観察装置、2…対象物、10…光源部、20…周波数変調部、20A…第1周波数変調部、20B…第2周波数変調部、31,33…照明レンズ、32…集光レンズ、40…検出部、50…演算部、51…第1フーリエ変換部、52…周波数分割部、52…第2フーリエ変換部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動している対象物へ光を照射する光源部と、
前記光源部から出力された光を入力して、その入力した光を前記対象物の前段で2分割して第1の光及び第2の光とし、所定平面上で前記第1の光と前記第2の光とをヘテロダイン干渉させる光学系と、
前記対象物の移動に因るドップラーシフト効果が一定となる前記所定平面上の方向であって、前記対象物の移動方向に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向に直交する前記所定平面上の方向であって、前記対象物の移動方向に平行な方向を第2方向としたときに、前記第1の光又は前記第2の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調する周波数変調部と、
前記所定平面上に位置する検出部であって、前記対象物で生じた散乱光のうち、前記検出部に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する検出部と、
前記検出部から出力されたデータに対して、前記特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを前記対象物の像として得る演算部と、
を備える観察装置。
【請求項2】
前記周波数変調部が、前記第1の光の光路上に配置され、前記第1の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を、前記第1の光の光路上に位置する前記対象物または対象物の像に照射する、請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記周波数変調部が、前記第2の光の光路上に配置され、前記第2の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調する、請求項1に記載の観察装置。
【請求項4】
前記検出部が、単画素の光検出器である、請求項1〜3の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項5】
前記光源部と前記対象物との間に配置され、前記光源部からの光を入力して、前記対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、
前記検出部が、前記所定平面に受光面を有し、該受光面において前記第1方向に画素構造を有する光検出器である、請求項1〜3の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項6】
前記光源部と前記対象物との間に配置され、前記光源部からの光を入力して、前記対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、
前記周波数変調部が、第1の周波数変調部と、第2の周波数変調部とを備え、
前記第1の周波数変調部が、前記第1の光の光路上に配置され、前記第1の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数である第1特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を前記対象物に照射し、
前記第2の周波数変調部が、前記第2の光の光路上に配置され、前記第2の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数であって、前記第1特定周波数とは異なる第2特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、
前記検出部が、単画素の光検出器であり、
前記演算部が、前記検出部から出力されたデータに対して、前記第1特定周波数及び第2特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを前記対象物の像として得る請求項1に記載の観察装置。
【請求項7】
前記演算部が、
前記検出部から出力されるデータを、前記特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する分波器と、
前記分波器により分割されたデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、
前記第1フーリエ変換部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項8】
前記演算部が、
前記検出部から出力されるデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、
前記第1フーリエ変換部から出力されたデータを、前記特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する周波数分割部と、
前記分割部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項9】
前記演算部が、前記検出部から出力されるデータを、前記検出部が配置される位置により定まる値である2次位相で除する2次位相除算部を更に備える、請求項1〜8の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項10】
前記対象物の移動速度を検出する速度検出部を更に備え、
前記演算部が、前記速度検出部により検出された前記対象物の速度に基づいて、前記フーリエ変換の際に前記対象物の速度変化に関する補正を行う、
請求項1〜9の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項11】
前記対象物への光の照射が、透過照明の光学配置によって行われることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項12】
前記対象物への光の照射が、反射照明の光学配置によって行われることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項13】
前記光源部が、単一縦モードの光を生成する光源であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項14】
前記光源部が、広帯域の光を生成することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項15】
前記光源部が、モードロックレーザーであることを特徴とする請求項14に記載の観察装置。
【請求項1】
移動している対象物へ光を照射する光源部と、
前記光源部から出力された光を入力して、その入力した光を前記対象物の前段で2分割して第1の光及び第2の光とし、所定平面上で前記第1の光と前記第2の光とをヘテロダイン干渉させる光学系と、
前記対象物の移動に因るドップラーシフト効果が一定となる前記所定平面上の方向であって、前記対象物の移動方向に垂直な方向を第1方向とし、この第1方向に直交する前記所定平面上の方向であって、前記対象物の移動方向に平行な方向を第2方向としたときに、前記第1の光又は前記第2の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調する周波数変調部と、
前記所定平面上に位置する検出部であって、前記対象物で生じた散乱光のうち、前記検出部に到達した光を検出し、ドップラーシフト量に応じた周波数で時間的に変化する散乱光のデータを、各時刻に出力する検出部と、
前記検出部から出力されたデータに対して、前記特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを前記対象物の像として得る演算部と、
を備える観察装置。
【請求項2】
前記周波数変調部が、前記第1の光の光路上に配置され、前記第1の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を、前記第1の光の光路上に位置する前記対象物または対象物の像に照射する、請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記周波数変調部が、前記第2の光の光路上に配置され、前記第2の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調する、請求項1に記載の観察装置。
【請求項4】
前記検出部が、単画素の光検出器である、請求項1〜3の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項5】
前記光源部と前記対象物との間に配置され、前記光源部からの光を入力して、前記対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、
前記検出部が、前記所定平面に受光面を有し、該受光面において前記第1方向に画素構造を有する光検出器である、請求項1〜3の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項6】
前記光源部と前記対象物との間に配置され、前記光源部からの光を入力して、前記対象物へ多方向から光を照射する照明光学系を更に備え、
前記周波数変調部が、第1の周波数変調部と、第2の周波数変調部とを備え、
前記第1の周波数変調部が、前記第1の光の光路上に配置され、前記第1の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数である第1特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、この変調した光を前記対象物に照射し、
前記第2の周波数変調部が、前記第2の光の光路上に配置され、前記第2の光を入力して、当該入力した光を、前記第1方向において互いに異なる複数の特定周波数であって、前記第1特定周波数とは異なる第2特定周波数だけ遷移された周波数を有し、前記第2方向において同一の周波数を有する光に変調し、
前記検出部が、単画素の光検出器であり、
前記演算部が、前記検出部から出力されたデータに対して、前記第1特定周波数及び第2特定周波数に基づいて複数の周波数領域に分割する処理と、時刻変数に関する1次元フーリエ変換と、周波数に関する1次元フーリエ変換とを行って得られたデータを前記対象物の像として得る請求項1に記載の観察装置。
【請求項7】
前記演算部が、
前記検出部から出力されるデータを、前記特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する分波器と、
前記分波器により分割されたデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、
前記第1フーリエ変換部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項8】
前記演算部が、
前記検出部から出力されるデータについて、時刻変数に関する1次元フーリエ変換を行う第1フーリエ変換部と、
前記第1フーリエ変換部から出力されたデータを、前記特定周波数を中心として最大ドップラーシフト周波数を前後に含む領域毎に分割する周波数分割部と、
前記分割部から出力されたデータについて、周波数に関する1次元フーリエ変換を行う第2フーリエ変換部と、を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項9】
前記演算部が、前記検出部から出力されるデータを、前記検出部が配置される位置により定まる値である2次位相で除する2次位相除算部を更に備える、請求項1〜8の何れか一項に記載の観察装置。
【請求項10】
前記対象物の移動速度を検出する速度検出部を更に備え、
前記演算部が、前記速度検出部により検出された前記対象物の速度に基づいて、前記フーリエ変換の際に前記対象物の速度変化に関する補正を行う、
請求項1〜9の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項11】
前記対象物への光の照射が、透過照明の光学配置によって行われることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項12】
前記対象物への光の照射が、反射照明の光学配置によって行われることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項13】
前記光源部が、単一縦モードの光を生成する光源であることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項14】
前記光源部が、広帯域の光を生成することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の観察装置。
【請求項15】
前記光源部が、モードロックレーザーであることを特徴とする請求項14に記載の観察装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1】
【公開番号】特開2013−96918(P2013−96918A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241626(P2011−241626)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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