説明

角膜新生血管形成または結膜上の血管堆積を治療するための装置と方法

角膜新生血管形成または結膜上の血管の堆積の治療のための装置であって、その装置が1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線を放射するように設計されている治療光源(2)を含むことを特徴とする装置。前記光源(2)は好ましくはパルス型光線を出力するためのレーザーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角膜新生血管形成または結膜上の血管の堆積のレーザー治療に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜
角膜は強膜の前部開口内に埋没しており、五つの層からなる。角膜と強膜の間の境界は縁と呼ばれ、結膜、すなわち眼瞼の内面と強膜の前部を覆う薄膜、に粘着する特異性を持つ半透明帯域を構成する。
【0003】
角膜は眼球系の主レンズを形成する。この組織がその機能を正しく実施することができるためには、それは透明でなければならない。従って、角膜は通常無血管化される。角膜と対照的に、縁は神経と血管に富んでいる。
【0004】
角膜の新生血管形成
多数の原因が角膜中の新血管の形成に寄与することができる。一般に、角膜の新生血管形成は窮迫時の角膜組織による一種の救済要求からもたらされると言うことができる。
【0005】
主原因の一つは角膜レンズ(ソフトまたはハード)の着用である。
【0006】
また、多数の他の原因:感染、アレルギー、ヘルペス、無酸素症、毒性薬品に対する反応、等がある。
【0007】
個人の感受性の役割もまた証明された。実際に、しゅさ性ざ瘡、エイズを病んでいる患者、または例えば放射状角膜切開または全層角膜移植を受けた患者は全てより敏感な角膜を持ち、従って特にレンズを着用するときに新血管を発現する危険をより起こしやすい。
【0008】
原因に関係なく、これらの新血管の形成は角膜の透明性、及び従って眼球系のためのレンズとしてのその機能に有害である。それらの場所及びそれらの発現度に依存して、これらの新血管は視力の損失をもたらすことがありうる。従って、これらの新血管を後退させ、かつもし可能ならそれらを全体的に消失させるために、異常に血管化した角膜を治療することができることは非常に重要である。
【0009】
治療法
新生血管形成を治療するための多数の方法が今日まで提案されている。
【0010】
第一の既知の方法はレーザー光凝固であり、それは1970年代初期に最初に提案された。最適効能のために使用されるレーザーは577nmの波長を持たねばならない。実際に、ヘモグロビン吸収ピークの一つがこの波長に非常に正確に位置している。それにもかかわらず、このレーザー光凝固治療法は効果的な治療方策を構成するが、ある不利を持つ。
【0011】
レーザー光凝固の目的は新血管の領域内に放出される著しい熱を発生する熱的レーザーにより新血管を焼くことである。この熱放出は眼球系に側副効果を不利に起こすことができる。
【0012】
577nmの前述の波長で最も普通に使用される既知のレーザーは色素レーザーである。しかし、色素レーザーの取得及びメンテナンス費用は非常に高く、この形式の機械を殆ど全ての眼科学センターに入手できなくする。
【0013】
別の治療法はアルゴンレーザーと組合せてRose Bengalのような外因性発色団を用いることからなる。この着想は眼科学事務所で普通に使用されるレーザーを使用することができることである。不幸にも、この方法は色素(Rose Bengal)の静脈内注射を必要とし、本出願人の知識によれば解決されていない調節問題を提示する。
【0014】
最近、光力学治療法(PDT)が提案された。それは一般的に光増感医薬と光凝固で使用されるレーザーと対照的に“非熱的”レーザーを組合せることからなる。特に、商標名Visudyne(登録商標)の下に市販されている光増感医薬の使用が提案された。しかし、本出願人の知識によれば、この医薬はまだこの使用のための認可を受けていない。更に、この形式の医薬の静脈内注射はある不利を提示する:それは患者の一時的光増感を不利に起こし、この光増感は比較的長い期間(典型的には48時間のオーダー)の間いかなる太陽光露出も患者が避けることを必要とし;ある患者では光増感医薬の注射は悪影響を生じうる。
【0015】
更に、これらの技術の全てに対し、使用される波長は正確に網膜が最も敏感な波長であり、それは網膜に対し危険を提示する波長である。
【0016】
結膜
球及び瞼結膜は通常、血管化されている。しかし、結膜上の血管の過剰堆積は美的に望ましくない。血管の堆積は血管の直径の増加及び/または結膜上の血管の数の増加をもたらすかもしれない。美的に望ましくない過剰堆積の場合、これらの血管を治療することが必要である。今日まで、最も普及した方法は血管収縮薬の液滴を目の中に滴注することからなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の主目的は角膜新生血管形成または結膜上の血管の過剰堆積を治療するための新しい装置と新しい方法を提案することである。
【0018】
特に、本発明の別の目的はレーザー光凝固と対照的に過剰のかつ破壊的加熱を起こさない角膜新生血管形成または結膜上の血管の過剰堆積の治療のための新しい解決策を提案することである。
【0019】
特に、本発明の別の目的は製品(色素、光増感医薬、血管収縮薬)の投与を必要としない角膜新生血管形成または結膜上の血管の過剰堆積の治療のための新しい解決策を提案することである。
【0020】
特に、本発明の別の目的は維持するのが容易で安価であり及び/または小さい角膜新生血管形成または結膜上の血管の過剰堆積の治療のための新しい装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述の目的の全てまたは幾つかは本発明により達成され、それは角膜新生血管形成または結膜上の血管の過剰堆積の治療のための新しい装置と新しい方法に関する。
【0022】
角膜新生血管形成または結膜上の血管の過剰堆積の治療のための本発明の装置は1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線を放射するように設計された治療光源を含む。
【0023】
本発明はまた、角膜の新生血管形成または結膜上の血管の堆積の治療のための方法に関し、そこでは角膜新生血管形成の場合には角膜または縁が、または結膜上の血管の堆積の場合には結膜が、好ましくは製品、特に色素またはPDTの場合のような光増感医薬、血管収縮薬の前投与なしに、1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線で照射される。
【0024】
前述の波長特徴を持つ治療光線の使用はPDTの場合のような医薬の使用を必要とすることなく、新生血管角膜を効果的に治療すること、または結膜上の血管の密度を減らすことを可能とすることが有利にかつ驚くべきことに認められた。加えて、本発明の波長の範囲内では、網膜に対する危険は従来技術の前述のレーザーによる波長より低い。
【0025】
治療装置は好ましくは以下の追加的特徴の一つ及び/または他により、単独でまたは互いに組合せて、特徴付けられる:
− 光源は治療パルス型光線を放射するように設計されている;
− 各パルスの時間は調整されることができる;
− 各パルスの時間は0.5秒未満、好ましくは少なくとも0.1秒と0.3秒の間の値に設定されることができる;
− 二つのパルス間の時間間隔は調整可能である;
− 二つのパルス間の時間間隔は0.5秒を越える値に、好ましくは0.9秒を越えるかまたはそれに等しい値に設定されることができる;
− 治療光線の放射時間は調整可能である;
− 各放射におけるパルスの数は調整可能である;
− 各放射におけるパルスの数は少なくとも50と300の間に設定されることができる;
− 治療光線の出力は調整可能である;
− 治療光線の出力は少なくとも1Wと5Wの間に設定されることができる;
− パルスの出力密度は少なくとも30W/cmと300W/cmの間に設定されることができる;
− 光源はレーザー光源である;
− レーザー光源はラマンファイバーレーザーを含む;
− ラマンファイバーレーザーは励起レーザーダイオード、イッテルビウム−ドープドファイバーレーザー、及びイッテルビウム−ドープドファイバーレーザーにより発生されたビームの波長を変換(transpose)することを意図したラマン変換器を含む。
【0026】
本発明による治療法は好ましくは次の追加的特徴の一つ及び/または他を単独でまたは互いに組合せて持つ:
− 治療光線は有利にはパルス型ビームである;
− 照射される部位(角膜、縁または結膜)のレベルでのレーザービームの出力密度(d)は好ましくは30W/cmと300W/cmの間にあり、より好ましくは100W/cmのオーダーにある;
− パルスフルエンスは好ましくは1J/cmと30J/cmの間にある;
− 各放射に対する合計フルエンスは6000J/cmと90000J/cmの間にあり、より好ましくは30000J/cmのオーダーにある;
− 二つの連続パルス間の時間(T)は0.5秒を越え、より詳細には0.9秒を越えるかまたはそれに等しい;
− 各放射におけるパルスの数(N)は好ましくは50と300パルスの間にある;
− 各パルスの時間(t)は好ましくは0.5秒未満であり、より好ましくは0.1秒と0.3秒の間にある;
− 角膜新生血管形成の場合には角膜または縁部位の照射作業が、または結膜上の血管の堆積の場合には結膜の照射作業が、好ましくは各照射作業間に少なくとも一日の休みを持って多数回繰り返される。
【0027】
図面の説明
本発明の他の特徴及び利点は本発明の治療装置及びその使用の好適実施態様の以下の説明からより明らかとなる。この説明は角膜新生血管形成または結膜上の血管の堆積の治療のための本発明による装置の概括図を示す添付図1に関して非限定例として与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
角膜新生血管形成または結膜上の血管の堆積の治療のための装置
添付図1の図を参照すると、治療のための装置1はファイバー出力200、及び適合インターフェース3を持つ光源2を本質的に含む。
【0029】
適合インターフェース3は光源2により出力200で発生された治療光線(L)を治療されねばならない目の領域(角膜、縁または結膜)に向けることを可能とする。このインターフェース3は種々の既知の形を持つことができる。
【0030】
非網羅的例として、インターフェース3は例えば光源2のファイバー出力を手により操作されることを可能とするハンドピースであり、またはそれはスリットランプにより製造されることができる。ハンドピースの例は特に特許US4900143及びUS5346468及びUS5951544に記載されている。スリットランプの例はUS5002336に記載されている。スリットランプの使用の場合には、それは好ましくはまたは慣例的に観測レーザーを含む。
【0031】
適合インターフェース3にかかわらず、光源2は出力200で1.2μmと1.3μmの間の放射波長を持つ治療光線を放射するように設計される。
【0032】
この治療光線は好ましくはコーヒーレント光線(レーザー)である。それにもかかわらず、別の実施態様では、治療光線は、十分な出力を持つ光源により発生された後に1.2μmから1.3μmの範囲の周波数成分のみを保持するように光学ろ過されたインコーヒーレント光線であることもできる。
【0033】
図1を参照すると、装置1の光源2はまた、実行医が主ビーム(L)放射パラメーター(特に出力、パルスの数、各パルスの時間、二つのパルス間の時間間隔)を調整することを可能とする手段(208,209,210,S1,S2,S3,S4,S5)を含み;これらの調整手段は以下により詳細に説明されるであろう。
【0034】
装置1はまた、制御手段4を含み、それは実行医が設定された放射パラメーターに従って治療光線の活性化を制御することを可能とする。これらの制御手段4は例えば作動ペダルまたはいずれかの他の均等な手動活性化手段を含む。
【0035】
治療光線がレーザービームであるとき、その最も一般的な意味において、本発明は特定の形式のレーザー光源2に限定されず、前述の波長条件を満足するレーザービームの放射を可能とし、かつ当業者に既知のいずれのレーザー光源も使用されることができる。特に、非網羅的態様で、以下の形式のレーザー光源を使用することができる:
− 連続またはパルス型ラマンファイバーレーザー;
− ネオジム(Nd)−ドープド固体またはファイバーレーザーにより、イッテルビウム−ドープド固体またはファイバーレーザーにより励起された、またはダイオード励起されたパルスまたは連続型Cr:フォルステライト(Cr+:MgSIO)レーザー;
− 別のレーザー光源により励起されたパルスまたは連続型パラメトリック発振器;
− パワーレーザーダイオード;
− 別のレーザー光源により励起された固体連続またはパルス型ラマン変換器またはレーザー。
【0036】
上述のレーザー中、好ましくはラマンファイバーレーザーは以下の理由のため使用される:
− レーザーのファイバー出力はビームの出力200への輸送を容易とする;
− 発生されたレーザービームは良好なスペクトル及び空間的品質を持つ;
− レーザー光源2が小型で有利である;
− レーザー光源2は信頼性がありかつどのようなメンテナンスも必要としない;
− この形式のレーザー光源はレーザーの品質と製造費用の間の最良の妥協を提供する。
【0037】
1.2μmと1.3μmの間の波長を持つラマンファイバーレーザーの好適実施態様
図1を参照すると、光源2はラマンファイバーレーザーであり、910−930nmまたは970−980nmの波長を持つ励起レーザーダイオード201、イッテルビウム(Yb)−ドープドファイバーレーザー202、及び1260−1270nmの波長を持つレーザービームを得るためにファイバーレーザー202の出力でのビームの波長を変換することを意図したラマン変換器204を含む。
【0038】
イッテルビウム(Yb)−ドープドファイバーレーザー202は芯がイッテルビウムによりドープされた二重被覆ファイバー205及びファイバー中に光刻印された入力と出力の二つのブラッグ格子207aからなる。レーザー202のファイバーの出力203はラマン変換器204の入力に直接溶接される。
【0039】
ラマン変換器204は芯が燐でドープされたファイバー206及び1260−1270nmの範囲の波長に設定された入力と出力の二つのブラッグ格子207bを含む。この変換器204は単一工程でレーザー202の放射波長の変換を実施可能とする。
【0040】
別の代替例において、前述のファイバーとは異なるモノモードファイバーを使用することができ;この場合ファイバーの性質及び特に使用されるドーピング剤の形式に従ってラマン変換器204の変換の工程数を適合させることが適切である。
【0041】
ブラッグ格子をモノモードカップラーで置換することもまた可能である。
【0042】
1.2μmと1.3μmの間の波長で治療レーザービームの放射を可能とする図1に関して上述したラマンファイバーレーザーはそれ自体新規であり、従って角膜新生血管形成または結膜上の血管堆積の治療の特定分野以外の他の用途(医学または非医学)で有利に使用されることができる。
【0043】
図1を参照すると、レーザービームの出力は低いロックインレートを持つカップラー208及び電子制御手段210に連結されたフォトダイオード209を介して調整される。電子制御手段210はまた、その入力で第一の連続設定点信号(S1)を受ける。この設定点信号の値は実行医により(例えば電位差計等により)手動で設定され、それは連続モードのレーザービームの設定点出力を特徴付ける。この設定点値(信号S1)から、電子制御手段210は励起ダイオード201の電流にその出力で直接作用することにより放射されるレーザービームの出力を自動的に設定する。従って電子制御手段210は実行医が治療レーザービームの出力を予め規定された値(設定点信号S1)に手動で設定することを可能とする。
【0044】
加えて、電子制御手段210はその入力で四つの他の連続設定点信号S2,S3,S4及びS5を受け、それらの値は実行医により手動で設定される:
− 設定点信号S2は例えば操作モード(連続またはパルス型)を特徴付ける;
− 設定点信号S3は例えばパルス型モードの場合、治療レーザービームの各パルスの時間を特徴付ける;
− 設定点信号S4は例えばパルス型モードの場合、二つの連続パルス間の時間間隔を特徴付ける;
− 設定点信号S5は制御手段4の各作動時の治療レーザービームの放射の時間(または言い換えればパルス型モードの場合のパルスの数)を特徴付ける。
【0045】
電子制御手段210はかくして放射されるレーザービームの物理的特性(出力、モード(パルスまたは連続型)、放射時間、及びパルス型モードの場合には:各パルスの時間及び各パルス間の時間間隔)を自動的に設定するために、設定点信号S1からS5及びカプラー208とフォトダイオード209により抽出された信号に基づき励起ダイオード201の電流を制御する。
【0046】
治療法
本発明の装置は次のように実施される:
工程1:実行医は治療レーザービームの放射パラメーターを手動で設定する(出力、モード(パルスまたは連続型)、放射時間(またはパルス型モードの場合のパルスの数)、及びパルス型モードの場合には:各パルスの時間及び二つのパルス間の時間間隔)。
【0047】
工程2:適合インターフェース3により、実行医は非常に正確でかつそれ自体既知の態様で、照射される部位(角膜、縁または結膜)に関してレーザービームの空間的位置を調整する。
【0048】
工程3:整合性が完全であるとき、実行医は制御ペダル4を作動させ、それは予め規定された放射パラメーターを持つ治療ビームの放射(治療される部位の照射)を起動する。
【0049】
目標部位が治療されるとき、実行医は治療される全表面を覆うのに必要な回数だけ別の治療される部位に工程2と3の作業を繰り返す。場合によって、この表面は角膜の全表面または角膜表面の一部のみであることができる。角膜新生血管形成の場合、新血管は縁から角膜に向けて延び;従って角膜新生血管形成を治療するために縁、特に角膜との境界の縁を照射することが推奨される。結膜上の血管の堆積の場合、場合によって、球及び眼瞼結膜の表面の全てまたは幾らかが照射される。
【0050】
上述の作業は実行医によりケースバイケース基準で決定された治療プロトコルに従う頻度で繰り返される。
【0051】
実験室で実施された比較試験は連続レーザービームの使用に対してパルス型レーザービーム(L)の使用が好ましいことを証明することを可能とした。何故ならそれは角膜、結膜の縁を熱傷する危険を減らすことを可能とするからである。
【0052】
特に、本発明の治療法及び治療装置は以下の技術的特徴の一つ及び/または他を持つことが好ましい。
【0053】
治療される目標部位(角膜、縁または結膜)のレベルでのレーザービームの出力密度(d)は好ましくは30W/cmと300W/cmの間にあり、より好ましくは100W/cmのオーダーにある。ここで出力密度(d)は以下の式により規定されることは注目されたい:
d=P/S
ここでPはパルス出力を表し、Sは治療される部位のレベルでのレーザービームにより形成されるスポットの表面を表す。
【0054】
パルスフルエンスは好ましくは1J/cmと30J/cmの間にある。ここでパルスフルエンス(F)は以下の式により規定されることは注目される:
F=d×t
この式でdはパルス出力密度を表し、tはパルス持続時間を表す。
【0055】
スポットの表面(S)はファイバーの出力でのレーザービームの直径、ビームの“ウエスト”及びレーザーのファイバー出力と治療される部位の間の距離に依存する。レーザービームの所定のウエスト及び直径に対しては、レーザーのファイバー出力が遠いほど、スポットの表面は大きくなるであろうし、かつ出力密度とパルスフルエンスはより低くなるであろう。
【0056】
各放射に対する合計フルエンスは好ましくは6000と90000J/cmの間にあり、より好ましくは30000J/cmのオーダーにある。ここで各放射に対する合計フルエンス(FT)は次の式により規定されることは注目されたい:
FT=F×N
ここでNは各放射におけるパルスの数を表し、Fはパルスフルエンスを表す。
【0057】
二つの連続パルス間の時間(T)は組織(角膜、縁または結膜)のいかなる過熱も防ぐのに十分な大きさでなければならない。二つの連続パルス間の時間(T)は好ましくは0.5秒を越え、特に0.9秒を越えるかまたはそれに等しい。
【0058】
より詳細には、患者を長過ぎる間固定しないために各放射の治療時間を制限しながら前述のフルエンス値に従うことを可能とする満足すべき妥協は好ましくは50と300パルスの各放射のパルスの数(N)と0.1秒と0.3秒の間の各パルスの時間(t)により得られた。
【0059】
特に、治療装置は、好ましくはパルス出力が1Wと5Wの間にあり、より好ましくは3Wのオーダーにあり、かつ装置の出力でのパルス出力密度が30W/cmと300W/cmの間にあり、より好ましくは100W/cmのオーダーにあるビームにより特徴付けられる。
【0060】
純粋に指標として与えられる一実施態様の特定例において、治療装置はハンドピースを持つファイバーレーザーであり、この装置により発生された治療レーザービームは2mmのオーダーの直径を持ち、ファイバー出力を照射される部位から略10cmに配置することにより使用されることを意図していた。
【0061】
治療プロトコルは特に血管の重要性(角膜上の新血管または結膜上の血管の密度及び/または寸法)及び患者に対する希望の固定時間に基づいて実行医により規定される。
【0062】
それにもかかわらず、有利には本発明の治療が有害な副作用、及び特に角膜、縁または結膜の過熱を起こさないことが可能であることは強調されるべきである。従って、前述のプロトコル例のように、各作業間に1日の休みを設ける必要なしに、一日の内に角膜、縁または結膜を照射する多数の連続作業を実施することにより治療プロトコルの合計時間を短くすることが望ましい。
【0063】
プロトコルの時間は新血管または血管の増殖の範囲と希望の結果に依存するであろう。
【0064】
角膜新生血管形成の場合、場合によって、新血管により冒されている角膜の領域のみまたはこれらの新血管が延びている縁の領域を照射することができ;この場合、これらの新血管の拡張及び次いで出血が観察される。また、有利には予防的な態様で、肉眼で見える態様で新血管によりまだ冒されていない角膜の領域を照射することも可能であり、それにより新血管の増殖を制限することを可能とする。
【0065】
しかし、本発明は単に指標としてのみ与えられている前述のパラメーター及び使用の条件に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は本発明による治療装置の概括図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜新生血管形成または結膜上の血管の堆積の治療のための装置であって、その装置が1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線を放射するように設計されている治療光源(2)を含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記光源(2)がパルス型治療光線を放射するように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各パルスの時間が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
各パルスの時間が0.5秒未満の値に、好ましくは少なくとも0.1秒と0.3秒の間の値に設定されることができることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
二つのパルス間の時間間隔が調整可能であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項6】
二つのパルス間の時間間隔が0.5秒を越える値に、好ましくは0.9秒を越えるかまたはそれに等しい値に設定されることができることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
治療光線の各放射におけるパルスの数または放射の時間が調整可能であることを特徴とする請求項1から6の一つに記載の装置。
【請求項8】
各放射におけるパルスの数が少なくとも50と300の間に設定されることができることを特徴とする請求項2及び7に記載の装置。
【請求項9】
治療光線の出力が調整可能であることを特徴とする請求項1から8の一つに記載の装置。
【請求項10】
治療光線の出力が少なくとも1Wと5Wの間に設定されることができることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
パルスの出力密度が少なくとも30W/cmと300W/cmの間に設定されることができることを特徴とする請求項2及び9に記載の装置。
【請求項12】
光源(2)がレーザー光源であることを特徴とする請求項1から11の一つに記載の装置。
【請求項13】
レーザー光源(2)がラマンファイバーレーザーを含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ラマンファイバーレーザーが励起レーザーダイオード(201)、イッテルビウム−ドープドファイバーレーザー(202)、及びイッテルビウム−ドープドファイバーレーザーにより発生されたビームの波長を変換することを意図したラマン変換器(204)を含むことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
角膜新生血管形成または結膜上の血管の堆積の治療方法において、角膜新生血管形成の場合には治療される角膜または縁の部位、または結膜上の血管の堆積の場合には治療される結膜の部位が1.2μmと1.3μmの間の波長を持つ治療光線で照射されることを特徴とする治療方法。
【請求項16】
治療光線がレーザービームであることを特徴とする請求項15に記載の治療方法。
【請求項17】
治療光線がパルス型であることを特徴とする請求項15または16に記載の治療方法。
【請求項18】
パルスフルエンスが1J/cmと30J/cmの間にあることを特徴とする請求項17に記載の治療方法。
【請求項19】
二つの連続パルス間の時間(T)が0.5秒を越えることを特徴とする請求項17または18に記載の治療方法。
【請求項20】
二つの連続パルス間の時間(T)が0.9秒を越えるかまたはそれに等しいことを特徴とする請求項17または18に記載の治療方法。
【請求項21】
各放射におけるパルスの数(N)が50と300パルスの間にあることを特徴とする請求項17から20の一つに記載の治療方法。
【請求項22】
各パルスの時間(t)が0.5秒未満であることを特徴とする請求項17から21の一つに記載の治療方法。
【請求項23】
各パルスの時間(t)が0.1秒と0.3秒の間にあることを特徴とする請求項17から21の一つに記載の治療方法。
【請求項24】
治療される部位のレベルでの治療光線の出力密度(d)が30W/cmと300W/cmの間にあることを特徴とする請求項15から23の一つに記載の治療方法。
【請求項25】
治療される部位のレベルでの治療光線の出力密度(d)が実質的に100W/cmに等しいことを特徴とする請求項15から23の一つに記載の治療方法。
【請求項26】
各放射に対する合計フルエンスが6000J/cmと90000J/cmの間にあることを特徴とする請求項15から25の一つに記載の治療方法。
【請求項27】
各放射に対する合計フルエンスが実質的に30000J/cmに等しいことを特徴とする請求項15から25の一つに記載の治療方法。
【請求項28】
治療される部位を照射する作業が各照射作業間に少なくとも一日の休みを持って多数回繰り返されることを特徴とする請求項15から27の一つに記載の治療方法。
【請求項29】
製品が患者に投与されないことを特徴とする請求項15から28の一つに記載の治療方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517558(P2007−517558A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548236(P2006−548236)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000127
【国際公開番号】WO2005/077308
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506242739)オプティカル システム アンド リサーチ フォー インダストリー アンド サイエンス オシリス (4)
【出願人】(506242751)
【Fターム(参考)】