角膜障害を処置するための治療組成物
本発明は、IL-1サイトカインおよび/またはIL-17サイトカインの活性を遮断する組成物を、そのような損傷を有するかまたはそのような損傷に曝露されるリスクを有する被験体に投与することによって、角膜神経に対する損傷を最小限にするか、防止するか、または処置するための方法および組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2009年1月9日に提出された米国特許出願第61/143,561号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般的に眼科学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
角膜上皮障害によって、慢性的な眼表面の疾患が起こりうる。それによって眼表面の疾患が起こる機序は解明されておらず、そのために、慢性的な眼表面の疾患の症状よりむしろその原因に取り組む処置の開発は、不可能ではないにしても難しい。そのため、これらの機序の発見、処置組成物および処置法の開発は当技術分野において長く必要であると思われてきた。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、IL-1阻害によって角膜神経再生が起こるという意外な発見に基づいている。その上、本発明者らは、角膜神経に対する損傷を低減させ、かつ角膜神経を再生することによって神経栄養性ドライアイ疾患を処置するための組成物および方法を提供する。角膜内での神経損傷および免疫活性の増加は、角膜上皮障害と共に事象の悪循環を完成させ、これは本明細書において記述される処置の介入がなければ、それ自身永続して慢性的な眼表面の障害に至る。神経栄養性ドライアイ(ニューロパシー状態)は、角膜神経組織の低減または喪失によって他のタイプのドライアイとは区別される。たとえば、神経栄養性ドライアイは、正常な状態と比較して角膜神経組織または角膜神経線維長の少なくとも約10%、25%、50%、75%、またはそれより多くの低減または喪失を特徴とする。
【0005】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体において角膜神経を保護または処置するための方法を提供する:(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性サイトカイン(たとえば、IL-1またはIL-1とIL-17の併用)の活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強して、神経の形態または密度の異常の発生を低減させる段階。好ましくは、被験体は、マイボーム腺機能障害(MGD)を有しない、たとえば後部眼瞼炎を有しないと診断されている。
【0006】
上記の方法の1つの局面において、被験体は、先天性欠損、疾患、外傷、医学的または外科的技法に起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される。上記の方法のもう1つの局面において、被験体は、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、先天性欠損、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、末梢ニューロパシー、または糖尿病性ニューロパシーに起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される。
【0007】
本発明はさらに、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜神経の損傷または喪失を最小限にするまたは予防するための方法を提供する:(a)角膜神経損傷または喪失を発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)神経損傷または喪失が発生する前に、炎症性インターロイキン-1またはインターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって、神経変性を減少させて、神経の形態または密度の異常の発生を低減または防止する段階。
【0008】
上記の方法の1つの局面において、被験体は、疾患、外傷、または医学的技法に起因しうる角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される。上記の方法のもう1つの局面において、被験体は、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス角膜炎、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、末梢ニューロパシー、または糖尿病性ニューロパシーに起因しうる角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される。
【0009】
ある態様において、上記の方法にはさらに、角膜神経損傷または喪失の徴候または症状を有する被験体を同定する段階が含まれる。たとえば、角膜神経損傷または喪失の兆候は、角膜の神経支配もしくは感覚の減少、角膜を支配する神経線維もしくは神経束の数の低減、角膜を支配するニューロンの死、神経伝達物質放出の減少もしくは喪失、神経生長因子放出の減少もしくは喪失、異常な流涙反射、異常な瞬目反射、異常な神経形態、異常な神経発芽の出現、異常な蛇行、ビーズ様神経形成の増加、神経線維束が細くなること、または神経線維束が太くなることである。たとえば、角膜神経損傷または喪失の症状は、異常な涙液産生もしくは乾燥、異常な瞬目、および焦点を合わせることが困難または焦点を合わせる能力の喪失、視力低下もしくは喪失、または角膜感受性の減少もしくは喪失である。
【0010】
上記の方法の1つの局面において、活性には、IL-1受容体に対する炎症性のIL-1サイトカインの結合が含まれる。IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する上記の方法の組成物には、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列が含まれる。組成物には任意で、IL-17活性の阻害剤、たとえばIL-17のその受容体に対する結合を阻害する化合物、またはIL-6の阻害剤もしくはIL-23の阻害剤などの、Tヘルパー-17/IL-17応答を生成するために極めて重要なサイトカインを阻害する化合物が含まれる。好ましくは、組成物にはシクロスポリンA(CsA)などの一般的な広域スペクトルの免疫抑制剤は含まれないが、それは炎症のそのような非特異的抑制剤が角膜神経を再生しないためである。
【0011】
本明細書において記述される方法の各々において、組成物は、0.1〜10%(重量/容積、またはw/v)の濃度で存在する。または、組成物は、1.0%(mg/ml)、1.5%(mg/ml)、2.0%(mg/ml)、2.5%(mg/ml)、3.0%(mg/ml)、3.5%(mg/ml)、4.0%(mg/ml)、4.5%(mg/ml)、5.0%(mg/ml)、5.5%(mg/ml)、6.0%(mg/ml)、6.5%(mg/ml)、7.0%(mg/ml)、7.5%(mg/ml)、8.0%(mg/ml)、8.5%(mg/ml)、9.0%(mg/ml)、9.5%(mg/ml)、10.0%(mg/ml)、またはそのあいだの任意の点の百分率の濃度で存在する。好ましい態様において、組成物は、2.5%(mg/ml)または5%(mg/ml)の濃度で存在する。たとえば、組成物は、25 mg/mlまたは50 mg/mlの濃度で存在する。例示的な製剤は、2.5%(25 mg/ml)または5%(50 mg/ml)の濃度で存在する阻害組成物を含有する。
【0012】
上記の方法の組成物の形態は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である。組成物は局所適用投与される。好ましい態様において、上記の方法には、全身投与または非眼組織への実質的な散布は含まれない。上記の方法のある態様において、組成物には、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物がさらに含まれる。例示的な粘液溶解剤はN-アセチルシステインである。好ましい態様において、組成物にはさらに、カルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0013】
上記の方法の組成物は、炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。ある態様において、上記の方法の組成物には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。またはもしくは加えて、上記の方法の組成物には、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。
【0014】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を低減または処置するための方法を提供する:(a)角膜リンパ管新生を有する被験体を同定する段階、および(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、角膜リンパ管新生を低減または処置する段階。
【0015】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を最小限にするまたは防止するための方法を提供する:(a)リンパ管新生の発現が発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での形成能もしくは伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、角膜リンパ管新生を最小限にするまたは防止する段階。
【0016】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を低減または処置するための方法を提供する:(a)免疫の誘導を有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、免疫の誘導を低減または処置する段階。
【0017】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を最小限にするまたは防止するための方法を提供する:(a)免疫発生のリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、免疫の誘導を最小限にするまたは防止する段階。
【0018】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態を低減または処置するための方法を提供する:(a)自己免疫状態を有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、自己免疫状態を低減または処置する段階。
【0019】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態の発症を最小限にするまたは予防するための方法を提供する:(a)自己免疫状態を発症するリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発症前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、自己免疫状態の発症を最小限にするまたは予防する段階。
【0020】
上記の方法のある態様において、被験体はドライアイ関連眼表面疾患を有する。またはもしくは加えて、被験体は、ドライアイ関連眼表面疾患を発症するリスクを有する。
【0021】
リンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能は、角膜組織内でのまたは非角膜組織(隣接する辺縁部などの)からのいずれかのリンパ管の角膜組織への、可能性があるもしくは実際の生長、伸張、同化、分離、または再構築を包含する。「リンパ管が免疫細胞の輸送を許容する」という句は、角膜組織と非角膜組織、好ましくはリンパ節またはリンパ系区画内の他の部位とのあいだの免疫細胞の非方向性のまたは双方向性の移動または沈着を記述する。例示的な免疫細胞には、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0022】
上記の方法の1つの局面において、活性には、IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合が含まれる。IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する上記の方法の組成物には、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列が含まれる。
【0023】
上記の方法の組成物の形態は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である。組成物は、局所適用投与される。好ましい態様において、上記の方法には、全身投与または非眼組織への実質的な散布は含まれない。上記の方法のある態様において、組成物にはさらに、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物が含まれる。例示的な粘液溶解剤はN-アセチルシステインである。好ましい態様において、組成物にはさらに、カルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0024】
上記の方法の組成物は、炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。ある態様において、上記の方法の組成物には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。またはもしくは加えて、上記の方法の組成物には、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。
【0025】
上記の方法のある態様において、活性にはIL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合が含まれる。さらに、IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する上記の方法の組成物には、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列が含まれる。ある態様において、上記の方法の組成物は、0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する。または、組成物は、1.0%(mg/ml)、1.5%(mg/ml)、2.0%(mg/ml)、2.5%(mg/ml)、3.0%(mg/ml)、3.5%(mg/ml)、4.0%(mg/ml)、4.5%(mg/ml)、5.0%(mg/ml)、5.5%(mg/ml)、6.0%(mg/ml)、6.5%(mg/ml)、7.0%(mg/ml)、7.5%(mg/ml)、8.0%(mg/ml)、8.5%(mg/ml)、9.0%(mg/ml)、9.5%(mg/ml)、10.0%(mg/ml)、またはそのあいだの任意の点の百分率の濃度で存在する。好ましい態様において、組成物は、2.5%(mg/ml)または5%(mg/ml)の濃度で存在する。もう1つの好ましい態様において、組成物は、25 mg/mlまたは50 mg/mlの濃度で存在する。さらに好ましい態様において、組成物は、2.5%(25 mg/ml)または5%(50 mg/ml)の濃度で存在する。
【0026】
本発明の1つの局面において、上記の方法の組成物の形態は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である。
【0027】
上記の方法の組成物は局所適用投与される。上記の方法には、組成物の全身投与または非眼組織への実質的な散布は含まれない。
【0028】
ある態様において、上記の方法の組成物には、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、N-アセチルシステイン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物がさらに含まれる。好ましくは組成物にはさらに、N-アセチルシステインまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0029】
または、上記の方法の組成物は、2型IL-1受容体(IL-1R2)をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または増強する。IL-1R2は、IL-1に結合して、IL-1R1の機能を阻害することができる。このように、1つの態様において、IL-1R2機能の増強は、それによってIL-1R1活性が阻害されるもう1つの機序を提供する。この同じ態様において、IL-1R2のアンタゴニスト、具体的にIL-1Ra3の阻害は、IL-1R1機能を阻害する。このように、組成物単独、またはIL-1R2のエンハンサーとの併用は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチド、SEQ ID NO:22または23の転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。または、IL-1R2受容体機能がIL-1R1の活性を増強する態様において、組成物は、IL-1R2阻害を増強するためにIL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの1つまたは複数の領域を含有する。さらに、この態様の組成物は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチド全体を含む。
【0030】
本発明の方法の組成物には、IL-1受容体のアクセサリタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子が含まれる。たとえば、このIL-1受容体アクセサリタンパク質は、IL-1およびIL-1R1に直接結合して、SEQ ID NO:24または26のポリヌクレオチド配列、およびSEQ ID NO:25または27のポリペプチド配列によって定義される、IL-1RAPである。IL-1RAPは、IL-1R1からのシグナル伝達にとって必要なシグナル伝達複合体に属する。このように、IL-1RAPの阻害はIL-1R1機能に拮抗する。
【0031】
もう1つの態様において、本発明の方法の組成物には、IL-1受容体に対する関連キナーゼをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子が含まれる。たとえば、IL-1受容体関連キナーゼは、IRAK1である。IRAK1は、増大する炎症応答に関連する転写事象に至る下流のシグナル伝達エフェクターであり、SEQ ID NO:28、30、または32のポリヌクレオチド配列およびSEQ ID NO:29、31、または33のポリペプチド配列によって定義される。IL-1がIL-1受容体に結合すると、IRAK1は受容体複合体に動員されて、過剰リン酸化され、過剰リン酸化IRAK1およびTRAF6からなる新規タンパク質複合体の形成に関与する。このIRAK1/TRAF6複合体の形成は、核因子-κB(NF-κB)の腫瘍壊死因子(TNF)関連因子6(TRAF6)媒介活性化にとって必須である。このように、先に描写されたシグナル伝達カスケードの任意の成分の発現または機能の改変により、IL-1受容体に対するIL-1の結合事象が示される。
【0032】
本発明の方法の組成物には、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、IL-17、またはIRAK1に結合するかまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。その上、組成物には、遺伝子発現を抑制させるために、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。局所適用投与のために適合される例示的な組成物には、アナキンラ/Kineret(登録商標)(組み換え型ヒトIL-1Ra、rhIL-1Ra、ならびにSEQ ID NO: 15および16)、IL-1Rアンチセンスオリゴマー(米国特許第2005033694号)、IL-lRa様核酸分子(Amgen、米国特許第2001041792号)、および可溶性IL-1Rアクセサリ分子をコードするポリヌクレオチド(Human Genome Sciences、米国特許第6974682号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0033】
本発明の方法の組成物には、遺伝子発現を抑制するために角膜への局所適用投与のために適合されたマイクロRNA分子が含まれる。ヒトIL-1αに結合する例示的なmiRNAには、miR-30c(SEQ ID NO: 34)、miR-30b(SEQ ID NO: 35)、miR-30a-5p(SEQ ID NO: 36)、およびmiR-24(SEQ ID NO: 37)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ヒトIL-1R1に結合する例示的なmiRNA(および対応する配列)には、miR-135b(SEQ ID NO: 38)、miR-326(SEQ ID NO: 39)、miR-184(SEQ ID NO: 40)、miR-214(SEQ ID NO: 41)、miR-203(SEQ ID NO: 42)、miR-331(SEQ ID NO: 43)、およびmiR-205(SEQ ID NO: 44)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0034】
角膜への局所適用投与のために適合される例示的なポリペプチドには、アナキンラ/Kineret(登録商標)(組み換え型ヒトIL-1Ra、rhIL-1Ra、ならびにSEQ ID NO: 15および16)、AF12198(ヒトIL-1Rlに結合する、Ac-FEWTPGWYQJYALPL-NH2、式中Jは、非天然アミノ酸である2-アゼチジン-l-カルボン酸を表す、SEQ ID NO: 45)、IL-1RおよびIL-1RAPペプチドアンタゴニスト(米国特許第20060094663号)、IL-1Rアクセサリ分子ポリペプチド(米国特許第20050171337号)、IL-1Raペプチド(米国特許第2005105830号)、およびIL-lRa関連ペプチド(Amgen、米国特許第2001042304号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0035】
角膜への局所適用投与のために適合される例示的な抗体には、IL-1 TRAP(IL1R-gp130とhIgGFcとの直列融合二本鎖タンパク質、Regeneron、米国特許第6,927,044号)、抗IL-1α(米国特許第20030026806号)、抗IL-1β(米国特許第20030026806号およびYamasaki et al. Stroke. 1995; 26:676-681)、およびヒト化モノクローナル抗IL-1R(Amgen、米国特許第2004022718号およびRoche、米国特許第2005023872号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0036】
低分子は有機または無機である。例示的な有機低分子には、脂肪族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、有機酸、エステル、単糖類および二糖類、芳香族炭化水素、アミノ酸、および脂質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。例示的な無機低分子は、微量金属、イオン、フリーラジカル、および代謝物を含む。または、低分子阻害剤は、断片、低分子部分、またはより長いアミノ酸鎖からなるように、酵素の結合ポケットを塞ぐように合成的に操作されうる。典型的に、低分子は1キロダルトン未満である。角膜への局所投与のために適合される例示的な低分子は、ZnPP(IL-1遮断剤亜鉛プロトポルフィリン、天然に存在する代謝物、Yamasaki et al. Stroke. 1995; 26:676-681)である。
【0037】
本発明の方法の組成物には、薬学的に適当な担体と共に局所適用投与されるIL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、IL-17、またはIRAK1に結合するまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。ポリヌクレオチド組成物のための送達法には、リポソーム、受容体媒介送達系、裸のDNA、ならびに中でもヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどの工学操作されたウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されるわけではない。ポリヌクレオチド組成物は、薬学的に許容される液体担体、たとえば水性または部分的に水性である液体担体と共に局所適用投与される。または、組成物内のポリヌクレオチド配列は、リポソーム(たとえば、陽イオンまたは陰イオンリポソーム)に会合する。
【0038】
低分子DNAまたはRNA配列を細胞に送達するために多くの方法が開発されている;たとえばポリヌクレオチド分子を、組織部位上で直接接触させてもよく、または所望の細胞タイプを特異的に標的とするように設計された改変ポリヌクレオチド分子(たとえば、標的細胞表面上に発現された受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結される配列)であってもよい。
【0039】
好ましいアプローチは、低分子ポリヌクレオチド配列が強いポリメラーゼIIIまたはポリメラーゼIIプロモーターの制御下に置かれる組み換え型DNA構築物を用いる。そのような構築物を用いることによって、本発明の核酸の内因性の転写物と相補的塩基対を形成して、それによって内因性のmRNA転写物の翻訳を防止するポリヌクレオチドの十分量の転写が起こるであろう。本発明は、鋳型として相補鎖を用いる低分子ポリヌクレオチドの構築を包含する。たとえば、ベクターが細胞に取り込まれて、二本鎖RNA分子に対する干渉RNAまたは前駆体の転写を指示するように、インビボでベクターを導入することができる。または、低分子ポリヌクレオチド転写物の鋳型を、細胞タイプ特異的プロモーターまたは他の調節エレメントの転写制御下に置く。よって、局所適用投与された組成物が角膜を超えて拡散または吸収されても、有害なまたは全身性の副作用を引き起こさない。ベクターは、それが所望のポリヌクレオチドを産生するために転写されうる限り、エピソームのままであるか、または染色体に組み入れられるようになる。
【0040】
ベクターは、当技術分野において標準的な組み換えDNA技術によって構築される。ベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現のために用いられるプラスミド、ウイルス、または当技術分野において公知のその他でありうる。低分子ポリヌクレオチドをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用することが当技術分野において公知である任意のプロモーターの制御下に置かれうる。プロモーターは誘導型または構成的である。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター領域(Bernoist et al, Nature 290:304, 1981);ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復に含有されるプロモーター(Yamamoto et al., Cell, 22:787-797, 1988);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1441, 1981);またはメタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature, 296:39, 1988)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0041】
ポリペプチド組成物は、細胞膜を超えての輸送を可能にするために、単独でまたは受容体媒介送達系と共にリポソームに結合される。ポリペプチド組成物は可溶性であるか、または膜結合型である。例示的な受容体媒介送達系は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症およびHCV媒介薬物送達系の場合に観察されるように、低密度または超低密度リポタンパク質を含有する粒子または小胞と、低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)との融合を伴う。
【0042】
本発明の方法の組成物には、以下の1つまたは複数に対して作製された、1つまたは複数の細胞外または細胞内抗体(イントラボディとも呼ばれる)が含まれる:IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1。細胞外抗体は、薬理学的に適当な水性または非水性担体と共に局所適用投与される。細胞内抗体をコードする配列を、ウイルスまたは哺乳動物発現ベクターにサブクローニングして、細胞膜を超えての輸送を容易にするために親油性装置に充填して、薬理学的に適当な水性または非水性担体と共に角膜に局所適用投与する。細胞膜の内部に入ると、宿主細胞機構が、イントラボディの暗号を転写、翻訳、および加工して、IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1を標的とする細胞内機能遮断抗体を生成する。分泌型分子の場合、細胞内抗体は、標的タンパク質の翻訳後修飾または分泌を防止する。膜結合型分子の場合、細胞内抗体は、IL-1サイトカインが受容体に係合する際の細胞内シグナル伝達事象を防止する。
【0043】
1つの好ましい態様において、本発明の方法には、IL-1α、IL-1β、または双方のサイトカインの組み合わせの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または受容体結合を阻害するための手段を有する組成物が含まれる。1つの態様において、組成物は、SEQ ID NO:1によって定義されるIL-1αmRNA転写物の領域に結合することができるポリヌクレオチドを含む。もう1つの態様において、組成物は、SEQ ID NO:3によって定義されるIL-1βmRNA転写物の領域に結合することができるポリヌクレオチドを含む。
【0044】
もう1つの態様において、組成物は、天然に存在するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の量を増加させることができる。組成物は、IL-1Ra遺伝子の領域に結合するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、もしくは低分子、SEQ ID NO:5、7、9、11、もしくは13によって定義されるmRNA転写物、SEQ ID NO:6、8、10、12、もしくは14によって定義されるIL-1Raのポリペプチドイソ型、またはSEQ ID NO:16によって定義される組み換え型IL-1Raタンパク質を含む。または、組成物は、IL-1Ra遺伝子の領域または全体をコードするmRNA転写物またはポリペプチドを含有する。
【0045】
組成物には、IL-1αまたはIL-1βの受容体、特にIL-1R1のアンタゴニストまたは逆アゴニストが含まれる。この態様において、アンタゴニストは、アゴニストであるIL-1の機能を阻害するIL-1Rの結合パートナーもしくはリガンドとして定義され、または受容体へのその結合を遮断することによって逆アゴニストとして定義される。逆アゴニストは、アゴニスト、たとえばIL-1と同じIL-1R結合部位に結合するが、反対の薬理学的効果を発揮する分子として定義される。組成物は、SEQ ID NO:17〜21のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列によって定義されるIL-1R1の領域に結合するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含有する。代わりの態様において、組成物には、IL-1Rの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、リガンド結合、またはIL-1Rのアクセサリタンパク質(IL-1RAP)との会合を阻害する手段を有する分子が含まれる。IL-1RAPは、SEQ ID NO:24または26のポリヌクレオチド配列およびSEQ ID NO:25または27のアミノ酸配列によって定義される。
【0046】
もう1つの好ましい態様において、組成物には、純粋型または混合物の成分としてのヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストが含まれる。ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストは、組成物を角膜に接触させる前に、緩衝生理食塩液、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(HA)、または他のビヒクルと混合される。これらの混合物において、ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストは、投与される総容量の少なくとも0.1%、2.0%、2.5%、5%、または多くて10%を含む。好ましい水性製剤は、2〜2.5%の精製アンタゴニストを含有する。精製されたとは、無関係なポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞オルガネラ、または脂質の非存在下でのアンタゴニストとして定義される。精製されたとは、ヒト被験体に対する投与のために安全である、たとえば感染物質または毒性物質を欠如する無菌性の程度を定義する。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは全て、精製および/または単離される。本明細書において用いられるように、「単離された」、または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、組み換え技術によって産生された場合に他の細胞材料もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)の関心対象化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%の関心対象化合物である。純度は、任意の適当な標準法によって、たとえばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定される。
【0048】
角膜損傷の徴候もしくは症状または異常な神経形態は、中心角膜のインビボ共焦点顕微鏡(IVCM)、または角膜神経損傷を検出することができる他のイメージングもしくは診断装置を用いて検出、分析、検査、および評価される。IVCMのための例示的な装置には、Rostock Cornea Moduleを有するHeidelberg Retina Tomograph 3(HRT3/RCM)(Heidelberg Engineering GMBH)およびConfoscan 4 Confocal Microscope(Nidek, Inc.)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。上記の方法のある態様において、IVCMは様々な角膜層における神経線維の形状および数を検出、分析、検査、および評価するためのみならず、平行に走る、二分する、分枝する、および相互接続する神経線維束を識別するために用いられる。またはもしくは加えて、IVCMは、神経の総数の変化、神経の長さの変化、神経密度、異常な神経発芽の存在または非存在、異常な神経線維の蛇行の存在または非存在、ビーズ様神経形成の数または形態の変化、および神経線維束が細くなること対太くなることを検出、分析、検査、および評価するために用いられる。本発明の方法の1つの局面において、IVCMは神経再生を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。またはもしくは加えて、IVCMは神経変性を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。例として、IVCMは、健康な個体の基底下領域内での画像あたり角膜神経束6〜8個の平均値を示すために、および光受容器角膜切除の結果として神経損傷を受けた患者における神経再生を示すために用いられている。
【0049】
本発明はまた、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜神経損傷を低減するおよび/または角膜神経再生を増強するための方法も提供する:(a)角膜神経損傷を有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強して、神経形態の異常の発生を低減させて、および角膜神経損傷を低減させる段階。
【0050】
本発明はまた、以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経を保護または再生するための方法も提供する:(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物および炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強して、神経形態または密度の異常の発生を低減させる段階。この併用治療によって、角膜神経組織の再生において相乗効果が得られる。
【0051】
刊行物、米国特許および出願、Genbank/NCBIアクセッション番号、および本明細書において引用される他の全ての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1Aは、Balb/cマウスの正常角膜における基底上皮細胞のレベルでの終末神経分枝系の程度を示す顕微鏡写真である。図1Bは、Balb/cマウスの正常角膜における上皮壊死組織切除後にビヒクルによって7日間処置後の終末神経突起の顕微鏡写真であり、基底上皮細胞のレベルでの非常にわずかな神経再生活性を示す。図1Cは、Balb/cマウスの正常角膜における上皮壊死組織切除後の2.5%局所適用IL-1Raによる7日間の処置後の再生終末神経突起の顕微鏡写真であり、基底上皮細胞のレベルで有意な数の再生神経を示し、これらの神経密度は正常角膜で認められる密度に近い(図1A)。
【図2】ドライアイ患者における2.5%IL-1Raによる1ヶ月間の処置の前(左)および後(右)での基底下角膜神経の一連のインビボ共焦点画像(Confoscan 4;Nidek Technologies)であり、ベースラインと比較して処置後に神経密度の25%の増加を示す。
【図3】無処置動物と比較してIL-1Raの様々な濃度によって処置したマウスドライアイモデルにおいて観察された角膜フルオレセイン染色の差の百分率のグラフである。グラフが示すように、IL-1Ra(1%、2.5%、および5%)の全ての濃度が角膜フルオレセイン染色スコアを減少させることができ、角膜フルオレセイン染色の%低減は、5%濃度で局所適用IL-1Raを与えられた群では適度により高かった。
【図4】無処置動物と比較してIL-1Raの様々な製剤によって処置したマウスドライアイモデルにおいて観察された角膜フルオレセイン染色の差の百分率のグラフである。グラフが示すように、角膜フルオレセイン染色の%低減は、10%N-アセチルシステインと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群、および1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群において最も高かった。
【図5】IL-1RIから伝達されるシグナル伝達経路およびこれらの細胞内シグナルの運搬に関係する下流のエフェクターの概略図である(BioCartaのウェブサイトから再現した図面)。
【図6】42歳男性被験体の健康な角膜における基底下神経線維のインビボ共焦点画像(Confoscan 4; Nidek, Inc.)である。神経束は、上下方向に好ましい方向を示す。神経線維がほぼ直線であるかまたはわずかに蛇行しているように見えることに注意されたい。
【図7】眼部帯状疱疹を有する56歳女性被験体の角膜における基底下神経線維のインビボ共焦点顕微鏡画像(Confoscan 4; Nidek, Inc.)である。正常角膜と比較して神経束の数が有意に減少していることに注目されたい。この顕微鏡写真はまた、高い蛇行性、増加したビーズ様神経形成、および異常な分枝パターンなどの他の神経異常の徴候も示す。
【図8A】正常およびドライアイ疾患(DED)マウスの中心角膜における神経線維分布を示す一連の代表的な顕微鏡写真である。白い矢印はドライアイマウスの角膜における神経線維の喪失(低減された神経の長さ)を示す。
【図8B】ビヒクル、IL-1Ra、抗IL17抗体、およびシクロスポリン-1(CsA)によって局所適用処置したDEDマウスにおける角膜神経線維の長さの(水平方向の黒い矢印として示される正常角膜からの)変化倍率を示す棒グラフである。
【図8C】ビヒクル、IL-1Ra、抗IL17抗体、およびシクロスポリン-1(CsA)によって処置したDEDマウスにおける角膜神経線維蛇行の(水平方向の黒い矢印によって示される正常角膜からの)変化倍率を示す棒グラフである。
【図9】図9Aは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面の炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均角膜フルオレセイン染色を示す折れ線グラフである。図9Bは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した同じ患者における角膜染色のベースラインからの%変化を示す棒グラフである。
【図10】図10Aは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均眼瞼間染色を示す折れ線グラフである。図10Bは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した同じ患者における眼瞼間染色のベースラインからの%変化を示す棒グラフである。
【図11】図11Aは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均眼表面疾患指数を示す折れ線グラフである。図11Bは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した同じ患者における眼表面疾患指数のベースラインからの%変化を示す棒グラフである。
【図12】局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均涙液量を示す折れ線グラフである。
【図13】局所適用IL-1受容体アンタゴニストまたはビヒクル(潤滑性の点眼液)によって処置した眼表面の炎症障害およびドライアイを有するヒト患者者における角膜神経再生を描写する一連の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
詳細な説明
IL-1、特にIL-1βは、神経再生を促進することが報告されている。初期の研究は、IL-1βがニューロトロフィン、神経生長因子(NGF)の産生をアップレギュレートまたは刺激することを報告した(Pons et al, 2002, Eur. Respir. J. 20:458-463;Akeda et al, 2007, Spine 32:635-642)。たとえば、IL-1Raを用いてIL-1βを阻害すると、傷害を受けた脳組織におけるニューロトロフィン応答を抑制することが見いだされた。神経生長因子(NGF)の増加は、IL-1βを通して直接媒介されることが見いだされており、IL-1RaによってIL-1βを遮断すると、NGF媒介修復応答の抑制が起こった(DeKosky et al., 1996, Ann. Neural. 39:123-127)。本明細書において報告されたデータは、IL-1遮断が角膜神経再生を刺激することを示しており、このことはこれらの初期の報告と矛盾する予想外で意外な知見である。
【0054】
IL-1遮断を、慢性的な眼の刺激および不快感の病訴を特徴とする患者を処置するために用いた。動物モデルおよび臨床試験を用いて、本発明の組成物および方法は、IL-1の作用を阻害することによって、角膜神経が保護されて実際に再生されることを証明する。具体的に、IL-1に対するアンタゴニストとして作用するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の局所適用投与を通してIL-1を遮断すると、角膜神経を保護して、角膜神経再生を増強し、基底下神経形態の異常を低減させる。
【0055】
基底下神経形態の例示的な異常には、異常な神経発芽の存在、異常な蛇行、ビーズ様形成の増加、および神経線維束が細くなることまたは太くなることが含まれるがこれらに限定されるわけではない。このように、IL-1阻害剤は、単純ヘルペスまたは帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、ドライアイ、露出性角膜症、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、または頭蓋内神経疾患に関連する三叉神経損傷、ならびにPRKおよびLASIKなどの角膜屈折矯正技法に関連する角膜神経損傷などのニューロパシー状態において保護的である。
【0056】
角膜神経は、他の神経と比較して独自の解剖学的位置、構造の特色および機能を特徴とし、たとえば角膜は、無血管部位であり、接触、温度、および化学物質に対して感受性の無髄神経終末を有する。角膜の接触または他の刺激は、眼瞼を閉じさせる不随意反射を引き起こす。
【0057】
いくつかの初期の報告がインターロイキンおよび神経系障害について記述しているが、IL-1遮断の角膜神経保護効果は、本明細書において記述される本発明の以前では観察されていない。US6,623,736は、インターロイキンならびに網膜および視神経障害について言及しているが、角膜または眼表面については言及していない。視神経炎、黄斑変性、色素性網膜炎、および糖尿病性網膜症は、本明細書において考察される角膜および眼表面の障害と比較して、全く異なる病理生理学的機序、自然経過、疫学、処置、および臨床症状発現を有する。US20030083301は、脊髄損傷の処置について言及している。中枢神経系の一部である脊髄は、角膜の末梢神経とは異なる生理学、病理生物学、および解剖学を有する。US20030083301ではいかなる眼の障害にも言及していない。US20090136453およびUS20080242634は、疼痛を処置するためにIL-1アンタゴニストを投与する方法について言及しており、角膜神経またはその変性について記述していない。本明細書において記述される本発明は、慢性的な眼表面の障害が含まれる自然の疾患プロセスなどの、外科的外傷がなくとも起こりうる角膜神経の損傷に関連する。
【0058】
本発明より以前では、科学論文により、IL-1が、神経の再生および生存に関係する神経生長因子(NGF)の発現を誘導すると報告された。たとえば、Temporin(Temporin et al., 2008 Neurosci Lett., 440(2): 130-3)は、IL-1が知覚神経再生を促進すると報告している。Ryoke(Ryoke et al., 2000 Biochem Biophys Res Commun., 267(3): 715-8)は、IL-1発現がインビボ神経再生に関連すると報告している。Guenard(Guenard et al., 1991 J Neurosci Res., 29(3): 396-400)は、IL-1アンタゴニスト、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)が、末梢神経再生を妨害すると報告している。角膜神経の独自の性質により、IL-1阻害(およびIL-1とIL-17の阻害の併用)は、初期の報告と比較して本発明に従って完全に異なる効果を有する。
【0059】
角膜構造
角膜は、虹彩、瞳孔、および前眼房を覆う眼の透明な前面部分である。水晶体と共に、角膜は光を反射して、その結果、眼が焦点を合わせるのを助け、眼の屈折力全体のおよそ2/3を担う。角膜は、接触、温度、および化学物質に対して感受性の無髄神経終末を有する;角膜に接触すると、眼瞼を閉じさせる不随意反射を引き起こす。
【0060】
透明性は最も重要であることから、角膜は血管を有しない;角膜は、外部の涙液および内部の房水からの拡散によって栄養を受け取り、同様にそれを支配する神経線維によって供給されるニューロトロフィンからも栄養を受け取る。ヒトにおいて、角膜は、直径約11.5 mm、中心部の厚さ0.5〜0.6 mmおよび辺縁部の厚さ0.6〜0.8 mmを有する。透明性、無血管性、高度に未成熟な常在免疫細胞の存在、および免疫学的特権によって、角膜は独自の組織である。免疫学的特権とは、炎症性免疫応答を誘発することなく、抗原の導入を容認することができる体内でのある部位を記述することを意味する。角膜は血液供給を有しないが、むしろ角膜は空気を通しておよびそれが浸される涙液を通して直接酸素を得る。
【0061】
ヒト角膜は、他の霊長類の角膜と同様に5層を有する。前方から後方にかけて、それらは、角膜上皮、ボーマン層、角膜実質、デスメ膜、および角膜内皮である。角膜上皮は、涙液によって湿潤状態で維持される、連続的に再生する細胞の重層扁平上皮の薄い上皮多細胞組織層である。角膜上皮の不規則性または浮腫は、眼の全体的な屈折力の最も重要な成分である空気-涙液被膜界面のなめらかさを破壊して、それによって視力を低減させる。前方境界膜としても知られるボーマン層は、角膜実質を保護する、厚さ約8〜14ミクロンの不規則に整列したコラーゲンの濃縮層である。固有質としても知られる角膜実質は、まばらに存在するケラチノサイトと共に規則正しく整列したコラーゲン線維からなる厚く透明な中間層である。角膜実質は、およそ200層のI型コラーゲン原線維からなる。角膜の厚さの90%は実質で構成される。後方境界膜としても知られるデスメ膜は、角膜内皮の修飾基底膜として役立つ薄い無細胞層である。角膜内皮は、水性区画と角膜実質区画のあいだの液体および溶質の輸送の調節に責任を有するミトコンドリアに富む細胞の単層扁平または単層低立方である。角膜内皮は、血液またはリンパではなく房水に浸され、血管内皮とは非常に異なる起源、機能、および外観を有する。角膜上皮とは異なり、内皮の細胞は再生しない。代わりに、角膜内皮細胞は、死細胞を埋め合わせるように伸張または広がるが、これによって内皮の全体的な細胞密度は低減して、液体調節に影響を及ぼす。
【0062】
角膜は、体の最も感受性の高い組織の1つであり、これは70〜80個の長短の毛様体神経によって三叉神経の脳分枝を通して知覚神経線維によって高密度で支配される。神経は、3つのレベル、すなわち強膜、上強膜、および結膜を通して角膜に入る。神経束のほとんどはさらに分裂して、実質においてネットワークを形成し、そこから線維を角膜の異なる領域に供給する。3つの例示的なネットワークは、実質中央部、上皮下/ボーマン層、および上皮である。上皮下層の角膜神経は集束して角膜の先端付近で終わる。
【0063】
角膜の神経支配
角膜は体における最も密度の高い神経支配組織の1つであり、異なるタイプの神経線維が大量に供給されている。ウサギの研究により、角膜上皮の神経密度は、皮膚の神経密度の約300〜600倍、および歯髄の神経密度の20〜40倍であることが判明した。ヒト角膜上皮にはおよそ7000個/mm2の知覚神経受容体が存在すると推定されており、個々の上皮細胞に対する傷害が、痛覚を生じるために十分である可能性があることを暗示している(Muller et al., Exp Eye Res 2003;76:521-42)。
【0064】
ほとんどの角膜神経線維は起源が知覚神経であり、三叉神経の脳分枝に由来する。神経束は、角膜表面に対して平行に放射状に末梢の実質中央の角膜の中に入る。角膜に入ってまもなく、主な実質神経束は、より小さい束へと繰り返し二分するように分枝して、実質の次第により浅い層へと上行する。最終的に、実質神経線維は急に90°曲がってボーマン層を貫通し、角膜表面に向かって伸びる。ボーマン層を貫通した後、神経束は分裂してボーマン層と基底上皮のあいだの角膜表面に対して平行に走り、基底下神経叢を形成する。基底下上皮神経叢における神経の密度および数は、残りの角膜叢における神経の密度および数より有意に大きい。基底下線維は、その後分枝を形成して、これは上方に曲がって基底細胞のあいだの角膜上皮の中に入って翼状細胞に達し、そこで終わる(Muller et al., Invest Ophthalmol Vis Sci 1996;37:476-88)。
【0065】
角膜神経線維は、感覚を媒介するのみならず、角膜上皮に対して重大な栄養上の影響を発揮して、健康な眼の表面の保存に対して極めて重大な役割を果たす。角膜の感覚は、瞬目反射および反射的流涙を通して傷害を防止するための重要な機序である。ニューロパシー、たとえば角膜神経の変性によって感覚の変化が起こる。角膜神経のニューロパシーと診断された患者は、感覚の減損を経験し、および/または慢性的な不快感および刺激を特徴とする疼痛の増加(痛覚過敏)を経験する。涙液分泌は、角膜神経によって調節されることから、角膜ニューロパシー(角膜神経組織の喪失もしくは損傷、または角膜神経線維の長さの減少)によって涙液欠乏に至る。このように、方法は、涙液欠乏性ドライアイの症状を低減させるために有用である。
【0066】
角膜神経支配の機能障害および関連するニューロパシー病理は、「神経栄養性角膜炎」として臨床的に知られる変性状態を生じ、このために眼表面は不顕性の傷害に対して易損性となり、確立された角膜上皮傷害の治癒を遅らせる。神経栄養性角膜炎のほとんどの臨床例は、単純ヘルペスもしくは帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、または眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、もしくは頭蓋内神経疾患に関連する三叉神経損傷によって引き起こされる。角膜感覚の非存在または低減の起源は先天性であってもよい。光学的角膜切除術(PRK)およびレーザー角膜内切削形成術(LASIK)などの角膜屈折矯正技法は、実質および基底下角膜神経叢を切断して、一過性の軽度から重度の神経病理学的状態または神経栄養性ドライアイを生じうる。この型の「神経栄養性ドライアイ」は、神経の喪失および関連する乾燥を特徴とし、被験体において発症するドライアイの重症型などの非外科状態においても認められる。
【0067】
無傷の角膜神経支配はまた、流涙反射にとっても必須である。正常な生理状態において、角膜の知覚神経は、脳幹に求心性の刺激シグナルを伝達して、その後一連の介在ニューロンの後に、涙腺を支配する副交感神経および交感神経を通して遠心性シグナルを涙腺に伝達し、涙液産生および分泌を促進する(Dartt, DA Ocul Surf 2004;2:76-91)。この神経回路に対する損傷は、涙液分泌の正常な調節を中断して、ドライアイ疾患を引き起こす。角膜からの神経駆動の低減は、ドライアイ関連眼表面疾患の発生に2つの点で都合がよい;第一に、反射誘導涙液分泌を減少させることおよび瞬目率を低減させることによって、その結果蒸発による喪失を増加させることによって:第二に、上皮叢への栄養因子を減少させることによって都合がよい。屈折矯正術および通常の加齢の結果としての眼表面、特に角膜における知覚神経に対する損傷は、涙線に対する正常な反射弓を阻止して、それによって涙液分泌の減少およびドライアイ症候群が起こりうる。この機序の証拠は、角膜屈折矯正術(たとえば、神経が離断される手術)後にドライアイ症候群が頻繁に起こるという臨床での知見に由来する。臨床試験により、LASIK手術後に涙液の産生および分泌が低減することが確認された(Battat et al., Ophthalmology 2001;108:1230-5)。興味深いことに、ドライアイにおける涙液の過剰分泌によって、角膜神経の病的な変化および角膜感受性の低下が起こり、それによってドライアイ状態が永続する(Xu et al., Cornea 1996; 15:235-9)。ドライアイは、参照により本明細書に組み入れられる、PCT/US2008/009776においてさらに記述される。
【0068】
マイボーム腺疾患(MGD)または後部眼瞼炎のみを有する患者は一般的に、臨床的ニューロパシー(臨床的に有意な角膜神経損傷)を有すると特徴付けされず、よって「神経栄養性」ドライアイを有しない。
【0069】
角膜の病理
ドライアイ、露出性角膜症、および他の眼表面の疾患などの角膜上皮に影響を及ぼす眼の疾患は、角膜神経変性を引き起こす。他方、正常な神経駆動は、角膜上皮が治癒してその恒常性を維持するために本質的な必要条件である。ゆえに、第一義的理由(屈折率矯正手術)としての、または単なる乾燥および他の角膜上皮もしくは眼表面疾患の転帰としての角膜神経の変化は、角膜上皮の恒常性に対して重大な効果を有し、このように上皮疾患および神経損傷の悪循環の増加に巧妙に関与する。
【0070】
インターロイキン-1(IL-1)
IL-1ファミリーは、炎症および免疫応答の主要なメディエータとして機能する一群のサイトカインである(Dinarello, CA. 1996. Blood. 15:2095-2147)。このファミリーは、3つの型で構成される:各々が前駆体型を有する2つの前炎症型、IL-1αおよびIL-1β、ならびに抗炎症型、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)。前炎症性サイトカインであるIL-1は、ケモカイン産生、接着因子、マクロファージ浸潤および活性、ならびにリンパ球増殖を増加させることによって、炎症および免疫において重要な役割を果たす。IL-1は、リウマチ性関節炎、敗血症ショック、および歯周炎などのヒトの炎症疾患の病因に関係している(Jiang, Y. et al. 2000. Arthritis Rheum. 43:1001-1009;Okusawa, S. et al. 1988. J Clin Invest. 81 : 1162-1172;McDevitt, M.J. et al. 2000. J. Periodontal. 71 :156-163)。
【0071】
本明細書において記述される組成物および方法は、シグナル伝達の誘導能、またはIL-1受容体からの下流のシグナル伝達カスケードの開始/活性化能によって定義されるように、ヒトIL-1αおよび/またはIL-1βの活性を阻害する。ヒトIL-1αまたはIL-1β機能の阻害剤を含有する組成物は、IL-1受容体の活性に拮抗する。組成物は、ヒトIL-1αまたはIL-1βをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。その上、阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2(IL-1α)またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4(IL-1β)によって含まれるIL-1αまたはIL-1βの1つまたは複数の領域に結合する。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2(IL-1α)またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4(IL-1β)によって含まれるIL-1αまたはIL-1βの1つまたは複数の断片に結合する。
【0072】
これらの配列および本明細書において提供される他の全ての場合における断片は、全体より少ない全体の一部として定義される。その上、断片は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列内のヌクレオチドまたはアミノ酸1個から、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列全体よりヌクレオチドまたはアミノ酸が1個少ない大きさの範囲に及ぶ。最後に、断片は、先に定義された極限値のあいだの中間である完全なポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の任意の部分として定義される。
【0073】
ヒトIL-1αは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000575およびSEQ ID NO: 1)によってコードされる:(本出願に組み入れられる全てのmRNA転写物に関して、コドン「atg」によってコードされる開始メチオニンを太字で示し、コード領域の開始を描写するために大文字で示す。)
【0074】
ヒトIL-1αは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000575およびSEQ ID NO: 2)によってコードされる:
【0075】
ヒトIL-1βは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000576およびSEQ ID NO: 3)によってコードされる:
【0076】
ヒトIL-1βは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000576およびSEQ ID NO: 4)によってコードされる:
【0077】
インターロイキン-1受容体(1型)アンタゴニスト(IL-1Ra)
IL-1Raは、活性化単球および組織マクロファージによって主に産生され、IL-1受容体に競合的に結合することによって前炎症型のIL-1の活性を阻害する内因性の受容体アンタゴニストである(Gabay, C. et al. 1997. 159: 5905-5913)。IL- 1Raは、炎症状態において典型的にアップレギュレートされる誘導型遺伝子である(Arend, W.P. 1993. Adv Immunol. 54: 167-223)。
【0078】
本発明において、組成物は、IL-1Ra転写物1、2、3もしくは4、細胞内IL-1Ra(icIL-1Ra)、またはそれらの対応するポリペプチドイソ型の1つまたは複数の領域を含む。または、組成物は、IL-1Ra転写物1、2、3もしくは4の全て、細胞内IL-1Ra(icIL-1Ra)、またはそれらの対応するポリペプチドイソ型を含む。任意の型のヒトIL-1Ra、またはその断片を含む組成物がIL-1R1の機能を阻害する。これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、以下の配列によって定義される。ヒトIL-1Ra、転写物1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173842およびSEQ ID NO: 5)によってコードされる:
【0079】
ヒトIL-1Ra、転写物1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173842およびSEQ ID NO: 6)によってコードされる:
【0080】
ヒトIL-1Ra、転写物2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173841およびSEQ ID NO: 7)によってコードされる:
【0081】
ヒトIL-1Ra、転写物2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173841およびSEQ ID NO: 8)によってコードされる:
【0082】
ヒトIL-1Ra、転写物3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000577およびSEQ ID NO: 9)によってコードされる:
【0083】
ヒトIL-1Ra、転写物3は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000577およびSEQ ID NO: 10)によってコードされる:
【0084】
ヒトIL-1Ra、転写物4は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173843およびSEQ ID NO: 11)によってコードされる:
【0085】
ヒトIL-1Ra、転写物4は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173843およびSEQ ID NO: 12)によってコードされる:
【0086】
ヒト細胞内IL-1Ra、icIL-1Raは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO: 13)によってコードされる:
【0087】
ヒト細胞内IL-1Ra、icIL-1Raは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO: 14)によってコードされる:
【0088】
ヒト組み換え型IL-1Ra
組み換え型ヒトIL-1Ra(rHuIL-1Ra)を作製して、関節炎の動物モデルにおいて試験した。この型のrHuIL-1Raはまた、アナキンラまたはKineret(登録商標)としても知られ、N末端メチオニンの付加によって本来の非グリコシル化IL-1Raとは異なる。これはIL-1βと同じ親和性でIL-1R I型に結合する。Kineret(登録商標)は、アミノ酸153個からなり、分子量17.3キロダルトンを有する。これは、大腸菌細菌発現系を用いて、組み換えDNA技術によって産生される。
【0089】
アナキンラは、IL-1によって少なくとも部分的に媒介されると見なされるいくつかの状態において試験されている。いくつかの証拠が、リウマチ性関節炎および敗血症ショックの病因におけるIL-1の関与を示唆している(Jiang, Y. et al. 2000. Arthritis Rheum. 43:1001-1009;Fisher, CJ. et al.1994. JAMA.271 :1836-1843;Okusawa, S. et al. 1988. J Clin Invest. 81 :1162-1172;Bresnihan, B. et al. 1998. Rheum Dis Clin North Am. 24(3):615-628;Dayer, J.M. et al. 2001. Curr Opin Rheumatol. 13:170-176;Edwards, C.K. 2001. J Clin Rheumatol. 7:S17-S24)。
【0090】
アナキンラは、1つまたは複数の疾患修飾性抗リウマチ薬によって奏功しなかった年齢18歳またはそれ以上の患者における中等度から重度の活動性リウマチ性関節炎の徴候および症状を低減させるために、FDAによって承認されている。その高い安全性プロファイルを考慮して、アナキンラの投与はまた、若年性リウマチ性関節炎患者における関節炎の処置のためにも用いられている(Reiff, A. 2005. Curr Rheumatol Rep. 7:434-40)。他の適応には、骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)(Antin, J.H. et al. 1994. Blood.84: 1342-8)、ブドウ膜炎(Teoh, S.C et al. 2007. Br J Opthalmol. 91 : 263-4)、変形性関節炎(Caron, J.P. et al. 1996. Arthritis Rheum. 39:1535-44)、喘息、炎症性腸疾患、急性膵炎(Hynninen, M. et al. 1999. J Crit Care. 14:63-8)、乾癬およびII型真性糖尿病(Larsen, CM. et al. 2007. N Engl J. Med. 356:1517-26)の防止が含まれる。IL-1Raの全身的な安全性プロファイルは、特に、TNF-α遮断剤、細胞障害剤、またはさらにステロイドなどの他の免疫抑制処置と比較した場合に、極めて好都合である。
【0091】
局所適用ヒト組み換え型IL-1Raは、実験動物モデルにおける角膜移植拒絶(Yamada, J. et al. 2000. Invest Opthalmol Vis Sci. 41 :4203-8)、およびアレルギー性結膜炎(Keane-Myers, A.M. et al. 1999. Invest Opthalmol Vis Sci. 40:3041-6)の防止のために用いられて成功している。同様に、局所適用IL-1Raを用いることによって、ラット角膜アルカリ損傷モデルにおいて、角膜の炎症が有意に減少して角膜の透明性が増強された(Yamada, J. et al. 2003. Exp Eye Res. 76:161-7)。
【0092】
ヒトIL-1Ra(rHuIL-1Ra)の組み換え型が開発されており、関節炎の処置のために皮下注射によるヒトでの使用のために承認された。この型のrHuIL-1Raは、アナキンラまたはKineret(登録商標)(Amgen Inc.)としても知られ、N末端メチオニンの付加によって本来の非グリコシル化IL-1Raとは異なる。これは、IL-1βと同じ親和性でヒトIL-1R、1型(IL-1R1)に結合する。Kineret(登録商標)は、アミノ酸153個(SEQ ID NO:16を参照されたい)からなり、分子量17.3キロダルトンを有する。これは大腸菌細菌発現系を用いて組み換えDNA技術によって産生される。
【0093】
本発明の組成物は、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16の1つまたは複数の領域を含む。さらに、本発明の組成物は、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のいずれかの全配列を含む。
【0094】
アナキンラ/Kineret(登録商標)は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO:15)によってコードされる:
【0095】
アナキンラ/Kineret(登録商標)は、以下のポリペプチド配列(DrugBankアクセッション番号BTD00060およびSEQ ID NO: 16)によってコードされる:
【0096】
IL-1受容体
本発明の組成物は、1型または2型のいずれかのIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。本出願において、IL-1受容体、1型(IL-1R1)はSEQ ID NO:17のポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:18のポリペプチド配列によって定義される。本出願において、IL-1受容体、2型(IL-1R2)、転写物変種1および2は、SEQ ID NO:19および20のポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:21のポリペプチド配列によって定義される。IL-1R2は、IL-1サイトカインに結合してIL-1R1を阻害する「おとり」受容体として機能しうる。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:17〜21によって含まれるIL-1R1またはIL-1R2、および関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。IL-1R1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000877およびSEQ ID NO:17)によってコードされる:
【0097】
IL-1R1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000877およびSEQ ID NO:18)によってコードされる:
【0098】
IL-1R2、転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_004633およびSEQ ID NO:19)によってコードされる:
【0099】
IL-1R2、転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173343およびSEQ ID NO:20)によってコードされる:
【0100】
IL-1R2、転写物変種1および2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_004633、NM_173343、およびSEQ ID NO:21)によってコードされる:
【0101】
インターロイキン-1受容体(2型)アンタゴニスト(IL-1Ra3)
本発明は、ヒトIL-1R2の活性を阻害または増強するための手段を有する組成物を含む。IL-1R2アンタゴニスト、IL-1Ra3を含む組成物は、IL-1R1機能の効能に関してアゴニストまたはアンタゴニスト活性のいずれかを有する。組成物は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23によって含まれるIL-1Ra3の1つまたは複数の領域に結合する。
【0102】
IL-1Ra3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号AF_057168およびSEQ ID NO:22)の領域または全体によってコードされる:(この配列に関して、太字および大文字のコドンはメチオニンをコードせず、むしろ対応するポリペプチドの最初のアミノ酸をコードするコドンを表す)
【0103】
IL-1Ra3の1つまたは複数のイソ型は以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号AF_057168およびSEQ ID NO:23)を含む:
【0104】
インターロイキン-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1RAP)
ヒトIL-1RAPの活性を阻害する組成物は、IL-1サイトカインまたはIL-1受容体に対するIL-1RAPの結合を阻害して、下流の細胞内シグナルのその後の伝達を阻害する。IL-1RAP機能の阻害剤を含む組成物は、IL-1受容体の活性に拮抗する。組成物は、IL-1RAPをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:24〜27によって含まれるIL-1RAPおよびその関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0105】
IL-1RAP、転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_002182およびSEQ ID NO:24)によってコードされる:
【0106】
IL-1RAP、転写物変種1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_002182およびSEQ ID NO:25)によってコードされる:
【0107】
IL-1RAP、転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_134470およびSEQ ID NO:26)によってコードされる:
【0108】
IL-1RAP、転写物変種2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_134470およびSEQ ID NO:27)によってコードされる:
【0109】
インターロイキン-1受容体関連キナーゼ1(IRAK1)
本発明はまた、この受容体とIL-1とのライゲーション後のIL-1受容体に対するこのタンパク質の結合能のみならず、炎症応答に至る下流のシグナルの伝達能として定義される、ヒトIRAK1の活性を阻害する組成物および方法も含む。IRAK1の阻害剤を含む組成物は、IL-1受容体からの下流のシグナル伝達に拮抗する。組成物は、IRAK1をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:28〜33によって含まれるIRAK1およびその関連イソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0110】
IRAK1、転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001569およびSEQ ID NO:28)によってコードされる:
【0111】
IRAK1、転写物変種1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001569およびSEQ ID NO:29)によってコードされる:
【0112】
IRAK1、転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001025242およびSEQ ID NO:30)によってコードされる:
【0113】
IRAK1、転写物変種2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001025242およびSEQ ID NO:31)によってコードされる:
【0114】
IRAK1、転写物変種3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001025243およびSEQ ID NO:32)によってコードされる:
【0115】
IRAK1、転写物変種3は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001025243およびSEQ ID NO:33)によってコードされる:
【0116】
マイクロRNAによる発現の抑制
本発明は、マイクロRNA(miRNA)分子を適当な薬学的担体と共に眼または付属組織に送達することによってIL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1の活性を阻害する手段を有する組成物を含む。IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1のいずれかを標的とするmiRNAを含む組成物は、IL-1R1の機能に拮抗する。組成物は、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1の1つまたは複数の領域に結合する1つまたは複数のmiRNAを含む。以下の表は、ヒトIL-1αまたはIL-1R1の発現を部分的または完全に抑制することが示されている例示的なmiRNAを含有する。
【0117】
(表1)miRNA、そのヒト標的遺伝子、ヌクレオチド配列、およびその配列同定子番号の要約
【0118】
IL-1およびIL-1R媒介シグナル伝達
本明細書において用いられるように、「炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する」という句は、IL-1受容体から開始、情報交換、または伝達された細胞内シグナル伝達の阻害、防止、減損、低減、減少、抑制、または中断を記述することを意味する。本発明の1つの局面において、IL-1受容体から開始、情報交換、または伝達された細胞内シグナル伝達の阻害、防止、減損、低減、減少、抑制、または中断は、IL-1サイトカインのIL-1Rに対する結合を防止または減少させることによって達成される。またはもしくは加えて、IL-1Rからの細胞内シグナルの伝達は、シグナル伝達カスケード内の下流のエフェクターまたは標的を除去する、抑制する、または変異させることによって防止される。下流のエフェクターおよび/または標的の発現および/または機能または活性は、遺伝子改変または治療化合物の投与によって、除去される(たとえば、欠失される、ノックアウトされる、隔離される、変性される、分解される等)、抑制される(分解される、転写もしくは翻訳的に抑制される)、または変異する(活性産物をコードするヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、非機能的産物をコードするように変化する)。
【0119】
例示的な下流のエフェクターおよび/または標的には、IL-1(インターロイキン 1)、IL-lα(インターロイキン 1α)、IL-lβ(インターロイキン 1 β)、IL-1R(インターロイキン 1受容体、I型)、IL-1Ra(IIL-1Rアンタゴニスト)、IL-1RAcP(IL-1Rアクセサリタンパク質)、TOLLIP(TOLL相互作用タンパク質)、IRAK1(IL-1R 関連キナーゼ 1)、IRAK2(IL-1R関連キナーゼ 2)、IRAK 3(IL-1R関連キナーゼ 3)、MYD88(骨髄分化初期応答遺伝子88)、ECSIT(Toll経路における進化的保存シグナル伝達中間体)、TRAF6(TNF受容体関連因子6)、MEKK1(MAP ERK キナーゼ キナーゼ 1)、TAB1(TAK1結合タンパク質1)、TAK1(トランスフォーミング増殖因子b活性化キナーゼ 1)、NIK(NFkB誘導キナーゼ)、RKIP(Raf キナーゼ阻害剤タンパク質)、MEK3(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ3;MEK3またはMKK3)、MEK6(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ6;MEK6またはMKK6)、MAPK14(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ14)、MAPK8(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ8)、MEKK1(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ1)、MAP3K14(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ 14)、MEKK7(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ7またはMKK7)、MAP3K7IP1(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ7相互作用タンパク質1)、JNK(Jun N末端キナーゼ)、p38(p38MAPKまたはp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼとしても知られる)、cJUN(jun腫瘍遺伝子)、AP-1(活性化タンパク質1;転写因子)、IL-6(インターロイキン 6、インターフェロンβ 2としても知られる)、TNFα(腫瘍壊死因子-α)、TNF(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー)、IFNα(インターフェロンα、インターフェロンα1)、IFNβ(インターフェロンβ、インターフェロンβ 1)、TGFβl(トランスフォーミング増殖因子β 1)、TGFβ2(トランスフォーミング増殖因子β 2)、TGFβ3(トランスフォーミング増殖因子β 3)、IKKα(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤、キナーゼα)、IKKβ(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤、キナーゼ β)、IκBα(B細胞阻害剤におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤の核因子、α)、Chuk(保存されたヘリックス-ループ-ヘリックス汎在キナーゼ)、およびNFκB(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核因子1;p105としても知られる)の1つまたは複数のイソ型または相同体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。追加のシグナル伝達分子および関係は、O'Neill, L. A. J. and Greene, C. 1998. Journal of Leukocyte Biology. 63: 650-657によって定義される。
【0120】
インターロイキン-1サイトカインの活性の阻害は、角膜を採取する段階、およびIL-1Rシグナル伝達カスケードの成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量を決定する段階によって決定される。投与前のIL-1Rシグナル伝達カスケードの成分量と比較して、本発明の治療組成物の投与後のIL-1Rシグナル伝達カスケードの成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量が増加または減少すれば、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性が阻害されたことを示している。
【0121】
具体的に、図5は、2つの例示的なシグナル伝達カスケードの成分のあいだの機能的相互関係を示す。この図における成分間の矢印は、矢印より前にある成分が矢印の後にある成分を活性化することを示している。逆に、先端が平らな線は、平らな線の前にある成分が平らな線の後にある成分の活性または機能を阻害することを示している。
【0122】
簡単に説明すると、I型IL-1RはIL-1βに結合するが、IL-1Rは、シグナルを伝達するためにIL-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1RAcP)を必要とする。IL-1結合は、IL-1受容体複合体に関連する2つのキナーゼIRAK-1およびIRAK-2の活性化を引き起こす。IRAK-1(IL-1受容体関連キナーゼ)はTRAF6を活性化してIL-1受容体複合体に動員する。TRAF6は、2つの経路を活性化して、1つは、NF-κB活性化に至り、もう1つは、c-jun活性化に至る。TRAF関連タンパク質ECSITは、Mapキナーゼ/JNKシグナル伝達系を通してc-Jun活性化に至る。TRAF6はまた、I-κBの分解およびNF-κBの活性化を誘発するためにTAB1/TAK1キナーゼを通してシグナルを伝達する。
【0123】
例として、本発明のある態様において、MEKK1のプロセシング型の量の減少もしくは非存在、リン酸化IκBαの量の減少もしくは非存在、リン酸化c-JUNの量の減少もしくは非存在、ICAM-1の量の減少もしくは非存在、またはIL-6、TNFα、IFNα、IFNβ、TGFβの量の減少もしくは非存在は、インターロイキン-1サイトカインの阻害を示している。同様に上記の成分のいずれかの活性または機能の減少または非存在は、インターロイキン-1サイトカインの阻害を示している。
【0124】
薬学的に適当な担体
局所適用組成物の眼または付属組織への局所適用送達を容易にするおよび促進するために組み入れられる例示的な化合物には、アルコール(エタノール、プロパノール、およびノナノール)、脂肪アルコール(ラウリルアルコール)、脂肪酸(吉草酸、カプロン酸、およびカプリン酸)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピルおよびn-ヘキサン酸イソプロピル)、アルキルエステル(酢酸エチル、および酢酸ブチル)、ポリオール(ポリエチレングリコール、プロパンジオン、およびヘキサントリオール)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシド)、アミド(尿素、ジメチルアセトアミド、およびピロリドン誘導体)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポロキサマー、スパン、ツイーン、胆汁酸およびレシチン)、テルペン(d-リモネン、α-テルペノール、1,8-シネオール、およびメントン)、およびアルカノン(N-ヘプタンおよびN-ノナン)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、局所適用投与された組成物は、カドヘリンアンタゴニスト、セレクチンアンタゴニスト、およびインテグリンアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されるわけではない表面接着分子調節物質を含む。
【0125】
任意で、組成物はさらに、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、carbopol-メチルセルロース、N-アセチルシステイン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物を含有する。
【実施例】
【0126】
実施例1:上皮疾患における中枢神経再生に及ぼすIL-1遮断の効果
ドライアイの最も重度の臨床徴候を有する被験体が、IL-1遮断剤の投与後に驚くほどの改善の感覚を報告したことが観察された。さらに調べると、重度のドライアイを有する患者はまた、IL-1遮断剤の投与後に角膜神経損傷または神経機能の喪失さえも罹っていることが見いだされた。処置後のこの予想外の改善の機序をよりよく解明するために、涙液産生およびドライアイの正常および病的なプロセスに対する神経損傷および機能の寄与を調べた。
【0127】
角膜神経の恒常性におけるIL-1遮断剤の役割を検査するために、上皮の壊死組織切除後の角膜基底下神経叢および終末上皮分枝の再生を測定した。マウスを麻酔して、小刀の刃で2 mmの角膜上皮欠損を、各々の麻酔したマウスの一方の眼に作製した。1群のマウス(n=5)を、1%カルボキシメチルセルロースと混合した2.5%IL-1Raの局所点眼液によって1日3回7日間処置した。対照群(n=5)をビヒクル(1%カルボキシメチルセルロース)を用いて1日3回7日間処置した。7日後、動物を安楽死させて、角膜を摘出して4%パラホルムアルデヒド中で室温で40分間固定した。角膜をPBSによって洗浄した。2%BSAのPBS溶液および0.2%Triton X-100中で2時間インキュベートすることによって、透過性にしてブロッキングした。角膜を、1:200倍希釈したウサギ抗マウスβIIIチューブリン一次抗体と共に4度で16時間インキュベートした。PBS中で3回洗浄後、角膜を、1:200倍希釈したローダミンコンジュゲートヤギ抗ウサギ二次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。角膜をマウンティング培地と共にカバーガラスで覆い、撮像した。角膜を、創傷域における角膜中心傍領域における基底下神経叢および終末分枝のレベルで写真撮影した(図1)。処置した眼に関して、終末分枝レベルでの神経密度を反対側の正常角膜に対して標準化した。この実験の結果は、IL-1Ra処置群では、基底上皮細胞レベルでの再生神経の%密度がビヒクル処置群での15%と比較して80%であることを示した。
【0128】
インビボ共焦点顕微鏡(Confoscan 4; Nidek Technologies)を用いたドライアイ関連眼表面疾患を有する患者におけるヒト臨床試験において、基底下角膜神経レベルでの角膜神経形態を、局所適用2.5%IL-1Raによる1日3回の1ヶ月間の処置の前後で査定した(図2)。全員で患者6人におけるIL-1遮断剤による処置後、画像あたりの神経の長さ(神経線維密度)の合計は、ベースラインと比較して25%増加した。角膜神経密度の改善は、これらの患者におけるドライアイの徴候および症状の低減と相関した。
【0129】
ゆえに、IL-1遮断剤は、神経再生を増加させることによって、角膜の健康の維持を改善し、これによって上皮疾患と神経損傷という悪循環を切断する。このように、IL-1遮断剤は、全ての型のドライアイ症候群、全ての型の眼表面疾患、屈折矯正手術(PRK、LASEK、Epi-LASIK、LASIK)などの角膜手術、角膜移植、上皮壊死組織切除、眼表面再構築、ヘルペス性角膜炎、神経栄養性角膜炎、露出性角膜症、真性糖尿病、三叉神経損傷が含まれる、角膜上皮の健康に影響を及ぼす全ての眼科状態に用いられうる。IL-1遮断剤の非眼科応用は、糖尿病性の末梢ニューロパシーが含まれる全ての型の末梢ニューロパシーであろう。
【0130】
実施例2:ドライアイ誘発リンパ管新生に及ぼすIL-1遮断剤の効果
角膜の血管新生は、角膜抗原に対する適応免疫の病因および眼表面の疾患の誘導に関係する。リンパ管は、常在抗原提示細胞の排出リンパ節への遊走にとって、および適応免疫の誘導にとって非常に重要であるが、ドライアイ関連眼表面疾患におけるリンパ管新生の役割に関する情報はない。マウスドライアイモデルにおいて、IL-1遮断剤がドライアイ誘導リンパ管新生を低減できるか否かを決定した。雌性C57BL/6マウス(n=10)において、環境制御室および全身スコポラミンに曝露することによって、ドライアイを誘導した。2日後、1群のマウス(n=5)に、1%カルボキシメチルセルロースと混合した2.5%局所適用IL-1Raを1日3回与えて、第二の群にはビヒクルのみ(1%カルボキシメチルセルロース)を与えた。5日間の処置後、動物を安楽死させて、角膜を摘出して4%パラホルムアルデヒド中で室温で40分間固定した。リンパ管および血管の免疫組織化学染色を角膜フラットマウントにおいて行った。LYVE-1(リンパ内皮特異的ヒアルロン酸受容体)に対する免疫組織化学染色を、精製抗体の後にローダミンコンジュゲート二次抗体によって行った。免疫組織化学染色をまた、FITC-コンジュゲートCD31によっても行った。血管形成およびリンパ管形成レベルを定量するために、低倍率(2×)の顕微鏡写真を得て、リンパ新生血管によって覆われた領域を計算して、総角膜領域の%として表記した。IL-1Ra処置角膜は、ビヒクル処置角膜と比較して平均で60%未満のリンパ管新生活性を示した。加えて、IL-1による遮断によってより低レベルの成熟度を有する免疫細胞が得られ、このためそれらの細胞はT細胞の感作能がより低い。
【0131】
この実験の結果は、ドライアイ関連リンパ管新生の防止に関してIL-1に対する阻害活性を有する化合物が、ドライアイ関連眼表面疾患において適応免疫および自己免疫の誘導を最小限にするために有用であることを示している。
【0132】
実施例3:局所適用IL-1Raの濃度
ドライアイ疾患に及ぼすIL-1遮断剤の効果に関して、1%カルボキシメチルセルロースと混合した局所適用IL-1Raの異なる濃度(1%、2.5%、および5%)をマウスドライアイモデルにおいて試験した。雌性C57BL/6マウス(n=20)において、環境制御室および全身スコポラミンに曝露することによって、ドライアイを誘導した。2日後、マウスを5群に分けた。第一、第二、および第三の群のマウス(各群マウス4匹)にそれぞれ、1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%、2.5%、および1%局所適用IL-1Raを1日3回の頻度で与えて、第四の群(n=4)にはビヒクルのみ(1%カルボキシメチルセルロース)を1日3回の頻度で与え;および第五の群(n=4)は無処置のままとした。5日間の処置後、マイクロピペットによって1%フルオレセイン0.5μlをマウスの眼の下結膜嚢に適用することによって角膜フルオレセイン染色を行った。フルオレセインの点眼後3分で角膜を、細隙灯生体顕微鏡によってコバルトブルーライトで検査した。点状染色を、角膜表面を分割した5つの領域の各々について、0から3までの標準化した(National Eye Institute)等級付けシステムによって盲検的に記録した。この実験は、IL-1Raの全ての濃度(1%、2.5%、および5%)が角膜フルオレセイン染色スコアを減少させることができるが、5%濃度の局所適用IL-1Raを与えた群では、角膜フルオレセイン染色の%低減が適度に高いことを示した。
【0133】
実施例4:局所適用IL-1Raの製剤
ドライアイ疾患に及ぼすIL-1遮断剤の効果に関して、異なるビヒクルと混合した5%IL-1Raをマウスドライアイモデルにおいて試験した。雌性C57BL/6マウス(n=20)において、環境制御室および全身スコポラミンに曝露することによって、ドライアイを誘導した。2日後、マウスを4群に分けた。第一の群のマウス(n=5)に、1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%局所適用IL-1Raを1日3回の頻度で与えて、第二の群(n=5)には10%N-アセチルシステインと混合した5%局所適用IL-1Raを1日3回の頻度で与え;第三の群(n=5)には、0.3%ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)および0.3 mmol/Lグルタチオンと混合した5%IL-1Raを局所適用投与した;および第四の群(n=5)を無処置のままとした。5日間の処置後、1%フルオレセイン0.5μLをマウスの眼の下結膜嚢にマイクロピペットによって適用することによって角膜フルオレセイン染色を行った。フルオレセインの点眼後3分で、角膜を、細隙灯生体顕微鏡によってコバルトブルーライトで検査した。点状染色を、角膜表面を分割した5つの領域の各々について、0から3までの標準化した(National Eye Institute)等級付けシステムによって盲検的に記録した。この実験は、角膜フルオレセイン染色の%低減が、10%N-アセチルシステインと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群において、および1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群において有意に高いことを示した。
【0134】
実施例5:角膜神経変性の最小化または防止
角膜神経恒常性に及ぼすIL-1遮断剤の役割を調べるために、角膜基底下神経叢および終末上皮分枝の神経変性の最小化および防止を測定した。1群のマウス(n=5)を、1%カルボキシメチルセルロースと混合した2.5%IL-1Raの局所点眼液によって1日3回、7日間処置した。対照群(n=5)をビヒクル(1%カルボキシメチルセルロース)を用いて1日3回7日間処置した。次に、マウスを麻酔して、小刀の刃を用いて2 mmの環状の角膜上皮欠損を各々の麻酔マウスの一方の眼に作製した。7日後、動物を安楽死させて、角膜を摘出して4%パラホルムアルデヒド中で室温で40分間固定した。角膜をPBSによって洗浄した。2%BSAのPBS溶液および0.2%Triton X-100中で2時間インキュベートすることによって、可溶化およびブロッキングを行った。角膜を、1:200倍希釈したウサギ抗マウスβIIIチューブリン一次抗体と共に4度で16時間インキュベートした。PBS中で3回洗浄後、角膜を、200倍希釈したローダミンコンジュゲートヤギ抗ウサギ二次抗体中で室温で2時間インキュベートした。角膜をマウンティング培地と共にカバーガラスで覆い、撮像した。角膜を、創傷域の角膜中心傍領域での基底下神経叢および終末分枝のレベルで写真撮影する。処置した眼に関して、終末分枝レベルでの神経密度を反対側の正常角膜に対して標準化する。この実験の結果は、IL-1Ra処置群では、ビヒクル処置群と比較して、基底上皮細胞レベルでの変性神経の%密度が減少したことを示している。
【0135】
ゆえに、IL-1遮断剤は、神経変性を最小限にするまたは予防することによって、上皮が角膜の健康の維持を改善するために役立つことができ、これによって上皮疾患と神経損傷という悪循環を切断することができる。このように、IL-1遮断剤は、全ての型のドライアイ症候群、全ての型の眼表面疾患、屈折矯正手術(PRK、LASEK、Epi-LASIK、LASIK)などの角膜手術、角膜移植、上皮壊死組織切除、眼表面再構築、ヘルペス性角膜炎、神経栄養性角膜炎、露出性角膜症、真性糖尿病、三叉神経損傷が含まれる、角膜上皮健康に影響を及ぼす全ての眼科状態において用いられうる。IL-1遮断の非眼科応用は、糖尿病性末梢ニューロパシーが含まれる全ての型の末梢ニューロパシーであろう。
【0136】
実施例6:IL-1およびIL-17遮断は角膜神経の予想外の保護を提供する
参照により本明細書に組み入れられる、WO/2009/089036において記述されるように、方法は、IL-17受容体複合体への炎症性IL-17サイトカインの結合を阻害する化合物の投与を含む。
【0137】
角膜神経を再生させる方法はまた、炎症性インターロイキン-17サイトカインまたはIL-17受容体複合体の任意の成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む組成物を被験体の眼に局所投与することによって行われる。
【0138】
組成物は、IL-17および/または受容体複合体に対する中和または機能遮断抗体を含んでもよい。IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、ヒトIL-17アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF-317-NA、R&D Systems)、ヒトIL-17アロフィコシアニンモノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号IC3171A、R&D Systems)、ヒトIL-17ビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF317、R&D Systems)、ヒトIL-17モノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号MAB3171、R&D Systems)、ヒトIL-17モノクローナル抗体(クローン41809)(カタログ番号MAB317、R&D Systems)、ヒトIL-17フィコエリスリンモノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号IC3171P、R&D Systems)、マウスIL-17アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF-421-NA、R&D Systems)、マウスIL-17ビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF421、R&D Systems)、マウスIL-17モノクローナル抗体(クローン50101)(カタログ番号MAB721、R&D Systems)、またはマウスIL-17モノクローナル抗体(クローン50104)(カタログ番号MAB421、R&D Systems)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。好ましくは、IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、モノクローナル抗ヒトIL-17抗体(クローン:41809、カタログ番号MAB317、R&D Systems)、ヤギにおいて作製したポリクローナル抗ヒトIL-17抗体(カタログ番号AF-317-NA、R&D Systems)、または組み換え型ヒトIL-17 RTFcキメラ(カタログ番号177-IR、R&D Systems)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。
【0139】
「再処方する」とは、局所投与、結膜下投与、強膜外隙投与、皮下投与、または腺管内投与にとって適するように組成物を変化させることを意味する。好ましい製剤は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、コンタクトレンズ、フィルム、エマルション、または懸濁液の形態である。1つの局面において、製剤は局所適用投与される、たとえば組成物は眼に送達されて、眼に直接接触する。任意で、組成物は、薬学的に許容される液体担体、たとえば水性または部分的に水性である液体担体と共に投与される。または、組成物はリポソーム(たとえば、陽イオンまたは陰イオンリポソーム)に会合する。
【0140】
IL-17受容体に対する中和または機能遮断抗体(Il-17R)は、ヒトIL-17Rアフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF 177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rアロフィコシアニンモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177A、R&D Systems)、ヒトIL-17Rビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF 177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rフルオレセインモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177F、R&D Systems)、ヒトIL-17Rモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号MAB 177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rモノクローナル抗体(クローン133621)(カタログ番号MAB 1771、R&D Systems)、ヒトIL-17Rフィコエリスリンモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB 177P、R&D Systems)、マウスIL-17Rアフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF448A、R&D Systems)、マウスIL-17Rビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF448、R&D Systems)、またはマウスIL-17Rモノクローナル抗体(クローン105828)(カタログ番号MAB448、R&D Systems)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。
【0141】
IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、1つまたは複数のマウス抗IL-17A(7172、7173、7175、7177、8171、7371、7971、および7370が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)、またはマウス抗IL-17F(7471および8471が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、1つまたは複数のヒト抗IL-17A(7178、7179、8179、7176、7976、および7876が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、またはヒト抗IL-17F、8479が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。好ましくは、IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、機能的等級の精製抗ヒトIL-17A抗体(クローン:eBio64CAP17、カタログ番号16-7178、eBioscience)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。
【0142】
または、組成物は、IL-17受容体複合体、IL-17の任意の合成中間体、またはIL-17受容体複合体に結合するイントラボディを含んでもよい。組成物は、またはもしくは加えて、IL-17に結合するIL-17受容体複合体の可溶性断片を含んでもよい。
【0143】
例示的なポリペプチドには、IL-17機能を破壊することができる融合体および/またはキメラタンパク質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、組成物は、遺伝子発現を抑制するために、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
【0144】
IL-17サイトカインまたはIL-17受容体を標的とする企図される機能遮断抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナルである。企図される抗体は、IL-17またはIL-17受容体ポリペプチド内の1つまたは複数の配列に結合する。抗体はまたはイントラボディである。いくつかの態様において、抗体は、一本鎖、ヒト化、組み換え型、またはキメラ抗体を含む。1つまたは複数の化合物が、この抗体に直接または間接的にコンジュゲートされる。
【0145】
IL-17のアンタゴニストおよび/またはその受容体複合体は、IL-1のアンタゴニストおよび/またはその受容体と同時または連続して投与される。
【0146】
ヒトIL-17は、NCBIアクセッション番号NM_002190のmRNA配列によってコードされ、またはIL-17Aとも呼ばれる。ヒトIL- 17は、NCBIアクセッション番号NM_002190のアミノ酸配列によってコードされ、またはIL-17Aとも呼ばれる。ヒトIL-17Bは、NCBIアクセッション番号NM_014443のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Bは、NCBIアクセッション番号NM_014443のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Cは、NCBIアクセッション番号NM_013278のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Cは、NCBIアクセッション番号NM_013278のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Dは、NCBIアクセッション番号NM_138284のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Dは、NCBIアクセッション番号NM_138284のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Eは、NCBIアクセッション番号AF305200のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Eは、NCBIアクセッション番号AF305200のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Fは、NCBIアクセッション番号NM_052872のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Fは、NCBIアクセッション番号NM_052872のアミノ酸配列によってコードされる。
【0147】
IL-17受容体アンタゴニスト(IL-17RA)は、NCBIアクセッション番号NM_014339のmRNA配列によってコードされる。IL-17RAは、NCBIアクセッション番号NMJ4339のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RBは、NCBIアクセッション番号NM_018725のmRNA配列によってコードされる。IL-17RBは、NCBIアクセッション番号NM_018725のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_153461のmRNA配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_153461のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NMJ53460のmRNA配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NM_l53460のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種3は、NCBIアクセッション番号NM_032732のmRNA配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種3は、NCBIアクセッション番号NM_032732のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RD、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NMJ)01080973のmRNA配列によってコードされる。IL-17RD、転写物1は、NCBIアクセッション番号NMJ)O1080973のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RD、転写物2は、NCBIアクセッション番号NM O1 7563のmRNA配列によってコードされる。IL-17RD、転写物2は、NCBIアクセッション番号NM_017563のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_153480のmRNA配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_l53480のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NM_153481のmRNA配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NM_153481のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種5は、NCBIアクセッション番号NM_153483のmRNA配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種5は、NCBIアクセッション番号NM_153483のアミノ酸配列によってコードされる。
【0148】
角膜ニューロパシーに及ぼすIL-17遮断剤の効果を調べるために、当技術分野において認識されるマウスドライアイ疾患(DED)モデルを用いた。先に記述したように、環境制御室において乾燥環境および全身スコポラミンに曝露することによって、雌性C57BL/6マウスにおいてDEDを誘導した(図8A)。9〜10日間DEDの誘導後、ホールマウント角膜を神経特異的β-チューブリン-IIIに関して免疫染色した後、落射蛍光顕微鏡写真を得て、自動Matlabに基づくソフトウェアにおいて神経の定量を行った。神経線維の長さおよび神経線維の蛇行性(神経再生/神経変性の指標)を以下に記述するように分析した。
【0149】
IL-1Raおよび抗IL17が含まれる抗サイトカイン治療はいずれも、DED角膜において神経線維の喪失を防止した(図8B)。対照的に、潤滑性点眼液(「ビヒクル」)またはCsAを用いると、正常角膜の線維長と比較して線維長の〜2倍の減少を示し、DEDに対する標準処置(潤滑剤または局所シクロスポリン)が神経損傷に対して神経を有意に保護しないことを示唆している。同様に、IL-1Raおよび抗IL17治療は、正常角膜において認められたレベルと類似の神経線維蛇行レベルを維持するが、ビヒクルまたはCsAによって処置したDED角膜は正常と比較して神経線維蛇行性の〜2倍増加を示す(図8C)。
【0150】
これらの結果は、局所適用IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)を用いて直接の、または抗IL17抗体を用いてIL-17(標的細胞による強力なIL-1βの誘導物質)を遮断することによる間接的なインターロイキン-1(IL-1)の遮断が、神経喪失(線維長)および神経蛇行性の症状が含まれる角膜ニューロパシーを阻害することを証明している。IL-1およびIL-17を遮断する処置は、神経線維の長さを促進するが、神経線維の蛇行性を抑制する。
【0151】
上記の神経蛇行性データおよび神経線維長のデータは、DEDに関する従来の治療(局所適用の潤滑性の涙液軟膏または局所適用シクロスポリン-A)が、神経損傷に対して有意に神経を保護しないことを示している。DEDに関連する眼表面の炎症はしばしば、典型的に0.1%プレドニゾロンなどのステロイドによって低減される涙液の神経生長因子レベルの上昇に相関するが、上記の結果は、そのような治療が角膜神経再生の誘導に対して無効であることを示している。このように、そのような免疫抑制剤(たとえば、シクロスポリンA(たとえば、Restasis(登録商標))などのマクロライドまたはプレドニゾロンなどのコルチコステロイド)の投与は、好ましくは本明細書において記述される組成物と共に投与されない。
【0152】
実施例7:IL-1およびIL-17の遮断の併用治療は角膜神経再生を増強する
IL-1は、T細胞活性化の上流の炎症プロセスの主要な開始物質であり、IL-17分泌T細胞の誘導または拡大を促進することによって炎症の促進において非常に重要な役割を果たす。IL-1およびIL-17は、相乗的に作用して、インビボで互いに分泌を増強する。
【0153】
IL-17遮断処置を、IL-1遮断処置と共に角膜に適用する。IL-1とIL-17遮断処置の同時投与は、損傷角膜に関連する神経線維の量が、無処置角膜と比較して増加するように、角膜神経再生を増強する、IL-1とIL-17遮断処置の同時投与は、免疫媒介角膜神経損傷の症例において角膜神経再生を相乗的に増強する。
【0154】
実施例8:ヒトにおける眼表面炎症障害におけるIL-1Raの局所適用の効能
IL-1Raオープンラベル試験を利用して、ヒトにおける眼表面炎症障害の処置におけるIL-1Raの効能を決定した。患者70人を試験に登録して、以下のような毎月の調査に様々な数の患者を用いた:1ヶ月(患者44人)、3ヶ月(患者37人)、5ヶ月(患者22人)、および7ヶ月(患者17人)。これらの患者はいずれも、グレード3マイボーム腺分泌(圧出後に分泌物が形状を保持する)、グレード4眼瞼縁疾患(眼瞼縁および皮膚の双方の顕著なびまん性の発赤)、またはグレード4の結膜充血(眼瞼および/または眼球結膜の顕著な暗赤色)として定義される重度のマイボーム腺機能障害(MGD、後部眼瞼炎とも呼ばれる)を有しなかった。注目すべきことに、MGD/マイボーム腺機能障害のみを有する患者は、有意な角膜ニューロパシーを発症しない(Foulks and Bron, 2003 Ocul Surf, 107-26)。
【0155】
図9Aおよび9Bに示されるように、角膜染色を利用して、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面疾患を測定した。具体的に、フルオレセインの適用を用いて角膜における上皮損傷を検出して、各患者の疾患の重症度をオックスフォード尺度を用いて等級付けした。データは、IL-1受容体アンタゴニストを用いたIL-1の局所適用遮断によって、染色(疾患の重症度)が有意に低減することを証明する。具体的に、ベースラインからIL-1受容体アンタゴニストによる処置後7ヶ月目の追跡調査までで有意な変化が観察された。
【0156】
図10Aおよび10Bに描写されるように、リサミングリーン染色を利用して結膜上皮に対する損傷を検出して、各患者の疾患を標準化オックスフォード尺度を用いて等級付けした。ベースラインからIL-1受容体アンタゴニストによる処置後7ヶ月間の追跡調査までのあいだに、眼瞼間(結膜)染色(疾患の重症度)の有意な低減が観察された。眼表面の疾患指数(OSDI)は、ドライアイ疾患症状の重症度および視力関連機能に対する効果を測定するための妥当性が確認された道具である。スコアは0(症状なし)から100(全てのカテゴリーにおける最大の症状および視力機能障害)の範囲であり、より高いスコアはより大きい無能力障害を表す。OSDIを、IL-1受容体アンタゴニストによって処置した各患者について決定した(図11Aおよび11B)。OSDIスコアは、ベースラインからIL-1受容体アンタゴニストによる処置後7ヶ月間の追跡調査までで有意に減少した。
【0157】
シルマー試験は、患者の眼によって産生された涙液量を測定する。試験は、下眼瞼と眼球のあいだに特殊な目盛り付きの濾紙片を5分間置くことによって行われる。図12に示されるように、涙液量はベースラインでの6 mm未満から追跡調査の7ヶ月目での〜9 mmまで増加した。データは、IL-1受容体アンタゴニストによるIL-1の局所適用遮断によってより高い涙液分泌に向けての全体的な傾向を示唆する。
【0158】
図13は、局所適用ビヒクルまたは局所適用IL-1Raによる処置の前後でのドライアイ疾患を有する患者の角膜の共焦点顕微鏡写真を示す。IL-Ra処置を1ヶ月行うと、角膜神経再生(白色の矢印で示す)を促進した。対照的に、ビヒクル(潤滑性の点眼剤)処置を1ヶ月行っても、角膜神経再生を促進しなかった。これらのデータは、ドライアイ疾患において病原性の役割を有するサイトカイン(IL-1、IL-17)を選択的に遮断すると、標準的な処置では観察されなかった神経保護レベルを提供する、というマウス(上記)で得られた観察を支持する。
【0159】
他の態様
本発明を、その詳細な説明と共に記述してきたが、前述の説明は本発明を例証すると意図され、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限すると意図されない。他の局面、長所、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0160】
本明細書において参照した特許および科学文献は、当業者にとって利用可能な知識を確立する。本明細書において引用された全ての米国特許および公開されたまたは公開されていない米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において引用された公開された外国特許および特許出願は全て、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された他の全ての公表された参考文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0161】
本発明は、その好ましい態様を参照して詳しく示し、記述してきたが、本発明の形および詳細に様々な変更を行ってもよく、それらも添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲に含まれることは当業者によって理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2009年1月9日に提出された米国特許出願第61/143,561号の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般的に眼科学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
角膜上皮障害によって、慢性的な眼表面の疾患が起こりうる。それによって眼表面の疾患が起こる機序は解明されておらず、そのために、慢性的な眼表面の疾患の症状よりむしろその原因に取り組む処置の開発は、不可能ではないにしても難しい。そのため、これらの機序の発見、処置組成物および処置法の開発は当技術分野において長く必要であると思われてきた。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、IL-1阻害によって角膜神経再生が起こるという意外な発見に基づいている。その上、本発明者らは、角膜神経に対する損傷を低減させ、かつ角膜神経を再生することによって神経栄養性ドライアイ疾患を処置するための組成物および方法を提供する。角膜内での神経損傷および免疫活性の増加は、角膜上皮障害と共に事象の悪循環を完成させ、これは本明細書において記述される処置の介入がなければ、それ自身永続して慢性的な眼表面の障害に至る。神経栄養性ドライアイ(ニューロパシー状態)は、角膜神経組織の低減または喪失によって他のタイプのドライアイとは区別される。たとえば、神経栄養性ドライアイは、正常な状態と比較して角膜神経組織または角膜神経線維長の少なくとも約10%、25%、50%、75%、またはそれより多くの低減または喪失を特徴とする。
【0005】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体において角膜神経を保護または処置するための方法を提供する:(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性サイトカイン(たとえば、IL-1またはIL-1とIL-17の併用)の活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強して、神経の形態または密度の異常の発生を低減させる段階。好ましくは、被験体は、マイボーム腺機能障害(MGD)を有しない、たとえば後部眼瞼炎を有しないと診断されている。
【0006】
上記の方法の1つの局面において、被験体は、先天性欠損、疾患、外傷、医学的または外科的技法に起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される。上記の方法のもう1つの局面において、被験体は、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、先天性欠損、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、末梢ニューロパシー、または糖尿病性ニューロパシーに起因する角膜神経損傷または喪失を有すると同定される。
【0007】
本発明はさらに、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜神経の損傷または喪失を最小限にするまたは予防するための方法を提供する:(a)角膜神経損傷または喪失を発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)神経損傷または喪失が発生する前に、炎症性インターロイキン-1またはインターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって、神経変性を減少させて、神経の形態または密度の異常の発生を低減または防止する段階。
【0008】
上記の方法の1つの局面において、被験体は、疾患、外傷、または医学的技法に起因しうる角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される。上記の方法のもう1つの局面において、被験体は、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス角膜炎、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、末梢ニューロパシー、または糖尿病性ニューロパシーに起因しうる角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される。
【0009】
ある態様において、上記の方法にはさらに、角膜神経損傷または喪失の徴候または症状を有する被験体を同定する段階が含まれる。たとえば、角膜神経損傷または喪失の兆候は、角膜の神経支配もしくは感覚の減少、角膜を支配する神経線維もしくは神経束の数の低減、角膜を支配するニューロンの死、神経伝達物質放出の減少もしくは喪失、神経生長因子放出の減少もしくは喪失、異常な流涙反射、異常な瞬目反射、異常な神経形態、異常な神経発芽の出現、異常な蛇行、ビーズ様神経形成の増加、神経線維束が細くなること、または神経線維束が太くなることである。たとえば、角膜神経損傷または喪失の症状は、異常な涙液産生もしくは乾燥、異常な瞬目、および焦点を合わせることが困難または焦点を合わせる能力の喪失、視力低下もしくは喪失、または角膜感受性の減少もしくは喪失である。
【0010】
上記の方法の1つの局面において、活性には、IL-1受容体に対する炎症性のIL-1サイトカインの結合が含まれる。IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する上記の方法の組成物には、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列が含まれる。組成物には任意で、IL-17活性の阻害剤、たとえばIL-17のその受容体に対する結合を阻害する化合物、またはIL-6の阻害剤もしくはIL-23の阻害剤などの、Tヘルパー-17/IL-17応答を生成するために極めて重要なサイトカインを阻害する化合物が含まれる。好ましくは、組成物にはシクロスポリンA(CsA)などの一般的な広域スペクトルの免疫抑制剤は含まれないが、それは炎症のそのような非特異的抑制剤が角膜神経を再生しないためである。
【0011】
本明細書において記述される方法の各々において、組成物は、0.1〜10%(重量/容積、またはw/v)の濃度で存在する。または、組成物は、1.0%(mg/ml)、1.5%(mg/ml)、2.0%(mg/ml)、2.5%(mg/ml)、3.0%(mg/ml)、3.5%(mg/ml)、4.0%(mg/ml)、4.5%(mg/ml)、5.0%(mg/ml)、5.5%(mg/ml)、6.0%(mg/ml)、6.5%(mg/ml)、7.0%(mg/ml)、7.5%(mg/ml)、8.0%(mg/ml)、8.5%(mg/ml)、9.0%(mg/ml)、9.5%(mg/ml)、10.0%(mg/ml)、またはそのあいだの任意の点の百分率の濃度で存在する。好ましい態様において、組成物は、2.5%(mg/ml)または5%(mg/ml)の濃度で存在する。たとえば、組成物は、25 mg/mlまたは50 mg/mlの濃度で存在する。例示的な製剤は、2.5%(25 mg/ml)または5%(50 mg/ml)の濃度で存在する阻害組成物を含有する。
【0012】
上記の方法の組成物の形態は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である。組成物は局所適用投与される。好ましい態様において、上記の方法には、全身投与または非眼組織への実質的な散布は含まれない。上記の方法のある態様において、組成物には、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物がさらに含まれる。例示的な粘液溶解剤はN-アセチルシステインである。好ましい態様において、組成物にはさらに、カルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0013】
上記の方法の組成物は、炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。ある態様において、上記の方法の組成物には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。またはもしくは加えて、上記の方法の組成物には、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。
【0014】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を低減または処置するための方法を提供する:(a)角膜リンパ管新生を有する被験体を同定する段階、および(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、角膜リンパ管新生を低減または処置する段階。
【0015】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を最小限にするまたは防止するための方法を提供する:(a)リンパ管新生の発現が発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での形成能もしくは伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、角膜リンパ管新生を最小限にするまたは防止する段階。
【0016】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を低減または処置するための方法を提供する:(a)免疫の誘導を有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、免疫の誘導を低減または処置する段階。
【0017】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を最小限にするまたは防止するための方法を提供する:(a)免疫発生のリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、免疫の誘導を最小限にするまたは防止する段階。
【0018】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態を低減または処置するための方法を提供する:(a)自己免疫状態を有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、自己免疫状態を低減または処置する段階。
【0019】
本発明は、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態の発症を最小限にするまたは予防するための方法を提供する:(a)自己免疫状態を発症するリスクを有する被験体を同定する段階;および(b)リンパ管が、角膜組織とリンパ節とのあいだの免疫細胞の輸送、および免疫応答の開始を可能にする、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発症前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害して、自己免疫状態の発症を最小限にするまたは予防する段階。
【0020】
上記の方法のある態様において、被験体はドライアイ関連眼表面疾患を有する。またはもしくは加えて、被験体は、ドライアイ関連眼表面疾患を発症するリスクを有する。
【0021】
リンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能は、角膜組織内でのまたは非角膜組織(隣接する辺縁部などの)からのいずれかのリンパ管の角膜組織への、可能性があるもしくは実際の生長、伸張、同化、分離、または再構築を包含する。「リンパ管が免疫細胞の輸送を許容する」という句は、角膜組織と非角膜組織、好ましくはリンパ節またはリンパ系区画内の他の部位とのあいだの免疫細胞の非方向性のまたは双方向性の移動または沈着を記述する。例示的な免疫細胞には、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、単球、およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0022】
上記の方法の1つの局面において、活性には、IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合が含まれる。IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する上記の方法の組成物には、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列が含まれる。
【0023】
上記の方法の組成物の形態は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である。組成物は、局所適用投与される。好ましい態様において、上記の方法には、全身投与または非眼組織への実質的な散布は含まれない。上記の方法のある態様において、組成物にはさらに、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物が含まれる。例示的な粘液溶解剤はN-アセチルシステインである。好ましい態様において、組成物にはさらに、カルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0024】
上記の方法の組成物は、炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。ある態様において、上記の方法の組成物には、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。またはもしくは加えて、上記の方法の組成物には、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。
【0025】
上記の方法のある態様において、活性にはIL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合が含まれる。さらに、IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する上記の方法の組成物には、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列が含まれる。ある態様において、上記の方法の組成物は、0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する。または、組成物は、1.0%(mg/ml)、1.5%(mg/ml)、2.0%(mg/ml)、2.5%(mg/ml)、3.0%(mg/ml)、3.5%(mg/ml)、4.0%(mg/ml)、4.5%(mg/ml)、5.0%(mg/ml)、5.5%(mg/ml)、6.0%(mg/ml)、6.5%(mg/ml)、7.0%(mg/ml)、7.5%(mg/ml)、8.0%(mg/ml)、8.5%(mg/ml)、9.0%(mg/ml)、9.5%(mg/ml)、10.0%(mg/ml)、またはそのあいだの任意の点の百分率の濃度で存在する。好ましい態様において、組成物は、2.5%(mg/ml)または5%(mg/ml)の濃度で存在する。もう1つの好ましい態様において、組成物は、25 mg/mlまたは50 mg/mlの濃度で存在する。さらに好ましい態様において、組成物は、2.5%(25 mg/ml)または5%(50 mg/ml)の濃度で存在する。
【0026】
本発明の1つの局面において、上記の方法の組成物の形態は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である。
【0027】
上記の方法の組成物は局所適用投与される。上記の方法には、組成物の全身投与または非眼組織への実質的な散布は含まれない。
【0028】
ある態様において、上記の方法の組成物には、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、N-アセチルシステイン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物がさらに含まれる。好ましくは組成物にはさらに、N-アセチルシステインまたはカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0029】
または、上記の方法の組成物は、2型IL-1受容体(IL-1R2)をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または増強する。IL-1R2は、IL-1に結合して、IL-1R1の機能を阻害することができる。このように、1つの態様において、IL-1R2機能の増強は、それによってIL-1R1活性が阻害されるもう1つの機序を提供する。この同じ態様において、IL-1R2のアンタゴニスト、具体的にIL-1Ra3の阻害は、IL-1R1機能を阻害する。このように、組成物単独、またはIL-1R2のエンハンサーとの併用は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチド、SEQ ID NO:22または23の転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する。または、IL-1R2受容体機能がIL-1R1の活性を増強する態様において、組成物は、IL-1R2阻害を増強するためにIL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの1つまたは複数の領域を含有する。さらに、この態様の組成物は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチド全体を含む。
【0030】
本発明の方法の組成物には、IL-1受容体のアクセサリタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子が含まれる。たとえば、このIL-1受容体アクセサリタンパク質は、IL-1およびIL-1R1に直接結合して、SEQ ID NO:24または26のポリヌクレオチド配列、およびSEQ ID NO:25または27のポリペプチド配列によって定義される、IL-1RAPである。IL-1RAPは、IL-1R1からのシグナル伝達にとって必要なシグナル伝達複合体に属する。このように、IL-1RAPの阻害はIL-1R1機能に拮抗する。
【0031】
もう1つの態様において、本発明の方法の組成物には、IL-1受容体に対する関連キナーゼをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子が含まれる。たとえば、IL-1受容体関連キナーゼは、IRAK1である。IRAK1は、増大する炎症応答に関連する転写事象に至る下流のシグナル伝達エフェクターであり、SEQ ID NO:28、30、または32のポリヌクレオチド配列およびSEQ ID NO:29、31、または33のポリペプチド配列によって定義される。IL-1がIL-1受容体に結合すると、IRAK1は受容体複合体に動員されて、過剰リン酸化され、過剰リン酸化IRAK1およびTRAF6からなる新規タンパク質複合体の形成に関与する。このIRAK1/TRAF6複合体の形成は、核因子-κB(NF-κB)の腫瘍壊死因子(TNF)関連因子6(TRAF6)媒介活性化にとって必須である。このように、先に描写されたシグナル伝達カスケードの任意の成分の発現または機能の改変により、IL-1受容体に対するIL-1の結合事象が示される。
【0032】
本発明の方法の組成物には、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、IL-17、またはIRAK1に結合するかまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。その上、組成物には、遺伝子発現を抑制させるために、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる。局所適用投与のために適合される例示的な組成物には、アナキンラ/Kineret(登録商標)(組み換え型ヒトIL-1Ra、rhIL-1Ra、ならびにSEQ ID NO: 15および16)、IL-1Rアンチセンスオリゴマー(米国特許第2005033694号)、IL-lRa様核酸分子(Amgen、米国特許第2001041792号)、および可溶性IL-1Rアクセサリ分子をコードするポリヌクレオチド(Human Genome Sciences、米国特許第6974682号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0033】
本発明の方法の組成物には、遺伝子発現を抑制するために角膜への局所適用投与のために適合されたマイクロRNA分子が含まれる。ヒトIL-1αに結合する例示的なmiRNAには、miR-30c(SEQ ID NO: 34)、miR-30b(SEQ ID NO: 35)、miR-30a-5p(SEQ ID NO: 36)、およびmiR-24(SEQ ID NO: 37)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ヒトIL-1R1に結合する例示的なmiRNA(および対応する配列)には、miR-135b(SEQ ID NO: 38)、miR-326(SEQ ID NO: 39)、miR-184(SEQ ID NO: 40)、miR-214(SEQ ID NO: 41)、miR-203(SEQ ID NO: 42)、miR-331(SEQ ID NO: 43)、およびmiR-205(SEQ ID NO: 44)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0034】
角膜への局所適用投与のために適合される例示的なポリペプチドには、アナキンラ/Kineret(登録商標)(組み換え型ヒトIL-1Ra、rhIL-1Ra、ならびにSEQ ID NO: 15および16)、AF12198(ヒトIL-1Rlに結合する、Ac-FEWTPGWYQJYALPL-NH2、式中Jは、非天然アミノ酸である2-アゼチジン-l-カルボン酸を表す、SEQ ID NO: 45)、IL-1RおよびIL-1RAPペプチドアンタゴニスト(米国特許第20060094663号)、IL-1Rアクセサリ分子ポリペプチド(米国特許第20050171337号)、IL-1Raペプチド(米国特許第2005105830号)、およびIL-lRa関連ペプチド(Amgen、米国特許第2001042304号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0035】
角膜への局所適用投与のために適合される例示的な抗体には、IL-1 TRAP(IL1R-gp130とhIgGFcとの直列融合二本鎖タンパク質、Regeneron、米国特許第6,927,044号)、抗IL-1α(米国特許第20030026806号)、抗IL-1β(米国特許第20030026806号およびYamasaki et al. Stroke. 1995; 26:676-681)、およびヒト化モノクローナル抗IL-1R(Amgen、米国特許第2004022718号およびRoche、米国特許第2005023872号)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0036】
低分子は有機または無機である。例示的な有機低分子には、脂肪族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、有機酸、エステル、単糖類および二糖類、芳香族炭化水素、アミノ酸、および脂質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。例示的な無機低分子は、微量金属、イオン、フリーラジカル、および代謝物を含む。または、低分子阻害剤は、断片、低分子部分、またはより長いアミノ酸鎖からなるように、酵素の結合ポケットを塞ぐように合成的に操作されうる。典型的に、低分子は1キロダルトン未満である。角膜への局所投与のために適合される例示的な低分子は、ZnPP(IL-1遮断剤亜鉛プロトポルフィリン、天然に存在する代謝物、Yamasaki et al. Stroke. 1995; 26:676-681)である。
【0037】
本発明の方法の組成物には、薬学的に適当な担体と共に局所適用投与されるIL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、IL-17、またはIRAK1に結合するまたはその機能を改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子が含まれる。ポリヌクレオチド組成物のための送達法には、リポソーム、受容体媒介送達系、裸のDNA、ならびに中でもヘルペスウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどの工学操作されたウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されるわけではない。ポリヌクレオチド組成物は、薬学的に許容される液体担体、たとえば水性または部分的に水性である液体担体と共に局所適用投与される。または、組成物内のポリヌクレオチド配列は、リポソーム(たとえば、陽イオンまたは陰イオンリポソーム)に会合する。
【0038】
低分子DNAまたはRNA配列を細胞に送達するために多くの方法が開発されている;たとえばポリヌクレオチド分子を、組織部位上で直接接触させてもよく、または所望の細胞タイプを特異的に標的とするように設計された改変ポリヌクレオチド分子(たとえば、標的細胞表面上に発現された受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結される配列)であってもよい。
【0039】
好ましいアプローチは、低分子ポリヌクレオチド配列が強いポリメラーゼIIIまたはポリメラーゼIIプロモーターの制御下に置かれる組み換え型DNA構築物を用いる。そのような構築物を用いることによって、本発明の核酸の内因性の転写物と相補的塩基対を形成して、それによって内因性のmRNA転写物の翻訳を防止するポリヌクレオチドの十分量の転写が起こるであろう。本発明は、鋳型として相補鎖を用いる低分子ポリヌクレオチドの構築を包含する。たとえば、ベクターが細胞に取り込まれて、二本鎖RNA分子に対する干渉RNAまたは前駆体の転写を指示するように、インビボでベクターを導入することができる。または、低分子ポリヌクレオチド転写物の鋳型を、細胞タイプ特異的プロモーターまたは他の調節エレメントの転写制御下に置く。よって、局所適用投与された組成物が角膜を超えて拡散または吸収されても、有害なまたは全身性の副作用を引き起こさない。ベクターは、それが所望のポリヌクレオチドを産生するために転写されうる限り、エピソームのままであるか、または染色体に組み入れられるようになる。
【0040】
ベクターは、当技術分野において標準的な組み換えDNA技術によって構築される。ベクターは、哺乳動物細胞における複製および発現のために用いられるプラスミド、ウイルス、または当技術分野において公知のその他でありうる。低分子ポリヌクレオチドをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において作用することが当技術分野において公知である任意のプロモーターの制御下に置かれうる。プロモーターは誘導型または構成的である。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター領域(Bernoist et al, Nature 290:304, 1981);ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復に含有されるプロモーター(Yamamoto et al., Cell, 22:787-797, 1988);ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:1441, 1981);またはメタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature, 296:39, 1988)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0041】
ポリペプチド組成物は、細胞膜を超えての輸送を可能にするために、単独でまたは受容体媒介送達系と共にリポソームに結合される。ポリペプチド組成物は可溶性であるか、または膜結合型である。例示的な受容体媒介送達系は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症およびHCV媒介薬物送達系の場合に観察されるように、低密度または超低密度リポタンパク質を含有する粒子または小胞と、低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)との融合を伴う。
【0042】
本発明の方法の組成物には、以下の1つまたは複数に対して作製された、1つまたは複数の細胞外または細胞内抗体(イントラボディとも呼ばれる)が含まれる:IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1。細胞外抗体は、薬理学的に適当な水性または非水性担体と共に局所適用投与される。細胞内抗体をコードする配列を、ウイルスまたは哺乳動物発現ベクターにサブクローニングして、細胞膜を超えての輸送を容易にするために親油性装置に充填して、薬理学的に適当な水性または非水性担体と共に角膜に局所適用投与する。細胞膜の内部に入ると、宿主細胞機構が、イントラボディの暗号を転写、翻訳、および加工して、IL-1α、IL-1b、IL-1Ra、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1を標的とする細胞内機能遮断抗体を生成する。分泌型分子の場合、細胞内抗体は、標的タンパク質の翻訳後修飾または分泌を防止する。膜結合型分子の場合、細胞内抗体は、IL-1サイトカインが受容体に係合する際の細胞内シグナル伝達事象を防止する。
【0043】
1つの好ましい態様において、本発明の方法には、IL-1α、IL-1β、または双方のサイトカインの組み合わせの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または受容体結合を阻害するための手段を有する組成物が含まれる。1つの態様において、組成物は、SEQ ID NO:1によって定義されるIL-1αmRNA転写物の領域に結合することができるポリヌクレオチドを含む。もう1つの態様において、組成物は、SEQ ID NO:3によって定義されるIL-1βmRNA転写物の領域に結合することができるポリヌクレオチドを含む。
【0044】
もう1つの態様において、組成物は、天然に存在するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の量を増加させることができる。組成物は、IL-1Ra遺伝子の領域に結合するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、もしくは低分子、SEQ ID NO:5、7、9、11、もしくは13によって定義されるmRNA転写物、SEQ ID NO:6、8、10、12、もしくは14によって定義されるIL-1Raのポリペプチドイソ型、またはSEQ ID NO:16によって定義される組み換え型IL-1Raタンパク質を含む。または、組成物は、IL-1Ra遺伝子の領域または全体をコードするmRNA転写物またはポリペプチドを含有する。
【0045】
組成物には、IL-1αまたはIL-1βの受容体、特にIL-1R1のアンタゴニストまたは逆アゴニストが含まれる。この態様において、アンタゴニストは、アゴニストであるIL-1の機能を阻害するIL-1Rの結合パートナーもしくはリガンドとして定義され、または受容体へのその結合を遮断することによって逆アゴニストとして定義される。逆アゴニストは、アゴニスト、たとえばIL-1と同じIL-1R結合部位に結合するが、反対の薬理学的効果を発揮する分子として定義される。組成物は、SEQ ID NO:17〜21のポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列によって定義されるIL-1R1の領域に結合するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含有する。代わりの態様において、組成物には、IL-1Rの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、リガンド結合、またはIL-1Rのアクセサリタンパク質(IL-1RAP)との会合を阻害する手段を有する分子が含まれる。IL-1RAPは、SEQ ID NO:24または26のポリヌクレオチド配列およびSEQ ID NO:25または27のアミノ酸配列によって定義される。
【0046】
もう1つの好ましい態様において、組成物には、純粋型または混合物の成分としてのヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストが含まれる。ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストは、組成物を角膜に接触させる前に、緩衝生理食塩液、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸(HA)、または他のビヒクルと混合される。これらの混合物において、ヒト組み換え型IL-1Rアンタゴニストは、投与される総容量の少なくとも0.1%、2.0%、2.5%、5%、または多くて10%を含む。好ましい水性製剤は、2〜2.5%の精製アンタゴニストを含有する。精製されたとは、無関係なポリヌクレオチド、ポリペプチド、細胞オルガネラ、または脂質の非存在下でのアンタゴニストとして定義される。精製されたとは、ヒト被験体に対する投与のために安全である、たとえば感染物質または毒性物質を欠如する無菌性の程度を定義する。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは全て、精製および/または単離される。本明細書において用いられるように、「単離された」、または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、組み換え技術によって産生された場合に他の細胞材料もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。精製化合物は、少なくとも60重量%(乾燥重量)の関心対象化合物である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、および最も好ましくは少なくとも99重量%の関心対象化合物である。純度は、任意の適当な標準法によって、たとえばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定される。
【0048】
角膜損傷の徴候もしくは症状または異常な神経形態は、中心角膜のインビボ共焦点顕微鏡(IVCM)、または角膜神経損傷を検出することができる他のイメージングもしくは診断装置を用いて検出、分析、検査、および評価される。IVCMのための例示的な装置には、Rostock Cornea Moduleを有するHeidelberg Retina Tomograph 3(HRT3/RCM)(Heidelberg Engineering GMBH)およびConfoscan 4 Confocal Microscope(Nidek, Inc.)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。上記の方法のある態様において、IVCMは様々な角膜層における神経線維の形状および数を検出、分析、検査、および評価するためのみならず、平行に走る、二分する、分枝する、および相互接続する神経線維束を識別するために用いられる。またはもしくは加えて、IVCMは、神経の総数の変化、神経の長さの変化、神経密度、異常な神経発芽の存在または非存在、異常な神経線維の蛇行の存在または非存在、ビーズ様神経形成の数または形態の変化、および神経線維束が細くなること対太くなることを検出、分析、検査、および評価するために用いられる。本発明の方法の1つの局面において、IVCMは神経再生を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。またはもしくは加えて、IVCMは神経変性を検出、分析、検査、および評価するために用いられる。例として、IVCMは、健康な個体の基底下領域内での画像あたり角膜神経束6〜8個の平均値を示すために、および光受容器角膜切除の結果として神経損傷を受けた患者における神経再生を示すために用いられている。
【0049】
本発明はまた、以下の段階が含まれる、それを必要とする被験体における角膜神経損傷を低減するおよび/または角膜神経再生を増強するための方法も提供する:(a)角膜神経損傷を有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強して、神経形態の異常の発生を低減させて、および角膜神経損傷を低減させる段階。
【0050】
本発明はまた、以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経を保護または再生するための方法も提供する:(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物および炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強して、神経形態または密度の異常の発生を低減させる段階。この併用治療によって、角膜神経組織の再生において相乗効果が得られる。
【0051】
刊行物、米国特許および出願、Genbank/NCBIアクセッション番号、および本明細書において引用される他の全ての参考文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1Aは、Balb/cマウスの正常角膜における基底上皮細胞のレベルでの終末神経分枝系の程度を示す顕微鏡写真である。図1Bは、Balb/cマウスの正常角膜における上皮壊死組織切除後にビヒクルによって7日間処置後の終末神経突起の顕微鏡写真であり、基底上皮細胞のレベルでの非常にわずかな神経再生活性を示す。図1Cは、Balb/cマウスの正常角膜における上皮壊死組織切除後の2.5%局所適用IL-1Raによる7日間の処置後の再生終末神経突起の顕微鏡写真であり、基底上皮細胞のレベルで有意な数の再生神経を示し、これらの神経密度は正常角膜で認められる密度に近い(図1A)。
【図2】ドライアイ患者における2.5%IL-1Raによる1ヶ月間の処置の前(左)および後(右)での基底下角膜神経の一連のインビボ共焦点画像(Confoscan 4;Nidek Technologies)であり、ベースラインと比較して処置後に神経密度の25%の増加を示す。
【図3】無処置動物と比較してIL-1Raの様々な濃度によって処置したマウスドライアイモデルにおいて観察された角膜フルオレセイン染色の差の百分率のグラフである。グラフが示すように、IL-1Ra(1%、2.5%、および5%)の全ての濃度が角膜フルオレセイン染色スコアを減少させることができ、角膜フルオレセイン染色の%低減は、5%濃度で局所適用IL-1Raを与えられた群では適度により高かった。
【図4】無処置動物と比較してIL-1Raの様々な製剤によって処置したマウスドライアイモデルにおいて観察された角膜フルオレセイン染色の差の百分率のグラフである。グラフが示すように、角膜フルオレセイン染色の%低減は、10%N-アセチルシステインと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群、および1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群において最も高かった。
【図5】IL-1RIから伝達されるシグナル伝達経路およびこれらの細胞内シグナルの運搬に関係する下流のエフェクターの概略図である(BioCartaのウェブサイトから再現した図面)。
【図6】42歳男性被験体の健康な角膜における基底下神経線維のインビボ共焦点画像(Confoscan 4; Nidek, Inc.)である。神経束は、上下方向に好ましい方向を示す。神経線維がほぼ直線であるかまたはわずかに蛇行しているように見えることに注意されたい。
【図7】眼部帯状疱疹を有する56歳女性被験体の角膜における基底下神経線維のインビボ共焦点顕微鏡画像(Confoscan 4; Nidek, Inc.)である。正常角膜と比較して神経束の数が有意に減少していることに注目されたい。この顕微鏡写真はまた、高い蛇行性、増加したビーズ様神経形成、および異常な分枝パターンなどの他の神経異常の徴候も示す。
【図8A】正常およびドライアイ疾患(DED)マウスの中心角膜における神経線維分布を示す一連の代表的な顕微鏡写真である。白い矢印はドライアイマウスの角膜における神経線維の喪失(低減された神経の長さ)を示す。
【図8B】ビヒクル、IL-1Ra、抗IL17抗体、およびシクロスポリン-1(CsA)によって局所適用処置したDEDマウスにおける角膜神経線維の長さの(水平方向の黒い矢印として示される正常角膜からの)変化倍率を示す棒グラフである。
【図8C】ビヒクル、IL-1Ra、抗IL17抗体、およびシクロスポリン-1(CsA)によって処置したDEDマウスにおける角膜神経線維蛇行の(水平方向の黒い矢印によって示される正常角膜からの)変化倍率を示す棒グラフである。
【図9】図9Aは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面の炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均角膜フルオレセイン染色を示す折れ線グラフである。図9Bは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した同じ患者における角膜染色のベースラインからの%変化を示す棒グラフである。
【図10】図10Aは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均眼瞼間染色を示す折れ線グラフである。図10Bは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した同じ患者における眼瞼間染色のベースラインからの%変化を示す棒グラフである。
【図11】図11Aは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均眼表面疾患指数を示す折れ線グラフである。図11Bは、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した同じ患者における眼表面疾患指数のベースラインからの%変化を示す棒グラフである。
【図12】局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面炎症障害およびドライアイを有するヒト患者70人における平均涙液量を示す折れ線グラフである。
【図13】局所適用IL-1受容体アンタゴニストまたはビヒクル(潤滑性の点眼液)によって処置した眼表面の炎症障害およびドライアイを有するヒト患者者における角膜神経再生を描写する一連の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
詳細な説明
IL-1、特にIL-1βは、神経再生を促進することが報告されている。初期の研究は、IL-1βがニューロトロフィン、神経生長因子(NGF)の産生をアップレギュレートまたは刺激することを報告した(Pons et al, 2002, Eur. Respir. J. 20:458-463;Akeda et al, 2007, Spine 32:635-642)。たとえば、IL-1Raを用いてIL-1βを阻害すると、傷害を受けた脳組織におけるニューロトロフィン応答を抑制することが見いだされた。神経生長因子(NGF)の増加は、IL-1βを通して直接媒介されることが見いだされており、IL-1RaによってIL-1βを遮断すると、NGF媒介修復応答の抑制が起こった(DeKosky et al., 1996, Ann. Neural. 39:123-127)。本明細書において報告されたデータは、IL-1遮断が角膜神経再生を刺激することを示しており、このことはこれらの初期の報告と矛盾する予想外で意外な知見である。
【0054】
IL-1遮断を、慢性的な眼の刺激および不快感の病訴を特徴とする患者を処置するために用いた。動物モデルおよび臨床試験を用いて、本発明の組成物および方法は、IL-1の作用を阻害することによって、角膜神経が保護されて実際に再生されることを証明する。具体的に、IL-1に対するアンタゴニストとして作用するIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)の局所適用投与を通してIL-1を遮断すると、角膜神経を保護して、角膜神経再生を増強し、基底下神経形態の異常を低減させる。
【0055】
基底下神経形態の例示的な異常には、異常な神経発芽の存在、異常な蛇行、ビーズ様形成の増加、および神経線維束が細くなることまたは太くなることが含まれるがこれらに限定されるわけではない。このように、IL-1阻害剤は、単純ヘルペスまたは帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、ドライアイ、露出性角膜症、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、または頭蓋内神経疾患に関連する三叉神経損傷、ならびにPRKおよびLASIKなどの角膜屈折矯正技法に関連する角膜神経損傷などのニューロパシー状態において保護的である。
【0056】
角膜神経は、他の神経と比較して独自の解剖学的位置、構造の特色および機能を特徴とし、たとえば角膜は、無血管部位であり、接触、温度、および化学物質に対して感受性の無髄神経終末を有する。角膜の接触または他の刺激は、眼瞼を閉じさせる不随意反射を引き起こす。
【0057】
いくつかの初期の報告がインターロイキンおよび神経系障害について記述しているが、IL-1遮断の角膜神経保護効果は、本明細書において記述される本発明の以前では観察されていない。US6,623,736は、インターロイキンならびに網膜および視神経障害について言及しているが、角膜または眼表面については言及していない。視神経炎、黄斑変性、色素性網膜炎、および糖尿病性網膜症は、本明細書において考察される角膜および眼表面の障害と比較して、全く異なる病理生理学的機序、自然経過、疫学、処置、および臨床症状発現を有する。US20030083301は、脊髄損傷の処置について言及している。中枢神経系の一部である脊髄は、角膜の末梢神経とは異なる生理学、病理生物学、および解剖学を有する。US20030083301ではいかなる眼の障害にも言及していない。US20090136453およびUS20080242634は、疼痛を処置するためにIL-1アンタゴニストを投与する方法について言及しており、角膜神経またはその変性について記述していない。本明細書において記述される本発明は、慢性的な眼表面の障害が含まれる自然の疾患プロセスなどの、外科的外傷がなくとも起こりうる角膜神経の損傷に関連する。
【0058】
本発明より以前では、科学論文により、IL-1が、神経の再生および生存に関係する神経生長因子(NGF)の発現を誘導すると報告された。たとえば、Temporin(Temporin et al., 2008 Neurosci Lett., 440(2): 130-3)は、IL-1が知覚神経再生を促進すると報告している。Ryoke(Ryoke et al., 2000 Biochem Biophys Res Commun., 267(3): 715-8)は、IL-1発現がインビボ神経再生に関連すると報告している。Guenard(Guenard et al., 1991 J Neurosci Res., 29(3): 396-400)は、IL-1アンタゴニスト、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)が、末梢神経再生を妨害すると報告している。角膜神経の独自の性質により、IL-1阻害(およびIL-1とIL-17の阻害の併用)は、初期の報告と比較して本発明に従って完全に異なる効果を有する。
【0059】
角膜構造
角膜は、虹彩、瞳孔、および前眼房を覆う眼の透明な前面部分である。水晶体と共に、角膜は光を反射して、その結果、眼が焦点を合わせるのを助け、眼の屈折力全体のおよそ2/3を担う。角膜は、接触、温度、および化学物質に対して感受性の無髄神経終末を有する;角膜に接触すると、眼瞼を閉じさせる不随意反射を引き起こす。
【0060】
透明性は最も重要であることから、角膜は血管を有しない;角膜は、外部の涙液および内部の房水からの拡散によって栄養を受け取り、同様にそれを支配する神経線維によって供給されるニューロトロフィンからも栄養を受け取る。ヒトにおいて、角膜は、直径約11.5 mm、中心部の厚さ0.5〜0.6 mmおよび辺縁部の厚さ0.6〜0.8 mmを有する。透明性、無血管性、高度に未成熟な常在免疫細胞の存在、および免疫学的特権によって、角膜は独自の組織である。免疫学的特権とは、炎症性免疫応答を誘発することなく、抗原の導入を容認することができる体内でのある部位を記述することを意味する。角膜は血液供給を有しないが、むしろ角膜は空気を通しておよびそれが浸される涙液を通して直接酸素を得る。
【0061】
ヒト角膜は、他の霊長類の角膜と同様に5層を有する。前方から後方にかけて、それらは、角膜上皮、ボーマン層、角膜実質、デスメ膜、および角膜内皮である。角膜上皮は、涙液によって湿潤状態で維持される、連続的に再生する細胞の重層扁平上皮の薄い上皮多細胞組織層である。角膜上皮の不規則性または浮腫は、眼の全体的な屈折力の最も重要な成分である空気-涙液被膜界面のなめらかさを破壊して、それによって視力を低減させる。前方境界膜としても知られるボーマン層は、角膜実質を保護する、厚さ約8〜14ミクロンの不規則に整列したコラーゲンの濃縮層である。固有質としても知られる角膜実質は、まばらに存在するケラチノサイトと共に規則正しく整列したコラーゲン線維からなる厚く透明な中間層である。角膜実質は、およそ200層のI型コラーゲン原線維からなる。角膜の厚さの90%は実質で構成される。後方境界膜としても知られるデスメ膜は、角膜内皮の修飾基底膜として役立つ薄い無細胞層である。角膜内皮は、水性区画と角膜実質区画のあいだの液体および溶質の輸送の調節に責任を有するミトコンドリアに富む細胞の単層扁平または単層低立方である。角膜内皮は、血液またはリンパではなく房水に浸され、血管内皮とは非常に異なる起源、機能、および外観を有する。角膜上皮とは異なり、内皮の細胞は再生しない。代わりに、角膜内皮細胞は、死細胞を埋め合わせるように伸張または広がるが、これによって内皮の全体的な細胞密度は低減して、液体調節に影響を及ぼす。
【0062】
角膜は、体の最も感受性の高い組織の1つであり、これは70〜80個の長短の毛様体神経によって三叉神経の脳分枝を通して知覚神経線維によって高密度で支配される。神経は、3つのレベル、すなわち強膜、上強膜、および結膜を通して角膜に入る。神経束のほとんどはさらに分裂して、実質においてネットワークを形成し、そこから線維を角膜の異なる領域に供給する。3つの例示的なネットワークは、実質中央部、上皮下/ボーマン層、および上皮である。上皮下層の角膜神経は集束して角膜の先端付近で終わる。
【0063】
角膜の神経支配
角膜は体における最も密度の高い神経支配組織の1つであり、異なるタイプの神経線維が大量に供給されている。ウサギの研究により、角膜上皮の神経密度は、皮膚の神経密度の約300〜600倍、および歯髄の神経密度の20〜40倍であることが判明した。ヒト角膜上皮にはおよそ7000個/mm2の知覚神経受容体が存在すると推定されており、個々の上皮細胞に対する傷害が、痛覚を生じるために十分である可能性があることを暗示している(Muller et al., Exp Eye Res 2003;76:521-42)。
【0064】
ほとんどの角膜神経線維は起源が知覚神経であり、三叉神経の脳分枝に由来する。神経束は、角膜表面に対して平行に放射状に末梢の実質中央の角膜の中に入る。角膜に入ってまもなく、主な実質神経束は、より小さい束へと繰り返し二分するように分枝して、実質の次第により浅い層へと上行する。最終的に、実質神経線維は急に90°曲がってボーマン層を貫通し、角膜表面に向かって伸びる。ボーマン層を貫通した後、神経束は分裂してボーマン層と基底上皮のあいだの角膜表面に対して平行に走り、基底下神経叢を形成する。基底下上皮神経叢における神経の密度および数は、残りの角膜叢における神経の密度および数より有意に大きい。基底下線維は、その後分枝を形成して、これは上方に曲がって基底細胞のあいだの角膜上皮の中に入って翼状細胞に達し、そこで終わる(Muller et al., Invest Ophthalmol Vis Sci 1996;37:476-88)。
【0065】
角膜神経線維は、感覚を媒介するのみならず、角膜上皮に対して重大な栄養上の影響を発揮して、健康な眼の表面の保存に対して極めて重大な役割を果たす。角膜の感覚は、瞬目反射および反射的流涙を通して傷害を防止するための重要な機序である。ニューロパシー、たとえば角膜神経の変性によって感覚の変化が起こる。角膜神経のニューロパシーと診断された患者は、感覚の減損を経験し、および/または慢性的な不快感および刺激を特徴とする疼痛の増加(痛覚過敏)を経験する。涙液分泌は、角膜神経によって調節されることから、角膜ニューロパシー(角膜神経組織の喪失もしくは損傷、または角膜神経線維の長さの減少)によって涙液欠乏に至る。このように、方法は、涙液欠乏性ドライアイの症状を低減させるために有用である。
【0066】
角膜神経支配の機能障害および関連するニューロパシー病理は、「神経栄養性角膜炎」として臨床的に知られる変性状態を生じ、このために眼表面は不顕性の傷害に対して易損性となり、確立された角膜上皮傷害の治癒を遅らせる。神経栄養性角膜炎のほとんどの臨床例は、単純ヘルペスもしくは帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、または眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、もしくは頭蓋内神経疾患に関連する三叉神経損傷によって引き起こされる。角膜感覚の非存在または低減の起源は先天性であってもよい。光学的角膜切除術(PRK)およびレーザー角膜内切削形成術(LASIK)などの角膜屈折矯正技法は、実質および基底下角膜神経叢を切断して、一過性の軽度から重度の神経病理学的状態または神経栄養性ドライアイを生じうる。この型の「神経栄養性ドライアイ」は、神経の喪失および関連する乾燥を特徴とし、被験体において発症するドライアイの重症型などの非外科状態においても認められる。
【0067】
無傷の角膜神経支配はまた、流涙反射にとっても必須である。正常な生理状態において、角膜の知覚神経は、脳幹に求心性の刺激シグナルを伝達して、その後一連の介在ニューロンの後に、涙腺を支配する副交感神経および交感神経を通して遠心性シグナルを涙腺に伝達し、涙液産生および分泌を促進する(Dartt, DA Ocul Surf 2004;2:76-91)。この神経回路に対する損傷は、涙液分泌の正常な調節を中断して、ドライアイ疾患を引き起こす。角膜からの神経駆動の低減は、ドライアイ関連眼表面疾患の発生に2つの点で都合がよい;第一に、反射誘導涙液分泌を減少させることおよび瞬目率を低減させることによって、その結果蒸発による喪失を増加させることによって:第二に、上皮叢への栄養因子を減少させることによって都合がよい。屈折矯正術および通常の加齢の結果としての眼表面、特に角膜における知覚神経に対する損傷は、涙線に対する正常な反射弓を阻止して、それによって涙液分泌の減少およびドライアイ症候群が起こりうる。この機序の証拠は、角膜屈折矯正術(たとえば、神経が離断される手術)後にドライアイ症候群が頻繁に起こるという臨床での知見に由来する。臨床試験により、LASIK手術後に涙液の産生および分泌が低減することが確認された(Battat et al., Ophthalmology 2001;108:1230-5)。興味深いことに、ドライアイにおける涙液の過剰分泌によって、角膜神経の病的な変化および角膜感受性の低下が起こり、それによってドライアイ状態が永続する(Xu et al., Cornea 1996; 15:235-9)。ドライアイは、参照により本明細書に組み入れられる、PCT/US2008/009776においてさらに記述される。
【0068】
マイボーム腺疾患(MGD)または後部眼瞼炎のみを有する患者は一般的に、臨床的ニューロパシー(臨床的に有意な角膜神経損傷)を有すると特徴付けされず、よって「神経栄養性」ドライアイを有しない。
【0069】
角膜の病理
ドライアイ、露出性角膜症、および他の眼表面の疾患などの角膜上皮に影響を及ぼす眼の疾患は、角膜神経変性を引き起こす。他方、正常な神経駆動は、角膜上皮が治癒してその恒常性を維持するために本質的な必要条件である。ゆえに、第一義的理由(屈折率矯正手術)としての、または単なる乾燥および他の角膜上皮もしくは眼表面疾患の転帰としての角膜神経の変化は、角膜上皮の恒常性に対して重大な効果を有し、このように上皮疾患および神経損傷の悪循環の増加に巧妙に関与する。
【0070】
インターロイキン-1(IL-1)
IL-1ファミリーは、炎症および免疫応答の主要なメディエータとして機能する一群のサイトカインである(Dinarello, CA. 1996. Blood. 15:2095-2147)。このファミリーは、3つの型で構成される:各々が前駆体型を有する2つの前炎症型、IL-1αおよびIL-1β、ならびに抗炎症型、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)。前炎症性サイトカインであるIL-1は、ケモカイン産生、接着因子、マクロファージ浸潤および活性、ならびにリンパ球増殖を増加させることによって、炎症および免疫において重要な役割を果たす。IL-1は、リウマチ性関節炎、敗血症ショック、および歯周炎などのヒトの炎症疾患の病因に関係している(Jiang, Y. et al. 2000. Arthritis Rheum. 43:1001-1009;Okusawa, S. et al. 1988. J Clin Invest. 81 : 1162-1172;McDevitt, M.J. et al. 2000. J. Periodontal. 71 :156-163)。
【0071】
本明細書において記述される組成物および方法は、シグナル伝達の誘導能、またはIL-1受容体からの下流のシグナル伝達カスケードの開始/活性化能によって定義されるように、ヒトIL-1αおよび/またはIL-1βの活性を阻害する。ヒトIL-1αまたはIL-1β機能の阻害剤を含有する組成物は、IL-1受容体の活性に拮抗する。組成物は、ヒトIL-1αまたはIL-1βをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。その上、阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2(IL-1α)またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4(IL-1β)によって含まれるIL-1αまたはIL-1βの1つまたは複数の領域に結合する。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2(IL-1α)またはSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:4(IL-1β)によって含まれるIL-1αまたはIL-1βの1つまたは複数の断片に結合する。
【0072】
これらの配列および本明細書において提供される他の全ての場合における断片は、全体より少ない全体の一部として定義される。その上、断片は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列内のヌクレオチドまたはアミノ酸1個から、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列全体よりヌクレオチドまたはアミノ酸が1個少ない大きさの範囲に及ぶ。最後に、断片は、先に定義された極限値のあいだの中間である完全なポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の任意の部分として定義される。
【0073】
ヒトIL-1αは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000575およびSEQ ID NO: 1)によってコードされる:(本出願に組み入れられる全てのmRNA転写物に関して、コドン「atg」によってコードされる開始メチオニンを太字で示し、コード領域の開始を描写するために大文字で示す。)
【0074】
ヒトIL-1αは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000575およびSEQ ID NO: 2)によってコードされる:
【0075】
ヒトIL-1βは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000576およびSEQ ID NO: 3)によってコードされる:
【0076】
ヒトIL-1βは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000576およびSEQ ID NO: 4)によってコードされる:
【0077】
インターロイキン-1受容体(1型)アンタゴニスト(IL-1Ra)
IL-1Raは、活性化単球および組織マクロファージによって主に産生され、IL-1受容体に競合的に結合することによって前炎症型のIL-1の活性を阻害する内因性の受容体アンタゴニストである(Gabay, C. et al. 1997. 159: 5905-5913)。IL- 1Raは、炎症状態において典型的にアップレギュレートされる誘導型遺伝子である(Arend, W.P. 1993. Adv Immunol. 54: 167-223)。
【0078】
本発明において、組成物は、IL-1Ra転写物1、2、3もしくは4、細胞内IL-1Ra(icIL-1Ra)、またはそれらの対応するポリペプチドイソ型の1つまたは複数の領域を含む。または、組成物は、IL-1Ra転写物1、2、3もしくは4の全て、細胞内IL-1Ra(icIL-1Ra)、またはそれらの対応するポリペプチドイソ型を含む。任意の型のヒトIL-1Ra、またはその断片を含む組成物がIL-1R1の機能を阻害する。これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、以下の配列によって定義される。ヒトIL-1Ra、転写物1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173842およびSEQ ID NO: 5)によってコードされる:
【0079】
ヒトIL-1Ra、転写物1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173842およびSEQ ID NO: 6)によってコードされる:
【0080】
ヒトIL-1Ra、転写物2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173841およびSEQ ID NO: 7)によってコードされる:
【0081】
ヒトIL-1Ra、転写物2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173841およびSEQ ID NO: 8)によってコードされる:
【0082】
ヒトIL-1Ra、転写物3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000577およびSEQ ID NO: 9)によってコードされる:
【0083】
ヒトIL-1Ra、転写物3は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000577およびSEQ ID NO: 10)によってコードされる:
【0084】
ヒトIL-1Ra、転写物4は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173843およびSEQ ID NO: 11)によってコードされる:
【0085】
ヒトIL-1Ra、転写物4は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_173843およびSEQ ID NO: 12)によってコードされる:
【0086】
ヒト細胞内IL-1Ra、icIL-1Raは、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO: 13)によってコードされる:
【0087】
ヒト細胞内IL-1Ra、icIL-1Raは、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO: 14)によってコードされる:
【0088】
ヒト組み換え型IL-1Ra
組み換え型ヒトIL-1Ra(rHuIL-1Ra)を作製して、関節炎の動物モデルにおいて試験した。この型のrHuIL-1Raはまた、アナキンラまたはKineret(登録商標)としても知られ、N末端メチオニンの付加によって本来の非グリコシル化IL-1Raとは異なる。これはIL-1βと同じ親和性でIL-1R I型に結合する。Kineret(登録商標)は、アミノ酸153個からなり、分子量17.3キロダルトンを有する。これは、大腸菌細菌発現系を用いて、組み換えDNA技術によって産生される。
【0089】
アナキンラは、IL-1によって少なくとも部分的に媒介されると見なされるいくつかの状態において試験されている。いくつかの証拠が、リウマチ性関節炎および敗血症ショックの病因におけるIL-1の関与を示唆している(Jiang, Y. et al. 2000. Arthritis Rheum. 43:1001-1009;Fisher, CJ. et al.1994. JAMA.271 :1836-1843;Okusawa, S. et al. 1988. J Clin Invest. 81 :1162-1172;Bresnihan, B. et al. 1998. Rheum Dis Clin North Am. 24(3):615-628;Dayer, J.M. et al. 2001. Curr Opin Rheumatol. 13:170-176;Edwards, C.K. 2001. J Clin Rheumatol. 7:S17-S24)。
【0090】
アナキンラは、1つまたは複数の疾患修飾性抗リウマチ薬によって奏功しなかった年齢18歳またはそれ以上の患者における中等度から重度の活動性リウマチ性関節炎の徴候および症状を低減させるために、FDAによって承認されている。その高い安全性プロファイルを考慮して、アナキンラの投与はまた、若年性リウマチ性関節炎患者における関節炎の処置のためにも用いられている(Reiff, A. 2005. Curr Rheumatol Rep. 7:434-40)。他の適応には、骨髄移植後の移植片対宿主病(GVHD)(Antin, J.H. et al. 1994. Blood.84: 1342-8)、ブドウ膜炎(Teoh, S.C et al. 2007. Br J Opthalmol. 91 : 263-4)、変形性関節炎(Caron, J.P. et al. 1996. Arthritis Rheum. 39:1535-44)、喘息、炎症性腸疾患、急性膵炎(Hynninen, M. et al. 1999. J Crit Care. 14:63-8)、乾癬およびII型真性糖尿病(Larsen, CM. et al. 2007. N Engl J. Med. 356:1517-26)の防止が含まれる。IL-1Raの全身的な安全性プロファイルは、特に、TNF-α遮断剤、細胞障害剤、またはさらにステロイドなどの他の免疫抑制処置と比較した場合に、極めて好都合である。
【0091】
局所適用ヒト組み換え型IL-1Raは、実験動物モデルにおける角膜移植拒絶(Yamada, J. et al. 2000. Invest Opthalmol Vis Sci. 41 :4203-8)、およびアレルギー性結膜炎(Keane-Myers, A.M. et al. 1999. Invest Opthalmol Vis Sci. 40:3041-6)の防止のために用いられて成功している。同様に、局所適用IL-1Raを用いることによって、ラット角膜アルカリ損傷モデルにおいて、角膜の炎症が有意に減少して角膜の透明性が増強された(Yamada, J. et al. 2003. Exp Eye Res. 76:161-7)。
【0092】
ヒトIL-1Ra(rHuIL-1Ra)の組み換え型が開発されており、関節炎の処置のために皮下注射によるヒトでの使用のために承認された。この型のrHuIL-1Raは、アナキンラまたはKineret(登録商標)(Amgen Inc.)としても知られ、N末端メチオニンの付加によって本来の非グリコシル化IL-1Raとは異なる。これは、IL-1βと同じ親和性でヒトIL-1R、1型(IL-1R1)に結合する。Kineret(登録商標)は、アミノ酸153個(SEQ ID NO:16を参照されたい)からなり、分子量17.3キロダルトンを有する。これは大腸菌細菌発現系を用いて組み換えDNA技術によって産生される。
【0093】
本発明の組成物は、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16の1つまたは複数の領域を含む。さらに、本発明の組成物は、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のいずれかの全配列を含む。
【0094】
アナキンラ/Kineret(登録商標)は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号M55646およびSEQ ID NO:15)によってコードされる:
【0095】
アナキンラ/Kineret(登録商標)は、以下のポリペプチド配列(DrugBankアクセッション番号BTD00060およびSEQ ID NO: 16)によってコードされる:
【0096】
IL-1受容体
本発明の組成物は、1型または2型のいずれかのIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。本出願において、IL-1受容体、1型(IL-1R1)はSEQ ID NO:17のポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:18のポリペプチド配列によって定義される。本出願において、IL-1受容体、2型(IL-1R2)、転写物変種1および2は、SEQ ID NO:19および20のポリヌクレオチド配列、またはSEQ ID NO:21のポリペプチド配列によって定義される。IL-1R2は、IL-1サイトカインに結合してIL-1R1を阻害する「おとり」受容体として機能しうる。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:17〜21によって含まれるIL-1R1またはIL-1R2、および関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。IL-1R1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_000877およびSEQ ID NO:17)によってコードされる:
【0097】
IL-1R1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_000877およびSEQ ID NO:18)によってコードされる:
【0098】
IL-1R2、転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_004633およびSEQ ID NO:19)によってコードされる:
【0099】
IL-1R2、転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_173343およびSEQ ID NO:20)によってコードされる:
【0100】
IL-1R2、転写物変種1および2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_004633、NM_173343、およびSEQ ID NO:21)によってコードされる:
【0101】
インターロイキン-1受容体(2型)アンタゴニスト(IL-1Ra3)
本発明は、ヒトIL-1R2の活性を阻害または増強するための手段を有する組成物を含む。IL-1R2アンタゴニスト、IL-1Ra3を含む組成物は、IL-1R1機能の効能に関してアゴニストまたはアンタゴニスト活性のいずれかを有する。組成物は、IL-1Ra3をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23によって含まれるIL-1Ra3の1つまたは複数の領域に結合する。
【0102】
IL-1Ra3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号AF_057168およびSEQ ID NO:22)の領域または全体によってコードされる:(この配列に関して、太字および大文字のコドンはメチオニンをコードせず、むしろ対応するポリペプチドの最初のアミノ酸をコードするコドンを表す)
【0103】
IL-1Ra3の1つまたは複数のイソ型は以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号AF_057168およびSEQ ID NO:23)を含む:
【0104】
インターロイキン-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1RAP)
ヒトIL-1RAPの活性を阻害する組成物は、IL-1サイトカインまたはIL-1受容体に対するIL-1RAPの結合を阻害して、下流の細胞内シグナルのその後の伝達を阻害する。IL-1RAP機能の阻害剤を含む組成物は、IL-1受容体の活性に拮抗する。組成物は、IL-1RAPをコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:24〜27によって含まれるIL-1RAPおよびその関連するイソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0105】
IL-1RAP、転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_002182およびSEQ ID NO:24)によってコードされる:
【0106】
IL-1RAP、転写物変種1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_002182およびSEQ ID NO:25)によってコードされる:
【0107】
IL-1RAP、転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_134470およびSEQ ID NO:26)によってコードされる:
【0108】
IL-1RAP、転写物変種2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_134470およびSEQ ID NO:27)によってコードされる:
【0109】
インターロイキン-1受容体関連キナーゼ1(IRAK1)
本発明はまた、この受容体とIL-1とのライゲーション後のIL-1受容体に対するこのタンパク質の結合能のみならず、炎症応答に至る下流のシグナルの伝達能として定義される、ヒトIRAK1の活性を阻害する組成物および方法も含む。IRAK1の阻害剤を含む組成物は、IL-1受容体からの下流のシグナル伝達に拮抗する。組成物は、IRAK1をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する手段を有するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む。阻害性ポリヌクレオチドまたはポリペプチド組成物は、SEQ ID NO:28〜33によって含まれるIRAK1およびその関連イソ型の1つまたは複数の領域に結合する。
【0110】
IRAK1、転写物変種1は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001569およびSEQ ID NO:28)によってコードされる:
【0111】
IRAK1、転写物変種1は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001569およびSEQ ID NO:29)によってコードされる:
【0112】
IRAK1、転写物変種2は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001025242およびSEQ ID NO:30)によってコードされる:
【0113】
IRAK1、転写物変種2は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001025242およびSEQ ID NO:31)によってコードされる:
【0114】
IRAK1、転写物変種3は、以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_001025243およびSEQ ID NO:32)によってコードされる:
【0115】
IRAK1、転写物変種3は、以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NM_001025243およびSEQ ID NO:33)によってコードされる:
【0116】
マイクロRNAによる発現の抑制
本発明は、マイクロRNA(miRNA)分子を適当な薬学的担体と共に眼または付属組織に送達することによってIL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1の活性を阻害する手段を有する組成物を含む。IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1のいずれかを標的とするmiRNAを含む組成物は、IL-1R1の機能に拮抗する。組成物は、IL-1α、IL-1b、IL-1R1、IL-1R2、IL-1Ra3、IL-1RAP、またはIRAK1の1つまたは複数の領域に結合する1つまたは複数のmiRNAを含む。以下の表は、ヒトIL-1αまたはIL-1R1の発現を部分的または完全に抑制することが示されている例示的なmiRNAを含有する。
【0117】
(表1)miRNA、そのヒト標的遺伝子、ヌクレオチド配列、およびその配列同定子番号の要約
【0118】
IL-1およびIL-1R媒介シグナル伝達
本明細書において用いられるように、「炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する」という句は、IL-1受容体から開始、情報交換、または伝達された細胞内シグナル伝達の阻害、防止、減損、低減、減少、抑制、または中断を記述することを意味する。本発明の1つの局面において、IL-1受容体から開始、情報交換、または伝達された細胞内シグナル伝達の阻害、防止、減損、低減、減少、抑制、または中断は、IL-1サイトカインのIL-1Rに対する結合を防止または減少させることによって達成される。またはもしくは加えて、IL-1Rからの細胞内シグナルの伝達は、シグナル伝達カスケード内の下流のエフェクターまたは標的を除去する、抑制する、または変異させることによって防止される。下流のエフェクターおよび/または標的の発現および/または機能または活性は、遺伝子改変または治療化合物の投与によって、除去される(たとえば、欠失される、ノックアウトされる、隔離される、変性される、分解される等)、抑制される(分解される、転写もしくは翻訳的に抑制される)、または変異する(活性産物をコードするヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、非機能的産物をコードするように変化する)。
【0119】
例示的な下流のエフェクターおよび/または標的には、IL-1(インターロイキン 1)、IL-lα(インターロイキン 1α)、IL-lβ(インターロイキン 1 β)、IL-1R(インターロイキン 1受容体、I型)、IL-1Ra(IIL-1Rアンタゴニスト)、IL-1RAcP(IL-1Rアクセサリタンパク質)、TOLLIP(TOLL相互作用タンパク質)、IRAK1(IL-1R 関連キナーゼ 1)、IRAK2(IL-1R関連キナーゼ 2)、IRAK 3(IL-1R関連キナーゼ 3)、MYD88(骨髄分化初期応答遺伝子88)、ECSIT(Toll経路における進化的保存シグナル伝達中間体)、TRAF6(TNF受容体関連因子6)、MEKK1(MAP ERK キナーゼ キナーゼ 1)、TAB1(TAK1結合タンパク質1)、TAK1(トランスフォーミング増殖因子b活性化キナーゼ 1)、NIK(NFkB誘導キナーゼ)、RKIP(Raf キナーゼ阻害剤タンパク質)、MEK3(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ3;MEK3またはMKK3)、MEK6(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ6;MEK6またはMKK6)、MAPK14(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ14)、MAPK8(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ8)、MEKK1(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ1)、MAP3K14(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ 14)、MEKK7(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ7またはMKK7)、MAP3K7IP1(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼキナーゼ7相互作用タンパク質1)、JNK(Jun N末端キナーゼ)、p38(p38MAPKまたはp38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼとしても知られる)、cJUN(jun腫瘍遺伝子)、AP-1(活性化タンパク質1;転写因子)、IL-6(インターロイキン 6、インターフェロンβ 2としても知られる)、TNFα(腫瘍壊死因子-α)、TNF(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー)、IFNα(インターフェロンα、インターフェロンα1)、IFNβ(インターフェロンβ、インターフェロンβ 1)、TGFβl(トランスフォーミング増殖因子β 1)、TGFβ2(トランスフォーミング増殖因子β 2)、TGFβ3(トランスフォーミング増殖因子β 3)、IKKα(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤、キナーゼα)、IKKβ(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤、キナーゼ β)、IκBα(B細胞阻害剤におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの阻害剤の核因子、α)、Chuk(保存されたヘリックス-ループ-ヘリックス汎在キナーゼ)、およびNFκB(B細胞におけるκ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核因子1;p105としても知られる)の1つまたは複数のイソ型または相同体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。追加のシグナル伝達分子および関係は、O'Neill, L. A. J. and Greene, C. 1998. Journal of Leukocyte Biology. 63: 650-657によって定義される。
【0120】
インターロイキン-1サイトカインの活性の阻害は、角膜を採取する段階、およびIL-1Rシグナル伝達カスケードの成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量を決定する段階によって決定される。投与前のIL-1Rシグナル伝達カスケードの成分量と比較して、本発明の治療組成物の投与後のIL-1Rシグナル伝達カスケードの成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの量が増加または減少すれば、炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性が阻害されたことを示している。
【0121】
具体的に、図5は、2つの例示的なシグナル伝達カスケードの成分のあいだの機能的相互関係を示す。この図における成分間の矢印は、矢印より前にある成分が矢印の後にある成分を活性化することを示している。逆に、先端が平らな線は、平らな線の前にある成分が平らな線の後にある成分の活性または機能を阻害することを示している。
【0122】
簡単に説明すると、I型IL-1RはIL-1βに結合するが、IL-1Rは、シグナルを伝達するためにIL-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1RAcP)を必要とする。IL-1結合は、IL-1受容体複合体に関連する2つのキナーゼIRAK-1およびIRAK-2の活性化を引き起こす。IRAK-1(IL-1受容体関連キナーゼ)はTRAF6を活性化してIL-1受容体複合体に動員する。TRAF6は、2つの経路を活性化して、1つは、NF-κB活性化に至り、もう1つは、c-jun活性化に至る。TRAF関連タンパク質ECSITは、Mapキナーゼ/JNKシグナル伝達系を通してc-Jun活性化に至る。TRAF6はまた、I-κBの分解およびNF-κBの活性化を誘発するためにTAB1/TAK1キナーゼを通してシグナルを伝達する。
【0123】
例として、本発明のある態様において、MEKK1のプロセシング型の量の減少もしくは非存在、リン酸化IκBαの量の減少もしくは非存在、リン酸化c-JUNの量の減少もしくは非存在、ICAM-1の量の減少もしくは非存在、またはIL-6、TNFα、IFNα、IFNβ、TGFβの量の減少もしくは非存在は、インターロイキン-1サイトカインの阻害を示している。同様に上記の成分のいずれかの活性または機能の減少または非存在は、インターロイキン-1サイトカインの阻害を示している。
【0124】
薬学的に適当な担体
局所適用組成物の眼または付属組織への局所適用送達を容易にするおよび促進するために組み入れられる例示的な化合物には、アルコール(エタノール、プロパノール、およびノナノール)、脂肪アルコール(ラウリルアルコール)、脂肪酸(吉草酸、カプロン酸、およびカプリン酸)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピルおよびn-ヘキサン酸イソプロピル)、アルキルエステル(酢酸エチル、および酢酸ブチル)、ポリオール(ポリエチレングリコール、プロパンジオン、およびヘキサントリオール)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドおよびデシルメチルスルホキシド)、アミド(尿素、ジメチルアセトアミド、およびピロリドン誘導体)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポロキサマー、スパン、ツイーン、胆汁酸およびレシチン)、テルペン(d-リモネン、α-テルペノール、1,8-シネオール、およびメントン)、およびアルカノン(N-ヘプタンおよびN-ノナン)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、局所適用投与された組成物は、カドヘリンアンタゴニスト、セレクチンアンタゴニスト、およびインテグリンアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されるわけではない表面接着分子調節物質を含む。
【0125】
任意で、組成物はさらに、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、carbopol-メチルセルロース、N-アセチルシステイン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物を含有する。
【実施例】
【0126】
実施例1:上皮疾患における中枢神経再生に及ぼすIL-1遮断の効果
ドライアイの最も重度の臨床徴候を有する被験体が、IL-1遮断剤の投与後に驚くほどの改善の感覚を報告したことが観察された。さらに調べると、重度のドライアイを有する患者はまた、IL-1遮断剤の投与後に角膜神経損傷または神経機能の喪失さえも罹っていることが見いだされた。処置後のこの予想外の改善の機序をよりよく解明するために、涙液産生およびドライアイの正常および病的なプロセスに対する神経損傷および機能の寄与を調べた。
【0127】
角膜神経の恒常性におけるIL-1遮断剤の役割を検査するために、上皮の壊死組織切除後の角膜基底下神経叢および終末上皮分枝の再生を測定した。マウスを麻酔して、小刀の刃で2 mmの角膜上皮欠損を、各々の麻酔したマウスの一方の眼に作製した。1群のマウス(n=5)を、1%カルボキシメチルセルロースと混合した2.5%IL-1Raの局所点眼液によって1日3回7日間処置した。対照群(n=5)をビヒクル(1%カルボキシメチルセルロース)を用いて1日3回7日間処置した。7日後、動物を安楽死させて、角膜を摘出して4%パラホルムアルデヒド中で室温で40分間固定した。角膜をPBSによって洗浄した。2%BSAのPBS溶液および0.2%Triton X-100中で2時間インキュベートすることによって、透過性にしてブロッキングした。角膜を、1:200倍希釈したウサギ抗マウスβIIIチューブリン一次抗体と共に4度で16時間インキュベートした。PBS中で3回洗浄後、角膜を、1:200倍希釈したローダミンコンジュゲートヤギ抗ウサギ二次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。角膜をマウンティング培地と共にカバーガラスで覆い、撮像した。角膜を、創傷域における角膜中心傍領域における基底下神経叢および終末分枝のレベルで写真撮影した(図1)。処置した眼に関して、終末分枝レベルでの神経密度を反対側の正常角膜に対して標準化した。この実験の結果は、IL-1Ra処置群では、基底上皮細胞レベルでの再生神経の%密度がビヒクル処置群での15%と比較して80%であることを示した。
【0128】
インビボ共焦点顕微鏡(Confoscan 4; Nidek Technologies)を用いたドライアイ関連眼表面疾患を有する患者におけるヒト臨床試験において、基底下角膜神経レベルでの角膜神経形態を、局所適用2.5%IL-1Raによる1日3回の1ヶ月間の処置の前後で査定した(図2)。全員で患者6人におけるIL-1遮断剤による処置後、画像あたりの神経の長さ(神経線維密度)の合計は、ベースラインと比較して25%増加した。角膜神経密度の改善は、これらの患者におけるドライアイの徴候および症状の低減と相関した。
【0129】
ゆえに、IL-1遮断剤は、神経再生を増加させることによって、角膜の健康の維持を改善し、これによって上皮疾患と神経損傷という悪循環を切断する。このように、IL-1遮断剤は、全ての型のドライアイ症候群、全ての型の眼表面疾患、屈折矯正手術(PRK、LASEK、Epi-LASIK、LASIK)などの角膜手術、角膜移植、上皮壊死組織切除、眼表面再構築、ヘルペス性角膜炎、神経栄養性角膜炎、露出性角膜症、真性糖尿病、三叉神経損傷が含まれる、角膜上皮の健康に影響を及ぼす全ての眼科状態に用いられうる。IL-1遮断剤の非眼科応用は、糖尿病性の末梢ニューロパシーが含まれる全ての型の末梢ニューロパシーであろう。
【0130】
実施例2:ドライアイ誘発リンパ管新生に及ぼすIL-1遮断剤の効果
角膜の血管新生は、角膜抗原に対する適応免疫の病因および眼表面の疾患の誘導に関係する。リンパ管は、常在抗原提示細胞の排出リンパ節への遊走にとって、および適応免疫の誘導にとって非常に重要であるが、ドライアイ関連眼表面疾患におけるリンパ管新生の役割に関する情報はない。マウスドライアイモデルにおいて、IL-1遮断剤がドライアイ誘導リンパ管新生を低減できるか否かを決定した。雌性C57BL/6マウス(n=10)において、環境制御室および全身スコポラミンに曝露することによって、ドライアイを誘導した。2日後、1群のマウス(n=5)に、1%カルボキシメチルセルロースと混合した2.5%局所適用IL-1Raを1日3回与えて、第二の群にはビヒクルのみ(1%カルボキシメチルセルロース)を与えた。5日間の処置後、動物を安楽死させて、角膜を摘出して4%パラホルムアルデヒド中で室温で40分間固定した。リンパ管および血管の免疫組織化学染色を角膜フラットマウントにおいて行った。LYVE-1(リンパ内皮特異的ヒアルロン酸受容体)に対する免疫組織化学染色を、精製抗体の後にローダミンコンジュゲート二次抗体によって行った。免疫組織化学染色をまた、FITC-コンジュゲートCD31によっても行った。血管形成およびリンパ管形成レベルを定量するために、低倍率(2×)の顕微鏡写真を得て、リンパ新生血管によって覆われた領域を計算して、総角膜領域の%として表記した。IL-1Ra処置角膜は、ビヒクル処置角膜と比較して平均で60%未満のリンパ管新生活性を示した。加えて、IL-1による遮断によってより低レベルの成熟度を有する免疫細胞が得られ、このためそれらの細胞はT細胞の感作能がより低い。
【0131】
この実験の結果は、ドライアイ関連リンパ管新生の防止に関してIL-1に対する阻害活性を有する化合物が、ドライアイ関連眼表面疾患において適応免疫および自己免疫の誘導を最小限にするために有用であることを示している。
【0132】
実施例3:局所適用IL-1Raの濃度
ドライアイ疾患に及ぼすIL-1遮断剤の効果に関して、1%カルボキシメチルセルロースと混合した局所適用IL-1Raの異なる濃度(1%、2.5%、および5%)をマウスドライアイモデルにおいて試験した。雌性C57BL/6マウス(n=20)において、環境制御室および全身スコポラミンに曝露することによって、ドライアイを誘導した。2日後、マウスを5群に分けた。第一、第二、および第三の群のマウス(各群マウス4匹)にそれぞれ、1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%、2.5%、および1%局所適用IL-1Raを1日3回の頻度で与えて、第四の群(n=4)にはビヒクルのみ(1%カルボキシメチルセルロース)を1日3回の頻度で与え;および第五の群(n=4)は無処置のままとした。5日間の処置後、マイクロピペットによって1%フルオレセイン0.5μlをマウスの眼の下結膜嚢に適用することによって角膜フルオレセイン染色を行った。フルオレセインの点眼後3分で角膜を、細隙灯生体顕微鏡によってコバルトブルーライトで検査した。点状染色を、角膜表面を分割した5つの領域の各々について、0から3までの標準化した(National Eye Institute)等級付けシステムによって盲検的に記録した。この実験は、IL-1Raの全ての濃度(1%、2.5%、および5%)が角膜フルオレセイン染色スコアを減少させることができるが、5%濃度の局所適用IL-1Raを与えた群では、角膜フルオレセイン染色の%低減が適度に高いことを示した。
【0133】
実施例4:局所適用IL-1Raの製剤
ドライアイ疾患に及ぼすIL-1遮断剤の効果に関して、異なるビヒクルと混合した5%IL-1Raをマウスドライアイモデルにおいて試験した。雌性C57BL/6マウス(n=20)において、環境制御室および全身スコポラミンに曝露することによって、ドライアイを誘導した。2日後、マウスを4群に分けた。第一の群のマウス(n=5)に、1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%局所適用IL-1Raを1日3回の頻度で与えて、第二の群(n=5)には10%N-アセチルシステインと混合した5%局所適用IL-1Raを1日3回の頻度で与え;第三の群(n=5)には、0.3%ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)および0.3 mmol/Lグルタチオンと混合した5%IL-1Raを局所適用投与した;および第四の群(n=5)を無処置のままとした。5日間の処置後、1%フルオレセイン0.5μLをマウスの眼の下結膜嚢にマイクロピペットによって適用することによって角膜フルオレセイン染色を行った。フルオレセインの点眼後3分で、角膜を、細隙灯生体顕微鏡によってコバルトブルーライトで検査した。点状染色を、角膜表面を分割した5つの領域の各々について、0から3までの標準化した(National Eye Institute)等級付けシステムによって盲検的に記録した。この実験は、角膜フルオレセイン染色の%低減が、10%N-アセチルシステインと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群において、および1%カルボキシメチルセルロースと混合した5%局所適用IL-1Raを与えた群において有意に高いことを示した。
【0134】
実施例5:角膜神経変性の最小化または防止
角膜神経恒常性に及ぼすIL-1遮断剤の役割を調べるために、角膜基底下神経叢および終末上皮分枝の神経変性の最小化および防止を測定した。1群のマウス(n=5)を、1%カルボキシメチルセルロースと混合した2.5%IL-1Raの局所点眼液によって1日3回、7日間処置した。対照群(n=5)をビヒクル(1%カルボキシメチルセルロース)を用いて1日3回7日間処置した。次に、マウスを麻酔して、小刀の刃を用いて2 mmの環状の角膜上皮欠損を各々の麻酔マウスの一方の眼に作製した。7日後、動物を安楽死させて、角膜を摘出して4%パラホルムアルデヒド中で室温で40分間固定した。角膜をPBSによって洗浄した。2%BSAのPBS溶液および0.2%Triton X-100中で2時間インキュベートすることによって、可溶化およびブロッキングを行った。角膜を、1:200倍希釈したウサギ抗マウスβIIIチューブリン一次抗体と共に4度で16時間インキュベートした。PBS中で3回洗浄後、角膜を、200倍希釈したローダミンコンジュゲートヤギ抗ウサギ二次抗体中で室温で2時間インキュベートした。角膜をマウンティング培地と共にカバーガラスで覆い、撮像した。角膜を、創傷域の角膜中心傍領域での基底下神経叢および終末分枝のレベルで写真撮影する。処置した眼に関して、終末分枝レベルでの神経密度を反対側の正常角膜に対して標準化する。この実験の結果は、IL-1Ra処置群では、ビヒクル処置群と比較して、基底上皮細胞レベルでの変性神経の%密度が減少したことを示している。
【0135】
ゆえに、IL-1遮断剤は、神経変性を最小限にするまたは予防することによって、上皮が角膜の健康の維持を改善するために役立つことができ、これによって上皮疾患と神経損傷という悪循環を切断することができる。このように、IL-1遮断剤は、全ての型のドライアイ症候群、全ての型の眼表面疾患、屈折矯正手術(PRK、LASEK、Epi-LASIK、LASIK)などの角膜手術、角膜移植、上皮壊死組織切除、眼表面再構築、ヘルペス性角膜炎、神経栄養性角膜炎、露出性角膜症、真性糖尿病、三叉神経損傷が含まれる、角膜上皮健康に影響を及ぼす全ての眼科状態において用いられうる。IL-1遮断の非眼科応用は、糖尿病性末梢ニューロパシーが含まれる全ての型の末梢ニューロパシーであろう。
【0136】
実施例6:IL-1およびIL-17遮断は角膜神経の予想外の保護を提供する
参照により本明細書に組み入れられる、WO/2009/089036において記述されるように、方法は、IL-17受容体複合体への炎症性IL-17サイトカインの結合を阻害する化合物の投与を含む。
【0137】
角膜神経を再生させる方法はまた、炎症性インターロイキン-17サイトカインまたはIL-17受容体複合体の任意の成分をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害または改変するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、化合物、または低分子を含む組成物を被験体の眼に局所投与することによって行われる。
【0138】
組成物は、IL-17および/または受容体複合体に対する中和または機能遮断抗体を含んでもよい。IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、ヒトIL-17アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF-317-NA、R&D Systems)、ヒトIL-17アロフィコシアニンモノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号IC3171A、R&D Systems)、ヒトIL-17ビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF317、R&D Systems)、ヒトIL-17モノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号MAB3171、R&D Systems)、ヒトIL-17モノクローナル抗体(クローン41809)(カタログ番号MAB317、R&D Systems)、ヒトIL-17フィコエリスリンモノクローナル抗体(クローン41802)(カタログ番号IC3171P、R&D Systems)、マウスIL-17アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF-421-NA、R&D Systems)、マウスIL-17ビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF421、R&D Systems)、マウスIL-17モノクローナル抗体(クローン50101)(カタログ番号MAB721、R&D Systems)、またはマウスIL-17モノクローナル抗体(クローン50104)(カタログ番号MAB421、R&D Systems)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。好ましくは、IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、モノクローナル抗ヒトIL-17抗体(クローン:41809、カタログ番号MAB317、R&D Systems)、ヤギにおいて作製したポリクローナル抗ヒトIL-17抗体(カタログ番号AF-317-NA、R&D Systems)、または組み換え型ヒトIL-17 RTFcキメラ(カタログ番号177-IR、R&D Systems)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。
【0139】
「再処方する」とは、局所投与、結膜下投与、強膜外隙投与、皮下投与、または腺管内投与にとって適するように組成物を変化させることを意味する。好ましい製剤は、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、コンタクトレンズ、フィルム、エマルション、または懸濁液の形態である。1つの局面において、製剤は局所適用投与される、たとえば組成物は眼に送達されて、眼に直接接触する。任意で、組成物は、薬学的に許容される液体担体、たとえば水性または部分的に水性である液体担体と共に投与される。または、組成物はリポソーム(たとえば、陽イオンまたは陰イオンリポソーム)に会合する。
【0140】
IL-17受容体に対する中和または機能遮断抗体(Il-17R)は、ヒトIL-17Rアフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF 177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rアロフィコシアニンモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177A、R&D Systems)、ヒトIL-17Rビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF 177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rフルオレセインモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB177F、R&D Systems)、ヒトIL-17Rモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号MAB 177、R&D Systems)、ヒトIL-17Rモノクローナル抗体(クローン133621)(カタログ番号MAB 1771、R&D Systems)、ヒトIL-17Rフィコエリスリンモノクローナル抗体(クローン133617)(カタログ番号FAB 177P、R&D Systems)、マウスIL-17Rアフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号AF448A、R&D Systems)、マウスIL-17Rビオチニル化アフィニティ精製ポリクローナル抗体(カタログ番号BAF448、R&D Systems)、またはマウスIL-17Rモノクローナル抗体(クローン105828)(カタログ番号MAB448、R&D Systems)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。
【0141】
IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、1つまたは複数のマウス抗IL-17A(7172、7173、7175、7177、8171、7371、7971、および7370が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)、またはマウス抗IL-17F(7471および8471が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、1つまたは複数のヒト抗IL-17A(7178、7179、8179、7176、7976、および7876が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、またはヒト抗IL-17F、8479が含まれるがこれらに限定されるわけではないSKU番号、eBioscience)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。好ましくは、IL-17に対する中和または機能遮断抗体は、機能的等級の精製抗ヒトIL-17A抗体(クローン:eBio64CAP17、カタログ番号16-7178、eBioscience)の再処方もしくはヒト化誘導体であってもよく、またはそれらのエピトープに結合してもよい。
【0142】
または、組成物は、IL-17受容体複合体、IL-17の任意の合成中間体、またはIL-17受容体複合体に結合するイントラボディを含んでもよい。組成物は、またはもしくは加えて、IL-17に結合するIL-17受容体複合体の可溶性断片を含んでもよい。
【0143】
例示的なポリペプチドには、IL-17機能を破壊することができる融合体および/またはキメラタンパク質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。その上、組成物は、遺伝子発現を抑制するために、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
【0144】
IL-17サイトカインまたはIL-17受容体を標的とする企図される機能遮断抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナルである。企図される抗体は、IL-17またはIL-17受容体ポリペプチド内の1つまたは複数の配列に結合する。抗体はまたはイントラボディである。いくつかの態様において、抗体は、一本鎖、ヒト化、組み換え型、またはキメラ抗体を含む。1つまたは複数の化合物が、この抗体に直接または間接的にコンジュゲートされる。
【0145】
IL-17のアンタゴニストおよび/またはその受容体複合体は、IL-1のアンタゴニストおよび/またはその受容体と同時または連続して投与される。
【0146】
ヒトIL-17は、NCBIアクセッション番号NM_002190のmRNA配列によってコードされ、またはIL-17Aとも呼ばれる。ヒトIL- 17は、NCBIアクセッション番号NM_002190のアミノ酸配列によってコードされ、またはIL-17Aとも呼ばれる。ヒトIL-17Bは、NCBIアクセッション番号NM_014443のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Bは、NCBIアクセッション番号NM_014443のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Cは、NCBIアクセッション番号NM_013278のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Cは、NCBIアクセッション番号NM_013278のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Dは、NCBIアクセッション番号NM_138284のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Dは、NCBIアクセッション番号NM_138284のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Eは、NCBIアクセッション番号AF305200のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Eは、NCBIアクセッション番号AF305200のアミノ酸配列によってコードされる。ヒトIL-17Fは、NCBIアクセッション番号NM_052872のmRNA配列によってコードされる。ヒトIL-17Fは、NCBIアクセッション番号NM_052872のアミノ酸配列によってコードされる。
【0147】
IL-17受容体アンタゴニスト(IL-17RA)は、NCBIアクセッション番号NM_014339のmRNA配列によってコードされる。IL-17RAは、NCBIアクセッション番号NMJ4339のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RBは、NCBIアクセッション番号NM_018725のmRNA配列によってコードされる。IL-17RBは、NCBIアクセッション番号NM_018725のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_153461のmRNA配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_153461のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NMJ53460のmRNA配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NM_l53460のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種3は、NCBIアクセッション番号NM_032732のmRNA配列によってコードされる。IL-17RC、転写物変種3は、NCBIアクセッション番号NM_032732のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RD、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NMJ)01080973のmRNA配列によってコードされる。IL-17RD、転写物1は、NCBIアクセッション番号NMJ)O1080973のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RD、転写物2は、NCBIアクセッション番号NM O1 7563のmRNA配列によってコードされる。IL-17RD、転写物2は、NCBIアクセッション番号NM_017563のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_153480のmRNA配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種1は、NCBIアクセッション番号NM_l53480のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NM_153481のmRNA配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種2は、NCBIアクセッション番号NM_153481のアミノ酸配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種5は、NCBIアクセッション番号NM_153483のmRNA配列によってコードされる。IL-17RE、転写物変種5は、NCBIアクセッション番号NM_153483のアミノ酸配列によってコードされる。
【0148】
角膜ニューロパシーに及ぼすIL-17遮断剤の効果を調べるために、当技術分野において認識されるマウスドライアイ疾患(DED)モデルを用いた。先に記述したように、環境制御室において乾燥環境および全身スコポラミンに曝露することによって、雌性C57BL/6マウスにおいてDEDを誘導した(図8A)。9〜10日間DEDの誘導後、ホールマウント角膜を神経特異的β-チューブリン-IIIに関して免疫染色した後、落射蛍光顕微鏡写真を得て、自動Matlabに基づくソフトウェアにおいて神経の定量を行った。神経線維の長さおよび神経線維の蛇行性(神経再生/神経変性の指標)を以下に記述するように分析した。
【0149】
IL-1Raおよび抗IL17が含まれる抗サイトカイン治療はいずれも、DED角膜において神経線維の喪失を防止した(図8B)。対照的に、潤滑性点眼液(「ビヒクル」)またはCsAを用いると、正常角膜の線維長と比較して線維長の〜2倍の減少を示し、DEDに対する標準処置(潤滑剤または局所シクロスポリン)が神経損傷に対して神経を有意に保護しないことを示唆している。同様に、IL-1Raおよび抗IL17治療は、正常角膜において認められたレベルと類似の神経線維蛇行レベルを維持するが、ビヒクルまたはCsAによって処置したDED角膜は正常と比較して神経線維蛇行性の〜2倍増加を示す(図8C)。
【0150】
これらの結果は、局所適用IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)を用いて直接の、または抗IL17抗体を用いてIL-17(標的細胞による強力なIL-1βの誘導物質)を遮断することによる間接的なインターロイキン-1(IL-1)の遮断が、神経喪失(線維長)および神経蛇行性の症状が含まれる角膜ニューロパシーを阻害することを証明している。IL-1およびIL-17を遮断する処置は、神経線維の長さを促進するが、神経線維の蛇行性を抑制する。
【0151】
上記の神経蛇行性データおよび神経線維長のデータは、DEDに関する従来の治療(局所適用の潤滑性の涙液軟膏または局所適用シクロスポリン-A)が、神経損傷に対して有意に神経を保護しないことを示している。DEDに関連する眼表面の炎症はしばしば、典型的に0.1%プレドニゾロンなどのステロイドによって低減される涙液の神経生長因子レベルの上昇に相関するが、上記の結果は、そのような治療が角膜神経再生の誘導に対して無効であることを示している。このように、そのような免疫抑制剤(たとえば、シクロスポリンA(たとえば、Restasis(登録商標))などのマクロライドまたはプレドニゾロンなどのコルチコステロイド)の投与は、好ましくは本明細書において記述される組成物と共に投与されない。
【0152】
実施例7:IL-1およびIL-17の遮断の併用治療は角膜神経再生を増強する
IL-1は、T細胞活性化の上流の炎症プロセスの主要な開始物質であり、IL-17分泌T細胞の誘導または拡大を促進することによって炎症の促進において非常に重要な役割を果たす。IL-1およびIL-17は、相乗的に作用して、インビボで互いに分泌を増強する。
【0153】
IL-17遮断処置を、IL-1遮断処置と共に角膜に適用する。IL-1とIL-17遮断処置の同時投与は、損傷角膜に関連する神経線維の量が、無処置角膜と比較して増加するように、角膜神経再生を増強する、IL-1とIL-17遮断処置の同時投与は、免疫媒介角膜神経損傷の症例において角膜神経再生を相乗的に増強する。
【0154】
実施例8:ヒトにおける眼表面炎症障害におけるIL-1Raの局所適用の効能
IL-1Raオープンラベル試験を利用して、ヒトにおける眼表面炎症障害の処置におけるIL-1Raの効能を決定した。患者70人を試験に登録して、以下のような毎月の調査に様々な数の患者を用いた:1ヶ月(患者44人)、3ヶ月(患者37人)、5ヶ月(患者22人)、および7ヶ月(患者17人)。これらの患者はいずれも、グレード3マイボーム腺分泌(圧出後に分泌物が形状を保持する)、グレード4眼瞼縁疾患(眼瞼縁および皮膚の双方の顕著なびまん性の発赤)、またはグレード4の結膜充血(眼瞼および/または眼球結膜の顕著な暗赤色)として定義される重度のマイボーム腺機能障害(MGD、後部眼瞼炎とも呼ばれる)を有しなかった。注目すべきことに、MGD/マイボーム腺機能障害のみを有する患者は、有意な角膜ニューロパシーを発症しない(Foulks and Bron, 2003 Ocul Surf, 107-26)。
【0155】
図9Aおよび9Bに示されるように、角膜染色を利用して、局所適用IL-1受容体アンタゴニストによって処置した眼表面疾患を測定した。具体的に、フルオレセインの適用を用いて角膜における上皮損傷を検出して、各患者の疾患の重症度をオックスフォード尺度を用いて等級付けした。データは、IL-1受容体アンタゴニストを用いたIL-1の局所適用遮断によって、染色(疾患の重症度)が有意に低減することを証明する。具体的に、ベースラインからIL-1受容体アンタゴニストによる処置後7ヶ月目の追跡調査までで有意な変化が観察された。
【0156】
図10Aおよび10Bに描写されるように、リサミングリーン染色を利用して結膜上皮に対する損傷を検出して、各患者の疾患を標準化オックスフォード尺度を用いて等級付けした。ベースラインからIL-1受容体アンタゴニストによる処置後7ヶ月間の追跡調査までのあいだに、眼瞼間(結膜)染色(疾患の重症度)の有意な低減が観察された。眼表面の疾患指数(OSDI)は、ドライアイ疾患症状の重症度および視力関連機能に対する効果を測定するための妥当性が確認された道具である。スコアは0(症状なし)から100(全てのカテゴリーにおける最大の症状および視力機能障害)の範囲であり、より高いスコアはより大きい無能力障害を表す。OSDIを、IL-1受容体アンタゴニストによって処置した各患者について決定した(図11Aおよび11B)。OSDIスコアは、ベースラインからIL-1受容体アンタゴニストによる処置後7ヶ月間の追跡調査までで有意に減少した。
【0157】
シルマー試験は、患者の眼によって産生された涙液量を測定する。試験は、下眼瞼と眼球のあいだに特殊な目盛り付きの濾紙片を5分間置くことによって行われる。図12に示されるように、涙液量はベースラインでの6 mm未満から追跡調査の7ヶ月目での〜9 mmまで増加した。データは、IL-1受容体アンタゴニストによるIL-1の局所適用遮断によってより高い涙液分泌に向けての全体的な傾向を示唆する。
【0158】
図13は、局所適用ビヒクルまたは局所適用IL-1Raによる処置の前後でのドライアイ疾患を有する患者の角膜の共焦点顕微鏡写真を示す。IL-Ra処置を1ヶ月行うと、角膜神経再生(白色の矢印で示す)を促進した。対照的に、ビヒクル(潤滑性の点眼剤)処置を1ヶ月行っても、角膜神経再生を促進しなかった。これらのデータは、ドライアイ疾患において病原性の役割を有するサイトカイン(IL-1、IL-17)を選択的に遮断すると、標準的な処置では観察されなかった神経保護レベルを提供する、というマウス(上記)で得られた観察を支持する。
【0159】
他の態様
本発明を、その詳細な説明と共に記述してきたが、前述の説明は本発明を例証すると意図され、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限すると意図されない。他の局面、長所、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0160】
本明細書において参照した特許および科学文献は、当業者にとって利用可能な知識を確立する。本明細書において引用された全ての米国特許および公開されたまたは公開されていない米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において引用された公開された外国特許および特許出願は全て、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用された他の全ての公表された参考文献、文書、原稿、および科学論文は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0161】
本発明は、その好ましい態様を参照して詳しく示し、記述してきたが、本発明の形および詳細に様々な変更を行ってもよく、それらも添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲に含まれることは当業者によって理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経を保護または再生するための方法:
(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経の再生を増強し、かつ神経形態または密度の異常の発生を低減させる段階。
【請求項2】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経の損傷または喪失を最小限にするかまたは予防するための方法:
(a)角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)曝露前に炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって神経変性を減少させ、かつ神経形態または密度の異常の発生を低減させるかまたは予防する段階。
【請求項3】
活性が、IL-1受容体に炎症性IL-1サイトカインが結合することを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
被験体が、先天性欠損、疾患、外傷、医学的または外科的技法に起因する、角膜神経損傷または喪失を有すると同定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
被験体が、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼もしくは眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、先天性欠損、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、または末梢ニューロパシーに起因する、角膜神経損傷または喪失を有すると同定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
被験体が、疾患、外傷、または医学的技法に起因しうる、角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される、請求項2記載の方法。
【請求項7】
被験体が、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、または末梢ニューロパシーに起因しうる、角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
角膜神経損傷または喪失の、徴候または症状を有する被験体を同定する段階をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
角膜神経損傷または喪失の徴候が、角膜神経支配もしくは感覚の減少、角膜を支配する神経線維もしくは神経束の数の低減、角膜を支配するニューロンの死、神経伝達物質放出の減少もしくは喪失、神経生長因子放出の減少もしくは喪失、異常な流涙反射、異常な瞬目反射、異常な神経形態、異常な神経発芽の出現、異常な蛇行、ビーズ様神経形成の増加、神経線維束が細くなること、または神経線維束が太くなることである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
角膜神経損傷または喪失の症状が、異常な涙液産生もしくは乾燥、異常な瞬目、および焦点を合わせることが困難もしくは焦点を合わせる能力の喪失、視力の減少もしくは喪失、または角膜感受性の減少もしくは喪失である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する組成物が、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む、請求項3記載の方法。
【請求項12】
組成物が、0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
組成物が、2.5%(mg/ml)または5%(mg/ml)の濃度で存在する、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
組成物の形態が、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である、請求項1または2記載の方法。
【請求項15】
組成物が局所適用投与される、請求項1または2記載の方法。
【請求項16】
全身投与または非眼組織への実質的な散布を含まない、請求項1または2記載の方法。
【請求項17】
組成物が、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項18】
粘液溶解剤がN-アセチルシステインである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
組成物が、カルボキシメチルセルロース(CMC)をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項20】
組成物が、炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
組成物が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項22】
組成物が、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を低減するための方法:
(a)角膜リンパ管新生を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能または角膜組織侵入能を阻害し、かつ角膜リンパ管新生を低減する段階。
【請求項24】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を最小限にするかまたは防止するための方法:
(a)リンパ管新生の発現が発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、前記発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での形成能もしくは伸張能、または角膜組織侵入能を阻害する段階。
【請求項25】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を低減させるための方法:
(a)免疫の誘導を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ免疫の誘導を低減させる段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ系組織のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項26】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を最小限にするかまたは防止するための方法:
(a)免疫を発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、前記発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ免疫の誘導を最小限にするかまたは防止する段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ節のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項27】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態を低減させるための方法:
(a)自己免疫状態を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ自己免疫状態を低減させる段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ節のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項28】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態の発症を最小限にするかまたは予防するための方法:
(a)自己免疫状態を発症するリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発症前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ自己免疫状態の発症を最小限にするまたは予防する段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ節のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項29】
被験体が、ドライアイ関連眼表面疾患を有する、請求項23、25、または27記載の方法。
【請求項30】
被験体が、ドライアイ関連眼表面疾患を発症するリスクを有する、請求項24、26、または28記載の方法。
【請求項31】
活性が、IL-1受容体に炎症性IL-1サイトカインが結合することを含む、請求項23〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
インターロイキン-17またはその受容体のアンタゴニストを局所投与する段階をさらに含む、請求項1、2または23〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経を保護または再生するための方法:
(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物および炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を、被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強し、かつ神経形態または密度の異常の発生を低減させる段階。
【請求項1】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経を保護または再生するための方法:
(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経の再生を増強し、かつ神経形態または密度の異常の発生を低減させる段階。
【請求項2】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経の損傷または喪失を最小限にするかまたは予防するための方法:
(a)角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)曝露前に炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによって神経変性を減少させ、かつ神経形態または密度の異常の発生を低減させるかまたは予防する段階。
【請求項3】
活性が、IL-1受容体に炎症性IL-1サイトカインが結合することを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
被験体が、先天性欠損、疾患、外傷、医学的または外科的技法に起因する、角膜神経損傷または喪失を有すると同定される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
被験体が、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼もしくは眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、先天性欠損、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、または末梢ニューロパシーに起因する、角膜神経損傷または喪失を有すると同定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
被験体が、疾患、外傷、または医学的技法に起因しうる、角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される、請求項2記載の方法。
【請求項7】
被験体が、神経栄養性角膜炎、単純ヘルペス、帯状疱疹角膜炎、真性糖尿病、三叉神経損傷、眼窩もしくは頭部手術、頭部外傷、動脈瘤、頭蓋内神経疾患、角膜屈折矯正手術、光学的角膜切除術(PRK)、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、眼表面疾患、ドライアイ症候群、非眼科障害、非眼科技法、または末梢ニューロパシーに起因しうる、角膜神経損傷または喪失に曝露されるリスクを有すると同定される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
角膜神経損傷または喪失の、徴候または症状を有する被験体を同定する段階をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
角膜神経損傷または喪失の徴候が、角膜神経支配もしくは感覚の減少、角膜を支配する神経線維もしくは神経束の数の低減、角膜を支配するニューロンの死、神経伝達物質放出の減少もしくは喪失、神経生長因子放出の減少もしくは喪失、異常な流涙反射、異常な瞬目反射、異常な神経形態、異常な神経発芽の出現、異常な蛇行、ビーズ様神経形成の増加、神経線維束が細くなること、または神経線維束が太くなることである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
角膜神経損傷または喪失の症状が、異常な涙液産生もしくは乾燥、異常な瞬目、および焦点を合わせることが困難もしくは焦点を合わせる能力の喪失、視力の減少もしくは喪失、または角膜感受性の減少もしくは喪失である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
IL-1受容体に対する炎症性IL-1サイトカインの結合を阻害する組成物が、SEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む、請求項3記載の方法。
【請求項12】
組成物が、0.1〜10%(mg/ml)の濃度で存在する、請求項1または2記載の方法。
【請求項13】
組成物が、2.5%(mg/ml)または5%(mg/ml)の濃度で存在する、請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
組成物の形態が、固体、ペースト、軟膏、ゲル、液体、エアロゾル、ミスト、ポリマー、フィルム、エマルション、または懸濁液である、請求項1または2記載の方法。
【請求項15】
組成物が局所適用投与される、請求項1または2記載の方法。
【請求項16】
全身投与または非眼組織への実質的な散布を含まない、請求項1または2記載の方法。
【請求項17】
組成物が、生理的に許容される塩、carbopolを有するポロキサマーアナログ、carbopol/HPMC、carbopol-メチルセルロース、粘液溶解剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、シクロデキストリン、および鉱油からなる群より選択される化合物をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項18】
粘液溶解剤がN-アセチルシステインである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
組成物が、カルボキシメチルセルロース(CMC)をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項20】
組成物が、炎症性インターロイキン-1サイトカインまたはIL-1受容体をコードするポリヌクレオチドまたはポリペプチドの転写、転写物安定性、翻訳、修飾、局在化、分泌、または機能を阻害する、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
組成物が、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または低分子を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項22】
組成物が、モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、または低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項23】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を低減するための方法:
(a)角膜リンパ管新生を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能または角膜組織侵入能を阻害し、かつ角膜リンパ管新生を低減する段階。
【請求項24】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜リンパ管新生を最小限にするかまたは防止するための方法:
(a)リンパ管新生の発現が発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、前記発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での形成能もしくは伸張能、または角膜組織侵入能を阻害する段階。
【請求項25】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を低減させるための方法:
(a)免疫の誘導を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ免疫の誘導を低減させる段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ系組織のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項26】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜における免疫の誘導を最小限にするかまたは防止するための方法:
(a)免疫を発生するリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、前記発生前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ免疫の誘導を最小限にするかまたは防止する段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ節のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項27】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態を低減させるための方法:
(a)自己免疫状態を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ自己免疫状態を低減させる段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ節のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項28】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体の角膜組織に影響を及ぼす自己免疫状態の発症を最小限にするかまたは予防するための方法:
(a)自己免疫状態を発症するリスクを有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物を、発症前に被験体の角膜に局所投与して、それによってリンパ管の角膜組織内での伸張能、または角膜組織侵入能を阻害し、かつ自己免疫状態の発症を最小限にするまたは予防する段階であって、リンパ管が、角膜組織とリンパ節のあいだの免疫細胞の輸送および免疫応答の開始を可能にする、段階。
【請求項29】
被験体が、ドライアイ関連眼表面疾患を有する、請求項23、25、または27記載の方法。
【請求項30】
被験体が、ドライアイ関連眼表面疾患を発症するリスクを有する、請求項24、26、または28記載の方法。
【請求項31】
活性が、IL-1受容体に炎症性IL-1サイトカインが結合することを含む、請求項23〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
インターロイキン-17またはその受容体のアンタゴニストを局所投与する段階をさらに含む、請求項1、2または23〜28のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
以下の段階を含む、それを必要とする被験体における角膜神経を保護または再生するための方法:
(a)角膜神経損傷または喪失を有する被験体を同定する段階;および
(b)炎症性インターロイキン-1サイトカインの活性を阻害する組成物および炎症性インターロイキン-17サイトカインの活性を阻害する組成物を、被験体の角膜に局所投与して、それによって角膜神経再生を増強し、かつ神経形態または密度の異常の発生を低減させる段階。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−515164(P2012−515164A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545490(P2011−545490)
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/020646
【国際公開番号】WO2010/081091
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502144235)ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月11日(2010.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/020646
【国際公開番号】WO2010/081091
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502144235)ザ スキーペンズ アイ リサーチ インスティチュート インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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