説明

触媒とプロセス

本発明は、式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;L1とL2が、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC5-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され;但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC6-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルコキシ基、またはヒドロキシアルコキシアルキル基から選択され;Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり;x、y、およびZは互いに0または1であって、(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物に関する。本発明はさらに、組成物、および市販の水銀ベース触媒を使用して製造される硬化物品と同等の性能を有する硬化物品が得られるよう、有機金属化合物を触媒として使用してポリウレタン物品を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリマー(特にポリウレタン)を製造する上で有用な触媒、および前記触媒が使用されるプロセスと中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンやジルコニウムの化合物を含んだ触媒が、多くの応用分野において〔たとえば、エステル化反応において、およびイソシアナートとヒドロキシル基含有化学種(hydroxylic species)とを含有する反応混合物を硬化させてポリウレタンを形成させるために〕使用されていることがよく知られている。このような触媒は一般に、金属アルコキシド(たとえばチタンテトライソプロポキシド)または金属アルコキシドから誘導されるキレート化化学種を含む。
【0003】
ポリウレタンの製造に対し、多くの応用分野において選択されている触媒は、長年にわたって有機水銀化合物である。これは、これらの触媒が、反応が非常に遅いか又は反応が全く起こらないような初期誘導期を示し、次いで比較的硬質のポリマー物品を生成させるに足る時間にわたって継続して起こる速やかな反応を示す、という望ましい反応プロフィールをもたらすからである。こうした誘導期(ポットライフとしても知られている)により、触媒を加えた後に液体反応混合物を注入したり又は成形したりすることが可能になり、したがって製造業者にとっては製造プロセスをより制御しやすくなるので、この誘導期は望ましい現象である。ポットライフ後の反応が速やかで且つ完全に進行するということは、べたつきがなくて、製造設備における速い転換が可能となるよう所望する物理的特性を速やかに発現する完成品を得る上で重要なことである。
【0004】
しかしながら周知のように、水銀化合物は毒性があるので、水銀を含有せず、しかも公知の水銀含有触媒によって示される望ましい反応プロフィールを製造業者にもたらすような触媒が求められている。チタンアルコキシドはポリウレタン硬化反応に対する極めて有効な触媒であるけれども、上記のような、望ましいポットライフと望ましい硬化プロフィールとを有する反応プロフィールをもたらさない。多くの場合、反応は非常に速いが、誘導期を示さず、したがってポリウレタン混合物は極めて速やかにゲル化しやすく、最終形状に注型される前にゲル化を起こすことが多い。さらなる問題点は、初期反応が速やかであるにもかかわらず、得られるポリウレタンは、妥当な時間内にて満足できる程度の硬化を達成しない、ということである。この結果、べとつきがあって取扱いにくく、また水銀触媒を使用して製造される物品と比較して劣った物理的性質を有する最終物品が得られることになる。
【0005】
本発明の目的は、水銀を含有せず、ポリウレタン物品を製造するのに使用することができる効果的な触媒化合物を提供することにある。
チタンモノイソプロポキシトリス(イソステアラート)等のモノアルコキシチタナートが、無機物質と有機ポリマー物質との間のカップリング剤として使用されていることがよく知られている。たとえばUS-A(米国特許出願公開)-4397983は、ポリウレタン中の充填剤をカップリングさせるのにイソプロピルトリ(ドデシルベンゼンスルホニル)チタナートとイソプロピルトリ(ジオクチルホスファート)チタナートを使用することを開示している。
【0006】
US-A-4122062は、下記の式
a) (RO)zTi(A)x(B)yまたは
b) (RO)Ti(OCOR')p(OAr)q
(式中、Rは、1〜30個の炭素原子を有する、一価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、もしくはアラルキル基、またはこれらの置換誘導体であり;Aは、チオアロキシ、スルホニル、スルフィニル、ジエステルピロホスファート、ジエステルホスファート、またはこれらの置換誘導体であり;OArはアロキシであり;BはOCOR'またはOArであり;R'は、水素、または1〜100個の炭素原子を有する一価の有機基であり;x+y+zは4に等しく;p+qは3に等しく;x、z、およびqは、1、2、または3であってよく;そしてyとpは、0、1、または2であってよい)の一方を有する有機チタナート;このような有機チタナートと微粉砕した無機物質との反応生成物;およびこのような反応生成物を含有するポリマー物質;を開示している。これらの生成物は、ポリマー物質中における充填剤の分散、および得られる充填剤入りポリマーの特性を改善するためのカップリング剤として使用されている。
【0007】
US-A-4094853は、微粉砕した無機物質と式(RO)Ti(OCOR')3(式中、Rは、1〜30個の炭素原子を有する、一価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、もしくはアラルキル基、またはこれらの置換誘導体であり;R'は一価の有機基であって、分子における3つのR'基中の炭素原子の合計数が14以下である)を有する有機チタナートとの反応生成物を含んだ組成物;およびこのような反応生成物を含有するポリマー物質;を開示している。
【0008】
EP-A(欧州特許出願公開)-0164227は、式RR1R2CCH2OM(A)a(B)b(C)c(式中、Mは、チタンまたはジルコニウムであり;R、R1、およびR2はそれぞれ、最大で20個の炭素原子を有する一価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、もしくはアルカリール基であるか、またはこれらのハロゲン置換もしくはエーテル置換誘導体であって、R2はさらに、前記基のオキシ誘導体、またはエーテル置換されたオキシ誘導体であってもよく;A、B、およびCはそれぞれ、最大で30個の炭素原子を含有する一価のアロキシ、チオアロキシ、ジエステルホスファート、ジエステルピロホスファート、オキシアルキルアミノ、スルホニル、またはカルボキシルであり;a+b+c=3である)を有するネオアルコキシ化合物(neoalkoxy compounds)を開示している。該化合物は、カップリング剤且つポリマー加工剤として有用であり、該化合物を含有する組成物、および該化合物を含んだポリマー物質を製造する方法も開示されている。
【0009】
GB-A(英国特許出願公開)-1509283は、式Ti(OR)4-n(OCOR')n(式中、ORは加水分解可能な基であり;R'は加水分解性不可能な基であり;そしてnは約3.0〜3.50、好ましくは3.1〜3.25である)で示される新規の有機チタナートを開示している。Rは、1分子当たり1〜5個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、または環状のアルキル基であってよい。加水分解不可能な基(OCOR')は、6〜24個の炭素原子を有する有機酸(たとえば、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ラウリン酸、およびタル油脂肪酸等)から形成されるのが好ましい。該化合物は、ポリマー化合物中への無機固体の分散性を改善すべく、また充填剤入りポリマー化合物の物理的特性を改善すべく無機固体を処理するのに使用される(すなわち、有機チタナートはカップリング剤として使用される)。
【0010】
MonteとSugerman(Journal of Cellular Plastics,November-December 1985,p385)は、種々のネオアルコキシチタナートとネオアルコキシジルコナートを種々のポリマー系におけるカップリング剤として使用することを開示している。彼らは、これら化合物のうちの特定の化合物が、ポリマーを基質に結合させることに加えて、ポリオール-イソシアナート反応を直接触媒することができる、と結論づけている。
【0011】
US-A-2846408は、一般式Me(OR)mXn-m(式中、Rはアルキルであり;Xは、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ナフテン酸、およびフェニル酢酸を含めた有機カルボン酸基であり;mは少なくとも1であり;nは金属Meの原子価である)で示される金属化合物を使用して、特定の細孔構造をもつポリウレタン発泡プラスチックを製造する方法を開示している。Meとしては、チタン、ジルコニウム、およびスズがある。US-A-2926148は、アルコールの混合物とジイソシアナートとを反応させて樹脂を作製するための触媒を開示している。触媒としては、スズ化合物は別として、テトラアルキルチタナート、テトラアルキルジルコナート、および種々のチタンエステル(トリエタノールアミンチタナート-N-ステアラート、トリエタノールアミンチタナート-N-オレエート、オクチレングリコールチタナート、およびトリエタノールアミンチタナートを含む)がある。US-A-6133404は、モノアルコキシチタナートを生分解性のポリエステル組成物の製造に有用な添加剤として使用することを開示している。US-A-5591800は、環状チタン触媒(たとえば、テトラアルキルチタナートとトリオールとの反応によって形成されるチタナート化合物)を使用してポリエステルを製造することを開示している。
【発明の開示】
【0012】
本発明によれば、我々は、式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり、
(i) Rがアルキルであるときは、L1とL2が、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、シロキシ、あるいは置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトールから互いに独立的に選択され、
(ii) Rが、ヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であるときは、L1とL2が、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され;
但し、ケース(i)とケース(ii)の両方において、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルコキシ基、またはヒドロキシアルコキシアルコキシ基から選択され;
xとyはそれぞれ、0または1であり;
z=1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、我々はさらに、
a) i) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、または
ii) ヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物
のいずれか;
b) 式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
L1とL2は、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され、但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルキル基、またはヒドロキシアルコキシアルキル基から選択され;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり;
x、y、およびzは、それぞれ0または1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物;および必要に応じて
c) 連鎖調節剤(chain modifiers)、希釈剤、難燃剤、発泡剤、離型剤、水、カップリング剤、リグノセルロース保存剤、殺真菌剤、ワックス、サイズ剤、充填剤、着色剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、難燃剤、可塑剤、および他の結合剤から選択される1種以上のさらなる成分;
を含む組成物を提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、我々はさらに、
a) i) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、または
(ii) ヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物と、
式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
L1とL2は、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され、但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルキル基、またはヒドロキシアルコキシアルキル基から選択され;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり;
x、y、およびzは、それぞれ0または1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物とを混合することによって混合物を作製する工程;
b) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、またはヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物の他方を前記混合物に加える工程;
c) 前記混合物を、ポリウレタン物品を得るのに必要な形状に形成する工程;
d) 前記混合物を硬化させる工程;および
e) 必要に応じて、混合物を、後硬化コンディショニング(post-cure conditioning)のための特定の条件にて処理する工程;
を含むポリウレタン物品の製造法を提供する。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、我々は、
(a) 式M(OR)V〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;Vは金属Mの原子価であり;そしてRはアルキルである〕を有する金属アルコキシド;
(b) 成分(a)中の金属Mの1モル当たり約1または2モルの成分(b)をもたらす量の、β-ジケトン、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナート;および
(c) 成分(a)中の金属Mの1モル当たり約1モルの成分(c)をもたらす量の、置換もしくは未置換のアリールオキシ、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルキルアルコール、またはヒドロキシアルコキシアルコール;
を一緒に反応させることを含み、
(d) 必要に応じて、(a)と(b)との反応時に、および(a)と(c)との反応時に形成されるアルコールROHを除去することを含む、
有機金属組成物の製造法を提供する。
【0016】
工程(d)を行うのが好ましい。好ましいプロセスにおいては、先ず金属アルコキシドM(OR)Vを成分(b)または成分(c)の一方と反応させ、次いで成分(b)または成分(c)の他方と反応させる。アルコキシドと成分(b)との反応時に、およびアルコキシドと成分(c)との反応時に形成されるアルコールROHは、それぞれの反応工程後に、通常は蒸留によって除去するのが好ましい。必要に応じて、生成物をさらにヒドロキシ官能化アルコール〔好ましくは、ヒドロキシ-アルコール、ヒドロキシアルコキシアルコール、または(ヒドロキシ)ポリオキシアルキルアルコール〕と反応させ、さらなる量のROHを反応混合物から除去する。“約1(または2)モル”とは、反応物の量が、金属1モル当たり約1モルまたは約2モルとなるように算出される、ということを意味している〔通常は、反応物の算出量の±10%が適切であり、±5%以下(たとえば±2%)が特に適している〕。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、我々は、上記プロセスの反応生成物を提供する。
Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムであるのが好ましく、チタンまたはジルコニウムであるのが最も好ましい。
【0018】
Rは、C1-C22アルキル等のアルキル基が好ましく、C1-C8アルキルがさらに好ましい。基ORは化学変化を起こしやすく、触媒反応のための活性部位となる。“化学変化を起こしやすい(labile)”とは、触媒作用を受ける反応条件下において、反応メカニズムを容易にするために、基ORが反応物分子のうちの1つによって置換または挿入を受けることがある、ということを意味している。比較的化学変化を起こしやすいOR基は、金属原子から容易に分離し、-OH官能価またはCOOH官能価を有する他の分子と入れ替わることがある。Rは、ジオールから誘導されるヒドロキシ-アルキル基(たとえば1,4-ブタンジオール)であってもよいし、あるいはポリオキシアルキル基〔たとえば、ジアルキレングリコールやポリアルキレングリコール(たとえば、ジエチレングリコールやポリエチレングリコール)〕であってもよい。好ましいR基としては、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、2-エチル-ヘキシル、ヒドロキシブチル、ポリオキシエチル、および2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エチルがある。
【0019】
1つの実施態様においては、-ORは、ジオール(たとえば、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、またはポリアルキレングリコール)から誘導されるアルコキシドである。ポリウレタンの製造においては、短鎖のポリオール(通常はジオール)が、ポリイソシアナートと反応させようとするポリオール混合物の一部としての連鎖延長剤として使用されることが多い。ポリウレタン反応のための連鎖延長剤としては、通常は1,4-ブタンジオールが使用される。したがって、ビス官能性アルコールまたはポリ官能性アルコールを形成することができて、単一官能性アルコール(成長しつつあるポリマー鎖を終結させる傾向を有することがある)を形成するむしろ連鎖延長剤として機能することができる官能化アルコキシドを、触媒の化学変化を起こしやすいOR基としてもたらすことが有益である。
【0020】
L1、L2、およびL3はそれぞれ化学変化を起こしにくい基であり、このことは、反応条件下において、反応混合物中に存在するヒドロキシル含有分子によって入れ替えられることがないよう、あるいは挿入されることのないよう、金属原子に比較的強く結合している基である、ということを意味している。したがって、基L1、L2、およびL3によって占有されている金属原子上の部位は、触媒作用のための活性部位として利用することはできない。
【0021】
L1とL2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。L1とL2は、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され、但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0である。R1は、ヒドロキシ、カルボニル、カルボキシ、アミノ、アルコキシ、またはポリアルコキシ基で置換されていてもよく、あるいはその炭素主鎖中にカルボニル基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシ基、またはポリアルコキシ基を組み込んでもよい。
【0022】
L1とL2は、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキル、もしくはN-アルキルアセトアセタミド(このときアルキルはC1-C8アルキル基であるのが好ましい)(たとえば、アセト酢酸エチルやN,N-ジエチルアセトアセタミド)、またはヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル(たとえば、サリチル酸、マンデル酸、レブリン酸、ナフタレンジカルボン酸、クエン酸、乳酸、または酒石酸)から選択するのが好ましい。L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンド(たとえば、L1がサリチル酸またはマンデル酸)であって、x=1であるときは、y=0であり、そしてこのケースにおいては、x+y+zがV−1未満である。したがってたとえば、MがTiであってL1がサリチル酸であるときは、V=4、y=0、そしてx+y+z=2である。金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドの例としては、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル;2-ヒドロキシ-ベンジルアルコール(サリチルアルコール)等のビス-ヒドロキシ化合物もしくはそのエステル(たとえば3-オキソ-酪酸等のβ-カルボニル基を有するカルボン酸);置換フェノール、特に、2つのフェノール部分が炭化水素含有架橋または窒素含有架橋によって連結されている場合のビスフェノール化合物〔たとえば2,2'-エチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノラート)〕;および対称もしくは非対称の、ヒドラジン架橋フェノール誘導体またはアミン架橋フェノール誘導体;がある。
【0023】
L1またはL2は、共有結合のほかに、金属原子と配位結合を形成することができ、したがってMとL基との間に形成される結合の総数はV−1より多い。このことは、L1またはL2が、該化合物のエノラート形を介してカルボニル基にて金属原子と反応することができるジケトナート(たとえば、アセチルアセトンやアセト酢酸アルキル)またはアセトアセタミドであって、電子供与性のエステル基もしくはアミド基と金属との間に配位結合を形成する場合に起こることがある。たとえばMがチタンであるときは、チタンの安定な錯体が得られる。
【0024】
Rがアルキルであるとき、L1とL2は、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、シロキシ、あるいは置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトールから互いに独立的に選択するのが好ましい。
【0025】
L1とL2を、置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトールから選択することは、特にL3がこのタイプのリガンドであるときはあまり好ましくない。
L3は、置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトール、アルキルフェノール、安息香酸、またはC2-C30カルボン酸(好ましくは、ステアリン酸、イソステアリン酸、または2-エチル-ヘキシルカルボン酸等のC6-C22カルボン酸)から選択するのが好ましい。
【0026】
本発明のさらに他の実施態様において、我々は、本発明の組成物をさらなる成分としての酸と混合すると、本発明の組成物が、特定のポリウレタン反応物系における特に効果的な硬化触媒になる、ということを見出した。この酸は、通常の取扱い条件下にて液体であるカルボン酸であるのが好ましい。アルキルカルボン酸、たとえばC2-C30カルボン酸(特に、酪酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、または2-エチル-ヘキシルカルボン酸等のC4-C22カルボン酸)が適切であることがわかった。もし組成物が、あるカルボン酸をL1、L2、またはL3のうちの1つとして含有する場合、混合物に加えるさらなるカルボン酸は同じ酸であるのが適切である。しかしながら、このことは必要なことではなく、我々は、異なった酸を使用して、ほぼ同等の有益な効果を得ることができる、ということを見出した。さらなる酸は、本発明の化合物といかなる割合でも混合することができる。さらなる酸が存在する場合、〔化合物〕:〔使用する酸〕の比は、酸と有機金属化合物の分子量に応じて、一般には重量比にて1:99〜99:1の範囲であり、より一般的には10:90〜90:10の範囲である。さらなる酸が存在する場合、さらなる酸は、有機金属化合物1モル当たり酸0.1〜10モル〔たとえば、有機金属化合物1モル当たり約0.5〜5モル(好ましくは約0.5〜3モル)の酸〕の比にて加えるのが好ましい。
【0027】
ポリウレタンを硬化させるための触媒は、液状形態にて供給するのが好ましい。本発明の有機金属組成物は、ニートで供給することもできるし(特に、組成物自体が液体である場合)、あるいは適切な溶媒(たとえば、トルエン、ヘキサン、およびヘプタン等)に溶解した液体として供給することもできる。有機金属組成物は、すでに存在している液体成分中に、あるいはポリウレタン反応成分〔ジオールやグリコール等(たとえばブタンジオールやジエチレングリコール)〕に対して相溶性がある液体成分中に供給するのがさらに好ましい。
【0028】
特定の理論で拘束されるつもりはないけれども、本発明の組成物は、有機金属組成物上の不安定部位において、ポリオールがOR基による入れ替えを受けるか又はOR基が挿入されることによって、あるいはイソシアナートがOR基による入れ替えを受けるか又はOR基が挿入されることによって硬化触媒として機能すると考えられる。チタン触媒によるウレタン反応のこのメカニズムについては、たとえばMeth-Cohnらによる「J.Chem.Soc(C),1970,p.132」を参照のこと。
【0029】
イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、またはヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物は、このような化合物の混合物、またはこのような化合物と別の化合物(たとえば、充填剤や他の添加剤等)との混合物を含んでよい。
【0030】
本発明の化合物は、ヒドロキシ官能化分子(たとえばポリオール)とイソシアナート官能化分子(たとえばポリイソシアナート)との間の反応に対する硬化触媒として特に有用である。この反応は、市販されている多くの二成分系ポリウレタンシステムの基礎となっている。ポリオール成分は、ポリウレタンの製造に適したものであればいかなるポリオールでもよく、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリシロキサンポリオール、および付加重合体もしくは縮合重合体の、上記タイプのポリオール中分散液または溶液(“ポリマー”ポリオールと呼ばれることが多い)などがある。多種多様なポリオールが従来技術にて説明されており、ポリウレタン材料の配合者にはよく知られている。
【0031】
一般に、特定の物理的特性を有するポリウレタンを製造するには、ポリオールの混合物が使用される。ポリオールまたは複数種のポリオールは、配合者の要件に適合した分子量、主鎖タイプ、およびヒドロキシ官能価を有するように選択される。ポリオールは一般に、連鎖延長剤(1,4-ブタンジオールやジエチレングリコール等の比較的短鎖のジオール、または低分子量ポリエチレングリコールであることが多い)を含む。工業的に使用されている他の連鎖延長剤〔たとえばMOCA(4,4-メチレンビス(2-クロロアニリン))等のジアミン〕も使用することができる。
【0032】
本発明の触媒と共に使用するのに適した、ポリウレタンの製造に使用されるイソシアナート組成物は、この目的に対して工業的に有用ないかなる有機ポリイソシアナート化合物、または有機ポリイソシアナート化合物の混合物であってもよい。ポリイソシアナートは室温で液体であるのが好ましい。適切な有機ポリイソシアナートとしては、ジイソシアナート(特に芳香族ジイソシアナート)およびより高い官能価を有するイソシアナートがある。適切な有機ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアナートやイソホロンジイソシアナート等の脂肪族イソシアネート;m-フェニレンジイソシアナート、p-フェニレンジイソシアナート、トリレン-2,4-ジイソシアナート、トリレン-2,6-ジイソシアナート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアナート、ナフチレン-1,5-ジイソシアナート、ジフェニレン-4,4'-ジイソシアナート、4,4'-ジイソシアネート-3,3'-ジメチルジフェニル、3-メチルジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアナート、およびジフェニルエーテルジイソシアナート等の芳香族イソシアナート;シクロヘキサン-2,4-ジイソシアナート、シクロヘキサン-2,3-ジイソシアナート、1-メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアナート、1-メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアナート、これらの混合物、およびビス(イソシアナートシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジイソシアナート;ならびに2,4,6-トリイソシアナートトルエンや2,4,4-トリイソシアナートジフェニルエーテル等のトリイソシアナート;がある。
【0033】
イソシアヌラート基、カルボジイミド基、またはウレトンイミン基を含有する変性ポリイソシアナートも使用することができる。ポリイソシアナートはさらに、過剰のジイソシアナートまたはより高い官能価のポリイソシアナートとポリオール(たとえば、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール)とを反応させることによって製造されるイソシアナート末端プレポリマーであってもよい。プレポリマーの使用は、市販のポリウレタンシステムにおいて一般的に見られる。これらのケースにおいては、イソシアナートもしくはプレポリマー中にポリオールが既に組み込まれているが、重合の前に、連鎖延長剤やポリオール等のさらなる成分をイソシアナートプレポリマー混合物と混合することができる。
【0034】
イソシアナートの混合物〔たとえばトリレンジイソシアナート異性体の混合物(たとえば、2,4-異性体と2,6-異性体との市販混合物等)〕を本発明の有機金属組成物と組み合わせて使用することができる。ジイソイアネートとより高級のポリイソシアナート〔たとえば、三量体(イソシアヌラート)やプレポリマー〕との混合物も使用することができる。ポリイソシアナート混合物は、必要に応じて単官能イソシアナート(たとえばp-エチルフェニルイソシアナート)を含有してもよい。
【0035】
本発明の有機金属組成物は通常、ポリオール成分とイソシアナート成分とを混合してポリウレタンを形成させる前にポリオールに加える。しかしながら必要であれば、この代わりに、イソシアネート成分に有機金属組成物を加えることもできる。
【0036】
本発明の触媒組成物、ポリイソシアナート、およびポリイソシアナートに対して反応性の化合物を含有する組成物は、連鎖変性剤(chain modifiers)、希釈剤、難燃剤、発泡剤、離型剤、水、カップリング剤、リグノセルロース保存剤、殺真菌剤、ワックス、サイズ剤、充填剤、着色剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、難燃剤、可塑剤、および他の結合剤等の従来の添加剤をさらに含んでもよい。ポリウレタン組成物に対する配合処方中に組み込むためのこれら成分および他の成分は当業者によく知られており、個々の目的に適うよう選択することができる。混合物が硬化したら、ポストキュアーが可能となるようさらに状態調節することができる。一般には、ポストキュアーは、ポリウレタン物品(たとえばコーティング等)が取り扱ったり、脱型したりすることができる状態にまで硬化したときに行われ、たとえばオーブン中に配置することによって高温に保持して、ポリウレタン物品の完全硬化特性を発現または向上させることができる。
【0037】
本発明の触媒は、ポリウレタンフォーム、軟質もしくは硬質のポリウレタン物品、ポリウレタン塗料、ポリウレタン接着剤、ポリウレタンエラストマー、ポリウレタンシーラント、熱可塑性ポリウレタン、およびポリウレタンバインダー(たとえば、延伸ストランドボードを製造するための)を製造するのに有用である。本発明の触媒はさらに、ポリウレタンプレポリマー(すなわち、より高分子量のポリウレタン物品もしくはポリウレタン組成物に硬化させるための、最終使用者に供給される比較的低分子量のウレタンポリマー)を製造する際にも有用である。本発明の触媒は一般に、全反応系の重量(すなわち、ポリイソシアナート成分とポリオール成分の合計重量)を基準として1×10-4〜10重量%の範囲の濃度をもたらすようイソシアナートおよび/またはアルコール混合物中に存在する。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
実施例1
Ti(OCH(CH3)2)(OC6H5)3
チタンテトラ(イソプロポキシド)(VERTEC(商標)TIPT)(40g,0.14モル)とフェノール(39.7g,0.42モル)とをロータリーエバポレーター・フラスコ中にて約30分反応させ、次いで置き換えられたイソプロピルアルコール(IPA)を減圧蒸留にて除去した。生成物は室温にて半固体であった。IPAが生成物中に全く捕捉されないようにするために、少量のn-ヘキサンを攪拌しながら生成物に加えて生成物を全て溶解し、次いで再び30in/Hgにて蒸留した。生成物は半固体であった。収率は98.78%であった。
【0039】
実施例2
Ti(OCH(CH3)2)(OC6H4CH3)3
TIPT(35g,0.12モル)と2-メチルフェノール(40g,0.37モル)とを反応させたこと以外は、実施例1の手順を繰り返した。生成物は室温にて半固体であった。収率は100%であった。
【0040】
実施例3
Ti(OCH(CH3)2)(CH3COCH2COCH3)2(OC6H5)
TIPTとアセチルアセトンとを、TIPT1モル:アセチルアセトン2モルのモル比にて反応させた。得られた化合物“前駆体3”(橙赤色の液体,49g,0.10モル)とフェノール(9.5g,0.10モル)とをロータリーエバポレーター・フラスコ中にて約30分反応させ、次いで減圧にて60℃で蒸留して置き換えられたIPAを除去した。生成物は室温にて半固体であった。収率は97.2%であった。
【0041】
実施例4
Ti(OCH(CH3)2)(CH3COCH2COCH3)2(OCOC17H35)
橙赤色液体である前駆体3の一部(50g,0.10モル)とイソステアリン酸(29.34g,0.10モル)とをロータリーエバポレーター・フラスコ中にて約30分反応させ、次いで減圧にて60℃で蒸留して置き換えられたIPAを除去した。生成物は室温にて半固体であった。収率は99%であった。
【0042】
実施例5
Ti(OCH(CH3)2)(OC6H5)(C2H5OCOCH2COCH3)2
TIPTとアセト酢酸エチルとを、TIPT1モル:アセト酢酸エチル2モルのモル比にて反応させ、生成物を蒸留して、TIPT1モル当たり2モルのIPAを除去した。得られた生成物(室温にて橙色の半固体,50.0g,0.12モル)とフェノール(11.1g,0.12モル)とをロータリーエバポレーター・フラスコ中にて約30分反応させ、次いで減圧にて蒸留して置き換えられたIPAを除去した。生成物は室温にて半固体であった。収率は98.5%であった。
【0043】
実施例6
Ti(OCH(CH3)2)(OCOC6H4O)(OCOC17H35)
14.5g(0.1056モル)のサリチル酸を約116gのIPA中に溶解した。この酸溶液にTIPT(30g,0.11モル)を滴下し、振とうして生成した析出物を溶解し、次いでロータリーエバポレーター中にて約30分混合した。幾らかの沈殿物が生じた。イソステアリン酸(30g,0.1056モル)を加えると、沈殿物が溶解して透明な橙色溶液が得られた。生成した全てのIPAを、減圧にて60℃で溶液から除去した。得られた生成物は室温にて粘稠な液体であった。
【0044】
実施例7
Ti(OC2H4OC2H4OH)(OC6H5)3
実施例1の方法によって製造した触媒に0.14モルのジエチレングリコール(DEG)を加えて0.14モルのIPAを置き換えた。得られた触媒のDEG中50%溶液を作製した。
【0045】
実施例8
Ti(OC2H4OC2H4OH)(CH3COCH2COCH3)2(OCOC17H35)
実施例4と全く同じ方法にて触媒を作製し、次いで0.10モルのDEGを加えて0.10モルのIPAを置き換えた。触媒のDEG中50%溶液を作製した。
【0046】
実施例9
Ti(OC2H4OC2H4OH)(OCOC6H4O)(OCOC17H35)
実施例6と全く同じ方法にて触媒を作製し、次いで0.11モルのDEGを加えて0.11モルのIPAを置き換えた。触媒のDEG中50%溶液を作製した。
【0047】
実施例10
Ti(OC2H4OC2H4OH)2(CH3COCH2COCH3)2
前駆体3(50g,0.10モル)をロータリーエバポレーター中に入れ、これにDEG(21.8g,0.21モル)を加えた。置き換えられたIPAを全て、減圧蒸留によって除去した。触媒のDEG中50%溶液を作製した。
【0048】
比較例11
Ti(OCH(CH3)2)(OCOC17H35)3
TIPT(10g,0.04モル)とイソステアリン酸(30.01g,0.11モル)とをロータリーエバポレーター・フラスコ中にて約30分反応させ、次いで置き換えられたIPAを60℃で減圧蒸留した。生成物は室温において粘稠な液体であり、温度を120℃に上昇させても、幾らかのIPAが除去されずに組み込まれたままであった。
【0049】
実施例12
Zr(OC3H7)(OCOC6H4O)(OCOC17H35)
44.5gのVERTEC(商標)NPZ(n-プロパノール中に0.1モルのテトラn-プロピルジルコニウムを含有)をフラスコ中に入れ、28.75g(0.10モル)のイソステアリン酸を攪拌しながら加えた。本混合物を70℃にて減圧(30")蒸留して20.5gのn-プロパノールを除去した。14.5g(0.11モル)のサリチル酸を約47gのn-プロパノール中に溶解し、フラスコ中の混合物中に加えた。さらに58gのn-プロパノールを減圧(30"Hg)にて70℃で除去し、55gの淡黄緑色の固体生成物が残った。
【0050】
実施例13
Ti(DEAA)2(1-ナフトール)(OCH(CH3)2)
ロータリーフラスコ中に仕込んである100g(0.35モル)のTIPTに、攪拌しながら110g(0.70モル)のN,N-ジエチルアセトアセタミド(DEAA)を非常にゆっくりと加えた。この反応は発熱反応であった。本混合物を減圧(30"Hg)にて60℃で蒸留して42gの2-プロパノールを除去した。フラスコ中の混合物に50.78gの1-ナフトールを加えた。次いで、残留している2-プロパノール(0.35モル,20g)を減圧蒸留によって除去した。
【0051】
実施例14
実施例1〜10の触媒を使用することによるポリウレタン混合物の硬化
少量の触媒(表1を参照)を、22gの市販ポリエーテルポリオール(分子量1000〜2000、水分脱除剤を含有)、シリカベースの充填剤、および連鎖延長剤としての1,4-ブタンと共にカップ中に入れた。触媒とポリオールを、高速ミキサーにて3000rpmで混合した。4,4'-メチレンビス(フェニルイソシアナート)をベースとするイソシアナートプレポリマー(10g)を加え、本混合物を再びミキサー中にて混合した。本混合物を壁の平滑な使い捨てアルミニウム秤量皿に注いだ。混合物中に熱電対線を挿入して、30秒という一定間隔にて発熱値を記録した。混合物がタックフリーになって乾燥状態になるまでの時間を記録した。成形品がタックフリーになったときに、BAREISS HHP-2001硬度試験を使用して成形品を硬度測定に付して、ショアーA硬度をDIN53505に記載のように測定した。実施例において作製した触媒、および比較として市販の水銀ベース触媒〔フェニル水銀ネオデカノエート(表では“Hg-cat”と記載してある〕を使用して、硬化と試験をDIN53505に記載のように行った。得られた結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
これらの結果から、本発明の触媒は、ポリウレタン混合物を硬化させることができること、そして本発明の触媒を水銀触媒より少ない量にて使用した場合でも、比較の水銀ベース触媒を使用して製造される硬化生成物と同等以上の特性を有する硬化生成物をもたらすということがわかる。
【0054】
実施例15
実施例6において製造した触媒(2.17g,ポリオール100g当たり4.51ミリモル)を混合容器に加えた。MOCA(4,4'-メチレンビス[2-クロロアニリン])を含有するポリオールを容器に加え、3000rpmにて30秒間混合した。TDI(100g)を含有するプレポリマーを容器に加え、3000rpmにて30秒間混合した。次いで本混合物をアルミニウムカップに8mmの深さで移し、硬化させ、前述のようにショアーA硬度を測定した。比較のため、(テトラ-n-ブチル)チタナート(VERTEC TNBT)を使用して類似の手順に従った。得られた結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例16
触媒組成物に酸を加えた場合と加えない場合について、実施例15に記載の一般的な手順によって触媒を試験した。酸を使用した場合は、触媒と酸とをブレンドして、有機金属化合物を酸に溶解した形の安定な溶液を形成させた。組成物を、ポリオール100g当たり4.51ミリモルの金属をもたらすよう算出した量にてポリオールに加えた。イソシアナートを加えた後、組成物をオーブン中にて82℃で硬化させた。硬度は、1時間ごとに4時間にわたって測定した。使用した組成物と得られた結果を表3に示す。
【0057】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり、
(i) Rがアルキルであるときは、L1とL2が、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、シロキシ、あるいは置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトールから互いに独立的に選択され、
(ii) Rが、ヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であるときは、L1とL2が、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され;
但し、ケース(i)とケース(ii)の両方において、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルコキシ基、またはヒドロキシアルコキシアルコキシ基から選択され;
xとyはそれぞれ、0または1であり;
z=1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物。
【請求項2】
Rが、C1-C8アルキル基、またはジオールから誘導されるヒドロキシ-アルキル基である、請求項1記載の有機金属化合物。
【請求項3】
Rが、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヒドロキシブチル、ポリオキシエチル、および2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エチルからなる群から選択される、請求項2記載の有機金属化合物。
【請求項4】
L1とL2が、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキル、N-アルキルアセトアセタミド、サリチル酸もしくはそのエステル、マンデル酸もしくはそのエステル、レブリン酸もしくはそのエステル、またはナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステルから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
【請求項5】
L3が、置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトール、あるいはC2-C30カルボン酸からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機金属化合物と酸との混合物を含む、ウレタン結合の形成を触媒するのに適した硬化触媒組成物。
【請求項7】
前記有機金属化合物と前記酸とを、有機金属化合物1モル当たり酸0.1〜10モルというモル比にて混合する、請求項6記載の硬化触媒組成物。
【請求項8】
酸がC2-C30カルボン酸である、請求項6または請求項7に記載の硬化触媒組成物。
【請求項9】
a) i) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、または
ii) ヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物
のいずれか;
b) 式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
L1とL2は、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC5-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され、但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC6-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルキル基、またはヒドロキシアルコキシアルキル基から選択され;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり;
x、y、およびzは、それぞれ0または1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物;および必要に応じて
c) 連鎖調節剤、希釈剤、難燃剤、発泡剤、離型剤、水、カップリング剤、リグノセルロース保存剤、殺真菌剤、ワックス、サイズ剤、充填剤、着色剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、難燃剤、可塑剤、および他の結合剤から選択される1種以上のさらなる成分;
を含む組成物。
【請求項10】
Rがアルキルであるときは、L1とL2が、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、シロキシ、あるいは置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトールから互いに独立的に選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
酸をさらに含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
酸と成分b)の有機金属化合物とを充分に混合する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
酸がC2-C30カルボン酸である、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
(a) 式M(OR)V〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;Vは金属Mの原子価であり;そしてRはアルキルである〕を有する金属アルコキシド;
(b) 成分(a)中の金属Mの1モル当たり約1または2モルの成分(b)をもたらす量の、β-ジケトン、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナート;および
(c) 成分(a)中の金属Mの1モル当たり約1モルの成分(c)をもたらす量の、置換もしくは未置換のアリールオキシ、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルキルアルコール、またはヒドロキシアルコキシアルコール;
を一緒に反応させることを含み、
(d) 必要に応じて、(a)と(b)との反応時に、および(a)と(c)との反応時に形成されるアルコールROHを除去することを含む、
有機金属組成物の製造法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機金属化合物を製造するための、請求項14記載の製造法。
【請求項16】
先ず金属アルコキシドM(OR)Vを成分(b)または成分(c)の一方と反応させ、次いで成分(b)または成分(c)の他方と反応させ、金属アルコキシドと成分(b)および成分(c)との反応時に形成されるアルコールROHをそれぞれの反応工程の後に除去する、請求項14または請求項15に記載の製造法。
【請求項17】
生成物を、好ましくはヒドロキシアルコール、ヒドロキシアルコキシアルコール、または(ヒドロキシ)ポリオキシアルキルアルコールであるヒドロキシ官能化アルコールとさらに反応させ、さらなる量のROHを反応混合物から除去する、請求項14〜16のいずれかに記載の製造法。
【請求項18】
a) i) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、または
(ii) ヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物と、
式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
L1とL2は、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC5-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され、但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC6-C30アルキルである)、ポリオキシアルキル基、またはヒドロキシアルコキシアルキル基から選択され;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり;
x、y、およびzは、それぞれ0または1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物とを混合することによって混合物を作製する工程;
b) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、またはヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物の他方を前記混合物に加える工程;
c) 前記混合物を、ポリウレタン物品を得るのに必要な形状に形成する工程;
d) 前記混合物を硬化させる工程;および
e) 必要に応じて、混合物を、後硬化コンディショニングのための特定の条件にて処理する工程;
を含むポリウレタン物品の製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり、
(i) Rがアルキルであるときは、L1とL2が、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、またはシロキシから互いに独立的に選択され、
(ii) Rが、ヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であるときは、L1とL2が、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され;
但し、ケース(i)とケース(ii)の両方において、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトール、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキルまたはベンゼンである)、ポリオキシアルコキシ基、またはヒドロキシアルコキシアルコキシ基から選択され;
xとyはそれぞれ、0または1であり;
z=1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物。
【請求項2】
Rが、C1-C8アルキル基、またはジオールから誘導されるヒドロキシ-アルキル基である、請求項1記載の有機金属化合物。
【請求項3】
Rが、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヒドロキシブチル、ポリオキシエチル、および2-(2-ヒドロキシエトキシ)-エチルからなる群から選択される、請求項2記載の有機金属化合物。
【請求項4】
L1とL2が、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキル、N-アルキルアセトアセタミド、サリチル酸もしくはそのエステル、マンデル酸もしくはそのエステル、レブリン酸もしくはそのエステル、またはナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステルから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
【請求項5】
L3が、置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトール、あるいはC2-C30カルボン酸からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機金属化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機金属化合物と酸との混合物を含む、ウレタン結合の形成を触媒するのに適した硬化触媒組成物。
【請求項7】
前記有機金属化合物と前記酸とを、有機金属化合物1モル当たり酸0.1〜10モルというモル比にて混合する、請求項6記載の硬化触媒組成物。
【請求項8】
酸がC2-C30カルボン酸である、請求項6または請求項7に記載の硬化触媒組成物。
【請求項9】
a) i) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、または
ii) ヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物
のいずれか;
b) 式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり、
(i) Rがアルキルであるときは、L1とL2が、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、またはシロキシから互いに独立的に選択され、
(ii) Rが、ヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であるときは、L1とL2が、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され;
但し、ケース(i)とケース(ii)の両方において、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のフェノールまたはナフトール、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキルまたはベンゼンである)、ポリオキシアルコキシ基、またはヒドロキシアルコキシアルコキシ基から選択され;
xとyはそれぞれ、0または1であり;
z=1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物;および必要に応じて
c) 連鎖調節剤、希釈剤、難燃剤、発泡剤、離型剤、水、カップリング剤、リグノセルロース保存剤、殺真菌剤、ワックス、サイズ剤、充填剤、着色剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤、チキソトロープ剤、難燃剤、可塑剤、および他の結合剤から選択される1種以上のさらなる成分;
を含む組成物。
【請求項10】
Rがアルキルであるときは、L1とL2が、β-ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、またはシロキシから互いに独立的に選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
酸をさらに含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
酸と成分b)の有機金属化合物とを充分に混合する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
酸がC2-C30カルボン酸である、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
(a) 式M(OR)V〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;Vは金属Mの原子価であり;そしてRはアルキルである〕を有する金属アルコキシド;
(b) 成分(a)中の金属Mの1モル当たり約1または2モルの成分(b)をもたらす量の、β-ジケトン、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC1-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナート;および
(c) 成分(a)中の金属Mの1モル当たり約1モルの成分(c)をもたらす量の、置換もしくは未置換のアリールオキシ、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC1-C30アルキル、または置換もしくは未置換のアリールである)、ポリオキシアルキルアルコール、またはヒドロキシアルコキシアルコール;
を一緒に反応させることを含み、
(d) 必要に応じて、(a)と(b)との反応時に、および(a)と(c)との反応時に形成されるアルコールROHを除去することを含む、
有機金属組成物の製造法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機金属化合物を製造するための、請求項14記載の製造法。
【請求項16】
先ず金属アルコキシドM(OR)Vを成分(b)または成分(c)の一方と反応させ、次いで成分(b)または成分(c)の他方と反応させ、金属アルコキシドと成分(b)および成分(c)との反応時に形成されるアルコールROHをそれぞれの反応工程の後に除去する、請求項14または請求項15に記載の製造法。
【請求項17】
生成物を、好ましくはヒドロキシアルコール、ヒドロキシアルコキシアルコール、または(ヒドロキシ)ポリオキシアルキルアルコールであるヒドロキシ官能化アルコールとさらに反応させ、さらなる量のROHを反応混合物から除去する、請求項14〜16のいずれかに記載の製造法。
【請求項18】
a) i) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、または
(ii) ヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物と、
式RO-M(L1)x(L2)y(L3)z
〔式中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄(III)、コバルト(III)、またはアルミニウムから選択される金属であり;
L1とL2は、ジケトナート、アセト酢酸のエステルもしくはアミド、ヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル、R1COO-(式中、R1は、置換もしくは未置換のC5-C30分岐鎖アルキルまたは直鎖アルキル、あるいはナフチルやアントラシル等の多環構造体を含めた置換もしくは未置換のアリールである)、ホスファート、ホスフィナート、ホスホナート、シロキシ、またはスルホナートから互いに独立的に選択され、但し、L1が、金属原子と2つの共有結合を形成するリガンドであって、x=1であるとき、y=0であり;
L3は、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、R2COO-(式中、R2は、直鎖もしくは分岐鎖のC6-C30アルキルである)、ポリオキシアルキル基、またはヒドロキシアルコキシアルキル基から選択され;
Rは、アルキル基であるか、またはヒドロキシ-アルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、もしくは(ヒドロキシ)ポリオキシアルキル基であり;
x、y、およびzは、それぞれ0または1であり;そして
(x+y+z)≦V−1(式中、Vは金属Mの原子価である)である〕で示される有機金属化合物とを混合することによって混合物を作製する工程;
b) イソシアナート基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いヒドロキシ基を有する化合物、またはヒドロキシル基含有物質と反応してポリウレタンを形成することができる、1つより多いイソシアナート基を有する化合物の他方を前記混合物に加える工程;
c) 前記混合物を、ポリウレタン物品を得るのに必要な形状に形成する工程;
d) 前記混合物を硬化させる工程;および
e) 必要に応じて、混合物を、後硬化コンディショニングのための特定の条件にて処理する工程;
を含むポリウレタン物品の製造法。

【公表番号】特表2006−506416(P2006−506416A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550827(P2004−550827)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004921
【国際公開番号】WO2004/044027
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】