触媒の製造方法
本発明は、多孔性触媒担体に適用された1種以上の触媒活性金属を含んでなる担持型金属触媒の製造方法及び該触媒の使用方法に関する。本方法は、触媒の製造の間に有機錯体の形成が必要であり、その形成後、該有機錯体を部分的又は完全に分解後、金属を還元して触媒を形成する。本触媒は、担体上の触媒活性金属の高レベルの金属分散と均一な分布を有する。本方法から得られる触媒は、フィッシャー-トロプシュ反応を触媒するとき及び炭化水素からの有機イオウ化合物の除去用吸着剤として特に有効である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、担持型触媒の製造方法、特に担体上に沈着した1種以上の活性金属を含んでなる担持型触媒の製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
担持型触媒、特に担持型金属若しくは金属酸化物触媒は技術的に周知である。金属酸化物基材上の小さい金属粒子の分散系が触媒材料として一般的に使用されている。最終触媒の物理的及び化学的性質は、金属粒子の沈着前の基材の調製、使用する沈着方法及びその後の金属/酸化物系の処理によって大きく左右される。
小さい粒径(高い分散)を有する高装填金属触媒及び担体表面上に均質に分布した金属粒子を調製する能力は、効率的な担持型触媒の重要な必要条件である。多くの場合、特に卑金属触媒では、高装填金属触媒は、担体上の局在領域内にクラスター形成している大きい金属粒子(>10nm)を有する。多くの反応の触媒活性は利用可能な表面金属部位の数と関係があるので、良い金属分散を有する触媒を製造できることが重要である。触媒金属部位の分布の均一性も重要な因子であり、粒子間距離を最大化は、焼結問題が少ない安定した担持型触媒の供給に役立ちうる。担持型金属触媒は、金属塩を含有する溶液の初期湿潤(incipient wetness)含浸によって調製されることが多く、乾燥させてからか焼して酸化物を形成する。次いで、この酸化物を還元して担持型金属触媒を形成する。
【0003】
当該技術では、耐火性無機酸化物担体上に沈着した活性金属の分散を改良して、フィッシャー-トロプシュ法で使うための触媒を製造する種々の試みが為されている。特に、触媒金属との組合せで必要なレニウム又は他群の8種の金属の量を減らすために種々のアプローチが当該技術で採用されている。
公開された国際特許出願WO 98/47618号では、約3〜6個の総炭素原子を有する多官能性カルボン酸を耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースと共-沈着させた後、か焼してフィッシャー-トロプシュ触媒を調製する。多官能性カルボン酸の例として種々のアミノ酸が挙げられる。
公開された国際特許出願WO 98/47620号では、炭水化物又は糖を、耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースと共-沈着させ、或いは耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースを沈着させた後に適用してからか焼してフィッシャー-トロプシュ触媒を調製する。
公開された国際特許出願WO 98/47617号では、ポリオールを耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースと共-沈着させた後、か焼してフィッシャー-トロプシュ触媒を調製する。
最終触媒中の金属の分散を制御できる担持型金属触媒の新規な製造方法に対する継続的な要望がある。
従って、本発明の目的は、触媒中の金属分散の制御を可能にする担持型金属触媒の製造方法を提供することである。
【0004】
(発明の概要)
本発明の方法では、担持型金属触媒の調製で用いる試薬と調製工程について特有の制御を行うことによって、改良された金属分散特性を有する担持型金属触媒が得られることが分かった。
従って、第1局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に沈着した1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体を有する担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した前記1種以上の有機金属錯体を部分的に分解する工程;及び
c)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
【0005】
第2局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を部分的に分解する工程;及び
d)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
【0006】
第2局面のさらなる実施形態では、担体の、その上に沈着した1種以上の触媒金属前駆体の1種以上の有機化合物による処理前に、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体をか焼又は熱分解によって熱的に処理することができる。この局面のさらなる実施形態では、工程a)とb)を逆にし;第1工程で担体を1種以上の有機化合物で処理し、その上に1種以上の有機化合物が沈着した担体を、1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して、該担体上に1種以上の有機錯体を形成した後、その1種以上の有機錯体を部分的に分解かつ触媒活性金属に変換することができる。第2局面のすべての実施形態で、触媒活性金属への変換は、還元条件下、例えば、水素又はCOのソースの存在下で行うことができる。有機化合物は、好ましくは窒素含有有機化合物である。本発明の第2局面では、1種以上の有機化合物による処理又は1種以上の触媒活性金属の1種以上の化合物、若しくは塩による処理は、これら化合物のどちらかをその調製又は合成の間に担体に導入する場合は省略しうる。
【0007】
第3局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で多孔性担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した多孔性担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒前駆体が沈着した多孔性担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記担体上に沈着した1種以上の有機錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
【0008】
第3局面のさらなる実施形態では、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体の1種以上の有機化合物による処理の前に、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体をか焼又は熱分解によって熱的に処理することができる。この局面のさらなる実施形態では、工程a)とb)を逆にし;第1工程で担体を1種以上の有機化合物で処理し、その上に1種以上の有機化合物が沈着した担体を1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して担体上に1種以上の有機錯体を形成した後、該1種以上の有機錯体を完全に分解し、かつ触媒活性金属に変換することができる。第3局面のすべての実施形態で、触媒活性金属への変換は、還元条件下、例えば、水素又はCOのソースの存在下で行うことができる。有機化合物は、好ましくは窒素含有有機化合物である。本発明の第3局面では、1種以上の有機化合物による処理又は1種以上の触媒活性金属の1種以上の化合物、若しくは塩による処理は、これら化合物のどちらかをその調製又は合成の間に担体に導入する場合は省略しうる。
【0009】
第4局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に沈着した1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体を有する担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した1種以上の有機金属錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
第3及び第4局面では、有機錯体の完全分解が、該完全分解が還元条件下、例えば水素又はCOのソースの存在下で行われるときのように、その完全に分解した有機錯体が触媒活性金属に変換される条件下で行われる場合、個別の変換工程を省略しうる。
本発明の第1及び第4局面では、本方法の第1段階は、担体材料の製造又は合成中の1種以上の有機錯体の形成によって達成される。代わりに、錯体の形成に必要な個々の成分をその製造又は合成の間に担体中に組み込むことができ、該成分を組み込む該担体の熱処理のような、その後のプロセス工程の間に有機錯体の形成が起こる。
【0010】
第5局面において、本発明は、1種以上の担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属を含んでなる触媒であって、全金属分散が45%以上であり、かつこの全金属分散の強く化学吸着した成分に関する金属分散が20%以上である触媒をも提供する。
本発明の第6局面では、少なくとも1種の担体材料と、該担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属の少なくとも1種のソースとを含んでなる触媒前駆体であって、前記1種以上の触媒活性金属のソースが1種以上の金属含有有機錯体の分解生成物である、触媒前駆体が提供される。この触媒前駆体は、本発明の第1〜第4局面のいずれかの局面の方法で、有機錯体の完全又は部分分解後に中間体として存在しうる。本発明のこの局面の触媒前駆体は、本発明の第2及び第3局面の触媒金属前駆体とは異なり;各場合、第2及び第3局面では、該触媒金属前駆体が触媒前駆体の形成に先行する。
【0011】
第7局面では、本発明は、水素と一酸化炭素合成ガスからの反応条件における前記ガスの触媒との接触によるC5+液体炭化水素の製造方法であって、該触媒が本発明の第1、第2、第3又は第4局面に従って製造され、或いは本発明の第5又は第6局面の触媒である、方法を提供する。
本発明の第8局面では、1種以上の有機化合物と1種以上のイオウ含有化合物を含む混合物からのイオウの除去方法が提供され、この方法では、混合物を、無機担体上に分散した活性金属を含み、かつ本発明の第1、第2、第3若しくは第4局面の方法で調製した1種以上の材料、又は本発明の第5若しくは第6局面の材料と、無機担体上に分散した活性金属を含む該材料上にイオウが吸着するような条件下で接触させる。この局面の好ましい実施形態は、選択した条件が添加水素の非存在下のイオウトリム(Sulfur Trim)処理の標準条件の場合である。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、添付図面と一緒に発明の詳細な説明を参照することでよりよく理解されるだろう。
本発明の種々の方法は、最終触媒中の触媒活性金属の金属分散と分布が良いレベルの担持型金属触媒を製造するときに有効であることが分かった。本発明の方法の重要な特徴は、担持型金属触媒の調製で用いる成分の選択と、最終触媒組成に達するときに用いるプロセス工程の順序である。
【0013】
本発明のすべての局面で、本方法は、触媒の含浸で種々多様な無機担体材料を利用することができる。これら材料は耐火性無機酸化物でよく、技術的に周知の種々多様な多孔性及び非多孔性担体材料から選択することができる。これには、限定するものではないが、すべての型のアルミナ、特にγアルミナ、すべての型のシリカ、すべての型のTiO2(アナターゼ型とルチル型の両方又はその混合物)、ZrO2、活性炭、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び同様の金属酸化物が挙げられる。担体はこれら材料の2種以上のいずれの組合せ又は混合物でもよい。使用する担体材料の正確な性質は触媒の企図する用途によって決まる。本発明のすべての局面で、最も好ましい担体は非晶質担体である。特に好ましい担体は、シリカ担体、特に非晶質シリカを含む担体である。本発明の第7局面に関し、1つの好ましい担体は二酸化ジルコニウムで修飾した酸化チタン担体である。本発明のすべての局面で好ましい担体のさらなるクラスは、多孔性担体、特にメソポア、マクロポア及びその混合物を有する担体である。
本発明の目的では、用語“マクロポア(macropores)”及び“メソポア(mesopores)”は、Pure Appl. Chem., 45 (1976), 79で定義されているとおり、すなわち直径が50nmを超える孔(マクロポア)又は直径が2nm〜50nmの孔(メソポア)のように使用する。
【0014】
本発明のすべての局面で、担体は、例えばゼオライト又はゼオライト様物質のような分子ふるい材料でよい。分子ふるいとして、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩、メタロアルミノリン酸塩、メタロアルミノホスホケイ酸塩、又はスズケイ酸塩が挙げられる。触媒担体として好ましい分子ふるいは、例えば分離、触媒用途、及び化合反応と分離用途のような選択される用途によって決まるだろう。分子ふるいの特性、例えば、構造型、化学組成、イオン交換、及び活性化手順をあつらえる多くの方法がある。代表例は、構造型AFI、AEL、BEA、CHA、EUO、FAU、FER、KFI、LTA、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、OFF、TON及びMFIの分子ふるい/ゼオライトである。これら材料のいくつかは真のゼオライトではないが、文献で頻繁にそれとして言及され、かつ以下の明細書ではこのような材料を含めて広範にこの用語を使用する。
【0015】
本発明のすべての局面で触媒担体として使用しうる1クラスの分子ふるい材料は、指示薬(directing agents)として両親媒性化合物を用いて合成しうる当該材料である。このような材料の例は米国特許第5,250,282号(ここに、参照によって全内容が取り込まれる)に記載されている。両親媒性化合物の例は、Winsor, Chemical Reviews, 68(1), 1968でも提供されてる。このタイプの他の好適な分子ふるい材料は、“Review of Ordered Mesoporous Materials”, U. Ciesla and F. Schuth, Microporous and Mesoporous Materials, 27, (1999), 131-49にも記載されている。このような材料としては、限定するものではないが、SBA-2、SBA-15及びSBA-16のようなSBA(Santa Barbara)と称する材料、FSM-16及びKSW-2のようなFSM(Folding Sheet Mechanism)と称する材料、MSU-S及びMSU-XのようなMSU(Michigan State)と称する材料、TMS又は遷移金属ふるい(Transition Metal Sieves)と称する材料、FMMS又はメソポア担体上の機能化単層(functionalized monolayers on mesoporous supports)と称する材料及びAPM又は酸調製メソ構造(Acid Prepared Mesostructure)と称する材料が挙げられる。このクラスの特に好ましい結晶性分子ふるい材料は、MCM-41、MCM-48、及びMCM-50のようなM41Sと称するケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩メソポア分子ふるい材料である。これら分子ふるいは、米国特許第5,098,684号(Kresgeら)及びKresgeらの米国特許第5,102,643号に詳述されている(両方とも参照によってその全体が本明細書に取り込まれる)。本発明で使うこの系統の材料の特に好適なサブクラスは、MCM-41及びMCM-48と称するメソポアシリカである。MCM-41が特に好ましく、均一の大きさのメソポアの六方配列を有する。MCM-41分子ふるい材料は米国特許第5,098,684号(ここに、参照によって全内容が取り込まれる)に詳述されている。MCM-41分子ふるいは、アルミナが存在する場合、100、さらに好ましくは200、最も好ましくは300より高いSiO2/Al2O3モル比を有する。本発明のすべての局面で使用しうる他の分子ふるいとして、MCM-1、MCM-2、MCM-3、MCM-4、MCM-5、MCM-9、MCM-10、MCM-14、MCM-22、及びMCM-49と称する当該分子ふるいが挙げられる。
【0016】
本発明のすべての局面で使う好ましい秩序ある(ordered)メソポア材料は秩序あるメソポアシリカである。最も好ましい秩序あるメソポアシリカはMCM-41と称するものである。
本発明の方法で使用しうるメソポア材料のさらなる例は、米国特許第5,951,962号(その全開示が参照によって本明細書に取り込まれる)に記載され、かつその記載に従って調製されるメソポアシリカである。この文献では、メソポアシリカは、反応媒体を含有する水とポリマーの分散系中でシリカ前駆体を変換することで調製される。
高い表面積のメソポアアルミナ固体も本発明の方法で使う触媒担体の調製で使用でき;このような高い表面積のメソポアアルミナ固体は、米国特許第6,238,701号(その全開示は参照によって本明細書に取り込まれる)に記載されている方法で調製できる。
担体は、米国特許第5,936,126号、第6,248,924号及び第6,284,917号(参照によってその全開示が本明細書に取り込まれる)に記載されているもののような、マクロポア材料又はマクロポアとメソポアの両方である材料から成りうる。
1種以上の担体材料は混合多孔度のものでよく、またメソポア若しくはマクロポアのどちらかを有する他の担体材料に加えて使用してもよい。混合多孔度の材料は、そのマクロポアに加えてメソポアを所有しうる。このような材料の例は、米国特許第6,248,924号及び第6,284,917号(参照によってその全開示が本明細書に取り込まれる)に記載されている。
【0017】
本発明のすべての局面で、最終触媒は、1種以上の担体材料の表面上に沈着した1種以上の活性金属のみから成ってもよい。これら実施形態の触媒は、無機バインダーが添加されていない。その上に活性金属が沈着し、或いは沈着していない担体は、種々多様な粒径に形づくることができる。一般に、粒子は、粉末、顆粒、又は2メッシュ(Tyler)スクリーンを通過し、かつ400メッシュ(Tyler)スクリーンで保持されるのに十分な粒径を有する押出品のような成形品の形態でよい。触媒を押出しによってのように成形する場合、乾燥前に押し出し、或いは部分的に乾燥してから押し出すことができる。これら実施形態では、押出し又は成形プロセスで1種以上の溶媒と共に種々の押出し又は成形助剤を使用することができる。
本発明のすべての局面で、その上に1種以上の活性金属が沈着した担体材料を、該触媒で予想される触媒プロセスで利用される温度及び他の条件に耐える無機バインダー又はマトリックス材料と共にコンポジットに形成することができる。このような材料は、最終触媒の形成と製造でも助けになりうる。このような材料として、活性及び不活性材料、合成又は天然に存在するゼオライト、並びに粘土及び/又はアルミナ、シリカ若しくはシリカ-アルミナのような酸化物のような無機材料が挙げられる。後者は、天然に存在するものでよく、或いはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン様沈殿物又はゲルの形態でよい。ゼオライトと共に材料を使用すると、すなわちゼオライトと併用し、或いはその合成時に存在すると、ゼオライト自体が触媒的に活性なので、触媒の変換及び/又は選択性を変えることができる。これら材料を天然に存在する粘土、例えばベントナイト及びカオリン中に組み入れて、商業的操作条件下での触媒の破砕強さを高め、かつ触媒のバインダー又はマトリックスとして作用しうる。1種以上の触媒活性金属を含む担体を、質量で99:01〜05:95、好ましくは99:01〜10:90、さらに好ましくは99:01〜20:80、最も好ましくは99:01〜50:50の触媒担体:マトリックス材料の量のマトリックス材料を含む組成物に形成することができる。好ましくは、使用する場合、添加マトリックス材料は、触媒担体とマトリックス材料を合わせた質量の通常50wt%未満、理想的には40wt%未満、好ましくは30wt%未満、さらに好ましくは20wt%未満、さらに好ましくは15wt%未満、最も好ましくは10wt%未満の最小量に維持し、最も好ましい実施形態では5wt%未満である。この組成物の形成は、材料を一緒に混練し、次いで所望の最終触媒粒子にペレット化する押出しを含む通常の手段で達成することができる。理想的には、添加マトリックス材料はマクロポアであり、或いは混合多孔度の材料、すなわちマクロポアとメソポアの両者の材料である。混合多孔度の材料は、約50nm〜約10,000nmの範囲の孔径を有するマクロポアで約5〜約50%、好ましくは約10〜約45%、さらに好ましくは約10〜約30%、特に約15〜約25%の孔隙量が形成され、かつ約2nm〜約50nmの範囲の孔径を有するメソポアで約50〜約95%、好ましくは約55〜約90%、さらに好ましくは約70〜約90%、特に約75〜約85%の孔隙量(各場合、孔隙量の総計を加えて100%)が形成される孔分布を有しうる。
【0018】
本発明のすべての局面で、本方法を用いて一酸化炭素水素化反応、特にフィッシャー-トロプシュ反応の実施に好適な触媒を製造することができる。これら実施形態では、上述した材料のような種々多様の担体材料を利用できる。好ましい担体材料は二酸化チタン(アナターゼ型とルチル型の両方)、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ及び二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの混合物である。二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの混合物を含む担体が好ましい。好ましい実施形態では、二酸化チタンをまず洗浄して実質的に塩化物を確実になくしてからZrO(NO3)2・4H2Oのような二酸化ジルコニウム前駆体の溶液を含浸させ、任意に乾燥させ、か焼してZrO2/TiO2担体を形成する。最終担体は、担体の総質量に対して50wt%まで、好ましくは35wt%まで、さらに好ましくは20wt%まで、なおさらに好ましくは10wt%まで、最も好ましくは0.1〜5wt%の範囲内の二酸化ジルコニウムを含みうる。担体に加え、促進剤又は改質剤のような添加成分を使用することが多い。このような材料の好ましい例は、レニウム、ルテニウム、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、クロム、トリア及び銅などである。特に好ましい促進剤又は改質剤はレニウムであり、1種以上の触媒活性金属の沈着後、特にかつ好ましくはこれら金属の1つがコバルトの場合、触媒のか焼の間に重要な特性を示す。か焼段階の間に、レニウムはコバルトが確実に高度に分散するのを助け、かつ高度に分散した状態で形成された酸化コバルトを保持するのにも役立つ。さらなる利益は、レニウムは、酸化コバルトをその最も触媒活性な状態であるゼロ価状態に還元する温度を下げ;こうしてレニウムは、コバルトをさらに完全に還元するのを容易にすることである。これら触媒でレニウムを使用する1つの問題は、この材料が高価なことである。従って、これら触媒中の良いコバルトの分散を達成しながら、同時に該触媒の完全な活性を達成するために必要なレニウムの量を低減又は削除するための手段に対する要望がある。第1、第2、第3又は第4局面の本発明の方法を使用すれば、低減した量のレニウムを用いて良くコバルトが分散したフィッシャー-トロプシュ触媒を製造でき、及び/又はいずれかの所定レベルのレニウムで高レベルのコバルトの分散を達成できることが分かった。フィッシャー-トロプシュ触媒を製造するために使用する方法が本発明の第1局面に従う場合、1種以上の触媒活性金属と、アミノ酸のようなカルボン酸官能性を含有する化合物以外の1種以上の窒素含有化合物とから有機錯体を形成する。好適な窒素含有化合物として、後述するようなアミンが挙げられる。触媒調製の際、コバルトに代えて或いはコバルトに加えて他の鉄群の金属及び銅のような他の触媒活性金属を使用することができる。本発明の触媒をフィッシャー-トロプシュ触媒として使用する場合、二酸化ジルコニウムと共に或いは二酸化ジルコニウムなしでチタニア担体をアルミナ、シリカ、又はアルミナとシリカの混合物のような無機バインダーと併用することができる。この実施形態では、主要触媒担体上に、すなわちバインダーなし及びいずれかのバインダーと混合する前に有機錯体を形成すること或いは1種以上のバインダー材料との混合材の担体上に有機錯体を形成することは、本発明の範囲内である。
【0019】
本発明のすべての局面で、本方法を用いて、炭化水素流からの有機イオウ汚染物の除去に好適な触媒を製造することができる。本発明の触媒を水素の非存在下で用いて炭化水素流からイオウ種を除去することができる。このような用途では、触媒中の金属分散のレベルが、イオウ種を除去する際の触媒の有効性の重要な因子である。本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法を用いて高効率のイオウ吸着触媒が得られることが分かった。これら方法を用いることで、適切な担体上にイオウ吸着活性を有する金属を高度に分散させることができた。本発明のこれら実施形態では、上述したような種々多様の担体材料を利用できる。好ましい担体材料はシリカである。さらに、イオウ処理触媒に好適な種々多様の活性金属を使用することができ;好ましい活性金属はニッケルである。これら実施形態では、触媒を本発明の第1、第2、第3及び第4局面に従って調製しうるが、本発明の第4局面に従って触媒を製造することが好ましい。好ましい用途は、当該技術でイオウトリムと呼ばれる方法でのイオウ除去である。
【0020】
本発明のすべての局面で、本方法は1種以上の担体材料上に沈着した1種以上の活性金属を含む最終触媒を製造する。本発明のすべての局面で種々多様な活性金属を使用することができる。活性金属の選択は最終触媒の意図した用途によって決まり、このような活性金属と触媒用途との相関関係は技術的に周知である。本発明のすべての局面で使用しうる活性金属の例として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:Li、Na又はKのような群1(群IA);Mg、Ca及びSrのような群2(群IIA);Sc、Y及びLaのような群3(群IIIA、IIIB);Ti、Zr及びHfのような群4(群IVA、IVB);V、Nb及びTaのような群5(群VA、VB);Cr、Mo及びWのような群6(群VIA、VIB);Mn、Tc及びReのような群7(VIIA、VIIB);Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、及びPtのような群8、9及び10(群VIII、VIIIA);Cu、Ag、及びAuのような群11(群IB);Znのような群12(群IIB);Ga及びInのような群13(群IIIA、IIIB);及びGe及びSnのような群14(群IVA、IVB)。銅、白金、ロジウム、パラジウム、コバルト、鉄、ニッケル若しくはルテニウム又はその2種以上の混合物を活性金属として使用することが好ましい。特にルテニウム、ニッケル、若しくはコバルト又はその2種以上の混合物を使用することが好ましい。特に好ましい活性金属はルテニウムである。
【0021】
金属成分の含量は、その触媒活性と触媒の企図した用途によって変わる。従って、高活性の貴金属は低活性の卑金属より少量で使用しうる。例えば、約1wt%以下のルテニウム、パラジウム又は白金は有効だろう。金属成分は単層中約30%を超えてよい。
活性金属が高活性な貴金属の場合、本発明のすべての局面の触媒中のその含量は、それぞれ使用触媒の総質量に対して一般的に約0.01〜約30質量%、好ましくは約0.01〜約20質量%、特に約0.1〜約10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。本発明のすべての局面で1つの好ましい触媒は、活性金属の総含量が約5質量%未満、好ましくは活性金属の総含量が約2質量%未満でレニウムのみ、又はレニウムを1種以上の添加活性金属と組み合わせて含む触媒である。好ましくはレニウムの含量は、総触媒の約0.01〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
活性金属が特に活性でなく、或いはイオウ除去におけるように企図した用途の特性が与えられて高レベルが必要な場合、本発明のすべての局面で、使用触媒の総質量に対して活性金属は10wt%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、最も好ましくは15〜45質量%の範囲内のレベルで存在しうる。
【0022】
本発明のすべての局面で、特有順序のプロセス工程の使用を通じて1種以上の触媒活性金属部位を担体に与える方法によって触媒を製造する。すべての局面で、本方法は第1又は中間工程として1種以上の有機錯体の形成を有する。本発明の第1及び第4局面では、有機錯体の形成は、触媒活性金属の1種以上の化合物若しくは塩と、1種以上の金属又は該金属の塩若しくは化合物と錯体を形成できる1種以上の有機化合物とを、好ましくは混合材で、同時適用を通じて達成される。代わりに、第1及び第4局面では、担体の製造又は合成の間に1種以上の有機錯体が形成され;この実施形態では、現場で(in-situ)形成した有機錯体を含む担体を第1及び第4局面の方法で使用する。代替実施形態では、有機錯体を形成するために必要な成分をその製造又は合成の間に担体中に組み込み、該成分を含む担体の熱処理のようなその後のプロセス工程の間に有機錯体の形成が起こる。本発明の第2及び第3局面では、有機錯体は別々の2段階で形成され、第1段階は1種以上の触媒活性金属の塩若しくは化合物の沈着であり、第2段階は1種以上の金属又は該金属の塩若しくは化合物と錯体を形成できる1種以上の有機化合物の適用である。第2及び第3局面では、これら2段階を逆にして、金属の塩若しくは化合物の沈着に先行して有機化合物の沈着を行うこともできるが、第2及び第3局面についてのこの段階の逆転は好ましくない。第2及び第3局面では、1種以上の触媒活性金属の塩若しくは化合物の沈着を必要とする段階、又は錯体を形成できる1種以上の有機化合物の沈着を必要とする段階のどちらかは、どちらかの段階の化合物が担体の製造又は合成の間に担体中に導入された場合は省略できる。
【0023】
第1及び第4局面の一実施形態では、1種以上の触媒活性金属の化合物若しくは塩を1種以上の有機化合物と混ぜて混合物を形成してから担体と接触させて有機錯体を沈着させる。この実施形態では、錯体は混合物の形成時に形成され、或いは担体との接触後及び混合物の形成時に用いたいずれの溶媒も除去後に形成される。これら局面のさらなる実施形態では、1種以上の有機化合物と1種以上の触媒活性金属の活性金属若しくは塩を同時に担体に接触させて有機錯体を形成する。これら局面のさらなる実施形態では、所望金属の適切な有機錯体を合成し、かつ該錯体用の適切な溶媒中の該錯体の溶液を介して担体に適用することができる。第1及び第4局面のなおさらなる実施形態では、有機錯体は、担体材料の製造又は合成の間に現場で形成され、或いは担体の製造又は合成の間に担体中に組み込まれた、該有機錯体の形成に必要な成分から形成されうる。
【0024】
第2及び第3局面では、まず1種以上の触媒活性金属の化合物、若しくは塩と担体を接触させた後、1種以上の有機化合物で処理して担体上に有機錯体を形成する。代替実施形態では、まず1種以上の有機化合物と担体を接触させた後、1種以上の触媒活性金属の化合物、若しくは塩で処理して担体上に有機錯体を形成する。どちらの実施形態でも担体の製造又は合成の間に該化合物を導入することができる。
本発明の第2及び第3局面では、1種以上の触媒活性金属を担体材料上で交換し、その中に浸し、或いは物理的にそれと混合することができる。個々成分又は成分の混合物の適用は、金属塩水溶液、又は該金属の化合物の適切な溶媒中の溶液に担体を浸漬することで達成しうる。本発明の第1及び第4局面では、1種以上の触媒活性金属の化合物、若しくは塩と1種以上の有機化合物の混合物を担体と接触させて有機錯体を形成することができる。すべての局面で1種以上の成分又は成分の混合物は、浸漬、噴霧、スラリー法又は他の適宜の方法のような方法を用いて、担体材料と接触させることができる。好ましい方法は、初期湿潤又はスラリー法のような技術を用いる担体の含浸である。本発明のすべての局面で、混合物の調製で使う金属塩溶液の調製に好適な金属塩は、例えば、対応する金属の硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、カルボン酸塩、アセチルアセトン塩、クロロ錯体、ニトリト錯体又はアミン錯体であり、好ましくは硝酸塩及びニトロシル硝酸塩であり、最も好ましくはニトロシル硝酸塩である。本発明のすべての局面で、活性金属の塩又は化合物の通常の対イオン又は成分に加えて有機化合物が存在する。しかし、該有機錯体が本発明の方法で使う別個の手順で調製される場合はそうではなく;これら状況では、該金属の塩又は化合物の元の対イオン又は成分は、精製した有機金属錯体から除去されているだろう。有機錯体が担体の製造又は合成の間に現場で調製され、或いは錯体を形成するために必要な成分が担体の製造又は合成の間に担体中に組み込まれる場合も元の対イオンは存在せず;これら実施形態では、該金属の対イオンは、担体構造又は有機錯体の有機成分と関連した電荷によって与えられうる。Ptが活性金属の場合、その硝酸塩として有機化合物と錯体形成しないことが好ましく、好ましくは塩化物又は水酸化物塩として錯体形成する。
【0025】
本発明のすべての局面で、担体に適用される多数の活性金属を有する触媒は、本発明の種々の方法を用いて同時に適用したこれら金属を有し、或いはプロセス工程を繰り返して金属を順々に適用することができる。
【0026】
本発明のすべての局面で、1種以上の触媒活性金属と有機錯体を形成できるいずれの有機化合物をも使用しうる。典型的に、これらは触媒活性金属を沈着させるために一般的に使用される条件下で安定な錯体を形成できる有機化合物だろう。理想的には、有機化合物を選択して、1種以上の触媒活性金属による含浸後触媒担体を乾燥するために一般的に使用される条件下で安定な金属有機錯体を与える。好適な有機化合物は、遷移金属化学の技術で周知であり、遷移金属の配位化合物の調製で一般的に使用される有機キレート剤、有機単座、二座及び多座配位子のような有機化合物が挙げられる。多くのこのような錯体では、共有結合している分子及び/又はイオンである1個以上の配位子が錯体中に存在しうる。本発明のすべての局面で有機化合物は担体の製造で使用され、或いは例えば分子ふるい担体の製造で使用される有機鋳型のような担体の合成の間に存在する1種以上の有機化合物でよい。
【0027】
本発明の方法で特に好適な有機化合物はアミン若しくはアミノ酸のような1個以上のアミノ基を含有する化合物であり、特に好ましい群の有機化合物は、該化合物中にアミノ基とアルコール基を両方含む化合物である。第4局面の方法で調製されるフィッシャー-トロプシュ触媒の場合、好ましい有機化合物はカルボン酸官能性のない窒素含有化合物なので、アミノ酸は好ましくなく、この実施形態から除外される。この実施形態で好ましい有機化合物はカルボン酸官能性のないアミンである。
本発明のすべての局面で好ましい有機化合物は1個以上のアミノ基を含む。1個以上のアミノ基を有するこのような化合物は脂肪族アミン、脂環式アミン、アラルキルアミン及びアルキルアリールアミンでよい。これらは一級、二級及び三級アミンでよい。それらは対イオンとの四級アンモニウム塩でもよい。窒素含有化合物は、1種以上の一級、二級若しくは三級アミンが好ましく、さら好ましくは1種以上の脂肪族アミン、最も好ましくは例えばヒドロキシアルキルアミンに見られるような1種以上のアルコール群である。
一実施形態では、本発明で使用する窒素含有化合物は下記一般式を有する。
NR1R2R3 (I)
式中、R1、R2及びR3は、独立的に1種以上の以下の基である:C1〜C50-アルキル、C3〜C50-シクロアルキル、芳香族、C1〜C50-アルキル置換芳香族のようなアルキル置換芳香族、1個以上の芳香族基で置換されているC1〜C50-アルキレン成分のような芳香族置換脂肪族成分、C1〜C50-ヒドロキシアルキル、アミノ-及び/又はヒドロキシル-置換C1〜C50-アルキル、C2〜C50-アルコキシアルキルのようなアルコキシアルキル、C3〜C50-ジアルキルアミノアルキルのようなジアルキルアミノアルキル、C2〜C50-アルキルアミノアルキルのようなアルキルアミノアルキル、ヘテロ環式、芳香族ヘテロ環式、C1〜C50-アルキル置換ヘテロ環式及び芳香族ヘテロ環式化合物のようなアルキル置換ヘテロ環式及びアルキル置換芳香族ヘテロ環式、及び1個以上の芳香族基で置換されているC1〜C50-アルキレン成分のようなヘテロ環式置換脂肪族成分。さらに、R1及びR2は独立的に水素でよい。別の実施形態では、R1とR2が窒素原子と一緒に窒素含有ヘテロ環、芳香族ヘテロ環、アルキル置換ヘテロ環又はアルキル置換芳香族ヘテロ環を形成しうる。
【0028】
アルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-デシル、2-n-プロピル-n-ヘプチル、n-トリデシル、2-n-ブチル-n-ノニル及び3-n-ブチル-n-ノニル、特に好ましくはエチル、イソプロピル、2-エチルヘキシル、n-デシル、2-n-プロピル-n-ヘプチル、n-トリデシル、2-n-ブチル-n-ノニル及び3-n-ブチル-n-ノニル、及びポリブチル、ポリイソブチル、ポリプロピル、ポリイソプロピル及びポリエチルのようなC40〜C200-アルキルが挙げられる。最も好ましい脂肪族アミンは、1〜20個の炭素原子、さらに好ましくは2〜14個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基を有する脂肪族アミンである。
シクロアルキル基の例として、C3〜C12-シクロアルキル、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルのようなC3〜C8-シクロアルキルが挙げられる。
芳香族基の例として、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル及び9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル及び9-フェナントリルが挙げられる。
アルキル置換芳香族基の例として、C7〜C50-アルキル芳香族基、好ましくは2-ノニルフェニル、3-ノニルフェニル、4-ノニルフェニル、2-デシルフェニル、3-デシルフェニル、4-デシルフェニル、2,3-ジノニルフェニル、2,4- ジノニルフェニル、2,5-ジノニルフェニル、3,4-ジノニルフェニル、3,5-ジノニルフェニル、2,3-ジデシルフェニル、2,4-ジデシルフェニル、2,5-ジデシルフェニル、3,4-ジデシルフェニル及び3,5-ジデシルフェニルのようなC7〜C40-アルキルフェニル、さらに好ましくは2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、2,3,6-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、4-エチルフェニル、2-n-プロピルフェニル、3-n-プロピルフェニル及び4-n-プロピルフェニルのようなC7〜C12-アルキルフェニルが挙げられる。
【0029】
芳香族置換脂肪族成分の例として、1個以上の芳香族置換基で置換されているC7〜C50アルキレン成分、好ましくはベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチル及び4-フェニルブチルのようなC7〜C12-フェニルアルキル、特に好ましくはベンジル、1-フェネチル及び2-フェネチルが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基の例として、1個以上のC1〜C50-ヒドロキシアルキル基、好ましくはC1〜C8-ヒドロキシアルキル基、特に好ましくはヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシ-n-プロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、3-ヒドロキシ-n-プロピル及び1-ヒドロキシ-メチル-エチルのようなC1〜C4-ヒドロキシアルキル基を有するアミンが挙げられる。特に好ましいヒドロキシアルキル基含有窒素化合物として、メタノールアミン、ジ-メタノールアミン、トリ-メタノールアミン、エタノールアミン、ジ-エタノールアミン、トリ-エタノールアミン、ブタノールアミン、ジ-ブタノールアミン、トリ-ブタノールアミン、プロパノールアミン、ジ-プロパノールアミン、及びトリ-プロパノールアミンのような一-、二-及び三-置換脂肪族ヒドロキシアルキルアミンが挙げられる。N,N,-ジアルキル-エタノールアミン、N-アルキル-ジエタノールアミン、N-アルキル-エタノールアミン、N,N,-ジアルキル-メタノールアミン、N-アルキル-ジメタノールアミン、N-アルキル-メタノールアミン及び対応するプロパノールアミン、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン及びヘプタノールアミンも好ましい。これらアルカノールアミン中のN-アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル等のような1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する炭化水素又は置換炭化水素基でよい。
【0030】
アミノ-及びヒドロキシアルキル基の例として、C1〜C50-アルキル、好ましくはアミノ-及び/又はヒドロキシル-置換C1〜C8-アルキル、特に好ましくはN-(ヒドロキシエチル)アミノエチル及びN-(アミノエチル)アミノエチルのようなアミノ及び/又はヒドロキシル-置換C1〜C4-アルキルが挙げられる。
アルコキシアルキル基の例として、メトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、n-ブトキシメチル、イソブトキシメチル、sec-ブトキシメチル、tert-ブトキシメチル、1-メトキシエチル及び2-メトキシエチルのようなC2〜C50-アルコキシアルキル、好ましくはC2〜C20-アルコキシアルキル、特に好ましくはC2〜C8-アルコキシアルキル、特に好ましくはメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、n-ブトキシメチル、イソブトキシメチル、sec-ブトキシメチル、tert-ブトキシメチル、1-メトキシエチル及び2-メトキシエチルのようなC2〜C4-アルコキシアルキルが挙げられる。
ジアルキルアミノ基の例として、C3〜C50-ジアルキルアミノアルキル、好ましくはC3〜C20-ジアルキルアミノアルキル、特に好ましくはジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジ-n-プロピルアミノエチル及びジイソプロピルアミノエチルのようなC3〜C10-ジアルキルアミノアルキルが挙げられる。
アルキルアミノアルキル基の例として、C2〜C50-アルキルアミノアルキル、好ましくはC2〜C20-アルキルアミノアルキル、特に好ましくはメチルアミノメチル、メチルアミノエチル、エチルアミノメチル、エチルアミノエチル及びイソ-プロピルアミノエチルのようなC2〜C8-アルキルアミノアルキルが挙げられる。
【0031】
芳香族ヘテロ環の例として、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、ピラジニル、3-ピロリル、2-イミダゾリル、2-フラニル及び3-フラニルが挙げられる。アルキル置換芳香族ヘテロ環の例として、2-ピリジルメチル、2-フラニル-メチル、3-ピロリルメチル及び2-イミダゾリルメチルのようなC4〜C50-モノ-ヘタリル(hetaryl)アルキル、及び2-メチル-3-ピリジニル、4,5-ジメチル-2-イミダゾリル、3-メチル-2-フラニル及び5-メチル-2-ピラジニルのようなC4〜C50-アルキルヘタリルが挙げられる。
アルキルアミノアルキル基の例として、C2〜C50-アルキルアミノアルキル、好ましくはメチルアミノメチル、メチルアミノエチル、エチルアミノメチル、エチルアミノエチル及びイソプロピルアミノエチルのようなC2〜C16-アルキルアミノアルキルが挙げられる。
ジアルキルアミノアルキル基の例として、C3〜C50-ジアルキルアミノアルキル、好ましくはジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジ-n-プロピルアミノエチル及びジイソプロピルアミノエチルのようなC3〜C16-ジアルキルアミノアルキルが挙げられる。
ヘテロ環式化合物の例として、ピリジン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、3-ピロリン、ピロリジン、ピリミジン、及びこれらヘテロ環式化合物の置換例が挙げられる。有機ニトリル化合物の例として、アクリロニトリル、例えばメチルニトリル及びエチルニトリルのようなアルキルニトリルが挙げられる。
適切なアミノ酸には、天然及び合成アミノ酸が含まれる。天然アミノ酸には以下のアミノ酸のすべての異性体が含まれ:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、3,5-ジブロモチロシン、3,5-ジヨードチロシン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロキシン、トリプトファン、チロシン及びバリン、特に好ましいアミノ酸はL-アルギニンである。本発明の第4局面の方法によるフィッシャー-トロプシュ触媒調製用の有機化合物としては、これらアミノ酸化合物を使用しない。
【0032】
本発明のすべての局面、特に第1及び第2局面で、有機錯体を形成するための好ましい有機化合物は、有機窒素含有化合物、さらに好ましくはアミン、さらに好ましくは1個以上のアルコール基を含有するアミンである。
本発明のすべての局面で、有機化合物は担体の製造又は合成中に導入しうる。担体が分子ふるいの場合、有機化合物は担体の合成で使用されるような有機鋳型でよい。このような有機鋳型は技術的に周知であり、好ましくは窒素含有有機鋳型、特にさらにヒドロキシル官能性を含む窒素含有有機鋳型である。担体の製造又は合成の間に、いずれかの有機鋳型に加えて有機化合物を導入することができる。すべての局面で、有機錯体の調製用のどちらか又はすべての成分を担体中に組み込み、或いは有機錯体自体を担体中に組み込むとき、担体は生状態(green state)で使用しうる。
【0033】
有機化合物は、触媒活性金属の塩又は化合物の量の関係で適切なレベルで使用することができる。有機化合物は、有機錯体を形成するために必要な量を超えて存在しうる。理想的には、触媒活性金属の塩又は化合物のすべてを1種以上の有機錯体に変換するために適切なモル比で該化合物を使用する。これは1:1のモル比でよく、或いは金属の該有機化合物と錯体をつくる能力と、単座配位子のような他の錯化配位子の存在に大きく左右される。しかし、触媒活性金属のすべてと錯体をつくるのに不十分なレベルの有機化合物を使用することができ;これら状況では、すべての金属が有機錯体に変換するわけではなく、結果の触媒は錯化した金属中間体と錯化しない金属中間体から誘導された触媒活性金属部位を含みうる。理想的には、モル比、有機化合物:触媒活性金属は、0.1:1〜40:1、好ましくは0.1:1〜30:1、さらに好ましくは0.2:1〜25:1、なおさらに好ましくは0.5:1〜10:1、最も好ましくは0.5:1〜5:1の範囲内のモル比である。担体の製造又は合成の間に担体中に有機化合物を組み込む場合、過剰の有機化合物が存在してよい。
【0034】
本発明の第1及び第4局面のように担体との接触前に混合物中で錯体を形成する場合、通常かつ好ましくは該混合物は溶媒と組み合わせて作り、溶媒は水又は有機溶媒又は水と溶媒の混合物でよい。使用する溶媒の量は広範に変化しうるが、典型的には混合物が担体と効率的に接触して担体を確実に湿らせ、担体が多孔性の場合は該多孔性担体中に混合物を確実に浸透させるのに十分な量である。典型的には1種以上の触媒活性金属の塩又は化合物及び有機成分は、その形態によるが、上で示した必要なモル比が該混合物中で達成しうる量で使用する。混合物の残りは1種以上の溶媒を構成し、全混合物の質量の1〜99wt%、好ましくは全混合物の質量の5〜90wt%、さらに好ましくは全混合物の質量の5〜80wt%、なおさらに好ましくは全混合物の質量の10〜70wt%、最も好ましくは全混合物の質量の10〜65wt%の量で存在しうる。本発明の第2及び第3局面では、触媒を製造するために必要な1種以上の成分の適用を容易にするため、追加溶媒を使用してもよい。
【0035】
すべての局面、特に第1及び第4局面では、担体上の有機錯体の形成後、担体を乾燥させてよく、好ましくは乾燥させて錯体の形成中に存在する溶媒及び/又は水の大部分を除去する。乾燥は室温のような周囲温度下で行ってよく、或いは高温で行ってよく、好ましくは乾燥は100〜150℃の温度で行う。好ましくは、乾燥段階中に有機錯体の分解がほとんど又は全く起こらず、乾燥は単に錯体形成していない揮発性物質を除去するだけである。
本発明の第2及び第3局面では、どちらか又はすべての沈着段階後に担体を乾燥させてよい。乾燥は、室温のような周囲条件下で行ってよく、或いは高温行ってよく、好ましくは乾燥は100〜150℃の温度で行う。好ましくは、錯体の形成後の乾燥段階では、乾燥段階中に有機錯体の分解がほとんど又は全く起こらず、乾燥は単に錯体形成していない揮発性物質を除去するだけである。
【0036】
本発明の第1及び第2局面では、1種以上の有機錯体を含む担体を調製したら、担体上の有機錯体を部分的に分解するように担体を処理する。いかなる理論にも拘泥したくないが、この部分的分解が触媒活性金属部位への1種以上の前駆体の現場での形成をもたらすと考えられる。部分的に、これら前駆体の形成と続いて起こる変換が、これら局面において、最終触媒が高度な触媒活性を示し、かつ該触媒中の高レベルの金属分散を有することを保証すると考えられる。触媒活性金属の活性の重要パラメーターは、担体上の金属の形態と担体上の金属の分散レベルである。本発明の方法は、比較的小さく、かつ高度に分散している触媒活性金属部位を含む触媒を製造する。さらに、分散レベルは比較的安定している。
本発明の第3及び第4局面では、1種以上の有機錯体を含む担体を調製したら、担体上の有機錯体を完全に分解するように担体を処理する。いかなる理論にも拘泥したくないが、この有機錯体の完全な分解が、これら局面において、触媒活性金属部位への1種以上の前駆体の現場での形成をもたらすと考えられる。部分的に、これら前駆体の形成と続いて起こる変換が、最終触媒が高度な触媒活性を示し、かつ該触媒中の高レベルの金属分散を有することを保証すると考えられる。
本発明のすべての局面で、活性金属部位として比較的小さい金属粒子と言及している場合、それは10nm以下、好ましくは8nm以下、最も好ましくは6nm以下の平均粒径を有する金属粒子を意味する。
【0037】
一般に、化学吸着測定を用いて担持型金属触媒の大きさと金属表面積を推定する。化学吸着による金属表面積の一般的な測定方法は、J. Lemaitreらの“不均一触媒の特徴づけ(Characterization of Heterogenous Catalysts)”(Francis Delanney編, Marcel Dekker, New York (1984), pp. 310-324)に記載されている。全金属表面積は理想的に触媒の0.01〜30m2/g、好ましくは0.05〜25m2/g、さらに好ましくは0.05〜20m2/g、なおさらに好ましくは0.05〜15m2/g、さらに好ましくは0.05〜10m2/g、なおさらに好ましくは0.05〜5m2/g、最も好ましくは0.05〜3m2/gである。化学吸着測定で用いる適切に選択した滴定剤は、表面を占める金属原子上にだけ吸着するので、化学吸着測定から、%分散(金属粒子の面積を占める金属原子の%)を推定することができる。結果として、高い分散値は、表面を占める金属原子をより多く有する、より小さい粒子を表す。多くの水素化反応では、活性は分散と関係する。金属分散を決定する好ましい方法は、以下のような高真空の静的条件下、化学吸着プローブ分子として水素を用いることによる。試料を40℃の温度で維持し、化学吸着プローブ分子としてH2を用いて8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得る。この等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して化学吸着した水素の総量を得;これが合計分散である。次に、試料を40℃で排気していずれの弱く吸着した水素をも除去し、滴定を繰り返して弱吸着等温線と呼ばれる曲線を決定する。この弱吸着等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して弱く化学吸着した水素の量を得る。これら合計分散と弱分散の2つの値の減算によって、強く保持された化学吸着量を得る。従って、この方法は全金属分散、弱く化学吸着した水素による分散及び強く化学吸着した水素による分散について値を与える。強く化学吸着した水素についての値が金属分散の正確な指標である。多くの先行技術の文献で提供される金属分散の特徴は、全部の化学吸着したプローブに基づいており、強い成分と弱い成分に分けていない。本発明では、使用する水素化触媒は、20%以上、さらに好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上の強く化学吸着した成分に関する分散値を有する。さらに、全分散値は45%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上が達成される。好ましくは全金属分散の40%以上、さらに好ましくは45%以上、最も好ましくは50%以上が、強く化学吸着した成分に関する。
【0038】
本発明の第1及び第2局面では、有機錯体を少なくとも部分的に分解する。本発明の文脈では、“部分的分解”は、有機錯体の化学組成が変わることを意味し;これは有機錯体の構造の変化に起因し、或いは錯体の一部又は成分の化学分解に起因しうる。分解が部分的である場合、錯体と関係ある非金属化学種の除去が不完全になるように分解方法を選択する。分解が完全な場合、残存する錯体の唯一の重要な要素は、分解を酸化条件下で行うときは酸化物として、或いは分解を水素の存在下又は錯体を触媒活性金属に変換する他の条件下で行うときは還元した金属としての1種以上の触媒活性金属だろう。有機錯体の分解から生じた炭素残渣のような残留物もありうる。部分的分解は、触媒調製法で典型的に用いられる乾燥条件下では通常起こらない構造及び/又は組成の変化による。第2段階の条件下における構造及び/又は組成の変化は、赤外線分光法、質量分光法、熱重量分析、ガス又は液体クロマトグラフィー及び分光法のような技術的に周知な種々の分析法で検出かつモニターすることができる。
【0039】
種々の方法を用いて有機錯体の部分的又は完全分解を誘導することができる。これには、化学的誘導加水分解又は酸、塩基、オゾン若しくは同様の化学的に活性な物質による処理によってのような分解のような化学的方法が含まれる。完全又は部分的分解の他の誘導方法として、熱分解及び/又はか焼のような熱的方法が挙げられ、両方とも好ましい方法であり、特に好ましくはか焼である。さらなる方法は、気流による処理である。一実施形態では、熱分解を水素の存在下で行うことができ;この実施形態では、その後のいずれの水素による処理も省略できる。使用しうる他の方法は、例えば水素及び/又はCOの存在下の還元条件下のような 、有機錯体を確実に触媒活性金属に変換する方法である。本発明のすべての局面に関する代替実施形態では、意図した触媒プロセス自体に、有機錯体を含む担体を導入することで完全又は部分的分解を達成することができる。これら実施形態では、有機錯体を含む担体を直接触媒プロセスに導入する場合、その使用プロセス条件下で、或いは触媒再生装置又は触媒リサイクル装置内の条件のようなプロセスプラント中に触媒を導入するいずれかの点で使用する条件下で、有機錯体が分解される。分解を使用プロセスで行ってから同一プロセスで触媒活性金属への変換も行う場合も想定され、該分解中又は分解に続いて起こる別個の変換段階若しくは装置内では、該プロセスの条件とは異なる条件、例えば触媒再生又はリサイクル装置内に存在する条件でよい。有機錯体を含む触媒担体を1種以上のバインダー及び/又は他の配合成分を含みうる最終触媒組成物に調製するときのような、引き続く触媒加工工程で分解及び変換が達成されうる。これらの追加工程では、分解及び/又は変換をもたらすプロセス条件を使用しうる。
【0040】
有機錯体の完全又は部分的分解の方法としてか焼又は熱分解を使用する場合、用いる正確な条件は、錯体の性質、特に高温下でのその熱的安定性と分解プロフィルによって決まる。有機錯体の熱的分解を制御しながら熱重量分析法又は質量分光法を用いることによって、か焼条件又は熱分解条件下で有機錯体の分解の開始温度と全分解温度を決定することができる。これは、この部分的分解段階が行われるであろう温度範囲又は完全分解に必要な選択すべき最小温度を示す。代わりに、赤外線分光法で分析すると、特定の官能基が有機錯体から除去され、或いは有機錯体内で形成される点;部分的分解の温度として全分解温度未満で選択しうる場合或いは全分解の温度として全分解温度を超えて選択しうる場合、これが起こる温度を決定することができる。アミンを有機化合物として使用する場合、部分的分解を誘導するための処理温度として相当量の窒素酸化物が生じる温度未満を選択しうる。他の有機化合物では、錯体からCO又はCO2が除去される温度でよい。有機化合物としてアミン、特にヒドロキシル基を含有するアミン又はアミノ酸の場合、赤外線スペクトルで2100〜2200cm-1に現れる新しい振動帯の形成でよく、部分的に分解した有機錯体中に存在するニトリル及びイソニトリルのような錯体の炭素窒素種に仮に割り当てることができる。使用しうる別の方法は、TGA分析が有機錯体の全減量を示す場合;全減量未満の温度を部分的分解のために選択することができ、或いは全減量の温度以上の温度を全分解のために選択しうる。
【0041】
本発明のすべての局面で、か焼を用いて部分的又は完全に有機錯体を分解する場合、使用するか焼温度は、典型的に200〜1000℃、好ましくは250〜600℃の範囲内である。使用する正確な温度は、有機錯体の完全又は部分的分解が望ましいかどうかによって決まり、また有機錯体の性質によって決まる。有機金属錯体の分解温度に影響しうる因子としては、錯体内の金属及び/又は有機化合物の性質が挙げられる。別の因子は、金属が塩の形態で導入される場合に存在する対イオンの性質でありうる。好ましくは、部分的分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、空気中TGAで決定されるように、有機錯体の全減量が起こる温度未満の温度でか焼する。好ましくは200℃と有機錯体の全減量が起こる温度の間の温度である。好ましくは完全分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、空気中TGAで決定されるように、有機錯体の全減量が起こる温度以上の温度でか焼する。好ましくは有機錯体の全減量が起こる温度と1000℃の間の温度である。か焼条件下では、酸素は別の不活性希釈剤の成分として又は空気中で行われるか焼の結果として存在する。熱分解を使用する場合、酸素のない不活性雰囲気中、或いはあってもよいが好ましくは酸素のない水素又はCO含有雰囲気のような触媒活性金属への変換という結果になる雰囲気中で熱分解を行うことができる。熱分解を使用する場合、有機錯体は、か焼条件下で観察される温度より高い温度で分解しうる。か焼と同様、熱分解条件下での部分的又は完全分解の温度は種々の方法で決定でき、TGAが好ましい。好ましくは、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で部分的分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、不活性雰囲気中又は水素下TGAによって決定されるように有機錯体の全減量が起こる温度未満の温度で不活性雰囲気中又は水素下で熱分解する。好ましくは200℃と、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で有機錯体の全減量が起こる温度との間の温度である。好ましくは、完全分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、TGAによって決定されるような、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で有機錯体の全減量が起こる温度以上の温度で熱分解する。好ましくは、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で有機錯体の全減量が起こる温度と、1000℃の間の温度である。好ましくは、その上に有機錯体が沈着した担体は、窒素又は水素中、1000℃未満の温度で熱分解する。有機錯体を含む担体は、部分的分解温度で、有機錯体の部分的分解が確実に起こるようにするために十分な時間、か焼又は熱分解することができる。典型的に、これは少なくとも20分、好ましくは少なくとも30分、さらに好ましくは少なくとも45分、最も好ましくは1時間以上である。典型的に、この時間は48時間以下、好ましくは24時間以下、最も好ましくは12時間以下である。完全分解が必要な場合、有機錯体を含む担体は、完全分解温度で、有機錯体の完全分解を確実にするために十分な時間、か焼又は熱分解することができる。
【0042】
有機錯体の分解生成物を含む担体は、本発明の第6局面の新規触媒前駆体である。この局面では、少なくとも1種の担体材料と、この担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属の少なくとも1種のソースとを含む触媒が提供される。ここで、1種以上の触媒活性金属のソースは、1種以上の金属含有有機錯体の分解生成物である。この局面では、1種以上の触媒活性金属のソースは、好ましくは1種以上の金属含有有機錯体の部分的分解生成物である。この局面では、触媒前駆体が、滴定剤として水素を用いた場合、強く化学吸着した成分に関して1%未満、さらに好ましくは0.75%未満、さらに好ましくは0.5%未満、なおさらに好ましくは0.25%未満、最も好ましくは0%である分散値を示すことも好ましい。第6局面の前駆体は、その赤外線スペクトルでユニークな吸収帯を示すこともあり;第6局面の前駆体は、先に分解した有機錯体には存在しない2100〜2200cm-1の範囲内に1つ以上の赤外線吸収帯を含みうる。また、この前駆体は相当な割合の元の有機錯体の質量を保持することができ;前駆体は、その上に錯体が形成された担体を乾燥後、元の有機錯体に起因する質量の10〜95質量%を保持することができ、前駆体は、好ましくは元の錯体の質量の20〜45質量%を保持し、さらに好ましくは60質量%まで、なおさらに好ましくは50質量%まで、最も好ましくは40質量%まで保持する。有機錯体を部分的に分解する場合、触媒活性金属を形成するためのその還元温度が、完全に酸化した金属錯体を触媒活性金属に還元するために必要な通常の還元温度より高いことも前駆体の特性であり、好ましくは、通常の還元温度より少なくとも5%高く、さらに好ましくは10%高く、なおさらに好ましくは15%高く、最も好ましくは20%高い。本発明の第5局面の触媒及び他のすべての局面の方法は、本発明の第6局面の1種以上の前駆体を利用することができる。触媒前駆体は、本発明の局面1〜5に関連して述べたとおりの材料及び化合物及びプロセス工程、例えば担体材料、有機錯体形成に用いる有機化合物、使用する金属塩及び化合物、有機錯体の形成方法、有機錯体の完全及び部分的分解の方法、乾燥方法などを用いて誘導することができる。
【0043】
本発明のすべての局面により、錯体の部分的又は完全分解後、その部分的に分解した錯体又は完全に分解した錯体を触媒活性金属に変換する。好ましくは、変換は、その部分的又は完全分解錯体を還元するための条件下、すなわち還元剤ソースの存在下での部分的又は完全分解錯体の処理によって達成する。好ましい実施形態では、還元剤ソースは、水素及び/又は一酸化炭素のソースである。変換に関するさらなる実施形態では、変換は、最終触媒を使用するために設計したプロセス中への1種以上の完全又は部分的解有機錯体を含む担体の導入によって達成することができ;この実施形態では、変換は、該プロセス条件又は該プロセスと関連する触媒再生若しくはリサイクル装置内に存在する条件下で起こる。好ましい実施形態では、触媒の活性化のために通常使用する条件と方法を用いてこの処理を行う。触媒前駆体が確実に触媒活性金属に変換するように条件と方法を選択する。一実施形態では、還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースによる処理は、部分的分解錯体を含む担体を還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースを含む気流と30〜600℃、好ましくは100〜550℃、なおさらに好ましくは200〜500℃、最も好ましくは200〜450℃で接触させることによって行う。還元剤流が遊離水素を含む場合、好ましくは50〜100容量%のH2と0〜50容量%のN2から成る。処理は、還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースの連続的流れ下、或いは100バールまで、好ましくは1〜20バール、さらに好ましくは1〜20バールの高圧で静的条件下で行うことができる。この活性化は、48時間まで、好ましくは長くて36時間、さらに好ましくは24時間未満、最も好ましくは30分〜12時間行うことができる。第1及び第2局面では、好ましくは大気圧で部分的分解錯体を含む担体を還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースにさらし、かつ温度を2℃/分の割合で処理温度まで上昇させ、さらに1〜10時間、好ましくは2〜8時間、最も好ましくは3〜6時間還元剤処理を続ける。第1及び第2局面では、還元剤処理条件下でいかなる残余の部分的分解有機錯体をも確実に除去するように正確な温度と時間を選択し;従って、還元剤処理温度は、一般的に有機錯体、特に部分的分解有機錯体の分解温度より高い。
【0044】
複数の活性金属を担体に適用し、かつ適用を連続的に行う場合、本発明の種々のプロセス段階を繰り返して各金属を順次沈着させることができる。
全金属の表面積は、理想的に触媒の0.01〜30mg2/g、好ましくは0.05〜25mg2/g、さらに好ましくは0.05〜20mg2/g、なおさらに好ましくは0.05〜15mg2/g、さらに好ましくは0.05〜10mg2/g、なおさらに好ましくは0.05〜5mg2/g、最も好ましくは0.05〜3mg2/gである。金属の表面積は、本明細書で述べたような化学吸着法で測定することができる。
本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得られる触媒と、本発明の第5及び第6局面の触媒は、化学反応が起こりかつ触媒される種々多様な有機化合物の変換で使用することができる。さらに、本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得られる物質は、相対的にに小量の不純物を変換又は除去するための有機化合物又は有機化合物の混合物の種々多様な処理方法で使用することができ;この用途では、本発明の方法で得られる物質は吸着剤として作用しうる。
本発明で特に興味深いことは、水素と一酸化炭素合成ガスから、前記ガスの反応条件における本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得た触媒又は本発明の第5及び第6局面の触媒との接触によるC5+液体炭化水素の生成である。
本発明で特に興味深いことは、多量なイオウ含有化合物、特に有機イオウ化合物との混合物中の有機化合物、特に炭化水素の、該有機化合物からいくらか又はすべてのイオウを除去するための、本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得た触媒又は本発明の第5及び第6局面の触媒による処理である。
以下の実施例によって、本発明の方法についてさらに説明する。
(実施例)
実施例1a−MCM-41の調製
米国特許第5,837,639号の実施例21に相当する下記方法でMCM-41(40Å)の試料を調製した。以下の混合物(質量部−pbw)をオートクレーブに充填した。
29wt.%のN,N,N-トリメチル-1-ヘキサデシルアンモニウムクロライド溶液をハライド交換樹脂用水酸化物と接触させて調製した83.7pbwのセチルトリメチルアンモニウム(CTMA)水酸化物、1.7pbwのアルミン酸ナトリウム、41.1pbwのテトラメチルアンモニウムケイ酸塩(10%水溶液)、及び10.5pbwの沈降水和シリカ(HiSil)
混合物を自然圧力下で撹拌しながら20時間100℃で結晶させた。結果生成物をろ過で回収し、周囲温度で空気中乾燥させた。生成物を窒素中540℃で1時間、次いで空気中で6時間か焼した。か焼生成物は1120m2/gの表面積と、以下の平衡吸着能(グラム/100グラム)を有した。
H2O 10.8
シクロヘキサン >50
n-ヘキサン >50
ベンゼン 67
38.4+/-2.0Åに非常に強い相対強度線と、22.6+/-1.0、20.0+/-1.0、及び15.2+/-Åに弱い線を含むX線回折パターンによって生成物をMCM-41と同定した。
【0045】
実施例1b−MCM-41の調製
MCM-41(40Å)の試料を以下の方法で調製した。以下の混合物(質量部−pbw)をオートクレーブに充填した。
26.8pbwの蒸留水、3.5pbwのセチルトリメチルアンモニウム(CTMA)クロライド(29wt.%水溶液)、4.55pbwの沈降水和シリカ(Ultrasil PM)、1pbwのテトラメチルアンモニウム水酸化物(25wt.%水溶液)
混合物を自然圧力下で撹拌しながら20時間150℃で結晶させた。結果生成物をろ過で回収し、周囲温度で空気中乾燥させた。生成物を窒素中540℃で1時間、次いで空気中で6時間か焼した。生成物をMCM-41と同定した。か焼生成物は903m2/gの表面積と、3.8nmの孔サイズ(窒素吸着で決定)を有する。分析は以下のとおりである。
シリカ 96.8wt.%
アルミナ 0.1018wt.%
ナトリウム 0.0300wt.%
炭素 0.11wt.%
吸着能は以下のとおりだった。
H2O 5.9wt.%
シクロヘキサン 53.9wt.%
n-ヘキサン 44.1wt.%
【0046】
実施例2−触媒−ルテニウムとMCM-41の調製−TEA/水性法
16.6gのルテニウム(III)ニトロシル硝酸塩水溶液を、25.7gのトリエタノールアミンと25.7gの蒸留水と撹拌しながら混ぜて溶液を調製した。この溶液を実施例1bの25gのMCM-41にゆっくり添加し、100℃で一晩中乾燥させた。この触媒を流動空気中で3時間400℃にか焼した。この結果有機錯体が完全に分解した。ルテニウム含量は公称0.5%だった。
実施例3−触媒−ルテニウムとMCM-41の調製−水性法
16.6gのルテニウム(III)ニトロシル硝酸塩水溶液を51.4gの蒸留水と撹拌しながら混ぜて溶液を調製した。この溶液を実施例1bの25gのMCM-41にゆっくり添加し、100℃で一晩中乾燥させた。この触媒を流動空気中で3時間400℃にか焼した。この結果有機錯体が完全に分解した。ルテニウム含量は公称0.5%だった。
【0047】
実施例4−実施例2及び3の水素化触媒の金属成分の還元
実施例2及び3で調製した触媒を条件a)とb)の2工程の条件下で活性化した。
a)触媒粒子(10/20メッシュ)をステンレススチール製触媒バスケットに装填してから300cm3のオートクレーブ内に設置した。200℃で18時間約100cm3/分の連続的な大気水素流下で金属の還元を行った。
b)触媒(10/20メッシュ)をステンレススチール製触媒バスケットに装填してから300cm3のオートクレーブ内に設置した。200℃で14時間、8.62MPa(1250psig)の静的水素圧下で金属の還元を行った。
【0048】
実施例5.実施例6〜14の担持型Ru触媒の水素処理及びH化学吸着値の測定
(A)活性化:約0.3〜0.5gの触媒を化学吸着セルに装填し、流動水素中、1大気全下、表1〜5で指定した温度で還元した。試料を2℃/分で最終還元温度に加熱し、この温度で3時間維持した。この処理後、触媒を活性化して触媒として使用するために準備した。
(B)化学吸着測定値は静的な高真空条件下で得た。(A)による水素処理後、表1〜5で指定した還元温度で15〜30分間、動的真空下で水素を汲み出した。温度を40℃に下げ、化学吸着プローブ分子としてH2を用いて8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得た。この等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して化学吸着した水素の総量を得た。これは、表1〜5中の列表示“%分散(合計)”に示される。試料を40℃で排気していかなる弱く吸着した水素をも除去し、滴定を繰り返して弱い吸着の等温線を決定した。この等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して弱く化学吸着した水素の量を得た。これは、表1〜5中の列表示“%分散(弱)”に示される。これら2つの値の減算から強く保持される化学吸着量を得、添付の下表中の列表示“%分散(強)”に示す。すべての値は、1のH/Ru表面比に対する。
【0049】
実施例6.含浸溶液中のアミノアルコールを用いたSiO2上に0.5%のRuを含む有機錯体の調製
15.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に5.01gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)、2.23gのトリエタノールアミン及び1.77gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。
実施例7.実施例6の触媒の300℃へのか焼
実施例6の試料の一部を流動空気中、温度を1℃/分で300℃に上げながらか焼し、当該温度で1時間維持した。この処理の結果、有機錯体の部分的分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
実施例8.実施例6の触媒の400℃へのか焼
実施例6の試料の一部を空気中、1℃/分の加熱速度で400℃までさらにか焼し、当該温度で維持した。この処理の結果、有機錯体の完全分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表1は、実施例7と8の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。この比較は、シリカ上Ru-TEA触媒を300℃でか焼し、部分的に錯体を分解する場合に最高の分散が得られることを示す。400℃のか焼後、水素処理前に有機錯体はすっかり分解され、化学吸着値が実質的に低下し、かつ250℃以上に還元温度を上げるにつれて化学吸着値が減少するように不安定であることが分かった。高い値の実施例7の触媒は、400℃での還元の際にも安定なままである。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例9.含浸溶液中のアミノアルコールを用いたSiO2上0.5%Ruの調製
25.00gのシリカ担体(S.A=250m2/g,P.D.=15nm)に8.37gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)、3.71gのトリエタノールアミン及び18.00gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。
実施例10.実施例9の触媒の275℃へのか焼
実施例9の試料の一部を流動空気中、温度を1℃/分で275℃に上げながらか焼し、当該温度で1時間維持した。この処理の結果、有機錯体の部分的分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
実施例11.実施例9の触媒の酸素のない環境中での熱分解
実施例9の試料の一部を流動窒素中、温度を2℃/分で400℃に上げながら加熱し、当該温度で1時間維持した。この処理の結果、有機錯体の完全分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表2は、実施例10と11の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。両処理は、出発Ru-トリエタノールアミン錯体の残余物を生成する。この比較は、不活性な熱分解条件(酸素の非存在)下では部分的分解がより高温で達成され、酸化によって生成される場合と同様に高い分散を与えるRu-有機前駆体を形成しうることを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例12.有機添加剤のないシリカ上0.5%Ruの試料
15.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に5.00gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)と4.00gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
実施例13.有機添加剤のないシリカ上0.5%Ruの試料及びか焼
15.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に5.00gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)と4.00gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。試料を空気中、温度を1℃/分で300℃に上げながらでか焼し、当該温度で1時間維持した。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表3は、実施例7、12及び13の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。実施例7に従って調製した触媒だけが本発明の対象であり、出発Ru-トリエタノールアミン錯体の残余物を有する。この比較は、触媒を150℃ほどの低温で還元する場合、触媒にルテニウム塩の水溶液を単に含浸させてから、低温で乾燥させた触媒について高い初期分散が得られることを示す。より高温で還元すると、おそらく焼結の結果として、分散数は劇的に減少する。実施例7の触媒ではこの現象は起こらず、400℃の還元温度で安定のままである。Ru塩の水溶液を最初に300℃にか焼した場合、分散数は非常に低い(実施例13)。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例14.含浸溶液中のアミノ酸を用いたSiO2上0.5%Ruの調製
10.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に3.34gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)、0.70gのL-アルギニン、及び全部で10ccの溶液量を生成するのに十分な水を混合して調製した溶液を含浸させた。この試料を100℃で4時間乾燥させてから、温度を1℃/分で250℃に上げ、当該温度で1時間維持した。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表4は、実施例7と14の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。か焼した両試料は、出発Ru-トリエタノールアミン錯体の残余物を残す。この比較は、含浸溶液中のアミノアルコール又はアミノ酸を用いた場合、高い分散が得られることを示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表5のデータは、実施例9と10の化学吸着データを示す。この比較は、アミノ錯体を有する乾燥触媒(実施例9)を直接水素中で還元すると良い分散値を与え、錯体を完全に酸化して錯体を除去する試料(実施例8、表1参照)より優れることを示す。しかし、この分散は、有機錯体を部分的に酸化又は熱分解すると得られる分散ほどよくない。
【0058】
【表5】
【0059】
実施例16.Ru-トリエタノールアミン錯体の部分的酸化によって形成される触媒前駆体の分解生成物の測定
実施例7の触媒の一部を空気中4度/分で加熱し、生成ガスを四極質量分光計で分析した。データを図1に示す。図1は、200℃よりわずかに低いところで水のピークが離れ、350℃近傍まで有機錯体が完全に酸化されるにつれてCO2、NO2及びH2Oの形成があることを示す。これは、錯体がC、N及びHを含んでいたこと示す。Oも存在するかもしれないが、使用した条件が酸化条件なので、この実験によってはこのことを決定できない。
実施例17.赤外線分光法
Ru-トリエタノールアミン及びRu-アルギニン由来の部分的に分解した有機錯体を含有する試料を赤外線分光法でも分析した。約25mgの実施例7(TEA,か焼300℃)、実施例12(有機物なし、乾燥100℃)及び実施例14(L-アルギニン、か焼250℃)の材料を別々に13mmのペレットに形成し、透過モードで操作するIR分光計に装填した。試料を真空中150℃に加熱後スペクトルを得た。
データを図2に示す。データは、透過率対IR線の波数のプロットを示す。触媒が分子種の特徴的な伸縮によって赤外線を吸収する場合、透過率は減少する。1500〜2000cm-1のピークは主にシリカの伸縮帯である。実施例7と14の試料に現れる2100〜2200cm-1あたりの吸収特徴の存在は、ニトリル及びイソニトリルのような錯化した炭素窒素種の特徴であると報告されている(参照:無機及び配位化合物の赤外及びラマンスペクトル(Infrared and Raman Spectra of Inorganic and Coordination Compounds), K. Nakamoto著, John Wiley偏,3版, 1978; ISBN: 0-471-62979-0, 267-269ページ)。このピークは、出発シリカ及びアミノアルコール又はアミノ酸が存在しないルテニウム錯体の含浸水溶液で調製した試料には存在しない。結果として、これらピークは、有機錯体の部分的分解後に存在する出発Ru-トリエタノールアミン及びRu-アルギニンの残余物の指標である。
【0060】
実施例18.熱重量分析
図3は、有機化合物としてトリエタノールアミンと調製し、分析前に100℃で乾燥した触媒試料(SiO2上0.5wt%Ru)の空気処理TGAプロットを示す、TGAプロットは、トリエタノールアミンとの錯体の水の損失と部分的酸化による300℃未満の温度での減量を示す。さらに、約325℃ではさらなる減量があり、有機錯体の完全な酸化によると考えられる。
図4は、図1で用いた触媒と同様の予め300℃でか焼した触媒(SiO2上0.5wt%Ru)の空気処理TGAプロットを示す。明らかに300℃未満であまり重要でない減量があり;これは、この温度未満で除去されるであろう担持型触媒上のいずれの物質もか焼によって除去されているという事実のためである。試料の減量の大部分は、部分的に分解した有機錯体のためであり、約325℃で酸化される。この結果は、部分的に分解した有機錯体を形成するためには、分解温度未満の当該か焼が必要であることを示す。
図5は予め300℃でか焼した触媒試料(SiO2上0.5wt%Ru)の水素処理TGAを示す。このTGA分析は、部分的に酸化した有機錯体は、か焼条件下より高い温度(〜400℃)で水素処理条件下、完全に分解されることを示す。
【0061】
実施例19.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)担体の調製
80%を超えるアナターゼ型から成り、表面積が48m2/gの担体をまず、NH4OHを添加してpH11に維持する溶液中スラリーにした。この懸濁液を60〜70℃で1時間撹拌し続けた。固体をろ過し、NH4OHの1M溶液で洗浄して、ろ液を硝酸銀溶液に添加しても白色沈殿が生じなくなるまでいかなる過剰の塩化物をも除去した。このチタニア担体の20gの試料上に1.52gのZrO(NO3)2・4H2Oを含有する12ccの水溶液を初期湿潤点まで含浸させ、120℃で一晩中乾燥させた。試料を450℃でか焼して3%ZrO2/TiO2担体を生成した。この手順を10回繰り返し、全試料を一緒に混合した。
実施例20.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)担体上の(公称)11%Co-1%Reの調製
12.3gの硝酸コバルト6水和物と、65%のReを含有する過レニウム酸の溶液0.35gを総量7ccの水溶液に溶かして含浸溶液を生成した。含浸前に含浸溶液を40℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。実施例19で述べた20gの担体を〜60℃に加熱し、含浸溶液を浸みこませた。含浸は初期湿潤で行った。試料を120℃で一晩中乾燥させた。この実施例と実施例21〜29の触媒についての組成及び金属含量は、還元した触媒中の金属の計算量を基礎とした。
実施例21.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)上の公称11%Co-1%Re触媒の調製(溶液中添加剤又は後処理なし)
実施例20の含浸した材料を空気中で4時間350℃でか焼した。
実施例22.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)上の11%Co-1%Reの調製(乾燥含浸物にDMEA後処理)
3.8gのN,N-ジメチルエタノールアミンに十分な水を加えて7ccの溶液を作った。この溶液を初期湿潤で20gの実施例20の120℃-乾燥した含浸材料上に浸みこませた。試料を120℃で一晩中乾燥させてから350℃で4時間か焼した。この結果、有機錯体の完全分解となった。
【0062】
実施例23.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)上の11%Co-1%Reの調製(か焼含浸物にDMEA後処理)
0.4gのN,N-ジメチルエタノールアミンに十分な水を加えて7ccの溶液を作った。この溶液を初期湿潤で20gの実施例21の350℃-か焼した試料上に浸みこませた。試料を120℃で一晩中乾燥させてから350℃で4時間か焼した。この処理の結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例24.TiO2ルチル型上の公称11%Co、0.15%Reの調製(乾燥含浸物にMDEA後処理)
80%を超えるルチル型から成り、かつ表面積が16m2/gの20gの担体に、12.3gの硝酸コバルト6水和物と過レニウム酸(65%Re)の溶液0.052gを含有する8ccの水溶液を初期湿潤で含浸させた。含浸前に含浸溶液は40℃、担体は〜60℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。含浸は初期湿潤で行った。この含浸した試料を4時間120℃で乾燥させた。十分な水を2.53gのN,N-メチルジエタノールアミンに加えて4ccの溶液を作った。この溶液を初期湿潤で10gの予め乾燥した含浸物上に含浸させた。この試料を120℃で乾燥させ、350℃でか焼し、4時間当該温度で維持した(分析:9.85%Co)。この結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例25.1%ZrO2/TiO2ルチル型の調製
80%を超えるルチル型から成り、表面積が16m2/gの20gの担体上に、0.497gのZrO(NO3)2・4H2Oを含有する8cc容量の溶液を初期湿潤で含浸させた。この試料を一晩中120℃で乾燥させ、4時間450℃でか焼した。
【0063】
実施例26.1%ZrO2/TiO2ルチル型上の公称11%Co、0.15%Reの調製(溶液中TEAあり)
80%を超えるルチル型から成り、表面積が16m2/gの20gの担体上に、0.497gのZrO(NO3)2・4H2Oを含有する8ccの溶液を初期湿潤で含浸させた。この試料を4時間120℃で乾燥させ、4時間350℃でか焼した。この試料20g上に、12.25gの硝酸コバルト6水和物、過レニウム酸(65%Re)の0.052gの溶液及び3.13gのトリエタノールアミンを含有する8ccの溶液を含浸させた。含浸前に含浸溶液は40℃、担体は〜60℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。含浸は初期湿潤で行った。この試料を一晩中120℃で乾燥させてから空気中で1度/分で350℃に加熱し、この温度で4時間維持した。(化学分析:0.13%のRe,9.57%のCo)。この結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例27.1%ZrO2/TiO2ルチル型上の公称10.6%Co、0.7%Reの調製(溶液中添加剤又は後処理なし)
実施例25で述べたように調製した10gの1%ZrO2/TiO2(ルチル型)担体を選んだ。5.92gの硝酸コバルト6水和物と過レニウム酸の溶液(65%Re)0.114gを含有する溶液を調製し、40℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。この溶液による含浸前に担体を〜60℃に加熱し、含浸は初期湿潤で行った。この試料を一晩中120℃で乾燥させてから空気中1度/分で350度に加熱し、この温度で4時間維持した。(化学分析:9.3%Co,0.6%Re)。
【0064】
実施例28.TiO2ルチル型上の11.3%Co、0.9%Reの調製(溶液中添加剤又は後処理なし)
実施例27で述べた試料と同様に試料を、それにいかなるZrをも添加しないルチル型担体上で調製した。試料の分析は11.3%Co及び0.9%Reだった。
実施例29. SiO2上の9.2%Co、1.2%Reの調製(溶液中TEAあり)
70.01gのシリカ担体(S.A=50m2/g)に、46.27gの硝酸コバルト6水和物、11.46gの水及び11.85gのトリエタノールアミンを混合して調製した溶液を含浸させ、60度で2時間乾燥させた。最初の2時間後、乾燥器温度を70℃に上げて1時間維持して乾燥した。乾燥温度をそれぞれ1時間の間隔で80℃、100℃及び140℃に上げた。この処理が完了すると、試料の色がピンクから黒に変化した。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々にあがてか焼し、硝酸コバルトとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整した:140℃まで2℃/分で1時間維持、180℃まで2℃/分で1時間維持、200℃まで2℃/分で1時間維持、300℃まで2℃/分で1時間維持。この結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例30.SiO2上の9.9%Co-1.3%Reの調製(溶液中添加剤なし)
15.01gのシリカ担体(43m2/g)に初期湿潤点まで8.28gの硝酸コバルト6水和物と0.41gの過レニウム酸溶液(54%Re)を3.99gの水中に溶かして調製した8.7mlの溶液を含浸させた。この試料を空気中60℃で乾燥させ、空気中300℃で1時間か焼した。
【0065】
実施例31.実施例21〜30の触媒の水素処理及び化学吸着手順
強い金属-担体相互作用は多くの用途で粒子/担体系の性能に影響することが分かっている。担体材料は活性金属と相互作用することができ;高い還元温度(400℃(700K)超え)から生じるこのような金属と還元性酸化物との相互作用は一般に“強い金属-担持相互作用(Strong Metal-Supported Interactions)”(SMSI)と呼ばれる。多くの場合、SMSIは触媒の活性と性能に有害である。SMSIは、部分的に還元した担体が該担体上に沈着した金属粒子を部分的に覆うようにさせ、その活性表面部位を閉鎖する。SMSIに関するさらなる情報については“強い金属担体相互作用。二酸化チタン上に担持された8群貴金属(Strong Metal Support Interactions. Group 8 Noble Metals Supported on Titanium Dioxide)”,Tauster, S.J.; Fung, S.C.; Garten, R.L, Journal of the American Chemical Society, (1978), 100(1), 170-5を参照せよ。
化学吸着測定に影響するSMSIを最小にするための試みでは、実施例21〜23のTiO2-担持型触媒をエキソサイツ(ex-situ)高温還元[450℃]、不動態化かつ部分的に再酸化した[150℃で]。これら試料を化学吸着装置内、225℃の低温かつ水素の存在下で最終還元のための水素処理に供した後、その化学吸着特性を測定した。シリカ上に担持され、それ自体SMSIを示さない実施例29と30の触媒を水素の存在下、90分間2℃/分で450℃まで化学吸着装置内で還元した。すべての場合、1気圧の水素下で約0.3〜0.5gの触媒が還元された。
化学吸着測定値は、静的高真空条件下、Quantachrome Autosorb 1A装置で得た。分散の決定のため、すべての試料を化学吸着装置に装填し、この装置内で還元を行った。還元後、動的真空下、45分間還元温度で水素を汲み出し、温度を40℃に下げ、8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得た。化学吸着プローブ分子としてH2を用いた。試料を化学吸着温度で排気して、いかなる弱く吸着した水素も除去し、滴定を繰り返して弱い吸着等温線を決定した。これら2つの等温線の減算から強く化学吸着した等温線と、その単層ガス適用範囲に対応するゼロトルの外挿切片を得る。この値を用いてコバルトの分散(H/Co表面比1に対する)を推定した。同一還元温度[225℃]で実施例21〜23の還元を繰り返して[180分間隔]、与えた温度で還元するであろうすべてのCoが実際に還元したことを確かめた。
シリカ担持型触媒上の水素化学吸着はSMSI状態を破壊する必要がないので、実施例29と30の触媒は、上述したような化学吸着装置内で直接還元した。これら試料を還元温度で排気し、合計及び弱い水素吸着等温線を40℃で測定した。連続的な還元サイクル[180分間]でさらにコバルトが還元されないことを点検した。
【0066】
表6には、実施例20〜22のCo、Re触媒の化学吸着値が、透過型電子顕微鏡で決定した粒径値と共に示される。最初の還元サイクルに続いてさらなる還元が起こった場合、最大化学吸着値を選択する。当業者は、担持型Co触媒にReを添加すると還元温度を下げ、かつ粒径を小さくする(すなわち分散を高める)ことを認識している。実施例21、22及び23は、ZrO2修飾アナターゼ型担体上のアミノアルコール後処理した試料では、同一Reレベルで、含浸物をか焼する(実施例23)のではなく乾燥した(実施例22)ときに良い結果が現れ、分散が改良されたことを示唆している。実施例24〜27は、アミノアルコール添加又は後処理が、ルチル型担体について3〜5の係数でReレベルを増やすのと同じ分散を達成できることを示す。実施例29と30は、本発明の方法を用いて行った含浸用のシリカ触媒についての劇的な改善を示す。
【0067】
【表6】
【0068】
実施例32.TEM分析
実施例21と22の触媒のTEM顕微鏡写真をそれぞれ図6(a)と6(b)で比較する。図6(a)中、実施例21の触媒の顕微鏡写真はZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す。この触媒は、後処理も含浸溶液への分散助剤の添加も行わない標準的な含浸法で調製した。この触媒をか焼かつ還元して不活性的にTEMに移した。Coと担体粒子が同様の大きさなので、Co粒子をアナターゼ型担体粒子の間に配置するため、TEMビームを直径〜10nmの小プローブに下げて焦点を合わせる必要があった。プローブを像内のランダムに選択した粒子上に位置づけ、各粒子からエネルギー分散分光(EDS)データを収集した。EDSスペクトルの特徴的なX線ピークをCo又はTi(アナターゼ型)と同定した。この像内で同定したCo粒子は、直径約10nm〜約19nmの範囲だった。図6(b)中、実施例22の触媒のTEM顕微鏡写真は乾燥含浸物のジメチルエタノールアミンによる後処理、か焼、還元及びTEMへの不活性移動後のZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す。この場合、Coと担体粒子の相対的サイズが大きく異なるため、粒子間に優れたコントラストがあった。両触媒中のReレベルが同一であることに留意せよ。当業者は、担持型Co触媒にReを添加すると還元温度をさげ、粒径を小さくする(すなわち分散を高める)ことを認識している。両ケースで、試料を4時間450℃で還元してから、いかなる空気暴露をも介入せずに不活性的に顕微鏡中に移した。TEMデータは、乾燥したCo、Re含浸物のDMEAによる後処理が劇的に分散を高め(すなわち、コバルト粒子がずっと小さい(典型的に約5nm))、かつ触媒中のコバルトのより均一なナノスケール分布があることを示す。
実施例24の触媒のTEM顕微鏡写真は、担体上のCo金属の粒度分布を示す棒グラフと共に図10に提供されている。TEMは担体上の顕著に一様なCo金属粒子の分布を示し、棒グラフはこれら粒子が約6nmの平均粒径を有し、最大粒径が約16nmであることを示す。
【0069】
実施例33.SIMS分析
実施例22と28の触媒をSIMSによって評価し、結果をそれぞれ図7と8に示した。実施例22の触媒は、小さい粒子が一緒に群化して成る30〜40ミクロンの凝集粒子であることが分かる。小さい粒子には、少ししか明るさに差のない非常に均一な分布が見える。対照的に、本発明に従って調製していない実施例28の触媒は、担体の外側に凝集されたCoを示す。この比較は、本発明の方法の利用によって、Co分散についてナノとミクロの両スケールで均質性が改良されることを示している。
【0070】
実施例34:触媒試験:フィッシャー-トロプシュ
触媒試験はダウンフロー固定床反応器内で行った。外径(OD)1.27cm(0.5”)/内径(ID)1.09cm(0.43")のステンレススチール製反応器本体は、その中心に外径0.318cm(0.125”)の熱電対-ウェルを有する。熱電対-ウェルは8個の熱電対を3.81cm(1.5”)離して収容する。反応器の8個の熱電対は売手によって較正かつ保証されている。熱電対の上部と底部との間に位置する触媒プラス希釈剤床の容積は23mLである。反応容器を直径6.35cm(2.5”)のアルミニウム又は真鍮の円筒ブロックでスリーブを付けてよい熱分布を与えた。真鍮又はアルミニウムのブロックに収容されている0.318cm(0.125”)の予備熱管を通じて反応器上部の供給導入点まで供給ガスを触媒床に供給した。赤外線炉及び真鍮(又はアルミニウム)ブロックの底部に設置した抵抗補助ヒーターで反応器を加熱した。抵抗補助ヒーターは等温床条件を確実にするために設置した。底部と上部の両方のステンレススチールフィルターディスクで触媒床を適所に保持した。速度実験中、触媒の温度拡散を減らすため、触媒を同サイズの石英砂により約8:1の石英-対-触媒の容量比で希釈した。フィッシャー-トロプシュ条件で触媒床中の軸方向の温度拡散は通常3〜10Kだった。触媒床の平均温度を加重平均として計算した。最初と最後の熱電対ゾーン(入口と出口点)の荷重係数を内部熱電対ゾーンの荷重係数の1/2に設定した。供給成分をBrooksマスフローコントローラーを介して個々に供給し、使用前に精製した。
【0071】
典型的な固定床実験では、約3gの触媒を石英で23mL体積に希釈し、反応器に装填した。触媒を1.2MPaのH2(450標準mL/分)流内で温度を1℃/分の割合で400℃に上げ、最終温度で8時間維持することで還元した。触媒を流動H2内で160℃に冷まし、2MPaの合成ガス(H2/CO≒2.1)圧下に置き、最後に1℃/分の上昇速度で合成温度(220℃)にした。供給流(以後、一般的にガス毎時空間速度(Gas Hourly Space Velocity)、つまりGHSVで表す)を変えてCO変換を調整した。GHSVは、1時間当たり触媒の体積に対して供給したガスの標準体積(21℃(70F)、1atmで)として定義される。すべての試験中、CO変換は同レベルで維持した(50〜80%)。図9は、基本事例(通常の触媒)と本発明に従って調製した2種の触媒、一方はTiO2担体上、他方はSiO2担体上の触媒の初期触媒活性を示す。図9では、基本事例-実施例28(11%Co,1%Re/TiO2(ルチル)、アミノアルコール処理なし)、実施例24(11%Co、0.15%Re/TiO2(ルチル)、MDEA後処理)及び実施例29(溶液中TEAによるSiO2上の9.9%Co-1.3%Re)の初期触媒活性。図9のデータは、明白に本発明の方法によって高活性な安定したフィッシャー-トロプシュ触媒を製造できることを示している。実施例24は、基本事例の実施例28の15%のレニウムしか持たないが、FT条件下で匹敵しうる性能を有する。実施例29は、FT条件下での性能が基本事例よりきわめて優れる。
実施例35.20%Ni/Al2O3の通常の製法
20gのリフォーミンググレードのガンマAl2O3(190m2/gの表面積)に24.8gの硝酸ニッケル6水和物を含有する12ccの含浸水溶液を初期湿潤で含浸させた。120℃で乾燥後、試料を4時間350℃でか焼した。
【0072】
実施例36.乾燥含浸物についてDMEA後処理のある20%Ni/Al2O3の製法
20gのリフォーミンググレードのガンマAl2O3(190m2/gの表面積)に24.8gの硝酸ニッケル6水和物を含有する12ccの含浸水溶液を初期湿潤で含浸させた。120℃で乾燥後、試料に7.6gのN,N-ジメチルエタノールアミンを含有する106ccの水溶液を初期湿潤で再び含浸させた。試料を一晩中120℃で乾燥させた後、4時間350℃でか焼した。これら条件下で有機錯体は完全に分解した。
水素化学吸着法で実施例35と36の触媒のNiの分散を決定した。結果を下表7に与える。これら結果は、Niを本発明の方法で沈着させたときのNi分散の劇的増加を示す。
【0073】
【表7】
【0074】
実施例37.SiO2上の19.0%Niの調製(溶液中添加剤なし)
15.02gのシリカ担体(80m2/g)に、7.75gの水に17.49gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中120℃で乾燥させ、流動空気中、350℃で2時間か焼した。
実施例38.SiO2上の18.0%Ni(溶液中添加剤あり、モル比TEA/Ni=0.125)
10.00gのシリカ担体(80m2/g)に、4.52gの水と0.70gのトリエタノールアミンに10.97gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中60℃で1時間及び90℃で1時間乾燥させた。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々に上げることで、硝酸ニッケルとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整してか焼した:195℃まで2℃/分かつ1時間維持、350℃まで1℃/分かつ1時間維持。この処理の結果、有機錯体の完全な分解となった。
実施例39.SiO2上の18.0%Niの調製(溶液中TEA添加、モル比TEA/Ni=0.25)
10.02gのシリカ担体(80m2/g)に、3.87gの水と1.40gのトリエタノールアミンに10.93gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中60℃で1時間及び90℃で1時間乾燥させた。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々に上げることで、硝酸ニッケルとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整してか焼した:195℃まで2℃/分かつ1時間維持、350℃まで1℃/分かつ1時間維持。この処理の結果、有機錯体の完全な分解となった。
実施例40.SiO2上の18.3%Niの調製(溶液中TEA添加、モル比TEA/Ni=0.50)
15.02gのシリカ担体(80m2/g)に、4.01gの水と4.28gのトリエタノールアミンに16.66gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中60℃で1時間及び90℃で1時間乾燥させた。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々に上げることで、硝酸ニッケルとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整してか焼した:165℃まで2℃/分かつ1時間維持、350℃まで1℃/分かつ1時間維持。この処理の結果、有機錯体の完全な分解となった。
【0075】
実施例41.実施例37〜40の水素処理及び化学吸着手順
化学吸着測定前に、試料を1気圧の水素下450℃の温度で90分間還元した。化学吸着測定値は、静的高真空条件下Quantachrome Autosorb 1A装置で得た。この触媒を化学吸着装置に装填した。約0.3〜0.5gの触媒を1気圧の水素下で還元する。次に、動的真空下、水素を還元温度で45分間汲み出し、温度を40℃に下げ、8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得た。化学吸着プローブ分子としてH2を用いた。化学吸着温度で試料を排気していかなる弱く吸着した水素をも除去し、滴定を繰り返して弱い吸着等温線を得た。2つの等温線の減算から強く化学吸着した等温線と、その単層ガス適用範囲に対応するゼロトルの外挿切片を得た。この値を用いてニッケル分散を推定した(1のH/Ni表面比に対して)。
同じ還元温度で[450℃]還元を繰返し[40分間隔]、与えた温度で還元するであろうすべてのNiが実際に還元したことを確かめた。この試料を還元温度で排気し、40℃で合計及び弱い水素吸着等温線を測定した。連続還元サイクルでさらにニッケルが還元されないことを点検した。表8に、実施例37と40のNi触媒の化学吸着値を示す。このデータは、Niを本発明の方法で沈着させたときのNi分散の劇的増加を示している。
【0076】
【表8】
【0077】
実施例42.実施例37〜40の材料のイオウ吸着能の評価
実施例37〜40の4つのNi-ベース試料すべてを以下の様式でイオウ吸着能について評価した。8ccの吸着剤をステンレススチール反応管(18のL/D)中に充填し、管状炉で加熱される貫流反応装置内に置いた。流動H2(200cc/分)中、室温から2℃/分で350℃に上げて2時間維持することによって350℃で吸着剤を還元した。350℃で2時間維持後、試料を200℃に冷ました。次に、チオフェンとして80ppmのイオウを含有するガソリン範囲の炭化水素ブレンドをNiベース吸着剤に導入した。以下の条件で実験を行った:アップ-フロー態様で(1.45×106Pa(210psig),200℃,1LHSV)。生成物中に残存する全イオウの測定(ANTEKイオウ)に基づいてイオウ吸着能を計算した。結果を下表9に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
このデータから分かるように、すべての試料について1ppm未満のイオウレベルが達成された。本発明の吸着剤でイオウ吸着能が最高だった。驚くべきことに、イオウ吸着能は、吸着剤調製で用いたトリエタノールアミン分散剤の量と直接関係し、分散剤なしで調製した試料よりすべてずっと優れていた。
【0080】
実施例43.種々の有機錯体の分解温度の決定
種々の金属と窒素含有化合物から誘導し、かつシリカ又はアルミナ上に沈着した多数の担持型有機錯体を空気処理TGAに供し、それぞれの分解プロフィルを決定した。TGAデータは図11に示され、図中、TEAはトリエタノールアミンであり、argはL-アルギニンであり、arg(TPA-C12)はPt塩としてテトラミンPtジクロライドを有するアルギニン錯体である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】空気中、4度/分で加熱した実施例7の生成物の四極質量スペクトルを示す。
【図2】シリカと実施例7、9及び14の透過赤外線スペクトルを示す。
【図3】トリエタノールアミンによる金属の含浸と100℃での乾燥によって調製した担持型金属触媒(0.5wt%Ru/SiO2)の空気処理TGAプロットを示す。
【図4】トリエタノールアミンによる金属の含浸と300℃でのか焼によって調製した担持型金属触媒(0.5wt%Ru/SiO2)の空気処理TGAプロットを示す。
【図5】トリエタノールアミンによる金属の含浸と300℃でのか焼によって調製した担持型金属触媒(0.5wt%Ru/SiO2)の水素処理TGAプロットを示す。
【図6(a)】350℃でか焼かつ還元後のZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す実施例21の触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図6(b)】乾燥したジメチルエタノールアミン含浸物の後処理、350℃でか焼かつ還元後のZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す実施例22の触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図7】Co、Ti及びZrの位置を図解する実施例22の触媒のSIMS分析の結果を示す。
【図8】Co及びTiの位置を図解する実施例28の触媒のSIMS分析の結果を示す。
【図9】実施例28(11%Co、1%Re/TiO2(ルチル型))、実施例24(11%Co、0.15%Re/TiO2(ルチル型)、MDEA後処理あり)及び実施例29(SiO2上9.9%Co-1.3%Re、溶液中TEAあり)の触媒のCO変換の触媒活性を示す。
【図10】担体上のCo金属の粒度分布を示すヒストグラムと共に担体上のCo粒子を示す実施例24の触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図11】有機錯体の形成後100℃で乾燥した種々の担持型金属有機錯体(1〜5wt%金属/担体)の空気処理TGAプロットを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、担持型触媒の製造方法、特に担体上に沈着した1種以上の活性金属を含んでなる担持型触媒の製造方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
担持型触媒、特に担持型金属若しくは金属酸化物触媒は技術的に周知である。金属酸化物基材上の小さい金属粒子の分散系が触媒材料として一般的に使用されている。最終触媒の物理的及び化学的性質は、金属粒子の沈着前の基材の調製、使用する沈着方法及びその後の金属/酸化物系の処理によって大きく左右される。
小さい粒径(高い分散)を有する高装填金属触媒及び担体表面上に均質に分布した金属粒子を調製する能力は、効率的な担持型触媒の重要な必要条件である。多くの場合、特に卑金属触媒では、高装填金属触媒は、担体上の局在領域内にクラスター形成している大きい金属粒子(>10nm)を有する。多くの反応の触媒活性は利用可能な表面金属部位の数と関係があるので、良い金属分散を有する触媒を製造できることが重要である。触媒金属部位の分布の均一性も重要な因子であり、粒子間距離を最大化は、焼結問題が少ない安定した担持型触媒の供給に役立ちうる。担持型金属触媒は、金属塩を含有する溶液の初期湿潤(incipient wetness)含浸によって調製されることが多く、乾燥させてからか焼して酸化物を形成する。次いで、この酸化物を還元して担持型金属触媒を形成する。
【0003】
当該技術では、耐火性無機酸化物担体上に沈着した活性金属の分散を改良して、フィッシャー-トロプシュ法で使うための触媒を製造する種々の試みが為されている。特に、触媒金属との組合せで必要なレニウム又は他群の8種の金属の量を減らすために種々のアプローチが当該技術で採用されている。
公開された国際特許出願WO 98/47618号では、約3〜6個の総炭素原子を有する多官能性カルボン酸を耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースと共-沈着させた後、か焼してフィッシャー-トロプシュ触媒を調製する。多官能性カルボン酸の例として種々のアミノ酸が挙げられる。
公開された国際特許出願WO 98/47620号では、炭水化物又は糖を、耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースと共-沈着させ、或いは耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースを沈着させた後に適用してからか焼してフィッシャー-トロプシュ触媒を調製する。
公開された国際特許出願WO 98/47617号では、ポリオールを耐火性金属酸化物上に触媒活性金属のソースと共-沈着させた後、か焼してフィッシャー-トロプシュ触媒を調製する。
最終触媒中の金属の分散を制御できる担持型金属触媒の新規な製造方法に対する継続的な要望がある。
従って、本発明の目的は、触媒中の金属分散の制御を可能にする担持型金属触媒の製造方法を提供することである。
【0004】
(発明の概要)
本発明の方法では、担持型金属触媒の調製で用いる試薬と調製工程について特有の制御を行うことによって、改良された金属分散特性を有する担持型金属触媒が得られることが分かった。
従って、第1局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に沈着した1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体を有する担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した前記1種以上の有機金属錯体を部分的に分解する工程;及び
c)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
【0005】
第2局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を部分的に分解する工程;及び
d)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
【0006】
第2局面のさらなる実施形態では、担体の、その上に沈着した1種以上の触媒金属前駆体の1種以上の有機化合物による処理前に、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体をか焼又は熱分解によって熱的に処理することができる。この局面のさらなる実施形態では、工程a)とb)を逆にし;第1工程で担体を1種以上の有機化合物で処理し、その上に1種以上の有機化合物が沈着した担体を、1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して、該担体上に1種以上の有機錯体を形成した後、その1種以上の有機錯体を部分的に分解かつ触媒活性金属に変換することができる。第2局面のすべての実施形態で、触媒活性金属への変換は、還元条件下、例えば、水素又はCOのソースの存在下で行うことができる。有機化合物は、好ましくは窒素含有有機化合物である。本発明の第2局面では、1種以上の有機化合物による処理又は1種以上の触媒活性金属の1種以上の化合物、若しくは塩による処理は、これら化合物のどちらかをその調製又は合成の間に担体に導入する場合は省略しうる。
【0007】
第3局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で多孔性担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した多孔性担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒前駆体が沈着した多孔性担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記担体上に沈着した1種以上の有機錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
【0008】
第3局面のさらなる実施形態では、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体の1種以上の有機化合物による処理の前に、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体をか焼又は熱分解によって熱的に処理することができる。この局面のさらなる実施形態では、工程a)とb)を逆にし;第1工程で担体を1種以上の有機化合物で処理し、その上に1種以上の有機化合物が沈着した担体を1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して担体上に1種以上の有機錯体を形成した後、該1種以上の有機錯体を完全に分解し、かつ触媒活性金属に変換することができる。第3局面のすべての実施形態で、触媒活性金属への変換は、還元条件下、例えば、水素又はCOのソースの存在下で行うことができる。有機化合物は、好ましくは窒素含有有機化合物である。本発明の第3局面では、1種以上の有機化合物による処理又は1種以上の触媒活性金属の1種以上の化合物、若しくは塩による処理は、これら化合物のどちらかをその調製又は合成の間に担体に導入する場合は省略しうる。
【0009】
第4局面では、本発明は、触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に沈着した1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体を有する担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した1種以上の有機金属錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法を提供する。
第3及び第4局面では、有機錯体の完全分解が、該完全分解が還元条件下、例えば水素又はCOのソースの存在下で行われるときのように、その完全に分解した有機錯体が触媒活性金属に変換される条件下で行われる場合、個別の変換工程を省略しうる。
本発明の第1及び第4局面では、本方法の第1段階は、担体材料の製造又は合成中の1種以上の有機錯体の形成によって達成される。代わりに、錯体の形成に必要な個々の成分をその製造又は合成の間に担体中に組み込むことができ、該成分を組み込む該担体の熱処理のような、その後のプロセス工程の間に有機錯体の形成が起こる。
【0010】
第5局面において、本発明は、1種以上の担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属を含んでなる触媒であって、全金属分散が45%以上であり、かつこの全金属分散の強く化学吸着した成分に関する金属分散が20%以上である触媒をも提供する。
本発明の第6局面では、少なくとも1種の担体材料と、該担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属の少なくとも1種のソースとを含んでなる触媒前駆体であって、前記1種以上の触媒活性金属のソースが1種以上の金属含有有機錯体の分解生成物である、触媒前駆体が提供される。この触媒前駆体は、本発明の第1〜第4局面のいずれかの局面の方法で、有機錯体の完全又は部分分解後に中間体として存在しうる。本発明のこの局面の触媒前駆体は、本発明の第2及び第3局面の触媒金属前駆体とは異なり;各場合、第2及び第3局面では、該触媒金属前駆体が触媒前駆体の形成に先行する。
【0011】
第7局面では、本発明は、水素と一酸化炭素合成ガスからの反応条件における前記ガスの触媒との接触によるC5+液体炭化水素の製造方法であって、該触媒が本発明の第1、第2、第3又は第4局面に従って製造され、或いは本発明の第5又は第6局面の触媒である、方法を提供する。
本発明の第8局面では、1種以上の有機化合物と1種以上のイオウ含有化合物を含む混合物からのイオウの除去方法が提供され、この方法では、混合物を、無機担体上に分散した活性金属を含み、かつ本発明の第1、第2、第3若しくは第4局面の方法で調製した1種以上の材料、又は本発明の第5若しくは第6局面の材料と、無機担体上に分散した活性金属を含む該材料上にイオウが吸着するような条件下で接触させる。この局面の好ましい実施形態は、選択した条件が添加水素の非存在下のイオウトリム(Sulfur Trim)処理の標準条件の場合である。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、添付図面と一緒に発明の詳細な説明を参照することでよりよく理解されるだろう。
本発明の種々の方法は、最終触媒中の触媒活性金属の金属分散と分布が良いレベルの担持型金属触媒を製造するときに有効であることが分かった。本発明の方法の重要な特徴は、担持型金属触媒の調製で用いる成分の選択と、最終触媒組成に達するときに用いるプロセス工程の順序である。
【0013】
本発明のすべての局面で、本方法は、触媒の含浸で種々多様な無機担体材料を利用することができる。これら材料は耐火性無機酸化物でよく、技術的に周知の種々多様な多孔性及び非多孔性担体材料から選択することができる。これには、限定するものではないが、すべての型のアルミナ、特にγアルミナ、すべての型のシリカ、すべての型のTiO2(アナターゼ型とルチル型の両方又はその混合物)、ZrO2、活性炭、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及び同様の金属酸化物が挙げられる。担体はこれら材料の2種以上のいずれの組合せ又は混合物でもよい。使用する担体材料の正確な性質は触媒の企図する用途によって決まる。本発明のすべての局面で、最も好ましい担体は非晶質担体である。特に好ましい担体は、シリカ担体、特に非晶質シリカを含む担体である。本発明の第7局面に関し、1つの好ましい担体は二酸化ジルコニウムで修飾した酸化チタン担体である。本発明のすべての局面で好ましい担体のさらなるクラスは、多孔性担体、特にメソポア、マクロポア及びその混合物を有する担体である。
本発明の目的では、用語“マクロポア(macropores)”及び“メソポア(mesopores)”は、Pure Appl. Chem., 45 (1976), 79で定義されているとおり、すなわち直径が50nmを超える孔(マクロポア)又は直径が2nm〜50nmの孔(メソポア)のように使用する。
【0014】
本発明のすべての局面で、担体は、例えばゼオライト又はゼオライト様物質のような分子ふるい材料でよい。分子ふるいとして、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩、メタロアルミノリン酸塩、メタロアルミノホスホケイ酸塩、又はスズケイ酸塩が挙げられる。触媒担体として好ましい分子ふるいは、例えば分離、触媒用途、及び化合反応と分離用途のような選択される用途によって決まるだろう。分子ふるいの特性、例えば、構造型、化学組成、イオン交換、及び活性化手順をあつらえる多くの方法がある。代表例は、構造型AFI、AEL、BEA、CHA、EUO、FAU、FER、KFI、LTA、LTL、MAZ、MOR、MEL、MTW、OFF、TON及びMFIの分子ふるい/ゼオライトである。これら材料のいくつかは真のゼオライトではないが、文献で頻繁にそれとして言及され、かつ以下の明細書ではこのような材料を含めて広範にこの用語を使用する。
【0015】
本発明のすべての局面で触媒担体として使用しうる1クラスの分子ふるい材料は、指示薬(directing agents)として両親媒性化合物を用いて合成しうる当該材料である。このような材料の例は米国特許第5,250,282号(ここに、参照によって全内容が取り込まれる)に記載されている。両親媒性化合物の例は、Winsor, Chemical Reviews, 68(1), 1968でも提供されてる。このタイプの他の好適な分子ふるい材料は、“Review of Ordered Mesoporous Materials”, U. Ciesla and F. Schuth, Microporous and Mesoporous Materials, 27, (1999), 131-49にも記載されている。このような材料としては、限定するものではないが、SBA-2、SBA-15及びSBA-16のようなSBA(Santa Barbara)と称する材料、FSM-16及びKSW-2のようなFSM(Folding Sheet Mechanism)と称する材料、MSU-S及びMSU-XのようなMSU(Michigan State)と称する材料、TMS又は遷移金属ふるい(Transition Metal Sieves)と称する材料、FMMS又はメソポア担体上の機能化単層(functionalized monolayers on mesoporous supports)と称する材料及びAPM又は酸調製メソ構造(Acid Prepared Mesostructure)と称する材料が挙げられる。このクラスの特に好ましい結晶性分子ふるい材料は、MCM-41、MCM-48、及びMCM-50のようなM41Sと称するケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩メソポア分子ふるい材料である。これら分子ふるいは、米国特許第5,098,684号(Kresgeら)及びKresgeらの米国特許第5,102,643号に詳述されている(両方とも参照によってその全体が本明細書に取り込まれる)。本発明で使うこの系統の材料の特に好適なサブクラスは、MCM-41及びMCM-48と称するメソポアシリカである。MCM-41が特に好ましく、均一の大きさのメソポアの六方配列を有する。MCM-41分子ふるい材料は米国特許第5,098,684号(ここに、参照によって全内容が取り込まれる)に詳述されている。MCM-41分子ふるいは、アルミナが存在する場合、100、さらに好ましくは200、最も好ましくは300より高いSiO2/Al2O3モル比を有する。本発明のすべての局面で使用しうる他の分子ふるいとして、MCM-1、MCM-2、MCM-3、MCM-4、MCM-5、MCM-9、MCM-10、MCM-14、MCM-22、及びMCM-49と称する当該分子ふるいが挙げられる。
【0016】
本発明のすべての局面で使う好ましい秩序ある(ordered)メソポア材料は秩序あるメソポアシリカである。最も好ましい秩序あるメソポアシリカはMCM-41と称するものである。
本発明の方法で使用しうるメソポア材料のさらなる例は、米国特許第5,951,962号(その全開示が参照によって本明細書に取り込まれる)に記載され、かつその記載に従って調製されるメソポアシリカである。この文献では、メソポアシリカは、反応媒体を含有する水とポリマーの分散系中でシリカ前駆体を変換することで調製される。
高い表面積のメソポアアルミナ固体も本発明の方法で使う触媒担体の調製で使用でき;このような高い表面積のメソポアアルミナ固体は、米国特許第6,238,701号(その全開示は参照によって本明細書に取り込まれる)に記載されている方法で調製できる。
担体は、米国特許第5,936,126号、第6,248,924号及び第6,284,917号(参照によってその全開示が本明細書に取り込まれる)に記載されているもののような、マクロポア材料又はマクロポアとメソポアの両方である材料から成りうる。
1種以上の担体材料は混合多孔度のものでよく、またメソポア若しくはマクロポアのどちらかを有する他の担体材料に加えて使用してもよい。混合多孔度の材料は、そのマクロポアに加えてメソポアを所有しうる。このような材料の例は、米国特許第6,248,924号及び第6,284,917号(参照によってその全開示が本明細書に取り込まれる)に記載されている。
【0017】
本発明のすべての局面で、最終触媒は、1種以上の担体材料の表面上に沈着した1種以上の活性金属のみから成ってもよい。これら実施形態の触媒は、無機バインダーが添加されていない。その上に活性金属が沈着し、或いは沈着していない担体は、種々多様な粒径に形づくることができる。一般に、粒子は、粉末、顆粒、又は2メッシュ(Tyler)スクリーンを通過し、かつ400メッシュ(Tyler)スクリーンで保持されるのに十分な粒径を有する押出品のような成形品の形態でよい。触媒を押出しによってのように成形する場合、乾燥前に押し出し、或いは部分的に乾燥してから押し出すことができる。これら実施形態では、押出し又は成形プロセスで1種以上の溶媒と共に種々の押出し又は成形助剤を使用することができる。
本発明のすべての局面で、その上に1種以上の活性金属が沈着した担体材料を、該触媒で予想される触媒プロセスで利用される温度及び他の条件に耐える無機バインダー又はマトリックス材料と共にコンポジットに形成することができる。このような材料は、最終触媒の形成と製造でも助けになりうる。このような材料として、活性及び不活性材料、合成又は天然に存在するゼオライト、並びに粘土及び/又はアルミナ、シリカ若しくはシリカ-アルミナのような酸化物のような無機材料が挙げられる。後者は、天然に存在するものでよく、或いはシリカと金属酸化物の混合物を含むゼラチン様沈殿物又はゲルの形態でよい。ゼオライトと共に材料を使用すると、すなわちゼオライトと併用し、或いはその合成時に存在すると、ゼオライト自体が触媒的に活性なので、触媒の変換及び/又は選択性を変えることができる。これら材料を天然に存在する粘土、例えばベントナイト及びカオリン中に組み入れて、商業的操作条件下での触媒の破砕強さを高め、かつ触媒のバインダー又はマトリックスとして作用しうる。1種以上の触媒活性金属を含む担体を、質量で99:01〜05:95、好ましくは99:01〜10:90、さらに好ましくは99:01〜20:80、最も好ましくは99:01〜50:50の触媒担体:マトリックス材料の量のマトリックス材料を含む組成物に形成することができる。好ましくは、使用する場合、添加マトリックス材料は、触媒担体とマトリックス材料を合わせた質量の通常50wt%未満、理想的には40wt%未満、好ましくは30wt%未満、さらに好ましくは20wt%未満、さらに好ましくは15wt%未満、最も好ましくは10wt%未満の最小量に維持し、最も好ましい実施形態では5wt%未満である。この組成物の形成は、材料を一緒に混練し、次いで所望の最終触媒粒子にペレット化する押出しを含む通常の手段で達成することができる。理想的には、添加マトリックス材料はマクロポアであり、或いは混合多孔度の材料、すなわちマクロポアとメソポアの両者の材料である。混合多孔度の材料は、約50nm〜約10,000nmの範囲の孔径を有するマクロポアで約5〜約50%、好ましくは約10〜約45%、さらに好ましくは約10〜約30%、特に約15〜約25%の孔隙量が形成され、かつ約2nm〜約50nmの範囲の孔径を有するメソポアで約50〜約95%、好ましくは約55〜約90%、さらに好ましくは約70〜約90%、特に約75〜約85%の孔隙量(各場合、孔隙量の総計を加えて100%)が形成される孔分布を有しうる。
【0018】
本発明のすべての局面で、本方法を用いて一酸化炭素水素化反応、特にフィッシャー-トロプシュ反応の実施に好適な触媒を製造することができる。これら実施形態では、上述した材料のような種々多様の担体材料を利用できる。好ましい担体材料は二酸化チタン(アナターゼ型とルチル型の両方)、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ及び二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの混合物である。二酸化チタンと二酸化ジルコニウムの混合物を含む担体が好ましい。好ましい実施形態では、二酸化チタンをまず洗浄して実質的に塩化物を確実になくしてからZrO(NO3)2・4H2Oのような二酸化ジルコニウム前駆体の溶液を含浸させ、任意に乾燥させ、か焼してZrO2/TiO2担体を形成する。最終担体は、担体の総質量に対して50wt%まで、好ましくは35wt%まで、さらに好ましくは20wt%まで、なおさらに好ましくは10wt%まで、最も好ましくは0.1〜5wt%の範囲内の二酸化ジルコニウムを含みうる。担体に加え、促進剤又は改質剤のような添加成分を使用することが多い。このような材料の好ましい例は、レニウム、ルテニウム、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、クロム、トリア及び銅などである。特に好ましい促進剤又は改質剤はレニウムであり、1種以上の触媒活性金属の沈着後、特にかつ好ましくはこれら金属の1つがコバルトの場合、触媒のか焼の間に重要な特性を示す。か焼段階の間に、レニウムはコバルトが確実に高度に分散するのを助け、かつ高度に分散した状態で形成された酸化コバルトを保持するのにも役立つ。さらなる利益は、レニウムは、酸化コバルトをその最も触媒活性な状態であるゼロ価状態に還元する温度を下げ;こうしてレニウムは、コバルトをさらに完全に還元するのを容易にすることである。これら触媒でレニウムを使用する1つの問題は、この材料が高価なことである。従って、これら触媒中の良いコバルトの分散を達成しながら、同時に該触媒の完全な活性を達成するために必要なレニウムの量を低減又は削除するための手段に対する要望がある。第1、第2、第3又は第4局面の本発明の方法を使用すれば、低減した量のレニウムを用いて良くコバルトが分散したフィッシャー-トロプシュ触媒を製造でき、及び/又はいずれかの所定レベルのレニウムで高レベルのコバルトの分散を達成できることが分かった。フィッシャー-トロプシュ触媒を製造するために使用する方法が本発明の第1局面に従う場合、1種以上の触媒活性金属と、アミノ酸のようなカルボン酸官能性を含有する化合物以外の1種以上の窒素含有化合物とから有機錯体を形成する。好適な窒素含有化合物として、後述するようなアミンが挙げられる。触媒調製の際、コバルトに代えて或いはコバルトに加えて他の鉄群の金属及び銅のような他の触媒活性金属を使用することができる。本発明の触媒をフィッシャー-トロプシュ触媒として使用する場合、二酸化ジルコニウムと共に或いは二酸化ジルコニウムなしでチタニア担体をアルミナ、シリカ、又はアルミナとシリカの混合物のような無機バインダーと併用することができる。この実施形態では、主要触媒担体上に、すなわちバインダーなし及びいずれかのバインダーと混合する前に有機錯体を形成すること或いは1種以上のバインダー材料との混合材の担体上に有機錯体を形成することは、本発明の範囲内である。
【0019】
本発明のすべての局面で、本方法を用いて、炭化水素流からの有機イオウ汚染物の除去に好適な触媒を製造することができる。本発明の触媒を水素の非存在下で用いて炭化水素流からイオウ種を除去することができる。このような用途では、触媒中の金属分散のレベルが、イオウ種を除去する際の触媒の有効性の重要な因子である。本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法を用いて高効率のイオウ吸着触媒が得られることが分かった。これら方法を用いることで、適切な担体上にイオウ吸着活性を有する金属を高度に分散させることができた。本発明のこれら実施形態では、上述したような種々多様の担体材料を利用できる。好ましい担体材料はシリカである。さらに、イオウ処理触媒に好適な種々多様の活性金属を使用することができ;好ましい活性金属はニッケルである。これら実施形態では、触媒を本発明の第1、第2、第3及び第4局面に従って調製しうるが、本発明の第4局面に従って触媒を製造することが好ましい。好ましい用途は、当該技術でイオウトリムと呼ばれる方法でのイオウ除去である。
【0020】
本発明のすべての局面で、本方法は1種以上の担体材料上に沈着した1種以上の活性金属を含む最終触媒を製造する。本発明のすべての局面で種々多様な活性金属を使用することができる。活性金属の選択は最終触媒の意図した用途によって決まり、このような活性金属と触媒用途との相関関係は技術的に周知である。本発明のすべての局面で使用しうる活性金属の例として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:Li、Na又はKのような群1(群IA);Mg、Ca及びSrのような群2(群IIA);Sc、Y及びLaのような群3(群IIIA、IIIB);Ti、Zr及びHfのような群4(群IVA、IVB);V、Nb及びTaのような群5(群VA、VB);Cr、Mo及びWのような群6(群VIA、VIB);Mn、Tc及びReのような群7(VIIA、VIIB);Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、及びPtのような群8、9及び10(群VIII、VIIIA);Cu、Ag、及びAuのような群11(群IB);Znのような群12(群IIB);Ga及びInのような群13(群IIIA、IIIB);及びGe及びSnのような群14(群IVA、IVB)。銅、白金、ロジウム、パラジウム、コバルト、鉄、ニッケル若しくはルテニウム又はその2種以上の混合物を活性金属として使用することが好ましい。特にルテニウム、ニッケル、若しくはコバルト又はその2種以上の混合物を使用することが好ましい。特に好ましい活性金属はルテニウムである。
【0021】
金属成分の含量は、その触媒活性と触媒の企図した用途によって変わる。従って、高活性の貴金属は低活性の卑金属より少量で使用しうる。例えば、約1wt%以下のルテニウム、パラジウム又は白金は有効だろう。金属成分は単層中約30%を超えてよい。
活性金属が高活性な貴金属の場合、本発明のすべての局面の触媒中のその含量は、それぞれ使用触媒の総質量に対して一般的に約0.01〜約30質量%、好ましくは約0.01〜約20質量%、特に約0.1〜約10質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。本発明のすべての局面で1つの好ましい触媒は、活性金属の総含量が約5質量%未満、好ましくは活性金属の総含量が約2質量%未満でレニウムのみ、又はレニウムを1種以上の添加活性金属と組み合わせて含む触媒である。好ましくはレニウムの含量は、総触媒の約0.01〜2質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
活性金属が特に活性でなく、或いはイオウ除去におけるように企図した用途の特性が与えられて高レベルが必要な場合、本発明のすべての局面で、使用触媒の総質量に対して活性金属は10wt%以上、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、最も好ましくは15〜45質量%の範囲内のレベルで存在しうる。
【0022】
本発明のすべての局面で、特有順序のプロセス工程の使用を通じて1種以上の触媒活性金属部位を担体に与える方法によって触媒を製造する。すべての局面で、本方法は第1又は中間工程として1種以上の有機錯体の形成を有する。本発明の第1及び第4局面では、有機錯体の形成は、触媒活性金属の1種以上の化合物若しくは塩と、1種以上の金属又は該金属の塩若しくは化合物と錯体を形成できる1種以上の有機化合物とを、好ましくは混合材で、同時適用を通じて達成される。代わりに、第1及び第4局面では、担体の製造又は合成の間に1種以上の有機錯体が形成され;この実施形態では、現場で(in-situ)形成した有機錯体を含む担体を第1及び第4局面の方法で使用する。代替実施形態では、有機錯体を形成するために必要な成分をその製造又は合成の間に担体中に組み込み、該成分を含む担体の熱処理のようなその後のプロセス工程の間に有機錯体の形成が起こる。本発明の第2及び第3局面では、有機錯体は別々の2段階で形成され、第1段階は1種以上の触媒活性金属の塩若しくは化合物の沈着であり、第2段階は1種以上の金属又は該金属の塩若しくは化合物と錯体を形成できる1種以上の有機化合物の適用である。第2及び第3局面では、これら2段階を逆にして、金属の塩若しくは化合物の沈着に先行して有機化合物の沈着を行うこともできるが、第2及び第3局面についてのこの段階の逆転は好ましくない。第2及び第3局面では、1種以上の触媒活性金属の塩若しくは化合物の沈着を必要とする段階、又は錯体を形成できる1種以上の有機化合物の沈着を必要とする段階のどちらかは、どちらかの段階の化合物が担体の製造又は合成の間に担体中に導入された場合は省略できる。
【0023】
第1及び第4局面の一実施形態では、1種以上の触媒活性金属の化合物若しくは塩を1種以上の有機化合物と混ぜて混合物を形成してから担体と接触させて有機錯体を沈着させる。この実施形態では、錯体は混合物の形成時に形成され、或いは担体との接触後及び混合物の形成時に用いたいずれの溶媒も除去後に形成される。これら局面のさらなる実施形態では、1種以上の有機化合物と1種以上の触媒活性金属の活性金属若しくは塩を同時に担体に接触させて有機錯体を形成する。これら局面のさらなる実施形態では、所望金属の適切な有機錯体を合成し、かつ該錯体用の適切な溶媒中の該錯体の溶液を介して担体に適用することができる。第1及び第4局面のなおさらなる実施形態では、有機錯体は、担体材料の製造又は合成の間に現場で形成され、或いは担体の製造又は合成の間に担体中に組み込まれた、該有機錯体の形成に必要な成分から形成されうる。
【0024】
第2及び第3局面では、まず1種以上の触媒活性金属の化合物、若しくは塩と担体を接触させた後、1種以上の有機化合物で処理して担体上に有機錯体を形成する。代替実施形態では、まず1種以上の有機化合物と担体を接触させた後、1種以上の触媒活性金属の化合物、若しくは塩で処理して担体上に有機錯体を形成する。どちらの実施形態でも担体の製造又は合成の間に該化合物を導入することができる。
本発明の第2及び第3局面では、1種以上の触媒活性金属を担体材料上で交換し、その中に浸し、或いは物理的にそれと混合することができる。個々成分又は成分の混合物の適用は、金属塩水溶液、又は該金属の化合物の適切な溶媒中の溶液に担体を浸漬することで達成しうる。本発明の第1及び第4局面では、1種以上の触媒活性金属の化合物、若しくは塩と1種以上の有機化合物の混合物を担体と接触させて有機錯体を形成することができる。すべての局面で1種以上の成分又は成分の混合物は、浸漬、噴霧、スラリー法又は他の適宜の方法のような方法を用いて、担体材料と接触させることができる。好ましい方法は、初期湿潤又はスラリー法のような技術を用いる担体の含浸である。本発明のすべての局面で、混合物の調製で使う金属塩溶液の調製に好適な金属塩は、例えば、対応する金属の硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、カルボン酸塩、アセチルアセトン塩、クロロ錯体、ニトリト錯体又はアミン錯体であり、好ましくは硝酸塩及びニトロシル硝酸塩であり、最も好ましくはニトロシル硝酸塩である。本発明のすべての局面で、活性金属の塩又は化合物の通常の対イオン又は成分に加えて有機化合物が存在する。しかし、該有機錯体が本発明の方法で使う別個の手順で調製される場合はそうではなく;これら状況では、該金属の塩又は化合物の元の対イオン又は成分は、精製した有機金属錯体から除去されているだろう。有機錯体が担体の製造又は合成の間に現場で調製され、或いは錯体を形成するために必要な成分が担体の製造又は合成の間に担体中に組み込まれる場合も元の対イオンは存在せず;これら実施形態では、該金属の対イオンは、担体構造又は有機錯体の有機成分と関連した電荷によって与えられうる。Ptが活性金属の場合、その硝酸塩として有機化合物と錯体形成しないことが好ましく、好ましくは塩化物又は水酸化物塩として錯体形成する。
【0025】
本発明のすべての局面で、担体に適用される多数の活性金属を有する触媒は、本発明の種々の方法を用いて同時に適用したこれら金属を有し、或いはプロセス工程を繰り返して金属を順々に適用することができる。
【0026】
本発明のすべての局面で、1種以上の触媒活性金属と有機錯体を形成できるいずれの有機化合物をも使用しうる。典型的に、これらは触媒活性金属を沈着させるために一般的に使用される条件下で安定な錯体を形成できる有機化合物だろう。理想的には、有機化合物を選択して、1種以上の触媒活性金属による含浸後触媒担体を乾燥するために一般的に使用される条件下で安定な金属有機錯体を与える。好適な有機化合物は、遷移金属化学の技術で周知であり、遷移金属の配位化合物の調製で一般的に使用される有機キレート剤、有機単座、二座及び多座配位子のような有機化合物が挙げられる。多くのこのような錯体では、共有結合している分子及び/又はイオンである1個以上の配位子が錯体中に存在しうる。本発明のすべての局面で有機化合物は担体の製造で使用され、或いは例えば分子ふるい担体の製造で使用される有機鋳型のような担体の合成の間に存在する1種以上の有機化合物でよい。
【0027】
本発明の方法で特に好適な有機化合物はアミン若しくはアミノ酸のような1個以上のアミノ基を含有する化合物であり、特に好ましい群の有機化合物は、該化合物中にアミノ基とアルコール基を両方含む化合物である。第4局面の方法で調製されるフィッシャー-トロプシュ触媒の場合、好ましい有機化合物はカルボン酸官能性のない窒素含有化合物なので、アミノ酸は好ましくなく、この実施形態から除外される。この実施形態で好ましい有機化合物はカルボン酸官能性のないアミンである。
本発明のすべての局面で好ましい有機化合物は1個以上のアミノ基を含む。1個以上のアミノ基を有するこのような化合物は脂肪族アミン、脂環式アミン、アラルキルアミン及びアルキルアリールアミンでよい。これらは一級、二級及び三級アミンでよい。それらは対イオンとの四級アンモニウム塩でもよい。窒素含有化合物は、1種以上の一級、二級若しくは三級アミンが好ましく、さら好ましくは1種以上の脂肪族アミン、最も好ましくは例えばヒドロキシアルキルアミンに見られるような1種以上のアルコール群である。
一実施形態では、本発明で使用する窒素含有化合物は下記一般式を有する。
NR1R2R3 (I)
式中、R1、R2及びR3は、独立的に1種以上の以下の基である:C1〜C50-アルキル、C3〜C50-シクロアルキル、芳香族、C1〜C50-アルキル置換芳香族のようなアルキル置換芳香族、1個以上の芳香族基で置換されているC1〜C50-アルキレン成分のような芳香族置換脂肪族成分、C1〜C50-ヒドロキシアルキル、アミノ-及び/又はヒドロキシル-置換C1〜C50-アルキル、C2〜C50-アルコキシアルキルのようなアルコキシアルキル、C3〜C50-ジアルキルアミノアルキルのようなジアルキルアミノアルキル、C2〜C50-アルキルアミノアルキルのようなアルキルアミノアルキル、ヘテロ環式、芳香族ヘテロ環式、C1〜C50-アルキル置換ヘテロ環式及び芳香族ヘテロ環式化合物のようなアルキル置換ヘテロ環式及びアルキル置換芳香族ヘテロ環式、及び1個以上の芳香族基で置換されているC1〜C50-アルキレン成分のようなヘテロ環式置換脂肪族成分。さらに、R1及びR2は独立的に水素でよい。別の実施形態では、R1とR2が窒素原子と一緒に窒素含有ヘテロ環、芳香族ヘテロ環、アルキル置換ヘテロ環又はアルキル置換芳香族ヘテロ環を形成しうる。
【0028】
アルキル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-デシル、2-n-プロピル-n-ヘプチル、n-トリデシル、2-n-ブチル-n-ノニル及び3-n-ブチル-n-ノニル、特に好ましくはエチル、イソプロピル、2-エチルヘキシル、n-デシル、2-n-プロピル-n-ヘプチル、n-トリデシル、2-n-ブチル-n-ノニル及び3-n-ブチル-n-ノニル、及びポリブチル、ポリイソブチル、ポリプロピル、ポリイソプロピル及びポリエチルのようなC40〜C200-アルキルが挙げられる。最も好ましい脂肪族アミンは、1〜20個の炭素原子、さらに好ましくは2〜14個の炭素原子を有する1個以上のアルキル基を有する脂肪族アミンである。
シクロアルキル基の例として、C3〜C12-シクロアルキル、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルのようなC3〜C8-シクロアルキルが挙げられる。
芳香族基の例として、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル及び9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル及び9-フェナントリルが挙げられる。
アルキル置換芳香族基の例として、C7〜C50-アルキル芳香族基、好ましくは2-ノニルフェニル、3-ノニルフェニル、4-ノニルフェニル、2-デシルフェニル、3-デシルフェニル、4-デシルフェニル、2,3-ジノニルフェニル、2,4- ジノニルフェニル、2,5-ジノニルフェニル、3,4-ジノニルフェニル、3,5-ジノニルフェニル、2,3-ジデシルフェニル、2,4-ジデシルフェニル、2,5-ジデシルフェニル、3,4-ジデシルフェニル及び3,5-ジデシルフェニルのようなC7〜C40-アルキルフェニル、さらに好ましくは2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、2,3,6-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、4-エチルフェニル、2-n-プロピルフェニル、3-n-プロピルフェニル及び4-n-プロピルフェニルのようなC7〜C12-アルキルフェニルが挙げられる。
【0029】
芳香族置換脂肪族成分の例として、1個以上の芳香族置換基で置換されているC7〜C50アルキレン成分、好ましくはベンジル、1-フェネチル、2-フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチル及び4-フェニルブチルのようなC7〜C12-フェニルアルキル、特に好ましくはベンジル、1-フェネチル及び2-フェネチルが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基の例として、1個以上のC1〜C50-ヒドロキシアルキル基、好ましくはC1〜C8-ヒドロキシアルキル基、特に好ましくはヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシ-n-プロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、3-ヒドロキシ-n-プロピル及び1-ヒドロキシ-メチル-エチルのようなC1〜C4-ヒドロキシアルキル基を有するアミンが挙げられる。特に好ましいヒドロキシアルキル基含有窒素化合物として、メタノールアミン、ジ-メタノールアミン、トリ-メタノールアミン、エタノールアミン、ジ-エタノールアミン、トリ-エタノールアミン、ブタノールアミン、ジ-ブタノールアミン、トリ-ブタノールアミン、プロパノールアミン、ジ-プロパノールアミン、及びトリ-プロパノールアミンのような一-、二-及び三-置換脂肪族ヒドロキシアルキルアミンが挙げられる。N,N,-ジアルキル-エタノールアミン、N-アルキル-ジエタノールアミン、N-アルキル-エタノールアミン、N,N,-ジアルキル-メタノールアミン、N-アルキル-ジメタノールアミン、N-アルキル-メタノールアミン及び対応するプロパノールアミン、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン及びヘプタノールアミンも好ましい。これらアルカノールアミン中のN-アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル等のような1〜50個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する炭化水素又は置換炭化水素基でよい。
【0030】
アミノ-及びヒドロキシアルキル基の例として、C1〜C50-アルキル、好ましくはアミノ-及び/又はヒドロキシル-置換C1〜C8-アルキル、特に好ましくはN-(ヒドロキシエチル)アミノエチル及びN-(アミノエチル)アミノエチルのようなアミノ及び/又はヒドロキシル-置換C1〜C4-アルキルが挙げられる。
アルコキシアルキル基の例として、メトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、n-ブトキシメチル、イソブトキシメチル、sec-ブトキシメチル、tert-ブトキシメチル、1-メトキシエチル及び2-メトキシエチルのようなC2〜C50-アルコキシアルキル、好ましくはC2〜C20-アルコキシアルキル、特に好ましくはC2〜C8-アルコキシアルキル、特に好ましくはメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、n-ブトキシメチル、イソブトキシメチル、sec-ブトキシメチル、tert-ブトキシメチル、1-メトキシエチル及び2-メトキシエチルのようなC2〜C4-アルコキシアルキルが挙げられる。
ジアルキルアミノ基の例として、C3〜C50-ジアルキルアミノアルキル、好ましくはC3〜C20-ジアルキルアミノアルキル、特に好ましくはジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジ-n-プロピルアミノエチル及びジイソプロピルアミノエチルのようなC3〜C10-ジアルキルアミノアルキルが挙げられる。
アルキルアミノアルキル基の例として、C2〜C50-アルキルアミノアルキル、好ましくはC2〜C20-アルキルアミノアルキル、特に好ましくはメチルアミノメチル、メチルアミノエチル、エチルアミノメチル、エチルアミノエチル及びイソ-プロピルアミノエチルのようなC2〜C8-アルキルアミノアルキルが挙げられる。
【0031】
芳香族ヘテロ環の例として、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、ピラジニル、3-ピロリル、2-イミダゾリル、2-フラニル及び3-フラニルが挙げられる。アルキル置換芳香族ヘテロ環の例として、2-ピリジルメチル、2-フラニル-メチル、3-ピロリルメチル及び2-イミダゾリルメチルのようなC4〜C50-モノ-ヘタリル(hetaryl)アルキル、及び2-メチル-3-ピリジニル、4,5-ジメチル-2-イミダゾリル、3-メチル-2-フラニル及び5-メチル-2-ピラジニルのようなC4〜C50-アルキルヘタリルが挙げられる。
アルキルアミノアルキル基の例として、C2〜C50-アルキルアミノアルキル、好ましくはメチルアミノメチル、メチルアミノエチル、エチルアミノメチル、エチルアミノエチル及びイソプロピルアミノエチルのようなC2〜C16-アルキルアミノアルキルが挙げられる。
ジアルキルアミノアルキル基の例として、C3〜C50-ジアルキルアミノアルキル、好ましくはジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジ-n-プロピルアミノエチル及びジイソプロピルアミノエチルのようなC3〜C16-ジアルキルアミノアルキルが挙げられる。
ヘテロ環式化合物の例として、ピリジン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、3-ピロリン、ピロリジン、ピリミジン、及びこれらヘテロ環式化合物の置換例が挙げられる。有機ニトリル化合物の例として、アクリロニトリル、例えばメチルニトリル及びエチルニトリルのようなアルキルニトリルが挙げられる。
適切なアミノ酸には、天然及び合成アミノ酸が含まれる。天然アミノ酸には以下のアミノ酸のすべての異性体が含まれ:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、3,5-ジブロモチロシン、3,5-ジヨードチロシン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロキシン、トリプトファン、チロシン及びバリン、特に好ましいアミノ酸はL-アルギニンである。本発明の第4局面の方法によるフィッシャー-トロプシュ触媒調製用の有機化合物としては、これらアミノ酸化合物を使用しない。
【0032】
本発明のすべての局面、特に第1及び第2局面で、有機錯体を形成するための好ましい有機化合物は、有機窒素含有化合物、さらに好ましくはアミン、さらに好ましくは1個以上のアルコール基を含有するアミンである。
本発明のすべての局面で、有機化合物は担体の製造又は合成中に導入しうる。担体が分子ふるいの場合、有機化合物は担体の合成で使用されるような有機鋳型でよい。このような有機鋳型は技術的に周知であり、好ましくは窒素含有有機鋳型、特にさらにヒドロキシル官能性を含む窒素含有有機鋳型である。担体の製造又は合成の間に、いずれかの有機鋳型に加えて有機化合物を導入することができる。すべての局面で、有機錯体の調製用のどちらか又はすべての成分を担体中に組み込み、或いは有機錯体自体を担体中に組み込むとき、担体は生状態(green state)で使用しうる。
【0033】
有機化合物は、触媒活性金属の塩又は化合物の量の関係で適切なレベルで使用することができる。有機化合物は、有機錯体を形成するために必要な量を超えて存在しうる。理想的には、触媒活性金属の塩又は化合物のすべてを1種以上の有機錯体に変換するために適切なモル比で該化合物を使用する。これは1:1のモル比でよく、或いは金属の該有機化合物と錯体をつくる能力と、単座配位子のような他の錯化配位子の存在に大きく左右される。しかし、触媒活性金属のすべてと錯体をつくるのに不十分なレベルの有機化合物を使用することができ;これら状況では、すべての金属が有機錯体に変換するわけではなく、結果の触媒は錯化した金属中間体と錯化しない金属中間体から誘導された触媒活性金属部位を含みうる。理想的には、モル比、有機化合物:触媒活性金属は、0.1:1〜40:1、好ましくは0.1:1〜30:1、さらに好ましくは0.2:1〜25:1、なおさらに好ましくは0.5:1〜10:1、最も好ましくは0.5:1〜5:1の範囲内のモル比である。担体の製造又は合成の間に担体中に有機化合物を組み込む場合、過剰の有機化合物が存在してよい。
【0034】
本発明の第1及び第4局面のように担体との接触前に混合物中で錯体を形成する場合、通常かつ好ましくは該混合物は溶媒と組み合わせて作り、溶媒は水又は有機溶媒又は水と溶媒の混合物でよい。使用する溶媒の量は広範に変化しうるが、典型的には混合物が担体と効率的に接触して担体を確実に湿らせ、担体が多孔性の場合は該多孔性担体中に混合物を確実に浸透させるのに十分な量である。典型的には1種以上の触媒活性金属の塩又は化合物及び有機成分は、その形態によるが、上で示した必要なモル比が該混合物中で達成しうる量で使用する。混合物の残りは1種以上の溶媒を構成し、全混合物の質量の1〜99wt%、好ましくは全混合物の質量の5〜90wt%、さらに好ましくは全混合物の質量の5〜80wt%、なおさらに好ましくは全混合物の質量の10〜70wt%、最も好ましくは全混合物の質量の10〜65wt%の量で存在しうる。本発明の第2及び第3局面では、触媒を製造するために必要な1種以上の成分の適用を容易にするため、追加溶媒を使用してもよい。
【0035】
すべての局面、特に第1及び第4局面では、担体上の有機錯体の形成後、担体を乾燥させてよく、好ましくは乾燥させて錯体の形成中に存在する溶媒及び/又は水の大部分を除去する。乾燥は室温のような周囲温度下で行ってよく、或いは高温で行ってよく、好ましくは乾燥は100〜150℃の温度で行う。好ましくは、乾燥段階中に有機錯体の分解がほとんど又は全く起こらず、乾燥は単に錯体形成していない揮発性物質を除去するだけである。
本発明の第2及び第3局面では、どちらか又はすべての沈着段階後に担体を乾燥させてよい。乾燥は、室温のような周囲条件下で行ってよく、或いは高温行ってよく、好ましくは乾燥は100〜150℃の温度で行う。好ましくは、錯体の形成後の乾燥段階では、乾燥段階中に有機錯体の分解がほとんど又は全く起こらず、乾燥は単に錯体形成していない揮発性物質を除去するだけである。
【0036】
本発明の第1及び第2局面では、1種以上の有機錯体を含む担体を調製したら、担体上の有機錯体を部分的に分解するように担体を処理する。いかなる理論にも拘泥したくないが、この部分的分解が触媒活性金属部位への1種以上の前駆体の現場での形成をもたらすと考えられる。部分的に、これら前駆体の形成と続いて起こる変換が、これら局面において、最終触媒が高度な触媒活性を示し、かつ該触媒中の高レベルの金属分散を有することを保証すると考えられる。触媒活性金属の活性の重要パラメーターは、担体上の金属の形態と担体上の金属の分散レベルである。本発明の方法は、比較的小さく、かつ高度に分散している触媒活性金属部位を含む触媒を製造する。さらに、分散レベルは比較的安定している。
本発明の第3及び第4局面では、1種以上の有機錯体を含む担体を調製したら、担体上の有機錯体を完全に分解するように担体を処理する。いかなる理論にも拘泥したくないが、この有機錯体の完全な分解が、これら局面において、触媒活性金属部位への1種以上の前駆体の現場での形成をもたらすと考えられる。部分的に、これら前駆体の形成と続いて起こる変換が、最終触媒が高度な触媒活性を示し、かつ該触媒中の高レベルの金属分散を有することを保証すると考えられる。
本発明のすべての局面で、活性金属部位として比較的小さい金属粒子と言及している場合、それは10nm以下、好ましくは8nm以下、最も好ましくは6nm以下の平均粒径を有する金属粒子を意味する。
【0037】
一般に、化学吸着測定を用いて担持型金属触媒の大きさと金属表面積を推定する。化学吸着による金属表面積の一般的な測定方法は、J. Lemaitreらの“不均一触媒の特徴づけ(Characterization of Heterogenous Catalysts)”(Francis Delanney編, Marcel Dekker, New York (1984), pp. 310-324)に記載されている。全金属表面積は理想的に触媒の0.01〜30m2/g、好ましくは0.05〜25m2/g、さらに好ましくは0.05〜20m2/g、なおさらに好ましくは0.05〜15m2/g、さらに好ましくは0.05〜10m2/g、なおさらに好ましくは0.05〜5m2/g、最も好ましくは0.05〜3m2/gである。化学吸着測定で用いる適切に選択した滴定剤は、表面を占める金属原子上にだけ吸着するので、化学吸着測定から、%分散(金属粒子の面積を占める金属原子の%)を推定することができる。結果として、高い分散値は、表面を占める金属原子をより多く有する、より小さい粒子を表す。多くの水素化反応では、活性は分散と関係する。金属分散を決定する好ましい方法は、以下のような高真空の静的条件下、化学吸着プローブ分子として水素を用いることによる。試料を40℃の温度で維持し、化学吸着プローブ分子としてH2を用いて8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得る。この等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して化学吸着した水素の総量を得;これが合計分散である。次に、試料を40℃で排気していずれの弱く吸着した水素をも除去し、滴定を繰り返して弱吸着等温線と呼ばれる曲線を決定する。この弱吸着等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して弱く化学吸着した水素の量を得る。これら合計分散と弱分散の2つの値の減算によって、強く保持された化学吸着量を得る。従って、この方法は全金属分散、弱く化学吸着した水素による分散及び強く化学吸着した水素による分散について値を与える。強く化学吸着した水素についての値が金属分散の正確な指標である。多くの先行技術の文献で提供される金属分散の特徴は、全部の化学吸着したプローブに基づいており、強い成分と弱い成分に分けていない。本発明では、使用する水素化触媒は、20%以上、さらに好ましくは25%以上、最も好ましくは30%以上の強く化学吸着した成分に関する分散値を有する。さらに、全分散値は45%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは55%以上、最も好ましくは60%以上が達成される。好ましくは全金属分散の40%以上、さらに好ましくは45%以上、最も好ましくは50%以上が、強く化学吸着した成分に関する。
【0038】
本発明の第1及び第2局面では、有機錯体を少なくとも部分的に分解する。本発明の文脈では、“部分的分解”は、有機錯体の化学組成が変わることを意味し;これは有機錯体の構造の変化に起因し、或いは錯体の一部又は成分の化学分解に起因しうる。分解が部分的である場合、錯体と関係ある非金属化学種の除去が不完全になるように分解方法を選択する。分解が完全な場合、残存する錯体の唯一の重要な要素は、分解を酸化条件下で行うときは酸化物として、或いは分解を水素の存在下又は錯体を触媒活性金属に変換する他の条件下で行うときは還元した金属としての1種以上の触媒活性金属だろう。有機錯体の分解から生じた炭素残渣のような残留物もありうる。部分的分解は、触媒調製法で典型的に用いられる乾燥条件下では通常起こらない構造及び/又は組成の変化による。第2段階の条件下における構造及び/又は組成の変化は、赤外線分光法、質量分光法、熱重量分析、ガス又は液体クロマトグラフィー及び分光法のような技術的に周知な種々の分析法で検出かつモニターすることができる。
【0039】
種々の方法を用いて有機錯体の部分的又は完全分解を誘導することができる。これには、化学的誘導加水分解又は酸、塩基、オゾン若しくは同様の化学的に活性な物質による処理によってのような分解のような化学的方法が含まれる。完全又は部分的分解の他の誘導方法として、熱分解及び/又はか焼のような熱的方法が挙げられ、両方とも好ましい方法であり、特に好ましくはか焼である。さらなる方法は、気流による処理である。一実施形態では、熱分解を水素の存在下で行うことができ;この実施形態では、その後のいずれの水素による処理も省略できる。使用しうる他の方法は、例えば水素及び/又はCOの存在下の還元条件下のような 、有機錯体を確実に触媒活性金属に変換する方法である。本発明のすべての局面に関する代替実施形態では、意図した触媒プロセス自体に、有機錯体を含む担体を導入することで完全又は部分的分解を達成することができる。これら実施形態では、有機錯体を含む担体を直接触媒プロセスに導入する場合、その使用プロセス条件下で、或いは触媒再生装置又は触媒リサイクル装置内の条件のようなプロセスプラント中に触媒を導入するいずれかの点で使用する条件下で、有機錯体が分解される。分解を使用プロセスで行ってから同一プロセスで触媒活性金属への変換も行う場合も想定され、該分解中又は分解に続いて起こる別個の変換段階若しくは装置内では、該プロセスの条件とは異なる条件、例えば触媒再生又はリサイクル装置内に存在する条件でよい。有機錯体を含む触媒担体を1種以上のバインダー及び/又は他の配合成分を含みうる最終触媒組成物に調製するときのような、引き続く触媒加工工程で分解及び変換が達成されうる。これらの追加工程では、分解及び/又は変換をもたらすプロセス条件を使用しうる。
【0040】
有機錯体の完全又は部分的分解の方法としてか焼又は熱分解を使用する場合、用いる正確な条件は、錯体の性質、特に高温下でのその熱的安定性と分解プロフィルによって決まる。有機錯体の熱的分解を制御しながら熱重量分析法又は質量分光法を用いることによって、か焼条件又は熱分解条件下で有機錯体の分解の開始温度と全分解温度を決定することができる。これは、この部分的分解段階が行われるであろう温度範囲又は完全分解に必要な選択すべき最小温度を示す。代わりに、赤外線分光法で分析すると、特定の官能基が有機錯体から除去され、或いは有機錯体内で形成される点;部分的分解の温度として全分解温度未満で選択しうる場合或いは全分解の温度として全分解温度を超えて選択しうる場合、これが起こる温度を決定することができる。アミンを有機化合物として使用する場合、部分的分解を誘導するための処理温度として相当量の窒素酸化物が生じる温度未満を選択しうる。他の有機化合物では、錯体からCO又はCO2が除去される温度でよい。有機化合物としてアミン、特にヒドロキシル基を含有するアミン又はアミノ酸の場合、赤外線スペクトルで2100〜2200cm-1に現れる新しい振動帯の形成でよく、部分的に分解した有機錯体中に存在するニトリル及びイソニトリルのような錯体の炭素窒素種に仮に割り当てることができる。使用しうる別の方法は、TGA分析が有機錯体の全減量を示す場合;全減量未満の温度を部分的分解のために選択することができ、或いは全減量の温度以上の温度を全分解のために選択しうる。
【0041】
本発明のすべての局面で、か焼を用いて部分的又は完全に有機錯体を分解する場合、使用するか焼温度は、典型的に200〜1000℃、好ましくは250〜600℃の範囲内である。使用する正確な温度は、有機錯体の完全又は部分的分解が望ましいかどうかによって決まり、また有機錯体の性質によって決まる。有機金属錯体の分解温度に影響しうる因子としては、錯体内の金属及び/又は有機化合物の性質が挙げられる。別の因子は、金属が塩の形態で導入される場合に存在する対イオンの性質でありうる。好ましくは、部分的分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、空気中TGAで決定されるように、有機錯体の全減量が起こる温度未満の温度でか焼する。好ましくは200℃と有機錯体の全減量が起こる温度の間の温度である。好ましくは完全分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、空気中TGAで決定されるように、有機錯体の全減量が起こる温度以上の温度でか焼する。好ましくは有機錯体の全減量が起こる温度と1000℃の間の温度である。か焼条件下では、酸素は別の不活性希釈剤の成分として又は空気中で行われるか焼の結果として存在する。熱分解を使用する場合、酸素のない不活性雰囲気中、或いはあってもよいが好ましくは酸素のない水素又はCO含有雰囲気のような触媒活性金属への変換という結果になる雰囲気中で熱分解を行うことができる。熱分解を使用する場合、有機錯体は、か焼条件下で観察される温度より高い温度で分解しうる。か焼と同様、熱分解条件下での部分的又は完全分解の温度は種々の方法で決定でき、TGAが好ましい。好ましくは、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で部分的分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、不活性雰囲気中又は水素下TGAによって決定されるように有機錯体の全減量が起こる温度未満の温度で不活性雰囲気中又は水素下で熱分解する。好ましくは200℃と、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で有機錯体の全減量が起こる温度との間の温度である。好ましくは、完全分解が必要な場合、その上に有機錯体が沈着した担体は、TGAによって決定されるような、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で有機錯体の全減量が起こる温度以上の温度で熱分解する。好ましくは、熱分解条件下、不活性雰囲気中又は水素下で有機錯体の全減量が起こる温度と、1000℃の間の温度である。好ましくは、その上に有機錯体が沈着した担体は、窒素又は水素中、1000℃未満の温度で熱分解する。有機錯体を含む担体は、部分的分解温度で、有機錯体の部分的分解が確実に起こるようにするために十分な時間、か焼又は熱分解することができる。典型的に、これは少なくとも20分、好ましくは少なくとも30分、さらに好ましくは少なくとも45分、最も好ましくは1時間以上である。典型的に、この時間は48時間以下、好ましくは24時間以下、最も好ましくは12時間以下である。完全分解が必要な場合、有機錯体を含む担体は、完全分解温度で、有機錯体の完全分解を確実にするために十分な時間、か焼又は熱分解することができる。
【0042】
有機錯体の分解生成物を含む担体は、本発明の第6局面の新規触媒前駆体である。この局面では、少なくとも1種の担体材料と、この担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属の少なくとも1種のソースとを含む触媒が提供される。ここで、1種以上の触媒活性金属のソースは、1種以上の金属含有有機錯体の分解生成物である。この局面では、1種以上の触媒活性金属のソースは、好ましくは1種以上の金属含有有機錯体の部分的分解生成物である。この局面では、触媒前駆体が、滴定剤として水素を用いた場合、強く化学吸着した成分に関して1%未満、さらに好ましくは0.75%未満、さらに好ましくは0.5%未満、なおさらに好ましくは0.25%未満、最も好ましくは0%である分散値を示すことも好ましい。第6局面の前駆体は、その赤外線スペクトルでユニークな吸収帯を示すこともあり;第6局面の前駆体は、先に分解した有機錯体には存在しない2100〜2200cm-1の範囲内に1つ以上の赤外線吸収帯を含みうる。また、この前駆体は相当な割合の元の有機錯体の質量を保持することができ;前駆体は、その上に錯体が形成された担体を乾燥後、元の有機錯体に起因する質量の10〜95質量%を保持することができ、前駆体は、好ましくは元の錯体の質量の20〜45質量%を保持し、さらに好ましくは60質量%まで、なおさらに好ましくは50質量%まで、最も好ましくは40質量%まで保持する。有機錯体を部分的に分解する場合、触媒活性金属を形成するためのその還元温度が、完全に酸化した金属錯体を触媒活性金属に還元するために必要な通常の還元温度より高いことも前駆体の特性であり、好ましくは、通常の還元温度より少なくとも5%高く、さらに好ましくは10%高く、なおさらに好ましくは15%高く、最も好ましくは20%高い。本発明の第5局面の触媒及び他のすべての局面の方法は、本発明の第6局面の1種以上の前駆体を利用することができる。触媒前駆体は、本発明の局面1〜5に関連して述べたとおりの材料及び化合物及びプロセス工程、例えば担体材料、有機錯体形成に用いる有機化合物、使用する金属塩及び化合物、有機錯体の形成方法、有機錯体の完全及び部分的分解の方法、乾燥方法などを用いて誘導することができる。
【0043】
本発明のすべての局面により、錯体の部分的又は完全分解後、その部分的に分解した錯体又は完全に分解した錯体を触媒活性金属に変換する。好ましくは、変換は、その部分的又は完全分解錯体を還元するための条件下、すなわち還元剤ソースの存在下での部分的又は完全分解錯体の処理によって達成する。好ましい実施形態では、還元剤ソースは、水素及び/又は一酸化炭素のソースである。変換に関するさらなる実施形態では、変換は、最終触媒を使用するために設計したプロセス中への1種以上の完全又は部分的解有機錯体を含む担体の導入によって達成することができ;この実施形態では、変換は、該プロセス条件又は該プロセスと関連する触媒再生若しくはリサイクル装置内に存在する条件下で起こる。好ましい実施形態では、触媒の活性化のために通常使用する条件と方法を用いてこの処理を行う。触媒前駆体が確実に触媒活性金属に変換するように条件と方法を選択する。一実施形態では、還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースによる処理は、部分的分解錯体を含む担体を還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースを含む気流と30〜600℃、好ましくは100〜550℃、なおさらに好ましくは200〜500℃、最も好ましくは200〜450℃で接触させることによって行う。還元剤流が遊離水素を含む場合、好ましくは50〜100容量%のH2と0〜50容量%のN2から成る。処理は、還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースの連続的流れ下、或いは100バールまで、好ましくは1〜20バール、さらに好ましくは1〜20バールの高圧で静的条件下で行うことができる。この活性化は、48時間まで、好ましくは長くて36時間、さらに好ましくは24時間未満、最も好ましくは30分〜12時間行うことができる。第1及び第2局面では、好ましくは大気圧で部分的分解錯体を含む担体を還元剤、例えば水素及び/又はCOのソースにさらし、かつ温度を2℃/分の割合で処理温度まで上昇させ、さらに1〜10時間、好ましくは2〜8時間、最も好ましくは3〜6時間還元剤処理を続ける。第1及び第2局面では、還元剤処理条件下でいかなる残余の部分的分解有機錯体をも確実に除去するように正確な温度と時間を選択し;従って、還元剤処理温度は、一般的に有機錯体、特に部分的分解有機錯体の分解温度より高い。
【0044】
複数の活性金属を担体に適用し、かつ適用を連続的に行う場合、本発明の種々のプロセス段階を繰り返して各金属を順次沈着させることができる。
全金属の表面積は、理想的に触媒の0.01〜30mg2/g、好ましくは0.05〜25mg2/g、さらに好ましくは0.05〜20mg2/g、なおさらに好ましくは0.05〜15mg2/g、さらに好ましくは0.05〜10mg2/g、なおさらに好ましくは0.05〜5mg2/g、最も好ましくは0.05〜3mg2/gである。金属の表面積は、本明細書で述べたような化学吸着法で測定することができる。
本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得られる触媒と、本発明の第5及び第6局面の触媒は、化学反応が起こりかつ触媒される種々多様な有機化合物の変換で使用することができる。さらに、本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得られる物質は、相対的にに小量の不純物を変換又は除去するための有機化合物又は有機化合物の混合物の種々多様な処理方法で使用することができ;この用途では、本発明の方法で得られる物質は吸着剤として作用しうる。
本発明で特に興味深いことは、水素と一酸化炭素合成ガスから、前記ガスの反応条件における本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得た触媒又は本発明の第5及び第6局面の触媒との接触によるC5+液体炭化水素の生成である。
本発明で特に興味深いことは、多量なイオウ含有化合物、特に有機イオウ化合物との混合物中の有機化合物、特に炭化水素の、該有機化合物からいくらか又はすべてのイオウを除去するための、本発明の第1、第2、第3及び第4局面の方法から得た触媒又は本発明の第5及び第6局面の触媒による処理である。
以下の実施例によって、本発明の方法についてさらに説明する。
(実施例)
実施例1a−MCM-41の調製
米国特許第5,837,639号の実施例21に相当する下記方法でMCM-41(40Å)の試料を調製した。以下の混合物(質量部−pbw)をオートクレーブに充填した。
29wt.%のN,N,N-トリメチル-1-ヘキサデシルアンモニウムクロライド溶液をハライド交換樹脂用水酸化物と接触させて調製した83.7pbwのセチルトリメチルアンモニウム(CTMA)水酸化物、1.7pbwのアルミン酸ナトリウム、41.1pbwのテトラメチルアンモニウムケイ酸塩(10%水溶液)、及び10.5pbwの沈降水和シリカ(HiSil)
混合物を自然圧力下で撹拌しながら20時間100℃で結晶させた。結果生成物をろ過で回収し、周囲温度で空気中乾燥させた。生成物を窒素中540℃で1時間、次いで空気中で6時間か焼した。か焼生成物は1120m2/gの表面積と、以下の平衡吸着能(グラム/100グラム)を有した。
H2O 10.8
シクロヘキサン >50
n-ヘキサン >50
ベンゼン 67
38.4+/-2.0Åに非常に強い相対強度線と、22.6+/-1.0、20.0+/-1.0、及び15.2+/-Åに弱い線を含むX線回折パターンによって生成物をMCM-41と同定した。
【0045】
実施例1b−MCM-41の調製
MCM-41(40Å)の試料を以下の方法で調製した。以下の混合物(質量部−pbw)をオートクレーブに充填した。
26.8pbwの蒸留水、3.5pbwのセチルトリメチルアンモニウム(CTMA)クロライド(29wt.%水溶液)、4.55pbwの沈降水和シリカ(Ultrasil PM)、1pbwのテトラメチルアンモニウム水酸化物(25wt.%水溶液)
混合物を自然圧力下で撹拌しながら20時間150℃で結晶させた。結果生成物をろ過で回収し、周囲温度で空気中乾燥させた。生成物を窒素中540℃で1時間、次いで空気中で6時間か焼した。生成物をMCM-41と同定した。か焼生成物は903m2/gの表面積と、3.8nmの孔サイズ(窒素吸着で決定)を有する。分析は以下のとおりである。
シリカ 96.8wt.%
アルミナ 0.1018wt.%
ナトリウム 0.0300wt.%
炭素 0.11wt.%
吸着能は以下のとおりだった。
H2O 5.9wt.%
シクロヘキサン 53.9wt.%
n-ヘキサン 44.1wt.%
【0046】
実施例2−触媒−ルテニウムとMCM-41の調製−TEA/水性法
16.6gのルテニウム(III)ニトロシル硝酸塩水溶液を、25.7gのトリエタノールアミンと25.7gの蒸留水と撹拌しながら混ぜて溶液を調製した。この溶液を実施例1bの25gのMCM-41にゆっくり添加し、100℃で一晩中乾燥させた。この触媒を流動空気中で3時間400℃にか焼した。この結果有機錯体が完全に分解した。ルテニウム含量は公称0.5%だった。
実施例3−触媒−ルテニウムとMCM-41の調製−水性法
16.6gのルテニウム(III)ニトロシル硝酸塩水溶液を51.4gの蒸留水と撹拌しながら混ぜて溶液を調製した。この溶液を実施例1bの25gのMCM-41にゆっくり添加し、100℃で一晩中乾燥させた。この触媒を流動空気中で3時間400℃にか焼した。この結果有機錯体が完全に分解した。ルテニウム含量は公称0.5%だった。
【0047】
実施例4−実施例2及び3の水素化触媒の金属成分の還元
実施例2及び3で調製した触媒を条件a)とb)の2工程の条件下で活性化した。
a)触媒粒子(10/20メッシュ)をステンレススチール製触媒バスケットに装填してから300cm3のオートクレーブ内に設置した。200℃で18時間約100cm3/分の連続的な大気水素流下で金属の還元を行った。
b)触媒(10/20メッシュ)をステンレススチール製触媒バスケットに装填してから300cm3のオートクレーブ内に設置した。200℃で14時間、8.62MPa(1250psig)の静的水素圧下で金属の還元を行った。
【0048】
実施例5.実施例6〜14の担持型Ru触媒の水素処理及びH化学吸着値の測定
(A)活性化:約0.3〜0.5gの触媒を化学吸着セルに装填し、流動水素中、1大気全下、表1〜5で指定した温度で還元した。試料を2℃/分で最終還元温度に加熱し、この温度で3時間維持した。この処理後、触媒を活性化して触媒として使用するために準備した。
(B)化学吸着測定値は静的な高真空条件下で得た。(A)による水素処理後、表1〜5で指定した還元温度で15〜30分間、動的真空下で水素を汲み出した。温度を40℃に下げ、化学吸着プローブ分子としてH2を用いて8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得た。この等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して化学吸着した水素の総量を得た。これは、表1〜5中の列表示“%分散(合計)”に示される。試料を40℃で排気していかなる弱く吸着した水素をも除去し、滴定を繰り返して弱い吸着の等温線を決定した。この等温線の直線部分を圧力ゼロに外挿して弱く化学吸着した水素の量を得た。これは、表1〜5中の列表示“%分散(弱)”に示される。これら2つの値の減算から強く保持される化学吸着量を得、添付の下表中の列表示“%分散(強)”に示す。すべての値は、1のH/Ru表面比に対する。
【0049】
実施例6.含浸溶液中のアミノアルコールを用いたSiO2上に0.5%のRuを含む有機錯体の調製
15.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に5.01gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)、2.23gのトリエタノールアミン及び1.77gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。
実施例7.実施例6の触媒の300℃へのか焼
実施例6の試料の一部を流動空気中、温度を1℃/分で300℃に上げながらか焼し、当該温度で1時間維持した。この処理の結果、有機錯体の部分的分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
実施例8.実施例6の触媒の400℃へのか焼
実施例6の試料の一部を空気中、1℃/分の加熱速度で400℃までさらにか焼し、当該温度で維持した。この処理の結果、有機錯体の完全分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表1は、実施例7と8の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。この比較は、シリカ上Ru-TEA触媒を300℃でか焼し、部分的に錯体を分解する場合に最高の分散が得られることを示す。400℃のか焼後、水素処理前に有機錯体はすっかり分解され、化学吸着値が実質的に低下し、かつ250℃以上に還元温度を上げるにつれて化学吸着値が減少するように不安定であることが分かった。高い値の実施例7の触媒は、400℃での還元の際にも安定なままである。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例9.含浸溶液中のアミノアルコールを用いたSiO2上0.5%Ruの調製
25.00gのシリカ担体(S.A=250m2/g,P.D.=15nm)に8.37gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)、3.71gのトリエタノールアミン及び18.00gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。
実施例10.実施例9の触媒の275℃へのか焼
実施例9の試料の一部を流動空気中、温度を1℃/分で275℃に上げながらか焼し、当該温度で1時間維持した。この処理の結果、有機錯体の部分的分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
実施例11.実施例9の触媒の酸素のない環境中での熱分解
実施例9の試料の一部を流動窒素中、温度を2℃/分で400℃に上げながら加熱し、当該温度で1時間維持した。この処理の結果、有機錯体の完全分解となった。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表2は、実施例10と11の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。両処理は、出発Ru-トリエタノールアミン錯体の残余物を生成する。この比較は、不活性な熱分解条件(酸素の非存在)下では部分的分解がより高温で達成され、酸化によって生成される場合と同様に高い分散を与えるRu-有機前駆体を形成しうることを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例12.有機添加剤のないシリカ上0.5%Ruの試料
15.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に5.00gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)と4.00gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
実施例13.有機添加剤のないシリカ上0.5%Ruの試料及びか焼
15.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に5.00gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)と4.00gの水を混合して調製した溶液を含浸させ、4時間100℃で乾燥させた。試料を空気中、温度を1℃/分で300℃に上げながらでか焼し、当該温度で1時間維持した。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表3は、実施例7、12及び13の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。実施例7に従って調製した触媒だけが本発明の対象であり、出発Ru-トリエタノールアミン錯体の残余物を有する。この比較は、触媒を150℃ほどの低温で還元する場合、触媒にルテニウム塩の水溶液を単に含浸させてから、低温で乾燥させた触媒について高い初期分散が得られることを示す。より高温で還元すると、おそらく焼結の結果として、分散数は劇的に減少する。実施例7の触媒ではこの現象は起こらず、400℃の還元温度で安定のままである。Ru塩の水溶液を最初に300℃にか焼した場合、分散数は非常に低い(実施例13)。
【0054】
【表3】
【0055】
実施例14.含浸溶液中のアミノ酸を用いたSiO2上0.5%Ruの調製
10.00gのシリカ担体(S.A=85m2/g,P.D.=50nm)に3.34gのルテニウムニトロシル硝酸塩(1.5%Ru)、0.70gのL-アルギニン、及び全部で10ccの溶液量を生成するのに十分な水を混合して調製した溶液を含浸させた。この試料を100℃で4時間乾燥させてから、温度を1℃/分で250℃に上げ、当該温度で1時間維持した。この試料について水素処理後、化学吸着測定を行った。
表4は、実施例7と14の触媒のH化学吸着による分散測定値を比較する。か焼した両試料は、出発Ru-トリエタノールアミン錯体の残余物を残す。この比較は、含浸溶液中のアミノアルコール又はアミノ酸を用いた場合、高い分散が得られることを示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表5のデータは、実施例9と10の化学吸着データを示す。この比較は、アミノ錯体を有する乾燥触媒(実施例9)を直接水素中で還元すると良い分散値を与え、錯体を完全に酸化して錯体を除去する試料(実施例8、表1参照)より優れることを示す。しかし、この分散は、有機錯体を部分的に酸化又は熱分解すると得られる分散ほどよくない。
【0058】
【表5】
【0059】
実施例16.Ru-トリエタノールアミン錯体の部分的酸化によって形成される触媒前駆体の分解生成物の測定
実施例7の触媒の一部を空気中4度/分で加熱し、生成ガスを四極質量分光計で分析した。データを図1に示す。図1は、200℃よりわずかに低いところで水のピークが離れ、350℃近傍まで有機錯体が完全に酸化されるにつれてCO2、NO2及びH2Oの形成があることを示す。これは、錯体がC、N及びHを含んでいたこと示す。Oも存在するかもしれないが、使用した条件が酸化条件なので、この実験によってはこのことを決定できない。
実施例17.赤外線分光法
Ru-トリエタノールアミン及びRu-アルギニン由来の部分的に分解した有機錯体を含有する試料を赤外線分光法でも分析した。約25mgの実施例7(TEA,か焼300℃)、実施例12(有機物なし、乾燥100℃)及び実施例14(L-アルギニン、か焼250℃)の材料を別々に13mmのペレットに形成し、透過モードで操作するIR分光計に装填した。試料を真空中150℃に加熱後スペクトルを得た。
データを図2に示す。データは、透過率対IR線の波数のプロットを示す。触媒が分子種の特徴的な伸縮によって赤外線を吸収する場合、透過率は減少する。1500〜2000cm-1のピークは主にシリカの伸縮帯である。実施例7と14の試料に現れる2100〜2200cm-1あたりの吸収特徴の存在は、ニトリル及びイソニトリルのような錯化した炭素窒素種の特徴であると報告されている(参照:無機及び配位化合物の赤外及びラマンスペクトル(Infrared and Raman Spectra of Inorganic and Coordination Compounds), K. Nakamoto著, John Wiley偏,3版, 1978; ISBN: 0-471-62979-0, 267-269ページ)。このピークは、出発シリカ及びアミノアルコール又はアミノ酸が存在しないルテニウム錯体の含浸水溶液で調製した試料には存在しない。結果として、これらピークは、有機錯体の部分的分解後に存在する出発Ru-トリエタノールアミン及びRu-アルギニンの残余物の指標である。
【0060】
実施例18.熱重量分析
図3は、有機化合物としてトリエタノールアミンと調製し、分析前に100℃で乾燥した触媒試料(SiO2上0.5wt%Ru)の空気処理TGAプロットを示す、TGAプロットは、トリエタノールアミンとの錯体の水の損失と部分的酸化による300℃未満の温度での減量を示す。さらに、約325℃ではさらなる減量があり、有機錯体の完全な酸化によると考えられる。
図4は、図1で用いた触媒と同様の予め300℃でか焼した触媒(SiO2上0.5wt%Ru)の空気処理TGAプロットを示す。明らかに300℃未満であまり重要でない減量があり;これは、この温度未満で除去されるであろう担持型触媒上のいずれの物質もか焼によって除去されているという事実のためである。試料の減量の大部分は、部分的に分解した有機錯体のためであり、約325℃で酸化される。この結果は、部分的に分解した有機錯体を形成するためには、分解温度未満の当該か焼が必要であることを示す。
図5は予め300℃でか焼した触媒試料(SiO2上0.5wt%Ru)の水素処理TGAを示す。このTGA分析は、部分的に酸化した有機錯体は、か焼条件下より高い温度(〜400℃)で水素処理条件下、完全に分解されることを示す。
【0061】
実施例19.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)担体の調製
80%を超えるアナターゼ型から成り、表面積が48m2/gの担体をまず、NH4OHを添加してpH11に維持する溶液中スラリーにした。この懸濁液を60〜70℃で1時間撹拌し続けた。固体をろ過し、NH4OHの1M溶液で洗浄して、ろ液を硝酸銀溶液に添加しても白色沈殿が生じなくなるまでいかなる過剰の塩化物をも除去した。このチタニア担体の20gの試料上に1.52gのZrO(NO3)2・4H2Oを含有する12ccの水溶液を初期湿潤点まで含浸させ、120℃で一晩中乾燥させた。試料を450℃でか焼して3%ZrO2/TiO2担体を生成した。この手順を10回繰り返し、全試料を一緒に混合した。
実施例20.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)担体上の(公称)11%Co-1%Reの調製
12.3gの硝酸コバルト6水和物と、65%のReを含有する過レニウム酸の溶液0.35gを総量7ccの水溶液に溶かして含浸溶液を生成した。含浸前に含浸溶液を40℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。実施例19で述べた20gの担体を〜60℃に加熱し、含浸溶液を浸みこませた。含浸は初期湿潤で行った。試料を120℃で一晩中乾燥させた。この実施例と実施例21〜29の触媒についての組成及び金属含量は、還元した触媒中の金属の計算量を基礎とした。
実施例21.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)上の公称11%Co-1%Re触媒の調製(溶液中添加剤又は後処理なし)
実施例20の含浸した材料を空気中で4時間350℃でか焼した。
実施例22.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)上の11%Co-1%Reの調製(乾燥含浸物にDMEA後処理)
3.8gのN,N-ジメチルエタノールアミンに十分な水を加えて7ccの溶液を作った。この溶液を初期湿潤で20gの実施例20の120℃-乾燥した含浸材料上に浸みこませた。試料を120℃で一晩中乾燥させてから350℃で4時間か焼した。この結果、有機錯体の完全分解となった。
【0062】
実施例23.3%ZrO2/TiO2(アナターゼ型)上の11%Co-1%Reの調製(か焼含浸物にDMEA後処理)
0.4gのN,N-ジメチルエタノールアミンに十分な水を加えて7ccの溶液を作った。この溶液を初期湿潤で20gの実施例21の350℃-か焼した試料上に浸みこませた。試料を120℃で一晩中乾燥させてから350℃で4時間か焼した。この処理の結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例24.TiO2ルチル型上の公称11%Co、0.15%Reの調製(乾燥含浸物にMDEA後処理)
80%を超えるルチル型から成り、かつ表面積が16m2/gの20gの担体に、12.3gの硝酸コバルト6水和物と過レニウム酸(65%Re)の溶液0.052gを含有する8ccの水溶液を初期湿潤で含浸させた。含浸前に含浸溶液は40℃、担体は〜60℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。含浸は初期湿潤で行った。この含浸した試料を4時間120℃で乾燥させた。十分な水を2.53gのN,N-メチルジエタノールアミンに加えて4ccの溶液を作った。この溶液を初期湿潤で10gの予め乾燥した含浸物上に含浸させた。この試料を120℃で乾燥させ、350℃でか焼し、4時間当該温度で維持した(分析:9.85%Co)。この結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例25.1%ZrO2/TiO2ルチル型の調製
80%を超えるルチル型から成り、表面積が16m2/gの20gの担体上に、0.497gのZrO(NO3)2・4H2Oを含有する8cc容量の溶液を初期湿潤で含浸させた。この試料を一晩中120℃で乾燥させ、4時間450℃でか焼した。
【0063】
実施例26.1%ZrO2/TiO2ルチル型上の公称11%Co、0.15%Reの調製(溶液中TEAあり)
80%を超えるルチル型から成り、表面積が16m2/gの20gの担体上に、0.497gのZrO(NO3)2・4H2Oを含有する8ccの溶液を初期湿潤で含浸させた。この試料を4時間120℃で乾燥させ、4時間350℃でか焼した。この試料20g上に、12.25gの硝酸コバルト6水和物、過レニウム酸(65%Re)の0.052gの溶液及び3.13gのトリエタノールアミンを含有する8ccの溶液を含浸させた。含浸前に含浸溶液は40℃、担体は〜60℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。含浸は初期湿潤で行った。この試料を一晩中120℃で乾燥させてから空気中で1度/分で350℃に加熱し、この温度で4時間維持した。(化学分析:0.13%のRe,9.57%のCo)。この結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例27.1%ZrO2/TiO2ルチル型上の公称10.6%Co、0.7%Reの調製(溶液中添加剤又は後処理なし)
実施例25で述べたように調製した10gの1%ZrO2/TiO2(ルチル型)担体を選んだ。5.92gの硝酸コバルト6水和物と過レニウム酸の溶液(65%Re)0.114gを含有する溶液を調製し、40℃に加熱して硝酸コバルトの溶解を促進した。この溶液による含浸前に担体を〜60℃に加熱し、含浸は初期湿潤で行った。この試料を一晩中120℃で乾燥させてから空気中1度/分で350度に加熱し、この温度で4時間維持した。(化学分析:9.3%Co,0.6%Re)。
【0064】
実施例28.TiO2ルチル型上の11.3%Co、0.9%Reの調製(溶液中添加剤又は後処理なし)
実施例27で述べた試料と同様に試料を、それにいかなるZrをも添加しないルチル型担体上で調製した。試料の分析は11.3%Co及び0.9%Reだった。
実施例29. SiO2上の9.2%Co、1.2%Reの調製(溶液中TEAあり)
70.01gのシリカ担体(S.A=50m2/g)に、46.27gの硝酸コバルト6水和物、11.46gの水及び11.85gのトリエタノールアミンを混合して調製した溶液を含浸させ、60度で2時間乾燥させた。最初の2時間後、乾燥器温度を70℃に上げて1時間維持して乾燥した。乾燥温度をそれぞれ1時間の間隔で80℃、100℃及び140℃に上げた。この処理が完了すると、試料の色がピンクから黒に変化した。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々にあがてか焼し、硝酸コバルトとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整した:140℃まで2℃/分で1時間維持、180℃まで2℃/分で1時間維持、200℃まで2℃/分で1時間維持、300℃まで2℃/分で1時間維持。この結果、有機錯体の完全分解となった。
実施例30.SiO2上の9.9%Co-1.3%Reの調製(溶液中添加剤なし)
15.01gのシリカ担体(43m2/g)に初期湿潤点まで8.28gの硝酸コバルト6水和物と0.41gの過レニウム酸溶液(54%Re)を3.99gの水中に溶かして調製した8.7mlの溶液を含浸させた。この試料を空気中60℃で乾燥させ、空気中300℃で1時間か焼した。
【0065】
実施例31.実施例21〜30の触媒の水素処理及び化学吸着手順
強い金属-担体相互作用は多くの用途で粒子/担体系の性能に影響することが分かっている。担体材料は活性金属と相互作用することができ;高い還元温度(400℃(700K)超え)から生じるこのような金属と還元性酸化物との相互作用は一般に“強い金属-担持相互作用(Strong Metal-Supported Interactions)”(SMSI)と呼ばれる。多くの場合、SMSIは触媒の活性と性能に有害である。SMSIは、部分的に還元した担体が該担体上に沈着した金属粒子を部分的に覆うようにさせ、その活性表面部位を閉鎖する。SMSIに関するさらなる情報については“強い金属担体相互作用。二酸化チタン上に担持された8群貴金属(Strong Metal Support Interactions. Group 8 Noble Metals Supported on Titanium Dioxide)”,Tauster, S.J.; Fung, S.C.; Garten, R.L, Journal of the American Chemical Society, (1978), 100(1), 170-5を参照せよ。
化学吸着測定に影響するSMSIを最小にするための試みでは、実施例21〜23のTiO2-担持型触媒をエキソサイツ(ex-situ)高温還元[450℃]、不動態化かつ部分的に再酸化した[150℃で]。これら試料を化学吸着装置内、225℃の低温かつ水素の存在下で最終還元のための水素処理に供した後、その化学吸着特性を測定した。シリカ上に担持され、それ自体SMSIを示さない実施例29と30の触媒を水素の存在下、90分間2℃/分で450℃まで化学吸着装置内で還元した。すべての場合、1気圧の水素下で約0.3〜0.5gの触媒が還元された。
化学吸着測定値は、静的高真空条件下、Quantachrome Autosorb 1A装置で得た。分散の決定のため、すべての試料を化学吸着装置に装填し、この装置内で還元を行った。還元後、動的真空下、45分間還元温度で水素を汲み出し、温度を40℃に下げ、8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得た。化学吸着プローブ分子としてH2を用いた。試料を化学吸着温度で排気して、いかなる弱く吸着した水素も除去し、滴定を繰り返して弱い吸着等温線を決定した。これら2つの等温線の減算から強く化学吸着した等温線と、その単層ガス適用範囲に対応するゼロトルの外挿切片を得る。この値を用いてコバルトの分散(H/Co表面比1に対する)を推定した。同一還元温度[225℃]で実施例21〜23の還元を繰り返して[180分間隔]、与えた温度で還元するであろうすべてのCoが実際に還元したことを確かめた。
シリカ担持型触媒上の水素化学吸着はSMSI状態を破壊する必要がないので、実施例29と30の触媒は、上述したような化学吸着装置内で直接還元した。これら試料を還元温度で排気し、合計及び弱い水素吸着等温線を40℃で測定した。連続的な還元サイクル[180分間]でさらにコバルトが還元されないことを点検した。
【0066】
表6には、実施例20〜22のCo、Re触媒の化学吸着値が、透過型電子顕微鏡で決定した粒径値と共に示される。最初の還元サイクルに続いてさらなる還元が起こった場合、最大化学吸着値を選択する。当業者は、担持型Co触媒にReを添加すると還元温度を下げ、かつ粒径を小さくする(すなわち分散を高める)ことを認識している。実施例21、22及び23は、ZrO2修飾アナターゼ型担体上のアミノアルコール後処理した試料では、同一Reレベルで、含浸物をか焼する(実施例23)のではなく乾燥した(実施例22)ときに良い結果が現れ、分散が改良されたことを示唆している。実施例24〜27は、アミノアルコール添加又は後処理が、ルチル型担体について3〜5の係数でReレベルを増やすのと同じ分散を達成できることを示す。実施例29と30は、本発明の方法を用いて行った含浸用のシリカ触媒についての劇的な改善を示す。
【0067】
【表6】
【0068】
実施例32.TEM分析
実施例21と22の触媒のTEM顕微鏡写真をそれぞれ図6(a)と6(b)で比較する。図6(a)中、実施例21の触媒の顕微鏡写真はZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す。この触媒は、後処理も含浸溶液への分散助剤の添加も行わない標準的な含浸法で調製した。この触媒をか焼かつ還元して不活性的にTEMに移した。Coと担体粒子が同様の大きさなので、Co粒子をアナターゼ型担体粒子の間に配置するため、TEMビームを直径〜10nmの小プローブに下げて焦点を合わせる必要があった。プローブを像内のランダムに選択した粒子上に位置づけ、各粒子からエネルギー分散分光(EDS)データを収集した。EDSスペクトルの特徴的なX線ピークをCo又はTi(アナターゼ型)と同定した。この像内で同定したCo粒子は、直径約10nm〜約19nmの範囲だった。図6(b)中、実施例22の触媒のTEM顕微鏡写真は乾燥含浸物のジメチルエタノールアミンによる後処理、か焼、還元及びTEMへの不活性移動後のZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す。この場合、Coと担体粒子の相対的サイズが大きく異なるため、粒子間に優れたコントラストがあった。両触媒中のReレベルが同一であることに留意せよ。当業者は、担持型Co触媒にReを添加すると還元温度をさげ、粒径を小さくする(すなわち分散を高める)ことを認識している。両ケースで、試料を4時間450℃で還元してから、いかなる空気暴露をも介入せずに不活性的に顕微鏡中に移した。TEMデータは、乾燥したCo、Re含浸物のDMEAによる後処理が劇的に分散を高め(すなわち、コバルト粒子がずっと小さい(典型的に約5nm))、かつ触媒中のコバルトのより均一なナノスケール分布があることを示す。
実施例24の触媒のTEM顕微鏡写真は、担体上のCo金属の粒度分布を示す棒グラフと共に図10に提供されている。TEMは担体上の顕著に一様なCo金属粒子の分布を示し、棒グラフはこれら粒子が約6nmの平均粒径を有し、最大粒径が約16nmであることを示す。
【0069】
実施例33.SIMS分析
実施例22と28の触媒をSIMSによって評価し、結果をそれぞれ図7と8に示した。実施例22の触媒は、小さい粒子が一緒に群化して成る30〜40ミクロンの凝集粒子であることが分かる。小さい粒子には、少ししか明るさに差のない非常に均一な分布が見える。対照的に、本発明に従って調製していない実施例28の触媒は、担体の外側に凝集されたCoを示す。この比較は、本発明の方法の利用によって、Co分散についてナノとミクロの両スケールで均質性が改良されることを示している。
【0070】
実施例34:触媒試験:フィッシャー-トロプシュ
触媒試験はダウンフロー固定床反応器内で行った。外径(OD)1.27cm(0.5”)/内径(ID)1.09cm(0.43")のステンレススチール製反応器本体は、その中心に外径0.318cm(0.125”)の熱電対-ウェルを有する。熱電対-ウェルは8個の熱電対を3.81cm(1.5”)離して収容する。反応器の8個の熱電対は売手によって較正かつ保証されている。熱電対の上部と底部との間に位置する触媒プラス希釈剤床の容積は23mLである。反応容器を直径6.35cm(2.5”)のアルミニウム又は真鍮の円筒ブロックでスリーブを付けてよい熱分布を与えた。真鍮又はアルミニウムのブロックに収容されている0.318cm(0.125”)の予備熱管を通じて反応器上部の供給導入点まで供給ガスを触媒床に供給した。赤外線炉及び真鍮(又はアルミニウム)ブロックの底部に設置した抵抗補助ヒーターで反応器を加熱した。抵抗補助ヒーターは等温床条件を確実にするために設置した。底部と上部の両方のステンレススチールフィルターディスクで触媒床を適所に保持した。速度実験中、触媒の温度拡散を減らすため、触媒を同サイズの石英砂により約8:1の石英-対-触媒の容量比で希釈した。フィッシャー-トロプシュ条件で触媒床中の軸方向の温度拡散は通常3〜10Kだった。触媒床の平均温度を加重平均として計算した。最初と最後の熱電対ゾーン(入口と出口点)の荷重係数を内部熱電対ゾーンの荷重係数の1/2に設定した。供給成分をBrooksマスフローコントローラーを介して個々に供給し、使用前に精製した。
【0071】
典型的な固定床実験では、約3gの触媒を石英で23mL体積に希釈し、反応器に装填した。触媒を1.2MPaのH2(450標準mL/分)流内で温度を1℃/分の割合で400℃に上げ、最終温度で8時間維持することで還元した。触媒を流動H2内で160℃に冷まし、2MPaの合成ガス(H2/CO≒2.1)圧下に置き、最後に1℃/分の上昇速度で合成温度(220℃)にした。供給流(以後、一般的にガス毎時空間速度(Gas Hourly Space Velocity)、つまりGHSVで表す)を変えてCO変換を調整した。GHSVは、1時間当たり触媒の体積に対して供給したガスの標準体積(21℃(70F)、1atmで)として定義される。すべての試験中、CO変換は同レベルで維持した(50〜80%)。図9は、基本事例(通常の触媒)と本発明に従って調製した2種の触媒、一方はTiO2担体上、他方はSiO2担体上の触媒の初期触媒活性を示す。図9では、基本事例-実施例28(11%Co,1%Re/TiO2(ルチル)、アミノアルコール処理なし)、実施例24(11%Co、0.15%Re/TiO2(ルチル)、MDEA後処理)及び実施例29(溶液中TEAによるSiO2上の9.9%Co-1.3%Re)の初期触媒活性。図9のデータは、明白に本発明の方法によって高活性な安定したフィッシャー-トロプシュ触媒を製造できることを示している。実施例24は、基本事例の実施例28の15%のレニウムしか持たないが、FT条件下で匹敵しうる性能を有する。実施例29は、FT条件下での性能が基本事例よりきわめて優れる。
実施例35.20%Ni/Al2O3の通常の製法
20gのリフォーミンググレードのガンマAl2O3(190m2/gの表面積)に24.8gの硝酸ニッケル6水和物を含有する12ccの含浸水溶液を初期湿潤で含浸させた。120℃で乾燥後、試料を4時間350℃でか焼した。
【0072】
実施例36.乾燥含浸物についてDMEA後処理のある20%Ni/Al2O3の製法
20gのリフォーミンググレードのガンマAl2O3(190m2/gの表面積)に24.8gの硝酸ニッケル6水和物を含有する12ccの含浸水溶液を初期湿潤で含浸させた。120℃で乾燥後、試料に7.6gのN,N-ジメチルエタノールアミンを含有する106ccの水溶液を初期湿潤で再び含浸させた。試料を一晩中120℃で乾燥させた後、4時間350℃でか焼した。これら条件下で有機錯体は完全に分解した。
水素化学吸着法で実施例35と36の触媒のNiの分散を決定した。結果を下表7に与える。これら結果は、Niを本発明の方法で沈着させたときのNi分散の劇的増加を示す。
【0073】
【表7】
【0074】
実施例37.SiO2上の19.0%Niの調製(溶液中添加剤なし)
15.02gのシリカ担体(80m2/g)に、7.75gの水に17.49gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中120℃で乾燥させ、流動空気中、350℃で2時間か焼した。
実施例38.SiO2上の18.0%Ni(溶液中添加剤あり、モル比TEA/Ni=0.125)
10.00gのシリカ担体(80m2/g)に、4.52gの水と0.70gのトリエタノールアミンに10.97gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中60℃で1時間及び90℃で1時間乾燥させた。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々に上げることで、硝酸ニッケルとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整してか焼した:195℃まで2℃/分かつ1時間維持、350℃まで1℃/分かつ1時間維持。この処理の結果、有機錯体の完全な分解となった。
実施例39.SiO2上の18.0%Niの調製(溶液中TEA添加、モル比TEA/Ni=0.25)
10.02gのシリカ担体(80m2/g)に、3.87gの水と1.40gのトリエタノールアミンに10.93gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中60℃で1時間及び90℃で1時間乾燥させた。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々に上げることで、硝酸ニッケルとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整してか焼した:195℃まで2℃/分かつ1時間維持、350℃まで1℃/分かつ1時間維持。この処理の結果、有機錯体の完全な分解となった。
実施例40.SiO2上の18.3%Niの調製(溶液中TEA添加、モル比TEA/Ni=0.50)
15.02gのシリカ担体(80m2/g)に、4.01gの水と4.28gのトリエタノールアミンに16.66gの硝酸ニッケル6水和物を溶かして調製した溶液を初期湿潤点まで含浸させた。試料を空気中60℃で1時間及び90℃で1時間乾燥させた。この乾燥試料を流動空気中、以下の手順で温度を徐々に上げることで、硝酸ニッケルとアミノアルコールとの間の激しい酸化反応を適度に調整してか焼した:165℃まで2℃/分かつ1時間維持、350℃まで1℃/分かつ1時間維持。この処理の結果、有機錯体の完全な分解となった。
【0075】
実施例41.実施例37〜40の水素処理及び化学吸着手順
化学吸着測定前に、試料を1気圧の水素下450℃の温度で90分間還元した。化学吸着測定値は、静的高真空条件下Quantachrome Autosorb 1A装置で得た。この触媒を化学吸着装置に装填した。約0.3〜0.5gの触媒を1気圧の水素下で還元する。次に、動的真空下、水素を還元温度で45分間汲み出し、温度を40℃に下げ、8点等温線(1.1×104〜5.3×104Pa(80〜400トル)の圧力で)を得た。化学吸着プローブ分子としてH2を用いた。化学吸着温度で試料を排気していかなる弱く吸着した水素をも除去し、滴定を繰り返して弱い吸着等温線を得た。2つの等温線の減算から強く化学吸着した等温線と、その単層ガス適用範囲に対応するゼロトルの外挿切片を得た。この値を用いてニッケル分散を推定した(1のH/Ni表面比に対して)。
同じ還元温度で[450℃]還元を繰返し[40分間隔]、与えた温度で還元するであろうすべてのNiが実際に還元したことを確かめた。この試料を還元温度で排気し、40℃で合計及び弱い水素吸着等温線を測定した。連続還元サイクルでさらにニッケルが還元されないことを点検した。表8に、実施例37と40のNi触媒の化学吸着値を示す。このデータは、Niを本発明の方法で沈着させたときのNi分散の劇的増加を示している。
【0076】
【表8】
【0077】
実施例42.実施例37〜40の材料のイオウ吸着能の評価
実施例37〜40の4つのNi-ベース試料すべてを以下の様式でイオウ吸着能について評価した。8ccの吸着剤をステンレススチール反応管(18のL/D)中に充填し、管状炉で加熱される貫流反応装置内に置いた。流動H2(200cc/分)中、室温から2℃/分で350℃に上げて2時間維持することによって350℃で吸着剤を還元した。350℃で2時間維持後、試料を200℃に冷ました。次に、チオフェンとして80ppmのイオウを含有するガソリン範囲の炭化水素ブレンドをNiベース吸着剤に導入した。以下の条件で実験を行った:アップ-フロー態様で(1.45×106Pa(210psig),200℃,1LHSV)。生成物中に残存する全イオウの測定(ANTEKイオウ)に基づいてイオウ吸着能を計算した。結果を下表9に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
このデータから分かるように、すべての試料について1ppm未満のイオウレベルが達成された。本発明の吸着剤でイオウ吸着能が最高だった。驚くべきことに、イオウ吸着能は、吸着剤調製で用いたトリエタノールアミン分散剤の量と直接関係し、分散剤なしで調製した試料よりすべてずっと優れていた。
【0080】
実施例43.種々の有機錯体の分解温度の決定
種々の金属と窒素含有化合物から誘導し、かつシリカ又はアルミナ上に沈着した多数の担持型有機錯体を空気処理TGAに供し、それぞれの分解プロフィルを決定した。TGAデータは図11に示され、図中、TEAはトリエタノールアミンであり、argはL-アルギニンであり、arg(TPA-C12)はPt塩としてテトラミンPtジクロライドを有するアルギニン錯体である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】空気中、4度/分で加熱した実施例7の生成物の四極質量スペクトルを示す。
【図2】シリカと実施例7、9及び14の透過赤外線スペクトルを示す。
【図3】トリエタノールアミンによる金属の含浸と100℃での乾燥によって調製した担持型金属触媒(0.5wt%Ru/SiO2)の空気処理TGAプロットを示す。
【図4】トリエタノールアミンによる金属の含浸と300℃でのか焼によって調製した担持型金属触媒(0.5wt%Ru/SiO2)の空気処理TGAプロットを示す。
【図5】トリエタノールアミンによる金属の含浸と300℃でのか焼によって調製した担持型金属触媒(0.5wt%Ru/SiO2)の水素処理TGAプロットを示す。
【図6(a)】350℃でか焼かつ還元後のZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す実施例21の触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図6(b)】乾燥したジメチルエタノールアミン含浸物の後処理、350℃でか焼かつ還元後のZrO2/TiO2(アナターゼ型担体)上のCo粒子を示す実施例22の触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図7】Co、Ti及びZrの位置を図解する実施例22の触媒のSIMS分析の結果を示す。
【図8】Co及びTiの位置を図解する実施例28の触媒のSIMS分析の結果を示す。
【図9】実施例28(11%Co、1%Re/TiO2(ルチル型))、実施例24(11%Co、0.15%Re/TiO2(ルチル型)、MDEA後処理あり)及び実施例29(SiO2上9.9%Co-1.3%Re、溶液中TEAあり)の触媒のCO変換の触媒活性を示す。
【図10】担体上のCo金属の粒度分布を示すヒストグラムと共に担体上のCo粒子を示す実施例24の触媒のTEM顕微鏡写真を示す。
【図11】有機錯体の形成後100℃で乾燥した種々の担持型金属有機錯体(1〜5wt%金属/担体)の空気処理TGAプロットを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に沈着した1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体を有する担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した前記1種以上の有機金属錯体を部分的に分解する工程;及び
c)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項2】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で多孔性担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した多孔性担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を部分的に分解する工程;及び
d)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項3】
工程a)の前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を、工程b)の処理前にか焼又は熱分解によって熱的に処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の有機化合物で多孔性担体を処理する工程;
b)その上に1種以上の有機化合物が沈着した前記担体を、1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を部分的に分解する工程;及び
d)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項5】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で多孔性担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した多孔性担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記担体上に沈着した1種以上の有機錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項6】
工程a)の前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を、工程b)の処理前にか焼又は熱分解によって熱的に処理する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の有機化合物で多孔性担体を処理する工程;
b)その上に1種以上の有機化合物が沈着した前記担体を、1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項8】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体が沈着した担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した1種以上の有機金属錯体を完全に分解する工程;及び
c)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項9】
前記触媒活性金属への変換を、1種以上の完全又は部分的に分解した有機錯体を含む前記担体の還元剤との処理によって達成する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤が水素のソースである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元剤がCOのソースである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が水素とCOの両方のソースである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤のソースが、触媒プロセスにおいて現場で供給される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤のソースが、触媒再生プロセスで供給される、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記還元剤のソースが、触媒プロセスと関係ある触媒再生プロセス又は触媒リサイクルプロセスで供給される、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1種以上の有機錯体が、前記担体の製造又は合成の間に現場で形成された、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記1種以上の有機錯体が、前記担体の製造又は合成の間に前記担体中に組み込まれた錯体を形成するために必要な成分から形成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程a)が省略され、この省略された工程a)の前記化合物が、前記担体の製造又は合成の間に該担体中に組み込まれた、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記有機錯体が1種以上の有機窒素含有化合物から誘導される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1種以上の有機窒素含有化合物がアミンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アミンの少なくとも1種が脂肪族アミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記脂肪族アミンの少なくとも1種が、1個以上のヒドロキシル基を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アミンが、ヒドロキシアルキル基を有する1種以上のアミンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロキシアルキル基が、C1〜C50-ヒドロキシアルキル、好ましくはC1〜C8-ヒドロキシアルキル、特に好ましくはC1〜C4-ヒドロキシアルキル基である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒドロキシアルキル基が、以下の基:ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシ-n-プロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、3-ヒドロキシ-n-プロピル及び1-ヒドロキシ-メチル-エチルの1種以上から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒドロキシアルキル基含有窒素化合物が、1種以上の一-、二-、及び三置換脂肪族ヒドロキシアルキルアミンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒドロキシアルキルアミンが、以下のアミン:メタノールアミン、ジ-メタノールアミン、トリ-メタノールアミン、エタノールアミン、ジ-エタノールアミン、トリ-エタノールアミン、ブタノールアミン、ジ-ブタノールアミン、トリ-ブタノールアミン、プロパノールアミン、ジ-プロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジ-イソプロピルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノ-2-プロパノール及びトリ-プロパノールアミンの1種以上を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記有機窒素含有化合物が1種以上のアミノ酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記アミノ酸がL-アルギニンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記有機錯体を分解するための処理がか焼である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記有機錯体が部分的に分解され、かつ前記か焼温度が、空気中TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度未満である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記か焼温度が、200℃と前記有機錯体の全減量が生じる温度の間である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記有機錯体が完全に分解され、かつ前記か焼温度が、TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度以上である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記か焼温度が、前記有機錯体の全減量が生じる温度と1000℃の間である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記分解が熱分解によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記有機錯体が部分的に分解され、かつ該熱分解温度が、不活性雰囲気又は水素中TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記熱分解温度が、200℃と前記有機錯体の全減量が生じる温度の間である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記有機錯体が完全に分解され、かつ該熱分解温度が、不活性雰囲気又は水素中TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度以上である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記熱分解温度が、前記有機錯体の全減量が生じる温度と1000℃の間である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記分解が、1種以上の有機錯体を含む前記担体の触媒プロセスへの導入によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記分解が、1種以上の有機錯体を含む前記担体の触媒再生プロセスへの導入によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記分解が、1種以上の有機錯体を含む前記担体の触媒リサイクルプロセスへの導入によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
1種以上の担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属を含んでなる触媒であって、全金属分散が45%以上であり、かつこの全金属分散の強く化学吸着した成分に関する金属分散が20%以上である触媒。
【請求項44】
前記全金属分散が50%以上である、請求項43に記載の触媒。
【請求項45】
前記全金属分散の強く化学吸着した成分に関する金属分散が30%以上である、請求項44に記載の触媒。
【請求項46】
少なくとも1種の担体材料と、この担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属の少なくとも1種のソースとを含んでなる触媒前駆体であって、前記1種以上の触媒活性金属のソースが1種以上の金属含有有機錯体の分解生成物である、触媒前駆体。
【請求項47】
前記分解生成物が1種以上の金属含有有機錯体の部分的分解から得られる、請求項46に記載の触媒前駆体。
【請求項48】
前記前駆体が、1%未満の強い分散成分に関する分散値を示す、請求項46又は47に記載の触媒前駆体。
【請求項49】
前記分散が0.75%未満である、請求項48に記載の触媒前駆体。
【請求項50】
前記分散が0.5%未満である、請求項49に記載の触媒前駆体。
【請求項51】
前記分散が0.25%未満である、請求項50に記載の触媒前駆体。
【請求項52】
前記分散が0%である、請求項51に記載の触媒前駆体。
【請求項53】
前記前駆体が、前分解した有機錯体では存在しない2100〜2200cm-1の1種以上の赤外線吸収帯を示す、請求項46〜52のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【請求項54】
前記前駆体が、前記その上に錯体が形成された担体の乾燥後、前分解した有機錯体に起因する質量の10〜95質量%を保持する、請求項46〜53のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【請求項55】
20〜75質量%が保持される、請求項54に記載の触媒前駆体。
【請求項56】
60質量%まで保持される、請求項55に記載の触媒前駆体。
【請求項57】
50質量%まで保持される、請求項56に記載の触媒前駆体。
【請求項58】
前記前駆体から触媒活性金属を形成するための還元温度が、完全に酸化した金属錯体を触媒活性金属に還元するために必要な標準的な還元温度を超える、請求項46〜57のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【請求項59】
前記還元温度が少なくとも5%超える、請求項58に記載の触媒前駆体。
【請求項60】
前記還元温度が少なくとも10%超える、請求項59に記載の触媒前駆体。
【請求項61】
前記触媒担体がシリカを含む、請求項1〜60のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項62】
前記シリカが非晶質である、請求項61に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項63】
前記担体材料の少なくとも1種が秩序あるメソポア材料である、請求項1〜62のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項64】
前記担体材料の少なくとも1種が、指示薬として両親媒性化合物を用いて合成しうる1種以上の材料である、請求項1〜63のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項65】
前記触媒担体が1種以上のマクロポア材料を含む、請求項1〜64のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項66】
前記触媒担体が1種以上の混合多孔度材料を含む、請求項1〜65のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項67】
前記混合多孔度材料がメソポア及びマクロポアを含む、請求項1〜66のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項68】
前記担体材料の少なくとも1種が、M41Sと称する1種以上の材料である、請求項1〜67のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項69】
前記担体材料がMCM-41である、請求項68に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項70】
前記担体がアルミナを含む、請求項1〜69のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項71】
前記担体がγアルミナである、請求項70に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項72】
前記担体がルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン又はその混合物を含む、請求項1〜71のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項73】
前記担体が、さらに二酸化ジルコニウムを含む、請求項72に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項74】
前記1種以上の触媒活性金属の塩又は化合物が、以下の群:Li、Na又はKのような群1(群IA);Mg、Ca及びSrのような群2(群IIA);Sc、Y及びLaのような群3(群IIIA、IIIB);Ti、Zr及びHfのような群4(群IVA、IVB);V、Nb及びTaのような群5(群VA、VB);Cr、Mo及びWのような群6(群VIA、VIB);Mn、Tc及びReのような群7(VIIA、VIIB);Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、及びPtのような群8、9及び10(群VIII、VIIIA);Cu、Ag、及びAuのような群11(群IB);Znのような群12(群IIB);Ga及びInのような群13(群IIIA、IIIB);及びGe及びSnのような群14(群IVA、IVB);から選択される1種以上の金属の塩又は化合物である、請求項1〜73のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項75】
前記1種以上の触媒活性金属の塩又は化合物が、以下の金属:銅、白金、ロジウム、パラジウム、コバルト、鉄、ニッケル、レニウム、ルテニウム又はその2種以上の混合物;の1種以上の塩又は化合物である、請求項74に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項76】
請求項1〜42若しくは61〜75のいずれか1項に記載の方法によって、又は請求項46〜60のいずれか1項に記載の前駆体を介して得られる触媒又は吸着剤。
【請求項77】
水素と一酸化炭素合成ガスからの、反応条件における前記ガスの触媒との接触によるC5+液体炭化水素の製造方法であって、前記触媒が請求項43〜45若しくは請求項76のいずれか1項に記載の触媒であり、又は請求項1〜42若しくは61〜75のいずれか1項に記載の方法によって製造されるような触媒である、前記方法。
【請求項78】
1種以上の有機化合物と1種以上のイオウ含有化合物とを含む混合物からのイオウ除去方法であって、前記混合物を、無機担体上に分散した活性金属を含む1種以上の材料と、該無機担体上に分散した活性金属を含む材料上にイオウが吸着するような条件下で接触ささせ、かつ前記担体上に沈着した活性金属を含む材料が、請求項43〜45若しくは請求項76のいずれか1項に記載の触媒であり、又は請求項1〜42若しくは61〜75のいずれか1項に記載の方法によって製造されるような触媒である、前記方法。
【請求項1】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に沈着した1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体を有する担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した前記1種以上の有機金属錯体を部分的に分解する工程;及び
c)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項2】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で多孔性担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した多孔性担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を部分的に分解する工程;及び
d)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項3】
工程a)の前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を、工程b)の処理前にか焼又は熱分解によって熱的に処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の有機化合物で多孔性担体を処理する工程;
b)その上に1種以上の有機化合物が沈着した前記担体を、1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を部分的に分解する工程;及び
d)前記1種以上の部分的に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項5】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で多孔性担体を処理して、その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した多孔性担体を与える工程;
b)前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を1種以上の有機化合物で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記担体上に沈着した1種以上の有機錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項6】
工程a)の前記その上に1種以上の触媒金属前駆体が沈着した担体を、工程b)の処理前にか焼又は熱分解によって熱的に処理する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)1種以上の有機化合物で多孔性担体を処理する工程;
b)その上に1種以上の有機化合物が沈着した前記担体を、1種以上の触媒活性金属の化合物、又は塩で処理して1種以上の有機錯体を形成する工程;
c)前記1種以上の有機錯体を完全に分解する工程;及び
d)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項8】
触媒の製造方法であって、以下の工程:
a)その上に1種以上の触媒活性金属の1種以上の有機錯体が沈着した担体を調製する工程;
b)前記担体上に沈着した1種以上の有機金属錯体を完全に分解する工程;及び
c)前記1種以上の完全に分解した有機金属錯体を触媒活性金属に変換する工程;
を含む方法。
【請求項9】
前記触媒活性金属への変換を、1種以上の完全又は部分的に分解した有機錯体を含む前記担体の還元剤との処理によって達成する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤が水素のソースである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記還元剤がCOのソースである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記還元剤が水素とCOの両方のソースである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記還元剤のソースが、触媒プロセスにおいて現場で供給される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤のソースが、触媒再生プロセスで供給される、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記還元剤のソースが、触媒プロセスと関係ある触媒再生プロセス又は触媒リサイクルプロセスで供給される、請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記1種以上の有機錯体が、前記担体の製造又は合成の間に現場で形成された、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記1種以上の有機錯体が、前記担体の製造又は合成の間に前記担体中に組み込まれた錯体を形成するために必要な成分から形成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
工程a)が省略され、この省略された工程a)の前記化合物が、前記担体の製造又は合成の間に該担体中に組み込まれた、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記有機錯体が1種以上の有機窒素含有化合物から誘導される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記1種以上の有機窒素含有化合物がアミンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アミンの少なくとも1種が脂肪族アミンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記脂肪族アミンの少なくとも1種が、1個以上のヒドロキシル基を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アミンが、ヒドロキシアルキル基を有する1種以上のアミンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒドロキシアルキル基が、C1〜C50-ヒドロキシアルキル、好ましくはC1〜C8-ヒドロキシアルキル、特に好ましくはC1〜C4-ヒドロキシアルキル基である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒドロキシアルキル基が、以下の基:ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシ-n-プロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、3-ヒドロキシ-n-プロピル及び1-ヒドロキシ-メチル-エチルの1種以上から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒドロキシアルキル基含有窒素化合物が、1種以上の一-、二-、及び三置換脂肪族ヒドロキシアルキルアミンを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒドロキシアルキルアミンが、以下のアミン:メタノールアミン、ジ-メタノールアミン、トリ-メタノールアミン、エタノールアミン、ジ-エタノールアミン、トリ-エタノールアミン、ブタノールアミン、ジ-ブタノールアミン、トリ-ブタノールアミン、プロパノールアミン、ジ-プロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジ-イソプロピルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノ-2-プロパノール及びトリ-プロパノールアミンの1種以上を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記有機窒素含有化合物が1種以上のアミノ酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記アミノ酸がL-アルギニンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記有機錯体を分解するための処理がか焼である、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記有機錯体が部分的に分解され、かつ前記か焼温度が、空気中TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度未満である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記か焼温度が、200℃と前記有機錯体の全減量が生じる温度の間である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記有機錯体が完全に分解され、かつ前記か焼温度が、TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度以上である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記か焼温度が、前記有機錯体の全減量が生じる温度と1000℃の間である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記分解が熱分解によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記有機錯体が部分的に分解され、かつ該熱分解温度が、不活性雰囲気又は水素中TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度未満である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記熱分解温度が、200℃と前記有機錯体の全減量が生じる温度の間である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記有機錯体が完全に分解され、かつ該熱分解温度が、不活性雰囲気又は水素中TGAで決定されるように、前記有機錯体の全減量が生じる温度以上である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記熱分解温度が、前記有機錯体の全減量が生じる温度と1000℃の間である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記分解が、1種以上の有機錯体を含む前記担体の触媒プロセスへの導入によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記分解が、1種以上の有機錯体を含む前記担体の触媒再生プロセスへの導入によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記分解が、1種以上の有機錯体を含む前記担体の触媒リサイクルプロセスへの導入によって行われる、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
1種以上の担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属を含んでなる触媒であって、全金属分散が45%以上であり、かつこの全金属分散の強く化学吸着した成分に関する金属分散が20%以上である触媒。
【請求項44】
前記全金属分散が50%以上である、請求項43に記載の触媒。
【請求項45】
前記全金属分散の強く化学吸着した成分に関する金属分散が30%以上である、請求項44に記載の触媒。
【請求項46】
少なくとも1種の担体材料と、この担体材料上に沈着した1種以上の触媒活性金属の少なくとも1種のソースとを含んでなる触媒前駆体であって、前記1種以上の触媒活性金属のソースが1種以上の金属含有有機錯体の分解生成物である、触媒前駆体。
【請求項47】
前記分解生成物が1種以上の金属含有有機錯体の部分的分解から得られる、請求項46に記載の触媒前駆体。
【請求項48】
前記前駆体が、1%未満の強い分散成分に関する分散値を示す、請求項46又は47に記載の触媒前駆体。
【請求項49】
前記分散が0.75%未満である、請求項48に記載の触媒前駆体。
【請求項50】
前記分散が0.5%未満である、請求項49に記載の触媒前駆体。
【請求項51】
前記分散が0.25%未満である、請求項50に記載の触媒前駆体。
【請求項52】
前記分散が0%である、請求項51に記載の触媒前駆体。
【請求項53】
前記前駆体が、前分解した有機錯体では存在しない2100〜2200cm-1の1種以上の赤外線吸収帯を示す、請求項46〜52のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【請求項54】
前記前駆体が、前記その上に錯体が形成された担体の乾燥後、前分解した有機錯体に起因する質量の10〜95質量%を保持する、請求項46〜53のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【請求項55】
20〜75質量%が保持される、請求項54に記載の触媒前駆体。
【請求項56】
60質量%まで保持される、請求項55に記載の触媒前駆体。
【請求項57】
50質量%まで保持される、請求項56に記載の触媒前駆体。
【請求項58】
前記前駆体から触媒活性金属を形成するための還元温度が、完全に酸化した金属錯体を触媒活性金属に還元するために必要な標準的な還元温度を超える、請求項46〜57のいずれか1項に記載の触媒前駆体。
【請求項59】
前記還元温度が少なくとも5%超える、請求項58に記載の触媒前駆体。
【請求項60】
前記還元温度が少なくとも10%超える、請求項59に記載の触媒前駆体。
【請求項61】
前記触媒担体がシリカを含む、請求項1〜60のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項62】
前記シリカが非晶質である、請求項61に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項63】
前記担体材料の少なくとも1種が秩序あるメソポア材料である、請求項1〜62のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項64】
前記担体材料の少なくとも1種が、指示薬として両親媒性化合物を用いて合成しうる1種以上の材料である、請求項1〜63のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項65】
前記触媒担体が1種以上のマクロポア材料を含む、請求項1〜64のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項66】
前記触媒担体が1種以上の混合多孔度材料を含む、請求項1〜65のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項67】
前記混合多孔度材料がメソポア及びマクロポアを含む、請求項1〜66のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項68】
前記担体材料の少なくとも1種が、M41Sと称する1種以上の材料である、請求項1〜67のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項69】
前記担体材料がMCM-41である、請求項68に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項70】
前記担体がアルミナを含む、請求項1〜69のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項71】
前記担体がγアルミナである、請求項70に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項72】
前記担体がルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン又はその混合物を含む、請求項1〜71のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項73】
前記担体が、さらに二酸化ジルコニウムを含む、請求項72に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項74】
前記1種以上の触媒活性金属の塩又は化合物が、以下の群:Li、Na又はKのような群1(群IA);Mg、Ca及びSrのような群2(群IIA);Sc、Y及びLaのような群3(群IIIA、IIIB);Ti、Zr及びHfのような群4(群IVA、IVB);V、Nb及びTaのような群5(群VA、VB);Cr、Mo及びWのような群6(群VIA、VIB);Mn、Tc及びReのような群7(VIIA、VIIB);Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、及びPtのような群8、9及び10(群VIII、VIIIA);Cu、Ag、及びAuのような群11(群IB);Znのような群12(群IIB);Ga及びInのような群13(群IIIA、IIIB);及びGe及びSnのような群14(群IVA、IVB);から選択される1種以上の金属の塩又は化合物である、請求項1〜73のいずれか1項に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項75】
前記1種以上の触媒活性金属の塩又は化合物が、以下の金属:銅、白金、ロジウム、パラジウム、コバルト、鉄、ニッケル、レニウム、ルテニウム又はその2種以上の混合物;の1種以上の塩又は化合物である、請求項74に記載の方法又は触媒又は触媒前駆体。
【請求項76】
請求項1〜42若しくは61〜75のいずれか1項に記載の方法によって、又は請求項46〜60のいずれか1項に記載の前駆体を介して得られる触媒又は吸着剤。
【請求項77】
水素と一酸化炭素合成ガスからの、反応条件における前記ガスの触媒との接触によるC5+液体炭化水素の製造方法であって、前記触媒が請求項43〜45若しくは請求項76のいずれか1項に記載の触媒であり、又は請求項1〜42若しくは61〜75のいずれか1項に記載の方法によって製造されるような触媒である、前記方法。
【請求項78】
1種以上の有機化合物と1種以上のイオウ含有化合物とを含む混合物からのイオウ除去方法であって、前記混合物を、無機担体上に分散した活性金属を含む1種以上の材料と、該無機担体上に分散した活性金属を含む材料上にイオウが吸着するような条件下で接触ささせ、かつ前記担体上に沈着した活性金属を含む材料が、請求項43〜45若しくは請求項76のいずれか1項に記載の触媒であり、又は請求項1〜42若しくは61〜75のいずれか1項に記載の方法によって製造されるような触媒である、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−506224(P2006−506224A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552639(P2004−552639)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012884
【国際公開番号】WO2004/045767
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(501200387)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012884
【国際公開番号】WO2004/045767
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(501200387)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (7)
【Fターム(参考)】
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