説明

触媒の製造方法

【課題】目的生成物を高収率で製造できる触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒成分の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを乾燥して乾燥物を製造する工程と、前記乾燥物の一部又は全部と液体と有機バインダーとを混練りして混練り物Aを製造する工程と、前記乾燥物の残り又は他の乾燥物と液体と有機バインダーと前記混練り物Aとを混練りして混練り物Bを製造する工程と、前記混練り物Bを押出し成形して触媒成形体を製造する工程と、前記触媒成形体を乾燥する工程と、を含む触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンを気相接触酸化してアクロレイン及びアクリル酸を製造する際に用いられる触媒や、イソブチレン、第三級ブチルアルコール(以下、「TBA」と略記する。)又はメチル第三級ブチルエーテル(以下、「MTBE」と略記する。)を気相接触酸化してメタクロレイン及びメタクリル酸を製造する際に用いられる触媒及びそれら触媒の製造方法については数多くの提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、平均粒径0.01〜10μmの高分子有機化合物を添加して成型し、熱処理する方法が提案されている。さらに、特許文献2には、触媒成分の原料化合物を含む混合溶液又は水性スラリーを、スプレー乾燥機を用いて平均粒子径1〜250μmの中空状球状粒子に乾燥した後、焼成し、得られた球状粒子焼成粉に水及びアルコールのうち少なくとも一方を添加し押出し成型した後、乾燥及び熱処理、又は熱処理することを特徴とする不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法が開示されている。
【0004】
一方、不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化して不飽和カルボン酸を製造するための触媒成分としては、リンモリブデン酸に代表されるヘテロポリ酸化合物が知られている。また、この触媒成分を気相接触酸化反応に有効に作用させるために、触媒内に有効な細孔構造を形成する方法が数多く提案されている。
【0005】
特許文献3には、比較的低い温度で単量体に分解し、気化するポリメタクリル酸メチルやポリスチレン等の高分子有機化合物を添加して触媒を成形する方法が提案されている。さらに、特許文献4には、触媒成分を含む混合溶液又は水性スラリーの乾燥物であって、その粒子径が1〜250μmの範囲に調整された乾燥物を成形する触媒の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−23596号公報
【特許文献2】特開平9−122491号公報
【特許文献3】特開平4−367737号公報
【特許文献4】特開平8−10621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの反応において、目的生成物の収率をさらに高めることができる触媒の開発が望まれている。本発明は目的生成物を高収率で製造できる触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る触媒の製造方法は、
(1)触媒成分の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを乾燥して乾燥物を製造する工程と、
(2)前記乾燥物の一部又は全部と液体と有機バインダーとを混練りして混練り物Aを製造する工程と、
(3)前記乾燥物の残り又は他の乾燥物と液体と有機バインダーと前記混練り物Aとを混練りして混練り物Bを製造する工程と、
(4)前記混練り物Bを押出し成形して触媒成形体を製造する工程と、
(5)前記触媒成形体を乾燥する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る方法によれば、目的生成物を高収率で製造できる触媒を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[触媒の製造方法]
本発明に係る触媒の製造方法は、(1)触媒成分の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを乾燥して乾燥物を製造する工程と、(2)前記乾燥物の一部又は全部と液体と有機バインダーとを混練りして混練り物Aを製造する工程と、(3)前記乾燥物の残り又は他の乾燥物と液体と有機バインダーと前記混練り物Aとを混練りして混練り物Bを製造する工程と、(4)前記混練り物Bを押出し成形して触媒成形体を製造する工程と、(5)前記触媒成形体を乾燥する工程と、を含む。本発明に係る触媒の製造方法は、触媒の組成、用途等は特に限定されないが、例えば不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の製造、不飽和カルボン酸製造用触媒の製造に好ましく用いることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0011】
(工程(1))
工程(1)では、まず触媒成分の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを調製する。例えば、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の製造においては、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の触媒成分の原料化合物を、適宜選択した溶媒に溶解又は懸濁させ、少なくともモリブデン及びビスマスを含む混合溶液又はスラリーを調製することが好ましい。また、不飽和カルボン酸製造用触媒の製造においては、不飽和カルボン酸製造用触媒の触媒成分の原料化合物を、適宜選択した溶媒に溶解又は懸濁させ、少なくともモリブデン及びリンを含む混合溶液又はスラリーを調製することが好ましい。混合溶液又はスラリーの調製方法は特に限定はなく、例えば、沈殿法、酸化物混合法等の公知の方法が挙げられる。
【0012】
混合溶液又はスラリーの調製に用いられる触媒成分の原料化合物は特に限定されず、触媒の各構成元素の酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩等の有機酸塩、アンモニウム塩、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩、アルカリ金属塩等を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。モリブデンの原料化合物としては、例えば、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン類、パラモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸アンモニウム類等が挙げられる。ビスマスの原料化合物としては、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、酢酸ビスマス、水酸化ビスマス等が挙げられる。リンの原料化合物としては、例えば、リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム等が挙げられる。バナジウムの原料化合物としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、蓚酸バナジル等が挙げられる。触媒成分の原料化合物は、触媒成分を構成する各元素に対して1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
前記溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられるが、水を用いることが好ましい。
【0014】
次に、得られた混合溶液又はスラリーを乾燥する。混合溶液又はスラリーを乾燥する方法は特に限定されず、例えば、スプレー乾燥機を用いて乾燥する方法、スラリードライヤーを用いて乾燥する方法、ドラムドライヤーを用いて乾燥する方法、蒸発乾固する方法等が適用できる。これらの中では、乾燥と同時に粒子が得られること、得られる粒子の形状が整った球形であることから、スプレー乾燥機を用いて乾燥する方法が好ましい。乾燥条件は乾燥方法により異なるが、スプレー乾燥機を用いる場合、乾燥機入口温度は100〜500℃が好ましく、200〜400℃がより好ましく、220〜370℃がさらに好ましい。乾燥機出口温度は100℃以上が好ましく、105〜200℃がより好ましい。
【0015】
スプレー乾燥機を用いる場合、得られる乾燥物の平均粒子径が1〜250μmであることが好ましい。平均粒子径が1μm以上であることにより、目的生成物の生成に必要な細孔径を確保することができ、高い収率で目的生成物が得られる。また、平均粒子径が250μm以下であることにより、単位体積当たりの乾燥物粒子間の接触点の数が減らず、十分な触媒の機械的強度が得られる。乾燥物の平均粒子径は5〜150μmであることがより好ましい。なお、平均粒子径は体積平均粒子径を意味し、レーザー式粒度分布測定装置により測定した値とする。
【0016】
また、噴霧された液滴と熱風との接触方式は、並流、向流、並向流(混合流)のいずれでもよく、いずれの場合でも好適に乾燥することができる。
【0017】
このようにして得られた乾燥物は、必要に応じて200〜600℃、好ましくは300〜500℃で熱処理(焼成)して焼成物としてもよい。焼成条件は特に限定されないが、焼成は通常、酸素、空気又は窒素流通下で行われる。また、焼成時間は目的とする触媒によって適宜設定される。以下、焼成を行っていない乾燥物と前記焼成物とをまとめて乾燥物と示す。
【0018】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得られた乾燥物の一部又は全部と、液体と、有機バインダーとを混練りして混練り物Aを製造する。
【0019】
混練りに使用される装置は特に限定されず、例えば、双腕型の攪拌羽根を備えるバッチ式の混練り機、軸回転往復式やセルフクリーニング型等の連続式の混練り機等が使用できる。しかしながら、混練り物の状態を確認しながら混練りを行うことができる点で、バッチ式の混練り機が好ましい。なお、工程(2)、後述する工程(3)において、混練りの終点は押出し成形可能な状態になるまで混合された時点とし、該終点は目視又は手触りによって判断される。短い混練り時間を経た後に押出し成形を実施すると、混練り物はぱさぱさな状態(乾燥物にまとまりがなく粉に近い状態)であり、押出し成形機より押出された際に形を維持することができない。一方、長い混練り時間を経た後に押出し成形を実施すると、混練り物はどろどろの状態(混練り物の付着性が高くスラリーに近い状態)であり、押出し成形機より押出された際に形を維持することができない。
【0020】
工程(2)で用いられる液体は、工程(1)で得られた乾燥物を濡らす機能を有するものであれば特に限定されず、例えば水や、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の炭素数が1〜4のアルコールが挙げられる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。この中でも取り扱い性の観点からは、水が好ましい。また、乾燥物の粒子が崩壊せず、酸化反応に有効な細孔を形成しやすい観点からは、エチルアルコール、プロピルアルコールが好ましい。なお、アルコールは高純度であることが好ましいが、少量の水を含んでいてもよい。また、本発明において液体とは常温、常圧の条件で液状の化合物を示す。
【0021】
工程(2)で用いられる液体の使用量は、乾燥物の種類や大きさ、液体の種類等により適宜選択されるが、混練りする乾燥物100質量部に対して10〜80質量部であることが好ましい。液体の使用量が10質量部以上であることにより、よりスムーズに押出し成形することができるため、乾燥物の粒子が潰れにくくなり、乾燥、焼成した触媒に大きな空隙、すなわち大きな細孔が形成され、目的生成物の選択率が向上する傾向がある。一方、液体の使用量が80質量部以下であることにより、成形時の付着性が低減して取り扱い性が向上する。また、触媒成形体がより密になるため触媒の強度が向上する傾向がある。液体の使用量は混練りする乾燥物100質量部に対して10〜50質量部であることがより好ましく、15〜45質量部であることがさらに好ましく、20〜40質量部であることが特に好ましい。
【0022】
工程(2)で用いられる有機バインダーとしては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール等の高分子化合物、αグルカン誘導体、βグルカン誘導体等を挙げることができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明においてαグルカン誘導体とは、グルコースから構成される多糖類のうちグルコースがα型の構造で結合したものを示し、α1−4グルカン、α1−6グルカン、α1−4/1−6グルカン等の誘導体が例示できる。このようなαグルカン誘導体としては、アミロース、グリコーゲン、アミロペクチン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン等を挙げることができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明においてβグルカン誘導体とは、グルコースから構成される多糖類のうちグルコースがβ型の構造で結合したものを示し、β1−4グルカン、β1−3グルカン、β1−6グルカン、β1−3/1−6グルカン等の誘導体が例示できる。このようなβグルカン誘導体としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カードラン、ラミナラン、パラミロン、カロース、パキマン、スクレログルカン等のβ1−3グルカン等を挙げることができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0025】
有機バインダーは未精製のまま用いてもよく、精製して用いてもよいが、不純物としての金属や強熱残分が含まれる場合触媒性能が低下することがあるため、これらの含有量はより少ない方が好ましい。
【0026】
工程(2)で用いられる有機バインダーの使用量は、乾燥物の種類や大きさ、液体の種類等により適宜選択されるが、混練りする乾燥物100質量部に対して0.05〜15質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。有機バインダーの使用量が0.05質量部以上であることにより成形性が向上する傾向がある。一方、有機バインダーの使用量が15質量部以下であることにより成形後の熱処理等による有機バインダーの除去処理が簡単になる。
【0027】
前記乾燥物、液体及び有機バインダーの混合方法は特に限定されない。具体的には、乾燥物と有機バインダーとを乾式混合したものと液体とを混合する方法、液体に有機バインダーを溶解又は分散させたものと乾燥物とを混合する方法等が例示できる。中でも乾燥物と有機バインダーとを乾式混合したものと液体とを混合する方法が好ましい。
【0028】
また、工程(2)において、従来公知のシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイド、チタニア、マグネシア、グラファイトやケイソウ土等の無機化合物、ガラス繊維、セラミックボールやステンレス鋼、セラミックファイバーや炭素繊維等の無機ファイバー等の不活性担体をさらに添加して混練りすることができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0029】
(工程(3))
工程(3)では、工程(1)で得られた乾燥物の残り又は他の乾燥物と、液体と、有機バインダーと、工程(2)で得られた混練り物Aとを混練りして混練り物Bを製造する。
【0030】
本発明における「乾燥物の残り」とは、工程(1)で調製した乾燥物のうち、工程(2)で一部使用した乾燥物の残りを示す。したがって、工程(2)で乾燥物の一部を使用した場合には、本工程では「乾燥物の残り」又は「他の乾燥物」を使用することができる。一方、工程(2)で乾燥物の全部を使用した場合には、本工程では「他の乾燥物」を使用する。なお、「乾燥物の残り」は、工程(2)で一部使用した乾燥物の残りの全てを使用する必要はなく、その一部を使用してもよい。
【0031】
本発明における「他の乾燥物」とは、別途、工程(1)にて同一の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを用いて製造された乾燥物、別途、工程(1)にて異なる原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを用いて製造された乾燥物、工程(1)とは異なる工程にて得られた同一原料の乾燥物、工程(1)とは異なる工程にて得られた異なる原料の乾燥物等が挙げられるが、別途、工程(1)にて同一の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを用いて製造された乾燥物が好ましい。本発明に係る方法では、一度混練りした混練り物Aを混合して再度混練りを行うことで、混練り時間を短縮し、乾燥物の粒子の崩壊を防ぐことができる。これにより、例えば、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造においては、プロピレン、イソブチレン、TBA又はMTBEの酸化反応において不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の選択性向上に有効な細孔を触媒内に形成することができ、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸収率を向上させることができる。また、不飽和カルボン酸の製造においては、不飽和アルデヒドの酸化反応において不飽和カルボン酸の選択性向上に有効な細孔を触媒内に形成することができ、不飽和カルボン酸収率を向上させることができる。なお、工程(3)における混練り物Aは、混練り物A単独でも押出し成形可能な状態まで混練りされた状態の粘土状物であることが好ましい。
【0032】
工程(3)における混練り物Aの使用量は、乾燥物の残り又は他の乾燥物100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。混練り物Aの使用量が1質量部以上であることにより、混練り時間が短くなり、乾燥物の粒子の崩壊が抑制され、有効な細孔を形成することができるため選択率が向上する。一方、混練り物Aの使用量が20質量部以下であることにより、生産性の低下や混練り物の均一性の低下を抑制することができる。なお、工程(3)で混練りする混練り物Aの使用量は、工程(2)で製造された混練り物Aの一部でもよく、全部でもよい。
【0033】
混練り物Aを混合するタイミングは特に限定されず、例えば乾燥物と液体と有機バインダーとを混合した後に加える方法や、予め混練り機内に混練り物Aを加えておく方法が挙げられる。すなわち工程(2)において混練り物Aを混練り機から排出する際、工程(3)の混練り時に混合する混練り物Aをそのまま残しておいても良い。
【0034】
なお、工程(3)で使用される液体、有機バインダーの種類及び使用量、混練り機、混合方法は工程(2)と同様とすることができる。また、工程(2)と工程(3)で使用される液体、有機バインダーは同じであっても異なっていてもよい。また、工程(3)は複数回行われてもよく、その場合2回目以降の工程(3)で用いられる混練り物Aとしては、1回以上前の工程(3)において製造された混練り物Bを用いることができる。
【0035】
(工程(4))
工程(4)では、工程(3)で得られた混練り物Bを押出し成形して触媒成形体を製造する。押出し成形には、例えばオーガー式押出し成形機、ピストン式押出し成形機等を用いることができる。触媒成形体の形状としては特に限定はなく、例えばリング状、円柱状、星型状等の任意の形状とすることができる。
【0036】
(工程(5))
工程(5)では、工程(4)で得られた触媒成形体を乾燥して触媒を得る。乾燥方法は特に限定されず、例えば一般的に知られている熱風乾燥、湿度乾燥、遠赤外線乾燥及びマイクロ波乾燥等の方法を任意に用いることができる。乾燥条件は、目的とする含水率とすることができれば適宜選択することができる。
【0037】
得られた触媒成形体の乾燥品は焼成することが好ましいが、押出し成形前に焼成している場合は、焼成は省略してもよい。焼成を省略した場合は触媒成形体の乾燥品が触媒であり、焼成した場合はその焼成品が触媒である。焼成方法は特に限定されず、処理方法及び条件を適宜選択することができる。焼成条件は、用いる原料化合物、触媒成分の組成、調製法等によって異なるが、空気等の酸素含有ガス流通下又は不活性ガス流通下で、200〜600℃、0.5時間以上が好ましい。ここで、不活性ガスとは、触媒の反応活性を低下させない気体のことを示し、具体的には、窒素、炭酸ガス、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。焼成処理は加熱装置を用いて行ってもよいが、触媒成形品を反応器に充填してその中で行ってもよい。
【0038】
[不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒]
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒は、前記触媒の製造方法によって製造される触媒であって、反応原料であるプロピレン、イソブチレン、TBA又はMTBEを分子状酸素により気相接触酸化して、それぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる。
【0039】
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒は、少なくともモリブデン及びビスマスを触媒成分として含むことが好ましい。触媒成分としては、モリブデン及びビスマスの他に、例えば、鉄、ケイ素、コバルト、ニッケル、クロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタル、亜鉛、リン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモン、チタン、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、タリウム等を含んでいてもよい。
【0040】
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒は、特に下記式(A)で表される組成を有するものが好ましい。
【0041】
Moa1Bib1Fec1d1X1e1Y1f1Z1g1Sih1i1 (A)
式(A)中、Mo、Bi、Fe、Si及びOは、それぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素及び酸素を表す。Aは、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。X1は、クロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タンタル及び亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。Y1は、リン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモン及びチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。Z1は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1及びi1は各元素の原子比率を表し、a1=12のときb1=0.01〜3、c1=0.01〜5、d1=1〜12、e1=0〜8、f1=0〜5、g1=0.001〜2、h1=0〜20であり、i1は前記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。
【0042】
[不飽和カルボン酸製造用触媒]
本発明に係る不飽和カルボン酸製造用触媒は、前記触媒の製造方法によって製造される触媒であって、反応原料である不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化して不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる。
【0043】
本発明に係る触媒を構成する触媒成分の組成は、目的とする不飽和カルボン酸製造用触媒の性能に応じて適宜選択できる。本発明に係る不飽和カルボン酸製造用触媒は、少なくともモリブデン及びリンを触媒成分として含有することが好ましい。特に、下記式(B)で表される組成を有する触媒であることが好ましい。
【0044】
a2Mob2c2Cud2X2e2Y2f2Z2g2h2 (B)
前記式(B)中、P、Mo、V、Cu及びOは、それぞれリン、モリブデン、バナジウム、銅及び酸素を表す。X2は、砒素、アンチモン及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。Y2は、ビスマス、ゲルマニウム、ジルコニウム、銀、セレン、ケイ素、タングステン、ホウ素、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タンタル、コバルト、マンガン、バリウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。Z2は、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2及びh2は各元素の原子比率を表し、b2=12のとき、a2=0.1〜3、c2=0.01〜3、d2=0.01〜2、e2は0〜3、f2=0〜3、g2=0.01〜3であり、h2は前記各元素の原子価を満足するのに必要な酸素の原子比率である。
【0045】
[不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造方法]
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る方法により製造された不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の存在下で、プロピレン、イソブチレン、TBA又はMTBEを分子状酸素により気相接触酸化して、それぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造する方法である。不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸とは、具体的には、反応原料がプロピレンの場合にはアクロレイン及びアクリル酸を指し、それ以外の反応原料の場合にはメタクロレイン及びメタクリル酸を指す。
【0046】
気相接触酸化反応は固定床で行うことができる。触媒層は特に限定されず、触媒のみの無希釈層でも、不活性担体を含んだ希釈層でもよく、単一層でも複数の層からなる混合層であってもよい。
【0047】
気相接触酸化反応にはプロピレン、イソブチレン、TBA又はMTBEと分子状酸素とを含む原料ガスを用いることが好ましい。原料ガス中の原料濃度は特に限定されないが、1〜20容量%が好ましい。原料は一種を用いても、二種を組み合わせて用いてもよい。分子状酸素源としては空気を用いることが経済的であるが、必要であれば純酸素で富化した空気等も用いることができる。原料ガス中の原料と酸素とのモル比(容量比)は1:0.5〜1:3の範囲が好ましい。
【0048】
原料ガスは、原料と分子状酸素以外に、水(水蒸気)を含むことが好ましい。原料ガス中の水蒸気の濃度は、1〜45容量%が好ましい。また、原料ガスは窒素、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈して用いることが好ましい。反応圧力は大気圧から200kPaが好ましい。反応温度は200〜450℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。接触時間は1.5〜15秒が好ましく、2〜10秒がより好ましい。
【0049】
[不飽和カルボン酸の製造方法]
本発明に係るメタクリル酸の製造方法は、本発明に係る方法により製造された不飽和カルボン酸製造用触媒の存在下で、不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化して不飽和カルボン酸を製造する方法である。
【0050】
気相接触酸化反応は固定床で行うことができる。触媒層は特に限定されず、触媒のみの無希釈層でも、不活性担体を含んだ希釈層でもよく、単一層でも複数の層からなる混合層であってもよい。
【0051】
原料の不飽和アルデヒドとしては、アクロレイン、メタクロレイン等を用いることができる。これらは一種のみを用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
気相接触酸化反応には不飽和アルデヒドと分子状酸素とを含む原料ガスを用いることが好ましい。原料ガス中の不飽和アルデヒド濃度は、広い範囲で変えることができるが、1容量%以上が好ましく、3容量%以上がより好ましい。また、原料ガス中の不飽和アルデヒド濃度は、20容量%以下が好ましく、10容量%以下がより好ましい。原料ガス中の分子状酸素濃度は、不飽和アルデヒド1モルに対して0.4モル以上が好ましく、0.5モル以上がより好ましい。また、原料ガス中の分子状酸素濃度は、不飽和アルデヒド1モルに対して4モル以下が好ましく、3モル以下がより好ましい。分子状酸素源としては空気を用いることが経済的であるが、必要ならば純酸素で富化した空気等も用いることができる。
【0053】
原料ガスは、不飽和アルデヒドと分子状酸素以外に、水(水蒸気)を含むことが好ましい。水の存在下で反応を行うことで、より高い収率で不飽和カルボン酸が得られる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1容量%以上が好ましく、1容量%以上がより好ましい。また、原料ガス中の水蒸気の濃度は、50容量%以下が好ましく、40容量%以下がより好ましい。原料ガスは低級飽和アルデヒド等の不純物を少量含んでいてもよいが、その量はできるだけ少ないことが好ましい。また、原料ガスは窒素、炭酸ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。
【0054】
気相接触酸化反応の反応圧力は、常圧(大気圧)から5気圧が好ましい。反応温度は、230℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。また、反応温度は、450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。原料ガスの流量は特に限定されず、適切な接触時間になるように適宜設定することができる。接触時間は1.5秒以上が好ましく、2秒以上がより好ましい。また、接触時間は15秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。下記の実施例及び比較例中の「部」は質量部である。
【0056】
原料ガス及び生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。なお、実施例1〜7、比較例1〜5において、イソブチレンの反応率、生成するメタクロレイン又はメタクリル酸の選択率、生成するメタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率(以下、単に「合計収率」ともいう。)は次式により算出した。なお、実施例1〜7、比較例1〜5では原料がイソブチレンの場合のみ示しているが、TBAを原料として用いた場合においても、反応器の入口部分で速やかにイソブチレンに脱水され、イソブチレンを原料として用いた場合と同様の結果が得られる。
イソブチレンの反応率(%) =A/B×100
メタクロレインの選択率(%) =C/A×100
メタクリル酸の選択率(%) =D/A×100
合計収率(%) =(C+D)/B×100
ここで、Aは反応したイソブチレンのモル数、Bは供給したイソブチレンのモル数、Cは生成したメタクロレインのモル数、Dは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0057】
また、実施例8〜11、比較例6において、メタクロレインの反応率、生成するメタクリル酸の選択率及び収率は、以下のように定義される。
メタクロレインの反応率(%)=(F/E)×100
メタクリル酸の選択率(%) =(G/F)×100
メタクリル酸の収率(%) =(G/E)×100
ここで、Eは供給したメタクロレインのモル数、Fは反応したメタクロレインのモル数、Gは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0058】
なお、実施例及び比較例中の混練り時間とは、液体の添加開始から混練り機の作動停止までの全混練り時間である。
【0059】
(実施例1)
純水1000部にパラモリブデン酸アンモニウム500部、パラタングステン酸アンモニウム12.4部、硝酸カリウム2.3部、三酸化アンチモン27.5部および三酸化ビスマス66.0部を加え加熱攪拌した(A液)。別に純水1000部に硝酸第二鉄114.4部、硝酸コバルト274.7部および硝酸亜鉛35.1部を順次加え溶解した(B液)。A液にB液を加えて水性スラリーとした後、この水性スラリーをスプレー乾燥機を用いて乾燥し、平均粒径60μmの乾燥球状粒子とした。この乾燥球状粒子を300℃で2時間焼成を行い、乾燥物とした。
【0060】
このようにして得られた乾燥物100部に対してヒドロキシメチルセルロース4部と純水30部とを混合し、双腕型のシグマブレードを備えたバッチ式の混練り機で粘土状になるまで混練りした。1回目の混練り時間は80分であった。これにより混練り物Aを得た。
【0061】
この混練り物Aを回収し、混練り機を洗浄した後、前記乾燥物100部に対してヒドロキシプロピルメチルセルロース4部と、純水30部と、得られた混練り物A1部とを加え粘土状になるまで混練りした。2回目の混練り時間は56分であった。これにより混練り物Bを得た。
【0062】
次いで、混練り物Bをピストン式押出し成形機を用いて押出し成形し、外径4.5mm、平均長さ4.5mmの円柱状の触媒成形体を得た。
【0063】
この触媒成形体を110℃熱風乾燥機を用いて乾燥を行い、触媒成形体の乾燥品を得た。そして、この触媒成形体の乾燥品を480℃で3時間再度焼成を行い、触媒を得た。
【0064】
得られた触媒の酸素以外の元素組成は次の通りであった。なお、元素組成は触媒原料の仕込み量から求めた。
【0065】
Mo120.2Bi1.0Fe1.2Sb0.8Co4.0Zn0.50.1
この触媒をステンレス製反応管に充填し、イソブチレン5容量%、酸素12容量%、水蒸気10容量%および窒素73容量%の原料ガスを用い、常圧下、接触時間3.6秒、反応温度340℃で反応させた。生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析して、イソブチレンの反応率、メタクロレインの選択率、メタクリル酸の選択率、および合計収率を求めた。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
実施例1において、混練り物Aの混合量を乾燥物100部に対して5部に変更し、2回目の混練り時間を50分とした以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
実施例1において、混練り物Aの混合量を乾燥物100部に対して10部に変更し、2回目の混練り時間を43分とした以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4)
実施例1において、混練り物Aの混合量を乾燥物100部に対して20部に変更し、2回目の混練り時間を40分とした以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
実施例1において、2回目の混練りで混練り物Aを混合せず、2回目の混練り時間を80分とした。それ以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
実施例1において、2回目の混練りで混練り物Aを混合せず、2回目の混練り時間を56分とした。それ以外は実施例1と同様にして触媒を製造したが、混練り物はぱさぱさな状態であり、ピストン式押出し成形機から押出された成形品は形を維持することができなかった。このため、成形された触媒を製造することができず、イソブチレンの気相接触酸化反応を行うことができなかった。
【0071】
(実施例5)
実施例1において、乾燥物100部に対して混合するヒドロキシメチルセルロースの量を6部に変更し、1回目の混練り時間を85分、2回目の混練り時間を60分とした以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
実施例5において、2回目の混練りで混練り物Aを混合せず、2回目の混練り時間を85分とした。それ以外は実施例5と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
実施例1において、乾燥物100部に対して混合する純水の量を28部に変更し、1回目の混練り時間を95分、2回目の混練り時間を76分とした以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例4)
実施例6において、2回目の混練りで混練り物Aを混合せず、2回目の混練り時間を95分とした。それ以外は実施例6と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例7)
実施例1において、ヒドロキシメチルセルロースをポリビニルアルコールに変更し、1回目の混練り時間を90分、2回目の混練り時間を65分とした以外は実施例1と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例5)
実施例7において、2回目の混練りで混練り物Aを混合せず、2回目の混練り時間を90分とした。それ以外は実施例7と同様にして触媒を製造し、イソブチレンの気相接触酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
(実施例8)
純水4000部に三酸化モリブデン1000部、メタバナジン酸アンモニウム34部、85質量%リン酸水溶液80部及び硝酸銅14部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。40℃まで冷却後回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、重炭酸セシウム135部を純水200部に溶解した溶液を添加して15分間攪拌した。次いで炭酸アンモニウム107部を純水200部に溶解した溶液を添加し、更に20分間攪拌した。以上のようにして得られた触媒成分の原料化合物を含有する混合スラリーを、並流式スプレー乾燥機を用いて乾燥機入口温度300℃、スラリー噴霧用回転円盤18,000rpmの条件で乾燥した。
【0079】
このようにして得られた乾燥物100部に対してヒドロキシプロピルメチルセルロース4部とエチルアルコール25部とを混合し、双腕型のシグマブレードを備えたバッチ式の混練り機で粘土状になるまで混練りした。1回目の混練り時間は60分であった。これにより混練り物Aを得た。
【0080】
この混練り物Aを回収し、混練り機を洗浄した後、前記乾燥物100部に対してヒドロキシプロピルメチルセルロース4部と、エチルアルコール25部と、得られた混練り物A1部とを加え粘土状になるまで混練りした。2回目の混練り時間は41分であった。これにより混練り物Bを得た。
【0081】
次いで、混練り物Bをピストン式押出し成形機を用いて押出し成形し、外径5mm、平均長さ4.5mmの円柱状の触媒成形体を得た。
【0082】
この触媒成形体を90℃で12時間乾燥し、次いで空気流通下に380℃で15時間焼成することで触媒を得た。得られた触媒の酸素以外の元素組成は、次の通りであった。なお、下記元素組成は各元素の原料仕込み量から算出した値である。
【0083】
Mo120.51.2Cu0.1Cs1.2
この触媒を反応管に充填し、メタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気10容量%、窒素75容量%の原料ガスを、反応温度280℃、接触時間3.5秒で通じてメタクロレインの気相接触酸化反応を行った。生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析することでメタクロレインの反応率、メタクリル酸の選択率及びメタクリル酸の収率を求めた。結果を表2に示す。
【0084】
(実施例9)
実施例8において、混練り物Aの混合量を乾燥物100部に対して5部に変更し、2回目の混練り時間を32分とした以外は実施例8と同様にして触媒を製造し、メタクロレインの気相接触酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0085】
(実施例10)
実施例8において、混練り物Aの混合量を乾燥物100部に対して10部に変更し、2回目の混練り時間を26分とした以外は実施例8と同様にして触媒を製造し、メタクロレインの気相接触酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0086】
(実施例11)
実施例8において、混練り物Aの混合量を乾燥物100部に対して20部に変更し、2回目の混練り時間を25分とした以外は実施例8と同様にして触媒を製造し、メタクロレインの気相接触酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0087】
(比較例6)
実施例8において、2回目の混練りで混練り物Aを混合せず、2回目の混練り時間を60分とした。それ以外は実施例8と同様にして触媒を製造し、メタクロレインの気相接触酸化反応を行った。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)触媒成分の原料化合物を含む混合溶液又はスラリーを乾燥して乾燥物を製造する工程と、
(2)前記乾燥物の一部又は全部と液体と有機バインダーとを混練りして混練り物Aを製造する工程と、
(3)前記乾燥物の残り又は他の乾燥物と液体と有機バインダーと前記混練り物Aとを混練りして混練り物Bを製造する工程と、
(4)前記混練り物Bを押出し成形して触媒成形体を製造する工程と、
(5)前記触媒成形体を乾燥する工程と、を含む触媒の製造方法。
【請求項2】
前記触媒が、プロピレン、イソブチレン、第三級ブチルアルコール又はメチル第三級ブチルエーテルを分子状酸素により気相接触酸化して、それぞれに対応する不飽和アルデヒドや不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる、少なくともモリブデン及びビスマスを触媒成分として含む不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒である、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記触媒が、不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化して不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる、モリブデン及びリンを触媒成分として含む不飽和カルボン酸製造用触媒である、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)において、前記混練り物Aの使用量が前記工程(3)で混練りする前記乾燥物の残り又は他の乾燥物100質量部に対して1〜20質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)及び(3)における前記液体が水及び炭素数1〜4のアルコールからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記工程(2)及び(3)における前記有機バインダーが、ポリビニルアルコール、αグルカン誘導体及びβグルカン誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)において、スプレー乾燥機を用いて前記混合溶液又は前記スラリーを乾燥する請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法により、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒を製造する工程と、該触媒の存在下でプロピレン、イソブチレン、第三級ブチルアルコール又はメチル第三級ブチルエーテルを分子状酸素により気相接触酸化する工程とを含む不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法により、不飽和カルボン酸製造用触媒を製造する工程と、該触媒の存在下で不飽和アルデヒドを分子状酸素により気相接触酸化する工程とを含む不飽和カルボン酸の製造方法。

【公開番号】特開2012−206107(P2012−206107A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221784(P2011−221784)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】