説明

触媒コンバータ装置

【課題】排気中に含まれるカーボンに起因する触媒担体への通電効率の低下を抑制可能な触媒コンバータ装置を得る。
【解決手段】触媒担体14の外周面側に配置される内側繊維層30と、ケース筒体28の内周面側に配置される外側繊維層34との間に、絶縁性を有する中間筒層32が備えられる。中間筒層32には上流側に突出する上流側突出部32Uが設けられる。上流側突出部32Uの内側には、ケース筒体28の中心に向けて張り出す上流側傾斜部材46が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に設けられる触媒コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で生じた排気を浄化するために排気管に設けられる触媒コンバータ装置では、たとえば特許文献1に記載されているように、触媒を担持する金属触媒担体を通電して昇温させ、十分な触媒効果が得られるようにしたものがある。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の構造では、シェル(ケース)内に金属製触媒担体が嵌挿されており、さらに、金属製触媒担体の導電部材とシェルの間に、緩衝機能を有するマット部材が嵌挿保持されている。
【0004】
このような構造の触媒コンバータ装置において、排気中に含まれるカーボンが金属製触媒担体やマット部材等の上流側に付着すると、金属製触媒担体が収容された筒体(金属製シェル)と触媒担体との間の電気抵抗がカーボンによって低下してしまい、触媒担体への通電効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−253491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、排気中に含まれるカーボンに起因する触媒担体への通電効率の低下を抑制可能な触媒コンバータ装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、筒状に形成されて内部に前記触媒担体が収容されると共に排気管に取り付けられる筒体と、前記触媒担体の外周面側に配置される内側弾性部材と、前記筒体の内周面側に配置される外側弾性部材と、絶縁性を有しこれらの内側弾性部材と外側弾性部材との間に配置される中間部材と、を備え、内側弾性部材及び外側弾性部材の弾性により触媒担体を筒体内に保持するとともに触媒担体と筒体とを電気的に絶縁する保持部材と、前記中間部材に設けられ、前記内側弾性層の上流側端部よりも上流側に突出する上流側突出部と、前記上流側突出部に設けられ、前記筒体の中心に向けて張り出す上流側張出部と、を有する。
【0008】
この触媒コンバータ装置では、触媒担体が通電され加熱昇温されると、担持された触媒による浄化効果をより早期に発揮させることができる。また、触媒担体は保持部材及び筒体を介して排気管に取り付けられており、保持部材の中間部材は絶縁性を有しているので、保持部材を解して触媒担体と筒体とが短絡されることはない。
【0009】
排気中には、内燃機関の燃焼で生じたカーボンが含まれることがあり、このカーボンが触媒担体や筒体に付着すると、筒体と触媒担体との電気抵抗が低下して触媒担体への通電効率が低下することがある。本発明では、中間部材の上流側突出部に上流側張出部が設けられている。この上流側傾斜部は、筒体の中心に向かって張り出すことで、排気の流れに対向している。このため、このように対向することなく排気の流れ方向と平行になっている部材と比較して、排気が直接的に当たり、排気熱によって昇温されやすい。これにより、上流側張出部にカーボンが付着しても、カーボンの燃料を促進することができる。
【0010】
また、上流側張出部は、筒体の中心に向かって張り出しており、排気の流れに対する絞りとなっている。このため、上流側張出部の箇所では排気圧力が高くなるので、昇温がより促進される。
【0011】
しかも、上流側突出部が設けられた中間部材は、保持部材を構成する内側弾性部材と外側弾性部材との間に配置されている。これにより、上流側突出部と筒体の間には、外側弾性部材の厚み分の隙間が生じている。上流側突出部は筒体に接触していないので、上流側張出部から上流側突出部を経て筒体への熱の逃げ(放熱)を抑制でき、上流側張出部を効果的に昇温できる。
【0012】
このようにして、上流側張出部に付着したカーボンの燃料を促進することで、触媒担体や筒体へ付着したカーボンによって筒体と触媒担体との電気抵抗が低下することを抑制できる。これにより、電気が確実に触媒担体を流れるようになるので、触媒担体の通電効率の低下を抑制できる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記上流側張出部が、前記筒体の中心に向かうにしたがって前記流れ方向の下流側に傾斜する上流側傾斜部である。
【0014】
このように、上流側張出部を、上流側傾斜部として傾斜させることで、傾斜していない構成(排気の流れ方向に対し垂直になっている)と比較して、排気が当たる面積を広く確保することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記中間部材に設けられ、前記内側弾性層の下流側端部よりも下流側に突出する下流側突出部と、前記下流側突出部に設けられ、前記筒体の中心に向けて張り出す下流側張出部と、を有する。
【0016】
したがって、下流側張出部も排気の流れに対し、斜めに対向しているため、排気が直接的に当たり、排気熱によって昇温されやすい。しかも、排気の流れ方向下流側では、下流側張出部の内径が筒体の中心に向かって小さくなっており、排気圧力が高くなるため昇温がより促進される。これにより、下流側張出部に付着したカーボンの燃料を促進することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記上流側張出部及び前記下流側張出部の表面の少なくとも一部に塗布され、付着したカーボンの燃焼を促進する燃焼促進部材、を有する。
【0018】
燃料促進部材が塗布されて部分では、カーボンの燃焼がさらに促進されるので、カーボンによる筒体と触媒担体との電気抵抗の低下をより効果的に抑制できる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、。
【0020】
保持部材に形成された挿通孔には通電部材の一部が挿通され、さらに通電部材は触媒担体に接触配置されている。この通電部材によって、触媒担体に通電することで、触媒担体を昇温させることができる。
【0021】
中間部材には、挿入孔部内に位置する部位に絞り部が設けられている。絞り部は触媒担体に接近しており、中間部材の内径が部分的に縮径されている。排気中に含まれる水蒸気が凝縮されて凝縮水(液体)となり内側弾性部材内に浸入しても、挿通孔部内に達することは絞り部によって抑制される。触媒担体に接触している内側弾性部材に水分が留まることになるので、触媒担体の熱を内側弾性部材内の水分に作用させて、この水分の蒸発を促進することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成としたので、排気中に含まれるカーボンに起因する触媒担体への通電効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を部分的に拡大して示す断面図であり、(A)はカーボンが付着した状態、(B)はカーボンが燃焼された状態である。
【図3】本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の触媒コンバータ装置を排気管への取付状態において中心線を含む断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が排気管10への装着状態で示されている。
【0025】
触媒コンバータ装置12は、導電性及び剛性を有する材料によって形成された触媒担体14を有している。触媒担体14を構成する材料としては、導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に導電性セラミックとしている。
【0026】
触媒担体14は、ハニカム状または波状等とした薄板を渦巻状あるは同心円状等に構成することで材料の表面積が増大された円柱状あるいは円筒状に形成されており、表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着された状態で担持されている。
【0027】
触媒は、排気管10内を流れる排気(流れ方向を矢印F1で示す)中の物質(HC等)を浄化する作用を有している。なお、触媒担体14の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状や波状に限定されるものではない。
【0028】
触媒担体14には2枚の電極16A、16Bが触媒担体14に対し対称の位置(図1では上下)に貼着されている。電極16A、16Bにはそれぞれ、金属等の導電性を有する材料で構成された導線部材20A、20Bを介して端子18A、18Bが接続されている。端子18A、18Bはいずれも、中心の電極棒22の周囲を絶縁層24が覆う構造とされている。電極棒22の外側端部(導線部材20A、20Bと反対側の端部)は、触媒担体14への給電用のケーブルが接続される接続部22Cとされている。電極棒22、導線部材20A、20B、電極16A、16Bは、本発明の通電部材を構成している。
【0029】
絶縁層24は電気絶縁性を有する材料によって円筒状に形成されている。絶縁層24は、電極棒22の外周面を全周にわたって覆うことで、電極棒22から、ケース筒体28のカバー部36への電気の流れが阻止されている。
【0030】
導線部材20A、20Bは、たとえばジグザグ状に、あるいは螺旋状に形成されて可撓性を有するようになっており、後述するようにケース筒体28と触媒担体14とが相対移動した場合に、この相対移動を吸収することが可能とされている。そして、端子18A、18Bから導線部材20A、20B及び電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで、触媒担体14を加熱できる。この加熱により、触媒担体14に担持された触媒を昇温させることで、触媒の浄化作用をエンジン始動直後等であっても早期に発揮させることができるようになっている。
【0031】
触媒担体14は、外周に配置された保持マット26(本発明に係る保持部材)によって、ケース筒体28(本発明に係る筒体)の内部に収容された状態で保持されている。換言すれば、略円筒状のケース筒体28の内部に、触媒担体14が収容されると共に、ケース筒体28と触媒担体14との間に配置された保持マット26により、触媒担体14がケース筒体28の内部に、同心(中心線CL)で保持されている。そして、絶縁性を有する保持マット26が触媒担体14とケース筒体28との間に配置されているので、触媒担体14からケース筒体28への電気の流れが阻止されている。
【0032】
ケース筒体28は、ステンレス等の金属で略円筒状に成形されており、流れ方向上流側において、下流へ向かって径が漸増された上流側テーパー部28Aと、流れ方向中間部分において上流側テーパー部28Aから連続し、排気管10よりも大径の大径部28B、及び長手方向下流側において、大径部28Bから連続すると共に下流へ向かって径が漸減された下流側テーパー部28Cを有している。
【0033】
排気管10の前側パイプ10Aの下流側端部は上流側テーパー部28Aの上流側端部に、排気管10の後側パイプ10Bの上流側端部が下流側テーパー部28Cの下流側端部にそれぞれ接続されており、排気の流路断面積が、このケース筒体28の部分(特に大径部28B)では局所的に拡大されていることになる。
【0034】
大径部28Bには、端子18A、18Bを収容可能な略筒状のカバー部36が設けられている。このカバー部36の内部に端子18A、18Bが挿通された状態で、カバー部36の開口部分が蓋板38で閉塞されている。
【0035】
触媒担体14の外周に配置された保持マット26は、内側から順に、内側繊維層30、中間筒層32、外側繊維層34の三層構造とされた略円筒状に形成されている。そして、保持マット26の外周には、ケース筒体28の大径部28Bが位置している。内側繊維層30が本発明の内側弾性部材に、中間筒層32が本発明の中間部材に、外側繊維層34が本発明の外側弾性部材にそれぞれ対応する。
【0036】
内側繊維層30の内周面は触媒担体14の外周面に接触し、外側繊維層34の外周面はケース筒体28の内周面に接触している。これらの内側繊維層30及び外側繊維層34は、たとえばアルミナマットや樹脂マット、セラミックウール等により、絶縁性と所定の弾性を有する繊維状に形成されている。これにより、保持マット26自体も所定の弾性を有することになり、保持マット26は、触媒担体14を略円筒状のケース筒体28の内部において、これらが同心(中心線CL)となるように保持している。
【0037】
これに対し、中間筒層32は、本実施形態では、少なくとも表面が絶縁性を有するように構成され、全体として円筒状に形成されている。たとえば、材料自体が絶縁性を有するもの(樹脂等)であってもよいし、円筒状の金属筒の表面に絶縁性材料をコーティングしたものであってもよい。いずれにしても、固体材料により形状安定性を有する中間筒層32の内周側及び外周側に、絶縁性及び弾性を有する内側繊維層30及び外側繊維層34が配置されて、触媒担体14がケース筒体28の内部に安定的に保持されている。但し、本実施形態では、中間筒層32によって、保持マット26の絶縁性が確保されているので、内側繊維層30及び外側繊維層34は、必ずしも絶縁性は必要とされない。
【0038】
特に、金属製のケース筒体28と導電性セラミック製の触媒担体14とでは線膨張係数が異なっているため、排気管10内を通過する排気の熱や、触媒担体14への通電加熱による膨張量が異なる。この膨張量の違いは、保持マット26の弾性により吸収される。さらに、排気管10を通じた振動の入力に対しても、保持マット26が緩衝作用を発揮しつつケース筒体28と触媒担体14との位置ズレを吸収する。
【0039】
しかも、全体として絶縁性を有する保持マット26が触媒担体14とケース筒体28との間に配置されているので、触媒担体14からケース筒体28への電気の流れが阻止されることになる。なお、内側繊維層30及び外側繊維層34を構成する材料としては、インタラムマットやムライト等も適用可能である。
【0040】
ケース筒体28の大径部28B、外側繊維層34、中間筒層32及び内側繊維層30には、端子18A、18Bが貫通される貫通孔が形成されており、端子18A、18Bとは接触しないようになっている。そして、貫通孔の内側が、挿通孔部42となっている。したがって、挿通孔部42内に、端子18A、18Bの一部と、導線部材20A,20B及び電極16A、16Bが収容されている。
【0041】
本実施形態では、内側繊維層30及び外側繊維層34は、触媒担体14と軸方向(排気の流れ方向)で同じ長さに形成されている。そして、内側繊維層30の上流側端面30A及び下流側端面30Bはそれぞれ、触媒担体14の上流側端面14A及び下流側端面14Bと軸方向(排気の流れ方向)で同位置とされている。同様に、外側繊維層34の上流側端面34A及び下流側端面34Bも、それぞれ、触媒担体14の上流側端面14A及び下流側端面14Bと軸方向で同位置とされている。
【0042】
これに対し、中間筒層32は、触媒担体14、内側繊維層30及び外側繊維層34よりも軸方向に長く形成されている。そして、中間筒層32には、内側繊維層30よりも上流側に突出する上流側突出部32Uが設けられている。さらに、中間筒層32には、内側繊維層30よりも下流側に突出する下流側突出部32Lが設けられている。上流側突出部32U及び下流側突出部32Lは、ケース筒体28とは非接触となっており、それぞれ、隙間部44U、44Lが構成されている。
【0043】
特に本実施形態では、上流側突出部32U及び下流側突出部32Lを、ケース筒体28の大径部28Bの内周面との間で径方向に一定の間隔をあけるように、周方向で全周にわたって形成している。したがって、隙間部44U、44Lも、触媒担体14の周方向において全周に構成されている。
【0044】
中間筒層32の上流側突出部32Uの内側には、上流側傾斜部材46が設けられている。上流側傾斜部材46は、全体として、略円錐台状(厳密には、円錐台から上底部分及び下底部分が取り除かれ、側面部分のみとなった形状)に形成されている。上流側傾斜部材46は、大径部46Lから小径部46Sに向かう方向が、排気の流れ方向(矢印F1方向)となる向きで配置されており、大径部46Lの部分で上流側突出部32Uに取り付けられている。したがって、上流側傾斜部材46は、全体として、排気の流れ方向(矢印F1方向)に対し傾斜している。特に、上流側傾斜部材46の内周面46Nが、矢印F1方向に流れる排気に対し斜めに対向しており、排気が内周面46Nに直接的に当たる。また、排気の流路の実質的な断面積が、上流側傾斜部材46の大径部46Lから小径部46Sに向かって漸減されていることになる。上流側傾斜部材46は、本発明の上流側張出部の一例である。
【0045】
中間筒層32の下流側突出部32Lの内側には、下流側傾斜部材48が設けられている。下流側傾斜部材48も、全体として、上流側傾斜部材46と同様の略円錐台状で、大径部48Lから小径部48Sに向かう方向が、排気の流れ方向(矢印F1方向)となる向きで配置されており、大径部46Lの部分で下流側突出部32Lに取り付けられている。下流側傾斜部材48の内周面48Nは、矢印F1方向に流れる排気に対し斜めに対向しており、排気が内周面48Nに直接的に当たる(外周面48Gには直接的に当たらない)。また、排気の流路の実質的な断面積が、下流側傾斜部材48の大径部48Lから小径部48Sに向かって漸減されていることになる。下流側傾斜部材48は、本発明の下流側張出部の一例である。
【0046】
なお、中間筒層32には、挿通孔部42内にわずかに延出された延出部50が形成されている。
【0047】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0048】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、そのケース筒体28が排気管10の途中(前側パイプ10Aと後側パイプ10Bの間)に、排気管10と同心になるように取り付けられ、触媒担体14の内部を排気が通過する。このとき、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の物質(HC等)が浄化される。
【0049】
本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B、導線部材20A,20B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより早期に発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。
【0050】
排気中にはカーボンが含まれており、このカーボンによって触媒担体14とケース筒体28とが電気的に短絡されてしまうと触媒担体14の通電効率が低下することがある。そしてこれにより、触媒担体14に担持された触媒の加熱効率も低下する懸念がある。
【0051】
ここで、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、触媒担体14よりも上流側に、上流側傾斜部材46が配置されている。上流側傾斜部材46の内周面46Nは、矢印F1方向に流れる排気に対し斜めに対向しており、排気が内周面46Nに直接的に当たる。すなわち、排気中のカーボンの一部を、上流側傾斜部材46の内周面46Nに付着させることで、触媒担体14に到達するカーボンの量を少なくすることができる。なお、上流側傾斜部材46の外周面46Gには、排気が直接的には当たらないので、カーボンの付着量は内周面46Nと比較して少なくなる。
【0052】
このように、上流側傾斜部材46の内周面46Nには排気が直接的に当たるため、上流側傾斜部材46は、排気の熱が伝わりやすい構造である。しかも、上流側傾斜部材46により、排気の流路の断面積が、上流側傾斜部材46の大径部46Lから小径部46Sに向かって漸減されており、上流側傾斜部材46の近傍では、排気の圧力が高くなる。
【0053】
これらにより、上流側傾斜部材46では、排気から作用する熱によって温度が上昇しやくすくなり、上流側傾斜部材46に付着したカーボンの燃料を促進することができる。たとえば、図2(A)に示すように、上流側傾斜部材46及びその近傍にカーボンが付着するようなことがあっても、このカーボンの燃焼が促進され、図2(B)に示すように、上流側傾斜部材46の近傍では、カーボンが存在しなくなるので、カーボンに起因する触媒担体14とケース筒体28との短絡を抑制できる。
【0054】
なお、上流側傾斜部材46の外周面46Gには、上記したようにカーボンの付着量は少ないが、この外周面46Gにも、内周面46Nの熱が上流側傾斜部材46の内部を伝わる。このため、外周面46Gに付着したカーボンの燃焼も促進できる。
【0055】
さらに、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、触媒担体14より下流側に下流側傾斜部材48が配置されている。触媒担体14を通過した排気中のカーボンが下流側傾斜部材48に付着していても、上流側傾斜部材46と同様に下流側傾斜部材48の昇温が促進される。付着したカーボンの燃料も促進されるので、下流側傾斜部材48の近傍における、カーボンに起因する触媒担体14とケース筒体28との短絡を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、中間筒層32の上流側突出部32U及び下流側突出部32Lがケース筒体28と非接触になっており、ケース筒体28と中間筒層32との間に隙間部44U、44Lが構成されている。ここで、中間筒層32がケース筒体28と接触している構成を想定すると、この構成では、中間筒層32の熱がケース筒体28を経て外部に逃げやすい。しかし、本実施形態では、中間筒層32からケース筒体28へ熱が直接的に伝わらないため、中間筒層32の温度上昇をより効果的に促進できる。これによっても、上流側傾斜部材46及び下流側傾斜部材48の近傍におけるカーボン燃料も促進できる。
【0057】
図3には、本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置52が示されている。第2実施形態の触媒コンバータ装置52では、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と略同一構成とされているが、上流側傾斜部材46の内周面46N及び下流側傾斜部材48の内周面48Nに、燃焼促進部材54が塗布されている。これ以外は、第2実施形態の触媒コンバータ装置52は、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と同一である。
【0058】
したがって、第2実施形態の触媒コンバータ装置52においても、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と略同様の作用効果を奏するが、特に、上流側傾斜部材46及び下流側傾斜部材48に付着したカーボンの燃料温度が、燃焼促進部材54によって低下する。これにより、カーボンの燃焼をさらに促進することができる。
【0059】
第2実施形態において、燃焼促進部材54の具体的な材料としては、たとえばプラチナはバナジウム等、カーボンの燃料温度を低下させる効果を有する貴金属を挙げることができる。
【0060】
図4には、本発明の第3実施形態の触媒コンバータ装置62が示されている。第3実施形態においても、第1実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
第3実施形態の触媒コンバータ装置62では、中間筒層32の上流側突出部32Uを変形させることで(換言すれば、中間筒層32自体に)、排気の流れ方向上流側に、上流側傾斜部66が形成されている。上流側傾斜部66の小径部66Sは、中間筒層32の円筒状部32P(径が一定の部分)よりも小径とされており、この小径部66Sと円筒状部32Pとの間が、接続部66Cで接続されている。上流側傾斜部66の内周面66Nが、矢印F1方向に流れる排気に対し斜めに対向している。
【0062】
また、この触媒コンバータ装置62では、中間筒層32の下流側突出部32Lを変形させることで、下流側傾斜部68が形成されている。下流側傾斜部68の大径部68Lが排気の流れ方向上流側、小径部68Sが下流側となる向きとされており、内周面68Nが排気の流れに対し斜めに対向している。
【0063】
なお、第3実施形態では、下流側傾斜部68よりもさらに下流側にも中間筒層32が延長されており、延長部68Eが構成されている。これにより、第3実施形態に係る中間筒層32として、排気の流れ方向(図4における左右方向)で対称な形状とされている。
【0064】
このような構成とされた第3実施形態の触媒コンバータ装置62においても、上流側傾斜部66には排気が直接的に当たる。また、上流側傾斜部66の小径部66Sでは、排気流路の断面積が狭くなっている。これにより、上流側傾斜部66を効果的に昇温させて、内周面46Nに付着したカーボンの燃焼を促進することができる。
【0065】
また、上流側傾斜部66の外周面66Gにはカーボンが付着しづらいが、外周面66Gに付着したカーボンも、内周面66Nから上流側傾斜部66の内部を伝わった熱により昇温されるので、外周面66Gに付着したカーボンの燃焼も促進できる。
【0066】
さらに、下流側傾斜部68においても、上流側傾斜部66と同様に昇温が促進される。内周面68Nに付着したカーボンの燃料が促進されると共に、外周面68Gにも熱が伝わり、外周面68Gに付着したカーボンの燃焼も促進される
【0067】
また、第3実施形態では、中間筒層32の上流側に上流側傾斜部66及び接続部66Cを設け、下流側に下流側傾斜部68及び延長部68Eを設けたことで、中間筒層32においてカーボンが付着可能な面積が広くなっている。このため、中間筒層32(特に上流側傾斜部66や下流側傾斜部68)に付着したカーボンの厚み(堆積方向の高さ)を低くすることも可能である。
【0068】
図5には、本発明の第4実施形態の触媒コンバータ装置72が示されている。第4実施形態の触媒コンバータ装置72では、第3実施形態の触媒コンバータ装置62と略同一の構成とされているが、中間筒層32に、絞り部74が設けられている点が異なっている。
【0069】
すなわち、第4実施形態の触媒コンバータ装置62では、中間筒層32において、延出部50から触媒コンバータ装置12の中心、すなわち触媒担体14に接近する絞り部74が形成されている。したがって、絞り部74では、中間筒層32が部分的に縮径されている。排気の流れ方向(矢印F1方向)に見たとき、内側繊維層30よりも挿通孔部42の中央寄りの位置に、絞り部74が壁として存在していることになる。
【0070】
このような構成とされた第4実施形態の触媒コンバータ装置72では、第3実施形態の触媒コンバータ装置62と略同様の作用効果を奏するが、さらに、排気中の水蒸気が凝縮されて液化されても、凝縮水が挿通孔部42に浸入することが抑制されている。
【0071】
すなわち、排気中の水分は凝縮された凝縮水は、内側繊維層30に浸透して下流側へ移動することがある。しかし、この凝縮水の移動は絞り部74に阻止され、挿通孔部42に達しないので、凝縮水に起因する、挿通孔部42内での触媒担体14や電極16A、16Bとケース筒体28との短絡を抑制できる。
【0072】
そして、凝縮水は内側繊維層30に留まることになるが、内側繊維層30には、触媒担体14からの熱が作用する。このため、凝縮水を蒸発させることで、さらに挿通孔部42への流入を抑制できる。
【0073】
また、第3実施形態の触媒コンバータ装置62や、第4実施形態の触媒コンバータ装置72に、第2実施形態に係る燃焼促進部材54を塗布してもよい。
【0074】
上記各実施形態では、下流側突出部及び下流側傾斜部(あるいは下流側傾斜部材)を有する構造の触媒コンバータ装置を挙げたが、少なくとも上流側突出部及び上流側傾斜部(あるいは上流側傾斜部材)を有していれば、本発明の本質的な効果を奏する構成とすることが可能である。
【0075】
第1実施形態及び第2実施形態では、上流側傾斜部材46及び下流側傾斜部材48を中間筒層32(上流側突出部32U及び下流側突出部32L)とは別体としているので、上流側傾斜部材46及び下流側傾斜部材48の形状の自由度が高い。
【0076】
これに対し、第3実施形態及び第4実施形態では、上流側傾斜部66及び下流側傾斜部68が中間筒層32(上流側突出部32U及び下流側突出部32L)と一体化されているので、部品点数が少なくなる。
【0077】
上記各実施形態において、中間筒層32は、たとえば、材料自体が絶縁性を有するもの(樹脂はセラミック等)で構成されていてもよいが、絶縁性を有さない材料(たとえば金属)を基材として用い、この基材の表面に絶縁性の部材をコーティングしたものでもよい。特に、金属を中間筒層32の基材として用いると、金属は一般的に樹脂やセラミック等と比較して熱伝導率が高いので、排気の熱を挿通孔部42に効率的に伝えて、挿通孔部42内(電極16A、16Bの周囲)に堆積した水分の蒸発を促進することができる。
【0078】
上記では、本発明の上流側張出部として、上流側傾斜部材46及び上流側傾斜部66を挙げているが、上流側張出部としてはこのように排気の流れ方向に対し傾斜している必要はなく、たとえば排気の流れ方向と直交する部材であってもよい。下流側張出部としても、下流側傾斜部材48及び下流側傾斜部68に限らず、排気の流れ方向と直交する部材であってもよい。ただし、上記実施形態のように、排気の流れ方向に対し傾斜させると、小径部46S、48S、66S、68Sの開口断面積は確保しつつ、表面積を広くすることができる。
【0079】
本発明の中間部材としても、矢印F1方向に見たとき触媒担体14の周囲を取り囲んでいる必要はないが、取り囲む形状にすることで、触媒担体14や上流側張出部(上流側傾斜部)及び下流側張出部(下流側傾斜部)からケース筒体28への伝熱を効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0080】
10 排気管
12 触媒コンバータ装置
14 触媒担体
16A、16B 電極(通電部材)
18A、18B 端子(通電部材)
20A、20B 導線部材(通電部材)
26 保持マット(保持部材)
28 ケース筒体(筒体)
30 内側繊維層(内側弾性部材)
30A 上流側端面
32 中間筒層(中間部材)
32U 上流側突出部
32L 下流側突出部
34 外側繊維層(外側弾性部材)
42 挿通孔部
46 上流側傾斜部材(上流側傾斜部、上流側張出部)
48 下流側傾斜部材(下流側傾斜部、下流側張出部)
52 触媒コンバータ装置
54 燃焼促進部材
62 触媒コンバータ装置
66 上流側傾斜部(上流側張出部)
68 下流側傾斜部(下流側張出部)
72 触媒コンバータ装置
74 絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒を担持し、通電によって加熱される触媒担体と、
筒状に形成されて内部に前記触媒担体が収容されると共に排気管に取り付けられる筒体と、
前記触媒担体の外周面側に配置される内側弾性部材と、前記筒体の内周面側に配置される外側弾性部材と、絶縁性を有しこれらの内側弾性部材と外側弾性部材との間に配置される中間部材と、を備え、内側弾性部材及び外側弾性部材の弾性により触媒担体を筒体内に保持するとともに触媒担体と筒体とを電気的に絶縁する保持部材と、
前記中間部材に設けられ、前記内側弾性層の上流側端部よりも上流側に突出する上流側突出部と、
前記上流側突出部に設けられ、前記筒体の中心に向けて張り出す上流側張出部と、
を有する触媒コンバータ装置。
【請求項2】
前記上流側張出部が、前記筒体の中心に向かうにしたがって前記流れ方向の下流側に傾斜する上流側傾斜部である請求項1に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項3】
前記中間部材に設けられ、前記内側弾性層の下流側端部よりも下流側に突出する下流側突出部と、
前記下流側突出部に設けられ、前記筒体の中心に向けて張り出す下流側張出部と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項4】
前記上流側張出部及び前記下流側張出部の表面の少なくとも一部に塗布され、付着したカーボンの燃焼を促進する燃焼促進部材、を有する請求項3に記載の触媒コンバータ装置。
【請求項5】
前記触媒担体に接触配置され、触媒担体に通電するための通電部材と、
前記保持部材を厚み方向に貫通して形成され前記通電部材の一部を挿通するための挿通孔部と、
前記中間部材の前記挿通孔部内に位置する部位に設けられ、触媒担体に接近する絞り部と、
を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の触媒コンバータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−193726(P2012−193726A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60320(P2011−60320)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】