説明

触媒体およびその製造方法

【課題】 触媒が担持された酸化物粒子を、多孔質無機基材に担持してなる触媒体において、触媒成分の反応利用効率を高め、触媒成分の使用量を低減する。
【解決手段】 コージェライトなどからなる多孔質無機基材10と、多孔質無機基材10の表面に多孔質無機基材10の孔11に入り込まない形で担持されたθ−アルミナまたはδ−アルミナなどからなる酸化物粒子20と、酸化物粒子20の表面に担持されたPtなどからなる触媒成分30とを備える触媒体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒成分が担持されたアルミナなどの酸化物粒子を、コージェライトなどの多孔質無機基材に担持してなる触媒体およびその製造方法に関し、たとえば、自動車排気浄化用、燃料電池用、環境浄化用に使用される触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の排ガス等に含まれるHC、CO、NOx等の有害成分を浄化するための触媒成分としては、一般にPt、Pd、Rh等の貴金属が使用されている。
【0003】
また、そのような触媒成分としては、より高活性であり且つ複数種類の物質に対して活性を示すことの可能なものとして、ナノメートルオーダの一次粒子径を持つ一種の単体微粒子または二種以上の固溶体微粒子である基粒子と、この基粒子の表面の少なくとも一部を被覆する1種以上の貴金属または貴金属酸化物からなる表面被覆層とよりなる触媒粒子が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、従来では、このような触媒成分においては、コージェライトからなる多孔質無機基材を用いることにより、当該触媒成分をこの多孔質無機基材の表面に高分散に担持することが行われている。
【0005】
しかし、コージェライトの表面積では、上記触媒成分を高分散に担持させるためには十分でなく、かつコージェライトと上記触媒成分との結合力が弱いため、十分な担持量を確保することができない。
【0006】
そこで、従来より、γ−アルミナ(Al23)を代表とする、高い比表面積を有する粒子状の酸化物粒子を担体として、上記触媒成分の担持を行う前に、この酸化物粒子をコージェライトの表面上に約数10μmという厚さでにコーティングし、その後、コーティングされた酸化物粒子に対して触媒成分をさらに担持していた。
【特許文献1】特開2003−80077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コージェライトからなる多孔質無機基材の上にγ−アルミナからなる酸化物粒子を担持させ、さらにこの酸化物粒子に触媒成分を担持させる従来の構成では、酸化物粒子であるγ−アルミナの厚さがコージェライト上において数10μmにもなるため、次に述べるようないくつかの問題点がある。
【0008】
まず、従来の触媒体では、触媒成分はγ−アルミナの表面ならびに内部に存在することになるが、反応ガスの拡散性により、厚いγ−アルミナの内部に存在する触媒成分は十分に機能しないという問題がある。
【0009】
しかしながら、コージェライト上にコーティングされたγ−アルミナの厚さを小さくすることは、γ−アルミナに触媒成分を担持する際に、触媒成分がγ−アルミナ粒子の隙間を通過し、その下のコージェライトの表面からコージェライトの孔内部にまで到達してしまうためできなかった。
【0010】
また、γ−アルミナは、高い比表面積を有するが、それ自体は耐熱性が低いため、長時間の使用によってγ−アルミナが形状変化を起こし、そのため、触媒成分がγ−アルミナの内部に埋没し、触媒機能を失活することになっていた。
【0011】
このため、必要な排ガスの浄化性能すなわち十分な触媒機能を達成するためには、初期の段階より、過剰な触媒成分を担持させる必要があり、触媒成分の使用量が多く、利用効率が低くなってしまうという問題があった。
【0012】
さらに、コージェライト上にコーティングされたγ−アルミナの層は、従来では上述したように約数10μmという厚さであり、反応ガスの通過面積が小さいため、このγ−アルミナの層が大きな通気抵抗となっていた。
【0013】
そのため、従来の触媒体を自動車の排ガス浄化用の触媒体に用いた場合、エンジン出力が低下したり、熱容量が大きくなることで温度上昇が遅くなるため、エンジン始動から触媒体が活性化するまでの時間が長くかかるという問題があった。
【0014】
さらに、上記排ガス浄化用の触媒体は、約1000℃付近の高温下で長時間使用されるため、この高温での使用に伴って、上述した触媒成分のγ−アルミナの内部への埋没という問題に加えて、熱によるシンタリングが発生するという問題が生じる。
【0015】
すると、このシンタリングによって、触媒成分が移動、あるいは、触媒成分同士が結合してしまい、反応活性な比表面積が低下してしまい、浄化性能が劣化してしまう。このことからも、初期に必要とされる触媒量より、たとえば7割程度多く触媒成分を担持する必要があり、環境負荷とコスト高という問題があった。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、触媒が担持された酸化物粒子を、多孔質無機基材に担持してなる触媒体において、触媒成分の反応利用効率を高め、触媒成分の使用量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、多孔質無機基材(10)と、多孔質無機基材(10)の表面に多孔質無機基材(10)の孔(11)に入り込まない形で担持された酸化物粒子(20)と、酸化物粒子(20)の表面に担持された触媒成分(30)とを備えることを特徴とする触媒体が提供される。
【0018】
それによれば、多孔質無機基材(10)に担持される酸化物粒子(20)は、多孔質無機基材(10)の孔(11)の内部には、ほとんど入りこまず、多孔質無機基材(10)の表面に配置されるため、酸化物粒子(20)の厚さを、必要な範囲で極力薄くすることができる。
【0019】
そして、多孔質無機基材(10)の表面上において薄く形成された酸化物粒子(20)の層に、触媒成分(30)が担持された形となるため、結果的に、多孔質無機基材(10)の表面に触媒成分(30)が薄く配置された構成を実現できる。
【0020】
このように、本発明の触媒体によれば、多孔質無機基材(10)上の酸化物粒子(20)の層の厚さを従来に比べて極力薄くできることから、上記した通気抵抗を小さくでき、また、触媒成分(30)が酸化物粒子(20)の下の多孔質無機基材(10)の孔(11)に入り込むことはなく、多孔質無機基材(10)の表面に効率的に配置される。
【0021】
したがって、本発明によれば、触媒成分(30)が担持された酸化物粒子(20)を、多孔質無機基材(10)に担持してなる触媒体において、触媒成分(30)の反応利用効率を高め、触媒成分(30)の使用量を低減することができる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の触媒体において、酸化物粒子(20)の粒径は、多孔質無機基材(10)の平均孔径の1/10〜5倍であることを特徴としている。
【0023】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の触媒体において、酸化物粒子(20)の粒径は、多孔質無機基材(10)の平均孔径以上の大きさであることを特徴としている。
【0024】
これら請求項2、請求項3に記載の触媒体において酸化物粒子(20)の粒径は、一般的に用いられる平均粒径であり、一次粒子径でも、一次粒子が凝集した二次粒子の径でもどちらでもかまわない。
【0025】
本発明者の検討によれば、これら請求項2、請求項3に記載の触媒体のような酸化物粒子(20)の粒径とすれば、酸化物粒子(20)を、多孔質無機基材(10)の孔(11)に入り込まない形で多孔質無機基材(10)の表面に適切に担持できることが、実験的に確認されている。
【0026】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の触媒体において、多孔質無機基材(10)は、コージェライトであり、酸化物粒子(20)は、一次粒子径が50nm〜5000nmからなるものが用いられていることを特徴としている。
【0027】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の触媒体において、多孔質無機基材(10)は、コージェライトであり、酸化物粒子(20)は、二次粒子径が100nm〜5000nmからなるものが用いられていることを特徴としている。
【0028】
このように、多孔質無機基材(10)がコージェライトである場合には、酸化物粒子(20)としては、その一次粒子径が50nm以上5000nm以下であるものを用いることが好ましい。また、酸化物粒子(20)としては、その二次粒子径が50nm以上5000nm以下であるものを用いることが好ましい。
【0029】
多孔質無機基材(10)がコージェライトである場合において、本発明者の行った調査の結果によれば、コージェライトの孔(細孔)の径の実測値の分布から、平均孔径は、1μm〜2μmであり、この実測値に基づいて、上述した酸化物粒子(20)の一次粒子径や二次粒子径が好ましいことが確認されている。
【0030】
さらに、請求項6に記載の発明では、請求項4または請求項5に記載されている触媒体において、酸化物粒子(20)の表面細孔径は10nm〜200nmであることを特徴としている。
【0031】
上記請求項4や上記請求項5に記載の触媒体のような、酸化物粒子(20)の一次粒子径や二次粒子径の大きさである場合には、酸化物粒子(20)の表面細孔径は10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0032】
この酸化物粒子(20)の細孔径が小さいと比表面積が大きくなり好ましいが、小さすぎると触媒成分(30)が酸化物粒子(20)の細孔(21)内に配置されにくく、また、当該細孔径が大きくなりすぎると比表面積が小さくなるため、酸化物粒子(20)の表面細孔径は、この程度が好ましい。
【0033】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1〜請求項6に記載の触媒体において、酸化物粒子(20)は、CeO2、ZrO2、Al23、TiO2、SiO2、MgO、Y23およびこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の化合物のいずれかから構成されるものにできる。
【0034】
それによれば、触媒成分の担体である酸化物粒子として、従来のγ−アルミナよりも耐熱性に優れるものを提供することが可能になる。つまり、この中から、より耐熱性に優れるθ−アルミナ、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)等を、酸化物粒子(20)として使用することで、酸化物粒子(20)自体の形状変化を軽減することができ、触媒成分の埋没も防ぐことができる。
【0035】
より、具体的には、請求項8に記載の発明のように、請求項7に記載の触媒体においては、酸化物粒子(20)として、θ−アルミナまたはδ−アルミナからなるものを採用することができる。
【0036】
本発明者は、従来のγ−アルミナの耐熱化を検討した。γ−アルミナの温度を600℃付近から上昇させていくと、800℃付近でθ−アルミナに相変化し、δ−アルミナを経て、1200℃付近でα−アルミナに相変化する。
【0037】
ここで、γ−アルミナの比表面積は150〜300m2/gであり、θ−アルミナおよびδ−アルミナの比表面積は30〜100m2/gであり、α−アルミナの比表面積は1〜2m2/gである。なお、コージェライトの比表面積はα−アルミナの比表面積と同程度である。
【0038】
つまり、酸化物粒子(20)として、θ−アルミナまたはδ−アルミナを採用すれば、多少、γ−アルミナに比べて比表面積は小さくなるものの、実用上は問題なく、しかも、耐熱性に優れた酸化物粒子(20)を提供することができる。
【0039】
また、請求項9に記載の発明では、請求項1〜請求項8に記載の触媒体において、触媒成分(30)は、ナノメートルオーダの一次粒子径を持つ一種の単体微粒子または二種以上の固溶体微粒子である基粒子(1)と、この基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体と、よりなる触媒粒子であることを特徴としている。
【0040】
ここで、一種の単体微粒子とは、一種の元素または化合物よりなる微粒子のことであり、二種以上の固溶体微粒子とは、二種以上の元素または化合物が固溶体となっている微粒子のことである。また、本発明において固溶体とは、物質AとBとが混合した状態、物質AとBとが反応して初期の構造と異なっている状態を含むものである。
【0041】
本発明によれば、触媒成分(30)を、1個の触媒粒子全体として、ナノメートルオーダ(100nm以下程度)のサイズのものにできるとともに、従来の単なるナノメートルオーダの貴金属触媒粒子よりも、比表面積が大きく、高活性なものにできる。
【0042】
そして、本発明では、基粒子も触媒活性を持つものにすることができ、基粒子と一種以上の金属またはそれらの誘導体とを、互いに異なる物質に対して触媒活性を示すものになるように選択することができるため、1種の触媒粒子で複数種類の物質に対して活性を示すことができる。
【0043】
たとえば、基粒子と一種以上の金属またはそれらの誘導体との一方を触媒、他方を助触媒とすることができる。つまり、本発明によれば、触媒成分(30)として、より高活性であり且つ複数種類の物質に対して活性を示すことの可能な触媒粒子を提供することができる。
【0044】
ここで、請求項10に記載の発明のように、請求項9に記載の触媒体においては、基粒子(1)としては、金属酸化物、金属炭化物および炭素材料から選ばれたものよりなるものにできる。
【0045】
具体的に、請求項11に記載の発明のように、請求項10に記載の触媒体においては、前記金属酸化物としては、Ce、Zr、Al、Ti、Si、Mg、W、Srの酸化物およびそれらの誘導体から選ばれる一種の単体、または二種以上の固溶体からなるものを採用できる。
【0046】
また、請求項12に記載の発明のように、請求項10または請求項11に記載の触媒体においては、前記金属炭化物としては、SiCまたはその誘導体からなるものを採用することができる。
【0047】
また、請求項13に記載の発明のように、請求項10〜請求項12に記載の触媒体においては、前記炭素材料としては、グラファイトを採用することができる。
【0048】
また、請求項14に記載の発明では、請求項9〜請求項13に記載の触媒体において、基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体が、50nm未満の粒径を持つ超微粒子であることを特徴としている。
【0049】
基粒子(1)の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体は、粒子の形や層の形で被覆を行うことが可能であるが、粒子の場合、50nm未満の粒径を持つ超微粒子であることが好ましい。50nm以上の粒径であると大きすぎて、ナノメータサイズの基粒子表面を被覆することが困難になるためである。
【0050】
また、請求項15に記載の発明では、請求項9〜請求項13に記載の触媒体において、基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体が、1〜30原子層からなる被覆層(2)であることを特徴としている。
【0051】
一方、基粒子(1)の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体が層である場合は、1〜30原子層からなる被覆層(2)であることが好ましい。表面被覆層が30原子層よりも厚いものであると、1個の触媒粒子全体としてナノメートルオーダのサイズの確保が難しくなってきたり、表面被覆層自体が粒子化してしまい、比表面積が小さくなってしまったりするため、好ましくない。
【0052】
また、請求項16に記載の発明のように、請求項9〜請求項15に記載の触媒体においては、基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体は、純度が99%以上のものであることが好ましい。
【0053】
さらに、請求項17に記載の発明のように、請求項9〜請求項16に記載の触媒体においては、基粒子(1)の表面の全体ではなく一部が、前記一種以上の金属またはそれらの誘導体にて被覆されていることが好ましい。
【0054】
それによれば、基粒子が触媒活性を持つものである場合等において、一種以上の金属またはそれらの誘導体にて被覆されずに露出する基粒子の表面を介して、基粒子の特性を有効に活かすことができる。
【0055】
また、請求項18に記載の発明のように、請求項9〜請求項17に記載の触媒体においては、前記一種以上の金属またはそれらの誘導体としては、Pt、Rh、Pd、Au、Ag、Ruおよびそれらの酸化物から選ばれる一種以上の単体、または二種以上の固溶体を採用することができる。
【0056】
また、請求項19に記載の発明では、請求項1〜請求項18に記載の触媒体を製造する製造方法であって、触媒成分(30)を酸化物粒子(20)に担持させた後に、この触媒成分(30)付きの酸化物粒子(20)を、多孔質無機基材(10)の表面に担持させることを特徴としている。
【0057】
それによれば、触媒成分(30)を酸化物粒子(20)に担持させた後に、多孔質無機基材(10)に担持させているため、多孔質無機基材(10)の孔(11)に触媒成分(30)が入り込むのを適切に防止することができる。
【0058】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0060】
[構成・製法等]
図1は、本発明の実施形態に係る触媒体の模式的な構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)中の酸化物粒子20の表面近傍の概略断面図である。
【0061】
図1に示されるように、本実施形態の触媒体は、大きくは、多孔質無機基材10と、多孔質無機基材10の表面に多孔質無機基材10の孔11に入り込まない形で担持された酸化物粒子20と、酸化物粒子20の表面に担持された触媒成分30とを備えて構成されている。
【0062】
ここで、多孔質無機基材10は、コージェライトなど、表面に細孔としての多数の孔11を有する無機物からなるものである。本例では、多孔質無機基材10としては、本発明者の行った実測結果によれば孔11の平均孔径Aが1μm〜2μm程度のコージェライトからなるものを採用している。
【0063】
また、図1(a)に示されるように、ほとんどの酸化物粒子20は、多孔質無機基材10の表面において多孔質無機基材10の孔11に入り込むことなく配置されている。このような酸化物粒子20の粒径は、多孔質無機基材10の平均孔径Aの1/10〜5倍であることが好ましい。
【0064】
ここで、酸化物粒子20の粒径は、一般的に用いられる平均粒径であり、一次粒子径でも、一次粒子が凝集した二次粒子の径でもどちらでもかまわない。
【0065】
これは、酸化物粒子20の粒径が、多孔質無機基材10の平均孔径Aの1/10〜5倍であれば、酸化物粒子20を、多孔質無機基材10の孔11に入り込まない形で多孔質無機基材10の表面に適切に担持できるためである。
【0066】
酸化物粒子20は、後述するように、スラリーの状態で多孔質無機基材10の表面に塗布されるため、酸化物粒子20の粒径が多孔質無機基材10の平均孔径Aよりも小さくても、1/10倍以上であれば、スラリー状態における表面張力などにより、酸化物粒子20は多孔質無機基材10の孔11にほとんど侵入しない。
【0067】
また、酸化物粒子20の粒径が、多孔質無機基材10の平均孔径A以上の大きさであれば、より確実に、酸化物粒子20を、多孔質無機基材10の孔11に入り込まない形で多孔質無機基材10の表面に担持できることは、明らかである。
【0068】
より具体的には、本例のように、多孔質無機基材10がコージェライトであるとき、酸化物粒子20としては、一次粒子径でみた場合、その一次粒子径が50nm〜5000nmからなるものを用いることが好ましく、二次粒子径でみた場合、その二次粒子径が100nm〜5000nmからなるものを用いることが好ましい。
【0069】
これは、上述したように、多孔質無機基材10がコージェライトである場合において、本発明者の行った調査の実測結果によれば、コージェライトの孔(細孔)11の平均孔径Aは1μm〜2μmであることによる。このようなコージェライトの孔11の実測値に基づけば、上述したような酸化物粒子20の一次粒子径や二次粒子径が好ましい。
【0070】
また、図1(b)に示されるように、触媒体において触媒成分30は、酸化物粒子20の表面細孔21に担持され固定されている。
【0071】
ここで、上記したような酸化物粒子20の一次粒子径(50nm〜5000nm)や二次粒子径(100nm〜5000nm)の大きさである場合には、酸化物粒子20の表面細孔21の径(細孔径)Bは10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0072】
酸化物粒子20の細孔径Bが小さいと比表面積が大きくなり好ましいが、小さすぎると触媒成分30が酸化物粒子20の細孔21内に配置されにくい。また、当該細孔径Bが大きくなりすぎると酸化物粒子20の比表面積が小さくなるため、酸化物粒子20の表面細孔径Bは、この程度が好ましい。
【0073】
また、図2は、本実施形態の他の例を示す概略断面図である。上述したように、酸化物粒子20は、一次粒子の状態でも、この一次粒子が凝集した二次粒子の状態でもよい。酸化物粒子20が、50nm〜100nmの微粒子である場合、上記したスラリーの分散℃を設定し、図2に示されるように、二次粒子として酸化物粒子20を多孔質無機基材10上に担持してもよい。
【0074】
この場合、二次粒子状態にある酸化物粒子20において凹部が形成され、この凹部内に触媒成分30が担持されることになる。
【0075】
ここで、酸化物粒子20としては、CeO2、ZrO2、Al23、TiO2、SiO2、MgO、Y23およびこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の化合物のいずれかから構成されるものを採用することができ、より具体的には、酸化物粒子20としては、θ−アルミナまたはδ−アルミナからなるものにできる。
【0076】
また、触媒成分30としては、従来より一般的に用いられているPt、Pd、Rh等の貴金属粒子を採用することができるが、それ以外のもの、触媒機能を有するものであれば何でもよい。
【0077】
本例では、図3に示されるように、より高活性であり且つ複数種類の物質に対して活性を示すことの可能な触媒成分30として、ナノメートルオーダの一次粒子径を持つ一種の単体微粒子または二種以上の固溶体微粒子である基粒子1と、この基粒子の表面の少なくとも一部を被覆する1種以上の貴金属または貴金属酸化物からなる表面被覆層2とよりなる触媒粒子を採用している。
【0078】
ここで、基粒子1の一次粒子径とは、1個の基粒子1の径のことであり、一次粒子径がナノオーダであるとは、通常、一次粒子径が100nm以下であることをいう。本例では、基粒子1の一次粒子径は、1nm〜50nm程度のものである。
【0079】
また、基粒子1として、一種の単体微粒子とは、一種のセラミックや金属等の元素または化合物よりなる微粒子のことであり、二種以上の固溶体微粒子とは、二種以上のセラミックや金属等の元素または化合物が固溶体となっている微粒子のことである。
【0080】
このような基粒子1としては、金属酸化物、金属炭化物および炭素材料から選ばれたものよりなるものにできる。
【0081】
具体的に、金属酸化物としては、Ce、Zr、Al、Ti、Si、Mg、W、Srの酸化物およびそれらの誘導体から選ばれる一種の単体、または二種以上の固溶体を採用することができ、金属炭化物としては、SiCまたはその誘導体を採用することができ、炭素材料としては、グラファイトを採用することができる。
【0082】
このようなナノオーダの微粒子である基粒子1の作製方法としては、特に限定されるものではないけれども、共沈法、ゾルゲル法、メッキ法などがあげられる。また、二種以上の固溶体の性状、組成比なども特に限定されるものではなく、温度特性、耐久特性などの浄化性能を向上させるために、これら二種以上の固溶体の性状、組成比などを適宜調整すればよい。
【0083】
そして、図3に示される触媒成分30は、このような基粒子1の表面の少なくとも一部を、一種以上の金属またはそれらの誘導体により被覆したものとしている。ここで、一種以上の金属またはそれらの誘導体とは、触媒機能を持つ貴金属または貴金属酸化物などを用いることができる。
【0084】
そして、これら一種以上の金属またはそれらの誘導体を、50nm未満の粒径を持つ超微粒子として基粒子1の表面に付着させたり、1または複数の原子層からなる被覆層として基粒子1の表面に付着させる。
【0085】
このように、ナノオーダの基粒子1上に超微粒子または被覆層を形成させると、触媒成分30として高活性な触媒粒子を実現することができる。これは、次のような理由によるものと考えられる。
【0086】
単に粒径が小さくなれば、比表面積が大きくなるので、触媒活性を持つサイトが増加することになり、活性の高い触媒粒子となりうる。そのため、触媒量を低減させても、現状レベルの性能を満足することができる。
【0087】
それに加え、このような触媒粒子としての触媒成分30の有効性について、基粒子として酸化セリウム(セリア)、基粒子上に存在する超微粒子としてPtを用い、これを自動車の排ガス浄化用触媒に適用した場合を例に説明する。
【0088】
基粒子であるセリアは酸素を吸収・放出する酸素吸放出能(酸素吸蔵脱離機能)を有しており、排ガス中の酸素濃度が高い場合にCeが酸化されて4+となり、酸素が取り込まれてCeO2となる。また、酸素濃度が低い場合は、Ceが還元されて3+になり、CeO3/2となる。
【0089】
この場合、O2分子が直接セリア内部に出入りするよりも、解離して原子状態Oになったほうが出入りしやすいと考えられる。一方、触媒であるPtは酸素の解離を助ける役割をしていると考えられる。したがって、助触媒と触媒とがより近接している方が、酸素の出入りをすばやく行うことができ、酸素吸蔵脱離速度に優れると言える。
【0090】
以上のことから、ナノオーダの基粒子1上に超微粒子または表面被覆層2を形成させた触媒粒子にすると、比表面積が高く、高活性というだけでなく、排ガス中の酸素濃度の変化にも早急に対応することができる。
【0091】
また、単に、セリア等の基粒子1の表面に、粒径が50nm未満の超微粒子を存在させることによって、高活性な触媒粒子を得ることができるが、特に、セリア等の結晶性の基粒子表面に、数原子層の表面被覆層を触媒層として形成することにより、より高活性な触媒粒子を得ることができる。
【0092】
この理由は、基粒子1の表面に形成させた数原子層の触媒層が、基粒子の結晶構造を反映した格子構造をとることができるためである。つまり、一種以上の金属またはそれらの誘導体を被覆層として基粒子1の表面に付着させる方が、単に超微粒子として存在する場合における表面の格子構造とは異なる構造を採ることから、電子状態が変化し、触媒活性が高まると考えられる。
【0093】
そのため、図3に示される例では、基粒子1の表面の少なくとも一部に、表面被覆層2が形成されたものとしている。以下、なお、この触媒成分30としての触媒粒子について、以下に述べる特徴点は、表面被覆層2を、基粒子1の表面を被覆する超微粒子に置き換えた場合でもあてはまるものである。
【0094】
この表面被覆層2は、基粒子1の表面を1〜30原子層の厚さにて被覆する1種以上の貴金属または貴金属酸化物からなるものである。表面被覆層2としては、Pt、Rh、Pd、Au、Ag、Ru等の貴金属、およびそれらの貴金属酸化物から選ばれる一種以上の単体、または二種以上の固溶体からなるものにできる。
【0095】
この1〜30原子層レベルの表面被覆層2は、非常に織密で結晶性が高く、格子欠陥がなく、不純物が少ない層を示すが、当該表面被覆層を構成する一種以上の貴金属または貴金属酸化物の純度が99%以上であることが好ましい。このような表面被覆層2の性状や純度は、TEM像や元素分析法等で確認することができる。
【0096】
この表面被覆層2の形成方法としては、同時蒸発法、共沈法、ゾルゲル法、メッキ法等があげられるが、同時蒸発法がナノレベルで均一な複合体を得ることが出来るという理由で優れている。
【0097】
このように、図3に示される触媒粒子は、ナノオーダの基粒子1を担体として、該基粒子1の表面の少なくとも一部が、触媒機能を持つ表面被覆層2により1〜30原子層といった原子層レベル(数nm程度)の厚さにて薄く被覆されたものである。
【0098】
そのため、表面被覆層2も含めた1個の触媒粒子全体として、ナノオーダ(100nm以下程度)のサイズにできるとともに、従来の単なるナノオーダの貴金属触媒粒子よりも、比表面積が大きく、高活性なものにできる。
【0099】
なお、表面被覆層2が30原子層よりも厚いものであると、1個の触媒粒子全体としてナノオーダのサイズの確保が難しくなってきたり、表面被覆層2自体が粒子化してしまい、比表面積が小さくなってしまったりするため、好ましくない。
【0100】
この表面被覆層2の場合の厚みについて、さらにPtの場合を例に説明する。面方位によって多少差はあるものの、Ptの層間隔は約0.2nm程度である。本例の触媒粒子では、上述したように気相法である同時蒸発法により表面被覆層2を形成することが好ましいが、表面被覆層2が30原子層以上ということは、Pt層の厚みが6nm以上であることを意味する。
【0101】
これまでの経験上、同時蒸発法で30原子層以上積層させることは困難であること、また、積層の厚みが多くなると、表面被覆層2に期待している基粒子1の結晶構造の反映効果が少なくなり、ひいては触媒粒子としての性質が強くなってしまい、表面被覆層としてもメリットが少なくなってしまう。以上のことより、表面被覆層2の厚みは1〜30原子層とする。
【0102】
ちなみに、超微粒子の場合では、上記した原子層による規定ではなく、50nm未満の粒径を持つものすることが好ましいが、これは、50nm以上の粒径であると大きすぎて、ナノメータサイズの基粒子表面を被覆することが困難になるためである。
【0103】
また、この図3に示される触媒成分30としての触媒粒子では、基粒子1も触媒活性を持つものにすることができ、基粒子1と表面被覆層2とを、互いに異なる物質に対して触媒活性を示すものになるように選択することができるため、1種の触媒粒子で複数種類の物質に対して活性を示すことができる。
【0104】
上記したような理由から、詳細メカニズムについてはよくわかっていないが、実際に、相乗的に触媒機能を高めることができ、複数の有毒物質に対して、分解活性の高い触媒粒子が実現可能となる。
【0105】
具体的に、触媒機能の相乗効果が期待できる表面被覆層2にてコートされた基粒子1の組合せとしては、PtにてコートされたCeO2微粒子、PtにてコートされたCeO2−ZrO2固溶微粒子、Auにてコ一トしたTiO2微粒子、Ptにてコートされた炭素粒子などがあげられる。
【0106】
こうして、図3に示される触媒粒子によれば、より高活性であり且つ複数種類の物質に対して活性を示すことの可能な触媒成分30を提供することができる。
【0107】
さらに、この触媒粒子においては、基粒子1の表面の全体ではなく一部が、表面被覆層2にて被覆されていることが好ましい。このようにすることで、基粒子1が、単なる担体ではなく触媒活性を持つものである場合等、表面被覆層2にて被覆されずに露出する基粒子1の表面を介して、基粒子1の特性を有効に活かすことができる。
【0108】
たとえば、この触媒粒子として、CeO2(基粒子1)をPt(表面被覆層2)で被覆したものは、上述したように、自動車の排ガス浄化用触媒として用いられる。このとき、表面被覆層2であるPtはHCの酸化やNOxの還元が行われる触媒として機能するが、基粒子1であるCeO2は、酸素を吸収・放出する機能(酸素吸放出能)を持つ助触媒として機能する。
【0109】
そのため、触媒周囲の雰囲気(排ガス)中の酸素の過不足に応じて、CeO2から酸素が放出されたり、CeO2へ酸素が吸収されたりすることにより、HCの酸化やNOxの還元を行うための酸素雰囲気を適切に実現することができ、排ガス浄化を適切に行うことができる。
【0110】
そして、このような働きは、CeO2とPtとが接している両者の境界部で効果的に行われると考えられるが、図3に示されるように、基粒子1であるCeO2粒子の表面の全体ではなく一部を表面被覆層2であるPt層にて被覆することにより、当該境界部の領域を多くすることができ、有効である。
【0111】
この表面被覆層2による基粒子1表面の被覆割合は、TEM像等で確認することができ、本発明者の検討では、たとえば、基粒子1の表面の0.5〜60%程度を被覆するものが好ましい。
【0112】
ところで、図1に示されるような本実施形態の触媒体は、触媒成分30を酸化物粒子20に担持させた後に、この触媒成分30付きの酸化物粒子20を、多孔質無機基材10の表面に担持させることにより製造することができる。
【0113】
具体的には、触媒成分30を溶媒に分散させたスラリーと、酸化物粒子20を溶媒に分散させたスラリーとをそれぞれ作成し、これら両スラリーを混合する。この混合スラリーを蒸発装置(エバポレータ)などにより乾燥させ、焼成する。
【0114】
この焼成は、たとえば、触媒成分30として、セリア・ジルコニア(CeO2・ZrO2)の固溶体からなる基粒子1をPtからなる表面被覆層2にて被覆してなる触媒粒子を用いた場合、500℃、2時間の条件にて行う。それにより、触媒成分30が担持された酸化物粒子20ができあがる。
【0115】
そして、この触媒成分30付きの酸化物粒子20を溶媒に分散させてスラリー状態とし、この酸化物粒子20のスラリーを多孔質無機基材10の表面に塗布し、乾燥、焼成を行う。それにより、本実施形態の触媒体ができあがる。
【0116】
[効果等]
ところで、本実施形態によれば、多孔質無機基材10と、多孔質無機基材10の表面に多孔質無機基材10の孔11に入り込まない形で担持された酸化物粒子20と、酸化物粒子20の表面に担持された触媒成分30とを備えることを特徴とする触媒体を提供することができる。
【0117】
それによれば、多孔質無機基材10に担持される酸化物粒子20は、多孔質無機基材10の孔11の内部には、ほとんど入りこまず、多孔質無機基材10の表面に配置されるため、酸化物粒子20の厚さを、必要な範囲で極力薄くすることができる。
【0118】
そして、多孔質無機基材10の表面上において薄く形成された酸化物粒子20の層に、触媒成分30が担持された形となるため、結果的に、多孔質無機基材10の表面に触媒成分30が薄く配置された構成を実現できる。
【0119】
このように、本実施形態の触媒体によれば、多孔質無機基材10上の酸化物粒子20の層の厚さを従来に比べて極力薄くできることから、触媒体における上記した反応ガスの通気抵抗を小さくすることができ、また、触媒成分30が酸化物粒子20の下に存在する多孔質無機基材10の孔11に入り込むことはなく、多孔質無機基材10の表面に効率的に配置される。
【0120】
したがって、本実施形態によれば、触媒成分30が担持された酸化物粒子20を、多孔質無機基材10に担持してなる触媒体において、触媒成分30の反応利用効率を高め、触媒成分30の使用量を低減することができる。
【0121】
また、本実施形態の触媒体においては、酸化物粒子20の粒径は、多孔質無機基材10の平均孔径の1/10〜5倍であることも特徴のひとつである。
【0122】
また、本実施形態のおいては、酸化物粒子20の粒径は、多孔質無機基材10の平均孔径以上の大きさであることも特徴のひとつである。
【0123】
上述したように、本発明者の検討によれば、本実施形態の触媒体において、このような酸化物粒子20の粒径とすれば、酸化物粒子20を、多孔質無機基材10の孔11に入り込まない形で多孔質無機基材10の表面に適切に担持できることが、実験的に確認されている。
【0124】
また、本実施形態の触媒体においては、多孔質無機基材10がコージェライトであるとき、酸化物粒子20として、一次粒子径が50nm〜5000nmからなるものが用いられていることも特徴のひとつである。
【0125】
また、本実施形態の触媒体においては、多孔質無機基材10がコージェライトであるとき、酸化物粒子20として、二次粒子径が100nm〜5000nmからなるものが用いられていることも特徴のひとつである。
【0126】
さらに、本実施形態においては、多孔質無機基材10がコージェライトであり、用いられる酸化物粒子20の一次粒子径または二次粒子径が上記範囲であるとき、酸化物粒子20の表面細孔径は10nm〜200nmであることも特徴のひとつである。
【0127】
また、上述したが、本実施形態の触媒体においては、酸化物粒子20は、CeO2、ZrO2、Al23、TiO2、SiO2、MgO、Y23およびこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の化合物のいずれかから構成されるものであることも特徴のひとつである。
【0128】
それによれば、触媒成分の担体である酸化物粒子として、従来のγ−アルミナよりも耐熱性に優れるものを提供することが可能になる。つまり、この中から、より耐熱性に優れるθ−アルミナ、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)等を、酸化物粒子20として使用することで、酸化物粒子20自体の形状変化を軽減することができ、触媒成分の埋没も防ぐことができる。
【0129】
より、具体的には、上述したように、本実施形態の触媒体においては、酸化物粒子20として、θ−アルミナまたはδ−アルミナからなるものを採用することができる。
【0130】
本発明者は、従来のγ−アルミナの耐熱化を検討した。γ−アルミナの温度を600℃付近から上昇させていくと、800℃付近でθ−アルミナに相変化し、δ−アルミナを経て、1200℃付近でα−アルミナに相変化する。
【0131】
ここで、γ−アルミナの比表面積は150〜300m2/gであり、θ−アルミナおよびδ−アルミナの比表面積は30〜100m2/gであり、α−アルミナの比表面積は1〜2m2/gである。なお、コージェライトの比表面積はα−アルミナの比表面積と同程度である。
【0132】
つまり、酸化物粒子20として、θ−アルミナまたはδ−アルミナを採用すれば、多少、γ−アルミナに比べて比表面積は小さくなるものの、実用上は問題なく、しかも、耐熱性に優れた酸化物粒子20を提供することができる。
【0133】
また、本実施形態の触媒体においては、触媒成分30は、上記図3に示されるような、ナノメートルオーダの一次粒子径を持つ一種の単体微粒子または二種以上の固溶体微粒子である基粒子1と、この基粒子1の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体と、よりなる触媒粒子を採用することも特徴のひとつである。
【0134】
それによれば、触媒成分30を、1個の触媒粒子全体として、ナノメートルオーダ(100nm以下程度)のサイズのものにできるとともに、従来の単なるナノメートルオーダの貴金属触媒粒子よりも、比表面積が大きく、高活性なものにできる。
【0135】
そして、本実施形態では、基粒子1も触媒活性を持つものにすることができ、基粒子1と一種以上の金属またはそれらの誘導体とを、互いに異なる物質に対して触媒活性を示すものになるように選択することができるため、1種の触媒粒子で複数種類の物質に対して活性を示すことができる。
【0136】
つまり、本実施形態によれば、触媒成分30として、より高活性であり且つ複数種類の物質に対して活性を示すことの可能な触媒粒子を提供することができる。また、この図3に示される触媒成分30として用いられる触媒粒子について、上述したさらなる特徴や効果などが存在することは、既述の通りである。
【0137】
また、本実施形態によれば、上記図1や図2に示される触媒体を製造する製造方法として、触媒成分30を酸化物粒子20に担持させた後に、この触媒成分30付きの酸化物粒子20を、多孔質無機基材10の表面に担持させることを特徴とする製造方法が提供される。
【0138】
それによれば、触媒成分30を酸化物粒子20に担持させた後に、多孔質無機基材10に担持させているため、多孔質無機基材10の孔11に触媒成分30が入り込むのを適切に防止することができる。
【0139】
なお、上述したが、上記各図に示される酸化物粒子20や触媒成分30は、一次粒子の状態でも、この一次粒子が凝集した二次粒子の状態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の実施形態に係る触媒体の模式的な構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)中の酸化物粒子の表面近傍の概略断面図である。
【図2】本実施形態の他の例を示す概略断面図である。
【図3】上記実施形態に用いられる触媒成分の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0141】
1…基粒子、2…表面被覆層、
10…多孔質無機基材、11…多孔質無機基材の孔、
20…酸化物粒子、30…触媒成分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質無機基材(10)と、
前記多孔質無機基材(10)の表面に前記多孔質無機基材(10)の孔(11)に入り込まない形で担持された酸化物粒子(20)と、
前記酸化物粒子(20)の表面に担持された触媒成分(30)とを備えることを特徴とする触媒体。
【請求項2】
前記酸化物粒子(20)の粒径は、前記多孔質無機基材(10)の平均孔径の1/10〜5倍であることを特徴とする請求項1に記載の触媒体。
【請求項3】
前記酸化物粒子(20)の粒径は、前記多孔質無機基材(10)の平均孔径以上の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の触媒体。
【請求項4】
前記多孔質無機基材(10)は、コージェライトであり、前記酸化物粒子(20)は、一次粒子径が50nm〜5000nmからなるものが用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒体。
【請求項5】
前記多孔質無機基材(10)は、コージェライトであり、前記酸化物粒子(20)は、二次粒子径が100nm〜5000nmからなるものが用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒体。
【請求項6】
前記酸化物粒子(20)の表面細孔径は10nm〜200nmであることを特徴とする請求項4または5に記載の触媒体。
【請求項7】
前記酸化物粒子(20)は、CeO2、ZrO2、Al23、TiO2、SiO2、MgO、Y23およびこれらの誘導体から選ばれる一種または二種以上の化合物のいずれかから構成されるものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項8】
前記酸化物粒子(20)は、θ−アルミナまたはδ−アルミナからなるものであることを特徴とする請求項7に記載の触媒体。
【請求項9】
前記触媒成分(30)は、ナノメートルオーダの一次粒子径を持つ一種の単体微粒子または二種以上の固溶体微粒子である基粒子(1)と、この基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体と、よりなる触媒粒子であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項10】
前記基粒子(1)は、金属酸化物、金属炭化物および炭素材料から選ばれたものよりなることを特徴とする請求項9に記載の触媒体。
【請求項11】
前記金属酸化物は、Ce、Zr、Al、Ti、Si、Mg、W、Srの酸化物およびそれらの誘導体から選ばれる一種の単体、または二種以上の固溶体からなることを特徴とする請求項10に記載の触媒体。
【請求項12】
前記金属炭化物は、SiCまたはその誘導体からなることを特徴とする請求項10または11に記載の触媒体。
【請求項13】
前記炭素材料はグラファイトであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項14】
前記基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体が、50nm未満の粒径を持つ超微粒子であることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項15】
前記基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体が、1〜30原子層からなる被覆層(2)であることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項16】
前記基粒子(1)の表面の少なくとも一部を被覆する一種以上の金属またはそれらの誘導体は、純度が99%以上のものであることを特徴とする請求項9ないし15のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項17】
前記基粒子(1)の表面の全体ではなく一部が、前記一種以上の金属またはそれらの誘導体にて被覆されていることを特徴とする請求項9ないし16のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項18】
前記触媒成分(30)における前記一種以上の金属またはそれらの誘導体とは、Pt、Rh、Pd、Au、Ag、Ruおよびそれらの酸化物から選ばれる一種以上の単体、または二種以上の固溶体であることを特徴とする請求項9ないし17のいずれか1つに記載の触媒体。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれか1つに記載の触媒体を製造する製造方法であって、
前記触媒成分(30)を前記酸化物粒子(20)に担持させた後に、この触媒成分(30)付きの酸化物粒子(20)を、前記多孔質無機基材(10)の表面に担持させることを特徴とする触媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−239543(P2006−239543A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57575(P2005−57575)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】