説明

触媒保持シール部材の製造方法および触媒保持シール部材を備えた触媒コンバータ

【課題】繊維素材が有している復元力を有効に発揮させることができ優れた保持力とシール性を有する触媒保持シール部材の製造方法を提供する。
【解決手段】触媒保持シール部材の製造方法において、無機材料を紡糸して紡糸済み無機繊維を得る紡糸工程(S11)と、紡糸済み無機繊維を積層して積層済み無機繊維集合体を得る積層工程(S12)と、積層済み無機繊維集合体を焼成して焼成済み無機繊維集合体を得る焼成工程(S13)と、焼成済み無機繊維集合体に有機繊維集合体を重ね合せて重ね合せ済み繊維集合体を得る重ね合せ工程(S14)と、重ね合せ済み繊維集合体にニードルを打ち込んで焼成済み無機繊維集合体内の無機繊維に有機集合体内の有機繊維を交絡させて交絡済み繊維集合体を得るニードルパンチ工程(S15)と、交絡済み繊維集合体を成形して成形済み繊維集合体を得る成形工程(S17)とを順に行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の排気ガスを浄化する触媒コンバータに組み込まれる触媒保持シール部材の製造方法および触媒保持シール部材を備えた触媒コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の触媒保持シール部材の製造方法として、図16に示すように、紡糸液を紡糸装置のノズルから空気中に連続的に噴出させて繊維を紡糸する紡糸工程(S1)と、紡糸された繊維を積層して繊維集合体を得る積層工程(S2)と、積層工程で得られた繊維集合体に対してニードルパンチ処理を施すニードルパンチ工程(S3)と、ニードルパンチ処理された繊維集合体を所定の条件で焼成する焼成工程(S4)とを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この製造方法で製造された繊維集合体に対して、さらに、有機バインダを含浸させるバインダ含浸工程(S5)と、このバインダ含浸工程によりバインダが含浸された繊維集合体を切断して所定形状のマットに成形するマット成形工程(S6)を加えて、触媒コンバータに組み込まれる触媒保持シール部材が製造されている。
【特許文献1】特開2002−129455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の触媒保持シール部材の製造方法においては、積層工程で得られた繊維集合体に対してニードルパンチ工程を実施しており、このニードルパンチ工程によりニードルが打ち込まれた部分の繊維同士が交絡し、繊維集合体の厚み方向に配向された繊維により圧縮されて、前述の所定形状のマットの厚みが決まってしまう。その結果、繊維集合体の曲げ応力(MPa)が抑制され、マットの復元力により得られる面圧(MPa)が有効に利用できないという問題があった。
【0005】
すなわち、ニードルパンチ工程においては、ニードルが繊維集合体を貫通するようにしてニードルが打ち込まれるので、繊維集合体内のアルミナ−シリカ系セラミックファイバからなるアルミナ繊維前駆体の一部が厚み方向としての縦方向に配向され、繊維同士が交絡することになる。この場合、繊維集合体が縦方向のアルミナ繊維前駆体の一部により緊縛されて圧縮されることになり、縦方向のアルミナ繊維前駆体の一部により、繊維集合体の厚みが決定される。
【0006】
この触媒保持シール部材は、環状の触媒部材とこれを収容するケースからなる触媒コンバータの触媒部材とケースとの間に組み込まれ、触媒部材をケース内で所定の面圧(MPa)を有して保持している。
【0007】
この触媒コンバータにおいては、触媒部材が確実に保持されるよう、平板状に形成された触媒保持シール部材を環状の触媒部材を囲むよう環状に曲げ加工するとともに、触媒コンバータに圧入して組み込むことにより、触媒保持シール部材に触媒コンバータ内で所定の面圧を生じさせている。したがって、この面圧は、触媒保持シール部材が厚み方向に復元しようとする圧縮に対する復元力と、周方向に復元しようとする曲げに対する復元力とが作用して生ずることになる。この点で、従来の触媒保持シール部材においては、ニードルパンチ工程において、繊維集合体内の多くの繊維が縦方向としての厚み方向に配向され、繊維集合体が圧縮されて、繊維集合体の厚みが決定されているので、厚みと直交する横方向に配向されている繊維が少なくなってしまう。横方向の繊維が少なくなると、横方向の繊維により生ずる曲げに対する復元力が弱くなってしまう。すなわち、ニードルパンチ処理により繊維集合体の曲げに対する復元力が抑制されてしまい、触媒コンバータ内に組み込まれた際、全体として面圧が低下してしまうので、触媒保持シール部材が持つべき面圧が充分に得られないという問題があった。
【0008】
このように、繊維を積層する積層工程で得られた繊維集合体に対してニードルパンチ工程を実施しているので、各工程を経て製造された触媒保持シール部材の素材が有している復元力を有効に発揮することができないという問題があった。すなわち、積層工程に続いてニードルパンチ工程が実施されているので、触媒保持シール部材の素材が有している復元力が抑制されてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、前述の従来の問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明は、繊維素材が有している復元力を有効に発揮させることができ、優れた保持力とシール性を有する触媒保持シール部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る触媒保持シール部材の製造方法は、上記目的達成のため、(1)無機材料を紡糸して紡糸済み無機繊維を得る紡糸工程と、前記紡糸済み無機繊維を積層して積層済み無機繊維集合体を得る積層工程と、前記積層済み無機繊維集合体を焼成して焼成済み無機繊維集合体を得る焼成工程と、前記焼成済み無機繊維集合体に有機繊維集合体を重ね合せて重ね合せ済み繊維集合体を得る重ね合せ工程と、前記重ね合せ済み繊維集合体にニードルを打ち込んで前記焼成済み無機繊維集合体内の無機繊維に前記有機繊維集合体内の有機繊維を交絡させて交絡済み繊維集合体を得るニードルパンチ工程と、前記交絡済み繊維集合体を所定形状に成形して成形済み繊維集合体を得る成形工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成により、紡糸済み無機繊維が積層された積層済み無機繊維集合体に対してニードルパンチ処理を行う一般的なニードルパンチ工程と異なり、積層済み無機繊維集合体をニードルパンチ処理することなく、直接焼成する焼成工程により焼成済み無機繊維集合体を製造し、得られた重ね合せ済み繊維集合体に対してニードルパンチ処理を行って焼成済み無機繊維集合体内の無機繊維に有機繊維集合体内の有機繊維を交絡させて最終的に触媒保持シール部材を製造している。
【0012】
この製造方法で得られた触媒保持シール部材は、ニードルパンチ処理によって、一時的に焼成済み無機繊維集合体内の無機繊維に積層済み有機繊維集合体内の有機繊維が交絡され、厚み方向に圧縮されている。この触媒保持シール部材が、高温の環境に置かれたとき、内部の有機繊維が燃焼して消失することにより、触媒保持シール部材が有機繊維による緊縛から開放され弾力性が増大する。すなわち、無機繊維と有機繊維とが交絡し、有機繊維により屈曲させられた状態から無機繊維が開放されることにより、無機繊維が屈曲のない元の状態に復元しようとする復元力が増大して、触媒保持シール部材の曲げに対する弾力性が高まり、例えば、円筒形に成形されて押圧されたときの触媒保持シール部材の反発力が向上する。
【0013】
上記(1)に記載の触媒保持シール部材の製造方法においては、好ましくは、(2)前記紡糸工程が、有機材料を紡糸して紡糸済み有機繊維を得る工程を含み、前記積層工程が、前記紡糸済み有機繊維を積層して積層済み有機繊維集合体を得る工程を含み、前記重ね合せ工程が、前記積層済み有機繊維集合体と、前記積層済み無機繊維集合体とを重ね合せるよう構成する。
【0014】
この構成により、紡糸工程により、紡糸済み無機繊維集合体だけでなく紡糸済み有機繊維集合体をも得ることができ、さらに積層工程において紡糸済み有機繊維集合体から得た積層済み有機繊維集合体を、重ね合せ工程において積層済み無機繊維集合体に重ね合せることができる。その結果、最終的に、高い弾力性を有する優れた機械的性質が得られる触媒保持シール部材を効率よく製造することができる。
【0015】
上記(1)または(2)に記載の触媒保持シール部材の製造方法においては、好ましくは、(3)前記交絡済み繊維集合体にバインダを含浸させ含浸済み繊維集合体を得るバインダ含浸工程を含んで構成される。
【0016】
この構成により、ニードルパンチ処理された交絡済み繊維集合体に対して、バインダが含浸された後に成形され、成形済み繊維集合体が得られるので、バインダが含浸された部分の機械的強度が高まり、例えば、触媒保持シール部材を触媒コンバータなどの装置に組み込む際に、破損などの損傷が未然に防止される。
【0017】
本発明に係る触媒コンバータは、上記目的達成のため、(4)内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒担持体と、前記触媒担持体を収容するケースと、前記触媒担持体を囲むようにして前記触媒担持体と前記ケースとの間に介装された触媒保持シール部材とを備えた触媒コンバータにおいて、前記触媒保持シール部材が、前述の(1)または(2)に記載の触媒保持シール部材の製造方法により製造された交絡済み繊維集合体により構成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成により、触媒コンバータには、積層済み無機繊維集合体が直接焼成され、得られた焼成済み無機繊維集合体に対してニードルパンチ処理が行われ、得られた交絡済み繊維集合体からなる触媒保持シール部材が組み込まれる。その結果、触媒保持シール部材はニードルパンチ処理により厚み方向が圧縮されているので、厚みが比較的小さくなり、触媒保持シール部材を触媒コンバータに圧入する場合、圧入の作業性が良好となるとともに、圧入時に、触媒保持シール部材が破損することが防止される。また、触媒保持シール部材が触媒コンバータに組み込まれた後は、確実に触媒担持体がケース内で保持されるとともに、確実に触媒担持体とケースとの間の隙間がシールされる。
【0019】
この触媒コンバータが、内燃機関の排気管に設置された場合、本発明の(1)または(2)に記載の製造方法で得られた触媒保持シール部材に、内燃機関から排出される高温の排気ガスの熱が伝熱されると、内部の有機繊維が焼失して触媒保持シール部材が有機繊維による緊縛から開放され弾力性が増大する。すなわち、無機繊維と有機繊維とが交絡し、有機繊維により屈曲させられた状態から無機繊維が開放されることにより、無機繊維が屈曲のない元の状態に復元しようとする復元力が増大して、触媒保持シール部材の曲げに対する弾力性が高まり、円筒形に成形されて触媒コンバータに組み込まれたとき、高い面圧が得られ、触媒担持体がケース内で確実に保持されるとともに、確実にシールされる。
【0020】
本発明に係る触媒コンバータは、上記目的達成のため、(5)内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒担持体と、前記触媒担持体を収容するケースと、前記触媒担持体を囲むようにして前記触媒担持体と前記ケースとの間に介装された触媒保持シール部材とを備えた触媒コンバータにおいて、前記触媒保持シール部材が、前述の(3)に記載の触媒保持シール部材の製造方法により製造された含浸済み繊維集合体により構成されたことを特徴とする。
【0021】
この構成により、本発明の(1)に記載の製造方法で得られた触媒保持シール部材と同様に、触媒保持シール部材に、内燃機関から排出される高温の排気ガスの熱が伝熱されると、内部の有機繊維が焼失して触媒保持シール部材が有機繊維による緊縛から開放され弾力性が増大する。すなわち、無機繊維と有機繊維とが交絡し、有機繊維により屈曲させられた状態から無機繊維が開放されることにより、無機繊維が屈曲のない元の状態に復元しようとする復元力が増大して、触媒保持シール部材の曲げに対する弾力性が高まり、円筒形に成形されて触媒コンバータに組み込まれたとき、高い面圧が得られ、触媒担持体がケース内で確実に保持されるとともに、確実にシールされる。さらに、バインダ含浸工程によりバインダを含浸させ含浸済み繊維集合体により触媒保持シール部材が構成されているので、バインダが含浸された部分の機械的強度が高まり、触媒保持シール部材を触媒コンバータなどの装置に組み込む際に、破損などの損傷が未然に防止される。また、優れた機械的強度を有するので、触媒保持シール部材が触媒コンバータなどの装置に組み込まれたとき、触媒担持体がケース内でより確実に保持されるとともに、より確実にシールされる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、繊維素材が有している復元力を有効に発揮させることができ、優れた保持力とシール性を有する触媒保持シール部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法により製造された触媒保持シール部材20が適用される触媒コンバータ10の断面図であり、図2は、触媒コンバータ10の分解斜視図である。
【0025】
本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材20は、触媒コンバータ10を構成するとともに、触媒コンバータ10は、図示しない車両の排気ガス後処理装置を構成しており、この車両は、例えば、直列4気筒の公知のガソリンエンジンからなる内燃機関で構成されている。この内燃機関は、その種類、型式などのエンジン仕様は任意に選択され、例えば、ガソリンのほか軽油やエタノールなどの液体や天然ガスなどを原料とする気体を燃料とするものであってもよい。
【0026】
図1に示すように、触媒コンバータ10は、触媒担持体11と、触媒担持体11を収容するケース12と、触媒担持体11とケース12との間に組み込まれた触媒保持シール部材20とを含んで構成されており、内燃機関から排出される排気ガスの有害成分を除去するよう排気ガス通路内に設置されている。
【0027】
触媒担持体11は、例えば、コージェライトなどのセラミックやアルミナなどの金属からなり、排気ガスを通過させるよう軸線方向に貫通する複数の空間が形成されたハニカムで構成されている公知のものである。このハニカムの内表面には、白金、パラジウム、ロジウムなどの排気ガス成分を浄化する活性金属からなる還元触媒が担持されており、ハニカム内を流通する排気ガスの化学反応が促進されるようになっている。
【0028】
ケース12は、触媒担持体収容部13と、触媒担持体収容部13の一方端部に接合され上流側の排気管14と連結される上流側連結部15と、触媒担持体収容部13の一他方端部に接合され下流側の排気管16と連結される下流側連結部17とを有している。
【0029】
図2に示すように、触媒担持体収容部13は、例えば、耐熱性のステンレスからなり縁部の周囲に突出して形成されたフランジ13aを有する上側収容部13uと、上側収容部13uと同様に形成され、フランジ13bを有する下側収容部13sとにより構成される二分割構造で形成されている。
この上側収容部13uと下側収容部13sとの間に、触媒担持体11および触媒保持シール部材20が収容され、フランジ13a、13bとが接合されて一体化されて円形や楕円形などの環状の断面を有する筒状に形成されるようになっている。
【0030】
上流側連結部15は、内部に排気ガスを流通させる排気ガス通路15gを有しており、筒15tと、排気管14と連結され複数の取付孔15hを有するフランジ15fとを備えている。下流側連結部17は、上流側連結部15と同様、内部に排気ガスを流通させる排気ガス通路17gを有しており、筒17tと、排気管16と連結され、複数の取付孔17hを有するフランジ17fとを備えている。
【0031】
触媒保持シール部材20は、主に無機繊維からなり、有機繊維を含む弾性材料で形成されており、高い耐熱性と弾力性を有している。この触媒保持シール部材20は、均一な厚みtを有する板状体からなり、触媒担持体11とケース12との間に組み込まれた際に、所定の面圧P(MPa)が発生して触媒担持体11がケース12内に確実に保持されるよう構成されている。具体的には、ケース12内における触媒保持シール部材20の充填密度(g/cm)が、例えば0.1〜1g/cmとなるよう、触媒保持シール部材20の嵩密度(g/cm)が調整されている。
【0032】
この充填密度が小さすぎると、所定の面圧Pが得られず、触媒保持シール部材20や触媒担持体11の位置がずれるおそれがあり、充填密度が大きすぎると、ケース12内への挿入作業が困難であったり、組み立て後の圧縮応力(MPa)が高くなり無機繊維が折損し、飛散するおそれがある。なお、充填密度0.1〜1g/cmの各数値は、これに限られるものではなく、触媒コンバータ10の特性、構造、形状および大きさなどの設定条件に基づいて適宜設定することができる。
【0033】
次に、本実施の形態の触媒保持シール部材20の製造方法について説明する。
図3は、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法のフローチャートである。
図3に示すように、触媒保持シール部材20の製造方法は、紡糸工程(S11)、積層工程(S12)、焼成工程(S13)、重ね合せ工程(S14)、ニードルパンチ工程(S15)、バインダ含浸工程(S16)および成形工程(S17)の順に行われる各工程を含んで構成されている。
【0034】
紡糸工程(S11)は、無機材料および有機材料をそれぞれ紡糸して紡糸済み無機繊維および有機繊維を得る公知の工程であり、紡糸液を調製するための溶液や溶媒の準備、紡糸装置の設定などの準備工程も含まれる。
【0035】
無機材料を紡糸して紡糸済み無機繊維を得る場合、紡糸工程(S11)においては、例えば、塩酸にアルミニウムを溶解させて調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に、シリカゾルおよび有機重合体が所定の比率で混合され、紡糸溶液が調製される。この場合、紡糸溶液から最終的に得られる無機繊維としてのアルミナ繊維が、例えば、酸化アルミニウム(Al)と二酸化ケイ素(SiO)の重量比が、好ましくは、80:20程度になるよう、塩基性塩化アルミニウム(AlCl)水溶液にシリカゾル(SiO)が添加される。
【0036】
AlとSiOの重量比を80:20程度としたのは、紡糸溶液中のケイ素成分(SiO)が多すぎると繊維化は容易となるが耐熱性が著しく低下し、一方、ケイ素成分が少なすぎると耐熱性は向上するが繊維が脆化し易くなってしまうからである。さらに、紡糸性を向上させるために、必要に応じて適宜ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、セルロース誘導体等の水溶性有機重合体などの添加剤が添加される。得られた紡糸溶液は、減圧および濃縮などの所定の前処理がなされ、所定の濃度(重量%)、温度(℃)、粘度(P:ポイズ)などの紡糸に適した溶液になるよう調製されて紡糸するための紡糸液が得られる。例えば、粘度は、10Pないし100Pに調製されたものが用いられる。
【0037】
本実施の形態における紡糸液から最終的に得られた無機繊維が、アルミナ繊維以外のものになるよう紡糸液を調製するようにしてもよい。例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、アルミナ−シリカ系セラミック繊維になるよう、紡糸液を調製するようにしてもよい。
【0038】
この紡糸液は、紡糸装置にセットされ紡糸される。この紡糸装置は、例えば、紡糸液を供給する供給ノズルを有するもので、高速の紡糸気流中に供給ノズルから紡糸液を供給し、太さが数μmm、長さが数十μmmないし数百μmmの糸状の繊維を形成させ、この繊維を含む紡糸気流を平面を有するベルトなどの繊維集積部に衝突させて捕集することにより集積させる、いわゆるブローイング法により紡糸が行われる。
【0039】
また、この紡糸装置は、ブローイング法に限られず、他の公知の紡糸方法であってもよい。例えば、紡糸液を紡糸装置に設けられたノズルから空気中に連続的に噴出させ、形成された繊維を伸延しながら巻き取るようにして集積させるとともに、加熱気体により溶媒を乾燥させ、糸条を形成する乾式紡糸法であってもよい。この乾式紡糸法の場合、巻き取り速度が速く、紡糸条件を広く設定でき、溶剤を簡単に回収することができる。
【0040】
有機材料を紡糸して紡糸済み有機繊維を得る場合、紡糸工程(S11)においては、例えば、原料の高分子化合物を加熱溶融し、紡糸口金のノズルから一定速度で空気中に押し出し、繊維状に冷却固化させて繊維を製造する溶融紡糸法であってもよい。溶媒、凝固液を使用しないので、高速度の紡糸が可能であるが、溶融液は酸化し、熱分解を受けやすく、流動性が温度によって左右されるので、溶解状態の時間短縮、正確な温度制御によって行われる。具体的には、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維を紡糸する溶融格子紡糸法、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、塩化ビニリデン共重合物繊維、ポリオレフィン繊維を紡糸するスクリュー押し出し紡糸法、ナイロン6繊維を紡糸する連続重合紡糸法などによって行われる。
【0041】
また、原液を紡糸口のノズルから凝固浴の中に押出して、その中で固めて糸の形状とする湿式紡糸法であってもよい。具体的には、遠心式、ボビン式、連続式などにより行われ、ビスコース繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などを紡糸することができる。また、熱可塑性高分子を溶融させ、ノズルから連続した長繊維状に吐出しながら形成するスパンボンド法などであってもよい。
【0042】
積層工程(S12)は、紡糸工程(S11)で得られた紡糸済み無機繊維および有機繊維からなる糸状の繊維を積層して、無機繊維前駆体としてのアルミナ繊維前駆体からなる積層済み繊維集合体および有機繊維からなる積層済み有機繊維集合体を得る公知の工程である。例えば、ブローイング法で製造された紡糸済み無機繊維集合体の場合は、繊維集積部にシート状に集積された薄層の紡糸済み繊維集合体を折り畳んで繰り返し積み重ね、10層ないし100層の薄層シートからなる所定の嵩密度(g/cm)を有するシート状の積層済み繊維集合体を得ることができる。
【0043】
乾式圧力紡糸法で製造された紡糸済み無機繊維の場合は、紡糸工程により得られた糸状の無機繊維をチョップすることにより所定の長さに加工し比較的短い繊維にし、この短繊維を水に分散させ、得られた繊維分散液を成形治具内に流し込んで加圧、乾燥させることにより、積層した繊維からなる所定の嵩密度(g/cm)を有する積層済み繊維集合体を得ることができる。
【0044】
前述の有機繊維の紡糸方法により得られた紡糸済み有機繊維の場合、有機繊維を積層する積層工程(S12)は、紡糸工程(S11)とともに行うことができる。前述の紡糸工程(S11)において有機材料から紡糸済み有機繊維を得る製造過程で、積層済み有機繊維集合体も得ることができる。例えば、紡糸口金のノズルから一定速度で空気中に押し出し、繊維状にして冷却固化させて繊維を製造する過程で、紡糸液を繊維状にして冷却固化させる際に繊維状のものを積層するようにしてシート状に成形するようにしてもよい。
【0045】
図4は、本発明の実施の形態における無機繊維集合体および有機繊維集合体の斜視図であり、(a)は、積層済み無機繊維集合体Wmを示し、(b)は、積層済み有機繊維集合体Wuを示し、(c)は、焼成済み無機繊維集合体Wsおよび積層済み有機繊維集合体Wuを重ね合せた状態を示す。
【0046】
図4(a)に示すように、積層済み無機繊維集合体Wmは、積層の際または積層の後に、その後の製造工程や完成した触媒保持シール部材20の形状、大きさおよび構造などの設定条件に基づいて、幅Lw、長さLdおよび厚みtwを有するシート状に形成される。
また、図4(b)に示すように、積層済み有機繊維集合体Wuも、積層済み無機繊維集合体Wmと同様に、所定の厚みtを有し、積層済み無機繊維集合体Wmとほぼ同じ形状に形成される。
【0047】
焼成工程(S13)は、積層工程(S12)により得られたアルミナ繊維前駆体からなる積層済み無機繊維集合体を高温で焼くことにより乾燥および焼結させ、高い耐熱性を有するとともに、圧縮荷重印加時の高い弾力性を有するアルミナ繊維からなる焼成済み無機繊維集合体を得る公知の工程である。
【0048】
焼成工程においては、例えば、1,000℃ないし1,500℃で積層済み無機繊維集合体が焼成される。具体的には、積層済み無機繊維集合体を加熱し、約300℃で数時間保持し、300℃ないし600℃で1分間当たり2℃ないし3℃で上昇させ、さらに、500℃ないし1,500℃で1分間当たり4℃ないし6℃で逐次上昇させ、1,000℃ないし1,500℃で数十分保持することにより焼成する。この焼成温度が1,000℃未満または1,500℃を超えた場合や、焼成時間が所定時間未満または所定時間を超えた場合には、繊維集合体を十分に乾燥させ焼結させることができず、高い耐熱性および圧縮荷重印加時の高い弾力性を得ることができないおそれがある。
【0049】
重ね合せ工程(S14)は、焼成済み無機繊維集合体Wsに積層済み有機繊維集合体Wuを重ね合せて、重ね合せ済み繊維集合体Wkを得る工程である。
【0050】
図4(c)に示すように、重ね合せ工程(S14)においては、焼成済み無機繊維集合体Wsの下面側に積層済み有機繊維集合体Wuを重ね合せ接着剤などの接合手段により簡易に接合して、厚みtw+tの重ね合せ済み繊維集合体Wkを製造する。なお、焼成済み無機繊維集合体Wsの上面側に積層済み有機繊維集合体Wuを重ね合せて、重ね合せ済み繊維集合体Wkを製造してもよい。
【0051】
ニードルパンチ工程(S15)は、重ね合せ工程(S14)により得られた重ね合せ済み繊維集合体Wkに対して、例えば、公知のニードルパンチ装置30により、ニードルパンチ処理を行い、焼成済み無機繊維集合体Ws内の積層済み有機繊維集合体Wu内の有機繊維を互いに絡ませて、厚み方向に圧縮させ、所定の嵩密度(g/cm)を有する交絡済み繊維集合体を得る工程である。ニードルパンチ処理により積層済み有機繊維集合体Wu内の有機繊維の一部がニードルに形成された返りにより、引っ掛けられて焼成済み無機繊維集合体Ws内に引き込まれ、焼成済み無機繊維集合体Ws内の無機繊維と互いに絡み合うようになっている。
【0052】
この有機繊維は、高温になると、燃焼するようになっており、有機繊維が焼失することにより、焼成済み無機繊維集合体Wsが有機繊維による緊縛から開放され、弾力性が高まるように構成されている。また、図4(c)に示す重ね合せ済み繊維集合体Wkの積層済み有機繊維集合体Wuも、高温になると、燃焼して消失するようになっている。
したがって、積層済み有機繊維集合体Wuの厚みtは、高温で焼失した後に得られる焼成済み無機繊維集合体Wsの弾力性に影響を与えない程度の厚みになっている。
【0053】
ここで高温とは、例えば、焼成済み無機繊維集合体Wsがその後の工程を経て成形されて触媒保持シール部材20が製造され、触媒保持シール部材20が触媒コンバータ10に組み込まれ、さらに、触媒コンバータ10が車両に搭載された際車両の高負荷運転時などにエンジンから排出され、触媒コンバータ10を流通する排気ガスの温度をいい、数100℃程度のものである。
【0054】
この有機繊維は、焼成工程(S13)により得られた焼成済み無機繊維集合体Wsを十分に緊縛できる機械的強度を有し、高温で焼失する易燃性を有するもので構成されている。具体的には、有機繊維は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリビニルアルコ−ル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維などの熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。
【0055】
本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法は、積層工程(S12)で得られたアルミナ繊維前駆体からなる繊維集合体に対してニードルパンチ処理を行う一般的なニードルパンチ工程と異なり、焼成工程(S13)により得られたアルミナ繊維からなる焼成済み無機繊集合体Wsに対してニードルパンチ処理を行うことが特徴である。したがって、このニードルパンチ処理は、いわゆる仮止めの効果を有し、製造された触媒保持シール部材20を触媒コンバータ10に圧入により組み込む際の組み込み作業性を良好にすることができる。
【0056】
図5は、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法におけるニードルパンチ工程に使用されるニードルパンチ装置30の平面図であり、図6は、図5のA−A断面を示す断面図であり、図7は、図5のB−B断面を示す断面図である。
【0057】
図5に示すように、ニードルパンチ装置30は、第1ニードルパンチ部31と、第2ニードルパンチ部32と、第1ニードルパンチ部31の上流側に設けられ、重ね合せ済み繊維集合体Wkを第1ニードルパンチ部31に搬送する上流側コンベア33と、第1ニードルパンチ部31で加工された重ね合せ済み繊維集合体Wkを第2ニードルパンチ部32に搬送する中間コンベア34と、第2ニードルパンチ部32の下流側に設けられ、第2ニードルパンチ部32で加工された重ね合せ済み繊維集合体Wkを下流側に搬送する下流側コンベア35とを含んで構成されている。
【0058】
第1ニードルパンチ部31は、図6に示すように、ニードルボード31bと、ニードルボード31bの底面部31tに等間隔に配置され一端がニードルボード31bに固定された複数のニードル31nと、搬送された二点鎖線で示す重ね合せ繊維集合体Wkの上面側を支持し、ニードル31nを挿通させるよう貫通して形成された複数の上側挿通孔31uを有する上側支持プレート31pと、重ね合せ繊維集合体Wkの下面側を支持し、ニードル31nを挿通させるよう貫通して形成された複数の下側挿通孔31sを有する下側支持プレート31qとを含んで構成されている。
【0059】
本実施の形態の第1ニードルパンチ部31においては、この複数のニードル31nおよびニードル31nを挿通させる上側挿通孔31u、下側挿通孔31sを、重ね合せ繊維集合体Wkが搬送される方向に直交する方向で、複数列形成するようにしてもよい。
【0060】
各ニードル31nの先端部近傍には、重ね合せ繊維集合体Wkの積層済み有機繊維集合体Wuに突き刺された際に、重ね合せ繊維集合体Wkの一部の有機繊維を引っ掛けるための「返り」が形成されている。ニードル31nが、下降して積層済み有機繊維集合体Wuに突き刺された後、上昇して元の位置に戻る際、重ね合せ繊維集合体Wkの一部の有機繊維が、返りに引っ掛かり、焼成済み無機繊維集合体Ws内に引き込まれ、焼成済み無機繊維集合体Ws内の無機繊維に引き込まれた有機繊維が絡まるようになっている。
【0061】
このように、焼成済み無機繊維集合体Wsの下側に積層済み有機繊維集合体Wuが位置するよう、重ね合せ繊維集合体Wkが上流側コンベア33に載置されているが、焼成済み無機繊維集合体Wsの上側に積層済み有機繊維集合体Wuが位置するよう、重ね合せ繊維集合体Wkを上流側コンベア33に載置してもよい。この場合には、ニードル31nが下降して、最初に積層済み有機繊維集合体Wuを突き刺し、ついで焼成済み無機繊維集合体Wsを突き刺すことになるので、ニードル31nの返りは、積層済み有機繊維集合体Wuを突き刺した際に、内部の有機繊維を引っ掛けて、焼成済み無機繊維集合体Ws内に引き込むよう形成される。
【0062】
このニードル31nの個数、配置間隔、太さなどのニードルパンチ処理の設定条件は、触媒コンバータ10の特性、構造、形状および大きさなどの設定条件に基づいて適宜設定することができる。
【0063】
第1ニードルパンチ部31においては、図示しない駆動源から上下方向の駆動力を受けてニードルボード31bが下降し、上側支持プレート31pが下降して重ね合せ繊維集合体Wkを押さえると同時に、各ニードル31nが各上側挿通孔31uを通り、重ね合せ繊維集合体Wkを貫通して、さらに各下側挿通孔31sを通るようになっている。さらに、各ニードル31nが各下側挿通孔31sを通った後、すなわち、ニードルパンチ動作後に、上昇し、元の位置に復帰するとともに、上流側コンベア33、中間コンベア34により、重ね合せ繊維集合体Wkを所定距離だけ搬送する送り動作が行われる。これらのニードル31nのニードルパンチ動作と、送り動作が繰り返し行われるようになっている。
【0064】
このようにして、重ね合せ繊維集合体Wkの全体に亘って均等にニードルパンチ処理が実施されて重ね合せ繊維集合体Wk内の無機繊維が有機繊維と交絡することにより、緊縛されて圧縮された交絡済み繊維集合体Wpが得られる。ニードルパンチ処理における重ね合せ繊維集合体Wkの送り動作の1回当たりの送り量は、例えば、各ニードル31n間の間隔を表すニードルピッチと一致しており、重ね合せ繊維集合体Wkの縦および横が等間隔でニードルパンチ処理され、均一に圧縮された交絡済み繊維集合体Wpが得られる。
【0065】
第2ニードルパンチ部32は、図7に示すように、第1ニードルパンチ部31と同様、ニードルボード32bと、ニードルボード32bの底面部32tに、交互に密間隔と粗間隔になるよう配置され一端がニードルボード32bに固定された複数のニードル32nと、搬送された二点鎖線で示す重ね合せ繊維集合体Wkの上面側を支持し、ニードル32nを挿通させるよう貫通して形成された複数の上側挿通孔32uを有する上側支持プレート32pと、重ね合せ繊維集合体Wkの下面側を支持し、ニードル32nを挿通させるよう貫通して形成された複数の下側挿通孔32sを有する下側支持プレート32qとを含んで構成されている。
【0066】
この第2ニードルパンチ部32においてニードルパンチ処理した重ね合せ繊維集合体Wkにおける図5に領域Aで示す部分が、他の部分よりも多くニードルパンチ処理されているので、重ね合せ繊維集合体Wk内の無機繊維と有機繊維の交絡が多くなされ密に圧縮されており、他の部分よりも比較的機械的強度が高められている。
【0067】
この第2ニードルパンチ部32によりニードルパンチ処理された図5に領域Aで示す部分は、具体的には、触媒保持シール部材20が触媒コンバータ10に組み込まれ、この触媒コンバータ10が車両に搭載された際、排気ガス流れ方向の上流側端部の周辺及び下流側端部の周辺となる部分である。この部分に対してのみ高い密度でのニードルパンチ処理が行われるように、第1ニードルパンチ部31におけるニードル間のニードルピッチよりも短い間隔、例えば、ニードルピッチの1/3の間隔で各ニードル32nが配置されている。
【0068】
本実施の形態の第2ニードルパンチ部32においては、第1ニードルパンチ部31と同様、この複数のニードル32nおよびニードル32nを挿通させる上側挿通孔32u、下側挿通孔32sを重ね合せ繊維集合体Wkが搬送される方向に直交する方向で、複数列形成するようにしてもよい。
【0069】
各ニードル32nの先端部近傍には、第1ニードルパンチ部31と同様、重ね合せ繊維集合体Wkの積層済み有機繊維集合体Wuに突き刺された際に、重ね合せ繊維集合体Wkの一部の有機繊維を引っ掛けるための「返り」が形成されている。ニードル32nが、下降して積層済み有機繊維集合体Wuに突き刺された後、上昇して元の位置に戻る際、重ね合せ繊維集合体Wkの一部の有機繊維が、返りに引っ掛かり、焼成済み無機繊維集合体Ws内に引き込まれ、焼成済み無機繊維集合体Ws内の無機繊維に引き込まれた有機繊維が絡まるようになっている。
また、ニードル32nの個数、配置間隔、太さなどのニードルパンチ処理の設定条件は、触媒コンバータ10の特性、構造、形状および大きさなどの設定条件に基づいて適宜設定することができる。
【0070】
第2ニードルパンチ部32においては、第1ニードルパンチ部31と同様、図示しない駆動源から上下方向の駆動力を受けてニードルボード32bが下降し、上側支持プレート32pが下降して重ね合せ繊維集合体Wkを押さえると同時に、各ニードル32nが各上側挿通孔32uを通り、重ね合せ繊維集合体Wkを貫通して、さらに各下側挿通孔32sを通るようになっている。さらに、各ニードル32nが各下側挿通孔32sを通った後、すなわちニードルパンチ動作後に、上昇し、元の位置に復帰するとともに、中間コンベア34、下流側コンベア35、により、重ね合せ繊維集合体Wkを所定距離だけ搬送する送り動作が行われる。これらのニードル32nのニードルパンチ動作と、送り動作が繰り返し行われるようになっている。
【0071】
このようにして、重ね合せ繊維集合体Wkを部分的に補強するニードルパンチング処理が実施されて無機繊維が有機繊維に交絡することにより緊縛されて圧縮された交絡済み繊維集合体Wpが得られる。ニードルパンチ処理の重ね合せ繊維集合体Wkの送り動作の1回当たりの送り量は、第1ニードルパンチ部31と同様、各ニードル31n間の間隔を表すニードルピッチと一致している。
【0072】
このニードルパンチ装置30においては、上流側コンベア33により搬送された重ね合せ繊維集合体Wkは、第1ニードルパンチ部31により、第1のニードルパンチ処理が行われ、厚み方向に圧縮された後、中間コンベア34により搬送され、第2ニードルパンチ部32により、第2のニードルパンチ処理が行われて補強された後、下流側コンベア35により下流側に設置された機器に向けて搬送されるようになっている。
【0073】
バインダ含浸工程(S16)は、ニードルパンチ工程(S15)により得られた交絡済み繊維集合体Wpに対して、さらに、バインダ含浸装置40により有機バインダを含浸させ、補強された含浸済み繊維集合体Wgを得る公知の工程である。
【0074】
図8は、本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法におけるバインダ含浸工程に使用されるバインダ含浸装置40の平面図であり、図9は、図8のC−C断面を示す断面図であり、図10は、図8のD−D断面を示す断面図である。
【0075】
図8に示すように、バインダ含浸装置40は、第1バインダ含浸部41と、第2バインダ含浸部42と、第1バインダ含浸部41の上流側に設けられ、交絡済み繊維集合体Wpを第1バインダ含浸部41に搬送する上流側コンベア43と、第1バインダ含浸部41で加工された交絡済み繊維集合体Wpを第2バインダ含浸部42に搬送する中間コンベア44と、第2バインダ含浸部42の下流側に設けられ、第2バインダ含浸部42で加工された含浸済み繊維集合体Wgを下流側に搬送する下流側コンベア45とを含んで構成されている。なお、この上流側コンベア43、中間コンベア44および下流側コンベア45を連結し一体化して1個のコンベアで構成してもよい。
【0076】
第1バインダ含浸部41は、図9に示すように、シャワーボード41bと、シャワーボード41bの底面部41tに等間隔に配置され一端がシャワーボード41bに固定された3個のバインダシャワー41sとを含んで構成されている。
【0077】
このバインダシャワー41sは、先端部にノズル41nが形成されており、ノズル41nから交絡済み繊維集合体Wpの上面に向けて液状のバインダを放射させるようになっている。各バインダシャワー41sのノズル41nから放射されたバインダは、交絡済み繊維集合体Wpの上面の全体に亘って均等に付着して塗布されるようになっており、交絡済み繊維集合体Wpに対して塗布されたバインダが全体に均一に含浸される。
【0078】
このバインダは、各バインダシャワー41sのノズル41nから連続的に放射されるとともに、交絡済み繊維集合体Wpが上流側コンベア43および中間コンベア44により連続して搬送されるので、全体に亘って均一に塗布され含浸される。
【0079】
第2バインダ含浸部42は、図10に示すように、シャワーボード42bと、シャワーボード42bの底面部42tの中央部に所定の間隔で配置され一端がシャワーボード42bに固定された2個のバインダシャワー42sと、底面部42tの両端部に配置され一端がシャワーボード42bに固定された2個のバインダシャワー42rと、バインダシャワー42sおよびバインダシャワー42rから放出されるバインダが、所定の範囲に塗布されるよう貫通孔が形成され、交絡済み繊維集合体Wpの上部に配置されたマスキングボード42mとを含んで構成されている。
【0080】
このバインダシャワー42sは、先端部にノズル42nが形成されており、ノズル42nからマスキングボード42mの貫通孔に向けて液状のバインダを放射させるようになっている。また、バインダシャワー42rには、バインダシャワー42s先端部にバインダシャワー42sよりもバインダの放出量が少ないノズル42zが形成されており、ノズル42zからマスキングボード42mの貫通孔に向けて液状のバインダを放射させるようになっている。
【0081】
各バインダシャワー42sのノズル42nおよび各バインダシャワー42rのノズル42zから放射されたバインダは、マスキングボード42mの貫通孔を通過して交絡済み繊維集合体Wpの上面に付着して塗布される。
【0082】
このバインダは、各バインダシャワー42sのノズル42nおよび各バインダシャワー42rのノズル42zから連続的に放射されるとともに、交絡済み繊維集合体Wpが中間コンベア44および下流側コンベア45により連続して搬送されるので、所定の範囲に均一に塗布され含浸される。
【0083】
このバインダは、ゴムラテックスなどの公知の有機系バインダからなり、塗布に適した所定の粘度を有するラテックス系溶液になるよう調製され、第1バインダ含浸部41および第2バインダ含浸部42に供給される。
【0084】
また、バインダシャワー41s、42s、42rの個数、配置間隔、ノズル41n、42n、42zおよびノズル41n、42n、42zから放出されるバインダの放出量などのバインダ含浸処理の設定条件は、触媒コンバータ10の特性、構造、形状および大きさなどの設定条件に基づいて適宜設定することができる。
【0085】
図11は、本実施の形態における含浸済み繊維集合体Wgを切断して所定形状の成形済み繊維集合体Wfを得る成形工程を説明する説明図であり、(a)は、加工前の含浸済み繊維集合体Wgの平面図であり、(b)は、加工後の成形済み繊維集合体Wfの平面図である。
【0086】
成形工程(S17)は、バインダ含浸工程(S16)によりバインダが含浸された含浸済み繊維集合体Wgを切断して所定形状に成形し、マット状の成形済み繊維集合体Wfを得る公知の工程である。
【0087】
成形工程(S17)においては、図示しないカッタ装置により、図11(a)に示すように、含浸済み繊維集合体Wgが切断され、図11(b)に示すように、長方形の平面を有するとともに、長手方向の一端部が凸状に形成され、他端部が凹状に形成されたマット状の成形済み繊維集合体Wfが得られる。
【0088】
図11(a)に示すように、1個の含浸済み繊維集合体Wgから、長手方向の側面部が、ニードルパンチ処理およびバインダ含浸処理により補強された12個の成形済み繊維集合体Wfが得られる。
この成形済み繊維集合体Wfの両端部を、凹凸状以外の形で形成してもよい。例えば、凹凸のない平坦な両端部で形成してもよく、傾斜した両端部で形成してもよく、波型の両端部で形成してもよい。また、両端部が長手方向の端部で形成されていなくてもよい。例えば、短手方向、すなわち長手方向に直交する方向に両端部を有するよう形成してもよい。
【0089】
次に、本実施の形態の触媒保持シール部材20が適用される触媒コンバータ10の製造方法について説明する。
【0090】
図12は、本実施の形態における触媒コンバータ10の製造方法の説明図であり、(a)は、成形済み繊維集合体Wfを触媒担持体11の周囲に巻き付ける前の状態を示し、(b)は、触媒担持体11を成形済み繊維集合体Wfに載置した状態を示し、(c)は、成形済み繊維集合体Wfを触媒担持体11の周囲に巻き付けた状態を示す。図13は、触媒コンバータ10の製造方法の説明図であり、(a)は、成形済み繊維集合体Wfが巻き付けられた触媒担持体11および各構成要素の分解斜視図を示し、(b)は、組み立てられた触媒コンバータ10の斜視図を示す。
【0091】
まず、図12(a)、(b)に示すように、成形済み繊維集合体Wfを触媒担持体11の周囲に巻きつけ、図12(c)に示すように、成形済み繊維集合体Wfの凸部tと凹部oとを嵌合させる。次いで、この触媒担持体11を、上側収容部13uと下側収容部13sとにより挟み込み、上側収容部13uのフランジ13aと下側収容部13sのフランジ13bとを当接させ、スポット溶接などの接合手段によりフランジ13aとフランジ13bとを接合する。次いで、接合された触媒担持体収容部13の一方端部と上流側連結部15の端部15aとをアーク溶接などの接合手段により接合し、さらに触媒担持体収容部13の他方端部と下流側連結部17の端部17aとをアーク溶接などの接合手段により接合して、図13(b)に示すように、触媒コンバータ10が得られる。
【0092】
本実施の形態に係る触媒保持シール部材20は、以上の製造方法によって製造されるので、次の効果が得られる。
図14は、本実施の形態における触媒保持シール部材20が組み込まれた触媒コンバータ10の断面図である。
【0093】
すなわち、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法は、無機材料および有機材料をそれぞれ紡糸して紡糸済み無機繊維および有機繊維を得る紡糸工程(S11)と、紡糸済み無機繊維および有機繊維をそれぞれ積層して積層済み無機繊維集合体Wmおよび有機繊維集合体Wuを得る積層工程(S12)と、積層済み無機繊維集合体Wmを焼成して焼成済み無機繊維集合体Wsを得る焼成工程(S13)と、焼成済み無機繊維集合体Wsに積層済み有機繊維集合体Wuを重ね合せて重ね合せ済み繊維集合体Wkを得る重ね合せ工程(S14)と、重ね合せ済み繊維集合体にニードルを打ち込んで焼成済み無機繊維集合体内の無機繊維に積層済み有機繊維集合体Wk内の有機繊維を交絡させて交絡済み繊維集合体Wpを得るニードルパンチ工程(S15)と、交絡済み繊維集合体Wpにバインダを含浸させ含浸済み繊維集合体Wgを得るバインダ含浸工程(S16)と、含浸済み繊維集合体Wgを切断して所定形状に成形され成形済み繊維集合体Wfを得る成形工程(S17)とを含むことを特徴としている。
【0094】
その結果、従来の触媒保持シール部材のように、触媒保持シール部材が持つべき面圧が充分に得られないという問題が解消される。
【0095】
すなわち、本実施の形態の触媒保持シール部材20の製造方法においては、積層工程で得られた積層済み無機繊維集合体に対してニードルパンチ処理を行う一般的なニードルパンチ工程と異なり、積層済み無機繊維集合体Wmをニードルパンチ処理することなく、直接焼成する焼成工程(S13)により焼成済み無機繊維集合体Wsを製造し、得られた焼成済み無機繊維集合体Wsに対してニードルパンチ処理を行って焼成済み無機繊維集合体WS内の無機繊維に積層済み有機繊維集合体Wu内の有機繊維を交絡させて最終的に触媒保持シール部材20を製造している。この製造方法で得られた触媒保持シール部材20は、ニードルパンチ処理によって、一時的に焼成済み無機繊維集合体Ws内の無機繊維に積層済み有機繊維集合体Wu内の有機繊維が交絡され、厚み方向に圧縮されている。この触媒保持シール部材20が、触媒コンバータ10に組み込まれた際に、繊維素材が有している復元力を有効に発揮させることができ、好適な面圧が得られ、優れた保持力とシール性を有して触媒担持体を保持することができる。
【0096】
図14に示すように、この触媒コンバータ10においては、触媒コンバータ10が車両に搭載された際、車両の高負荷運転時などに排出される高温の排気ガスが、矢印方向に流通して触媒コンバータ10内を流通したとき、排気ガスの高い熱エネルギが触媒コンバータ10の触媒保持シール部材20に伝わり、この熱エネルギにより、触媒保持シール部材20の有機繊維が燃焼する。有機繊維が燃焼して消失するので、触媒保持シール部材20が有機繊維による緊縛から開放され触媒保持シール部材20の弾力性が増大する。
【0097】
すなわち、無機繊維と有機繊維とが交絡し、有機繊維により屈曲させられた状態から無機繊維が開放されることにより、無機繊維が屈曲のない元の状態に復元しようとする復元力が増大して、触媒保持シール部材20の曲げに対する弾力性が高まり、例えば、円筒形に成形されて押圧されたときの反発力が向上する。
【0098】
このように有機繊維の焼失により、図14に示すように、触媒コンバータ10内で円形に成形された触媒保持シール部材20において、ケース12の内壁面を押圧する押圧力Foが高まると同時に、触媒担持体11の外周面を押圧する押圧力Fiが高まる。その結果、触媒保持シール部材20の高い面圧(MPa)が得られ、触媒担持体11が確実にケース12内に保持される。同時に、触媒保持シール部材20により触媒担持体11とケース12との間に隙間が生ずることはなく、触媒担持体11とケース12との間の隙間における排気ガスのシール性が向上するという効果がある。
【0099】
また、本実施の形態に係る触媒コンバータ10は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒担持体11と、触媒担持体11を収容するケース12と、触媒担持体11を囲むようにして触媒担持体11とケース12との間に介装された触媒保持シール部材20とを備え、触媒保持シール部材20が、前述の触媒保持シール部材20の製造方法により製造された触媒保持シール部材20で構成されたことを特徴としている。
【0100】
その結果、前述のように、触媒コンバータ10が車両に搭載された際、触媒保持シール部材20の有機繊維が焼失し、ケース12内で触媒担持体11が触媒保持シール部材20により確実に保持されるとともに、シール性の高い触媒コンバータ10が得られる。
【0101】
本実施の形態に係る触媒コンバータ10においては、ケース12の触媒担持体収容部13が上側収容部13uと、下側収容部13sとにより構成される二分割構造で構成された場合について説明したが、本発明に係る触媒コンバータにおいては、ケースの触媒担持体収容部を円筒状の単一構造で構成してもよい。
【0102】
図15は、本実施の形態に係る触媒コンバータ10におけるケース12の触媒担持体収容部の変形例を示す分解斜視図である。
図15に示すように、本実施の形態の変形例に係る触媒コンバータ100は、触媒担持体11と、触媒担持体11を収容するケース112と、触媒担持体11とケース112との間に組み込まれた触媒保持シール部材20とを含んで構成されている。
【0103】
ケース112は、触媒担持体収容部113と、触媒担持体収容部113の一方端部に接合され上流側の排気管14と連結される上流側連結部115と、触媒担持体収容部113の一他方端部に接合され下流側の排気管16と連結される下流側連結部117とを有している。触媒担持体収容部113は、耐熱性のステンレスからなり、円筒状の単一構造で形成されており、内部には触媒担持体11および触媒保持シール部材20が圧入されて収容されるようになっている。
【0104】
触媒コンバータ100においては、例えば、触媒担持体収容部113の一方端部と上流側連結部115とがアーク溶接などの接合手段により接合され、次いで、触媒担持体収容部113に触媒担持体11および触媒保持シール部材20が圧入された後、触媒担持体収容部113の他方端部と下流側連結部117とがアーク溶接などの接合手段により接合さて組み立てられるように構成されている。
【0105】
この構成により、前述のように、触媒コンバータ100が車両に搭載された際、触媒保持シール部材20の有機繊維が焼失して面圧が増大し、ケース112内で触媒担持体11が触媒保持シール部材20により確実に保持されるとともに、シール性の高い触媒コンバータ100が得られる。
【0106】
本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法においては、紡糸工程(S11)により得た紡糸済み有機繊維を積層工程(S12)により積層し、得られた積層済み有機繊維集合体Wuと積層済み無機繊維集合体Wmとを重ね合せた場合について説明した。
【0107】
しかしながら、本発明の媒保持シール部材の製造方法における紡糸工程においては、紡糸して得られる紡糸済み有機繊維の代わりに、所定の機械的性質を有する公知の有機繊維集合体を使用し、この有機繊維集合体と、積層済み無機繊維集合体Wmとを重ね合せて重ね合せ済み繊維集合体Wkを製造するようにしてもよい。
【0108】
また、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法においては、ニードルパンチ工程(S13)において、ニードルパンチ装置30を、第1ニードルパンチ部31と、第2ニードルパンチ部32との2種類のニードルパンチ部で構成し、重ね合せ済み繊維集合体Wkに対して異なるニードルパンチ処理を行って部分的に補強した場合について説明した。
【0109】
しかしながら、本発明の触媒保持シール部材の製造方法においては、重ね合せ済み繊維集合体Wkに対して1台のニードルパンチ装置により、1種類のニードルパンチ部により、1種類のニードルパンチ処理を行って、ニードルパンチ処理の効率を高めるようにしてもよい。
【0110】
また、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法においては、ニードルパンチ工程(S13)において、重ね合せ済み繊維集合体Wkを、その下面部に積層済み有機繊維集合体Wuを取り付けたもので構成した場合について説明した。
【0111】
しかしながら、本発明のニードルパンチ工程においては、重ね合せ済み繊維集合体Wkを、無機繊維のみからなるもので構成し、すなわち、重ね合せ工程を省略し、ニードルパンチ装置において、搬送される無機繊維集合体の下側に有機繊維シート部を配置するようにしてもよい。この場合、ニードルパンチ装置のニードルにより無機繊維集合体がニードルパンチされる際に、ニードルが有機繊維シート部を貫通し、ニードルの先端部に設けられている返りにより有機繊維シート部の有機繊維の一部を引っ掛けて、無機繊維集合体内に引き込み、無機繊維集合体内の無機繊維の一部に有機繊維を絡ませるようにしてもよい。
【0112】
また、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法においては、バインダ含浸工程(S16)において、バインダ含浸装置40を、第1バインダ含浸部41と、第2バインダ含浸部42との2種類のバインダ含浸部で構成し、交絡済み繊維集合体Wpに対して異なるバインダ含浸処理を行って部分的に補強した場合について説明した。
【0113】
しかしながら、本発明の触媒保持シール部材の製造方法においては、交絡済み繊維集合体Wpに対して1台のバインダ含浸装置により、1種類のバインダ含浸処理を行いバインダ含浸処理の効率を高めるようにしてもよい。
【0114】
また、本実施の形態に係る触媒保持シール部材20の製造方法においては、バインダ含浸工程(S16)を、ニードルパンチ工程(S15)と成形工程(S17)の間に行う場合について説明した。
【0115】
しかしながら、本発明の触媒保持シール部材の製造方法においては、バインダ含浸工程を省略し、焼成工程に続いて成形工程を行い、触媒保持シール部材の製造工程の効率をより高めるようにしてもよい。
【0116】
以上説明したように、本発明によれば、繊維素材が有している復元力を有効に発揮させることができ、優れた保持力とシール性を有する触媒保持シール部材の製造方法を提供することができるという効果を有し、触媒コンバータなどに使用される触媒保持シール部材全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材の製造方法により製造された触媒保持シール部材が適用される触媒コンバータの断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材が適用される触媒コンバータの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材の製造方法のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における無機繊維集合体および有機繊維集合体の斜視図であり、(a)は、積層済み無機繊維集合体を示し、(b)は、積層済み有機繊維集合体を示し、(c)は、焼成済み無機繊維集合体および積層済み繊維集合体を重ね合せた状態を示す。
【図5】本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材の製造方法におけるニードルパンチ工程に使用されるニードルパンチ装置の平面図である。
【図6】図5のA−A断面を示す断面図である。
【図7】図5のB−B断面を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る触媒保持シール部材の製造方法におけるバインダ含浸工程に使用されるバインダ含浸装置の平面図である。
【図9】図8のC−C断面を示す断面図である。
【図10】図8のD−D断面を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態における含浸済み繊維集合体を切断して所定形状の成形済み繊維集合体を得る成形工程を説明する説明図であり、(a)は、加工前の含浸済み繊維集合体の平面図であり、(b)は、加工後の成形済み繊維集合体の平面図である。
【図12】本発明の実施の形態における触媒コンバータの製造方法の説明図であり、(a)は、成形済み繊維集合体を触媒担持体の周囲に巻き付ける前の状態を示し、(b)は、触媒担持体を成形済み繊維集合体に載置した状態を示し、(c)は、成形済み繊維集合体を触媒担持体の周囲に巻き付けた状態を示す。
【図13】本発明の実施の形態における触媒コンバータの製造方法の説明図であり、(a)は、成形済み繊維集合体が巻き付けられた触媒担持体および各構成要素の分解斜視図を示し、(b)は、組み立てられた触媒コンバータの斜視図を示す。
【図14】本実施の形態における触媒保持シール部材が組み込まれた触媒コンバータの断面図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る触媒コンバータにおけるケースの触媒担持体収容部の変形例を示す分解斜視図である。
【図16】従来の触媒保持シール部材の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0118】
10、100 触媒コンバータ
11 触媒担持体
12、112 ケース
13、113 触媒担持体収容部
14、16 排気管
15、115 上流側連結部
17、117 下流側連結部
20 触媒保持シール部材
30 ニードルパンチ装置
31 第1ニードルパンチ部
32 第2ニードルパンチ部
33、43 上流側コンベア
34、44 中間コンベア
35、45 下流側コンベア
40 バインダ含浸装置
41 第1バインダ含浸部
42 第2バインダ含浸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料を紡糸して紡糸済み無機繊維を得る紡糸工程と、
前記紡糸済み無機繊維を積層して積層済み無機繊維集合体を得る積層工程と、
前記積層済み無機繊維集合体を焼成して焼成済み無機繊維集合体を得る焼成工程と、
前記焼成済み無機繊維集合体に有機繊維集合体を重ね合せて重ね合せ済み繊維集合体を得る重ね合せ工程と、
前記重ね合せ済み繊維集合体にニードルを打ち込んで前記焼成済み無機繊維集合体内の無機繊維に前記有機繊維集合体内の有機繊維を交絡させて交絡済み繊維集合体を得るニードルパンチ工程と、
前記交絡済み繊維集合体を所定形状に成形して成形済み繊維集合体を得る成形工程と、
を含むことを特徴とする触媒保持シール部材の製造方法。
【請求項2】
前記紡糸工程が、有機材料を紡糸して紡糸済み有機繊維を得る工程を含み、前記積層工程が、前記紡糸済み有機繊維を積層して積層済み有機繊維集合体を得る工程を含み、前記重ね合せ工程が、前記積層済み有機繊維集合体と、前記積層済み無機繊維集合体とを重ね合せることを特徴とする請求項1に記載の触媒保持シール部材の製造方法。
【請求項3】
前記交絡済み繊維集合体にバインダを含浸させ含浸済み繊維集合体を得るバインダ含浸工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の触媒保持シール部材の製造方法。
【請求項4】
内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒担持体と、前記触媒担持体を収容するケースと、前記触媒担持体を囲むようにして前記触媒担持体と前記ケースとの間に介装された触媒保持シール部材とを備えた触媒コンバータにおいて、
前記触媒保持シール部材が、請求項1または請求項2に記載の触媒保持シール部材の製造方法により製造された交絡済み繊維集合体により構成されたことを特徴とする触媒コンバータ。
【請求項5】
内燃機関から排出される排気ガスを浄化する触媒担持体と、前記触媒担持体を収容するケースと、前記触媒担持体を囲むようにして前記触媒担持体と前記ケースとの間に介装された触媒保持シール部材とを備えた触媒コンバータにおいて、
前記触媒保持シール部材が、請求項3に記載の触媒保持シール部材の製造方法により製造された含浸済み繊維集合体により構成されたことを特徴とする触媒コンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−281233(P2009−281233A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133052(P2008−133052)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】