説明

触媒担持体

【課題】種類が限定されない基体であって、表面が樹脂からなる基体上に触媒微粒子が強固に固定される触媒担持体を提供する。
【解決手段】表面が樹脂からなる基体と、基体上に備わり、不飽和結合部を有するシランモノマーと触媒微粒子とを含む触媒微粒子層と、を有し、触媒微粒子層は、シランモノマーの不飽和結合部と基体との化学結合により、基体に固定されていることを特徴とする触媒担持体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種類が限定されない基体であって、表面が樹脂からなる基体上に触媒微粒子が強固に固定される触媒担持体に関し、例えば、自動車や工場などの排ガス処理に用いられるフィルターや、内装品や家電製品を基体として触媒が担持されることにより、VOCなどの有害ガスも効率よく分解できる触媒担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境や人体に影響を及ぼす可能性がある有害ガスが問題視されるようになっている。例えば、自動車分野においては、特にディーゼル車などについて、排気ガスの規制が年々厳しくなっている。また、室内環境の分野においても、シックハウス症候群の原因となる、揮発性有機化合物(VOC)の使用が制限されている。
【0003】
このような有害ガスの除去方法としては、活性炭やゼオライトなどの吸着材を用いて有害ガスを吸着除去する方法(例えば、特許文献1)や、空気にオゾンを混合し、紫外線を照射することで発生する活性酸素によって有害ガスを分解する方法(例えば、特許文献2)、また、二酸化チタンなどの光触媒物質が持つ、強力な酸化分解作用を利用して、有害ガスや汚染物質などを分解除去する方法が検討されている(例えば、特許文献3)。さらに、遷移金属や貴金属の微粒子を酸化触媒体として利用する方法も検討されている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特開昭58−133820号公報
【特許文献2】特開平6−385号公報
【特許文献3】特開平10−155887号公報
【特許文献4】特開平5−285386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の有害ガスの除去方法には以下のような様々な問題がある。
【0005】
例えば、活性炭やゼオライトなどの吸着剤を用いて吸着除去する場合、初期は高い吸着能を示しても、飽和状態になると性能が落ちるため、新しい吸着剤と交換したり、吸着剤を再生するためのシステムを併設するなどの必要がある。また、空気にオゾンを混合し、紫外線を照射することで発生する活性酸素によって有害ガスを分解する場合、大量の空気を処理する際の処理後の気体排出時に、微量のオゾンが同時に流出する可能性があり、不快なオゾン臭の発生や人体への影響が懸念される。さらに、遷移金属や貴金属の微粒子を酸化触媒体として利用すると、非常に高い効果が得られるが、表面エネルギーが大きく非常に凝固しやすいため、当該微粒子を多孔質の無機微粒子などに担持させる、などの方法を用いることが多い。しかし、これらの触媒粒子は無機物であり、焼結しか固定する方法がないため、基体の素材としては、焼結に耐えうるセラミックや金属などの無機加工物に限定されてしまい、フィルターなどに応用する場合、樹脂のように筐体との一体成形ができず、用いる形状にも制限がある、などの問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、低温で基体表面に強固に固定できるため、表面が樹脂である基体に容易に触媒微粒子を固定でき、様々な形状や環境下で用いることのできる新規な触媒担持体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、第1の発明は、表面が樹脂からなる基体と、 基体上に備わり、不飽和結合部を有するシランモノマーと触媒微粒子とを含む触媒微粒子層と、を有し、触媒微粒子層は、シランモノマーの不飽和結合部と基体との化学結合により、基体に固定されていることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、触媒微粒子層は、無機微粒子をさらに含み、無機微粒子はシランモノマーにより基体に固定されるとともに、触媒微粒子は無機微粒子に吸着され固定されることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0009】
さらに、第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、触媒微粒子は酸化触媒微粒子であり、かつ、遷移金属あるいは貴金属から選ばれる1種以上の金属元素の化合物であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0010】
さらに、第4の発明は、上記第3の発明において、酸化触媒微粒子に含まれる金属元素の原子数濃度が、触媒微粒子層中の全元素の原子数に対して0.01%以上30%以下であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0011】
さらに、第5の発明は、上記第1、第3、及び第4の発明のいずれかにおいて、シランモノマーの重量が、触媒微粒子の重量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0012】
さらに、第6の発明は、上記第2乃至第4の発明のいずれかにおいて、シランモノマーの重量が、触媒微粒子と無機微粒子の重量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0013】
さらに、第7の発明は、上記第1乃至第6の発明のいずれかにおいて、基体表面の樹脂は、耐熱性を有することを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0014】
さらに、第8の発明は、上記第1乃至第7の発明のいずれかにおいて、化学結合は、グラフト重合であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
さらに、第9の発明は、上記第8の発明において、グラフト重合は、放射線グラフト重合であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0015】
さらに、本発明の別の観点として、第10の発明は、表面が樹脂からなる基体と、基体上に備わり、不飽和結合部を有するシランモノマーと無機微粒子とを含む無機微粒子層と、無機微粒子層上に備わり、触媒微粒子を含む触媒微粒子層とを有し、無機微粒子層は、シランモノマーの不飽和結合部と基体との化学結合により、基体に固定され、触媒微粒子層は、触媒微粒子が無機微粒子層に付着することにより、無機微粒子層に固定されていることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0016】
この場合の付着とは、化学結合だけでなく、ファンデルワールス力や水素結合などの化学結合以外の結合も含めた状態を言う。
【0017】
さらに、第11の発明は、上記第10の発明において、触媒微粒子層は、不飽和結合部を含むシランモノマーをさらに含み、触媒微粒子層は、触媒微粒子層のシランモノマーの不飽和結合部と無機微粒子層のシランモノマーの不飽和結合部の化学結合により、無機微粒子層に付着していることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0018】
さらに、第12の発明は、上記第10又は第11の発明において、触媒微粒子は酸化触媒微粒子であり、かつ、遷移金属あるいは貴金属から選ばれる1種以上の金属元素の化合物であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0019】
さらに、第13の発明は、上記第12の発明において、酸化触媒微粒子に含まれる金属元素の原子数濃度が、触媒微粒子層中の全元素の原子数に対して0.01%以上30%以下であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0020】
さらに、第14の発明は、上記第10乃至第13の発明のいずれかにおいて、シランモノマーの重量が、触媒微粒子と無機微粒子の重量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0021】
さらに、第15の発明は、上記第10乃至第15の発明のいずれかにおいて、基体表面の樹脂は、耐熱性を有する樹脂であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0022】
さらに、第16の発明は、上記第10乃至第16の発明のいずれかにおいて、前記化学結合は、グラフト重合であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【0023】
さらに、第17の発明は、上記第17の発明において、グラフト重合は、放射線グラフト重合であることを特徴とする触媒担持体を提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、触媒微粒子層がシランモノマーの不飽和結合部と基体との化学結合を介して基体に固定されるので、低温でしかも充分な耐久性を保持する状態で固定することができるため、金属やセラミックなどの無機基体はもちろん、従来は不可能であった有機系の素材からなる部材を基体とする触媒担持体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態の触媒担持体について図1・図2を用いて詳述する。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態の触媒担持体100の模式図である。本実施形態の触媒担持体100は、不飽和結合部を有するシランモノマー3を介して、酸化触媒微粒子2が基体1へ化学結合3にて固定されたものである。すなわち、酸化触媒微粒子2を含む触媒微粒子層10は、酸化触媒微粒子2のシランモノマー3の不飽和結合部と基体1との化学結合により、基体1に固定されている。
【0027】
なお、図1では本発明の第1実施形態の一例をわかりやすく模式的に示すため、微粒子を単層として形成した図であらわしたが、微粒子を複数重ねることにより微粒子の層を形成してもよい。また、微粒子同士が化学結合してもよい。
【0028】
また、本実施形態の触媒担持体100の活性をあげるためには、触媒微粒子2の表面積を増やすことが考えられるが、その方法として、比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aに酸化触媒微粒子2を担持させたものを基体1表面に化学結合5させるというものが挙げられる。
【0029】
具体的なシランモノマー3が有する不飽和結合部としては、ビニル基や、エポキシ基や、スチリル基や、メタクリロ基や、アクリロキシ基や、イソシアネート基などが挙げられる。
【0030】
本実施形態の触媒担持体100で用いられるシランモノマー3の一例としては、ビニルトリメトキシシランや、ビニルトリエトキシシランや、ビニルトリアセトキシシランや、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩や、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランや、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランや、p−スチリルトリメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランや、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランや、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランや、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0031】
シランモノマー3は、一種もしくは二種以上混合して用いられる。シランモノマー3の使用形態としては、必要量のシランモノマー3を溶剤に溶解することにより用いられる。また、分散性を改善するために塩酸や、硝酸などの鉱酸などが加えられる。
【0032】
シランモノマー3の溶剤としては、エタノールやメタノールやプロパノールやブタノールなどの低級アルコール類や、蟻酸やプロピオン酸などの低級アルキルカルボン酸類や、トルエンやキシレンなどの芳香族化合物や、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類や、メチルセルソルブやエチルセルソルブなどのセロソルブ類や水を単独または複数組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本実施形態の触媒担持体100に用いられる酸化触媒微粒子2は、前述したシランモノマー3の溶液に分散した状態で製造に用いられる。酸化触媒微粒子2の分散は、ホモミキサーやマグネットスターラーなどを用いた撹拌分散や、ボールミルやサンドミルや高速回転ミルやジェットミルなどを用いた粉砕・分散、超音波を用いた分散などにより行われる。
【0034】
また、酸化触媒微粒子2は、分散したコロイド状分散液や、粉砕により微粒子化して得られた分散液の状態で、触媒担持体100の製造に用いられる。例えば、酸化触媒微粒子2のコロイド状分散液や粉砕して得られた分散液にシランモノマー3を加え、その後、還流下で加熱させながら、酸化触媒微粒子2の表面にシランモノマー3を脱水縮合反応により結合させてシランモノマー3からなる被覆を形成する方法や、粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、或いは、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180℃で加熱してシランモノマーを酸化触媒微粒子2の表面に脱水縮合反応により結合させ、次いで、粉砕・解砕して再分散して用いる方法がある。
【0035】
粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180°で加熱してシランモノマー3を酸化触媒微粒子2の表面に反応結合させる場合、酸化触媒微粒子2の重量に対して、0.01質量%から40質量%のシランモノマー3、すなわち、酸化触媒微粒子2とシランモノマー3との重量比が100:0.01〜40で酸化触媒微粒子2の表面に結合されてあれば、酸化触媒微粒子2の基体1の表面への結合強度は実用上問題ない。
【0036】
シランモノマー3は、その量が多いほど触媒微粒子層10は強固な層を形成可能であり、耐久性も向上する。しかしながら、シランモノマー3の量が多くなると、酸化触媒微粒子2の表面を被覆する割合が大きくなるため、酸化触媒としての機能が低下してしまう。またシランモノマー3も不飽和結合を持った状態で配向できなくなる上に、微粒子同士が凝集しやすくなるため、均一に分散できなくなる。特に、シランモノマー3の重量が酸化触媒微粒子2の重量に対して40質量%より多くなると、酸化触媒としての機能の低下と酸化触媒微粒子2の分散性低下は顕著になる。したがって、耐久性の向上と酸化触媒微粒子2の分散が均一にできる範囲としては、0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となる。
【0037】
また、酸化触媒微粒子2からなる触媒微粒子層10が厚くなると、触媒微粒子層10の応力や使用環境によっては凝集破壊により触媒微粒子層10が劣化することもある。そのため、酸化触媒微粒子2の重量に対してシランモノマー3の重量と合計して40質量%以内であれば、必要に応じて次の化合物を配合してもよい。例えば、不飽和結合を有するシランカップリング剤や、Si(OR1)4(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、テトラメトキシシランや、テトラエトキシシランなどや、R2nSi(OR3)4-n(式中、R2は炭素数1〜6の炭化水素基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、nは1〜3の整数を示す)で示されるアルコキシシラン化合物、一例として、メチルトリメトキシシランや、メチルトリエトキシシランや、ジメチルジエトキシシランや、フェニルトリエトキシシランや、ヘキサメチルジシラザンや、ヘキシルトリメトキシシランなど、他にアルコキシオリゴマーなどが挙げられる。
【0038】
また、シランモノマー3で被覆された酸化触媒微粒子2を調製する方法として、比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aのコロイド状分散液や粉砕して得られた分散液に、シランモノマー3を加え、その後、還流下で加熱させながら、比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aの表面にシランモノマー3を脱水縮合反応により結合させた後、酸化触媒微粒子2を比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aに吸着させる方法で製造することも可能である。図2は、無機微粒子20−Aを用いて製造された触媒担持体100を模式的に示す図であり、図2に示すように、酸化触媒微粒子2は、無機微粒子20−Aに吸着している。
【0039】
比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aの表面にシランモノマー3を脱水縮合反応により結合させた後、酸化触媒微粒子2を比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aに吸着させて製造する場合、酸化触媒微粒子2と無機微粒子20−Aの重量に対して、0.01質量%から40質量%のシランモノマー3、すなわち、酸化触媒微粒子2及び無機微粒子20−Aとシランモノマー3との重量比が、100:0.01〜40で無機微粒子20−Aの表面に結合されてあれば、酸化触媒微粒子2が吸着された無機微粒子20−Aの基体1の表面への結合強度は実用上問題ない。
【0040】
シランモノマー3は、その量が多いほど触媒微粒子層10は強固な層を形成可能であり、耐久性も向上する。しかしながら、シランモノマー3の量が多くなると、無機微粒子20−Aの表面を被覆する割合が大きくなるため、酸化触媒としての機能が低下してしまう。またシランモノマー3も不飽和結合を持った状態で配向できなくなる上に、微粒子同士が凝集しやすくなるため、均一に分散できなくなる。特に、シランモノマー3の重量が酸化触媒微粒子2と無機微粒子20−Aの重量に対して40質量%より多くなると、酸化触媒としての機能の低下と無機微粒子20−Aの分散性低下は顕著になる。したがって、耐久性の向上と無機微粒子20−Aの分散が均一にできる範囲としては、0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となる。
【0041】
本実施形態の触媒担持体100に用いられる基体1を構成する材料としては、表面が樹脂からなるものであれば特に限定されない。表面を除く基体1の材料としては、例えば、各種樹脂や、合成繊維や、天然繊維や、金属材料や、ガラスや、セラミックなどが挙げられる。
【0042】
ここで、基体1の表面を構成する樹脂の例としては、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂や、ポリスチレン樹脂や、ABS樹脂や、AS樹脂や、EVA樹脂や、ポリメチルペンテン樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂や、ポリ塩化ビニリデン樹脂や、ポリアクリル酸メチル樹脂や、ポリ酢酸ビニル樹脂や、ポリアミド樹脂や、ポリイミド樹脂や、ポリカーボネート樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂や、ポリアセタール樹脂や、ポリアリレート樹脂や、ポリスルホン樹脂や、ポリフッ化ビニリデン樹脂や、ETFEや、PTFEなどの熱可塑性樹脂や、ポリ乳酸樹脂や、ポリヒドロキシブチレート樹脂や、修飾でんぷん樹脂や、ポリカプロラクト樹脂や、ポリブチレンサクシネート樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂や、ポリブチレンサクシネートテレフタレート樹脂や、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂や、フェノール樹脂や、ユリア樹脂や、メラミン樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂や、ジアリルフタレート樹脂や、エポキシ樹脂や、エポキシアクリレート樹脂や、ケイ素樹脂や、アクリルウレタン樹脂や、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、シリコーン樹脂や、ポリスチレンエラストマーや、ポリエチレンエラストマーや、ポリプロピレンエラストマーや、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーや、漆などの天然樹脂などが挙げられる。
【0043】
また、酸化触媒微粒子2が有する酸化触媒機能により酸化分解を促進するためには熱が必要であり酸化触媒微粒子2が酸化分解を促進するための必要な熱は、分解する対象物によっても異なるが、雰囲気温度で50℃以上である場合がある。また、例えば、本実施形態の触媒担持体100を自動車マフラーのフィルターや火力発電所の有害ガスフィルターなどに用いる場合、反応が行われる触媒表面は局部的に100℃以上となる場合がある。そのため、前記基体1表面の樹脂は、耐熱性を有することが望ましい。
【0044】
耐熱性を有する樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネートポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、超高分子ポリエチレンなどのエンジニアプラスチックや、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイドポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ETFEやPTFEなどのフッ素樹脂などのスーパーエンジニアリングプラスチックや、ポリフェノール、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの耐熱性熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0045】
本実施形態では、これらの基体1の形態は、板状や、フィルム状や、繊維状や、布状や、メッシュ状や、ハニカム状など、使用目的に合った種々の形状及びサイズ等のものが適用でき、特に制限されるものではないことから、例えば自動車マフラーや排気ガス処理用のフィルター、火力発電所や各種工場などから排出される有害ガスフィルターなどに用いることができる。また、空気清浄機、温風器、ドライヤー、電気掃除機、扇風機、エアコン、換気扇などの各種電気製品用のフィルターや、インテリア材、壁紙、防虫網、裁断可能な多目的シートなどに用いることにより、VOCなどの室内ガスを分解除去できるため、室内環境の向上も図ることができる。
【0046】
また、本実施形態の触媒担持体100に用いられる酸化触媒微粒子2としては、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの遷移金属、Ru、Rh、Pd、Ag、Re、Os、Ir 、Pt、Auなどの貴金属、Ba、Sr、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属、La 、Ceなどの希土類元素、Seなどの非金属などが挙げられ、これらから単独若しくは複数選択することができる。
【0047】
さらに、酸化触媒微粒子2を吸着させる無機微粒子20−Aとしては、比表面積が80m2/g以上であれば特に限定されるものではないが、例えば、二酸化チタンや、アルミナや、ゼオライトや、シリカや、活性炭や、アパタイトや、珪藻土などが挙げられる。
【0048】
本実施形態では、触媒微粒子層10を構成するすべての微粒子が、シランモノマー3が結合された酸化触媒微粒子2でなくてもよい。また、酸化触媒微粒子2の酸化触媒機能により酸化分解を促進させるためには熱を必要とするため、その他の環境下において酸化触媒として機能する無機微粒子を複合させてもよい。
【0049】
例えば、バンドギャップ以上のエネルギーを有する波長の光を照射することにより、光触媒機能を発現する光触媒微粒子を酸化触媒微粒子2と複合化してもよい。光触媒微粒子としては、二酸化チタンや、酸化亜鉛や、酸化タングステンや、酸化鉄や、チタン酸ストロンチウムや、硫化カドミウムや、セレン化カドミウムなどの公知の金属化合物半導体が挙げられるが、透明性、耐久性に優れ、無害である二酸化チタンが、特に好ましい。当該光触媒微粒子を複合化することにより、触媒担持体100は、酸化触媒微粒子2の作用する温度以下であっても、酸化触媒機能を発現させることが可能となる。
【0050】
また、放射性希有元素を微量含有する天然放射性稀有元素鉱物を複合化してもよい。放射性希有元素を微量含有する天然放射性稀有元素鉱物としては、例えば、デービト鉱や、センウラン鉱や、ブランネル石や、ニンギョウ石や、リンカイウラン石や、カルノー石や、ツャムン石や、メタチャムン石や、フランセビル石や、トール石や、コフィン石や、サマルスキー石や、トリウム石や、トロゴム石や、サマルスキー石や、トリウム石や、トロゴム石や、モナズ石や、タンタル石や、バデライトや、イルメナイトなどが挙げられる。さらに、天然放射性稀有元素鉱物の使用量を少なくするために、トルマリンなどの自発分極を有する材料などが含まれていてもよい。
【0051】
天然放射性希有元素鉱物は、含有する微量の放射性希有元素が放つα線の電離作用により、スーパーオキシドアニオンやヒドロキシラジカル、一重項酸素などの活性酸素を生成し、該活性酸素により酸化反応が行われるため、防塵性を有する触媒担持体100の触媒機能を更に向上させる。
【0052】
なお、酸化触媒微粒子2の径、及びその他上記各種材料の微粒子径については本実施形態の方法によって形成すれば特に限定されないが、後述するグラフト重合を好適に行うには、これらの酸化触媒微粒子2の径につき平均の粒子径が300nm以下とすることが好ましい。さらに、平均の粒子径が100nm以下であれば、基体1へのより強固な結合が達成されるため、耐久性の点においてより一層好適である。
【0053】
第1実施形態の触媒担持体100においては、基体1上の触媒微粒子層10に含まれる、酸化触媒微粒子2の金属元素の原子数濃度が、0.01%から30%の間であればよい。原子数濃度が0.01%よりも小さくなると、酸化触媒として機能しなくなり、一方、原子数濃度を30%よりも大きくすると、強固に固定することが困難となる。また、製造コスト上の観点からも好ましくない。
【0054】
なお、原子数濃度とは、基体1上に形成された微粒子層を形成するすべての元素中の、酸化触媒粒子2に含まれる金属元素の割合のことをいい、以下の式で求めることができる。すなわち、第1実施形態においては、触媒微粒子層10が基体1上の微粒子層に相当する。なお、この割合は基体1上に微粒子層を形成する元素のみで算出するものであり、基体1上に微粒子層を形成した後に吸着されると思われる、水分などの様々な物質成分は除外して考えるものとする。例えば、第1実施形態において、酸化触媒粒子2が酸化物であり、シランモノマー3により被覆された酸化触媒粒子2のみによって触媒微粒子層10を形成させる場合、金属元素と酸素とシランモノマー3の各元素中の金属元素の割合が原子数濃度である。
【0055】
原子数濃度(%)=(酸化触媒微粒子2の金属原子数/基体1上に形成された全ての微粒子層に含まれる原子数)×100
つづいて、触媒微粒子層10を基体1上に形成させる方法について説明する。第1実施形態の触媒担持体100の触媒微粒子層10は、酸化触媒微粒子2を被覆するシランモノマー3の不飽和結合部と基体とのグラフト重合により、基体上に固定される。グラフト重合により固定されることにより、より強固に触媒微粒子層10を基体1上に固定することが可能である。なお、シランモノマーのグラフト重合を効率良く、かつ、均一に行わせるために、予め、コロナ放電処理や、プラズマ放電処理や、火炎処理や、クロム酸や過塩素酸などの酸化性酸水溶液や水酸化ナトリウムなどを含むアルカリ性水溶液による化学的な処理などにより、基体1の樹脂表面が親水化処理してもよい。
【0056】
本実施形態におけるグラフト重合としては、例えばパーオキサイド触媒を用いるグラフト重合や、熱や光エネルギーを用いるグラフト重合や、放射線によるグラフト重合などが挙げられる。このうち、重合プロセスの簡便性や、生産スピード等の観点より、放射線グラフト重合が特に適している。ここで、グラフト重合において用いられる放射線としては、α線や、β線や、γ線や、電子線や、紫外線などを挙げることができるが、本実施形態において用いるのには、γ線や、電子線や、紫外線が特に適している。
【0057】
最後に、固定する酸化触媒微粒子2が分散した溶液を、固定する基体1の表面に、一般に行われているコーティング方法である、スピンコート法や、ディップコート法や、スプレーコート法や、キャストコート法や、バーコート法や、マイクログラビアコート法や、グラビアコート法や、または部分的に塗布する方法として、スクリーン印刷法や、パッド印刷法や、オフセット印刷法や、ドライオフセット印刷法や、フレキソ印刷法や、インクジェット印刷法などで塗布した後、放射線を照射し、酸化触媒微粒子2を化学結合によって固定して製造する。また固定する酸化触媒微粒子2を比表面積が80m/g以上である無機微粒子20−Aに吸着させたものが分散した溶液の場合でも、同方法にて触媒微粒子層10を基体1上に形成できる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の触媒担持体200について図3を用いて詳述する。
【0059】
図3は、本発明の第2実施形態の触媒担持体200の模式図である。本実施形態の触媒担持体200は、無機微粒子20―Bで形成された無機微粒子層30の層上に、新たに酸化触媒微粒子2からなる、触媒微粒子層40とした第2の微粒子層が形成されている点が第1実施形態の担持体100と相違する。すなわち、無機微粒子層30の表面に、さらに触媒微粒子層40が化学結合5により備わる、積層構造の形態を有するものである。
【0060】
無機微粒子20―Bで用いられるものとしては、酸化チタン、アルミナ、シリカなどの無機酸化物が好適に用いられる。この無機微粒子層30を触媒微粒子層40と基体1との間に形成することにより、酸化触媒微粒子2がシランモノマーを被覆していなくても、無機微粒子層20―Bと縮合反応にて固定されることにより、基材1と強固に固定されるので、酸化触媒微粒子2の表面が覆われることがなくなり、より高い触媒活性を得られる。
【0061】
なお、図3では本発明の第2実施形態の一例を判りやすく模式的に示すため、微粒子を単層で形成した図であらわしたが、微粒子が複数重なってそれぞれの微粒子の層を形成していてもよく、また微粒子同士が化学結合していてもよいのは第1実施形態の場合と同様である。
【0062】
以下、第1実施形態の触媒担持体100との相違点である、製法及び部材の構成について説明をする。また、基体や微粒子の素材や製法に関して、第1実施形態の触媒担持体100と共通する点については、説明を省略する。
【0063】
本実施形態の触媒担持体200における、基体1と無機微粒子20―Bからなる無機微粒子層30と酸化触媒微粒子2からなる触媒微粒子層40とを結合させる好適な方法としては、シランモノマー3が結合された無機微粒子20―Bが分散した溶液を基体1の表面に塗布し、必要に応じて溶剤を加熱乾燥するなどの方法により除去して無機微粒子20―Bからなる無機微粒子層30を形成する。その後、シランモノマー3が結合された酸化触媒微粒子2を、無機微粒子層30の表面上に塗布して新たな触媒微粒子層40を形成し、放射線を照射することにより、無機微粒子20―Bで形成された無機微粒子層30と基体1および無機微粒子20―Bと酸化触媒微粒子2とを一度にグラフト重合させることにより結合させる方法により製造される。
【0064】
本実施形態においては、粉砕により微粒子化して得られた分散液にシランモノマー3を加えた後、或いは、シランモノマー3を加えて粉砕により微粒子化した後、固液分離して100℃から180°で加熱してシランモノマー3を酸化触媒微粒子2の表面に反応結合させる場合、無機微粒子20−Bと触媒微粒子2の重量に対して、シランモノマー3の重量が0.01質量%から40質量%、すなわち、無機微粒子20−B及び酸化触媒微粒子2とシランモノマー3との重量比が、100:0.01〜40であれば、酸化触媒微粒子2がシランモノマー3に被覆されることにより、触媒機能が低下したり、酸化触媒微粒子2や無機微粒子20−Bの凝集が起きて、均一に分散できなくなるなどの恐れはない。
【0065】
シランモノマー3は、その量が多いほど触媒微粒子10は強固な層を形成可能であり、耐久性も向上する。しかしながら、シランモノマー3の量が多くなると、酸化触媒微粒子2や無機微粒子20−Bの表面を被覆する割合が大きくなるため、酸化触媒としての機能が低下してしまう。またシランモノマー3も不飽和結合を持った状態で配向できなくなる上に、微粒子同士が凝集しやすくなるため、均一に分散できなくなる。特に、シランモノマー3の重量が酸化触媒微粒子2と無機微粒子20−Bの重量に対して40質量%より多くなると、酸化触媒としての機能の低下と無機微粒子20−Bや酸化触媒微粒子2の分散性低下は顕著になる。したがって、耐久性の向上と無機微粒子20−Bや酸化触媒微粒子2の分散が均一にできる範囲としては、0.01質量%以上40質量%以下、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上20質量%以下となる。
【0066】
また、第2実施形態の触媒担持体200においては、基体1上の無機微粒子層、及び触媒微粒子層10に含まれる、酸化触媒微粒子2の金属元素の原子数濃度が、0.01%から30%の間であればよい。原子数濃度が0.01%よりも小さくなると、酸化触媒として機能しなくなり、一方、原子数濃度を30%よりも大きくすると、強固に固定することが困難となる。また、製造コスト上の観点からも好ましくない。
【0067】
さらに、本実施形態においては、先にコーティングされた無機微粒子20―Bからなる無機微粒子層30にはシランモノマー3が存在しており、酸化触媒微粒子2の表面と縮合反応することが可能であるため、酸化触媒微粒子2は、必ずしもシランモノマー3を結合していなくてもよい。さらにまた、酸化触媒微粒子2が有するファンデルワールス力により、酸化触媒微粒子2が無機微粒子層30に付着するようにしてもよい。
【0068】
また、酸化触媒微粒子2を含む分散液が水及び極性溶媒の場合、無機微粒子20からなる無機微粒子層30は親水性であることが望ましい。親水性にする手段として、光触媒微粒子層を形成し、紫外線などのエネルギー線により超親水化させてもよい。
【実施例】
【0069】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
下記実施例1〜実施例20の試料である触媒微粒子担持体の製造にあたっては、岩崎電気株式会社製、エレクトロカーテン型電子線照射装置、CB250/15/180L、を用い、電子線グラフト重合により実施した。これに対して、各比較例の親水性を有する複合部材の製造にあたっては、電子線は用いず、塗布後加熱、乾燥の方法とした。
【0071】
(実施例1)
酸化触媒微粒子として市販の5%白金担持アルミナ(NEケムキャット株式会社製)をイオン交換水に対して5.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を酸化触媒微粒子に対して5.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーを白金担持アルミナ微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理された白金担持アルミナ微粒子をイオン交換水に5.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径16nmに再度粉砕分散した。なお、ここでいう平均粒子径とは、体積平均粒子径のことをいう。
【0072】
また、ETFE性80メッシュを、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、エアーブロアーで余剰分を除去した後、120℃、3分間乾燥した。次に、白金担持アルミナ微粒子分散液を塗布したETFEメッシュに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、白金担持アルミナ微粒子をシランモノマーのグラフト重合によりETFEメッシュに結合させた酸化触媒担持体を得た。
【0073】
(実施例2)
比表面積が80m/g以上である無機微粒子として市販のγ−アルミナUFA−150(昭和電工株式会社製)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を、γ−アルミナ微粒子に対して1質量%となるように加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱してシランモノマーを比表面積が80m/g以上であるγ−アルミナ微粒子の表面に縮合反応させる。続いて、PtCl・HOの0.1%水溶液に上記γ−アルミナ微粒子を浸漬させ、水素雰囲気下150℃で加熱する。得られた白金担持アルミナ微粒子をイオン交換水に5.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径16nmに再度粉砕分散した。
【0074】
また、ETFE性80メッシュを、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、エアーブロアーで余剰分を除去した後、120℃、3分間乾燥した。次に、上記粉砕分散液を塗布したETFEメッシュに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、白金担持アルミナ微粒子が吸着した無機微粒子をシランモノマーのグラフト重合によりETFEメッシュに結合させた酸化触媒担持体を得た。
【0075】
(実施例3)
無機微粒子として市販の二酸化チタン微粒子(テイカ株式会社製、SMT−100)をメタノールに対して10.0質量%、シランモノマーとして3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、KBM−503)を無機微粒子に対して15.0質量%加えてpHを3.0に塩酸で調製した後、ビーズミルにより平均粒子径18nmに粉砕分散した。その後、凍結乾燥機により固液分離して120℃で加熱し、シランモノマーを二酸化チタン微粒子の表面に脱水縮合反応により化学結合させて被覆を形成した。得られた表面処理された二酸化チタン微粒子をメタノールに10.0質量%に調製し、ビーズミルにより平均粒子径16nmに再度粉砕分散した。
【0076】
また、ETFE性80メッシュを、上記粉砕分散溶液に浸漬させ、エアーブロアーで余剰分を除去した後、120℃、3分間乾燥した。次に、二酸化チタン微粒子分散液を塗布したETFEメッシュに電子線を200kVの加速電圧で5Mrad照射することで、二酸化チタン微粒子をシランモノマーのグラフト重合によりETFEメッシュに結合させた前駆体を得た。この前駆体を、試料表面での紫外線光強度が1.0mW/cmとなるように、20Wのブラックライト(東芝ライテック株式会社製、FL20SBLB)に24時間照射した後、実施例1の方法で調整した白金担持アルミナ微粒子分散液を用いて、実施例1と同様の方法で固定した。
【0077】
(実施例4)
実施例1において、酸化触媒微粒子である5%白金担持アルミナの代わりにマンガン酸化物を用い、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0078】
(実施例5)
実施例2において、酸化触媒微粒子である5%白金担持アルミナの代わりに5%金担持チタニアを用い、実施例2と同様の方法で試料を作成した。
【0079】
(実施例6)
実施例1において、酸化触媒微粒子である5%白金担持アルミナの代わりに0.8%白金担持アルミナを用い、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0080】
(実施例7)
実施例2において、PtCl・HOの0.1%水溶液の代わりにPtCl・HOの0.0003%水溶液を用い、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0081】
(実施例8)
実施例3において、酸化触媒微粒子である5%白金担持アルミナの代わりに3%白金担持アルミナを用い、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0082】
(実施例9)
実施例4において、シランモノマーの重量が、酸化触媒微粒子に対して0.8質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例4と同様の方法で試料を作成した。
【0083】
(実施例10)
実施例1において、シランモノマーの重量が酸化触媒微粒子に対して0.005質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0084】
(実施例11)
実施例2において、シランモノマーの重量が、酸化触媒微粒子と無機微粒子に対して0.005質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0085】
(実施例12)
実施例3において、シランモノマーの重量が、酸化触媒微粒子と無機微粒子に対して0.005質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0086】
(実施例13)
実施例1において、シランモノマーの重量が酸化触媒微粒子に対して45質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0087】
(実施例14)
実施例2において、シランモノマーの重量が、酸化触媒微粒子と無機微粒子に対して45質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0088】
(実施例15)
実施例3において、シランモノマーの重量が、酸化触媒微粒子と無機微粒子に対して45質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0089】
(実施例16)
実施例1において、ETFEメッシュに代えて、目付け60g/mのPET不織布を用いて実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0090】
(実施例17)
実施例1において、酸化触媒微粒子である5%白金担持アルミナの代わりに0.5%白金担持アルミナを用いるとともに、シランモノマーの重量が酸化触媒微粒子に対して0.005質量%となるように3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加え、実施例1と同様の方法で試料を作成した。
【0091】
(実施例18)
実施例3において、シランモノマーが結合されていない白金担持アルミナ微粒子を用い、実施例3と同様の方法で試料を作成した。
【0092】
(比較例1)
PtCl・HOの1%水溶液にセラミックハニカムを浸漬させ、500℃で3時間焼結して酸化触媒担持体を得た。
【0093】
<一酸化炭素の分解性>
構成した試料1gをアルミ容器に入れた後、アルミ容器を120℃に昇温し、100ppm程度の濃度の一酸化炭素を0.5L/minで通過するようにアルミ容器内を通す。アルミ容器内を通過した気体をテドラーパックに密封し、テドラーパック内の一酸化炭素濃度を一酸化炭素ガス検知管(株式会社ガステック製)を用いて測定した。
【0094】
分解率(%)={(試験前の一酸化炭素濃度)−(試験後の一酸化炭素濃度)/(試験前の一酸化炭素濃度)}×100
【0095】
<耐久性評価>
構成した試料1gをイオン交換水1000mlに浸漬させ、超音波洗浄器で30分間洗浄した後、一酸化炭素の分解性試験を行い、一酸化炭素の分解率を測定した。
【0096】
【表1】

【0097】
上記の結果より、本発明で得られた酸化触媒担持体は、従来品であるセラミックハニカムと同等のガス分解能を有していることが確認できた。また超音波洗浄前と後のガス分解率が変わらないことから、耐久性についても従来品と同等であることが確認できた。ただし、シランモノマーを酸化触媒微粒子及び無機微粒子に対して45質量%加えた実施例においては、粒子が凝集し、均一な膜の形成が困難であっただけでなく、超音波にて洗浄後のガス分解効率が半減したことから考えると、耐久性が落ちたことがわかった。また、それぞれのフィルターの厚みが、本発明の触媒担持体の厚みが従来品の1/25であることを考えると、本発明の触媒担持体の方が、酸化触媒機能が優れていると言える。さらに、セラミックハニカムでは製造方法の関係上、大きさや形状が限られるが、本発明の触媒担持体では基体に樹脂を用いることができるため、様々な大きさ、形状とすることが可能である。例えばフィルターに応用する場合、筐体を樹脂としたときに、一体成形をすることも可能となるため、従来品と比較すると、汎用性はかなり高いと言える。また樹脂を用いることにより、従来品よりも低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1実施形態の触媒担持体の模式図である。
【図2】第1実施形態の触媒担持体の模式図である。
【図3】第2実施形態の触媒担持体の模式図である。
【符号の説明】
【0099】
100 :触媒担持体(第1実施形態)
1 :基体
2 :酸化触媒微粒子
3 :シランモノマー
5 :化学結合
10 :触媒微粒子層(第1実施形態)
20−A:比表面積の高い無機微粒子
200 :触媒担持体(第2実施形態)
20―B:無機微粒子
30 :無機微粒子層
40 :触媒微粒子層(第2実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が樹脂からなる基体と、
前記基体上に備わり、不飽和結合部を有するシランモノマーと触媒微粒子とを含む触媒微粒子層と、を有し、
前記触媒微粒子層は、前記シランモノマーの不飽和結合部と前記基体との化学結合により、前記基体に固定されていることを特徴とする触媒担持体。
【請求項2】
前記触媒微粒子層は、無機微粒子をさらに含み、
前記無機微粒子は前記シランモノマーにより前記基体に固定されるとともに、前記触媒微粒子は前記無機微粒子に吸着され固定されることを特徴とする請求項1に記載の触媒担持体。
【請求項3】
前記触媒微粒子は酸化触媒微粒子であり、かつ、遷移金属あるいは貴金属から選ばれる1種以上の金属元素の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒担持体。
【請求項4】
前記酸化触媒微粒子に含まれる金属元素の原子数濃度が、前記触媒微粒子層中の全元素の原子数に対して0.01%以上30%以下であることを特徴とする請求項3に記載の触媒担持体。
【請求項5】
前記シランモノマーの重量が、前記触媒微粒子の重量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1、3または4に記載の触媒担持体。
【請求項6】
前記シランモノマーの重量が、前記触媒微粒子と前記無機微粒子との重量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の触媒担持体。
【請求項7】
前記基体表面の樹脂は、耐熱性を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の触媒担持体。
【請求項8】
前記化学結合は、グラフト重合であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の触媒担持体。
【請求項9】
前記グラフト重合は、放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項8に記載の触媒担持体。
【請求項10】
表面が樹脂からなる基体と、
前記基体上に備わり、不飽和結合部を有するシランモノマーと無機微粒子とを含む無機微粒子層と、
前記無機微粒子層上に備わり、触媒微粒子を含む触媒微粒子層とを有し、
前記無機微粒子層は、前記シランモノマーの不飽和結合部と前記基体との化学結合により、前記基体に固定され、
前記触媒微粒子層は、前記触媒微粒子が前記無機微粒子層に付着することにより、前記無機微粒子層に固定されていることを特徴とする触媒担持体。
【請求項11】
前記触媒微粒子層は、不飽和結合部を含むシランモノマーをさらに含み、
前記触媒微粒子層は、前記触媒微粒子層のシランモノマーの不飽和結合部と前記無機微粒子層のシランモノマーの不飽和結合部の化学結合により、前記無機微粒子層に付着していることを特徴とする請求項10に記載の触媒担持体。
【請求項12】
前記触媒微粒子は、
酸化触媒微粒子であり、かつ、遷移金属あるいは貴金属から選ばれる1種以上の金属元素の化合物であることを特徴とする請求項10又は11に記載の触媒担持体。
【請求項13】
前記酸化触媒微粒子に含まれる金属元素の原子数濃度が、前記触媒微粒子層中の全元素の原子数に対して0.01%以上30%以下であることを特徴とする請求項12に記載の触媒担持体。
【請求項14】
前記シランモノマーの重量が、前記触媒微粒子と前記無機微粒子との重量に対して0.01質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の触媒担持体。
【請求項15】
前記基体表面の樹脂は、耐熱性を有することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の触媒担持体。
【請求項16】
前記化学結合は、グラフト重合であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の触媒担持体。
【請求項17】
前記グラフト重合は、放射線グラフト重合であることを特徴とする請求項16に記載の触媒担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−161838(P2008−161838A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356634(P2006−356634)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(391018341)NBC株式会社 (59)
【Fターム(参考)】