説明

触媒気相反応のための機器および方法ならびにその使用

触媒発熱気相反応のための改善された反応器であって、供給ガスの流れ方向で見て、入口帯域(1)、少なくとも1種の触媒(4)を含有する反応帯域(2)、生成ガスのための出口帯域(3)を含む反応器について記載する。該反応器は、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域に、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減し、これにより、用いる供給ガス混合物の早期発火リスクまたは入口帯域(1)における望ましくない副反応の発生リスクを低減する手段、例えば、隔離ライナー(6)および/または冷却剤の輸送のための装置を備え、ならびに/あるいは、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における反応器の内壁は不活性材料からなる。
該反応器は、とりわけアンモニアの酸化のために、例えば、ハニカムとして形作られ通例用いられる白金細目網より小さな横断面を有する遷移金属触媒を用いることが好ましい硝酸プラントにおいて、用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒気相反応のための改善された反応器およびこれを用いて実施する方法、とりわけ、改善された酸化方法、例えば、例えばカプロラクタムまたはとりわけ硝酸の調製において成分として用いることができるアンモニアの酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒気相反応を実施する際、多くの場合で反応熱が発生する。これにより反応器内部で生じる温度上昇は、とりわけ爆発性の出発材料混合物を利用するときに危険である可能性がある。
【0003】
発熱気相反応で発生した熱は、例えば、熱くなった反応器壁を介した熱伝導によるか、向流方向に移動する渦巻き状の反応ガスに起因する対流によるか、または熱線の結果として、反応帯域の上流に位置決めされた反応器の区画に達する可能性がある。この熱輸送の結果、供給ガスは反応帯域に達する前に非常に強く加熱されうるので、この帯域に達する前に望ましくない副反応または制御されていない予備反応が起こる可能性がある。
【0004】
工業的に大規模で実施されている発熱気相反応の一例は、硝酸(“HNO”)の調製である。これは一般に、オストワルト法でのPt/Rh触媒上方におけるアンモニアの接触酸化により、工業的規模で実施される。これに関し、NHは非常に選択的にNOに酸化され、その後これがさらなる工程の過程でNOに酸化され、最後に吸収塔で水と反応してHNOを生じる。Pt/Rh触媒は微細な細目網として形作られ、バーナーで広範囲にわたり延伸されている。これら細目網の典型的な寸法は直径0.5〜5mである。通常、細目網充填物の厚さは、用いる細目網の数に応じて2〜3ミリメートルから最大2センチメートルである。典型的には約8〜12体積%のアンモニアおよび空気を含むガス混合物を細目網に通し、細目網の温度は発熱反応に起因して約850〜950℃に達する。
【0005】
続いて高温の反応ガスを熱交換器で冷却し、ここで、蒸気を生じさせるか、プロセスガスを加熱する。
【0006】
触媒の形状寸法、すなわち、直径が大きく高さが非常に低い細目網の選択理由は、第一に、NOの後続反応が起こりうるためNHの酸化は非常に短い滞留時間で起こらなければならなく、第二に、細目網を通る流れにより引き起こされる圧力低下および細目網に対する機械的応力をできるだけ低く保たなければならないことである。したがって、工業的HNO生産において細目網を通る流れは、圧力範囲に応じて、大気条件下で約0.4〜1.0m/s、3〜7bar絶対圧の範囲での中圧燃焼の場合で約1〜3m/s、8〜12bar絶対圧の範囲での高圧燃焼の場合で約2〜4m/sという比較的低い線速度で生じ、ここにおいて、示した速度は、反応熱により加熱されたガスの表面速度である。これに加えて、流れが速すぎると、Pt/Rh細目網上での反応は、流入するガス流の冷却作用により消える可能性がある(“噴出”現象)。
【0007】
アンモニア/空気混合物の流入速度の下限は、触媒床上流のフリーなガス空間への触媒上で発火した反応の逆火をどんな場合でも除外することができるように、起こりうる熱的アンモニア燃焼の火炎速度により特徴付けられる。
【0008】
古典的な細目網触媒は別として、遷移金属酸化物に基づく卑金属触媒をアンモニアの酸化に使用することは、科学的文献および特許文献に記載されている。これらは、単独またはPt/Rh細目網と組合せて用いることができる。
【0009】
この文献の概説を、例えば、Sadykov et al.,Appl.Catal.General A:204(2000)59−87に見いだすことができる。卑金属触媒の使用への原動力は、貴金属、詳細には白金の節約である。貴金属触媒はアンモニアの酸化で消費され、したがって、細目網を通る処理量に応じて約3カ月から1年の間隔で取り替えなければならず、これが少なからぬ費用を発生させる。
【0010】
通常、遷移金属酸化物に基づく触媒は、Pt/Rh細目網触媒と同様に、比較的低い流入速度で操作される。これは、とりわけ、アンモニアの酸化が触媒上で発火した後ふたたび消えることを避けるために必要である。遷移金属酸化物に基づく触媒は一般に貴金属触媒より活性が低く、後者に比べ著しく高い発火温度および高い消炎温度を有する。
【0011】
国際公開99/25650号には、カートリッジに入れられた非常に微細な粒状の触媒ペレットの使用により、圧力低下が過剰に増大することを容認することなく、“噴出”温度を低下させることができる方法が記載されている。
【0012】
アンモニアの接触酸化では、実際の酸化触媒と例えば高温の管壁上で接触する前にアンモニアが発火し、このように燃焼して非選択的にNおよびHOまたはNOになる可能性があるということが、つねに問題になる。
【0013】
欧州出願公開EP−A−1028089号には、NH/空気混合物を運ぶためのディストリビューターユニットへのアンモニア燃焼からの背面放射は、これらの内部の加熱をもたらす可能性があり、その結果、流入するNHの一部がこれらの内部の表面上でNOに酸化されると記載されている。
【0014】
NHの早期発火の問題は、工業的に適切な8〜12体積%という高いNH濃度でとりわけ重要である。これは、この濃度では、反応で生じた熱の結果、燃焼は自動継続し、強化される可能性さえあるためである。
【0015】
したがって、実際の発火温度、すなわち、それを超えるとNHの分解が起こりうる臨界表面温度に加え、NHの分解により放出される熱の除去も非常に重要である。
【0016】
この除去は、アンモニアを担っているガス流が表面の上方をより速く流れ(冷却作用)、この流れが冷たいほど改善される。これに加えて、触媒に接触する前の供給ガス流の滞留時間を短くし、したがって、起こりうる非選択的予備反応の反応時間も短くする。
【0017】
Pt/Rh細目網上方でのアンモニアの酸化によるHNOの工業的調製では、非常に活性なPt/Rh触媒の低い開始温度により、約200℃という比較的低い入口温度が可能になる。このようにして、流入速度が遅いにもかかわらず、アンモニアの早期発火は該方法の工業的実施に対し障害にならない。
【0018】
しかしながら、低い触媒活性を有する触媒を用いる場合、供給ガス混合物をより高温にしなければならないか(予熱)、プロセスをより低い流入速度で操作しなければならないか、好ましくはそれら2つの処置の組合せを採用しなければならない。これらの条件下ではアンモニアの早期発火のリスクが高くなる。
【0019】
今日、白金細目網と比較してより小さな横断面およびより深い触媒床を有するハニカム触媒を用いる実験は、供給ガス混合物の流入速度が遅いと望ましいNOの形成への選択性は非常に低くしかならないことを示している。したがって、そのような方法の経済性は疑わしい。この作用は、理論上は供給ガス混合物の流入速度を上昇させることにより相殺されうる。しかしながら、圧力低下に不均衡な増大が起こるほか、環境によってはアンモニアの不完全燃焼しか実現しないため、流入速度の上昇は実際は制限を受ける。
【0020】
原理上、同じ問題が、他の工業的に操作される発熱気相反応、例えば、アンモニアの酸化以外の酸化反応、炭化水素のエポキシ化または遊離基ハロゲン化にも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開99/25650号
【特許文献2】欧州出願公開EP−A−1028089号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Sadykov et al.,Appl.Catal.General A:204(2000)59−87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、触媒発熱気相反応のための反応器および方法であって、用いる供給ガスまたは供給ガス混合物の早期発火リスクあるいは望ましくない副反応の発生リスクを低減するものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、供給ガスが反応して生成ガスを形成することによる触媒発熱気相反応のための反応器であって、供給ガスの流れ方向で見て、入口帯域(1)、少なくとも1種の触媒(4)を含有する反応帯域(2)および生成ガスのための出口帯域(3)を含み、ここにおいて、入口帯域(1)の領域もしくは入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域は、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減する手段を備え、ならびに/または、入口帯域(1)の領域もしくは入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における反応器内壁は不活性材料からなる、前記反応器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に従った装置を縦断面で示す図である。
【図2】図2は、本発明に従った他の装置を縦断面で示す図である。
【図3】図3は、本発明に従った他の装置を縦断面で示す図である。
【図4】図4は、本発明に従った他の装置を縦断面で示す図である。
【図5】図5は、本発明に従った他の装置を縦断面で示す図である。
【図6】図6は、本発明に従って改変したアンモニア酸化反応器を縦断面で示す図である。
【図7】図7は、本発明に従った他の装置を縦断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
供給ガスは、入口帯域(1)を経て反応器に供給された後、触媒(4)が位置決めされている反応帯域(2)を通って流れる。そこで供給ガスは発熱反応で完全または部分的に反応して生成ガスを形成し、これが続いて出口帯域(3)を通って反応器から出る。反応帯域(2)で生じる熱に起因して、この熱の少なくとも一部が伝導、対流および/または放射により入口帯域(1)への供給ガスに向流で運ばれ、そこで供給ガスまたは入口帯域(1)の反応器壁表面が許容されない形で加熱されるリスクがある。
【0027】
これを防止または少なくとも妨害するために、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域は、本発明の第1の態様において、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減する手段を備える。
【0028】
本発明の他の態様において、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における反応器の内壁は、不活性材料で作成されている。この態様は、反応器の内壁における供給ガスの触媒反応を防止または妨害する。
【0029】
本説明の意図に関し、“不活性材料”という用語は、入口帯域の供給ガスに支配的である温度または入口帯域の内壁表面の温度において、あらゆる望ましくない副反応を促進しないすべての材料をさす。さらに、これらの材料は、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減することができる。不活性および断熱性の材料が好ましい態様を構成する。
【0030】
不活性材料は反応器の内壁を覆っている。それらは、例えば、反応器の内壁に施用されているか、反応器においてスリーブの形で存在しているか、または、反応器壁が不活性材料からなる。
【0031】
不活性材料の例は、セラミックス、詳細には高密度に焼結させたセラミックスのほか、石英ガラス、耐火粘土、エナメル、または磨かれた表面を有する金属である。
【0032】
反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減する手段として、さまざまなアプローチを解決に用いることが可能である。
【0033】
一態様において、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域は、反応器の内部空間を反応器壁(5)から隔離する隔離ライナー(6)を備える。この隔離ライナー(6)は実質的に二つの働きをする。容易に熱伝導する反応器壁(5)に沿って反応帯域(2)から入口帯域(1)まで移動する熱を、供給ガスに面する表面上のほとんど熱伝導しない隔離ライナー(6)により運ばれにくくすることができる。これに加えて、隔離ライナー(6)に沿った反応帯域(2)から入口帯域(1)への直接的な熱伝導は、隔離ライナー(6)の熱伝導性が低いため低減する。
【0034】
第2の態様において、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域は、冷却剤を通すことができる装置を備える。この装置は反応帯域(2)で生じた熱の一部を受け入れ、その結果、この熱は入口帯域(1)への熱輸送にもはや有効でなく、および/またはこの熱は、供給ガスがまだ非常に冷たいため冷却剤の導入により引き起こされる温度上昇が重要でない入口帯域(1)の場所で、供給ガスに導入され;あるいは、冷却剤は、反応帯域(2)に隣接する入口帯域(1)を、熱が反応帯域(2)から伝導しているにもかかわらず入口帯域(1)の温度が重要でない範囲であり続けるような程度まで冷却する。2つの処置の組合せを有する反応器がとりわけ好ましい。
【0035】
他の好ましい態様において、本発明の反応器は、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域に反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減する手段を備え、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における反応器内壁は、不活性材料からなる。
【0036】
本発明はまた、上記反応器を用いて触媒発熱気相反応を実施するための方法を提供する。
【0037】
該方法は以下の処置を含む:
i)反応器の入口帯域(1)へ供給ガスを導入する、
ii)供給ガスが反応帯域(4)において発熱反応で完全または部分的に生成ガスに転化する条件下で、触媒(4)を含有する反応帯域(2)へ供給ガスを導入する、
iii)生成ガスを反応器から出口帯域(3)に通して排出する、ならびに
iv)反応帯域(2)から入口帯域(1)への反応熱の輸送を低減するための手段を提供し、および/または入口帯域(1)の領域もしくは入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における内壁が不活性材料からなる反応器を使用する。
【0038】
供給ガスとして、さまざまなガスまたは好ましくはガス混合物を用いることが可能である。これらのガスまたはガス混合物の性質は、それらが本発明の反応器で気相において発熱反応で触媒的に反応することができる供給ガスまたは供給ガス混合物である限り、重要でない。
【0039】
本発明の反応器で実施することができる化学反応の例は、あらゆる種類の酸化反応および他の発熱遊離基気相反応、例えばハロゲン化反応である。
【0040】
本発明の反応器は、アンモニアの酸化、とりわけカプロラクタムおよび硝酸の調製に用いることが好ましい。
【0041】
同様に、Andrussow反応を実施するために、詳細には、アンモニア、酸素および炭化水素、好ましくはメタンからシアン化水素を調製するために、本発明の反応器を用いることが好ましい。
【0042】
以下の説明において、硝酸を生成するためのアンモニアの酸化を、モデル反応としての一例としてより詳細に記載する。しかしながら、本発明の反応器および方法は、上記のように、原理上は他の反応にも適している。
【0043】
触媒として、当該の標的反応または複数の標的反応に適したすべての触媒を用いることが可能である。これらは、例えば、全面的に活性な触媒として純粋な形で、または支持された形で、用いることができる。すべての通例の触媒の形状寸法、例えば、床、充填物、細目網の形または他の形、例えばモノリシックハニカムの形にあるペレット、顆粒、押出物または粉末を用いることも可能である。
【0044】
本発明によると、とりわけ、例えばAppl.Catal.General A:204(2000)59−87、米国出願公開US−A−5690900号、または欧州出願公開EP−A−946290号に記載されているような、遷移金属酸化物を含有する触媒を用いることが可能である。
【0045】
とりわけ有用な触媒はコバルト含有触媒である。構造型としては、ペロブスカイトがとりわけ有利である。
【0046】
本発明によると、ハニカムの形にある触媒をアンモニアの酸化に用いることが好ましい。これらは、例えば、全面的に活性なハニカム触媒の形にあるか、上および/または内部に触媒的に活性な材料が施用/導入されているハニカム支持体として支持された形にあることができる。
【0047】
例えば床、充填物またはハニカムの形にあり、流れ方向で見て、少なくとも3cm、好ましくは少なくとも5cm、とりわけ少なくとも10cm、非常にとりわけ好ましくは10〜200cmの深さを有する触媒を用いることが、とりわけ好ましい。
【0048】
以下の実施例および図は、本発明をその範囲を制限することなく例示するものである。
【0049】
以下の実施例において図について詳細に記載する。
【実施例】
【0050】
実施例1
図1において、本発明の主な特徴を、本発明に従ったアンモニア酸化装置により例示する。
【0051】
アンモニア酸化装置は、3つの帯域、すなわち、入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)に分けることができる。
【0052】
アンモニア/酸素−含有ガス混合物(以下“供給ガス混合物”)を入口帯域(1)に導入し、続く反応帯域(2)においてアンモニア酸化触媒(4)に当てる。その後、酸化反応からの生成ガス混合物を、出口帯域(3)に通して反応帯域(2)から出す。
【0053】
図1に示す態様では、本発明に従った装置の3つの帯域(1、2、3)がすべて、追加的に触媒(4)および隔離ライナー(6)のための支持体である壁(5)により包囲されている。壁(5)はそれ自体が圧力容器の壁に相当することができ、あるいは、該壁は、図1に示していない圧力ジャケットにより包囲されている空間に入っていることができる。
【0054】
入口帯域(1)と反応帯域(2)の熱的分断は、断熱性で気密性の材料からなる隔離ライナー(6)によりもたらされる。隔離ライナー(6)は、反応帯域(2)の壁(5)を介した熱伝導の結果として入口帯域(1)に達する熱が供給ガス混合物に移動するのを防止または妨害する。入口帯域に位置決めされた壁(5)の部分は、反応帯域(2)からの反応熱の熱伝導によりより高温になるが、供給ガス混合物への熱輸送は断熱性の隔離ライナー(6)により大幅に妨げられる。隔離ライナー(6)は低い熱伝導性しか有さないので、隔離ライナー(6)は、反応帯域(2)から入口帯域(1)への隔離ライナー(6)に沿った直接的な熱輸送も防止または妨害する。隔離ライナー(6)の材料および厚さを適切に選択すると、供給ガス混合物に面する隔離ライナー(6)の壁温は供給ガス混合物の発火または反応温度未満であり続け、望ましくない早期反応は抑制される。
【0055】
実施例2
図2は、図1に示したものと同様の装置を示している。入口帯域と反応帯域(1、2)の熱的分断の様式を除き、この態様は実施例1の装置と同様である。
【0056】
このアンモニア酸化装置も、入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)を含む。
【0057】
アンモニア/酸素−含有ガス混合物を入口帯域(1)に導入する。その後、該混合物を反応帯域(2)においてアンモニア酸化触媒(4)に当てる。続いて、酸化反応からの生成物混合物を、出口帯域(3)に通して反応帯域(2)から出す。
【0058】
3つの帯域すべての壁(5)が触媒(4)を支える。壁(5)はそれ自体が圧力容器の壁であることができ、あるいは、該壁は、圧力ジャケット(ここでは図示していない)により包囲されている空間に入っていることができる。
【0059】
入口帯域および反応帯域(1、2)の高さにおいて、壁(5)は二重壁として形作られている。反応帯域(2)の高さにおける二重壁の末端には、供給ガス混合物、反応器に望ましい反応、触媒(4)および生成ガス混合物と適合する冷却剤のための入口(7)がある。硝酸プラントで使用する場合、例えば、適した冷却剤として空気を用いることが可能である。
【0060】
冷却剤は二重壁内の空間(9)を通って流れ、壁(5)の内側壁を冷却する。これにより、壁(5)を介した熱伝導の結果として反応帯域(2)から入口帯域(1)に達する熱は冷却剤に移動するため、反応帯域(2)からの入口帯域(1)の熱的分断が達成される。
【0061】
冷却剤は、入口帯域(1)の高さにおける二重壁の末端において複数の小さな開口部(10)を通って入口帯域(1)に入り、供給ガス混合物と混合する。
【0062】
供給ガス混合物の温度および壁(5)の内側表面の温度は、入口(7)と開口部(10)との距離を適切に選択し、冷却剤のタイプ、量、流量および流入温度を適切に選択することにより、供給ガス混合物の発火または反応温度未満に維持することができ、その結果、望ましくない早期反応は抑制される。
【0063】
実施例3
図3は、本発明に従った装置であって、入口帯域と反応帯域のとりわけ有効な熱的分断を可能にするものを示している。
【0064】
このアンモニア酸化装置も、入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)を含む。
【0065】
アンモニア/酸素−含有ガス混合物を入口帯域(1)に導入する。その後、該混合物を反応帯域(2)においてアンモニア酸化触媒(4)に当てる。続いて、酸化反応からの生成物混合物を、出口帯域(3)に通して反応帯域(2)から出す。
【0066】
3つの帯域すべての壁(5)が触媒(4)および隔離ライナー(6)を支える。壁(5)はそれ自体が圧力容器の壁に相当することができ、あるいは、該壁(5)は、圧力ジャケット(ここでは図示していない)により包囲されている空間に入っていることができる。
【0067】
入口帯域および反応帯域(1、2)の高さにおいて、壁(5)は二重壁として形作られている。冷却剤のための接続部(7a、7b)もそこに提供されている。適した冷却剤は、例えば水または空気である。冷却剤は供給ガス混合物の流れ方向に対し並流または対流で流れることができる。反応帯域(2)からの入口帯域(1)の熱的分断は、隔離ライナー(6)と、壁(5)の二重壁間の空間(9)を通る冷却剤の通過の両方によりもたらされる。
【0068】
断熱性材料からなり反応帯域(2)と入口帯域(1)の高さにおける壁(5)を覆っている隔離ライナー(6)は、壁(5)を介した熱伝導の結果として反応帯域(2)から入口帯域(1)に達した熱が、供給ガス混合物に移動するのを防止する。隔離ライナー(6)は低い熱伝導性しか有さないので、隔離ライナー(6)は、反応帯域(2)から入口帯域(1)への隔離ライナー(6)に沿った直接的な熱輸送も防止または妨害する。
【0069】
冷却剤は壁(5)の二重壁内の空間(9)を通って流れ、壁(5)の内側壁を冷却する。これにより、壁(5)を介した熱伝導により反応帯域(2)から入口帯域(1)に達する熱は冷却剤に移動するため、反応帯域(2)からの入口帯域(1)のさらなる熱的分断がもたらされる。二重壁を通って流れた後、冷却剤は接続部(7a、7b)の一方を通って二重壁間の空間(9)から再び出ていく。
【0070】
このように、隔離ライナー(6)の働きは、冷却剤を用いた冷却により強化される。断熱性材料およびその厚さ、そして同様に冷却剤を適切に選択すると、供給ガス混合物に面する隔離ライナー(6)の壁温は供給ガス混合物の発火または反応温度未満であり続け、望ましくない早期反応は抑制される。
【0071】
実施例4
図4は、図2に示したものと同様の装置を示している。本実施例では、入口帯域と反応帯域(1、2)の熱的分断が入口帯域(1)の冷却によりもたらされる。
【0072】
このアンモニア酸化装置も、入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)を含む。
【0073】
アンモニア/酸素−含有ガス混合物を入口帯域(1)に導入する。その後、該混合物を反応帯域(2)においてアンモニア酸化触媒(4)に当てる。続いて、酸化反応からの生成物混合物を、出口帯域(3)に通して反応帯域(2)から出す。
【0074】
3つの帯域すべての壁(5)が触媒(4)を支える。壁(5)はそれ自体が圧力容器の壁に相当することができ、あるいは、該壁は、圧力ジャケット(ここでは図示していない)により包囲されている空間に入っていることができる。
【0075】
入口帯域(1)の高さにおいて、壁(5)は二重壁として形作られている。反応帯域(2)付近における二重壁の末端には、供給ガス混合物、反応器に望ましい反応、触媒(4)および生成ガス混合物と適合する冷却剤のための入口(7)がある。硝酸プラントで使用する場合、例えば、適した冷却剤として空気を用いることが可能である。
【0076】
冷却剤は二重壁内の空間(9)を通って流れ、入口帯域(1)の高さにおいて壁(5)の内側壁を冷却する。これにより、壁(5)を介した熱伝導の結果として反応帯域(2)から入口帯域(1)に達する熱は冷却剤に移動するため、反応帯域(2)からの入口帯域(1)の熱的分断がもたらされる。
【0077】
冷却剤は、供給ガスが反応器に流入する箇所の二重壁末端における複数の小さな開口部(10)を通って入口帯域(1)に入り、これにより、冷却剤は供給ガス混合物と混合する。
【0078】
供給ガス混合物の温度および壁(5)の内側表面の温度は、入口(7)と開口部(10)との距離を適切に選択し、冷却剤のタイプ、量、流量および流入温度を適切に選択することにより、供給ガス混合物の発火または反応温度未満に維持することができ、その結果、望ましくない早期反応は抑制される。
【0079】
実施例5
図5は図3と同様の装置を示している。しかしながら、本実施例では、隔離ライナー(6)が入口帯域(1)の高さにしか存在しない。
【0080】
このアンモニア酸化装置も、入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)を含む。
【0081】
アンモニア/酸素−含有ガス混合物を入口帯域(1)に導入する。その後、該混合物を反応帯域(2)においてアンモニア酸化触媒(4)に当てる。続いて、酸化反応からの生成物混合物を、出口帯域(3)に通して反応帯域(2)から出す。
【0082】
3つの帯域すべての壁(5)が触媒(4)および隔離ライナー(6)を支える。壁(5)はそれ自体が圧力容器の壁に相当することができ、あるいは、該壁(5)は、圧力ジャケット(ここでは図示していない)により包囲されている空間に入っていることができる。
【0083】
入口帯域および反応帯域(1、2)の高さにおいて、壁(5)は二重壁として形作られている。冷却剤のための接続部(7a、7b)もそこに提供されている。冷却剤は供給ガス混合物の流れ方向に対し並流または対流で流れることができる。反応帯域(2)からの入口帯域(1)の熱的分断は、隔離ライナー(6)と、壁(5)の二重壁内の空間(9)を通る冷却剤の通過の両方によりもたらされる。
【0084】
断熱性材料からなり入口帯域(1)の高さにおける壁(5)を覆っている隔離ライナー(6)は、壁(5)を介した熱伝導の結果として反応帯域(2)から入口帯域(1)に達する熱が、供給ガス混合物に移動するのを防止する。隔離ライナー(6)は低い熱伝導性しか有さないので、隔離ライナー(6)は、反応帯域(2)から入口帯域(1)への隔離ライナー(6)に沿った直接的な熱輸送も防止または妨害する。
【0085】
冷却剤は壁(5)の二重壁内の空間(9)を通って流れ、壁(5)の内側壁を冷却する。これにより、壁(5)を介した熱伝導により反応帯域(2)から入口帯域(1)に達する熱は冷却剤に移動するため、反応帯域(2)からの入口帯域(1)のさらなる熱的分断がもたらされる。二重壁を通って流れた後、冷却剤は接続部(7a、7b)の一方を通って二重壁内の空間(9)から再び出ていく。
【0086】
隔離ライナー(6)の働きは、冷却剤を用いた冷却により強化される。断熱性材料およびその厚さならびに冷却剤を適切に選択すると、供給ガス混合物に面する隔離ライナー(6)の壁温は供給ガス混合物の発火または反応温度未満であり続け、望ましくない早期反応は抑制される。
【0087】
実施例6
この態様は、主として、従来のアンモニア酸化反応器の既存のキャップを置き換えるのに適している。図6は、本発明に従ったアンモニア酸化反応器を示している。
【0088】
酸素およびアンモニアを含有する混合物を、パイプ部(12)に通して装置に入れる。該混合物を、この場合ハニカムとして形作られているかハニカム支持体の上および/またはその内部に位置決めされているアンモニア酸化触媒(4)の上方に通す。そこで、アンモニアは供給混合物中の酸素の一部との反応により一酸化窒素に転化する。発熱反応の結果、反応帯域(2)に位置決めされているアンモニア酸化触媒(4)に温度上昇が起こる。高温の生成物混合物は、アンモニア酸化触媒(4)の下流の開口部(13)を通って、出口帯域に相当する空間(3)に流れる。この空間(3)の後、高温の生成ガスをガスタービン(ここでは図示していない)または1もしくは複数の熱交換器(ここでは図示していない)に供給して、エネルギーを回収するか、プロセス熱を他の方法で使用する。
【0089】
反応帯域(2)からの供給流入側の熱的分離をもたらすために、アンモニア酸化触媒(4)を、耐熱性断熱材料、例えばセラミックまたは石英ガラスで作成されたスリーブ(14)内に挿入する。これは、アンモニアおよび酸素を含有する供給ガス混合物の起こりうる早期発火を防止する。アンモニア酸化触媒(4)はスリーブ(14)内にゆるく置かれていて、支持リング(15)、および複数部分からなる触媒(4)の場合は、耐熱性材料、例えばセラミックまたは石英ガラスの複数の支持バー(図示していない)上に載っている。支持リング(15)は、起こりうるガスのバイパスを防止する。支持バーは、設置する場合、流れの横断面の重要でない部分しか占めないように設計されている。
【0090】
スリーブ(14)が支持および保護されるように、これは高温耐久性材料で作成された金属スリーブ(16)により包囲されている。金属スリーブ(16)の下端は、支持バーまたは支持リング(15)、したがって間接的に触媒(4)も支持するリップ(17)を備える。金属スリーブ(16)の下端には、アンモニア酸化触媒(4)から空間(3)に生成ガスを通して流す格子(18)がある。格子(18)は、金属スリーブ(16)を機械的に安定させ、存在しうる支持バーを支持する働きをする。アンモニア酸化触媒(4)が一部分のみからなるわけではなく複数の部分から構成される場合、格子(18)は支持バーを介して個々の部分を支持する働きをする。スリーブ(14)が例えば熱応力の結果として予測し得ない形で破壊した場合、金属スリーブ(16)、リップ(17)および格子(18)も、スリーブ(14)およびアンモニア酸化触媒(4)が空間(3)に落下するのを阻止する。
【0091】
スリーブ(14)および金属スリーブ(16)は、ボルトおよびナット(19)によりアンモニア酸化反応器の圧力ジャケット(20)に接続されている。圧力空間は、容器上に設置された圧力フランジ(23)により外部から孤立している。
【0092】
触媒を交換するためには、ねじ込み式接続部をゆるめてパイプ部(12)を取り外す。続いて、ナットまたはボルト(19)をゆるめ、金属スリーブおよびセラミック製または石英ガラス製のスリーブ(16、14)をアンモニア酸化触媒(4)と一緒に反応器から取り出す。停止時間を最小限にするために(従来のアンモニア酸化反応器とも比較して)、金属製およびセラミック製または石英ガラス製のスリーブ(16、14)ならびに未使用のアンモニア酸化触媒(4)を含み運転停止に先立ち準備されている第2のユニットを、直ちに反応器に設置してもよい。
【0093】
必要な場合は、始動中のアンモニア酸化反応を補助するために、アンモニア酸化触媒(4)を点火ランス(25)により予備加熱または活性化してもよい。点火ランス(25)は、水素を通してアンモニア酸化反応器に供給する細管と、点火ランスの開口部末端で水素流を発火させることができる機器を含む。
【0094】
アンモニア酸化反応器のベンドに設置されている覗きガラス(26)により、発火プロセスのモニタリングおよび運転中のアンモニア酸化触媒(4)の状態の確認が可能になる。モニタリングは、視覚的に、または光度計などの適切な測定機器により、実施することができる。
【0095】
アンモニア酸化触媒(4)の下流の空間(3)における圧力容器の壁材料に対する熱応力を緩和するために、壁は、内側に設置されたフィン付き管冷却設備(27)を備えている。水または他の冷却剤が、フィン付き壁の管を通って流れる。
【0096】
実施例7
図7に示す本発明に従ったアンモニア酸化反応器の本態様は、もはや既存の熱回収装置、例えばボイラーの直径に適合させる必要がないので、新規NO生産プラントの装備にとりわけ適している。
【0097】
実施例6の反応器との主な違いは、フィン付き壁(27)が金属スリーブ(16)に密に取り付けられており、一般により大きい下流の装置の直径への適応が必要ない点である。本態様では、下流の装置をアンモニア酸化反応器に適合させることができる。図示しているように金属スリーブ(16)を吊り下げる代わりに、触媒(4)を支持するために提供されている金属リップ(17)を、金属スリーブ(16)上ではなくフィン付き壁(27)上に直接設置してもよい。これは、構造体の機械的安定性に好ましい効果を有する。
【0098】
図7に示す他の要素は図6の要素に対応する。これらは、開口部(13)、支持リング(15)、格子(18)、ボルトおよびナット(19)、圧力ジャケット(20)、点火ランス(25)および覗きガラス(26)である。
【0099】
比較実施例8a〜8cおよび本発明に従った実施例8d
NHの酸化のために遷移金属酸化物ハニカム触媒を用い、普通なら通例である触媒の寸法決定から逸脱して、比較的深い触媒床(5cm)でより小さな流入面積に流れを集中させることを試みた試験において、実験の反応器では、大気条件下、1.0m/sの線速度においてNO形成に関し低い選択性しか見いだされなかった。
【0100】
線速度を2.0m/sに上昇させても、NOの選択性には不十分な改善しかもたらされなかった。結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
実験手順
空気中に10%または1%のアンモニアの混合物を、ステンレス鋼または石英ガラスで作成された管状反応器に設置されていてLaCoOペロブスカイトを含む完全なハニカム触媒(200csi、長さ:5cm、直径:1.8cm)に通した。反応管は、生じうる熱損失を補うことができる管状炉内に位置付けた。温度調整は、触媒ハニカムの約0.5cm下(出口末端)に配置した熱電対を用いて達成した。出口末端の温度は恒常的に900℃であった。
【0103】
流入および流出ガス流の組成を、ガスセルを用いたFTIR分析器(NicoletからのAvatarモデル)により分析した。
【0104】
実験8a〜8cについて表1に示した所見は、類似の実験により空の反応管で確認されたとおり、供給されたNHのかなりの割合が触媒帯域に入る前にNおよびHOに分解されるということにより、説明することができる。これに関し、外部加熱された反応管において、ハニカム触媒が存在しなくても、1.0m/sの線速で、実質的にNおよびHOの形成をもたらすNHの完全な転化が記録された。
【0105】
断熱材であると同時に不活性である石英ガラスで作成された反応器で実施例8cに対応する実験を実施すると、意外にもNO選択率が大幅に上昇することが見いだされた(本発明に従った実施例8dと比較)。
【符号の説明】
【0106】
(1) 入口帯域
(2) 反応帯域
(3) 出口帯域
(4) アンモニア酸化触媒
(5) 壁
(6) 隔離ライナー
(7) 入口
(7a) 接続部
(7b) 接続部
(9) 空間
(10) 開口部
(12) パイプ部
(13) 開口部
(14) スリーブ
(15) 支持リング
(16) 金属スリーブ
(17) リップ
(18) 格子
(19) ボルトおよびナット
(20) 圧力ジャケット
(23) 圧力フランジ
(25) 点火ランス
(26) 覗きガラス
(27) フィン付き管冷却設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給ガスが反応して生成ガスを形成することによる触媒発熱気相反応のための反応器であって、供給ガスの流れ方向で見て、入口帯域(1)、少なくとも1種の触媒(4)を含有する反応帯域(2)および生成ガスのための出口帯域(3)を含み、ここにおいて、入口帯域(1)の領域もしくは入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域は、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減する手段を備え、ならびに/または、入口帯域(1)の領域もしくは入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における反応器内壁は不活性材料からなる、前記反応器。
【請求項2】
反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減するための手段が、入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域に提供されている、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域が、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減する手段を備え、入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における反応器内壁が不活性材料からなる、請求項1に記載の反応器。
【請求項4】
反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減するための手段として、入口帯域(1)の高さまたは入口帯域(1)および反応帯域(2)の高さにおいて反応器の内部空間を反応器壁(5)から隔離する少なくとも1つの隔離ライナー(6)が提供されている、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項5】
反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減するための手段として、冷却剤を運ぶための少なくとも1つの装置が入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域に提供されている、請求項1または2に記載の反応器。
【請求項6】
冷却剤の輸送のための装置が反応器壁(9)中または反応器壁(9)の内壁上に位置決めされている、請求項5に記載の反応器。
【請求項7】
反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減するための手段として、入口帯域(1)の高さまたは入口帯域(1)および反応帯域(2)の高さにおいて反応器の内部空間を反応器壁(5)から隔離する少なくとも1つの隔離ライナー(6)が提供され、反応帯域(2)から入口帯域(1)への熱輸送を低減するための手段として、冷却剤を運ぶための少なくとも1つの装置が入口帯域(1)の領域または入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域に提供されている、請求項4および5に記載の反応器。
【請求項8】
入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)が、追加的に触媒(4)および隔離ライナー(6)のための支持体である反応器壁(5)により包囲されており、該隔離ライナーが、入口帯域(1)の少なくとも一部の領域または反応帯域(2)および入口帯域(1)の少なくとも一部の領域において反応器の内部空間を反応器壁(5)から断熱し、これにより反応帯域(2)から入口帯域(1)中の供給ガスへの熱輸送を妨げる、請求項1に記載の反応器。
【請求項9】
入口帯域(1)、反応帯域(2)および出口帯域(3)が、入口帯域(1)の高さまたは入口帯域(1)および反応帯域(2)の高さにおいて二重壁として形作られている反応器壁(5)により包囲されており、反応器壁(5)の内側壁を冷却することが可能になるように、二重壁になっている反応器壁により形成された空間(9)へ冷却剤を導入するための接続部(7)が、二重壁になっている反応器壁の少なくとも一方の末端に提供されている、請求項1に記載の反応器。
【請求項10】
二重壁になっている反応器壁(5)の内側壁に少なくとも1つの開口部(10)が提供されており、該開口部を通って冷却剤が入口帯域(1)に入り供給ガスと混合する、請求項9に記載の反応器。
【請求項11】
冷却剤の導入および排出のための接続部(7a、7b)が、二重壁になっている反応器壁上に提供されている、請求項9に記載の反応器。
【請求項12】
反応器壁(5)が、圧力容器の壁として形作られているか、圧力ジャケットにより包囲されている空間に入っている、請求項8〜11のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項13】
少なくとも1つの隔離ライナー(6)に加えて、少なくとも1つの二重壁になっている反応器壁(5)が提供されている、請求項8〜11のいずれか一項に記載の反応器であって、該反応器壁が、追加的に触媒(4)のための支持体であり、冷却剤のための少なくとも1つの接続部(7)を有する、前記反応器。
【請求項14】
スリーブ(14)を有する請求項1に記載の反応器であって、該スリーブが耐熱性および断熱性の材料で作成されており、その中に触媒(4)が挿入されている、前記反応器。
【請求項15】
スリーブ(14)が、耐熱性材料で構成されていて下端に好ましくは金属リップ(17)を備える金属スリーブ(16)により包囲されており、ガス混合物を反応帯域(2)から出口帯域(3)に通して流す格子(18)が該金属スリーブ(16)の下端に設置されている、請求項14に記載の反応器。
【請求項16】
スリーブ(14)および金属スリーブ(16)がボルトおよびナット(19)により反応器の圧力ジャケット(20)に接続されている、請求項15に記載の反応器。
【請求項17】
点火ランス(25)が提供されている、請求項14〜16のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項18】
反応帯域(2)の下流の出口帯域(3)における圧力容器の壁に対する熱応力を緩和するために、冷却装置、好ましくはフィン付き管冷却設備(27)が、反応器の圧力容器の壁の内側に提供されている、請求項14〜17のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項19】
触媒(4)が遷移金属酸化物を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項20】
触媒(4)が、ハニカムの形で形作られているか、ハニカムとして形作られている支持体材料に施用されている、および/またはその中に導入されている、請求項1〜19のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項21】
触媒が、流れ方向で見て少なくとも3cmの深さを有する床または充填物の形にある、請求項1〜20のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項22】
請求項1に記載の反応器を用いて触媒発熱気相反応を実施するための方法であって、以下の処置:
i)反応器の入口帯域(1)へ供給ガスを導入する、
ii)供給ガスが反応帯域(4)において発熱反応で完全または部分的に生成物に転化する条件下で、触媒(4)を含有する反応帯域(2)へ供給ガスを導入する、
iii)生成ガスを反応器から出口帯域(3)に通して排出する、ならびに
iv)反応帯域(2)から入口帯域(1)への反応熱の輸送を低減するための手段を提供し、および/または入口帯域(1)の領域もしくは入口帯域(1)および反応帯域(2)の領域における内壁が不活性材料からなる反応器を使用する、
を含む、前記方法。
【請求項23】
アンモニアおよび酸素を含むガス混合物を供給ガスとして用いる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
供給ガスをアンモニアの酸化に用い、得られる生成物をカプロラクタムおよび/または硝酸の調製に用いる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
遷移金属酸化物を含む触媒を用いる、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ハニカムとして形作られている触媒を用いる、請求項22〜25に記載の方法。
【請求項27】
触媒が、触媒床または触媒充填物の形で存在し、流れ方向で見て少なくとも3cmの深さを有する、請求項22〜26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の反応器のアンモニアの酸化のための使用。
【請求項29】
カプロラクタムまたは硝酸の調製のためのプラントに反応器を統合する、請求項28に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−528840(P2010−528840A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510674(P2010−510674)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004232
【国際公開番号】WO2008/148487
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(504378582)ウーデ・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】