説明

触媒組成物及びエタン及び/又はエチレンの酢酸への選択的酸化方法

モリブデン、バナジウム、ニオブ及びチタン元素からなる酸化物触媒組成物、並びに該触媒の作成方法。該触媒を用いたエタン及び/又はエチレンの酢酸への選択的酸化方法。該触媒組成物は酢酸への高選択性とエチレンへの低選択性をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はエタンの酢酸への選択的酸化及び/又はエチレンの酢酸への選択的酸化のための触媒組成物、並びに前記触媒組成物を利用した酢酸の製造方法に関する。
【0002】
エタン及び/エチレンの酸化による酢酸の製造方法において使用される酸素と結合したモリブデン、バナジウム及びニオブからなる触媒組成物は、例えば米国特許第4,250,346号明細書、欧州特許出願公開第1043064号明細書、国際公開第99/20592号パンフレット及び独国特許出願公開第19630832号明細書から当技術分野において知られている。
【0003】
米国特許第4,250,346号明細書には、気相反応において約550℃未満の温度で、Mo、ここにおいて、XはCr,Mn,Nb,Ta,Ti,V及び/又はW,そして望ましくはMn,Nb,V及び/又はWであり;YはBi,Ce,Co,Cu,Fe,K,Mg,Ni,P,Pb,Sb,Si,Sn,Tl及び/又はU,そして望ましくはSb,Ce及び/又はUであり、aは1、bは0.05乃至1.0そしてcは0乃至2、そして望ましくは0.05乃至1.0であり、但しCo,Ni及び/又はFeについてcの総数は0.5未満である;という比率でモリブデン、X及びY元素からなる組成物を触媒として用いたエタンのエチレン及び酢酸への酸化的脱水素化が開示されている。
【0004】
国際公開第99/20592号パンフレットは、式MoPd、ここにおいて、XはCr,Mn,Nb,Ta,Ti,V,Te及びWの一つ又はいくつかを表し;YはB,Al,Ga,In,Pt,Zn,Cd,Bi,Ce,Co,Rh,Ir,Cu,Ag,Au,Fe,Ru,Os,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Nb,Zr,Hf,Ni,P,Pb,Sb,Si,Sn,Tl及びUの一つ又はいくつかを表し、そして、a=1、b=0.0001乃至0.01、c=0.4乃至1そしてd=0.005乃至1を有する触媒組成物の存在下高温にてエタン、エチレン又はそれらの混合物及び酸素から選択的に酢酸を製造する方法に関する。
【0005】
独国特許出願公開第19630832号明細書は、a=1、b>0、c>0及びd=0乃至2である類似の触媒組成物に関する。望ましくはa=1、b=0.0001乃至0.5、c=0.1乃至1.0及びd=0乃至1.0である。
【0006】
国際公開第99/20592号パンフレット及び独国特許出願公開第19630832号明細書の両者の触媒組成物はパラジウムの存在が必要とされる。
【0007】
欧州特許出願公開第1043064号明細書には、エタンのエチレン及び/又は酢酸への酸化のため及び/又はエチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物が開示されており、これは酸素と結合したモリブデン、バナジウム、ニオブ及び金からなり、パラジウムを含まず、実験式:
MoAuNb (I)
に基づく、ここにおいて、YはCr,Mn,Ta,Ti,B,Al,Ga,In,Pt,Zn,Cd,Bi,Ce,Co,Rh,Ir,Cu,Ag,Fe,Ru,Os,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Zr,Hf,Ni,P,Pb,Sb,Si,Sn,Tl,U,Re,Te及びLaからなる群より選択される一つ以上の元素であり;a,b,c,d,e及びfは元素のグラム原子比率を:0<a≦1; 0≦b<1及びa+b=1;10−5<c≦0.02;0<d≦2;0<e≦1;及び0≦f≦2といったように表している。
【0008】
酢酸への高選択性を備え、且つ、Pd及びAuのような貴金属を使用する必要のないエタン及び/エチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物を開発する必要性が残っている。
【0009】
驚くべきことに、酸素と結合したモリブデン、バナジウム、ニオブ及びチタンからなる触媒組成物を使用することにより、酢酸への高選択性にてエタン及び/又はエチレンが酢酸へ酸化されることがここに見出された。その上、エチレンへの低選択性にて酢酸への高選択性を達成するために本発明の触媒組成物を使用する可能性も見出された。
【0010】
従って、第一の態様において、本発明はエタン及び/又はエチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物を提供し、該組成物は酸素と結合したモリブデン、バナジウム、ニオブ及びチタン元素からなり、実験式:
MoTiNb (I)
に基づく、ここにおいて、YはCr,Mn,Ta,B,Al,Ga,In,Pt,Zn,Cd,Bi,Ce,Co,Rh,Ir,Cu,Ag,Fe,Ru,Os,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Zr,Hf,Ni,P,Pb,Sb,Si,Sn,Tl,U,Re,Te,La,Au及びPdからなる群より選択される一つ以上の元素であり;a,b,c,d,e及びfは元素のグラム原子比率を:
0<a≦1; 0≦b<1及びa+b=1;
0.05<c≦2;
0<d≦2;
0<e≦1;及び
0≦f≦2といったように表している。
【0011】
式(I)に包含された触媒組成物としては:
MoTiNb
MoTiNb
MoTiNb
MoTiNbが挙げられる。
【0012】
望ましくは、a>0.01である。望ましくは、d>0.1である。望ましくは、e>0.01である。望ましくは、e≦0.5である。望ましくは、f≧0.01である。望ましくは、f≦0.5である。
【0013】
望ましくは、Yが存在する場合、Bi,Ca,Ce,Cu,K,P,Sb,La及びTeからなる群より選択される。
【0014】
本発明による触媒組成物はチタン成分からなる。
【0015】
有利なことに、酢酸への高選択性は、触媒組成物が実質的に貴金属を含まない本発明の触媒組成物を使用することによって達成されることが可能である。
【0016】
一つの実施の形態において、本発明による触媒組成物はPd及び/又はAuのような貴金属が実質的に欠けている。
【0017】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様による触媒組成物の調製方法に関し、
(a)モリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、状況に応じてタングステン及び状況に応じてYからなる混合物を溶液の状態で形成し;
(b)混合物を乾燥して乾燥した固体物質を形成し;そして
(c)乾燥した固体物質を焼成して触媒組成物を形成するステップからなる。
【0018】
好適には、モリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、状況に応じてタングステン及び状況に応じてYからなる混合物は好適な溶媒中にて金属の各々の化合物及び/又は錯体を混合することによって形成されても良い。溶媒は望ましくは水であり、そして最も望ましくは、混合物は1乃至12、望ましくは2乃至8の範囲のpHを有し、20乃至100℃の温度の水の溶液である。
【0019】
望ましくは、モリブデンはアンモニウムへプタモリブデンのようなアンモニウム塩、又は酢酸塩類及びシュウ酸塩類のようなモリブデンの有機酸の形態にて混合物中へ導入される。使用され得るモリブデンのその他の化合物としては、例えば酸化モリブデン、モリブデン酸及び/又は塩化モリブデンが挙げられる。
【0020】
望ましくは、バナジウムはアンモニウムメタバナジン酸又はアンモニウムデカバナジン酸のようなアンモニウム塩、又は酢酸塩類及びシュウ酸塩類のようなバナジウムの有機酸の形態にて混合物中へ導入される。使用され得るバナジウムのその他の化合物としては、例えば酸化バナジウム及び硫酸バナジウムが挙げられる。
【0021】
望ましくは、ニオブはアンモニウムニオブシュウ酸塩のようなアンモニウム塩の形態にて混合物中へ導入される。塩化ニオブのような使用され得るニオブのその他の化合物は、シュウ酸塩、カルボン酸又は類似の配位化合物と錯体を形成し、溶解性が改良される。
【0022】
望ましくは、触媒組成物のチタン成分は、ハロゲン化物又はアルコキシドのような可溶性又は反応性前駆体の形態にて混合物へ導入される。
【0023】
更に望ましくは、触媒組成物のチタン成分はチタンアルコキシドとして混合物へ導入され、最も望ましくはチタンイソプロポキシド(titanium isopropoxide)として混合物へ導入される。
【0024】
一般的に、それら元素を含有する化合物の混合物は十分量の可溶性化合物を溶解させ、如何なる不溶性化合物も分散させることにより調製され、触媒組成物中に元素の所望のグラム原子比率をもたらす。溶媒は乾燥、望ましくは噴霧乾燥によって混合物から除去され、乾燥した固体物質を形成する。この乾燥した固体物質は次に焼成され触媒組成物が形成される。焼成は、空気又は酸素中にて、1分乃至24時間の間、200乃至550℃の温度へ加熱することによって望ましくは実施される。
【0025】
本発明の触媒組成物は非担持又は担持にて使用され得る。好適な担体としては、シリカ、アルミナ、チタニア、チタノシリケート、ジルコニア、炭化ケイ素及びこれらの二つ以上の混合物が挙げられ、望ましくはシリカである。チタンは担持触媒組成物中に担体上の触媒組成物の成分として、そしてチタニア担体のような担体自身の成分として、又はチタンからなる担体の一部として、例えばチタニア及びシリカ担体の両者からなる混合担体の一部として、又はチタノシリケート担体の一部として存在し得る。
【0026】
担体を使用する場合、触媒組成物は典型的には触媒組成物及び担体の総重量の少なくとも約10重量%及び/又は約80重量%までを構成し(残りは担体物質である)。望ましくは、触媒組成物は触媒組成物及び担体の総重量の少なくとも40重量%及び/又は触媒組成物及び担体の総重量の60重量%までを構成する。
【0027】
担体を使用する場合、担持された触媒組成物は本発明の第二の態様の方法によって、担体物質又は好適なその前駆体、例えばシリカゾルのようなゾルをモリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、状況に応じてタングステン及び状況に応じてYからなる混合物へ添加することで調製され得る。担持物質又は好適なその前駆体は如何なる好適な段階、例えば、混合物の部分乾燥後のような乾燥の間に添加されても良い。望ましくは、担体物質又は好適なその前駆体はステップ(b)における混合物を乾燥する前に混合物中へ導入され、最も望ましくは、ステップ(a)における混合物の形成の間に担体物質又は好適なその前駆体を導入することによって前記担体物質又は好適なその前駆体がステップ(a)にて形成された前記混合物の成分を形成する。
【0028】
触媒組成物の好適な調製方法は更に詳細には、例えば欧州特許出願公開第0166438号明細書に見出され得、その内容は参照することによりここに組み込まれる。
【0029】
本発明の第三の態様において、エタン及び/又はエチレンからなるガス状混合物からの酢酸の選択的な製造方法が提供され、この方法は上記触媒組成物の存在下ガス状の混合物を分子酸素含有ガスと高温にて接触させることからなる。
【0030】
供給ガスはエタン及び/又はエチレン、望ましくはエタンからなる。
【0031】
エタン及び/又はエチレンは各々実質的に純粋な形態又は窒素、メタン、二酸化炭素及び蒸気の状態の水の一つ以上と混合させて使用され得、これは大量、例えば5容量%以上存在させ得、或いは、水素、一酸化炭素、C/Cアルケン及びアルケンの一つ以上と混合させて使用され得、これは少量、例えば5容量%未満存在させ得る。
【0032】
分子酸素含有ガスは空気又は空気より分子酸素の多い或いは少ないガスであってよく、例えば酸素である。好適なガスは例えば窒素のような好適な希釈剤で希釈された酸素であると良い。
【0033】
エタン及び/又はエチレン及び分子酸素含有ガスに加えて、水(水蒸気)を供給すると、酢酸の選択性を改良することが可能であるため好ましい。
【0034】
高温は好ましくは200乃至500℃、望ましくは200乃至400℃の範囲であると良い。
【0035】
圧力は好ましくは大気圧又は高大気圧(superatmospheric)、例えば1乃至50バール、望ましくは1乃至30バールの範囲であると良い。
【0036】
第三の態様の方法は固定床又は流動床プロセスであって良い。
【0037】
本発明の実施に適用可能な操作条件及びその他の情報は前述の先行技術、例えば米国特許第4,250,346号明細書に見出され得る。
【0038】
本発明の触媒組成物を使用した場合、酢酸への高選択性がエチレンへのたとえあったとしても低選択性と相まって達成され得る。
【0039】
概して、本発明の触媒組成物を使用した場合、酢酸への選択性は少なくとも50モル%、望ましくは少なくとも55モル%、そして最も望ましくは少なくとも60モル%である。
【0040】
概して、本発明の触媒組成物を使用した場合、エチレンへの選択性は30モル%未満、望ましくは20モル%未満、そして最も望ましくは10モル%未満である。
【0041】
望ましくは、本発明の触媒組成物を使用した場合、酢酸への選択性は少なくとも60モル%であり、エチレンへの選択性は10モル%未満である。
【0042】
ここで使用されているように、選択性とは、形成された生成物中の総炭素と比較して、生成された所望の酢酸生成物の量を反映するパーセンテージを指しており:
%選択性=100生成された酢酸のモル/S
ここにおいて、S=流出物中のアルカンを除く、全ての炭素含有生成物のモル濃度酸当量の合計(炭素基準)。
【0043】
本発明の方法はここに更に以下の実施例を参照して実証する。
【0044】
触媒調製
本発明による実施例
触媒A:Mo1.000.529Nb0.124Au0.0012Ti0.331
以下の三つの溶液を調製した:
溶液A:アンモニウムへプタモリブデン214gを45℃の水250gに攪拌して溶解した。
溶液B:アンモニウムメタバナジン酸75gを2リットルビーカ中の水725gに添加して80℃まで加熱した。アンモニウムメタバナジン酸は完全に溶解しなかった。
溶液C:アンモニウムニオブシュウ酸塩74gを6リットルステンレス製ビーカ中の水275gに添加して45℃まで加熱した。30分以内にゾルが形成された。
【0045】
溶液Cを溶液Bへ添加し、80℃にて30分間蒸解させた(digest)。溶液Aを次に溶液C及び溶液Bの混合物中へ添加し、そして次に中火にて15分間攪拌しスラリーを生じさせた。0.425gのAuClを次にスラリーへ添加しMo,V,Nb及びAuを含有するスラリーを生じさせた。638gのシリカゾル(Nalco41D01)を次に攪拌したスラリーへ添加した。111gのチタンイソプロポキシド(titanium isopropoxide)をスラリー中へ50℃にて滴下した。固体パーセント(percent solid)を〜36%に調整した。スラリーを10,000rpmにておおよそ2分均質化した。溶液を均質化した直後にミニ−ニロ噴霧乾燥機にて噴霧乾燥を行い、噴霧乾燥された担持触媒組成物を形成した。使用された噴霧乾燥条件は以下のとおりである:入口温度290℃注入及び出口温度138℃。噴霧乾燥された担持触媒組成物を次にスタティックマッフル炉(static muffle furnace)において空気中で3時間375℃にて焼成した。その結果得られた噴霧乾燥された担持触媒組成物(触媒A)は公称組成Mo60.532Nb7.5Au0.07Ti20をシリカ上で有し、そして総触媒重量の44%の公称金属負荷を有していた。担持触媒組成物は32m/gの表面積及び1.15g/cmの密度を有していた。
【0046】
触媒B:Mo1.000.529Nb0.124Ti0.331
触媒Bは金を添加しないこと以外触媒Aと類似の公称組成を有していた。触媒BはAuClを添加しないこと以外触媒Aについて記載されるように調製された。噴霧乾燥された担持触媒組成物Bは公称組成Mo60.532Nb7.5Ti20をシリカ上で有し、そして総触媒重量の44%の公称金属負荷を有していた。担持触媒組成物Bは1.16g/cmの密度を有しており(そしておおよそ30m/gの表面積を有していると予期された(測定せず))。
【0047】
本発明によらない実施例
比較触媒1:Mo1.000.529Nb0.124
比較触媒1は金又はチタンを添加しないこと以外触媒A及びBと類似の公称組成を有していた。比較触媒1はAuCl又はチタンイソプロポキシド(titanium isopropoxide)を添加しないこと以外触媒Aについて記載されるように調製された。
【0048】
その結果得られた噴霧乾燥された担持触媒組成物は公称組成Mo60.532Nb7.5をシリカ上で、総触媒重量の50%の公称金属負荷にて有していた。担持触媒組成物は28m/gの表面積及び1.2g/cmの密度を有していた。
【0049】
比較触媒2:Mo1.000.529Nb0.124Au0.0012
比較触媒2はチタンを添加しないこと以外触媒Aと類似の公称組成を有していた。比較触媒2はチタンイソプロポキシド(titanium isopropoxide)を添加しないこと以外触媒Aについて記載されるように調製された。
【0050】
その結果得られた噴霧乾燥された担持触媒組成物は公称組成Mo60.532Nb7.5Au0.07をシリカ上で、総触媒重量の50%の公称金属負荷にて有していた。担持触媒組成物は36m/gの表面積及び1.21g/cmの密度を有していた。
【0051】
比較触媒3:Mo1.000.529Nb0.124Au0.0012Pd0.0001
比較触媒3はパラジウム組成物が添加されること以外比較触媒2と類似の公称組成を有していた。比較触媒3はチタンイソプロポキシド(titanium isopropoxide)を添加せずに塩化パラジウム(IV)0.0124gが塩化金(III)より後に直接添加されること以外触媒Aについて記載されるように調製された。
【0052】
その結果得られた噴霧乾燥された担持触媒組成物は公称組成Mo60.532Nb7.5Au0.07Pd0.007をシリカ上で、総触媒重量の50%の公称金属負荷にて有していた。担持触媒組成物は24m/gの表面積及び1.23g/cmの密度を有していた。
【0053】
触媒試験
試験される触媒を篩にかけて、230/325メッシュ(50/50)を70%、pans(微粉)を25%及び170メッシュ以上を5%といった特定の粒度分布(psd)を得た。10グラムの触媒及び同じ粒度分布を有する不活性希釈剤(セントゴバン(St Gobain)SA539アルファアルミナ、43g、密度1.27g/ml)を40ccの流動床反応器中へ添加した。反応を典型的には310℃及び320℃の間の温度にて、16bargの反応圧力にて実施した。エタン、(エチレンの再循環を模倣した)エチレン、窒素及び酸素混合物を、ブルックス質量流制御装置を用いて反応器へ供給した。水を蒸発によって添加し、反応域より前にこれらの供給ガスと混合した。揮発性反応器流出物をサンプリングし、ガス・液体クロマトグラフィによって分析した。水及び酢酸を濃縮しガス・液体クロマトグラフィによって分析した。反応床温度を移動熱電対によって監視した。
【0054】
結果
実施例A
触媒Aを以下の表Aの条件の下で試験した:
【0055】
【表1】

【0056】
試験の間に、酢酸空間−時間収量(STY)及び酸素転換率が増加し一方でエチレンSTYが減少する初期期間が存在した。この期間の後、触媒Aを酢酸及び少量のエチレンを生成することに没頭させた。稼動中の100−180時間の間の平均選択性データを以下の表1に示した。
【0057】
実施例B
触媒Bを以下の表Bの条件の下で試験した:
【0058】
【表2】

【0059】
触媒Bは触媒Aと同様の特徴を示し、試験の間に、酢酸空間−時間収量(STY)及び酸素転換率が増加し一方でエチレンSTYが減少する初期期間が存在し、この後、触媒Bを酢酸及び少量のみのエチレンを生成することに没頭させた。稼動中の100−180時間の間の平均選択性データを以下の表1に示した。
【0060】
比較触媒
比較触媒1乃至3を、触媒A及びBと同様の条件の下で試験した。平均選択性データを以下の表1に示した。
【0061】
【表3】

【0062】
表1から、本発明の触媒組成物を用いる場合、酢酸への高選択性がエチレンへの低選択性と相まって達成され得ることを見出すことができる。触媒Bに関するデータは、好都合なことに、酢酸への高い選択性がPd及びAuのような貴金属が存在しない本発明の触媒組成物を用いて達成され得ることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタン及び/又はエチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物であって、該組成物は酸素と結合したモリブデン、バナジウム、ニオブ及びチタン元素からなり、実験式:
MoTiNb (I)
に基づく、ここにおいて、YはCr,Mn,Ta,B,Al,Ga,In,Pt,Zn,Cd,Bi,Ce,Co,Rh,Ir,Cu,Ag,Fe,Ru,Os,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Zr,Hf,Ni,P,Pb,Sb,Si,Sn,Tl,U,Re,Te,La,Au及びPdからなる群より選択される一つ以上の元素であり;
a,b,c,d,e及びfは元素のグラム原子比率を:
0<a≦1; 0≦b<1及びa+b=1;
0.05<c≦2;
0<d≦2;
0<e≦1;及び
0≦f≦2といったように表される、エタン及び/又はエチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物。
【請求項2】
式(I)がMoTiNb;MoTiNb;MoTiNb及びMoTiNbからなる群より選択される請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
0.01<a≦1、0.1<d≦2及びeは0.01<e≦1、0.01<e≦0.5及び0<e≦0.5からなる群より選択され、そしてfは0.01≦f≦2、0≦f≦0.5及び0.01≦f≦0.5からなる群より選択される請求項1又は請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
YがBi,Ca,Ce,Cu,K,P,Sb,La及びTeからなる群より選択される請求項1乃至3の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
式Mo1.000.529Nb0.124Au0.0012Ti0.331又はMo1.000.529Nb0.124Ti0.331を有し、xは酸素の組成物中の元素の価数を満足させる数である請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
触媒組成物が実質的に貴金属を含まない請求項1乃至3の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
触媒組成物が担持触媒である請求項1乃至6の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
担体がシリカ、アルミナ、チタン含有担体、チタニア、チタノシリケート、ジルコニア、炭化ケイ素及びこれらの混合物からなる群より選択される請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
担体がシリカ、チタン含有担体及びそれらの混合物から選択される請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の触媒組成物の調製方法であって、
(a)モリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、状況に応じてタングステン及び状況に応じてYからなる混合物を溶液の状態で形成し;
(b)混合物を乾燥して乾燥した固体物質を形成し;そして
(c)乾燥した固体物質を焼成して触媒組成物を形成するステップからなる触媒組成物の調製方法。
【請求項11】
混合物が好適な溶媒中にて金属各々の化合物及び/又は錯体を混合することにより形成される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が水である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合物が1乃至12の範囲のpHを有する水溶液である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
pHが2乃至8である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶液の温度が20乃至100℃である請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
混合物の乾燥が噴霧乾燥からなる請求項10乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
焼成が乾燥された固体を1分乃至24時間の期間、200乃至550℃の温度に加熱することからなる請求項10乃至16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
担体物質又はその前駆体がステップ(a)又はステップ(b)において混合物へ添加される請求項10乃至17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
エタン及び/又はエチレンからなるガス状混合物からの酢酸の選択的な製造方法であって、該方法は請求項1乃至9の何れか一項に記載の触媒組成物或いは請求項10乃至18の何れか一項に記載の方法によって調製された触媒組成物の存在下ガス状の混合物を分子酸素含有ガスと高温にて接触させることからなる酢酸の選択的な製造方法。
【請求項20】
エタン及び状況に応じてエチレンが酢酸へ酸化される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ガス状混合物が水の存在下において分子酸素含有ガスと接触される請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
方法が固定床又は流動床プロセスである請求項19乃至21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
酢酸への選択性が少なくとも50モル%である請求項19乃至21の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
酢酸への選択性が少なくとも60モル%である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
エチレンが製造されエチレンの選択性が30モル%未満である請求項19乃至24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
エチレンの選択性が20モル%未満である請求項25に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタン及び/又はエチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物であって、該組成物は酸素と結合したモリブデン、バナジウム、ニオブ及びチタン元素からなり、実験式:
MoTiNb (I)
に基づく、ここにおいて、YはCr,Ta,B,Al,Ga,In,Pt,Zn,Cd,Bi,Ce,Co,Rh,Ir,Cu,Ag,Fe,Ru,Os,K,Rb,Cs,Mg,Ca,Sr,Ba,Zr,Hf,Ni,P,Pb,Si,Sn,Tl,U,Re,Te,La,Au及びPdからなる群より選択される一つ以上の元素であり;
a,b,c,d,e及びfは元素のグラム原子比率を:
0<a≦1; 0≦b<1及びa+b=1;
0.05<c≦2;
0<d≦2;
0<e≦1;及び
0≦f≦2といったように表される、エタン及び/又はエチレンの酢酸への酸化のための触媒組成物。
【請求項2】
式(I)がMoTiNb;MoTiNb;MoTiNb及びMoTiNbからなる群より選択される請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
0.01<a≦1、0.1<d≦2及びeは0.01<e≦1、0.01<e≦0.5及び0<e≦0.5からなる群より選択され、そしてfは0.01≦f≦2、0≦f≦0.5及び0.01≦f≦0.5からなる群より選択される請求項1又は請求項2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
YがBi,Ca,Ce,Cu,K,P,La及びTeからなる群より選択される請求項1乃至3の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
式Mo1.000.529Nb0.124Au0.0012Ti0.331又はMo1.000.529Nb0.124Ti0.331を有し、xは酸素の組成物中の元素の価数を満足させる数である請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
触媒組成物が実質的に貴金属を含まない請求項1乃至3の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
触媒組成物が担持触媒である請求項1乃至6の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
担体がシリカ、アルミナ、チタン含有担体、チタニア、チタノシリケート、ジルコニア、炭化ケイ素及びこれらの混合物からなる群より選択される請求項7に記載の触媒組成物。
【請求項9】
担体がシリカ、チタン含有担体及びそれらの混合物から選択される請求項8に記載の触媒組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の触媒組成物の調製方法であって、
(a)モリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、状況に応じてタングステン及び状況に応じてYからなる混合物を溶液の状態で形成し;
(b)混合物を乾燥して乾燥した固体物質を形成し;そして
(c)乾燥した固体物質を焼成して触媒組成物を形成するステップからなる触媒組成物の調製方法。
【請求項11】
混合物が好適な溶媒中にて金属各々の化合物及び/又は錯体を混合することにより形成される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が水である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合物が1乃至12の範囲のpHを有する水溶液である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
pHが2乃至8である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶液の温度が20乃至100℃である請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
混合物の乾燥が噴霧乾燥からなる請求項10乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
焼成が乾燥された固体を1分乃至24時間の期間、200乃至550℃の温度に加熱することからなる請求項10乃至16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
担体物質又はその前駆体がステップ(a)又はステップ(b)において混合物へ添加される請求項10乃至17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
エタン及び/又はエチレンからなるガス状混合物からの酢酸の選択的な製造方法であって、該方法は請求項1乃至9の何れか一項に記載の触媒組成物或いは請求項10乃至18の何れか一項に記載の方法によって調製された触媒組成物の存在下ガス状の混合物を分子酸素含有ガスと高温にて接触させることからなる酢酸の選択的な製造方法。
【請求項20】
エタン及び状況に応じてエチレンが酢酸へ酸化される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ガス状混合物が水の存在下において分子酸素含有ガスと接触される請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
方法が固定床又は流動床プロセスである請求項19乃至21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
酢酸への選択性が少なくとも50モル%である請求項19乃至21の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
酢酸への選択性が少なくとも60モル%である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
エチレンが製造されエチレンの選択性が30モル%未満である請求項19乃至24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
エチレンの選択性が20モル%未満である請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2006−527083(P2006−527083A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516363(P2006−516363)
【出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001813
【国際公開番号】WO2004/108277
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(591001798)ビーピー ケミカルズ リミテッド  (66)
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
【Fターム(参考)】