説明

記録装置、記録方法、プログラム

【課題】迅速かつ適切なOPC処理の実現
【解決手段】記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを最適化する設定処理(OPC処理)を行った場合、設定情報を設定情報記憶領域に記憶させておく。OPC実行機会には、まず装填され、記録対象としている光記録媒体についての設定情報が存在するかを確認する。存在する場合は、その設定情報を読み出し、それを利用してOPC処理を行う。例えばレーザパワー初期値とし、またパルス設定初期値として利用する。過去の適切な値を利用することでOPCリトライ発生の可能性を大幅に低減し、時短化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の記録媒体に対して光学的な記録を行う記録装置、記録方法、及びそれらを実現するプログラムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2006−164517号公報
【背景技術】
【0003】
ライトワンス型光ディスクやリライタブル型光ディスクなどの記録可能型の光記録媒体が各種知られている。
例えばCD−R(Compact Disc - Recordable),CD−RW(Compact Disc - Rewritable),DVD−R(Digital Versatile Disc - Recordable),DVD−RW(Digital Versatile Disc - Rewritable),DVD+R(Digital Versatile Disc+Recordable),DVD+RW(Digital Versatile Disc +Rewritable),DVD−RAM(Digital Versatile Disc -Random Access Memory)、BD−R(Blu-ray Disc- Recordable)、BD−RE(Blu-ray Disc- Rewritable)などである。
【0004】
これらの光記録媒体に対して記録を行う光記録再生装置では、良い記録品質が得られる状態でデータ領域を記録するために、最適な記録パワーと最適な記録パルスで記録する必要がある。このため、光記録媒体に予め設けられている試し書き領域(PCA:Power Calibration Area)において、試し書き(OPC:Optimum Power Calibration)をおこない、最適な記録パワーや最適な記録パルスを求めてから、実際の記録を行うことが、記録互換性を確保するためには重要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、OPCを行うPCAとしての領域は、予め光記録媒体の管理領域(例えばリードイン、リードアウトなどの領域)に設けられているが、その記録領域には限りがある。
例えば、記録を行う周囲温度の変化や摂動要因により、PCA内で最適記録パワーや最適記録パルス調整などを繰り返し行うと、このPCAの消費量が多くなり、同一記録媒体に複数回の追記をおこなう場合、必然的にPCAの領域不足により、そのPCA領域の使用回数の上限に達してしまうと、最適記録パワーや最適記録パルスを求められなくなってしまう場合がある。
【0006】
また、光ディスク挿入の度に最適記録パワーや最適記録パルス調整を実行するようにすると、光ディスクを挿入してから実際に記録開始までに時間が必要となり、一般ユーザーがテレビジョン放送を録画するときなど、データ領域への記録を開始するまでに時間がかかってしまい不都合が生ずる。
【0007】
一方、例えば上記特許文献1のように、追記時には記憶された試し書きの結果を読み出し、既記録部分を再生して得られたRF信号などの結果で補正して、最適な記録パワーを求める方法がある。
しかしながら、この方式では最適記録パワーを求めることは出来ても、最適な記録パルスの補正を実行しデータを記録することができない。
また、温度環境の変化やラジアルチルト(Radial Tilt)など光記録媒体の物理的な変化に追従した最適な記録パワーの変化に対応できない。
【0008】
本発明では、OPCを効率的かつ迅速に行い、PCA等のOPC実行領域の消費の低減や実際のデータ記録開始までの時短化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の記録装置は、光記録媒体の記録層に対して、レーザ駆動パルスに基づいたレーザ光照射により情報の記録を行う記録部と、設定情報記憶領域から、記録対象としている光記録媒体に対応して記憶された記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの過去の設定情報を読み出し、上記記録部に、上記光記録媒体の記録層におけるテストライト領域への、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行う制御部とを備える。
また上記制御部は、上記設定処理により設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報を、上記設定情報記憶領域に記憶させる。
また上記制御部は、上記設定情報記憶領域に、記録対象としている光記録媒体に対応した上記設定情報が記憶されていないと判断した場合は、上記記録部に、上記テストライト領域への、過去の設定情報を利用しない試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行い、さらに該設定処理により設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報を、上記設定情報記憶領域に記憶させる。
また上記制御部は、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録として、
記録レーザパワーの設定情報をレーザパワーの初期パワー値とし、レーザ駆動パルスの設定情報をレーザ駆動パルス設定初期値として、試し書き記録を実行させる。
【0010】
また上記設定情報記憶領域に、記録対象としている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が記憶されている場合、上記制御部は、該記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲と判断した場合に、その設定情報を上記試し書き記録に利用する。上記記録条件が同視できる範囲と判断する場合とは、例えば記憶されている設定情報を得た設定処理の際の温度と、現在の温度との温度差が所定範囲内の場合などである。
【0011】
また上記制御部は、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録として、読み出した記録レーザパワーの設定情報又はレーザ駆動パルスの設定情報を補正し、補正した設定情報を用いて試し書き記録を実行させる。
例えば記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲と判断した場合に、読み出した記録レーザパワーの設定情報又はレーザ駆動パルスの設定情報を補正し、補正した設定情報を用いて試し書き記録を実行させる。
或いは上記制御部は、記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲と判断した場合は、読み出した記録レーザパワーの設定情報及びレーザ駆動パルスの設定情報を用いて試し書き記録を実行させ、同視できる範囲ではないと判断した場合は、読み出した記録レーザパワーの設定情報又はレーザ駆動パルスの設定情報を補正し、補正した設定情報を用いて試し書き記録を実行させる。
これらの場合、上記制御部は、補正した記録レーザパワーの設定情報をレーザパワーの初期パワーとし、補正したレーザ駆動パルスの設定情報をレーザ駆動パルス設定初期値として、試し書き記録を実行させる。
【0012】
また上記制御部は、上記設定情報の1つのユニットとして、光記録媒体の識別のための情報と、光記録媒体の記録層毎の記録レーザパワーの設定情報と、光記録媒体の記録層毎のレーザ駆動パルスの設定情報を有するユニットの情報を、上記設定情報記憶領域に記憶させる。
記録装置は、上記設定情報記憶領域として用いられる記憶部を備える。或いは上記制御部は、記録対象としている光記録媒体の一部の領域、又は接続されている他の機器の記憶部の一部の領域を、上記設定情報記憶領域として用いる。
また上記設定情報記憶領域に、記録対象とされている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が、複数ユニット記憶されている場合、上記制御部は、最新の設定情報を読み出す。
或いは、設定情報が複数ユニット記憶されている場合、上記制御部は、記録条件が現在の記録条件に最も近い設定情報を読み出す。
【0013】
本発明の記録方法は、光記録媒体の記録層に対して、レーザ駆動パルスに基づいたレーザ光照射により情報の記録を行う記録部を有する記録装置の記録方法として、設定情報記憶領域から、記録対象としている光記録媒体に対応して記憶された記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの過去の設定情報を読み出すステップと、上記記録部に、上記光記録媒体の記録層におけるテストライト領域への、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行うステップと、設定処理で設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスにおいて記録を実行するステップと、が行われる。
本発明のプログラムは、上記各ステップの処理を演算処理装置に実行させるプログラムである。
【0014】
このような本発明では、記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを最適化する設定処理(OPC処理)を行った場合、記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報を設定情報記憶領域に記憶させておく。OPC実行機会には、まず装填され、記録対象としている光記録媒体についての設定情報が設定情報記憶領域に存在するかを確認する。存在する場合は、その設定情報を読み出し、それを利用してOPC処理を行う。例えばレーザパワー可変範囲の中心値とし、またパルス設定初期値として利用する。過去の適切な値を利用することでOPCリトライ発生の可能性を大幅に低減し、時短化を図る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、記録レーザパワーとレーザ駆動パルスについて過去の適切な値を利用することでOPCの際のリトライ発生の可能性を大幅に低減できる。これによって光記録媒体上のOPC実行領域(例えばPCA)の消費を低減でき、またOPCの所要時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態のディスクドライブ装置のブロック図である。
【図2】実施の形態の記録対象の光ディスクの説明図である。
【図3】実施の形態のOPC設定情報の説明図である。
【図4】実施の形態のレーザ駆動パルス設定の説明図である。
【図5】第1の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図6】実施の形態のOPC設定情報確認処理(例1)のフローチャートである。
【図7】実施の形態のOPC設定情報確認処理(例2)のフローチャートである。
【図8】実施の形態のOPC処理のフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図12】第5の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図13】第6の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図14】第7の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【図15】第8の実施の形態の記録開始前の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
[1.ディスクドライブ装置の構成]
[2.OPC設定情報]
[3.第1の実施の形態]
[4.第2の実施の形態]
[5.第3の実施の形態]
[6.第4の実施の形態]
[7.第5の実施の形態]
[8.第6の実施の形態]
[9.第7の実施の形態]
[10.第8の実施の形態]
[11.変形例]
[12.プログラム]
【0018】
[1.ディスクドライブ装置の構成]

本発明の記録装置の実施の形態となるディスクドライブ装置の構成を図1で説明する。
本実施の形態のディスクドライブ装置は、例えばブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))や、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクに対して記録及び再生を行う記録再生装置である。そして特に相変化ディスクや色素変化ディスク等の記録可能型ディスクに対するOPC動作に関して特徴を有するものである。
【0019】
ブルーレイディスクやDVD等の光ディスク90は、ディスクドライブ装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ2によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。
そして再生時には光ピックアップ1によって光ディスク90上のトラックに記録されたマーク情報の読出が行われる。
また光ディスク90に対してのデータ記録時には、光ピックアップ1によって光ディスク90上のトラックに、ユーザーデータがフェイズチェンジマークや色素変化マークとして記録される。
【0020】
なお、光ディスク90の内周エリア等には、再生専用の管理情報として例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光ピックアップ1により行われる。
さらに光ディスク90に対しては、光ピックアップ1によってディスク90上のグルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP(Address in Pregroove)やLPP(Land Pre Pit)情報の読み出しもおこなわれる。
【0021】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、対物レンズを介してディスク記録面にレーザ光を照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。
光ピックアップ1内において対物レンズは二軸機構によってトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオードはレーザドライバ13からのドライブ信号(ドライブ電流)によってレーザ発光駆動される。
【0022】
また光ピックアップ1内には例えばサーミスタ等を用いた温度センサ21が設けられており、温度情報が検出できるようにされている。検出された温度情報はシステムコントローラ10に供給される。これによりシステムコントローラ10は記録時の温度情報を得ることができる。
【0023】
ディスク90からの反射光情報はフォトディテクタによって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当する再生情報信号(RF信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。
さらに、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてプッシュプル信号を生成する。
マトリクス回路4から出力されるRF信号はデータ検出処理部5及び評価値測定部19へ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号は光学ブロックサーボ回路11へ、プッシュプル信号はウォブル信号処理回路15へ、それぞれ供給される。
なお、マトリクス回路4は光ピックアップ1内に設けられる場合もある。
【0024】
データ検出処理部5は、RF信号の2値化処理を行う。
例えばデータ検出処理部5では、RF信号のA/D変換処理、PLLによる再生クロック生成処理、PR(Partial Response)等化処理、ビタビ復号(最尤復号)等を行い、パーシャルレスポンス最尤復号処理(PRML検出方式:Partial Response Maximum Likelihood検出方式)により、2値データ列を得る。
そしてデータ検出処理部5は、光ディスク90から読み出した情報としての2値データ列を、後段のエンコード/デコード部7に供給する。
【0025】
エンコード/デコード部7は、再生時おける再生データの復調と、記録時における記録データの変調処理を行う。即ち、再生時にはデータ復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等を行い、また記録時にはECCエンコード、インターリーブ、データ変調等を行う。
【0026】
再生時においては、上記データ検出処理部5で復号された2値データ列がエンコード/デコード部7に供給される。エンコード/デコード部7では上記2値データ列に対する復調処理を行い、光ディスク90からの再生データを得る。
例えばランレングスリミテッドコード変調が施されて光ディスク90に記録されたデータに対しての復調処理と、エラー訂正としてのECCデコード処理等を行って、光ディスク90からの再生データを得る。
エンコード/デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインターフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
【0027】
光ディスク90に対する記録/再生時にはADIP/LPP情報の処理が行われる。
即ちグルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路4から出力されるプッシュプル信号は、ウォブル信号処理回路6においてデジタル化されたウォブルデータとされる。またPLL処理によりプッシュプル信号に同期したクロックが生成される。
ウォブルデータはADIP/LPP復調回路16でADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ9に供給される。
アドレスデコーダ9は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、システムコントローラ10に供給する。
【0028】
記録時には、ホスト機器100から記録データが転送されてくるが、その記録データはホストインターフェース8を介してエンコード/デコード部7に供給される。
この場合エンコード/デコード部7は、記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加(ECCエンコード)やインターリーブ、サブコードの付加等を行う。またこれらの処理を施したデータに対して、ランレングスリミテッドコード変調を施す。
【0029】
エンコード/デコード部7で処理された記録データは、ライトストラテジ部14において、記録補償処理として、記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対する最適記録パワーの微調整やパルス波形の調整などが行われた状態のレーザ駆動パルスとされ、レーザドライバ13に供給される。
そしてレーザドライバ13は、記録補償処理したレーザ駆動パルスを光ピックアップ1内のレーザダイオードに与えてレーザ発光駆動を実行させる。これにより光ディスク90に、記録データに応じたマークが形成されることになる。
【0030】
なお、レーザドライバ13は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光ピックアップ1内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニタしながらレーザの出力が温度などによらず一定になるように制御する。
記録時及び再生時のレーザ出力の目標値はシステムコントローラ10から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
記録時の最適なレーザパワーや最適なレーザ駆動パルス波形は、後述するOPC処理によって設定される。
【0031】
光学ブロックサーボ回路11は、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
即ちフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号を生成し、二軸ドライバ18により光ピックアップ1内の二軸機構のフォーカスコイル、トラッキングコイルを駆動することになる。これによって光ピックアップ1、マトリクス回路4、光学ブロックサーボ回路11、二軸ドライバ18、二軸機構によるトラッキングサーボループ及びフォーカスサーボループが形成される。
また光学ブロックサーボ回路11は、システムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、ジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
また光学ブロックサーボ回路11は、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッドドライバ19によりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0032】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモータ2をCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、データ信号処理回路5内のPLLによって生成される再生クロックが、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ17によりスピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0033】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインターフェース8を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えばホスト機器100から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、まず書き込むべきアドレスに光ピックアップ1を移動させる。そしてエンコード/デコード部7により、ホスト機器100から転送されてきたユーザデータ(例えばビデオデータやオーディオデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そして上記のようにエンコードされたデータに応じてレーザドライバ13がレーザ発光駆動することで記録が実行される。
【0034】
また例えばホスト機器100から、光ディスク90に記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、システムコントローラ10はまず指示されたアドレスを目的としてシーク動作制御を行う。即ち光学ブロックサーボ回路11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。即ちディスク90からのデータ読出を行い、データ検出処理部5、エンコード/デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0035】
マトリクス回路4で得られるRF信号は、評価値測定部19にも供給される。
評価値測定部19は、後述するOPC動作の際に、再生されたRF信号の評価値を測定し、システムコントローラ10に供給する。
例えばβ値、変調度、アシンメトリ、ジッター値、RF信号振幅等を測定する。
或いは、評価値としてエラーレートを用いてもよい。その場合、エンコード/デコード部7がエラー訂正処理を行った結果の情報が評価値測定部19に供給され、エラーレートが算出される。
【0036】
なお、β値は、再生RF信号のピーク値Ip、ボトム値Ibから、
β=(Ip+Ib)/(Ip−Ib)
で求められる値である。
またジッターは規定クロックからのズレを標準偏差σと1Tと用いて、σ/Tで表される。このジッターの値が大きいほど再生信号は劣化していると言える。記録層が1層の再生専用型ブルーレイディスクでは、規格ではジッターは6.5%以下と規定されているが、もちろん低ければ低いほど良い。
アシンメトリは、8T信号のピーク値をIp8、ボトム値をIb8、2T信号のピーク値をIp2、ボトム値をIb2としたときに、
{(Ip8+Ib8)−(Ip2+Ib2)}/{2(Ip8−Ib8)}
で表され、8T信号と2T信号の中心軸のズレを意味している。このアシンメトリは二値化のスレッショルドを決める上で重要になる指標である。ブルーレイディスクの規格では−10〜15%と定められているが、通常0〜10%程度が望ましい。
変調度(モジュレーション)は、(Ip8−Ib8)/(Ip8)で表される。これは8T振幅の大きさであり、8Tピットの深さに依存する指標である。この値が大きいほど、C/N比がよくなると言える。
【0037】
メモリ部20は、システムコントローラ10が各種処理に用いるパラメータや定数等を記憶する。例えば不揮発性メモリで構成される。
例えば後述するOPC設定情報を記憶する設定情報記憶領域として、メモリ部20が用いられる。
なお、設定情報記憶領域としては、ディスクドライブ装置内のメモリ20を用いない例も考えられる。本例の場合、システムコントローラ10はOPC処理を行った結果のOPC設定情報を設定情報記憶領域に記憶させるが、その設定情報記憶領域は、接続されているホスト機器100内のメモリ、ハードディスク等の記憶領域の一部を用いても良い。或いは装填されている光ディスク90の所定領域を用いても良い。例えば光ディスク90のリードインエリア等には、ディスクドライブ装置が任意に使用できる領域が用意されているため、その領域を用いることが考えられる。
【0038】
ところでこの図1の例は、ホスト機器100に接続されるディスクドライブ装置として説明したが、実施の形態のディスクドライブ装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザーの操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。もちろんディスクドライブ装置の構成例としては他にも多様に考えられる。
【0039】
図2に光ディスク90の概略的な構成を示している。図2(a)は、光ディスク90を平面的にみた場合を示し、その半径方向のエリア構成を示している。
光ディスク90は、例えば直径12cmのディスク記録メディアとされ、そのエリア構造は大きく分けて、内周エリア91,データゾーン92,外周エリア93とされる。
【0040】
データゾーン92は、主たる記録エリアであり、いわゆるユーザデータの記録が行われる。ここでいうユーザデータとは、映像データ、音声データ、テキストデータ、コンピュータ使用データ、ソフトウエアプログラム等、光ディスク90を用いての保存の主たる対象のデータのことである。
内周エリア91は、いわゆる管理領域として用いられる。記録層が1つの1層ディスクの場合は、いわゆるリードインゾーンとして用いられる領域である。記録層が複数の多層ディスクの場合、この内周エリアは、各層毎に、リードインゾーン、インナーゾーン、リードアウトゾーン等として用いられる。内周エリア91にはディスクの物理情報、記録再生動作の設定情報、領域構成や交替を管理する情報、試し書き領域などが形成される。
外周エリア91は、1層ディスクの場合は、いわゆるリードアウトゾーンとして用いられる領域である。記録層が複数の多層ディスクの場合、この外周エリアは、各層毎に、リードアウトゾーン又はアウターゾーンとして用いられる。
【0041】
図2(b)に、この光ディスク90を4層のブルーレイディスクと想定した場合の層構造を模式的に示している。
光ディスク90は、例えばポリカーボネート等を用いた射出成形などによって成形されたディスク基板PKの一面上に、ウォブリンググルーブとしての凹凸形状が形成され、ここに反射膜や記録材料層が成膜されて第1番目の記録層L0が形成される。
さらに記録層L0上に中間層C1が形成される。この中間層C1の面上にウォブリンググルーブとしての凹凸形状が形成され、ここに半透過反射膜や記録材料層が成膜されて第2番目の記録層L1が形成される。
さらに記録層L1上に中間層C2が形成される。この中間層C2の面上にウォブリンググルーブとしての凹凸形状が形成され、ここに半透過反射膜や記録材料層が成膜されて第3番目の記録層L2が形成される。
さらに記録層L2上に中間層C3が形成される。この中間層C3の面上にウォブリンググルーブとしての凹凸形状が形成され、ここに半透過反射膜や記録材料層が成膜されて第4番目の記録層L3が形成される。
記録層L3上には、カバー層CVが形成される。
なお、各記録層L0,L1,L2,L3においては、内周エリア91の一部等、エンボスピット列が形成される部分もある。
【0042】
実際には、光ディスク90の厚みは約1.2mmとされ、ディスク基板PKは1.1mm程度の厚みとなる。そして約100μmの厚みの間に、記録層L0からカバー層CVまでが形成される。
この図2(b)では4層ディスクの例を挙げているが、中間層やカバー層の厚み等が調整され、3層ディスクや、5層以上のディスクも、同様の構造で形成される。
【0043】
[2.OPC設定情報]

本例のディスクドライブ装置では、記録動作に先立ってOPC動作を行うが、そのOPC動作は、記録レーザパワーの最適化だけでなく、レーザ駆動パルスの波形の最適化も行う。
OPC動作は、簡単に言えば、装填されて記録対象とされている光ディスク90のPCA(パワーキャリブレーションエリア)に対して、レーザパワーやパルス波形を変化させながら試し書き記録(テストライト)を行う。そして試し書きした部分を再生し、上述のβ値やジッター等の評価値から、最適な記録レーザパワーやレーザ駆動パルスを判別し、その後の実際の記録に用いるものとして設定する。
【0044】
ここで、PCAは通常、光ディスク90の内周エリア91の管理領域内に設けられる。なお外周エリア93に設けられることもある。いずれにしてもPCAは有限の領域である。従って、特にライトワンス型の光ディスク90の場合、OPC動作においてリトライが繰り返されたりしてPCAの消費が進むことは好ましくない。また、なかなか最適設定が判定できずにリトライ回数が多くなることは、実際の記録動作までに時間を要するという点でも好ましくない。
そこで本例では、OPC動作を行った結果の設定情報、即ち最適な記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報(OPC設定情報)を、上述した設定情報記憶領域(例えばメモリ20)に記憶させるようにする。そしてOPC動作の実行の際には、設定情報記憶領域に記憶されたOPC設定情報を確認し、可能であればそのOPC設定情報を利用して効率的なOPC動作を行うようにしている。
【0045】
本例ではシステムコントローラ10は、OPC設定情報をユニット単位で記憶させるようにする。
OPC設定情報の内容の例を図3に示す。
この図3では、設定情報記憶領域において、ユニットU1,U2,U3・・・というユニット単位でOPC設定情報が記憶されている様子を例示している。
【0046】
1つのユニット内の各情報は次のようなものである。
ディスクタイプ(Disc Type)はOPCを行ったディスク90の種別を示す。例えばCD−R,CD−RW,DVD−R,DVD−RW,DVD+R,DVD+RW,DVD−RAM、BD−R、BD−REなどの種別や記録層数を示す情報である。
ディスクメーカー(Disc Maker)は、そのOPCを行ったディスク90の製造メーカー名を示す情報である。
ユニークID(Unique ID)は、そのOPCを行ったディスク90に固有に付与する識別ナンバーである。例えば或る1つの光ディスク90に対して最初にOPCを行った際に、システムコントローラ10もしくはホスト機器100がランダムナンバーを発生させ、ユニークIDとして光ディスク90に記録させる識別ナンバーである。
【0047】
OPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)は、光ディスク90の記録層L0,L1,L2,L3のそれぞれについてのOPC動作で設定された最適な記録レーザパワーの値である。
温度情報(TempL0・・・TempL3)は、光ディスク90の記録層L0,L1,L2,L3のそれぞれについてのOPC動作を行った際に、センサ21によって検出される環境温度の値である。
ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)は、光ディスク90の記録層L0,L1,L2,L3のそれぞれについてのOPC動作で設定された最適なレーザ駆動パルスの設定値である。
【0048】
ネクストマーカー(Next Marker)は、設定情報記憶領域における次のユニットの記録開始位置を示している。
アップデートナンバ(Update Number)は更新回数を示す。
【0049】
例えばこのようなOPC設定情報がOPC動作に応じてユニット単位で追加記録されていく。
勿論この図3の各情報は一例である。例えば1層ディスクを対象としたときには記録層L2〜L4の情報は不要である。また、ディスク種別に応じて情報内容を変更してもよい。また記録時(及びOPC時)の記録線速度(回転数)の情報を加えることも考えられる。
【0050】
本例のOPC動作では、最適な記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定を行う。
一般に、最適な記録レーザパワーの判定のためには、或る範囲で記録レーザパワーを段階的に変化させながらテストライトを行う。そのテストライト部分を再生したときに得られる評価値(β値等)を確認すれば、変化させた範囲で最も記録特性の良いレーザパワーが判定できる。
しかし、β値やジッター等の値が必要な値に達していなかったり、さらに他のレーザパワーが好ましいと推定されるような場合は、OPCリトライを行う。仮に、5mwから10mWの範囲でレーザパワーを変化させてテストライトした場合に、ジッター値が10mWのときに最小であったとする。この場合、さらにレーザパワーを上げれば、ジッター値がさらに低くなることが予想される。そこで、例えば9mW〜14mWの範囲でレーザパワーを変化させてテストライトを行う。ここで、12mWのときにジッター値が最小であったとしたら、12mWが最適なレーザパワーと判定できる。
このように、或る範囲でレーザパワーを変化させながら評価値が最もよくなるレーザパワーを判定する。
【0051】
レーザ駆動パルスの設定も同様に考えればよい。
図4に2T〜9Tまでのピット長に対応したレーザ駆動パルスの例を示す。
2Tに対応するレーザ駆動パルスは、或るレベル及びパルス幅に設定されたファーストパルスFPで構成される。
3Tに対応するレーザ駆動パルスは、それぞれ或るレベル及びパルス幅に設定されたファーストパルスFPとラストパルスLPで構成される。
4T〜9Tに対応するレーザ駆動パルスは、それぞれ或るレベル及びパルス幅に設定されたファーストパルスFPと、マルチパルスMPと、ラストパルスLPで構成される。4T〜9Tのそれぞれは、ファーストパルスFPとラストパルスLPの間に配置されるマルチパルスMPの数が異なるパターンとなる。
【0052】
ライトストラテジ部14は、記録データに基づいて、例えばこのように2T〜9Tのレーザ駆動パルスを発生させることができ、また、システムコントローラ10の指示に基づいてそのパルスパターンの補正を行うことができる。
パルスパターンの補正としては、図4でファーストパルスFPの立ち上がりエッジタイミングの補正と、ラストパルスLPの立ち下がりエッジタイミングの補正を行うとする。
ファーストパルスFPの立ち上がりエッジタイミングは、チャネルクロックCKを基準として、期間FSで規定される。この期間FSの設定により、立ち上がりエッジタイミングを、前後に変動させることができる。
ラストパルスLPの立ち下がりエッジタイミングは、チャネルクロックCKを基準として、期間LEで規定される。この期間LEの設定により、立ち下がりエッジタイミングを、前後に変動させることができる。
OPC時には、このようなパルスエッジタイミングを変化させてテストライトを行い、評価値を確認することで、最適なレーザ駆動パルスの設定を行う。
【0053】
なお、レーザ駆動パルスの設定は、これら以外のタイミングの設定でも良い。例えばファーストパルスFPの立ち下がりタイミング、マルチパルスMPの立ち上がりエッジタイミング又は立ち下がりエッジタイミング、ラストパルスLPの立ち上がりエッジタイミングなどを可変して最適設定を求めることもあり得る。さらには、ファーストパルスFP、マルチパルスMP、ラストパルスLPのパルスレベルを変化させて最適設定を探すこともあり得る。
もちろんレーザ駆動パルス波形自体も、図4のような波形に限られず、多様に考えられる。図4は一例に過ぎない。例えばディスク種別や、ディスクがライトワンス型であるかリライタブル型であるかなどによりレーザ駆動パルス波形は異なる。レーザ駆動パルス波形が異なっても、最適なレーザ駆動パルスの設定として、パルスエッジタイミングやパルスレベルの調整が行われる。
【0054】
[3.第1の実施の形態]

第1の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図5で説明する。なお、以下の各実施の形態の説明では、光ディスク90が装填されてからのシステムコントローラ10の処理を示す。但し、装填された光ディスク90が記録不能の光ディスクの場合や、ホスト機器100から再生コマンドが発行された場合等の処理は、本発明に直接関係ないので省略する。そこで以下では、記録可能な光ディスク90が装填され、その後、ホスト機器100から記録コマンドが発行される場合を前提として説明を行う。
【0055】
ディスクドライブ装置に光ディスク90が装填されたことを検知すると、システムコントローラ10は図5の処理をステップF101からF102にすすめ、ディスク判別の処理を行い、装填された光ディスク90が記録可能ディスクか否かの判定を行なう。
この場合、例えば光ディスク90の管理情報の読み出しを行って、ディスク種別、ディスクメーカー、ディスク固有のユニークID、ディスククロージング状態か否かなどを確認する。
装填された光ディスク90が、種別としてBD−R、BD−RE、DVD−R等の記録可能型のディスクであり、さらに、いわゆるクロージング処理されていないディスクであれば、記録可能と判定する。なお、クロージング処理とは、記録状態を確定させて、以降は追記不能として再生のみに用いるようにする処理である。
【0056】
記録可能ディスクでない場合は、図示していないが、システムコントローラ10はホスト機器100へのディスク種別や記録不能ディスクであることの通知を行い、再生コマンドを待機することになる。場合によっては非対応ディスクとしてエラー処理を行うこともある。
記録可能な光ディスク90であった場合、システムコントローラ10はステップF103からF104に進め、ホスト機器100に対して記録可能ディスクで或る旨を通知する。そして記録コマンドの受信を待機する。(再生コマンド受信の場合の説明は省略)
【0057】
記録コマンドが受信された場合、システムコントローラ10は、ステップF106以降で、OPC処理を行ってから実際の要求された記録動作の制御を行うこととなる。
ステップF106では、現在装填され、記録対象としている光ディスク90に対応するOPC設定情報が、設定情報記憶領域に記憶されているか否かを確認する。
この確認処理の例については後述するが、まず、ここでは装填された光ディスク90が初めて装填されたディスクであって、対応するOPC設定情報が記憶されていない場合について説明する。
【0058】
現在の記録対象とする光ディスク90に対応するOPC設定情報が設定情報記憶領域に存在しない場合、システムコントローラ10は処理をステップF107からF109に進め、OPC処理を実行する。
【0059】
システムコントローラ10がステップF109で行うOPC処理の一例を図8に示す。
まずステップF301で、OPC初期設定を行う。ここでは記録レーザパワーの初期値、レーザ駆動パルスの設定の初期値を設定する。
記録レーザパワーの初期値とは、記録レーザパワーを変化させる範囲のセンター値である。この初期値は、或る固定値が決められている。例えばディスク種別毎に特定のレーザパワー初期値が予め決められている。
例えば仮に、5mWの範囲でレーザパワーを段階的に変化させるものとして、レーザパワーパワー初期値が7mWとされていた場合、5mW〜9mWの範囲で変化させてテストライトを行うものとなる。
また、レーザ駆動パルスの初期値も、例えばディスク種別毎に予め決められた値とされる。例えば図4の各パルスが初期状態と設定されているとすると、図示する期間FS、LEの値が初期値として決められている。
このようにステップF301のOPCの初期設定として、予め準備された規定の初期値を設定する。
また、システムコントローラ10は、OPCのためのテストライト回数のカウント値RNをゼロにリセットする。
【0060】
OPCの手順は多様に考えられるが、ここでは一例として、まずレーザ駆動パルスを初期設定状態で固定して記録レーザパワーとしての最適値を探索し、記録レーザパワーの最適値を求め、その後、記録レーザパワーを最適値に固定して、最適なレーザ駆動パルスの設定を探索するという手順をとるものとする。
【0061】
初期設定を終えたら、システムコントローラ10はステップF302でOPC制御を実行する。即ちテストライトの実行制御、テストライト部分の再生制御、及び評価値の取り込みを行う。
この場合、システムコントローラ10は、まず光ピックアップ1をディスク90のPCAに移動させる。そして、エンコード/デコード部7から、テストライト用のデータ(テストデータ)を出力させる。テストデータは例えばランダムデータとすればよい。さらにシステムコントローラ10、レーザドライバ13に対して、上記の初期設定に基づいた上で、段階的にレーザパワーを変化させる制御を行う。
これによって、多段階の記録レーザパワーでテストデータが光ディスク90のPCAに記録されていく。
テストライトが完了したら、次にシステムコントローラ10は、光ピックアップ1を、先にテストライトを行った領域の先頭のアドレスにアクセスさせる。そして、テストライトによる既記録部分の再生を実行させる。
このとき、再生RF信号はマトリクス回路4から評価値測定部19に供給され、この評価値測定部19で、例えばβ値が測定される。システムコントローラ10は、当該再生期間に測定されるβ値、即ち多段階の記録レーザパワー毎に対応するβ値を、評価値測定部19から取り込む。
なお、先に述べたように、評価値としてはβ値ではなく、ジッター、アシンメトリ、変調度、エラーレートなどを用いても良いし、複数種類の評価値を用いても良い。
【0062】
システムコントローラ10は、評価値を取り込んだら、その評価値から、テストライトを行ったレーザパワー範囲で最適な記録レーザパワーが決定できるか否かを判別する。もし、最適な記録レーザパワーがテストライトを行った範囲にないと推定されるときは、リトライ必要と判断し、ステップF303からF305に進む。
【0063】
ステップF305は、テストライト回数RNが、リトライ回数上限RNmaxに達しているか否かを判断する。
テストライト回数RNが、リトライ回数上限RNmaxに達していなければ、ステップF306で設定変更を行う。例えば、最適な記録レーザパワーが未だ確定できていない場合であれば、レーザパワーの変化範囲の設定を変更する。
そしてステップF307でテストライト回数RNの値をインクリメントし、ステップF302に戻って、上記のようにテストライトの実行制御、テストライト部分の再生制御、及び評価値の取り込みを行う。
【0064】
1回目のテストライト、或いは2回目以降のテストライトの結果、評価値から、最適な記録レーザパワーが決定できたとする。
本例の場合は、さらに最適パルス設定も行うため、その時点でOPCを終了させず、ステップF303→F305→F306と進む。そしてこの場合は、レーザパワーについては、最適と判断された記録レーザパワーに固定する設定とし、レーザ駆動パルスを、初期値をセンター値として、その前後の範囲で段階的に変化させる設定とする。
そしてステップF307でテストライト回数RNの値をインクリメントし、ステップF302に戻って、上記のようにテストライトの実行制御、テストライト部分の再生制御、及び評価値の取り込みを行う。
このときのテストライトでは、記録レーザパワーは最適な記録レーザパワーに固定したうえで、レーザ駆動パルスの設定(例えばファーストパルスFPの立ち上がりエッジタイミングや、ラストパルスLPの立ち下がりエッジタイミング)を段階的に変化させる。
そしてそれを再生させて評価値を取り込み、最適なレーザ駆動パルスの設定を判定する。場合によってはさらにリトライを行い、最適なレーザ駆動パルスの設定を探索する。
【0065】
そして最適なレーザ駆動パルスの設定が決定されたら、システムコントローラ10はステップF303からF304に進み、最適と判定された記録レーザパワー及びレーザ駆動パルスの設定を確定させる。
また、このときシステムコントローラ10はセンサ21からの温度検出情報を確認して現在の環境温度を判定する。なお、温度判定は必ずしもこのタイミングでなくても良く、OPC処理過程での温度を検知すればよい。
以上で一連のOPC処理を終える。
【0066】
但し、最適な記録レーザパワー及びレーザ駆動パルスが判定できないままリトライ回数上限に達することもある。その場合は,ステップF305からF308に進み、OPCエラーとしての処理を行う。
【0067】
なお、以上の図8では説明の簡略化のため、1つの記録層でテストライトを行う場合の処理のみを述べたが、多層ディスクに対するOPC処理としては、各記録層のそれぞれについて続けてOPC処理を行う場合がある。
例えば4層ディスクの場合、記録層L0,L1,L2,L3のそれぞれについて、上記図8のようなOPC処理を順次実行し、各記録層についての最適な記録レーザパワー及びレーザ駆動パルスの設定を決定することとなる。
但し、一度に全ての記録層についてOPC処理を行うことをせず、これから記録を行う記録層についてのみOPC処理を行うという手法もある。
【0068】
また、以上のOPC処理は一例に過ぎない。例えば記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを1回のテストライトで同時に変化させていくような処理例も考えられる。
またレーザ駆動パルスの最適設定判定を行った後に、そのレーザ駆動パルスの設定状態で記録レーザパワーの最適パワー判定を行うという処理例もあり得る。
【0069】
図5に戻って説明を続ける。
装填されている光ディスク90に対してOPC処理を行ったら、システムコントローラ10はステップF110に進み、OPC結果としての設定情報の1ユニットを設定情報記憶領域に記憶させる。
即ち図3に示した1つの設定情報ユニットを生成してユニットU(x)として記憶させる。
【0070】
この場合、ディスクタイプは、ステップF102で判定したディスク種別に基づく値とする。
ディスクメーカーは、ステップF102での判定時に光ディスク90の管理情報から読み出したメーカー情報に基づく値とする。
ユニークIDは、今回の光ディスク90に対してホスト機器100又はシステムコントローラ10が発生させたユニークナンバを割り当てる。
なお、このユニークナンバについては、この時点もしくは記録動作後の管理情報更新時点などの所定の時点で、光ディスク90にも記録する。
【0071】
OPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)は、直前のOPC処理で設定した各記録層についての最適な記録レーザパワーの値とする。なお、光ディスク90が多層ディスクであった場合に、各記録層についてOPC処理を行ったのであれば、各記録層についての記録レーザパワーを記憶させる。一方、一部の記録層に対してのみOPC処理を行った場合には、OPC処理を行っていない記録層についての記録レーザパワーの情報はブランクとしてもよいが、記録層に応じた係数を用いて、OPC処理を行っていない記録層についての記録レーザパワーの値を算出し、それを記憶させてもよい。例えば記録層L0についてのみOPC処理を行った場合、その最適な記録レーザパワーに対し、それぞれ記録層L1,L2,L3用の係数演算を行って、記録層L1,L2,L3に適した記録レーザパワーを求めて記憶する。
【0072】
温度情報としては、例えば図8のステップF304のように、OPC処理の際に検出した温度情報を記憶させる。各記録層毎にOPC処理を行った場合は、各OPC処理の際の温度の値を、温度情報(TempL0・・・TempL3)として記憶させる。
【0073】
ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)は、直前のOPC処理で設定した各記録層についての最適なレーザ駆動パルスの設定の値(例えば図4のFS,LEの値)とする。なお、光ディスク90が多層ディスクであった場合に、各記録層についてOPC処理を行ったのであれば、各記録層についてのストラテジ補正量を記憶させる。一方、一部の記録層に対してのみOPC処理を行った場合には、OPC処理を行っていない記録層についてのレーザ駆動パルスのストラテジ補正量はブランクとしてもよいが、記録層に応じた係数を用いて、OPC処理を行っていない記録層についてのストラテジ補正量の値を算出し、それを記憶させてもよい。
【0074】
システムコントローラ10は、例えばこのように1つの設定情報ユニットのデータを生成し、設定情報記憶領域(例えばメモリ20)に記憶させる。
或いは設定情報記憶領域をホスト機器100内のメモリに設ける場合は、システムコントローラ10は設定情報ユニットのデータをホスト機器100に転送し、ホスト機器100に記憶を求める。
さらに設定情報記憶領域を、光ディスク90の所定領域とする場合、システムコントローラ10は、設定情報ユニットに基づいて記録データを生成し、エンコード/デコード部7に転送する。そしてエンコード/デコード部7、ライトストラテジ部13,レーザドライバ13,光ピックアップ1の動作により、当該設定情報ユニットの情報を光ディスク90に記録させる。なお、設定情報記憶領域を、光ディスク90の所定領域とする場合、この設定情報ユニットの光ディスク90への書込は、このステップF110のタイミングではなく、その後の記録動作後の管理情報更新時に行うようにしてもよい。
【0075】
システムコントローラ10は、ステップF110で設定情報ユニットの記憶処理を行ったら、ステップF111に進み、ホスト機器100から要求されていた記録動作を開始する。勿論このとき、システムコントローラ10はライトストラテジ部14に最適なレーザ駆動パルスの設定を指示し、またレーザドライバ13に最適な記録レーザパワーを指示したうえで、記録動作を実行させることとなる。
【0076】
ここまでは、ステップF106の処理で、現在の記録対象の光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しなかった場合について説明した。
一方、すでに、少なくとも一度以上、OPC及び記録動作が行われた光ディスク90が装填された場合は、その光ディスク90に対応して1ユニット又は複数ユニットのOPC設定情報が、設定情報記憶領域に記憶されていることになる。
以下、このような場合について説明する。
【0077】
まず、ステップF106のOPC設定情報確認処理の例1,例2を図6,図7に示す。
システムコントローラ10はステップF106で、現在装填され、記録対象としている光ディスク90に対応するOPC設定情報のユニットが、設定情報記憶領域に記憶されているか否かを確認する。
図6のOPC設定情報確認処理の例1は次のような処理となる。
まずシステムコントローラ10はステップF201で、変数xに、設定情報記憶領域に記憶されている設定情報ユニットの最終ナンバを代入する。なお、設定情報記憶領域の各設定情報ユニットには、記憶順にユニットナンバが付されているとする。最終ナンバとは、現時点で最も最近に記憶された設定情報ユニットを示すナンバとなる。
【0078】
システムコントローラ10はステップF202で設定情報ユニットU(x)の内容を確認する。そして現在装填されている光ディスク90の情報、即ちステップF102で管理情報から読み出したディスク種別、製造メーカー名、ユニークIDと、設定情報ユニットU(x)のディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDの一致を確認する。
このディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDが、現在装填されている光ディスク90と全て一致した場合、この設定情報ユニットU(x)は、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットであると判定する。
一方、ディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDのうちの1つでも、現在装填されている光ディスク90に該当しない場合は、この設定情報ユニットU(x)は、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットではないと判定する。
【0079】
システムコントローラ10は、設定情報ユニットU(x)が、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットではないと判定した場合は、ステップF203からF204に進み、変数xがユニット先頭ナンバとなっているか否かを確認する。つまり全ての設定情報ユニットの確認を終了したか否かの判断である。
変数xがユニット先頭ナンバとなっていなければ、ステップF205で変数xをデクリメントし、ステップF202で次の設定情報ユニットU(x)の内容を確認する。
つまりシステムコントローラ10は、最新の設定情報ユニットから順次内容を確認し、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットを探していく処理を行うことになる。
【0080】
ある時点で、確認中の設定情報ユニットU(x)のディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDが、現在装填されている光ディスク90と全て一致した場合、システムコントローラ10はステップF203からF206に進み、その設定情報ユニットU(x)が、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットであると判定してステップF106の設定情報確認処理を終える。
【0081】
一方、対応する設定情報ユニットが見つけられないまま、ステップF204で変数xがユニット先頭ナンバとなる場合は、設定情報記憶領域に記憶された全ての設定情報ユニットが、現在装填されている光ディスク90に対応するものではないと確認された場合である。そのときはシステムコントローラ10はステップF207に進み、対応する設定情報ユニットは存在しないとの確認結果で、ステップF106の設定情報確認処理を終える。
なお、このように対応するOPC設定情報が存在しないとされた場合、図5の処理では、上述したようにステップF107→F109→F110→F111の処理が行われることになる。
【0082】
このような図6のOPC設定情報確認処理では、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットが、1ユニット存在する場合には、その設定情報ユニットが、対応するOPC設定情報を有するユニットであると判定される。又、対応する設定情報ユニットが複数ユニット存在する場合には、そのうちで最新の1つの設定情報ユニットが、対応するOPC設定情報を有するユニットであると判定される。
つまり設定情報記憶領域に、記録対象とされている光ディスク90に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が、複数ユニット記憶されている場合、システムコントローラ10は、最新の設定情報を、後のOPC処理のために読み出すこととなる。
最新の設定情報ユニットを読み出すことで、経時変化等による記録条件の変動を考慮すると、現在に近い記録条件下での設定情報が取得できることになる。
【0083】
次に図7は、同じくステップF106のOPC設定情報確認処理としての例2を示す。この例2は、設定情報記憶領域に、記録対象とされている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が、複数ユニット記憶されている場合、システムコントローラ10は、記録条件が現在の記録条件に最も近い設定情報を読み出すようにする例である。
【0084】
まずシステムコントローラ10はステップF220で、設定情報記憶領域に記憶されている設定情報ユニットの先頭の設定情報ユニットを指定する。
そしてシステムコントローラ10はステップF221で、指定した設定情報ユニット(例えばユニットU1)の内容を確認する。そして現在装填されている光ディスク90の情報、即ちステップF102で管理情報から読み出したディスク種別、製造メーカー名、ユニークIDと、設定情報ユニットU(x)のディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDの一致を確認する。
上記例1と同様、ディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDが、現在装填されている光ディスク90と全て一致した場合のみ、この確認中の設定情報ユニットは、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットであると判定する。
【0085】
対応する設定情報ユニットであると判定したときは、システムコントローラ10はステップF223で、確認中の設定情報ユニットのユニットナンバを対応ユニットとして記憶する。例えば内部レジスタに、現在の設定情報ユニットのナンバに対応してフラグを立てる処理を行う。
一方、ディスクタイプ、ディスクメーカー、ユニークIDのうちの1つでも、現在装填されている光ディスク90に該当しない場合は、その設定情報ユニットは、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットではないと判定し、ステップF223の処理は行わない。
【0086】
ステップF224では、全ての設定情報ユニットについて確認を終えたかを判断し、終えてなければステップF225で次の設定情報ユニット(例えばユニットU2)を指定して、ステップF221に戻る。
即ち、全ての設定情報ユニットについて、順番にステップF221の処理を行っていくことになる。
【0087】
システムコントローラ10は、全設定情報ユニットについて確認終了したら、ステップF224からF226に進み、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットが存在したか否かを確認する。これは、例えばステップF223のフラグ処理が行われたユニットナンバが1つでも存在するか否かの確認となる。
対応する設定情報ユニットが1つも存在しないときは、システムコントローラ10はステップF227に進み、対応する設定情報ユニットは存在しないとの確認結果で、ステップF106の設定情報確認処理を終える。なお、この場合、図5の処理では、上述したようにステップF107→F109→F110→F111の処理が行われることになる。
【0088】
一方、対応する設定情報ユニットが1以上存在した場合は、システムコントローラ10はステップF228で、複数ユニット存在するか否かで処理を分岐する。
対応する設定情報ユニットが1個であった場合は、ステップF229に進み、その設定情報ユニットが、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットであると判定してステップF106の設定情報確認処理を終える。
【0089】
対応する設定情報ユニットが複数であった場合は、システムコントローラ10はステップF230に進み、各設定情報ユニットのうち、最も現在の記録条件に最も近い設定情報を選択する処理を行う。
例えば記録条件として温度情報を用いる。システムコントローラ10は現在の温度をセンサ21の検出情報から判定するとともに、各設定情報ユニットの温度情報を確認する。そしてステップF231で、複数の設定情報ユニットのうちで、記憶されている温度情報が、現在の温度に最も近いものを選択する。そして、その選択した設定情報ユニットを、現在装填されている光ディスク90に対応する設定情報ユニットであると判定してステップF106の設定情報確認処理を終える。
【0090】
このように複数の設定情報ユニットが該当する場合、温度等の記録条件が近い設定情報ユニットを選択することで、現在の記録条件に適した設定情報を取得できることになる。
なお、ここでは温度を例に挙げたが、例えば現在記録しようとする記録層でのOPC処理が実際に行われたときの設定情報ユニットを選択するとしてもよいし、この条件と温度条件を併用して選択しても良い。もちろん、設定情報ユニット内に持たせる情報内容によっては他の選択のための条件を用いても良い。例えば設定情報ユニット内にOPC時のラジアルチルトの値を記憶させたら、その値が現在の状態に近いものを選択するということも考えられる。
【0091】
図6又は図7のような処理で、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合の、図5の以降の処理は次のようになる。
即ち、システムコントローラ10は図5のステップF107からF108に進む。ステップF108では、上記ステップF106で確認された設定情報ユニットの内容を読み出し、OPC初期値を設定する。つまり、その設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対するOPC実行時の記録レーザパワーBの初期値(例えばレーザパワー変化範囲のセンター値)とする。
またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対するOPC実行時のレーザ駆動パルスの設定の初期値とする。
【0092】
そしてステップF109のOPC処理に進む。
ここでOPC処理では図8で説明したように、まずステップF301で初期設定を行うことになる。
上述のように、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しなかった場合は、記録レーザパワー及びレーザ駆動パルスの初期値は、例えば予め決められた固定の初期値とした。
これに対して、OPC設定情報が存在した場合は、このステップF301で、上記ステップF108で決めた初期値、つまり設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)、ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)が初期値と設定される。
【0093】
即ちシステムコントローラ10は、記録層L0のOPC処理を開始するときのステップF301では、「OPCPowerL0」の値を記録レーザパワーの初期値とし、また「Strategy補正量Layer0」の値をレーザ駆動パルスの設定初期値とする。そして上述したステップF302以降の処理を行う。
また記録層L1のOPC処理を開始するときのステップF301では「OPCPowerL1」の値を記録レーザパワーの初期値とし、「Strategy補正量Layer1」の値をレーザ駆動パルスの設定初期値とする。
記録層L2のOPC処理を開始するときのステップF301では「OPCPowerL2」の値を記録レーザパワーの初期値とし、「Strategy補正量Layer2」の値をレーザ駆動パルスの設定初期値とする。
記録層L3のOPC処理を開始するときのステップF301では「OPCPowerL3」の値を記録レーザパワーの初期値とし、「Strategy補正量Layer3」の値をレーザ駆動パルスの設定初期値とする。
【0094】
このように初期値を設定することで、OPC処理の効率化が図られる。
即ち、初期値が、現在装填されている光ディスク90についての過去のOPC処理で得られた最適な記録レーザパワー及びレーザ駆動パルスである。このため、その記録レーザパワーを中心値にして、段階的にレーザパワーを変化させてテストライトを行えば、1回もしくは少数回のテストライトで、今回の最適な記録レーザパワーが確定できる可能性が高い。同様に、過去に最適とされたレーザ駆動パルスの設定を中心として段階的にパルスタイミングを変更させながらテストライトを行えば、1回もしくは少数回のテストライトで、今回の最適なレーザ駆動パルスを見つけられる可能性が高い。
そしてテストライトのリトライ回数が少ないほど、光ディスク90におけるPCAの消費を少なくできると共に、OPC処理時間を短縮できることとなる。
【0095】
さらに、OPCにおいて記録レーザパワーだけではなくレーザ駆動パルスの最適化を行うことで、その後の記録動作の品質を安定させ、又は向上させることができる。
そして過去のOPC結果を参照する際に、記録レーザパワーだけではなくレーザ駆動パルスの設定値も利用することより、OPCの効率化を促進できる。
【0096】
[4.第2の実施の形態]

第2の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図9で説明する。なお、以下の各実施の形態の説明では、上記第1の実施の形態の図5と同一の処理については、同一のステップ番号を付し、説明を省略する。
【0097】
図9においてステップF101〜F106は、第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときの処理(F106→F107→F109→F110→F111)も同様である。
この第2の実施の形態の場合、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF120に進む。そしてそのOPC設定情報における記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲であるか否かを判別する。
【0098】
例えばここでいう記録条件とは、温度条件であるとする。即ちシステムコントローラ10は、OPC設定情報として記憶されている温度の値と、現在、温度センサ21で検出できる温度の値が、記録条件として同視できる範囲であるか否かを判定する。
例えばOPC設定情報における温度情報の値が、現在の温度に対して、±10℃の範囲内にあれば、同視できる範囲とする。
【0099】
もし、温度条件が同視できる範囲になければ、そのOPC設定情報を用いない。即ちシステムコントローラ10はステップF120からF109に進み、OPC設定情報が存在しない場合と同様にOPC処理を行う。
一方、温度差が±10℃の範囲であって、温度条件が同視できる範囲と判断した場合は、システムコントローラ10はステップF120からF121に進み、上記ステップF106で確認された設定情報ユニットの内容を読み出し、OPC初期値を設定する。つまり、その設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対するOPC実行時の記録レーザパワーの初期値(レーザパワー変化範囲のセンター値)とする。またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対するOPC実行時のレーザ駆動パルスの設定の初期値とする。
そしてステップF109のOPC処理に進む。この場合、ステップF121で初期値とされた値、つまり設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)、ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値が初期値として用いられてOPC処理が実行される。
【0100】
このように初期値を設定することで、OPC処理の効率化が図られる。特に温度条件が近い場合に、過去のOPC設定情報を利用することで、現在の最適な記録レーザパワー及びレーザ駆動パルスに近いと適切に推定される初期値が用いられることで、OPC処理が効率的に実行できる可能性を高くすることができる。
【0101】
なお、ここでは記録条件として温度条件を挙げたが、OPC対象の記録層が、OPC設定情報の内容と異なる場合、例えばOPC処理を実行する記録層についての最適な記録レーザパワーやレーザ駆動パルスの設定が記憶されていなかった場合にも、記録条件が同視できないとしてOPC設定情報を利用しないようにしてもよい。さらにラジアルチルト情報等、他の記録条件に関する情報がOPC設定情報に含まれる場合、それが現在の記録条件と同視できる範囲であるか否かを判断して、OPC設定情報の利用するか否かを決めても良い。
【0102】
[5.第3の実施の形態]

第3の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図10で説明する。
図10においてステップF101〜F106は第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときの処理(F106→F107→F109→F110→F111)も同様である。
【0103】
この第3の実施の形態の場合、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF130に進む。そしてそのOPC設定情報における温度情報と現在の温度との温度差が所定以上であるか否かを判断する。
例えばOPC設定情報における温度情報の値が、現在の温度に対して、±10℃の範囲内にあるか否かを判断する。
【0104】
もし、温度差が所定以上であれば、そのOPC設定情報を用いない。即ちシステムコントローラ10はステップF130からF109に進み、OPC設定情報が存在しない場合と同様にOPC処理を行う。
一方、温度差が±10℃の範囲であったら、システムコントローラ10はステップF130からF131に進み、上記ステップF106で確認された設定情報ユニットの内容を読み出し、そのOPC設定情報を補正してOPC初期値を設定する。
【0105】
即ち設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)や、ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、そのOPCを実行した際の温度と、OPCを実行しようとする現在の温度との差に応じて補正する。
例えば現在温度が25℃、OPC設定情報に記憶された温度が18℃であったとする。25℃下での最適な記録レーザパワーの値がLP25、18℃下での最適な記録レーザパワーの値がLP18とされていたとする。
この場合、OPC設定情報でのOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)に対して、(LP25/LP18)の係数を乗算して、それを初期値とする。
ストラテジ補正量についても、一般的な温度に対する補正量変動の情報を備えておき、それに基づいて補正を行えばよい。
【0106】
システムコントローラ10は例えばこのように、OPC設定情報の値を補正して初期値を設定する。そしてステップF109で、その初期値を用いてOPC処理を行う。
このように補正することで、過去のOPCの最適な設定値を、現在の温度条件に適応した値にして、それをOPC初期値としてOPC処理を実行することができる。
従って、より現在の記録条件に近い設定状態からOPC処理を開始でき、OPC処理の効率化が促進できる。
【0107】
なお、図10の処理では、ステップF130で温度差を確認したが、この処理をステップF106内で行い、温度差が所定以上の設定情報ユニットは、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報ではないとしてもよい。
【0108】
[6.第4の実施の形態]

第4の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図11で説明する。
図11においてステップF101〜F106は第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときの処理(F106→F107→F109→F110→F111)も同様である。
【0109】
この第4の実施の形態の場合、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF140に進む。そしてそのOPC設定情報における温度情報と現在の温度との温度差が所定以上であるか否かを判断する。
例えばOPC設定情報における温度情報の値が、現在の温度に対して、±10℃の範囲内にあるか否かを判断する。
【0110】
もし、温度差が所定範囲内であれば、システムコントローラ10はステップF140からF141に進み、上記ステップF106で確認された設定情報ユニットの内容を読み出し、OPC初期値を設定する。つまり、その設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対するOPC実行時の記録レーザパワーの初期値(レーザパワー変化範囲のセンター値)とする。またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対するOPC実行時のレーザ駆動パルスの設定の初期値とする。
そしてステップF109のOPC処理に進む。この場合、設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)、ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)が初期値とされてOPC処理が実行される。
【0111】
一方、ステップF140で温度差が所定以上であると判断した場合、システムコントローラ10はステップF142に進み、上記ステップF106で確認された設定情報ユニットの内容を読み出し、そのOPC設定情報を補正してOPC初期値を設定する。
即ち上記第3の実施の形態で述べたような補正として、設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)や、ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、そのOPCを実行した際の温度と、OPCを実行しようとする現在の温度との差に応じて補正する。
そしてシステムコントローラ10は、OPC設定情報の値を補正して初期値を設定する。そしてステップF109で、その初期値を用いてOPC処理を行う。
【0112】
即ちこの第4の実施の形態では、現在の温度状況が、OPC設定情報を記憶したOPC時の温度状況が近いときは、OPC設定情報における記録レーザパワー、レーザ駆動パルスの値をそのままOPC初期値として用いる。
一方、温度状況が大きく異なる場合は、OPC設定情報における記録レーザパワー、レーザ駆動パルスの値を補正してOPC初期値として用いる。これにより初期値の適切性を高める。
このようにすることで、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在するときには、そのOPC設定情報を有効に用いて、OPC処理の効率化を図ることができる。
【0113】
[7.第5の実施の形態]

ここまでの第1〜第4の実施の形態では、OPC設定情報を利用してOPC初期値を設定し、その初期値でOPCを行うことで、OPC処理を効率化する例を述べた。これに対し以降の第5〜第8の実施の形態は、OPC処理自体を行わない場合を設ける処理例である。
【0114】
第5の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図12で説明する。
図12においてステップF101〜F106は第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときの処理(F106→F107→F109→F110→F111)も同様である。
この第5の実施の形態では、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF401に進む。そしてそのOPC設定情報におけるOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対する最適な記録レーザパワーとする。またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対する最適なレーザ駆動パルスの設定とする。
そしてOPC処理を行わずに、ステップF111の記録動作制御を開始する。
【0115】
この第5の実施の形態では、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在する場合は、そのOPC設定情報の内容をそのまま最適設定値として採用し、OPC処理を省略して実際の記録を行うものとなる。これにより、記録開始までの時短化と、PCAの領域消費の削減を図ることができる。
【0116】
[8.第6の実施の形態]

第6の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図13で説明する。
図13においてステップF101〜F106は第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときに、ステップF107からステップF109、F110の処理に進み、その後ステップF111で記録を開始させることも同様である。
【0117】
この第6の実施の形態では、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF501に進む。そしてそのOPC設定情報における記録条件(例えば温度条件や対象記録層など)が同視できる範囲であるか否かを判定する。
記録条件が同視できる範囲でなければ、ステップF501からF109に進み、OPC処理を実行する。
記録条件が同視できる範囲であれば、システムコントローラ10はステップF501からF502に進む。そしてそのOPC設定情報におけるOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対する最適な記録レーザパワーとする。またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対する最適なレーザ駆動パルスの設定とする。
そしてOPC処理を行わずに、ステップF111の記録動作制御を開始する。
【0118】
この第6の実施の形態では、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在する場合は、そのOPC設定情報の内容をそのまま最適設定値として採用し、OPC処理を省略して実際の記録を行う。
但し、OPC設定情報を記憶した際のOPC処理時と、現在とで、温度などの記録条件が同視できる範囲でない場合は、そのOPC設定情報の内容をそのまま最適値として使用することは不適切な場合が生じることもある。そこで、そのような場合はOPC処理を行うこととし、実際のステップF111での記録動作における記録品質を保つようにする。
【0119】
[9.第7の実施の形態]

第7の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図14で説明する。
図14においてステップF101〜F106は第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときに、ステップF107→F109→F110→F111の各処理に進むことも同様である。
【0120】
この第7の実施の形態では、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF601に進む。そしてそのOPC設定情報における温度情報と現在の温度の差が所定以上であるか否かを判別する。
温度差が所定以上であって、OPC設定情報の内容が、現在と大幅に温度が異なる条件下での値であると判断した場合は、ステップF601からF109に進み、OPC処理を実行する。
【0121】
一方、温度差が所定範囲内であり、記録条件が同視できる範囲と判断したら、システムコントローラ10はステップF601からF602に進む。そしてそのOPC設定情報におけるOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対する最適な記録レーザパワーとする。またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対する最適なレーザ駆動パルスの設定とする。
そしてOPC処理を行わずに、ステップF111の記録動作制御を開始する。
【0122】
この第7の実施の形態も、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在する場合は、そのOPC設定情報の内容をそのまま最適設定値として採用し、OPC処理を省略して実際の記録を行う。但し、OPC設定情報を記憶した際のOPC処理時と、現在とで、温度条件が大幅に異なる場合は、そのOPC設定情報の内容をそのまま最適値として使用することは不適切な場合が生じることもあるため、OPC処理を行うこととするものである。
【0123】
[10.第8の実施の形態]

第8の実施の形態としてのディスクドライブ装置の処理を図15で説明する。
図15においてステップF101〜F106は第1の実施の形態と同様である。またステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在しないと判定されたときに、ステップF107→F109→F110→F111の各処理に進むことも同様である。
【0124】
この第8の実施の形態では、ステップF106で現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在すると確認された場合、システムコントローラ10はステップF107からF701に進む。そしてそのOPC設定情報における温度情報と現在の温度の差が所定以上であるか否かを判別する。
【0125】
温度差が所定以上であって、OPC設定情報の内容が、現在と大幅に温度が異なる条件であると判断した場合、システムコントローラ10はステップF701からF702に進み、上記ステップF106で確認された設定情報ユニットの内容を読み出し、そのOPC設定情報を補正してOPC初期値を設定する。
即ち上記第3の実施の形態で述べたような補正として、設定情報ユニットに記憶されたOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)や、ストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、そのOPCを実行した際の温度と、OPCを実行しようとする現在の温度との差に応じて補正する。
そしてシステムコントローラ10は、OPC設定情報の値を補正して初期値を設定する。そしてステップF109で、その初期値を用いてOPC処理を行う。
【0126】
一方、温度差が所定範囲内であり、記録条件が同視できる範囲と判断したら、システムコントローラ10はステップF701からF703に進む。そしてそのOPC設定情報におけるOPCパワー(OPCPowerL0・・・OPCPowerL3)を、各記録層に対する最適な記録レーザパワーとする。またストラテジ補正量(Strategy補正量Layer0・・・Strategy補正量Layer3)の値を、各記録層に対する最適なレーザ駆動パルスの設定とする。
そしてOPC処理を行わずに、ステップF111の記録動作制御を開始する。
【0127】
この第8の実施の形態では、現在装填されている光ディスク90に対応するOPC設定情報が存在する場合であって、温度条件が近似していれば、そのOPC設定情報の内容をそのまま最適設定値として採用し、OPC処理を省略して実際の記録を行う。一方、OPC設定情報が存在する場合であって、温度条件が近似していなければ、そのOPC設定情報の内容を補正して、OPC初期値を設定する。そしてそのOPC初期値を用いてOPC処理を行う。
従って、温度条件が近似していればOPC処理を行わないことで記録開始までの時短化と、PCAの領域消費の削減を図ることができる。また温度条件が大幅に異なっていれば、OPC設定情報の内容を補正した初期値を用いることで、OPC処理を効率化し、記録開始までの時短化と、PCAの領域消費の削減を図ることができる。
【0128】
[11.変形例]

以上、各種実施の形態について説明してきたが、本発明としての処理例は他にも各種変形例が考えられる。
OPC設定情報の内容としては図3に限られない。例えば先にも言及したが、OPC処理時のラジアルチルト情報を加えたり、ディスク種別によっては、ランド記録時、グルーブ記録時の最適記録レーザパワーの情報なども加えても良い。
図5,図9,図10,図11,図12、図13,図14,図15で説明した各処理では、記録コマンド受信時にOPCを行うものとしたが、他の時点でOPCを行う場合に、各図のステップF106以降の処理を適用してもよい。
【0129】
また実施の形態では、DVD方式やブルーレイ方式の光ディスクに対するディスクドライブ装置で本発明の記録装置を実現する例を述べたが、他の光記録媒体に対する記録装置にも本発明は適用できる。例えば光カードに対してレーザ照射を行って情報記録を行う記録装置にも適用可能である。
【0130】
[12.プログラム]

実施の形態のプログラムは、上述した図5,図9,図10,図11,図12,図13,図14,図15の処理を演算処理装置(システムコントローラ10等)に実行させるプログラムである。
実施の形態のプログラムは、光ディスク等の光記録媒体の記録層に対して、レーザ駆動パルスに基づいたレーザ光照射により情報の記録を行う記録部を有する記録装置の演算処理装置のプログラムである。
そして該プログラムは、所定の設定情報記憶領域から、記録対象としている光記録媒体に対応して記憶された記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの過去の設定情報を読み出すステップを演算処理装置に実行させる。
またプログラムは、記録部に、光記録媒体の記録層におけるテストライト領域への、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行うステップを演算処理装置に実行させる。
またプログラムは、設定処理で設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスにおいて記録を実行するステップを演算処理装置に実行させる。
【0131】
このような本実施の形態のプログラムは、ディスクドライブ装置、光カード記録装置、パーソナルコンピュータや等の機器に内蔵されている記録媒体としてのHDDや、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROM等に予め記録しておくことができる。
あるいはまた、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magnet optical)ディスク、DVD、ブルーレイディスク、磁気ディスク、半導体メモリ、メモリカードなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
【0132】
また、実施の形態のプログラムは、リムーバブル記録媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
そしてこのプログラムによれば、上記実施の形態の処理を実行する記録装置の実現及び広範な提供に適している。
【符号の説明】
【0133】
1 光ピックアップ、5 データ検出処理部、7 エンコード/デコード部、10 システムコントローラ、13 レーザドライバ、14 ライトストラテジ部、19 評価値測定部、20 メモリ、21 温度センサ、90 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体の記録層に対して、レーザ駆動パルスに基づいたレーザ光照射により情報の記録を行う記録部と、
設定情報記憶領域から、記録対象としている光記録媒体に対応して記憶された記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの過去の設定情報を読み出し、上記記録部に、上記光記録媒体の記録層におけるテストライト領域への、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行う制御部と、
を備えた記録装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記設定処理により設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報を、上記設定情報記憶領域に記憶させる請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記設定情報記憶領域に、記録対象としている光記録媒体に対応した上記設定情報が記憶されていないと判断した場合は、上記記録部に、上記テストライト領域への、過去の設定情報を利用しない試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行い、さらに該設定処理により設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報を、上記設定情報記憶領域に記憶させる請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
上記制御部は、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録として、
記録レーザパワーの設定情報をレーザパワーの初期パワー値とし、レーザ駆動パルスの設定情報をレーザ駆動パルス設定初期値として、試し書き記録を実行させる請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
上記設定情報記憶領域に、記録対象としている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が記憶されている場合、
上記制御部は、該記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲と判断した場合に、その設定情報を上記試し書き記録に利用する請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
上記記録条件が同視できる範囲と判断する場合とは、記憶されている設定情報を得た設定処理の際の温度と、現在の温度との温度差が所定範囲内の場合である請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
上記制御部は、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録として、
読み出した記録レーザパワーの設定情報又はレーザ駆動パルスの設定情報を補正し、補正した設定情報を用いて試し書き記録を実行させる請求項3に記載の記録装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記設定情報記憶領域に、記録対象とされている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が記憶されている場合において、該記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲と判断した場合に、読み出した記録レーザパワーの設定情報又はレーザ駆動パルスの設定情報を補正し、補正した設定情報を用いて試し書き記録を実行させる請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
上記制御部は、上記設定情報記憶領域に、記録対象とされている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が記憶されている場合において、
該記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲と判断した場合は、読み出した記録レーザパワーの設定情報及びレーザ駆動パルスの設定情報を用いて試し書き記録を実行させ、
上記記憶されている設定情報を得た設定処理の際の記録条件と、現在の記録条件とが同視できる範囲ではないと判断した場合は、読み出した記録レーザパワーの設定情報又はレーザ駆動パルスの設定情報を補正し、補正した設定情報を用いて試し書き記録を実行させる請求項7に記載の記録装置。
【請求項10】
上記制御部は、補正した記録レーザパワーの設定情報をレーザパワーの初期パワーとし、補正したレーザ駆動パルスの設定情報をレーザ駆動パルス設定初期値として、試し書き記録を実行させる請求項7に記載の記録装置。
【請求項11】
上記制御部は、上記設定情報の1つのユニットとして、光記録媒体の識別のための情報と、光記録媒体の記録層毎の記録レーザパワーの設定情報と、光記録媒体の記録層毎のレーザ駆動パルスの設定情報を有するユニットの情報を、上記設定情報記憶領域に記憶させる請求項2に記載の記録装置。
【請求項12】
上記設定情報記憶領域として用いられる記憶部をさらに備えた請求項1に記載の記録装置。
【請求項13】
上記制御部は、記録対象としている光記録媒体の一部の領域、又は接続されている他の機器の記憶部の一部の領域を、上記設定情報記憶領域として用いる請求項1に記載の記録装置。
【請求項14】
上記設定情報記憶領域に、記録対象とされている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が、複数ユニット記憶されている場合、上記制御部は、最新の設定情報を読み出す請求項1に記載の記録装置。
【請求項15】
上記設定情報記憶領域に、記録対象とされている光記録媒体に対応した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの設定情報が、複数ユニット記憶されている場合、上記制御部は、記録条件が現在の記録条件に最も近い設定情報を読み出す請求項1に記載の記録装置。
【請求項16】
光記録媒体の記録層に対して、レーザ駆動パルスに基づいたレーザ光照射により情報の記録を行う記録部を有する記録装置の記録方法として、
設定情報記憶領域から、記録対象としている光記録媒体に対応して記憶された記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの過去の設定情報を読み出すステップと、
上記記録部に、上記光記録媒体の記録層におけるテストライト領域への、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行うステップと、
設定処理で設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスにおいて記録を実行するステップと、
が行われる記録方法。
【請求項17】
光記録媒体の記録層に対して、レーザ駆動パルスに基づいたレーザ光照射により情報の記録を行う記録部を有する記録装置の演算処理装置のプログラムとして、
設定情報記憶領域から、記録対象としている光記録媒体に対応して記憶された記録レーザパワーとレーザ駆動パルスの過去の設定情報を読み出すステップと、
上記記録部に、上記光記録媒体の記録層におけるテストライト領域への、読み出した過去の設定情報を利用した試し書き記録と、該試し書き記録部分の再生を実行させ、当該試し書き記録及び再生の結果に基づいて記録レーザパワーとレーザ駆動パルスを設定する設定処理を行うステップと、
設定処理で設定した記録レーザパワーとレーザ駆動パルスにおいて記録を実行するステップと、
の各処理を演算処理装置に実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−258269(P2011−258269A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131618(P2010−131618)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】