説明

記録装置、記録方法及びプログラム

【課題】断片化された画像データのうち、重要ではない画像データをキャッシュするとキャッシュの効率的な利用ができなくなることを解決する。
【解決手段】断片化された画像データを受信記録する記録装置において、断片化された画像データの夫々の属性から重要度を求め、あまり重要ではないと判断される断片化された画像データに関しては、システムキャッシュ、及び/又は、ディスク装置のキャッシュを使用せずに記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信した符号データを記録する記録装置に関する。特に、ISO/IEC−15444に準拠したJPEG(Joint Photographic Experts Group)2000方式で圧縮符号化された画像データを記録する記録装置、及び記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行、コンビニエンスストア、デパートなどに設置されている防犯用ビデオカメラ(監視カメラ)から送信されてくる画像情報を遠隔地にある警備室に設置された装置で受信して、モニタに表示、及び記録する監視システムは広く利用されている。
【0003】
従来は、監視カメラから出力されるアナログデータをアナログ記録するタイムラプラスVTRが広く使用されていた。しかしながら、最近の監視システムはタイムラプラスVTRに代わり、被写体のデジタル画像データをそのままデジタル記録するデジタル記録装置を採用する傾向にある。デジタル記録装置は、従来のタイムラプラスVTRに比べて、高画質画像を経時的劣化なしに保存、及び編集するのに優れているという特長を有している。
【0004】
また、画像データのデジタル化に伴い、監視カメラ、デジタル記録装置、及び遠隔の再生装置間の接続にネットワーク(LAN、及びWAN)接続が用いられてきている。
監視カメラでは、デジタル画像データを高速で転送するために、典型的にJPEG2圧縮/伸張アルゴリズムを利用したものが普及してきている。
【0005】
ところが、JPEG2方式は非可逆符号化であるため、画像編集等のため画像の復号・符号化を繰り返すと次第に情報が損失し、その結果画質が徐々に悪くなってしまう。
そこで最近では、可逆符号の可能なJPEG2000方式を採用した監視カメラが出てきている。
【0006】
従って、監視カメラで撮影された画像は、デジタル化され、JPEG2000等圧縮アルゴリズムにより圧縮符号化され、ネットワークを通じて警備室等に設置されている記録装置に記録される。そして必要があれば、記録装置に接続されたモニタ、あるいはネットワークを通じて接続されるクライアントの端末で復号化され、再生表示される。
【0007】
このような記録装置では、受信画像データの記録時に、その受信したデータを高速なアクセスが可能なキャッシュメモリ等に、ファイル単位でキャッシュファイルとして一時的に保存する。
その後、主の記録媒体であるハードディスク装置等、低速なアクセスしかできないが大容量である記録媒体に記録される。
これにより、最近の受信画像の閲覧をオペレータがクライアント端末等から要求した場合、キャッシュメモリ等に記録されている間は、より高速なアクセスを可能にしている。
【0008】
ところが、記録装置のキャッシュメモリの容量にも限りがあるので、そのキャッシュしているファイルを削除する必要が生じる。その場合には、アクセス履歴の古い方のファイルをハードディスク装置に記録するとともに、ファイル単位でキャッシュメモリより削除することにより、新たに使用可能なキャッシュメモリの容量を増やす。
【0009】
一方、キャッシュデータをファイル単位で管理するのではなく、その断片的なデータ単位である階層単位で管理し、容量の大きい階層の画像データをキャッシュから削除する方法が特許文献1にて提案されている。
【0010】
しかしながら、記録装置側で断片的なJPEG2000符号データをキャッシュした時のキャッシュデータの削除方法として、上述の特許文献1の技術を適用すると、必ずしも、効率的なキャッシュの利用ができるとは限らない。
【0011】
なぜならば、JPEG2000の場合、空間解像度方向だけでなく、SNR方向のスケーラビリティを持っており、この特許文献1で提案されたデータ消去の単位よりも、更に細かな単位でデータを削除することも可能であるからである。
【0012】
また、SNR方向のスケーラビリティの符号量をエンコード時に決定することが可能であるため、低SNRの画像データの容量が高SNRの画像データの容量よりも大きくなることも考えられるからである。
【0013】
上述の場合、容量の大きい階層データから削除すると、低解像度のSNRの画像データが失われてしまう。これは、JPEG2000が各階層間の差分情報からできていることに起因する。即ち、低解像度の画像のデータが削除されてしまうと他のキャッシュデータを利用しても画像を表示することができなくなり、キャッシュされているデータが利用できなくなるためである。
【0014】
それに対し、特許文献2では、JPEG2000の符号データの構造を考慮したデータの削除方法を提案している。この場合、高解像度、高画質のデータから符号データを削除できるため、差分情報を利用したJPEG2000のデータであっても、その残された符号データの一部分だけで、ある程度の画像サイズ、及び画質の画像データが復元できる。
【0015】
【特許文献1】特開平11−259627号公報
【特許文献2】特開2003−224704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、監視システムにおける記録装置側でJPEG2000の符号データの構造を考慮したデータの削除方法として、上述の特開2003−224704号公報を適用しただけでは、必ずしも効率的なキャッシュの利用ができるとは限らない。監視システムにおいては、絶え間なく撮影画像が、圧縮符号化され、記録装置に記録要求を送信しつづけるため、高解像度、高画質の符号データはキャッシュされても、直ぐに連続する撮影画像の符号データのため、キャッシュから削除されてしまうことになる。即ち、監視システムにおいては、高解像度、高画質の符号データをキャッシュすることはあまり意味がなく、不要な処理が行われることになるという問題があった。
【0017】
また、記録装置である情報処理装置のキャッシュメモリにのみ対応しても、情報処理装置に使用される大容量の記録媒体であるハードディスク装置の問題があった。
即ち、ハードディスク装置においてもキャッシュメモリが内蔵されており、上位装置である情報処理装置のキャッシュ動作と同様の処理を行っている。
【0018】
ところが、ハードディスク装置において特許文献2の技術を適用し、ハードディスク装置において断片的なJPEG2000の符号データを解釈しようとすれば、ハードディスク装置のコストの増加、即ち製品自体のコストの増加を招くという問題が生じる。
【0019】
本発明は、このような問題を解決するために提案されたものであり、断片化された符号データの高解像度、高画質の画像データを上位装置である情報処理装置のメモリにキャッシュすることなく、低解像度、低画質の画像データのみをキャッシュすることにより、キャッシュメモリの効率的な使用が可能となる記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。
【0020】
また本発明の目的は、記録装置である情報処理装置に使用されるハードディスク装置のコストの増加、即ち製品自体のコストの増加を防ぎ、ハードディスク装置のキャッシュ動作を、上位装置である記録装置から制御することで、ハードディスク装置のキャッシュメモリさえも効率的に使用が可能となる記録装置及び記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の記録装置は、断片化された画像データを受信及び記録する記録装置において、受信した画像データを記録媒体に記録する記録手段と、前記記録手段にて記録する画像データを一時的に記録する一時記録手段と、断片化された画像データの夫々の属性を検知する検知手段と、前記検知手段により、断片化された画像データを夫々、前記一時記録手段にて記録するか、又は前記記録手段にて記録するかを判定する判定手段とを含む。
【0022】
本発明の記録方法は、断片化された画像データを受信及び記録する記録方法において、
受信した画像データを記録媒体に記録する記録工程と、前記記録工程にて記録する画像データを一時的に記録する一時記録工程と、断片化された画像データの夫々の属性を検知する検知工程と、前記検知工程により、断片化された画像データを夫々、前記一時記録工程にて記録するか、前記記録工程にて記録するかを判定する判定工程とを含む。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明では、断片化された符号データの高解像度、高画質の画像データを上位装置である情報処理装置のメモリにキャッシュすることなく、低解像度、低画質の画像データのみをキャッシュする。これにより、キャッシュメモリの効率的な使用が可能となる。
【0024】
また、本発明では、記録装置である情報処理装置に使用されるハードディスク装置のコストの増加、即ち製品自体のコストの増加を防止し、ハードディスク装置のキャッシュ動作を、上位装置である記録装置から制御するする。これにより、ハードディスク装置のキャッシュメモリさえも効率的に使用が可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る記録装置である情報処理装置のシステム全体の構成を示す。
同図において、CPU101は、記録装置100全体の制御を行う。メインメモリ105は、キャッシュメモリとして使用され、CPU101により実行されるプログラムがロードされる。更にメインメモリ105は、監視カメラで撮影され、JPEG2000に圧縮符号化された受信画像が一時記録される。グラフィックコントローラ107は、ディスプレイ108の表示を制御する。
【0026】
ノースブリッジ103は、CPUローカルバス102、メモリバス104、AGP(Accelerated Graphics Port)バス106、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス109を接続するためのブリッジである。
サウスブリッジ110は、ATA(AT Attachment)バス111、113、PCIバス119、LPC(Low Pin Count)バス115を接続するブリッジである。
【0027】
ハードディスク装置112は、CPU101により実行される各種のプログラム(オペレーティングシステム、デバイスドライバ、アプリケーションプログラム等)や、各種の管理情報を記録する。
ハードディスク装置112に記録されたプログラムは必要に応じてメインメモリ105にロードされ、キャッシュされる。またハードディスク装置114は、監視カメラで撮影され、JPEG2000に圧縮符号化された受信画像を記録する大容量ハードディスク装置である。
【0028】
キーボードコントローラ116は、キーボード117によるキー入力操作を制御する。BIOS−ROM118は、イニシャルプログラムローダ(Initial Program Loader)を記録する。
PCIバス119には、NIC(Network Interface card)120が接続されている。NIC120は記録装置100をネットワークに接続する。
【0029】
図2に本発明の実施形態に係るハードディスク装置114の構成を示す。
ハードディスク装置114は、ディスクCPU201と、ディスクインターフェースコントローラ202と、ディスクコントローラ203と、ディスクメモリ204と、信号処理部205と、サーボコントローラ206と、HDA部207とを備える。
【0030】
ディスクCPU201は、ハードディスク装置114全体のデータ処理を制御する。ディスクインターフェースコントローラ202は、ATAバス113を通じて、上位装置である記録装置100とハードディスク装置114との各種コマンド、及びデータ等の転送を制御する。
【0031】
ディスクコントローラ203は、ディスクインターフェースコントローラ202とディスクメモリ204との間、ディスクメモリ204と信号処理部205との間、及びディスクインターフェースコントローラ202と信号処理部205とのデータ転送を制御する。ディスクコントローラ203は、ECC部208を備え、書き込みの際には、転送データに対して誤り検出訂正符号(ECC)を生成/付加し、読み出しの際には、このECCを用いて読み出したデータに対する誤り検出/訂正処理を行う。
【0032】
信号処理部205は、データの変調/復調処理やA/D変換を行う。
HDA(Hard Disk assembly)部207は、スピンドルモータ、アクチュエータ、及びボイスコイルモータ等を備えて構成される。スピンドルモータは、データを格納する記録媒体と記録媒体を回転させる。アクチュエータは、リード/ライトヘッドと、リード/ライトヘッドを支える。ボイスコイルモータは、アクチュエータを動かすためのものである。サーボコントローラ206は、スピンドルモータやボイスコイルモータの制御を行う。
【0033】
なお、記録装置100に使用されるもう一つのハードディスク装置112も同様な構成でもよいし、異なる構成でも構わない。
図3は、本発明実施形態に係る監視システムの概略を説明する概略図である。
ネットワーク301に接続される監視カメラ302は、所望の映像を逐一撮影し、撮影画像をデジタル信号に変換し、JPEG2000アルゴリズムにより圧縮符号化を行う。
圧縮符号化された画像データはネットワーク301を通じて、記録装置100に送信される。
【0034】
記録装置100では、ネットワーク301を通じて監視カメラ302から送信されてくる圧縮符号化された画像データを、必要がなければメインメモリ105へのキャッシュを行わずに、ハードディスク装置114へ記録する。更に記録装置100では、必要がなければメインメモリ105のみならず、ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュも行わずにハードディスク装置114へ記録する。
【0035】
また、記録装置100では、必要があれば上記の画像データを一時メインメモリ105にキャッシュする。このとき既に、メインメモリ105にキャッシュされているデータのため、受信データを直ぐにはキャッシュできないときがある。この場合、メインメモリ105にキャッシュされている所定のデータを大容量の記録媒体であるハードディスク装置114へ記録を行ってから、即ちメインメモリ105から削除してから新たに受信した画像データのキャッシュを行う。
【0036】
このメインメモリ105にキャッシュされていたデータに関しては、ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュを行うモードで記録する。
この大容量の記録媒体であるハードディスク装置114には、JPEG2000符号化方式により符号化された画像データが数多く記録されることになる。
【0037】
このような構成でオペレータは、クライアント端末303、304を使用して、記録装置100に記録されている監視カメラ302の撮影画像を、ネットワーク301を通じて受信し、復号再生を行い、クライアント端末303、304のディスプレイで確認する。また、記録装置100のディスプレイで再生表示してもよい。
なお、クライアント端末303、304の構成は記録装置100と同様な構成でもよいし、異なる構成でも構わない。
【0038】
本実施形態では、記録装置100が、監視カメラ302で既に生成済みのJPEG2000符号データを断片的に受信して、ハードディスク装置114に記録する方法について説明する。
【0039】
まず、図4を用いて一般的なJPEG2000の符号データを説明する。
図4は、画質方向のスケーラビリティである、レイヤ-レゾリューション=レベル-コンポーネント-ポジションプログレッションモードに沿って記録されたJPEG2000符号データの構成を示す図である。以下では便宜上、レイヤ-レゾリューション=レベル-コンポーネント-ポジションプログレッション(Layer-Resolution level-Component-Position progression)をLRCPと記す。
【0040】
LRCPモードに準じた場合、レイヤ(Layer)、解像度(Resolution)、コンポーネント(Component)、位置(Position)の順に記録される。このようなデータの並び方は、プログレッションオーダ(Progression Order)と呼ばれる。
【0041】
図5は、解像度(画像サイズ)とレゾリューション番号との関係を説明するための概略図である。
図5に示すように、本実施形態では最も小さい解像度の画像のレゾリューション番号を「0」とし、レゾリューション番号が1つ増加するごとに画像の幅と高さが2倍になる。例えば図5において、レゾリューション番号「3」(Resolution 3)の画像は、レゾリューション番号「2」(Resolution 2)の画像に対して幅と高さが2倍の画像である。
【0042】
また、各レイヤ内は、図4に示すようにレゾリューション番号の小さい順にデータが並べられている。レイヤ番号は、復元する画像の現画像に対するS/N比に対応しており、レイヤ番号が小さいほどS/N比が悪くなる。
【0043】
なお、本実施形態では、JPEG2000方式で圧縮符号化された画像データ(JPEG2000ビットストリーム)内におけるレイヤ番号とレゾリューション番号とコンポーネント番号の最大値は、エンコーダによって予め設定されているものとする。
そして、そのパラメータはヘッダ情報として、また、原画像はそれらのパラメータに従って符号化されて、当該画像のJPEG2000ビットストリームが作成される。
なお、コンポーネント番号は、画像の色空間の次元数と一致し、例えば、対象画像の色空間が3次元のYCbCr色空間であれば、コンポーネント番号は「3」となる。更にパケット(packet)は、画像データ内での一管理単位である。各パケットは、そのパケットに格納されているコードブロック(code-block)の情報を管理しているパケットヘッダ(packet header)部と、各コードブロックの符号データから構成されている。
このようなJPEG2000符号データを使えば、記録装置100は監視カメラ302からの全ての画像データを取得せずに、必要な部分の画像データのみを監視カメラ302から受信することが可能である。
【0044】
ここで、記録装置100が受信できるデータの単位としては、JPEG2000のパケット、あるいはパケットよりもさらに小さい符号単位であるコードブロック単位が考えられる。本実施形態では、記録装置100が監視カメラ302から受信するデータ単位として、パケット単位を想定する。
【0045】
図6は、監視カメラ202と記録装置100間における、パケット単位での通信を説明する概略図である。
監視カメラ302は、撮影した画像を逐次JPEG2000符号データに圧縮符号化し、パケット単位で記録装置100に送信する。記録装置100では、受信したJPEG2000符号データを逐次メインメモリ105にキャッシュしたり、ハードディスク装置114に記録したりする。
【0046】
図6の例では、タイル番号「1」、レゾリューション番号「0」、レイヤ番号「0」、コンポーネント番号「0」、そしてポジション番号「0」のパケットが監視カメラ302から記録装置100へ送信され、記録される。
本実施形態では、監視カメラ302において撮影、符号化されるオリジナルの画像は、最大解像度サイズ2048×2048画素で、コンポーネント数が「3」、レイヤ数が「2」、解像度レベルは「0」〜「3」、即ち、2つのレイヤに分かれている。この場合、4つの画像サイズ方向の階層を有しており、タイル分割はされていない。
【0047】
即ち、画像全体が1枚のタイルであると仮定し、Precinctと呼ばれる領域にも分割されていないとする。従って、監視カメラ302で撮影、符号化されるデータは図7で示されるようなデータとなる。
【0048】
図7に示されるように、符号データの先頭にメインヘッダ701、次にタイルパートのヘッダとしてのSOTマーカセグメント702が続き、その後の符号データのビットストリームへと続く。
なお、図6及び図7は画像サイズ方向のスケーラビリティである、レゾリューション-レイヤ=レベル-コンポーネント-ポジションプログレッションモードにそって記録されたJPEG2000ファイルの構成を示す図である。以下では便宜上、レゾリューション-レイヤ=レベル-コンポーネント-ポジションプログレッション(Resolution-Layer level-Component-Position progression)をRLCPと記す。
【0049】
次に、本実施形態におけるプログレッションオーダについて説明する。このプログレッションオーダは、各JPEG2000符号データのメインヘッダ部801のCODマーカセグメントを解析することで得られる。
図8(A)〜(D)は、CODマーカセグメントの構造を示す図である。図8(A)はCODマーカセグメントの全体構成を示す図である。図8(B)はCODマーカセグメントの各パラメータを説明する図である。図8(C)はSGcodのパラメータの詳細を、図8(D)はSPcodのパラメータの詳細を示す図である。
【0050】
図8(C)に示す、CODマーカセグメントのパラメータ(Progression order)801の値により、プログレッションオーダを知ることができる。
図8(C)のパラメータ801の値が「0」であるならば、画質方向のスケーラビリティ、LRCPであり、各データの並びが図4に示されるような並びとなる。
また、図8(C)のパラメータ801の値が「1」であるならば、画像サイズ方向のスケーラビリティ、RLCPであり、各データの並びが図6及び図7に示されるような並びとなる。
【0051】
本実施形態では、JPEG2000符号データのプログレッションオーダは、図6、及び図7に示されるように、画像サイズ方向のスケーラビリティ、RLCPであるとして説明する。即ちパラメータ801の値は「1」である。
同様に、次のパラメータ(Number of layers)802の値により、JPEG2000符号データのレイヤ数を知ることができる。本実施形態では、JPEG2000符号データのレイヤは、図7に示されるように、レイヤ0とレイヤ1の2つであり、パラメータ802の値は「2」である。
【0052】
また同様に、図8(D)に示す、SPcodの最初のパラメータ(Number of decomposition levels)803がウェーブレット変換の回数を知ることができる。
本実施形態では、JPEG2000符号データのウェーブレット変換の回数は、図7に示されるように、レゾリューション0〜レゾリューション3の4つの画像サイズ方向の階層を有しており、パラメータ803の値は「3」である。
【0053】
図9(A),(B)は、SIZマーカセグメントの構造を示す図である。図9(A)はSIZマーカセグメントの全体構成を示す図であり、図9(B)はSIZマーカセグメントの各パラメータを説明する図である。
【0054】
図9(B)に示す、SIZマーカセグメントのパラメータ(Csiz)901の値により、コンポーネント数を知ることができる。本実施形態では、JPEG2000符号データのコンポーネント数は、図7に示されるように、コンポーネント0〜コンポーネント2の3つであり、パラメータ901の値は「3」である。
【0055】
図10は、本実施形態に係る記録装置100において、どのレゾリューション番号のパケットに対して、メインメモリ105、及びディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能を使用するか、使用しないかの分類の一例を示す概略図である。
本実施形態では、レゾリューション番号が「0」のパケットに関しては、メインメモリ105及びディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能を使用して記録する。それ以外のレゾリューション番号のパケットに関しては、メインメモリ105及びディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能を使用しないで記録する。
【0056】
図11は、本実施形態に係る記録装置100における、JPEG2000符号データ受信時の記録処理を示すフローチャートである。
記録装置100においては、予めJPEG2000符号データをメインメモリ105にキャッシュする上限値が定められている。
即ち、JPEG2000符号データ以外のデータもメインメモリ105をキャッシュとして使用し、各種バッファ等にも使用される。
【0057】
ステップS1101にて、JPEG2000に符号化されている受信データの種別、即ちレゾリューション番号とそのデータのバイト数を取得する。レゾリューション番号は、JPEG2000符号データを先頭から解析することで知ることができ、バイト数は、パケットヘッダを解析することで知ることができる。
【0058】
次に、ステップS1102では、受信データがレゾリューション番号「0」のパケットかどうか判断する。
受信データがレゾリューション番号「0」のパケットであるならば、ステップS1105へ移行し、異なる場合はステップS1103へ移行する。
ステップS1103では、ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能をOFFにし、ステップS1104へ移行する。
【0059】
ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能をOFFにする手法について説明する。
ハードディスク装置114のキャッシュ機能をOFFにするには、セットフィーチャーズ(Set Feature)コマンド(コード:EFh)を使用する。
【0060】
セットフィーチャーズコマンドはATA規格で規定されたコマンドであり、各種サブコマンドが規定されている。そのサブコマンドの一部を図12に示す。
ハードディスク装置114のキャッシュ機能をOFFにするには、セットフィーチャーズコマンドと図12に示されるサブコマンド1202(コード:82h)をハードディスク装置114へ送出することで実現される。
【0061】
ステップS1104では、受信データをハードディスク装置114へ記録し、ステップS1110へ移行する。
即ち受信データを、メインメモリ105、及びハードディスク装置114のディスクメモリ204にキャッシュすることなく記録を行う。
【0062】
ステップS1105では、受信データを記録する分の空き容量が、メインメモリ105のキャッシュ領域にあるかどうか判断する。
空き容量があればステップS1109へ移行し、空き容量がなければステップS1106へ移行する。
【0063】
ステップS1106では、ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能をONにし、ステップS1107へ移行する。
ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能をONにする手法は、上述のOFFにする手法と同様である。即ち、セットフィーチャーズコマンド(コード:EFh)と図12のサブコマンド1201(コード:02h)とをハードディスク装置114へ送出することで実現される。
【0064】
ステップS1107では、システムキャッシュであるメインメモリ105のキャッシュ領域に記録されているデータうち、最近にアクセスされていないデータを必要であるならばハードディスク装置114に記録する。そして、メインメモリ105のキャッシュ領域からそのデータを削除し、メインメモリ105のキャッシュ領域の空き容量を増やす。
【0065】
次にステップS1108にて、受信データが記録できるだけの空き容量が、メインメモリ105のキャッシュ領域にできたかどうか判断する。
空き容量ができた場合ステップS1109へ移行し、まだ十分な空き容量ができていない場合ステップS1107へ戻り、更なる空き容量の確保を行う。
【0066】
ステップS1109では、受信データをシステムキャッシュであるメインメモリ105のキャッシュ領域の空き領域に記録し、ステップS1110へ移行する。
ステップS1110では、一連の受信が終了したかどうか判断する。終了していなければ、ステップS1101へ移行し、上述の処理を繰り返し行う。終了しているならば、一連の処理を終える。
以上が、本発明の実施形態の説明である。
【0067】
なお本実施形態では、ハードディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能をON/OFFする手法として、既存の技術であるセットフィーチャーズズコマンド(コード:EFh)とそのサブコマンドを用いた。この既存の技術では、キャッシュ機能をOFFにした際に、ディスクメモリ204に記録されているデータを、HDA部207の記録媒体へ記録する。即ち、フラッシュ(flush)されてしまう。
【0068】
このフラッシュ動作を省略したい場合には、上述の既存の技術であるセットフィーチャーズコマンドを使用するのではなく、以下のように行う。即ち、アイデンティファイデバイス(Identify Device)コマンド(コード:ECh)のベンダースペシフィック(Vendor specific)領域(もしくはリザーブ領域)に、ディスクメモリ204に記録されているデータをフラッシュ処理しないで、キャッシュ機能をOFFにするだけのコマンドを定義して実装する。これにより、上述の問題を回避することができる。
【0069】
また、本実施形態では、記録装置100のメインメモリ105、及びディスク装置114のディスクメモリ204両方のキャッシュ機能について記述したが、片方だけの実施形態でもよい。
【0070】
また、本実施形態では、記録装置100のメインメモリ105のキャッシュ機能を使用する/しないかと、ディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能を使用する/しないかを、図10に示されるように同一にしている。ここで、夫々別々のレゾリューション番号で判断してもよい。
【0071】
また、本実施形態では、図10に示されるように、レゾリューション番号「0」のパケットのみをキャッシュし、それ以外をキャッシュしないように実施した。ここで、それ以外のレベル、例えば、レゾリューション番号「0」とレゾリューション番号「1」をキャッシュし、それ以外をキャッシュしないように実施してもよい。
【0072】
また、本実施形態では、記録装置100のメインメモリ105、及びディスク装置114のディスクメモリ204へのキャッシュ機能を使用する/しないかを図10に示されるように、レゾリューション番号で分類した。ここで、レイヤ、コンポーネント、パケット、あるいはJPEG2000符号化時のウェーブレット変換を施した際のサブバンド単位で分類してもよいし、さらに小さなサイズのデータ単位で行ってよい。
【0073】
また、本実施形態では、監視カメラ202からの受信画像についてのみ、どのようにキャッシュするか説明した。ここで、既にハードディスク装置114に記録されているJPEG2000符号データに対して、各クライアント303、304からのリクエストにより、夫々のクライアントにJPEG2000符号データを送信する場合も同様である。このJPEG2000符号データは、ハードディスク装置114に記録されている。
【0074】
また、本実施形態では、監視カメラ302から記録装置100へ送信されるJPEG2000符号データの単位をパケット単位としたが、それ以外の単位で送信してもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、断片化された符号データの高解像度、高画質の画像データを上位装置である情報処理装置のメモリにキャッシュすることなく、低解像度、低画質の画像データのみをキャッシュする。これにより、キャッシュメモリの効率的な使用が可能となる。
【0076】
また、本実施形態によれば、記録装置である情報処理装置に使用されるハードディスク装置のコストの増加、即ち製品自体のコストの増加を防ぎ、ハードディスク装置のキャッシュ動作を、上位装置である記録装置から制御する。これにより、ハードディスク装置のキャッシュメモリさえも効率的に使用が可能となるという効果がある。
【0077】
なお、図11のステップS1101〜ステップS1110の各ステップ等についてのプログラムコードは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明の実施形態に含まれる。
【0078】
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、上記プログラムの伝送媒体としては、以下のものを用いることができる。即ち、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の有線回線や無線回線等)である。
【0079】
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、以下の場合にも、かかるプログラムは本発明の実施形態に含まれる。当該プログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して上述の実施形態の機能が実現される場合である。また、供給されたプログラムの処理の全てあるいは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて上述の実施形態の機能が実現される場合等である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本実施形態に係る記録装置のシステム全体の構成図である。
【図2】本発明実施形態に係るハードディスク装置の構成図である。
【図3】本実施形態に係る監視システムの概略を説明する概略図である。
【図4】JPEG2000符号データの構成図である。
【図5】JPEG2000の解像度スケーラビリティを説明する概略図である。
【図6】本実施形態に係る監視カメラ・記録装置間での通信を説明する概略図である。
【図7】本実施形態に係るJPEG2000符号データの状態を示す概略図である。
【図8】JPEG2000メインヘッダCODマーカセグメントの構造図である。
【図9】JPEG2000メインヘッダSIZマーカセグメントの構造図である。
【図10】本実施形態に係る記録装置におけるパケットに対してキャッシュ機能有効/無効の分類の一例を示す概略図である。
【図11】本実施形態に係る記録装置におけるJPEG2000符号データ受信時の記録処理を示すフローチャートである。
【図12】ATA規格セットフィーチャーズコマンドのサブコマンドの一部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
100 記録装置
101 CPU
102 CPUローカルバス
103 ノースブリッジ
104 メモリバス
105 メインメモリ
106 AGP(Accelerated Graphics Port)バス
107 グラフィックコントローラ
108 ディスプレイ
109、119 PCI(Peripheral Component Interconnect)バス
110 サウスブリッジ
111、113 ATA(AT Attachment)バス
112、114 ハードディスク装置
115 LPC(Low Pin Count)バス
116 キーボードコントローラ
117 キーボード
118 BIOS−ROM
120 NIC(Network Interface card)
201 ディスクCPU
202 ディスクインターフェースコントローラ
203 ディスクコントローラ
204 ディスクメモリ
205 信号処理部
206 サーボコントローラ
207 HDA(Hard Disk assembly)部
301 ネットワーク
302 監視カメラ
303、304 クライアント端末
701 JPEG2000符号データのメインヘッダ部
702 JPEG2000符号データのSOTマーカセグメント部
801 パラメータ(Progression order)
802 パラメータ(Number of layers)
803 パラメータ(Number of decomposition levels)
901 パラメータ(Csiz)
1201 サブコマンド(Enable write cache)
1202 サブコマンド(Disable write cache)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断片化された画像データを受信及び記録する記録装置において、
受信した画像データを記録媒体に記録する記録手段と、
前記記録手段にて記録する画像データを一時的に記録する一時記録手段と、
断片化された画像データの夫々の属性を検知する検知手段と、
前記検知手段により、断片化された画像データを夫々、前記一時記録手段にて記録するか、又は前記記録手段にて記録するかを判定する判定手段と
を含むことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記一時記録手段は前記記録手段と独立に設けられており、
前記判定手段の結果に応じて前記一時記録手段又は前記記録手段の何れか一方にて画像データを記録することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記一時記録手段は前記記録手段に包含されており、
前記記録手段に対し、前記一時記録手段の制御を指示する指示手段を更に含み、
前記指示手段は、前記判定手段の結果に応じて、前記一時記録手段又は前記記録手段のどちらに記録するかを指示することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記一時記録手段は、前記記録手段とは独立である第1の一時記録手段と、前記記録手段に包含される第2の一時記録手段とを有しており、
前記判定手段の結果に応じて前記第1の一時記録手段又は前記記録手段の何れか一方にて画像データを記録し、
前記記録手段に対し、前記第2の一時記録手段の制御を指示する指示手段を更に含み、
前記指示手段は、前記判定手段の結果に応じて、前記第2の一時記録手段又は前記記録手段のどちらに記録するかを指示することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記画像データは、JPEG2000の符号データであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
断片化された画像データを受信及び記録する記録方法において、
受信した画像データを記録媒体に記録する記録工程と、
前記記録工程にて記録する画像データを一時的に記録する一時記録工程と、
断片化された画像データの夫々の属性を検知する検知工程と、
前記検知工程により、断片化された画像データを夫々、前記一時記録工程にて記録するか、前記記録工程にて記録するかを判定する判定工程と
を含むことを特徴とする記録方法。
【請求項7】
前記一時記録工程は前記記録工程と独立の工程であり、
前記判定工程の結果に応じて前記一時記録工程又は前記記録工程の何れかにて画像データを記録することを特徴とする請求項6に記載の記録方法。
【請求項8】
前記一時記録工程は前記記録工程に包含されており、
前記記録工程に対し、前記一時記録工程の制御を指示する指示工程を更に含み、
前記指示工程において、前記判定工程の結果に応じて、前記一時記録工程又は前記記録工程のどちらで記録するかを指示することを特徴とする請求項6に記載の記録方法。
【請求項9】
前記一時記録工程は、前記記録手段とは独立である第1の一時記録工程と、前記記録手段に包含される第2の一時記録工程とからなり、
前記判定工程の結果に応じて前記第1の一時記録工程又は前記記録工程の何れかにて画像データを記録し、
前記記録工程に対し、前記一時記録工程の制御を指示する指示工程を更に含み、
前記指示工程において、前記判定工程の結果に応じて、前記第2の一時記録工程又は前記記録工程のどちらで記録するかを指示することを特徴とする請求項6に記載の記録方法。
【請求項10】
前記画像データは、JPEG2000の符号データであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項11】
請求項6に記載の記録方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−5049(P2008−5049A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170469(P2006−170469)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】