説明

診断テストのための乗物用エンジンへの燃料の正しい流量の決定方法

【課題】可能なエラーの原因となるコンポーネントを特定することができる診断テストを実行する。
【解決手段】前記被測定エンジンと同タイプの参照エンジンにて種々の動作条件下で当該エンジンが受ける負荷の関数として測定される実際の流量に対応する、燃料の参照流量を決定すること;燃料供給のない状態で、当該エンジンが受ける負荷に対応する、予め決められた第1の回転速度から予め決められた第2の回転速度までの前記被測定エンジンの減速(Δn/Δt)を測定すること;前記減速に基づき、及び類似の負荷条件下での前記エンジンの実際の動作条件に基づき、前記正しい流量に対応する、対応参照流量を決定すること、を含んでなることを特徴とする、被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作センサを備えた乗物用エンジンのためのマネージメントシステムにおいて、診断テストのために乗物用エンジンへの燃料の正しい流量を測定(決定または評価)する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広範な乗物とくに業務用乗物において、全ての使用条件下でのエンジン及び搭載装置たとえば排気ガス処理や排気ガス再循環装置など、の双方において、正確な動作を保証するために、非常に複雑なマネージメントシステムの必要性が次第に高まっている。たとえば、燃料噴射、再循環ラインのバルブの開閉、可変ジオメトリタービンノズルの開度は、エンジン作動条件、エンジンから排出される排気ガスの組成、及び処理装置の条件に応じて、特定の制御ユニットで制御される。以上のようなマネージメントシステムの動作のためには、センサにより検知される一連のパラメータの測定が必要である。更に、種々の制御ユニットの調整は十分に正確でなければならない。
広範な乗物とくにスーパーチャージ過給エンジンを備えた乗物、更にとくに産業用の乗物に一般に適用されるディーゼルエンジンにて非常によく使用されるコンポーネントには、次のようなものがある。エアー流量センサは、通常過給コンプレッサの上流側に位置する吸気ラインに配置される。過給圧力センサ及び過給温度センサは、通常1つまたは複数(多段過給または並列コンプレッサの場合)の過給コンプレッサの下流側の吸気ラインに配置され、但し、エンジンへの導入前たとえば吸気マニホールドに配置される。1つまたは種々の排気ガス組成センサ:とくに、排気ガス中の酸素の存在パーセンテージを検知するためのセンサは、一般にラムダセンサ(またはラムダプローブ)と呼ばれる。後者は、触媒装置を備えた石油エンジンにおいて、燃料噴射を制御するのに使用される。ディーゼルエンジンの場合にはねエンジン排気ガス再循環流量の正確な調整が必要であり、これにより、不純物の発生を減少させ、処理システム(触媒システム、粒状物質再生トラップ等)の良好な動作に適した排気ガス条件を保証することができる。更に、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガス再循環ラインがあり、これはエンジンの吸気ラインと排気ラインとを適宜接続する。種々の機器(ポンプ、ベンチュリ管)が備えらており(とくに、排気ラインのタービン上流側の位置と吸気ラインコンプレッサの下流側の位置に。但し、再循環ラインの量胆管の距離が十分でない場合)、これにより、全ての条件下で適切なガスの再循環流が可能となる。更に、電子的マネージメントシステムにより制御されるバルブにより、調節しても良い。このバルブは、再循環が不要の場合には、完全に閉じられる。
【0003】
エンジンは、センサにより測定される値に基づき以上のようにして調節される。最も一般的な問題は、センサの校正がないことによる吸気エアー流量の不正確な検知、または吸気ラインにおける損失(損失がコンプレッサの上流側の場合には、センサの下流側の外気吸入があり、損失がコンプレッサの下流側の場合には、外気の損失がある)である。
【0004】
更に、音字センサ及び圧力センサもエラーがある。ラムダセンサは、不調または不正確な校正がある。他の一般的な問題は、たとえばバルブ損失に基づく再循環ガス流量の評価エラー、またはたとえばエンジンの体積効率(filling)の不正確な評価に基づく他のシステムエラーである。
【0005】
更に、正しい燃料噴射の評価の困難性の問題がある。実際、インジェクタにより供給される流量にはかなりのエラーがある(たとえば2mg/サイクル)ことが知られている。これは、エンジンが最小回転数である低負荷(小燃料流量)の場合には、正しい値の20%更には30%にもなる。これは、乗物の検知センサに関する他の可能な問題と区別することができない。
【0006】
以上のように、最も一般的な問題の中には、エアー流量センサの不正確な校正、または損失に基づく流量の評価エラーがある。また、制御ユニットは、周期的に、過給温度及び過給圧力、エンジン速度及び体積効率(通常の利用可能なモデルからエンジン速度に従って得られる)から算出された流量に対して測定流量値を比較しない。エアー流量センサは、重大な相違が検知された場合には、再校正される。この方法は、エラーの他の原因となることがあり、これにより、システムエラーが生ずることがある。
【0007】
システムエラーの存在は、必要に応じてまたは定期的にワークショップで実施される診断テストにより、しばしば検知される。制御ユニットで検知されるデータを得るためは、公知のようにして制御ユニットを外部制御ユニットたとえばコンピュータに接続する。しかし、これでは、欠陥が検知された場合であっても、コンポーネントを取り外すことなしには、可能な(あり得る)原因を追跡することは、時として困難である。更に、燃料流量の不正確な評価は、他の問題の迅速な特定の可能性に対するかなりの制限となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
単一のコンポーネントを取り外す必要性を低減しながら、可能なエラーの原因となるコンポーネントを特定することができる診断テストを実行し、及び/または、乗物の外部の機器で測定を実行することができることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以上の如き課題を解決するものとして、
被測定エンジン(たとえば試験のための乗物用エンジン、とくに産業用の乗物用エンジン)に供給される燃料の正しい流量を評価する方法であって、
該方法は、
前記被測定エンジンと同タイプの参照エンジンにて種々の動作条件下で当該エンジンが受ける負荷の関数として測定される実際の流量に対応する、燃料の参照流量を決定すること、
燃料供給のない状態で、当該エンジンが受ける負荷に対応する、予め決められた第1の回転速度から予め決められた第2の回転速度までの前記被測定エンジンの減速(Δn/Δt)を測定すること、
前記減速に基づき、及び類似の負荷条件下での前記エンジンの実際の動作条件に基づき、前記正しい流量に対応する、対応参照流量を決定すること、
を含んでなることを特徴とする、被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法、
が提供される。
【0010】
好ましくは、前記参照流量は、少なくともエンジンの回転速度の関数として決定され、更には包囲圧力及び包囲温度などの他の動作条件の関数として決定される。
【0011】
本発明の一態様においては、前記方法は、エンジンのマネージメントのための電子システムにより或いは該マネージメントのための電子システムに接続された電子装置により実行される。
【0012】
また、本発明によれば、
エンジン(たとえば乗物用エンジン、とくに産業用の乗物用エンジン)のためのマネージメントシステムの診断方法であって、該方法は、上記の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法と、可能な欠陥の決定のために前記正しい流量の値を使用することとを含んでなることを特徴とする、エンジンのためのマネージメントシステムの診断方法、
が提供される。
【0013】
本発明の一態様においては、前記正しい流量(の値)は、燃料噴射流量を制御するのに適合するエンジン動作マネージメントシステムにより指示される流量値と比較され、前記エンジン動作マネージメントシステムを校正するのに使用される。
【0014】
本発明の一態様においては、前記方法は以下の工程:
以下の一連のパラメータ、即ち、
適宜のセンサ(8)により測定される吸気エアー流量(Airhfm);
適宜のセンサ(10,19)により測定される過給圧力(pboost)及び過給温度(Tboost);
ラムダセンサ(9)のような適宜のセンサにより測定される排気ガス中の酸素のパーセンテージ(λ);及び
単位時間あたりにエンジンに供給される燃料の流量(Q
を測定すること、
前記パラメータの少なくとも一部に基づく、3つの互いに数学的に独立なマグニチュードを決定すること、
及び
可能な動作欠陥の決定のために前記3つのマグニチュードを比較すること、
を含み、
前記燃料の流量(Q)は前記正しい流量である。
【0015】
本発明の一態様においては、前記3つのマグニチュードは、前記センサにより測定される吸気エアー流量(Airhfm)と、前記過給圧力及び過給温度、エンジン回転速度及び体積効率値(E)に従って計算される吸気エアー流量(Airasmod)と、前記供給される燃料の流量及び前記排気ガス中の酸素のパーセンテージから計算される吸気エアー流量(Airlsu)とである。
【0016】
本発明の一態様においては、前記3つのマグニチュードは、前記センサにより測定される吸気エアー流量(Airhfm)から及び前記排気ガス中の酸素のパーセンテージから計算される燃料の第1の仮想流量と、前記過給圧力及び過給温度、エンジン回転速度及び体積効率値(E)、及び前記排気ガス中の酸素パーセンテージに基づき計算される第2の仮想流量と、前記正しい流量とである。
【0017】
また、本発明によれば、上記の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法または上記のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法の実施に適合するコンピュータプログラム、が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、上記の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法または上記のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法の実施に適合する、エンジン動作のためのマネージメントシステム、が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、上記の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法または上記のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法の実施に適合するエンジン動作のためのマネージメントシステムへの接続に適する電子装置、が提供される。
【0020】
前記正しい流量値は、広範な乗物のシステムにおいて使用することができ、以上のような診断テストが実行される乗物のマネージメントシステムに接続される電子装置において使用することができる。
【0021】
流量値の修正または校正は、流量値が正しい流量値と十分に似通っている場合には、流量値の簡単な確認となる。
【0022】
更に、本発明の特徴及び利点は、非制限的実施形態により添付図面を参照して記載されている、発明を実施するための最良の形態の項の記載を見れば、一層明白なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明による方法は、好ましくは、産業用乗物等の乗物に適用される。この乗物は、ディーゼルエンジンなどの内燃エンジン1、吸気ライン2及び排気ガスライン3を備える。可能な実施形態においては、吸気ラインは過給コンプレッサ4を含み、排気ガスラインはコンプレッサの駆動に適するタービン5を含む。本発明の特定の実施形態においては、タービンは可変ジオメトリータイプである。一般には、排気ガス循環ライン6は、排気及び吸気のラインと適宜の2つの適宜の位置で接続されている。元来知られているように、ライン6内の再循環ガスの流量を適切にするように、ポンプまたはベンチュリ機器等の特定の手段が配置される。循環バルブ7は、上記流量を調節するように機能する。再循環ラインは、エンジンの吸入及び排気のラインの高圧側分岐を接続し、即ち、タービン5の上流側位置をコンプレッサ4の下流側位置に接続する。しかし、再循環ラインは、他の様式であっても良い。エアー流量センサ8は、吸気ラインにおいて、好ましくはコンプレッサの上流側に配置される。ラムダセンサ9は、排気ラインの適宜の位置に配置される。温度センサ19及び圧力センサ10は、コンプレッサの下流側の適宜の位置、好ましくは再循環ガスの再導入の位置の下流側、たとえば吸気マニホールド12において、それぞれのパラメータを測定する。
【0024】
カスタム仕様の電子ユニットにより形成することができるエンジン動作マネージメントシステム11は、種々のセンサからの信号を受けて、既知の手法で、他の動作パラメータを測定する。該動作パラメータとしては、種々のコンポーネントたとえばインジェクタを制御するため、噴射される燃料の流量を測定するためのエンジン回転速度、集められたデータに従って再循環流量を調節するためのバルブ7、及び、場合によっては、可変ジオメトリタービンノズル5の開度、または可能なバルブがある。
【0025】
従って、このようなマネージメントシステムは、燃料噴射を制御するのに適する。制御ユニットは、また、運転者の命令に従ってエンジンに要求されるトルク及び力に関するデータを受ける。システム内には他のセンサ及び制御手段が存在しても良く、これらは制御ユニットにより使用され得る。とくに触媒コンバータ、再生トラップ、その他のガス処理システムの存在下において、たとえば排気ガスラインには温度センサが設けられる。メンテナンス作業において、ユニットは、好ましくは、外部から制御される。たとえば、該ユニットは、コンピュータのような外部制御装置に接続され、それに測定データを送る。このユニットは、種々のコンポーネント(たとえば、噴射、可変ジオメトリタービンの開度、再循環バルブの開度、エンジン冷却ファン等の他のコンポーネントの動作)に作用するために、外部装置により、制御されても良い。
【0026】
ここに示されるようなエンジン装置に適用されることが可能な診断方法によれば、ユニット11により検知されるデータに基づき、ユニット自体または外部装置は、3つのマグニチュード[magnitude](大きさ、値)を決定する。これらのマグニチュードの比較が行われ、これにより可能な欠陥が指示される。
【0027】
たとえば、これらは、次の3つの正しい又は仮想のエアー流量とすることができる。即ち、Airhfmは、流量センサ8により検知される流量である。Airasmod=α’*pboost/Tboost*V*Eは、それぞれ過給圧力及び過給温度を表すpboost及びTboostから算出される仮想エアー流量であり、ここで、Vはエンジン回転速度(s−1)であり、Eは体積効率(a volume)である。体積効率は、主としてVに応じて、適宜のタイプのエンジンに一般に適用できるモデルから得られるデータであり、これらのモデルはまた他のパラメータを考慮することができる。最後に、Airlsu=λ*A/Fst*Qはエアー流量値である。ここで、λは、使用されるセンサの特徴に依存し及びセンサが使用される環境のパラメータに依存する補正を伴ってセンサにより測定される、清浄エアー中の酸素含有量(酸素含有率)の関数として、酸素濃度から算出される値である。また、A/Fstは化学量論的空気−燃料比であり、Qは単位時間あたりの噴射燃料流量である。指示されるエアー流量は、便宜上質量流量であっても良く、体積流量を算出しても良い。
【0028】
3つの流量は、再循環流量が存在しない条件下で決定しても良く、それは、制御ユニットにより外部装置を制御することで、より一般的にはバルブ7を閉じることで、或いは、バルブ以外の他のタイプの再循環手段を開くことで、なされる。決定される3つの流量が合致しない場合には、その偏り[deviation]の値に応じて、第1に記載の選択を行うことができる。表1では、簡単に記載されている。“OK”は、正しい流量を示し、“偏り+”及び“偏り−”は、それぞれマグニチュードが正しい流量値より大きい及び小さいものとして決定されることに対応する。テスト条件下でのエンジンの振る舞いを記述する参照値が得られる場合には、値が正しいか及びそれはどの値であるかを直ちに決定することが容易である。
【0029】
診断作業は、以下のようにして行うことができる。
【0030】
エンジンをオフにして、エアー流量センサが零値を示したこと、及び過給圧力センサが包囲圧力を示したことを、確認する。
【0031】
参照値を上記のように設定し、エンジン速度が低いときに、値は一般にエンジンにみられる参照値(これらの値は、高度のような考慮される環境条件により影響されるが、排気への背圧には影響されない)と比較される。測定されるエアー流量に偏りがある場合には、範囲は、エアー流量センサの偏りの場合または供給ラインにおける損失の場合に限定される。但し、再循環システムにおける損失があっても良く、とくに値Airlsuが偏りを持つ場合には、バルブが閉じられた時に再循環ガスの漏れがあっても良い。一方、Airasmodの値が違っている場合には、以前のテストで圧力センサの欠陥(fault)が検知されなかった場合(更に、以前の参照値が正しい場合であっても、圧力バルブの可能な偏りが検知されない場合)には、過給温度センサのエラーが考慮される。
【0032】
次に、たとえば3つ(低速、中速及び高速)の定常的な参照流量でのテストが行われ、再び、再循環ラインを閉じて、エアー流量の全ての可能な範囲を探索する。過給圧力を増加させるために、可変ジオメトリタービンノズルを閉じることができる(制御ユニットにより制御されて)。更に、エンジン冷却ファンが作動され、再び制御ユニットへと産業用乗物におけるような命令を送り、ファンが高い力を吸収し、エンジンの軸により一般に直接的に駆動される。更に、テスト中のオーバーヒートを避ける。かくして、一般に、ワークショップにおいてさえ、カスタム仕様の産業用乗物において、3つのマグニチュードの値を比較することで、全体の吸気エアー流量範囲及びほぼ半分以上の供給圧力フィールドが探索されることが分かる。少なくとも2好ましくは3更にはそれ以上の動作位置を採用することで、更にセンサにより測定される偏りのリニアリティを評価することが可能になる。これにより、可能な欠陥[fault]についての一層正確な情報が得られる。
【0033】
カットオフの燃料供給下での減速の際に、ラムダセンサ(Oの容量パーセンテージ20.95%を示す)の校正点が確認される。
【0034】
最後に、バルブを開くことにより、互いに異なるガス再循環流量での一連のテストを行うことができる。表1のケース6での比較から分かるように、Airhfmエアー流量の減少(エンジンに供給されるガスのうちの一部が外部から到来しない)、及びAirlsuエアー流量の減少が予測される。但し、Airasmod流量は、再循環の存在により変化したガスの組成により僅かに影響され、エンジン全体のほぼ正しいガス流量を表す。これは、エンジン速度が一定に維持される場合には正しい。一定に維持されるべきエンジン動作パラメータは、実際にはテスタにより、遠隔命令を用いて直接設定され、これにより、維持されるべき回転速度、排気ガス再循環ラインのバルブ(EGRバルブ)の位置、及び可変ジオメトリタービン(VGT)の位置が、制御ユニットに入力される。この種の制御がない場合には、動作条件の(たとえば絶えず摩擦の影響を受けるエンジン温度)の最小の変化でも、エンジン回転速度の偏りを引き起こす。駆動されない他のアクチュエータは、エンジンの制御ユニットにより決定される通常のセッティングに従って動作する。この場合、再循環が高圧側分岐にあると、ガスがタービンから引かれるので、過給温度の上昇及び過給圧力の低下による僅かな偏りが存在する。かくして、Airhfm及びAirlsuの減少が再循環排気流量の増大(これは既知のようにバルブの開度に依存する)にリニアに依存するかどうかを観測することもできる。
【0035】
以上のようにしてテストを実行することにより、結果がテストで予測されものである場合には、それがエンジンマネージメントシステム全体の全ての機能の評価[opinion]を表すものとなる。
【0036】
表1に示されるように、値が互いに異なる場合には、評価が可能である。
【0037】
Airlsuの値が互いに合致する他の2つの値と異なる場合には、ラムダセンサでの問題が考慮される。減速テストで検知されない場合には、燃料の流量値が参照値に対して正しい場合には特に、ラムダセンサでの問題があり得る。そうでなければ、燃料流量の評価が不正確なようである。
【0038】
Airasmodの値が互いに合致する他の2つと異なる場合には、温度センサまたは圧力センサの問題があるか、或いは再循環ガスの望ましくない導入(バルブ漏れ)があり得る。種々の条件下での上記のテストにより、問題を引き起こすコンポーネント(及び問題の本質)の特定が可能になる。たとえば、Airasmodの偏りがエンジンオフの状態で生ずることなく且つそのとき全ての値が合致し、但し高負荷の場合にのみ偏りが現れる場合には、圧力センサまたは温度センサに偏りがある。
【0039】
唯一異なるのがAirhfmである場合には、エアー流量センサの欠陥が生じている可能性がある。これは、エンジンオフテストでオフセットが存在する場合、または他の流量でのテストで問題が応答のノン−リニアリティである場合には、検出することが可能である。或いは、損失がコンプレッサの上流側または下流側である場合には、それぞれAirhfmの値が減少または増加する吸気ラインの損失の可能性がある(表1参照)。
【0040】
以上の互いに異なる条件下でのテストは、必要に応じて、ここで説明した順序または他の順序で実行される。
【0041】
本発明に従って実行することにより、一旦欠陥の存在が検出されると、ケースバイケースで、欠陥の可能な原因を一層迅速に特定するために、続いてどのテストを実行すべかを決定することができることに、注目すべきである。
【0042】
原因を特定した後に、コンポーネントを校正し、または必要な中間処理[intervention]を実行することができる。
【0043】
更に、比較されるべき3つの互いに異なるマグニチュードの他のグループを見出して、上記パラメータの少なくとも一部と再度関連付けることができる。たとえば、以上のようにして決定されたエアー流量の間の関係を特定することができる。かくして、2つの流量の関係に影響する条件を変化させることにより、双方がリニアな偏りを持つかどうかを観測することが容易になる。また、エアー流量Airasmod及びAirlsuから、及びラムダセンサで測定される酸素の値から仮想流量を決定し、それらのQに対する偏りを評価することができる。これは、Qの値に注目すべきことが要求される場合に実行することができる。
【0044】
以上のように、噴射システムとくに低負荷のものは、流量値Qの定量においてかなりのエラー(誤差)が生ずることがある。このため、上記のような診断方法を実行する場合、または流量Qの正しい評価に基づく他の方法を実行する場合において、他の可能な欠陥を区別することが難しい。たとえば、Airlsuにおける偏りの場合には、そのようなエラーは、ラムダセンサによる酸素含有量の評価に際して生じ得るエラーをカバーするようなものである。この場合、エンジン装置のマネージメントシステムを適切に動作させるために、燃料流量において通常生ずるような広い許容度が可能になる。更に、複数のコンポーネントによる欠陥は容易には検知できなくなる。従って、噴射システム、又は如何なる場合であっても診断方法が実行される装置の、少なくとも後者の方法が実行される場合における、校正、或いは、少なくとも燃料流量におけるエラーは、他の可能な欠陥を除外するためには、種々のテストが実行される条件下において正確に検知しなければならない。
【0045】
参照値は、エンジンの定常的な動作条件下、少なくともワークショップでテストを実行することが可能な条件下での燃料流量と関連付けて、得られる。これらのデータは、実験室で、テストされるエンジンと同様なバージョンで、エンジン(トルク)が受ける互いに異なる負荷の値をもって、得られる。実際には、類似の動作条件下においてさえ、個々のエンジンの構造上の特徴(たとえばシリンダー及びピストン、及びブッシングの許容量)又は摩擦のような一連の局面があり、これは、テストに付随してテスト中でも変化し(たとえば、潤滑剤の種類及びその温度、種々の機器たとえばオルタネータ、パワーステアリング油圧ポンプ、冷却ファン、エアコン用コンプレッサ等の駆動の際の負荷が変化し)、乗物の運動による負荷がかからない場合であっても、エンジンが受ける負荷を変化させたり、同等バージョンであっても、テスト中においても、互いに異なるエンジンでは再現できなくする。
【0046】
これらの原因による負荷を評価するために、燃料供給のない状態で、予め決められた2つの動作条件(互いに異なる2つの回転速度)の間で減速テストを実行し、摩擦によるトルクを評価する。たとえば、このテストは、上記のように燃料供給なしのラムダセンサをチェックすると同一の時間において、たとえば種々の回転速度でのテストのために実行することができる。エンジンが高回転速度から低回転速度へと1分間あたりの回転数をΔnだけ減少させるに要する時間Δtが測定される。
【0047】
摩擦トルクは、M=I*(Δn/Δt)*2π/60で評価される。ここで、Iはエンジンの回転部分の慣性モーメントであり、この値は与えられたバージョンにつき容易に得られる。このトルク値に基づき、診断テストが実行される種々の条件下で、正しい流量値Qが得られる。この流量値Qを直接、演算に使用したり、マネージメントシステムを形成する噴射システムや診断方法の実行される装置の校正に使用することができる。
【0048】
もちろん、参照流量は、トルク或いは負荷に対応又は関連する値(たとえば、予め決められた条件下での減速)のなかの種々の条件の関数であっても良い。これらは、関数又は表として得られる。
【0049】
本発明の方法は、上記のような診断方法に適用された場合に、テストの信頼性を向上させることができ、また、互いに異なる2つの原因によるエラーまたは不調が存在する可能な(あり得る)複数のケースを区別することを可能にする。
【0050】
以上、一例として特定のタイプのエンジンに適用される特定のタイプの診断テストを記載したが、本発明の方法を、供給される正しい燃料流量の知識に基づき、他のタイプのテストに適用することも可能である。その場合、エンジンは他のタイプ、たとえば過給または排気ガス再循環のないものであっても良いし、適宜の変形を行っても良い。
【0051】
本発明は、また、以上のような方法を実行するのに適した以上のような制御ユニット及び/または制御装置のためのコンピュータプログラム、または以上のような方法を含む診断方法にも関する。
【0052】
本発明は、また、以上のような方法または診断方法を実行するのに適した、エンジン動作のためのマネージメントシステム、及び該マネージメントシステムへの接続に適した電子装置にも関する。
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による方法が適用される、排気ガス再循環を伴う過給エンジン装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1 内燃エンジン
2 吸気ライン
3 排気ガスライン
4 過給コンプレッサ
5 タービン
6 排気ガス再循環ライン
7 再循環バルブ
8 エアー流量センサ
9 ラムダセンサ
10 圧力センサ
11 エンジン動作マネージメントシステム
12 吸気マニホールド
19 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法であって、
該方法は、
前記被測定エンジンと同タイプの参照エンジンにて種々の動作条件下で当該エンジンが受ける負荷の関数として測定される実際の流量に対応する、燃料の参照流量を決定すること、
燃料供給のない状態で、当該エンジンが受ける負荷に対応する、予め決められた第1の回転速度から予め決められた第2の回転速度までの前記被測定エンジンの減速(Δn/Δt)を測定すること、
前記減速に基づき、及び類似の負荷条件下での前記エンジンの実際の動作条件に基づき、前記正しい流量に対応する、対応参照流量を決定すること、
を含んでなることを特徴とする、被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法。
【請求項2】
前記方法は、エンジンのマネージメントのための電子システムにより或いは該マネージメントのための電子システムに接続された電子装置により、実行されることを特徴とする、請求項1に記載の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法。
【請求項3】
エンジンのためのマネージメントシステムの診断方法であって、該方法は、請求項1及び2の何れか一項に記載の方法と、可能な欠陥の決定のために前記正しい流量の値を使用することとを含んでなることを特徴とする、エンジンのためのマネージメントシステムの診断方法。
【請求項4】
前記正しい流量の値は、エンジンの動作のためのマネージメントシステムにより指示される流量値と比較されることを特徴とする、請求項3に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法。
【請求項5】
以下の工程:
以下の一連のパラメータ、即ち、
適宜のセンサ(8)により測定される吸気エアー流量(Airhfm);
適宜のセンサ(10,19)により測定される過給圧力(pboost)及び過給温度(Tboost);
ラムダセンサ(9)のような適宜のセンサにより測定される排気ガス中の酸素のパーセンテージ(λ);及び
単位時間あたりにエンジンに供給される燃料の流量(Q
を測定すること、
前記パラメータの少なくとも一部に基づく、3つの互いに数学的に独立なマグニチュードを決定すること、
及び
可能な動作欠陥の決定のために前記3つのマグニチュードを比較すること、
を含み、
前記燃料の流量(Q)は前記正しい流量であること、
を特徴とする、請求項3及び4の何れか一項に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法。
【請求項6】
前記3つのマグニチュードは、前記センサにより測定される吸気エアー流量(Airhfm)と、前記過給圧力及び過給温度、エンジン回転速度及び体積効率値(E)に従って計算される吸気エアー流量(Airasmod)と、前記供給される燃料の流量及び前記排気ガス中の酸素のパーセンテージから計算される吸気エアー流量(Airlsu)とであることを特徴とする、請求項5に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法。
【請求項7】
前記3つのマグニチュードは、前記センサにより測定される吸気エアー流量(Airhfm)から及び前記排気ガス中の酸素のパーセンテージから計算される燃料の第1の仮想流量と、前記過給圧力及び過給温度、エンジン回転速度及び体積効率値(E)、及び前記排気ガス中の酸素パーセンテージに基づき計算される第2の仮想流量と、前記正しい流量とであることを特徴とする、請求項5に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法。
【請求項8】
請求項1及び2の何れか一項に記載の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法または請求項3乃至7の何れか一項に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法の実施に適合するコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項1及び2の何れか一項に記載の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法または請求項3乃至7の何れか一項に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法の実施に適合する、エンジン動作のためのマネージメントシステム。
【請求項10】
請求項1及び2の何れか一項に記載の被測定エンジンに供給される燃料の正しい流量を評価する方法または請求項3乃至7の何れか一項に記載のエンジンのためのマネージメントシステムの診断方法の実施に適合するエンジン動作のためのマネージメントシステムへの接続に適する電子装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−121475(P2009−121475A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290411(P2008−290411)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(507304915)イフェコ モトーレンフォアシュンク アクチェンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】