説明

認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防方法

本発明は、被験者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和軽減、改善および予防用医薬の調製のための、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の使用を提供する。更に、本発明は、健康な被験者の認知機能の改善用薬剤を調製するための前記塩付加物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、メタドキシンおよびその誘導体またはそれらを含んでなる組成物を用いて、必要とする被験者での認知疾患、障害または病態を治療しおよび/または軽減しおよび/または改善しおよび/または予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
認知機能の変質は、意識状態または認知機能の変調を生じる可能性があり、記憶障害または学習障害または任意の種類の機能変調に現れることがある。
【0003】
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、不注意、多動および衝動性の広汎かつ欠陥する(impairing)症状を特徴とする。ADHD/ADDは、医学において最も詳細に研究されている障害の1つである。それは、罹患被験者についての広汎な悪い結果および家族や社会に深刻な財政負担に関連しており、これは主要な公衆衛生上の問題となっている。
【0004】
健忘症は、心を乱したりまたは驚かしたりするような幾つかの精神的経験、脳障害または一連の感情的事象による記憶の喪失により定義することができる病態である。健忘症には、器質性または機能性理由のような様々な理由および原因がある。器質性健忘症は、外傷または疾患のような物理的衝撃によるものである可能性がある外部要因による脳への損傷によって引き起こされる。機能性健忘症は、精神的要因によるものである。健忘症様現象の原因となり得る多くの動機があり、頭部外傷、重篤な病気、高熱、発作、感情的ショックまたはヒステリー、アルコール関連の脳損傷、薬物、脳卒中、アルツハイマー病および脳手術、肝性または尿毒症性脳障害のような任意の種類の代謝性疾患、脳の血流を変化させた、脳の神経伝達を変化させた、または脳における任意の種類の代謝物の増加または減少の結果である任意の疾患、脳におけるアミロイドの蓄積または電気的機能または代謝機能の変化に関連した任意の疾患、または脳における任意の種類の機構変化が挙げられる。
【0005】
疲労は、ほとんどの生活様式習慣および精神的健康状態に関係している。文献には、精神的もしくは肉体的タスクを行いもしくは完成するまたは長時間の活動後に応答する能力の減少、およびタスクを行う熱意の減少を表す複雑な現象として疲労を記載している。個人によって体験される疲労のレベルは、過去の累積的な日常活動パターンおよび睡眠と活動との期間に関係している。要約すれば、疲労は、タスクに費やされた時間、自然な日周因子および不十分な睡眠から生じる。一方、覚醒は、人為的または自然な増加なしに達成される準備および注意の状態である。
【0006】
集中が困難になることは、肉体的および心理的または感情的問題のいずれからも起こり得る症状である。集中力の不足または欠損の症状は、忘れっぽさのような他の記憶に関係した症状と関連していることもまたは関連していないこともある。集中力に影響を及ぼす物理的医学的疾患としては、ライム病、むち打ち症および様々な他の疾患が挙げられる。集中力を損なうことがある精神疾患としては、鬱病、ある種の不安障害およびストレスが挙げられる。不眠症または睡眠時無呼吸のような睡眠障害も、集中力を損なう可能性がある。
【0007】
メタドキシンは、有意なアルコール除去特性を有するピリドキシン−ピロリジンカルボキシレート(ピリドキソール=L,2−ピロリドン−5−カルボキシレートまたはピリドキシン=5−オキソ−2−ピロリドン−カルボキシレートとしても知られる)。メタドキシンは、急性アルコール中毒、中毒(poisoning)、およびある種の他の急性アルコール症候群の治療に用いられてきた(Addolorato et al., Int. J. Immunopathol. Pharmacol. (2003)16:207-214に概説されている)。長期データは、メタドキシンがヒトでの使用に安全であることを示している。
【0008】
メタドキシンは、血液および組織からのアルコールの除去を促進し、肝臓の機能的構造の回復および慢性的アルコール中毒と関連した神経精神疾患および関連症候群の緩和を助ける。動物実験では、メタドキシンはエタノールの血漿クリアランスと尿中排泄を増加させ、慢性的アルコール摂取中の肝臓における脂肪酸エステル産生の増加を阻害し、肝組織におけるグルタチオン枯渇を防止した(Antonelli et al., Pharmacol. Res. Commun. (1984)16:189-197)。脳では、メタドキシンは、モルモットの前頭頭頂皮質におけるGABAおよびアセチルコリンのレベルを増加させた。
【0009】
メタドキシンは、ピロリドンカルボキシレート(PCA)とピリドキシン(ビタミンB6)との間のイオン対であり、2個の化合物が塩形成によって結合して単一生成物となったものである。PCAと対形成することによって、ピリドキシンの薬理活性が相乗的に増加する(例えば、米国特許第4,313,952号明細書参照)。メタドキシンは、水および胃液に自由に溶解する。この薬剤の経口吸収は速やかであり、バイオアベイラビリティーが高い(60〜80%)。ヒト血清中のメタドキシンの半減期は短く(40〜60分)、経口と静脈内投与の間に認め得るほどの差はない(Addolorato et al.,上記文献; Lu Yuan et al.,Chin. Med. J. 2007 120(2)160-168)。
【0010】
メタドキシンは、数カ国で処方薬として500mg錠剤および300mg注射薬の形態で発売されている。錠剤は、メタドキシン500mg、微結晶セルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含む。アンプルは、メタドキシン300mg、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTAナトリウム、p−ヒドロキシ安息香酸メチルおよび水を含む。
【0011】
米国特許第6,541,043号明細書には、注意欠陥/多動性障害(ADHD)を治療するための組成物および方法が記載されており、この組成物は、ジメチルアミノエタノール(DMAE)を、様々な薬剤、とりわけビタミンB6、場合によってはADHDの治療用の通常の薬剤と共に含んでなる。WO03/003981号には、集中(focus)、集中力および/または記憶欠陥の被験者、並びに一過性の精神疲労または認知機能欠陥を自覚体験している被験者の構造的/機能的栄養補給のための組成物が開示されている。これらの組成物は、とりわけB6などのビタミンB複合体、およびL−ピログルタミン酸を多数の他成分と共に含んでなる。WO09/004629号には、メタドキシンの投与を含んでなる、飲酒の症状または影響を減少させまたは予防する方法が記載されている。米国特許第20070248696号明細書には、多くの成分の中でもビタミンB6をも含んでなる栄養補助食品の形態での「筋肉記憶」としても知られている神経筋促進を向上させかつ記憶および精神的集中のような認知機能を高める組成物が記載されている。米国特許第20090081179号明細書には、パーキンソン病、ハンティントン舞踏病、癲癇、統合失調症、パラノイア、鬱病、睡眠障害、記憶機能障害、精神病、痴呆およびADHDに罹っている患者の治療における多価不飽和脂肪酸と特にビタミンB6などの使用が開示されている。欧州特許第511943号明細書には、学習過程と記憶の増強剤としてのピログルタミン酸誘導体が記載されている。記憶回復に対するメタドキシン投与の効果を、禁酒している慢性アルコール依存者について試験した。ビタミンB6を、同様の患者のコントロール群に投与した。メタドキシンは1〜2ヶ月間の禁酒後の短期記憶回復を助け、その効果はビタミンB6の効果に勝ることを見出した[Sinforiani et al., Clin. Trials J.), 27(2):103-111(1990)]。WO2010/013242号には、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物、それらの調製方法、および飲酒に関連したまたは苦しめられている疾患または障害の治療のためそれらを含んでなる医薬組成物および薬剤が開示されている。
【0012】
認知疾患、障害または病態、認知行動および機能を治療し、その症状を緩和し、軽減し、改善し、および予防し、かつ、長期にわたってこれらの改善を維持できる方法が求められている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、このような認知障害および欠損をメタドキシンおよびその誘導体またはそれらを含んでなる組成物を用いて治療する方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、認知欠損の長期治療のためのメタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物を提供することである。本発明のこれらおよび他の目的は、説明を進めるに従って明らかになるであろう。
【0014】
本発明は、メタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物を必要とする被験者に投与することにより認知能力を向上させるための様々な方法を提供することによって上記の問題点の1つ以上を解決しようとするものである。場合によっては即時放出成分またはメタドキシンもしくはメタドキシン誘導体をさらに含む、持続または制御放出用に処方されたメタドキシンおよび/またはメタドキシン誘導体組成物、および本発明の前記持続もしくは制御放出または組み合わせたメタドキシンもしくはメタドキシン誘導体処方物を用いる方法も提供される。この組成物は、持続放出または制御放出用に処方されたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体を含んでいてもよい。幾つかの態様では、このメタドキシンまたはメタドキシン誘導体を含んでなる組成物は、持続または制御放出用に処方されたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の一部、および即時放出用に処方されたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の一部を有していてもよい。
【0015】
一態様では、本発明は、健康な被験者または治療を必要とする患者における認知疾患、病態または障害の治療、症状緩和、軽減、改善および予防のための方法であって、前記被験者にメタドキシンまたはその誘導体の有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0016】
もう一つの態様では、本発明は、被験者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防のための方法であって、前記被験者にピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0017】
更にもう一つの態様では、本発明は、健康な被験者における認知機能の改善方法であって、前記被験者にピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0018】
「メタドキシン」を指すときには、それは、塩付加物ピリドキシンL−2−ピロリドン−5−カルボキシレートを包含するものと理解すべきである。メタドキシンは、L−2−ピロリドン−5−カルボン酸(L−2−ピログルタミン酸)(1)の対応するアニオンとピリドキシン(ビタミンB6)(2)のプロトン化誘導体との塩であり、下記の構造:
【化1】

を有する。
【0019】
「メタドキシン誘導体」を指すときには、それは、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる任意の他の塩付加物を包含するものと理解すべきである。
【0020】
本発明の総ての態様において、前記の正に帯電した残基は式(I)の化合物:
【化2】

(前記式中、
は、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、Rは、−OH、直鎖状または分岐状のC−Cアルコキシ、および直鎖状または分岐状のC−Cアルコキシカルボニルから選択され、RおよびRは、それぞれ独立してホルミル、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであって、場合によっては少なくとも1個のハロゲン、アミン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、チオールおよびC−Cアルコキシカルボニルによって置換されたものから選択される)
の化合物である。
【0021】
本発明の更なる態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、
【化3】

(前記式中、
は、H、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであって場合によっては少なくとも1個のハロゲンによって置換されたもの、直鎖状または分岐状のC−Cアルケニル、直鎖状または分岐状のC−Cアルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールであって、場合によってはC−Cアルキルによって置換されたものから選択され、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立してH、直鎖状または分岐状のC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールであって、場合によってはC−Cアルキル、ハロゲン、アミノ、シアノ、ニトロ、チオール、C−Cアルコキシ、アミノカルボニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cカルボキシアルキル、C−Cアルコキシカルボニルアルキルおよびアミジノから選択される少なくとも1個の基によって置換されたものから選択される)
からなる群から選択される。
【0022】
本発明の更にもう一つの態様では、前記塩付加物は、下記の
【化4】



から選択される。
【0023】
本発明の方法によって緩和され、軽減され、改善されまたは予防された認知疾患、障害または病態を指すときには、下記の非制限的病態、すなわち注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、覚醒障害、精神疲労状態(疾患関連疲労(disease related fatigue)を含む)、交代勤務睡眠障害、ナルコレプシー、閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、鬱病、物質依存症(例えば、常習性薬物を含む)、パーキンソン病、統合失調症、集中力不足、および集中不足(poor focus)、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを包含するものと理解すべきである。
【0024】
本発明のもう一つの態様では、本発明は、必要とする患者またはADHDおよび/またはADDのような永続的または一過性の神経行動学的障害に関連したまたは結合した症状を体験している健康な被験者において、例えば、ADHDおよび/またはADDのような神経行動学的障害の治療、症状緩和、軽減、改善および予防のための方法であって、前記被験者にメタドキシンまたはその誘導体の有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0025】
本発明の方法によって緩和され、軽減され、改善されまたは予防される神経行動学的障害を指すときには、それは、下記の非制限的病態、すなわち注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、集中力不足および集中不足(poor focus)、またはそれらの症状の任意の組み合わせの少なくとも1つを包含するものと理解すべきである。
【0026】
本発明の方法は、下記の非制限的睡眠障害と診断されたもの、すなわち閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下、交代勤務睡眠障害およびナルコレプシーの1つによる過度の眠気を体験している被験者(任意の年齢の、例えば小児、青年または成人被験者)の覚醒状態を更に向上させることができる。
【0027】
更に、本発明の方法によって緩和され、軽減され、改善されまたは予防される認知疾患、障害または病態としては、学習障害、記憶障害、認知機能障害、アルツハイマー病を含む認知機能変化、尿毒症性および肝性脳障害を含む任意の種類の脳障害と関連した任意の病態が挙げられる。
【0028】
更に、本発明の方法によって緩和され、軽減され、改善されまたは予防される神経行動学的障害としては、例えば学習障害、記憶障害、認知機能障害、認知機能変化などのような神経行動学的障害と関連しまたは結合した任意の症状に関連した任意の病態を挙げることもできる。
【0029】
従って、上記本発明の方法の様々な態様のいずれにおいても、組成物は、即時放出、持続放出、制御放出、または前記のいずれかの組み合わせ用に処方したメタドキシンもしくはメタドキシン誘導体を含んでいてもよい。
【0030】
認知機能を指すときには、それは、下記の非制限的リスト、すなわち一過性または長期学習障害、一過性または長期記憶障害、一過性または長期認知機能障害、一過性または長期認知機能変化、一過性または長期集中力障害、一過性または長期集中障害、一過性または長期覚醒障害、一過性または長期精神疲労状態、一過性または長期交代勤務睡眠障害、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを包含するものと理解すべきである。
【0031】
健康な被験者における認知機能の改善を指すときには、それは、被験者の認知状態の任意の(小さなまたは有意な)変化を包含することを意味するものと理解すべきである。具体的には、前記改善は、下記の非制限的疾患のリスト、すなわち一過性または長期学習障害、一過性または長期記憶障害、一過性または長期認知機能障害、一過性または長期認知機能変化、一過性または長期集中力障害、一過性または長期集中障害、一過性または長期覚醒障害、一過性または長期精神疲労状態、一過性または長期交代勤務睡眠障害、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つにおいて顕著であってもよい。
【0032】
ある種の他の態様では、本発明は、持続放出または制御放出用に処方された本発明のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体組成物であって、場合によっては即時放出用に処方されたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の一部を含むものを投与することを含んでなる、被験者の血液中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の平均tmaxを増加させる方法を提供する。
【0033】
ある態様では、本発明は、例えば、健康な患者、または注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、精神疲労状態、集中力不足、および集中不足(poor focus)を罹っている患者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防のための、本明細書に記載の本発明の方法のそれぞれを実施するのに有用な治療および/または医薬組成物および/または薬剤の製造を目的とする本発明の組成物いずれか1つの使用を提供する。被験者は、小児、青年、成人、または初老または高齢者でもよい。
【0034】
本発明は、学習障害、記憶障害、血流の変化に関係したアルツハイマー病を含む任意の認知機能変化、硬化症、アミロイド沈着、脳における神経伝達物質の変化、アンモニアの蓄積のような代謝的変化、尿毒症性および肝性脳障害を含む任意の種類の脳障害、または任意の物質のレベル変化による任意の種類の機能変調に関連した任意の疾患にも関する。
【0035】
認知機能の変化は、意識状態の変調または認知機能変調を生じることがあり、また記憶障害または学習障害または任意の種類の機能変調に現れることがある。
【0036】
本明細書に記載のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体組成物(例えば、即時放出、持続放出、制御放出、または前記のいずれかの組み合わせ用に処方されたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体)の様々な態様のいずれかにおいて、メタドキシンは、本明細書に記載の生理学的に適合性のメタドキシン誘導体からなるかまたは生理学的に適合性のメタドキシン誘導体を含んでいてもよい。
【0037】
本発明を、添付図面により一層詳細に記載する。
【0038】
本発明を理解して、これを実際にどのように行うことができるかを知るため、態様を添付図面に関して単なる非制限的実施例によって説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、例1に記載の本発明のある種のメタドキシン組成物の放出速度のグラフを示す。このグラフは、メタドキシンの即時放出処方と遅延放出処方の差を表す。放出されたメタドキシン(%)対時間(時)。
【図2】図2は、遅延放出錠剤からの放出と比較した即時放出処方の放出速度を示す。
【発明の具体的説明】
【0040】
第一の態様では、本発明は、被験者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防のための方法であって、前記被験者にピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の有効量を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0041】
もう一つの態様では、本発明は、健康な被験者における認知機能の改善のための方法であって、前記被験者にピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の有効量を投与することを含んでなる前記方法を提供する。
【0042】
もう一つの態様では、本発明は、被験者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防のための医薬の調製を目的とする、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の使用を提供する。
【0043】
もう一つの態様では、本発明は、健康な被験者の認知機能の改善のための医薬の調製を目的とする、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の使用を提供する。
【0044】
本発明の総ての態様において、前記の正に帯電した残基は、式(I):
【化5】

(前記式中、
は、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、Rは、−OH、直鎖状または分岐状のC−Cアルコキシ、および直鎖状または分岐状のC−Cアルコキシカルボニルから選択され、RおよびRは、それぞれ独立してホルミル、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであって、場合によっては少なくとも1個のハロゲン、アミン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、チオールおよびC−Cアルコキシカルボニルによって置換されたものから選択される)
の化合物である。
【0045】
本発明の他の態様では、前記カルボキシル化したラクタム環が、
【化6】

(前記式中、
は、H、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであって場合によっては少なくとも1個のハロゲンによって置換されたもの、直鎖状または分岐状のC−Cアルケニル、直鎖状または分岐状のC−Cアルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールであって、場合によってはC−Cアルキルによって置換されたものから選択され、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立してH、直鎖状または分岐状のC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールであって、場合によってはC−Cアルキル、ハロゲン、アミノ、シアノ、ニトロ、チオール、C−Cアルコキシアミノカルボニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cカルボキシアルキル、C−Cアルコキシカルボニルアルキルおよびアミジノから選択される少なくとも1個の基によって置換されたものから選択される)
からなる群から選択される。
【0046】
本発明の更にもう一つの態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、式(II):
【化7】

の化合物であり、かつ
前記の正に帯電した残基は、化合物(2):
【化8】

(前記式中、R、R、R、RおよびR10は前記で定義した通りである)
である。
【0047】
他の態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、化合物(1):
【化9】

であり、かつ
前記の正に帯電した残基は、式(I):
【化10】

(前記式中、R、R、RおよびRは、前記で定義した通りである)
の化合物である。
【0048】
他の態様では、RはC−Cアルキルであり、R、RおよびRは前記で定義した通りである。
【0049】
更なる態様では、Rは−OHおよびC−Cアルコキシから選択され、R、RおよびRは前記で定義した通りである。
【0050】
更なる態様では、Rは−CH15(前記式中、R15は−C−Cアルコキシ、−OHおよび−NHから選択される)であり、およびR、RおよびRは前記で定義した通りである。
【0051】
他の態様では、Rはホルミルおよび−CH16(前記式中、R16は−C−Cアルコキシおよび−OHから選択される)から選択され、R、RおよびRは前記で定義した通りである。
【0052】
更なる態様では、Rは−CHであり、Rは−OHであり、RおよびRは両方ともCHOHである。
【0053】
更に他の態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、式(II):
【化11】

(前記式中、R、R、R、RおよびR10は前記で定義した通りである)
の化合物である。幾つかの態様では、RはC−Cアルキルである。他の態様では、RはC−Cアルキルである。
【0054】
更なる態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、式(III):
【化12】

の化合物であり、かつ
前記の正に帯電した残基は、式(I):
【化13】

(前記式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11およびR12は前記で定義した通りである)
の化合物である。
【0055】
更なる態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、式(IV):
【化14】

の化合物であり、かつ
前記の正に帯電した残基は、式(I):
【化15】

(前記式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、前記で定義した通りである)
の化合物である。
【0056】
更に他の態様では、前記の正に帯電した残基は、化合物(2):
【化16】

である。
【0057】
本発明の幾つかの態様では、前記塩付加物は、
【化17】



から選択される。
【0058】
更なる態様では、前記認知疾患、障害または病態は、注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、覚醒障害、精神疲労状態、交代勤務睡眠障害、ナルコレプシー、閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、集中力不足、および集中不足(poor focus)またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0059】
更なる態様では、前記認知疾患、障害または病態は、学習障害、記憶障害、認知機能障害、アルツハイマー病を含む認知機能変化、尿毒症性および肝性脳障害を含む任意の種類の脳障害から選択される。
【0060】
更に他の態様では、前記認知疾患、障害または病態は、神経行動学的疾患、障害または病態である。
【0061】
他の態様では、前記神経行動学的疾患、障害または病態は、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、記憶障害、集中力不足、および集中不足(poor focus)から選択される。
【0062】
更なる態様では、前記認知疾患、障害または病態は、注意欠陥障害(ADD)もしくは多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、覚醒障害、精神疲労状態、交代勤務睡眠障害、ナルコレプシー、閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、集中力不足、集中不足(poor focus)またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0063】
他の態様では、前記認知機能が、一過性または長期学習障害、一過性または長期記憶障害、一過性または長期認知機能障害、一過性または長期認知機能変化、一過性または長期集中力障害、一過性または長期集中障害、一過性または長期覚醒障害、一過性または長期精神疲労状態、一過性または長期交代勤務睡眠障害、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0064】
更に他の態様では、前記被験者は、小児、青年、成人、または高齢者である。
【0065】
本発明の総ての態様において、前記塩付加物は、持続、遅延または制御放出投薬形態で処方される。
【0066】
本発明の更なる態様では、前記塩付加物は、即時またはバースト(burst)効果投薬形態で処方された塩付加物と組合せた持続、遅延または制御放出投薬形態で処方される。
【0067】
本発明の更なる態様では、前記塩付加物は、前記塩付加物0.1〜1000mg/kg体重/日まで、好ましくは前記塩付加物1〜400mg/kg体重を、単回用量(dose投与)またはその一部で送達するように処方される。他の態様では、前記塩付加物は、前記塩付加物100〜700mg/kg体重/日までを送達するように処方される。
【0068】
本発明の他の態様では、前記塩付加物は、少なくとも1種類の追加の薬学活性剤と共に処方される。
【0069】
本発明の更に他の態様では、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物が、被験者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防に使用するために提供される。
【0070】
もう一つの態様では、本発明は、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物であって、健康な被験者の認知機能の改善に使用するためのものを提供する。
【0071】
定義
便宜上、本明細書、実施例および追加態様で用いられる用語を、ここに集めている。特に断らない限り、本明細書で用いられる総ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術を有する者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0072】
「1つ(a)」および「1つ(an)」という品詞は、本明細書では、その品詞の文法的対象の1つまたは1つを上回る(すなわち、少なくとも1つ)を表すのに用いられる。例えば、「1つの要素」は、1つの要素または1つを上回る要素を意味する。
【0073】
「含む」という用語は、本明細書では、「含むが、それらに限定されない」という成句と互換的に用いられる。
【0074】
「または」という用語は、本明細書では、文脈が明らかに他のことを示していない限り、「および/または」という用語を意味しかつこれと互換的に用いられる。
【0075】
「のような」という用語は、本明細書では、「などこれらに限定されない」という成句を意味するのに用いられ、かつこれと互換的に用いられる。
【0076】
「予防的」または「治療的」処置は、本発明の組成物の1種類以上を被験者に投与することを指す。望ましくない病態(例えば、宿主動物の臨床的または他の望ましくない状態)の臨床的発現の前に投与するときには、その処置は予防的であり、すなわち、予防、すなわち望ましくない病態の発現からの被験者の保護に寄与し、一方、望ましくない病態の発現後に投与するときには、その処置は治療的である(すなわち、望ましくない病態またはそこから起こる副作用の進行を減少させ、改善しまたは予防しようとするものである)。
【0077】
「治療効果」という用語は、薬理活性物質または物質類によって引き起こされる動物、特に哺乳類、更に詳細にはヒトにおける局所的または全身的効果を指す。従って、この用語は、疾患の診断、治癒、鎮静、治療または予防、または動物またはヒトにおける望ましい肉体または精神的発現および病態の向上に使用することを目的とする任意の物質を意味する。「治療上有効量」という用語は、任意の治療に適用可能な合理的な利益/危険比で幾らかの所望な局所的または全身的効果を生じるこのような物質の量を意味する。ある態様では、化合物または組成物の治療上有効量は、その治療指数、溶解度などによって変化する。例えば、本発明のある種のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体処方物は、熟練した当業者が決定することができるように、選択された治療に適用可能な合理的利益/危険比を生じるのに十分な量で投与することができる。
【0078】
「有効量」という用語は、適当な用量および方式で被験者に投与するときに少なくとも1種類の所望な結果を生じる治療試薬の量を指す。
【0079】
本発明の方法によって治療を受ける「被験者(subject)」または「患者(patient)」は、ヒトまたはヒト以外の動物、好ましくは哺乳類を意味することがある。本明細書で用いられる「被験者」という用語は、健康な個体群または任意の認知問題を抱えている被験者を指すことがある。本発明で用いられる「患者」および「健康な患者」および「必要とする被験者」および「必要とする患者」という用語は、任意の形態のアルコール消費後のアルコールの影響を受けている被験者、アルコール中毒者(アルコール常習者)および禁酒者を除外する。
【0080】
「認知」または「認知機能」または「認知問題」または「認知障害」または「認知機能不全」または「認知疾患、障害または病態」などの用語は、本明細書において互換的に用いられることがあり、本明細書で用いられるように、注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、精神疲労状態、集中力不足、集中不足(poor focus)、並びに血流の変化、硬化症、アミロイド沈着、脳における神経伝達物質の変化、アンモニア蓄積のような代謝的変化、尿毒症性および肝性脳障害を含む任意の種類の脳障害、または任意の物質の水準変化による任意の種類の機能変調に関係した学習障害、記憶障害、アルツハイマー病を含む任意の認知機能変化に関連した任意の病態を含むがこれらに限定されない任意の認知機能を意味するものととらえることができる。
【0081】
これに関連して、認知機能障害は、とりわけ、脳卒中におけるような脳の全体または一部への血流変化、酸塩基バランス変化、電解質の変化、任意の代謝物、例えば、尿素またはアンモニアのレベルの変化(増加または減少)、アルツハイマー病またはパーキンソン病におけるような脳の任意の部分におけるアミロイドのような任意の基質の沈着、多発性硬化症または様々な種類のエリテマトーデスのような脳を冒す末梢または中枢免疫系の任意の部分における変化、任意のサイトカインまたはケモカインのレベルまたは機能の変化、脳に向かうもしくは脳を標的とするまたは間接的に脳を冒す(複数の)薬剤の(複数の)効果、神経伝達物質の変化、および脳における神経またはシナプスの任意の変化から生じる任意の病態を含むと言うことができる。
【0082】
「神経行動学的」または「神経行動学的機能」または「神経行動学的問題」または「神経行動学的障害」または「神経行動学的機能不全」などという用語は、本明細書では互換的に用いられることがあり、本明細書で用いられるように、注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害、集中力不足、集中不足(poor focus)、並びに学習障害、記憶障害と関連した任意の病態、または社会環境(家庭、共同体など)、教育環境(クラス、運動場など)における乏しい動作などに関連しまたは結合した任意の症状を含むがそれらに限定されない任意の認知機能を意味するものととらえることができる。
【0083】
本発明は、既知のサブタイプのADHD、すなわち
(i)主として多動−衝動的:ほとんどの症状は多動−衝動性カテゴリーに含まれ、幾つかの不注意の症状が見られるが、それでもなお不注意はある程度まで見られることがある、
(ii)主として不注意:症状の大半は不注意カテゴリーに含まれ、多動−衝動性の症状は僅かに過ぎないが、それでもなお多動−衝動性はある程度まで見られることがある。このサブタイプの子供達は行動で表現したがらずまたは他の子供達と仲良くやっていくことが困難である。彼らは静かに座っていることがあるが、彼らがしていることには注意を払っていない。従って、その子供は見落とされることがあり、両親も教師もADHDの症状に気づかないことがある、
(iii)多動−衝動的と不注意の組み合わせ:不注意の症状幾つかおよび多動−衝動性の症状の幾つかが見られる
のいずれかに関する。
【0084】
不注意型の症状としては、
被験者は、気が散りやすく、詳細を見落とし、物事を忘れ、また1つの行動から別の行動へ頻繁に変えることがあり、
被験者は、1つの物事に集中することが困難なことがあり、
被験者は、何か楽しいことを行わない限り、数分後には1つのタスクに飽きてしまうことがあり、
被験者は、1つのタスクをまとめ上げて完了しまたは何か新しいことを学ぶことに対して注意を集中することが困難なことがあり、
被験者は、宿題を完了しまたは宿題に入ることが困難なことがあり、タスクまたは行動を完了するのに必要なもの(例えば、鉛筆、玩具、宿題)をなくすることが多く、
被験者は、話しかけられても聞いているようにみえず、
被験者は、空想に耽ったり、混乱し易く、動きが鈍いことがあり、
被験者は、他の人々と同様に情報を速やかにかつ正確に処理することが困難なことがあり、
被験者は、指示に従おうと懸命になることがある
ことを挙げることができる。
【0085】
主として、多動−衝動性型の症状としては、
被験者は、座席でそわそわしたりもじもじしたりすることがあり、
被験者は、絶え間なく話すことがあり、
被験者は、駆け回ったり、目につく何かおよびあらゆるものに触れたりまたはこれと遊ぶことがあり、
被験者は、食事、授業やお話の時間に静かに座っていることが困難なことがあり、
被験者は、常に動いていることがあり、
被験者は、静かにタスクまたは行動を行うことが困難なことがある
ことが挙げられる。
【0086】
主な衝動性の追加発現としては、
被験者は、非常に気短なことがあり、
被験者は、不適切なコメントを口走ったり、感情を自由に示したり、結果を考慮することなく行動したりすることがあり、
被験者は、彼らが望んでいることを待ったりまたはゲームで自分の順番を待ったりすることが困難なことがある
ことを挙げることができる。
【0087】
本明細書で用いられる「塩付加物」という用語は、2種類以上の別個のイオンの直接付加の塩生成物であって、塩付加物の全電荷が0であるものを包含することを意味する。ある態様では、塩付加物は、単一の正電荷官能基を有する1個の正に帯電した残基(すなわち、正に帯電した残基が+1の正味電荷を有する)と、単一の負電荷官能基を有する1個の負に帯電した残基(すなわち、負に帯電した残基が−1の正味電荷を有する)とを含んでなる。ある態様では、塩付加物は、2個の正に帯電した官能基であって同一または異なっていてもよいものを有する1個の正に帯電した残基(すなわち、正に帯電した残基が+2の正味電荷を有する)と、2個の負に帯電した残基であって、同一または異なっていてもよくかつそれぞれが単一の負に帯電した官能基を有するもの(すなわち、それぞれの負に帯電した残基は−1の正味電荷を有する)とを含んでなる。ある態様では、塩付加物は、2個の正に帯電した残基であって、同一または異なっていてもよく、それぞれ1個の正に帯電した官能基を有するもの(すなわち、それぞれの正に帯電した残基が+1の正味電荷を有する)と、1個の負に帯電した残基であって、同一または異なっている2個の負に帯電した官能基を有するもの(すなわち、負に帯電した残基が−2の正味電荷を有する)とを含んでなる。ある態様では、塩付加物は、+nの正味電荷を有する正に帯電した残基(1個以上の正に帯電した官能基であって、同一または異なっていてもよいものから生じる)と、−nの正味電荷を有する負に帯電した残基(1個以上の負に帯電した官能基であって、同一または異なっていてもよいものから生じる)とを含んでなる(但し、nは1、2、3、4、5または6に等しいことがある整数である)。
【0088】
本明細書で用いられる本発明の「塩付加物の正に帯電した残基」は、ピリドキシンまたはその任意の誘導体の対応する酸である。ある態様では、正に帯電した残基の正電荷は、ピリドキシン(例えば、化合物(2)におけるような)または任意のその誘導体(例えば、式(I)の化合物のような)のプロトン化した塩基性窒素原子から生じる。ある態様では、正に帯電したピリドキシン誘導体は、例えば−NH、−CHNH、−NH、−NHR(上記式中、それぞれのRは独立してC−Cアルキルである)のような正に帯電した官能基で置換されており、幾つかの態様では、ピリジン環における正に帯電しプロトン化した塩基性芳香族窒素原子に加えて存在することがある。
【0089】
本明細書で用いられる、本発明の塩付加物の「カルボキシル化した5〜7員のラクタム環」は、負に帯電したカルボキシレート基(−COO)で置換したγ−ラクタム、δ−ラクタムまたはε−ラクタム環を包含することを意味する。ある態様では、前記カルボキシレート基は、アミド窒素に隣接するラクタム環炭素原子で置換されている。もう一つの態様では、前記カルボキシル化したラクタム環は、L−2−ピロリドン−5−カルボキシレート(化合物(1))である。他の態様では、前記カルボキシレート基は、ラクタム環の任意の位置で置換されている。ある態様では、前記カルボキシル化した5〜7員のラクタム環は、ラクタム環の任意の位置で別の置換基によって置換されていてもよい。本明細書で用いられる「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0090】
本明細書で用いられている「C−Cアルキル」という用語は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する飽和の分岐状または直鎖状の炭化水素鎖を表す。典型的なCアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書で用いられる「C−Cアルケニル」という用語は、2、3、4、5または6個の炭素原子と、鎖の任意の2個の炭素の間に位置した少なくとも1個の二重結合とを有する分岐状または直鎖状の炭化水素を表す。このような基の例としては、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、1,3−ブタジエニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書で用いられる「C−Cアルキニル」という用語は、2、3、4、5または6個の炭素原子と、鎖の任意の2個の炭素の間に位置した少なくとも1個の三重結合とを有する分岐状または直鎖状または直鎖状の炭化水素を表す。このような基の例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書で用いられる「C−Cアルコキシ」という用語は、−O−C1−6アルキル基(前記式中、C1−6アルキルは、前記で定義した通りである)を指す。典型的な例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ、イソヘキソキシなどである。
【0094】
本明細書で用いられる「C−Cアルキルチオ」という用語は、−S−C1−6アルキル(前記式中、Cアルキルは前記で定義した通りである)を指す。典型的な例は、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、n−プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオなどである。
【0095】
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という用語は、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する単環性の炭素環基を表すが、N、Oおよび/またはSのようなヘテロ原子を含んでいてもよい。典型的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。
【0096】
本明細書で用いられる「アリール」という用語は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニルなどの炭素芳香環族系を含むものと解釈される。アリールは、上記の炭素環系の部分水素化物誘導体を含むものとも解釈される。このような部分水素化物誘導体の非制限的例は、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、1,4−ジヒドロナフチルなどである。
【0097】
本明細書で用いられる「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個の環が芳香族環であり、少なくとも1個の原子が置換または非置換の非炭素原子であり、非炭素原子が例えば窒素、硫黄または酸素原子であってもよい環系を指す。
【0098】
本明細書で用いられる「C−Cアルコキシカルボニル」という用語は、−C(O)O−C1−6アルキル基(前記式中、C1−6アルキルは、前記で定義した通りである)を指す。
【0099】
本明細書で用いられる「C−Cアルコキシ」および「C−Cアルキルチオ」という用語は、それぞれ基C1−6−O−およびC1−6−S−(前記式中、C1−6アルキルは、前記で定義した通りである)を指す。
【0100】
本明細書で用いられる「ヒドロキシル」という用語は、基−OHを指す。本明細書で用いられる「チオール」という用語は、基−SHを指す。本明細書で用いられる「ホルミル」という用語は、基−COHを指す。本明細書で用いられる「シアノ」という用語は、基−CNを指す。本明細書で用いられる「ニトロ」という用語は、基−NOを指す。
【0101】
本明細書で用いられる「アミン」という用語は、−NH、または任意の第一(−NHR)、第二(−NHR)、第三(−NR)または第四アミン(−NR)(前記式中、それぞれのRは同一または異なっていてもよく、本明細書において前記で定義されているように、独立してH、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニルから選択される)を指す。
【0102】
本明細書で用いられる「C−Cカルボキシアルキル」という用語は、基−CO−(C−Cアルキル)(前記式中、C1−6アルキルは前記で定義した通りである)を指す。
【0103】
本明細書で用いられる「アミノカルボニル」という用語は、基−CONR(前記式中、それぞれの基Rは、本明細書において前記で定義されているように、独立してH、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニルから選択される)を指す。
【0104】
本明細書で用いられる「アルコキシカルボニルアルキル」という用語は、基−OCO−(C−Cアルキル)(前記式中、C1−6アルキルは前記で定義した通りである)を指す。
【0105】
本明細書で用いられる「アミジノ」という用語は、基−C(=NH)−NHを指す。
【0106】
本明細書で用いられる「場合によっては置換されている」という用語は、未置換であるかまたは指示された残基が1個以上の指定された置換基によって置換されていることを意味する。指示された残基が1個以上の置換基によって置換されているときには、これらの置換基は同一または異なっているものであってもよい。
【0107】
このような置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメート)、アルコキシル、アルキルチオ、アシルオキシ、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラールキル、またはアリールまたはヘテロアリール残基が挙げられる。
【0108】
本発明の塩付加物の残基は、それぞれ少なくとも1個の不斉中心を含んでいることがあり、従って鏡像異性体、ジアステレオマーなどの任意の立体異性体、またはラセミ混合物などに限定されないそれらの任意の混合物で存在することがありかつ単離することができることを理解すべきである。本発明は、任意の可能な立体異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー)、本発明の塩付加物の個々の残基のいずれかのラセミ混合物などこれらに限定されないそれらの任意の混合物を包含する。本発明の塩付加物のそれぞれの残基の調製のため本明細書に記載された方法が立体異性体の混合物を生じるときには、これらの異性体は分取クロマトグラフィーのような通常の手法によって分離することができる。本発明の塩付加物の残基は、立体異性体のラセミ混合物などこれらに限定されないそれらの可能な立体異性体の任意の混合物において調製することができ、または個々の立体異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー)は、エナンチオ特異的合成によってまたはラセミ体のキラールクロマトグラフィー分離によって調製することができる。アミノ酸に関するときには、本発明は、天然および非天然アミノ酸、またはそれらの任意の誘導体を包含するものと理解すべきである。
【0109】
本明細書で用いられる「非天然アミノ酸」という用語は、本明細書では、L並びにD−配置を有するタンパク質の構成要素であるアミノ酸中には存在しないアミノ酸またはそれらの任意の誘導体を指し、一方、「天然アミノ酸」は、L並びにD−配置を有するタンパク質の構成要素であるアミノ酸またはそれらの任意の誘導体を指す。
【0110】
表1に、本発明の塩付加物の幾つかの例を示す。
【0111】
【表1】

【0112】
本明細書において、「含んでなる(comprise)」という用語、または「含んでなる(comprises)」または「含んでなる(comprising)」のような変化は、規定された完全体(integer)または完全体の群を包含するが、任意の他の完全体または完全体の群を除外するものではないことが理解されるであろう。
【0113】
「生物学的に利用可能な」という用語は、少なくとも幾らかの量の特定化合物が体循環に存在することを意味する。経口バイオアベイラビリティーの正式の計算は、F値(「臨床薬物動態学の基礎(Fundamentals of Clinical Pharmacokinetics)」, John G. Wegner, Drug Intelligence Publications;ハミルトン,イリノイ, 1975)によって記載されている。F値は、静脈内投与後の体循環(例えば、血漿)における親薬剤の濃度と、非静脈内経路(例えば、経口)による投与後の体循環における親薬剤の濃度の比とから誘導される。従って、本発明の範囲内における経口バイオアベイラビリティーは、静脈内投与と比較して経口投与後の血漿中に検出可能な親薬剤の量の比またはF値を意図するものである。
【0114】
「治療する」または「治療」という用語は、ヒトなどの哺乳類における病態、疾患または障害の少なくとも1つの症状の軽減、改善、救済もしくは緩和、または病態、疾患または障害に関連した確認できる測定値の改良を指す。本明細書で用いられる治療は、健康な個体群の治療も包含する。
【0115】
メタドキシンまたはメタドキシン誘導体に関する「許容可能な誘導体」という用語は、メタドキシンの任意の塩、接合体、エステル、複合体または他の化学的誘導体もしくはメタドキシンを含んでなる残基のいずれかであって、被験者に投与したときにメタドキシンまたはその代謝物もしくは官能性残基、または測定可能な活性を(直接または間接的に)提供することができるものを指す。「生理学的に適合性のメタドキシン誘導体」という用語は、本明細書では「許容可能な誘導体」という用語と互換的に用いることができ、メタドキシンの官能、活性、薬学上許容可能な誘導体を指す。
【0116】
「賦形剤」という用語は、処方物中の活性成分のキャリアとして用いられる不活性部分を指す。
【0117】
「制御放出」という用語は、薬剤を制御された速度で長時間にわたって送達しかつ所望な薬剤レベルプロフィールが得られるようにデザインされている任意の処方物を指す。
【0118】
「持続放出」という用語は、その通常の意味で用いられ、活性材料を長時間にわたって徐々に放出し、ある態様では、長時間にわたって実質的に一定の血中レベルを生じることもできる、すなわち制御放出を生じることもできる処方物を指す。
【0119】
「即時放出」という用語は、その通常の意味で用いられ、投与により活性材料を遅延または制御なしに放出する処方物を指す。
【0120】
物質の「半減期」という用語は、物質がその薬理学的、生理学的または他の活性の半分を失うのにかかる時間である。生物学的半減期は、重要な薬物動態パラメーターであり、通常はt1/2という略号によって表される。
【0121】
「非侵襲的」という用語は、皮膚を穿刺しない治療の方式を指す。
【0122】
「非長期投与」という用語は、本明細書では「急性投与」という用語と互換的に用いることができ、不定期的に測定したまたは測定していない量または一部の薬剤を被験者に与えることを指す。非長期投与は、単一用量投与または複数用量投与であってもよく、場合によっては時間外に投与してもよい。典型的ではあるが常のことではないが、非長期投与は、非慢性的病態を治療しまたは予防するため投与される。ある種の慢性的病態は、本明細書に記載のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体組成物の非長期投与が役立つこともある。
【0123】
「長期投与」という用語は、測定した量の薬剤を定期的に被験者に投与することを指す。幾つかの態様では、長期投与は、1種類以上の慢性的病態、問題または疾患を治療しまたは予防することである。慢性疾患は、下記の特徴の1つ以上を有し、すなわち永続的であり、後遺障害を残し、不可逆的な病理学的変化によって引き起こされ、リハビリテーションのためには患者に特殊な訓練が必要であり、または長期間の管理、観察または介護を必要とすることが予測されることがある。
【0124】
「単一用量投与」という用語は、1回に投与される測定した量の薬剤を投与することを指す。これは、個人の必要によって不規則的に非慢性的病態を治療するために投与される。
【0125】
「tmax」という用語は、ピーク濃度までの時間を指す。単一用量投与後に最大濃度となる時間は、下記式
【数1】

(前記式中、λαおよびλは、それぞれ見かけの吸収および排出(elimination)速度定数である)
によって計算される。
【0126】
メタドキシンまたはメタドキシン誘導体組成物を用いる治療および予防の方法
ある態様では、本発明は、健康な患者または注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、精神疲労状態、集中力不足および集中不足(poor focus)に罹っている患者における認知機能および/または行動の改善方法であって、メタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。ある態様では、この方法は、メタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物の非長期投与を含んでなる。
【0127】
ある態様では、本発明は、被験者の血液中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の平均tmaxを増加させて本明細書で定義された認知病態を改善または治療する方法であって、メタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物、特に、全体または一部が持続または制御放出のために処方されたメタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。ある種のこのような態様では、この方法は、全体または一部が持続または制御放出のために処方されたメタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物の非長期投与を含んでなる。本発明のある態様では、被験者の血液中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の平均tmaxは、50%、100%、150%、200%、300%、400%、500%または500%以上増加する。
【0128】
ある態様では、本出願明細書は、被験者の血液または血清中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の半減期(t1/2)を増加させて本明細書で定義された認知病態を改善または治療する方法であって、メタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物、特に、全体または一部が持続または制御放出のために処方されたメタドキシンまたはその誘導体を含んでなり、場合によっては即時放出のために処方されたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の一部を含む組成物を投与することを含んでなる方法を提供する。本発明のある態様では、被験者の血液または血清中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体のt1/2は、50%、100%、150%、200%、300%、400%、500%または500%以上増加する。
【0129】
本発明のある上記方法では、メタドキシンまたはその誘導体は、被験者に投与したときに即時放出するように処方することができる。本発明のある上記方法では、メタドキシンまたはその誘導体は、持続および/または制御放出のために処方されていてもよく、場合によっては、被験者に投与したときに即時放出および持続および/または制御放出する特性の両方ともを有するように処方されていてもよい。ある態様では、メタドキシンまたはその誘導体は、非長期投与のために処方される。本発明によって用いられるメタドキシンまたはメタドキシン誘導体処方を、更に詳細に説明する。
【0130】
メタドキシンまたはメタドキシン誘導体処方物および投与方式
ある態様では、本発明は、本明細書で定義された認知病態を改善または治療するために、被験者に投与したときに持続および/または制御放出するように処方されたメタドキシンまたはその誘導体を含んでなる組成物を提供する。
【0131】
ある態様では、本発明は、本明細書で定義された認知病態を改善または治療するために、メタドキシンまたはその誘導体であって、被験者に投与したときに、メタドキシンまたは誘導体の一部が持続および/または制御放出するように処方され、かつ、メタドキシンまたは誘導体の一部が即時放出するように処方されているものを含んでなる組成物を提供する。
【0132】
ある態様では、活性成分の有効血清レベルは、メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の投与後の約10〜約20、30、40、50、60または90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間以内に達成される。ある態様では、前記被験者における活性成分の有効血清レベルは、メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の投与後の約5〜約20、30、40、50、60または90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間以内に達成される。ある態様では、活性成分の有効血清レベルは、メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の投与後の約20〜約20、30、40、50、60または90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間以内に達成される。ある態様では、活性成分の有効血清レベルは、約5、10、15、20、30、40、50、60または90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間以内に達成される。
【0133】
本発明者らは、腸(消化管を介する)および/または非経口(消化管以外の経路)経路に基づいたメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の投与の革新的方法を開発した(WO2009/004629号)。これらの方法は、キャリア、例えば、活性成分を封入する適当な界面活性剤/補助界面活性剤組成物またはマイクロ/ナノ粒子(例えば、リポソームまたはナノリポソーム)、または目的の送達系のための他の添加剤または賦形剤の細心の選択に基づく所望特性を有する送達系の合理的デザインを提供する。
【0134】
腸送達系は、経口投与(錠剤、サシェ、ロゼンジ、カプセル、ゼラチンカプセル(gelcaps)、点滴薬、または他の味のよい形態)または直腸投与(座薬または(ミニ)浣腸形態)用にデザインしてもよい。
【0135】
更に、目的とする送達系は、液状形態、例えば、点滴溶液、シロップとしてもよい。更に、目的とする送達系は、飲料または食料品の形態であってもよい。従って、本発明によって用いられる(複数の)活性成分は、飲料、特にジュース、ネクター、水、発泡水および他の発泡性飲料、シェーク、ミルクシェークおよび他のミルクベースの飲料などのソフトドリンクで構成されていてもよい。液体製剤は、水または発泡水で希釈するための濃縮シロップの形態であってもよい。あるいは、(複数の)活性成分は、スナックバー、健康バー、ビスケット、クッキー、砂糖菓子、菓子製品、アイスクリーム、アイスキャンデーなどの食料品で構成されていてもよい。
【0136】
更にまた、送達系は、生理活性ピリドキシン誘導体、特にピリドキソールL,2−ピロリドン−5−カルボキシレート(メタドキシン)を含んでなる食料または飲料製品であってもよい。ある態様では、本発明の食料または飲料製品の消費は、その消費後の約10〜約40〜60分以内に活性成分の血清レベルを達成することがある。例としては、砂糖菓子、チョコレート、キャンデーおよびキャンデーバー、エネルギーバー、アイスクリーム、ペストリーなどであってもよい。
【0137】
投与の非経口的方法としては、皮下、トランスフェラル(transferal)(完全な皮膚を介する拡散)、経粘膜(粘膜を介する拡散)、舌下、バッカル投与(歯肉線縁近くの頬を通る吸収)、または吸入による投与が挙げられる。ある態様では、本発明によって用いられる組成物は、侵襲的様式の投与によっては投与されない(すなわち、非侵襲的である)。ある態様では、メタドキシンまたはメタドキシン誘導体組成物は、静脈内注射によっては投与されない。
【0138】
ある態様では、本発明によって用いられる組成物は、微結晶粉末または噴霧化に適した溶液として、膣内または直腸内投与にはペッサリー、座薬、クリームまたはフォームとして送達される。好ましい処方物は、経口投与用の処方物である。もう一つの好ましい処方物は、局所投与用のものである。もう一つの好ましい処方物は、経粘膜投与、舌下、バッカル(歯肉線縁近くの頬を通る吸収)投与、吸入による投与または目への投与、例えば、点滴薬用のものである。
【0139】
医療使用でのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の投与には、安全かつ効率的送達系が必要である。本発明は、特殊な物理化学的特徴、特に直接吸収による様々な物質の非侵襲的手段による安全な送達のための送達系を提供し、結果として副作用が回避される。この送達系は、その独特な物理化学的特徴に基づきメタドキシンまたはメタドキシン誘導体吸収の効率および量を高め、これにより生物活性形態で被験者に送達される活性物質の濃度または量を低くすることができる。本発明の送達系は、活性物質の組織への直接接近を規定し、従って投与される被験者にメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の直接的またはほぼ直接的効果を提供する。
【0140】
従って、ある態様では、本発明は、活性成分として前記生理活性ピリドキシンを適当なキャリア中に含んでなる生理活性ピリドキシン、特にピリドキソールL,2−ピロリドン−5−カルボキシレート(メタドキシン)または生理学的に許容可能なその誘導体の投与を改善するための非侵襲的薬学送達系を用いる。ある態様では、活性成分の血清レベルは、投与後の約10〜約40〜60分以内に達成される。
【0141】
もう一つの態様では、本発明は、認知行動の改善を必要とする被験者において用いるための、生理活性ピリドキシン誘導体、特にピリドキソールL,2−ピロリドン−5−カルボキシレート(メタドキシン)の投与を改善するための非侵襲的薬学送達系であって、活性成分として前記ピリドキシン誘導体を適当なキャリア中に含んでなるものを用いる。ある態様では、前記活性成分の血清レベルは、投与後の約10〜約40〜60分以内に達成される。
【0142】
ある態様では、本発明によって用いられる薬剤送達系は、経口、鼻、目、直腸、皮下、トランスフェラル(transferal)、経粘膜、舌下、バッカルまたは吸入投与用にデザインしてもよい。薬剤送達系は、活性物質を制御放出様式で提供してもよい。ある態様では、本発明の薬剤送達系は、少なくとも1種類の追加の薬学活性剤含んでいてもよい。
【0143】
本発明によって用いられる送達系は、一般的には、緩衝剤、そのモル浸透圧濃度を調製する薬剤、および場合によっては1種類以上の当該技術分野で知られているような薬学上許容可能なキャリア、賦形剤および/または添加剤を含んでいてもよい。補助的な薬学上許容可能な活性成分を、組成物に組込むこともできる。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適当な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であることができる。適当な流動性は、例えば、分散液の場合には必要な粒度を保持することによってレシチンのようなコーティングの使用によって、および界面活性剤の使用によって保持することができる。
【0144】
本明細書で用いられる「薬学上許容可能なキャリア」という用語は、任意のおよび総ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌薬などを含む。このような媒体および薬剤の薬学活性物質のための使用は、当該技術分野で周知である。
【0145】
任意の通常の媒質または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が考えられる。活性薬剤は、薬学上許容可能な経路によっておよび任意の薬学上許容可能な投薬形態で送達することができる。
【0146】
経口形態としては、錠剤、カプセル、ピル、サシェ、ロゼンジ、点滴薬、粉末、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁液、シロップおよびエマルションが挙げられるが、これらに限定されない。また、経口急速放出、時間制御放出、および遅延放出医薬投薬形態も挙げられる。活性薬剤成分は、単一投薬形態、または一緒にもしくは独立して投与される分離投薬形態で投与することができる。活性薬剤成分は、適当な薬学希釈剤、賦形剤またはキャリア(本明細書では集合的に「キャリア」と呼ぶ)、目的の投与形態に関して適当に選択した材料と混合して投与することができる。
【0147】
送達系が経口投与用でありかつ錠剤またはカプセルなどの形態であるときには、活性薬剤成分は、ラクトース、澱粉、スクロース、グルコース、修飾糖、修飾澱粉、メチルセルロースおよびその誘導体、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、および他の還元および非還元糖、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムなどのような毒性のない薬学上許容可能な不活性キャリアと組み合わせることができる。液体形態での経口投与には、活性薬剤成分は、エタノール、グリセロール、水などの毒性のない薬学上許容可能な不活性キャリアと組み合わせることができる。所望または必要な場合には、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色料および芳香剤を混合物に組込むこともできる。酸化防止剤、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸、メタ重亜硫酸カルシウム、ハイドロキノン、および7−ヒドロキシクマリンのような安定剤を加えて、投薬形態を安定化することもできる。他の適当な化合物としては、ゼラチン、甘味料、アラビアゴム、トラガカントゴムのような天然および合成ゴム、またはアルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、グリコール、ワックスなどを挙げることができる。
【0148】
これらの医薬組成物で用いることができる追加の適当な薬学上許容可能なキャリアとしては、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和の植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース基剤の物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂)が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様では、薬学上許容可能なキャリアはステアリン酸マグネシウムである。一般に許容されかつ用いられる追加的な薬学賦形剤は、例えば、「レミントンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Gennaro, A.監修, Mack Pub., 1990)に記載されている。
【0149】
非経口投与には、ゴマもしくは落花生油のような適当な油、または水性プロピレングリコールの溶液、並びに相当する水溶性塩の滅菌水溶液を用いることができる。このような水溶液は、必要ならば適当に緩衝させてもよく、液体希釈剤を最初に十分な塩水またはグルコースで等張にすることができる。これらの水溶液は、特に静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内注射用に適している。これに関して、用いられる滅菌水性媒質は、いずれも当業者に周知の標準的手法によって容易に得ることができる。所定量の活性成分を用いて様々な医薬組成物を調製する方法は、当業者に知られているかまたは本開示内容を考慮すれば明らかになるであろう。
【0150】
ヒト血清中のメタドキシンの半減期は極めて短い。Lu Yuan et al.(Chin. Med. J. 2007 120(2)160-168)は、平均半減期が約0.8時間であることを示した。活性残基の血清レベルを長くする方法は、持続放出処方に材料を投与することによる。メタドキシンは、水および様々な生物学的流体に自由に溶解するので、その放出を持続させてその吸収時間を長くすることは困難である。従って、持続放出を達成できるとは予想されないことであった。メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の制御放出投薬形態は、生物学的流体中で活性成分のあらかじめ測定した逐次放出(gradual release)に基づき、長時間にわたって血漿レベルの変動を小さくした持続作用を生じることができる。
【0151】
ある態様では、本発明によって用いられる送達系は、制御放出処方物で投与してもよい。ある態様では、投与の方法は、被験者の病態および要求を評価した後に主治医または他の当業者によって決定されうる。本発明の方法の一態様は、持続放出形態で本明細書に記載の治療化合物を投与することである。Langer, Science 249(4976):1527-33(1990)に記載のような、当業者に知られている任意の制御または持続放出は、本発明の組成物および方法を用いてもよい。このような方法は、持続放出組成物、座薬またはコーティングを施した移植可能な医療デバイスを、本発明の組成物の治療上有効用量がこのような方法の被験者に継続的に送達されるように投与することを含んでなる。持続放出は、その目的用にデザインされて処方されたパッチを用いて達成することもできる。本発明の組成物は、薬剤が長時間にわたって持続放出できるようにするカプセルによって送達してもよい。制御または持続放出組成物としては、親油性デポー(depots)(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の処方物が挙げられる。また、ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングした粒状組成物も、本発明に包含される。持続放出方式またはデバイス、または任意の局所処方物は、更に組成物を安定化させまたは皮膚または粘膜のような生理学的バリヤーを透過させるための組成物を含むことがある。例示的な追加成分は、任意の生理学的に許容可能な洗浄剤または例えばジメチルスルホキシド(DMSO)のような溶媒を含むことがある。
【0152】
本発明の総ての態様において、本発明の方法および使用は、単一用量として処方された本発明で定義されているような塩付加物を含んでなる組成物を用いてもよい。前記の単一用量処方物は、即時放出処方物、バースト(burst)処方物、長時間放出処方物、持続放出処方物または当業者に知られている任意の他の制御放出処方物であってもよい。
【0153】
本発明の方法および使用の他の態様では、本発明で定義された塩付加物を含んでなる組成物は、組み合わせ投薬処方物であってもよく、ここで、様々な種類の処方物、すなわち、即時放出処方物、バースト(burst)処方物、長時間放出処方物、持続放出処方物または当業者に知られている任意の他の制御放出処方物の任意の組み合わせであって、単一用量で与えられるもの、または個別、随伴もしくは逐次的に与えられる個別用量で与えられるものであって個別投薬の投与の間の時間のギャップが被験者の病態および疾患もしくは障害の重篤度、または前記被験者の身体的病態に基づいて画定されるものは、被験者に投与される。
【0154】
幾つかの態様では、本発明の方法で用いられる組成物は、組み合わせ投薬形態として処方され、本発明によって定義される塩付加物の少なくとも1つの投薬形態が即時放出形態であり、かつ、本発明によって定義される塩付加物の少なくとも1つの投薬形態(即時放出処方物に処方された塩付加物と同一または異なっている)が制御(遅延および/または持続)放出処方物として処方されているものである。他の態様では、前記の少なくとも1個の即時放出処方物と、少なくとも1個の制御放出処方物とで構成されている本発明によって定義される塩付加物の重量比は、1:1、1:2、2:1、3:2、2:3、1:3、3:1、4:1、1:4、5:2、2:5、1:5、5:1となってもよい。本発明の方法または使用においてこのような組み合わせ投薬形態を用いるときには、前記の塩付加物の前記少なくとも1個の即時放出形態と、少なくとも1個の制御放出形態とは、被験者に個別、随伴、逐次、同時、連続的などに投与してもよい。幾つかの態様では、前記の少なくとも1個の即時放出形態は、最初に投与される。他の態様では、前記の少なくとも1個の制御放出処方物は、最初に投与される。
【0155】
ある態様では、本発明の組成物におけるメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12時間の期間にわたって持続または制御放出するように処方されていてもよい。ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12時間の期間にわたって持続または制御放出するように処方されていてもよい。ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、0.5、1、2、3または4時間と、5、6、7、8、9、10、11または12時間との間の期間にわたって持続または制御放出するように処方されていてもよい。ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、約5、6、7または8時間と、約9、10、11または12時間との間の期間にわたって持続または制御放出するように処方されていてもよい。
【0156】
ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、即時、迅速またはバースト(burst)放出形態としてもよい。
【0157】
ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、全メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、99.5または100%までを約0.5、1、2、3、4、5、6、7または8時間で放出するように処方されていてもよい。ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、全メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、99.5または100%以上を約0.5、1、2、3、4、5、6、7または8時間で放出するように処方されていてもよい。
【0158】
ある態様では、本発明によって用いられる組成物中のメタドキシンまたはメタドキシン誘導体は、持続または遅延放出と、即時または迅速放出形態との組み合わせとしてもよい。ある態様では、持続または遅延放出メタドキシンまたはメタドキシン誘導体と、即時または迅速放出メタドキシンまたはメタドキシン誘導体との相対比は、例えば、1:99、5:95、10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、80:20、85:15、90:10、95:5または99:1である。
【0159】
ある態様では、ポリマー性材料を用いて、メタドキシンまたはメタドキシン誘導体の放出を持続または制御する。ある態様では、用いられるポリマー性材料の種類および量は、本発明の生成物からのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の放出速度に大きな影響を及ぼす。ポリマーの例としては、疎水性および親水性ポリマーの両方が挙げられる。疎水性ポリマーの例としては、エチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、グリセロールパルミトステアレートのような脂肪、ビーズワックス、グリコワックス、ヒマシ硬化油、カルナウバワックス(carnaubawax)、グリセロールモノステアレートまたはステアリルアルコール、疎水性ポリアクリルアミド誘導体および疎水性メタクリル酸誘導体、並びにこれらのポリマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。親水性ポリマーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシエチルメチル−セルロースポリビニルアルコールのような親水性セルロース誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、並びにこれらのポリマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。更に、1種類以上の疎水性ポリマーと、1種類以上の親水性ポリマーとの任意の混合物を、場合によっては用いることができる。
【0160】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、FMC BioPolymer製の「アビセル(Avicel)PH 101」のような微結晶セルロースである。
【0161】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、信越化学工業株式会社製の「メトロース(Metholose)」のようなヒドロキシプロピルメチル−セルロースである。
【0162】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、The Dow Chemical Company製の「エトセル(Ethocel)(商標)」のようなエチルセルロースである。
【0163】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、Rohm GmbH製の「ユードラジット(Eudragit)RS(商標)」のようなアクリルポリマーである。
【0164】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、Degussa製の「アエロジル(Aerosil(商標))のようなコロイド状二酸化ケイ素である。
【0165】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、BASF製の「コリコート(Kollicoat)SR」のようなポリ(ビニルアセテート)である。
【0166】
ある態様では、本発明の組成物で用いられるポリマー材料または本発明によって用いられるポリマー材料は、Delasco Dermatologic Lab & Supply, Inc.製の「デューロ−タク(Duro−Tak)」のような酢酸エチルと酢酸ビニルとの溶液である。
【0167】
ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、式1を含んでなるかまたは式1から本質的になる。式1は、100〜3000mgのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体と、5〜20,000mgのメトロース(Metholose)とを含んでなるかまたはこれらから本質的になる。
【0168】
ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、式2を含んでなるかまたは式2から本質的になる。式2は、100〜3000mgのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体と、5〜7000mgのエトセル(Ethocel)E10(商標)とを含んでなるかまたはこれらから本質的になる。
【0169】
ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、式3を含んでなるかまたは式3から本質的になる。式3は、100〜3000mgのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体と、5〜20,000mgのユードラジット(Eudragit)RS(商標)とを含んでなるかまたはこれらから本質的になる。
【0170】
ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、約250、300、400、500、600、700、800または900mgから約1000、1500、2000、2500または3000mgまでのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体を含んでなるかまたはこれらから本質的になる。ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、約5、100、500または1000mgから約2000、4000、10,000、15,000または20,000mgまでのアビセル(Avicel)PH 101(商標)を含んでなるかまたはこれらから本質的になる。ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、約25、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550または600mgから約650、700、750、800、850、900、950、1000、5000、10,000、15,000または20,000mgまでのポリマー材料を含んでなるかまたはこれらから本質的になる。ある態様では、このポリマー材料は、メトロース(Metholose)、エトセル(Ethocel)E10(商標)またはユードラジット(Eudragit)RS(商標)である。ある態様では、メトロース(Metholose)は、処方物の1〜90%、好ましくは5〜70%であるかまたはこれから本質的になる。ある態様では、エトセル(Ethocel)(商標)は、処方物の1〜30%、好ましくは2〜20%であるかまたはこれから本質的になる。ある態様では、ユードラジット(Eudragit)(商標)は、処方物1〜90%、好ましくは5〜70%であるかまたはこれから本質的になる。
【0171】
ある態様では、本発明の送達系または本発明によって用いられる送達系は、送達デバイスを含んでなる。ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、浸透圧ポンプのような制御速度での浸透圧工程によって送達される。このシステムは、浸透圧活性剤に速度制御半透膜をコーティングすることによって構築してもよい。この膜は、薬剤を送達する臨界サイズの開口部を含んでいてもよい。水性流体と接触した後の投薬形態は、膜の流体透過性とコア処方物の浸透圧とによって決定される速度で水を吸収する。この水の浸透圧吸収により、コア内部に活性材料の飽和溶液が形成され、膜の送達開口部から制御された速度で分配される。
【0172】
ある態様では、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、生物分解性微粒子を用いて送達される。ある態様では、微粒子を調製するためのシステムは、溶解したポリマーを含む揮発性溶媒から構成された有機相からなり、材料はカプセル化され、水性相中に乳化されている。ある態様では、微粒子マトリックスに用いることができる生物分解性ポリマーは、ポリアクリル酸(PLA)、または乳酸とグリコール酸とのポリマー(PLAGA)を含んでなる。PLAGAポリマーは、加水分解的に経時的にそのモノマー成分に分解し、これらの成分は自然代謝によって体内から容易に除去される。
【0173】
本発明の製剤または本発明によって用いられる製剤は、吸収増進剤および他の任意成分を含んでいてもよい。吸収増進剤の例としては、シクロデキストリン、リン脂質、キトサン、DMSO、トゥイーン(Tween)、ブリッジ(Brij)、グリココール酸塩、サポニン、フシデートおよびエネルギーベースの吸収増進装置(energy based enhancing absorption equipment)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
投薬形態で含まれる任意成分としては、希釈剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、着色料、芳香剤、緩衝剤、防腐剤、安定剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
「充填剤」とも呼ばれる希釈剤としては、例えば、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、加水分解澱粉、二酸化ケイ素、コロイド状シリカ、酸化チタン、アルミナ、タルク、微結晶セルロースおよび粉砂糖が挙げられるが、これらに限定されない。液体形態での投与には、希釈剤としては、例えば、エタノール、ソルビトール、グリセロール、水などが挙げられる。
【0176】
結合剤は、処方物に粘着性を付与する目的で用いられる。適当な結合剤材料としては、澱粉(トウモロコシ澱粉および予備ゼラチン化澱粉を含む)、ゼラチン、糖質(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然および合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴム)、アルギン酸ナトリウム、セルロース、およびビーガム(Veegum)、およびポリメチルアクリレートおよびポリビニルピロリドンのような合成ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
滑沢剤は製造を容易にする目的で用いられ、適当な滑沢剤の例としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0178】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性またはノニオン性界面活性剤であってもよく、アニオン性界面活性剤が好ましい。適当なアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸および硫酸イオンを含み、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムイオンのようなカチオンと会合しているものが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい界面活性剤としては、長アルキル鎖スルホン酸塩およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸塩、ビス−(2−エチルヘキシル)−スルホコハク酸ナトリウムのようなジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、およびラウリル硫酸ナトリウムのようなアルキル硫酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
酸化防止剤のような安定剤としては、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸、メタ重亜硫酸カルシウム、ハイドロキノンおよび7−ヒドロキシクマリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
所望ならば、本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物は、湿潤または乳化剤、防腐剤などのような毒性のない補助物質を少量含んでいてもよい。
【0181】
本発明の組成物または本発明によって用いられる組成物のいずれかは、認知行動の改善のために、単独でまたは1種類以上の追加治療剤と組み合わせて用いてもよい。追加治療剤の例は、アンフェタミン、メチルフェニデートHCl、デクスメチルフェニデート塩酸塩、アトモキセチン、レボキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチン、フルオロキサミン、シタロプラム、ベンラファキシン、ブプロピオン、ネファゾドンおよびミルタザピンである。
【0182】
キャリア材料と組み合わせて単一投薬形態を生じることができる化合物および追加治療薬の量は、処理される宿主および投与の特定の様式によって変化する。好ましくは、本発明の組成物は、0.1〜1g/kg体重/日、好ましくは0.1〜300mg/kg体重の投薬量を投与することができるように処方すべきである。化合物の用量は、患者の病態および病気、および所望な一日用量によって変化する。ヒトの治療では、経口一日量は、好ましくは10〜3000mgである。これらの用量は、単位投薬形態で投与され、ある種の症例、特に経口投与では、その日毎に2〜3回の少なめの用量に分割することができる。
【0183】
ある態様では、本発明の組成物同士を互いに組み合わせて相乗的に作用させてもよく、また追加治療剤の存在下にて相乗的にさらに作用させてもよい。従って、このような組成物における(複数の)化合物および(複数の)追加治療剤の量は、その治療剤のみを用いる単独療法で必要とされる量より少なくなりうる。このような組成物では、追加治療剤の0.1〜1g/kg体重/日の投薬量を投与することができる。
【0184】
治療組成物を調製するためのメタドキシンまたはメタドキシン誘導体の使用
ある態様では、本発明は、認知機能の改善または本明細書に記載のように本発明の方法のいずれか1つに準じて認知機能の改善または認知障害もしくは機能不全の治療および/または予防の目的で被験者に投与するのに有用な治療組成物の製造において、メタドキシンまたはメタドキシン誘導体(メタドキシンの官能上生理学的に許容可能な誘導体を含む)の使用を提供する。
【実施例】
【0185】
下記の例は、開示した本発明の実例であると解釈される。これらの例は非制限的なものであり、熟練者であれば他の態様が本発明の範囲内にあることを理解するであろう。特に断らない場合には、方法は、当該技術分野における通常の技術を有する者によって理解される手法を用いて行った。
【0186】
例1:様々な処方物からのメタドキシンの放出
メタドキシンは、表1に準じて即時放出および遅延放出の様々な比率で処方した。
【0187】
【表2】

【0188】
前記処方物は、絶食した健康な患者に投与した。血液試料を所定の時間計画の後に採取し、処方物の吸収および排出を明らかにした。結果を、図1に示す。
【0189】
図1は、メタドキシンが約0.5時間後に直ちに最大濃度に達し、約7時間まで血液中に残留することができることを示している。健康な白色人種被験者に単回投与後、用量−直線性をCmaxおよびAUCについて700〜2100mgの用量範囲にわたって示した。
【0190】
【表3】

【0191】
例2:ADHD/ADD患者の認知行動の改善のためのメタドキシン処方物
Geha Mental Health Center(イスラエル)のADHDユニットの38名のADHD/ADDの成人患者(18〜45歳)を試験した。
【0192】
全部で4錠の錠剤をそれぞれの患者に投与した:
即時放出(IR)処方物(表3に定義した)2錠、および
遅延放出(SR)処方物(表4に定義した)2錠。
【0193】
投与したメタドキシンの総用量は、二重(即時および遅延の組み合わせ)放出処方物では1400mgであった。
【0194】
【表4】

【0195】
【表5】

【0196】
選択試験(Tests at inclusion)は患者の選択を包含し、かつ、DSM IV、精神医学的検査、WURS&ASRS アンケート調査、TOVA(注意の変数の試験)得点、Wechsler(Wechsler成人知性スケール)サブテスト、BDI(Beck鬱病目録)およびSTAI(状態−特性不安目録)アンケート調査による臨床診断を包含した。インクルージョン(inclusion)から1週間以上経過後、参加者にメタドキシンSR(1400mg)の単一用量を投与し、90 分後に再度WechslerサブテストとTOVA試験を行った。
【0197】
TOVAは、正常および臨床個体群における注意および衝動性を評価する目的で開発したコンピューター処理試験である。TOVAについての主な成果尺度は、除外標準得点(SS;不注意尺度)、コミッション標準得点(SS;衝撃制御尺度)、応答時間(RT)SS、RT SSの変動性、および総合的ADHD SS(前記下位尺度の複合得点)である。
【0198】
主な成果尺度は、ベースラインにおけるTOVA試験の患者の前の行動と比較した%での標準得点として分析したADHD得点、TOVA除外、TOVAコミッション、TOVA RTおよびTOVA変動性であった。二次成果尺度は、Weschlerのサブテスト:ディジット・スパン(Digit span)、シンボル・サーチ(Symbol Search)、ディジット・シンボル(Digit symbol)であった。
【0199】
結果
【0200】
【表6】

【0201】
TOVA試験の結果は、不注意(除外数、応答時間の安定性の増加および総合的ADHD得点の減少)に関連し、かつ衝動性(コミッションの数)に関連した総てのTOVAパラメーターの統計学的に有意な改善を示している。
【0202】
【表7】

【0203】
Wechslerサブテストにより、ADHD成人個体群におけるメタドキシンの認知機能を改善する能力を確認した。
【0204】
考察
本発明のメタドキシンSR処方物で得られた総ADHD得点についての結果を下表7に示されるベースライン得点と比較すると、ADHD標準得点はベースラインに対して約+90%の改善を示している。
【0205】
【表8】

【0206】
例3:ADHD/ADD患者の認知パフォーマンスの改善を目的とするメタドキシン処方物
Geha Mental Health Center(イスラエル)のADHDユニットにおける10名の成人ADHD患者(18〜45歳)を試験した。
【0207】
DERメタドキシン1400mg用量を含んでなる単一錠剤をそれぞれの患者に投与した。
【0208】
投与したメタドキシンの総用量は、二重長時間放出処方物では1400mgであった。
【0209】
選択試験は患者の選択を包含し、かつ、DSM IV、精神医学的検査、WURS&ASRS アンケート調査、TOVA(注意の変数の試験)得点、Wechsler(Wechsler成人知性スケール)サブテスト、BDI(Beck鬱病目録)およびSTAI(状態−特性不安目録)アンケート調査による臨床診断を包含した。
【0210】
選択後、参加者にメタドキシンDER(1400mg)の単一用量を投与し、90分、4時間および7時間後にTOVA試験を行った。
【0211】
TOVAは、正常および臨床個体群における注意および衝動性を評価する目的で開発したコンピューター処理試験である。TOVAについての主な成果尺度は、除外標準得点(SS;不注意尺度)、コミッション標準得点(SS;衝撃制御尺度)、応答時間(RT)SS、RT SSの変動性、および総合的ADHD SS(前記下位尺度の複合得点)である。
【0212】
主な成果尺度は、ベースラインにおけるTOVA試験の患者の前の行動と比較した%での標準得点として分析したADHD得点、TOVA除外、TOVAコミッション、TOVA RTおよびTOVA変動性であった。二次成果尺度は、Weschlerのサブテスト:ディジット・スパン(Digit span)、シンボル・サーチ(Symbol Search)、ディジット・シンボル(Digit symbol)であった。
【0213】
結果および考察:
表8から分かるように、ADHD得点、RT時間およびRT変動性(これらは、成人個体群では一層感受性の高いパラメーターと考えられる)において、ベースライン後の総ての時点で有意な改善が示されており、4時間後に最大の成果を示している。コミッションの結果は、投薬の90分後でも改善を示したことが注目される。更に、投薬の7時間後には、改善は減少したが、ベースラインと比較して結果の改善が見られたことが注目される。
【0214】
【表9】

【0215】
例4:睡眠遮断被験者の認知パフォーマンスに対するメタドキシンの効果
二重盲験による検討で、24時間の完全な睡眠遮断(TSD)後の認知タスクを用いて、14名の健康な成人(18〜40歳)の認知パフォーマンスを比較した。
【0216】
標準化神経心理学試験を、処理速度、注意および抑制のような睡眠および/または睡眠遮断によって影響を受けることが以前に示されている認知領域で行った。
【0217】
総ての参加者は、検討開始前の1週間および睡眠−覚醒行動を記録するための検討期間中アクティグラフ(actigraph)を身につけた。
【0218】
それぞれの参加者に、2つの並行群間比較処理条件:(1)本発明の組成物(単一用量のDERメタドキシン1400mg)または(2)プラセボの1つを投与した。
【0219】
手順
a. 睡眠プロトコル:
検討の当日に、参加者は下記のことを指示された。
1. (自宅では)遅くとも08:00までに起床。
2. 日中はうたた寝せず、アルコールまたは刺激物の使用は控える。
3. 20:00に睡眠実験室に到着する。
4. 夜間は起きたままでいる(鑑賞付き)。
5. 如何なる食物または飲み物の消費も控える、05:00開始。
6. 翌朝07:00に、参加者は、この検討に専任の検討医師または有資格看護師から本発明の組成物またはプラシセボを受け取った。
7. 参加者は、08:30に認知タスクを行った。(タスク時間:30分)。
【0220】
b. アクティグラフィ
アクティグラフは小型の軽い装置(ほぼ腕時計の大きさ)で、被験者の利き腕でない方の手首に取り付けられるものであり、1秒間に数回採取し1分刻みで保管された肉体運動データを集める運動センサー(加速度計)を含む。睡眠/覚醒パターンを、睡眠尺度に対して高い相関を生じるポリソムノグラフィに対して検証されているアクティグラフィを用いて観察した。参加者は、実験期間の1週間前から初めて活性プロトコルの終了までアクティグラフを連続して身につけた。アクティグラフは、防水性であり耐久性があり、連続的に身につけられているようにするために取り外しできないリストバンドを用いて取り付けられている。
【0221】
c. 神経心理学試験
ディジット・シンボル置換試験(DSST)(WAIS−III)は、精神運動機能(visual−motor coordination)と処理速度を測定する紙−鉛筆処理速度タスク(paper−and−pencil processing speed task)である。それは、9個のディジット−シンボル対に続いてディジットのリストからなっている。それぞれのディジットの下、被験者は、相当するシンボルをできるだけ速やかに書くことを求められる。許された時間(120秒間)内の正確なシンボルの数を、測定する。
【0222】
Connorsの連続パフォーマンスタスク(Continuous Performance Task)(CPT; www.bdikatkeshev.co.il, Tel-Aviv大学)は、処理速度、注意および抑制など睡眠または睡眠損失によって影響されることが報告されている認知領域をカバーするコンピューター処理されたタスクである。様々な形がコンピュータースクリーン上にパッと映され、参加者は、他の形を制しながら(すなわち、応答せず)、ある種の形にできるだけ速やかに応答するように指示される。このタスクは、完了するのに約17分かかる。
【0223】
ディジット・スパン(WAIS−III)は、注意、集中力および作業記憶の試験である。被験者は、最初は前に、次いで後ろに反復するための数字のセットを与えられる。このタスクは、完了に約5分かかる。
【0224】
Paced Auditory Serial Addition Task−第3版(PASAT−III)は、聴覚情報処理速度および柔軟性、並びに作業記憶を測定するコンピューター処理タスクである。1桁の数字を、3秒毎(試験1)または2秒毎(試験2)に示し、患者はそれぞれの新しい数字をその直前の数字に加えなければならない。PASATは、刺激呈示速度を制御するためにコンパクトディスクで示される。試験得点は、それぞれの試験で与えられた(可能な60からの)正しい和の総数である。このタスクは、完了に約8分かかる。
【0225】
試験はトレーニングを積んだスタッフによって行われ、完了に約45分かかった。
【0226】
それぞれの認知試験セッションの終わりに、カロリンスカ眠気尺度(KSS:9点固定尺度)を、上手く行うための熱意、集中能力、タスクを行うのに要する努力の量、および知覚されるタスクの困難さについて質問する一連の10点Likert尺度のシリーズと共に与えた。Likertの質問は、パフォーマンスが主観的な努力、タスクの困難さ、または眠気に関係しているかどうかの検討に有用である。
【0227】
結果および考察
結果は、プラセボ投与に比較してDERメタドキシン投与の効力の明らかな傾向を示している。表8は、プラセボと薬剤効果との間の差(Δ)が有意であることを示している。
【0228】
【表10】

【0229】
例5:高齢被験者の認知パフォーマンスの改善のためのメタドキシン処方物
軽度認知障害(MCI)に罹っている25名の60〜79歳の患者が、コンピューター処理した神経心理学試験(Mindstreams)を、検討の開始時(コントロール1)、350mgメタドキシン処方物の投与を1日2回(試験1)投与1週間後、ウォッシュアウト期間(コントロール2)の1週間後、およびプラセボ処方物の投与(試験2)の1週間後に行う。
【0230】
結果を、コントロールと試験との差について分析した。プラセボと比較して、薬剤を用いる数字想起、パターン想起などの幾つかのパラメーターの改善が、期待される。
【0231】
例6:疲労した被験者の認知パフォーマンスの改善のためのメタドキシン処方物
20名の医師が、全く睡眠をとらずに30時間後に、Rayの記憶試験を検討の開始時(コントロール(検討のベースライン))、およびメタドキシン処方物投与の1時間後(試験)に行う。
【0232】
結果を、コントロールと試験との差について分析する。コントロールと比較して投与群では、薬剤を用いる記憶した単語の数など幾つかのパラメーターの改善が、期待される。
【0233】
例7:アルツハイマー病(AD)患者の認知パフォーマンスの改善のためのメタドキシン処方物
20名のAD患者が、記憶試験を検討の開始時(コントロール(検討のベースライン))、およびメタドキシン処方物投与の1時間後(試験)に行う。
【0234】
結果を、コントロールと試験との差について分析する。コントロールと比較して薬剤を用いる数字の想起など幾つかのパラメーターの改善が、期待される。
【0235】
例8:多発性硬化症(MS)患者の認知パフォーマンスの改善のためのメタドキシン処方物
20名のMS患者が、記憶試験を検討の開始時(コントロール(検討のベースライン))、およびメタドキシン処方物投与の1時間後に行う。
【0236】
結果を、コントロールと試験との差について分析する。コントロールと比較して薬剤を用いた数字の想起など幾つかのパラメーターの改善が、期待される。
【0237】
例9:SWSD(交代勤務睡眠障害)の治療用のメタドキシン処方物
慢性的SWSDに罹っている60名の志願者を2群に分け、一方の志願者には、メタドキシン700mgSRカプセルを、また第2群の志願者にはプラセボカプセルを投与する。両群を、精神運動性覚醒タスク(眠気に敏感な10分間の視覚的持続注意試験)、連続パフォーマンス試験(CPT−14分間のコンピューター覚醒タスク)および模擬運転タスク(ソフトウェア、ハンドル、アクセルおよびブレーキを備えたコンピューター上で走行する眠気に敏感な20分間運転タスク)について試験する。試験は、ベースラインおよび投与後に行う。
【0238】
反応時間、コミッション(指令)、看過、レーン変動性、および速度変動性などの測定パラメーターの結果を分析する。メタドキシンを投与された群については、一層良好な結果が期待される。
【0239】
例10:比較溶解試験:即時放出対遅延放出
即時放出錠剤は、下記の組成に従って高剪断湿式造粒法を用いて調製した。
メタドキシン 500mg
アビセル(Avicel)PH 101(商標) 72mg
PVP K−30 28mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
【0240】
遅延放出錠剤は、下記の組成に従って高剪断湿式造粒法を用いて調製した。
メタドキシン 455mg
メトロース(Metholose)90SH 152mg
エトセル(Ethocel)E10(商標) 25mg
アエロジル(Aerosil)200 5mg
ステアリン酸マグネシウム 7mg
【0241】
溶解は、500ml腸液 pH=6.8、37℃中で、USP Apparatus 2(パドル)を用いて、50x rpmで試験した。比較溶解結果を、図2に示す。即時放出処方物は、90%より多くを0.5時間内に放出したが、遅延放出錠剤は約70%を8時間にわたって放出した。
【0242】
例11:メタドキシンの遅延放出カプセル
顆粒は、高剪断造粒および真空乾燥を用いて調製した。これは、ポリマー材料としてのアクリル疎水性ポリマーの一例である。
メタドキシン 350mg/カプセル
炭酸カルシウム 45mg/カプセル
ユードラジット(Eudragit)RS(商標) 60mg/カプセル
【0243】
材料を互いに混合し、エタノール中のユードラジット(Eudragit)RS(商標)溶液を用いて造粒した。顆粒を、ゼラチンカプセルに充填した。
【0244】
例12:メタドキシンの制御放出シロップ
シロップは、オーバーヘッド式回転ミキサーを用いて調製する。
メタドキシン顆粒 700mg/5ml
サクラ芳香剤 10mg/5ml
キシリトール溶液 ad.5ml容積
【0245】
メタドキシン遅延放出顆粒(例8で得た)を、キシリトール溶液に混合する。サクラ芳香剤を加える。
【0246】
例13:メタドキシンの嚥下しやすいサシェ
2種類の造粒を、ミキサー造粒装置で行う。
顆粒1:
メタドキシン 500mg
PVP K−25 10mg
顆粒2:
メタドキシン 800mg
メトロース(Metholose)90SH 200mg
エトセル(Ethocel)E10(商標) 50mg
最終混合物:
ステアリン酸マグネシウム 10mg
アエロジル(Aerosil)200(商標) 5mg
イチゴ芳香剤 10mg
【0247】
顆粒1(即時吸収処方)および顆粒2(遅延放出処方)を他の成分と共に混合して、サシェに充填する。
【0248】
例14:メタドキシンの皮膚パッチ
材料(下記)を互いに混合して、透明なゲルを形成する。このゲルを、コーティング装置を用いて裏膜にコーティングする。ラミネートを乾燥して、ポリエステル放出ライナーを乾燥したメタドキシンゲル上に積層する。このシートを切断してパッチとし、冷所に保管する。
メタドキシン 2500mg
デュロタック(Durotak)387−2287 200mg
エタノール 10ml
水 5ml
【0249】
例15:メタドキシン発泡散剤
マイクログラニュール(ペレット)を、押出法を用いて調製する。
メタドキシン 100mg
メトロース(Metholose)90SH 35mg
【0250】
ペレットを下記のものと混合する。
メタドキシン 200mg
重炭酸ナトリウム 60mg
クエン酸 100mg
スクラロース 20mg
サクラ芳香剤 10mg
【0251】
混合物を、サシェに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の認知疾患、障害または病態の治療、症状緩和、軽減、改善および予防用医薬の調製のための、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の使用。
【請求項2】
健康な被験者の認知機能の改善用医薬の調製のための、ピリドキシンまたはその誘導体である少なくとも1個の正に帯電した残基と、少なくとも1個のカルボキシル化した5〜7員のラクタム環であって、場合によっては更に置換されているものとを含んでなる塩付加物の使用。
【請求項3】
正に帯電した残基が、式(I)
【化1】

(前記式中、
は、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであり、
は、−OH、直鎖状または分岐状のC−Cアルコキシ、および直鎖状または分岐状のC−Cアルコキシカルボニルから選択され、
およびRは、それぞれ独立してホルミル、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであって、場合によっては少なくとも1個のハロゲン、アミン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、チオールおよびC−Cアルコキシカルボニルによって置換されたものから選択される)
の化合物である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
カルボキシル化したラクタム環が、
【化2】

(前記式中、
は、H、直鎖状または分岐状のC−Cアルキルであって場合によっては少なくとも1個のハロゲンによって置換されたもの、直鎖状または分岐状のC−Cアルケニル、直鎖状または分岐状のC−Cアルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールであって、場合によってはC−Cアルキルによって置換されたものから選択され、
、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立してH、直鎖状または分岐状のC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールであって、場合によってはC−Cアルキル、ハロゲン、アミノ、シアノ、ニトロ、チオール、C−Cアルコキシアミノカルボニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cカルボキシアルキル、C−Cアルコキシカルボニルアルキルおよびアミジノから選択される少なくとも1個の基によって置換されたものから選択される)
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
塩付加物が下記:
【化3】



から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
認知疾患、障害または病態が、注意欠陥/多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、覚醒障害、精神疲労状態、交代勤務睡眠障害、ナルコレプシー、閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、集中力不足、および集中不足(poor focus)またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
認知疾患、障害または病態が、学習障害、記憶障害、認知機能障害、アルツハイマー病を含む認知機能変化、または尿毒症性および肝性脳障害を含む任意の種類の脳障害から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
認知疾患、障害または病態が神経行動学的疾患、障害または病態である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
神経行動学的疾患、障害または病態が、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、記憶障害、集中力不足、および集中不足(poor focus)から選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
認知疾患、障害または病態が、注意欠陥障害(ADD)または多動性障害(ADHD/ADD)、記憶障害(健忘症)、覚醒障害、精神疲労状態、交代勤務睡眠障害、ナルコレプシー、閉塞性睡眠時無呼吸/呼吸低下症候群、集中力不足、および集中不足またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
認知機能が、一過性もしくは長期学習障害、一過性もしくは長期記憶障害、一過性もしくは長期認知機能障害、一過性もしくは長期認知機能変化、一過性もしくは長期集中力障害、一過性もしくは長期集中障害、一過性もしくは長期覚醒障害、一過性もしくは長期気疲れ状態、一過性もしくは長期交代勤務睡眠障害、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項12】
被験者が小児、青年、成人、または高齢者である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
塩付加物が、持続、遅延または制御放出投薬形態で処方される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
塩付加物が、即時またはバースト効果投薬形態で処方された塩付加物と組合せた持続、遅延または制御放出投薬形態で処方される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
塩付加物が、単回用量またはその一部で、塩付加物を0.1〜1000mg/kg体重/日、好ましくは塩付加物を1〜400mg/kg体重まで送達するように処方される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
塩付加物が、少なくとも1種類の追加の薬学活性剤と共に処方される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−531402(P2012−531402A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516975(P2012−516975)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000506
【国際公開番号】WO2010/150261
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(510004918)アルコブラ、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ALCOBRA LTD.
【Fターム(参考)】