説明

認証媒体

【課題】認証媒体を携帯する人物が認証を拒否された場合、認証を拒否された人物を容易に特定する。
【解決手段】認証媒体1において、認証情報を記憶し、当該認証情報の外部との送受信を許容する認証情報記憶部3と、当該認証情報の送受信の結果、当該認証情報が認証には不完全なものと判断された場合に駆動される報知部4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証媒体に関し、特に、セキュリティ保護された建物や施設の利用者が携帯し、その利用者の出入り等を認証するために使用される認証媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、建物や施設の利用者(以下、施設利用者と言う)が携帯する認証媒体としてICカードを用いた認証システムが普及している。
【0003】
このICカードを用いた認証システムでは、ICカードを携帯する施設利用者が建物や施設に出入する際にICカードに記憶されている認証情報が読取られ、読取られた認証情報に基づいてそのICカードを携帯する施設利用者の出入りが判断され、認証された場合には入口ドアが開放される。
【0004】
一方、認証が拒否された場合には、入口ドアは開放されず、施設への出入りが禁止される。
【特許文献1】特開2001−323695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のICカードを用いた認証システムにおいては、以下の点について配慮がなされていない。
【0006】
前述の認証システムでは、認証が拒否された施設利用者に対しては特別な手当てをしていない。すなわち、認証が拒否されたということは、その施設利用者は不審者である可能性があるものの、そのことに対しては何ら対策が講じられていない。つまり犯罪の可能性を認識しながらそれを放置してしまっている。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、認証拒否があった場合に犯罪の発生を抑制することができる認証媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、認証媒体において、認証情報を記憶し、当該認証情報の外部との送受信を許容する認証情報記憶部と、当該認証情報の送受信の結果、当該認証情報が認証には不完全なものと判断された場合に駆動される報知部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、認証情報が認証には不完全なものであると判断されて認証拒否があった場合に、犯罪の発生までも抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る認証媒体1は、図1に示すように、名刺サイズに形成された樹脂製の基板2をベースとして形成され、この基板2上に、ICタグ(認証情報記憶部)3と、報知部4と、表記部5とを備えている。
【0012】
基板2は、例えば、1mm〜数mm程度の厚さのプラスチックス板を貼り合わせて形成されている。2枚のプラスチックス板の間に、ICタグ3や電気回路等の部品が配置されている。
【0013】
ICタグ3は、認証情報を記憶するとともに信号の送受信のために駆動されるICチップと、信号の送受信を行うアンテナとを備えている。ICチップ内に記憶されている認証情報は、認証媒体1を所持する施設利用者の個人情報であり、認証媒体1の種類(例えば、外来者用、従業員用等)によってその認証情報の内容は異なる。本実施の形態のICタグ3は、外部から送信される電波(信号)を受け、電磁誘導の原理によって認証情報の送信等に必要な電力を得るパッシブ方式のものを例に挙げて示しているが、電力を供給するための電池を備えるアクティブ方式のICタグを用いてもよい。
【0014】
報知部4は、液晶の表示部6と、この表示部6のマトリクス部6aを駆動するドライバ回路7とを有している。表示部6は、例えば、有機ELなどの薄型化が可能なものが使用され、認証媒体1の比較的広い面積、例えば認証媒体1の表面積の上半分を占める程度に配置されている。
【0015】
表記部5には、認証媒体1を使用する施設利用者を特定するための事項が表記できるようになっている。例えば、○○株式会社への外来者に配布する認証媒体1には、「○○株式会社 外来者専用」と表記されている。また、○○株式会社の××部に所属する従業員が所持する認証媒体1には、「○○株式会社××部 従業員氏名△△△△」と表記されている。
【0016】
基板2を構成する2枚のプラスチック板の間、すなわち認証媒体1の内部には、表示部6を構成するマトリクス部6aと、ドライバ回路7と、ICタグ3と、電池8とが配置されている。
【0017】
ドライバ回路7は、マトリクス部6aを駆動するための制御回路である。ドライバ回路7とICタグ3との間は図中破線で示す信号線9により接続され、ドライバ回路7とマトリクス部6aとの間は図中破線で示す信号線10により接続されている。
【0018】
電池8は、ドライバ回路7とマトリクス部6aとに電力を供給する。電池8とドライバ回路7との間は図中太線で示す電力供給線11により接続され、電池8とマトリクス部6aとの間は図中太線で示す電力供給線12により接続されている。
【0019】
認証媒体1を用いた認証が行われる場所としては、建物や施設等が一般的であり、具体的には建物の出入口、各部屋の出入口、エレベータの乗降口、エレベータの乗りかご内等が挙げられる。図2は、エレベータ乗り場13にエレベータ乗りかご14が到着し、エレベータ乗り場13の乗り場ドア13aとエレベータ乗りかご14のかごドア(図示せず)とが同期して開放された状態が示されている。
【0020】
エレベータ乗り場13には、認証媒体1との間で信号を送受信するICタグリーダライタ15a,15bが設置されている。エレベータ乗りかご14内には、ICタグリーダライタ15a,15bと同じ構造のICタグリーダライタ15c,15dが設置されている。なお、ICタグリーダライタ15a,15bは、各階床のエレベータ乗り場13にそれぞれ設置されている。
【0021】
ICタグリーダライタ15a,15bは、エレベータ乗り場13に来た施設利用者が携帯する認証媒体1から認証情報を読取り、ICタグリーダライタ15c,15dはエレベータ乗りかご12内に居る施設利用者が携帯する認証媒体1から認証情報を読取る。
【0022】
認証媒体1による認証が行われる際には、まず、ICタグリーダライタ15a〜15dから電波が送信される。この電波を認証媒体1のICタグ3がそのアンテナで受信することによりICタグ3内で電磁誘導が起こり、認証媒体1において電力が得られる。この電力によってICタグ3に記憶されている認証情報がICタグ3から送信される。そして、送信された認証情報がICタグリーダライタ15a〜15dにより受信される。
【0023】
ICタグリーダライタ15a〜15dにより受信された認証情報は、後述する外部機器である認証制御部16に与えられ、当該施設を利用できるかどうかの認証が行われる。その認証結果は、ICタグリーダライタ15a〜15dから認証媒体1へ送信される。
【0024】
また、第1の実施の形態では、エレベータ乗り場13とエレベータ乗りかご14とにそれぞれ一対(2台)のICタグリーダライタ15を設置した場合を例に挙げて説明しているが、これは認証情報の読取り精度を高めるためである。したがって、読取り精度が十分確保されるのであればICタグリーダライタ15の設置個数はそれぞれ1台ずつであってもよい。またICタグリーダライタ15の設置位置は当該施設の環境に応じて任意に決定できる。
【0025】
図3は、認証媒体1と認証制御部(外部機器)16とを用いた認証システムを示すブロック図である。認証媒体1と認証制御部16との間の信号の送受信は、ICタグリーダライタ15を介して行われる。この図3では、ある階床のエレベータ乗り場13に設置された一対のICタグリーダライタ15a,15bを介して信号の送受信が行われる場合を示している。
【0026】
認証制御部16は、認証情報認識部17と、比較判定部18と、認証テーブル19と、報知部駆動信号生成部20とを備えている。
【0027】
認証情報認識部17は、ICタグリーダライタ15a,15bにより読取られた認証媒体1の認証情報を、当該ICタグリーダライタ15a,15bのID番号と共に一時的に記録する。ICタグリーダライタ15a,15bのID番号を記録することにより、認証が行われようとしている施設を特定することができる。
【0028】
認証テーブル19には、各認証媒体1のID番号と、各認証媒体1を携帯する施設利用者が出入等を許可される施設を特定した認証用情報とが記録されている。
【0029】
比較判定部18は、認証情報認識部17に記録された認証情報と、ICタグリーダライタ15a,15bのID番号と、認証テーブル19に記録された認証用情報とを比較する。そして、認証媒体1を携帯する施設利用者が当該施設を利用できるかどうかが判定される。
【0030】
報知部駆動信号生成部20は、比較判定部18における判定の結果、認証には不完全として認証拒否がなされた場合に、認証媒体1の報知部4を駆動させるための駆動信号を生成する。一方、比較判定部18における判定の結果、認証がなされた場合には、報知部駆動信号生成部20から駆動信号は生成されない。
【0031】
報知部駆動信号生成部20において駆動信号が生成された場合、この駆動信号はICタグリーダライタ15a,15bから認証媒体1に向けて送信される。
【0032】
すると、この駆動信号を受信したICタグ3のICチップに記憶された情報が更新され、ICタグ3から信号線9を介してドライバ回路7に制御信号が送信される。この制御信号を受信したドライバ回路7が表示部6の表示状態を制御することによりこの認証媒体1を携帯している人物は認証を拒否された者であることが周囲に報知される。
【0033】
報知部駆動信号生成部20において生成した駆動信号に基づいて行われる表示部6の表示制御としては、例えば、通常は非点灯状態である表示部6を赤色に発光させることが挙げられる。このような発光制御によって認証媒体1の外観が変化するため、その認証媒体1を携帯している人物が認証を拒否されたことを周囲に明確に報知することできる。さらに、多くの人物が居る場合であっても、認証を拒否された者が誰であるかを容易に特定することができる。また、表示部6の電源として電池8を備えているため、表示部6の点灯を予め設定した長時間に亘って継続させることが可能となる。
【0034】
認証システムによる制御内容を図4のフローチャートに基づいて説明する。まず、認証媒体1を携帯した人物がICタグリーダライタ15a,15bによる送受信可能範囲に入ると、ICタグリーダライタ15a,15bにより認証媒体1の認証情報が受信され、受信された認証情報が認証制御部16に送信される(S1)。ICタグリーダライタ15a,15bが認証情報を受信した場合、受信された認証情報は受信したICタグリーダライタ15a,15bのID番号と共に認証情報認識部17に送信される。
【0035】
認証制御部16では、認証媒体1から受信した認証情報を受信したICタグリーダライタ15a,15bのID番号と共に認証情報認識部17に入力されたか否かが判断される(S2)。
【0036】
認証情報等が入力された場合には(S2のYES)、入力された認証情報と、入力されたICタグリーダライタ15a,15bのID番号と、認証テーブル19に記録されている受信した認証媒体1に関する認証用情報とが比較判定部18において比較され、認証媒体1を携帯する人物が当該施設を利用できるかどうかの認証が行われる(S3)。認証がなされた場合には(S3のYES)、報知部駆動信号生成部20における駆動信号の生成は行われず、一連の制御は終了する。
【0037】
一方、ステップS3の判定において、認証が拒否された場合は(S3のNO)、報知部駆動信号生成部20において駆動信号が生成され(S4)、この駆動信号がICタグリーダライタ15a,15bから認証媒体1側へ送信される(S5)。
【0038】
ICタグリーダライタ15a,15bから送信された駆動信号は、ICタグ3により受信される(S6)。ICタグ3により駆動信号が受信されると、駆動信号を受信したことによりドライバ回路7が駆動され、表示部6に認証が拒否された旨の表示が行われる(S7)。
【0039】
なお、第1の実施の形態では、報知部4として表示部6が認証媒体1に設けられている場合を例に挙げて説明したが、表示部6に代えて、スピーカを認証媒体1に設けてもよい。この場合には、認証媒体1を携帯する人物が当該施設を利用できるかどうかの認証を拒否された場合には、スピーカから認証を拒否された旨のブザー音や、特定の音声情報、例えば、「お乗りになれません」などが発せられる。このような音声情報を発する構成とすることにより、施設利用者が認証媒体1を外部から見えないように隠している場合でも、認証を拒否された事実を周囲に報知することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態の外観上の特徴は第1の実施の形態と同じであり、図面は図1ないし図4を援用して説明する。
【0041】
第1の実施の形態では、比較判定部18における判定により認証上方が認証には不完全なものとして認証拒否された場合に、表示部6を発光させる場合を例に挙げて説明したが、第2の実施の形態では、報知部4が第1の報知形態と第2の報知形態とを有する構成とされている。
【0042】
認証情報が認証された場合には報知部4が第1の報知形態を選択して駆動され、認証情報の認証が拒否された場合には報知部4が第2の報知形態を選択して駆動される。第1の報知形態と第2の報知形態とでは、表示部6に異なる視覚情報が表示され、例えば、認証された場合の第1報知形態では表示部6を青色に発光し、認証を拒否された場合の第2報知形態では表示部6を赤色に発光する。
【0043】
認証された場合にも表示部6を発光させることにより、認証されたことを周囲に報知することができる。もちらん、青や赤に限らず、他のあらゆる色彩から適当な色彩を選択することができる。
【0044】
また、第1の報知形態では発光時間を短くし、第2の報知形態では発光時間を長くするなど、表示部6の発光時間を制御するようにしてもよい。
【0045】
なお、第2の実施の形態では、報知部4として表示部6が第1の報知形態と第2の報知形態とを有する場合を例に挙げて説明したが、表示部6に代えて、第1の報知形態と第2の報知形態とを有するスピーカを認証媒体1に設けてもよい。この場合には、認証された場合の第1報知形態では、例えば、「お乗り下さい」等の音声情報がスピーカから発せられ、認証を拒否された場合の第2の報知形態では、例えば、「お乗りになれません」等の音声情報がスピーカから発せられる。
【0046】
認証された場合と認証を拒否された場合とのそれぞれにおいて音声情報が発せられることにより、認証されたか否かを周囲に確実に報知することができる。
【0047】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、上記の実施の形態では外来者がエレベータを利用する場合を想定しているが、これ以外の施設、例えば特定の部屋への入室・入館や、特定の通路・区画の利用を判定するものであってもよい。いずれの場合にも、適当な場所にICタグリーダライタ15を設置することにより実現可能である。
【0048】
また、認証媒体1は上記のようにカード状かつ名刺サイズである必要はなく、その機能を実現する限りにおいてはいかなるサイズ、形状、重さであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る認証媒体であって、(a)は外観を示す正面図、(b)は内部構造を示す正面図である。
【図2】ICタグリーダライタが設置されているエレベータ乗り場とエレベータ乗りかごとを示す正面図である。
【図3】認証システムを示すブロック図である。
【図4】認証システムによる制御内容を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 認証媒体
3 ICタグ(認証情報記憶部)
4 報知部
6 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証情報を記憶し、当該認証情報の外部との送受信を許容する認証情報記憶部と、
当該認証情報の送受信の結果、当該認証情報が認証には不完全なものと判断された場合に駆動される報知部と、
を備えることを特徴とする認証媒体。
【請求項2】
前記認証情報記憶部は、ICチップを有することを特徴とする請求項1記載の認証媒体。
【請求項3】
前記報知部は表示部を有し、前記認証情報が認証には不完全なものと判断された場合には前記表示部に視覚情報を表示することを特徴とする請求項1又は2記載の認証媒体。
【請求項4】
前記報知部はスピーカを有し、前記認証情報が認証には不完全なものと判断された場合には前記スピーカから音声情報を発することを特徴とする請求項1又は2記載の認証媒体。
【請求項5】
前記報知部は第1の報知形態と第2の報知形態とを有し、前記認証情報が認証された場合には前記報知部は前記第1の報知形態を選択して駆動され、前記認証情報が認証には不完全なものと判断された場合には前記報知部は前記第2の報知形態を選択して駆動されることを特徴とする請求項1記載の認証媒体。
【請求項6】
前記報知部は表示部を有し、前記第1の報知形態と前記第2の報知形態とで前記表示部に異なる視覚情報が表示されることを特徴とする請求項5記載の認証媒体。
【請求項7】
前記視覚情報は、前記第1の報知形態と前記第2の報知形態とで色彩が異なることを特徴とする請求項6記載の認証媒体。
【請求項8】
前記報知部はスピーカを有し、前記第1の報知形態と前記第2の報知形態とで前記スピーカから異なる音声情報が発せられることを特徴とする請求項5記載の認証媒体。
【請求項9】
前記報知部に電力を供給する電池を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一記載の認証媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−199941(P2007−199941A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16744(P2006−16744)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】