誘導加熱装置及び誘導加熱方法
【課題】一旦高温に加熱炉にて加熱された被加熱材を、エネルギーロスを少なく保ちつつ、保温して、正常な運転再開の際に、直ちに被加熱材を供給することが可能な誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】本加熱用の第1誘導加熱コイル1を有する筒型本加熱炉10に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイル2を有する筒型保温炉20を平行に並設し、しかも、本加熱炉10の全長L10と保温炉20の全長L20を略同一に設定する。
【解決手段】本加熱用の第1誘導加熱コイル1を有する筒型本加熱炉10に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイル2を有する筒型保温炉20を平行に並設し、しかも、本加熱炉10の全長L10と保温炉20の全長L20を略同一に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間鍛造機(設備)へ高温金属材料を供給するために、誘導加熱装置が用いられている。即ち、高周波誘導加熱コイル内にブロック状の金属材料(被加熱材)を順次送りを与えつつ加熱する連続搬送式誘導加熱装置が用いられ、例えば1200℃の高温まで加熱して次工程設備としての熱間鍛造機へブロック状の高温金属材料を供給している。
【0003】
ところが、熱間鍛造機のトラブル等の理由にて、次工程の作業が中断した場合、誘導加熱装置から順次排出される高温金属材料は、上記作業の中断によって、焼ざまし材として、常温に戻してから、再加熱せねばならず、エネルギー無駄が発生する。
【0004】
このような焼ざまし材を発生させないために、従来、以下のような方法が行われている。
第1は、被加熱物(金属材料)の温度を保つように誘導加熱装置の加熱エネルギーを低減させて、搬送を停止する方法である。
第2は、誘導加熱装置の近傍に保温用雰囲気炉を設ける方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−153006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記第1の方法では、保温運転中に誘導加熱装置の炉内各部の温度を均等に保つことが困難であって、運転再開後の被加熱材の温度にバラツキが生じるという問題があった。また(この第1の方法を僅かに改善した方法として、)被加熱材の搬送を停止せずに減速送りを続けて、上記炉内各部の温度分布を均一化させる方法も提案されているが、減速搬送によって、(高温金属材が排出されることに変わりなく、)焼ざまし材が発生してしまう。
【0007】
また、前記第2の方法では、従来から燃焼炉や電熱炉等の雰囲気炉が保温炉として使用されており、待機中のエネルギーロスが大きく、また、電熱炉では発熱体の寿命が短いという問題があり、一方、燃焼炉ではスケール付着等の品質上の問題があり、第2の方法は実用化が至難であった。
【0008】
そこで、本発明は、一旦高温に加熱された被加熱材を迅速に保温炉に移すことが可能であり、かつ、予熱が不要な保温炉であり、省エネルギーを実現し、さらに、装置全体の省スペース化を可能として、実用性も高く、特に、運転再開後の被加熱材の温度を均一に保つことが容易であって、これによって、次工程の製品の品質を均一にかつ高く維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る誘導加熱装置は、本加熱用の第1誘導加熱コイルを有する筒型本加熱炉に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイルを有する筒型保温炉を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉と上記保温炉の全長を略同一に設定した。
【0010】
また、上記本加熱炉の排出口と、該排出口の横に隣り合って配設した上記保温炉の投入口との間を、横方向に往復移動して被加熱材を搬送可能なトラバース手段を備えている。
また、上記保温炉の上記第2誘導加熱コイルは、直列に配設された複数の加熱コイル単体と、1巻き乃至2巻きの接続コイルを、備え、上記加熱コイル単体を上記接続コイルを介して直列に電気接続したものである。
【0011】
そして、本発明に係る誘導加熱方法は、本加熱用の第1誘導加熱コイルを有する筒型本加熱炉に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイルを有する筒型保温炉を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉と上記保温炉の全長を略同一に設定し、そして、上記本加熱炉から排出される被加熱材を次工程設備に搬送できない搬送中断時に、上記本加熱炉の内部にある被加熱材の全てを、隣り合った上記保温炉に収納して、保温し、その後、次工程設備が再起動されると、上記保温炉に収納していた被加熱材を上記次工程設備に搬送するために保温炉から排出すると同時に上記本加熱炉に新たな被加熱材の投入を行って被加熱材の加熱を再開し、上記保温炉からの排出と上記本加熱炉への投入を同期運転して、保温炉内の全ての被加熱材が排出されると、途切れることなく上記本加熱炉から加熱された被加熱材を引続き上記次工程設備に搬送する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、何らかの理由で次工程設備(高温鍛造機等)が停止した際に、高温金属材料(高温被加熱材)を直ちに保温炉にてその高温状態を保つように、維持でき、次工程設備にて加工される製品の品質を安定して保ち得る。しかも、省スペースの装置であり、予熱エネルギーおよび待機エネルギーを必要とせず、作動のための消費エネルギーも少なくて済む。
特に、筒型本加熱炉内に存在していた被加熱材を、全部保温炉に収納可能なため、焼ざまし材を発生させないで済む。
【0013】
さらに、次工程設備が再起動した際には、直ちに高温被加熱材を保温炉から送り出すことが可能であり、その後、引き続いて本加熱材から高温被加熱材を途切れずに供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態を示す一部断面簡略側面図である。
【図2】簡略平面図である。
【図3】エネルギー(電力)付与状態を示すグラフ図である。
【図4】簡略平面図である。
【図5】正常搬送状態の簡略平面図である。
【図6】搬送中断状態で被加熱材を横方向へトラバースする状況を説明する簡略平面図である。
【図7】保温炉内へ最初の被加熱材を収納する状態を示す簡略平面図である。
【図8】保温炉内へ2番目の被加熱材を収納する状態を示す簡略平面図である。
【図9】保温炉内へ全ての被加熱材を収納する状態を示す簡略平面図である。
【図10】運転を再開して、次工程設備へ被加熱材を搬送開始直後の状態を示した簡略平面図である。
【図11】その後の状態を示した簡略平面図である。
【図12】さらにその後の状態を示す簡略平面図である。
【図13】次工程設備へ被加熱材を搬出する状態を示した簡略平面図である。
【図14】保温炉から最後の被加熱材が排出されてトラバース手段にて移送される直前の状態の簡略平面図である。
【図15】その後、トラバース手段にて本加熱炉の排出口の前方まで移送された(保温炉からの最後の)被加熱材が次工程設備へ搬送される状態を説明する簡略平面図である。
【図16】保温炉の要部構成を示した分解説明図である。
【図17】接続コイルの一例の斜視簡略図である。
【図18】保温炉の要部構成を示した組立図である。
【図19】従来の誘導加熱炉の要部構成を示す組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1〜図15に於て、10は本加熱用の第1誘導加熱コイル1を有する筒型本加熱炉であり、20は保温用の第2誘導加熱コイル2を有する筒型保温炉であり、平面視、相互に平行に、かつ、隣り合って、並設される。図例では本加熱炉10と保温炉20とは、いずれも水平状に固設され、全長L10と全長L20とは略同一に設定される。なお、図示省略したが、この本加熱炉10と保温炉20とは平行に上下に配設しても良い。
【0016】
3は材料供給装置であり、一般にビレットと呼ばれているブロック状金属材料(被加熱材)Mを、公知のチェーンコンベア,シュート,ロボットアーム等によって、矢印A(図2参照)のように、本加熱炉10の挿入口4の近傍まで供給する。図1〜図15では、金属材料(被加熱材)Mを受持する受け台やガイド部材を図示省略したが、本加熱炉10の挿入口4近傍にて、上記受け台やガイド部材にて受持された被加熱材Mは、本コイル用プッシャ5にて、挿入口4から貫通孔状加熱路6内へ送り込まれる。なお、貫通孔から成るこの加熱路6は、円筒状耐火断熱材によって形成され、しかも、この耐火断熱材の外周に第1誘導加熱コイル1が巻設される。また、図4〜図15に於ては、加熱路6,加熱コイル1を省略して、本加熱炉10を簡略表現している。
【0017】
そして、15は熱間鍛造機等の次工程設備であり、本発明に係る誘導加熱装置にて高温に加熱された被加熱材(金属材料)Mを、図1に示すシュート、あるいは、コンベア等の搬送手段7によって、送り込む(図1及び後述の図5,図11,図13,図15の矢印B参照)。
【0018】
ところで、本加熱炉10の(上記加熱路6の)排出口11と、保温炉20の投入口21とは、横に隣り合って配設されている。なお、投入口21は、後述するように次工程設備15が停止(中断)した際に、本加熱炉10にて加熱された金属材料(被加熱材)Mを保温路22内に押込状に挿入(投入)する開口部を意味する。但し、この投入口21は、保温されていた保温路22内の金属材料(被加熱材)Mを排出する際には送り出し口となる。
【0019】
また、30はトラバース手段であって、同一高さで、かつ、左右横方向に隣り合って並んだ(前述の)排出口11と投入口21との間を矢印C,Eにて示すように横方向に往復移動して、被加熱材Mを搬送する。
【0020】
トラバース手段30について、さらに具体的に説明すると、平面視、本加熱炉10と保温炉20に対して直交方向に、かつ、排出口11と投入口21よりも僅かに下流側(本加熱炉10の内部を送られる被加熱材Mの送り方向の下流側を言うものとする。)に、2本の平行なレール31,31を床面32等に敷設又は載置固定する。このレール31,31に沿って、左右に(矢印C,Eのように)往復動可能に台枠33を取付ける。
【0021】
側方から見て、図1に示す如く、倒立三角形の各頂点位置に配設した鎖車等の回転体34,34,34に、チェーンコンベア35を懸架する。回転体34,34,34の内の1個は、電気モータにて回転駆動され、図1と図5と図10と図11等に示すように、チェーンコンベア35の上辺水平状部位が下流方向への送りを与える場合と、図7と図9に示すように、チェーンコンベア35の上辺水平状部位が上流方向への送りを与える場合とに、正逆切替自在にチェーンコンベア35が駆動される。
【0022】
上記電気モータにより、又は、別の電気モータによって、チェーンコンベア35と同期して回転する補助ローラ36が、図1のように、配設されている。つまり、被加熱材Mがチェーンコンベア35に乗り移ろうとする(又は、チェーンコンベア35から保温炉20内へ挿入させようとする)際に、被加熱材Mの上面に押圧状態で接触して、スムーズな移動を可能としている。なお、図2〜図15では、このローラ36及びその駆動手段を図示省略した。また、図1に於ては、台枠33、及び、回転体34の支持枠と枢支軸、及び、駆動用電気モータ等を図示省略した。これ等は公知の部材と機器を用いれば良い。
【0023】
また、図1と図4と図5に簡略に図示したように、光電センサ手段37を設けている。この光電センサ手段37は、投光部37aと受光部37bを有し、図1中にX印40をもって示す高さで左右方向に光線38が走るように上記投光部37aと受光部37bを設置する。言い換えると、チェーンコンベア35の上辺水平部の上に被加熱材Mが有るか無いかを、検知するように、光線38は、チェーンコンベア35の上辺水平部近傍を走る高さに、投光部37aと受光部37bを設置する。(なお、それ以外の図2,図5〜図15では、このような光電センサ手段37を図示省略した。)
【0024】
次に、図16〜図18に於て、上述の保温炉20に用いられる第2誘導加熱コイル2等の要部を示した実施例であり、23は円筒型耐火断熱材であるが、一般に、この耐火断熱材23は軸方向長さを1000〜1200mmを越えて作製することが困難であるため、(図16〜図18では)2本の耐火断熱材単体23a,23aを作製して、これを相互に端面24,24にて接合して組立てる。これに伴って、第2誘導加熱コイル2も、複数(図例では2個)の加熱コイル単体2a,2aを直列に接続する必要が生ずる。
【0025】
図19は従来の加熱コイル44を示し、耐火断熱材単体23a,23aを接合する部位には、端面板45が形成されていた。各耐火断熱材単体23a,23aに巻設された加熱コイル単体46,46の内端側端子47,47は、端面板45を越えて端子接続板48によって、電気接続される構造であった。従って、図19に示した従来の加熱コイル44では、コイル端面板45,45近傍位置には、コイルが巻かれていない領域が存在し、通電時に、コイルが巻かれていない(端面板45,45付近の)領域では、磁束密度が弱くなっている。このような磁束密度が局部的に弱くなっている従来の加熱コイル44を、仮に、保温炉20に使用したとすると、保温炉20では、原則的に内部の被加熱材Mは送りを与えないで静止して保温されるため、端面板45,45近傍では、温度が(他よりも)低下するという大きな問題があることが判る。
【0026】
そこで、本発明の実施例(図16〜図18)では、このような問題を解決するために、端面板45,45を省略した(ストレート円筒型の)耐火断熱材単体23a,23a相互を接合すると共に、1巻き(又は図示省略の2巻き)の接続コイル25を、端面24,24相互接合部位に、介設して、加熱コイル単体2a,2aを電気接続する。
【0027】
図16〜図18の実施例では、コイル単体2a,2aのコイルピッチと、接続コイル25のピッチとを同一とし、かつ、各々に端子27,26を付設して、図18に示すように、端子27と端子26とを接続して、全体として、同一ピッチの連続状にコイル2を構成している。つまり、コイル2は、コイル単体2aと(1巻き乃至2巻きの)接続コイル25とコイル単体2aとから構成されており、3者は直列に電気接続され、長手方向(軸方向)に磁束密度が均等となり、静止して保温する保温炉としては、複数の内部の被加熱材Mの温度が全て同一に保たれる。つまり、端面24,24の接合部位に静止している被加熱材Mの温度も低下させずに保持され、図19にて述べた問題が解決される。
【0028】
そして、図3(A)(B)は、第1誘導加熱コイル1と第2誘導加熱コイル2の消費電力、従って、磁束密度を、長手方向コイルの(軸心方向)に表示したグラフ図である。この図3(A)から判るように、本加熱炉10の第1誘導加熱コイル1では、挿入口4から排出口11へ段階的に電力(磁束密度)を減少させている。これに対し、保温炉20の第2誘導加熱コイル2では、図3(B)に示すように、投入口21から、その反対の押圧口29にわたって、均等に分布されており、その電力(磁束密度)は、第1誘導加熱コイル1の排出口11側の値と同一乃至それ以下に設定される。
【0029】
次に、上述した本発明に係る誘導加熱装置の作用・動作について説明すると、次工程設備15が正常作動していれば、図2,図4,図5(及び図1)に示すように、順次、被加熱材(金属材料)Mが材料供給装置3から本加熱炉10の挿入口4へ本コイル用プッシャ5にて押込まれてゆき、排出口11から十分に加熱された(高温の)被加熱材Mは排出されて、チェーンコンベア35の水平状上辺部に載り、搬送手段7へ送られて、この搬送手段7にて、次工程設備15へ送られ、熱間鍛造等の加工が行われる。
【0030】
ところが、色々なトラブル等によって、次工程設備15に搬送できない搬送中断時にあっては、図5の状態でチェーンコンベア35を停止し、(矢印Bにて示す次工程設備15への搬送を中断し、)図6,図7,図8,図9と順に示すように、本加熱炉10の内部にある被加熱材Mの全てを、一旦、隣り合った保温炉20に収納して、保温する。
【0031】
ところで、被加熱材Mを矢印G方向に本加熱炉10へ押し込むための本コイル用プッシャ5の他に、矢印H方向に被加熱材Mを保温炉20へ押し込むための保温炉押込用プッシャ8、及び、矢印J方向に伸長(押圧)して、保温炉20内にて保温されていた被加熱材Mを押し出すための保温炉押し出し用プッシャ9が、各々、設けられている。また、レール31に沿って、台枠33を、矢印C,Eのように往復させるエアシリンダ等のアクチュエータ12が設けられている。前記プッシャ5,8,9は、電動式往復作動装置が望ましく、伸長速度制御及びストローク位置制御が精度良く行い得る機構のものとする。
【0032】
図5〜図9にもどって説明すると、何らかの原因で不意に次工程設備15が作動しなくなった中断時には、図5の矢印B方向への送りを中止し、直ちに、アクチュエータ12にて台枠33を矢印C方向へ移動させる。これによって、チェーンコンベア35上の高温の被加熱材(金属材料)Mは、保温炉20の投入口21の前まで移動して、停止する。直ちに、プッシャ8によって、図7に示す如く、矢印H方向へ押込み(投入させ)、保温炉20内へ収納する。
【0033】
なお、上述の「中断」となるや否や、保温炉20の加熱コイル2へ直ちに通電を開始する。また、プッシャ8によって矢印H方向への押込み(投入)の際に、(図1の)矢印とは逆に、チェーンコンベア35と補助ローラ36を、回転駆動させるのが望ましい。
【0034】
図7のように、第1番目の被加熱材Mの投入が完了すると、プッシャ8を短縮作動させ、レール31に沿って、矢印Cと逆方向へ台枠33をトラバースさせ、その後は順次、2番目、3番目……の被加熱材Mを、図8,図9に示すように保温炉20へ投入(収納)して、本加熱炉10内にあった全ての被加熱材Mを、保温炉20内へ移して、そこで保温する。既に本加熱炉10にて加熱されていた高温の被加熱材Mであるため、図3(B)に示したように、保温炉20で消費される電力は少なくても十分である。
【0035】
また、図16〜図19に於て述べたように第2誘導加熱コイル2は、複数の加熱コイル単体2a,2aを、同一コイルピッチに形成した1巻き乃至2巻きの接続コイル25を介して電気的に接続してあるので、磁束密度は、長手方向(軸心方向)に均等化され、収納保温中の全ての被加熱材Mは、同一の加熱エネルギーが付与されて、次工程設備15に、その中断解除後(再開時)に、図10〜図15に示すように、矢印B方向に供給される被加熱材Mの品質が安定して優れたものとなる。
【0036】
図10に示すように、次工程設備15が再起動されると、保温炉20に収納していた(
保温していた)被加熱材Mを継工程設備15に搬送するために、プッシャ9によって矢印J方向へ押圧して、保温炉20の元の投入口21から被加熱材Mを排出する作動と、本加熱炉10にプッシャ5によって矢印G方向に押圧して、新たな被加熱材Mを投入する作動とを、同期して行う(同時に両プッシャ9,5を押圧作動して、本加熱炉10における被加熱材Mの加熱を再開する。
【0037】
図10に於て、一点鎖線L0をもって明示するように、保温炉20内の図の右端の被加熱材Mbの後端面16と、本加熱炉10内の最初の被加熱材Mfの先端面17とが、鉛直面に位置する。その後、図11,図12,図13,図14と、順次、保温炉20と本加熱炉10内の被加熱材M───Mb,Mf───が、プッシャ9,5にて送りが与えられてゆくが、前記後端面16と先端面17は、一点鎖線L0にて示した同一鉛直面上に位置しつつ、両者の被加熱材Mb,Mfは、同期しつつ前進させる。
【0038】
言い換えれば、図10〜図15に示すように、保温炉20からの被加熱材Mの排出(送り)と、本加熱炉10への投入(送り)を、同期運転する。このようにして、保温炉20内の全ての被加熱材Mが排出されると(図14,図15参照)、その次は、本加熱炉10から最前の被加熱材Mfが、矢印B方向へ途切れることなく搬送される。
【0039】
即ち、保温炉20の最後の被加熱材Mbが矢印B方向へ搬送されると、引続いて、本加熱炉10から最初(最前)の被加熱材Mfが搬送される。これによって、次工程設備15へは、所定の高温に加熱された被加熱材(金属材料)が次々と途切れずに供給でき、運転再開の際にも品質の低下が生じることなく、次工程に於て、安定した高品質の鍛造製品等を製造できることとなる。
【0040】
以上述べたように、連続誘導加熱を行う本加熱炉10よりも後工程である鍛造作業等がトラブル等によって中断する場合に、直ちに、保温炉20へ収納(投入)して温度の低下を防ぎ、次工程設備15が再起動されると、まず、保温炉20から順次高温に保っていた被加熱材Mを搬送し、続いて、本加熱炉10から高温被加熱材Mを搬送するので、焼ざまし材が発生せず、エネルギーの無駄も発生しない。
【0041】
さらに、再起動(運転再開)の後の被加熱材Mの温度にバラツキを生ずることなく、スムーズに次工程設備15へ途切れることなく搬送される。また、従来の燃焼炉において発生したスケール等の付着の問題も発生しないと共に、予熱及び待機エネルギーを必要としないので、本発明は省エネに貢献するものといえる。
【0042】
また、図1〜図15に示し、かつ、説明したように、全体がコンパクトな装置とすることが可能で、省スペースにも貢献できる。
要するに、本発明は、次工程設備15の作業中断後の待ち時間が無く、優れた発明といえる。しかも、保温炉20による保温運転から、中断解除の通常(正常)運転への切換え時の待ち時間も最少とできる。また、保温炉20は誘導加熱コイル2を用いる方式のため、予熱を必要とせず省エネ効果が大きい。
なお、保温炉20内の被加熱材Mの温度に関しては、第2誘導加熱コイル2内へ投入時、又は、排出時に、供給電力の補正を行えば、一層、高精度の管理ができる。
【0043】
本発明によれば、一連の流れの中で、作業中断前後のサイクルタイムをそのまま維持でき、次工程設備15の作業の待ち時間が生じない利点がある。なお、図5から図6に示すように、次工程設備15の作業が何らかの理由で中断して、保温炉20の誘導加熱コイル2への通電開始から所定の初期の間、保温炉20自体の内壁自体を昇温するに必要な電力を、被加熱材Mの保温に要する電力に加算して、誘導加熱コイル2に付与するのが望ましい。特に、上述の通電開始から所定の初期の間、上記の内壁自体を昇温するに必要なエネルギーを少なくするため、保温炉内壁の耐火断熱材23(図18参照)の比重を、望ましくは、1.30〜1.60とする。
本発明によれば、特に、誘導加熱方式は、被加熱材Mを加熱したい時のみ通電すればよく保温炉20を予熱する必要がなく、そのため待機エネルギーも不要で省エネルギーである。
【符号の説明】
【0044】
1 第1誘導加熱コイル
2 第2誘導加熱コイル
2a 加熱コイル単体
10 本加熱炉
11 排出口
15 次工程設備(熱間鍛造装置)
20 保温炉
21 投入口
25 接続コイル
30 トラバース手段
L10,L20 全長
M 被加熱材(金属材料)
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間鍛造機(設備)へ高温金属材料を供給するために、誘導加熱装置が用いられている。即ち、高周波誘導加熱コイル内にブロック状の金属材料(被加熱材)を順次送りを与えつつ加熱する連続搬送式誘導加熱装置が用いられ、例えば1200℃の高温まで加熱して次工程設備としての熱間鍛造機へブロック状の高温金属材料を供給している。
【0003】
ところが、熱間鍛造機のトラブル等の理由にて、次工程の作業が中断した場合、誘導加熱装置から順次排出される高温金属材料は、上記作業の中断によって、焼ざまし材として、常温に戻してから、再加熱せねばならず、エネルギー無駄が発生する。
【0004】
このような焼ざまし材を発生させないために、従来、以下のような方法が行われている。
第1は、被加熱物(金属材料)の温度を保つように誘導加熱装置の加熱エネルギーを低減させて、搬送を停止する方法である。
第2は、誘導加熱装置の近傍に保温用雰囲気炉を設ける方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−153006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記第1の方法では、保温運転中に誘導加熱装置の炉内各部の温度を均等に保つことが困難であって、運転再開後の被加熱材の温度にバラツキが生じるという問題があった。また(この第1の方法を僅かに改善した方法として、)被加熱材の搬送を停止せずに減速送りを続けて、上記炉内各部の温度分布を均一化させる方法も提案されているが、減速搬送によって、(高温金属材が排出されることに変わりなく、)焼ざまし材が発生してしまう。
【0007】
また、前記第2の方法では、従来から燃焼炉や電熱炉等の雰囲気炉が保温炉として使用されており、待機中のエネルギーロスが大きく、また、電熱炉では発熱体の寿命が短いという問題があり、一方、燃焼炉ではスケール付着等の品質上の問題があり、第2の方法は実用化が至難であった。
【0008】
そこで、本発明は、一旦高温に加熱された被加熱材を迅速に保温炉に移すことが可能であり、かつ、予熱が不要な保温炉であり、省エネルギーを実現し、さらに、装置全体の省スペース化を可能として、実用性も高く、特に、運転再開後の被加熱材の温度を均一に保つことが容易であって、これによって、次工程の製品の品質を均一にかつ高く維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る誘導加熱装置は、本加熱用の第1誘導加熱コイルを有する筒型本加熱炉に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイルを有する筒型保温炉を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉と上記保温炉の全長を略同一に設定した。
【0010】
また、上記本加熱炉の排出口と、該排出口の横に隣り合って配設した上記保温炉の投入口との間を、横方向に往復移動して被加熱材を搬送可能なトラバース手段を備えている。
また、上記保温炉の上記第2誘導加熱コイルは、直列に配設された複数の加熱コイル単体と、1巻き乃至2巻きの接続コイルを、備え、上記加熱コイル単体を上記接続コイルを介して直列に電気接続したものである。
【0011】
そして、本発明に係る誘導加熱方法は、本加熱用の第1誘導加熱コイルを有する筒型本加熱炉に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイルを有する筒型保温炉を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉と上記保温炉の全長を略同一に設定し、そして、上記本加熱炉から排出される被加熱材を次工程設備に搬送できない搬送中断時に、上記本加熱炉の内部にある被加熱材の全てを、隣り合った上記保温炉に収納して、保温し、その後、次工程設備が再起動されると、上記保温炉に収納していた被加熱材を上記次工程設備に搬送するために保温炉から排出すると同時に上記本加熱炉に新たな被加熱材の投入を行って被加熱材の加熱を再開し、上記保温炉からの排出と上記本加熱炉への投入を同期運転して、保温炉内の全ての被加熱材が排出されると、途切れることなく上記本加熱炉から加熱された被加熱材を引続き上記次工程設備に搬送する方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、何らかの理由で次工程設備(高温鍛造機等)が停止した際に、高温金属材料(高温被加熱材)を直ちに保温炉にてその高温状態を保つように、維持でき、次工程設備にて加工される製品の品質を安定して保ち得る。しかも、省スペースの装置であり、予熱エネルギーおよび待機エネルギーを必要とせず、作動のための消費エネルギーも少なくて済む。
特に、筒型本加熱炉内に存在していた被加熱材を、全部保温炉に収納可能なため、焼ざまし材を発生させないで済む。
【0013】
さらに、次工程設備が再起動した際には、直ちに高温被加熱材を保温炉から送り出すことが可能であり、その後、引き続いて本加熱材から高温被加熱材を途切れずに供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の一形態を示す一部断面簡略側面図である。
【図2】簡略平面図である。
【図3】エネルギー(電力)付与状態を示すグラフ図である。
【図4】簡略平面図である。
【図5】正常搬送状態の簡略平面図である。
【図6】搬送中断状態で被加熱材を横方向へトラバースする状況を説明する簡略平面図である。
【図7】保温炉内へ最初の被加熱材を収納する状態を示す簡略平面図である。
【図8】保温炉内へ2番目の被加熱材を収納する状態を示す簡略平面図である。
【図9】保温炉内へ全ての被加熱材を収納する状態を示す簡略平面図である。
【図10】運転を再開して、次工程設備へ被加熱材を搬送開始直後の状態を示した簡略平面図である。
【図11】その後の状態を示した簡略平面図である。
【図12】さらにその後の状態を示す簡略平面図である。
【図13】次工程設備へ被加熱材を搬出する状態を示した簡略平面図である。
【図14】保温炉から最後の被加熱材が排出されてトラバース手段にて移送される直前の状態の簡略平面図である。
【図15】その後、トラバース手段にて本加熱炉の排出口の前方まで移送された(保温炉からの最後の)被加熱材が次工程設備へ搬送される状態を説明する簡略平面図である。
【図16】保温炉の要部構成を示した分解説明図である。
【図17】接続コイルの一例の斜視簡略図である。
【図18】保温炉の要部構成を示した組立図である。
【図19】従来の誘導加熱炉の要部構成を示す組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1〜図15に於て、10は本加熱用の第1誘導加熱コイル1を有する筒型本加熱炉であり、20は保温用の第2誘導加熱コイル2を有する筒型保温炉であり、平面視、相互に平行に、かつ、隣り合って、並設される。図例では本加熱炉10と保温炉20とは、いずれも水平状に固設され、全長L10と全長L20とは略同一に設定される。なお、図示省略したが、この本加熱炉10と保温炉20とは平行に上下に配設しても良い。
【0016】
3は材料供給装置であり、一般にビレットと呼ばれているブロック状金属材料(被加熱材)Mを、公知のチェーンコンベア,シュート,ロボットアーム等によって、矢印A(図2参照)のように、本加熱炉10の挿入口4の近傍まで供給する。図1〜図15では、金属材料(被加熱材)Mを受持する受け台やガイド部材を図示省略したが、本加熱炉10の挿入口4近傍にて、上記受け台やガイド部材にて受持された被加熱材Mは、本コイル用プッシャ5にて、挿入口4から貫通孔状加熱路6内へ送り込まれる。なお、貫通孔から成るこの加熱路6は、円筒状耐火断熱材によって形成され、しかも、この耐火断熱材の外周に第1誘導加熱コイル1が巻設される。また、図4〜図15に於ては、加熱路6,加熱コイル1を省略して、本加熱炉10を簡略表現している。
【0017】
そして、15は熱間鍛造機等の次工程設備であり、本発明に係る誘導加熱装置にて高温に加熱された被加熱材(金属材料)Mを、図1に示すシュート、あるいは、コンベア等の搬送手段7によって、送り込む(図1及び後述の図5,図11,図13,図15の矢印B参照)。
【0018】
ところで、本加熱炉10の(上記加熱路6の)排出口11と、保温炉20の投入口21とは、横に隣り合って配設されている。なお、投入口21は、後述するように次工程設備15が停止(中断)した際に、本加熱炉10にて加熱された金属材料(被加熱材)Mを保温路22内に押込状に挿入(投入)する開口部を意味する。但し、この投入口21は、保温されていた保温路22内の金属材料(被加熱材)Mを排出する際には送り出し口となる。
【0019】
また、30はトラバース手段であって、同一高さで、かつ、左右横方向に隣り合って並んだ(前述の)排出口11と投入口21との間を矢印C,Eにて示すように横方向に往復移動して、被加熱材Mを搬送する。
【0020】
トラバース手段30について、さらに具体的に説明すると、平面視、本加熱炉10と保温炉20に対して直交方向に、かつ、排出口11と投入口21よりも僅かに下流側(本加熱炉10の内部を送られる被加熱材Mの送り方向の下流側を言うものとする。)に、2本の平行なレール31,31を床面32等に敷設又は載置固定する。このレール31,31に沿って、左右に(矢印C,Eのように)往復動可能に台枠33を取付ける。
【0021】
側方から見て、図1に示す如く、倒立三角形の各頂点位置に配設した鎖車等の回転体34,34,34に、チェーンコンベア35を懸架する。回転体34,34,34の内の1個は、電気モータにて回転駆動され、図1と図5と図10と図11等に示すように、チェーンコンベア35の上辺水平状部位が下流方向への送りを与える場合と、図7と図9に示すように、チェーンコンベア35の上辺水平状部位が上流方向への送りを与える場合とに、正逆切替自在にチェーンコンベア35が駆動される。
【0022】
上記電気モータにより、又は、別の電気モータによって、チェーンコンベア35と同期して回転する補助ローラ36が、図1のように、配設されている。つまり、被加熱材Mがチェーンコンベア35に乗り移ろうとする(又は、チェーンコンベア35から保温炉20内へ挿入させようとする)際に、被加熱材Mの上面に押圧状態で接触して、スムーズな移動を可能としている。なお、図2〜図15では、このローラ36及びその駆動手段を図示省略した。また、図1に於ては、台枠33、及び、回転体34の支持枠と枢支軸、及び、駆動用電気モータ等を図示省略した。これ等は公知の部材と機器を用いれば良い。
【0023】
また、図1と図4と図5に簡略に図示したように、光電センサ手段37を設けている。この光電センサ手段37は、投光部37aと受光部37bを有し、図1中にX印40をもって示す高さで左右方向に光線38が走るように上記投光部37aと受光部37bを設置する。言い換えると、チェーンコンベア35の上辺水平部の上に被加熱材Mが有るか無いかを、検知するように、光線38は、チェーンコンベア35の上辺水平部近傍を走る高さに、投光部37aと受光部37bを設置する。(なお、それ以外の図2,図5〜図15では、このような光電センサ手段37を図示省略した。)
【0024】
次に、図16〜図18に於て、上述の保温炉20に用いられる第2誘導加熱コイル2等の要部を示した実施例であり、23は円筒型耐火断熱材であるが、一般に、この耐火断熱材23は軸方向長さを1000〜1200mmを越えて作製することが困難であるため、(図16〜図18では)2本の耐火断熱材単体23a,23aを作製して、これを相互に端面24,24にて接合して組立てる。これに伴って、第2誘導加熱コイル2も、複数(図例では2個)の加熱コイル単体2a,2aを直列に接続する必要が生ずる。
【0025】
図19は従来の加熱コイル44を示し、耐火断熱材単体23a,23aを接合する部位には、端面板45が形成されていた。各耐火断熱材単体23a,23aに巻設された加熱コイル単体46,46の内端側端子47,47は、端面板45を越えて端子接続板48によって、電気接続される構造であった。従って、図19に示した従来の加熱コイル44では、コイル端面板45,45近傍位置には、コイルが巻かれていない領域が存在し、通電時に、コイルが巻かれていない(端面板45,45付近の)領域では、磁束密度が弱くなっている。このような磁束密度が局部的に弱くなっている従来の加熱コイル44を、仮に、保温炉20に使用したとすると、保温炉20では、原則的に内部の被加熱材Mは送りを与えないで静止して保温されるため、端面板45,45近傍では、温度が(他よりも)低下するという大きな問題があることが判る。
【0026】
そこで、本発明の実施例(図16〜図18)では、このような問題を解決するために、端面板45,45を省略した(ストレート円筒型の)耐火断熱材単体23a,23a相互を接合すると共に、1巻き(又は図示省略の2巻き)の接続コイル25を、端面24,24相互接合部位に、介設して、加熱コイル単体2a,2aを電気接続する。
【0027】
図16〜図18の実施例では、コイル単体2a,2aのコイルピッチと、接続コイル25のピッチとを同一とし、かつ、各々に端子27,26を付設して、図18に示すように、端子27と端子26とを接続して、全体として、同一ピッチの連続状にコイル2を構成している。つまり、コイル2は、コイル単体2aと(1巻き乃至2巻きの)接続コイル25とコイル単体2aとから構成されており、3者は直列に電気接続され、長手方向(軸方向)に磁束密度が均等となり、静止して保温する保温炉としては、複数の内部の被加熱材Mの温度が全て同一に保たれる。つまり、端面24,24の接合部位に静止している被加熱材Mの温度も低下させずに保持され、図19にて述べた問題が解決される。
【0028】
そして、図3(A)(B)は、第1誘導加熱コイル1と第2誘導加熱コイル2の消費電力、従って、磁束密度を、長手方向コイルの(軸心方向)に表示したグラフ図である。この図3(A)から判るように、本加熱炉10の第1誘導加熱コイル1では、挿入口4から排出口11へ段階的に電力(磁束密度)を減少させている。これに対し、保温炉20の第2誘導加熱コイル2では、図3(B)に示すように、投入口21から、その反対の押圧口29にわたって、均等に分布されており、その電力(磁束密度)は、第1誘導加熱コイル1の排出口11側の値と同一乃至それ以下に設定される。
【0029】
次に、上述した本発明に係る誘導加熱装置の作用・動作について説明すると、次工程設備15が正常作動していれば、図2,図4,図5(及び図1)に示すように、順次、被加熱材(金属材料)Mが材料供給装置3から本加熱炉10の挿入口4へ本コイル用プッシャ5にて押込まれてゆき、排出口11から十分に加熱された(高温の)被加熱材Mは排出されて、チェーンコンベア35の水平状上辺部に載り、搬送手段7へ送られて、この搬送手段7にて、次工程設備15へ送られ、熱間鍛造等の加工が行われる。
【0030】
ところが、色々なトラブル等によって、次工程設備15に搬送できない搬送中断時にあっては、図5の状態でチェーンコンベア35を停止し、(矢印Bにて示す次工程設備15への搬送を中断し、)図6,図7,図8,図9と順に示すように、本加熱炉10の内部にある被加熱材Mの全てを、一旦、隣り合った保温炉20に収納して、保温する。
【0031】
ところで、被加熱材Mを矢印G方向に本加熱炉10へ押し込むための本コイル用プッシャ5の他に、矢印H方向に被加熱材Mを保温炉20へ押し込むための保温炉押込用プッシャ8、及び、矢印J方向に伸長(押圧)して、保温炉20内にて保温されていた被加熱材Mを押し出すための保温炉押し出し用プッシャ9が、各々、設けられている。また、レール31に沿って、台枠33を、矢印C,Eのように往復させるエアシリンダ等のアクチュエータ12が設けられている。前記プッシャ5,8,9は、電動式往復作動装置が望ましく、伸長速度制御及びストローク位置制御が精度良く行い得る機構のものとする。
【0032】
図5〜図9にもどって説明すると、何らかの原因で不意に次工程設備15が作動しなくなった中断時には、図5の矢印B方向への送りを中止し、直ちに、アクチュエータ12にて台枠33を矢印C方向へ移動させる。これによって、チェーンコンベア35上の高温の被加熱材(金属材料)Mは、保温炉20の投入口21の前まで移動して、停止する。直ちに、プッシャ8によって、図7に示す如く、矢印H方向へ押込み(投入させ)、保温炉20内へ収納する。
【0033】
なお、上述の「中断」となるや否や、保温炉20の加熱コイル2へ直ちに通電を開始する。また、プッシャ8によって矢印H方向への押込み(投入)の際に、(図1の)矢印とは逆に、チェーンコンベア35と補助ローラ36を、回転駆動させるのが望ましい。
【0034】
図7のように、第1番目の被加熱材Mの投入が完了すると、プッシャ8を短縮作動させ、レール31に沿って、矢印Cと逆方向へ台枠33をトラバースさせ、その後は順次、2番目、3番目……の被加熱材Mを、図8,図9に示すように保温炉20へ投入(収納)して、本加熱炉10内にあった全ての被加熱材Mを、保温炉20内へ移して、そこで保温する。既に本加熱炉10にて加熱されていた高温の被加熱材Mであるため、図3(B)に示したように、保温炉20で消費される電力は少なくても十分である。
【0035】
また、図16〜図19に於て述べたように第2誘導加熱コイル2は、複数の加熱コイル単体2a,2aを、同一コイルピッチに形成した1巻き乃至2巻きの接続コイル25を介して電気的に接続してあるので、磁束密度は、長手方向(軸心方向)に均等化され、収納保温中の全ての被加熱材Mは、同一の加熱エネルギーが付与されて、次工程設備15に、その中断解除後(再開時)に、図10〜図15に示すように、矢印B方向に供給される被加熱材Mの品質が安定して優れたものとなる。
【0036】
図10に示すように、次工程設備15が再起動されると、保温炉20に収納していた(
保温していた)被加熱材Mを継工程設備15に搬送するために、プッシャ9によって矢印J方向へ押圧して、保温炉20の元の投入口21から被加熱材Mを排出する作動と、本加熱炉10にプッシャ5によって矢印G方向に押圧して、新たな被加熱材Mを投入する作動とを、同期して行う(同時に両プッシャ9,5を押圧作動して、本加熱炉10における被加熱材Mの加熱を再開する。
【0037】
図10に於て、一点鎖線L0をもって明示するように、保温炉20内の図の右端の被加熱材Mbの後端面16と、本加熱炉10内の最初の被加熱材Mfの先端面17とが、鉛直面に位置する。その後、図11,図12,図13,図14と、順次、保温炉20と本加熱炉10内の被加熱材M───Mb,Mf───が、プッシャ9,5にて送りが与えられてゆくが、前記後端面16と先端面17は、一点鎖線L0にて示した同一鉛直面上に位置しつつ、両者の被加熱材Mb,Mfは、同期しつつ前進させる。
【0038】
言い換えれば、図10〜図15に示すように、保温炉20からの被加熱材Mの排出(送り)と、本加熱炉10への投入(送り)を、同期運転する。このようにして、保温炉20内の全ての被加熱材Mが排出されると(図14,図15参照)、その次は、本加熱炉10から最前の被加熱材Mfが、矢印B方向へ途切れることなく搬送される。
【0039】
即ち、保温炉20の最後の被加熱材Mbが矢印B方向へ搬送されると、引続いて、本加熱炉10から最初(最前)の被加熱材Mfが搬送される。これによって、次工程設備15へは、所定の高温に加熱された被加熱材(金属材料)が次々と途切れずに供給でき、運転再開の際にも品質の低下が生じることなく、次工程に於て、安定した高品質の鍛造製品等を製造できることとなる。
【0040】
以上述べたように、連続誘導加熱を行う本加熱炉10よりも後工程である鍛造作業等がトラブル等によって中断する場合に、直ちに、保温炉20へ収納(投入)して温度の低下を防ぎ、次工程設備15が再起動されると、まず、保温炉20から順次高温に保っていた被加熱材Mを搬送し、続いて、本加熱炉10から高温被加熱材Mを搬送するので、焼ざまし材が発生せず、エネルギーの無駄も発生しない。
【0041】
さらに、再起動(運転再開)の後の被加熱材Mの温度にバラツキを生ずることなく、スムーズに次工程設備15へ途切れることなく搬送される。また、従来の燃焼炉において発生したスケール等の付着の問題も発生しないと共に、予熱及び待機エネルギーを必要としないので、本発明は省エネに貢献するものといえる。
【0042】
また、図1〜図15に示し、かつ、説明したように、全体がコンパクトな装置とすることが可能で、省スペースにも貢献できる。
要するに、本発明は、次工程設備15の作業中断後の待ち時間が無く、優れた発明といえる。しかも、保温炉20による保温運転から、中断解除の通常(正常)運転への切換え時の待ち時間も最少とできる。また、保温炉20は誘導加熱コイル2を用いる方式のため、予熱を必要とせず省エネ効果が大きい。
なお、保温炉20内の被加熱材Mの温度に関しては、第2誘導加熱コイル2内へ投入時、又は、排出時に、供給電力の補正を行えば、一層、高精度の管理ができる。
【0043】
本発明によれば、一連の流れの中で、作業中断前後のサイクルタイムをそのまま維持でき、次工程設備15の作業の待ち時間が生じない利点がある。なお、図5から図6に示すように、次工程設備15の作業が何らかの理由で中断して、保温炉20の誘導加熱コイル2への通電開始から所定の初期の間、保温炉20自体の内壁自体を昇温するに必要な電力を、被加熱材Mの保温に要する電力に加算して、誘導加熱コイル2に付与するのが望ましい。特に、上述の通電開始から所定の初期の間、上記の内壁自体を昇温するに必要なエネルギーを少なくするため、保温炉内壁の耐火断熱材23(図18参照)の比重を、望ましくは、1.30〜1.60とする。
本発明によれば、特に、誘導加熱方式は、被加熱材Mを加熱したい時のみ通電すればよく保温炉20を予熱する必要がなく、そのため待機エネルギーも不要で省エネルギーである。
【符号の説明】
【0044】
1 第1誘導加熱コイル
2 第2誘導加熱コイル
2a 加熱コイル単体
10 本加熱炉
11 排出口
15 次工程設備(熱間鍛造装置)
20 保温炉
21 投入口
25 接続コイル
30 トラバース手段
L10,L20 全長
M 被加熱材(金属材料)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本加熱用の第1誘導加熱コイル(1)を有する筒型本加熱炉(10)に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイル(2)を有する筒型保温炉(20)を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉(10)と上記保温炉(20)の全長(L10)(L20)を略同一に設定したことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
上記本加熱炉(10)の排出口(11)と、該排出口(11)の横に隣り合って配設した上記保温炉(20)の投入口(21)との間を、横方向に往復移動して被加熱材(M)を搬送可能なトラバース手段(30)を備えた請求項1記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
上記保温炉(20)の上記第2誘導加熱コイル(2)は、直列に配設された複数の加熱コイル単体(2a)(2a)と、1巻き乃至2巻きの接続コイル(25)を、備え、上記加熱コイル単体(2a)(2a)を上記接続コイル(25)を介して直列に電気接続した請求項1記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
本加熱用の第1誘導加熱コイル(1)を有する筒型本加熱炉(10)に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイル(2)を有する筒型保温炉(20)を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉(10)と上記保温炉(20)の全長(L10)(L20)を略同一に設定し、そして、上記本加熱炉(10)から排出される被加熱材(M)を次工程設備(15)に搬送できない搬送中断時に、上記本加熱炉(10)の内部にある被加熱材(M)の全てを、隣り合った上記保温炉(20)に収納して、保温し、その後、次工程設備(15)が再起動されると、上記保温炉(20)に収納していた被加熱材(M)を上記次工程設備(15)に搬送するために保温炉(20)から排出すると同時に上記本加熱炉(10)に新たな被加熱材(M)の投入を行って被加熱材(M)の加熱を再開し、
上記保温炉(20)からの排出と上記本加熱炉(10)への投入を同期運転して、保温炉(20)内の全ての被加熱材(M)が排出されると、途切れることなく上記本加熱炉(10)から加熱された被加熱材(M)を引続き上記次工程設備(15)に搬送することを特徴とする誘導加熱方法。
【請求項1】
本加熱用の第1誘導加熱コイル(1)を有する筒型本加熱炉(10)に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイル(2)を有する筒型保温炉(20)を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉(10)と上記保温炉(20)の全長(L10)(L20)を略同一に設定したことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
上記本加熱炉(10)の排出口(11)と、該排出口(11)の横に隣り合って配設した上記保温炉(20)の投入口(21)との間を、横方向に往復移動して被加熱材(M)を搬送可能なトラバース手段(30)を備えた請求項1記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
上記保温炉(20)の上記第2誘導加熱コイル(2)は、直列に配設された複数の加熱コイル単体(2a)(2a)と、1巻き乃至2巻きの接続コイル(25)を、備え、上記加熱コイル単体(2a)(2a)を上記接続コイル(25)を介して直列に電気接続した請求項1記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
本加熱用の第1誘導加熱コイル(1)を有する筒型本加熱炉(10)に隣り合って、保温用の第2誘導加熱コイル(2)を有する筒型保温炉(20)を平行に並設し、さらに、上記本加熱炉(10)と上記保温炉(20)の全長(L10)(L20)を略同一に設定し、そして、上記本加熱炉(10)から排出される被加熱材(M)を次工程設備(15)に搬送できない搬送中断時に、上記本加熱炉(10)の内部にある被加熱材(M)の全てを、隣り合った上記保温炉(20)に収納して、保温し、その後、次工程設備(15)が再起動されると、上記保温炉(20)に収納していた被加熱材(M)を上記次工程設備(15)に搬送するために保温炉(20)から排出すると同時に上記本加熱炉(10)に新たな被加熱材(M)の投入を行って被加熱材(M)の加熱を再開し、
上記保温炉(20)からの排出と上記本加熱炉(10)への投入を同期運転して、保温炉(20)内の全ての被加熱材(M)が排出されると、途切れることなく上記本加熱炉(10)から加熱された被加熱材(M)を引続き上記次工程設備(15)に搬送することを特徴とする誘導加熱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−38473(P2012−38473A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175678(P2010−175678)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000152239)株式会社ウチノ (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000152239)株式会社ウチノ (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]