説明

誘導加熱装置

【課題】鍋を均一に加熱することができるとともに、高効率加熱モードと切替することができる誘導加熱装置を提供すること。
【解決手段】複数の加熱コイル55、57および複数の共振コンデンサ56、58のうち、第一の加熱コイル55と第一の共振コンデンサ56によって形成される第一の共振回路44の共振周波数を、第二の加熱コイル57と第二の共振コンデンサ58によって形成される第二の共振回路45の共振周波数よりも高くなるように第一の加熱コイル55または第一の共振コンデンサ56の値を設定し、第一の共振回路44および第二の共振回路45を単一のインバータ回路43に接続した構成であって、制御手段59によるインバータ回路43の制御によって、第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57に流れる高周波電流を同時に変化させ、インバータ回路43に接続した共振回路数と同数の周波数領域を一定間隔で切り替えて被加熱物を誘導加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器など誘導加熱を用いた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱装置において、一つの加熱領域を平面的に配設した複数の加熱コイルで構成し、各加熱コイルに順次時間差を設けて通電するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された誘導加熱装置は、順次通電するコイルを変えることにより、特定の場所が加熱されないため、被加熱物の温度分布が平均化され、ドーナツ状の加熱部が発生しないようにすることができる。
【0004】
また、一つの加熱領域を平面状に配設した中央コイルと四つの周辺コイルで構成した誘導加熱装置において、二つの周辺コイルをオン状態とし、且つその他の二つの周辺コイルをオフ状態とするステップAと、オン状態であった二つの周辺コイルをオフ状態とし、且つオフ状態であったその他の二つの周辺コイルをオン状態とするステップBを反復するように制御するものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載された誘導加熱装置は、周辺コイルが被加熱物である鍋を時間的に交互に加熱するため、鍋の内部に収容された水分等の調理具材に所定の対流が形成される。これにより、鍋内の調理具材が均一に加熱され、一部の調理具材が過熱されることを抑制して焦げ付きを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−291387号公報
【特許文献2】国際公開第2010/101202号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記効果を奏するためには、複数の加熱コイルにそれぞれ通電状態を制御するインバータ回路が必要となり、回路の部品点数が多く高価な誘導加熱装置となってしまっていた。
【0008】
特許文献1(図3)では、複数の加熱コイルにそれぞれスイッチング素子(インバータ回路)が接続されており、それぞれのスイッチング素子を順次時間差を設けて動作することにより通電状態を制御するものであるが、加熱コイルと同数のスイッチング素子(インバータ回路)が必要となることがわかる。
【0009】
特許文献2(図6)においても同様に、複数の加熱コイルにそれぞれインバータ回路を設けたことにより、回路の部品点数が多く高価な誘導加熱装置となってしまっていた。
【0010】
また、特許文献1(図6)では、複数の加熱コイルに対して一つのスイッチング素子(インバータ回路)しか接続されていないが、各加熱コイルと電源の間にリレーを設け、電源との接続を順次切り替えることにより、各加熱コイルへの通電状態を制御することができる。しかし、接点を機械的に切り替えるリレーを用いると、リレーに負担がかかり誘導加熱装置の寿命が短くなるという課題が新たに発生する。加えて、リレーを用いる場合、
ある加熱コイルへの通電状態から次の加熱コイルへの通電へと切り替える際、半導体のスイッチング素子のみで構成された回路方式と比較して接点の切り替わりに要する時間が長いことから、加熱コイルを高速に切り替えることができず、どの加熱コイルにも電力を供給しない休止期間が長くなり、十分な加熱量が得られず、誘導加熱装置の性能を悪くしてしまう。さらに、被加熱物を均一に加熱するためにリレーの切り替え頻度を多くすると、リレーの切り替え時に接点で発生する音が頻繁に起こり耳障りとなる。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物を均一に加熱したり被加熱物の容器に収容された液体を対流させたりでき、且つインバータ回路を増加させない誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱装置は、単一の被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルと共振回路を形成する複数の共振コンデンサと、前記複数の加熱コイルに高周波電流を供給する単一のインバータ回路と、前記インバータ回路へ駆動信号を出力して前記インバータ回路の動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は少なくとも前記インバータ回路の動作周波数を制御する機能を有し、前記複数の加熱コイルおよび前記複数の共振コンデンサのうち、第一の加熱コイルと第一の共振コンデンサによって形成される第一の共振回路の共振周波数は、第二の加熱コイルと第二の共振コンデンサによって形成される第二の共振回路の共振周波数よりも高くなるように前記第一の加熱コイルまたは前記第一の共振コンデンサの値を設定し、前記第一の共振回路および前記第二の共振回路を前記単一のインバータ回路に接続した構成であって、前記制御手段による前記インバータ回路の動作の制御によって、前記第一の加熱コイルと前記第二の加熱コイルに流れる高周波電流を同時に変化させるとともに、前記インバータ回路に接続した共振回路数と同数の周波数領域を一定間隔で切り替えて被加熱物を誘導加熱するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の誘導加熱装置によれば、複数の加熱コイルに流れる電流を単一のインバータ回路で制御することができるため、インバータ回路に必要な部品点数を少なくして、安価な誘導加熱装置を実現することができる。
【0014】
また、一定間隔で動作周波数を切り替えることにより、高周波電流が主に流れる加熱コイルを切り替えて被加熱物である容器の内容物に対流を発生させることができるため、例えば誘導加熱調理器に本発明の誘導加熱装置を適用することにより、調理物への熱の通りや味の染込みを早くして調理性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱装置の回路図
【図2】実施の形態1に係る加熱コイルと共振コンデンサによる共振特性を示す図
【図3】実施の形態1に係る第一の加熱コイルと第二の加熱コイルの配置図
【図4】実施の形態1に係る対流時の駆動周波数の遷移図
【図5】実施の形態1に係る均一加熱時の駆動周波数の遷移図
【図6】実施の形態1に係る第一の加熱コイルと第二の加熱コイルの電力バランスを示す図
【図7】実施の形態1に係る第一の加熱コイルと第二の加熱コイルの他の配置図
【図8】実施の形態1に係る3つの加熱コイルの配置図
【図9】実施の形態2に係る4つの加熱コイルの配置図
【図10】実施の形態2に係る誘導加熱装置の回路図
【図11】実施の形態2に係る各モードでの加熱領域を示す図
【図12】実施の形態3に係る誘導加熱装置の回路図
【図13】実施の形態3に係る各モードでの加熱領域を示す図
【図14】実施の形態4に係る誘導加熱装置の回路図
【図15】実施の形態4に係る各モードでの加熱領域を示す図
【図16】実施の形態4に係る第二の接続状態での各モードでの加熱領域を示す図
【図17】実施の形態4に係る第三の接続状態での各モードでの加熱領域を示す図
【図18】実施の形態4に係る他の加熱コイルの配置図
【図19】実施の形態5に係る加熱コイルと共振コンデンサによる共振特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、単一の被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、前記複数の加熱コイルと共振回路を形成する複数の共振コンデンサと、前記複数の加熱コイルに高周波電流を供給する単一のインバータ回路と、前記インバータ回路へ駆動信号を出力して前記インバータ回路の動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は少なくとも前記インバータ回路の動作周波数を制御する機能を有し、前記複数の加熱コイルおよび前記複数の共振コンデンサのうち、第一の加熱コイルと第一の共振コンデンサによって形成される第一の共振回路の共振周波数は、第二の加熱コイルと第二の共振コンデンサによって形成される第二の共振回路の共振周波数よりも高くなるように前記第一の加熱コイルまたは前記第一の共振コンデンサの値を設定し、前記第一の共振回路および前記第二の共振回路を前記単一のインバータ回路に接続した構成であって、前記制御手段による前記インバータ回路の動作の制御によって、前記第一の加熱コイルと前記第二の加熱コイルに流れる高周波電流を同時に変化させるとともに、前記インバータ回路に接続した共振回路数と同数の周波数領域を一定間隔で切り替えて被加熱物を誘導加熱するものである。
【0017】
これによって、複数の加熱コイルに流れる電流を単一のインバータ回路で制御することができるため、インバータ回路に必要な部品点数を少なくして、安価な誘導加熱装置を実現することができる。
【0018】
また、一定間隔で動作周波数を切り替えることにより、高周波電流が主に流れる加熱コイルを切り替えて被加熱物である容器の内容物に対流を発生させることができるため、例えば誘導加熱調理器に本発明の誘導加熱装置を適用することにより、調理物への熱の通りや味の染込みを早くして調理性能の向上を図ることができる。
【0019】
また、リレーなどの機械接点を有する部品を使用していないことから、高周波電流を供給する加熱コイルの切り替えを高速に行うことができる。さらに、誘導加熱装置の長寿命化することができる。またさらに、リレーの切り替え時に接点で発生する音をなくして清音化した誘導加熱装置を実現することができる。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明の誘導加熱装置において、複数の周波数領域を切り替える間隔を複数有するようにしたものである。
【0021】
これによって、動作周波数の切り替わり期間を制御して被加熱物を均一に加熱することと不均一に加熱して対流を発生させることの両方の加熱を行うことができるため、例えば調理内容に合った加熱パターンで被加熱物を加熱して調理性能の向上を図ることができる。
【0022】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の誘導加熱装置において、第一の加熱コイルおよび/または前記第二の加熱コイルは複数の加熱コイルで構成するものである。
【0023】
これによって、複数の加熱コイルを分散配置して加熱領域を均等に加熱するような構成
であっても、共振回路の数は加熱コイルの数以下であり且つインバータ回路の数は一つであるため、インバータ回路を構成する部品点数が少なく安価で、また小さな体積で誘導加熱装置を実現することができる。
【0024】
また、加熱コイルに流れる電流の増減タイミングが同じ加熱コイルを同一の共振回路内に接続することにより、同時に電力を供給することができる。電流センサを統一して安価にすることができ、また電力の制御性を向上させることができる。
【0025】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の誘導加熱装置において、複数の加熱コイルを被加熱物の加熱領域の中心から点対称となるように配設し、点対称に位置する加熱コイルを同一の共振回路に接続するものである。これによって、対角で最も遠くに位置する加熱コイルが同時に駆動することから、鍋を均一に加熱しやすくすることができる。また、鍋全体に大きな対流を発生することができる。
【0026】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の誘導加熱装置において、複数の加熱コイルを被加熱物の加熱領域の中心から線対称となるように配設し、隣り合う加熱コイルを同一の共振回路に接続するものである。これによって、被加熱物の加熱領域と非加熱領域をはっきり分けることができ、被加熱物内の液体に大きな対流を発生させて例えば調理物への味の染込みを迅速に行うことができる。
【0027】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の誘導加熱装置において、主に第一の加熱コイルから被加熱物に電力を供給する動作周波数における第一の共振回路に現れる抵抗値と、主に第二の加熱コイルから被加熱物に電力を供給する動作周波数における第二の共振回路に現れる抵抗値を略同一とするものである。これによって、2つの共振回路それぞれから供給できる最大電力を略同一にすることができるため、バランスのよい加熱を行うことができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱装置の回路図であり、インバータ回路と複数の加熱コイルと複数の共振コンデンサの接続方法の一例を示すものである。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態1に係る加熱コイルと共振コンデンサによる共振特性を示す図であり、誘導加熱装置のインバータ回路の動作周波数と被加熱物に供給可能な電力の関係を示すものである。
【0031】
図1において、コンセントなどから供給される電源は交流電源41であり、交流電源41を直流電源に変換するためにダイオードブリッジ46が接続されている。ダイオードブリッジ46の出力端には、ダイオードブリッジ46から出力される直流電源を平滑するとともに、誘導加熱装置から発生する電磁ノイズを交流電源41に伝播させないために、チョークコイル47やコンデンサ48が接続されている。ダイオードブリッジ46、チョークコイル47及びコンデンサ48により整流手段42を構成している。
【0032】
コンデンサ48の出力側には、逆導通ダイオード52が並列接続された第一のスイッチング素子51と、同じく逆導通ダイオード54が並列接続された第二のスイッチング素子53を電気的に直列接続したものが接続され、インバータ回路43を構成している。
【0033】
第一のスイッチング素子51と第二のスイッチング素子53の接続点には、第一の加熱
コイル55と第一の共振コンデンサ56を含む第一の共振回路44の一端および第二の加熱コイル57と第二の共振コンデンサ58を含む第二の共振回路45の一端が接続されている。
【0034】
そして、第一の共振回路44の他方の端子および第二の共振回路45の他方の端子は直流電圧の負の電位側に接続されている。また、第一のスイッチング素子51や第二のスイッチング素子53のスイッチング動作によって発生するスイッチング損失を低減するために、スナバコンデンサ60が第二のスイッチング素子53と電気的に並列接続されている。
【0035】
また、第一のスイッチング素子51および第二のスイッチング素子53を駆動制御する制御手段59を有することにより、本実施の形態の誘導加熱装置の回路を形成する。
【0036】
以上のように形成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0037】
本実施の形態1で示す誘導加熱装置のインバータ回路43は、第一のスイッチング素子51と第二のスイッチング素子53の動作周波数、導通(オン)時間と非導通(オフ)時間の比率などを制御することにより、第一の共振回路44に流れる高周波電流と第二の共振回路45に流れる高周波電流を変化させて、第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57から被加熱物に供給する電力を調節することができる。なお、電源をショートすることのないように、第一のスイッチング素子51と第二のスイッチング素子53は排他的にオンする。
【0038】
インバータ回路43の動作周波数を制御して加熱コイルから被加熱物に供給する電力を調節する場合、インバータ回路43への印加電圧が一定下では、図2に示すように、共振回路の共振周波数でインバータ回路43を動作させたときに被加熱物への供給電力が最大となるような共振(電力)特性になる。
【0039】
図2において、波形71は第一の共振回路44に内包される第一の加熱コイル55から被加熱物に供給される電力特性であり、波形72は第二の共振回路45に内包される第二の加熱コイル57から被加熱物に供給される電力特性である。本発明の誘導加熱装置では、第一の共振回路44の共振周波数を第二の共振回路45の共振周波数よりも高くなるように第一の加熱コイル55または第一の共振コンデンサ56の値を設定することから、第一の共振回路44での電力特性を示す波形71は第二の共振回路45での電力特性を示す波形72よりも高い周波数側に現れている。
【0040】
図2中の動作領域Aは、主に第一の加熱コイル55から被加熱物に電力を供給する場合のインバータ回路43の動作周波数範囲を示し、動作領域Bは、主に第二の加熱コイル57から被加熱物に電力を供給する場合のインバータ回路43の動作周波数範囲を示している。
【0041】
ところで、共振回路をインバータ回路43にて動作させる場合、共振回路が有する共振周波数よりもインバータ回路43の動作周波数が高いと、共振回路に印加される電圧に対して電流が遅れ位相となる。一方、共振回路が有する共振周波数よりもインバータ回路43の動作周波数が低いと、共振回路に印加される電圧に対して電流が進み位相となる。インバータ回路43への供給電源が電圧源の場合、共振回路が有する共振周波数よりもインバータ回路43の動作周波数を高くして共振電流を遅れ位相とするとともに、スナバコンデンサ60の接続により、スイッチング素子がオンからオフへと遷移するときにスイッチング素子に流れていた電流がスナバコンデンサ60に流れることによってスイッチング素子に印加される電圧変化がなだらかになってスイッチング素子のオンからオフするときに
発生するスイッチング損失を抑制することができる。この観点から、インバータ回路43の動作周波数は共振回路の共振周波数よりも高くすることが望ましい。
【0042】
また、本発明の実施の形態1の誘導加熱装置はインバータ回路43を共有して2つの共振回路を並列接続しているため、インバータ回路を構成するスイッチング素子には2つの共振回路に流れる電流の和が流れることになる。しかし、動作領域Bに示すように、第二の加熱コイル57から被加熱物に供給する電力が第一の加熱コイル55から被加熱物に供給する電力よりも大きい場合は、第一の加熱コイル55に流れる電流値も第二の加熱コイル57に流れる電流値よりも大きいと考えられるため、2つの共振回路に流れる電流の和は電流の位相遅れ成分が強く現れて前記同様スイッチング損失を抑制することができる。
【0043】
この観点から動作領域Bは、図2に示すように第二の共振回路45の共振周波数以上、且つ第一の加熱コイル55から供給される電力と第二の加熱コイル57から供給される電力の交差点以下としている。ここで、もし第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57の特性の相違により、加熱コイルに流れる電流値の合算が遅れ位相を示す範囲が電力特性の交差点からシフトするのであれば、動作領域Bの最大周波数を電力特性の交差点からシフトさせてもよい。
【0044】
図3は、第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57の配置の一例を示すものである。第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57は同心円状に配置されている。
【0045】
本発明の実施の形態1の誘導加熱装置では、第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57で単一の被加熱物を加熱することから、加熱領域11は第一の加熱コイル55と第二の加熱コイル57を併せたものとなる。
【0046】
本発明の実施の形態1の誘導加熱装置では、インバータ回路43の動作周波数を動作領域Aと動作領域Bで交互に動作することにより、例えば被加熱物が鍋である場合には、鍋の内部に収容された水分等の調理具材に所定の対流が形成される。これにより、鍋内の調理具材が均一に加熱され、一部の調理具材が過熱されることを抑制して焦げ付きを防止することができる。
【0047】
また、鍋の一部のみを加熱することにより、加熱された水分等の液体が液体上部まで上昇した後に、加熱していない部分へと液体がスムーズに流れ、液体の流速を早めることにより、具材への熱の伝わりや味の染み込みを加速させて短時間で調理することが可能となる。
【0048】
さらに、2つの加熱コイルに高周波電流を供給するインバータ回路は一つであるため、インバータ回路43を増大させないことで安価に実現することができる。また、インバータ回路の体積を増大させず、コンパクトな構成を実現することができる。
【0049】
また、インバータ回路43の構成にはリレーなどの機械的接点を有する壊れやすい部品を使用しないため、長寿命且つ安価な誘導加熱装置を実現することができる。
【0050】
本発明の実施の形態1の誘導加熱装置は、動作領域Aでインバータ回路43を動作させるモードと、動作領域Bでインバータ回路43を動作させるモードを有するとともに、動作領域Aで動作する時間と動作領域Bで動作する時間またはその割合を複数有している。
【0051】
前記のように煮物調理などで対流を行いたい場合には、図4に示すように、一定間隔(例えば10秒)で主に第一の加熱コイル55に供給する動作領域Aでインバータ回路43を動作するモードと主に第二の加熱コイル57に供給する動作領域Bでインバータ回路4
3を動作するモードを切り替えることにより対流を発生させる。
【0052】
また、炒め物調理など、調理内容によっては均一に加熱することが望ましい場合もある。均一に加熱する必要がある場合には、図5に示すように、主に第一の加熱コイル55に供給する動作領域Aでインバータ回路43を動作するモードと主に第二の加熱コイル57に供給する動作領域Bでインバータ回路43を動作するモードを切り替える間隔を前記煮物調理の場合よりも短く(例えば2秒)することにより、被加熱物は加熱と非加熱を高速に繰り返すことから、被加熱物の温度分布が平均化され、均一に加熱することができる。
【0053】
また、加熱コイルよりも大きな径を有する被加熱物を加熱する場合などは、被加熱物の外側が加熱されず、また、放熱量が増大して温度が下がってしまい、調理物への熱の通りが不十分になりやすい。このような場合は、図6に示すように、動作領域B内であって且つ周波数が高い領域で動作周波数を固定することにより、外側に位置する第二の加熱コイル57に供給する電力を、内側に位置する第一の加熱コイル55よりも高くして維持するといった、切り替えをしない制御も可能であり、調理性能に合わせて使用勝手をさらに向上させることもできる。
【0054】
さらに、加熱コイルの配置は同心円状に限らず、例えば図7に示したように加熱領域11内に並べて配置することでも本発明は同様の効果が得られる。
【0055】
また、図8に示すように、共振回路の数を三つにするとともに、加熱コイルの数を三つとして構成するなど、共振回路の数や加熱コイルの数は如何なる組み合わせでもよい。
【0056】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱装置の加熱コイルの配設図であり、加熱領域の中心から点対称に加熱コイルを配設する方法の一例を示すものである。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱装置の回路図であり、インバータ回路と複数の加熱コイルと複数の共振コンデンサの接続方法の一例を示すものである。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱装置のインバータ回路の動作条件による加熱コイルへの電力の供給状態を示すものである。
【0059】
ここで、本実施の形態2では前記実施の形態1と異なる部分のみを説明し、前記実施の形態1と同一の部分については説明を省略する。
【0060】
図9は、第一〜第四の四つの加熱コイル81〜84を用いて一つの被加熱物を加熱するものである。それら四つの加熱コイル81〜84は、被加熱物を加熱することができる加熱領域11内に配設されるとともに、加熱領域11の中心点から点対称となるように加熱コイルを配設する。
【0061】
図10は、図9に示した四つの加熱コイル81〜84を加熱する誘導加熱装置の回路図を示している。二つの加熱コイルを直列に接続したものを共振回路の加熱コイルとして接続した点で実施の形態1の図1に示したインバータ回路と異なる。
【0062】
本実施の形態2では、加熱領域11の中心から点対称にある第一の加熱コイル81と第三の加熱コイル83とを直列接続したものを第一の共振回路44の加熱コイルとし、また第二の加熱コイル82と第四の加熱コイル84とを直列接続したものを第二の共振回路45の加熱コイルとして、同一のインバータ回路43から加熱コイルに高周波電流が供給されるものである。
【0063】
以上のように形成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0064】
図10に示すように、複数の加熱コイルで共通の共振回路を形成するように加熱コイルを接続することにより、加熱コイルと共振コンデンサからなる共振回路の数は加熱コイルの数よりも少ない構成で誘導加熱装置を実現することができる。これにより、加熱コイルの数よりも少ない共振コンデンサで全ての加熱コイルに高周波電流を供給することができるため、安価な誘導加熱装置を提供することができる。また、複数の共振回路の共振周波数を異なるように加熱コイルまたは共振コンデンサの値を設定することによって、実施の形態1の図2に示したような電力特性が得られる。
【0065】
誘導加熱装置の動作音が気にならないようにするために、動作周波数を人の可聴音である20kHz以上とした場合、共振回路が増えるに従いインバータ回路の動作周波数は増大してしまう。仮に第一〜第四の四つの加熱コイル81〜84にそれぞれ共振コンデンサを接続し、四つの共振回路を有することになると、第三、第四の共振回路による電力特性は動作領域Aよりも高い周波数側に位置することになり、インバータ回路を形成するスイッチング素子のスイッチング損失が大きくなってしまう。
【0066】
また、共振回路の数が増えてもスイッチング損失の増大を回避するために共振回路の共振周波数の差を小さくしていくと、動作領域Bが小さくなってしまうとともに、動作領域Bでインバータ回路を動作させたときに第一の共振回路に内包される第一の加熱コイルに供給される高周波電流値が大きくなり、電力の制御性が悪くなってしまう。
【0067】
従って、一つの共振回路に複数の加熱コイルを有する構成をとることにより、従来よりも共振回路を少なくすることができ、スイッチング損失の低減し、且つ電力の制御性を高い状態に維持することができる。
【0068】
本実施の形態2の誘導加熱装置では、図9及び図11に示すように、加熱領域の中心から点対称の位置にある加熱コイルを同一の共振回路に接続している。これにより、例えば第二の加熱コイル82と第四の加熱コイル84に流れる高周波電流のオンやオフの期間、比率などは一緒となる。第一の加熱コイル81と第三の加熱コイル83においても同様である。
【0069】
図11に示すように、加熱領域11の中心から点対称の位置にある加熱コイル、つまりある加熱コイルから最も遠い位置にある加熱コイルでオンやオフの期間などを共有するとともに、図4に示すように一定間隔でモード1とモード2を切り替えることにより、例えば被加熱物として液体を含む調理物の入った鍋とした場合には、対流源をバランスよく分散させて、ゆっくりとした対流を鍋全体に発生させることで、焦げ付きのない調理を行うことができる。その他、対流を変化させることができるため、パスタなどの麺を茹でる際に、ある対流によって麺が絡み合おうとする前に次の対流へと移行するため、内容物をかき混ぜなくても麺が絡み合うことのない誘導加熱装置を実現することができる。
【0070】
さらに、図5に示すように、モード1の期間Tbを図4に示すモード1の期間Taよりも短くすることにより、被加熱物は加熱と非加熱を素早く切り替えることから、被加熱物の温度分布が平均化され、被加熱物を均一に加熱することができる。そのため、焼き物など非加熱物を均一に加熱する方が調理性能として良い場合には、モード1とモード2の切り替えを短時間で行うことにより、調理内容に最適な加熱を行うことができる。
【0071】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱装置の回路図であり、インバータ回路
と複数の加熱コイルと複数の共振コンデンサの接続方法の一例を示すものである。
【0072】
図13は、本発明の実施の形態3に係る誘導加熱装置のインバータ回路の動作条件による加熱コイルへの電力の供給状態を示すものである。
【0073】
ここで、本実施の形態3では前記実施の形態1及び実施の形態2と異なる部分のみを説明し、前記実施の形態1及び実施の形態2と同一の部分については説明を省略する。
【0074】
図12は、図9に示した4つの加熱コイル81〜84を加熱するインバータ回路を示している。2つの加熱コイルを直列に接続したものを共振回路の加熱コイルとして接続した点で図1に示したインバータ回路とは異なる。
【0075】
本実施の形態3では、隣り合う2つの第一の加熱コイル81と第四の加熱コイル84とを直列接続したものを第一の共振回路44の加熱コイルとし、また第二の加熱コイル82と第三の加熱コイル83とを直列接続したものを第二の共振回路45の加熱コイルとして、同一のインバータ回路43から加熱コイルに高周波電流が供給されるものである。
【0076】
以上のように形成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0077】
本実施の形態3での誘導加熱装置による効果としては、実施の形態2と同様に、共振コンデンサが加熱コイルの数よりも少なくてすむことによる安価な誘導加熱装置の提供や、スイッチング損失の低減、電力の制御性を高い状態に維持することなどが実現できる。
【0078】
本実施の形態3の誘導加熱装置では、隣り合う2つの加熱コイルを同一の共振回路に接続している。これにより、例えば第一の加熱コイル81と第四の加熱コイル84に流れる高周波電流のオンやオフの期間、比率などは一緒となる。第二の加熱コイル82と第三の加熱コイル83においても同様である。
【0079】
図13に示すように、隣り合う2つの加熱コイルでオンやオフの期間などを共有するとともに、図4に示すように一定間隔でモード1とモード2を切り替えることにより、例えば被加熱物として液体を含む調理物の入った鍋とした場合には、対流源を局所的に設けることにより、流速が早くて大きい対流を発生させることができるため、調理物への熱の通りや味の染込みを加速させることができる。
【0080】
さらに、図5に示すように、モード1の期間Tbを図4に示すモード1の期間Taよりも短くすることにより、被加熱物は加熱と非加熱を素早く切り替えることから、被加熱物の温度分布が平均化され、被加熱物の温度として均一に加熱しているようにみえる。そのため、焼き物など非加熱物が均一な方が調理性能として良い場合にはモード1とモード2の切り替えを短時間で行うことにより、調理内容に最適な加熱を行うことができる。
【0081】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4に係る誘導加熱装置の回路図であり、インバータ回路と複数の加熱コイルと複数の共振コンデンサの接続方法の一例を示すものである。
【0082】
図15は、本発明の実施の形態4に係る誘導加熱装置のインバータ回路の動作条件による加熱コイルへの電力の供給状態を示すものである。
【0083】
ここで、本実施の形態4では前記実施の形態1〜3と異なる部分のみを説明し、前記実施の形態1〜3と同一の部分については説明を省略する。
【0084】
図14は、加熱領域11に配設される加熱コイルが6つある場合でのインバータ回路の接続方法を示すものであり、3つの共振回路が一つのインバータ回路に接続されている点で図1、図10、図12とは異なる。
【0085】
本実施の形態4では、隣り合う2つの第一の加熱コイル81と第四の加熱コイル84とを直列接続したものを第一の共振回路44の加熱コイルとし、また第二の加熱コイル82と第五の加熱コイル85とを直列接続したものを第二の共振回路45の加熱コイルとし、第三の加熱コイル83と第六の加熱コイル86とを直列接続したものを第三の共振回路91として、同一のインバータ回路43から加熱コイルに高周波電流が供給されるものである。
【0086】
図15では、第一〜第六の6つの加熱コイル81〜86を有して一つの被加熱物を加熱するときにおける、加熱コイルへの電力の供給状態を示すものである。
【0087】
加熱領域11の中心点から点対称となるように加熱コイルを直列に接続することで、合計3つの加熱コイル群ができ、それら3つの加熱コイル群のそれぞれに共振コンデンサを接続することにより3つの共振回路が形成され、一つのインバータ回路43に接続されることによりインバータ回路を構成している。
【0088】
以上のように形成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0089】
本実施の形態4における誘導加熱装置は、3つの共振回路を有する。前記実施の形態で記したように、本発明の誘導加熱装置では複数の共振回路それぞれが異なる共振周波数を有することから、共振回路の数が増えることにより、図2に示す電力特性の波形にもう一つの特性が第一の共振回路の共振特性71よりも高い周波数側に現れることになる(図示せず)。共振回路が3つ以上の場合も同様に、図4や図5で示したモード数を共振回路の数と同数有することにより、動作周波数を切り替えることによってそれぞれの加熱コイル群に高周波電流を供給する期間や大きさを制御することができることから、前記実施の形態で述べた同等の効果を奏することができる。
【0090】
また、一つの被加熱物を加熱する複数の加熱コイルの数を多くすることによって、加熱場所を多くして加熱部を分散させることができるため、被加熱物をより均一に加熱することができる。
【0091】
さらに、加熱コイルの数が多くなっても本発明の誘導加熱装置のインバータ回路は一つですむため、安価かつコンパクトな構成で高い調理性能を備えた誘導加熱装置を実現することができる。
【0092】
なお、本実施の形態4では、加熱領域11の中心点から点対称となる位置にある加熱コイルを直列に接続した場合のインバータ回路の接続方法と各モードの加熱状況を示したが、図16に示すように隣り合う加熱コイルを接続して3つの共振回路を形成してもよく、その効果は前記実施の形態に記したものと同様であるとともに、加熱コイルの数が増えることによって均一に加熱する時の均一性を高めることができる。
【0093】
また、図17に示すように隣り合う3つの加熱コイルを直列に接続し、6つの加熱コイルを2つの共振回路で加熱するようにしてもよく、要は加熱コイルの数よりも少ない共振回路と一つのインバータ回路で加熱することによって、安価な回路構成で、加熱分布の均一/対流制御と、電力の制御性とを兼ね備えた誘導加熱装置を実現することができることに本発明は有用である。
【0094】
さらに、図18に示すように、加熱領域11の中心部と、その周りに加熱コイルを配置する場合であっても、中心部に配置された加熱コイルは単独で共振回路を形成し、周囲の加熱コイルは2つの加熱コイルを接続して一つの共振回路を形成することによって、5つの加熱コイルを3つの共振回路として、一つのインバータ回路で制御することが可能となる。
【0095】
(実施の形態5)
図19は、本発明の実施の形態5に係る加熱コイルと共振コンデンサによる共振特性を示す図であり、誘導加熱装置のインバータ回路の動作周波数と被加熱物に供給可能な電力の関係を示すものである。
【0096】
ここで、本実施の形態5では前記実施の形態と異なる部分のみを説明し、前記実施の形態と同一の部分については説明を省略する。
【0097】
図19は、第一の共振回路の共振特性73の最大値が第二の共振回路の共振特性72の最大値と同等である点で図2とは異なる。
【0098】
以上のように形成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0099】
本実施の形態5の誘導加熱装置は、インバータ回路の動作周波数を定期的に切り替えるものであり、一つのモードでの動作時間を調節することにより、被加熱物の内容物に対流を発生させたり、被加熱物を均一に加熱したりすることができるものである。このとき、一つの被加熱物を加熱するための複数の加熱コイルを同一の特性を有する加熱コイルで構成すると、共振周波数が高い共振回路に含まれる加熱コイルからみた被加熱物の抵抗成分は共振周波数が低いものと比較して大きくなり、加熱コイルに高周波電流が流れにくくなる。すると、図19に示すように、同一の特性を有する加熱コイルを全ての加熱コイルに適用した場合における第一の共振回路の波形71の最大値は、第二の共振回路の波形72の最大値よりも小さくなる。
【0100】
本実施の形態5の誘導加熱装置は、同一の被加熱物を加熱することから、バランスよく加熱することが望ましい。そのためには、それぞれの共振回路から被加熱物に供給できる電力の差異は小さくする必要がある。
【0101】
そのために、本実施の形態5での誘導加熱装置では、主に電力を供給する共振回路に含まれる加熱コイルからみた被加熱物の抵抗成分は、主に電力を供給する周波数領域においてその他の共振回路の動作周波数と領域における加熱コルから見た被加熱物の抵抗成分と同等となるように設定するものである。
【0102】
即ち、本実施の形態5においては、第一の共振回路に含まれる第一の加熱コイル群からみた共振周波数近傍での被加熱物の抵抗値と、第二の共振回路に含まれる第二の加熱コイル群からみた共振周波数近傍での被加熱物の抵抗値が同等となるように加熱コイルを設定することにより、図19における第一の共振回路の電力特性の波形73に示すように、第一の共振回路の電力特性の最大値が第二の共振回路の電力特性の最大値と同等になり、それぞれの加熱コイル群から被加熱物に供給できる電力が同レベルになってバランスよく加熱することができる。これによって、調理容器内での非加熱物の偏りや、調理容器の載置場所の偏りなどによって熱の通りに差が出るのを抑制することができる。
【0103】
ここで、主に高い動作周波数で電力を供給する第一の加熱コイル群からみた被加熱物の抵抗値を、主に低い動作周波数で電力を供給する第二の加熱コイル群からみた被加熱物の抵抗値より下げる方法としては、第一の加熱コイルの巻き数を第二の加熱コイルより少な
くすることや、第一の加熱コイルと被加熱物との距離を第二の加熱コイルと被加熱物との距離よりも遠ざけて配置するなど、その方法は如何なる手段でもよい。
【0104】
以上、本発明の実施の形態1〜5の説明では、2つのスイッチング素子を用いたインバータ回路であって、また第一の共振回路および第二の共振回路を整流回路の負の電位側に接続した回路構成で行ったが、インバータ回路や共振回路の接続方法をこれに限定するものではなく、インバータ回路を構成するスイッチング素子の少なくとも一カ所の動作周波数の変更によって複数の共振回路を同時に制御できる構成であればよい。
【0105】
また、上記実施の形態1〜5は、6つまでの加熱コイルの配置および接続方法、電力の入れ方を説明したが、加熱コイルの数は複数であればいくらでもよい。
【0106】
また、加熱コイルの配置構成も図示したものだけでなく、点対称や線対称に配置されれば上記実施の形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。なお、完全に対称に配置されず、少々のずれがあっても本発明の効果に大きな影響を及ぼさないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、誘導加熱調理器において、インバータ回路の接続を変えることなく、被加熱物を均一に加熱することと、対流を発生させる加熱方法の両方を行うことができるため、誘導加熱調理器をはじめとする家庭機器だけでなく、業務用や産業用など加熱バランスを適宜変更したい誘導加熱装置の全てにおいて有用である。
【符号の説明】
【0108】
11 加熱領域
41 交流電源
42 整流手段
43 インバータ回路
44 第一の共振回路
45 第二の共振回路
55 第一の加熱コイル
56 第一の共振コンデンサ
57 第二の加熱コイル
58 第二の共振コンデンサ
59 制御手段
60 スナバコンデンサ
71 第一の共振回路の電力特性
72 第二の共振回路の電力特性
73 第一の共振回路の電力特性
81 第一の加熱コイル
82 第二の加熱コイル
83 第三の加熱コイル
84 第四の加熱コイル
85 第五の加熱コイル
86 第六の加熱コイル
91 第三の共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、
前記複数の加熱コイルと共振回路を形成する複数の共振コンデンサと、
前記複数の加熱コイルに高周波電流を供給する単一のインバータ回路と、
前記インバータ回路へ駆動信号を出力して前記インバータ回路の動作を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、少なくとも前記インバータ回路の動作周波数を制御する機能を有し、
前記複数の加熱コイルおよび前記複数の共振コンデンサのうち、第一の加熱コイルと第一の共振コンデンサによって形成される第一の共振回路の共振周波数は、第二の加熱コイルと第二の共振コンデンサによって形成される第二の共振回路の共振周波数よりも高くなるように前記第一の加熱コイルまたは前記第一の共振コンデンサの値を設定し、
前記第一の共振回路および前記第二の共振回路を前記単一のインバータ回路に接続した構成であって、
前記制御手段による前記インバータ回路の動作の制御によって、前記第一の加熱コイルと前記第二の加熱コイルに流れる高周波電流を同時に変化させるとともに、
前記インバータ回路に接続した共振回路数と同数の周波数領域を一定間隔で切り替えて被加熱物を誘導加熱する誘導加熱装置。
【請求項2】
複数の周波数領域を切り替える間隔を複数有する請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記第一の加熱コイルおよび/または前記第二の加熱コイルは複数の加熱コイルで構成する請求項1または2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記複数の加熱コイルを被加熱物の加熱領域の中心から点対称となるように配設し、点対称に位置する加熱コイルを同一の共振回路に接続する請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記複数の加熱コイルを被加熱物の加熱領域の中心から線対称となるように配設し、隣り合う加熱コイルを同一の共振回路に接続する請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
主に第一の加熱コイルから被加熱物に電力を供給する動作周波数における第一の共振回路に現れる抵抗値と、主に第二の加熱コイルから被加熱物に電力を供給する動作周波数における第二の共振回路に現れる抵抗値を略同一とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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