説明

誘導加熱調理器

【課題】保持部材をコンパクト化することができる誘導加熱調理器を得る。
【解決手段】被加熱物10が載置されるトッププレート11と、トッププレート11に形成され、被加熱物10の載置位置を示す加熱口12と、トッププレート11の下方に配置され、1つの加熱口12に対して複数設けられた加熱コイル2と、1つの加熱口12に対して設けられた複数の加熱コイル2を保持するコイルベース6と、コイルベース6の下方に設けられ、コイルベース6を支持する支持手段7と、を備え、支持手段7は、平面視において隣接する加熱コイル2間に配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加熱コイルを有する誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術においては、例えば、「被加熱物を載置するトッププレートと、前記トッププレートの下方に設けられ、平面視において互いの中心位置が異なる複数の誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルを冷却する冷却風を供給する送風機と、複数の前記誘導加熱コイルのそれぞれを保持する複数のコイル保持部材と、前記コイル保持部材を支持する支持手段と、を備え、複数の前記コイル保持部材が、一体的に形成されて又は互いに固着されて単一のコイル保持体を構成することを特徴とする誘導加熱調理器。」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−272459号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の誘導加熱調理器では、一般的にほぼ等しい直径の複数の加熱コイルが用いられており、これらの加熱コイルは内部で筐体の上面となるトッププレートの下方に設置されている。加熱コイルが設置される際には、加熱コイルを保持する保持部材(コイルベース)により各々の加熱コイルが保持されるとともに、保持部材を支持する支持手段によりトッププレートの裏面に押し当てられるようになっている。一般的な誘導加熱調理器の加熱口の構成としては、一個の加熱口に対して一組の加熱コイルと対応する駆動回路から成り、保持部材も個別に駆動可能な加熱コイルに対して一個備えるものであった。
従って、個別に駆動可能な加熱コイルの設置数に応じた数だけ保持部材を備える必要がある。このため、筐体内の保持部材用の載置エリアが増え、周辺に電子部品や風路を設置するための大きな空間が減少してしまい、電子部品点数の増加に伴うコスト増加、もしくは風路面積減少に伴い通風抵抗が増加することで、冷却用ファン高速化による運転騒音が増加する傾向にあった。
【0005】
そのような課題に対応するため、上記特許文献1に記載の誘導加熱調理器では、複数の加熱コイルをそれぞれ保持する複数の保持部材が一体的に形成されて又は互いに固着されて単一の保持部材を構成している。これによれば、支持手段の数が少なくできるために通風抵抗の増加を抑制できるとともに、部品点数を減らして組立作業を簡素化できるという狙いがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の誘導加熱調理器では、保持部材が保持する加熱コイルの数が多い場合、もしくは保持部材のサイズが大きい場合には、支持手段が複数の加熱コイルから離れた外周にあるため、保持部材の占有スペースが増えてしまう、という問題点があった。
また、保持部材の占有スペースが増えることで、例えば保持部材の下方に電子回路を配置する場合には、高さが制限されたり誘導加熱の影響などが生じることとなる。
【0007】
また、加熱コイルから離れた位置に少ない支持手段で保持部材を支持しているため、保持部材が撓み易くなる、という問題点があった。
更に、強度確保のために、保持部材にリブを多数入れるなどして強固にしても、保持部材の重量増加に伴うコストアップや、加熱コイルを冷却するための露出面積の減少による冷却能力の低下、更には運転騒音の増加に繋がる恐れがあった。
【0008】
また、支持手段が圧縮バネなど金属製の場合、加熱コイルの下方に支持手段を設けると誘導加熱され易く、高温化することで周辺部品が想定以上の熱変形が発生するなど劣化してしまう、という問題点があった。
【0009】
更に、支持手段を、銅線などで高密度に形成された加熱コイルの下方に設けている。このため、加熱コイルと保持部材などから構成される加熱コイルユニットを筐体内に設置する場合、加熱コイルの下方に組み付け箇所が位置することとなる。これにより、加熱コイルユニットの被支持部分と支持手段との組立作業時に、加熱コイルユニットの上方から組み付け箇所が確認しづらく組立性が悪い、という問題点があった。そのため、複数の加熱コイルを一体的に保持する構成としてあまり現実的なものではなかった。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、保持部材をコンパクト化することができる誘導加熱調理器を得るものである。
また、保持部材の撓みを抑制することができる誘導加熱調理器を得るものである。
また、組立性を向上することができる誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る誘導加熱調理器は、被加熱物が載置されるトッププレートと、前記トッププレートに形成され、前記被加熱物の載置位置を示す加熱口と、前記トッププレートの下方に配置され、1つの前記加熱口に対して複数設けられた加熱コイルと、1つの前記加熱口に対して設けられた前記複数の加熱コイルを保持する保持部材と、前記保持部材の下方に設けられ、前記保持部材を支持する支持手段と、を備え、前記支持手段は、平面視において隣接する前記加熱コイル間に配置されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、支持手段を平面視において隣接する加熱コイル間に配置したので、保持部材をコンパクト化することができる。また、保持部材の撓みを抑制することができる。また、組立性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の全体斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る加熱コイルユニットの構成図である。
【図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器のブロック構成図である。
【図4】実施の形態1に係る加熱駆動動作を説明する図である。
【図5】実施の形態1に係る加熱コイルユニットの別の例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
(構成)
図1は実施の形態1に係る誘導加熱調理器の全体斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態の誘導加熱調理器100は、筐体1の上面にトッププレート11が設けられ、鍋などの被加熱物10を載置できるようになっている。トッププレート11には、加熱口12(12a、12b、12cをまとめて12と呼ぶ)が形成されており、被加熱物10を載置する位置を示している。ここでは、筐体1の手前左右の2箇所と、筐体1の奥ほぼ中央の1箇所に加熱口12が配置されている。
また、トッププレート11の後方には複数の通気孔が形成されており、冷却ファン14(14a、14bをまとめて14と呼ぶ)が筐体1の外部から吸気する吸気口15(15a、15bをまとめて15と呼ぶ)と、筐体1内部の冷却後に筐体1の外部へ排気する排気口16に、冷却空気が通過するようになっている。ここではトッププレート11の後方に通気孔を形成している場合を例に示しているが、これに限定するものではなく、例えば、トッププレート11後方の通気孔をなくして筐体1前面及び背面に通気孔を形成してもよい。また、冷却ファン14は軸流ファンの場合を例に示しているが、これに限定するものではない。
また、トッププレート11の前方には、ユーザから指示を受け付けるための操作部5が設けられている。
【0015】
筐体1の内部かつトッププレート11の下方には、加熱コイルユニット13が配置されている。筐体1の中央底部にはグリル9が配置され、グリル9を挟んで筐体の右側には右制御基板25aとその後方に右冷却ファン14aを配設し、右制御基板25aの上方には右加熱コイルユニット13aが設けられている。同様に、グリル9を挟んで右側と略対称に、左制御基板(図示省略)とその後方に左冷却ファン14bを配設し、左制御基板の上方には左加熱コイルユニット13bが設けられている。
【0016】
各制御基板25は、加熱コイル2に高周波電源を供給させるためのインバータ3と、加熱コイル2や冷却ファン14を駆動させる駆動モータを制御する制御部8と、鍋などの被加熱物10のトッププレート11上での載置状態を検知する鍋載置判別部4と、を有している。インバータ3は、スイッチング素子等の発熱部分で形成された回路と、その回路に接続されている1または2以上のコンデンサとで構成されている。
【0017】
加熱コイルユニット13上の加熱コイル2は、電流によって発生する磁力線によって、加熱コイル2(後述)の上方に載置される被加熱物10に渦電流が生じ、被加熱物10自体を発熱させるようになっている。
なお、本実施の形態では、3つの加熱口12の全てが誘導加熱できるよう加熱コイルユニット13を配置しているが、中央後方の加熱口12などで商用周波数の交流電力が供給されてヒータそのものが発熱することにより輻射熱で被加熱物10を加熱するラジエントヒータ(図示せず)など他の加熱方式を採用しても良い。
【0018】
図2は実施の形態1に係る加熱コイルユニットの構成図である。
図2に示すように本実施の形態では、単独で被加熱物10を加熱可能な第一の加熱コイル2aと、この第一の加熱コイル2aと共同または単独で被加熱物10を加熱可能な第二の加熱コイル2b及び第三の加熱コイル2cとが設けられている。
第一の加熱コイル2a、第二の加熱コイル2b、および、第三の加熱コイル2cは、それぞれ高周波電流を供給されることにより高周波磁界を発生し、トッププレート11上に載置された被加熱物10に渦電流を発生させることで、被加熱物10を加熱するようになっている。
図2では、略円形状に形成された第一の加熱コイル2aの周辺に、略楕円形状に形成された第二の加熱コイル2bを2箇所に分けて配置し、また略楕円形状に形成された第三の加熱コイル2cを2箇所に分けて配置する例を示す。
また、第二の加熱コイル2b及び第三の加熱コイル2cは略同一形状とし、筐体上方から見て(平面視)、前後左右に合わせて4箇所に位置するよう配置されている。つまり、2つの第二の加熱コイル2bが、第一の加熱コイル2aを挟んで左右方向に対向して配置され、2つの第三の加熱コイル2cが、第一の加熱コイル2aを挟んで前後方向(奥行き方向)に対向して配置されている。
また、第二の加熱コイル2bの2個、及び第三の加熱コイル2cの2個は、それぞれ電気的に直列に接続されており、インバータ3a、3b、3c(まとめてインバータ3と呼ぶ)から供給された高周波電流が流れるように構成されている。
【0019】
加熱コイルユニット13は、加熱コイル2と、コイルベース6と、フェライト19と、防磁リング17と、を有している。
コイルベース6は、1つの加熱口12に対して設けられた複数の加熱コイル2を一体的に保持している。具体的には、コイルベース6は、円形状に構成し、第一の加熱コイル2aと、その周辺の4箇所にそれぞれ分けて配置した第二の加熱コイル2b及び第三の加熱コイル2cとを保持している。このように、コイルベース6は、個別駆動が可能な5個の加熱コイル2(実際に個別駆動可能な加熱コイルは3個)を保持している。
なお、コイルベース6は、本発明における「保持手段」に相当する。
【0020】
防磁リング17は、コイルベース6の外周に、各加熱コイル2を取り囲むように設けられている。防磁リング17は、加熱コイル2の外周を囲むことで、高周波電流が流れた際に上方の被加熱物10に到達しない高周波磁界が、加熱コイル2の外部及び筐体1外部に漏れることを抑制している。
この防磁リング17は、短冊状の導電性部材の両端部を電気的に導通可能に結合して形成されている。例えば、一方向に長い部材を円状に曲げ、端部をカシメるなどの圧接または溶接した結合部18を設けることで形成し、電気的に導通したものになっている。従って、加熱コイル2により高周波磁界が発生すると、防磁リング17には渦電流が流れ、防磁リング17の内部抵抗により熱へと変換されることにより、漏れ磁束を抑制することとなる。
そして、防磁リング17の両端部を結合した結合部18は、コイルベース6で保持した複数の加熱コイル2のうち、平面視において隣接する加熱コイル2の間に配置されている。例えば、隣接した加熱コイル2の間が広い位置に配置されている。
なお、本実施の形態においては、円形状のコイルベース6の外周を囲むように、防磁リング17を円形に形成した場合を説明するが、これに限るものではない。
なお、防磁リング17は、本発明における「防磁手段」に相当する。
【0021】
また、コイルベース6には加熱コイル2の下方にフェライト19が設けられている。フェライト19は、加熱コイル2で発生した磁界が加熱コイルユニット13よりも下方に流れるのを防止するとともに、磁界を被加熱物10へと集中させる目的がある。本実施の形態では設置例として、加熱コイル2の巻線と概直交するように、すなわち加熱コイル2に対して放射線状にする場合を図示している。
【0022】
コイルベース6の下面には、被支持部材20が形成されている。被支持部材20は、例えば下部が開口した概円筒形状となっている。この被支持部材20を支持する位置には、支持手段7が配置されている。支持手段7としては、圧縮バネ等の弾性体が例として挙げられ、支持手段7は上部がコイルベース6の被支持部材20に挿入され、下部は加熱コイルユニット13の下方に配置したコイル冷却ダクト21に固定されている。これにより、コイルベース6は、支持手段7を介してコイル冷却ダクト21に支持される。
【0023】
支持手段7及び被支持部材20は、平面視において隣接する加熱コイル間に配置されている。つまり、コイルベース6で保持した複数の加熱コイル2の間で、隣接した加熱コイル2の間が広い位置に配置されている。本実施の形態では、2箇所に分けて配置した第二の加熱コイル2bと、2箇所に分けて配置した第三の加熱コイル2cとの間の計4箇所に配置されている。
なお、支持手段7の数はこれに限るものではなく、コイルベース6が保持する加熱コイル2の数や、大きさなどにより適宜設定することができる。
また、図2の例では、隣接する加熱コイル2間の外周寄りに配置した場合を示すが、本発明はこれに限るものではない。例えば、隣接する加熱コイル2間の中央や内周寄りに配置しても良い。また、図2の例では、第二の加熱コイル2bと第三の加熱コイル2cとの間に支持手段7を配置したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第一の加熱コイル2aと第二の加熱コイル2bとの間や、第一の加熱コイル2aと第三の加熱コイル2cとの間に配置しても良い。
【0024】
また、支持手段7は、隣接する加熱コイル2のうち、一方の加熱コイル2から生じる磁束と他方の加熱コイル2から生じる磁束とが、平面視において逆向きとなる位置に配置される。本実施の形態では、図2に示す矢印のように、第二の加熱コイル2bと第三の加熱コイル2cとに流れる電流は、第二の加熱コイル2bと第三の加熱コイル2cとの間の最も近い場所が打ち消しあう方向すなわち逆方向となるような構成となっている。なお、各加熱コイル2には高周波電流が供給されるため電流の向きは交互に変化するものであり、図2に示す電流の方向はある瞬間における電流の向きを示すものである。
なお、隣接する加熱コイル2の電流が同一周波数、逆位相となるようにインバータ3を駆動して、隣接する加熱コイル2間における磁束の向きが逆方向となるようにしてもよい。また、隣接する加熱コイル2で巻線の巻回方向を逆向きとして、同一波形の高周波電流を供給するようにインバータ3を駆動して、隣接する加熱コイル2間における磁束の向きが逆方向となるようにしてもよい。
【0025】
また、支持手段7は、平面視において防磁リング17の内側に設けられている。つまり、支持手段7は、コイルベース6の外周より内側で、且つ、隣接する加熱コイル2間に配置されている。
【0026】
また、支持手段7は、コイルベース6の下方のうち、複数の加熱コイル2の各中心間を結ぶ直線上以外の位置に設けられている。本実施の形態では、図2に示すように、略円形に形成された第一の加熱コイル2aと、略楕円形状に形成された第二の加熱コイル2bおよび第三の加熱コイル2cとの各中心間を結ぶ直線以外の位置に支持手段7を配置している。
【0027】
また、支持手段7は、例えば圧縮バネなどの弾性体により構成され、コイルベース6をトッププレート11の裏面に押し付けるように支持する。
コイルベース6の上面には、支持手段7と対向する上方位置に、間隔保持部材22が設けられている。トッププレート11が設けられた状態においては、間隔保持部材22は、トッププレート11の下面に押し当てられる。そして、コイルベース6及び加熱コイル2は、トッププレート11の下面と所定の間隔を空けて、トッププレート11と概平行に配置される。これにより、被加熱物10と加熱コイル2の上面部との距離が適切に保たれて、誘導加熱を効率良く行なうことができる。また、加熱コイル2上面とトッププレート11下面との間隔を適切に保ち、これらの間に加熱コイル2を冷却する冷却風が通過することを可能としている。間隔保持部材22の材質としては、コイルベース6の一部を用いても良いが、コイルベース6とは別部材でゴムなど弾性のある材質で形成すると、間隔保持部材22とトッププレート11との密着度が向上するため、振動落下時など強い衝撃が加わった際でも加熱コイルユニット13の位置ずれを抑えることが可能となる。トッププレート11が設けられた状態においては、支持手段7はトッププレート11とコイル冷却ダクト21とによって圧縮される。この反力により、コイルベース6上の間隔保持部材22は、トッププレート11に直接的または間接的に押し当てられることとなる。
なお、ここでは間隔保持部材22をコイルベース6の上面に設ける場合を説明したが、これに限らず、トッププレート11の裏面側に設けるようにしても良い。つまり、間隔保持部材22は、トッププレート11とコイルベース6との間であって、支持手段7の上方に設けるようにすれば良い。
【0028】
また、コイルベース6には、加熱コイル2を保持しない部分とフェライト19が設けられていない部分及び被支持部材20には、空隙23が設けられており、通風可能となっている。また、保持する加熱コイル2の重量に耐えうる最低限のリブが形成されながら、通風抵抗の少ない構造となっている。
【0029】
コイルベース6の下方には、コイル冷却ダクト21が対向配置されている。コイル冷却ダクト21は、制御基板が収納されたケース(図示省略)と接続されており、冷却ファン14から送風されて制御基板ケース内を通過した後の空気がコイル冷却ダクト21内に流れ込むようになっている。また、コイル冷却ダクト21の上面(コイルベース6との対向面)には、加熱コイル2に向けて噴き出させる複数の噴流穴24が風路の壁面上(上面)に形成されている。
【0030】
図3は実施の形態1に係る誘導加熱調理器のブロック構成図である。
図3において、鍋載置判別部4は、被加熱物10が加熱コイル2に対してどのような位置関係で載置されているかを判別し、制御部8へと出力する。被加熱物10の載置位置判別は、各加熱コイル2を上面から見た投影面積と被加熱物10の底面の面積とを比較し、投影面積の被加熱物10の底面の面積に占める割合を算出することで、被加熱物10の設置状態を検知して行なう。検知手段の具体例としては、例えば、各加熱コイル2の間に設けた照度センサのレベルにより設置状態を検知するものや、各加熱コイル2に微弱電流を流すことで変化するインピーダンス値から設置状態を検知するものなどの、任意の検知方法を用いることができる。
制御部8は、操作部5からの操作指示や鍋載置判別部4の検知結果等に基づき、インバータ3a、3b、3cの駆動を制御する。各インバータ3は、制御部8からの駆動信号によりスイッチング素子が駆動され、高周波電流を加熱コイル2に供給する。
【0031】
(動作)
以下、加熱時の具体的な動作の流れについて説明する。
使用者から操作部5を介して制御命令が入力されると、制御部8は第一のインバータ3a、第二のインバータ3b及び第三のインバータ3cの出力を制御し、加熱の開始/停止や火力の設定などを行なうと同時に、冷却ファン14を駆動させる。鍋載置判別部4は、加熱コイル2a〜2cに対向するトッププレート11上に被加熱物10が加熱コイル2a〜2cに対してどのような位置関係で載置されているかを判別する。鍋載置判別部4による判別結果は、制御部8に出力され、制御部8は入力された判別結果に基づいてインバータ3a〜3cを制御するように動作する。
【0032】
図4は実施の形態1に係る加熱駆動動作を説明する図である。
図4(1)には、加熱コイル2上方から見て楕円形状の被加熱物10が左右方向に載置される例を示している。このとき、鍋載置判別部4は、第一の加熱コイル2a上に被加熱物10の底面の面積のうちの約5割、第二の加熱コイル2b上に被加熱物10の底面の面積のうちの約4割、第三の加熱コイル2c上に被加熱物10底面の面積のうちの約1割が載置されているものと判断する。その結果、制御部8は、鍋載置判別部4による出力に基づき、第一の加熱コイル2aに当該加熱口で投入可能な最大電力3.0kWのうち6割である1.8kWを、第二の加熱コイル2bには最大電力3.0kWのうち4割である1.2kWを投入するようインバータ3a、3bを駆動し、第三の加熱コイル2cには電力を投入しないようインバータ3cを動作する。
【0033】
図4(2)には、加熱コイル2上方から見て楕円形状の被加熱物10が上下方向に載置される例を示している。このとき、鍋載置判別部4は、第一の加熱コイル2a上に被加熱物10の底面の面積のうちの約5割、第三の加熱コイル2c上に被加熱物10の底面の面積のうちの約4割、第二の加熱コイル2b上に被加熱物10の底面の面積のうちの約1割が載置されているものと判断する。その結果、制御部8は、鍋載置判別部4による出力に基づき、第一の加熱コイル2aに当該加熱口で投入可能な最大電力3.0kWのうち6割である1.8kWを、第三の加熱コイル2cには最大電力3.0kWのうち4割である1.2kWを投入するようインバータ3a、3cを駆動し、第二の加熱コイル2bには電力を投入しないようインバータ3cを動作する。
【0034】
上記のような動作によって、加熱コイル2を駆動させることにより、インバータ3に実装される電子部品は自己発熱し温度上昇する。また、加熱コイル2も自己発熱し温度が上昇するとともに、漏れ磁束を抑制する防磁リング17は誘導加熱により温度上昇する。
冷却ファン14が駆動することにより発生する冷却風は、吸気口15より吸い込まれ、制御基板25を収納したケース内に流入する。制御基板25のケースに流入した冷却風は、制御基板25上の電子回路部品を冷却した後、コイル冷却ダクト21に流入する。
コイル冷却ダクト21に流入した冷却風は、コイル冷却ダクト21上面の噴流穴24より上方に噴き出され、上方に配置された加熱コイル2の冷却を行なう。コイルベース6には空隙23が多数設けられているので、噴流穴24から噴き出された冷却風は直接またはトッププレート11との隙間を通過しながら、効率良く加熱コイル2に到達する。
また、コイルベース6に設けられた防磁リング17とフェライト19へも直接または間接的に冷却風は供給される。加熱コイル2などを冷却した冷却風は、筐体1上面の後方中央に設けられた排気口16に向かう気流を形成し、最終的に排気口16より筐体1外部へと吐き出される。
【0035】
なお、上記の説明では、1つの加熱コイルユニット13に、略円形に形成された第一の加熱コイル2aと、略楕円形状に形成された第二の加熱コイル2bおよび第三の加熱コイル2cとを配置した場合を説明したが、本発明はこれに限るものではない。略円形状の加熱コイル2のみ、または、略楕円形状の加熱コイル2のみをコイルベース6に複数配置しても良い。また、配置位置も任意に設定することができる。例えば、略楕円状に形成した複数の加熱コイル2を一列に配置するようにしても良い。以下、このような配置例について図5により説明する。
【0036】
図5は実施の形態1に係る加熱コイルユニットの別の例を示す上面図である。
図5において、コイルベース6は、図2の構成と同様に単独もしくは共同で可能な加熱コイル2を一体的に保持している。平面視において、単独で被加熱物10を加熱可能な第一の加熱コイル2aをコイルベースの中央に配置し、第一の加熱コイル2aと共同または単独で被加熱物10を加熱可能な第二の加熱コイル2b及び第三の加熱コイル2cを、第一の加熱コイル2aを挟んで略対称に配置している。
このような加熱コイル2の配置においても、支持手段7は、平面視において隣接する加熱コイル2の間に配置されている。また、支持手段7は、コイルベース6の下方のうち、略楕円状に形成された各加熱コイル2の各中心間を結ぶ直線上以外の位置に設けられる。また、支持手段7は、平面視において防磁リング17の内側に設けられている。
また、防磁リング17の結合部18は、平面視において隣接する加熱コイル2の間に配置されている。その他の構成は上述した図2と同様の構成である。従って、図5のような加熱コイルユニット構成など同様の個別駆動可能な複数の加熱コイル2を一体的に保持したコイルベース6構成の場合においても、本実施の形態の効果を得ることが可能である。
【0037】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、コイルベース6により、1つの加熱口12に対して設けられた複数の加熱コイル2を保持し、コイルベース6を支持する支持手段7は、平面視において隣接する加熱コイル2間に配置している。
このため、加熱コイルユニット13の外周から支持手段7が大きく飛び出さないので、支持手段7を設置するエリアを水平方向でコンパクト化することができる。また、コイルベース6のサイズが大型化することにより発生する基板分割などによる電子部品点数や配線の増加に伴うコスト増加を防止することができる。同時に、風路面積減少すなわち通風抵抗の増加に伴う冷却ファン14の回転数を高回転化する必要もなくなるため、運転騒音の増大を防止することが可能となる。
【0038】
また、複数の加熱コイルを、複数のコイルベースにそれぞれ別々に載置する場合に比べ、コイルベース6の数が少なくて済み部品点数が削減できる。また、筐体1への加熱コイルユニット13の取り付け工数が減り、組立コストが削減できる。よって組立性に優れた誘導加熱調理器を得ることができる。
【0039】
また、コイルベース6のサイズを仮に大きくした場合でも、支持手段7をコイルベース6の外周部に設けた場合と比較して、複数の加熱コイル2の重心に近い場所で下方から支持できるので、コイルベース6の撓みを防止することできる。特に熱可塑性樹脂で形成したコイルベース6が使用中に高温となることで撓んでしまうのを防止することができる。よって、コイルベース6の強度が高く信頼性の高い誘導加熱調理器100を提供することができる。
なお仮に、支持手段7をコイルベース6の外周部に設けた場合には、複数の加熱コイル2の重量を支えるべくコイルベース6にリブを多数設けることとなり、空隙23が少なく冷却能力の低い加熱コイルユニット13となってしまう。
【0040】
また、コイル冷却ダクト21上面に設けた噴流穴24から見て加熱コイル2が支持手段7により隠れてしまうことがなくなるので、噴流穴24から噴き出された冷却風が支持手段7により妨害されることなく、加熱コイル2へと到達し易く冷却能力に優れた加熱コイルユニット13を構成することができる。
【0041】
また、加熱コイルユニット13を筐体1内に設置する場合でも、被支持部材20と支持手段7との位置関係を加熱コイルユニット13上方から確認し易くなるため、概円筒形状とした被支持部材20に支持手段7の上部を挿入する際などでも容易に作業することができ、組立性に優れた誘導加熱調理器を提供することができる。
なお仮に、支持手段7を加熱コイル2の下方などに設けた場合には、加熱コイルユニット13の上方から被支持部材20と支持手段7との位置関係を確認するのは極めて難しくなる。
【0042】
また本実施の形態においては、支持手段7は、隣接する加熱コイル2のうち、一方の加熱コイル2から生じる磁束と他方の加熱コイル2から生じる磁束とが、平面視において逆向きとなる位置に配置されている。
このため、支持手段7が金属製圧縮バネなどの導電性材料により構成した場合でも、誘導加熱されにくくすることができ、加熱による温度上昇を抑制することができる。よって、高温化に伴う支持手段7と接触しているコイル冷却ダクト21や被支持部材20の劣化を防止することができる。
なお仮に、加熱コイル2の下方に支持手段7を設けた場合には、金属製圧縮バネなど誘導加熱される材質で構成した際、誘導加熱されて高温化してしまい、周辺部品の劣化や酸化を促進してしまう恐れがある。
【0043】
また本実施の形態においては、複数の加熱コイル2は、平面視において、略円形または略楕円形状に形成され、支持手段7は、コイルベース6の下方のうち、複数の加熱コイル2の各中心間を結ぶ直線上以外の位置に設けられている。
このため、略円形状または略楕円形状の加熱コイル2と支持手段7との距離を遠ざけられ、支持手段7の誘導加熱による影響を確実に防止することができる。また、コイルベース6のサイズをコンパクトにして周辺電子部品や風路用の面積拡大を図ることができる。
【0044】
また本実施の形態においては、コイルベース6の外周に複数の加熱コイル2を取り囲むように設けられ、複数の加熱コイルからの磁束漏れを抑制する防磁リング17を備えている。
これにより、複数の加熱コイル2からの漏れ磁束を低減することができる。また、複数の加熱コイル2それぞれに防磁リング17を設けることなく部品点数を削減でき、部品コスト・組立コストを低減することができる。
【0045】
また本実施の形態においては、防磁リング17の結合部18を平面視において一つのコイルベース6が保持する複数の加熱コイル2の間に設けているので、接触抵抗が大きく電流が流れた際に局所的に高温化する結合部18と加熱コイル2との距離が離れ、誘導加熱されて流れる電流値を低減し、結合部18の高温化防止が可能となる。それにより、耐久性・信頼性の高い誘導加熱調理器を提供することができる。
【0046】
また本実施の形態においては、間隔保持部材22を、トッププレート11とコイルベース6との間であって、支持手段7の上方に設けたので、コイルベース6が被支持部材20を介して支持手段7により下方から押し上げられた状態でも、間隔保持部材22を挟んでトッププレート11により上方から押さえられているので、コイルベース6の撓みを防止することができる。特に熱可塑性樹脂で形成したコイルベース6が使用中に高温となることで撓んでしまうのを防止することができる。よって、コイルベース6の強度が高く信頼性の高い誘導加熱調理器100を提供することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、誘導加熱調理器100をビルトイン型(システムキッチン一体型)IHクッキングヒータに用いた場合を例に説明したが、これに限定するものではなく、据え置き型や卓上型のIHクッキングヒータに用いても同様の作用効果を有することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器は、ビルトイン型はもちろん据え置き型の誘導加熱調理器の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 筐体、2 加熱コイル、3 インバータ、4 鍋載置判別部、5 操作部、6 コイルベース、7 支持手段、8 制御部、9 グリル、10 被加熱物、11 トッププレート、12 加熱口、13 加熱コイルユニット、14 冷却ファン、15 吸気口、16 排気口、17 防磁リング、18 結合部、19 フェライト、20 被支持部材、21 コイル冷却ダクト、22 間隔保持部材、23 空隙、24 噴流穴、25 制御基板、100 誘導加熱調理器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートに形成され、前記被加熱物の載置位置を示す加熱口と、
前記トッププレートの下方に配置され、1つの前記加熱口に対して複数設けられた加熱コイルと、
1つの前記加熱口に対して設けられた前記複数の加熱コイルを保持する保持部材と、
前記保持部材の下方に設けられ、前記保持部材を支持する支持手段と、
を備え、
前記支持手段は、平面視において隣接する前記加熱コイル間に配置された
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱コイルに高周波電流を供給する駆動回路を備え、
前記支持手段は、
隣接する前記加熱コイルのうち、一方の加熱コイルから生じる磁束と他方の加熱コイルから生じる磁束とが、平面視において逆向きとなる位置に配置された
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記複数の加熱コイルは、
平面視において、略円形または略楕円形状に形成され、
前記支持手段は、
前記保持部材の下方のうち、前記複数の加熱コイルの各中心間を結ぶ直線上以外の位置に設けられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記保持手段の外周に前記複数の加熱コイルを取り囲むように設けられ、前記複数の加熱コイルからの磁束漏れを抑制する防磁手段を備え、
前記支持手段は、平面視において前記防磁手段の内側に設けられた
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記防磁手段は、
短冊状の導電性部材の両端部を電気的に導通可能に結合して形成され、
前記両端部を結合した結合部が、平面視において隣接する前記加熱コイル間に配置された
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記支持手段は、
前記保持部材を前記トッププレートの裏面に押し付けるように支持する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記トッププレートと前記保持部材との間であって、前記支持手段の上方に設けられ、前記トッププレートと前記複数の加熱コイルとの間隔を、所定の間隔に保つ間隔保持部材を備えた
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−243497(P2012−243497A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111126(P2011−111126)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【特許番号】特許第5047379号(P5047379)
【特許公報発行日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】