説明

誘電体磁器組成物および電子部品

【課題】誘電体磁器組成物において所定の材料組成をとることにより、−25〜105℃の温度範囲において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にある誘電体磁器組成物であって、前記傾きaが−7000〜−3000ppm/℃であることを特徴とする誘電体磁器組成物および電子部品を提供すること。
【解決手段】(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表される主成分と、Mgの酸化物から成る第1副成分と、MnまたはCrから選択される少なくとも1種の酸化物から成る第2副成分と、Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される1種以上)から成る第3副成分と、Siを含む酸化物から成る第4副成分とを、有する誘電体磁器組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広い温度範囲において、容量温度特性の絶対値が大きなものとなる誘電体磁器組成物、およびこの誘電体磁器組成物を誘電体層に有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
VR(Voltage Regulator)とは、ノート型パソコンなどのCPUを駆動させるDC/DCコンバータの電圧を一定にする機構である。このVRの出力電流はインダクタの抵抗(Rdc)によって検出される。しかし、発熱などによりRdcが変化することにより、検出値に誤差を与えてしまうという問題があり、幅広い温度範囲において、正常に使用できることが望まれている。
そこで、現状では、NTCサーミスタを使用することで誤差を補正する方法が採られている。
【0003】
また、VR機構の回路には通常コンデンサが用いられており、例えば、−5000ppm程度の絶対値が大きな容量温度特性を持つコンデンサを用いることによっても、この誤差を補正できると考えられる。この方法を用いることにより、NTCサーミスタが不必要になり、コストメリットが生じる。
【0004】
しかし、コンデンサの容量温度特性は絶対値が小さいものが望まれるため、現状では容量温度特性の絶対値が大きなコンデンサの報告はほとんどされていない。なお、通常のコンデンサは容量温度特性の絶対値が最大の場合でも、−1000ppm/℃あるいは、350ppm/℃程度である。
【0005】
特許文献1には、−1500〜−5000ppm/℃の容量温度特性を持ち、さらにSrTiOを20〜95重量%含有するセラミックを誘電体として用いたセラミックコンデンサが開示されている。しかし、特許文献1のセラミックコンデンサの誘電体層の組成は不明な部分があり、その他成分については全く記載がない。また、どのような温度範囲において、上記の容量温度特性を有し得るかの記載もない。
【0006】
【特許文献1】実開平5−61998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような現状を鑑みて、本発明は、誘電体磁器組成物において所定の材料組成を採用することにより、幅広い温度範囲において、容量温度特性の絶対値が大きなものとなる誘電体磁器組成物、およびこの誘電体磁器組成物を誘電体層に有する電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表される主成分と、特定の副成分とを有する誘電体磁器組成物が、大きな容量温度特性(−7000〜−3000ppm/℃)を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体磁器組成物は、
(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表される主成分と、
Mgの酸化物から成る第1副成分と、
MnまたはCrから選択される少なくとも1種の酸化物から成る第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種)から成る第3副成分と、
Siを含む酸化物から成る第4副成分とを、有する誘電体磁器組成物であって、
前記一般式では、
0.20≦x≦0.40
0≦y≦0.20
0≦z≦0.30、かつ
0.950≦m≦1.050であり、
前記主成分100モルに対して、各副成分の元素換算での比率が、
第1副成分:0.5〜5モル(元素換算)、
第2副成分:0.05〜2モル(元素換算)、
第3副成分:1〜8モル(元素換算)、
第4副成分:0.5〜5モル(酸化物、または複合酸化物換算)であり、
−25〜105℃の温度範囲において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にあり、
前記傾きaが−7000〜−3000ppm/℃であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電子部品は、上記いずれかの誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品であれば、特に限定されず、たとえば誘電体層と共に内部電極層とが交互に積層してあるコンデンサ素子本体を有する積層セラミックコンデンサ素子である。本発明では、内部電極層に含まれる導電材としては、特に限定されないが、たとえばNiまたはNi合金である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、誘電体磁器組成物において主成分と副成分が所定の材料組成をとることにより、幅広い温度範囲(例えば、−25〜105℃)において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にある誘電体磁器組成物であって、前記傾きaが−7000〜−3000ppm/℃であることを特徴とする誘電体磁器組成物および電子部品が提供される。
【0012】
また、任意の容量温度特性に対する静電容量変化率を一定の範囲内とすることができる。
【0013】
そのため、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層として、本発明の誘電体磁器組成物を使用することにより、例えば、NTCサーミスタを使用しなくても、Rdcの変化によるVRの出力電流の検出値の誤差を補正することが可能となる。また、本発明で規定する誘電体磁器組成物を用いるものであり、容量温度特性の絶対値が大きいことを必要とするものであれば、この用途に限定されない。
【0014】
このような誘電体磁器組成物が得られる理由は次のように考えられる。
【0015】
SrTiOは、比較的、容量温度特性の絶対値が大きいが(−3300ppm/℃)、その比誘電率のピークは通常使用される温度範囲(−25〜105℃)よりも、かなり低い温度において表れる。なお、ピークはキュリー温度の近傍で現れる。
【0016】
したがって、このピークが高温側にシフトすることにより、ピークより高温側の大きな勾配の部分が、通常使用される温度範囲に入る。なお、ピークを高温側にシフトさせる方法としては、SrTiOの一部をBaなどに置換することが考えられる。Baなどのイオン半径の大きな元素はピークを高温側へシフトさせる効果がある。
【0017】
本発明においては、この方法により、比誘電率のピークが高温側にシフトし、それにより、通常使用される温度範囲(−25〜105℃)に、ピークより高温側の大きな勾配部分が入る。その結果、前記温度範囲における容量温度特性の絶対値がより大きな誘電体磁器組成物を得ることができると考えられる。
【0018】
また、副成分を含有させることにより、大きな傾き、つまり、絶対値が大きな容量温度特性を維持しつつ、静電容量変化率を一定の範囲内とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
図2Aは、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を示す、傾き−5000ppm/℃を有する直線に対して静電容量変化率が−15%および+5%となる直線と、−25℃と105℃を示す直線により囲まれる平行四辺形が示されているグラフである。
図2Bは、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を示す、傾き−3000ppm/℃を有する直線に対して静電容量変化率が−15%および+5%となる直線と、−25℃と105℃を示す直線により囲まれる平行四辺形が示されているグラフである。
図3は、本願の実施例である試料1について、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を表したグラフである。
【0020】
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0021】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。また、一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0022】
誘電体層2
誘電体層2は、本発明の誘電体磁器組成物を含有する。
本発明の誘電体磁器組成物は、
(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表される主成分と、
Mgの酸化物から成る第1副成分と、
MnまたはCrから選択される少なくとも1種の酸化物から成る第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種)から成る第3副成分と、
Siを含む酸化物から成る第4副成分とを、有する。
【0023】
上記のとおり、誘電体組成物の主成分は、(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表されるペロブスカイト構造を有する化合物である。前記誘電体組成物の主成分は、ペロブスカイト構造におけるAサイトをBa,SrあるいはCaが占め、BサイトをTiあるいはZrが占めている。
【0024】
前記一般式中、xは、Ba,SrおよびCaで構成される、主成分のAサイトにおけるSrの比率を表す。xは、0.20≦x≦0.40、好ましくは、0.25≦x≦0.35である。xが小さすぎると誘電損失や静電容量変化率が悪化する傾向にあり、xが大きすぎると比誘電率が低下し、低温側の静電容量変化率が悪化する傾向にある。
【0025】
上記中、yは、AサイトにおけるCaの比率を表す。yは、0≦y≦0.20、好ましくは、0≦y≦0.1、さらに好ましくはy=0である。yが大きすぎると静電容量変化率が平坦化し、本願で好ましいとする範囲外となる傾向にある。
【0026】
上記中、zは、TiおよびZrで構成される、主成分のBサイトにおけるZrの比率を表す。zは、0≦z≦0.30、好ましくは、0≦z≦0.1、さらに好ましくはz=0である。zが大きすぎると比誘電率が低下し、静電容量変化率が平坦化して、本願で好ましいとする範囲外となる傾向にある。
【0027】
なお、y=0かつz=0の場合には、上記の一般式は、(Ba1−x SrTi で表され、xはBaとSrとの比率を示す。この場合であっても、xは上記の範囲であることが好ましい。
【0028】
前記一般式では、mは、主成分のAサイトおよびBサイトのモル比を表す。mは、0.950〜1.050であり、好ましくは、0.98〜1.02である。
【0029】
第1副成分(Mgの酸化物)の含有量は、前記主成分100モルに対して、元素換算で0.5〜5モルであり、好ましくは1〜4モルであり、さらに好ましくは1.5〜3モルである。第1副成分の含有量が少なすぎると、静電容量変化率が悪化し、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、緻密に焼結しなくなる傾向にある。
【0030】
第2副成分(Mnの酸化物、Crの酸化物)の含有量は、前記主成分100モルに対して、元素換算で0.05〜2モルであり、好ましくは0.1〜1モルであり、さらに好ましくは0.1〜0.5モルである。第2副成分の含有量が少なすぎると、絶縁抵抗が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。
【0031】
前記第2副成分は、Mnの酸化物またはCrの酸化物から選択される少なくとも1種であり、絶縁抵抗の観点から、好ましくはMnである。
【0032】
第3副成分(Rの酸化物)の含有量は、前記主成分100モルに対して、元素換算で1〜8モルであり、好ましくは2〜7モルであり、さらに好ましくは3〜5モルである。第3副成分の含有量が少なすぎると、高温負荷寿命が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、緻密に焼結しなくなる傾向にある。
【0033】
前記第3副成分のRは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種であり、高温負荷寿命と静電容量変化率の観点から、好ましくはTbおよびYであり、より好ましくはYである。
【0034】
第4副成分(Siを含む酸化物)の含有量は、前記主成分100モルに対して、酸化物換算で0.5〜5モルであり、好ましくは1〜4.5モルであり、さらに好ましくは2〜3.5モルである。第4副成分の含有量が少なすぎると、静電容量変化率が悪化する傾向にある。一方、多すぎると、緻密に焼結しなくなる傾向にある。
【0035】
前記第4副成分のSiを含む酸化物は複合酸化物でも、単純酸化物でもよいが、好ましくは複合酸化物であり、(Ba,Ca)SiO2+n (ただし、n=0.8〜1.2)であることがより好ましい。また、(Ba,Ca)SiO2+n におけるnは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0.8〜1.2である。nが小さすぎると、主成分に含まれるチタン酸バリウムと反応して誘電体特性を悪化させてしまう傾向にある。一方、nが大きすぎると、融点が高くなって焼結性を悪化させる傾向にある。なお、第4副成分においてBaとCaとの比率は任意であり、一方だけを含有するものであってもよい。
【0036】
本発明の誘電体磁器組成物は、第5副成分が添加されることが好ましい。第5副成分の含有量は、前記主成分100モルに対して、各元素換算で好ましくは0〜0.2モルであり、より好ましくは0.01〜0.07モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.06モルである。第5副成分の含有量が多すぎると、絶縁抵抗が悪化する傾向にある。
【0037】
前記第5副成分はV、Mo、W、TaおよびNbから選択される少なくとも1種であり、高温負荷寿命の観点から、好ましくはNbおよびVであり、より好ましくはVである。
【0038】
本明細書では、各成分を構成する各酸化物または複合酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物または複合酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各成分の上記比率は、第4副成分を除いて、各成分を構成する酸化物に含有される金属量による元素換算により求める。また、第4副成分は、酸化物または複合酸化物換算により求める。
【0039】
なお、上記主成分および副成分を焼結させることにより得られる焼結体の平均焼結体粒径は、好ましくは0.2〜1.5μmであり、より好ましくは0.2〜0.8μmである。
【0040】
誘電体層2の厚みは、特に限定されず、積層セラミックコンデンサ1の用途に応じて適宜決定すれば良い。
【0041】
本発明の誘電体磁器組成物では、−25〜105℃の温度範囲において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にあり、好ましくは−10〜0%の範囲内にある。
【0042】
前記傾きaは、−7000〜−3000ppm/℃であり、好ましくは−6000〜−4000ppm/℃であり、より好ましくは−5500〜−4500ppm/℃である。
【0043】
なお、図2Aおよび図2Bからわかるように、−25〜105℃の温度範囲において25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内とは、横軸を温度、縦軸を静電容量変化率としたグラフにおいては、前記−15%と+5%を表す、2本の平行線と、−25℃と105℃を表す、2本の平行線による、平行四辺形で囲まれる範囲である。すなわち、前記範囲は、前記傾きaが−5000ppm/℃の場合は、図2Aに示される平行四辺形で囲まれる範囲となり、前記傾きaが−3000ppm/℃の場合は、図2Bに示される平行四辺形で囲まれる範囲となる。
【0044】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0046】
積層セラミックコンデンサ1の製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0047】
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0048】
誘電体原料としては、上記した各成分の酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。
【0049】
また、上記各成分の原料のうち、少なくとも一部については、各酸化物または複合酸化物、焼成により各酸化物または複合酸化物となる化合物を、そのまま用いても良いし、あるいは、予め仮焼し、焙焼粉として用いても良い。
【0050】
なお、誘電体原料の主成分(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)O の原料の平均原料粒径は、好ましくは0.15〜0.7μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。平均原料粒径は0.15μmより小さいと平均焼結体粒径が0.2μm以下となり、比誘電率が低下し、高温側での静電容量変化率が悪化する傾向にある。また、平均原料粒径が0.7μmより大きいと、平均焼結体粒径が1.5μm以上となり、高温負荷寿命が悪化し、低温側の静電容量変化率が悪化する傾向にある。
【0051】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0052】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0053】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0054】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0055】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0056】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0057】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0058】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
【0059】
グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−10MPaとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0060】
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0061】
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましい。
【0062】
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0063】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−9〜10−5MPaとすることが好ましい。
【0064】
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。
【0065】
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間は0〜20時間が好ましい。
【0066】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。また、脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0067】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0069】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記構成の誘電体層を有するものであれば何でも良い。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0071】
実施例1
まず、表1の試料1に示す積層セラミックコンデンサについて説明する。
平均原料粒径が0.35μmである(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)O 、MgCO、MnO 、Y、BaCaSiOおよびVを準備し、これらをボールミルにて混合し、得られた混合粉を1200℃で予め仮焼して、平均粒径0.4μmの仮焼粉を調製した。次いで、得られた仮焼粉を、ボールミルで15時間、湿式粉砕し、乾燥して、誘電体原料を得た。なお、MgCOは、焼成後には、MgOとして誘電体磁器組成物中に含有されることとなる。
【0072】
主成分の組成および各副成分の含有量を表1の試料1に示す。第4副成分を除く各副成分の含有量は、主成分((Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)O )100モルに対して、元素換算での含有量である。第4副成分の含有量は、上記主成分100モルに対して、複合酸化物または各酸化物換算での含有量である。また、本実施例では、(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)O としてはm=1.000のものを使用した。
【0073】
次いで、得られた誘電体原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0074】
また、上記とは別に、Ni粒子:45重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0075】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが10μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0076】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:250℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1300℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス(酸素分圧:10−12MPa)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1100℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−7MPa)とした。
【0077】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×3.2mmであり、誘電体層の厚み8μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とした。
【0078】
得られた各コンデンサ試料について、比誘電率(εs)、誘電損失(tanδ)、絶縁抵抗(IR)、静電容量変化率(TC)、高温負荷寿命(HALT)、平均焼結体粒径を下記に示す方法により測定した。
【0079】
比誘電率εs
比誘電率εsは、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、1000以上を良好とした。結果を表2に示す。
【0080】
誘電損失(tanδ)
誘電損失(tanδ)は、コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定した。誘電損失は低いほうが好ましく、本実施例では、3%以下を良好とした。結果を表2に示す。
【0081】
絶縁抵抗(IR)
絶縁抵抗(IR)は、コンデンサの試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、25℃においてDC100Vを、60秒間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。絶縁抵抗は高いほうが好ましく、本実施例では、1×1010MΩ以上を良好とした。結果を表2に示す。
【0082】
静電容量変化率(TC)
コンデンサ試料に対し、−25℃と105℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件で静電容量を測定し、基準温度25℃における静電容量に対する−25℃および105℃での静電容量の変化率(単位は%)を算出した。本実施例では、−15〜+5%以内を良好とした。結果を表2に示す。
【0083】
高温加速寿命(HALT)
コンデンサ試料に対し、200℃にて、40V/μmの電界下で直流電圧の印加状態に保持し、寿命時間を測定することにより、高温加速寿命(HALT)を評価した。本実施例においては、印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を寿命と定義した。また、この高温加速寿命は、10個のコンデンサ試料について行った。本実施例では、3.1時間以上を良好とした。結果を表2に示す。
【0084】
平均焼結体粒径
誘電体粒子の平均焼結体粒径の測定方法としては、まず、得られたコンデンサ試料を内部電極に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、コード法により焼結体の形状を球と仮定して算出した。結果を表2に示す。
【0085】
実施例2
主成分の平均原料粒径、主成分の組成、主成分100モルに対する副成分の含有量、第3副成分および第4副成分の種類を、表1および3に示す値あるいは種類にした以外は、試料1と同様にして、コンデンサ試料を調整し、試料1と同様の評価を行った(試料2〜48)。結果を表2および表4に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
x(Aサイト中のSrの比率)の効果(試料1〜5)
表1および表3より、試料1、3、4では、xはもちろん、y、z、m、主成分に対する副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。そして、これらの試料1、3、4は、xが本発明の範囲よりも小さい場合(試料2)に比べ、誘電損失および静電容量変化率において良好な値を示す。また、試料1、3、4は、xが本発明の範囲よりも大きい場合(試料5)に比べ、比誘電率および低温側の静電容量変化率において良好な値を示す。
【0091】
y(Aサイト中のCaの比率)の効果(試料1、6〜8)
表1および表3より、試料1、7、9では、yはもちろん、x、z、m、主成分に対する副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。そして、これらの試料1、7、9は、yが本発明の範囲よりも大きい場合(試料6)に比べ、比誘電率および静電容量変化率において良好な値を示す。
【0092】
z(Bサイト中のZrの比率)の効果(試料1、8〜10)
表1および表3より、試料1、8、9では、zはもちろん、x、y、m、主成分に対する副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。そして、これらの試料1、8、9は、yが本発明の範囲よりも大きい場合(試料10)に比べ、比誘電率および静電容量変化率が良好な値を示す。
【0093】
m(AサイトとBサイトの比率)の効果(試料1、11〜14)
表1および表3より、試料1、12、13では、mはもちろん、主成分の組成、主成分に対する副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。これらの試料1、12、13は、mが本発明の範囲外である場合(試料11、14)に比べ、緻密に焼結する傾向にある。
【0094】
第1副成分の効果(試料1、15〜18)
表1および表3より、試料1、16および17では、主成分100モルに対する第1副成分(MgO)の含有量はもちろん、主成分の組成、およびその他の副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。これらの試料1、16および17は、MgOの含有量が本発明の範囲より小さい場合(試料15)に比べ、静電容量変化率および高温負荷寿命において良好な値を示す。また、試料1、16および17は、第1副成分の含有量が本発明の範囲より大きい場合(試料18)に比べ、緻密に焼結する傾向にある。
【0095】
第2副成分の効果(試料1、19〜23)
表1および表3より、試料1、20および21では、主成分100モルに対する第2副成分(MnO)の含有量はもちろん、主成分の組成、およびその他の副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。これらの試料1、20および21は、第2副成分の含有量が本発明の範囲より小さい場合(試料19)に比べ、絶縁抵抗において良好な値を示す。また、試料1、20および21は、第2副成分の含有量が本発明の範囲より大きい場合(試料22)に比べ、高温負荷寿命において良好な傾向を示す。
【0096】
さらに、試料23より、MnをCrとした場合でもMnと同様の効果が得られることがわかる。
【0097】
第3副成分(Rの酸化物)の効果(試料1、24〜37)
表2および表4より、試料1、25および26では、主成分100モルに対する第3副成分(Y)の含有量はもちろん、主成分の組成、およびその他の副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。これらの試料1、25および26は、第3副成分の含有量が本発明の範囲より小さい場合(試料24)に比べ、高温負荷寿命において良好な値を示す。また、試料1、25および26は、第2副成分の含有量が本発明の範囲より大きい場合(試料27)に比べ、緻密に焼結する傾向にある。
【0098】
さらに、試料28〜37より、RをYに代えてLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbとした場合でもYと同様の効果が得られることがわかる。
【0099】
第4副成分(Siを含む酸化物)の効果(試料1、38〜44)
表2および表4より、試料1、39および40では、主成分100モルに対する第4副成分(BaCaSiO)の含有量はもちろん、主成分の組成、およびその他の副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。これらの試料1、39および40は、第4副成分の含有量が本発明の範囲より小さい場合(試料38)に比べ、静電容量変化率において良好な値を示す。また、試料1、39および40は、第4副成分の含有量が本発明の範囲より大きい場合(試料41)に比べ、緻密に焼結する傾向にある。
【0100】
さらに、試料42〜44より、BaCaSiOに代えてBaSiO、CaSiO、SiOとした場合でもBaCaSiOと同様の効果が得られることがわかる。
【0101】
第5副成分の効果(試料1、45〜51)
表2および表4より、試料1、46および47では、主成分100モルに対する第5副成分(V)の含有量が本発明において好ましい範囲にあり、主成分の組成、およびその他の副成分の含有量が、本発明の範囲内にある。これらの試料1、45および46は、Vの含有量が本発明において好ましい範囲よりも大きい場合(試料47)に比べ、緻密に焼結する傾向にある。
【0102】
さらに、試料48〜51より、Vに代えてMo、W、Ta、Nbとした場合でもVと同様の効果が得られることがわかる。
【0103】
図3は、本願の実施例である試料1について、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を示したものである。
これより、試料1は−25〜105℃の温度範囲において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾き−5000ppm/℃を有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にあることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
【図2A】図2Aは、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を示す、傾き−5000ppm/℃を有する直線に対して静電容量変化率が−15%および+5%となる直線と、−25℃と105℃を示す直線により囲まれる平行四辺形が示されているグラフである。
【図2B】図2Bは、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を示す、傾き−3000ppm/℃を有する直線に対して静電容量変化率が−15%および+5%となる直線と、−25℃と105℃を示す直線により囲まれる平行四辺形が示されているグラフである。
【図3】図3は、本願の実施例である試料1について、25℃における静電容量変化率を基準とした容量温度特性を表したグラフである。
【符号の説明】
【0105】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba1−x−y SrCa(Ti1−z Zr)Oの一般式で表される主成分と、
Mgの酸化物から成る第1副成分と、
MnあるいはCrから選択される少なくとも1種の酸化物から成る第2副成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbから選択される少なくとも1種)から成る第3副成分と、
Siを含む酸化物から成る第4副成分とを、有する誘電体磁器組成物であって、
前記一般式では、
0.20≦x≦0.40
0≦y≦0.20
0≦z≦0.30、かつ
0.950≦m≦1.050であり、
前記主成分100モルに対して、各副成分の比率が、
第1副成分:0.5〜5モル(元素換算)、
第2副成分:0.05〜2モル(元素換算)、
第3副成分:1〜8モル(元素換算)、
第4副成分:0.5〜5モル(酸化物、または複合酸化物換算)であり、
−25〜105℃の温度範囲において、25℃における静電容量を基準とした静電容量変化率が、25℃における静電容量を基準とした容量温度特性を示す傾きaを有する直線に対して、−15〜+5%の範囲内にあり、
前記傾きaが−7000〜−3000ppm/℃であることを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
前記誘電体磁器組成物が、
前記一般式におけるyおよびzが、0となる主成分を有することを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器組成物。
【請求項3】
前記誘電体磁器組成物が、
V、Mo、W、TaおよびNbから選択される少なくとも1種の酸化物からなる第5副成分を、前記主成分100モルに対して、各元素換算で、0〜0.2モル含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の誘電体磁器組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物からなる誘電体層を有する電子部品。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−37112(P2010−37112A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197956(P2008−197956)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】