説明

誘電体磁器組成物の製造方法

【課題】 比誘電率εrが200以上で、誘電率の温度特性τεが200ppm/K以下で、Q特性にも優れた誘電体磁器組成物を実現する。
【解決手段】 基本組成成分が、aMO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種を表し、REは希土類元素から選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表され、10≦a≦25、10≦b≦20、8≦c≦15、2≦d≦10、50≦e≦60、であり、かつ0.65≦b/(c+d)≦1.0である誘電体磁器組成物を製造するに際し、大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中で焼結を行う。或いは、焼結後の焼結体に対し、大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行ってもよい。高酸素濃度雰囲気の酸素濃度は25%以上とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物の製造方法に関するものであり、MO(MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種である。)、LiO、Bi、RE(REは希土類元素である。)、TiO等を含む誘電体磁器組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、情報通信分野においては、使用周波数帯域が高周波数に移行する傾向にあり、衛星放送や衛星通信、携帯電話や自動車電話等の移動体通信では、ギガヘルツ(GHz)帯の高周波が使用されている。
【0003】
前述のような高周波帯域で使用される機器に搭載される回路基板や電子部品等では、使用する誘電体材料は、回路基板や電子部品の高性能化や小型化を図るためには、使用周波数帯域において高比誘電率εrを有する誘電体材料が必要である。これは、誘電体材料中の電磁波の波長が1/√εrによって短縮されるという原理に基づくものであり、比誘電率εrの大きい誘電体材料ほど回路基板や電子部品の小型化が可能である。さらに、Qが高く高周波領域での損失が低い材料であることが必要である。ここでQは誘電正接tanδの逆数であり、Qが高いほど損失が少ない。また、周波数によりQの値が変わるので,本明細書ではQと共振周波数fの積、すなわちQfを用いて材料の損失特性を表す。Qfは高周波誘電体の品質係数とも呼ばれ、Qfが高いほど損失が低い。
【0004】
ただし、一般的に、高周波誘電体は、比誘電率εrが高いものほど比誘電率εrの温度特性τεが悪くなる傾向にあり、Qf値が小さくなる傾向にある。したがって、比誘電率εrが高く、比誘電率εrの温度係数τεが小さく、しかもある程度のQf値を有する誘電体磁器組成物を実現することは難しく、各方面でこれら特性を満たす誘電体磁器組成物の開発が進められている。
【0005】
温度特性τεの小さな誘電体磁器組成物としては、例えばBa−希土類(RE)−Ti−O系誘電体磁器組成物、さらにはこれにBiやPb等を含ませた誘電体磁器組成物が開発されている。ただし、これらの誘電体磁器組成物は、平坦な温度特性と比較的高いQ値を持つものの、比誘電率εrが80〜100程度と小さい。
【0006】
そこで、比誘電率εrを改善する目的で、aLiO−bBi−cTiO(但し、14.2≦a≦19.2モル%、14.2≦b≦19.2モル%、61.6≦c≦71.6モル%、a+b+c=100モル%)で表される組成物を20wt%以上含む誘電体磁器組成物も提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1記載の誘電体磁器組成物は、高い比誘電率εr、高いQ×f値、及び低い温度係数τfを有し、1000℃程度の温度で焼成可能である。
【特許文献1】特開2000−335964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1記載の誘電体磁器組成物においては、個々の誘電特性、例えば比誘電率εrがある程度高い誘電体磁器組成物や、温度係数τεの低い誘電体磁器組成物は散見されるものの、全ての特性においてバランス良く高い値を発揮する誘電体磁器組成物は実現されていない。前記特許文献1記載の誘電体材料に限らず、比誘電率εrが200を越え、誘電率の温度係数τεが±200ppm/K未満であり、しかも、ある程度高い無負荷品質係数Qf(例えば1000GHz以上)を持つ誘電体磁器組成物は、現状では見あたらないのが実情である。
【0008】
本発明は、前述の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、本発明は、比誘電率εrが高く、誘電率の温度特性τεが小さく、しかもある程度のQf値を有する誘電体磁器組成物を製造することが可能な誘電体磁器組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前述の課題を解決するために長期に亘り鋭意研究を行ってきた。そして、チタン酸塩において、いわゆるAサイトにLiと希土類を同時に含有させることで正の温度特性τεを持たせることができることに着目し、BaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/21/2TiO、Li1/2Nd1/2TiO(RはLa、Ce、Prの内の一つまたは2つ以上の希土類元素)等のチタン酸塩を適正な割合で固溶させることで、基本的に単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体からなる誘電体磁器組成物を開発した。また、本発明者らは、前記希土類元素Rにイオン半径の最も大きいLaを使った場合に最も誘電率が高く、温度特性矯正の効果が高いが、Laの替りにイオン半径がLaに近いBiを用いることで、さらに高い比誘電率εとQ特性、温度特性を実現することに着目し、BaTiO、SrTiO、CaTiO、Li1/2Bi1/2TiO、Li1/2RE1/2TiO(REはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Yから選択される少なくとも1種)等を特定の割合で含有する誘電体磁器組成物を開発した。しかしながら、このような材料では多数の元素を固溶させているので、異相が生成し易く、特性の向上には限度がある。
【0010】
そこで本発明者らがさらに研究を進めた結果、この系において、Aサイトの1価元素であるLiのモル量を、3価元素であるBiのモル量と希土類元素REのモル量との総和より少なくすることで、ほぼ単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が実現され、より高い比誘電率εとQ特性、フラットな温度特性を持つ材料が実現されるとの知見が得られ、以下のような組成を持つ誘電体磁器組成物を開発した。
【0011】
すなわち、基本組成成分が、aCaO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、REはLa,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Yから選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表され、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)<1.0
である誘電体磁器組成物である。
【0012】
前記Biを用いた組成では、CaTiO、Li1/2Bi1/2TiO、Li1/2RE1/2TiO等のチタン酸塩を固溶させているため、本来であれば、1価元素であるLiのモル量と3価元素であるBiのモル量及び希土類元素REのモル量の総和とを等しくすることで、Li、Bi及び希土類元素RE全体でAサイトの平均価数を2にしなければならない。しかしながら、このように1価元素と3価元素とを等モル量配合すると、誘電体磁器組成物の一部においてLiTi等の異相の発生が避けられない。構造解析の結果から、前記誘電体磁器組成物においては、一部のBiや希土類元素REがRE2/3TiOのような形で固溶しているため、Liが余り、結果としてLiTi等の異相が形成されると考えられる。
【0013】
そこで、前記組成においては、Liのモル量を3価元素であるBiのモル量及び希土類元素REのモル量の和より少なくする。組成中のLiを少なくすることで、異相の生成を抑制し、ほぼ単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が得られる。ただし、Liを少なくしすぎると、固溶体中のイオンのバランスが崩れ、逆にBiTi等の異相が発生し、特性の低下を招くおそれがある。したがって、これらの元素の割合を本発明で規定する範囲内で調整することで、異相の発生がなくなりペロブスカイト構造を持つ単相の固溶体が得られ、その結果、比誘電率εrやQf値が高く、比誘電率εrの温度特性τεの絶対値が小さな誘電体磁器組成物が実現される。
【0014】
ところで、前述のようにLiとBiとを等量含有する誘電体磁器組成物や、LiとBi及び希土類元素REとのモル比b/(c+d)を0.65以上1未満とした誘電体磁器組成物においては、Aサイトに大量の空孔が生じることにより酸素欠陥を生じ易い状態となっている。このため、前記組成の誘電体磁器組成物においては、比誘電率εの低下が懸念される。また、前記組成系は融点の低い成分を含んでいるため、焼結温度が低いが緻密な焼結が難しい。このことも比誘電率εを低下させる原因の1つとなる。
【0015】
そこで本発明者らがさらに検討を重ねた結果、前記誘電体磁器組成物を製造する際の焼成工程における雰囲気を制御することが、前記問題の解決に有効であるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、原料組成物を焼結することにより、基本組成成分が、aMO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種を表し、REは希土類元素から選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表され、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)≦1.0
である誘電体磁器組成物を製造するに際し、大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中で前記焼結を行うことを特徴とする。
【0017】
以上のような誘電体磁器組成物の製造方法においては、焼結処理を高酸素濃度雰囲気中で行うことで、焼結体中に酸素を拡散させ、酸素欠陥の低減を図っている。その結果、比誘電率の高い誘電体磁器組成物が実現される。特に、焼結処理を高酸素濃度雰囲気中で行うことで、大気中や窒素雰囲気中で焼結を行う場合と比較して焼結密度の高い焼結体が得られるため、さらなる比誘電率の向上が実現される。
【0018】
また、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法は、原料組成物を焼結することにより、基本組成成分が、aMO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種を表し、REは希土類元素から選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表され、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)≦1.0
である誘電体磁器組成物を製造するに際し、前記焼結後の焼結体に対し、大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行うことを特徴とする。
【0019】
以上のような誘電体磁器組成物の製造方法においては、アニール処理を高酸素濃度雰囲気中で行うことで、焼結体中に酸素を拡散させ、酸素欠陥の低減を図っている。その結果、比誘電率の高い誘電体磁器組成物が実現される。
【0020】
ここでアニール処理とは、焼結後の焼結体に施す熱処理のことである。アニール処理を施すタイミングとしては、焼結後の焼結体を冷却する冷却過程、又は、焼結により得られる焼結体を冷却した後のいずれでもよい。
【0021】
なお、本発明の誘電体磁器組成物における各元素の組成は、焼成後の誘電体磁器組成物(焼結体)を誘導結合プラズマ発光分光分析及び蛍光X線回折により分析した分析値として表している。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法によれば、200を越える高い比誘電率εrを安定に得ることができ、高Qf値を有するとともに、誘電率の温度特性τεも±200ppm/K未満と小さな誘電体磁器組成物を、安定して製造することが可能である。したがって、本発明の誘電体磁器組成物を用いることで、低温焼成セラミックス基板やデバイス部品の高性能化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る誘電体磁器組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0024】
<第1の実施形態>
先ず、本発明の製造対象となる誘電体磁器組成物について説明する。本発明の製造対象により製造される誘電体磁器組成物は、MTiO(MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種)、Li1/2Bi1/2TiO、Li1/2RE1/2TiO(REは希土類元素)等のチタン酸塩を所定の割合で固溶させたペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体である。そして、その基本組成成分は、aMO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種を表し、REは希土類元素から選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表すことができ、各成分の組成は、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)≦1.0
なる範囲に設定される。
【0025】
前記基本組成成分のうちMOにおいて、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種であるが、中でも、高いQf値(13000GHz)と比較的に高い比誘電率εr(170)を持っているCaであることが好ましい。
【0026】
前記基本組成成分のうちMOにおいてMがCaである場合の、前記組成範囲を図示したものが図1である。この図1は、ペロブスカイト構造におけるいわゆるAサイトの元素の配合比を表した3元組成図である。図1において、六角形状の斜線領域として表されているのが、本発明の組成範囲である。
【0027】
前記基本組成成分における、各成分の組成の限定理由について説明すると、Caは、Q特性(Qf値)の向上に効果があり、比誘電率εrについても、ある程度高い値をもたらす効果を有する。ただし、Caが多すぎると、誘電率の温度特性τεが悪くなるおそれがある。したがって、これらの観点から、CaのCaO換算による含有量aは、10モル%以上、25モル%以下とする。前記aが25モル%を越えると、温度特性τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。前記aが10モル%未満であると、比誘電率εrやQf値が低下するおそれがある。また、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなる。
【0028】
前記基本組成成分のうちCaOにおいて、Caの一部がアルカリ土類金属元素(Sr,Ba,Mgから選択される1種又は2種以上)により置換されてもよい。Caの一部をSr、Ba等のイオン半径がCaより大きな元素で置換することで、比誘電率εrを高めることができる。また、Caの一部をMg等のイオン半径がCaより大きな元素で置換すると、Q特性を高め、温度特性を良好なものとすることができる。
【0029】
前記基本組成成分において、Liが多すぎると、比誘電率εrが低下する。逆にLiが少なすぎると、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなり、また、比誘電率εrやQ特性も低下する。したがって、LiのLiO1/2換算による含有量bは、10モル%以上、20モル%以下とする。
【0030】
一方、Biは、希土類元素REよりも温度特性τεを制御する機能が強いが、Q特性の低下もREよりは激しい。したがって、Bi量は、誘電体磁器組成物の温度特性τεを考慮して設定すればよいが、あまり多すぎるとQ特性が悪くなる。逆に、Biが少なすぎると、誘電率εが低下するほか、温度特性τεはマイナス方向での絶対値が大きくなり、ゼロに調整することが難しくなる。したがって、BiのBiO3/2換算による含有量cは8モル以上、15モル%以下とする。
【0031】
希土類元素REは、主に誘電体磁器組成物の温度特性τεの制御に寄与する。具体的な希土類元素REとしては、La,Ce,Pr,Nd,Sm,Yb,Dy,Y等から選択される少なくとも1種が挙げられる。REが多すぎると、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなる。また、比誘電率εrやQ特性も低下する。逆にREが少なすぎると、温度特性τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。したがって、REのREO3/2換算による含有量dは、2モル%以上、10モル%以下とする。
【0032】
また、前記基本組成成分のうち、REO3/2において、REとしてはNdであることが好ましく、さらにはその一部がランタニド族元素(La,Ce,Pr,Sm,Y,Yb,Dyから選択される1種又は2種以上)によって置換されていてもよい。REをNdとすることで、比誘電率ε、Q特性と温度特性の各特性のバランスが良いうえ、特性と材料コストのバランスも良好なものとなる。また、Ndの一部を、La,Ce,Pr等、イオン半径がNdより大きな元素で置換することで、比誘電率εrをより一層高くすることができる。Ndの一部を、Sm,Y,Yb,Dy等、イオン半径がNdよりも小さな元素で置換することで、Qf値を高くすることができる。
【0033】
本発明においては、前記基本組成成分中、1価元素Liと3価元素であるBi及び希土類元素REの総和とのモル比b/(c+d)を、適正範囲に制御する必要がある。b/(c+d)≦1.0とすることで、ほぼ単相のペロブスカイト構造を持つ酸化物誘電体が得られる。b/(c+d)>1.0であると、LiO・TiOからなる異相の生成により比誘電率εrが低下する。逆に、Liが少なくなりすぎる、すなわちb/(c+d)<0.65であると、BiTiやBiTi等の異相が生成し、これにより比誘電率εr及びQ特性が低下し、温度特性τεはマイナス方向での絶対値が大きくなる。したがって、0.65≦b/(c+d)≦1.0、さらに望ましくは0.70<b/(c+d)≦0.90とすることで、高特性の誘電体磁器組成物が実現される。
【0034】
Tiが多すぎると、ペロブスカイト結晶相の形成に必要以上の過剰なTiにより、TiOなどのTiを多く含む異相が生成しやすい。逆にTiが少なすぎると、ペロブスカイトのAサイトに入るはずの他の金属元素を多く含む異相が発生しやすい。何れの場合にも、異相の発生により特性が大幅に低下するおそれがあるので、TiのTiO換算による含有量eは50モル%以上、60モル%以下とする。
【0035】
本発明においては、異相の析出量を低減し、特性を高める観点で、ペロブスカイト構造におけるAサイトの原子とBサイトの原子とのモル比A/B、すなわち、(a+b+c+d)/eを適正範囲内にすることが好ましい。本発明の組成物において、Aサイトに一部空孔ができると考えられるため、A/Bが1より小さいことが異相の低減や特性の向上に必要である。つまり、(a+b+c+d)/e≧1であると、異相が生成し、比誘電率εrやQ特性の悪化を招くおそれがある。また、Bサイトの原子のモル量Bに比べAサイトの原子のモル量Aが少なすぎる場合にも異相の発生により、比誘電率εrやQfの悪化を招くおそれがある。本発明者らが各元素の配合を様々に変化させ、得られた誘電体についての特性評価及び構造分析の結果を詳細に解析した結果、(a+b+c+d)/eの望ましい範囲は、0.93≦(a+b+c+d)/e<1であり、さらに望ましくは0.95≦(a+b+c+d)/e<0.99であることが確認されている。
【0036】
以上が本発明の誘電体磁器組成物を構成する各成分の組成についての限定理由であるが、本発明の誘電体磁器組成物においては、さらに、BiとREとのモル比を適正範囲内に制御することがより好ましい。REのモル量がBiのモル量より多いと、すなわちc/d<1であると、比誘電率εrを向上する効果が少なくなり、温度特性τεがマイナス側に大きくなるおそれがある。逆に、c/d>5であると、比誘電率εr向上効果を得られるものの、Q特性が著しく低下し、温度特性τεはプラス方向での絶対値が大きくなるおそれがある。したがって、前記c/dを1〜5とすることが好ましい。
【0037】
以下、前述の誘電体磁器組成物の製造方法について説明する。誘電体磁器組成物は、例えば図2に示す製造プロセスにしたがって作製することができる。図2に示す製造プロセスは、混合工程1、仮焼成工程2、粉砕工程3、造粒工程4、成形工程5、及び焼成工程6とから構成されるものである。
【0038】
誘電体磁器組成物の製造に際しては、先ず、主成分の原料粉末を所定量秤量し、これらを混合する(混合工程1)。主成分の原料粉末としては、酸化物粉末の他、加熱により酸化物となる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物、蓚酸塩、硝酸塩等の粉末を用いることができる。この場合、1種類の金属の酸化物(化合物)に限らず、例えば2種類以上の金属を含む複合酸化物の粉末を原料粉末としてもよい。各原料粉末の平均粒径は、例えば0.1μm〜3.0μmの範囲内で適宜選択すればよい。
【0039】
混合方法としては、例えばボールミルによる湿式混合等を採用することができ、混合の後、乾燥、粉砕、篩いかけをし、仮焼成工程2を行う。仮焼成工程2では、例えば電気炉等を用い、900℃〜1300℃の温度範囲で所定時間保持し、仮焼を行う。このときの雰囲気は、O、Nまたは大気等の非還元性雰囲気とすればよい。また、仮焼における前記保持時間は、例えば0.5〜5.0時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0040】
仮焼後、粉砕工程3において、仮焼体を例えば平均粒径0.5μm〜2.0μm程度になるまで粉砕する。粉砕手段としては、例えばボールミル等を用いることができる。
【0041】
なお、各成分の原料粉末を添加するタイミングは、前記混合工程1のみに限定されるものではない。例えば、必要な原料粉末のうちの一部の成分の原料粉末のみを秤量、混合し、仮焼する。これを粉砕した後、他の成分の原料粉末を所定量添加し、混合するようにしてもよい。
【0042】
粉砕工程3において粉砕した粉末は、後の成形工程5を円滑に実行するために、造粒工程4において、顆粒に造粒される。この際、粉砕粉末に適当なバインダ、例えばポリビニルアルコール(PVA)を少量添加することが望ましい。また、得られる顆粒の粒径は、80μm〜200μm程度とすることが望ましい。
【0043】
造粒した顆粒は、成形工程5において、例えば200MPa〜300MPaの圧力で加圧成形し、所望の形状の成形体を得る。
【0044】
成形工程5の後、焼成工程6を実施する。本実施形態の焼成プログラムの一例を図3に示す。図3中、縦軸方向は温度を表し、横軸方向は時間経過を表している。焼成工程6では、先ず、成形時に添加したバインダを成形体から除去するための脱バインダ処理を行う。脱バインダ処理では、例えば電気炉等を用いて成形体を加熱し、大気雰囲気中、300℃〜800℃で、0.5〜5時間保持すればよい。
【0045】
脱バインダ処理の後、成形体をさらに加熱し、焼結処理を行う。焼結処理では、原料組成物として例えば脱バインダ処理後の成形体を電気炉等を用いてさらに加熱し、例えば1000℃〜1300℃を所定時間保持して焼結反応を進め、焼結体を得る。本実施形態では、焼結処理を行う際の雰囲気を、大気雰囲気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気とする。具体的には、比誘電率の向上効果を安定して得る観点から酸素濃度25%以上の雰囲気とすることが好ましく、特に純酸素雰囲気とすることが好ましい。
【0046】
焼結時に高酸素濃度雰囲気とする時間を充分に確保することで、比誘電率の向上効果を安定して得ることができる。具体的には高酸素濃度雰囲気を保持する時間を1時間以上とすることが好ましい。高酸素濃度雰囲気の保持時間が1時間未満であると、焼結が充分に進まないか、或いは雰囲気制御の効果が不十分となるおそれがある。なお、過焼結や蒸発による組成ずれを避ける等の観点から、高酸素濃度雰囲気を保持する時間は100時間以下とすることが好ましい。
【0047】
焼成工程6の後、必要に応じて研磨等により表面仕上げを行い、誘電体磁器組成物を得る。この誘電体磁器組成物は、例えば3GHzにおける比誘電率εrが150〜300、Qfが300〜10000GHz、誘電率の温度特性τε(−40℃〜85℃)が絶対値で200ppm/K以下であり、優れた誘電特性を備える。したがって、本発明の誘電体磁器組成物は、高周波、特にマイクロ波用の共振器、フィルタ、積層コンデンサ等のデバイス部品や、低温焼成セラミックス基板の材料として好適である。
【0048】
本実施形態では、焼成工程6における焼結処理を大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中で行うことにより、焼結体中に酸素を十分に拡散させて酸素欠陥の低減を図り、高い比誘電率を持つ誘電磁器組成物を作製することができる。また、前記組成の誘電体磁器組成物は、融点の低い成分を含むため緻密な焼結が難しいといった欠点を有するが、高酸素濃度雰囲気中で焼結処理を行うことで、焼結体の緻密化を十分に進めることができる。したがって比誘電率のさらなる向上を図ることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
本実施形態は、焼結処理で得られた焼結体を例えば室温まで冷却する冷却過程において、高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行う例である。本実施形態の製造プロセスは、混合工程1、仮焼成工程2、粉砕工程3、造粒工程4、成形工程5、及び焼成工程6から構成されるものであり、成形工程5までは第1の実施形態と同様である。
【0050】
焼成工程6においては、図4に示すように、先ず、成形時に添加したバインダを成形体から除去するための脱バインダ処理を行う。脱バインダ処理は、前記第1の実施形態と同様に行えばよく、例えば電気炉等を用いて成形体を加熱し、大気雰囲気中、300℃〜800℃で、0.5〜5時間保持すればよい。
【0051】
脱バインダ処理の後、成形体をさらに加熱し、焼結処理を行う。焼結処理では、例えば脱バインダ処理後の成形体を電気炉等を用いてさらに加熱し、1000℃〜1300℃を4時間以上保持して焼結反応を進め、焼結体を得る。本実施形態での焼結処理を行う際の雰囲気は特に問わないが、例えば大気雰囲気とすればよい。
【0052】
焼結処理の後、得られた焼結体を例えば室温まで冷却する冷却過程において、アニール処理を行う。本実施形態では、前記アニール処理を高酸素濃度雰囲気中で行う。アニール処理は、例えば図4に示すように、冷却過程において一定のアニール温度を所定時間維持することにより行う。このときのアニール温度は、例えば800℃〜1200℃のうち少なくとも一部の温度領域とする。アニール処理における高酸素濃度雰囲気の保持時間は、例えば0.5〜5時間とすればよい。
【0053】
以上、本実施形態の誘電体磁器組成物の製造方法によれば、焼結後の冷却過程において高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行うことにより、焼結体中に酸素を拡散させて酸素欠陥の低減を図り、高い比誘電率を持つ誘電磁器組成物を作製することができる。
【0054】
なお、第2実施形態におけるアニール処理とは、図4に示すような一定のアニール温度を所定時間維持する場合に限定されるものではない。すなわち、アニール処理とは、冷却過程の所定の温度領域(800℃〜1200℃)のうち少なくとも一部の温度領域において冷却速度を低下させる場合も含むこととする。冷却過程の一部の温度領域において冷却速度を低下させるようなアニール処理を高酸素濃度雰囲気中で行うことによって、冷却過程において一定のアニール温度を維持する場合と同様に、本発明の効果を得ることができる。
【0055】
<第3の実施形態>
本実施形態は、焼結処理で得られた焼結体を冷却した後、高酸素濃度雰囲気中で当該焼結体をアニール処理する例である。本実施形態の製造プロセスは、混合工程1、仮焼成工程2、粉砕工程3、造粒工程4、成形工程5、及び焼成工程6から構成されるものであり、成形工程5までは第1の実施形態と同様である。
【0056】
焼成工程6においては、図5に示すように、先ず、成形時に添加したバインダを成形体から除去するための脱バインダ処理を行う。脱バインダ処理は、前記第1の実施形態と同様に行えばよく、例えば電気炉等を用いて成形体を加熱し、大気雰囲気中、300℃〜800℃で、0.5時間〜5時間保持すればよい。
【0057】
脱バインダ処理の後、成形体をさらに加熱し、焼結処理を行う。焼結処理では、例えば、電気炉等を用いて脱バインダ処理後の成形体をさらに加熱し、1000℃〜1300℃を4時間以上保持して焼結反応を進め、焼結体を得る。前記焼結処理を行う際の雰囲気は特に問わないが、大気雰囲気とすればよい。焼結処理の後、得られた焼結体を例えば室温まで冷却する。
【0058】
本実施形態においては、焼結及び冷却後の焼結体をアニール処理する点に特徴がある。前記アニール処理では、冷却後の焼結体を加熱し、例えば800℃〜1200℃のうち少なくとも一部の温度領域で所定時間保持すればよい。前記温度の保持時間は、1時間〜5時間とすることが好ましい。
【0059】
以上、本実施形態の誘電体磁器組成物の製造方法によれば、焼結及び冷却後の焼結体に、高酸素濃度雰囲気中、アニール処理を施すことにより、焼結体における酸素欠陥の低減を図り、高い比誘電率を持つ誘電磁器組成物を作製することができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
【0061】
<実験1>
実験1では、焼結処理を行う際の雰囲気について検討を行った。
【0062】
誘電体磁器組成物の作製
原料粉末として、LiCO、CaCO、SrCO、Bi、Nd、TiO等を用意した。各原料粉末の平均粒径は、0.1μm〜1.0μmである。
【0063】
これら原料粉末を所定のモル比で所定の値となるように秤量し、ボールミルを用いて湿式混合を16時間行った。得られたスラリーを十分に乾燥させた後、大気中、1200℃で2時間保持する仮焼を行い、仮焼体を得た。仮焼体が平均粒径1.0μmになるまでボールミルにより微粉砕した後、微粉砕粉末を乾燥させた。次いで、バインダとしてPVA(ポリビニルアルコール)を適量加えて造粒し、成形を行った。
【0064】
その後、図3に示すような焼成プログラムで焼成を行った。具体的には電気炉を用い、大気雰囲気中、600℃、2時間の条件で成形体の脱バインダ処理を行った。その後、焼結処理を行った。焼結処理では、電気炉内に高酸素濃度ガス(純酸素ガス)を流量1L/分〜3L/分で供給し、焼結温度1000℃〜1300℃の温度範囲で4時間〜20時間保持した。これにより、焼結体を得た。
【0065】
この焼結体をバーティカル研磨後、ラップで鏡面に仕上げ、直径10mm、厚さ5mmのサンプルを得た。以上の手順に従い、実施例の誘電体磁器組成物を作製した。
【0066】
また、図6に示すように、焼結処理を行う際に高酸素濃度ガスに代えて電気炉内に大気を供給し、比較例の誘電体磁器組成物を作製した。又は、大気に代えてNガスを電気炉内に供給して比較例の誘電体磁器組成物を作製した。
【0067】
評価
作製した各誘電体磁器組成物について、誘電特性(比誘電率εr、Qf値)を測定した。なお、比誘電率εr、Qf値、共振周波数は、Hakki−Coleman法により測定した。比誘電率εrの測定の際には、ネットワークアナライザ(ヒューレットパッカード社製、8510C)の一方のプローブより高周波を発振して周波数特性を測定し、得られたTE011モードの共振周波数ピークと試料の寸法より比誘電率εrを求めた。なお、組成の違いにより、各サンプルの緻密化温度が若干違うため、同一作製条件での特性比較ができない。ここでは各サンプルにおいて最も高い焼成密度および電気特性が得られた条件でのデータを示す。また、1200℃の焼結により得られた焼結体の密度ρ(g/cm)を測定した。結果を表1に示す。なお、以下の表中では、大気雰囲気中での処理をAIR、窒素雰囲気中での処理をN2、純酸素雰囲気中での処理を単にO2と表す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から、雰囲気中の酸素濃度が高くなるにつれて焼結体密度ρが高くなり、また、比誘電率εが高くなる傾向が見られた。また、比誘電率εと焼結体密度ρのデータの間に相関があり、焼結体密度ρが高くなるほど比誘電率εが高くなる傾向が見られる。したがって、焼結体密度の向上が比誘電率の向上に寄与していると考えられる。
【0070】
以上のように、高酸素濃度雰囲気中で焼結することで、全ての組成において比誘電率ε200以上と高い値が達成されている。また、Qf値については、全ての組成において1000GHz以上の高い値を示しており、実用上問題ない値であった。以上のように本発明を適用することで、優れた誘電特性を持つ誘電体磁器組成物を安定して作製可能であることがわかる。
【0071】
<実験2>
実験2では、高酸素濃度雰囲気の最適な酸素濃度について検討を行った。
【0072】
誘電体磁器組成物を作製するに際し、原料粉末を表2に示す組成となるように秤量し、混合した。実験1と同様にして成形体を作製した後、焼結処理を行った。焼結処理では、1200℃を4時間保持した。焼結処理時の雰囲気は、N雰囲気、大気雰囲気、大気の5%を純酸素で置換した雰囲気(酸素濃度24.95%)、大気の10%を純酸素で置換した雰囲気(酸素濃度29.9%)、或いは純酸素雰囲気とした。これら以外は実験1と同様にして誘電体磁器組成物を作製し、比誘電率ε及びQfについて評価した。結果を表2に示す。なお、表2中、5%O2は大気の5%を純酸素で置換した雰囲気(酸素濃度24.95%)での処理を、10%O2は大気の10%を純酸素で置換した雰囲気(酸素濃度29.9%)での処理をそれぞれ表す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2から明らかなように、焼結処理時の雰囲気を酸素濃度24.95%とした場合、比誘電率εは向上したものの、例えば酸素濃度29.9%の場合や純酸素雰囲気とした場合に比較して、比誘電率εの向上効果は軽微なものであった。したがって、実験2の検討結果から、焼結処理を行うに際し、雰囲気中の酸素濃度を25%以上とすることが好ましいことが確認された。
【0075】
<実験3>
実験3では、冷却過程におけるアニール処理について検討した。
誘電体磁器組成物を作製するに際し、原料粉末を表3に示す組成となるように秤量し、混合した。実験1と同様にして成形体を作製した後、図4に示すような焼成プログラムで焼成を行った。具体的には、焼結処理では、大気雰囲気中、1200℃を4時間保持した。焼結処理の後、冷却過程においてアニール処理を行った。アニール処理では、純酸素雰囲気中、1000℃を4時間保持した。この点以外は実験1と同様にして誘電体磁器組成物を作製し、比誘電率ε及びQfについて評価した。結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3から明らかなように、高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行うことで、良好な誘電特性が得られている。
【0078】
<実験4>
実験4では、焼結及び冷却後のアニール処理について検討した。
誘電体磁器組成物を作製するに際し、原料粉末を表4に示す組成となるように秤量し、混合した。実験1と同様にして成形体を作製した後、図5に示すような焼成プログラムで焼成を行った。具体的には、焼結処理では、大気中、1200℃を4時間保持した。その後、室温まで冷却し、焼結体を得た。
【0079】
次に、冷却後の焼結体に対しアニール処理を行った。アニール処理では、純酸素雰囲気中、1000℃を4時間保持した。これにより得られた焼結体を用いて実施例の誘電体磁器組成物を作製し、比誘電率ε及びQfについて評価した。
【0080】
また、アニール処理を行う際の条件を変化させて誘電体磁器組成物を作製した。すなわち、アニール処理の条件を、大気雰囲気中、1000℃、4時間とした。得られた焼結体を用いて比較例の誘電体磁器組成物を作製し、比誘電率ε及びQfについて評価した。結果を表4に示す。
【0081】
【表4】

【0082】
表4から、冷却後の焼結体に対し高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行うことで、例えば大気雰囲気中でアニール処理を行う場合に比較して比誘電率εが向上し、優れた誘電特性が達成されている。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の誘電体磁器組成物中、Aサイトを構成する元素の好ましい組成範囲を示す3元組成図である。
【図2】誘電体磁器組成物の製造プロセスの一例を示す図である。
【図3】第1実施形態の焼成工程における温度及び雰囲気制御の一例を示す模式図である。
【図4】第2実施形態の焼成工程における温度及び雰囲気制御の一例を示す模式図である。
【図5】第3実施形態の焼成工程における温度及び雰囲気制御の一例を示す模式図である。
【図6】従来の焼成工程における温度及び雰囲気制御の一例を示す模式図である。
【0084】
1 混合工程、2 仮焼成工程、3 粉砕工程、4 造粒工程、5 成形工程、6 焼成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料組成物を焼結することにより、基本組成成分が、aMO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種を表し、REは希土類元素から選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表され、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)≦1.0
である誘電体磁器組成物を製造するに際し、
大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中で前記焼結を行うことを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項2】
前記高酸素濃度雰囲気の酸素濃度を25%以上とすることを特徴とする請求項1記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項3】
前記高酸素濃度雰囲気に保持する時間を1時間以上とすることを特徴とする請求項1又は2記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項4】
前記基本組成成分のうち、REO3/2において、REがNdであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項5】
前記Ndの一部がLa,Ce,Pr,Sm,Y,Yb,Dyから選択される1種又は2種以上により置換されていることを特徴とする請求項4記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項6】
前記基本組成成分のうち、MOにおいて、MがCaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項7】
前記Caの一部がSr,Ba,Mgから選択される1種又は2種以上により置換されていることを特徴とする請求項6記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項8】
原料組成物を焼結することにより、基本組成成分が、aMO−bLiO1/2−cBiO3/2−dREO3/2−eTiO[ただし、MはBa,Sr,Ca,Mgから選択される少なくとも1種を表し、REは希土類元素から選択される少なくとも1種を表し、a+b+c+d+e=100(モル%)である。]で表され、
10≦a≦25
10≦b≦20
8≦c≦15
2≦d≦10
50≦e≦60
であり、かつ
0.65≦b/(c+d)≦1.0
である誘電体磁器組成物を製造するに際し、
前記焼結後の焼結体に対し、大気より酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気中でアニール処理を行うことを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項9】
前記焼結後の焼結体を冷却する冷却過程において、前記アニール処理を行うことを特徴とする請求項8記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項10】
前記焼結により得られる焼結体を冷却した後、前記アニール処理を行うことを特徴とする請求項8記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項11】
前記アニール処理を800℃〜1200℃のうち少なくとも一部の温度領域で行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項12】
前記高酸素濃度雰囲気の酸素濃度を25%以上とすることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項13】
前記基本組成成分のうち、REO3/2において、REがNdであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項14】
前記Ndの一部がLa,Ce,Pr,Sm,Y,Yb,Dyから選択される1種又は2種以上により置換されていることを特徴とする請求項13記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項15】
前記基本組成成分のうち、MOにおいて、MがCaであることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項16】
前記Caの一部がSr,Ba,Mgから選択される1種又は2種以上により置換されていることを特徴とする請求項15記載の誘電体磁器組成物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−63077(P2007−63077A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252411(P2005−252411)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】