説明

誘電分極を用いた分生子吸着による防カビ方法、飛動生物除去装置、及び植物保護装置

【課題】 空気中から効率良く植物病原菌の分生子および菌体等を除去できることおよび放電等によりオゾン発生がないことから、植物に対して障害を与えることなく植物病害の発生を防止することができる方法を提供する。また、植物病原菌の胞子等及び/又は小害虫等の飛動可能な生物に静電界を印加して、飛動可能な生物を的確に捕捉することができる飛動生物除去装置及び植物保護装置を提供する。
【解決手段】 飛動可能な生物に対して誘電分極による静電界を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害の発生原因となる分生子および菌体等に静電気を帯電させて吸着除去することにより植物病害の発生を防止する方法に関するものである。
また、本発明は、植物病原菌の胞子等及び/又は小害虫等の飛動可能な生物に静電界を印加して、飛動可能な生物を捕捉することによって、飛動可能な生物を除去して、植物の病虫害の発生を防止する飛動生物除去装置及び植物保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物や化学合成品由来の農園芸用の抗菌剤や抗カビ剤が検討されている。そしてこれらの中から農園芸用の抗菌剤や抗カビ剤が上市されてきている。しかし、薬剤により植物病原菌に対する感受性が異なること、植物病原菌が薬剤に対し抵抗性を獲得することや薬害等の理由により、現在用いられている農園芸用の抗菌剤や抗カビ剤では、植物病原菌に対して充分な対応が出来ていない。このため、農園芸用の抗菌剤や抗カビ剤の分野において、安全性や有効性に更に優れた薬剤の開発が望まれている。
【0003】
天然由来の抗菌剤としては、酢酸、マシン油剤、なたね油剤等が実用化されている。
【0004】
化学合成品由来の抗菌剤としては、チオファネートメチル剤等のベンズイミダソール系抗菌剤、トリアジメホン剤およびビテルタノール剤等のステロール生合成阻害剤、ピリメタニル剤等のアニリノピリミジン系殺菌剤等が実用化されている。
【0005】
うどんこ病等は、空気中に分生子が飛散し、そしてこの飛散した分生子によりトマトやキュウリ等に付着し、発芽することにより発症する。
【0006】
空気中の細菌、胞子および花粉等を除去するものとして空気清浄機がある。この空気清浄機は、フィルターによるものおよび/または電気集塵式により細菌、胞子および花粉等を除去するものが知られている。
【0007】
フィルターによるものは、除去するものより細かい穴を有していないと効力がなくまた目詰まりにより長期間の稼動が困難である。
【0008】
気体中に浮遊するダストやミストの捕集効果を増大させるものとして、2枚の金属電極とこれと平行して設置してあるプラスティック製立体網目スクリーンとを用いる静電誘導吸塵装置が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
更に、金属線に高電圧をかけるワイヤ放電式と針先に高電圧をかけるニードル放電式との電気集塵装置が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4等参照)。これらはともにコロナ放電により胞子および花粉等の除去するものを帯電させ、捕集電極により吸着させることにより、細菌、胞子および花粉等を除去するものである。
【0010】
野菜や花卉のハウス栽培において植物病虫害が発生することは、その栽培ハウス内の全植物において発生する確率が非常に高い。このため、植物病虫害が発生する前に薬剤散布することにより、このリスクを回避している。しかし、このような薬剤散布に頼ることなく植物病虫害の発生を抑制することは、現在困難である。
【0011】
金属電極とこれと平行してあるプラスティック製立体網目スクリーンとを用いる静電誘導吸塵装置では、剥き出しの金属電極でコロナ放電する可能性がある。
【0012】
電気集塵機では、コロナ放電等を用いて胞子や花粉等を帯電させているが、同時にオゾンも発生することになる。このため、オゾンにより植物に悪影響を与える恐れがある。また高湿度条件下では、帯電効率が低下する恐れがある。
【特許文献1】特開昭52−120473号公報
【特許文献2】特開平10−137628号公報
【特許文献3】特開2000−189835号公報
【特許文献4】特開2003−211024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
植物病害の発生原因となる分生子および菌体等をコロナ放電等を用いることなく静電気を帯電させて吸着除去することにより植物病害の発生を防止する方法を提供することである。
【0014】
また、本発明は、植物病原菌の胞子等及び/又は小害虫等の飛動可能な生物に静電界を印加して、飛動可能な生物を捕捉する飛動生物除去装置及び植物保護装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下のことにより解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
本発明に係る方法は、
高電圧が荷電した導電体と接触する不導体または隣接する不導体により、空気中に浮遊する植物病原菌の分生子または菌体に高静電気電圧を帯電させ、この帯電した分生子または菌体を当該不導体に吸着させて空気中から除去することを特徴とする植物病害の発生を防止するものである。
【0017】
また、本発明に係る方法は、
高電圧が荷電した導体を不導体で被覆したものを用いることを特徴とする上記記載の植物病害の発生を防止するものである。
【0018】
さらに、本発明に係る方法は、高電圧が荷電した導体を不導体で被覆したものと接触する不導体または隣接する不導体を用いることを特徴とする上記記載の植物病害の発生を防止するものである。
【0019】
本発明に係る飛動生物除去装置は、
少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体に電気的に接続され、かつ、前記少なくとも1つの導体によって電界が生ずるように前記少なくとも1つの導体の電位を所定の電位にする電源と、
前記少なくとも1つの導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置された少なくとも1つの誘電体と、を含み、
前記少なくとも1つの誘電体を介して生じた電界によって飛動可能な生物を捕捉することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る飛動生物除去装置は、少なくとも1つの導体と、電源と、少なくとも1つの誘電体と、を含む。
【0021】
導体の数は、1つでも、複数でもよい。
電源は、少なくとも1つの導体に電気的に接続されている。これにより、少なくとも1つの導体によって電界が生じ、少なくとも1つの導体の電位を所定の電位にする。
【0022】
誘電体の数は、1つでも、複数でもよい。少なくとも1つの誘電体は、少なくとも1つの導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置されている。この誘電分極によって、少なくとも1つの誘電体を介して電界が生じ、この電界によって飛動可能な生物を捕捉する。
【0023】
誘電体は、誘電体の誘電分極によって生ずる電界の強さが位置によって異なるような形状にしたり、配置にしたりするのが好ましい。このように、電界の強度が位置によって異なる電界(不平等電界、不均一場)を生じさせることによって、飛動可能な生物が帯電している場合には、飛動可能な生物にクーロン力を及ぼすことができ、飛動可能な生物が電気的に中性である場合には、飛動可能な生物に静電誘導を生じさせてグレーディエント力を及ぼすことできる。このような電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このようにすることで、誘電体の誘電分極によって生ずる電界によって、飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【0024】
上述したように、誘電体は、少なくとも1つあればよい。複数の誘電体を設けたときには、上述した少なくとも1つの導体と、誘電体との配置は、除去すべき飛動可能な生物の種類や、飛動生物除去装置によって保護すべき植物の種類等に応じて適宜組み合わせたり変更したりすればよい。
【0025】
また、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記少なくとも1つの導体の少なくとも一部が、前記少なくとも1つの誘電体によって覆われたものが好ましい。
【0026】
少なくとも1つの導体は、誘電体によって覆われている。導体の全てが誘電体によって覆われている必要はなく、少なくとも一部が誘電体によって覆われていればよい。少なくとも1つの導体を誘電体によって覆う態様は、例えば、略円筒状に形成された誘電体によって、導体の各々を覆うようなものや、略半円筒状に形成された誘電体によって、導体の各々を覆うようなものがある。なお、誘電体は、このような形状に限られるものではなく、例えば、誘電性の材料を導体に塗布したり付着させたりすることで、導体を覆う誘電体とすることできるものも含まれる。
【0027】
さらに、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記少なくとも1つの導体は、複数の導電体からなり、
前記少なくとも1つの誘電体は、各々が前記複数の導電体の各々の少なくとも一部を覆う複数の誘電被覆体からなり、
前記誘電被覆体によって少なくとも一部が覆われた前記複数の導電体の各々は、空気が流通できるように互いに離隔して配置されたものが好ましい。
【0028】
少なくとも1つの導体は、複数の導電体からなる。また、少なくとも1つの誘電体は、複数の誘電被覆体からなる。複数の誘電被覆体の各々は、複数の導電体の各々の少なくとも一部を覆う。
【0029】
このようにすることで、導体や誘電体を単独で配置する必要がなくなり、誘電体と導体とを一体に取り扱うことができるので、飛動生物除去装置の組み立てや取り扱いを容易にすることができる。
【0030】
また、複数の導電体と複数の誘電被覆体とから、複数の対が形成され、複数の対の隣り合うもの同士は、空気が流通できるように互いに離隔して配置されている。このように離隔して配置することにより、飛動生物除去装置を介して空気を供給すべき植物に対して、十分に空気を流通させることができる。例えば、空気を供給すべき植物の種類に応じて、隣り合う対の間隔を定めればよい。
【0031】
さらにまた、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記複数の導電体の各々は、略棒状形状を有し、
前記複数の誘電被覆体の各々は、略円筒状形状を有し、
前記複数の導電体と前記複数の誘電被覆体とから複数の誘電被覆導電体が構成され、
前記複数の誘電被覆導電体の各々は、前記複数の導電体のうちの1つの導電体と、前記複数の誘電被覆体のうちの1つの誘電被覆体との対によって構成され、かつ、前記1つの導電体が、前記1つの誘電被覆体の内側にかつ長手方向に沿って配置され、
前記複数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置されたものが好ましい。
【0032】
複数の導電体の各々は、略棒状形状を有する。略棒状形状とは、略まっすぐに延びた長尺の形状をいう。
【0033】
また、複数の誘電被覆体の各々は、略円筒状形状を有する。略円筒状形状とは、略円柱状のものに貫通孔が形成された形状であり、貫通孔が、略円柱状のものの長手方向におおよそ沿うとともに、略円柱状のものの両端を貫通するように形成されたものである。貫通孔は、同心である必要はなく、偏心して形成されていてもよい。また、内側に長手方向におおよそ沿うように形成されていればよく、湾曲して形成されていてもよい。この略円筒状形状として、例えば、シリンダーのような形状がある。
【0034】
複数の導電体と複数の誘電被覆体とから複数の誘電被覆導電体が構成される。具体的には、複数の導電体のうちの1つの導電体と、複数の誘電被覆体のうちの1つの誘電被覆体との対によって、1つの誘電被覆導電体の構成され、複数の導電体と複数の誘電被覆体とによって複数の対が構成されて、これらの対によって、複数の誘電被覆導電体が構成される。複数の誘電被覆導電体の各々では、導電体が、誘電被覆体の内側にかつ長手方向に沿って配置されている。すなわち、上述した略円柱状のものに形成された貫通孔に、導電体が配置されている。なお、導電体は、貫通孔に長手方向に沿って配置されていればよく、導電体が、軸心線上に配置されている必要はない。軸心線から逸れた位置に配置であっても、長手方向に沿って配置されていればよい。
【0035】
このようにしたことで、複数の誘電被覆体の各々の誘電分極によって生ずる電界の強さが位置によって異なるような電界(不平等電界、不均一場)を生じさせることができ、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このようにすることで、複数の誘電被覆体の各々の誘電分極によって生ずる電界によって、飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【0036】
複数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置されている。具体的には、隣り合う2つの誘電被覆導電体が離隔しており、2つの誘電被覆導電体の間を空気が流通できるように配置されている。
【0037】
このようにしたことで、複数の誘電被覆導電体が、光を遮ることなく、植物に対して光を照射することができる。さらに、飛動生物除去装置を介して空気を的確に供給することができる。
【0038】
また、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記複数の導電体の各々は、略棒状形状を有し、
前記複数の誘電被覆体の各々は、外面と内面とを含む略半円筒状形状を有し、
前記複数の導電体と前記複数の誘電被覆体とから複数の誘電被覆導電体が構成され、
前記複数の誘電被覆導電体の各々は、前記複数の導電体のうちの1つの導電体と、前記複数の誘電被覆体のうちの1つの誘電被覆体との対によって構成され、かつ、前記1つの導電体が、前記1つの誘電被覆体の内面側にかつ長手方向に沿って配置され、
前記複数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置されたものが好ましい。
【0039】
複数の導電体の各々は、略棒状形状を有する。略棒状形状とは、略まっすぐに延びた長尺の形状をいう。
【0040】
また、複数の誘電被覆体の各々は、略半円筒状形状を有する。略半円筒状形状とは、略円筒状のものの軸心線を含む面で、略半分に分けたときに形成される片方の形状をいう。例えば、シリンダーを軸心線を含む面で、略半分に分けたときに形成される形状である。この誘電被覆体の各々は、略半円筒状形状を有するので、外面と内面とを含む。外面は、軸心を中心とした曲率が小さい面であり、軸心線に対して垂直な面に沿った断面が略半円状の凸面となる面である。内面は、軸心を中心とした曲率が、外面のものよりも大きい面であり、軸心線に対して垂直な面に沿った断面が略半円状の凹面となる面である。
【0041】
複数の導電体と複数の誘電被覆体とから複数の誘電被覆導電体が構成される。具体的には、複数の導電体のうちの1つの導電体と、複数の誘電被覆体のうちの1つの誘電被覆体との対によって、1つの誘電被覆導電体が構成され、複数の導電体と複数の誘電被覆体とによって複数の対が構成されて、これらの対によって、複数の誘電被覆導電体が構成される。複数の誘電被覆導電体の各々では、導電体が、上述した内面側にかつ長手方向に沿って配置されている。なお、導電体は、誘電被覆体の内面側に長手方向に沿って配置されていればよく、導電体が、軸心線上に配置されている必要はない。軸心線から逸れた位置に配置であっても、長手方向に沿って配置されていればよい。
【0042】
このようにしたことで、複数の誘電被覆体の各々の誘電分極によって生ずる電界の強さが位置によって異なるような電界(不平等電界、不均一場)を生じさせることができ、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このようにすることで、複数の誘電被覆体の各々の誘電分極によって生ずる電界によって、飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【0043】
また、複数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置されている。具体的には、隣り合う2つの誘電被覆導電体が離隔しており、2つの誘電被覆導電体の間を空気が流通できるように配置されている。
【0044】
このようにしたことで、複数の誘電被覆導電体が、光を遮ることなく、植物に対して光を照射することができる。さらに、飛動生物除去装置を介して空気を的確に供給することができる。
【0045】
さらに、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記複数の誘電被覆導電体によって、複数の誘電被覆導電体群が構成され、
前記複数の誘電被覆導電体群の各々は、前記複数の誘電被覆導電体のうちの所定の数の誘電被覆導電体によって構成され、
前記複数の誘電被覆導電体群の各々における前記所定の数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置され、
前記複数の誘電被覆導電体群の各々は、互いに異なる複数の所定の面のうちの対応する1つの面に沿うように位置づけられたものが好ましい。
【0046】
複数の誘電被覆導電体によって、複数の誘電被覆導電体群が構成される。さらに、この複数の誘電被覆導電体群の各々は、所定の数の誘電被覆導電体によって構成される。複数の誘電被覆導電体群の各々に属する所定の数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置される。具体的には、1つの誘電被覆導電体群に属する隣り合う2つの誘電被覆導電体は、離隔して配置されており、2つの誘電被覆導電体の間を空気が流通できるように配置されている。
【0047】
複数の誘電被覆導電体群の各々が、対応する1つの面に沿うように配置されている。複数の誘電被覆導電体群の各々に属する誘電被覆導電体は、異なる面に配置される。すなわち、1つの誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体は、1つの面に沿うように配置される。
【0048】
このようにすることで、誘電被覆導電体の誘電被覆体の周囲に生ずる電界の範囲を広げることができ、飛動可能な生物を捕捉できる範囲を広げることができる。
【0049】
さらにまた、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記複数の誘電被覆導電体群は、第1の誘電被覆導電体群と、第2の誘電被覆導電体群と、を含み、
第1の誘電被覆導電体群と、第2の誘電被覆導電体群とは、前記互いに異なる複数の所定の面のうち最も外側に位置する面に位置づけられ、
前記第1の導電体群を構成する前記誘電被覆体の前記外面と、第2の導電体群を構成する前記誘電被覆体の前記外面とが、互いに反対向きになるように配置されているものが好ましい。
【0050】
上述した複数の誘電被覆導電体群には、第1の誘電被覆導電体群と、第2の誘電被覆導電体群とが含まれる。第1の誘電被覆導電体群と、第2の誘電被覆導電体群とは、複数の誘電被覆導電体群のうちの最も外側に位置する面に位置づけられる。第1の導電体群を構成する誘電被覆体の外面と、第2の導電体群を構成する誘電被覆体の外面とは、互いに反対向きになるように配置されている。上述したように、誘電被覆体の形状を、外面と内面とを含む略半円筒状形状にすることができる。外面は、上述したように、軸心線に対して垂直な面に沿った断面が略半円状の凸面となる面である。第1の導電体群を構成する誘電被覆体の外面と、第2の導電体群を構成する誘電被覆体の外面とは、互いに反対向きになるように配置するとは、この凸面が互いに反対向きになるように配置することをいう。
【0051】
このようにしたことで、誘電被覆体の形状を、略半円筒状形状とした場合であっても、導電体が外向きに配置されることはなく、誘電被覆体が外向きに配置されることになる。このため、導電体に高い電圧が印加されたときに、誘電被覆導電体に触れた場合でもあっても、誘電被覆体によって絶縁されて、安全を確保することができる。
【0052】
また、本発明に係る飛動生物除去装置は、
前記少なくとも1つの導体と前記少なくとも1つの誘電体が、空気が流通できるように形成された所定の開口を覆うように配置されたものが好ましい。
【0053】
少なくとも1つの導体と少なくとも1つの誘電体は、空気が流通できるように形成された所定の開口を覆うように配置される。開口は、飛動生物除去装置が設けられるものに形成されたものであればよい。飛動生物除去装置が設けられるものは、例えば、温室やビニールハウスなどの植物保護装置がある。開口は、このような植物保護装置に形成され、空気が流通できるようにされたものであればよい。
【0054】
このようにしたことで、空気の流れにのって開口から入り込もうとする飛動生物に、クーロン力やグレーディエント力を及ぼして、飛動可能な生物を捕捉することができる。
【0055】
本発明に係る植物保護装置は、
植物が配置される植物配置区域と、
前記植物配置区域を囲む囲繞部と、を含み、
前記囲繞部の少なくとも一部は、可視光を透過させることができ、
前記囲繞部のうち空気が流通可能な箇所に上述した飛動生物除去装置が設けられたことを特徴とする。
【0056】
本発明に係る植物保護装置は、植物配置区域と囲繞部とを含む。植物配置区域には、植物が配置される。植物の種類は問わない。囲繞部は、植物配置区域を囲む。囲繞部は、植物の育成や生存に必要な程度に、可視光を透過させることができる部材からなる。囲繞部には、空気が流通可能な箇所が設けられている。空気は、植物の育成や生存に必要な程度に、空気を流通させることができればよい。空気が流通できる箇所には、上述した飛動生物除去装置が設けられている。このようにすることで、飛動可能な生物を空気中から除去して、植物の育成や生存に適切な空気を供給することができる。
【0057】
また、本発明に係る植物保護装置は、
前記囲繞部には、前記植物配置区域に配置された植物に空気を供給するための少なくとも1つの流通開口が形成され、
前記飛動生物除去装置は、前記少なくとも1つの流通開口を覆うように取り付けられ、
前記第1の誘電被覆導電体群は、前記流通開口から最も遠い位置に配置され、
前記第2の誘電被覆導電体群は、前記流通開口から最も近い位置に配置されたものが好ましい。
【0058】
囲繞部には、少なくとも1つの流通開口が形成されている。この流通開口は、植物配置区域に配置された植物に空気を供給するためのものである。上述した飛動生物除去装置は、流通開口を覆うように取り付けられる。さらに、第1の誘電被覆導電体群は、流通開口から最も遠い位置に配置される。すなわち、第1の誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体が、流通開口から最も遠い位置に配置される。また、第2の誘電被覆導電体群は、流通開口から最も近い位置に配置される。すなわち、第2の誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体が、流通開口から最も近い位置に配置される。
【0059】
このようにしたことで、まず、第1の誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体によって、開口から植物配置区域に入り込もうとする飛動生物を捕捉することができる。さらに、この第1の誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体によって、飛動生物を捕捉できなかった場合であっても、流通開口から最も近い位置に配置された第2の誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体によって、飛動生物を捕捉することができる。このようにすることで、開口から植物配置区域に入り込もうとする飛動生物を捕捉する機会を増やすことができる。
【0060】
また、誘電被覆体の形状を、略半円筒状形状とした場合であっても、第1の誘電被覆導電体群や第2の誘電被覆導電体群に属する誘電被覆導電体の導電体が外向きに配置されることはなく、誘電被覆体が外向きに配置される、このため、導電体に高い電圧が印加されたときに、誘電被覆導電体に触れた場合でもあっても、誘電被覆体によって絶縁されて、安全を確保することができる。
【0061】
さらに、本発明に係る植物保護装置は、
誘電性の材料からなりかつ少なくとも1つの網目が形成された網目体を含み、
前記網目体は、前記第1の被覆導電体群を構成する前記所定の数の誘電被覆導電体によって占められる面積と略同じ面積を有し、
前記網目体は、前記第1の被覆導電体群の位置の近傍の位置であり、かつ、前記流通開口に対して前記第1の被覆導電体群よりも遠い位置に、前記第1の被覆導電体群を構成する前記誘電被覆導電体を覆うように配置されたものが好ましい。
【0062】
本発明に係る植物保護装置は、網目体を含む。この網目体は、誘電性の材料からなるとともに、少なくとも1つの網目が形成されている。網目は、誘電性の材料からなる線材を編んだり折り曲げたりすることで形成されたり、全体又は一部が、誘電性の材料によって、例えば、板状のものに孔を形成することによって一体的に形成され、最終的に網目状と視認できるように形成されたものであればよい。1つの網目の大きさは、飛動可能な生物の種類等に応じて定めればよい。また、全ての網目の大きさが同じである必要もない。網目の形状は、略四角形や略ひし形等のものが好ましいが、その他の多角形でもよい。
【0063】
網目体は、第1の被覆導電体群に属する誘電被覆導電体によって占められる面積と略同じ面積を有するように成形されるのが好ましい。さらに、網目体は、第1の被覆導電体群の位置の近傍の位置であり、かつ、流通開口から第1の被覆導電体群よりも遠い位置に配置されたものが好ましい。また、第1の被覆導電体群に属する誘電被覆導電体の全体を覆うようにされたものが好ましい。
【0064】
このようにしたことで、飛動生物除去装置のカバーとしての機能も有し、飛動生物よりも大きい物体、例えば、植物の葉やゴミなどの移動を誘電性の網目体によって阻止することができ、物体が導電体と接触しないように排除することができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の分生子および菌体等に静電気を帯電させることでの吸着除去方法は、空気中から効率良く植物病原菌の分生子および菌体等を除去できることおよび放電等によりオゾン発生がないことから、植物に対して障害を与えることなく植物病害の発生を防止することができる。
また、植物病原菌の胞子等及び/又は小害虫等の飛動可能な生物に静電界を印加して、飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
<<第1の実施の形態>>
本発明の植物病害の発生を防止する方法において、分生子および菌体等(以下、分生子等と称する)に高静電気電圧を帯電させることができればどのような手段を用いても、本発明において使用することができる。例えば、不導体においては誘電分極により、導体においては静電誘導により分生子等を帯電させることが出来ればよい。
【0067】
高電圧を荷電する導体としては、導体であればどのようなものでも使用することができる。当該導体としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、および鉄等を挙げることができる。本発明においては、コロナ放電を抑制できることおよび感電事故を無くすことができることから不導体で被覆した導体を用いることが好ましい。
【0068】
高電圧に荷電した導体と接触する不導体または隣接する不導体とは、高電圧に荷電した導体と接触する不導体を用いるものであり、または高電圧に荷電した導体と隣接する不導体を用いるものである。そして、この不導体とは、電気を通さないもの即ち絶縁体と言われているものであればどのようなものでも使用することができる。当該不導体としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、ポリエステル、レーヨン、セルロース、ゴム等が挙げられる。また、導体を不導体で被覆しても良い。被覆方法は、どのような方法でも、導体に不導体が被覆されれば限定されるものではない。例えば、不導体を溶かし、これを導体に塗布または浸漬することにより導体に付着または被覆することができる。また、不導体を含有する塗料を用いても良く、この塗料としては絶縁塗料が好ましい。
【0069】
高電圧に荷電した導体と隣接している不導体とは、導体の一部に不導体が接触している状態、導体の近くに不導体が設置されている状態、不導体被覆の導体の一部に不導体が接触している状態、または不導体被覆の導体の近くに不導体が設置されている状態のものである。この近くとは、導体または不導体被覆の導体から不導体が帯電できる距離であればよい。例えば、この距離は、0.1〜3cmが好ましく、0.3〜2cmがより好ましく、0.5〜1cmが更に好ましい。
【0070】
本発明における不導体の形状は、分生子等を帯電させることができればどのような形状でもよい。例えば、被覆銅線を平行に張った物、被覆銅線を縦横の格子状に張った物、不導体の網の周囲を導体で囲んだ物、不導体の網の周囲を被覆導体で囲んだ物、不導体の網に導体を平行に設置(接触していても隣接していても良い)した物、不導体の網に被覆した導体を平行に設置(接触していても隣接していても良い)した物、不導体で被覆した金網等が挙げられる。
【0071】
本発明における不導体の間隔は、荷電する電圧により変化するが、分生子等が帯電し、これが付着することが出来る距離を有するものであれば、どのような間隔でもよい。
【0072】
本発明における荷電する電圧は、不導体の間隔および不導体部を通過する風量等により異なるが、分生子等が高静電気電圧に帯電できるものであればどのような電圧でも良い。例えば、1〜30kVが好ましく、3〜20kVがより好ましく、5〜15kVが更に好ましい。荷電の電圧が高すぎると、分生子等を吸着することが出来なくなることがある。また、荷電の電圧が低すぎる場合は分生子等が誘電分極が出来なくなることがあるため好ましくない。
【0073】
荷電するときの極性は、用途、設置する方法や場所等により好ましい極性を選ぶことができる。また、本発明においては、マイナスの高電圧を導体に荷電した場合、プラス極を接地(アース)とし、逆にプラスの高電圧を導体に荷電した場合、マイナス極を接地(アース)とする。即ち、帯電した分生子等が吸着される部分には、単極(マイナスまたはプラスのどちらか)のみが荷電される。このことから、分生子等が吸着される部分からのコロナ放電をほとんど無くすことが期待でき、湿度が高い状態でも使用することができる。
【0074】
本発明における分生子とは、農園芸用植物の病気を感染させるもので、運動性を欠く無性胞子のことである。なお、菌糸が隔壁部で切り離されてできるものも分生子形成細胞から出芽によりできるものも含まれる。
【0075】
本発明の植物病害を防止する方法において、対象となるものは、うどんこ病(トマト、ナス、ピーマン、ムギ類、キュウリ、メロン、スイカ、エンドウ豆、ブドウ、イチゴ、バラ等)、菌核病(トマト、ナス、キュウリ、スイカ、ダイコン、ハクサイ、キャベツ等)、および灰色かび病(トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、カボチャ、イチゴ、エンドウ、インゲン、タマネギ、ネギ等)、葉かび病(トマト等)、さび病(ネギ、タマネギ、ニラ、アスパラガス、レタス等)
等が例示できる。
【0076】
本発明における菌体とは、農園芸用植物の病気を感染させるものである。
【0077】
本発明の方法を適用した装置としては、例えば高電圧が荷電した導電体と接触または隣接した不導体をフィルター部に組込んだもの、高電圧が荷電した導電体上に不導体を設置して板状としたものおよび高電圧が荷電した被覆導電体の線等が挙げられる。
【0078】
このフィルター部の誘電分極を付与する不導体の形状としては、被覆銅線を平行に張った物、被覆銅線を格子状に張った物、不導体の網の周囲を電導体で囲んだ物、不導体で被覆した金網等が挙げられる。この誘電分極を付与する不導体の前にフィルターを設置することが大きな物を除去できることから好ましい。このようなフィルター部は、例えばハウスへの吸気部の設置して、分生子等が除去されたクリーンな空気のハウス内への導入に、ハウス内に設置しハウス内の空気の浄化等に使用することができる。
【0079】
板状や線とした物は、ハウス内に設置しハウス内の空気の浄化等に使用することができる。
【0080】
さらに、この第1の実施の形態の装置は、小害虫も除去の対象にできる。この小害虫は、施設栽培において発生する有翅の小害虫全般であり、例えば、アブラムシ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、ハモグリガ類、コナジラミ類、コナガ等が例示できる。また、有翅の小害虫に寄生して農園芸用作物に寄生する小害虫(ダニ類)も例示できる。
【0081】
<<<<第2の実施の形態>>>
<<植物保護装置15>>
図5は、本発明に係る植物保護装置15の概略を示す斜視図である。
<植物配置区域20>
図5に示した破線によって囲まれた領域が植物配置区域20である。植物配置区域20は、植物保護装置15内の略中央部に位置する。植物配置区域20は、植物を育成したり生存させたりするのに適した環境であればよい。植物配置区域20は、特に、植物の種類に応じて、十分に光を照射するとともに、空気を十分に供給できる環境であればよい。また、植物の大きさに応じて十分な領域を確保でき、植物の種類に応じて、温度や湿度が十分に調節された環境にできるのが好ましい。
【0082】
<囲繞部30>
囲繞部30は、上述した植物配置区域20を囲む。図5に示した例では、囲繞部30は、直方体であり、正面壁32a、背面壁32b、右側面壁32c、左側面壁32d、上面32e、及び下面32fからなる。正面壁32a、背面壁32b、右側面壁32c、左側面壁32d、及び上面32eは、光を十分に透過させることができる透明な部材からなるのが好ましい。例えば、アクリル樹脂のような透明なプラスチックのほか、透明なガラスからなるのが好ましい。
【0083】
正面壁32aと背面壁32bとの双方には、植物配置区域20に配置された植物に空気を供給するための開口34aと34bとが形成されている。開口34a及び34bの各々の外側には、開口34a及び34bを覆うように、後述する飛動生物除去装置100,200,300又は400が設置されている。なお、図5では、飛動生物除去装置100,200,300又は400の1つの例として、飛動生物除去装置100の導電体112のみを示した。
【0084】
なお、本実施の形態では、図5に示したように、囲繞部30の形状が直方体であるものを示したが、このような形状には限られず、植物配置区域20に配置された植物に対して適切な環境を提供できるものであればよく、囲繞部30は、曲面で形成されたものでもよい。
【0085】
<飛動生物除去装置100,200,300,400>
上述したように、正面壁32aの開口34aと、背面壁32bの開口34bとには、後述する飛動生物除去装置100,200,300又は400が配置されている。
【0086】
後述するように、飛動生物除去装置100及び300は、導電体112と誘電被覆体122とを有する誘電被覆導電体140を含む。飛動生物除去装置200は、導電体112a及び誘電被覆体122aを有する誘電被覆導電体140aと、導電体112b及び誘電被覆体122bを有する誘電被覆導電体140bとを含む。飛動生物除去装置400は、導電体112a及び誘電被覆体522aを有する誘電被覆導電体540aと、導電体112b及び誘電被覆体522bを有する誘電被覆導電体540bとを含む。
【0087】
なお、上述した図5に示した植物保護装置15では、正面壁32aと背面壁32bとの略全面に亘って開口34a及び34bが形成され、これらの2つの開口34a及び34bを覆うように、飛動生物除去装置100,200,300又は400を取り付けた場合を示した。これに対して、植物配置区域20に配置された植物の種類や数によっては、正面壁32aと背面壁32bとの一部の領域のみに開口を形成すればよい場合もある。このような場合には、形成した開口の大きさに応じた大きさを有する飛動生物除去装置100,200,300又は400を取り付ければよい。飛動生物除去装置100,200,300又は400は、形成した開口の全体を覆うことで、植物配置区域20に配置された植物に適切な空気を供給できればよい。
【0088】
また、図5に示した植物保護装置15では、正面壁32aと背面壁32bとの二箇所のみに、飛動生物除去装置100,200,300又は400を取り付けた場合を示したが、他の右側面壁32c、左側面壁32d、上面32e等に飛動生物除去装置100,200,300又は400を取り付けてもよい。植物配置区域20に配置された植物の種類や数に応じて、植物に、十分に光を照射できるとともに、空気を十分に供給できればよく、飛動生物除去装置100,200,300又は400の数や大きさ、飛動生物除去装置100,200,300又は400を配置する位置については、植物の種類や数等に応じて適宜定めればよい。
【0089】
植物保護装置15の適用例としては、温室やビニールハウスなどとして使用するもの、又は温室やビニールハウスなどの内部に置いて使用するものなどが挙げられる。即ち、植物保護装置15を温室やビニールハウスなどとして使用する場合には、飛動生物除去装置100、200、300又は400を、植物保護装置15の開口部に取付けて使用することできる。また、植物保護装置15を温室やビニールハウスなどの内部に置いて使用する場合には、温室やビニールハウスなどの内部に設置された、植物を育成する箱に、飛動生物除去装置100、200、300又は400を取付けて使用することができる。
【0090】
<<飛動生物除去装置100>>
図6は、飛動生物除去装置100の概略を示す斜視図であり、図7は、飛動生物除去装置100の概略を示す断面図である。なお、図6に示した飛動生物除去装置100は、構成を明確に示すために、後述する筐体150を破線で示して、簡略化した。また、図7は、上述した植物保護装置15の正面壁32aの開口34aに、飛動生物除去装置100が取り付けられたものを1つの例として示した。
飛動生物除去装置100は、筐体150と、導体110と、誘電体120と、電源130とを含む。後述するように、導体110と、誘電体120とから誘電被覆導電体140が構成される。
【0091】
<筐体150>
飛動生物除去装置100の筐体150は、2つの側部162a及び162bと、天部164及び底部166とからなる。
【0092】
2つの側部162aと162bとは、略同じ形状を有し、略長方形の薄板からなる。2つの側部162aと162bとは、互いに略平行に離隔して配置されている。また、天部164と底部166とは、略同じ形状を有し、略長方形の薄板からなる。天部164と底部166とは、互いに略平行に離隔して配置されている。
【0093】
これらの2つの側部162a及び162bと、天部164及び底部166とは、電気的に絶縁された材料、例えば透明なプラスチックからなる。筐体150に透明なものを用いることによって、飛動生物除去装置100が、植物保護装置15に取り付けられたときに、光を遮ることなく、植物保護装置15内の植物に光を的確に照射することができる。
【0094】
2つの側部162a及び162bと、天部164及び底部166とによって、飛動生物除去装置100の正面168aと背面168bとが形成される。すなわち、正面168aと背面168bとは、2つの側部162a及び162bと、天部164及び底部166とによって囲まれた領域に形成され、正面168aと背面168bとの各々の全面は、開放されている。この正面168aと背面168bとは、互いに向かい合うように位置し、この正面168aと背面168bとを介して、空気を流通させることができる。この正面168aと背面168bとが、「筐体開口」に対応する。
【0095】
飛動生物除去装置100が、上述した植物保護装置15に取り付けられたときには、図7に示すように、飛動生物除去装置100の背面168bが、植物保護装置15の開口34aや34bとおおよそ整合する。したがって、飛動生物除去装置100の正面168a及び背面168bと、植物保護装置15の開口34aとを介して、空気が流通でき、飛動生物除去装置100を介して、植物保護装置15に空気を供給することができる。また、同様に、飛動生物除去装置100の正面168a及び背面168bと、植物保護装置15の開口34bとを介して、空気が流通でき、飛動生物除去装置100を介して、植物保護装置15に空気を供給することができる。植物保護装置15の開口34aと34bとが、「流通開口」に対応する。
【0096】
図7に示すように、飛動生物除去装置100は、植物保護装置15の正面壁32aの外側の面に、正面壁32aに形成された開口34aを覆うように取り付けられている。上述したように、飛動生物除去装置100が植物保護装置15(図示せず)に取り付けられたときには、飛動生物除去装置100の背面168bは、植物保護装置15の開口34aと整合する。図7では、図面の左方向が、植物保護装置15の外側であり、図面の右方向が、植物保護装置15の内側であり、植物配置区域20(図示せず)が存在する。図7に示した矢印は、植物保護装置15の外側から内部に向かって、飛動生物除去装置100を介して流入する空気の流れを示す。
【0097】
<導体110(導電体112)>
上述したように、飛動生物除去装置100は、導体110を含む。第2の実施の形態の飛動生物除去装置100では、導体110は、9本の導電体112からなる。これらの9本の導電体112によって、「少なくとも1つの導体」及び「複数の導電体」が構成される。
【0098】
図6又は図7に示すように、9本の導電体112の各々は、まっすぐに延びた長尺かつ略直線状の形状を有する。具体的には、9本の導電体112の各々は、略棒状形状を有する。図7では、9本の導電体112の断面が描かれている。図7に示すように、9本の導電体112の各々の断面の形状は、略円形である。なお、9本の導電体112の各々の形状は、直線状である場合には限られず、一定の形状を保つことができるものであればよく、例えば、一定の曲線に沿った湾曲した形状を有するものでもよい。
【0099】
9本の導電体112の各々は、筐体150の2つの側部162aと162bとの間で、水平方向に(図7の紙面に対して垂直な方向)に配置されている。9本の導電体112の各々をこのように配置することで、9本の導電体112の各々は、水平方向にまっすぐに延びる長尺な導電線となる。
【0100】
さらに、9本の導電体112は、垂直方向(図7の紙面上の上下方向)に沿って、互いに離隔し、隣り合うものの間隔が所定の間隔となるように、配置されている。9本の導電体112を、このように配置することで、図7に示す第1の面114に沿うように配置される。なお、第1の面114については、後述する。
【0101】
9本の導電体112同士は、筐体150の2つの側部162a又は162bで、図示しない電線によって、互いに電気的に接続されている。このようにすることで、9本の導電体の各々の電位は、常に同電位となる。
【0102】
<誘電体120(誘電被覆体122)>
上述したように、飛動生物除去装置100は、誘電体120を含む。第2の実施の形態の飛動生物除去装置100では、誘電体120は、9本の誘電被覆体122からなる。これらの9本の誘電被覆体122によって、「少なくとも1つの誘電体」及び「複数の誘電被覆体」が構成される。
【0103】
図6又は図7に示すように、9本の誘電被覆体122の各々は、まっすぐに延びた長尺かつ略円筒状の形状を有する。図7では、9本の誘電被覆体122の断面が描かれている。図7に示すように、9本の誘電被覆体122の各々の断面の形状は、略円環状である。なお、9本の誘電被覆体122の各々の形状は、まっすぐに延びた形状である場合には限られず、一定の形状を保つことができるものであればよく、例えば、一定の曲線に沿った湾曲した形状を有するものでもよい。
【0104】
9本の誘電被覆体122の各々は、筐体150の2つの側部162aと162bとの間で、水平方向に(図7の紙面に対して垂直な方向)に配置されている。9本の誘電被覆体122の各々の一の端部は、筐体150の側部162aによって保持され、9本の誘電被覆体122の各々の他の端部は、筐体150の側部162bによって保持されている。このようにすることで、9本の誘電被覆体122の各々を、筐体150の2つの側部162aと162bとの間で、支持することができる。
【0105】
さらに、9本の誘電被覆体122は、垂直方向(図7の紙面上の上下方向)に沿って、互いに離隔し、隣り合うものの間隔が所定の間隔となるように、配置されている。9本の誘電被覆体122を、このように配置することで、図7に示す第1の面114に沿うように配置される。なお、第1の面114については、後述する。
【0106】
誘電体120は、誘電性を有する材料からなる。すなわち、誘電体120は、電気を通さないもの、いわゆる絶縁体とされているものであればよい。誘電体120の材質は、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン、ポリエステル、レーヨン、セルロース、ゴム等が挙げられる。特に、誘電体120が透明になるような材質にするのが好ましい。誘電体120を透明にすることで、図7に示すように、飛動生物除去装置100が、植物保護装置15に取り付けられたときに、誘電体120が光を遮ることなく、植物保護装置15内の植物に光を的確に照射することができる。また、誘電体120が透明でなくても、光を50%以上透過させるものが好ましく、植物保護装置15に取り付けられたときに、植物保護装置1の正面壁32aの開口34a全体における透過度が、50%以上になるように設置する。さらに、誘電体120が透明でない場合には、誘電被覆体122の本数や太さで、植物保護装置15の正面壁32aの開口34a全体における光の透過度を調節するのが好ましい。
【0107】
<誘電被覆導電体140>
上述したように、導体110と、誘電体120とから誘電被覆導電体140が構成される。具体的には、1本の誘電被覆導電体140は、1本の導電体112と1本の誘電被覆体122とから構成される。すなわち、この第2の実施の形態の飛動生物除去装置100では、1本の誘電被覆体122と、1本の導電体112とが対になるように構成されている。
【0108】
図8は、1本の誘電被覆導電体140の構成を示す斜視図である。また、図9(a)は、1本の誘電被覆導電体140の構成を示す断面図である。
1本の誘電被覆導電体140は、1本の導電体112と、1本の誘電被覆体122と、2つの支持部材142を含む。
【0109】
上述したように、誘電被覆体122は、まっすぐに延びた長尺な略円筒状の形状を有する。すなわち、誘電被覆体122の内側には、軸線方向に沿った長尺な空間が形成されている。また、誘電被覆体122の両端には、略円形の開口124が形成されている。
【0110】
図8に示すように、1本の誘電被覆体122の内側に形成された長尺な空間には、上述した1本の導電体112が、誘電被覆体122の長手方向に沿うように配置される。
【0111】
上述した誘電被覆体122の両端の開口124には、導電体112を支持するための支持部材142が設けられている。支持部材142は、第1の端面144と第2の端面146との2つの端面を有する略円錐台状の形状を有する。支持部材142の第1の端面144と第2の端面146とは、略円形状の形状を有する。第1の端面144の直径は、誘電被覆体122の直径よりも短くなるように、第2の端面146の直径は、誘電被覆体122の直径よりも長くなるように、支持部材142は形成されている。また、支持部材142には、第1の端面144の略中心と第2の端面146の略中心とを通り、かつ、支持部材142の中心軸方向に沿うように、貫通孔148が形成されている。貫通孔148は、貫通孔148の直径が、導電体112の直径よりも若干小さくなるように形成されている。この支持部材142は、若干変形できるように、ゴム等の弾性部材で構成されている。
【0112】
図8に示すように、支持部材142の貫通孔148に通された導電体112は、支持部材142の弾性力によって、支持部材142に支持される。誘電被覆体122の2つの開口124には、支持部材142の第1の端面144が押入されることで、支持部材142は、支持部材142の弾性力によって2つの開口124の各々に固定される。このようにすることで、図8及び図9(a)に示すように、誘電被覆体122の内側に形成された長尺な空間に、誘電被覆体122の長手方向に沿うように、導電体112を配置して保持することができる。具体的には、誘電被覆体122の軸心線上に沿うように、かつ、誘電被覆体122と導電体112とが離隔するように、誘電被覆体122に導電体112を配置して保持することができる。
【0113】
このように構成することで、導電体112を誘電被覆体122によって覆うことができる。図6又は図7に示すように、9本の誘電被覆体122の各々には、1本ずつ導電体112が、同様に配置され、9本の誘電被覆導電体140が構成される。
【0114】
9本の誘電被覆導電体140を、このような形状としたことにより、垂直方向に関しては小さくすることできるとともに、表面積を大きくすることができる。垂直方向に小さくできるので、飛動生物除去装置100の厚さ(図7の左右方向の長さ)を薄くすることができる。また、上述したように、9本の誘電被覆体122を透明な材質にした場合には、飛動生物除去装置100が、植物保護装置15に取り付けられたときに、光を遮ることなく、植物保護装置15内の植物に光を的確に照射することができる。
【0115】
また、9本の誘電被覆導電体140を、このような形状としたことにより、飛動生物除去装置100を介して空気を植物に供給するときに、9本の誘電被覆導電体140の外周面によって、その空気の流れを曲げたり、空気を回転させたり、うずを生じさせたりすることができる。空気の流れを曲げたり、空気の流れに回転成分を与えたりすることによって、上述した9本の誘電被覆導電体140の誘電分極によって生じた電界が有効に存在する領域に飛動可能な生物を存在させる機会を増やすことができ、的確に飛動可能な生物を捕捉することができる。
【0116】
さらに、上述したように、9本の誘電被覆体122を、垂直方向(図7の紙面上の上下方向)に沿って、互いに離隔し、隣り合うものの間隔が所定の間隔となるように、配置したので、図6又は図7に示すように、9本の誘電被覆導電体140も、垂直方向に沿って互いに離隔するように配置される。すなわち、隣り合う誘電被覆導電体140の間に間隙が生ずるように、いわゆる簾状に、9本の誘電被覆導電体140は配置される。このようにすることで、隣り合う誘電被覆導電体140の間に形成された間隙を介して、植物保護装置15に空気を十分に供給することできるとともに、この間隙を介して、植物保護装置15に配置された植物に光を照射することもできる。さらに、上述したように、9本の誘電被覆体122が透明な部材からなるときには、誘電被覆導電体140の間に形成された間隙のみならず、9本の誘電被覆体122を介しても、植物保護装置15に配置された植物に光を照射することもできる。
【0117】
9本の誘電被覆体122の各々の太さや、隣り合う誘電被覆体122の間隔は、導電体112に印加する電圧や、飛動生物除去装置100を通過する空気量等により、適宜定めればよい。
【0118】
上述した図8や図9(a)に示したように、誘電被覆体122と導電体112とが離隔している場合、すなわち、誘電被覆体122が、直接導電体112に接していない場合には、例えば、誘電被覆体122をアクリル製シリンダーとし、誘電被覆体122の太さを10cm以下にするのが好ましい。誘電被覆体122の太さは、より好ましくは6cm以下、更に好ましくは4cm以下である。一方、導電体112は、誘電被覆体122を誘電分極できる位置に配置すればよい。すなわち、誘電被覆体122の内部に配置する導電体112の太さは、誘電被覆体122の太さに応じて決めることができる。この導電体112は、無垢の銅線であっても、銅パイプで有ってもよい。
【0119】
また、隣り合う誘電被覆体122同士の間隔は、導電体112に印加する電圧や、誘電被覆体122の太さや、飛動生物除去装置100を通過する空気量等により、適宜定めればよい。例えば、隣り合う誘電被覆体122同士の間隔は、10cm以下が好ましく、8cm以下がより好ましく、6cm以下が更に好ましい。
【0120】
<第1の面114>
上述した第1の面114を特定する手法を以下に述べる。
まず、9本の誘電被覆導電体140の各々の形状を、1本の線の形状によって特定する。これは、1本の誘電被覆導電体140の長手方向に垂直な面における誘電被覆導電体140の中心を定め、この中心を誘電被覆導電体140の長手方向に沿って結ぶことによって、誘電被覆導電体140について、1本の線を定めることができる。このようにして、9本の誘電被覆導電体140の各々を特徴付ける線を、1本ずつ決定できる。なお、第1の実施の形態では、9本の誘電被覆導電体140の各々は、上述したように、まっすぐに延びた形状を有するので、9本の誘電被覆導電体140の各々を特徴付ける線も、直線となる。
【0121】
次いで、9本の誘電被覆導電体140の各々の形状を特徴付けるための線がおおよそ含まれるような1つの面を特定することによって、第1の面114を定めることができる。なお、この第1の面114の特定は、これらの線の全てが常に含まれるような厳密な面を想定する必要はなく、おおよそ含まれる1つの面を第1の面114とすればよい。なお、第1の実施の形態では、9本の誘電被覆導電体140の各々の形状を特徴付けるための線は、上述したように、直線であるので、第1の面114の形状も、1つの平面となる。
【0122】
なお、図7に示した例では、9本の誘電被覆導電体140の全体の形状を特徴付ける第1の面114は、平面である場合を示したが、第1の面114は、平面である場合に限られず、曲面でもよい。9本の誘電被覆導電体140は、一定の面に沿うように配置されていればよい。
【0123】
なお、9本の誘電被覆導電体140の各々の外側は、9本の誘電被覆体122によって画定されるので、9本の誘電被覆体122によって第1の面を特定しても、第1の面114と一致する。
【0124】
また、導電体112が、誘電被覆導電体140の軸心線に沿って配置されれば、9本の導電体112によって第1の面を特定しても、同様に、第1の面114と一致する。
【0125】
<電源130>
電源130は、所定の直流電圧を出力することができるプラス端子とマイナス端子とを有する。
導体110を構成する9本の導電体112の各々は、電源130のマイナス端子に接続されている。また、第1の実施の形態では、電源130のプラス端子は、接地されている。
【0126】
9本の導電体112に印加する直流電圧は、9本の導電体112の各々の間隔や、9本の誘電被覆体122の直径の材質や、9本の誘電被覆体122の間を通過する空気の風量などによって適宜決めればよい。例えば、病害虫等の飛動可能な生物に対して高圧を印加でき、かつ飛動可能な生物を捕捉できる電圧であればよい。具体的には、9本の導電体112に印加する直流電圧は、1〜40kVが好ましく、3〜30kVがより好ましく、5〜20kVがさらに好ましい。印加する直流電圧が1〜40kVである場合には、第1の導体と第2の導体との間で飛動可能な生物を的確に除去することができる。一方、印加する直流電圧が低すぎる場合には、飛動可能な生物に誘電分極を生じさせない可能性があるため好ましくない。
【0127】
9本の導電体112に直流電圧を印加することによって、9本の導電体112の周囲に静電界を生じさせることができる。上述したように、9本の導電体112の各々は、誘電被覆体122によって覆われている。このため、9本の導電体112から生じた静電界は、9本の誘電被覆体122の内部に及び、9本の誘電被覆体122に誘電分極を生じさせることができる。9本の誘電被覆体122に生じた誘電分極によって、さらに、9本の誘電被覆体122の周囲に電界を生じさせることができる。この9本の誘電被覆体122の周囲に生じる電界は、誘電被覆体122は略円筒形状であるため、強さが位置によって異なる電界(不平等電界、不均一場)となる。このような電界を生じさせることによって、飛動可能な生物が帯電している場合には、飛動可能な生物にクーロン力を及ぼすことができ、飛動可能な生物が電気的に中性である場合には、飛動可能な生物に静電誘導を生じさせてグレーディエント力を及ぼすことできる。このような電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このようにすることで、9本の誘電被覆体122の誘電分極により生ずる電界によって、静電スクリーンを形成し、この静電スクリーンによって飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【0128】
この第2の実施の形態では、電源130として直流高電圧発生装置を用いた。このようにすることで、一定の高電圧を導体110に印加することができ、9本の誘電被覆体122の周囲に生じる電界によって、飛動可能な生物は捕捉され、植物保護装置15の植物配置区域20に侵入することを防止することができる。
【0129】
上述した植物保護装置15は、自然換気させても、強制換気させてもよい。強制換気の場合の風速は、9本の誘電被覆導電体140同士の間隔や、9本の導電体112に印加する電圧や、9本の誘電被覆体122の直径等により適宜決定すればよい。例えば、植物保護装置15の開口34aや34bについて、1mあたり1〜600m/分が例として挙げられる。
【0130】
<誘電被覆導電体140’>
上述した図9(a)は、2つの支持部材142(図8参照)によって、誘電被覆体122と導電体112とが離隔するように、導電体112を誘電被覆体122の内部に配置した誘電被覆導電体140を示した。
【0131】
これに対して、図9(b)に示すように、誘電被覆体122’と導電体112とが密着するように、導電体112を誘電被覆体122’に配置した誘電被覆導電体140’としてもよい。このようにすることで、誘電被覆導電体140’の直径を小さくできるので、飛動生物除去装置100の厚さ(図7の左右方向の長さ)をさらに薄くすることができる。また、誘電被覆導電体140’の外周面の曲率を大きくできるので、誘電被覆導電体140’によって生ずる静電界の位置変化率をさらに大きくできる。このようにすることで、グレーディエント力をさらに大きくすることができ、飛動可能な生物をより捕捉しやすくできる。
【0132】
なお、誘電被覆体122’と導電体112とが密着するような態様として、電気配線で使用する被覆銅線や、誘電性の材料で被覆された被覆銅板などがある。
【0133】
9本の誘電被覆体122’の各々の太さや、隣り合う誘電被覆体122の間隔は、導電体112に印加する電圧や、飛動生物除去装置100を通過する空気量等により、適宜定めればよい。
【0134】
上述した図9(b)に示したように、誘電被覆体122’と導電体112とが密着している場合、すなわち、誘電被覆体122’が、直接導電体112に接している場合には、例えば、誘電被覆導電体140’を塩ビ被覆銅線とし、太さを10mm以下にするのが好ましい。誘電被覆導電体140’の太さは、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは4mm以下である。一方、誘電被覆体122’の内部に配置する導電体112の太さは、誘電被覆体122’の太さに応じて決めることができる。
【0135】
また、隣り合う誘電被覆体122’同士の間隔は、導電体112に印加する電圧や、誘電被覆体122’の太さや、飛動生物除去装置100を通過する空気量等により、適宜定めればよい。例えば、隣り合う誘電被覆体122’同士の間隔は、6cm以下が好ましく、4cm以下がより好ましく、2cm以下が更に好ましい。誘電被覆体が、導電体112と直接接していない場合と比較して、隣り合う誘電被覆体122’同士の間隔を短くしたのは、誘電被覆体122’が、導電体112と直接接している場合には、誘電被覆体122’の直径が小さくなる場合が多く、その分、間隔を短くすることで、誘電被覆体122’の誘電分極によって生ずる電界を、隣り合う誘電被覆体122’の間に有効に存在させることができる。
【0136】
<誘電被覆体222、322、422>
図10(a)〜図10(c)は、誘電被覆体の第2〜第4の例を示す斜視図である。なお、図10(a)〜図10(c)では、導電体112と、2つの支持部材142を省略して示した。
【0137】
図10(a)に示す第2の例の誘電被覆体222と、図5(b)に示す第3の例の誘電被覆体322と、図5(c)に示す第4の例の誘電被覆体422とは、第1の例の誘電被覆体122と同様に、全体が、まっすぐに延びた長尺かつ略円筒状の形状を有する。
【0138】
第2の例の誘電被覆体222の外周面には、複数の溝224が、誘電被覆体222の長手方向に沿って形成されている。また、第3の例の誘電被覆体322の外周面には、複数の凹み又は貫通孔324が形成されている。このように、第3の例の誘電被覆体322の場合には、凹みだけでなく貫通孔を形成してもよい。なお、貫通孔を形成するときには、内側に配置された導電体112によって放電しないように、隣り合う導電体112との距離や、印加する電圧を定めるのが好ましい。
【0139】
このような複数の溝224や複数の凹みや貫通孔324を外周面に形成することで、9本の誘電被覆体222や322の誘電分極によって生じさせる電界の強度をさらに不均一にすることができる。このような電界を生じさせることによって、さらに大きいグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼすことができ、飛動可能な生物をさらに移動させにくくして捕捉することができる。
【0140】
また、複数の溝224や複数の凹みや貫通孔324によって、誘電被覆体222や322の外周面の近くを流れる空気の流れをより大きく曲げたり、空気をより回転させたり、うずをより生じさせたりすることができ、電界が有効に存在する領域に飛動可能な生物を存在させる機会をさらに増やすことができ、的確に飛動可能な生物を捕捉することができる。
さらに、図10(c)に示す誘電被覆体422は、誘電性の繊維状の材料によって成型されている。このようにしても、さらに強度が不均一な電界を生じさせることができ、さらに大きいグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼすことができ、飛動可能な生物をさらに移動させにくく捕捉することができる。
【0141】
また、繊維状の材料を用いたことで、空気の流通を良くするとともに、空気の流れをより大きく曲げたり、空気をより回転させたり、うずをより多く生じさせることができる。
【0142】
なお、飛動生物除去装置100では、9本の誘電被覆導電体140の各々が水平方向に配置された場合を示したが、複数本の誘電被覆導電体140は、植物配置区域20に配置された植物に光を照射し、空気を供給することができるように、配置すればよく、水平方向に配置する場合のみならず、垂直方向や、斜め方向に配置してもよい。
【0143】
<<<<第3の実施の形態>>>
<<飛動生物除去装置200>>
図11は、飛動生物除去装置200の概略を示す断面図である。なお、図11は、上述した植物保護装置15の正面壁32aの開口34aに、飛動生物除去装置200が取り付けられたものを1つの例として示した。
飛動生物除去装置100は、筐体150と、導体110a及び110bと、誘電体120a及び120bと、電源130とを含む。後述するように、導体110aと誘電体120aとから誘電被覆導電体140aが構成され、導体110bと誘電体120bとから誘電被覆導電体140bが構成される。
なお、筐体150と、電源130とは、飛動生物除去装置100のものと同様の構成であり、同様の機能を有するので説明を省略する。
【0144】
<導体110a、110b>
上述したように、飛動生物除去装置200は、導体110aと110bとを含む。導体110aは、9本の導電体112aからなる。導体110bは、9本の導電体112bからなる。これらの9本の導電体112aと112bとは、飛動生物除去装置100の9本の導電体112と同様の構成である。これらの9本の導電体112aと112bとは、電源130に電気的に接続されている。これらの9本の導電体112a及び112bによって、「少なくとも1つの導体」及び「複数の導電体」が構成される。
【0145】
<誘電体120a、120b>
上述したように、飛動生物除去装置200は、誘電体120aと120bとを含む。誘電体120aは、9本の誘電被覆体122aからなる。誘電体120bは、9本の誘電被覆体122bからなる。これらの9本の誘電被覆体122aと122bとは、飛動生物除去装置100の9本の誘電被覆体122と同様の構成である。これらの9本の誘電被覆体122aと122bとから、「少なくとも1つの誘電体」及び「複数の誘電被覆体」が構成される。
【0146】
<誘電被覆導電体140a、140b>
9本の導電体112aと9本の誘電被覆体122aとから9本の誘電被覆導電体140aが構成され、9本の導電体112bと9本の誘電被覆体122bとから9本の誘電被覆導電体140bが構成される。したがって、9本の誘電被覆導電体140aと140bとの各々は、飛動生物除去装置100の9本の誘電被覆導電体140と同様の構成である。
【0147】
9本の誘電被覆導電体140aや、9本の誘電被覆導電体140bの配置の仕方は、飛動生物除去装置100の9本の誘電被覆導電体140のものと同じように、垂直方向に沿って互いに離隔するように配置される。すなわち、隣り合う2つの誘電被覆導電体140aの間に間隙が生ずるように、いわゆる簾状に、9本の誘電被覆導電体140aは配置される。同様に、隣り合う2つの誘電被覆導電体140bの間に間隙が生ずるように、いわゆる簾状に、9本の誘電被覆導電体140bは配置される。
【0148】
この9本の誘電被覆導電体140aから、1つの「誘電被覆導電体群」が構成され、9本の誘電被覆導電体140bから、1つの「誘電被覆導電体群」が構成される。特に、9本の誘電被覆導電体140aから、「第1の誘電被覆導電体群」が構成され、9本の誘電被覆導電体140bから、「第2の誘電被覆導電体群」が構成される。
【0149】
1本の誘電被覆導電体140aは、1本の導電体112aと1本の誘電被覆体122aとから構成される。すなわち、この飛動生物除去装置200では、1本の誘電被覆体122aと、1本の導電体112aとが対になるように構成されている。同様に、1本の誘電被覆導電体140bは、1本の導電体112bと1本の誘電被覆体122bとから構成される。すなわち、この飛動生物除去装置200では、1本の誘電被覆体122bと、1本の導電体112bとが対になるように構成されている。
【0150】
図11に示すように、飛動生物除去装置200の垂直方向(図11の紙面の上下方向)の配置に関して、9本の誘電被覆導電体140aのうち隣り合うもの同士の間に、9本の誘電被覆導電体140bのうちの1本の誘電被覆導電体140bが配置される、いわゆる互い違いに配置されるのが好ましい。また、9本の誘電被覆導電体140bを基準にしたときには、9本の誘電被覆導電体140bのうち隣り合うもの同士の間に、9本の誘電被覆導電体140aのうちの1本の誘電被覆導電体140bが配置されるように、互い違いに配置されるのが好ましい。
【0151】
このように配置することで、9本の誘電被覆体122aと122bとに生じた誘電分極によって、9本の誘電被覆体122aと122bとの周囲に電界を生じさせることができ、電界が生ずる範囲を広げることができる。このため、9本の誘電被覆体122aの誘電分極によって生ずる電界によって、第1の静電スクリーンを形成し、9本の誘電被覆体122bの誘電分極によって生ずる電界によって、第2の静電スクリーンを形成することができ、これらの2つの静電スクリーンによって飛動可能な生物をより的確に捕捉することができる。
【0152】
なお、飛動生物除去装置200では、9本の誘電被覆導電体140aと140bとから、2つの「誘電被覆導電体群」が構成される場合を示したが、これに限られず、3つ以上の「誘電被覆導電体群」が構成されるようにしてもよい。このようにすることで、3つ以上の静電スクリーンを形成することができ、飛動可能な生物をさらにより的確に捕捉することができる。
【0153】
なお、飛動生物除去装置200では、9本の誘電被覆導電体140aと140bとの各々が水平方向に配置された場合を示したが、複数本の誘電被覆導電体140aと140bは、植物配置区域20に配置された植物に光を照射し、空気を供給することができるように、配置すればよく、水平方向に配置する場合のみならず、垂直方向や、斜め方向に配置してもよい。また、9本の誘電被覆導電体140aは、水平方向に配置し、9本の誘電被覆導電体140bは、垂直方向に配置するように、9本の誘電被覆導電体140aと9本の誘電被覆導電体140bとを互いに異なる方向に配置してもよい。
【0154】
図11には、9本の誘電被覆導電体140aの全体の形状を特徴付ける第1の面114aと、9本の誘電被覆導電体140bの全体の形状を特徴付ける第1の面114bとを破線で示した。この第1の面114aと114bとは、飛動生物除去装置200と同様の手法により特定することができる。
【0155】
なお、9本の誘電被覆導電体140aの各々の外側は、9本の誘電被覆体122aによって画定できるので、9本の誘電被覆体122aによって第1の面を特定しても、第1の面114aと一致する。9本の誘電被覆体122bについても同様である。
【0156】
また、導電体112aが、誘電被覆導電体140aの軸心線に沿って配置されれば、9本の導電体112aによって第1の面を特定しても、同様に、第1の面114aと一致する。導電体112bについても同様である。
【0157】
第1の面114aと114bとの間隔は、導電体112に印加する電圧や、誘電被覆体122の太さや、飛動生物除去装置100を通過する空気量等により、適宜定めればよい。例えば、隣り合う誘電被覆体122a及び122b同士の間隔は、10cm以下が好ましく、8cm以下がより好ましく、6cm以下が更に好ましい。具体的には、隣り合う所定の2本の誘電被覆体122aとこれらに最も近い誘電被覆体122bとの間の互いの間隔を、10cm以下にするのが好ましく、さらに、8cm以下にするのがより好ましく、6cm以下にするのが最も好ましい。
【0158】
<<<<第4の実施の形態>>>
<<飛動生物除去装置300>>
図12は、飛動生物除去装置300の概略を示す断面図である。なお、図12は、上述した植物保護装置15の正面壁32aの開口34aに、飛動生物除去装置300が取り付けられたものを1つの例として示した。
【0159】
飛動生物除去装置300は、支持体350と、導体110と、誘電体120と、電源130とを含む。なお、導体110と、誘電体120と、電源130とは、飛動生物除去装置100のものと同様の構成であり、同様の機能を有するので説明を省略する。また、導体110と、誘電体120とによって、9本の誘電被覆導電体140が構成される点についても。飛動生物除去装置100と同様である。すなわち、隣り合う誘電被覆導電体140の間に間隙が生ずるように、いわゆる簾状に、9本の誘電被覆導電体140は配置される。
【0160】
<支持体350>
支持体350は、9本の誘電被覆導電体140を支持する。支持体350は、可撓性を有する長尺な媒体であり、例えば、ひもや針金やワイヤーなどである。支持体350の上端部は、正面壁32aに固定されたフック38に係止されている。このようにすることで、9本の誘電被覆導電体140は、いわゆる簾のように支持される。
【0161】
このようにしても、9本の誘電被覆導電体140を構成する9本の誘電被覆体122の誘電分極により生ずる電界によって、静電スクリーンを形成し、この静電スクリーンによって飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【0162】
また、支持体350は、可撓性を有するので、飛動生物除去装置300を、丸めたり折りたたんだりすることができ、収納を容易にしたり、着脱を容易にしたりすることができる。さらに、植物保護装置15の正面壁32aの開口34aに飛動生物除去装置300を、取り付けるときも、植物保護装置15の正面壁32aの開口34aの輪郭に9本の誘電被覆導電体140を適合させて配置することができる。特に、雨や強風のときには、植物保護装置15に装着された飛動生物除去装置300を収納して正面壁32aの開口34aを閉じることによって、飛動生物除去装置300に水滴が付かないようにしたり、強風によって飛動生物除去装置300を分生子や小動物などが通過できないようにすることができる。
【0163】
図12には、9本の誘電被覆導電体140の全体の形状を特徴付ける第1の面114を破線で示した。この第1の面114は、飛動生物除去装置200と同様の手法により特定することができる。
【0164】
<<<<第5の実施の形態>>>
<<飛動生物除去装置400>>
上述した飛動生物除去装置100、200又は300に用いた誘電被覆導電体の誘電被覆体は、図9に示したように、導電体112の全体を覆うものであったが、誘電被覆体は、導電体112の一部のみを覆うものであってもよい。図13は、その例を示す誘電被覆導電体の断面図である。
【0165】
図13(a)は、1本の誘電被覆導電体540の長尺な方向に対して垂直な面における断面を示す断面図である。1本の誘電被覆導電体540は、1本の導電体112と、1本の誘電被覆体522と、を含む。導電体112は、上述した飛動生物除去装置100、200又は300と同様のものである。誘電被覆体522は、長尺な略半円筒状の形状を有する。本明細書において、略半円筒状とは、略円筒状のものの軸心線を含む面で、略半分に分けたときに形成される片方の形状をいう。
【0166】
誘電被覆体522は、誘電被覆体522の外側に位置する外面524と、内側に位置する内面526とを含む。
【0167】
誘電被覆体522の内面526の側に、導電体112が長手方向に沿って配置され、誘電被覆導電体540が構成される。誘電被覆導電体540の誘電被覆体522を略半円筒状の形状としたことにより、導電体112は、誘電被覆体522によって略半分が覆われることになる。また、誘電被覆体522と導電体112との間には、誘電性の材料からなる支持部材(図示せず)が設けられている。このようにすることで、導電体112から離隔した位置に、誘電被覆体522を位置づけることができる。
【0168】
図13(b)は、1本の誘電被覆導電体640の長尺な方向に対して垂直な面における断面を示す断面図である。1本の誘電被覆導電体640は、1本の導電体112と、1本の誘電被覆体622と、を含む。導電体112は、上述した飛動生物除去装置100、200又は300と同様のものである。誘電被覆体622は、長尺な略半円筒状の形状を有する。
【0169】
誘電被覆体622は、誘電被覆体622の外側に位置する外面624と、内側に位置する内面626とを含む。
【0170】
誘電被覆体622の内面626の側に、導電体112が長手方向に沿って配置され、誘電被覆導電体640が構成される。誘電被覆導電体640の誘電被覆体622を略半円筒状の形状としたことにより、導電体112は、誘電被覆体622によって略半分が覆われることになる。また、誘電被覆体622は、導電体112と密着するように位置づけられる。
【0171】
なお、図13(a)に示した誘電被覆体522や、図13(b)に示した誘電被覆体622に、図10(a)に示した複数の溝224を形成したり、図10(b)に示した複数の凹み又は貫通孔324を形成してもよい。さらに、図13(a)に示した誘電被覆体522や、図13(b)に示した誘電被覆体622を、図10(c)に示した誘電性の繊維状の材料によって成型してもよい。
【0172】
図14は、飛動生物除去装置400の概略を示す断面図である。なお、図14は、上述した植物保護装置15の正面壁32aの開口34aに、飛動生物除去装置400が取り付けられたものを1つの例として示した。
【0173】
この飛動生物除去装置400は、誘電被覆体として、図13(a)に示した誘電被覆体522を用いたものである。
【0174】
飛動生物除去装置400は、筐体150と、導体110a及び110bと、誘電体520a及び520bと、電源130とを含む。後述するように、導体110aと誘電体520aとから誘電被覆導電体540aが構成され、導体110bと誘電体520bとから誘電被覆導電体540bが構成される。
なお、筐体150と電源130とは、飛動生物除去装置100のものと同様の構成であり、同様の機能を有するので説明を省略する。
【0175】
<導体110a、110b>
上述したように、飛動生物除去装置400は、導体110aと110bとを含む。導体110aは、9本の導電体112aからなる。導体110bは、9本の導電体112bからなる。これらの9本の導電体112aと112bとは、電源130に電気的に接続されている。これらの9本の導電体112a及び112bによって、「少なくとも1つの導体」及び「複数の導電体」が構成される。なお、これらの9本の導電体112aと112bとは、第3の実施の形態の飛動生物除去装置200のものと同様のものである。
【0176】
<誘電体520a、520b>
上述したように、飛動生物除去装置400は、誘電体520aと520bとを含む。誘電体520aは、9本の誘電被覆体522aからなる。誘電体520bは、9本の誘電被覆体522bからなる。9本の誘電被覆体522aと522bとは、図13(a)に示した誘電被覆体522と同様のものである。これらの9本の誘電被覆体522aと522bとから、「少なくとも1つの誘電体」及び「複数の誘電被覆体」が構成される。
【0177】
<誘電被覆導電体540a、540b>
9本の導電体112aと9本の誘電被覆体522aとから9本の誘電被覆導電体540aが構成され、9本の導電体112bと9本の誘電被覆体522bとから9本の誘電被覆導電体540bが構成される。9本の誘電被覆導電体540aと540bとは、図13(a)に示した誘電被覆体540と同様のものである。
【0178】
9本の誘電被覆導電体540aや、9本の誘電被覆導電体540bの配置の仕方は、飛動生物除去装置100の9本の誘電被覆導電体140のものと同じように、垂直方向に沿って互いに離隔するように配置される。すなわち、隣り合う誘電被覆導電体540a及び540bの間に間隙が生ずるように、いわゆる簾状に、9本の誘電被覆導電体540a及び540bは配置される。
【0179】
この9本の誘電被覆導電体540aから、1つの「誘電被覆導電体群」が構成され、9本の誘電被覆導電体540bから、1つの「誘電被覆導電体群」が構成される。特に、9本の誘電被覆導電体540aから、「第1の誘電被覆導電体群」が構成され、9本の誘電被覆導電体540bから、「第2の誘電被覆導電体群」が構成される。
【0180】
1本の誘電被覆導電体540aは、1本の導電体112aと1本の誘電被覆体522aとから構成される。すなわち、この飛動生物除去装置400では、1本の誘電被覆体522aと、1本の導電体112aとが対になるように構成されている。同様に、1本の誘電被覆導電体540bは、1本の導電体112bと1本の誘電被覆体522bとから構成される。すなわち、この飛動生物除去装置400では、1本の誘電被覆体522bと、1本の導電体112bとが対になるように構成されている。
【0181】
また、飛動生物除去装置400の垂直方向(例えば、図14の紙面の上下方向)の配置に関して、9本の誘電被覆導電体540aのうち隣り合うもの同士の間に、9本の誘電被覆導電体540bのうちの1本の誘電被覆導電体540bが配置される、いわゆる互い違いに配置されるようにしてもよい。また、9本の誘電被覆導電体540bを基準にしたときには、9本の誘電被覆導電体540bのうち隣り合うもの同士の間に、9本の誘電被覆導電体540aのうちの1本の誘電被覆導電体540bが配置されるように、互い違いに配置されるようにしてもよい。
【0182】
このように配置することで、9本の誘電被覆体522aと522bとに生じた誘電分極によって、9本の誘電被覆体522aと122bとの周囲に電界を生じさせることができ、電界が生ずる範囲を広げることができる。このため、9本の誘電被覆体522aの誘電分極によって生ずる電界によって、第1の静電スクリーンを形成し、9本の誘電被覆体522bの誘電分極によって生ずる電界によって、第2の静電スクリーンを形成することができ、これらの2つの静電スクリーンによって飛動可能な生物をより的確に捕捉することができる。
【0183】
なお、飛動生物除去装置400では、9本の誘電被覆導電体540aと540bとから、2つの「誘電被覆導電体群」が構成される場合を示したが、これに限られず、3つ以上の「誘電被覆導電体群」が構成されるようにしてもよい。このようにすることで、3つ以上の静電スクリーンを形成することができ、飛動可能な生物をさらにより的確に捕捉することができる。
【0184】
また、図14に示すように、9本の誘電被覆導電体540aは、9本の誘電被覆体522aが、図面の左方向に向くように配置され、9本の誘電被覆導電体540bは、9本の誘電被覆体522bが、図面の右方向に向くように配置されている。すなわち、9本の誘電被覆体522aの外面524aと9本の誘電被覆体522bと外面524bとが、互いに反対向きになるように配置されている。さらに、9本の誘電被覆体522aの外面524aは、筐体150の正面168aに最も近い位置に配置され、9本の誘電被覆体522bの外面524bは、筐体150の背面168bに最も近い位置に配置される。このようにすることで、9本の導電体112aと112bとに高い電圧を印加したときに、9本の誘電被覆導電体540aや540bに触れた場合でもあっても、9本の誘電被覆体522aや522bによって絶縁されているので、安全を確保することができる。
【0185】
なお、図14に示した飛動生物除去装置400は、図13(a)に示した誘電被覆導電体540を用いたが、図13(b)に示した誘電被覆導電体640を用いてもよい。このようにしたときには、誘電被覆導電体640を細くできるので、飛動生物除去装置400の厚さ(図14の左右方向の長さ)を薄くすることができる。
【0186】
図13(a)に示した誘電被覆体522や、図13(b)に示した誘電被覆体622のように、導電体の一部のみを誘電被覆体で覆うようにしても、誘電被覆体によって誘電分極を生じさせることができ、誘電被覆体の周囲に電界を生じさせることができる。誘電被覆体の周囲に生じる電界も、強さが位置によって異なる電界(不平等電界、不均一場)となるので、飛動可能な生物が帯電している場合には、飛動可能な生物にクーロン力を及ぼすことができ、飛動可能な生物が電気的に中性である場合には、飛動可能な生物に静電誘導を生じさせてグレーディエント力を及ぼすことできる。このような電界を生じさせることで、クーロン力やグレーディエント力を飛動可能な生物に及ぼして、飛動可能な生物を移動させにくくすることができる。このようにすることで、誘電被覆体の誘電分極により生ずる電界によって、静電スクリーンを形成し、この静電スクリーンによって飛動可能な生物を的確に捕捉することができる。
【0187】
なお、飛動生物除去装置400では、9本の誘電被覆導電体540aと540bとの各々が水平方向に配置された場合を示したが、複数本の誘電被覆導電体540aと540bは、植物配置区域20に配置された植物に光を照射し、空気を供給することができるように、配置すればよく、水平方向に配置する場合のみならず、垂直方向や、斜め方向に配置してもよい。また、9本の誘電被覆導電体540aは、水平方向に配置し、9本の誘電被覆導電体540bは、垂直方向に配置するように、9本の誘電被覆導電体540aと9本の誘電被覆導電体540bとを互いに異なる方向に配置してもよい。
【0188】
図14には、9本の誘電被覆導電体540aの全体の形状を特徴付ける第1の面114aと、9本の誘電被覆導電体540bの全体の形状を特徴付ける第1の面114bとを破線で示した。この第1の面114aと114bとは、飛動生物除去装置200と同様の手法により特定することができる。
【0189】
<<<<その他の実施の形態>>>
上述した飛動生物除去装置100、200、300又は400では、まっすぐに延びた長尺な複数の誘電被覆導電体を平行に配置する例を示した。
飛動生物除去装置100又は300では、まっすぐに延びた長尺な9本の誘電被覆導電体140を、互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置した。また、飛動生物除去装置200では、まっすぐに延びた長尺な9本の誘電被覆導電体140aを、互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置するとともに、まっすぐに延びた長尺な9本の誘電被覆導電体140bを、互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置した。さらに、飛動生物除去装置400では、まっすぐに延びた長尺な9本の誘電被覆導電体540aを、互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置するとともに、まっすぐに延びた長尺な9本の誘電被覆導電体540bを、互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置した。
【0190】
誘電被覆導電体を、このような形態とは異なるほかの形態としてもよい。例えば、誘電被覆導電体を網目状に形成したものを用いてもよい。誘電被覆導電体を網目状にすることで、空気の流れを乱したり、うずを生じさせたりすることができる。空気の流れを乱したりすることによって、導電体や誘電体や誘電被覆導体によって生じた電界が有効に存在する領域に飛動可能な生物を存在させる機会を増やすことができ、的確に飛動可能な生物を捕捉したり除去したりすることができる。
【0191】
さらに、筐体150の正面168aの最も近い位置に、この網目状の誘電被覆導体を配置した場合には、飛動生物除去装置のカバーとしての機能も有し、飛動生物よりも大きい物体、例えば、植物の葉やゴミなどの移動を誘電性の網目体によって阻止することができ、物体が導電体と接触しないように排除することができる。
【0192】
さらにまた、この網目状の誘電被覆導体を用いた場合であって、図13(a)又は(b)に示したように、導電体の一部のみが誘電被覆体で覆われているような場合には、誘電被覆体の外面が、筐体150の筐体開口に向くように配置するのが好ましい。具体的には、網目状に形成された誘電被覆体の外面が、筐体150の正面168aや背面168b(筐体開口)に向くように配置する。このようにすることで、誘電被覆体によって覆われていない導電体が、筐体開口側に向いて配置されることはないので、導電体に電源が供給されている場合であっても安全に取り扱うことができる。
【0193】
さらに、網目状の誘電被覆導体を用いた場合であっても、網目状の誘電被覆導体のみを用いるのではなく、飛動生物除去装置100、200、300又は400で用いた9本の誘電被覆導電体と組み合わせて用いてもよい。このようにすることで、静電スクリーンとしての機能をより拡張することができる。
【0194】
また、網目状に形成された誘電被覆導電体を用いるのではなく、網目状に形成された誘電体を用いてもよい。この場合には、飛動生物除去装置100、200、300又は400とともに、網目状に形成された誘電体を用いる。具体的には、筐体150の正面168aの最も近い位置に、網目状に形成された誘電体を配置することで、飛動生物除去装置100、200、300又は400の防風ネットとして機能させたり、ゴミや葉などを除くカバーとして機能させたりする。このようにすることで、風が侵入するのを防止したり、飛動生物よりも大きい物体、例えば、植物の葉やゴミなどの移動を、網目状に形成された誘電体によって阻止したりることができる。さらに、筐体150の正面168aの最も近い位置に、鎧戸・ガラスを設置してもよい。このように、網目状に形成された誘電体や、鎧戸やガラスを設けた場合には、植物の生育に影響を及ぼさない程度に光が入ることが好ましい。例えば、このときの光の透過度として,50%以上が好ましく,より好ましくは60%以上である。
【0195】
さらに、特に、雨や強風のときには、飛動生物除去装置100、200、300又は400にカバー等を掛けることが好ましい。このカバーとしては、ビニールシートで覆うものや、よろい戸やガラス戸などを挙げることができる。
【0196】
<<<<実施例>>>>
次に実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これに限定されるものではない。なお、以下においてはの「部」は、重量部を示す。
【実施例1】
【0197】
不導体で被覆した銅線(太さ約1.2mmのビニール被覆銅線)にバンデグラフ型静電気発生装置を用いて荷電(約15kV)させ、トマトうどんこ病の分生子がトラップされるか試験した。即ち、うどんこ病が発症したトマトの葉を不導体被覆銅線から50cmの所に置き、荷電前後での分生子が不導体被覆銅線にトラップされるかを顕微鏡で観察(30秒間、倍率250倍)した。この結果、荷電前のものには分生子が不導体被覆銅線にトラップされなかったが、荷電させると分生子は不導体被覆銅線にトラップされた。
トラップした分生子が発芽するか、そしてこれが増殖するかを調べた。この結果、分生子は発芽するが増殖しなかった。
【実施例2】
【0198】
図1のような装置を作製し(但し、図1は概念図である)分生子の挙動を調べた。即ち、厚さ0.5mm、0.5×10cmのポリエチレンテレフタレート(PET)板に0.25×8cmのアルミニウム版を貼付けたのち絶縁テープで固定し(不導体で被覆した電極部)、これを塩ビ被覆銅線を用いて高電圧発生装置(光電子倍増管用の高圧出力回路を参考にして作製したもの)に接続した。この電極部を2本の0.5mm×1×10cmのPET板を用いて(図3または図4の14)平行に等間隔でPET部が上に来るように6本セットした(電極部13、図3または図4の13)。また、0.5mm×1×10cmのPET板を2本の0.5mm×1×10cmのPET板を用いて平行に等間隔で6本セットした(不動部11、図3または図4の11)。これら電極部13と不動部11とを4個のスペーサー(図3、図4の12)を用いて平行に設置した(誘電分極付与部、電極部の上に不動部が来るようにする)。スペーサーの厚みは、7mmまたは9mmにした。
この誘電分極付与部を図1のA部にセットし、電極部に−15kVまたは−5kVに荷電させた(電極部に接続したものの別極はアースとした)。そして、この上方からトマトうどんこ病の分生子を3分間落下(C)させ、誘電分極付与部への付着を調べた。
この結果、誘電分極付与部に高電圧を荷電しないケースでは分生子は通過し、B部で分生子が観察されたが、荷電すると分生子は誘電分極付与部に吸着し、B部での分生子はいずれの電圧でも観察されなかった。
【実施例3】
【0199】
ポリエチレン製の枠に不導体で被覆した銅線(太さ約1.2mmのビニール被覆銅線)を用いて約5mmの間隔で縦横の格子状に張り、一端を高電圧発生装置に接続した(誘電分極付与部)。この誘電分極付与部を図1のA部にセットし、−15kVまたは−5kVに荷電させた(電極部に接続したものの別極はアースとした)。そして、この上方からトマトうどんこ病の分生子を3分間落下(C)させ、誘電分極付与部への付着を調べた。
この結果、誘電分極付与部に高電圧を荷電しないケースでは分生子は通過し、B部で分生子が観察されたが、荷電すると分生子は誘電分極付与部に吸着し、B部での分生子は観察されなかった。
【実施例4】
【0200】
B部のスライドガラスの替わりにトマト苗を置いた以外は実施例2と同様に操作した。そして、トマト苗を8日間生育させた。
この結果、誘電分極付与部に高電圧を荷電しないケースでは、トマト苗にうどんこ病の発症が認められたが、荷電するとうどんこ病の発症は認められなかった。なお、荷電電圧またはスペーサーの間隔を変化させても、この結果は変わらなかった。
【実施例5】
【0201】
B部のスライドガラスの替わりにトマト苗を置いた以外は実施例3と同様に操作した。そして、トマト苗を8日間生育させた。
この結果、誘電分極付与部に高電圧を荷電しないケースではトマト苗にうどんこ病の発症が認められたが、荷電するとうどんこ病の発症は認められなかった。なお、荷電電圧を変化させても、この結果は変わらなかった。
【実施例6】
【0202】
上述した植物保護装置15を温室内に設置し、トマトうどんこ病および小害虫(ハモグリバエ、シルバーリーフコナジラミ、サビダニ)の防除効果を調べた。
植物保護装置15は、アクリル樹脂板で覆われた横80cm、高さ50cm、奥行き50cmの箱状の形状を有する。この植物保護装置15の5つ面(2つの側面、上面、正面、背面)に、第2の実施の形態の飛動生物除去装置100を設置し、静電スクリーンとして機能させた。この飛動生物除去装置100として、9本の誘電被覆導電体140を含んだものを用いた。この9本の誘電被覆導電体140は、隣り合う誘電被覆導電体140の間隙が3cmとなるようにした簾状に配置されたものである。誘電被覆導電体140は、アクリル製シリンダー(直径1cm)を誘電被覆体122とするとともに、銅線を導電体112とし、アクリル製シリンダーの内部に(ほぼ軸心線に沿って)銅線を配置したものである。この銅線の各々に直流低電流高電圧発生装置のマイナス極を接続し、直流低電流高電圧発生装置のプラス極を接地することで、銅線の各々に20kVを印加した。
植物保護装置15の内部に健全なトマトの幼苗(品種:Micro−Tom)を置き、温室内にトマトうどんこ病が発病したトマト苗、および小害虫(ハモグリバエ、シルバーリーフコナジラミ、サビダニ)が繁殖したトマト苗を置いた。
印加して幼苗の時期から花が咲き結実するまで(約3ヶ月間)生育させた。この結果、植物保護装置外のトマト苗にはうどんこ病、小害虫(ハモグリバエ、シルバーリーフコナジラミ、サビダニ)の発生が認められたが、植物保護装置内のトマトにはいずれの発生も認められなかった。
【実施例7】
【0203】
この実施例7でも、第2の実施の形態の飛動生物除去装置100を用いた。具体的には、アクリル樹脂板で横50cm、高さ30cm、奥行き25cmの箱を作製し、この中央部に12本の誘電被覆導電体140を設けて、静電スクリーンを機能させた。この12本の誘電被覆導電体140は、隣り合う誘電被覆導電体140の間隙が1cmとなるようにした簾状に配置されたものである。誘電被覆導電体140は、塩化ビニル被覆銅線(直径1.2mm)である。この塩化ビニル被覆銅線の各々を直流低電流高電圧発生装置のマイナス極に接続し、直流低電流高電圧発生装置のプラス極を接地することで、塩化ビニル被覆銅線の各々に20kVを印加した。
実験は、実験装置の左側にキノコバエ86匹(キノコの菌床で発生したもの)を放し、装置の右側に健全な菌床を置いた。
キノコバエを放して2時間観察した結果、静電スクリーンを通り抜けて健全な菌床が置いてある右側に移動したキノコバエは存在しなかった。この2時間の観察では、静電スクリーンに捕捉されたものが21匹、静電スクリーンに近づいて逃げたものが32匹、進入を試みなかったものが33匹であった。
比較例として、電圧を印加しない実験を同様に実施した結果(86匹を放置)、50匹がシリンダーを通り抜けて健全な菌床が置いてある右側装置内に移動した。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明の誘電分極による分生子および菌体等の除去方法は、空気中から効率良く植物病原菌の分生子および菌体等を除去できることおよび放電等によりオゾン発生がないことから、植物に対して障害を与えることなく植物病害の発生を防止することに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】高電圧が荷電した導電体を不導体で被覆した格子を分生子が通過するかを調べる装置の概念図。
【図2】高電圧が荷電した導電体と一部接触または隣接した格子状不導体部(誘電分極付与部)の概念図(上から見た図)。
【図3】図2記載の格子状不導体部(誘電分極付与部)の1、2および3のところの断面概念図。
【図4】図2記載の格子状不導体部(誘電分極付与部)の1〜3方向から見た横面概念図。
【図5】本発明に係る植物保護装置15の概略を示す斜視図である。
【図6】飛動生物除去装置100の概略を示す斜視図である。
【図7】飛動生物除去装置100の概略を示す断面図である。
【図8】1本の誘電被覆導電体140の構成を示す斜視図である。
【図9】1本の誘電被覆導電体140の構成を示す断面図(a)と、1本の誘電被覆導電体140’の構成を示す断面図(b)と、である。
【図10】誘電被覆体222、322及び422の概略を示す斜視図である。
【図11】飛動生物除去装置200の概略を示す断面図である。
【図12】飛動生物除去装置300の概略を示す断面図である。
【図13】1本の誘電被覆導電体540の構成を示す断面図(a)と、1本の誘電被覆導電体640の構成を示す断面図(b)と、である。
【図14】飛動生物除去装置400の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
【0206】
A:不導体被覆格子または縦横の格子状等の誘電分極付与部。
B:通過した分生子を計測するためのスライドガラス、または、苗の設置場所。
C:分生子の流れる方向。
D:高電圧発生装置(例えば、10kVまたは15kVの出力ができる)。
1〜3:誘電分極付与部の位置を示す記号
10:導体(例えば、アルミニウム版)
11:不導体(例えば、ポリエチレンテレフタレート)
12:スペーサー(不導体で作製した電極部と不導体11との間隔をとるためのもの)
13:電極部(ポリエチレンテレフタレートに導体10を貼付け不導体で被覆した部分)
14:ポリエチレンテレフタレート製の梁
15 植物保護装置
20 植物配置区域
30 囲繞部
32a 正面壁
32b 背面壁
32c 右側面壁
32d 左側面壁
32e 上面
32f 下面
34a,34b 開口
100,200,300,400 飛動生物除去装置
110、110a、110b 導体
112、112a、112b 導電体
120、120a、120b、520、520a、520b 誘電体
122、122’、122a、122b、222、322、422 誘電被覆体
522、522a、522b、622 誘電被覆体
140、140’、140a、140b 誘電被覆導電体
540、540a、540b、640 誘電被覆導電体
130 電源
150 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧が荷電した導電体と接触する不導体または隣接する不導体により、空気中に浮遊する植物病原菌の分生子または菌体に高静電気電圧を帯電させ、この帯電した分生子または菌体を当該不導体に吸着させて空気中から除去することを特徴とする植物病害の発生を防止する方法。
【請求項2】
高電圧が荷電した導体を不導体で被覆したものを用いることを特徴とする請求項1記載の植物病害の発生を防止する方法。
【請求項3】
高電圧が荷電した導体を不導体で被覆したものと接触する不導体または隣接する不導体を用いることを特徴とする請求項2記載の植物病害の発生を防止する方法。
【請求項4】
少なくとも1つの導体と、
前記少なくとも1つの導体に電気的に接続され、かつ、前記少なくとも1つの導体によって電界が生ずるように前記少なくとも1つの導体の電位を所定の電位にする電源と、
前記少なくとも1つの導体によって生じた電界によって誘電分極が生ずる位置に配置された少なくとも1つの誘電体と、を含み、
前記少なくとも1つの誘電体を介して生じた電界によって飛動可能な生物を捕捉することを特徴とする飛動生物除去装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導体の少なくとも一部が、前記少なくとも1つの誘電体によって覆われた請求項4に記載の飛動生物除去装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの導体は、複数の導電体からなり、
前記少なくとも1つの誘電体は、各々が前記複数の導電体の各々の少なくとも一部を覆う複数の誘電被覆体からなり、
前記誘電被覆体によって少なくとも一部が覆われた前記複数の導電体の各々は、空気が流通できるように互いに離隔して配置された請求項4又は5に記載の飛動生物除去装置。
【請求項7】
前記複数の導電体の各々は、略棒状形状を有し、
前記複数の誘電被覆体の各々は、略円筒状形状を有し、
前記複数の導電体と前記複数の誘電被覆体とから複数の誘電被覆導電体が構成され、
前記複数の誘電被覆導電体の各々は、前記複数の導電体のうちの1つの導電体と、前記複数の誘電被覆体のうちの1つの誘電被覆体との対によって構成され、かつ、前記1つの導電体が、前記1つの誘電被覆体の内側にかつ長手方向に沿って配置され、
前記複数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置された請求項4ないし6のうちいずれか1つに記載の飛動生物除去装置。
【請求項8】
前記複数の導電体の各々は、略棒状形状を有し、
前記複数の誘電被覆体の各々は、外面と内面とを含む略半円筒状形状を有し、
前記複数の導電体と前記複数の誘電被覆体とから複数の誘電被覆導電体が構成され、
前記複数の誘電被覆導電体の各々は、前記複数の導電体のうちの1つの導電体と、前記複数の誘電被覆体のうちの1つの誘電被覆体との対によって構成され、かつ、前記1つの導電体が、前記1つの誘電被覆体の内面側にかつ長手方向に沿って配置され、
前記複数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置された請求項4ないし6のうちいずれか1つに記載の飛動生物除去装置。
【請求項9】
前記複数の誘電被覆導電体によって、複数の誘電被覆導電体群が構成され、
前記複数の誘電被覆導電体群の各々は、前記複数の誘電被覆導電体のうちの所定の数の誘電被覆導電体によって構成され、
前記複数の誘電被覆導電体群の各々における前記所定の数の誘電被覆導電体は、空気が流通できるように互いに離隔しかつ互いに平行になるように配置され、
前記複数の誘電被覆導電体群の各々は、互いに異なる複数の所定の面のうちの対応する1つの面に沿うように配置された請求項7又は8に記載の飛動生物除去装置。
【請求項10】
前記複数の誘電被覆導電体群は、第1の誘電被覆導電体群と、第2の誘電被覆導電体群と、を含み、
第1の誘電被覆導電体群と、第2の誘電被覆導電体群とは、前記互いに異なる複数の所定の面のうち最も外側に位置する面に位置づけられ、
前記第1の導電体群を構成する前記誘電被覆体の前記外面と、第2の導電体群を構成する前記誘電被覆体の前記外面とが、互いに反対向きになるように配置されている請求項9記載の飛動生物除去装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導体と前記少なくとも1つの誘電体が、空気が流通できるように形成された所定の開口を覆うように配置された請求項4ないし8のうちいずれか1つに記載の飛動生物除去装置。
【請求項12】
植物が配置される植物配置区域と、
前記植物配置区域を囲む囲繞部と、を含み、
前記囲繞部の少なくとも一部は、可視光を透過させることができ、
前記囲繞部のうち空気が流通可能な箇所に請求項4ないし11のうちいずれか1に記載の飛動生物除去装置が設けられたことを特徴とする植物保護装置。
【請求項13】
前記囲繞部には、前記植物配置区域に配置された植物に空気を供給するための少なくとも1つの流通開口が形成され、
前記飛動生物除去装置は、前記少なくとも1つの流通開口を覆うように取り付けられ、
前記第1の誘電被覆導電体群は、前記流通開口から最も遠い位置に配置され、
前記第2の誘電被覆導電体群は、前記流通開口から最も近い位置に配置された請求項12に記載の植物保護装置。
【請求項14】
誘電性の材料からなりかつ少なくとも1つの網目が形成された網目体を含み、
前記網目体は、前記第1の被覆導電体群を構成する前記所定の数の誘電被覆導電体によって占められる面積と略同じ面積を有し、
前記網目体は、前記第1の被覆導電体群の位置の近傍の位置であり、かつ、前記流通開口に対して前記第1の被覆導電体群よりも遠い位置に、前記第1の被覆導電体群を構成する前記誘電被覆導電体を覆うように配置された請求項13に記載の植物保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−255690(P2006−255690A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36509(P2006−36509)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【Fターム(参考)】