説明

誘電性流体及びそれを造る方法

高級パラフィン系のワックス由来の油分画を含む誘電性流体が提供される。高級パラフィン系のワックス由来の油分画を含む、これらの誘電性流体を造る方法が更に提供される。本誘電性流体は、トランス、調節器、回路ブレーカー、開閉装置、地下電気ケーブル、及び付随設備のような、新しい及び既存の、電力及び分配電気装置における絶縁及び冷却媒体として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高級パラフィン系のワックスに由来する油分画類を含む、絶縁性の誘電性流体に関する。本発明は、更に、高級パラフィン系のワックスに由来する油分画類を含むこれらの誘電性流体を造る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電性流体は、定常的な電場を維持すること、及び電気的絶縁体として作動することができる流体である。従って、誘電性流体は、構成要素に電圧をかけることにより生じる熱を発散させ、また、これらの構成要素を、設備の筐体並びに他の内部部品及び機器から絶縁させる役目を果たす。誘電性流体の特性のうち、その能力を効果的に、かつ確実に機能させる特性は、引火及び発火点、熱容量、温度範囲にわたる粘度、インパルス破壊強度、ガス化傾向、並びに流動点を包含する。誘電性流体の様々な特性により、これらは、具体的な組成よりむしろ、これらの特性によって定義されることもある。
【0003】
誘電性流体は、従来、環式パラフィン系基油類、シリコーン油類、又は合成有機エステル類から製造されている。鉱油系誘電性流体は、それらの広い入手可能性、低コスト、及び物性故に、大規模に用いられている。しかしながら、鉱油類は、引火及び発火点が比較的低い。ポリ塩化ビフェニル類(PCB類)は、代わりの誘電性流体として開発された。PCB類は、優れた誘電特性を持ち、又、鉱油類よりも、可燃性が遙かに低い。政府機関は、一時期、流体の可燃性に関して安全上の懸念があるときは常に、PCB類の使用を命じた。不幸にも、PCB類は、環境に有害な物質であることが判明した。シリコーン油類及び高分子量の炭化水素類は、今日、可燃性がより低い流体が必要とされる用途において、最も好評な選択肢としての位置を占める。遙かに少ない範囲だが、合成及び天然エステル系の流体類、並びに合成炭化水素類も、用いられている。
【0004】
従来より誘電性流体において使用されている油類の供給が制限されるにつれて、誘電性流体は、ますます高価になりつつある。更に、このような油類に対する市場の要求は、まもなくそれらの供給を超える可能性がある。
【0005】
電気的又は変圧器油として有用な油組成物を造る方法の開発に関する、及び電気的又は変圧器油として有用な油組成物に関する研究が為されている。例示すると、EP 0458574 B1、米国特許第6,083,889号、及び特開2001−195920は、電気的又は変圧器油として有用な、定式化された変圧器油及び油組成物の製造方法を開示している。
【0006】
当分野において、合成油を製造することは周知であり、性能特性が高い合成油類の生産に関する、数多くの開発の試みがある。例示すると、EP 0776959 A2、EP 0668342 B1、WO 00/014179、WO 00/14183、WO 00/14187、WO 00/14188、WO 01/018156 A1、WO 02/064710 A2、WO 02/070629 A1、WO 02/070630 A1、及びWO 02/070631 A2は、合成潤滑油組成物、及び合成潤滑油組成物の製造方法に向けられている。
【0007】
高い発火点、高い引火点、優れた誘電破壊、良好な熱容量、及び優れたインパルス破壊強度を包含する、望ましい特性を持つ誘電性流体に対する必要性が、なおも存在する。これらの誘電性流体に関する豊富、かつ経済的な供給源、又は効率的、かつ経済的な製造方法に対する必要性も、なおも存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高級パラフィン系のワックスに由来する1以上の油分画類を含む誘電性流体に関し、前記誘電性流体は、高い誘電破壊、高い引火点、及び高い発火点を示す。
【0009】
一の実施態様において、本発明は、T90は950°F以上;100℃において、動粘度が約6cStと約20cStの間;及び流動点が−14℃以上である1以上の油分画類を含む誘電性流体に関する。1以上の油分画類は、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子、3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子、及び0.30重量%未満の芳香族を含み、並びに、前記誘電性流体は、ASTM D877により測定したとき、誘電破壊が25kV以上である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
驚くべきことに、高級パラフィン系のワックスに由来する所定の油分画類を含む誘電性流体は、例外的な特性を示すことが発見された。従って、本発明は、これらの油分画類を含む誘電性流体、及びそれらの製造方法に関する。高級パラフィン系のワックス類の適切な例は、フィッシャー−トロプシュ由来のワックス、スラックワックス、脱油スラックワックス、精製下油類(foots oils)、ワックス状潤滑ラフィネート類、n−パラフィンワックス類、ノルマルアルファオレフィン(NAO)ワックス類、化学プラント工程で産生されるワックス類、脱油石油由来ワックス類、ミクロクリスタリンワックス類、及びこれらの混合物を包含する。これらの高級パラフィン系のワックス類は、処理されて、T90は950°F以上を包含する望ましい特性を持つ油分画類を提供し、これらの油分画類は、引火及び発火点が高く、並びに誘電破壊が高い誘電性流体の提供に用いられる。一の好ましい実施態様において、前記高級パラフィン系のワックスは、フィッシャー−トロプシュ由来のワックスであり、及びフィッシャー−トロプシュ由来の油分画を提供する。
【0011】
驚くべきことに、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類、3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類、及び0.30重量%未満の芳香族類を含み、並びにT90沸点は950°F以上;100℃において約6cStと約20cStの間の動粘度;及び流動点は−14℃以上を持つ、高級パラフィン系のワックスに由来する油分画類を含む誘電性流体は、ASTM D877による測定において25kV以上の優れた誘電破壊、並びに高い引火及び発火点を示すことが発見されている。このように、これらの油分画類を、誘電性流体として有利に用いることができる。
【0012】
本発明に係る誘電性流体類は、T90沸点は950°F以上、好ましくは1000°F以上、及び100℃における動粘度が約6cStと約20cStの間である、高級パラフィン系のワックスから誘導された1以上の油分画類を含む。これらの油分画類の、粘度の割には高い沸点は、粘度が類似の他のパラフィン系油類と比較して、これらに高い引火点及び発火点を付与する。本発明の油分画類は高い沸点を有するにもかかわらず、これらは、十分に流動し、効率的な冷却をもたらす。本発明に係る誘電性流体類は、高級パラフィン系のワックスに由来の1以上の油分画類を含む。本発明に係る誘電性流体類は、ASTM D877による測定において、誘電破壊は25kV以上、好ましくは30kV以上、より好ましくは40kV以上である。好ましくは、本発明に係る誘電性流体類は、発火点は310℃以上、より好ましくは325℃以上である。好ましくは、本発明に係る誘電性流体類は、引火点は280℃以上である。
【0013】
本発明に係る誘電性流体類は、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類、3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類、及び0.30重量%未満の芳香族類を含む1以上の油分画類を含む。多量の単環式パラフィン官能性の分子は、本発明の油分画類に、良好な溶解性、良好な密封適合性、及び他の油類との良好な混和性を付与する。非常に少量の多環式パラフィン官能性の分子は、本発明の油分画類に、優れた酸化安定性を付与する。非常に少量の芳香族類は、本油分画類に、優れた酸化安定性及びUV安定性を付与する。
【0014】
本発明の誘電性流体類は、トランス、調節器、回路ブレーカー、開閉装置、地下電気ケーブル、及び付随設備のような、新しい及び既存の、電力及び分配電気装置における絶縁及び冷却媒体として有用である。これらは、既存の鉱油系誘電性流体類と機能的に混合可能であり、又、既存の装置類と両立する。これらの、高級パラフィン系のワックス由来の油分画類を含む本発明の誘電性流体類は、高い引火点、高い発火点、優れた誘電破壊、及び良好な添加剤熔解性が求められる用途に使用できる。特に、高級パラフィン系のワックス由来の油分画類を含む本発明の誘電性流体類は、高発火点の絶縁性油が要求される用途に使用できる。更に、これらの、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、優れた酸化抵抗と良好なエラストマー両立性を示す。
【0015】
本発明の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、水素異性化を包含する方法により、高級パラフィン系のワックスから調製される。好ましくは、高級パラフィン系のワックスは、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間細孔寸法の分子篩を用い、約600°Fから750°Fの条件下で水素異性化される。
【0016】
一の好ましい実施態様において、高級パラフィン系のワックスは、フィッシャー−トロプシュ由来のワックスであり、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画を提供する。これらの油分画類は、フィッシャー−トロプシュ合成原油のワックス性分画類から調製される。このことから、誘電性流体として使用されるフィッシャー−トロプシュ由来の油分画類は、フィッシャー−トロプシュ合成を実施して生成物流を提供する段階;前記生成物流から、実質的にパラフィンワックス供給原料を単離する段階;前記実質的にパラフィンワックス供給原料を水素異性化する段階;異性化された油を単離する段階;及び、随意に、単離された油を水素化仕上げする段階を含む方法によって造られる。この方法から、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類、3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類、及び0.30重量%未満の芳香族類を含み、T90沸点は950°F以上;100℃で約6cStと約20cStの間の動粘度;及び流動点は−14℃以上を有するフィッシャー−トロプシュ由来の油分画が単離される。ここに挙げたフィッシャー−トロプシュ油分画の好ましい様々な態様も、本方法から単離される。好ましくは、パラフィン系ワックス供給原料は、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間細孔寸法の分子篩を用い、約600°Fから750°Fの条件下で水素異性化される。フィッシャー−トロプシュ由来の油分画類を造る方法の例は、2003年12月23日出願、米国特許出願番号10/744,870号に記載されており、引用によりその全体を本明細書に援用する。高い単環式パラフィン類及び低い多環式パラフィン類を伴うフィッシャー−トロプシュ油分画類の態様の例は、2003年12月23日出願、米国特許出願番号10/744,389号に記載されており、引用によりその全体を本明細書に援用する。
【0017】
本発明に従えば、誘電性流体類は、重量%が比較的高い単環式パラフィン官能性の分子類、並びに重量%が比較的低い多環式パラフィン官能性の分子類及び芳香族類を含有する高級パラフィン系のワックスに由来の、1以上の油分画類を含む。本発明に係る油分画類は、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類及び3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類を含む。好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、15重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類を含む。別の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、2.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類を含む。別の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、1.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類を含む。更に別の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、多環式パラフィン官能性の分子類の重量%に対する単環式パラフィン官能性の分子類の重量%の比が5より大きい。多環式パラフィン官能性の分子類の重量%に対する単環式パラフィン官能性の分子類の重量%の比が高い(あるいは、単環式パラフィン官能性の分子類の重量%が高く、多環式パラフィン官能性の分子類の重量%が低い)高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、非凡な誘電性流体である。高級パラフィン系のワックスに由来のこれらの油分画類は、パラフィン含量が高いにも拘わらず、環状パラフィン類が添加剤溶解性を付与するため、これらは、意外にも、添加剤に対する良好な溶解性、及び他の油類との良好な混和性を示す。高級パラフィン系のワックスに由来のこれら油分画類は、多環式パラフィン官能性の分子類が酸化安定性を低減させ、粘度指数を小さくし、及びノアク揮発度を増大させるので、望ましくもある。多環式パラフィン官能性の分子類の効果のモデルは、V.J.Gatto等「水素化分解された基油類及びポリアルファオレフィン類の物性及び酸化防止剤応答に対する化学構造の影響(The Influence of Chemical Structure on the Physical Properties and Antioxidant Response)」、J.Synthetic Lubrication 19−1、2002年4月、頁3−18にある。
【0018】
従って、好ましい態様において、本発明に係る誘電性流体類は、重量%が非常に低い芳香族官能性の分子類、重量%が高い単環式パラフィン官能性の分子類、及び多環式パラフィン官能性の分子類の重量%に対する単環式パラフィン官能性の分子類の重量%の高い比(あるいは、単環式パラフィン官能性の分子類の重量%が高く、多環式パラフィン官能性の分子類の重量%が非常に低い)を含む高級パラフィン系のワックスに由来の、1以上の油分画類を含む。
【0019】
本誘電性流体類は、ASTM D 2549−02の、溶離カラムクロマトグラフィーによって決定される飽和物類を、95重量%より多く含有する高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を含む。オレフィン類は、長期C13核磁気共鳴分光法(NMR)によって検出可能であるよりも少ない量で存在する。好ましくは、芳香族官能性の分子類は、HPLC−UVにより、0.3重量%未満の量で存在し、低水準の芳香族類の測定用に改変されたASTM D 5292−99により確認される。好ましい複数の態様において、芳香族官能性の分子類は、0.10重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満の量で存在する。硫黄は、ASTM D 5453−00により紫外線蛍光で決定されたとき、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更により好ましくは1ppm未満の量、存在する。
【0020】
本発明に従って、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画を含む誘電性流体が提供される。本発明の絶縁性の誘電性流体は、高級パラフィン系のワックスに由来で、950°F以上のT90沸点を持つこれら油分画類の1以上を含んでよい。本発明に係る誘電性流体類は、随意に、1以上の添加剤類も含んでよい。更に、本発明に係る誘電性流体類は、随意に、誘電性流体として典型的に使用される他の油類を含んでよい。これら他の油類は、フィッシャー−トロプシュ由来の油類、鉱油、他の合成油類、及びこれらの混合物であってよい。1以上の油の使用は、より好ましい特性を持つ第2の油の添加により、1の油のあまり望ましくない特性を向上させることを可能にする。混合により向上する可能性がある特性の例は、粘度、流動点、引火及び発火点、界面張力、及び誘電破壊である。
【0021】
定義及び用語
以下の用語が本明細書全体を通じて使用され、かつ、他の指示がない限り、以下の意味を有する。
【0022】
「フィッシャー−トロプシュ法から由来する」、又は「フィッシャー−トロプシュ由来」という用語は、生成物、分画、又は供給源が、フィッシャー−トロプシュ法起源である、又はそのいずれかの段階で生産されることを意味する。
【0023】
「石油から由来する」、又は「石油由来」という用語は、生成物、分画、又は供給源が、蒸留されている石油原油からの蒸気天頂流、及び非蒸発性の残りの部分である残留燃料起源であることを意味する。由来する石油の源は、ガス田コンデンセートからであり得る。
【0024】
高級パラフィン系のワックスは、n−パラフィン類の含量が高い、一般的には40重量%より多い、好ましくは50重量%より多い、より好ましくは75重量%より多いワックスを意味する。好ましくは、本発明において用いられる高級パラフィン系のワックス類は、窒素及び硫黄も非常に低いレベルであり、一般的には窒素及び硫黄を足した全体で25ppm未満、好ましくは20ppm未満である。本発明において用いてよい高級パラフィン系のワックス類の例は、スラックワックス類、脱油スラックワックス類、精製下油類、ワックス状潤滑ラフィネート類、n−パラフィンワックス類、NAOワックス類、化学プラント法で生産されるワックス類、脱油石油由来ワックス類、ミクロクリスタリンワックス類、フィッシャー−トロプシュワックス類、及びこれらの混合物を包含する。本発明において有用な高級パラフィン系のワックス類の流動点は50℃より高く、好ましくは60℃より高い。
【0025】
「高級パラフィン系のワックスに由来」という用語は、生成物、分画、又は供給源が、高級パラフィン系のワックス起源である、又はいずれかの段階で、それから生産されていることを意味する。
【0026】
芳香族は、非局在化電子の、中断されない雲を共有する少なくとも1の原子群を含有する任意の炭化水素系化合物を意味し、ここで、前記原子群中の非局在化電子の数は、ヒュッケル則4n+2の解に対応する(例えば、6電子に対してn=1、等)。代表的な例は、これらに限定はされないが、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン等を包含する。
【0027】
環式パラフィン官能性の分子類は、単環式、又は融合多環式飽和炭化水素基である、若しくは1以上の置換基類として含有する任意の分子を意味する。環式パラフィン基は、随意に、1以上の、好ましくは1から3個の置換基により置換されてよい。代表的な例は、これらに限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレン、(ペンタデカン−6−イル)シクロヘキサン、3,7,10−トリシクロヘキシルペンタデカン、デカヒドロ−1−(ペンタデカン−6−イル)ナフタレン等を包含する。
【0028】
単環式パラフィン官能性の分子とは、環の炭素が3から7の単環飽和炭化水素基である任意の分子、又は環の炭素が3から7の単環飽和炭化水素基一個で置換された任意の分子を意味する。環式パラフィン基は、随意に、1以上の、好ましくは1から3の置換基によって置換されてよい。代表的な例は、これらに限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、(ペンタデカン−6−イル)シクロヘキサン等を包含する。
【0029】
多環式パラフィン官能性の分子とは、2以上の融合環の融合多環式飽和炭化水素環基である任意の分子、2以上の融合環の融合多環式飽和炭化水素環基の1以上で置換されている任意の分子、又は、1を超える、環炭素が3から7の単環飽和炭化水素基で置換されている任意の分子を意味する。融合多環式飽和炭化水素環基は、好ましくは2個の融合環の基である。環式パラフィン基は、随意に、1以上の、好ましくは1から3の置換基で置換されてよい。代表的な例は、これらに限定はされないが、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロペンタレン、3,7,10−トリシクロヘキシルペンタデカン、デカヒドロ−1−(ペンタデカン−6−イル)ナフタレン等を包含する。
【0030】
動粘度は、重力下における、流体の流れに対する抵抗の目安である。多くの潤滑剤基油、これらから造られた完成した潤滑剤、及び設備の正しい運転は、用いられる流体の適切な粘度に依存する。動粘度はASTM D 445−01により決定される。結果は、センチストークス(cSt)単位で記録される。本発明の高級パラフィン系のワックス由来の油分画類は、100℃において約6.0cStと20cStの間の動粘度を持つ。好ましくは、高級パラフィン系のワックス由来の油分画類は、約100℃において約8cStと16cStの間の動粘度を持つ。
【0031】
粘度指数(VI)は、油の動粘度に対する温度変化の影響を表す、実験的な、単位が無い数である。流体は、温度と共に粘度を変え、加熱されるとより粘性ではなくなる。油のVIがより高いほど、温度と共に粘度が変わるその傾向はより小さくなる。VIが高い油類は、広い範囲で変化する温度において比較的一定の粘度が要求されるときは、常に必要である。VIはASTM D 2270−93の記載に準じて決定される。好ましくは、高級パラフィン系のワックス由来の油分画類は、約130と190の間、より好ましくは約140と180の間の粘度指数を持つ。
【0032】
流動点は、注意深く制御された条件下で油のサンプルが流れ始める温度の目安である。流動点は、ASTM D 5950−02の記載に準じて決定し得る。結果は、摂氏温度単位で記録される。市販の潤滑剤基油類の多くには、流動点に関する規格がある。油類が低い流動点を持つ場合には、おそらく、低い曇り点、低い冷温フイルター詰まり点(low cold filter plugging point)及び低温クランキング粘度のような他の良好な低温特性を持つ。曇り点は、流動点と相互補完的な目安であり、注意深く制御された条件下で、油のサンプルがヘイズを現し始める温度として表される。曇り点は、例えば、ASTM D 5773−95により決定され得る。約35℃より低い流動−曇り点幅(spreads)(即ち、流動点温度と曇り点温度の間の差)を有する油類が望ましい。流動−曇り点幅が大きいと、曇り点の規格に合致させるため、その油を、非常に低い流動点に処理する必要がある。本発明の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、−14℃以上、好ましくは−12℃以上の流動点を持つ。
【0033】
ノアク揮発度は、ASTM D5800に従い、油を、250℃及び定常的な空気流が引かれ、大気圧より20mmHg(2.67kPa;26.7mbar)低い試験るつぼ中、60分間加熱するときに失われる、重量%で表される油の質量として定義される。ノアク揮発度をより簡便に計算し、かつASTM D5800と良い相関がある方法は、ASTM D6375による熱重量分析試験(TGA)を用いる方法である。TGAノアク揮発度は、他に記載がない限り、本開示全体を通して用いられる。好ましくは、本発明の、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、10重量%未満、より好ましくは5重量%未満のノアク揮発度を持つ。
【0034】
アニリン点試験は、油が、その油と接触するエラストマー(ゴム化合物)を損傷しがちであるかを表す。アニリン点は、「アニリン点温度」と呼ばれ、体積の等しいアニリン(CNH)と油が単相を形成する最低温度(°F又は℃)である。アニリン点(AP)は、油試料中の芳香族炭化水素類の量及び種類と、おおよそ相関する。低いAPはより高い芳香族類含量を示し、他方、高いAPはより低い芳香族含量を示す。アニリン点はASTM D611−04により決定される。好ましくは、本発明の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、100から170℃のアニリン点を持つ。従って、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、エラストマーとの良好な両立性を示す。
【0035】
L−4触媒試験を伴うオキシデーターBNは、ドルンテ型酸素吸収装置により酸化に対する抵抗を測定する試験である(R.W.Dornte 「白油類の酸化(Oxidation of White Oils)」、Industrial and Engineering Chemistry、28巻、26頁、1936年)。通常、条件は、純酸素1気圧、340°Fで、100gの油により1000mlのOが吸収される時間を記録する。L−4触媒試験を伴うオキシデーターBNにおいて、油100g当たり0.8mlの触媒を使用する。触媒は、使用済みクランクケース油の平均金属分析をシミュレートする、灯油中の可溶性金属ナフテン酸塩類の混合物である。可溶性金属ナフテン酸塩類のこの混合物は、使用済みクランクケース油の平均金属分析をシミュレートする。触媒中の金属レベルは以下の通りである:銅=6,927ppm;鉄=4,083ppm;鉛=80,208ppm;マンガン=350ppm;錫=3565ppm。添加の包は、油100g当たり80ミリモルのビスポリプロピレンフェニルジチオ−燐酸亜鉛、あるいはおよそ1.1gのOLOA(登録商標)260である。L−4触媒試験を伴うオキシデーターBNは、シミュレートされた用途における仕上げられた潤滑剤の応答を測定する。高い値、又は1リットルの酸素を吸着するための長い時間は、良好な安定性を表す。OLOA(登録商標)は、Oronite Lubricating Oil Additive(登録商標)に対する頭文字語であり、これは、Chevron Texaco Oronite社の登録商標である。
【0036】
一般的に、L−4触媒試験を伴うオキシデーターBNの結果は、約7時間を超えるべきである。好ましくは、L−4値を伴うオキシデーターBNは、約10時間より長い。好ましくは、本発明の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、約10時間より長い結果を持つ。本発明の、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画類は、10時間よりずっと長くなる。
【0037】
引火点は、加熱された油が十分な蒸気を発し、点火源と接触したときに発火するであろう空気との可燃性混合物を形成する、最低温度である。これは、その油の揮発性の指標である。本発明に従って、引火点はASTM D92により決定される。好ましくは、本発明の誘電性流体類は、280℃以上の引火点を持つ。
【0038】
発火点は、加熱された油が十分な蒸気を発し、点火源と接触したときに発火し、かつ最低5秒間燃焼を保持するであろう空気との可燃性混合物を形成する、最低温度である。これは、その油の可燃性の指標である。本発明に従い、発火点はASTM D92により決定される。好ましくは、本発明の誘電性流体類は、310℃以上の発火点、より好ましくは325℃以上の発火点を持つ。
【0039】
誘電破壊は、油中で電気的フラッシュオーバーが起きる最低電圧である。これは、電力周波数における電気的応力に不具合なしで耐えるための、油の能力の目安である。誘電破壊電圧の低い値は、一般的に、水、ゴミ、あるいは他の導電性粒子のような汚染物質が油中にあることを示す役目を果たす。誘電破壊は、ASTM D877に準じて測定される。本発明の誘電性流体類は、25kV以上、好ましくは30kV以上、及びより好ましくは40kV以上の誘電破壊を持つ。
【0040】
絶縁系において、許容できる耐電圧及び低い誘電損失を得て、及び維持するためには、低い水含量が必要である。本発明に従って、水含量はASTM D1533により決定される。好ましくは、本発明の誘電性流体類は、100ppm未満の、より好ましくは35ppm未満の、更により好ましくは25ppm未満の水含量を持つ。
【0041】
油の界面張力は、油−水界面に存在する油膜を裂くために必要な力であり、センチメーター当たりダインの単位を持つ。油中に、石鹸、ペンキ、ワニス、及び酸化産生物等の、なんらかの汚染物質が存在すると、油の膜強度は弱められ、斯くして、裂くために必要な力は小さくなる。本発明に従って、界面張力は、ASTM D971により決定される。好ましくは、本発明の誘電性流体類は、30より大きい、より好ましくは35より大きい、更により好ましくは40dyne/cmより大きい界面張力を示す。
【0042】
油の中和価(neutralization number)は、存在する酸性又はアルカリ性物質の量の目安である。運転中に油が老化するにつれて、酸性度、それ故中和価が増加する。高い中和価を持つ使用済み油は、その油が酸化されいてるか、若しくはワニス、ペンキ、又は他の異物等の物質によって汚染されていることを示す。塩基性の中和価は、油中のアルカリ性汚染物質によりもたらされる。本発明に従って、中和価はASTM D974により測定される。好ましくは、本発明の誘電性流体類は、0.05mgKOH/g未満の、より好ましくは0.03mgKOH/g未満の、更により好ましくは0.02mgKOH/g未満の中和価を持つ。
【0043】
誘電性流体の散逸係数は、油に加えられた正弦電位ともたらされる電流との間の位相角の余弦である。散逸係数は、油の誘電損失、即ち誘電加熱を示す。高い散逸係数は、水分、炭素又は他の導電性物体、金属石鹸及び酸化産生物等の汚染物若しくは劣化産生物の存在の指標である。本発明に従って、散逸係数はASTM D924により測定される。好ましくは、本発明の誘電性流体類は、25℃で0.05未満の、及び10℃で0.30未満の散逸係数を持つ。
【0044】
本発明の高級パラフィン系のワックス由来の油類の沸点は、ASTM D 6352を用いる模擬蒸留により測定され、回収される異なる質量百分率における°F単位で記録される。沸騰範囲分布(5−95)は、°Fで表される、T95(95質量百分率を回収)沸点からT(5質量百分率を回収)沸点を差し引いて計算される。
【0045】
実施例において用いられる更なる規格標準は、ASTM D3487、電気機器に用いられる鉱物性絶縁油に関するASTMタイプII標準規格;ASTM D5222−00、高発火点電気絶縁性油に関するASTM標準規格(高分子量炭化水素規格);IEEE C57.121、変圧器における可燃性のより低い炭化水素流体の受け入れと維持に関する、電気電子技術者協会1998IEEEガイド(Institute of Electrical and Electronic Engineers 1998 IEEE Guide for Acceptance and Maintenance of Less Flammable Hydrocarbon Fluid in Transformers);及び、IEC 1099、電気用途の未使用合成有機エステル類に関する国際電気化学委員会規格(International Electrochemical Commission Specification for Unused Synthetic Organic Esters for Electrical Purposes)を包含する。明記されていなければ、実施例において以下の試験方法を用いた:動粘度、ASTM D445;25℃における外観、視覚、ASTM D1524;界面張力、ASTM D971;中和数、ASTM D974;及び沸点範囲分布(5−95)(T95引くT)、ASTM D6352。
【0046】
高級パラフィン系のワックス
本発明の油分画類を造る際に用いられる高級パラフィン系のワックスは、高含量のn−パラフィン類を持つ任意のワックスでよい。好ましくは、高級パラフィン系のワックスは、40重量%を超える、好ましくは50重量%を超える、より好ましくは75重量%を超えるn−パラフィン類を含む。好ましくは、本発明において用いられる高級パラフィン系のワックス類は、一般的には、窒素と硫黄を合わせた全体で25ppm未満の、好ましくは20ppm未満の非常に低レベルの窒素及び硫黄も持つ。本発明で使用してよい高級パラフィン系のワックス類の例は、スラックワックス類、脱油スラックワックス類、精製下油類、ワックス状潤滑ラフィネート類、n−パラフィンワックス類、NAOワックス類、化学プラント法で産生されるワックス類、脱油石油由来ワックス類、ミクロクリスタリンワックス類、フィッシャー−トロプシュワックス類、及びこれらの混合物を包含する。本発明において有用な高級パラフィン系のワックス類の流動点は、50℃より高く、好ましくは60℃より高い。
【0047】
これらの高級パラフィン系のワックス類を処理して、これらの粘度の割には高い沸点を持つ油分画類を提供できることが発見された。従って、これらの油分画類を、高い引火点、高い発火点、及び高い誘電破壊を伴う誘電性流体類を提供するために使用できる。1の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスはフィッシャー−トロプシュに由来ワックスであり、かつ、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画を提供する。
【0048】
油分画の提供方法
本発明に係る誘電性流体類は、高級パラフィン系のワックス由来の1以上の油分画類を含む。本発明の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、水素異性化を包含する方法により、高級パラフィン系のワックスから調製される。好ましくは、高級パラフィン系のワックスは、貴金属水素化成分を含む形状選択性中間細孔寸法の分子篩を用いて、約600°Fから750°Fの条件下で、水素異性化される。水素異性化からの生成物は、分画されて、950°F以上のT90沸点、約6cStと約20cStの間の動粘度、及び−14℃以上の流動点を持つ1以上の分画類を提供する。本油分画類は、ASTM D877による測定で25kV以上の誘電破壊を持つ誘電性流体を提供するために用いられる。高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、0.30重量%未満の芳香族類、並びに10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類及び3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類も含む。
【0049】
1の好ましい実施態様において、高級パラフィン系のワックスはフィッシャー−トロプシュ由来のワックスであり、かつ、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画を提供する。
【0050】
これらの油分画類は、高級パラフィン系のワックスを提供する段階、及び、次いで前記高級パラフィン系のワックスを水素異性化して、異性化された油を提供する段階を含む方法により造られる。本方法は、水素異性化工程から得られた異性化油を分画して950°F以上のT90沸点を持つ1以上の分画類を提供する段階を更に含む。分画類は、次いで上記の特性を持つように選択される。
【0051】
好ましい態様において、本発明に係る油分画はフィッシャー−トロプシュ由来の油分画である。誘電性流体として用いられるこのフィッシャー−トロプシュ由来の油分画は、フィッシャー−トロプシュ合成法、及び引き続くフィッシャー−トロプシュ合成原油のワックス状分画類の水素異性化法により造られる。
【0052】
フィッシャー−トロプシュ合成
フィッシャー−トロプシュ化学において、合成ガスは、反応性条件下で、フィッシャー−トロプシュ触媒との接触により、液体炭化水素に転換される。典型的には、メタン、及び随意に、より重い炭化水素(エタン及びより重い)を伝統的な合成ガス発生器に送り、合成ガスを提供することができる。一般的に、合成ガスは水素及び一酸化炭素を含有し、かつ少量の二酸化炭素及び/又は水を包含する可能性がある。合成ガス中の、硫黄、窒素、ハロゲン、セレン、燐、及び砒素汚染物質の存在は望ましくない。この理由により、及び合成ガスの量に依存して、フィッシャー−トロプシュ化学を実行する前に、供給原料から硫黄及び他の汚染物質を除去することが好ましい。これらの汚染物質を除去する手段は当業者に周知である。例えば、硫黄不純物の除去にはZnO保護床が好ましい。他の汚染物質を除去する手段は当業者に周知である。フィッシャー−トロプシュ反応器に先立ち、合成ガスを精製して、合成ガス反応の間に産生された二酸化炭素、及び未だ除去されていない任意のさらなる硫黄化合物を除去することも望ましいであろう。これは、例えば、充填カラム中の、少しアルカリ性の溶液(例えば、炭酸カリウム水溶液)と接触させることにより達成できる。
【0053】
フィッシャー−トロプシュ法において、HとCOの混合物を含む合成ガスを、適切な温度及び圧力の反応性条件下で、フィッシャー−トロプシュ触媒と接触させると、液体及び気体の炭化水素類を形成する。フィッシャー−トロプシュ反応は、典型的には約300−700°F(149−371℃)、好ましくは約400−550°F(204−228℃)の温度;約10−600psia(0.7−41bars)、好ましくは約30−300psia(2−21bars)の圧力;及び、約100−10,000cc/g/hr、好ましくは約300−3,000cc/g/hrの触媒空間速度で行われる。フィッシャー−トロプシュ型反応の実施条件の例は、当業者に周知である。
【0054】
フィッシャー−トロプシュ合成法の生成物は、その大半がCからC100+の範囲である、CからC200+の範囲にわたり得る。反応は、1以上の触媒床を含有する固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、又は異なる型の反応器の組合せ等の、多岐にわたる反応器種で実施できる。このような反応方法及び反応器は周知であり、また、文献中に述べられている。
【0055】
スラリーフィッシャー−トロプシュ法は、これは本発明の実施に好ましいが、強烈な発熱合成反応に対する優れた熱(及び質量)移動特性を利用しており、また、コバルト触媒を使用したときに、比較的高分子量の、パラフィン性炭化水素を産生することができる。スラリー法において、反応条件下で液体である、合成反応の炭化水素生成物を含むスラリー液中に分散され、懸濁された、粒子状のフィッシャー−トロプシュ型炭化水素合成触媒を含むスラリーに、第3相として、水素と一酸化炭素の混合物を含む合成ガスを発泡させる。一酸化炭素に対する水素のモル比は約0.5から約4の広い範囲でよいが、より典型的には約0.7から約2.75の範囲内、好ましくは約0.7から約2.5である。特に好ましいフィッシャー−トロプシュ法は、EP 0609079に教示されており、これも、引用により全目的に対して、本明細書に完全に援用する。
【0056】
一般的に、フィッシャー−トロプシュ触媒は金属酸化物担体上にVIII属の遷移金属を含有する。これらの触媒類は貴金属プロモーター(類)及び/又は結晶性分子篩も含有してよい。適切なフィッシャー−トロプシュ触媒は1以上のFe、Ni、Co、Ru及びReを含み、コバルトが好ましい。好ましいフィッシャー−トロプシュ触媒は、適切な無機担体材料、好ましくは1以上の耐火金属酸化物を含む材料上に、有効量のコバルト並びに1以上のRe、Ru、Pt、Fe、Ni、Th、Zr、Hf、U、Mg及びLaを含む。一般的に、本触媒中に存在するコバルトの量は、触媒組成物の全量の約1と約50重量%の間である。これらの触媒は、ThO、La3、MgO、及びTiO等の塩基性酸化物プロモーター、ZrO等のプロモーター、貴金属(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir)、貨幣金属(Cu、Ag、Au)、並びに、Fe、Mn、Ni、及びRe等の他の遷移金属を含有することもできる。適切な担体材料は、アルミナ、シリカ、マグネシア及びチタニア、又はこれらの混合物を包含する。コバルト含有触媒に対する好ましい担体は、チタニアを含む。有用な触媒及びその調製は既知であり、米国特許第4,568,663号中に例示されているが、これは例示のためで、触媒の選択を限定することを意図しない。
【0057】
ある種の触媒は、比較的低くから中程度の連鎖成長の可能性を提供することが知られており、反応生成物は比較的高い比率の低分子(C2−8)量オレフィン類、及び比較的低い比率の高分子量(C30+)ワックス類を包含する。ある種の他の触媒は、比較的高い連鎖成長の可能性を提供することが知られており、反応生成物は比較的低い比率の低分子(C2−8)量オレフィン類、及び比較的高い比率の高分子量(C30+)ワックス類を包含する。このような触媒は当業者に周知であり、容易に入手及び/又は調製できる。
【0058】
フィッシャー−トロプシュ法からの生成物は主にパラフィン類を含有する。フィッシャー−トロプシュ反応からの生成物は、一般的に軽質反応生成物とワックス状反応生成物を包含する。軽質反応生成物(即ち、凝縮物分画)は、大部分がC−C20範囲で、量が減少しながら約C30までの、約700°Fより下で沸騰する炭化水素類(例えば、テールガスから中間留出物燃料)を包含する。ワックス状の反応生成物(即ち、ワックス分画)は、大部分がC20+範囲で、量が減少しながらC10までの、約600°Fより上で沸騰する炭化水素類(例えば、真空ガス油から重パラフィン)を包含する。軽質反応生成物及びワックス状の生成物の両者は、実質的にパラフィン系である。ワックス状の生成物は、一般的に、70重量%を超えるノルマルパラフィン類、屡々80重量%を超えるノルマルパラフィン類を含む。軽質反応生成物は、アルコール類及びオレフィン類の比率が著しい、パラフィン系の生成物を含む。場合によっては、軽質反応生成物は、50重量%に及ぶ、そしてもっと高い、アルコール類及びオレフィン類を含むことがある。それは、本発明に係る誘電性流体として用いられるフィッシャー−トロプシュ由来の油分画類の提供方法に対して供給原料として用いられる、ワックス状の反応生成物(即ち、ワックス分画)である。
【0059】
本発明において有用なフィッシャー−トロプシュワックスは、炭素数30以上の生成物に対する炭素数60以上の生成物の重量比が0.18未満である。炭素数30以上の生成物に対する炭素数60以上の生成物の重量比は、以下のように決定される:1)ASTM D 6352を用い、シュミレートされた蒸留により、そのフィッシャー−トロプシュワックスの沸点分布を測定する;2)ASTM D 6352−98、表1に公表されているn−パラフィンの沸点を用いて、上記沸点を炭素数による百分率重量分布に換算する;3)炭素数30以上の生成物の重量%を合計する;4)炭素数60以上の生成物の重量%を合計する;及び5)炭素数60以上の生成物の重量%の合計を、炭素数30以上の生成物の重量%の合計で割る。
【0060】
本発明の別の態様では、炭素数30以上の生成物に対する炭素数60以上の生成物の重量比が0.15未満、好ましくは0.10未満のフィッシャー−トロプシュワックスを用いる。
【0061】
誘電性流体を提供するために用いられるフィッシャー−トロプシュ油分画類は、水素異性化を包含する方法により、フィッシャー−トロプシュ合成原油のワックス状分画類から調製される。フィッシャー−トロプシュ油分画類は、2003年12月23日に出願された、米国特許出願番号10/744,870号に記載された方法により造ることが可能であり、引用により、その全体を本明細書に援用する。本発明に係る誘電性流体を提供するために用いられるフィッシャー−トロプシュ油分画類は、誘電性流体の他の随意の成分が受け入れられ、また配合される場所とは別の場所で、製造されてよい。
【0062】
水素異性化
高級パラフィン系のワックス類は、水素異性化を含む方法の実施を受けて、本発明に係る誘電性流体に有用な油分画類を提供する。
【0063】
水素異性化は、分子構造中に選択的に分岐を追加することにより、油の低温フロー特性を改良することを意図する。水素異性化は、理想的には、高いレベルで、高級パラフィン系のワックスの、非ワックス状のイソパラフィン類への転換を達成し、同時にクラッキングによる転換を最小に抑える。好ましくは、本発明における水素異性化に関する条件は、ワックス供給原料中の、約700°Fより高温で沸騰する化合物の、約700°Fより低温で沸騰する化合物への転換が約10重量%と50重量%の間、好ましくは15重量%と45重量%の間に維持されるように制御される。
【0064】
本発明に従って、水素異性化は、形状選択性中間細孔寸法の分子篩を用いて実施される。本発明において有用な水素異性化触媒は、耐火性の酸化物担体上に、形状選択性中間細孔寸法の分子篩、及び随意に、触媒活性の金属水素化成分を含む。本明細書で使用される句「中間細孔寸法」は、多孔性の無機酸化物が焼成された形状のとき、有効細孔開口が約3.9から約7.1Åの範囲にあることを意味する。本発明の実施に用いられる形状選択性中間細孔寸法の分子篩は、一般的に、1−D10−、11−又は12−リング分子篩である。本発明の好ましい分子篩は1−D10−リングの変種であり、ここで10−(又は11−又は12−)リング分子篩は、酸素によって結合された、10(又は11又は12)個の、四面体状に配位された原子(T−原子)を持つ。1−D分子篩において、10−リングの(又はより大きい)細孔は互に平行であり、かつ、相互接続していない。しかしながら、中間細孔寸法の分子篩のより広い定義には合致するが、交差する8−員環の細孔を包含する1−D10−リング分子篩も、本発明の分子篩の定義の内にあり得ることに留意せよ。1−D、2−D及び3−Dのような内部ゼオライトチャンネルの分類は、R.M.Barrer in Zeolites、Science and Technology、F.R.Rodrigues、L.D.Rollman及びC.Naccache編集、NATO ASI Series、1984に示されており、引用により、この分類を全て援用する(特に75頁を参照)。
【0065】
水素異性化に用いられる好ましい形状選択性中間細孔寸法の分子篩は、SAPO−11、SAPO−31、及びSAPO−41等、燐酸アルミニウム系である。SAPO−1l及びSAPO−31がより好ましく、SAPO−11が最も好ましい。SM−3は特に好ましい形状選択性中間細孔寸法のSAPOであり、これは、SAPO−11分子篩の結晶構造の範囲に入る結晶構造を持つ。SM−3の調製とその独特な特徴は、米国特許第4,943,424号及び第5,158,665号に記載されている。水素異性化に用いられる好ましい形状選択性中間細孔寸法の分子篩は、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、SSZ−32、オフレット沸石、及び苦土沸石等のゼオライト類である。SSZ−32及びZSM−23がより好ましい。
【0066】
好ましい中間細孔寸法の分子篩は、選択されたチャンネルの結晶学的自由直径、選択された結晶寸法(選択されたチャンネル長に相当する)、及び選択された酸性度により特徴付けられる。分子篩のチャンネルの望ましい結晶学的自由直径は、約3.9から約7.1Åの範囲であり、最大結晶学的自由直径が7.1Åを超えず、最小結晶学的自由直径が3.9Åより小さくない。好ましくは、最大結晶学的自由直径が7.1Åを超えず、最小結晶学的自由直径が4.0Åより小さくない。最も好ましくは、最大結晶学的自由直径が6.5Åを超えず、最小結晶学的自由直径が4.0Åより小さくない。分子篩のチャンネルの結晶学的自由直径は「ゼオライト骨格型の図表集(Atlas of Zeolite Framework Types)」改訂5版、2001年、Ch.Baerlocher、W.M.Meier、及びD.H.Olson、Elsevier、10−15頁に公表されており、これを、引用により本明細書に援用する。
【0067】
本方法において有用な、特に好ましい中間細孔寸法の分子篩は、例えば、米国特許第5,135,638号及び第5,282,958号に記載されており、その内容を、引用により、本明細書に全て援用する。米国特許第5,282,958号において、この様な中間細孔寸法の分子篩は、約0.5μmを超えない結晶子寸法と、最小直径が少なくとも約4.8Åで、最大直径が約7.1Åの細孔を持つ。本触媒は十分な酸性度を持ち、その0.5gは、管反応器に設置されたとき、370℃、1200psigの圧力、160ml/分の水素流、及び1ml/時間の供給量で、ヘキサデカンの少なくとも50%を転換する。本触媒は、40%以上の異性化選択性も示す(異性化選択性は以下の通り決定される:ノルマルヘキサデカン(n−C16)から他の種へ96%の転換をもたらす条件下で用いられたとき、100×(製品中の分岐C16の重量%)/(製品中の分岐C16の重量%+製品中のC13−の重量%))。
【0068】
この様な特に好ましい分子篩は、約4.0から約7.1Åの範囲、好ましくは4.0から6.5Åの範囲の結晶学的自由直径を持つ細孔又はチャンネルにより、更に特徴付けられるであろう。分子篩のチャンネルの結晶学的自由直径は「ゼオライト骨格型の図表集」改訂5版、2001年、Ch.Baerlocher、W.M.Meier、及びD.H.Olson、Elsevier、10−15頁に公表されており、引用により本明細書に援用する。
【0069】
分子篩のチャンネルの結晶学的自由直径が未知の場合には、その分子篩の有効細孔寸法は、標準吸着技術及び最小動的直径が既知の炭化水素系化合物を用いて測定できる。Breck、ゼオライト分子篩(Zeolite Molecular Sieves)、1974年(特に第8章);Anderson等、J.Catalysis 58、114(1979);及び米国特許第4,440,871号を参照せよ、これらの関連する部分を、引用により本明細書に援用する。細孔寸法を決定するための吸着測定の実施においては、標準の技術が用いられる。特定の分子は、約10分未満内に、分子篩上で少なくとも95%の平衡吸着値に到達しない場合は、排除されたと考えるのが便利である(25℃でp/p=0.5)。中間細孔寸法の分子篩は、5.3から6.5Åの動的直径を持つ分子類を、典型的には、殆ど障害無しで収容する。
【0070】
本発明において有用な水素異性化触媒は、触媒的に活性な水素化金属を含む。触媒的に活性な水素化金属の存在は、生成物の、特にVIと安定性の改良をもたらす。典型的な触媒的に活性な水素化金属は、クロム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金、及びパラジウムを包含する。白金及びパラジウム金属は特に好ましく、白金は最も特に好ましい。白金及び/又はパラジウムを用いる場合は、活性水素化金属の全量は、典型的には、全触媒の0.1から5重量%の範囲、通常0.1から2重量%の範囲であり、10重量%を超えない。
【0071】
耐熱性酸化物担体は、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、チタニア、及びこれらの組合せを包含する、従来から触媒に用いられている酸化物担体から選択してよい。
【0072】
水素異性化に対する条件は、約0.3重量%未満の芳香族、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子、及び3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子を含む油分画を達成するように、仕立てられるであろう。好ましくは、これらの条件は、15重量%を超える単環式パラフィン官能性の分子、及び2.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子、より好ましくは1.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子を含む油分画を提供する。好ましくは、これらの条件は、多環式パラフィン官能性の分子の重量%に対して単環式パラフィン官能性の分子の重量%が5より大きい、より好ましくは15より大きい、更に好ましくは50より大きい比を持つ油分画を提供する。水素異性化に対する条件は、上記のように、950°F以上のT90沸点、100℃において約6cStと約20cStの間の動粘度、−14℃以上の流動点を持つ油分画を達成するようにも仕立てられるであろう。本油分画は、ASTM D877により測定したときに、誘電破壊が25kV以上である誘電性流体の提供に用いられるであろう。
【0073】
水素異性化に対する条件は、用いられる供給原料の特性、用いられる触媒、触媒が硫化されているか否か、所望の収率、及び油の所望の特性に依存するであろう。本発明の水素異性化方法が実施されてよい条件は、約500°Fから約775°F(26O℃から約413℃)、好ましくは600°Fから約750°F(315℃から約399℃)、より好ましくは約600°Fから約700°F(315℃から約371℃)の温度;及び約15から3000psig、好ましくは100から2500psigの圧力、を包含する。この場合における水素異性化圧力は、水素異性化反応器中の水素分圧を指すが、この水素分圧は、全圧と実質的に同じ(あるいはほぼ同じ)である。接触している間の、流体の時間当たりの空間速度は、一般的に約0.1から20時間−1であり、好ましくは約0.1から5時間−1である。炭化水素に対する水素の比は、モル炭化水素当たり約1.0から約50モルH、より好ましくはモル炭化水素当たり約10から約20モルHの範囲内である。水素異性化の実施に適切な条件は、米国特許第5,282,958号及び第5,135,638号に記載されており、これらの内容を、引用により全て援用する。
【0074】
水素異性化法の間、水素は反応帯中に存在し、典型的には水素状態で供給量が約0.5から30MSCF/bbl(千標準立方フィート/バレル)、好ましくは約1から10MSCF/bblである。水素は、生成物から分離され、及び反応帯に再循環されてよい。
【0075】
分画
高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を提供する方法は、随意に、水素異性化に先立って、高級パラフィン系のワックス供給原料を分画することを包含する。
【0076】
高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を提供する方法は、水素異性化法から得られた油を分画して、950°F以上のT90沸点を持つ1以上の油分画類を提供する方法を包含する。高級パラフィン系のワックス供給原料又は単離された油の、分画類への分画は、一般的に、大気圧又は真空蒸留により、若しくは大気圧及び真空蒸留の組合せにより遂行される。大気圧蒸留は、約600°Fより高く約750°Fまで(約315℃から約399℃)の初期沸点を持つ底部分画から、ナフサ及び中間部蒸留物等の、より軽い蒸留分画類を分離するために典型的に用いられる。より高温では、炭化水素類の熱クラッキングが起こり、設備の付着及びより重い留分の低収率化をもたらす可能性がある。真空蒸留は、油分画類等の、より高温で沸騰する物質を、沸騰範囲が異なる留分へと分離するために典型的に用いられる。
【0077】
異性化された油を異なる沸騰範囲の留分に分画することは、本明細書に示された特性を伴う油分画を得ることを可能にする。従って、異性化された油は分画されて、950°F以上のT90沸点を持つ1以上の分画類を提供する。950°F以上のT90沸点を持つ、異性化された油から得られた分画類は、かなり広い沸点範囲分布(5−95)も持つ。異性化された油から得られた、950°F以上のT90沸点を持つ分画類の沸点範囲分布(5−95)は、約125°Fより大きい、一部の態様では約150°Fより大きい、及びある態様では約200°Fより大きい可能性がある。
【0078】
本発明の絶縁性の誘電性流体は、950°F以上のT90沸点を持つ、異性化された油から得られた1以上の分画類を含んでよい。本発明の絶縁性の誘電性流体が、950°F以上のT90沸点を持つ、異性化された油から得られた少なくとも2の分画類を含むときは、油分画類の沸点範囲分布(5−95)は、一般的に約200°Fより大きいであろう。
【0079】
所望の分画類を選択して、ASTM D 877による誘電破壊が約25kVより大きい、好ましくは約30kVより大きい、より好ましくは40kVより大きい誘電性流体を提供する。
【0080】
水素化処理
水素異性化法への、高級パラフィン系のワックス状供給原料は、水素異性化に先立って水素化処理されてよい。水素化処理は触媒を用いる方法を言い、通常、自由水素の存在下で行われ、主な目的は、供給原料からの、砒素、アルミニウム及びコバルト等の種々の金属汚染物質;硫黄及び窒素等のヘテロ原子;酸素供給剤;又は芳香族の除去である。一般的に、水素化処理操作において、炭化水素分子のクラッキング、即ちより大きな炭化水素分子のより小さい炭化水素分子への破断が最小化され、また、不飽和炭化水素は完全に、又は部分的に水素化される。
【0081】
水素化処理操作において使用される触媒は、当分野で周知である。例えば、水素化処理、水素化クラッキング、及び各方法において用いられる典型的な触媒の一般的説明に関する、米国特許第4,347,121号及び第4,810,357号を参照せよ。これらの内容を、引用により全て、本明細書に援用する。適切な触媒は、アルミナ又はシリカ質マトリクス上の、(純粋及び応用化学の国際同盟の1975年規則による)白金又はパラジウム等のVIIIA族からの貴金属、並びに、アルミナ又はシリカ質マトリクス上の、ニッケル−モリブデン又はニッケル−錫等のVIII族及びVIB族を包含する。米国特許第3,852,207号は、適切な貴金属触媒及び穏やかな条件を記載する。他の適切な触媒は、例えば、米国特許第4,157,294号及び第3,904,513号に記載されている。ニッケル−モリブデン等の、貴金属ではない水素化金属は、通常、酸化物として最終触媒組成物中に存在するが、これらは、含まれる特定の金属から硫化化合物が容易に形成されるときは、通常、還元された又は硫化された形態で使用される。好ましい非貴金属触媒組成物は、対応する酸化物として決定される、約5重量%を上回る、好ましくは約5から40重量%のモリブデン及び/又はタングステン、並びに、少なくとも0.5、一般的には約1から約15重量%のニッケル及び/又はコバルトを含有する。白金等の貴金属を含有する触媒は、0.01%を上回る金属、好ましくは0.1と1.0%の間の金属を含有する。白金とパラジウムの混合物等の貴金属類の組合せも使用できる。
【0082】
典型的な水素化処理条件は広い範囲にわたって変わる。一般に、全体的LHSVは約0.25から2.0、好ましくは約0.5から1.5である。水素分圧は200psiaより大きく、好ましくは約500psiaから約2000psiaにわたる。水素再循環の量は、典型的には50SCF/Bblより多く、好ましくは1000と5000SCF/Bblの間である。反応器中の温度は、約300°Fから約750°F(約150℃から約400℃)の範囲にわたり、好ましくは450°Fから725°F(230℃から385℃)の範囲にわたるであろう。
【0083】
水素化精製
水素化精製は、水素異性化に続く段階として用いてよい水素化処理工程であり、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を提供する。水素化精製は、痕跡量の芳香族、オレフィン、色体、及び溶媒を除去することにより、油分画類の酸化安定性、UV安定性、及び外観を改良することを意図する。本開示で用いられたとき、UV安定性なる用語は、UV光及び酸素に晒されたときの、油分画又は誘電性流体の安定性を指す。不安定性は、紫外線及び空気に晒された際に、通常浮氷又は曇りとして見られる、目に見える析出物が形成されるとき、若しくは、より暗い色が現れたときに、示唆される。水素化精製の一般的な説明は、米国特許第3,852,207号及び第4,673,487号に見いだされるであろう。
【0084】
本発明の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、水素化精製されて生成品の品質及び安定性が改良されるであろう。水素化精製の間、全体的な液体時間当たり空間速度(LHSV)は約0.25から2.0時間−1、好ましくは約0.5から1.0時間−1である。水素分圧は200psiaより高く、好ましくは約500psiaから約2000psiaの範囲である。水素再循環量は、典型的には50SCF/Bblより多く、好ましくは1000と5000SCF/Bblの間である。温度は、約300°Fから約750°Fの範囲であり、好ましくは450°Fから600°Fの範囲である。
【0085】
適切な水素化精製触媒は、アルミナ又はシリカ質マトリクス上の、(純粋及び応用化学の国際同盟の1975年規則による)白金又はパラジウム等のVIIIA族からの貴金属類、並びに、アルミナ又はシリカ質マトリクス上の、ニッケル−モリブデン又はニッケル−錫等の、非硫化VIIIA族及びVIB族を包含する。米国特許第3,852,207号は、適切な貴金属触媒及び穏やかな条件を記載する。他の適切な触媒類は、例えば、米国特許第4,157,294号及び第3,904,513号に記載されている。非貴金属はニッケル−モリブデン及び/又はタングステン等、並びに少なくとも約0.5、一般的には約1から約15重量%のニッケル及び/又はコバルト対応する酸化物として決定される。貴金属(白金等)触媒は、0.01%を上回る金属、好ましくは0.1と1.0%の間の金属を含有する。白金とパラジウムの混合物等の、貴金属類の組合せも使用できる。
【0086】
下に述べる、不純物を除去するための粘土処理は、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を提供するための、代替的な最終工程段階である。
【0087】
後処理
高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を造る方法は、水素異性化工程に続く後処理段階も包含してよい。異性化されたワックスの選択された分画の、吸着媒による後処理を随意に用いて、流動点を下げ、霞を減らし、及び処理された分画類のワックス含量を更にへらすことができる。吸着媒を用いて霞を減らす方法は、米国特許第6,579,441号及び第6,468,417号に記載されており、その内容を、引用により全て、本明細書に援用する。吸着媒を用いて流動点を下げる方法は、EP 105631及びEP 278693に記載されている。
【0088】
後処理に有用な吸着媒は、一般的に、高い吸着容量を持つ固体粒子状の物質である。結晶性分子篩(アルミノ珪酸塩ゼオライトを包含する)、活性化炭素、アルミナ、シリカ−アルミナ、及び粘土は、有用な吸着媒の例である。霞を減らすための最も有用な吸着媒は、幾分かの酸性の特性を持っている表面を持つ。
【0089】
溶媒脱蝋
高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を造る方法は、水素異性化工程に続く溶媒脱蝋段階も含んでよい。溶媒脱蝋は、随意に、水素異性化後の油から、少量残留しているワックス状分子類を除去するために用いることができる。溶媒脱蝋は、油をメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、又はトルエン等の溶媒中に溶解させることにより、若しくは、「石油の化学的技術(Chemical Technology of Petroleum)」、3版、William Gruse and Donald Stevens、McGraw−Hill Book Company、Inc.、New York、1960年、566から570頁に論じられているようにワックス分子を析出させることにより、為される。溶媒脱蝋は、米国特許第4,477,333号、第3,773,650号及び第3,775,288号にも記載されている。
【0090】
誘電性流体
本発明に係る誘電性流体は、粘度範囲の割には高い沸点と、単環式パラフィン官能性の分子類の比較的高い重量%及び多環式パラフィン官能性の分子類の比較的低い重量%と、並びに、適度に低い流動点を伴う高級パラフィン系のワックスに由来の、1以上の油分画類を含む。本発明の、絶縁性の誘電性流体類は誘電破壊が高い。本発明に係る油分画類は、誘電性流体類を提供するための使用に対して有利性を提供するある特性を持つ。これらの特性は、粘度範囲の割には高い沸点を包含し、これは、より良い電気抵抗とより低い引火及び発火点を提供する。加えて、単環式パラフィン官能性の分子類の比較的高い重量%は、良好な溶解力、良好な密封適合性、及び他の油類との混和性を提供する。更に、多環式パラフィン官能性の分子類の比較的低い重量%は、優れた酸化安定性を提供する。更に、これらの適度に低い流動点は、強度の脱蝋による過剰の収率損失を必要とされずに、油のより高い収率を可能にする。
【0091】
本発明の誘電性流体類の好ましい態様は、非常に高い引火及び発火点も持ち、本発明に係る誘電性流体類を、発火点が高い絶縁性の誘電性流体類として、有用にしている。油分画類は、少量の、流動点降下剤、酸化防止剤及び金属不活性化剤を包含する添加剤に対して、非常に敏感である。
【0092】
本発明に係る誘電性流体類は、高級パラフィン系のワックスに由来の1以上の油分画類を含む。その様なわけで、本発明に係る誘電性流体類は、100℃において約6cStと20cStの間の粘度、950℃以上のT90沸点、及び−14℃以上の流動点を持つ高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類を含む。好ましい態様において、本油分画類は、1000℃以上のT90沸点を持つ。
【0093】
本発明に係る誘電性流体類は、ASTM 877により測定したとき、25kV以上の誘電破壊を持つ。好ましい態様において、本発明に係る誘電性流体類は、ASTM 877により測定したとき、30kV以上の誘電破壊を持ち、より好ましくは40kV以上の誘電破壊を持つ。本発明に係る誘電性流体類は、優れた誘電破壊、並びに高い引火及び発火点を示す。好ましい態様において、本発明に係る誘電性流体類は、310℃以上の発火点、より好ましくは325℃以上の発火点を持ち、及び280℃以上の引火点を持つ。
【0094】
この油分画類の、粘度の割には高い沸点は、同じ様な粘度の他のパラフィン系油と比べて、これらに高い引火点及び高い発火点を備えさせる。本発明の油分画類は、高い沸点を持ってはいるが、これらは、申し分なく流れ、効率的な冷却を提供する。
【0095】
950°F以上のT90沸点を持つこれらの分画類は、かなり広い沸点範囲分布(5−95)も持ってよい。950°F以上のT90沸点を持つ分画類の沸点範囲分布(5−95)は、約125°Fより大きく、ある態様においては約150°Fより大きく、いくつかの態様においては約200°Fより大きくてよい。
【0096】
高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、0.30重量%未満の芳香族類、及び10重量%以上の単環式パラフィン官能性分子類、及び3重量%以下の多環式パラフィン官能性分子類を含む。本発明に係る油分画類は、非常に低いレベルの不飽和物を含む。本発明に従って、誘電性流体類は、比較的高い重量%の単環式パラフィン官能性分子類、並びに比較的低い重量%の多環式パラフィン官能性の分子類及び芳香族類を含有する高級パラフィン系のワックスに由来の、1以上の油分画類を含む。
【0097】
好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、15重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子類を含む。別の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、2.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類を含む。別の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、1.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子類を含む。更に別の好ましい態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、多環式パラフィン官能性の分子類の重量%に対する単環式パラフィン官能性の分子類の重量%が5より大きく、好ましくは15より大きく、より好ましくは50より大きい。
【0098】
高い量の単環式パラフィン官能性は、本発明の油分画類に、良好な溶解力、良好な密封適合性、及び他の油類との良好な混和性を備えさせる。非常に低い量の多環式パラフィン官能性は、本発明の油分画類に、優れた酸化安定性を備えさせる。
【0099】
誘電性流体類として用いられる油分画類の流動点は、−14℃以上、好ましくは−12℃以上である。これらの適度に低い流動点を伴う油分画類は、より低い粘度及びより低い流動点の油類を産生するために必要な重度の脱蝋に伴って起きる収率損失を伴わずに、豊富に造ることができる。従って、誘電性流体類として用いられる油分画類は、大量に造ることができ、また、適度に低い流動点故に、魅力的な価格で市販できる。更に、本発明の油分画類は、流動点降下剤を包含する添加剤に対して十分に応答する;それ故、もっと低い流動点が要求されるときは、流動点降下添加剤を用いて、油分画類の流動点を容易に下げることができる。
【0100】
本発明の誘電性流体類は、変圧器、調節器、回路遮断器、開閉装置、地下電気ケーブル、及び付随設備等の、新しい及び既存の電力及び分配電気装置における、絶縁及び冷却媒体として有用である。これらは、既存の鉱油系誘電性流体と機能的に混和可能であり、また、既存の装置と両立できる。本発明のこれらの誘電性流体類は、高い引火点、高い発火点、優れた誘電破壊、及び良好な添加剤溶解性が要求される用途に用いることができる。特に、本発明の誘電性流体類は、発火点が高い絶縁性の油類が要求される用途に用いることができる。更に、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類、そしてこれらの分画類を含む誘電性流体類は、良好な酸化抵抗及び良好なエラストマー両立性を示す。
【0101】
本発明の絶縁性の誘電性流体類の1の態様は、変圧器及び開閉装置等の、新しい及び既存の電力及び分配電気装置において、発火点が高い絶縁性油が要求されるときに、誘電及び冷却媒体として有用である。発火点が高い絶縁性油は、少なくとも300℃の発火点を持つことにより、従来の絶縁性油とは異なる。この発火点が高い特性は、米国電気工事規程(450−23条)又は他の機関の、用途に対するなんらかの要求を満たすために必要である。発火点が高い絶縁性の油類に関する規格の2つの例は、IEEE Std C57.121−1988及びASTM D 5222−00である。本発明の絶縁性の誘電性流体類の発火点は、一般的に約250℃より高く、好ましくは約300℃より高く、より好ましくは約310℃より高く、最も好ましくは約325℃より高いであろう。発火点が高い絶縁性油として有用な本発明の絶縁性の誘電性流体は、一般的に約300℃と約350℃の間の発火点を持つであろう。発火点が高いことに加えて、発火点が高い絶縁性の油は、少なくとも275℃の引火点も持たなければならない。この発明の絶縁性の誘電性流体類の引火点は、一般的に約150℃より高く、好ましくは約280℃より高く、より好ましくは約290℃より高い。
【0102】
別の態様において、この発明の絶縁性の誘電性流体類は、地下電気ケーブルにおける誘電性及び絶縁性の流体として有用である。絶縁性の誘電性流体は、この場合の電気的絶縁性に加えて、地下電気ケーブルの表面に浸透して、如何なる水分も除去し、また、将来水分がケーブル中に入ることも防ぐ。
【0103】
誘電性流体類として用いられる本発明の油分画類は、ASTM D 2549−02の、溶出カラムクロマトグラフィーにより決定されたとき、95重量%より多くの飽和脂肪酸を含有する。オレフィンは、長期C13核磁気共鳴分析法(NMR)による検出可能量より少ない量で存在する。好ましくは、芳香族官能性の分子は、HPLC−UVによれば0.3重量%未満の量で存在し、低レベルの芳香族を測定するために改変されたASTM D 5292−99により確認される。好ましい態様において、芳香族官能性の分子は、0.10重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満の量で存在する。硫黄は、ASTM D 5453−00による紫外蛍光により決定されるとき、25ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは1ppm未満の量で存在する。
【0104】
油分画類は、例えば、高い揮発性及びヘテロ原子等の不純物を包含する如何なる望ましくない特性をも、誘電性流体に導入しない。
【0105】
好ましい態様において、本発明に係る油分画は、フィッシャー−トロプシュに由来の油分画である。フィッシャー−トロプシュに由来のワックス類は、上述した特性を伴うフィッシャー−トロプシュ由来の油分画類を提供するために特に十分に適している。
【0106】
HPLC−UVによる芳香族の測定
油類中の、低レベルの芳香族官能性の分子を測定するために用いる方法は、HP Chem−stationと適合したHP1050ダイオードアレー紫外−可視光検出器と組み合わされた、Hewlett Packard 1050 Series Quaternary Gradient High Performance Liquid Chromatography(HPLC)システムを用いる。高度に飽和された油類中の、個々の芳香族化合物クラスの識別は、それらのUVスペクトルパターン及びそれらの溶出時間に基づいて為された。この分析に用いられるアミノカラムは、芳香族分子類を、主としてそれらの環の数(又はより正確には、二重結合の数)に基づいて分別する。斯くして、単環芳香族を含有する分子類は最初に溶出し、多環式芳香族類が、分子当たりの二重結合数が増加する順でそれに続くであろう。類似の二重結合特性を伴う芳香族類に関しては、環上にアルキル置換のみを伴う芳香族類が、環式パラフィン置換を伴う芳香族類よりも早く溶出するであろう。
【0107】
種々の油芳香族炭化水素を、それらのUV吸収スペクトルから明確に識別することは、それらのピーク電子遷移は、純粋なモデル化合物類似体に対して、その環系上のアルキル及び環式パラフィン系置換の量に依存する程度まで、全て赤シフトするという事実により幾分複雑であった。これらの深色効果が、芳香環中のπ−電子のアルキル基非局在化に起因することは周知である。置換されていない芳香族化合物の幾ばくかは油範囲で沸騰するので、識別された素芳香基の全てに対して、ある程度の赤シフトが期待され、また、観察された。
【0108】
溶出する芳香族化合物の定量化は、化合物の各一般的なクラスに対して最適化された波長から造られるクロマトグラムを、その芳香族に対する適切な保持時間窓にわたって積分することにより為された。各芳香族クラスに対する保持時間窓限界は、異なる時間に溶出する化合物の個々の吸光度スペクトルを手作業で評価し、及び、モデル化合物の吸収スペクトルに対するこれらの定性的類似性に基づいて、これらを適切な芳香族クラスに割り当てることにより決定した。少数の例外を伴い、高度に飽和されたAPIグループII及びIII潤滑剤基油において、僅か5クラスの芳香族化合物が観察された。
【0109】
HPLC−UV較正:
HPLC−UVは、非常に低レベルにおいてさえ、芳香族化合物のこれらクラスを識別するために用いられる。多環芳香族は、典型的には、単環芳香族より10から200倍強く吸収する。アルキル置換も、吸収に約20%だけ影響した。それ故、様々な種の芳香族を分離し及び識別するためにHPLCを使用し、並びに、それらが如何に効率的に吸収するかを知ることは重要である。
【0110】
5クラスの芳香族化合物が識別された。最も高く保持されたアルキル−シクロアルキル−1−環芳香族と、最も高くなく保持されたアルキルナフタレンとの間の小さな重複を例外として、芳香族化合物クラスの全てはベースラインで解像された。272nmにおける、共溶出する1−環及び2−環芳香族に対する積分限界は、垂直落下法で作成した。各一般的な芳香族クラスに対する波長依存応答因子は、最近接スペクトルピーク吸光度に基づく純粋モデル化合物混合物から置換された芳香族類似体までベールの法則プロットを構築することにより、先ず決定した。
【0111】
例えば、油中のアルキル−シクロヘキシルベンゼン分子は、置換されていないテトラリンモデル化合物が268nmで示す、同じ(禁制)遷移に対応する、272nmの明確なピーク吸光度を示す。油試料中のアルキル−シクロアルキル−1−環芳香族の濃度は、その272nmでのモル吸収率応答因子が、ベールの法則プロットから計算された、268nmにおけるテトラリンの吸収率とほぼ等しいと仮定して計算した。芳香族の重量%濃度は、各芳香族クラスに対する平均分子量が、全油試料の平均分子量とほぼ等しいと仮定して計算した。
【0112】
この較正方法は、網羅的なHPLCクロマトグラフィーを介して、1−環芳香族を直接油から単離することにより、更に改良された。これら芳香族により直接校正することは、仮定とモデル化合物に関連する不確実性を取り除いた。期待通りに、単離された芳香族試料は、それらがより高く置換されているため、モデル化合物よりも応答因子が低かった。
【0113】
より具体的には、HPLC−UV法を正確に校正するため、Wartersの半−分取HPLCユニットを用いて、油のバルクから、置換されたベンゼン芳香族を分離した。アミノ結合したシリカカラム、5cm×22.4mmのIDガード上に注入し、移動相として、流速18mls/分のn−ヘキサンによる、Rainin Instruments、Emeryville,Californiaにより製造された、2つの、8−12μmアミノ結合シリカ粒子の25cm×22.4mmIDカラムに続けた。カラム溶離液は、265nm及び295nmに設定された二波長UV検出器からの検出器応答に基づいて分画した。飽和分画は、単環芳香族溶離の開始の合図である、265nmの吸光度が0.01吸光度単位の変化を示すまで回収した。単環芳香族分画は、2環芳香族溶離の開始を示唆する、265nmと295nmの間の吸光度比が2.0に減少するまで回収した。単環芳香族分画の精製及び分離は、HPLCカラムの過負荷から帰結する、「尾引する(tailing)」飽和物分画と別に、単芳香族分画を再度クロマトグラフィーにかけることにより為された。
【0114】
この精製された芳香族「標準」は、アルキル置換は、無置換のテトラリンに対して、吸収度応答因子を約20%だけ減少させることを示した。
【0115】
NMRによる芳香族の確認:
精製された単−芳香族標準中の芳香族官能性分子の重量%は、長期C13NMR分析を介して確認された。NMRは、これが単に芳香族炭素を測定し、分析されている芳香族のクラスには応答が依存しないので、HPLC UVより校正が容易であった。NMRの結果は、高度に飽和された油類中の芳香族の95−99%は単環芳香族であることを知って、芳香族炭素の%から芳香族分子の%(HPLC−UV及びD 2007と一貫するように)に翻訳された。
【0116】
芳香族類を0.2%の芳香族分子類まで正確に測定するために、高出力、長期、及び良好なベースライン分析が必要であった。
【0117】
より具体的には、少なくとも1の芳香族機能を伴う低レベルの全ての分子をNMRにより正確に測定するために、標準D 5292−99法を改変して、(ASTM標準技法E 386により)最小炭素感度を500:1とした。10−12mmNaloracプローブを伴う400−500MHzのNMR上、15時間の連続運転を用いた。Acorn PC積分ソフトウェアを用いて、ベースラインの形状を規定し、連続して積分した。運転中に一回、キャリヤ周波数を変えて、脂肪族ピークを芳香族領域に描画することによる作為を避けた。キャリヤスペクトルの両側のスペクトルを取ることにより、解像力が顕著に改良された。
【0118】
オレフィンの重量%の決定:
オレフィンの重量%は、下記の段階A−Dにおいて説明されたプロトン−NMR(PROTON NMR)によって決定された:
a)重水素化クロロホルム中、試験炭化水素の5−10重量%の溶液を調製する。
b)少なくとも12ppmスペクトル幅の正常プロトンスペクトルを取得し、及び化学シフト(ppm)軸を正確に参照する。使用する機器は、受信機/ADCを過負荷させないで信号を取得するために十分な利得範囲を持っていなければならない。30度パルスが加えられたとき、その機器は65,000の最小信号デジタル化ダイナミックレンジを持っていなければならない。好ましくは、ダイナミックレンジは260,000以上であろう。
c)6.0−4.5ppm(オレフィン);2.2−1.9ppm(アリル);及び1.9−0.5ppm(飽和物)間の積分強度を測定する。
d)ASTM D 2502又はASTM D 2503により決定された試験物質の分子量を用いて、以下を計算する:
1)飽和炭化水素の平均分子式;
2)オレフィンの平均分子式;
3)合計積分強度(=全積分強度の和);
4)試料水素当たりの積分強度(=合計積分/式中の水素数);
5)オレフィン水素の数(=オレフィン積分/水素当たりの積分);
6)二重結合の数(=オレフィン水素×オレフィン式中の水素/2);及び
7)PROTON NMRによるオレフィン類の重量%=100×二重結合の数×典型的なオレフィン分子中の水素の数÷典型的な試験物質分子中の水素の数。
【0119】
段階d)に記載したPROTON NMR計算手法によるオレフィン重量%は、得られるオレフィンの重量%が低く、約15重量%未満のときに最も役に立つ。オレフィンは「伝統的な」オレフィン;即ち、アルファ、ビニリデン、シス、トランス、及び3置換等の、二重結合炭素に付加された水素を持つオレフィン種の、分散混合物(distributed mixture)でなければならない。これらのオレフィン種は、1と約2.5の間の、検出可能なアリル対オレフィン積分比を持つであろう。この比が約3を超えるときは、トリ又はテトラ置換オレフィンがより高い百分率で存在し、及び試料中の二重結合数を計算するために異なる仮定を立てなければならないことを示唆している。
【0120】
FIMSによる環式パラフィン分布:
パラフィンは、環式パラフィンより酸化に対してより安定であり、それ故、より望ましいと考えられる。単環式パラフィンは、多環式パラフィンより酸化に対してより安定であると考えられる。しかしながら、油中において、少なくとも1の環式パラフィン官能性を伴う全分子の重量%が非常に低いときは、添加剤の溶解度が低く、エラストマー両立性が乏しい。これらの特性を伴う油類の例は、環式パラフィンが約5%未満のフィッシャー−トロプシュ油(GTL油)である。仕上げられた生成物におけるこれらの特性を改良するため、屡々、エステル等の高価な共溶媒を添加しなければならない。好ましくは、高級パラフィン系のワックスに由来し、及び誘電性流体として用いられる油分画類は、それらの油分画類が高い酸化安定性、低い揮発性、他の油類との良好な混和性、良好な添加剤溶解性、及び良好なエラストマー両立性を持つように、高い重量%の単環式パラフィン官能性の分子、及び低い重量%の多環式パラフィン官能性の分子を含む。
【0121】
本発明の潤滑剤基油類は、アルカン及び不飽和度が異なる分子に対するFIMSにより特徴付けられた。油分画類中の分子の分布は、場イオン化質量分光測定法(FIMS)により決定した。FIMSスペクトルは、Micromass VG 70VSE質量分析計で得た。試料は、固体プローブを介して、好ましくは少量の(約0.1mg)試験すべき基油をガラスキャピラリー管中に設置して、分光光度計に導入した。キャピラリー管は、質量分析計用固体プローブの頂点に設置し、ほぼ10−6Torrの真空下で操作しながら、そのプローブを、50℃/分の割合で約40℃から500℃まで加熱した。質量分析計は、10当たり5秒の割合で、m/z40からm/z1000まで走査した。取得した質量スペクトルを合計して、1つの「平均化」スペクトルを作り出した。各スペクトルは、PC−MassSpecのソフトウェアパッケージを用いて、13C補正した。
【0122】
面積%から重量%を決定するように、全化合物種に対する応答因子は0.1と仮定した。取得した質量スペクトルを合計して、1つの「平均化」スペクトルを作り出した。FIMS分析からの出力は、試験試料中のアルカン、1−不飽和物、2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の平均重量%である。
【0123】
不飽和数が異なる分子は、環式パラフィン、オレフィン、及び芳香族から成るであろう。もしも潤滑剤基油中に芳香族が顕著な量で存在すると、FIMS分析において、それらは十中八九、4−不飽和物として識別されるであろう。もしも潤滑剤基油中にオレフィンが顕著な量で存在すると、FIMS分析において、それらは十中八九、1−不飽和物として識別されるであろう。FIMS分析からの1−不飽和物、2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の合計から、プロトンNMRによるオレフィンの重量%を差引き、また、HPLC−UVによる芳香族の重量%を差し引くと、本発明の潤滑剤基油類中の、環式パラフィン官能性を伴う分子の合計重量%である。FIMS分析からの2−不飽和物、3−不飽和物、4−不飽和物、5−不飽和物、及び6−不飽和物の合計から、HPLC−UVによる芳香族の重量%を差し引くと、本発明の油類中の、多環式パラフィン官能性を伴う分子の重量%である。もしも芳香族の含量が測定されないときは、それは0.1重量%未満であると仮定し、環式パラフィン官能性を伴う分子の合計重量%に対する計算には包含されないことに注意すべきである。
【0124】
1の態様において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、10重量%以上、好ましくは15重量%を超える単環式パラフィン官能性の分子、及び3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下の単環式パラフィン官能性の分子を持つ。好ましくは、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、更に、多環式パラフィン官能性の分子の重量%に対する単環式パラフィン官能性の分子の重量%の比が、5より大きく、好ましくは15より大きく、より好ましくは50より大きい。
【0125】
低レベルの芳香族化合物を測定するために用いる改変されたASTM D 5292−99及びHPLC−UV試験法、並びに飽和脂肪酸を特徴付けるために用いるFIMS試験法は、D.C.Kramer等、「VI及び酸化安定性に対するグループII及びグループIII基油組成物の影響(Influence of Group II & III Base Oil Composition on VI and Oxidation Stability)」、1999 AIChE Spring National Meeting in Houston、1999年3月16日発表、に記載されており、その内容を、引用により全て本明細書に援用する。
【0126】
高級パラフィン系のワックス供給原料は、本来、オレフィンを含まないが、油処理技術は、特に高温で、「クラッキング」反応によるオレフィンを導入することがあり得る。熱又はUV光の存在下で、オレフィンは重合してより高分子量の生成物を形成でき、これはその油を着色させ、又は沈殿の原因になり得る。一般的に、オレフィンは、水素化精製により、又は粘土処理により、本発明の方法の間に除去できる。
【0127】
誘電性流体として用いるのに適切な、典型的なフィッシャー−トロプシュ油の特性を、実施例の表IIに集約した。
【0128】
本発明の誘電性流体は、950°F以上のT90を持つ2以上の所望の油分画類を含んで、約25kVより高い誘電破壊を持つ誘電性流体を提供できる。別法として、本発明の誘電性流体は1以上の追加の油を更に含んでよい。2以上の所望の油分画類、又は1以上の追加の油を含む誘電性流体類は、約200°Fより大きい沸点範囲分布(5−95)を持つであろう。本発明の誘電性流体は、更に1以上の添加剤を含んでよい。
【0129】
添加剤
本発明に係る誘電性流体類は、1以上の添加剤を更に含んでよい。その様なわけで、ここに説明した、高級パラフィン系のワックス由来の油分画類は、1以上の添加剤と調合されて誘電性流体を提供する。用いるときは、1以上の添加剤は有効量で存在する。添加剤、又は誘電性流体で用いられる添加剤の有効量は、所望の特性又は複数の特性を付与する量である。有効量を上回る量の添加剤を包含することは望ましくない。本発明の誘電性流体類は少量の添加剤に対して非常に鋭敏であり、添加剤の有効量は比較的少なく、一般的に誘電性流体の1.5重量%未満、好ましくは1.0重量%未満である。
【0130】
本発明の誘電性流体類と共に使用できる添加剤は、流動点降下剤、酸化防止剤、及び金属不活性化剤(銅を不活性化するときは金属不働化剤としても知られる)を含む。潤滑剤基油添加剤類の異なるクラスの概説は、「潤滑剤類と潤滑(Lubricants and Lubrication)」Theo Mang及びWilfried Dresel編、85−114頁に見いだされるであろう。
【0131】
流動点降下剤は、油中に懸濁されたワックスの、油中で結晶又は固体塊を形成して流動を妨げる傾向を減少させることにより、油の流動点を下げる。有用な流動点降下剤の例は、ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリアクリルアミド;ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物;ビニルカルボキシレートポリマー;及びフマル酸ジアルキル、脂肪酸のビニルエステル、及びアルキルビニルエーテルの三元共重合体である。流動点降下剤は、米国特許第4,880,553号及び第4,753,745号において論じられており、これらを、引用により本明細書に援用する。添加される流動点降下剤の量は、好ましくは、本発明の誘電性流体の約0.01と約1.0重量%の間である。
【0132】
優れた酸化安定性は、誘電性流体に関する重要な特性である。十分な酸化安定性を伴わない誘電性流体は、過剰の温度及び酸素の影響下、特に、少量の金属粒子、これは触媒として作用する、の存在下、酸化される。時間と共に、油の酸化はスラッジと沈殿物をもたらし得る。最悪の場合の筋書きでは、設備内の油管が閉塞され、設備が加熱し、これは油の酸化を更に悪化させる。油の酸化は、酸やヒドロペルオキシド等の帯電した副産物を産生させる可能性があり、これらは、傾向として、その誘電性流体の絶縁特性を低減させる。多環式パラフィン官能性の分子の含量が低いため、本発明の誘電性流体類は、一般的に、酸化防止剤の添加を伴わずに、優れた酸化安定性を持つ。しかしながら、更なる酸化安定性が望まれるときは、酸化防止剤を添加してよい。本発明において有用な酸化防止剤の例は、フェノール性物質、芳香族アミン、硫黄及び燐を含有する化合物、有機硫黄化合物、有機燐化合物、並びに、これらの混合物である。添加される酸化防止剤の量は、好ましくは本発明の誘電性流体の約0.001と約0.3重量%の間である。
【0133】
銅を不働化する金属不活性化剤と酸化防止剤の組み合わせは、銅イオンの形成を妨げる強い相乗効果を示すので、銅イオンの副酸化剤としての挙動を抑制する。本発明に有用な金属不活性化剤は、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、及びトリルトリアゾール誘導体を含む。添加される金属不活性化剤の量は、好ましくは、本発明の誘電性流体の約0.005と約0.8重量%の間である。
【0134】
本発明の誘電性流体において有用であろう添加剤系の例は、米国特許第6,083,889号に開示されており、引用により、本明細書に援用する。
【0135】
高級パラフィン系のワックスに由来する1以上の油分画、及び1以上の添加剤を含む誘電性流体は、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画と1以上の添加剤を、当業者に既知の技術で配合することにより造ることができる。誘電性流体成分は、個々の成分(即ち、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画、流動点降下剤、及び酸化防止剤)から出発する、単一の段階において配合されて、誘電性流体を直接提供してよい。別法において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画、及び1の添加剤(即ち、流動点降下剤)を先ず配合してよく、次いで、得られた配合物と第二の添加剤(即ち、酸化防止剤)を混合してよい。高級パラフィン系のワックスに由来の油分画と第一の添加剤との配合物は、そのようなものとして単離されてよいし、又は、第二の添加剤が直ちに添加されてよい。
【0136】
追加の油
本発明に係る誘電性流体類は、誘電性流体として典型的に用いられる、1以上の他の油を含んでよい。これらの他の油は、フィッシャー−トロプシュ由来油、鉱油、他の合成油、及びこれらの混合物でよい。1を超える油の使用は、1の油のより望ましくない特性を、より好ましい特性を持つ第二の油の添加により、上げることを可能にする。配合により上げられる可能性がある特性の例は、粘度、流動点、引火及び発火点、界面張力、並びに誘電破壊である。
【0137】
その様なわけで、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画類は、ここに説明したとおり、1以上の他の油と配合されて、誘電性流体を提供する。第二の油が用いられるときは、本発明に係る誘電性流体類は、5から99重量%の高級パラフィン系のワックスに由来の油分画、及び1から95重量%の第二の油を含むことができる。
【0138】
別の油が用いられるときは、本発明に係る誘電性流体類は、当業者に既知の技術により、高級パラフィン系のワックス由来の油分画に、1以上の追加の油、及び随意に、1以上の添加剤を配合することにより造られてよい。誘電性流体の成分は、個々の成分から出発する、単一の段階において配合されて、誘電性流体を直接提供してよい。別法において、高級パラフィン系のワックスに由来の油分画、及び1の添加剤を先ず配合してよく、次いで、得られた配合物と第二の油を混合してよい。高級パラフィン系のワックスに由来の油分画と第一の添加剤との配合物は、そのようなものとして単離されてよいし、又は、第二の油が直ちに添加されてよい。
【0139】
使用される高級パラフィン系のワックスに由来の油分画は、誘電性流体の成分が受け入れられ、また配合される場所とは別の場所で製造されてよい。1の態様において、油分画は1の場所におけるフィッシャー−トロプシュ法由来であり、かつ、誘電性流体は、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画が元々造られている場所とは異なる場所で配合される。更に、誘電性流体の成分(即ち、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画、追加の油、及び添加剤)は、全て、異なる場所で製造されてよい。好ましくは、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画は、遠隔地(即ち、精油所または市場から離れた地域、その地域は、精油所又は市場における建設コストより、建設コストが高いかもしれない。定量的にいうと、その遠隔地と精油所又は市場の間の輸送距離は、少なくとも100マイル、好ましくは500マイルを超え、最も好ましくは1000マイルを超える)で製造される。
【0140】
好ましくは、フィッシャー−トロプシュ由来の油は、第一の遠隔地で製造され、第二の場所に輸送される。誘電性流体に包含されるべき追加の油は、第一の遠隔地と同じ場所、又は第三の遠隔地で製造されてよい。第二の場所は、フィッシャー−トロプシュ由来の油分画、追加の油、及び添加剤を受け入れる。誘電性流体はこの第二の場所で製造される。
【実施例】
【0141】
本発明を、非限定的であることが意図されている、以下の例示的な実施例により、更に説明する。
【0142】
Fe−系フィッシャー−トロプシュ合成触媒、及びCo−系フィッシャー−トロプシュ触媒を用いて造られた、水素処理されたフィッシャー−トロプシュ生産物の試料を分析し、表Iに示した特性を持つことを見いだした。
【0143】
【表1】

【0144】
フィッシャー−トロプシュワックスは、少なくとも30個の炭素原子を持つ化合物に対する、少なくとも60個の炭素原子を持つ化合物の重量比が0.18未満であり、及びT90沸点が約950°Fより高かった。Fe−系ワックスは、アルミナ酸化物担体上に0.2と0.5重量%の間のPtを含有するPt/SSZ−32触媒又はPt/SAPO−11触媒上で、水素異性化された。運転条件は、670と685°Fの間、1.0時間−1のLHSV、1000psigの反応器圧力、及び2と7MSCF/bblの間の一回通過水素速度であった。反応留出物は、やはり1000psigで、シリカ−アルミナ上Pt/Pdの水素化精製触媒を含有する第二の反応器に、直接移動した。その反応器の条件は、450°Fの温度、及び1.0時間−1のLHSVであった。
【0145】
650°Fより上で沸騰する生成物は真空蒸留により分画され、異なる粘度等級の油分画類を産生した。本発明における油分画類として有用な具体的な蒸留留分に関する試験データを、表IIに示す。
【0146】
4種のフィッシャー−トロプシュ由来の油分画を試験した:FT−6.3、FT−7.5、FT−10、及びFT−14。本発明の誘電性流体として有用な具体的な分画に関する試験データを、表IIに示す。
【0147】
【表2】

【0148】
上記油中の2種、FT−IO、及びFT−14と、それぞれ0.2重量%のViscoplex(登録商標)シリーズ1(ポリメタクリレート)流動点降下剤を配合した。更に、70重量%のFT−14と30重量%のFT−10の混合物と、0.2重量%のViscoplex(登録商標)シリーズ1(ポリメタクリレート)流動点降下剤を配合した。これらの試料の特性を表IIIに示す。
【0149】
【表3】

【0150】
表III中の3つの試料は、それらを、本発明の誘電性流体類の良好な、非限定的な例となさしめる特性を示している。更に、FT−10及びFT−14と共に調製された配合物も、非常に高い引火及び発火点を持ち、それを、本発明の高発火点誘電性流体の良好な例となさしめている。これらの例は、流動点の低減における、比較的少量のポリメタクリレート流動点降下剤の有効性も実証している。
【0151】
具体的な態様を参照して本発明を説明してきたが、本出願は、添付の特許請求の範囲の精神及び技術的範囲から離れずに当業者が為し得る種々の変更及び置き換えも覆うことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
950°F(510℃)以上のT90,100℃で約6cStと約20cStの間の動粘度,及び−14℃以上の流動点を持つ1以上の油分画を含み、そして、
前記1以上の油分画が、10重量%以上の単環式パラフィン官能性の分子、3重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子、及び0.30重量%未満の芳香族を含んでなる誘電性流体であって、
ASTM D877により測定されたときに、25kV以上の誘電破壊を持つ、
前記誘電性流体。
【請求項2】
前記1以上の油分画がフィッシャー−トロプシュ由来の油分画である請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項3】
前記1以上の油分画が、2.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子を含む請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項4】
前記1以上の油分画が、1.5重量%以下の多環式パラフィン官能性の分子を含む請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項5】
前記1以上の油分画が、5より大きい、多環式パラフィン官能性の分子の重量%に対する単環式パラフィン官能性分子の重量%の比を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項6】
前記1以上の油分画が、15より大きい、多環式パラフィン官能性の分子の重量%に対する単環式パラフィン官能性分子の重量%の比を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項7】
前記1以上の油分画が、50より大きい、多環式パラフィン官能性の分子の重量%に対する単環式パラフィン官能性分子の重量%の比を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項8】
前記1以上の油分画が、約1000°F(約537.8℃)より高いT90を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項9】
前記1以上の油分画が、−12℃以上の流動点を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項10】
前記誘電性流体が、ASTM D877により測定したとき30kV以上の誘電破壊を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項11】
前記誘電性流体が、ASTM D877により測定したとき40kV以上の誘電破壊を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項12】
前記誘電性流体が、310℃以上の発火点を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項13】
前記誘電性流体が、325℃以上の発火点を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項14】
前記誘電性流体が、280℃以上の引火点を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項15】
前記1以上の油分画が、150°F(約65.6℃)以上の5−95沸点範囲分布を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項16】
有効量の添加剤を更に含む請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項17】
前記有効量の添加剤が1重量%未満である請求項16に記載の誘電性流体。
【請求項18】
前記添加剤が、流動点降下剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項16に記載の誘電性流体。
【請求項19】
前記添加剤が流動点降下剤であり、かつ、前記流動点降下剤が約0.01と約1.0重量%の間の量である請求項18に記載の誘電性流体。
【請求項20】
前記流動点降下剤が、ポリメタクリレート,ポリアクリレート,ポリアクリルアミド,ハロパラフィンワックス及び芳香族化合物の縮合生成物,ビニルカルボキシレートポリマー,フマル酸ジアルキル、脂肪酸のビニルエステル、及びアルキルビニルエーテルの三元共重合体,及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項19に記載の誘電性流体。
【請求項21】
前記添加剤が酸化防止剤であり、かつ、前記酸化防止剤が約0.001と約0.3重量%の間の量である請求項18に記載の誘電性流体。
【請求項22】
前記酸化防止剤が、フェノール性物質、芳香族アミン、硫黄及び燐を含有する化合物、有機硫黄化合物、有機リン化合物、及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項21に記載の誘電性流体。
【請求項23】
前記添加剤が金属不活性化剤であり、かつ、前記金属不活性化剤が約0.005と約0.8重量%の間の量である請求項18に記載の誘電性流体。
【請求項24】
前記金属不活性化剤が、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾール誘導体、及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項23に記載の誘電性流体。
【請求項25】
前記1以上の油分画が10ppm未満の硫黄含量を持つ請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項26】
第二の油を更に含有する請求項1に記載の誘電性流体。
【請求項27】
前記第二の油と組み合わされた前記1以上の油分画が約200°F(約93.3℃)より高い沸騰範囲分布(5−95)を持つ請求項26に記載の誘電性流体。

【公表番号】特表2008−522384(P2008−522384A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544400(P2007−544400)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/042475
【国際公開番号】WO2006/060256
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】