説明

誘電材料およびそれを用いたアクチュエータ

【課題】 比較的小さな印加電圧で大きな変位量を得ることのできる誘電材料、およびアクチュエータを提供する。
【解決手段】 誘電材料を、エラストマーと、該エラストマー中に分散されている強誘電無機微粒子と、を含んで構成する。該強誘電無機微粒子の表面は、カップリング処理されている。また、アクチュエータ1を、該誘電材料からなる誘電膜20と、誘電膜20を介して配置されている複数の電極21a、21bと、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加される電圧の変化により伸縮して駆動対象部材を駆動するアクチュエータ、およびそのアクチュエータを構成するのに好適な誘電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用、介護用等のロボット、医療機器、マイクロマシン等の分野では、柔軟性が高く、小型で軽量なアクチュエータの必要性が高まっている。このようなアクチュエータ材料として、例えば、導電性高分子、イオン導電性高分子(ICPF)、誘電体エラストマー等の種々のポリマーが提案されている。なかでも、誘電体エラストマーを用いたアクチュエータは、小型化しやすく、低コストで作製できるため有用である。例えば、特許文献1、2には、誘電体エラストマーからなる誘電膜を一対の電極で狭持したアクチュエータが紹介されている。
【特許文献1】特表2003−506858号公報
【特許文献2】特表2001−524278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アクチュエータにおいて、電極間への印加電圧を大きくすると、電極間の静電引力が大きくなる。このため、電極間に挟まれた誘電膜は膜厚方向から圧縮され、誘電膜の膜厚は薄くなる。膜厚が薄くなると、その分、誘電膜は電極面に対して平行方向に伸長する。また、電極間への印加電圧を小さくすると、電極間の静電引力が小さくなる。このため、誘電膜に対する膜厚方向からの圧縮力が小さくなり、誘電膜の弾性復元力により膜厚は厚くなる。膜厚が厚くなると、その分、誘電膜は電極面に対して平行方向に収縮する。このように、アクチュエータは、誘電膜を伸長、収縮させることによって、駆動対象部材を駆動させる。
【0004】
アクチュエータの誘電膜としては、上記特許文献1、2に示されているように、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が使用されている。これら従来の材料を用いた場合、アクチュエータの変位量を大きくするためには、大きな電圧を印加しなければならない。また、例えばアクリルゴムを用いた場合には、アクリルゴムのヤング率が小さいため、比較的小さな力しか得られない。加えて、伸縮を繰り返すとクリープが大きくなり、耐久性も充分ではない。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、アクチュエータを構成した場合に、比較的小さな印加電圧で大きな変位量を得ることのできる誘電材料を提供することを課題とする。また、そのような誘電材料を用いることにより、比較的小さな印加電圧でも変位量が大きいアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本発明の誘電材料は、エラストマーと、該エラストマー中に分散されている強誘電無機微粒子と、を含み、該強誘電無機微粒子の表面はカップリング処理されていることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0007】
すなわち、本発明の誘電材料は、表面がカップリング処理された強誘電無機微粒子がエラストマーに分散されてなる。カップリング処理により、強誘電無機微粒子の表面には官能基が付与されている。このため、強誘電無機微粒子は、エラストマーとの相溶性が高く、エラストマーと一体化されている。ここで、強誘電無機微粒子は、比誘電率が比較的大きな無機材料からなる微粒子である。よって、強誘電無機微粒子を含む本発明の誘電材料の比誘電率は、エラストマー単独のそれよりも大きくなる。したがって、本発明の誘電材料を用いてアクチュエータを構成すると、印加電圧が比較的小さくても大きな静電引力が発生し、大きな変位量を得ることができる。また、印加電圧を大きくすることで、さらに大きな変位量を得ることができる。
【0008】
また、本発明の誘電材料は、強誘電無機微粒子、つまり無機材料からなる微粒子を含む。このため、母材のエラストマーのみからなる材料と比較して、本発明の誘電材料の強度は大きくなる。したがって、本発明の誘電材料は、伸縮を繰り返してもクリープしにくく、破断しにくい。また、アクチュエータを構成した場合には、より大きな力を出力することができる。このように、本発明の誘電材料によると、変位量が大きく、耐久性、安定性に優れたアクチュエータを構成することができる。
【0009】
(2)また、本発明のアクチュエータは、上記本発明の誘電材料からなる誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備えてなり、複数の該電極間に印加される電圧の変化により該誘電膜が伸縮することを特徴とする(請求項6に対応)。
【0010】
本発明のアクチュエータは、上記本発明の誘電材料からなる誘電膜を備える。このため、本発明のアクチュエータによると、比較的小さな印加電圧で大きな変位量を得ることができる。また、伸縮を繰り返しても誘電膜がクリープしにくいため、本発明のアクチュエータは耐久性、安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の誘電材料、およびそれを用いたアクチュエータについて、それぞれ詳細に説明する。
<誘電材料>
上述したように、本発明の誘電材料は、エラストマーと、表面がカップリング処理された強誘電無機微粒子と、を含む。
【0012】
1.エラストマー
エラストマーとしては、ゴムおよび熱可塑性エラストマーの中から適宜選択すればよい。なかでも、破断伸びが大きいという観点から、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)、天然ゴム、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、ヒドリンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上を用いることが望ましい。なかでも、カップリング処理された強誘電無機微粒子との相溶性が良好で、より大きな変位量が得られるという理由から、アクリルゴム、シリコーンゴム、EPM、EPDM、天然ゴム、IIR、イソプレンゴム、H−NBRが好適である。
【0013】
2.強誘電無機微粒子
強誘電無機微粒子は、比誘電率が比較的大きな無機材料からなる微粒子であればよい。例えば、比誘電率が80以上である無機材料を選択するとよい。具体的には、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン鉛、チタン酸ビスマス、酸化タンタル等から選ばれる一種以上を用いることが望ましい。特に、エラストマーとの相溶性が良好で、比較的安価であるという理由から、酸化チタン、チタン酸バリウムが好適である。
【0014】
強誘電無機微粒子の表面はカップリング処理されている。カップリング処理としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等による表面処理が挙げられる。なかでも、官能基の種類が多く、強誘電無機微粒子とエラストマーとの相溶性を得やすいという理由から、シランカップリング剤による表面処理が好適である。シランカップリング剤は、官能基としてアルキル基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、アルコキシ基、アセトキシ基、メルカプトアルキル基、塩素原子等を有する化合物群の中から、エラストマーとの相溶性等を考慮して適宜選択すればよい。シランカップリング剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。例えば、アルキル基を有する化合物群から選ばれる一種以上を用いると、比較的極性の低いエラストマーとの相溶性、結合性が良好である。具体的には、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
シランカップリング剤による表面処理は、乾式法、湿式法等の既に公知の方法を採用すればよい。乾式法で行う場合、強誘電無機微粒子からなる粉末に、シランカップリング剤を直接あるいは所定の溶媒に溶かして添加して混合した後、乾燥すればよい。また、湿式法で行う場合、シランカップリング剤を溶かした水溶液中に強誘電無機微粒子からなる粉末を添加して攪拌し、固形物を乾燥すればよい。あるいは、予め所定の溶液中に強誘電無機微粒子からなる粉末を分散させておき、そこへシランカップリング剤を添加して攪拌し、固形物を乾燥すればよい。
【0016】
エラストマーとの相溶性や、電圧印加時におけるエラストマーの伸縮に対する影響を少なくするという観点から、強誘電無機微粒子の粒子径は、1nm以上500nm以下であることが望ましい。特に5nm以上100nm以下が好適である。なお、本明細書では、強誘電無機微粒子の最大長さを粒子径として採用する。また、強誘電無機微粒子の粒子形状は、特に限定されるものではない。エラストマーとの結合性を向上させ、エラストマーの伸縮および絶縁破壊に対する影響を少なくするためには、球状の粒子を採用することが望ましい。「球状」には、真球、略真球状の他、楕円球状、長円球状(一対の対向する半球を円柱で連結した形状)、部分球状、部分毎に半径の異なる球状、水滴形状等が含まれる。
【0017】
強誘電無機微粒子の含有量は、特に限定されるものではない。例えば、エラストマーの100重量部に対して20重量部以上とすることが望ましい。強誘電無機微粒子の含有量が20重量部未満の場合には、比誘電率や強度の向上効果が充分に得られないからである。50重量部以上とするとより好適である。一方、強誘電無機微粒子の含有量は、エラストマーの100重量部に対して400重量部以下とすることが望ましい。強誘電無機微粒子の含有量が400重量部を超えると剛性が高くなり、伸縮量が小さくなったり強度が低下するおそれがあるからである。200重量部以下とするとより好適である。
【0018】
3.製造方法
本発明の誘電材料は、上記エラストマーを構成するポリマーと強誘電無機微粒子とを含んだゴム組成物を架橋して製造することができる。使用するポリマーは、固体でも液状でもよい。ゴム組成物には、必要に応じて架橋剤、加硫促進剤、加工助剤、可塑剤、老化防止剤、補強剤、着色剤等を添加すればよい。第一の製造方法としては、まず、ポリマーに、強誘電無機微粒子の粉末や架橋剤等を添加して混練りし、ゴム組成物を調製する。次に、調製したゴム組成物を成形し、それを金型に充填して、所定の条件下でプレス架橋する。また、上記第一の製造方法と同様に調製したゴム組成物を、フィルム状あるいはチューブ状に押し出し成形等した後、架橋してもよい。また、第二の製造方法としては、まず、所定の溶媒にポリマーを溶解したポリマー溶液に、強誘電無機微粒子の粉末や架橋剤等を加え、攪拌、混合してゴム組成物を調製する。次に、調製したゴム組成物を基材上に塗布し、乾燥させて溶媒を蒸発させた後、架橋する。
【0019】
本発明の誘電材料から誘電膜を製造し、アクチュエータを構成することができる。この場合、当該誘電膜を挟むよう、少なくとも一対の電極を配置すればよい。以下、本発明の誘電材料を用いたアクチュエータ、すなわち本発明のアクチュエータの一実施形態について説明する。
<アクチュエータ>
図1に、本実施形態のアクチュエータの断面模式図を示す。(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。図1に示すように、アクチュエータ1は、誘電膜20と電極21a、21bとを備えている。誘電膜20は、上記本発明の誘電材料からなる。電極21a、21bは、誘電膜20の表裏に、それぞれ固定されている。電極21a、21bは、導線を介して電源22に接続されている。オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極21a、21b間に電圧を印加する。電圧の印加により、誘電膜20の膜厚は薄くなり、その分だけ、図(b)中白抜き矢印で示すように、電極21a、21b面に対して平行方向に伸長する。これにより、アクチュエータ1は、図中横および上下方向の駆動力を出力する。
【0020】
誘電膜20は、本発明の誘電材料、すなわち強誘電無機微粒子がエラストマーに分散された誘電材料からなる。ここで、強誘電無機微粒子は、エラストマーとの相溶性が高く、エラストマーと一体化されている。誘電膜20の比誘電率は、エラストマー単独のそれよりも大きい。よって、アクチュエータ1によると、印加電圧が比較的小さくても大きな変位量を得ることができる。また、誘電膜20は、伸縮を繰り返してもクリープしにくい。したがって、アクチュエータ1は耐久性、安定性に優れる。
【0021】
本発明のアクチュエータの誘電膜においても、上述した本発明の誘電材料の好適な態様を採用することが望ましい。また、誘電膜の厚さは、アクチュエータの用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、アクチュエータの小型化、低電位駆動化、および変位量を大きくする等の観点からは、誘電膜の厚さは薄い方が望ましい。この場合、絶縁破壊性等をも考慮して、誘電膜の厚さを、1μm以上1000μm(1mm)以下とすることが望ましい。より好適な範囲は、5μm以上200μm以下である。また、誘電膜を面延在方向に延伸した状態で取り付けると、誘電膜の絶縁破壊強度が向上し、より大きな変位量を得ることができる。
【0022】
電極の材質は、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料や金属からなる導電材に、バインダーとしてオイルやエラストマーを混合したペーストまたは塗料を塗布した電極、あるいは炭素材料や金属等をメッシュ状に編んだ電極等を使用することができる。電極は、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。電極が、誘電膜と共に伸縮すると、誘電膜の変形が電極によって妨げられにくく、所望の変位量を得やすくなる。
【0023】
また、複数の誘電膜と電極とを交互に積層させた積層構造とすると、より大きな力を発生させることができる。これにより、アクチュエータの出力が大きくなり、駆動対象部材をより大きな力で駆動させることができる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
<誘電膜の製造>
(1)実施例の誘電膜の製造
まず、シランカップリング処理により、強誘電無機微粒子を製造した。酸化チタン粉末(石原産業社製「TTO−55N」、粒子径30nm〜50nm)50gを、エタノール(195ml)−水(10ml)混合溶媒に分散し、さらにエチルトリメトキシシラン2gを加えて、超音波処理を1時間行った。その後、15時間静置した。沈殿物を乾燥し、表面がエチル基で修飾された強誘電無機微粒子を得た。
【0026】
次に、アクリル系ポリマー溶液(根上工業社製「パラクロン(登録商標)ME−2000」、固形分濃度20%)100重量部に、製造した強誘電無機微粒子50重量部と、架橋剤(ケムチュラ社製「アジプレンBL16」)37.6重量部とを添加し、1時間攪拌しながら超音波処理した。得られたゴム組成物を、バーコート法により基材上に塗布して風乾した。その後、165℃で1時間加熱して架橋させ、厚さ約150μmのフィルム状の誘電膜を得た。得られた誘電膜を実施例の誘電膜とした。
【0027】
(2)比較例の誘電膜の製造
強誘電無機微粒子を配合しない点以外は、上記実施例の誘電膜と同様に誘電膜を製造し、比較例1の誘電膜とした。また、上記酸化チタン粉末を、表面処理せずにそのままアクリル系ポリマー溶液に添加して、上記同様に誘電膜を製造し、比較例2の誘電膜とした。比較例1、2の誘電膜の厚さは、共に約150μmとした。
【0028】
<アクチュエータの評価>
製造した各々の誘電膜を用いてアクチュエータを構成し、アクチュエータの変位量を測定した。
【0029】
(1)実験装置および実験方法
まず、実験装置および実験方法について説明する。実施例および比較例の各々の誘電膜の上下面に、オイルにカーボンナノチューブを分散した導電性ペーストを塗布して電極を形成し、アクチュエータを作製した。以下、作製されたアクチュエータを、誘電膜の種類に対応させて、各々実施例、比較例1、2のアクチュエータと称す。図2に、作製したアクチュエータの上面図を示す。図3に、図2中III−III断面図を示す。
【0030】
図2、図3に示すように、アクチュエータ3は、誘電膜30と一対の電極31a、31bとを備えている。誘電膜30は、直径75mmの円形の薄膜状を呈している。誘電膜30は、延伸率100%で二軸方向に延伸された状態で配置されている。ここで、延伸率は、次式(1)により算出した値である。
延伸率(%)={√(S/S)−1}×100・・・(1)
[S:延伸前(自然状態)の誘電膜面積、S:延伸後の誘電膜面積]
【0031】
一対の電極31a、31bは、誘電膜30を挟んで上下方向に対向するよう配置されている。電極31a、31bは、直径約27mmの円形の薄膜状を呈しており、各々、誘電膜30と略同心円状に配置されている。電極31aの外周縁には、拡径方向に突出する端子部310aが形成されている。端子部310aは矩形板状を呈している。同様に、電極31bの外周縁には、拡径方向に突出する端子部310bが形成されている。端子部310bは矩形板状を呈している。端子部310bは、端子部310aに対して、180°対向する位置に配置されている。端子部310a、310bは、各々、導線を介して電源4に接続されている。
【0032】
電極31a、31b間に電圧を印加すると、電極31a、31b間に静電引力が生じて、誘電膜30を圧縮する。これにより、誘電膜30の厚さは薄くなり、拡径方向に伸長する。この時、電極31a、31bも、誘電膜30と一体となって拡径方向に伸長する。電極31aには、予め、マーカー50が取り付けられている。マーカー50の変位を、変位計5により測定し、アクチュエータ3の変位量とした。
【0033】
(2)実験結果
次に、実験結果について説明する。図4に、実施例および比較例の各アクチュエータにおける印加電圧に対する変位率を示す。変位率は次式(2)により算出した。図4の縦軸は、変位率を基準値aの倍数で示している。
変位率(%)=(変位量/電極の半径)×100・・・(2)
【0034】
図4のグラフに示すように、実施例のアクチュエータによると、エラストマー単独の誘電膜を備える比較例1のアクチュエータと比較して、印加電圧が小さくても大きな変位量が得られた。また、シランカップリング処理されていない酸化チタン粉末を含む誘電膜を備える比較例2のアクチュエータの変位量は、酸化チタン粉末を含まない誘電膜を備える比較例1のアクチューエータの変位量と、ほとんど変わらなかった。このように、カップリング処理された強誘電無機微粒子をエラストマー中に分散させた本発明の誘電材料によると、印加電圧が比較的小さくても変位量が大きなアクチュエータを構成することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の誘電材料は、例えば、産業、医療、福祉ロボット用の人工筋肉、電子部品冷却用や医療用等の小型ポンプ、医療用器具等に用いられるアクチュエータに有用である。また、本発明の誘電材料を用いたアクチュエータは、モータ等機械式アクチュエータおよび圧電素子アクチュエータ等のすべてのアクチュエータの代替として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータの断面模式図であって、(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。
【図2】評価実験に使用したアクチュエータの上面図である。
【図3】図2中のIII−III断面図である。
【図4】実施例および比較例の各アクチュエータにおける印加電圧に対する変位率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1:アクチュエータ 20:誘電膜 21a、21b:電極 22:電源
3:アクチュエータ 30:誘電膜 31a、31b:電極
310a、310b:端子部 4:電源 5:変位計 50:マーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、
該エラストマー中に分散されている強誘電無機微粒子と、を含み、
該強誘電無機微粒子の表面はカップリング処理されていることを特徴とする誘電材料。
【請求項2】
前記カップリング処理は、シランカップリング剤による表面処理である請求項1に記載の誘電材料。
【請求項3】
前記強誘電無機微粒子は、比誘電率が80以上である請求項1または請求項2に記載の誘電材料。
【請求項4】
前記強誘電無機微粒子の粒子径は、1nm以上500nm以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の誘電材料。
【請求項5】
前記エラストマーは、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、水素化ニトリルゴム、ヒドリンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の誘電材料。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の誘電材料からなる誘電膜と、
該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、
を備えてなり、複数の該電極間に印加される電圧の変化により該誘電膜が伸縮するアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−173691(P2009−173691A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10579(P2008−10579)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】