説明

誘電泳動ピンセット装置および方法

粒子の捕捉を含む種々の用途のための、誘電泳動(DEP)ピンセット装置および方法。2つの電極が、先端を形成する細長物上に配置されているか、またはこれを構成する。これらの電極間に電圧を印加して、不均一な電磁場を先端に近接して発生させ、これによって誘電泳動トラップを作り出す。一旦捕捉すると、この粒子を、細長物または粒子が存在している媒体を操作することにより、所望の位置に移動させることができる。複数のDEPピンセット装置を、先端のアレイを形成するように配置してもよく、それぞれがその先端に限定した局所的な電磁場を発生することができる。かかるDEPアレイは、ナノリソグラフィまたはナノマニピュレーションに関連するナノファブリケーションプロセス、およびデータ記憶および検索用途において用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粒子(例えば原子、分子、細胞など)が正電荷および負電荷の不均一な濃度を有し得ることはよく知られている。例えば、分子は複数の原子から構成され、各原子は、核として知られている正に帯電した中心領域と、核の周りの負に帯電した外側領域に存在する、電子として知られている可変数の負に帯電した素粒子とを含む。原子が組み合わさって分子を形成する場合、これら2つの荷電領域に付随する力がこれらの原子を一緒に結合する。分子の形によっては不均一な電荷の分布が生じ、このために正の電荷と負の電荷それぞれの濃度が生成される。これが起こると、この分子は極性分子または編極分子と呼ばれる。極性は、それ以外では非極性な分子において誘導されることもある。特に、通常は非極性の分子を強い電磁場中に置くと、負に荷電した電子は時に正に荷電した核から分離して、それ以外では非極性の分子が極性となる。本明細書の目的に対して、用語「極性の」または「編極した」は、天然に極性である任意の粒子、および電磁場の適用により極性にされた任意の粒子を指すのに用いる。
【背景技術】
【0002】
極性分子の1つの領域はより正に荷電されており、もう1つの領域はより負に荷電されているため、この分子が不均一な電磁場(位置により場の力が変化する電磁場)に置かれると、これに力が作用する。この力は誘電泳動力として知られ、分子の移動を引き起こすことができる。移動の正確な方向および分子が移動する速度は、分子の独自の特性、分子がその中に存在している媒体、および電磁場に依存する。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)と呼ばれる特殊顕微鏡を用いて、ナノメートルのスケールで分子を探査することができる。SPMの1種が、原子間力顕微鏡(AFM)である。AFMはカンチレバーを含み、このカンチレバーは、試料にわたってスキャンする先端を一方の端に有する。先端が走査する試料表面のプロファイルの変化に基づく、この先端の非常に小さな動きは、典型的にはレーザー検知システムにより測定され、これを用いて、スキャン試料の表面プロファイルの画像が生成される。
【0004】
いくつかの場合においては、SPMの先端は、画像化すべき試料表面に実際に接触する必要はない。例えば、van der Weideへの米国特許第5,936,237号では、SPM先端は導電シールドを周囲に有する導体として構成されている。この構成により、SPMは非接触で試料表面をスキャンして、先端と表面との間の電磁場相互作用に基づく表面プロファイルの画像を提供する。かかるスキャンの間、導体先端を試料から隔てる絶縁体が存在しないため、試料と導体先端との間に一定の距離が維持される。
【0005】
通常は小粒子に対して用いられる他の機器は、マイクロマニピュレータである。マイクロマニピュレータは、細胞スケールで試料を探査および操作するために用いられるツールを動かすための機器である。マイクロマニピュレータは、例えば顕微手術および他の生物学的目的のために用いる。マイクロピペットは、マイクロマニピュレータとの関連で、試料を探査および操作するために用いることができるツールの1例である。個々の細胞を見ることができる光学顕微鏡は、マイクロマニピュレータに結合されたツールが操作している試料を直接観察するために、用いることができる(以下、「マイクロマニピュレータツール」と呼ぶ)。
【発明の開示】
【0006】
概要
本明細書は、一般に、先端に、例えばSPM先端またはマイクロマニピュレータツール先端などに近接して誘電泳動力を発生するための、方法および装置に関する。かかる力を発生する先端を、次に標的粒子の近くに位置させて、この粒子に力を及ぼし、これにより粒子を捕捉すること(こうして誘電泳動トラップを作り出すこと)ができる。一旦標的粒子がこのトラップ内に入ると、誘電泳動力を与える電磁場が発生されている限り、粒子はトラップ内に保持される。このように構成された先端は、「誘電泳動ピンセット」を形成する。
【0007】
以下にさらに詳細に記載される本明細書の種々の態様によれば、先端の末端において誘電泳動力を発生する不均一な電磁場は、該先端に一体化された電極対により生成される。これらの電極は、多くの形態をとることができる。例えば、1つの可能な態様によれば、電気的に導電性材料から形成されるSPM先端それ自体が第1電極を形成し、絶縁層および第2電極が、該先端の周りに同心円構造で配置される。先端の末端に近接して誘電泳動力を提供する電磁場は、次に、これら第1電極と第2電極間に電圧を印加することにより、生成することができる。電圧は所望によりオン、オフすることができ、これにより1または2以上の標的粒子を選択的に捕捉する。
【0008】
SPM先端はユーザーが移動させることができるため、このような様式に改変されたかかる先端は、ユーザーが個別の捕捉粒子を操作することを可能にする。例えば、ユーザーは、SPM先端を標的粒子の近くに位置させることができる。次にユーザーは、2つの電極間に電圧を印加して、誘電泳動トラップを作り出すことにより、標的粒子を捕捉することができる。次にユーザーは、SPM先端を再配置することにより、捕捉粒子を所望の位置に移動することができる。標的粒子は次に、電極に印加した電圧をオフにすることにより、所望の位置で解放することができる。他の実装において、同様の原理を適用し、粒子が位置している媒体が移動しているときに、先端それ自体は粒子を捕捉しつつ一定に保つことができる。次に粒子を、先端を移動させることなく媒体の別の領域で解放することができる。さらに、マイクロマニピュレータを用いて、電極間に電圧が印加されている場合に誘電泳動トラップを支持するよう配置された電極を有するマイクロマニピュレータツールを、制御することができる。この誘電泳動トラップは、単細胞または細胞集団を捕捉および操作するために用いることができる。
【0009】
したがって、1つの態様は、先端を形成する細長物を含む装置に関する。前記装置はさらに、前記細長物の少なくとも第1部分を構成し、前記先端に近接する第1端を有する、第1電極、および前記細長物の少なくとも第2部分を構成する第2電極を含む。第2電極は第1電極から絶縁されており、前記先端に近接する第2端を有する。第1電極の第1端と第2電極の第2端は、前記先端に近接して誘電泳動トラップを支持するように互いに位置している。
【0010】
他の態様は、粒子を操作するための、または該粒子の少なくとも1つの特性を測定するための方法に関する。該方法は、細長物により形成された先端に近接して電磁場を発生することにより、前記先端に近接して誘電泳動トラップを支持することを含む。
【0011】
他の態様は、A)複数の細長物により形成される複数の先端にそれぞれ近接して複数の電磁場を発生すること、ここで各細長物は、該細長物の対応する先端に近接する第1端を有する第1電極および、第1電極から絶縁されており、該対応する先端に近接する第2端を有する、第2電極を含んでおり;およびB)前記複数の先端の少なくとも1つおよび少なくとも1つの記憶媒体を、前記複数の先端が前記少なくとも1つの記憶媒体に近接するように配置して、前記複数の電磁場に基づき、前記少なくとも1つの記憶媒体から情報を読み込み、および/またはこれへと情報を書き込むようにすること、を含む方法に関する。
【0012】
前述の概念および以下にさらに詳細に記される追加の概念の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部として意図されることが理解されるべきである。特に、特許請求の範囲に記載された主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される発明の主題の一部として意図される。本明細書で明示的に用いられる専門用語であって、参照として組み込まれる任意の開示にも現れるものは、本明細書に開示された特定の概念と最も整合する意味とされることも、理解されるべきである。
【0013】
詳細な説明
以下は、本明細書による誘電泳動(DEP)ピンセット装置および方法に関連する種々の概念およびこれらの態様の、より詳細な説明である。上で議論され、以下にさらに概説される、本明細書に開示される種々の概念は、多くの方法のいずれかにより実装してよいことが理解されるべきであり、これは、本明細書に開示された概念が、実装の特定の様式のいずれかに限定はされないからである。具体的な実装の例は、主として説明目的で提供される。
【0014】
図1A、1B、1Cおよび1Dは、本明細書の1態様による、AFMカンチレバー先端構造に基づくDEPピンセット装置の4つの異なる図である。図1Aは、この態様による、細長物100を形成する、装置のカンチレバー構造の長さ方向の断面図であり、一方図1B、1Cおよび1Dは、DEPピンセット装置の先端102に近接する部分の、種々の近接図である。
【0015】
図1A、1B、1Cおよび1Dに示すDEPピンセット装置は、基本的に同軸電極構造を有し、細長物100の少なくとも第1部分を構成する第1電極104を含む。第1電極104は、先端102に近接する端106を有する。第1電極104の1または2以上の構成部分は、実質的に任意の1種または2種以上の導電性材料で作ることができる。1つの例示に実装において、第1電極104は高度にドープされたシリコンで形成される。1つの側面において、第1電極104は、0.01〜0.025Ωcmの体積抵抗率を有するn型シリコンで形成される。他の側面において、第1電極104は、AFMカンチレバーの全体形状を有し、電圧源108の1つの電位と、標準のAFM機能性を提供するAFMベース110とに結合される。さらに他の側面において、第1電極104の端106は、約10nm未満の半径を有してよい。
【0016】
図1A、1B、1Cおよび1Dに示すDEPピンセット装置はさらに、第1電極104を囲む電気的絶縁層112を含む。特に、絶縁層112は、第1電極104の端106を完全に取り囲んでいる端部114を含む。このように端部114は、第1電極104の端106を、先端102に近接する可能性のある任意の試料から絶縁する。特に、この絶縁層112の端部114により、第1電極104から、先端102に近接するかまたはこれと接触する粒子/試料への電流の流れは、基本的に妨げられる。
【0017】
絶縁層112の1または2以上の構成部分は、実質的に任意の絶縁材料で作ることができる。1つの例示の実装において、絶縁層112は二酸化ケイ素の単一層で作られる。かかる層は、n型シリコンの第1電極104の周りに、既知のシリコンベースの製造技術を用いて第1電極104を酸化することにより、作製できる。種々の他の実装において、絶縁層112の厚さは、装置の特定の使用および電極に印加される電圧範囲に応じて変えることができる。一般に、厚さは、所望の電圧が印加された場合に、絶縁層112の絶縁破壊を防ぐのに十分な厚さである。1つの実装において、二酸化ケイ素で作られる絶縁層112の厚さは、約100nmである。
【0018】
図1A、1B、1Cおよび1Dに示されるように、本態様のDEPピンセット装置はまた、細長物100の少なくとも第2部分を構成する第2電極116を含む。第2電極116は第1電極104から絶縁されており、先端102に近接する端118を有する。1つの側面において、第2電極116は、絶縁層112の外表面120の少なくとも一部を構成することにより(例えば、その上に配置されることにより)、絶縁層112は第2電極116を第1電極104から絶縁する。第2電極116の1または2以上の構成部分は、実質的に任意の、1または2以上の導電性材料で作ることができる。1つの例示の実装において、第2電極116は2つの導電層、すなわち、クロムの内層および金の外層を含む。種々の側面において、これらの導電層それぞれの厚さは変化してよい;1つの実装において、クロム層の厚さは約10nmであり、金層の厚さは約30nmである。これらの導電層は、絶縁層112の外表面120上に、シリコンベースの製造方法において一般に用いられる既知の技法(例えば蒸着法)により形成することができる。
【0019】
図1A、1B、1Cおよび1Dに示された態様の1つの側面において、第1電極104の端106と第2電極116の端118は、先端102に近接するDEPトラップを支持するように相対的に位置させる。図1Bおよび1Dに示すように、第2電極116の端118と残りの部分は、絶縁層112の周りに同心円状に配置される。これにより、第2電極116が第1電極104の長さに沿って延びる、同軸構造がもたらされる(上記のように、絶縁層112もこの長さに沿って延びており、第1電極104を第2電極116から絶縁する)。さらに、1つの側面において、絶縁層112の端部114は、先端102に近接する第2電極116の端118から突き出ており、第1電極104の端106を、先端102に近接する任意の試料から絶縁する。第2電極116を絶縁層112上に蒸着により形成する場合、端118近辺の余分な導電材料は取り除いて、絶縁層112のこの端部114が、第2電極116の端118から突き出ることを許容する必要がある。
【0020】
図1Cに示すように、絶縁層112はまた、第1電極104の端106と第2電極116の端118との間の間隔122を形成しており、これは、先端102に近接した大きなDEP力を支持するのに適している。本明細書によるDEP装置の種々の実装において、間隔122は約500μm〜約5nmの間の範囲であってよい。この間隔122は、電極間に電圧を印加して発生させる電磁場の構造に影響し、これにより、以下に記載するように、得られるDEP力の強さに影響する。
【0021】
1つの実装において、図1A、1B、1Cおよび1Dに示されたピンセット装置を用いてDEPトラップを作製するには、電圧源108を第1電極104と第2電極116に結合する。この電圧源108は、第1電極104と第2電極116の間に電圧を印加するように構成され、これにより先端102に近接して電磁場が発生される。上記したようにまた以下にさらに詳細に説明するように、この電圧が印加されると、こうしてDEPトラップが先端102に近接して作り出される。印加された電圧の大きさおよび周波数は、用途および捕捉すべき粒子の種類により変化し得る。1つの側面において、電圧源108は調節可能な振幅および調節可能な周波数のうちの少なくとも1つを有するように構成される。以下に記すように、DEPトラップに付随する力は、印加された電圧の周波数および振幅のうち少なくとも1つを変化させることにより、調節可能である。
【0022】
DEPトラップ中の粒子に働く力は、粒子がその中に存在している媒体に対する、該粒子の有効透過率の測度である、クラウジウス−モソッティ(CM)係数に依存する。この係数は1〜−0.5の間の値で変化し、その中に粒子が存在する媒体の誘電率ε、媒体の導電率σ、粒子の誘電率ε、粒子の導電率σ、および印加電磁場の周波数ωにより決定される。クラウジウス−モソッティ係数は、次の式により決定することができる。
【数1】

クラウジウス−モソッティ係数が正である場合、力は粒子を電磁場のより強い領域へと押し出す。クラウジウス−モソッティ係数が負である場合、力は粒子を電磁場のより弱い領域へと押し出す。電界強度Eを有する電磁場において粒子に適用される力は、次の式により決定することができ、式中、εは自由空間の誘電率であり、aは粒子半径である。
力=3*π*a*ε*CM*▽(E
【0023】
有限要素法を用いて、与えられた電磁場についてのこの式の▽(E)項を決定することができる。この項は、印加電圧と電極の構造に基づいて変化する。例として、第1電極104の端106と第2電極116の端118の間の間隔122がdである、図1A、1B、1Cおよび1Dに示されるDEPピンセット装置を考える。これら2つの電極間に印加された大きさVの電圧は、先端102に近接する、推定強さE=V/dの電磁場を発生する。有限要素法を用いることなく、▽(E)項の値は合理的にV/dであると推定できる。
【0024】
DEPトラップの生成を説明するために、図2に示す装置を考える。図2において、標的粒子124は、電磁場128により作製されたDEPトラップ126中に捕捉されており、この電磁場は、強さVの電圧を2つの電極104と116の間に印加して発生させたものである。この電圧の周波数が、電磁場128の周波数を決定する。電磁場128が、周波数ωを有して、クラウジウス−モソッティ係数(CM)が1に等しくなるように発生されたとする。また、標的粒子124はd/2に等しい半径aを有するとする(式中、dは図1Cに示す間隔122を表す)。上記の力の式から、および近似
【数2】

を用いて、標的粒子124の半径aが5μmであり、電極104と116の間に印加した電圧の大きさVが10Vであるとすると、標的粒子124にかかる力、したがってDEPトラップ126が生成した力は、約1000pNである。
【0025】
標的粒子124を効果的に捕捉するのに必要な力は、粒子124に働く他の力の種類により変化する。典型的には、標的粒子124を捕捉するには、10pN〜1000pNの間で十分である。例えば、10pNより少しだけ大きい力はタンパク質を捕捉するのに一般に十分であり、これは、タンパク質を結合している典型的な力が約10pNのオーダーだからである。媒体中に見出される粒子124に働く力が増加するにつれて、粒子124を捕捉するのに必要なDEP力も増加する。さらに、外力が働いて、粒子124をDEPトラップ126から取り出そうとする可能性もある。例えば、粒子124がDEPトラップ126中に捕捉されている間にDEPピンセット装置を動かすことなどにより、粒子124が媒体中を移動すると、抵抗力が働いて粒子124をDEPトラップ126から取り出そうとすることがある。粒子124をDEPトラップ126中に保つ力は、この抵抗力および粒子124に働く可能性のある任意の他の外力に打ち勝つだけ、十分大きくなければならない。
【0026】
粒子124がその中に見出される媒体はまた、第1電極104と第2電極116の間に印加される電圧の周波数を決定するのに、重要な役割を果たす可能性がある。低周波電圧を適切に用いて、気体中または真空中にDEPトラップ126を生成する。幾つかの場合においては、DC電圧(すなわち、周波数ゼロ)が、これらの媒体に好適である。
【0027】
しかし、流体の媒体中では、より高い周波数の電圧(例えば10kHzから1MHzを超えるもの)が、DEPトラップ126を生成するのにより適している場合がある。幾つかの状況においては、GHz範囲の周波数が適当である。高い周波数は、流体媒体が関与する幾つかの用途において望ましいが、これは、流体中で低周波電磁場が発生すると、流体媒体中のイオンが流体流(fluid flow)を生成するからである。この流体流は、DEPトラップ126を妨害することができる。比較的高い周波数の電磁場を生成することで、この流体流を防ぐのを支援し、DEPトラップ126を効果的に妨害なしに維持する。
【0028】
さらに、流体中の高周波電磁場の使用は、流体中のイオンが、DEPトラップ126の周囲にシールドを生成することを防ぐ。低周波数では、これらのイオンはDEPトラップ126の周囲にシールドを形成することがあり、これによってDEPトラップ126を、標的粒子124を含む残りの流体から遮断する。より高い周波数においては、これらのイオンはかかるシールドを形成するために動くことができず、したがってDEPトラップ126は標的粒子124を自由に捕捉する。
【0029】
本明細書の幾つかの実装において、図2に示すように、DEPピンセット装置は、2つの電極104と116の間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することができるデバイス130を含んでもよい。キャパシタンスおよびコンダクタンスはDEPトラップ126中の粒子124の有無に基づいて変化するため、デバイス130は、DEPトラップ126中の粒子124の有無を感知するのに用いることができる。DEPピンセット装置が調節可能な周波数または振幅を有する電圧源108およびデバイス130を含んでいるところの、本明細書の1つの実装において、電極104と116の間に印加される電圧の周波数または振幅は、デバイス130が電極間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定する間に変化してよい。電極間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを、ある範囲の周波数または振幅にわたって測定することにより、捕捉粒子124についての情報であって、限定することなく、粒子124の組成に関する情報を含むものを、決定可能である。
【0030】
本明細書の幾つかの実装の電圧源108は、先端102に近接しているかまたはこれと接触している粒子/試料124に、電流を適用するように構成してよい。例えば、本明細書に記載の種々の態様によるDEPピンセット装置の電極104または116のどちらかが、粒子/試料と接触すると、電圧がその電極に印加されて、これによって粒子/試料へと電流を流すことができる。幾つかの態様において、電極の1つは、望ましくない電流を防ぐために試料から特別にシールドされ(例えば、図1A〜1Dの第1電極104)、しかしこれらの態様においては、もう一方の電極には電圧を印加することができ、粒子/試料へ電流を流すことができる。この方法は、装置の先端102に近接して位置する、個別の捕捉されていない筋肉細胞または神経細胞を刺激するのに、特に有用である。
【0031】
上記の種々の態様は、DEPピンセット装置の多くの可能な態様の幾つかにすぎない。他の可能な態様は、他の種類のSPMの先端、AFM先端、マイクロマニピュレータツール先端、鋭利なガラス先端、他の種類の細長物の先端、およびDEPピンセット装置を放射線と共に使用することを含んでよい。これら他の態様の幾つかについて、以下に記載する。
【0032】
図3Aおよび3Bは、本明細書によるDEPピンセット装置の他の態様の先端102の、2つの異なる詳細図である。他の態様に関して上に記載したように、図3Aおよび3Bに示すDEPピンセット装置は、細長物100の少なくとも第1部分を構成する第1電極104を含む。第1電極104は先端102に近接する端106を有する。このDEPピンセット装置の態様は、細長物100の少なくとも第2部分を構成する第2電極116も含む。第2電極116は先端102に近接する端118を有する。
【0033】
図3Aおよび3Bに示した態様において、第1電極104と第2電極116は、細長物100の相対する側を構成する(例えば、相対する側に配置されている)。絶縁ギャップ132は、第1電極104を第2電極116から絶縁する。図4は、図3Aおよび3Bに示すDEPピンセット装置を介した、図2に示したものと同様の様式による、標的粒子124の捕捉を示す。図3Bに示す絶縁ギャップ132の寸法は、第1電極と第2電極の間に印加されるべき所望の電圧、および先端102に近接して発生されるべき電磁場128の所望の特性に依存する。一般に、絶縁ギャップ132は、先端102に近接してDEPトラップ126を支持し、第1電極104と第2電極116の間に所望の電圧が印加された場合に、絶縁ギャップの絶縁破壊を防ぐのに好適な寸法を有する。この態様の1つの実装において、絶縁ギャップは第1電極104と第2電極116を、約500μm〜約5nmの距離で隔てている。
【0034】
図5Aおよび5Bは、本明細書によるDEPピンセット装置の他の態様の先端102の、2つの異なる詳細図を示す。この態様により構成されたDEPピンセット装置は、マイクロピペットを含むマイクロマニピュレータツールに特に有用となり得る。
【0035】
図5Aおよび5Bに示された細長物100は、細長物100の内部表面136を作る中空コア134を有する。第1電極104は、この態様においては細長物100の内部表面136の第1側138に対応する、細長物100の第1部分を構成する。上述の他の態様におけるのと同様に、第1電極104は先端102に近接する端106を有する。図5Aおよび5Bに示された態様において、第2電極116は、この態様においては細長物100の内部表面136の第2側140に対応する、細長物100の第2部分を構成する。上述の他の態様におけるのと同様に、第2電極116は先端102に近接する端118を有する。
【0036】
この態様の1つの実装において、第2電極116は第1電極104から絶縁されており、これは、第1電極104と第2電極116が、細長物100の内部表面136の相対する側138と140に配置されており、中空コア134の少なくとも一部によって隔てられているからである。図5Aおよび5Bに示される、かかる実装の1つの側面において、絶縁ギャップ132は、第1側138と第2側140が互いに最も近い位置においてもなお、第1電極104と第2電極116が互いに絶縁されることを保証する。絶縁ギャップ132および中空コア134の寸法は、一般に、電極間に印加される所望の電圧および先端102に近接して発生される電磁場128の所望の特性に依存する(例えば、図2との関連において上記したように)。一般に、絶縁ギャップ132および中空コア134の寸法は、先端102に近接してDEPトラップ126を支持し、第1電極104と第2電極116の間に所望の電圧が印加された場合に、絶縁ギャップ132および中空コア134の絶縁破壊を防ぐのに好適な寸法である。かかる態様の1つの実装において、絶縁ギャップは、第1電極104と第2電極116を、約500μm〜約5nmの距離で隔てている。
【0037】
本明細書によるDEPピンセット装置の他の態様を、図6Aおよび6Bに示す。この態様において、中空コア134は細長物100の内部表面136を形成する。第1電極104は、この態様においては細長物100の外周表面142の少なくとも一部に対応する、細長物100の第1部分を構成する。第1電極104は、先端102に近接する端106を有する。第2電極116は、この態様においては細長物100の内部表面136の少なくとも一部に対応する、細長物100の第2部分を構成する。第2電極116は、先端102に近接する端118を有する。
【0038】
この態様の1つの実装において、細長物100の絶縁壁144は、第1電極104を第2電極116から絶縁する。この実装の1つの側面において、図6Aおよび6Bに示すように、第1電極104と第2電極116は同心円状に配置されている。一般に、絶縁壁144は、先端102に近接してDEPトラップ126を支持し、第1電極104と第2電極116の間に所望の電圧が印加された場合に絶縁破壊を防ぐのに好適な、寸法を有する。
【0039】
本明細書のさらに他の態様を、図7Aおよび7Bに示す。この態様において、細長物100は、細長物100を通る中心軸146を含む。第1電極104は、この態様においては中心軸146の少なくとも一部に対応する、細長物100の一部を構成する。第2電極116は、この態様の1つの実装において、細長物100の外周表面142に対応する、細長物100の一部を構成する。他の実装において、第2電極116は、内部表面136に対応する、細長物100の一部を構成する。この態様の1つの側面において、得られた構造は、第1電極104と第2電極116が基本的に同心円状であり、互いに絶縁されているような構造であってよい。電極の配置は異なってよいが、しかし一般に、先端102に近接してDEPトラップ126を支持し、第1電極104と第2電極116の間に所望の電圧が印加された場合に絶縁破壊を防ぐような配置である。
【0040】
任意のDEPピンセット装置の態様は、図8Aおよび8Bに示すように、先端102に結合された少なくとも1つのマニピュレータを含んでよい。幾つかの実装において、マニピュレータは、先端102を1つの位置から他の位置へと移動させるように構成することができる。上に記載したように、粒子124がDEPトラップ126に捕捉された状態で、先端102を1つの位置から他の位置へと移動させると、粒子124は先端102と共に移動する。幾つかの他の実装において、マニピュレータは、先端102を所定の位置に保持し、粒子124がその中に存在している媒体を移動させるように構成してもよい。上記のように、粒子124が捕捉された状態で媒体を移動させると、粒子124を媒体中の新しい領域において解放することができる。マニピュレータは、先端102または媒体のどちらかを移動させることができる、任意の種類のデバイスを含んでよく、これらには、図8Aに示すように、SPM148および圧電チューブ150、および図8Bに示すように、マイクロマニピュレータ152が含まれる。
【0041】
図9A、9B、9Cおよび9Dに示すように、本明細書によるDEPピンセット装置の幾つかの態様は、先端102に近接して捕捉されている粒子124へと、またはこれから、放射線154が通過することを許容するように構成してもよい。この態様の1つの側面において、DEPピンセット装置を介した、放射線と捕捉粒子の相互作用および、放射線を捕捉粒子へと、またはこれから導く能力は、粒子の感度と放射線の種々の波長への応答とに基づく粒子の特徴付けのための、他の方法を促進することができる。これにより、運ばれた放射線154は、可視光を含む実質的にいかなる波長をも含むことができ、また種々の帯域幅(例えば、狭帯域/単色スペクトルから非常に広い帯域のスペクトルまで)を有することができる。
【0042】
種々の実装において、あるDEPピンセット装置それ自体を、第1の放射線を捕捉粒子へと導き、および第1の放射線に応答して、粒子から反射されたかまたは発せられた第2の放射線も導くように、構成してよい。代替的に、粒子は、DEPピンセット装置に必ずしも付随しない源から照射されてもよいが、しかし、照射粒子により反射されたか、またはこれから発せられた放射線は、DEPピンセット装置が導くことができる(例えば、幾つかの測定もしくは感知デバイスへと)。同様に、DEPピンセット装置は、捕捉粒子に影響を与えるために放射線を単に導くように構成してもよく、粒子により発せられた任意の他の放射線も、DEPピンセットに必ずしも付随しない他の手段が導き、および/または測定してよい。
【0043】
1つの例示の態様において、DEPピンセット装置を形成する細長物は、放射線を導くように特別に構成することができる。例えば、細長物は、第1電極と第2電極の間の少なくとも1つの絶縁媒体を介して放射線が通るように構成してよい。より具体的には、1または2以上の絶縁媒体は、細長物内に導波管を形成するように配置してよい。他の態様において、細長物は中空で、中空コアを通って放射線を通してもよい。代替的に、さらに他の態様において、細長物は、放射線を導く光ファイバーを含んでもよい。
【0044】
より具体的には、図9Aに示す1つの例示の実装において、放射線154は、細長物100の中空コア134を通って、捕捉粒子124へと、または捕捉粒子124から進む。他の実装において、図9Bに示すように、細長物100は放射線154を導くように構成される。幾つかの実装において、図9Cに示すように、第1電極104と第2電極116の間の絶縁層112は、放射線154を捕捉粒子124へと、または捕捉粒子124から、導くように構成してもよい。さらに他の実装において、細長物100は、図9Dに示すように、放射線154を導くための光ファイバー156を含んでもよい。
【0045】
DEPピンセット装置の用途に関し、上に記載された本明細書の種々の態様による、1つの例示用途のDEPピンセット装置は、種々の生物学的用途を実施するように構成してよく、例えば、先端102に近接した細胞のエレクトロポレーションである。かかる実装の電圧源108は、適切に時間を合わせたパルスを適用するように構成して、電磁場128を発生し、これにより先端102に近接して細胞の細胞膜の透過性が一時的に増加する。当分野で知られているようにパルスのタイミングは重要であるが、これは、電磁場への過剰な暴露は重篤な細胞損傷を引き起こし得るからである。一般に、パルスは約10ナノ秒〜約10ミリ秒の間の持続時間を有する。細胞膜の透過性が増加した状態にある間、細胞は所望の物質に暴露することができる(例えば、薬物、DNA、種々の試薬を細胞内に注入できる)。増加した透過性により、所望の物質を、細胞膜を物理的に穿刺する必要なしに、細胞膜を通って細胞それ自体の中に入れることができる。所望の物質は、細長物100がマイクロピペットまたは同様の機器(例えば、図5A、5B、6Aおよび6Bに関連して上述したように)として構成されている場合、DEPピンセット装置それ自体により、細胞に送達させることができる。関連する概念に基づく他の生物学的用途には、in vitro受精および組織アセンブリーを含むことができる。
【0046】
本明細書のさらに他の態様において、任意の上記の態様による複数のDEPピンセット装置を一緒にして、種々の幾何学的構成または配置において用いることができる。複数のDEPピンセット装置の例示の実装は、限定なく以下を含む:先端の空間的配置を形成する1次元または2次元アレイであり、ここで制御可能局所電磁場それぞれが先端の末端に近接して(すなわち、一般に各先端に近接した小領域に限定されて)発生される。かかる態様の種々の側面において、以下本明細書において一般に「DEPピンセットアレイ」または「DEPアレイ」と呼ぶ、該アレイの各個々のピンセット装置は個別に独立して操作でき(例えば、図2および4に関連して上述してように、電圧源108を介して)、制御可能な電磁場を発生し、または、2個もしくはそれ以上のピンセット装置の群を一緒に同時に操作してもよい。さらに、アレイにおける個々のピンセット装置および/またはピンセット装置の群は、連続様式で、および/または平行様式で操作でき、アレイに通常包含される領域にわたって、種々の静的または動的な局所的電磁場パターンを発生する。例示の実装において、DEPピンセットアレイの個々の要素またはグループ化した要素に対する1または2以上の電圧源は、プロセッサ、コンピュータ、または他の制御回路により制御することができて、アレイの操作を容易にする、同時または多重の可変振幅/可変周波数電圧を提供する。
【0047】
図10Aおよび10Bはそれぞれ、本明細書の1態様によるDEPアレイ500の斜視図および正面断面図である。例示のDEPアレイ500は、細長物100A、100B、100Cおよび100Dとそれぞれの先端102A、102B、102Cおよび102Dとで構成された、カンチレバー構造を有する、4つのDEPピンセット装置を含む。カンチレバー構造を有する4つの装置の直線配置は、図10Aおよび10Bにおいて主に1つの例示アレイ500を説明する目的で示されていること、および、本明細書はこの点において限定されないことが理解されるべきである。なぜならば、他の実装によるアレイは、DEPピンセット装置の異なる数、配置および構造を有してよいからである。1つの例示の実装において、図1A〜1Dに示すような同軸構造を有するDEPピンセット装置を、アレイ500に用いることができ、一方他の実装において、図3Aおよび3Bに示す構造、または他の図との関連で説明された構造を有するDEPピンセット装置を、アレイ500において用いることができる。
【0048】
1つの例示の用途において、本明細書によるDEPピンセット装置またはDEPアレイを用いて、ナノリソグラフィおよびナノマニピュレーション(ナノスケール粒子の操作)を含む、ナノファブリケーションを促進することができる。化学的に合成されたナノスケール粒子(ナノワイヤー、ナノチューブ、およびナノ結晶)の配置を、効果的に制御することができる。これらの粒子はサイズが小さいため、これらは従来、操作デバイスおよび回路内に、特に個々の粒子レベルで組み入れることが困難であった。ナノマニピュレーションは、ナノスケール粒子デバイスを単一デバイスから回路へ、さらにウェハーレベルの製造へと組み立てるための、本明細書に開示のDEP捕捉概念によって促進される、キーとなる実現技術である。
【0049】
本明細書に開示された誘電泳動捕捉技術はまた、金属ナノチューブを半導体ナノチューブから、これらの電気コンダクタンスに基づき分離するために用いることもできる。DEPピンセット装置の先端の局所的電場を用いて、この分離を1個のナノチューブベースで行うことができる。したがって、本明細書に開示されたDEPピンセット装置を介して、個々の粒子を同定し、これらの誘電特性に基づいて分離することができる。図2および図4に関連し、粒子の特徴付けに関して上述したように、DEPトラップを形成するRF場の周波数は変化させることができ(例えば、電極に印加される電圧の周波数は変化させることができ)、捕捉粒子の周波数依存性のパラメータを計測して(例えば、周波数依存性キャパシタンスまたはコンダクタンス)、捕捉粒子の1または2以上の特定の特性を表すスペクトル応答を決定することができる(例えば、金属vs半導体)。
【0050】
さらに他の例示の用途において、DEPアレイにより生成される場は、必ずしも粒子を捕捉するために用いる必要はなく、代替的に、データ保存および検索を促進するために用いてもよい。上述したように、アレイの各DEPピンセット装置は該装置の先端に近接する小領域に限定された非常に局所的な場を生成するよう、構成および操作することができ、かかる場の集合を用いて、1または2以上の記憶媒体(例えば、読み書きフラッシュメモリまたは強誘電ビット)から情報を読み込み、および/またはこれらに情報を書き込むことができる。一般に、本明細書に開示された種々のDEPピンセット装置により提供される場の限定は、従来技術を用いて実現されるよりもはるかに小さいビットサイズを提供する(従来のプローブアレイを用い、DEP技術を用いない大容量記憶用途の例は、米国特許第5,835,477号、Binnig et al.に対して1998年11月10日発行された名称「局所プローブアレイの大容量記憶用途(Mass-Storage Applications of Local Prove Arrays)」に開示されており、この特許は本明細書に参照として組み込まれる)。
【0051】
したがって、本明細書に開示された、誘電泳動力およびDEPピンセット装置およびアレイに関連する概念を用いて、従来のデータ記憶および/または検索技術、例えば上記参照特許に開示されたものなど、に対して大きな改善を実現することができる。例えば、本明細書による1つの方法において、DEPアレイ(特に、かかるアレイの先端)を1または2以上の記憶媒体近くに配置する。次にアレイを構成する1または2以上のDEPピンセット装置を活性化することにより、アレイの1または2以上の先端に近接して1または2以上の電磁場を発生させ、情報を、こうして発生させた1または2以上の電磁場を介して、1または2以上の記憶媒体から読み込み、および/またはこれらに書き込む。複数の制御可能な局所的場を用いた同様のアプローチに基づく、さらに他の例示の用途において、こうして発生させた1または2以上の電磁場を用いて、フォトレジストを露光させ続いて現像することができる。
【0052】
幾つかの説明の態様をこのように記載したので、当業者には容易に種々の変更、改変、および改良が可能である。かかる変更、改変、および改良は、本明細書の精神および範囲に包含されることが意図される。本明細書に示された幾つかの例は、機能または構造要素の特定の組み合わせを含むが、これらの機能および要素は、同一または異なる目的を達成するために、本明細書に従って他の方法で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。特に、1つの態様との関連で記載された動作、要素および特徴は、他の態様における同様のまたは異なる役割から排除されることを意図していない。したがって、前述の説明は例示目的のみであり、限定を意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1A〜1Dは、本明細書の1つの態様による誘電泳動ピンセットとして構成されたAFM先端の4種類の図である。
【図2】図1A〜1Dの誘電泳動ピンセットが、発生した誘電泳動トラップ中に粒子を捕捉している図である。
【図3】図3A〜3Bは、本明細書の他の態様による誘電泳動ピンセットの2種類の図である。
【図4】図3A〜3Bの誘電泳動ピンセットが、発生した誘電泳動トラップ中に粒子を捕捉している図である。
【図5】図5A〜5Bは、本明細書の他の態様による中空細長物を含む誘電泳動ピンセットの2種類の図である。
【図6】図6A〜6Bは、本明細書の他の態様による中空細長物を含む誘電泳動ピンセットの2種類の図である。
【図7】図7A〜7Bは、本明細書の他の態様による中心軸を含む誘電泳動ピンセットの2種類の図である。
【図8】図8A〜8Bは、本明細書の2つの実装によるマニピュレータをそれぞれ含む、2種類の誘電泳動ピンセットの図である。
【図9】図9A〜9Dは、本明細書の他の4つの実装による、放射線の通過を可能とするように構成された4種類の誘電泳動ピンセットの図である。
【図10】図10A〜10Bは、それぞれ、本明細書の1つの態様によるDEPピンセットアレイ500の、斜視図および正面断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端(102)を形成する細長物(100);
前記細長物の少なくとも第1部分を構成し、前記先端(102)に近接する第1端(106)を有する、第1電極(104);および
前記細長物の少なくとも第2部分を構成する第2電極(116)であって、第2電極は第1電極から絶縁されており、前記先端(102)に近接する第2端(118)を有する、前記第2電極(116)、
を含む装置であって、
ここで第1電極の第1端と第2電極の第2端は、前記先端(102)に近接して誘電泳動トラップ(126)を支持するように互いに位置している、前記装置。
【請求項2】
細長物が、鋭利なガラス先端を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
細長物が、マイクロマニピュレータツールを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
細長物が、マイクロピペットを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
細長物が、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の先端を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
細長物が、原子間力顕微鏡(AFM)の先端を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第1電極と第2電極が、細長物の相対する側を構成する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
第1電極と第2電極が、同心円状に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
細長物がこれを通る中心軸を有し、第1電極が前記中心軸に沿ってその周りに形成され、第2電極が前記細長物の外周表面を形成し、第1電極と第2電極が本質的に同心円状である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
細長物が中空である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
細長物が中空の芯を含み、その内部表面が細長物内に形成されており;
第1電極が、細長物の外周表面の少なくとも一部を構成し、第2電極が、内部表面の少なくとも一部を構成する、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第1電極の第1端と第2電極の第2端の間の間隔が、第1電極の第1端と第2電極の第2端の間の大きな誘電泳動力を支持するのに適している、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
間隔が、約500μm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
間隔が、約100μm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
間隔が、約10μm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
間隔が、約1μm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
間隔が、約500nm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
間隔が、約100nm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
間隔が、約10nm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
間隔が、約5nm以下である、請求項12に記載の装置。
【請求項21】
第1電極および第2電極に結合された少なくとも1つの電圧源をさらに含み、前記少なくとも1つの電圧源により発生された電圧が、先端近くに電磁場を作り出し、該電磁場に付随する力が、誘電泳動トラップを提供する、請求項1〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
少なくとも1つの電圧源が、これが発生する電圧が調節可能な振幅および調節可能な周波数のうち少なくとも1つを有するように構成されている、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
電磁場に付随する力が、少なくとも1つの電圧源の、調節可能な振幅および調節可能な周波数のうち少なくとも1つを変化させることによって調節される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
先端に結合され、該先端を少なくとも1つの所望の位置に移動させるように構成された、少なくとも1つのマニピュレータをさらに含む、請求項1〜23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
少なくとも1つのマニピュレータが、走査型プローブ顕微鏡を含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
少なくとも1つのマニピュレータが、圧電チューブを含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
少なくとも1つのマニピュレータが、マイクロマニピュレータを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
第1電極と第2電極の間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することによって誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子の有無を感知するための、少なくとも1つのデバイスをさらに含む、請求項1〜27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
第1電極と第2電極の間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することによって誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子の少なくとも1つの特性を決定するための、少なくとも1つのデバイスをさらに含む、請求項1〜28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
第1電極および第2電極に結合された少なくとも1つの電圧源をさらに含む、請求項29に記載の装置であって、前記装置は、先端近くに電磁場を発生するように構成され、ここで少なくとも1つの電圧源の周波数が調節可能であり、少なくとも1つのデバイスは、前記電磁場の異なる周波数においてキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定するように構成された、前記装置。
【請求項31】
細長物が、誘電泳動トラップに捕捉された粒子へと、または該粒子から、放射線が通過することを許容するように構成された、請求項1〜30のいずれかに記載の装置。
【請求項32】
細長物が、放射線を導くように構成された、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
細長物が、放射線を第1電極と第2電極の間の少なくとも1つの絶縁媒体を通過させるように構成された、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
細長物が、放射線を導く光ファイバーを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
少なくとも第1端を囲み、かつ第1電極を少なくとも第2電極から絶縁するように構成された絶縁層をさらに含む、請求項1〜34のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
第1電極がドープされたシリコンを含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
絶縁層が、第1電極を、誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子から絶縁する、請求項35に記載の装置。
【請求項38】
絶縁層が、二酸化ケイ素を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項39】
絶縁層の端部が、先端に近接する第2端から突き出ている、請求項35に記載の装置。
【請求項40】
絶縁層の端部が、第1端を、先端に近接する試料から絶縁する、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
少なくとも1つの請求項1に記載の他の装置と組み合わされた、請求項1〜40のいずれかに記載の装置。
【請求項42】
請求項41に記載の組み合わせであって、少なくとも1つの他の装置が、請求項1に記載の複数の装置を、前記組み合わせがアレイを形成する様式で含む、前記組み合わせ。
【請求項43】
アレイの各装置が本質的に同一である、請求項42に記載のアレイ。
【請求項44】
粒子を操作するための、または該粒子の少なくとも1つの特性を測定するための方法であって、
A)細長物により形成された先端に近接して電磁場を発生することにより、前記先端に近接して誘電泳動トラップを支持すること、
を含む、前記方法。
【請求項45】
少なくとも1つの細長物を少なくとも1つの所望の位置へ移動することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項45に記載の方法であって、第1電極が細長物の少なくとも第1部分を構成し、第2電極が前記細長物の少なくとも第2部分を構成し、第1電極は第2電極から絶縁され、ここで前記方法は、
第1電極と第2電極の間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することにより、誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子の有無を検知すること、
をさらに含む、前記方法。
【請求項47】
請求項45に記載の方法であって、第1電極が細長物の少なくとも第1部分を構成し、第2電極が前記細長物の少なくとも第2部分を構成し、第1電極は第2電極から絶縁され、ここで前記方法は、
第1電極と第2電極の間のキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することにより、誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子の少なくとも1つの特性を決定すること、
をさらに含む、前記方法。
【請求項48】
キャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することが、電磁場の少なくとも2つの異なる周波数においてキャパシタンスまたはコンダクタンスを測定することにより、誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子の少なくとも1つの特性を決定することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
放射線を、誘電泳動トラップ中に捕捉された粒子へと、または該粒子から、細長物を介して通過させることをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
A)複数の細長物により形成される複数の先端にそれぞれ近接して複数の電磁場を発生すること、ここで各細長物は、該細長物の対応する先端に近接する第1端を有する第1電極および、第1電極から絶縁されており、該対応する先端に近接する第2端を有する第2電極を含む;および
B)複数の先端の少なくとも1つおよび少なくとも1つの記憶媒体を、前記複数の先端が前記少なくとも1つの記憶媒体に近接するように配置し、これにより、前記複数の電磁場に基づき、前記少なくとも1つの記憶媒体から情報を読み込むこと、および/または該記憶媒体へと情報を書き込むこと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−516198(P2009−516198A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541214(P2008−541214)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/043137
【国際公開番号】WO2007/058804
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(502333862)プレジデント・アンド・フエローズ・オブ・ハーバード・カレツジ (18)
【Fターム(参考)】