説明

語学学習システム及び語学学習用プログラム

【課題】テキストデータに最適なリズム音によるチャンツ学習を可能にする。
【解決手段】教師用端末101は、テキスト取込画面401に原文テキストを入力して音声合成処理し、この音声合成データのピッチパターンと予め保有している複数種類のMIDIデータそれぞれのピッチパターンとを照合し、最もピッチ間隔の狭いMIDIデータを選択すると共に、原文テキストを教材サーバ103にアップロードする。そして、教師bにより指定されたテンポでMIDIデータを再生リズム音として演奏し、学習者用端末102−1〜102−nにマルチキャスト配信する。学習者用端末102−1〜102−nでは、教材サーバ103から原文テキストを取得し、学習者a1〜anは、教師用端末101から配信された再生リズム音を聴きながら、取得した原文テキストを見てチャンツ学習を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、語学学習システム及び語学学習用プログラムに係り、特に、チャンツ学習用のテキストに最適なリズム音を選択して、効果的なチャンツ学習を行い得る語学学習システム及び語学学習用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大学や高校等の語学教育で使用される語学学習システムとして、従来はLL(Language Laboratory)システムが多く用いられていたが、近年ではCALL(Computer Assisted Language Learning)システムと呼ばれる、ネットワーク接続されたパーソナルコンピュータ(以下、PCと略記する。)を用いた語学学習システムが用いられるようになっている。
【0003】
CALLシステムによる語学学習システムでは、教師側のPCが、例えば教師の操作に従って複数の学習者側のPCを制御可能なように構成されている。そして、教師側のPCは、教授/学習用の映像、静止画、音声等のマルチメディアデータの教材データを、学習者全員のPC又は選択した学習者のPCに送信することができる。このようにして、各学習者は、各自のPCで受信した教材データを用いて語学の学習を行うことができる。
【0004】
この語学学習システムでは、教師及び学習者それぞれのPCに、ヘッドホン部とマイクロホン部とを備えたヘッドセットを接続し、教師及び学習者がこのヘッドセットを装着して教授/学習を行うのが一般的である。すなわち、語学学習システムは、ヘッドセットの装着者自らが発声した音声をマイクロホン部で集音し、各自のPCでデジタル音声データに変換処理して通信相手先のPCに送信すると共に、通信相手先のPCから送信されたデジタル音声データを各自のPCで受信して音声に変換し、この音声をヘッドホン部で聴くことで語学会話の練習を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記の語学学習システムにおいては、教師が発声した音声を、学習者が装着したヘッドセットから即時的に聴かせるだけでなく、学習者が学習したい音声教材データを選択して繰り返し再生しながら発音を練習したり、自分の声を録音したりして個別に学習を行うことが可能なものもある。
【0006】
この発音練習の一手法として、「チャンツ」と呼ばれる語学練習方法が知られている。このチャンツとは、一定のリズム音に合わせて単語や文章を口ずさむ語学練習方法のことであり、チャンツを利用したチャンツ語学学習教材が市販されてもいる。学習者は、このチャンツ語学学習教材を用いて、リズミカルな音楽やリズム音を聴きながら、教材テキストに記載された単語や文章をリズムに合わせて発声し、単語の暗記、アクセントやイントネーションの習得を行うものである。
【0007】
このようなチャンツ学習は、上述した語学学習システムにも応用されており、出願人は、チャンツ学習機能を搭載した語学学習システムを開発して市場に投入している。具体的に、この語学学習システムでは、教師用PCに、ドラム音やベース音等による一定のリズム音をMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データとして複数種類格納すると共に、教師の操作により、所望のリズム音を所望のテンポで再生させるよう選択して学習者用PCに送出し、各学習者は、各自の学習者用PCでそのリズム音を受信して再生させながら、語学教材の発声練習を繰り返し行うというものである。
【特許文献1】特開2005−352047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したチャンツ語学学習教材は、予めCD(Compact Disc)等に録音された音楽(リズム音)と専用のテキスト教材との組み合わせによるチャンツ学習を前提としたものであり、学習者が専用のテキスト教材以外のテキストを用いた場合に、CDに録音された音楽やリズム音とマッチしたチャンツ学習ができるとは限らない。
【0009】
また、上述した、出願人が市場投入している語学学習システムにおけるチャンツ学習機能は、教師が、リズム音の種類及びテンポを所望に変えることは可能であるものの、リズム音と教材として用いるテキストとは関連付けがされていないため、テキストの文章や単語に最適なリズム音の選択は、教師自身の事前のトライアルにより決定することになるため、テキストを変える毎に煩雑な選択作業が発生し、教師に負担を強いることが問題であった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発音練習に用いるテキストを任意に入力した場合であっても、そのテキストに最も適したリズム音を簡便に選択することができる、語学学習システム及び語学学習用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の[1]及び[2]の手段を提供するものである。
[1] 教師用端末と、ヘッドホン部及びマイクロホン部を備えたヘッドセット、並びに表示モニタがそれぞれ接続された複数の学習者用端末とがネットワークを介して接続された語学学習システムであって、
前記教師用端末は、
複数種類のリズム音と各リズム音のピッチパターンとを記憶したリズム音記憶手段と、
テキストデータを入力するテキストデータ入力手段と、
前記入力したテキストデータを格納するテキストデータ格納手段と、
前記入力したテキストデータを音声合成処理して音声合成データを生成する音声合成処理手段と、
前記生成した音声合成データのピッチパターンを抽出するピッチパターン抽出手段と、
前記抽出した音声合成データのピッチパターンと、前記リズム音記憶手段に記憶された複数種類のリズム音それぞれのピッチパターンとを照合して、最もピッチ間隔の狭いリズム音を選択するリズム音選択手段と、
前記選択したリズム音のテンポを指定するテンポ指定手段と、
前記選択したリズム音を前記指定したテンポで再生リズム音として再生するリズム音再生手段と、
前記再生リズム音を前記複数の学習者用端末に配信するリズム音配信手段とを備え、
前記複数の学習者用端末のそれぞれは、
前記教師用端末のテキストデータ格納手段に格納されたテキストデータを取得するテキストデータ取得手段と、
前記取得したテキストデータを前記表示モニタに表示させるテキストデータ表示手段と、
前記教師用端末のリズム音配信手段から配信された再生リズム音を受信するリズム音受信手段と、
前記受信した再生リズム音を前記ヘッドセットのヘッドホン部から出力させるリズム音出力手段と、
を備えた語学学習システム。
[2] 複数種類のリズム音及び各リズム音のピッチパターンを記憶したリズム音記憶手段、並びにテキストデータ格納手段を備えた教師用端末と、ヘッドホン部及びマイクロホン部を備えたヘッドセット、並びに表示モニタがそれぞれ接続された複数の学習者用端末とがネットワークを介して接続された語学学習システムにおける、前記教師用端末が実行するための教師用端末制御プログラムと、前記複数の学習者用端末それぞれが実行するための学習者用端末制御プログラムとからなる語学学習用プログラムであって、
前記教師用端末制御プログラムが、
入力されたテキストデータを前記テキストデータ格納手段に格納するテキストデータ格納ステップと、
前記入力されたテキストデータを音声合成処理して音声合成データを生成する音声合成処理ステップと、
前記生成した音声合成データのピッチパターンを抽出するピッチパターン抽出ステップと、
前記抽出した音声合成データのピッチパターンと、前記リズム音記憶手段に記憶された複数種類のリズム音それぞれのピッチパターンとを照合して、最もピッチ間隔の狭いリズム音を選択するリズム音選択ステップと、
前記選択したリズム音のテンポを決定するテンポ決定ステップと、
前記選択したリズム音を前記決定したテンポで再生リズム音として再生するリズム音再生ステップと、
前記再生リズム音を前記複数の学習者用端末に配信するリズム音配信ステップとを前記教師用端末に実行させ、
前記複数の学習者用端末それぞれの学習者用端末制御プログラムが、
前記教師用端末のテキストデータ格納手段に格納されたテキストデータを取得するテキストデータ取得ステップと、
前記取得したテキストデータを前記表示モニタに表示させるテキストデータ表示ステップと、
前記教師用端末制御プログラムのリズム音配信ステップにより配信された再生リズム音を受信するリズム音受信ステップと、
前記受信した再生リズム音を前記ヘッドセットのヘッドホン部から出力させるリズム音出力ステップと、
を前記複数の学習者用端末のそれぞれに実行させるための語学学習用プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発音練習に用いるための任意のテキストデータを入力することにより、予め保有している複数種類のリズム音の中からこのテキストデータに最適なリズム音を自動的に選択することができるため、任意のテキストによる適切なチャンツ学習を行い得る、語学学習システム環境を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、好ましい実施例を示して詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1に、本発明の実施例である語学学習システムの基本的なシステム構成を示す。同図において、語学学習システム1は、教師用端末101と、学習者用端末102−1〜102−nと、教材データが多数格納されており、教師用端末101や学習者用端末102−1〜102−nからの読み出し制御により所望の教材データを読み出すことが可能な教材サーバ103とが、ネットワーク104を介してそれぞれ接続され構成されている。そして、同図には、教師bが教師用端末101を使用し、学習者a1〜a3が学習者用端末102−1〜102−3それぞれを使用している様子が図示されており、他の学習者の図示は省略している。
【0015】
同図において、教材サーバ103には、教材データやテキストデータファイルを格納するための教材フォルダ103aと、各学習者に公開する教材データ等を格納するための公開フォルダ103bと、授業の際に配布して使用させる教材データ等を格納するための配布フォルダ103cと、チャンツ学習に用いる複数種類のMIDIファイルを格納するためのMIDIフォルダ103dとが格納されたデータベースDBが設けられている。
【0016】
なお、本実施例においては、教師用端末101と、学習者用端末102−1〜102−nとを総称して端末と称することもある。そして、各端末には、不図示ではあるが、キーボード及びマウスが接続されている。
【0017】
次に、図2に端末の概略の内部構成を表したブロック図を示す。同図に示すように、端末は、後述するアプリケーションソフトウェア(以下、ソフトウェアと略記する。)を除き、基本的には同一の構成を有している。同図に示すように、端末は、ソフトウェアを実行するための不図示のCPU(Central Processing Unit)を備えた制御部201と、ソフトウェアや各種データを記憶するためのメモリ部202と、ハードディスクやDVD(Digital Versatile Disc)等により、ソフトウェア、各学習者が発声した音声を録音した音声録音データファイルや教材データ等を記録するための記録部203と、当該端末をネットワーク104に接続させるためのネットワークインターフェース(I/F)部204と、後述するモニタ210を接続するためのモニタI/F部205と、デジタル音声信号処理を実行するための音声データ処理部206と、カメラやスキャナ等のオプション装置を接続するための外部I/F部207とを備えている。そして、上記ブロック201〜207は、それぞれバス208に同図のごとく接続されている。
【0018】
そして、上記各端末には、教師b及び学習者a1〜anが操作するタッチパネル211を備えて、制御部201によるソフトウェアの実行に基づいた表示をするモニタ210がモニタI/F部205に接続されると共に、ヘッドホン部及びマイクロホン部(いずれも不図示)を備えたヘッドセット209が音声データ処理部206に接続されている。
【0019】
なお、教師用端末101の音声データ処理部206には、デジタル音声信号処理された音声データをアナログ音声信号に変換して出力するためのアナログ音声出力端子が具備されているのが望ましい。
【0020】
前記のソフトウェアとして、教師用端末101には教師用端末制御ソフトウェアが、学習者用端末102−1〜102−nそれぞれには学習者用端末制御ソフトウェアがそれぞれインストールされており、これらのソフトウェアが一体的に語学学習用ソフトウェアとして構成されている。
【0021】
以上の構成を有する各端末においては、語学学習システム1の起動時に、予め記録部203に記録されたソフトウェアがメモリ部202に読み出され、制御部201によって初期化処理を実行した後、教師bや学習者a1〜anのタッチパネル211の操作に従って、制御部201がバス208に接続された各ブロックを制御する。
【0022】
なお、各端末は、一般的に普及しているPCを用いて構成することができる。この場合、音声データ処理部206はサウンドカード、外部I/F部207はUSB(Universal Serial Bus)やIEEE1394シリアルバス等の高速通信インターフェースが適用可能である。
【0023】
本発明の実施例である語学学習システム1におけるチャンツ学習は、教師bが教師用端末101を操作することにより、教材サーバ103のデータベースDBのMIDIフォルダ103dに格納された複数のチャンツ学習用のMIDIファイルの中から、所望のテキストに最適なリズム音のMIDIファイルを選択し、教師bが指定したテンポで演奏(再生)して学習者用端末102−1〜102−nにマルチキャスト配信する。そして、学習者用端末102−1〜102−nは、それぞれ受信した再生リズム音をヘッドセット209のヘッドホン部から出力し、学習者a1〜anは、その再生リズム音に合わせてテキストの発声の練習を行うという学習形態である。
【0024】
以下、本実施例である語学学習システム1における、各端末の制御部201によるソフトウェアの実行に基づく処理動作について説明する。
【0025】
<教師用端末のチャンツ学習に関する動作>
まず、教師用端末101におけるチャンツ学習に関する動作について、図3のフローチャートを併せ参照して説明する。教師用端末101に接続されたモニタ210には、制御部201による教師用端末制御ソフトウェアの実行により、図5に示すGUI(Graphical User Interface)画面501が表示される。なお、同図のGUI画面501の内、チャンツ学習の操作に関する部分であるGUI画面502の拡大図を図6に示す。
【0026】
教師bは、モニタ210に表示されたGUI画面502を見ながら、タッチパネル211から学習者用PCボタン602を選択する。学習者用PCボタン602が選択されると、学習者用PCボタン602の表示の下方にプルダウンリスト603が表示される。プルダウンリスト603には、各種のAV(Audio Visual)機器のボタンとチャンツ学習ボタン604(リズムBOXボタン)とが表示されるので、教師bは、チャンツ学習ボタン604をタッチパネル211より選択する。
【0027】
チャンツ学習ボタン604が選択されると、制御部201は、図4に示すテキスト取込画面401をGUI画面501上に表示させる。なお、テキスト取込画面401は、タッチパネル211からの操作により移動可能である。
【0028】
教師bは、テキスト入力部402に、キーボードを用いてチャンツ学習に用いるべき単語や文章を原文テキストとして打ち込む。または、マウスを用いて予め教師用端末101の記録部203に格納されたテキストデータファイルや、教材サーバ103のデータベースDBの教材フォルダ103aに格納されたテキストデータファイルを教師用端末101のメモリ部202にダウンロードしたものを別ウィンドウとして開き、そのウィンドウからチャンツ学習で用いるべき単語や文章のテキストデータを貼り付けたりして、原文テキストを入力する。
【0029】
さらに、ネットワーク104にインターネットが接続されている場合は、所望のホームページに掲載された著作権フリーのテキストを使用することもできる。この場合は、教師用端末101が起動したブラウザ上で所望のテキストをドラッグしてテキスト入力部402に貼り付けることができる。また、外部I/F部207にスキャナを接続してテキストが記載された書面をスキャンし、公知のテキスト認識変換ソフトウェアを用いてテキストデータに変換してテキスト入力部402に貼り付けることもできる。以上のようにして貼り付けたテキストを、キーボードやマウスを用いて編集して原文テキストを作成することができる。
【0030】
上記のようにして、テキスト入力部402に原文テキストを入力(ステップS301)した後、教師bは、タッチパネル211から言語選択部403で1つの言語を選択する。教師用端末制御ソフトウェアには音声合成エンジンが組み込まれており、日本語及び所定の外国語の音声合成処理が可能である。本実施例においては、教師bは、タッチパネル211から、言語選択部403のうちEnglishのラジオボタンを選択して更にOKボタン404を選択する。
【0031】
OKボタン404が選択されると、テキスト入力部402の原文テキストは、教材サーバ103のデータベースDBの配布フォルダ103cにテキストデータファイルとしてアップロードされる。
【0032】
一方、教師用端末101の制御部201は、音声合成エンジンを実行し、テキスト入力部402に入力された原文テキストを言語選択部403で選択された言語により音声合成処理を行って音声合成データを生成する(ステップS302)。ここで、音声合成エンジンは、TTS(Text To Speech)とも称される公知技術を適用することができる。このTTSにより、原文テキストからMIDI形式、Windows(登録商標)標準のWAV形式、MP3形式のような音声合成データに変換する。本実施例では、TTSにより原文テキストからMIDI形式の音声合成データに変換する。
【0033】
次に、制御部201は、生成した合成音声データからピッチパターンを抽出する(ステップS303)。ピッチは、語学におけるイントネーションに相当するものであり、音声合成データの音の高低、すなわち周波数の高低を表すものである。ピッチパターンの抽出技術は公知の方法を採用することができるため、ここでは詳細の説明を省略する。
【0034】
次に、制御部201は、教材サーバ103のデータベースDBのMIDIフォルダ103dに格納された複数種類のMIDIファイルをネットワーク104越しに参照し、合成音声データから抽出したピッチパターンと複数のMIDIファイルそれぞれのリズム音のピッチパターンとをパターンマッチング等の方法で比較し、最もピッチ間隔の狭い類似したリズム音のMIDIファイルを選択して、そのMIDIデータを教師用端末101のメモリ部202にダウンロードする(ステップS304)。なお、MIDIフォルダ103dに格納されている複数種類のMIDIファイルのそれぞれは、リズム音のMIDIデータとそのリズム音のピッチパターンとで構成されている。そして、複数種類のリズム音は、8ビート、ボサノバ、テクノ等、チャンツ学習に好適なリズム音が採用されている。
【0035】
選択されたMIDIデータがメモリ部202にダウンロードされると、制御部201は、教師用端末制御ソフトウェアに組み込まれたMIDIプレーヤを起動し、ダウンロードしたMIDIデータをMIDIプレーヤに供給する(ステップS305)。そして、MIDIプレーヤは演奏(再生)速度を設定する。例えば、この演奏速度を、MIDI規格で定義された演奏速度で表現した場合における初期値100とする。次に、MIDIプレーヤは演奏速度を設定した後、リズム音の名称、例えばダウンロードしたMIDIデータの名称と設定された演奏速度とを、教師用端末制御ソフトウェア側にリターンし、制御部201の制御によりGUI画面502の表示部609に表示する。
【0036】
教師bは、タッチパネル211から早送りボタン606や巻き戻しボタン605を選択して、演奏速度を変化させることができる。具体的には、早送りボタン606が選択されると、例えば、演奏速度を5だけ増加させて表示部609に表示している演奏速度を更新する。また、巻き戻しボタン605が選択されると、例えば、演奏速度を5だけ減少させて表示部609に表示している演奏速度を更新する。また、早送りボタン606や巻き戻しボタン605を一定時間以上選択し続けると、その選択している時間内において5ずつ連続して変化する。
【0037】
教師bは、所望の演奏速度に変更した後に再生ボタン607を選択する。再生ボタン607が選択されると、MIDIプレーヤは、MIDIデータを指定された演奏速度で演奏を開始する。但し、この時点では、教師用端末101のみでMIDIデータが演奏されているだけであり、演奏されたリズム音は教師bのヘッドセット209でのみ聴くことができる。
【0038】
なお、演奏速度の変更は、リズム音の演奏を実行している最中でも可能であり、上記の場合と同様に、例えば、早送りボタン606が選択されると演奏速度を5増加して表示を更新し、巻き戻しボタン605が選択されると演奏速度を5減少させて表示を更新する。そして、表示を更新して一時演奏を停止した後、新しく設定された演奏速度で続きの部分からの演奏を開始する。
【0039】
教師bは、ヘッドセット209のヘッドホン部から出力されたリズム音を聴きながらリズム音の種類や演奏速度を確認し、学習者用端末102−1〜102−nへの再生リズム音の配信を行うための出力ON/OFFボタン610をタッチパネル211から選択する。
【0040】
出力ON/OFFボタン610が選択されると、教師用端末101の制御部201は、ネットワークI/F部204を介して、学習者用端末102−1〜102−nに対して音声配信開始コマンドを送信し、それに引き続き、MIDIプレーヤで演奏している再生リズム音を学習者用端末102−1〜102−nにマルチキャスト配信する。配信を停止する場合は、再度、出力ON/OFFボタン610を選択して音声配信終了コマンドを送信した後、再生リズム音のマルチキャスト配信を停止してMIDIプレーヤの実行を終了させる。また、教師bが停止ボタン608を選択した場合は、マルチキャスト配信は停止せずMIDIプレーヤの演奏のみが停止する。これにより、一時的な演奏の中止を行うことができる。
【0041】
<学習者用端末のチャンツ学習に関する動作>
次に、学習者用端末102−1〜102−nの各端末におけるチャンツ学習に関する動作を説明する。学習者用端末102−1〜102−nそれぞれに接続されたモニタ210には、制御部201による学習者端末用制御ソフトウェアの実行により、図7に示すGUI画面701が表示される。
【0042】
まず、学習者a1〜anの各人は、各自の端末に接続されたモニタ210に表示されたGUI画面701の授業教材メニュー702をタッチパネル211より選択し、教材サーバ103のデータベースDBの配布フォルダ103cに格納されている原文テキストのテキストデータファイルを選択する。授業教材メニュー702のテキストデータファイルが選択されると、教材サーバ103から学習者側の端末にテキストデータファイルが配信され、これを受信した端末は、GUI画面701の原文表示部706にテキストデータファイルの原文テキストを表示させる。
【0043】
学習者用端末102−1〜102−nは、教師用端末101から送信された音声配信開始コマンドを受信すると、それまで実行していた教材データの再生等の動作を停止し、操作が禁止される。そして、教師用端末101からマルチキャスト配信された再生リズム音を受信すると、これを学習者a1〜anがそれぞれ装着したヘッドセット209のヘッドホン部から出力する。そして、各学習者は、ヘッドセット209から聞こえるリズム音に合わせて、原文表示部706に表示された原文テキストの発音練習を行う。
【0044】
なお、本実施例で用いたMIDIデータは演奏情報を有しているだけであり、Windows(登録商標)で標準として使われているWAV形式のファイル等に比べてデータ量が少ない。また、MIDI規格では演奏を繰り返し行うよう指定したMIDIデータを作成することが容易であるので、短いフレーズを繰り返すようなリズム音のMIDIデータを構成すれば、より少ないデータ量となるばかりでなく、授業時間の許す限り無制限にリズム音を演奏してチャンツ学習を続けることができる。
【0045】
<学習者用端末のチャンツ学習に関する録音の動作>
学習者a1〜anは、各自の発音練習の際の発声を録音して保存したり、教師側に提出したりすることもできる。学習者a1〜anは、チャンツ学習を行っている最中に、GUI画面701の録音ボタン708をタッチパネル211から選択する。録音ボタン708が選択されると、その学習者が発声した声はヘッドセット209のマイクロホン部で集音され、音声データ処理部206でデジタル変換処理されてメモリ部202に記憶される。そして、その学習者が停止ボタン709を押して録音を終了すると、メモリ部202に記憶された音声データが年日時分をファイル名とした音声録音データファイルとして記録部203に保存される。このようにして各学習者は、チャンツ学習を行いながら、各自の発音練習の際の発声を録音して残すことができる。
【0046】
そして、記録部203に保存された音声録音データファイルは、通常の音声教材データを使用した学習と同様に、教師側に提出したり回収したりする。例えば、録音を終了した後、学習者a1〜anが提出ボタン710を押すと、学習者用端末制御ソフトウェアを実行する制御部201は、記録部203に保存された音声録音データファイルの名称(年日時分)に学習者のログインした名称を追記して、教材サーバ103に送信する。そして、教材サーバ103は音声録音データファイルを受信し、例えば、「¥竹田¥英会話II¥回収」のように、現在の教師名のフォルダの下の現在の授業のフォルダの下の回収用フォルダに格納する。
【0047】
また、教師用端末101側で、一斉回収ボタンを押した場合は、教師用端末101は、学習者用端末102−1〜102−nに対して、音声録音データファイルを提出させる提出依頼コマンドを送信し、この提出依頼コマンドを受信した学習者用端末102−1〜102−nは、各端末の音声録音データファイルを教師用端末101に配信する。これにより、教師bは、授業中に回収した音声録音データファイルを教師側端末101で再生して確認したり、授業が終了した後に回収した音声録音データファイルを持ち帰ることができる。
【0048】
以上詳述したように、本実施例による語学学習システムによれば、教師側端末の簡単な操作によって、任意に作成した原文テキストとこのテキストに最適なリズム音とを学習者用端末に供給することができる。また、リズム音のテンポは教師により自在に設定することができる。そして、各学習者は、学習者用端末に配信された最適な再生リズム音を聴きながら配布された原文テキストを見て、効果的なチャンツ学習法による発声練習を行うことができる。
【0049】
なお、本実施例では、教師用端末101と教材サーバ103とを別の端末とした例について説明したが、教材サーバ103のデータベースDBを教師用端末101の記録部203に設けるようにしてもよい。このようにすることで、システム構成がより簡易的になり、コストの面でも有利である。
【0050】
また、本実施例では、タッチパネル211を備えたモニタ210を用いて、教師や学習者が操作を行う例を示したが、入力手段はこれに限定されず、マウス等のポインティングデバイス、キーボード、操作盤等、他の入力手段を用いてもよい。
【0051】
また、本実施例では図示していないが、学習者a1〜anが装着しているヘッドセット209ではなく、例えば、教室内に設置されたルームスピーカから再生リズム音を出力させたい場合は、学習者用PCボタン602の代わりにメインモニタボタン611を選択する。その場合は、教師用端末101は、MIDIプレーヤで演奏している再生リズム音をマルチキャスト配信するのではなく、アナログ音声信号として出力して教師用端末101が制御するAVセレクタやアンプを介してルームスピーカから出力することができる。
【0052】
さらにまた、本実施例ではMIDIプレーヤを教師用端末101に備え、教師用端末101で演奏した再生リズム音を学習者用端末102−1〜102−nに配信する例を示したが、他の実施例として、各学習者用端末側にMIDIプレーヤを備えることも可能である。その場合は、MIDIデータの選択、演奏開始/終了、演奏速度の指定を教師用端末101から制御したり、また教師bが許可した場合は、各学習者が自在にMIDIデータの選択、演奏開始/終了、演奏速度の指定を行って、学習者各自の能力や学習の進捗状況に合わせたテンポで練習したりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、教師用端末と複数の学習者用端末とをネットワークを介して接続した語学学習システムにおけるチャンツ学習において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例である語学学習システムの、基本的なシステム構成図である。
【図2】各端末の概略の内部構成を表したブロック図である。
【図3】教師用端末のチャンツ学習に関する動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】教師用端末側のモニタに表示されるテキスト読込画面の例である。
【図5】教師用端末側のモニタに表示されるGUI画面の例である。
【図6】教師用端末側のモニタに表示されるGUI画面の内、チャンツ学習の操作に関する部分の拡大図である。
【図7】各学習者用端末側のモニタに表示されるGUI画面の例である。
【符号の説明】
【0055】
1 語学学習システム
101 教師用端末
102−1〜102−n 学習者用端末
103 教材サーバ
103a 教材フォルダ
103b 公開フォルダ
103c 配布フォルダ
103d MIDIフォルダ
104 ネットワーク
201 制御部
202 メモリ部
203 記録部
204 ネットワークI/F部
205 モニタI/F部
206 音声データ処理部
207 外部I/F部
208 バス
209 ヘッドセット
210 モニタ
211 タッチパネル
a1〜an 学習者
b 教師
DB データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
教師用端末と、ヘッドホン部及びマイクロホン部を備えたヘッドセット、並びに表示モニタがそれぞれ接続された複数の学習者用端末とがネットワークを介して接続された語学学習システムであって、
前記教師用端末は、
複数種類のリズム音と各リズム音のピッチパターンとを記憶したリズム音記憶手段と、
テキストデータを入力するテキストデータ入力手段と、
前記入力したテキストデータを格納するテキストデータ格納手段と、
前記入力したテキストデータを音声合成処理して音声合成データを生成する音声合成処理手段と、
前記生成した音声合成データのピッチパターンを抽出するピッチパターン抽出手段と、
前記抽出した音声合成データのピッチパターンと、前記リズム音記憶手段に記憶された複数種類のリズム音それぞれのピッチパターンとを照合して、最もピッチ間隔の狭いリズム音を選択するリズム音選択手段と、
前記選択したリズム音のテンポを指定するテンポ指定手段と、
前記選択したリズム音を前記指定したテンポで再生リズム音として再生するリズム音再生手段と、
前記再生リズム音を前記複数の学習者用端末に配信するリズム音配信手段とを備え、
前記複数の学習者用端末のそれぞれは、
前記教師用端末のテキストデータ格納手段に格納されたテキストデータを取得するテキストデータ取得手段と、
前記取得したテキストデータを前記表示モニタに表示させるテキストデータ表示手段と、
前記教師用端末のリズム音配信手段から配信された再生リズム音を受信するリズム音受信手段と、
前記受信した再生リズム音を前記ヘッドセットのヘッドホン部から出力させるリズム音出力手段と、
を備えた語学学習システム。
【請求項2】
複数種類のリズム音及び各リズム音のピッチパターンを記憶したリズム音記憶手段、並びにテキストデータ格納手段を備えた教師用端末と、ヘッドホン部及びマイクロホン部を備えたヘッドセット、並びに表示モニタがそれぞれ接続された複数の学習者用端末とがネットワークを介して接続された語学学習システムにおける、前記教師用端末が実行するための教師用端末制御プログラムと、前記複数の学習者用端末それぞれが実行するための学習者用端末制御プログラムとからなる語学学習用プログラムであって、
前記教師用端末制御プログラムが、
入力されたテキストデータを前記テキストデータ格納手段に格納するテキストデータ格納ステップと、
前記入力されたテキストデータを音声合成処理して音声合成データを生成する音声合成処理ステップと、
前記生成した音声合成データのピッチパターンを抽出するピッチパターン抽出ステップと、
前記抽出した音声合成データのピッチパターンと、前記リズム音記憶手段に記憶された複数種類のリズム音それぞれのピッチパターンとを照合して、最もピッチ間隔の狭いリズム音を選択するリズム音選択ステップと、
前記選択したリズム音のテンポを決定するテンポ決定ステップと、
前記選択したリズム音を前記決定したテンポで再生リズム音として再生するリズム音再生ステップと、
前記再生リズム音を前記複数の学習者用端末に配信するリズム音配信ステップとを前記教師用端末に実行させ、
前記複数の学習者用端末それぞれの学習者用端末制御プログラムが、
前記教師用端末のテキストデータ格納手段に格納されたテキストデータを取得するテキストデータ取得ステップと、
前記取得したテキストデータを前記表示モニタに表示させるテキストデータ表示ステップと、
前記教師用端末制御プログラムのリズム音配信ステップにより配信された再生リズム音を受信するリズム音受信ステップと、
前記受信した再生リズム音を前記ヘッドセットのヘッドホン部から出力させるリズム音出力ステップと、
を前記複数の学習者用端末のそれぞれに実行させるための語学学習用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−164701(P2008−164701A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351370(P2006−351370)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】