誤差補正方法、誤差補正装置、及び誤差補正プログラム
【課題】運動誤差の補正を高精度に行える方法を提供する。
【解決手段】予め基準ワーク32を形状測定して得ておいた校正値信号を用いて測定ワーク40を形状測定して得られた測定値信号から運動部26の運動誤差による測定誤差を除去する方法において、該校正値信号は固定部30に対し該運動部26を相対運動しながら該基準ワーク32を形状測定した際の検出器36出力信号から該基準ワーク形状成分を除去したものであり、該測定値信号は該固定部30に対し該運動部26を相対運動しながら該測定ワーク40を形状測定した際の該検出器36出力信号から該測定ワーク形状成分を除去したものであり、該校正値信号を用いて該測定値信号に含まれる成分のうち該校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する工程(S10)を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【解決手段】予め基準ワーク32を形状測定して得ておいた校正値信号を用いて測定ワーク40を形状測定して得られた測定値信号から運動部26の運動誤差による測定誤差を除去する方法において、該校正値信号は固定部30に対し該運動部26を相対運動しながら該基準ワーク32を形状測定した際の検出器36出力信号から該基準ワーク形状成分を除去したものであり、該測定値信号は該固定部30に対し該運動部26を相対運動しながら該測定ワーク40を形状測定した際の該検出器36出力信号から該測定ワーク形状成分を除去したものであり、該校正値信号を用いて該測定値信号に含まれる成分のうち該校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する工程(S10)を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誤差補正方法、誤差補正装置、及び誤差補正プログラム、特にその校正時と測定時とでの環境の変化の考慮に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、形状を測定するため、輪郭形状測定機等の形状測定機が用いられている。
ところで、輪郭形状測定機等の形状測定機では、測定軸の真直度の補正が必要である(例えば特許文献1〜4等参照)。
このため、従来は、以下のように補正をしていた。すなわち、予め基準ワーク、例えば高精度なオプティカルフラット等の既知形状を使って、校正測定を行い、校正値を得ておく。次に、測定ワークを使って測定を行い、測定値を得る。得られた測定値から、校正時の校正値をそのまま引き算していた(例えば特許文献1〜3等参照)。
また、従来は、表面粗さ測定器において、ワークの表面の凹凸の平均間隔の値を測定することも行われていた(例えば特許文献4〜5等参照)。
【特許文献1】実開昭61−30814号公報
【特許文献2】特開平2−75905号公報
【特許文献3】特開平11−118473号公報
【特許文献4】特開2004−325120号公報
【特許文献5】特開平8−313248号公報(特許第3539695号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来方式にあっても、補正精度は改善の余地が残されていたものの、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高精度に運動誤差補正を行うことのできる誤差補正装置、誤差補正方法、及び誤差補正プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が運動誤差補正について鋭意検討を重ねた結果、従来、不明であった、高精度化を妨げる原因が、校正時と測定時とでの環境の変化にあることを解明した。
すなわち、現実の測定においては、測定装置自身の繰り返し精度、基準ワークと測定ワークとの材質の違いによる校正値からのずれなど、様々な要因により校正時とは違った測定環境になり、測定値から校正値をそのまま引き算するだけの処理では、補正能力に限界があることがわかった。
そして、本発明者は、高精度化を妨げる原因が校正時と測定時とでの環境の変化にあることの発見に基づき、下記の適応的な処理を行うことにより、より真値に近い測定値を取得することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
誤差補正方法
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる誤差補正方法は、予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器で測定ワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する誤差補正方法において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
運動誤差成分除去工程を備えることを特徴とする。
ここで、前記運動誤差成分除去工程は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する。
【0006】
本発明の運動誤差成分除去は、測定値信号に含まれる運動誤差成分の周波数ないし振幅が時間と共に変化(変動)しても、その変化に適宜追従するため、例えば以下の処理を行うことをいう。
(1)形状測定開始位置から終了位置までの、測定値信号に含まれる成分のうち、校正値信号と最も形状相関の高い成分を、測定時運動誤差成分と推定する。
(2)該推定された運動誤差成分の形状に最も近づくように、該校正値信号の周波数ないし振幅を調節したものを、該測定値信号から減算することをいう。
【0007】
なお、本発明においては、前記運動誤差成分除去工程が、適応ノイズキャンセラにより、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から前記運動誤差成分を適応的に除去することが特に好適である。
本発明の適応ノイズキャンセラとしては、例えば特開平5−191882号公報等に記載のものを用いることができる。
【0008】
<熱雑音成分除去>
また、本発明においては、熱雑音成分除去工程を備えることが好適である。
ここで、前記熱雑音成分除去工程は、前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号に含まれる成分のうち、熱雑音成分を適応的に除去する。
本発明においては、前記熱雑音成分除去工程が、適応ラインエンハンサにより、前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号から、前記熱雑音成分を適応的に除去することが特に好適である。
本発明の適応ラインエンハンサとしては、例えば特開2006−266758号公報等に記載のものを用いることができる。
【0009】
<真直度>
本発明において、前記運動誤差は、形状測定機の測定軸の真直度であることが特に好適である。
<形状成分>
本発明においては、形状成分除去工程と、形状成分回復工程と、を備えることが特に好適である。
【0010】
ここで、前記形状成分除去工程は、前記運動誤差成分除去工程の前段に設けられ、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながらワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該ワーク形状成分を除去する。
また、前記形状成分回復工程は、前記誤差成分の除去された測定値信号から補正値を得る前に、該誤差成分の除去された測定値信号において、前記形状成分除去工程で除去されたワーク形状成分を回復する。
【0011】
誤差補正装置
また、前記目的を達成するために本発明にかかる誤差補正装置は、予め形状既知の基準ワークを測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器で測定ワークを形状測定して得られた測定値信号から、運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する運動誤差補正装置において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
運動誤差成分除去手段を備えることを特徴とする。
ここで、前記運動誤差成分除去手段は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する。
【0012】
誤差補正プログラム
また、前記目的を達成するために本発明にかかる誤差補正プログラムは、コンピュータに運動誤差成分除去工程を実行させ、予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器でワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去させるための誤差補正プログラムにおいて、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記運動誤差成分除去工程は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
誤差補正方法
本発明にかかる誤差補正方法によれば、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から運動誤差成分を適応的に除去する運動誤差成分除去工程を備えることとしたので、運動誤差補正を高精度に行うことができる。
本発明においては、前記運動誤差成分除去工程が、適応ノイズフィルタにより、校正値信号を用いて測定値信号から運動誤差成分の除去を適応的に行うことにより、前記運動誤差補正を、より高精度に行うことができる。
【0014】
本発明においては、さらに、前記測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去する熱雑音成分除去工程を組合せることにより、より高精度に、前記補正を行うことができる。
本発明においては、前記熱雑音成分除去工程が、適応ラインエンハンサにより、前記測定値信号から熱雑音成分の除去を適応的に行うことにより、前記補正を、より高精度に行うことができる。
本発明においては、前記運動誤差が真直度であることにより、真直度補正を高精度に行うことができる。
本発明においては、前記形状成分除去工程と前記形状成分回復工程とを備えることにより、前記補正を、より高精度に行うことができる。
【0015】
誤差補正装置
また、本発明にかかる誤差補正装置によれば、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から運動誤差成分を適応的に除去する運動誤差成分除去手段を備えることとしたので、運動誤差補正の高精度化を図ることができる。
誤差補正プログラム
また、本発明にかかる誤差補正プログラムによれば、コンピュータに前記運動誤差成分除去工程を実行させることとしたので、運動誤差補正の高精度化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる誤差補正装置の概略構成が示されている。
なお、本実施形態では、運動誤差として、輪郭形状測定機の測定軸の真直度に起因する測定誤差を適応的に補正する例について説明する。
同図に示す真直度補正装置(誤差補正装置)10は、コンピュータよりなり、真直度成分除去手段(運動誤差成分除去手段)12と、熱雑音成分除去手段14と、記憶手段16とを備える。真直度成分除去手段12及び熱雑音成分除去手段14は、縦続接続されている。
【0017】
真直度成分除去手段12は、真直度成分除去工程(S10)を行う。すなわち、真直度成分除去手段12は、予め得ておいた校正値信号(参照信号)を用いて、測定値信号に含まれる成分のうち校正値信号と最も形状相関の高い成分を、真直度成分(運動誤差成分)として適応的に除去する。
なお、本実施形態では、信号を周波数領域に変換して処理をすることも可能であるが、形状(時間・空間領域)のままで処理することが、特に好ましい。すなわち、これにより、測定値信号に含まれる運動誤差成分の周波数ないし振幅が時間と共に変化(変動)しても、その変化に適宜追従して、真直度成分の推定及び除去が、より適切に行えるからである。
熱雑音成分除去手段14は、熱雑音成分除去工程(S12)を行う。すなわち、熱雑音成分除去手段14は、真直度成分除去工程(S10)後の測定値信号に含まれる成分のうち、熱雑音成分を適応的に除去する。
【0018】
また、同図に示す真直度補正装置10は、さらに、校正値信号取得手段20と、測定値信号取得手段22とを備える。
ここで、校正値信号取得手段20は、校正値信号取得工程(S14)を行う。すなわち、校正値信号取得手段20は、校正時、X軸駆動部24により、スタイラスアーム(運動部)26をX軸方向に移動することにより、輪郭形状測定機28のテーブル(固定部)30上に置かれた基準ワーク(オプティカルフラット)32上のスタイラス34によるトレース位置を移動しながら、基準ワーク32の輪郭形状を測定した際の、検出器36の出力信号から、該基準ワーク32の基準形状成分を除去し、校正値信号を得ている。
【0019】
また、測定値信号取得手段22は、測定値信号取得工程(S16)を行う。測定値信号取得手段22は、形状成分除去手段38を含む。形状成分除去手段38は、形状成分除去工程(S18)を行う。すなわち、測定値信号取得手段22は、前記校正時より時間が経過した測定時、X軸駆動部24によりスタイラスアーム26をX軸方向に移動することにより、輪郭形状測定機28のテーブル30上に置かれた測定ワーク40上のスタイラス34によるトレース位置を移動しながら、測定ワーク40の輪郭形状を測定した際の、検出器36の出力信号から、該測定ワーク40の形状成分を除去し、測定値信号を得ている。
【0020】
また、同図に示す真直度補正装置10は、さらに、形状成分回復手段42を備える。
ここで、形状成分回復手段42は、形状成分回復工程(S20)を行う。すなわち、形状成分回復手段42は、誤差成分の除去された測定値信号から補正値信号(補正値)を得る前に、該誤差成分の除去された測定値信号において、形状成分除去手段38で除去したワーク形状成分を、回復する。
記憶手段16は、真直度補正プログラム(誤差補正プログラム)50を記憶している。本実施形態においては、真直度補正プログラム50により、真直度補正装置(コンピュータ)10を、校正値信号取得手段20、測定値信号取得手段22、真直度成分除去手段12、熱雑音成分除去手段14、形状成分除去手段38及び形状成分回復手段42として機能させている。
【0021】
本実施形態にかかる真直度補正装置10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
本実施形態においては、前記各手段を有するので、予め得ておいた校正値信号を用いて、測定値信号に含まれる成分のうち該校正値信号と最も強い形状相関を持つ成分を真直度成分として適応的に除去し、その後、残存する熱雑音成分を適応的に除去することができる。
すなわち、本実施形態においては、真直度成分除去手段12により、予め校正時に得ておいた校正値信号を利用して測定値信号から真直度成分を適応的に除去することができる。
また、本実施形態においては、熱雑音成分除去手段14により、真直度成分除去後の測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去することができる。
【0022】
このように本実施形態にかかる真直度補正装置10によれば、校正値信号を用いて測定値信号から真直度成分を適応的に除去する真直度成分除去手段12と、真直度成分の除去された測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去する熱雑音成分除去手段14と、を備えることとした。
この結果、本実施形態においては、測定値信号に含まれる真直度成分の周波数ないし振幅が時間と共に変化しても、その変化に適宜追従した真直度成分除去を行うことができるので、輪郭形状測定機20の測定軸の真直度補正を、より高精度に行うことができる。
また、本実施形態においては、真直度成分除去と、従来、補正の対象としてこなかった熱雑音成分除去とを組合せることで、より高精度な補正を実現することができる。
本実施形態においては、真直度成分除去手段12と熱雑音成分除去手段14とを縦続接続することで、前記補正の相乗効果を得ることができる。
【0023】
更なる高精度化
ところで、本実施形態においては、前記補正を、より高精度に行うためには、具体的な補正手段の選択も非常に重要である。このために本実施形態においては、形状測定機の測定軸の真直度補正を、より高精度に行うため、数ある補正手段の中から、図2に示されるような補正手段を選択している。
すなわち、同図においては、真直度成分除去工程として、適応ノイズキャンセラ60により、校正値信号を用いて測定値信号から真直度成分を適応的に除去している。このために適応ノイズキャンセラ60は、演算手段62と、FIRフィルタ(適応フィルタ)64と、係数修正アルゴリズム66と、を含む。
【0024】
また、熱雑音成分除去工程として、適応ラインエンハンサ70により、真直度成分の除去された測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去している。このために適応ラインエンハンサ70は、演算手段72と、FIRフィルタ(適応フィルタ)74と、係数修正アルゴリズム76と、遅延回路78と、を含む。
このように本実施形態においては、真直度成分除去手段12及び熱雑音成分除去手段14として、数ある補正手段の中から、高精度な補正処理及び構成の簡単化の両立を目的として、適応ノイズキャンセラ60と適応ラインエンハンサ70との縦続接続という手段を選択することで、他のものを用いたものに比較し、輪郭形状測定機において、より高精度かつ簡単に真直度補正を行うことができる。
【0025】
ところで、従来方式の真直度補正処理では、基準ワークを使った校正測定により、事前に校正値を取得しておき、測定時に、測定値から校正時に予め得ておいた校正値をそのまま引き算していた。すなわち、従来方式の真直度補正では、未知経路の特性が、校正時と測定時とで変化しないことを前提としていた。
しかしながら、現実の測定においては、測定機の繰り返し精度や基準ワークの材質とは異なるワークを測定するなど、様々な要因により、測定値信号に含まれる真直度成分が、基準ワークを測定して得られた校正値と常に同じである保障はなく、校正時と測定時との環境の変化による誤差が生じることがある。
【0026】
ここで、校正時と測定時との環境の変化による誤差を低減するため、測定ワークを測定する際に、真直度成分も同時に計測したのでは、以下の不具合がある。
すなわち、輪郭形状測定機は、一つの検出器しか持たないため、真直度成分の同時計測は難しい。真直度成分を同時計測するために別途、検出器を設けたのでは、構成が複雑化してしまうので、解決手段として採用するに至らなかった。
これに対し、本実施形態においては、基準ワークの形状が既知であるので、基準ワークを使った測定によって得られた校正値信号は、未知経路を通過したノイズを取得していることと等価であることに着目した。
【0027】
そして、本実施形態においては、オプティカルフラットの理想平面形状(既知形状)を校正時の検出器の出力信号から差し引いた校正値信号を近似的にノイズ成分として扱い、図3に示されるような適応ノイズキャンセラ60により、真直度成分を適応的に補正することができるので、より高精度な補正処理が行える。
すなわち、同図において、未知経路の特性が、校正時と測定時とで変化し、測定値信号に含まれる真直度校正値(真直度成分)が変化しても、適応フィルタ64の特性を適応的に変えることにより、真直度校正値(真直度成分)の変化に確実に追従することができるので、より真値に近い真直度補正値が得られる。
【0028】
<低周波成分の除去、回復>
前記真直度成分除去を、より適切に行うためには、ワーク形状成分の除去及び回復が非常に重要である。
すなわち、本実施形態では、原則として定常値を仮定しているので、図4に示すように測定値信号から低周波成分(トレンド成分)であるワーク形状成分を事前に除去しておくことが非常に重要である。
【0029】
すなわち、本実施形態においては、設計値が既知の高精度なワークにおいて、設計値との照合後の誤差値を対象としている。
ただし、設計値が未知な場合などであっても、何らかの方法でトレンド成分を除去するなどして、定常値とみなせる状態にしておくことができれば、設計値が未知の高精度なワークにも適応可能である。
実際の処理手順としては、図5に示すように、トレント成分に係わる前処理と、必要に応じてトレント成分に係わる後処理とが必要となる。
【0030】
すなわち、同図(A)に示されるように設計値を利用の場合は、前記形状成分除去工程(S18)として、設計値とのベストフィット工程(S22)と、設計値成分の除去工程(S24)とを含むことが好ましい。
そして、同図(A)では、設計値とのベストフィット(S22)及び設計値成分の除去工程(S24)の完了後に、真直度成分除去工程(S10)及び熱雑音成分除去工程(S12)を行う。さらに、その後、設計値成分の回復工程(形状成分回復工程(S20))を行っている。
【0031】
また、同図(B)に示されるように設計値を利用しない場合は、前記形状成分除去工程(S18)として、トレンド成分の推定工程(S26)及びトレンド成分の除去工程(S28)を含むことが好ましい。
そして、同図(B)では、トレンド成分の推定工程(S26)及びトレンド成分の除去工程(S28)の完了後に、真直度成分除去工程(S10)及び熱雑音成分除去工程(S12)を行う。さらに、その後、トレンド成分の回復工程(形状成分回復工程(S20))を行っている。
【0032】
このように本実施形態では、トレンド成分を含んだ値を直接に処理することができないが、同図に示されるように、真直度成分除去工程(S10)及び熱雑音成分除去工程(S12)の前後に、形状成分除去工程(S18)及び形状成分回復工程(S20)を入れることにより、前記真直度成分除去工程(S10)及び前記熱雑音成分除去工程(S12)を、より適切に行うことができるので、前記補正の更なる高精度化を図ることができる。
【0033】
<熱雑音成分除去>
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るためには、従来、補正の対象としてこなかった熱雑音成分の低減も非常に重要である。
すなわち、前記真直度成分除去により、高精度の補正処理が実現すると、理想的には、運動誤差補正後の測定値信号に残る成分としては、ワークの表面性状(表面粗さやうねり)成分と熱雑音成分となる。
本実施形態では、従来、補正の対象としてこなかった熱雑音成分を低減することにより、ワークの表面性状を感度良く測定することができる。
【0034】
ここで、複数回の測定を繰り返し、その平均をとるようにすると、積算の効果により、繰り返し回数を増やすにつれて熱雑音は減少していく。しかしながら、測定を繰り返し行うことは、測定時間の増加に直結するため、特にピボット式スタイラスを使った接触式の形状測定機には得策ではない。
そこで、本実施形態では、図6に示されるような適応ラインエンハンサ70により、熱雑音成分を適応的に除去している。同図に示す適応ラインエンハンサ70は、測定値信号に含まれる成分のうち、表面性状成分は自分自身と相関があるが、熱雑音成分とは相関がないという自己相関の特性を利用し、適応フィルタのフィルタ係数(フィルタ特性)を、測定時、校正時からの環境変化に対して適応的に変化させることができるので、測定値信号から熱雑音成分を確実に除去することができる。
【0035】
<適応フィルタ>
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るためには、適応フィルタの構成の選択も非常に重要である。
以下、前記適応フィルタについて、より具体的に説明する。
本実施形態においては、適応フィルタ64,74しては、フィルタ特性の安定性に優れた、図7に示されるようなFIRフィルタを選択することが非常に好ましい。
【0036】
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るためには、適応フィルタ64,74により適応値処理を行う際の、フィルタ係数更新のアルゴリズムの選択も非常に重要である。
そこで、本実施形態では、補正の更なる高精度化を図るため、フィルタ係数更新の数あるアルゴリズムの中から、逐次最小二乗(RLS)アルゴリズムを採用している。
すなわち、最小平均二乗(LMS)アルゴリズムが、瞬間値に基づいて係数更新を行うのに対して、RLS法は、ある時刻までの測定値信号に基づく係数更新を行うため、異常値に対する感度を低く抑えられる。また、RLS法は、収束特性の観点からもRLS法が有利である。
このように本実施形態においては、逐次最小二乗(RLS)アルゴリズムを用いて、ある時刻までの測定値に基づいて、適応フィルタ64,74の、フィルタ係数更新を行うので、補正の更なる高精度化を図ることができる。
【0037】
<初期化処理>
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るため、前記適応フィルタ64,74においてフィルタ係数の初期化処理を行うことも非常に重要である。
すなわち、フィルタ係数の更新にあたっては、初期値が必要である。通常、係数の初期値はwi=0(i=0,1,…,p−1)と置くため、フィルタ係数の更新が十分収束するまでの間の不定区間が生じる。
これに対し、本実施形態では、必ずしも測定時のサンプルリングと同期させる必要がないことを利用し、ある程度以上のサンプル数の入力値をバッファリングしておく。その上で、測定値信号の処理を開始する。この係数値を初期値として採用すると、事実上、収束した状態から値の変化に応じた係数更新が可能になるため、値開始位置での不定状態をなくすことができる。
【0038】
以上、本実施形態にかかる真直度補正装置によれば、校正時と測定時との環境変化を考慮して真直度補正処理を行っているので、従来方式、つまり校正時と測定時との環境の変化に対する考慮が一切なく、測定値から校正時の校正値をそのまま引き算しただけのものに比較し、より高精度に、真直度補正を行うことができる。
【0039】
実験
図8〜図13には、本実施形態にかかる環境変化を考慮した真直度補正を用いた場合と、従来の環境変化を考慮しない真直度補正を用いた場合の比較結果が示されている。
本実験では、形状測定機で、オプティカルフラット及びゲージブロックを測定した。
なお、本実験において、形状測定機で測定されたオプティカルフラットデータ及びゲージブロックデータは、機器側のX軸運動精度(ガイド機構)改良の途中段階で得られた値である。オリジナルの値に含まれているトレンド成分(形状成分)については、事前に除去しておいた。
従来方式では、測定時の測定値から、校正時に得ておいた校正値をそのまま引き算し、補正値を得た。
いずれの値も同一ワークの同一箇所を複数回に渡って測定しており、そのうちの1回を校正測定と考え、その他の回を実測定と考えている。このため、補正後の値がすべてゼロとなるのが理想的な補正状態である。
【0040】
<真直度補正>
以下に、本実施形態にかかる適応ノイズキャンセラによる真直度成分除去、及び従来方式の真直度成分除去を用いた場合の、補正結果を図8に示す。
同図では、形状測定機でゲージブロックを測定した。同図(A)は校正値、同図(B)は測定値、同図(C)は従来方式を用いた場合、同図(D)は本実施形態にかかる適応ノイズキャンセラ(FIRフィルタのタップ数は3)を用いた場合である。
従来方式を示す同図(C)では、誤差波形に周期性が見られるのに対し、本実施形態を示す同図(D)ではランダムな挙動を示している。これは、熱雑音成分除去を適応ノイズキャンセラの後段に考えたとき、本実施形態の適応ノイズキャンセラ出力波形は、従来方式の出力波形に比べ、さらに誤差量を小さくすることができることを示している。
【0041】
<熱雑音成分除去>
図9に、本実施形態にかかる適応ノイズキャンセラ出力を用いた場合、及び従来方式の補正値を用いた場合の、熱雑音成分除去処理の結果を示す。
同図では、形状測定機でゲージブロックを測定した。同図(A)は従来方式で得られた補正値を適応ラインエンハンサ入力とした場合、同図(B)は本実施形態の適応ノイズキャンセラ出力を適応ラインエンハンサ入力とした場合の、適応ラインエンハンサの出力である。
同図では、適応ラインエンハンサに搭載したFIRフィルタのタップ数を3、遅延回路の遅延素子数を2とした。
同図(B)に示されるように本実施形態は、適応ノイズキャンセラの後段に熱雑音成分除去を配置することで、従来方式を示す同図(A)に比較し、適応ノイズキャンセラの補正効果を、より有効に引き出すことができることがわかる。
【0042】
<適応フィルタ係数の初期化>
次に、適応フィルタ係数の初期化処理の効果を図10に示す。
同図では、形状測定機でオプティカルフラットを測定した。同図(A)はフィルタ係数の事前最適化処理なしの場合の結果、同図(B)は本実施形態においてフィルタ係数の事前最適化処理ありの場合の結果である。
同図(A)より明らかなように、フィルタのタップ数は3と少ないにもかかわらず、係数の初期化に特別の処理を行わずに初期値をwi=0(i=0,1,…,p−1)と置いた場合には、処理開始位置で不十分な収束部分が発生する。一方、同図(B)に示されるように本実施形態の初期化処理を導入した場合、処理開始位置から、安定した結果が得られることがわかる。
【0043】
<ゲイン変化に対する追従性>
図11には、測定時のゲインが校正時の2倍になったと仮定した場合のシミュレーション結果が示されている。同図(A)は従来方式の真直度補正を用いた場合、同図(B)は本実施形態の適応ノイズキャンセラを用いた場合である。
従来方式を示す同図(A)では、ゲインの差に応じた誤差成分が現われているのに対し、本実施形態の適応ノイズキャンセラを示す同図(B)では、ゲインの変化に追従した補正処理が行われていることがわかる。
【0044】
<位置ズレに対する追従性>
(1)適応ノイズキャンセラ
図12には位置ズレに対する適応ノイズキャンセラの追従性の結果が示されている。
同図(A)は従来方式を用いた場合、同図(B)は本実施形態においてタップ数3の適応ノイズキャンセラを用いた場合、同図(C)は本実施形態においてタップ数10の適応ノイズキャンセラを用いた場合の結果である。
同図において、測定時の位置決めは250μmずれたと仮定した。サンプリングピッチは25μmとした。
本実験では、サンプリングピッチ25μmで測定が行われているため、位置決めの250μmのずれは、適応ノイズキャンセラのフィルタタップ数では10に相当する。本実施形態においてタップ数3の適応ノイズキャンセラを示す同図(B)では、このズレ量に十分に追従できないが、本実施形態においてタップ数10の適応ノイズキャンセラを示す同図(C)では、このズレ量に追従できるようになる。
【0045】
(2)適応ラインエンハンサ
図13には、位置ズレに対する補正値に適応ラインエンハンサ処理を行った結果が示されている。同図(A)は従来方式で得られた補正値に対して、適応ラインエンハンサ処理をした場合、同図(B)は本実施形態の適応ノイズキャンセラ(タップ数10)によって得られた補正値に対して、適応ラインエンハンサ処理をした場合である。
同図では、測定時の位置決めは250μmずれたと仮定した。サンプリングピッチは25μmとした。適応ラインエンハンサの遅延素子数は2、フィルタタップ数は3とした。
本実施形態を示す同図(B)によれば、従来方式を示す同図(A)に比較し、適応ノイズキャンセラによる優れた補正効果が確認された。
【0046】
<各手段の配置>
なお、本実施形態では、図2に示されるように、適応ラインエンハンサ70を、適応ノイズキャンセラ60の後段に配置することが特に好ましいが、図14に示されるような配置も可能である。
すなわち、同図(A)では、適応ラインエンハンサ70を、適応ノイズキャンセラ60の前段に配置している。そして、校正値信号及び測定値信号を適応ラインエンハンサ処理し、事前に熱雑音を除去している。
また、同図(B)では、適応ラインエンハンサ70を、適応ノイズキャンセラ60の前段及び後段に配置している。そして、校正値信号を適応ラインエンハンサ処理し、事前に熱雑音を除去している。
【0047】
このように信号の性質によっては、校正値信号ないし測定値信号を適応ラインエンハンサ処理し事前に熱雑音を除去する方が効果的な場合や、適応ラインエンハンサではなくマッチドフィルタを使うことで誤差に対処することができる場合がある。このため、本実施形態では、信号の性質に応じて最適な校正が行えるように、適応ラインエンハンサ及び適応ノイズキャンセラの配置を選択することも可能である。
また、本発明は、輪郭形状測定機の測定軸の真直度補正への適用が特に好ましいが、運動誤差の補正が必要なものであれば、他の形状測定機や運動誤差への適用も可能である。
【0048】
<測定装置>
本発明は、例えば、真円度測定機の直動機構の直線運動の真直度、長さや角度等の精密測定機の測定軸の真直度誤差補正等への適用も可能である。
<運動誤差>
例えば、輪郭形状測定機のピボット式スタイラスの円弧運動誤差等への適用も可能である。また、載物台回転形真円度測定機の載物台の回転運動誤差、検出器回転型真円度測定機の検出器回転機構の回転運動誤差への適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態にかかる真直度補正装置の概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態において特徴的な真直度成分除去手段、及び熱雑音成分除去手段の具体的構成である。
【図3】本発明の一実施形態において特徴的な真直度成分除去手段の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態において形状成分除去工程の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる真直度補正方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態において特徴的な熱雑音成分除去手段の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態において特徴的な適応フィルタの説明図である。
【図8】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の補正結果の比較説明図である。
【図9】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、適応ラインエンハンサ出力の比較説明図である。
【図10】本発明の一実施形態において、フィルタ係数の事前最適化処理ありの場合及び該フィルタ係数の事前最適化処理なしの場合の、補正結果の比較説明図である。
【図11】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、ゲイン変化に対する追従性の結果の比較説明図である。
【図12】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、位置ズレに対する追従性の比較説明図である。
【図13】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、位置ズレに対する補正値に対して適応ラインエンハンサ処理を行った結果の比較説明図である。
【図14】本発明の一実施形態において特徴的な真直度成分除去手段及び熱雑音成分除去手段の配置の変形例である。
【符号の説明】
【0050】
10 真直度補正装置(誤差補正装置)
12 真直度成分除去手段(運動誤差成分除去手段)
14 熱雑音成分除去手段
20 校正値信号取得手段
22 測定値信号取得手段
24 X軸駆動部
26 スタイラスアーム(運動部)
28 輪郭形状測定機(形状測定機)
30 テーブル(固定部)
34 スタイラス
36 検出器
38 形状成分除去手段
42 形状成分回復手段
50 真直度補正プログラム(誤差補正プログラム)
60 適応ノイズキャンセラ
70 適応ラインエンハンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は誤差補正方法、誤差補正装置、及び誤差補正プログラム、特にその校正時と測定時とでの環境の変化の考慮に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、形状を測定するため、輪郭形状測定機等の形状測定機が用いられている。
ところで、輪郭形状測定機等の形状測定機では、測定軸の真直度の補正が必要である(例えば特許文献1〜4等参照)。
このため、従来は、以下のように補正をしていた。すなわち、予め基準ワーク、例えば高精度なオプティカルフラット等の既知形状を使って、校正測定を行い、校正値を得ておく。次に、測定ワークを使って測定を行い、測定値を得る。得られた測定値から、校正時の校正値をそのまま引き算していた(例えば特許文献1〜3等参照)。
また、従来は、表面粗さ測定器において、ワークの表面の凹凸の平均間隔の値を測定することも行われていた(例えば特許文献4〜5等参照)。
【特許文献1】実開昭61−30814号公報
【特許文献2】特開平2−75905号公報
【特許文献3】特開平11−118473号公報
【特許文献4】特開2004−325120号公報
【特許文献5】特開平8−313248号公報(特許第3539695号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来方式にあっても、補正精度は改善の余地が残されていたものの、従来は、これを解決することのできる適切な技術が存在しなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高精度に運動誤差補正を行うことのできる誤差補正装置、誤差補正方法、及び誤差補正プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が運動誤差補正について鋭意検討を重ねた結果、従来、不明であった、高精度化を妨げる原因が、校正時と測定時とでの環境の変化にあることを解明した。
すなわち、現実の測定においては、測定装置自身の繰り返し精度、基準ワークと測定ワークとの材質の違いによる校正値からのずれなど、様々な要因により校正時とは違った測定環境になり、測定値から校正値をそのまま引き算するだけの処理では、補正能力に限界があることがわかった。
そして、本発明者は、高精度化を妨げる原因が校正時と測定時とでの環境の変化にあることの発見に基づき、下記の適応的な処理を行うことにより、より真値に近い測定値を取得することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
誤差補正方法
すなわち、前記目的を達成するために本発明にかかる誤差補正方法は、予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器で測定ワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する誤差補正方法において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
運動誤差成分除去工程を備えることを特徴とする。
ここで、前記運動誤差成分除去工程は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する。
【0006】
本発明の運動誤差成分除去は、測定値信号に含まれる運動誤差成分の周波数ないし振幅が時間と共に変化(変動)しても、その変化に適宜追従するため、例えば以下の処理を行うことをいう。
(1)形状測定開始位置から終了位置までの、測定値信号に含まれる成分のうち、校正値信号と最も形状相関の高い成分を、測定時運動誤差成分と推定する。
(2)該推定された運動誤差成分の形状に最も近づくように、該校正値信号の周波数ないし振幅を調節したものを、該測定値信号から減算することをいう。
【0007】
なお、本発明においては、前記運動誤差成分除去工程が、適応ノイズキャンセラにより、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から前記運動誤差成分を適応的に除去することが特に好適である。
本発明の適応ノイズキャンセラとしては、例えば特開平5−191882号公報等に記載のものを用いることができる。
【0008】
<熱雑音成分除去>
また、本発明においては、熱雑音成分除去工程を備えることが好適である。
ここで、前記熱雑音成分除去工程は、前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号に含まれる成分のうち、熱雑音成分を適応的に除去する。
本発明においては、前記熱雑音成分除去工程が、適応ラインエンハンサにより、前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号から、前記熱雑音成分を適応的に除去することが特に好適である。
本発明の適応ラインエンハンサとしては、例えば特開2006−266758号公報等に記載のものを用いることができる。
【0009】
<真直度>
本発明において、前記運動誤差は、形状測定機の測定軸の真直度であることが特に好適である。
<形状成分>
本発明においては、形状成分除去工程と、形状成分回復工程と、を備えることが特に好適である。
【0010】
ここで、前記形状成分除去工程は、前記運動誤差成分除去工程の前段に設けられ、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながらワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該ワーク形状成分を除去する。
また、前記形状成分回復工程は、前記誤差成分の除去された測定値信号から補正値を得る前に、該誤差成分の除去された測定値信号において、前記形状成分除去工程で除去されたワーク形状成分を回復する。
【0011】
誤差補正装置
また、前記目的を達成するために本発明にかかる誤差補正装置は、予め形状既知の基準ワークを測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器で測定ワークを形状測定して得られた測定値信号から、運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する運動誤差補正装置において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
運動誤差成分除去手段を備えることを特徴とする。
ここで、前記運動誤差成分除去手段は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する。
【0012】
誤差補正プログラム
また、前記目的を達成するために本発明にかかる誤差補正プログラムは、コンピュータに運動誤差成分除去工程を実行させ、予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器でワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去させるための誤差補正プログラムにおいて、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記運動誤差成分除去工程は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
誤差補正方法
本発明にかかる誤差補正方法によれば、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から運動誤差成分を適応的に除去する運動誤差成分除去工程を備えることとしたので、運動誤差補正を高精度に行うことができる。
本発明においては、前記運動誤差成分除去工程が、適応ノイズフィルタにより、校正値信号を用いて測定値信号から運動誤差成分の除去を適応的に行うことにより、前記運動誤差補正を、より高精度に行うことができる。
【0014】
本発明においては、さらに、前記測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去する熱雑音成分除去工程を組合せることにより、より高精度に、前記補正を行うことができる。
本発明においては、前記熱雑音成分除去工程が、適応ラインエンハンサにより、前記測定値信号から熱雑音成分の除去を適応的に行うことにより、前記補正を、より高精度に行うことができる。
本発明においては、前記運動誤差が真直度であることにより、真直度補正を高精度に行うことができる。
本発明においては、前記形状成分除去工程と前記形状成分回復工程とを備えることにより、前記補正を、より高精度に行うことができる。
【0015】
誤差補正装置
また、本発明にかかる誤差補正装置によれば、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から運動誤差成分を適応的に除去する運動誤差成分除去手段を備えることとしたので、運動誤差補正の高精度化を図ることができる。
誤差補正プログラム
また、本発明にかかる誤差補正プログラムによれば、コンピュータに前記運動誤差成分除去工程を実行させることとしたので、運動誤差補正の高精度化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかる誤差補正装置の概略構成が示されている。
なお、本実施形態では、運動誤差として、輪郭形状測定機の測定軸の真直度に起因する測定誤差を適応的に補正する例について説明する。
同図に示す真直度補正装置(誤差補正装置)10は、コンピュータよりなり、真直度成分除去手段(運動誤差成分除去手段)12と、熱雑音成分除去手段14と、記憶手段16とを備える。真直度成分除去手段12及び熱雑音成分除去手段14は、縦続接続されている。
【0017】
真直度成分除去手段12は、真直度成分除去工程(S10)を行う。すなわち、真直度成分除去手段12は、予め得ておいた校正値信号(参照信号)を用いて、測定値信号に含まれる成分のうち校正値信号と最も形状相関の高い成分を、真直度成分(運動誤差成分)として適応的に除去する。
なお、本実施形態では、信号を周波数領域に変換して処理をすることも可能であるが、形状(時間・空間領域)のままで処理することが、特に好ましい。すなわち、これにより、測定値信号に含まれる運動誤差成分の周波数ないし振幅が時間と共に変化(変動)しても、その変化に適宜追従して、真直度成分の推定及び除去が、より適切に行えるからである。
熱雑音成分除去手段14は、熱雑音成分除去工程(S12)を行う。すなわち、熱雑音成分除去手段14は、真直度成分除去工程(S10)後の測定値信号に含まれる成分のうち、熱雑音成分を適応的に除去する。
【0018】
また、同図に示す真直度補正装置10は、さらに、校正値信号取得手段20と、測定値信号取得手段22とを備える。
ここで、校正値信号取得手段20は、校正値信号取得工程(S14)を行う。すなわち、校正値信号取得手段20は、校正時、X軸駆動部24により、スタイラスアーム(運動部)26をX軸方向に移動することにより、輪郭形状測定機28のテーブル(固定部)30上に置かれた基準ワーク(オプティカルフラット)32上のスタイラス34によるトレース位置を移動しながら、基準ワーク32の輪郭形状を測定した際の、検出器36の出力信号から、該基準ワーク32の基準形状成分を除去し、校正値信号を得ている。
【0019】
また、測定値信号取得手段22は、測定値信号取得工程(S16)を行う。測定値信号取得手段22は、形状成分除去手段38を含む。形状成分除去手段38は、形状成分除去工程(S18)を行う。すなわち、測定値信号取得手段22は、前記校正時より時間が経過した測定時、X軸駆動部24によりスタイラスアーム26をX軸方向に移動することにより、輪郭形状測定機28のテーブル30上に置かれた測定ワーク40上のスタイラス34によるトレース位置を移動しながら、測定ワーク40の輪郭形状を測定した際の、検出器36の出力信号から、該測定ワーク40の形状成分を除去し、測定値信号を得ている。
【0020】
また、同図に示す真直度補正装置10は、さらに、形状成分回復手段42を備える。
ここで、形状成分回復手段42は、形状成分回復工程(S20)を行う。すなわち、形状成分回復手段42は、誤差成分の除去された測定値信号から補正値信号(補正値)を得る前に、該誤差成分の除去された測定値信号において、形状成分除去手段38で除去したワーク形状成分を、回復する。
記憶手段16は、真直度補正プログラム(誤差補正プログラム)50を記憶している。本実施形態においては、真直度補正プログラム50により、真直度補正装置(コンピュータ)10を、校正値信号取得手段20、測定値信号取得手段22、真直度成分除去手段12、熱雑音成分除去手段14、形状成分除去手段38及び形状成分回復手段42として機能させている。
【0021】
本実施形態にかかる真直度補正装置10は概略以上のように構成され、以下にその作用について説明する。
本実施形態においては、前記各手段を有するので、予め得ておいた校正値信号を用いて、測定値信号に含まれる成分のうち該校正値信号と最も強い形状相関を持つ成分を真直度成分として適応的に除去し、その後、残存する熱雑音成分を適応的に除去することができる。
すなわち、本実施形態においては、真直度成分除去手段12により、予め校正時に得ておいた校正値信号を利用して測定値信号から真直度成分を適応的に除去することができる。
また、本実施形態においては、熱雑音成分除去手段14により、真直度成分除去後の測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去することができる。
【0022】
このように本実施形態にかかる真直度補正装置10によれば、校正値信号を用いて測定値信号から真直度成分を適応的に除去する真直度成分除去手段12と、真直度成分の除去された測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去する熱雑音成分除去手段14と、を備えることとした。
この結果、本実施形態においては、測定値信号に含まれる真直度成分の周波数ないし振幅が時間と共に変化しても、その変化に適宜追従した真直度成分除去を行うことができるので、輪郭形状測定機20の測定軸の真直度補正を、より高精度に行うことができる。
また、本実施形態においては、真直度成分除去と、従来、補正の対象としてこなかった熱雑音成分除去とを組合せることで、より高精度な補正を実現することができる。
本実施形態においては、真直度成分除去手段12と熱雑音成分除去手段14とを縦続接続することで、前記補正の相乗効果を得ることができる。
【0023】
更なる高精度化
ところで、本実施形態においては、前記補正を、より高精度に行うためには、具体的な補正手段の選択も非常に重要である。このために本実施形態においては、形状測定機の測定軸の真直度補正を、より高精度に行うため、数ある補正手段の中から、図2に示されるような補正手段を選択している。
すなわち、同図においては、真直度成分除去工程として、適応ノイズキャンセラ60により、校正値信号を用いて測定値信号から真直度成分を適応的に除去している。このために適応ノイズキャンセラ60は、演算手段62と、FIRフィルタ(適応フィルタ)64と、係数修正アルゴリズム66と、を含む。
【0024】
また、熱雑音成分除去工程として、適応ラインエンハンサ70により、真直度成分の除去された測定値信号から熱雑音成分を適応的に除去している。このために適応ラインエンハンサ70は、演算手段72と、FIRフィルタ(適応フィルタ)74と、係数修正アルゴリズム76と、遅延回路78と、を含む。
このように本実施形態においては、真直度成分除去手段12及び熱雑音成分除去手段14として、数ある補正手段の中から、高精度な補正処理及び構成の簡単化の両立を目的として、適応ノイズキャンセラ60と適応ラインエンハンサ70との縦続接続という手段を選択することで、他のものを用いたものに比較し、輪郭形状測定機において、より高精度かつ簡単に真直度補正を行うことができる。
【0025】
ところで、従来方式の真直度補正処理では、基準ワークを使った校正測定により、事前に校正値を取得しておき、測定時に、測定値から校正時に予め得ておいた校正値をそのまま引き算していた。すなわち、従来方式の真直度補正では、未知経路の特性が、校正時と測定時とで変化しないことを前提としていた。
しかしながら、現実の測定においては、測定機の繰り返し精度や基準ワークの材質とは異なるワークを測定するなど、様々な要因により、測定値信号に含まれる真直度成分が、基準ワークを測定して得られた校正値と常に同じである保障はなく、校正時と測定時との環境の変化による誤差が生じることがある。
【0026】
ここで、校正時と測定時との環境の変化による誤差を低減するため、測定ワークを測定する際に、真直度成分も同時に計測したのでは、以下の不具合がある。
すなわち、輪郭形状測定機は、一つの検出器しか持たないため、真直度成分の同時計測は難しい。真直度成分を同時計測するために別途、検出器を設けたのでは、構成が複雑化してしまうので、解決手段として採用するに至らなかった。
これに対し、本実施形態においては、基準ワークの形状が既知であるので、基準ワークを使った測定によって得られた校正値信号は、未知経路を通過したノイズを取得していることと等価であることに着目した。
【0027】
そして、本実施形態においては、オプティカルフラットの理想平面形状(既知形状)を校正時の検出器の出力信号から差し引いた校正値信号を近似的にノイズ成分として扱い、図3に示されるような適応ノイズキャンセラ60により、真直度成分を適応的に補正することができるので、より高精度な補正処理が行える。
すなわち、同図において、未知経路の特性が、校正時と測定時とで変化し、測定値信号に含まれる真直度校正値(真直度成分)が変化しても、適応フィルタ64の特性を適応的に変えることにより、真直度校正値(真直度成分)の変化に確実に追従することができるので、より真値に近い真直度補正値が得られる。
【0028】
<低周波成分の除去、回復>
前記真直度成分除去を、より適切に行うためには、ワーク形状成分の除去及び回復が非常に重要である。
すなわち、本実施形態では、原則として定常値を仮定しているので、図4に示すように測定値信号から低周波成分(トレンド成分)であるワーク形状成分を事前に除去しておくことが非常に重要である。
【0029】
すなわち、本実施形態においては、設計値が既知の高精度なワークにおいて、設計値との照合後の誤差値を対象としている。
ただし、設計値が未知な場合などであっても、何らかの方法でトレンド成分を除去するなどして、定常値とみなせる状態にしておくことができれば、設計値が未知の高精度なワークにも適応可能である。
実際の処理手順としては、図5に示すように、トレント成分に係わる前処理と、必要に応じてトレント成分に係わる後処理とが必要となる。
【0030】
すなわち、同図(A)に示されるように設計値を利用の場合は、前記形状成分除去工程(S18)として、設計値とのベストフィット工程(S22)と、設計値成分の除去工程(S24)とを含むことが好ましい。
そして、同図(A)では、設計値とのベストフィット(S22)及び設計値成分の除去工程(S24)の完了後に、真直度成分除去工程(S10)及び熱雑音成分除去工程(S12)を行う。さらに、その後、設計値成分の回復工程(形状成分回復工程(S20))を行っている。
【0031】
また、同図(B)に示されるように設計値を利用しない場合は、前記形状成分除去工程(S18)として、トレンド成分の推定工程(S26)及びトレンド成分の除去工程(S28)を含むことが好ましい。
そして、同図(B)では、トレンド成分の推定工程(S26)及びトレンド成分の除去工程(S28)の完了後に、真直度成分除去工程(S10)及び熱雑音成分除去工程(S12)を行う。さらに、その後、トレンド成分の回復工程(形状成分回復工程(S20))を行っている。
【0032】
このように本実施形態では、トレンド成分を含んだ値を直接に処理することができないが、同図に示されるように、真直度成分除去工程(S10)及び熱雑音成分除去工程(S12)の前後に、形状成分除去工程(S18)及び形状成分回復工程(S20)を入れることにより、前記真直度成分除去工程(S10)及び前記熱雑音成分除去工程(S12)を、より適切に行うことができるので、前記補正の更なる高精度化を図ることができる。
【0033】
<熱雑音成分除去>
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るためには、従来、補正の対象としてこなかった熱雑音成分の低減も非常に重要である。
すなわち、前記真直度成分除去により、高精度の補正処理が実現すると、理想的には、運動誤差補正後の測定値信号に残る成分としては、ワークの表面性状(表面粗さやうねり)成分と熱雑音成分となる。
本実施形態では、従来、補正の対象としてこなかった熱雑音成分を低減することにより、ワークの表面性状を感度良く測定することができる。
【0034】
ここで、複数回の測定を繰り返し、その平均をとるようにすると、積算の効果により、繰り返し回数を増やすにつれて熱雑音は減少していく。しかしながら、測定を繰り返し行うことは、測定時間の増加に直結するため、特にピボット式スタイラスを使った接触式の形状測定機には得策ではない。
そこで、本実施形態では、図6に示されるような適応ラインエンハンサ70により、熱雑音成分を適応的に除去している。同図に示す適応ラインエンハンサ70は、測定値信号に含まれる成分のうち、表面性状成分は自分自身と相関があるが、熱雑音成分とは相関がないという自己相関の特性を利用し、適応フィルタのフィルタ係数(フィルタ特性)を、測定時、校正時からの環境変化に対して適応的に変化させることができるので、測定値信号から熱雑音成分を確実に除去することができる。
【0035】
<適応フィルタ>
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るためには、適応フィルタの構成の選択も非常に重要である。
以下、前記適応フィルタについて、より具体的に説明する。
本実施形態においては、適応フィルタ64,74しては、フィルタ特性の安定性に優れた、図7に示されるようなFIRフィルタを選択することが非常に好ましい。
【0036】
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るためには、適応フィルタ64,74により適応値処理を行う際の、フィルタ係数更新のアルゴリズムの選択も非常に重要である。
そこで、本実施形態では、補正の更なる高精度化を図るため、フィルタ係数更新の数あるアルゴリズムの中から、逐次最小二乗(RLS)アルゴリズムを採用している。
すなわち、最小平均二乗(LMS)アルゴリズムが、瞬間値に基づいて係数更新を行うのに対して、RLS法は、ある時刻までの測定値信号に基づく係数更新を行うため、異常値に対する感度を低く抑えられる。また、RLS法は、収束特性の観点からもRLS法が有利である。
このように本実施形態においては、逐次最小二乗(RLS)アルゴリズムを用いて、ある時刻までの測定値に基づいて、適応フィルタ64,74の、フィルタ係数更新を行うので、補正の更なる高精度化を図ることができる。
【0037】
<初期化処理>
本実施形態においては、補正の更なる高精度化を図るため、前記適応フィルタ64,74においてフィルタ係数の初期化処理を行うことも非常に重要である。
すなわち、フィルタ係数の更新にあたっては、初期値が必要である。通常、係数の初期値はwi=0(i=0,1,…,p−1)と置くため、フィルタ係数の更新が十分収束するまでの間の不定区間が生じる。
これに対し、本実施形態では、必ずしも測定時のサンプルリングと同期させる必要がないことを利用し、ある程度以上のサンプル数の入力値をバッファリングしておく。その上で、測定値信号の処理を開始する。この係数値を初期値として採用すると、事実上、収束した状態から値の変化に応じた係数更新が可能になるため、値開始位置での不定状態をなくすことができる。
【0038】
以上、本実施形態にかかる真直度補正装置によれば、校正時と測定時との環境変化を考慮して真直度補正処理を行っているので、従来方式、つまり校正時と測定時との環境の変化に対する考慮が一切なく、測定値から校正時の校正値をそのまま引き算しただけのものに比較し、より高精度に、真直度補正を行うことができる。
【0039】
実験
図8〜図13には、本実施形態にかかる環境変化を考慮した真直度補正を用いた場合と、従来の環境変化を考慮しない真直度補正を用いた場合の比較結果が示されている。
本実験では、形状測定機で、オプティカルフラット及びゲージブロックを測定した。
なお、本実験において、形状測定機で測定されたオプティカルフラットデータ及びゲージブロックデータは、機器側のX軸運動精度(ガイド機構)改良の途中段階で得られた値である。オリジナルの値に含まれているトレンド成分(形状成分)については、事前に除去しておいた。
従来方式では、測定時の測定値から、校正時に得ておいた校正値をそのまま引き算し、補正値を得た。
いずれの値も同一ワークの同一箇所を複数回に渡って測定しており、そのうちの1回を校正測定と考え、その他の回を実測定と考えている。このため、補正後の値がすべてゼロとなるのが理想的な補正状態である。
【0040】
<真直度補正>
以下に、本実施形態にかかる適応ノイズキャンセラによる真直度成分除去、及び従来方式の真直度成分除去を用いた場合の、補正結果を図8に示す。
同図では、形状測定機でゲージブロックを測定した。同図(A)は校正値、同図(B)は測定値、同図(C)は従来方式を用いた場合、同図(D)は本実施形態にかかる適応ノイズキャンセラ(FIRフィルタのタップ数は3)を用いた場合である。
従来方式を示す同図(C)では、誤差波形に周期性が見られるのに対し、本実施形態を示す同図(D)ではランダムな挙動を示している。これは、熱雑音成分除去を適応ノイズキャンセラの後段に考えたとき、本実施形態の適応ノイズキャンセラ出力波形は、従来方式の出力波形に比べ、さらに誤差量を小さくすることができることを示している。
【0041】
<熱雑音成分除去>
図9に、本実施形態にかかる適応ノイズキャンセラ出力を用いた場合、及び従来方式の補正値を用いた場合の、熱雑音成分除去処理の結果を示す。
同図では、形状測定機でゲージブロックを測定した。同図(A)は従来方式で得られた補正値を適応ラインエンハンサ入力とした場合、同図(B)は本実施形態の適応ノイズキャンセラ出力を適応ラインエンハンサ入力とした場合の、適応ラインエンハンサの出力である。
同図では、適応ラインエンハンサに搭載したFIRフィルタのタップ数を3、遅延回路の遅延素子数を2とした。
同図(B)に示されるように本実施形態は、適応ノイズキャンセラの後段に熱雑音成分除去を配置することで、従来方式を示す同図(A)に比較し、適応ノイズキャンセラの補正効果を、より有効に引き出すことができることがわかる。
【0042】
<適応フィルタ係数の初期化>
次に、適応フィルタ係数の初期化処理の効果を図10に示す。
同図では、形状測定機でオプティカルフラットを測定した。同図(A)はフィルタ係数の事前最適化処理なしの場合の結果、同図(B)は本実施形態においてフィルタ係数の事前最適化処理ありの場合の結果である。
同図(A)より明らかなように、フィルタのタップ数は3と少ないにもかかわらず、係数の初期化に特別の処理を行わずに初期値をwi=0(i=0,1,…,p−1)と置いた場合には、処理開始位置で不十分な収束部分が発生する。一方、同図(B)に示されるように本実施形態の初期化処理を導入した場合、処理開始位置から、安定した結果が得られることがわかる。
【0043】
<ゲイン変化に対する追従性>
図11には、測定時のゲインが校正時の2倍になったと仮定した場合のシミュレーション結果が示されている。同図(A)は従来方式の真直度補正を用いた場合、同図(B)は本実施形態の適応ノイズキャンセラを用いた場合である。
従来方式を示す同図(A)では、ゲインの差に応じた誤差成分が現われているのに対し、本実施形態の適応ノイズキャンセラを示す同図(B)では、ゲインの変化に追従した補正処理が行われていることがわかる。
【0044】
<位置ズレに対する追従性>
(1)適応ノイズキャンセラ
図12には位置ズレに対する適応ノイズキャンセラの追従性の結果が示されている。
同図(A)は従来方式を用いた場合、同図(B)は本実施形態においてタップ数3の適応ノイズキャンセラを用いた場合、同図(C)は本実施形態においてタップ数10の適応ノイズキャンセラを用いた場合の結果である。
同図において、測定時の位置決めは250μmずれたと仮定した。サンプリングピッチは25μmとした。
本実験では、サンプリングピッチ25μmで測定が行われているため、位置決めの250μmのずれは、適応ノイズキャンセラのフィルタタップ数では10に相当する。本実施形態においてタップ数3の適応ノイズキャンセラを示す同図(B)では、このズレ量に十分に追従できないが、本実施形態においてタップ数10の適応ノイズキャンセラを示す同図(C)では、このズレ量に追従できるようになる。
【0045】
(2)適応ラインエンハンサ
図13には、位置ズレに対する補正値に適応ラインエンハンサ処理を行った結果が示されている。同図(A)は従来方式で得られた補正値に対して、適応ラインエンハンサ処理をした場合、同図(B)は本実施形態の適応ノイズキャンセラ(タップ数10)によって得られた補正値に対して、適応ラインエンハンサ処理をした場合である。
同図では、測定時の位置決めは250μmずれたと仮定した。サンプリングピッチは25μmとした。適応ラインエンハンサの遅延素子数は2、フィルタタップ数は3とした。
本実施形態を示す同図(B)によれば、従来方式を示す同図(A)に比較し、適応ノイズキャンセラによる優れた補正効果が確認された。
【0046】
<各手段の配置>
なお、本実施形態では、図2に示されるように、適応ラインエンハンサ70を、適応ノイズキャンセラ60の後段に配置することが特に好ましいが、図14に示されるような配置も可能である。
すなわち、同図(A)では、適応ラインエンハンサ70を、適応ノイズキャンセラ60の前段に配置している。そして、校正値信号及び測定値信号を適応ラインエンハンサ処理し、事前に熱雑音を除去している。
また、同図(B)では、適応ラインエンハンサ70を、適応ノイズキャンセラ60の前段及び後段に配置している。そして、校正値信号を適応ラインエンハンサ処理し、事前に熱雑音を除去している。
【0047】
このように信号の性質によっては、校正値信号ないし測定値信号を適応ラインエンハンサ処理し事前に熱雑音を除去する方が効果的な場合や、適応ラインエンハンサではなくマッチドフィルタを使うことで誤差に対処することができる場合がある。このため、本実施形態では、信号の性質に応じて最適な校正が行えるように、適応ラインエンハンサ及び適応ノイズキャンセラの配置を選択することも可能である。
また、本発明は、輪郭形状測定機の測定軸の真直度補正への適用が特に好ましいが、運動誤差の補正が必要なものであれば、他の形状測定機や運動誤差への適用も可能である。
【0048】
<測定装置>
本発明は、例えば、真円度測定機の直動機構の直線運動の真直度、長さや角度等の精密測定機の測定軸の真直度誤差補正等への適用も可能である。
<運動誤差>
例えば、輪郭形状測定機のピボット式スタイラスの円弧運動誤差等への適用も可能である。また、載物台回転形真円度測定機の載物台の回転運動誤差、検出器回転型真円度測定機の検出器回転機構の回転運動誤差への適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態にかかる真直度補正装置の概略構成の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態において特徴的な真直度成分除去手段、及び熱雑音成分除去手段の具体的構成である。
【図3】本発明の一実施形態において特徴的な真直度成分除去手段の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態において形状成分除去工程の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる真直度補正方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態において特徴的な熱雑音成分除去手段の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態において特徴的な適応フィルタの説明図である。
【図8】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の補正結果の比較説明図である。
【図9】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、適応ラインエンハンサ出力の比較説明図である。
【図10】本発明の一実施形態において、フィルタ係数の事前最適化処理ありの場合及び該フィルタ係数の事前最適化処理なしの場合の、補正結果の比較説明図である。
【図11】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、ゲイン変化に対する追従性の結果の比較説明図である。
【図12】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、位置ズレに対する追従性の比較説明図である。
【図13】本発明の一実施形態を用いた場合及び従来方式を用いた場合の、位置ズレに対する補正値に対して適応ラインエンハンサ処理を行った結果の比較説明図である。
【図14】本発明の一実施形態において特徴的な真直度成分除去手段及び熱雑音成分除去手段の配置の変形例である。
【符号の説明】
【0050】
10 真直度補正装置(誤差補正装置)
12 真直度成分除去手段(運動誤差成分除去手段)
14 熱雑音成分除去手段
20 校正値信号取得手段
22 測定値信号取得手段
24 X軸駆動部
26 スタイラスアーム(運動部)
28 輪郭形状測定機(形状測定機)
30 テーブル(固定部)
34 スタイラス
36 検出器
38 形状成分除去手段
42 形状成分回復手段
50 真直度補正プログラム(誤差補正プログラム)
60 適応ノイズキャンセラ
70 適応ラインエンハンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器で測定ワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する誤差補正方法において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら、形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら、前記測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する運動誤差成分除去工程を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【請求項2】
請求項1記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差成分除去工程は、適応ノイズキャンセラにより、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から前記運動誤差成分を適応的に除去することを特徴とする誤差補正方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号に含まれる成分のうち、熱雑音成分を除去する熱雑音成分除去工程を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【請求項4】
請求項3記載の誤差補正方法において、
前記熱雑音成分除去工程は、適応ラインエンハンサにより、前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号から前記熱雑音成分を適応的に除去することを特徴とする誤差補正方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差は、形状測定機の測定軸の真直度であることを特徴とする誤差補正方法。
【請求項6】
請求項5記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差成分除去工程の前段に設けられ、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながらワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該ワーク形状成分を除去する形状成分除去工程と、
前記誤差成分の除去された測定値信号から補正値を得る前に、該誤差成分の除去された測定値信号において、前記形状成分除去工程で除去されたワーク形状成分を回復する形状成分回復工程と、
を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【請求項7】
予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器でワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する誤差補正装置において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する運動誤差成分除去手段を備えたことを特徴とする誤差補正装置。
【請求項8】
コンピュータに運動誤差成分除去工程を実行させ、予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器でワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去させるための誤差補正プログラムであって、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記運動誤差成分除去工程は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を適応的に運動誤差成分として除去することを特徴とする誤差補正プログラム。
【請求項1】
予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器で測定ワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する誤差補正方法において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら、形状既知の基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら、前記測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する運動誤差成分除去工程を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【請求項2】
請求項1記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差成分除去工程は、適応ノイズキャンセラにより、前記校正値信号を用いて前記測定値信号から前記運動誤差成分を適応的に除去することを特徴とする誤差補正方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号に含まれる成分のうち、熱雑音成分を除去する熱雑音成分除去工程を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【請求項4】
請求項3記載の誤差補正方法において、
前記熱雑音成分除去工程は、適応ラインエンハンサにより、前記運動誤差成分除去工程後の測定値信号から前記熱雑音成分を適応的に除去することを特徴とする誤差補正方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差は、形状測定機の測定軸の真直度であることを特徴とする誤差補正方法。
【請求項6】
請求項5記載の誤差補正方法において、
前記運動誤差成分除去工程の前段に設けられ、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながらワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該ワーク形状成分を除去する形状成分除去工程と、
前記誤差成分の除去された測定値信号から補正値を得る前に、該誤差成分の除去された測定値信号において、前記形状成分除去工程で除去されたワーク形状成分を回復する形状成分回復工程と、
を備えたことを特徴とする誤差補正方法。
【請求項7】
予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器でワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去する誤差補正装置において、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を運動誤差成分として適応的に除去する運動誤差成分除去手段を備えたことを特徴とする誤差補正装置。
【請求項8】
コンピュータに運動誤差成分除去工程を実行させ、予め形状既知の基準ワークを形状測定して得ておいた校正値信号を用いて、固定部に対し運動部を相対運動しながら検出器でワークを形状測定して得られた測定値信号から、該運動部の運動誤差に起因する測定誤差を除去させるための誤差補正プログラムであって、
前記校正値信号は、校正時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記基準ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該基準ワークの形状成分を除去したものであり、
前記測定値信号は、前記校正時より時間が経過した測定時、前記固定部に対し前記運動部を相対運動しながら前記測定ワークを形状測定した際の前記検出器の出力信号から、該測定ワークの形状成分を除去したものであり、
前記運動誤差成分除去工程は、前記校正値信号を用いて、前記測定値信号に含まれる成分のうち前記校正値信号と最も形状相関の高い成分を適応的に運動誤差成分として除去することを特徴とする誤差補正プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−2889(P2009−2889A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166070(P2007−166070)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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