説明

調光フィルム

【課題】電位を制御することによって、容易に発色及び消色を制御可能、且つ、加工可能なエレクトロクロミック素子を用いた調光フィルムを提供する。
【解決手段】調光フィルムを、ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロクロミック素子を用いた調光フィルムに関する。より詳細には、本発明は、電位を制御することによって容易に発色及び消色が制御可能なエレクトロクロミック素子を有し、窓ガラス、各種平面表示素子、各種液晶表示素子の代替品、光シャッター、広告及び案内表示板、眼鏡、サングラス等に好適に用いられる調光フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック特性を有する材料を利用した調光素子、表示素子等の光学デバイスの研究が盛んに行われている。このような材料には、酸化タングステンに代表される無機材料、ビオロゲンに代表される有機材料、導電性高分子材料等がある。
【0003】
これらの材料を調光素子、表示素子等の光学デバイスに適用する場合、これら材料が発色と消色とを容易に切り替え可能であることが望ましい。しかしながら、無機材料及び有機材料では、良好な消色(透明性)は得られるものの、発色が悪い。一方、導電性高分子材料では、良好な発色は得られるものの、消色(透明性)は悪い。これは、導電性高分子材料の導電性がπ電子共役系によるためである。すなわち、ノンドープの導電性高分子材料は、光吸収が強く、高分子自身が濃い黄色、赤色、緑色、藍色等の色を有しているためである。
【0004】
このような消色の問題を解決した導電性高分子材料を利用したエレクトロクロミック表示素子の技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術は、第1の透明電極と、第1の透明電極に接して設けられたグラフト導電性高分子層と、グラフト導電性高分子層に接触する電解質層と、第1の透明電極との間にグラフト導電性高分子層と電解質層とを挟んでなる第2の電極とを有するエレクトロクロミック表示素子を開示している。グラフト導電性高分子層は、主鎖である導電性高分子材料と共役系分子ペンダントとを金属又は金属イオンを介して結合することによって形成されている。
【0005】
上記共役系分子ペンダントによって、導電性高分子材料は、固有のπ電子の結合状態を変化させるか、又は、π−π遷移エネルギーを変化させる。それにより、導電性高分子材料による光吸収領域が短波長側又は長波長側に移動し、可視光領域での光吸収が目立たなくなる程度に抑制される。その結果、導電性高分子材料が透明になり得る。
特許文献1に記載のグラフト導電性高分子層は、モノマーを電解重合させることによって合成される。このようなグラフト導電性高分子層は、いったん合成されると再度加工することが困難であるといった問題がある。
【0006】
一方、再加工が容易なエレクトロミック素子として、ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む高分子材料が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の技術は、配位性を有するビス(ターピリジン)誘導体が金属イオンと錯形成することで、有機−無機ハイブリッドポリマーを形成し、発色及び消色の制御が可能であると開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−20928号公報
【特許文献2】特開2007−112957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、特許文献1に記載のグラフト導電性高分子層は、いったん合成されると再度加工することが困難であるといった問題がある。成形性の点から、再加工の容易なエレクトロクロミック高分子材料が望まれている。
特許文献2に記載の高分子材料は、発色及び消色の制御は可能であるが、電解質溶液中のみで駆動するため、固体デバイス化が難しく、薄膜デバイス化の実用向きではない。成形性、接着性、加工性等の点から、薄膜であるフィルム形状が望まれている。
従って、本発明の目的は、電位を制御することによって、容易に発色及び消色を制御可能、且つ再加工可能な調光フィルムを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、電位を制御することによって容易に複数の発色及び消色を制御可能、且つ再加工可能な調光フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の高分子材料及び固体電解質を組み合わせることで上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、下記<1>〜<17>に示すとおりである。
<1>ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された調光フィルム。
【化1】

(式中、Mは前記金属イオンであり、Rは、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びRは、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、nは重合度を表す2以上の整数である。)
<2>ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーを含む層、及び、固体電解質を含む層を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された調光フィルム。
【化2】

(式中、Mは前記金属イオンであり、Rは、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びRは、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、nは重合度を表す2以上の整数である。)
<3>前記固体電解質が、前記有機−無機ハイブリッドポリマーと非相溶の有機溶剤及び高分子を用いたゲル電解質である上記<1>又は<2>に記載の調光フィルム。
<4>前記固体電解質が500nm以上に特性吸収を持たない、上記<1>〜<3>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<5>前記金属イオンが、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される、上記<1>〜<4>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<6>前記カウンターアニオンが、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記<1>〜<5>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<7>前記スペーサが、アリール基又はアルキル基である、上記<1>〜<6>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<8>前記アリール基又はアルキル基が、酸素原子又は硫黄原子をさらに含む、上記<7>に記載の調光フィルム。
<9>前記アリール基が、下記式(2)〜式(5)からなる群から選択される、上記<7>又は<8>に記載の調光フィルム。
【化3】

<10>ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(6)で表される、少なくとも2種以上の第1〜第N(Nは2以上の整数)の有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された調光フィルム。
【化4】

(式中、M〜M(Nは2以上の整数)は、それぞれ異なる第1〜第Nの金属イオンであり、R〜R(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びR(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、n(Nは2以上の整数)はそれぞれ重合度を表す2以上の整数である。)
<11>前記固体電解質が、前記有機−無機ハイブリッドポリマーと非相溶の有機溶剤及び高分子を用いたゲル電解質である上記<10>に記載の調光フィルム。
<12>前記固体電解質が、500nm以上に特性吸収を持たない、上記<10>又は<11>に記載の調光フィルム。
<13>前記第1〜第Nの金属イオンが、それぞれ、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される、上記<10>〜<12>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<14>前記第1〜第Nのカウンターアニオンが、それぞれ、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記<10>〜<13>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<15>前記R〜Rのスペーサが、それぞれ、アリール基又はアルキル基である、上記<10>〜<14>のいずれか一つに記載の調光フィルム。
<16>前記アリール基又はアルキル基が、酸素原子又は硫黄原子をさらに含む、上記<15>に記載の調光フィルム。
<17>前記アリール基が、下記式(2)〜式(5)からなる群から選択される、上記<15>又は<16>に記載の調光フィルム。
【化5】

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コントラストが高く、電界の印加/未印加への応答性に優れ、安定した調光機能を発揮する調光フィルムを得ることが可能である。
本発明によれば、電位を制御することによって、所望の色が得られる調光フィルムを提供することができる。また、本発明の調光フィルムは、再加工性が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の調光フィルムは、ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持されたことを特徴とする。
【化6】

(式中、Mは、前記金属イオンであり、Rは、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びRは、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、nは重合度を表す2以上の整数である。)
また、本発明の調光フィルムは、一つの実施の形態として、上記(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質とが同一層(以下、「エレクトロクロミック素子層」ともいう)に含有され、これがエレクトロクロミック素子として、二枚の透明導電性基板に挟持されたことを特徴とする。
他の実施の形態として、上記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーを含む層(以下、「調光層」ともいう)、及び、固体電解質を含む層(以下、「固体電解層」ともいう)を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持されたことを特徴とする。
さらに、他の実施の形態として、下記式(6)で表される、少なくとも2種以上の第1〜第N(Nは2以上の整数)の有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持されたことを特徴とする。なお、成型の容易性、省スペースの観点から、第1〜第N(Nは2以上の整数)の有機−無機ハイブリッドポリマーは、固体電解質と共に全てが一層に含有される構成が好ましいが、第1〜第N(Nは2以上の整数)の有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質とで別の層構成、あるいは第1〜第N(Nは2以上の整数)の個々の有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質とが、それぞれ別の層構成であっても構わない。
【化7】

(式中、M〜M(Nは2以上の整数)は、それぞれ異なる第1〜第Nの金属イオンであり、R〜R(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びR(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、n(Nは2以上の整数)はそれぞれ重合度を表す2以上の整数である。)
なお、上記式(6)には、第1〜第NのカウンターアニオンX〜Xを有する。
【0013】
本発明において、「有機−無機ハイブリッドポリマー」とは、上記式(1)又は式(7)で表される、ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む化合物である。配位性を有するビス(ターピリジン)誘導体と金属イオンとを錯形成させることで、ビス(ターピリジン)誘導体と金属イオンが交互に連結した状態(高分子錯体)を形成していると考えられる。
本発明における有機−無機ハイブリッドポリマーは、金属から配位子としてのビス(ターピリジン)誘導体への電荷移動吸収に基づき呈色を示す。従って、この有機−無機ハイブリッドポリマーを電気化学的に酸化すると発色が消える。また、この消色状態で電気化学的に還元すると発色状態に戻る。この現象は繰り返し起こすことが可能である。
「ビス(ターピリジン)誘導体」とは、下記式(7)に示すものである。
【化8】

【0014】
上記式(7)中、前記Rは2つのターピリジル基を接続するためのスペーサであり、上記式(1)又は上記式(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーにおけるピリジル基の角度を任意に設定でき、有機−無機ハイブリッドポリマーの材料設計が可能となる。そのようなR(上記式(6)においては、R〜R(Nは2以上の整数))として具体的には、2つのターピリジル基が直接接続されたものでもよいが、炭素原子及び水素原子を含む二価の有機基、例えば、下記式(2)〜(5)で表される二価のアリール基が好ましいスペーサとして例示できる。
【化9】

これらにより、金属イオンに配する配位子となる、ターピリジル基が明確で剛直な骨格となるので、上記式(1)又は上記式(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーを、良好な薄膜とすることができる。
また、スペーサには、酸素原子又は硫黄原子をさらに含んでもよい。酸素原子及び硫黄原子は、修飾能を有するので、有機−無機ハイブリッドポリマーの材料設計に有利である。
【0015】
前記R、R、R及びR、またR、R、R及びR(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、アリール基又はアルキル基である。具体的には、例えば、アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トルイル基等が例示でき、これらはメチル基、エチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、及び、塩素、臭素等のハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、C1〜C6等のアルキル基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が例示でき、これらはメチル基、エチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、及び、塩素、臭素等のハロゲン基等の置換基を有していても良い。
ビス(ターピリジン)誘導体として、ビス(ターピリジル)ベンゼン等が挙げられる。これらは、市販のものが利用でき、例えば、アルドリッチ社等から入手することができる。
【0016】
M、M〜M(Nは2以上の整数)の金属イオンとしては、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される。これらのイオンは、酸化還元反応によって価数を変化させることができるだけでなく、上記式(1)又は式(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーとなった場合に、個々の金属イオンで互いに異なる酸化還元電位を有する。
【0017】
X、Xのカウンターアニオンとしては、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレート、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される。カウンターアニオンによって、前記金属イオンの電荷が補償され、上記式(1)又は式(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーを電気的に中性にする。なお、上記式(6)で表されるXのカウンターアニオンは、全て同一、全て異なる、又は一部同一のいずれでもよい。
【0018】
本発明におけるエレクトロクロミック素子に用いられる固体電解質は、電解質を高分子に混合させたものであるが、本発明において固体電解質は、上記式(1)又は式(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーと非相溶の有機溶剤及び高分子を用いたゲル電解質であることが好ましい。本発明における有機−無機ハイブリッドポリマーは水溶性であることから、固体電解質を該有機−無機ハイブリッドポリマーと非相溶の有機溶剤及び高分子を用いたゲル電解質とすることで、固体デバイス化した際に、有機−無機ハイブリッドポリマーがデバイス中で溶け出さないようにできる。
ゲル電解質に用いる電解質としては、有機溶剤に可溶でかつ充分な電気伝導率(0.2S/m以上)を有する化合物が好ましく、具体的には、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロ硫酸リチウム、六フッ化砒酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム等の過塩素酸アンモニウム類、六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラエチルアンモニウム、六フッ化リン酸テトラプロピルアンモニウム等の六フッ化リン酸アンモニウム類等が挙げられる。
また、電解質を溶解させる有機溶媒としては、有機溶媒の中でも毒性が比較的低いとされている、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル等が好ましく使用される。
電解質を分散させる高分子としては、上記の有機溶媒を加えることで溶解又は膨潤する(ゲル化する)透明度の高い高分子であることが好ましく、具体的には、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、ポリメタクリル酸フェニル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリカーボネート類等が挙げられる。
固体電解質を上記のゲル電解質の構成とすることにより、上記式(1)又は式(7)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーとの組み合わせは難しいと考えられていた固体電解質との併用が可能となり、固体デバイス化することができる。
なお、本発明において、上記固体電解質中の電解質と高分子の配合は、質量比で1:1程度とすることが好ましい。
また、本発明において固体電解質は、500nm以上に特性吸収を持たないことが好ましい。これにより調光フィルムが発色していない状態で良好な透明性を確保できる。
【0019】
本発明によるエレクトロクロミック素子を利用して調光フィルムを製造するときに使用される透明導電性基板としては、一般的に、光透過率が80%以上の透明導電膜(ITO、SnO、In等の膜)がコーティングされている表面抵抗値が3〜600Ωの透明基板を使用することができる。
なお、透明基板の光透過率はJIS K7105の全光線透過率の測定法に準拠して測定することができる。また、透明基板としては、例えば、ガラス、高分子フィルム等を使用することができる。
【0020】
上記ガラスとしては、可視光線等に透明な基板を意味し、二酸化ケイ素を主成分とする一般的なガラスの他、種々の組成の無機材料のガラス、透明なアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機材料を用いた樹脂ガラスも用いることができる。
【0021】
上記高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系のフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の樹脂フィルムが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。
【0022】
透明導電膜の厚みは、10〜5,000nmであることが好ましく、透明基板の厚みは特に制限はない。例えば、ガラスの場合には、1〜15mmが好ましく、高分子フィルムの場合には10〜200μmが好ましい。基板の間隔が狭く、異物質の混入等により発生する段落現象を防止するために、透明導電膜の上に200〜1,000Å程度の厚さの透明絶縁層が形成されている基板を使用してもよい。また、反射型の調光窓の場合(例えば、自動車用リアビューミラー等)は、反射体であるアルミニウム、金、又は銀のような導電性金属の薄膜を電極として直接用いてもよい。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の調光フィルムに用いられるエレクトロクロミック特性を有する有機−無機ハイブリッドポリマーの一つの実施の形態の模式図を示す。本発明においては、有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質とを共存させて、調光フィルムに用いるエレクトロクロミック素子とする。
図1に示されるように、本発明における有機−無機ハイブリッドポリマー100は、配位子であるビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む繰り返し単位110が、複数個連結することで形成され、また連結形成された有機−無機ハイブリッドポリマー100は、電位の調整により、発色と消色を繰り返す。これらの反応は、電位の調整により可逆的であり、金属イオンの酸化還元反応に基づいた電荷移動吸収によるものである。
有機−無機ハイブリッドポリマー100の発色は、ポリマー内における金属から有機部位(ビス(ターピリジン)誘導体)への電荷移動吸収に基づいている。具体的には、有機−無機ハイブリッドポリマー100を電気化学的に酸化すると、発色が消え、この消色状態で電気化学的に還元すると発色状態に戻る。
なお、固体電解質は、有機−無機ハイブリッドポリマーと同一層に含有された構成(図3参照)でもよいが、固体電解質と有機−無機ハイブリッドポリマーとを別の層構成(図4参照)とすることも可能である。さらに、有機−無機ハイブリッドポリマーの層(調光層)一つに対して、固体電解質層を二つ設ける構成(図5参照)としてもよく、固体電解質層一つに対して、調光層を二つ設ける構成(図6参照)としてもよい。
図3において、調光フィルム300は、透明導電性基板310と、その上に位置する有機−無機ハイブリッドポリマー及び固体電解質からなる層(エレクトロクロミック素子層)320と、該エレクトロクロミック素子層320上に位置する透明導電性基板330とを含む。
図4において、調光フィルム400は、透明導電性基板410と、その上に位置する有機−無機ハイブリッドポリマーを含む調光層420と、該調光層420上に位置する固体電解質を含む固体電解質層430と、さらには該固体電解質層430の上に位置する透明導電性基板440とを含む。
図5において、調光フィルム500は、透明導電性基板510と、その上に位置する固体電解質層520と、該固体電解質層520の上に位置する調光層530と、該調光層530上に位置する固体電解質層540と、さらには固体電解質層540の上に位置する透明導電性基板550とを含む。
図6において、調光フィルム600は、透明導電性基板610と、その上に位置する調光層620と、該調光層620の上に位置する固体電解質層630と、該固体電解質層630上に位置する調光層640と、さらには調光層640の上に位置する透明導電性基板650とを含む。
固体電解質存在下、有機−無機ハイブリッドポリマー100は、配位子としてのビス(ターピリジン)誘導体と金属イオンとの間で電子の移動が生じる。金属イオンを適宜選択することにより、青、赤等の発色をする。配位子としてのビス(ターピリジン)誘導体と金属イオンとの組み合わせによって、電荷移動の速度が異なるので、配位子としてのビス(ターピリジン)誘導体と金属イオンとを適宜組み合わせることによって所望の発色が得られる。この電荷移動の速度は、カウンターアニオンを変更することによっても制御することができる。
【0025】
具体的には、金属イオンとして鉄イオンを、カウンターアニオンとして酢酸イオンを選択すると、青色〜紫色を発色でき、酢酸イオンをポリオキシメタレートに変更すると、青色〜紫色から濃い青色(藍色)に変化する。また、金属イオンとしてコバルトイオンを、カウンターアニオンとして酢酸イオンを選択すると、赤茶色を発色でき、酢酸イオンをポリオキシメタレートに変更すると、赤茶色から青色へ変化し得る。このような発色の変化は、電荷移動速度に依存している。所望の発色とするためにも、予め、種々の組み合わせによる電荷移動速度を調べておくことが望ましい。
【0026】
特に、カウンターアニオンとしてポリオキシメタレートを選択すると、酸化還元を生じる電位幅を広範囲にすることができるので、発色と消色との制御が容易である。
【0027】
上記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーは、高分子電解質であるため、水、メタノール等の溶媒に可溶であり、一度加工しても再加工ができる。
【0028】
(実施の形態2)
実施の形態1では、エレクトロクロミック素子中に含まれる金属イオンの種類が、1種類の例を示したが、本発明の他の実施の形態としては、エレクトロクロミック素子に含まれる有機−無機ハイブリッドポリマーに含まれるビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンの種類の数に制限はないものとする。
【0029】
図2は、本発明の調光フィルムに用いられるエレクトロクロミック特性を有する有機−無機ハイブリッドポリマーの他の実施の形態の模式図を示す。
図2に示されるように、本発明における有機−無機ハイブリッドポリマー200は、固体電解質を共存させ(図示せず)、電位を調整することにより、配位子であるビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンとを含む、少なくとも2種以上の第1〜第Nの(Nは2以上の整数)繰り返し単位210が、それぞれ複数個連結することで形成したものである。ここで、Nは、2以上の整数である。
また連結形成された有機−無機ハイブリッドポリマー200は、電位の調整により、発色、消色を繰り返す。これらの現象は電位の調整により可逆的である。
【0030】
図2において、第1の繰り返し単位210は、ビスターピリジン誘導体と、第1の金属イオンMと、第1のカウンターアニオンとを含み、第Nの繰り返し単位210は、ビスターピリジン誘導体と、第Nの金属イオンMと、第Nのカウンターアニオンとを含む。有機−無機ハイブリッドポリマー200は、第1〜第Nの各繰り返し単位の重合度をそれぞれ少なくとも2となるように有している。
【0031】
上記式(6)において、M〜M(Nは2以上の整数)は、それぞれ異なる第1〜第Nの金属イオンである。第1〜第Nの金属イオンは、それぞれ、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される。これらの金属イオンは、各金属イオンと配位子であるビス(ターピリジン)誘導体との間の電荷移動の速度が異なるため、各金属イオンによる発色が異なり得る。
【0032】
したがって、異なる発色の金属イオンを適宜組み合わせることにより、有機−無機ハイブリッドポリマー200は、複数の発色が可能となる。なお、電荷移動の速度が異なる組み合わせであれば、第1〜第Nの金属イオンは、上述の金属イオンに限定されない。
【0033】
また、これらの金属イオンは、それぞれ異なる酸化還元電位を有する。したがって、上記式(6)で表される、少なくとも2種以上の第1〜第Nの(Nは2以上の整数)有機−無機ハイブリッドポリマー200は、複数の発色と消色とを電位によって容易に制御することができる。
【0034】
の第1〜第Nのカウンターアニオンは、全て同一、全て異なる、又は一部同一であってもよく、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。カウンターアニオンによって、前記金属イオンの電荷が補償され、上記式(8)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーを電気的に中性にする。
【0035】
上述したように、有機−無機ハイブリッドポリマー200は、2以上の重合度を有する第1の繰り返し単位210と、2以上の重合度を有する第Nの繰り返し単位210とを少なくとも含む。有機−無機ハイブリッドポリマー200は、複数の金属イオンを含むので、各金属イオンと配位子であるビス(ターピリジン)誘導体との間の電荷移動の速度に基づく複数の発色が可能となる。また、金属イオンによって酸化還元電位が異なるので、電位を制御することによって、特定の金属イオンに基づく色のみを発色させることができる。上記式(6)で表される、少なくとも2種以上の第1〜第Nの(Nは2以上の整数)有機−無機ハイブリッドポリマーを含む1つのエレクトロクロミック素子から複数の発色が可能になるので、デバイス製造に要する時間の短縮、コストの低下に有利であり得る。
省スペースの点から、少なくとも2種以上の第1〜第Nの上記式(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質を同一層であるエレクトロクロミック素子層とすることが好ましいが、有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質とを別の層構成としてもよい。具体的には、固体電解質は、第1〜第Nの有機−無機ハイブリッドポリマー全てと同一層に含有された構成でもよいが、固体電解質を含む層(固体電解質層)と第1〜第Nの有機−無機ハイブリッドポリマー全てを含有した調光層とを別の層構成とすることも可能である。さらに、第1〜第Nの有機−無機ハイブリッドポリマーに対応する調光層の第1〜第Nの各層に対して、固体電解質層をそれぞれ設ける構成としてもよく、また、固体電解質層一つに対して、第1〜第Nの有機−無機ハイブリッドポリマーに対応する調光層を二つ以上設ける構成としてもよい。
【0036】
次に、図4に示される調光フィルム400を用いて、動作を説明する。
二枚の透明導電性基板410及び440は、電源に接続されており、調光層420と固体電解質層430とに所定の電圧を印加する。これにより、調光層420の酸化還元を制御できる。
【0037】
調光層420が、上記式(1)で表される単一の有機−無機ハイブリッドポリマーからなる場合、調光層中の金属イオンを酸化還元することによって、発色及び消色を制御すればよい。
また、調光層が、上記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマー中の金属イオンを変えて複数層用意される場合、複数の調光層中のそれぞれの金属イオンを層単位で電位を別個に制御することによって、複数の発色及び消色を制御することができる。
【0038】
調光層420が、上記式(6)で表される複数の有機−無機ハイブリッドポリマーが、調光層一層で構成される場合、調光層中の複数の金属イオンをそれぞれ酸化還元するよう電位を調整することによって、発色及び消色を制御することができる。
また、調光フィルムの作製においても、調光層420を複数用いる場合に比べて、調光層420の塗布操作が一回で済むため、簡便である。図4のように調光層420と固体電解質層430を分けずに、図3に示すような、調光層と固体電解質層を一緒にしたエレクトロクロミック素子層のみの一層構造としてもよい。
【0039】
次に、本発明の調光フィルムの製造方法について説明する。
まず、有機−無機ハイブリッドポリマーの材料として、ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオン及びカウンターイオンとなる有機金属(例えば、酸化鉄(II)等)とを混合して、調光層用塗工液を作製する。有機−無機ハイブリッドポリマーと固体電解質を同一層構成とする場合には、固体電解質も添加混合し、エレクトロクロミック素子層用塗工液を作製する。調光層と固体電解質層を別の層構成とする場合は、固体電解質層用塗工液は別途作製する。
本発明におけるエレクトロクロミック素子層用塗工液、調光層用塗工液、又は固体電解質層用塗工液は、材料溶液をバーコーター法、アプリケーター法、ドクターブレード法、ロールコーター法、ダイコーター法、コンマコーター法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独又は組み合わせて用いて、透明導電性基板等の基材に塗布する。なお、塗布する際は必要に応じて適当な溶剤で希釈してもよい。溶剤を用いた場合には、基材上に塗布した後乾燥を要する。なお、塗膜は必要に応じて基材の片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0040】
溶剤としては、エレクトロクロミック特性を有する上記式(1)又は(6)で表される有機−無機ハイブリッドポリマー及び/又は固体電解質材料を溶解し、それぞれの材料層形成後に乾燥等により除去できるものであればよく、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルアセテート、エタノール、メタノール、2−プロパノール、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、水等を用いることができる。また、上記溶剤を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本発明の調光フィルムは、従来技術である液晶を使用した調光フィルムとは異なり、電圧が印加されていない場合にも光が散乱せず、鮮明度が優れて視野角の制限のない着色状態を表す。そして、エレクトロクロミック特性を有する有機−無機ハイブリッドポリマーの含有量、エレクトロクロミック特性を有する有機−無機ハイブリッドポリマーを含む調光層の膜厚を調節する、又は電荷を調節することにより、光可変度を任意に調節できる。
【0042】
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓ガラス/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓ガラス、自動車用の窓ガラス/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
本発明の調光フィルムは、直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、上記透明導電性基板の透明基板として用いられる、例えば、ガラス、高分子フィルム等を使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
100mlの二口フラスコに、1,4−ビス(ターピリジル)ベンゼン30mg(0.0054mol)を25mlの酢酸に加熱しながら溶解させた。次いで、酢酸鉄(II)9.39mg(0.0054mol)を含むメタノール溶液5mlを二口フラスコに加えた。混合物を、窒素雰囲気中、150℃、24時間加熱還流を行った。
還流後、二口フラスコ中の反応溶液をシャーレに移し、大気中で乾燥させて、紫色の粉末の有機−無機ハイブリッドポリマーを得た。粉末の収率は、90%であった。
有機−無機ハイブリッドポリマーのメタノール溶液(固形分 質量%)を膜厚0.75mmのITOガラスにキャストし、調光層を形成し、該調光層の上に、固体電解質として過塩素酸リチウムを含むポリメタクリル酸メチルを、調光層を覆うように重ねて、固体電解質層を形成して、ITOガラスに塗膜された厚さ0.5mmエレクトロクロミック素子を作製した。
該エレクトロクロミック素子の固体電解質層上に、さらに膜厚0.75mmのITOガラスを重ねることで、図7に示す調光フィルムとしてのエレクトロクロミックデバイスを作製した。図7中、(a)が表示面を示し、(b)がデバイス断面図を示す。得られた調光フィルムは、調光層1が固体電解質層2で覆われ、それらが透明導電性基板3a及び3bで挟持された構造である。なお、この状態では、調光層は、有機−無機ハイブリッドポリマーが形成されており、青色に発色している。このデバイスに3Vを印加したところ、有機−無機ハイブリッドポリマーの青色が消失し、無色透明になることを確認した。これは、有機−無機ハイブリッドポリマーの連結がはずれ、上記式(1)で表されるハイブリッドポリマー材料に戻った状態である。このデバイスに逆に−3Vを印加すると、ポリマーは再び元の青色に変化した(図8参照)。
このエレクトロクロミック変化は可逆であり、その応答時間は1秒程度であった。
【0045】
(実施例2)
まず、調光フィルムを下記のように作製した。
酢酸鉄(II)の代わりに酢酸コバルト9.56mg(0.054mol)を用いた以外は、実施例1と同様にして橙色の有機−無機ハイブリッドポリマーを作製した
実施例1と同様に調光フィルムを作製し、電気化学応答を調べた。電圧は、−0.7Vから0.8Vの範囲で印加し、電圧の挿引速度は、0.1V/sであった。
次に、上記の実施例で作製した調光フィルムについて、XENON Fade−O Meter<ATLAS社Ci3000+>を用いた耐光性試験を行った。
耐光性試験は、フェードメータ(退色試験機)を利用し、色差計で測定できる色相(Y、L、a、b)の経時変化を追跡して行った。
結果を図9及び図10に示す。これらの結果から、1,000時間後の色相変化が少なく、優れた耐光性を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の調光フィルムは、例えば、室内外の仕切り(パーティッション)、建築物用の窓ガラス/天窓、電子産業及び映像機器に使用される各種平面表示素子、各種計器板と既存の液晶表示素子の代替品、光シャッター、各種室内外広告及び案内標示板、航空機/鉄道車両/船舶用の窓ガラス、自動車用の窓ガラス/バックミラー/サンルーフ、眼鏡、サングラス、サンバイザー等の用途に好適に使用することができる。
本発明の調光フィルムを直接使用することも可能であるが、用途によっては、例えば、本発明の調光フィルムを2枚の基材に挟持させて使用したり、基材の片面に貼り付けて使用したりしてもよい。前記基材としては、上記透明導電性基板に用いられる透明基板と同様に、例えば、ガラス、高分子フィルム等を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明における有機−無機ハイブリッドポリマーの一つの実施の形態の模式図を示す。
【図2】本発明における有機−無機ハイブリッドポリマーの一つの実施の形態の模式図を示す。
【図3】本発明の調光フィルムの一つの実施の形態の断面構造概略図を示す。
【図4】本発明の調光フィルムの一つの実施の形態の断面構造概略図を示す。
【図5】本発明の調光フィルムの一つの実施の形態の断面構造概略図を示す。
【図6】本発明の調光フィルムの一つの実施の形態の断面構造概略図を示す。
【図7】実施例1で作製した調光フィルムの概略図を示す。
【図8】実施例1における調光フィルムのエレクトロクロミック変化を示す。
【図9】実施例2における調光フィルムの耐光性試験の結果を示す。
【図10】実施例2における調光フィルムの色度計による色相変化追跡結果を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 調光層
2 固体電解質層
3a、3b 透明導電性基板
300、400、500、600 調光フィルム
310、330、410、440、510、550、610、650 透明導電性基板
320 エレクトロクロミック素子層
420、530、620、640 調光層
430、520、540、630 固体電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された調光フィルム。
【化1】

(式中、Mは前記金属イオンであり、Rは、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びRは、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、nは重合度を表す2以上の整数である。)
【請求項2】
ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(1)で表される有機−無機ハイブリッドポリマーを含む層、及び、固体電解質を含む層を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された調光フィルム。
【化2】

(式中、Mは前記金属イオンであり、Rは、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びRは、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、nは重合度を表す2以上の整数である。)
【請求項3】
前記固体電解質が、前記有機−無機ハイブリッドポリマーと非相溶性の有機溶剤及び高分子を用いたゲル電解質である請求項1又は2に記載の調光フィルム。
【請求項4】
前記固体電解質が500nm以上に特性吸収を持たない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項5】
前記金属イオンが、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項6】
前記カウンターアニオンが、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項7】
前記スペーサが、アリール基又はアルキル基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項8】
前記アリール基又はアルキル基が、酸素原子又は硫黄原子をさらに含む、請求項7に記載の調光フィルム。
【請求項9】
前記アリール基が、下記式(2)〜式(5)からなる群から選択される、請求項7又は8に記載の調光フィルム。
【化3】

【請求項10】
ビス(ターピリジン)誘導体と、金属イオンと、カウンターアニオンと、を含む下記式(6)で表される、少なくとも2種以上の第1〜第N(Nは2以上の整数)の有機−無機ハイブリッドポリマー、及び、固体電解質を有するエレクトロクロミック素子が、二枚の透明導電性基板に挟持された調光フィルム。
【化4】

(式中、M〜M(Nは2以上の整数)は、それぞれ異なる第1〜第Nの金属イオンであり、R〜R(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の、炭素原子及び水素原子を含むスペーサ又は2つのターピリジル基を直接接続するスペーサであり、R、R、R及びR(Nは2以上の整数)は、全て同一、全て異なる、又は、一部同一の水素原子、置換基を有していても良いアリール基又はアルキル基であり、n(Nは2以上の整数)はそれぞれ重合度を表す2以上の整数である。)
【請求項11】
前記固体電解質が、前記有機−無機ハイブリッドポリマーと非相溶の有機溶剤及び高分子を用いたゲル電解質である請求項10に記載の調光フィルム。
【請求項12】
前記固体電解質が、500nm以上に特性吸収を持たない、請求項10又は11に記載の調光フィルム。
【請求項13】
前記第1〜第Nの金属イオンが、それぞれ、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群から選択される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項14】
前記第1〜第Nのカウンターアニオンが、それぞれ、酢酸イオン、四フッ化ホウ素イオン、ポリオキシメタレート及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10〜13のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項15】
前記R〜Rのスペーサが、それぞれ、アリール基又はアルキル基である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の調光フィルム。
【請求項16】
前記アリール基又はアルキル基が、酸素原子又は硫黄原子をさらに含む、請求項15に記載の調光フィルム。
【請求項17】
前記アリール基が、下記式(2)〜式(5)からなる群から選択される、請求項15又は16に記載の調光フィルム。
【化5】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−265437(P2009−265437A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116194(P2008−116194)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年10月25日http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press207.htmlを通じて発表、平成19年10月25日 独立行政法人物質・材料研究機構発行の「筑波研究学園都市記者会配布資料」に発表、平成19年10月25日 独立行政法人物質・材料研究機構発行の「文部科学記者会配布資料」に発表、平成19年10月25日 独立行政法人物質・材料研究機構発行の「科学記者会配布資料」に発表、平成19年11月1日 独立行政法人物質・材料研究機構発行の「第7回NIMSフォーラム 物質・材料の最先端研究と技術移転 要旨集」に発表、平成20年1月25日〜26日 つくばサイエンス・アカデミー主催(独立行政法人物質・材料研究機構共催)の「TXテクノロジー・ショーケース・イン・ツクバ2008(第7回つくばテクノロジー・ショーケース)」において文書をもって発表
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】