説明

調理器

【課題】容器から出した被調理物がこぼれても、操作部や表示部が汚れない調理器を提供する。
【解決手段】調理器本体3の正面に凹部43を形成し、この凹部43に操作・表示ユニット34を設け、調理器本体3の正面と凹部43との境界となる部位に凸部45を形成する。容器2から被調理物を掬い出すときに、誤って調理器本体3の正面に被調理物をこぼしたとしても、操作・表示ユニット34は調理器本体3の正面よりも凹んだ凹部43に設けられているため、被調理物は操作・表示ユニット34に到達しない。また、調理器本体3の正面と凹部43との境界に形成した凸部45によって、凹部43への侵入を確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体に対して容器を駆動させることが可能な調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の調理器は、例えば特許文献1のように、容器を所定状態で駆動させながら、調理を行なう構造のものであった。
【0003】
調理器の操作部や表示部は、操作性や視認性を考慮して、本体の正面に設けられる。しかし、被調理物を出す際に、本体の正面に被調理物がこぼれて操作部や表示部が汚れるなどの問題が発生した。
【0004】
一方、特許文献2には、容器を所定状態で駆動させる調理器において、被調理物の攪拌性能を向上させるために、容器に攪拌手段を設けたものが開示されている。
【0005】
しかし、容器内で被調理物を攪拌する場合に、単なる攪拌手段を容器に設けただけでは、被調理物を十分に攪拌することができず、容器の内部に被調理物が焦げ付くなどの不具合があった。
【0006】
また、上記特許文献2は、調理中と保温中に駆動速度などが同じであるため、調理や保温などの所定行程での攪拌性能は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2580257号公報
【特許文献2】特開2004−267519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、容器から出した被調理物がこぼれても、操作部や表示部が汚れない調理器を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、駆動する容器内の被調理物がどのようなものであっても、攪拌性能を向上させることが可能な調理器を提供することにある。
【0010】
本発明の第3の目的は、調理中と保温中の攪拌性能を向上させることが可能な調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1における調理器は、本体に設けた容器と、該容器を覆う蓋と、前記容器を傾斜状態で駆動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備した調理器において、前記本体の正面に凹部を形成し、この凹部に操作部および/または表示部を設け、前記本体の正面と前記凹部との境界に凸部を形成している。
【0012】
本発明の請求項2における調理器は、請求項1の構成で、前記本体の正面の垂直面に孔を形成し、前記凹部は前記孔を塞ぐように設けられる。
【0013】
本発明の請求項3における調理器は、本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備し、前記容器に攪拌手段を備えた調理器において、前記容器を上方から見たときに、前記容器の中心部と前記攪拌手段とを結ぶ線に対して、第1の所定角を有して当該攪拌手段が設けられる。
【0014】
本発明の請求項4における調理器は、本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備し、前記容器に攪拌手段を備えた調理器において、前記容器を所定断面で見たときに、前記容器の中心線に対して、第2の所定角を有して当該攪拌手段が設けられる。
【0015】
本発明の請求項5における調理器は、請求項4の構成で、前記容器を上方から見たときに、前記容器の中心部と前記攪拌手段とを結ぶ線に対して、第1の所定角を有して当該攪拌手段が設けられる。
【0016】
本発明の請求項6における調理器は、請求項3〜5の何れか一つの構成で、前記攪拌手段が非磁性材であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7における調理器は、請求項3〜6の何れか一つの構成で、前記攪拌手段の所定部および/または前記容器の所定部にフッ素処理を行なっている。
【0018】
本発明の請求項8における調理器は、本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記加熱手段または前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備した調理器において、前記制御手段は、調理中に第1の条件で前記容器を駆動させ、保温中に第2の条件で前記容器を駆動させるものであることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9における調理器は、請求項8の構成で、前記制御手段は、加熱量に応じて前記第1および/または第2の条件を変えるものであることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項10における調理器は、請求項8の構成で、温度を検知する検知手段を備え、前記制御手段は、前記検知温度に応じて前記第1および/または第2の条件を変えるものであることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項11における調理器は、請求項8の構成で、前記制御手段は、被調理物に応じて前記第1および/または第2の条件を変えるものであることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項12における調理器は、本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記加熱手段または前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備した調理器において、前記制御手段は、調理中に第1の駆動速度で前記容器を駆動させ、保温中に第2の駆動速度で前記容器を回転させるものであることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項13における調理器は、請求項12の構成で、前記制御手段は、加熱量に応じて前記第1および/または第2の駆動速度を変えるものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項14における調理器は、請求項12の構成で、温度を検知する検知手段を備え、前記制御手段は、前記検知温度に応じて前記第1および/または第2の駆動速度を変えるものであることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項15における調理器は、請求項12の構成で、前記制御手段は、被調理物に応じて前記第1および/または第2の駆動速度を変えるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1の調理器によれば、容器から被調理物を出すときに、誤って本体の正面に被調理物をこぼしたとしても、操作部および/または表示部は本体の正面よりも凹んだ凹部に設けられているため、被調理物は操作部および/または表示部に到達しない。したがって、容器から出した被調理物がこぼれても、操作部や表示部が汚れない調理器を提供できる。また、容器から被調理物を出すときに、誤って本体の正面に被調理物をこぼしたとしても、本体の正面と凹部との境界に形成した凸部によって、凹部への侵入を確実に防止できる。よって、操作部や表示部の被調理物による汚れを防止する効果を、さらに向上させることができる。
【0027】
本発明の請求項2の調理器によれば、本体の正面の垂直面に形成した孔を、凹部で塞ぐことができる。
【0028】
本発明の請求項3の調理器によれば、駆動する容器内の被調理物がどのようなものであっても、被調理物は容器内で攪拌され、攪拌性能を向上させることができる。
【0029】
本発明の請求項4の調理器によれば、容器が駆動するのに伴って、容器内の所定部にある被調理物が、第2の所定角を有する攪拌手段によって所定方向に動かされ、容器内の間で被調理物を効果的に動かすことができる。このため、駆動する容器内の被調理物がどのようなものであっても、被調理物は容器内の所定部との間で盛んに攪拌され、攪拌性能を向上させることができる。
【0030】
本発明の請求項5の調理器によれば、攪拌手段は第1の所定角と第2の所定角を共に有するので、被調理物は容器内の所定部との間で盛んに攪拌されることになり、攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0031】
本発明の請求項6の調理器によれば、容器が電磁誘導加熱される場合、攪拌手段が非磁性材であれば、当該攪拌手段は発熱せず、被調理物が攪拌手段に焦げ付くのを防止して、攪拌性能の低下を防ぐことができる。
【0032】
本発明の請求項7の調理器によれば、フッ素処理によって攪拌手段や容器への被調理物の付着を防ぎ、また攪拌手段の所定部や容器の所定部と被調理物との間の滑り性が良くなるので、攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0033】
本発明の請求項8の調理器によれば、例えば調理中には第1の条件で容器を駆動させ、保温中には第2の条件で駆動させることができる。そのため、加熱調理中と保温中のそれぞれにおいて、適正な条件で容器を駆動させて、攪拌性能を向上させることができ、被調理物が焦げ付くなどの不具合を防止できる。また、駆動により容器内の被調理物を攪拌するので、被調理物を均一に加熱することができる。
【0034】
本発明の請求項9の調理器によれば、駆動手段で、加熱量に応じた最適な攪拌を、加熱調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0035】
本発明の請求項10の調理器によれば、駆動手段で、温度に応じた最適な攪拌を、加熱調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0036】
本発明の請求項11の調理器によれば、駆動手段で、調理物に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0037】
本発明の請求項12の調理器によれば、例えば調理中には第1の駆動速度で容器を駆動させ、保温中には第2の駆動速度で容器を駆動させることができる。そのため、調理中と保温中のそれぞれにおいて、適正な速度で容器を駆動させて、攪拌性能を向上させることができ、被調理物が焦げ付くなどの不具合を防止できる。また、駆動により容器内の被調理物を攪拌するので、被調理物全体を均一に加熱することができる。
【0038】
本発明の請求項13の調理器によれば、例えば加熱量により焦げ付きにくさが異なるが、容器の駆動速度を調節し、加熱量に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0039】
本発明の請求項14の調理器によれば、例えば検知温度により焦げ付きにくさが異なるが、容器の駆動速度を調節し、被調理物の温度に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0040】
本発明の請求項15の調理器によれば、例えば被調理物により焦げ付きにくさが異なるが、容器の駆動速度を調節し、被調理物の種類に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の好ましい実施例における調理器の斜視図である。
【図2】同上、調理器の断面図である。
【図3】同上、容器を垂直状態にしたときの調理器の要部平面図である。
【図4】本発明の第1変形例を示す容器の平面図である。
【図5】同上、図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明の第2変形例を示す容器の平面図である。
【図7】同上、図6のB−B線断面図である。
【図8】上記各変形例を含めた本実施例の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】同上、容器の温度推移と、各部の動作状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明における調理器の好ましい実施例を説明する。先ず、調理器の全体構成を図1〜図3に基づき説明すると、1は電磁誘導加熱式の調理器であり、これは容器2と、この容器2を保持する調理器本体3とを備えている。なお、容器2は調理器本体3に着脱自在なものとして構成している。また、調理器本体3の外郭部分は筺体として構成され、図示しないが調理器本体3の外郭は複数の部材から構成される。
【0043】
容器2は、その全体が有底円筒形状に形成されており、円筒形状をなす側面部4の上部に開口部5を有すると共に、側面部6の下部を閉塞する底面部6を備えている。また、側面部4から底面部6にかけての境界部分に、円弧状の曲面形状に形成された円弧部7を備えている。ここでの容器2は、磁性を有するステンレス鋼板などの磁性金属材料によって形成される。
【0044】
9は、容器2の開口部5を覆うように着脱自在に設けられる蓋である。また10は、蓋9の上面の一部に形成した開口9Aを開閉する小蓋である。そして、開閉蓋10には第1の取手部11を備えると共に、蓋9にも別な第2の取手部12を備えている。図2に示すように、容器2内に収容したスープなどの被調理物を掬う場合は、第1の取手部11を指で摘み、ヒンジ部10Aを支点として小蓋10を開けて、開口9Aから被調理物を掬い出す。このとき第2の取手部12は、小蓋10を開ける途中で小蓋10の上面と当接し、小蓋10を立たせた状態で支持するストッパとして機能する。
【0045】
13は、容器2内の被調理物を攪拌する攪拌手段としての攪拌翼である。この攪拌翼13は、容器2の内周面に沿って側面部4から底面部6にかけて設けられ、容器2内で実質的に被調理物を攪拌する板状の羽根部14を備えている。さらに攪拌翼13を容器2に対し着脱可能とするために、前記羽根部14から延設して設けられた柄部15を、ボルト,ネジなどの雄ネジ部材からなるロック部材16によって、容器2の周縁に着脱自在に設けている。なお、攪拌翼13の別な変形例については、後ほど別な図を参照して詳しく説明する。
【0046】
調理器本体3は、容器2を傾斜状態で回転可能に収納する容器収納部17と、容器2の加熱を行なう加熱手段18と、容器2の温度を検知する検知手段としての温度検知手段19を備えている。
【0047】
容器収納部17は、容器2の側面部4,底面部6,および円弧部7を被覆可能とするように、つまり開口部5を除く容器2全体を覆うように形成される。また、この容器収納部17は、その中心軸を水平面および垂直面に対して傾斜させた有底円筒形状を有しており、容器2の外径と略相似形状に形成される。これにより、容器2の上面と、これを取り囲む調理器本体3の上面は、正面側から見て後方よりも前方が下がって傾斜している。
【0048】
20は、前記容器収納部17の中心軸上に設けられた駆動手段である。駆動手段20は、容器2の底面部6に対向して、容器収納部17の底面中心部に形成した貫通部21に配置され、容器2の底面部6に当接可能に形成された回転座22と、この回転座22と貫通部との間にスラストベアリングなどの軸受を備えた軸受部23と、容器2に回転駆動力を付与する駆動源たるギヤードモータなどを備えた駆動部24と、駆動部24を容器収納部に取付けるためのモータ取付金具24Aを備えている。駆動部24としては、安価な一定回転のモータを用いるのが好ましい。
【0049】
そして、回転座22は、容器収納部17の中心軸と略平行な軸方向を有する軸部材たるシャフト25(特に図2においては、容器収納部17の中心軸状にシャフト25を備えている)を介して、駆動部24に連結されている。この場合、容器収納部17に収容された容器2は、底面部6に当接支持する回転座22によって駆動部24からの回転駆動力が伝達され、回転座22と共に回転するようになっている。
【0050】
26は、容器収納部17に設けられ、容器2の収納時にこの容器2の側面部4に当接する回動自在なローラである。この回転支持部としてのローラ26は、容器2の回転をスムースにするためのもので、好ましくは容器収納部17に複数設けられる。そして、前記回転座22およびローラ26によって、容器収納部17に容器2を収納した場合に、容器2の外面と容器収納部17の内面との間に所定の間隔をあけた状態で、容器2が回転可能に支持される。
【0051】
本実施例における加熱手段18は、容器2を発熱させるコイル(電磁誘導加熱コイル)として、調理器本体3の容器収納部17の外側に、容器2と非接触な状態で配置される。また加熱手段18は、傾斜した容器2内の被調理物の液面Lよりも下方に配置される。そして、後述する電源ユニット31から加熱手段18に高周波電流を供給すると、加熱手段18からの交番磁界により、その一部または全体が磁性材料で構成される容器2にジュール熱が発生し、容器2が発熱して容器2内の被調理物が加熱するようになっている。なお、加熱手段18としては、他に例えばヒータ式のものを採用しても構わない。
【0052】
温度検知手段19は、容器2の温度を非接触で検知するために、容器収納部17に設けられたもので、ここでは容器収納部17の最下部に装着された赤外線透過ガラスからなる窓部27と、この窓部27を通して容器2からの赤外線を検知する検知体としての温度センサ28とにより構成される。勿論、温度検知手段19の構成としては、赤外線以外の検知体を備えたものでも構わない。図2では、容器収納部17の最下部に容器2と非接触で温度検知手段19が設けられているが、スープなどの被調理物が容器収納部17内にこぼれた場合を考えて、容器2の回転軸を中心に回転移動した最下部を避けた位置に設けるのが好ましい。
【0053】
31は、調理器本体3の内底部に備えた電源ユニットである。電源ユニット31は、例えば加熱手段18に高周波電流を供給したり、駆動手段20の駆動部24に駆動信号を供給したりする電源PC(印刷回路)基板32を備えている。
【0054】
34は、調理器1の操作用および表示用に設けた操作・表示ユニットである。ここでの操作・表示ユニット34は、上面を一部開口した箱状の収納体35と、この収納体35内に設けられた基板36と、基板36の適所に実装された各種の操作スイッチ37およびLED38と、収納体35の上面を覆うシート状の操作・表示パネル39とを備えて構成される。このなかで操作スイッチ37は、調理器1の各部に対する動作指示を操作入力する操作体として、操作・表示ユニット34に組み込まれており、具体的には、電源スイッチや、温度設定スイッチや、調理メニュー設定スイッチや、時間設定スイッチや、調理スタートスイッチなどが、単独または兼用して設けられる。またLED38は、調理器1の制御状態を表示する表示体として、操作・表示ユニット34に組み込まれている。操作体としては、押しボタン式以外の例えばスライド式のスイッチを用いてもよく、また表示体としては、例えば調理メニューや、容器2の検知温度や、時間を表示するための液晶表示器を用いてもよい。
【0055】
図2に示すように、調理器本体3の載置時に垂直面となる調理器本体3の正面には、適当な大きさの孔40が形成され、この孔40を塞ぐように凹状部材41が設けられる。凹状部材41は、調理器本体3の正面側に開口部42を有し、当該開口部42から調理器本体3の奥側に向けて、調理器本体3の正面よりも凹んだ凹部43を形成している。また凹部43の下方には、調理器本体3の正面側から開口部42を通して操作・表示パネル39が操作および視認できるように、前述した操作・表示ユニット34が配設される。凹状部材41はその他に、開口部42の外周囲にフランジ部44を折返し形成しており、このフランジ部44の先端が開口40の周縁をなす調理器本体3の正面に当接することで、調理器本体3の正面よりも手前に突出した庇状の凸部45が、前記凹部43の外縁全周に設けられる。なお、この凸部45は、例えば凹部43の上側だけに設けてもよく、要は調理器本体3の正面に付着した被調理物が凸部45に達したら、調理器本体3の正面より手前で流れ落ちて、操作・表示ユニット34にかからない構造であれば構わない。
【0056】
51は、蓋9の側部に位置して、前記第2の取手部12に設けられた磁石である。また、蓋9の側部に対向して、調理器本体3の上面には円環状の段部52が形成され、この段部52の内側には、磁石51に対向する位置に、当該磁石51からの磁気を感知する感知体としてのホール素子53が設けられる。ここでは、駆動手段20から容器2に回転駆動力を付与すると、容器2に装着された蓋9および磁石51が共に回転し、磁石51がホール素子53に近傍にくると、磁石51からの磁力線がホール素子53に作用して、ホール素子53から磁力線の強さに応じた電圧が発生する。したがって、これらの磁石51とホール素子53は、容器2の回転位置をホール素子53からの電圧変動として検知出力する位置検知手段54に相当する。
【0057】
また図3に示すように、ホール素子53は1個だけでなく、容器2および蓋9の回転円周上に、複数個設けるのが好ましい。本実施例では、調理器本体3の正面から見て、後方と、側方と、その中間位置にそれぞれホール素子53A,53B,53Cを設けているが、どの位置に設けるのかは特に限定しない。なお、図3に示す矢印Rは、容器2の回転方向を示している。
【0058】
そして本実施例では、前述の電源ユニット31と操作・表示ユニット34とにより、操作スイッチ37からの操作信号や、温度検知手段19や位置検知手段54からの検知出力を受けて、加熱手段18による容器2への加熱制御や、駆動手段20による容器2への回転制御を行なう制御手段56を構成している。
【0059】
次に、攪拌翼13の別な変形例について、図4〜図7を参照しながら説明する。これらの各図に共通して、Cは容器2の回転中心である中心軸であり、また矢印Rは容器2の回転方向を示している。また攪拌翼13は、加熱手段18からの交番磁界を受けてもジュール熱を発生しない非磁性材で形成される。さらに好ましくは、被調理物が当接する攪拌翼13の表面および容器2の内面に、フッ素コーティングによる層を形成する。この場合、攪拌翼13の表面と容器2の内面の片方にのみフッ素コーティング層を形成してもよい。
【0060】
攪拌翼13の第1変形例を示す図4および図5において、ここで注目すべき点は、容器2を真上から見たときに、羽根部14の基端と中心軸Cとを結ぶ直線に対し、羽根部14の基端と先端とを結ぶ直線が、容器2の回転方向側に第1のすくい角α1を有していることにある。つまり、攪拌翼13を構成する羽根部14は、容器2の中心である中心軸Cと羽根部14の基端とを結ぶ線に対して、第1のすくい角α1を有した状態で、容器2の回転方向側に傾いて設けられている。
【0061】
そして、駆動手段20からの駆動力により、容器2が矢印Rの方向に回転すると、容器2内の被調理物に遠心力が作用して、被調理物であるスープの具などは、第1のすくい角α1を有する攪拌翼13の羽根部14に乗って、容器2の中心から外周方向へと移動する。そして、羽根部14の基端側において、被調理物は容器2のより高い位置まで達してから羽根部14を離れて落下し、結果的に容器2内で被調理物を大きく攪拌することができる。
【0062】
なお、第1のすくい角α1をどの程度にすべきかは、特に限定されない。また、攪拌翼13は容器2内に複数設けられていてもよく、容器2の回転方向と反対側に傾いて羽根部14を設けてもよい。
【0063】
次に、図6および図7において、攪拌翼13の別な第2変形例を示す。ここで注目すべき点は、容器2を縦方向の垂直断面で見たときに、容器2の中心軸Cに一致する中心軸線に対し、羽根部14の下端と上端とを結ぶ直線が、容器2の回転方向側に第2のすくい角α2を有していることにある。つまり、攪拌翼13を構成する羽根部14は、容器2の中心軸線に対して、第2のすくい角α2を有した状態で、容器2の回転方向側に上端を傾けて設けられている。
【0064】
そしてこの場合は、駆動手段20からの駆動力により、容器2が矢印Rの方向に回転すると、容器2内の被調理物に遠心力が作用して、容器内の底面部にある被調理物としてのスープなどは、第2のすくい角α2を有する攪拌翼13の羽根部14によって上方に押し上げられ、容器2内の底面部と上面部との間で、スープの入れ替わりが行なわれる。そのため、被調理物は容器2内の底面部と上面部との間で盛んに攪拌が行なわれる。
【0065】
なお、第2のすくい角α2をどの程度にすべきかは、特に限定されない。また、攪拌翼13は容器2内に複数設けられていてもよく、容器2の回転方向側に下端を傾けて羽根部14を設けてもよい。
【0066】
さらに、上記2つの変形例を組み合わせて、第1のすくい角α1と第2のすくい角α2を有する攪拌翼13を、容器2の内面に設けてもよい。この場合は、上述したそれぞれの攪拌を融合させて、さらに攪拌性能を向上させることができる。
【0067】
また、加熱手段18により容器2を発熱させて、被調理物を加熱する際に、攪拌翼13が磁性材料で形成されていると、当該攪拌翼13も発熱して被調理物が焦げ付き易くなり、攪拌翼13本来の攪拌性能を発揮できなくなる虞れがある。この点、本例では攪拌翼13を非磁性材で形成しているので、加熱手段18により容器2を電磁誘導加熱する構成であっても、攪拌翼13は発熱せず、攪拌翼13に被調理物が焦げ付くことがない。よって、攪拌翼13本来の攪拌性能を発揮できる。
【0068】
しかも本例では、攪拌翼13の表面や容器2の内面に、フッ素コーティングが施されていることから、こうした攪拌翼13や容器2に対する被調理物の付着を防ぐことができる。また、攪拌翼13の表面や容器2の内面と、被調理物との間のすべり性が向上することから、上記第1のすくい角α1や第2のすくい角α2を有する攪拌翼13と組み合わせて、さらに攪拌性能を向上させることができる。
【0069】
図8は、上記変形例を含めた本実施例の電気的構成を示している。同図において、56はマイクロコンピュータなどで構成される制御手段であり、この制御手段56の入力ポートには、温度検知手段19の温度センサ28や、各ホール素子53A,53B,53Cや、前記操作スイッチ37などの操作手段(操作体)58がそれぞれ接続される。また、御手段56の出力ポートには、加熱手段18と、容器2を回転させる駆動手段20の駆動部24と、前記LED38などの表示手段(表示体)59がそれぞれ接続される。
【0070】
制御手段56は、ソフトウェア上の機能構成として、容器2内の被調理物を常温付近から所定温度にまで加熱する加熱調理工程を実行する加熱調理制御手段61と、この加熱調理工程に引き続いて、容器2内の被調理物を所定温度に維持する保温工程を実行する保温制御手段62とをそれぞれ備えている。これらの加熱調理制御手段61や保温制御手段62は、何れも操作手段58からの操作信号や、温度センサ28やホール素子53A,53B,53Cからの検知出力を受けて、加熱手段18による容器2への加熱制御や、駆動部24による容器2への回転制御を行なっているが、制御の仕方はそれぞれ異なっている。
【0071】
次に、上記構成についてその作用を、図9のタイミングチャートに基づき説明する。なお、この図9では、各工程における容器2の温度推移と、加熱手段18による電磁誘導(IH)加熱の通断電状態と、駆動部24を構成するモータの通断電状態と、容器2の動作状態が順に示されている。
【0072】
先ず準備段階として、調理器本体3の容器収納部17に容器2を投入し、容器2の底面部6と駆動手段20の回転座22とを嵌合させて、容器2を傾斜状態で容器収納部17に収納する。次に蓋9を外した状態で、容器2内に被調理物を投入し、容器2の開口部5を蓋9で覆って、被調理物を加熱および攪拌できる状態にする。
【0073】
この後、操作手段58を構成する電源スイッチを操作して調理器1を起動させ、操作手段58の温度設定スイッチや、調理メニュー設定スイッチや、時間設定スイッチにより、加熱温度,調理メニューおよび時間の設定を行なう。そして、操作手段58の調理スタートスイッチを操作すると、制御手段56は加熱調理制御手段61による加熱調理工程を開始する。
【0074】
加熱調理工程では、容器2内の被調理物を素早く温度上昇させるために、温度センサ28により検知される容器2の温度が、設定した加熱温度に達するまで、加熱手段を連続的にオン状態にして、容器2ひいては被調理物を強加熱する。またこの加熱中は、容器2内の被調理物を均一に温度上昇させるために、所定のオン時間とオフ時間の繰り返しで、駆動部24を間欠運転させる。これにより、駆動部24のオン期間中は容器2が一定の速度で一方向に回転し、駆動部24のオン期間中は容器2の回転が停止する。
【0075】
やがて、温度センサ28により検知される容器2の温度が、設定した加熱温度に達すると、加熱調理制御手段61による加熱調理工程は終了し、保温制御手段62による保温工程に移行する。保温工程では、容器2の温度が低下して下限値に達したら、加熱手段18への通電を開始する一方で、容器2の温度が上昇して上限値に達したら、加熱手段18への通電を遮断して、容器2内の被調理物を保温に適した一定の温度範囲に維持する。また、この保温工程でも、容器2内の被調理物を均一に攪拌するために、所定のオン時間とオフ時間の繰り返しで、駆動部24を間欠運転させる。これにより、駆動部24のオン期間中は容器2が一定の速度で一方向に回転し、駆動部24のオン期間中は容器2の回転が停止する。
【0076】
本実施例では、加熱調理工程中における容器2への加熱量が、保温行程中におけるよう器2への加熱量よりも多いことを考慮して、加熱調理工程中は被調理物が焦げ付かないように、駆動部24のオン時間ひいては容器2が回転している時間の割合を保温工程中よりも多くし、保温工程中は無駄な電力消費を避けるために、駆動部24のオン時間ひいては容器2が回転している時間の割合を加熱調理工程中よりも少なくする。つまり、ここでの制御手段56は、加熱調理工程中において、保温工程よりも容器2の回転する時間の割合が多い第1の条件で容器2を間欠回転させ、保温工程中において、加熱調理工程よりも容器2の回転する時間の割合が少ない第2の条件で容器2を間欠回転させることで、特に加熱調理行程中における被調理物の焦げ付きを防止しつつ、保温工程中における無駄な容器2の回転動作を回避している。
【0077】
また図9では明確に示していないが、制御手段56は、加熱調理工程や保温工程のそれぞれにおいて、容器2への加熱量に応じて、上記第1の条件や第2の条件を変更してもよい。例えば保温工程において、加熱手段18が通電している期間中は、第2の条件で設定した容器2の回転する時間の割合を多くして容器2を回転させ、容器2に対する被調理物の焦げ付きを確実に防止する。逆に、加熱手段18が通電していない期間中は、第2の条件で設定した容器2の回転する時間の割合を少なくして容器2を回転させ、不必要な容器2の回転を避けることができる。これは、加熱調理工程において、容器2への加熱量が異なる場合にも同様に適用できる。
【0078】
その他、制御手段56は、加熱調理工程や保温工程のそれぞれにおいて、温度センサ28により検知される容器2の温度や、操作手段58により予め設定入力した被調理物の種類に応じて、上記第1の条件や第2の条件を変更してもよい。例えば加熱調理工程や保温工程において、温度センサ28の検知温度が低く、容器2に対する焦げ付きの虞れがない場合には、第1の条件や第2の条件で設定した容器2の回転する時間の割合を少なくして容器2を回転させ、逆に、温度センサ28の検知温度が高く、容器2に対し被調理物が焦げ付き易くなった場合には、第1の条件や第2の条件で設定した容器2の回転する時間の割合を多くして容器2を回転させる。また、被調理物の種類として、コンソメスープなどの粘度の低い被調理物では、第1の条件や第2の条件で設定した容器2の回転する時間の割合を少なくして容器2を回転させ、逆に、ポタージュスープなどの粘度の高い被調理物では、第1の条件や第2の条件で設定した容器2の回転する時間の割合を多くして容器2を回転させる。こうしたことにより、不必要な容器2の回転を避けつつ、容器2に対する被調理物の焦げ付きを防止できる。
【0079】
また別な例として、駆動部24として回転数を可変できるモータを用いてもよい。この場合は、加熱調理行程中において、保温工程よりも速い第1の回転速度で容器2を回転させ、保温工程中において、加熱調理工程よりも遅い第2の回転速度で容器を回転させるように、制御手段56を構成する。こうすると、加熱調理工程中は被調理物が焦げ付かないように、駆動部24ひいては容器2の回転速度が保温工程中よりも速くなり、保温工程中は無駄な電力消費を避けるために、駆動部24ひいては容器2の回転速度が加熱調理工程中よりも遅くなるので、特に加熱調理行程中における被調理物の焦げ付きを防止しつつ、保温工程中における無駄な容器2の回転動作を回避できる。
【0080】
別な例での制御手段56は、加熱調理工程や保温工程のそれぞれにおいて、容器2への加熱量に応じて、上記第1の回転速度や第2の回転速度を変更してもよい。例えば保温工程において、加熱手段18が通電している期間中は、第2の回転速度を速くして容器2を回転させ、容器2に対する被調理物の焦げ付きを確実に防止する。逆に、加熱手段18が通電していない期間中は、第2の回転速度を遅くして容器2を回転させ、不必要な容器2の回転を避けることができる。これは、加熱調理工程において、容器2への加熱量が異なる場合にも同様に適用できる。
【0081】
その他、別な例での制御手段56は、加熱調理工程や保温工程のそれぞれにおいて、温度センサ28により検知される容器2の温度や、操作手段58により予め設定入力した被調理物の種類に応じて、上記第1の回転速度や第2の回転速度を変更してもよい。例えば加熱調理工程や保温工程において、温度センサ28の検知温度が低く、容器2に対する焦げ付きの虞れがない場合には、第1の回転速度や第2の回転速度を遅くして容器2を回転させ、逆に、温度センサ28の検知温度が高く、容器2に対し被調理物が焦げ付き易くなった場合には、第1の回転速度や第2の回転速度を速くして容器2を回転させる。また、被調理物の種類として、コンソメスープなどの粘度の低い被調理物では、第1の回転速度や第2の回転速度を遅くして容器2を回転させ、逆に、ポタージュスープなどの粘度の高い被調理物では、第1の回転速度や第2の回転速度を速くして容器2を回転させる。こうしたことにより、不必要な容器2の回転を避けつつ、容器2に対する被調理物の焦げ付きを防止できる。
【0082】
上記一連の手順で、容器2の回転停止に際しては、制御手段56が各ホール素子53A,53B,53Cからの検知出力を読取り、調理器本体3の手前側に第1の取手部11が位置するように、駆動手段20の駆動部24を制御する。具体的には、容器2の回転に伴い、調理器本体3の側方に取付けたホール素子53Bに対向する位置に磁石51が通過したのを、当該ホール素子53Bからの検知出力で制御手段56が判断すると、制御手段56は駆動手段20ひいては容器2の回転速度を減速させる。その後、別なホール素子53Cに対向する位置に磁石51が通過したのを、当該ホール素子53Cからの検知出力で制御手段56が判断すると、制御手段56は駆動手段20への通電を停止して、所定時間後に駆動手段20ひいては容器2の回転を停止させる。ここでいう所定時間とは、駆動手段20への通電を停止した後も、慣性で駆動手段20や容器2が回転する時間を意味し、これらの駆動手段20や容器2が、どの程度慣性で回転するのかは、実機による測定に基づき決定される。
【0083】
なお、調理器本体3の後方に取付けたホール素子53Aは、最終的に磁石51がホール素子53Aに対向する位置で停止したことを確認するために設けられている。したがって、本実施例では3個のホール素子53(53A,53B,53C)を設けて、容器2の回転制御を行なっているが、例えばホール素子53A,53Cや、ホール素子53B,53Cの組み合わせで、2個のホール素子53により容器2の回転制御を行なってもよい。
【0084】
その後、容器2から被調理物を掬い出す場合には、先ず第1の取手部11を指で摘み、ヒンジ部10Aを支点として、第2の取手部12に突き当たる位置まで小蓋10を開け、小蓋10を立たせた状態で支持する。こうなると、開口9Aを通して容器2内の被調理物を例えばレードル(図示せず)などで掬い出すことができる。所定量の被調理物を容器2から掬い出した後は、第1の取手部11により小蓋10を移動させて、蓋9の開口9Aを塞ぐ。これにより、開口9Aを通して被調理物に異物が侵入したり、被調理物の熱が逃げたりするのを防止できる。
【0085】
ここで、容器2から被調理物を掬い出す際に、誤って調理器本体3の正面に被調理物をこぼしたとしても、被調理物はそのまま調理器本体3の正面から凹部43に到達することなく流れ落ちて、操作・表示ユニット34の露出した操作・表示パネル39には到達しない。そのため、容器2から掬い出した被調理物がこぼれても、操作・表示パネル39の汚れを確実に防止できる。
【0086】
また特に本実施例では、調理器本体3の正面と凹部43との境界に、凸部45を形成するためのフランジ44が意図的に設けられているため、調理器本体3の正面から凸部45に達した被調理物は、この調理器本体3の正面よりもさらに手前で凸部45を乗り越えて流れ落ちる。そのため、凹部43に設けた操作・表示パネル39には、調理器本体3の正面にかかった被調理物がより一層達しにくくなり、操作・表示パネル39の汚れをより確実に防止できる。
【0087】
なお、本実施例における操作・表示ユニット34は、操作体と表示体を備えた操作部および表示部としての機能を兼用しているが、例えば操作部若しくは表示部だけを備えたユニット構成であってもよく、その場合も上述した被調理物による汚れ防止を同様に発揮できる。
【0088】
以上のように本実施例では、本体である調理器本体3に設けた容器2と、容器2の開口部5を覆う蓋9と、容器2を所定状態である傾斜状態で駆動すなわち回転させる駆動手段20と、駆動手段20を制御する制御手段56と、を具備した調理器1において、容器2の回転位置を検知する検知手段としての位置検知手段54を備え、この位置検知手段54は、蓋9の例えば第2の取手部12に設けられる磁性体としての磁石51と、調理器本体3に設けられ、磁石51からの磁気を感知する感知体としてのホール素子53とにより構成される。
【0089】
この場合、蓋9に設けられる磁石51と、調理器本体3に設けられ、磁石からの磁気を感知するホール素子53とにより構成される位置検知手段54があれば、容器2の回転位置を検知することができる。そのため、この位置検知手段54からの検知出力を利用すれば、制御手段56が駆動手段20を制御して、所定の位置で容器2の回転を停止させることが可能になる。
【0090】
また、ホール素子53A,53B,53Cを複数設け、ホール素子53A,53B,53Cの数を増やすことにより、より精度の高い容器2の回転位置検知が可能になる。
【0091】
また本実施例では、調理器本体3の正面に凹部43を形成し、この凹部43に操作部および/または表示部としての操作・表示ユニット34を設け、調理器本体3の正面と凹部43との境界となる部位に、凸部45を形成している。
【0092】
この場合、容器2から被調理物を掬い出すときに、誤って調理器本体3の正面に被調理物をこぼしたとしても、操作・表示ユニット34は調理器本体3の正面よりも凹んだ凹部43に設けられているため、被調理物は操作・表示ユニット34に到達しない。したがって、容器2から掬い出した被調理物がこぼれても、操作・表示ユニット34が汚れない調理器1を提供できる。また、容器2から被調理物を掬い出すときに、誤って調理器本体3の正面に被調理物をこぼしたとしても、調理器本体3の正面と凹部43との境界に形成した凸部45によって、凹部43への侵入を確実に防止できる。よって、操作・表示ユニット34の被調理物による汚れを防止する効果を、さらに向上させることができる。
【0093】
また本実施例では、調理器本体3の正面の垂直面に孔40を形成し、凹部43は孔40を塞ぐように設けられる。こうすると、調理器本体3の正面の垂直面に形成した孔40を、凹部43で塞ぐことができる。
【0094】
さらに第1変形例では、容器2に攪拌手段である攪拌翼13を備えた調理器1において、容器2を上方である真上から見たときに、容器2の中心部と攪拌翼13の基端とを結ぶ線に対して、第1の所定角であるすくい角α1を有して攪拌翼13が設けられている。
【0095】
こうすると、容器2が回転するのに伴って、容器2内の被調理物に遠心力が作用するため、当該被調理物が第1のすくい角α1を有する攪拌翼13に乗りながら容器2の外周方向に移動し、より高い位置まで達してから攪拌翼13を離れて落下する。このため、回転する容器2内の被調理物がどのようなものであっても、被調理物は容器2内で大きく攪拌され、攪拌性能を向上させることができる。
【0096】
また第2変形例では、容器2に攪拌手段である攪拌翼13を備えた調理器1において、容器2を所定断面である垂直断面で見たときに、容器2の中心線すなわち中心軸線に対して、第2の所定角であるすくい角α2を有して攪拌翼13が設けられている。
【0097】
こうすると、容器2が回転するのに伴って、容器2内の所定部すなわち底面部にある被調理物が、第2のすくい角α2を有する攪拌翼13によって所定方向である上方に動かされて押し上げられ、容器2内の所定部である底面部と上面部との間で、被調理物を効果的に動かし、入れ替えることができる。このため、回転する容器2内の被調理物がどのようなものであっても、被調理物は容器2内の底面部と上面部との間で盛んに攪拌され、攪拌性能を向上させることができる。
【0098】
なお、上記第2のすくい角α2と共に、第1変形例で説明した第1のすくい角α1を有した攪拌翼13を、容器2の内部に設けてもよい。こうすると、攪拌翼13は第1のすくい角α1と第2のすくい角α2を共に有するので、被調理物は容器2内の底面部と上面部との間で盛んに攪拌され、且つ容器2内で大きく攪拌されることになり、攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0099】
これらの各変形例において、攪拌翼13は非磁性材であることが好ましい。容器2が加熱手段18などによって電磁誘導加熱される場合、攪拌翼13が非磁性材であれば、この攪拌翼13が発熱することはなく、被調理物が攪拌翼13に焦げ付くのを防止して、攪拌性能の低下を防ぐことができる。
【0100】
さらに、攪拌翼13の表面と容器2の内面の何れか若しくは両方に、フッ素処理を行なうことによるコーティングを形成してもよい。フッ素処理によって攪拌翼13や容器2への被調理物の付着を防ぎ、また攪拌翼13の所定部である表面や容器2の所定部である内面と被調理物との間の滑り性が良くなるので、攪拌性能をさらに向上させることができる。
【0101】
本実施例における制御手段56は、加熱調理中に第1の条件で容器2を駆動すなわち間欠回転させ、保温中に第2の条件で容器2を駆動すなわち間欠回転させる構成となっている。こうすると、例えば容器2への加熱量が多い調理中には、第1の条件として回転時間を長くして容器2を間欠回転させ、容器2への加熱量が少ない保温中には、第2の条件として第1の条件よりも回転時間を短くして容器2を間欠回転させることができる。そのため、調理中と保温中のそれぞれにおいて、適正な条件で容器2を間欠回転させて、攪拌性能を向上させることができ、被調理物が焦げ付くなどの不具合を防止できる。また、間欠回転時における容器2の回転速度は一定でよく、回転数の可変が必要な高価な駆動手段20を用いなくても、安価に攪拌性能を向上させることができる。さらに、回転により容器2内の被調理物を攪拌するので、被調理物全体を均一に加熱することができる。
【0102】
この場合の制御手段56は、加熱量に応じて第1条件や第2の条件を変えるものであることが好ましい。こうすると、例えば加熱量が多い時には焦げ付き易いので、間欠運転の回転している時間を長くし、逆に加熱量の少ない時には焦げ付きにくく、それほど頻繁に攪拌する必要がないので、間欠運転の回転している時間を短くすることができる。このように、安価な一定回転の駆動手段20で、加熱量に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0103】
また、容器2の温度を検知する検知手段としての温度検知手段19を備え、この温度検知手段19からの検知温度に応じて、第1の条件や第2の条件を変えるように、制御手段56を構成してもよい。こうすると、例えば温度検知手段19による検知温度が高くなり、焦げ付き易くなった場合には、間欠運転の回転している時間を長くし、逆に温度検知手段19による検知温度が低くなり、焦げ付きにくくなった場合には、間欠運転の回転している時間を短くすることができる。このように、安価な一定回転の駆動手段20で、容器2ひいては被調理物の温度に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0104】
さらに制御手段56は、被調理物の例えば種類に応じて第1の条件や第2の条件を変えるものであってもよい。この場合、例えばコンソメスープなどの粘度の低い種類の被調理物では、焦げ付きを生じにくいので、間欠運転の回転している時間を短くし、逆に例えばポタージュスープなどの粘度の高い種類の被調理物では、焦げ付きを生じ易いので、間欠運転の回転している時間を短くする。このように、安価な一定回転の駆動手段20で、調理物に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0105】
また、別な例として説明した制御手段56は、調理中に第1の駆動速度である回転速度で容器2を回転させ、保温中に第2の駆動速度である回転速度で容器2を回転させるように構成している。こうすると、例えば容器2への加熱量が多い調理中には、第1の回転速度で速度を早くして容器2を回転させ、容器2への加熱量が少ない保温中には、第2の回転速度で第1の回転速度よりも速度を遅くして容器2を回転させることができる。そのため、調理中と保温中のそれぞれにおいて、適正な速度で容器2を回転させて、攪拌性能を向上させることができ、被調理物が焦げ付くなどの不具合を防止できる。また、回転により容器2内の被調理物を攪拌するので、被調理物全体を均一に加熱することができる。
【0106】
この場合の制御手段56は、加熱量に応じて前記第1の回転速度や第2の回転速度を変えるものであることが好ましい。こうすると、例えば加熱量が多い時には焦げ付き易いので、容器2の回転速度を速くし、逆に加熱量の少ない時には焦げ付きにくく、それほど頻繁に攪拌する必要がないので、容器2の回転速度を遅くすることができる。このように、容器2の回転速度を調節し、加熱量に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0107】
また、容器2の温度を検知する検知手段としての温度検知手段19を備え、この温度検知手段19からの検知温度に応じて、第1の回転速度や第2の回転速度を変えるように、制御手段56を構成してもよい。こうすると、例えば温度検知手段19による検知温度が高くなり、焦げ付き易くなった場合には、容器2の回転速度を速くし、逆に温度検知手段19による検知温度が低くなり、焦げ付きにくくなった場合には、容器2の回転速度を遅くする。このように、容器2の回転速度を調節し、容器2ひいては被調理物の温度に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0108】
さらに制御手段56は、被調理物の種類に応じて第1の回転速度や第2の回転速度を変えるものであってもよい。これにより、例えばコンソメスープなどの粘度の低い種類の被調理物では、焦げ付きを生じにくいので、容器2の回転速度を遅くし、逆に例えばポタージュスープなどの粘度の高い種類の被調理物では、焦げ付きを生じ易いので、容器2の回転速度を速くすることができる。そのため、容器2の回転速度を調節し、被調理物の種類に応じた最適な攪拌を、調理中と保温中のそれぞれにおいて実現でき、被調理物が焦げ付くなどの不具合を確実に防止できる。
【0109】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【符号の説明】
【0110】
2 容器
3 調理器本体(本体)
9 蓋
13 攪拌翼(攪拌手段)
19 温度検知手段(検知手段)
20 駆動手段
34 操作・表示ユニット34(操作部,表示部)
40 孔
43 凹部
45 凸部
54 位置検知手段(検知手段)
56 制御手段
α1 第1のすくい角(第1の所定角)
α2 第2のすくい角(第2の所定角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に設けた容器と、該容器を覆う蓋と、前記容器を傾斜状態で駆動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備した調理器において、
前記本体の正面に凹部を形成し、この凹部に操作部および/または表示部を設け、
前記本体の正面と前記凹部との境界に凸部を形成したことを特徴とする調理器。
【請求項2】
前記本体の正面の垂直面に孔を形成し、前記凹部は前記孔を塞ぐように設けられたことを特徴とする請求項1記載の調理器。
【請求項3】
本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備し、
前記容器に攪拌手段を備えた調理器において、
前記容器を上方から見たときに、前記容器の中心部と前記攪拌手段とを結ぶ線に対して、第1の所定角を有して当該攪拌手段が設けられることを特徴とする調理器。
【請求項4】
本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備し、
前記容器に攪拌手段を備えた調理器において、
前記容器を所定断面で見たときに、前記容器の中心線に対して、第2の所定角を有して当該攪拌手段が設けられることを特徴とする調理器。
【請求項5】
前記容器を上方から見たときに、前記容器の中心部と前記攪拌手段とを結ぶ線に対して、第1の所定角を有して当該攪拌手段が設けられることを特徴とする請求項4記載の調理器。
【請求項6】
前記攪拌手段が非磁性材であることを特徴とする請求項3〜5の何れか一つに記載の調理器。
【請求項7】
前記攪拌手段の所定部および/または前記容器の所定部にフッ素処理を行なうことを特徴とする請求項3〜6の何れか一つに記載の調理器。
【請求項8】
本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記加熱手段または前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備した調理器において、
前記制御手段は、調理中に第1の条件で前記容器を駆動させ、保温中に第2の条件で前記容器を駆動させるものであることを特徴とする調理器。
【請求項9】
前記制御手段は、加熱量に応じて前記第1および/または第2の条件を変えるものであることを特徴とする請求項8記載の調理器。
【請求項10】
温度を検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記検知温度に応じて前記第1および/または第2の条件を変えるものであることを特徴とする請求項8記載の調理器。
【請求項11】
前記制御手段は、被調理物に応じて前記第1および/または第2の条件を変えるものであることを特徴とする請求項8記載の調理器。
【請求項12】
本体に設けた容器と、容器を覆う蓋と、前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器を所定状態で駆動させる駆動手段と、前記加熱手段または前記駆動手段を制御する制御手段と、を具備した調理器において、
前記制御手段は、調理中に第1の駆動速度で前記容器を駆動させ、保温中に第2の駆動速度で前記容器を駆動させるものであることを特徴とする調理器。
【請求項13】
前記制御手段は、加熱量に応じて前記第1および/または第2の駆動速度を変えるものであることを特徴とする請求項12記載の調理器。
【請求項14】
温度を検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記検知温度に応じて前記第1および/または第2の駆動速度を変えるものであることを特徴とする請求項12記載の調理器。
【請求項15】
前記制御手段は、被調理物に応じて前記第1および/または第2の駆動速度を変えるものであることを特徴とする請求項12記載の調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−40404(P2012−40404A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230267(P2011−230267)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【分割の表示】特願2008−29737(P2008−29737)の分割
【原出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(390010168)東芝ホームテクノ株式会社 (292)
【Fターム(参考)】