説明

調理機器

【課題】食品を蒸し器で蒸すと同時に、食品から出る水分と食品とを分離して、後の調理に有効利用することができ、さらに、餅つき器としても利用可能な調理機器を提供する。
【解決手段】蒸気発生手段により発生する蒸気が下端の貫通穴から導入されて加熱蒸気槽となるホッパーと、該ホッパーの上端開口に取り付ける蓋と、ホッパー内部に着脱自在に収容すると共に、収容時に該ホッパー底面およびホッパー内周面と蒸気導通用の間隔をあけて支持される蒸し台を備え、蒸し台の底壁は高低差を設けていると共に該底壁の窪み部には食品支持片を間隔をあけて立設し、該食品支持片の上面に食品を載置すると底壁との間に液体を分離して溜める液溜め部が形成され、かつ、前記ホッパーの下端の貫通穴を通して攪拌羽根を備えた回転軸を該ホッパーの下部に突出可能とし、該回転軸および攪拌羽根の上部に前記蒸し台を位置させ、該蒸し台の非収容時には前記ホッパーを餅つき容器と兼用できる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸し器と餅つき器として兼用できる調理機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食物の加熱調理法には、焼く、揚げる、煮る、茹でる、蒸す方法がある。これらの加熱調理法の中で、蒸気で食品を蒸す方法は、素材の栄養や旨み成分を閉じ込める一方、余分や油分を落とすことからヘルシーな料理法である。さらに、素材の状態よりも旨みや甘さが出て、美味しくなる場合もあり、野菜の糖度で比較すると1〜4度も向上すると言われている。
【0003】
従来から提供されている一般的な蒸し器は、網状のザル類や穴あき皿を蒸し台として容器の中段に保持し、その下部を水溜め部とし、該水溜め部に溜めた水を加熱し、発生した蒸気を蒸し台の穴を通して噴出させ、蒸し台の上面に載置する食品を蒸す構成とされている。よって、食品を蒸した時に発生する水分や油分は下部の水溜め部分に落下し、水溜め部の底面や周面に固着し、場合によってはこびりついてしまい洗浄が必要となる。また、水溜め部に落下した油分や水分は水溜め部内の水と混合してしまい、この食品から発生する旨み成分を含む油分や汁分を他の調理に利用することもできない。
【0004】
例えば、特開2007−271104号公報で提案されている蒸気発生機能付きの加熱調理器具も前記と同様な問題を有している。該加熱調理器具は、図7に示すように、加熱室6内の食品載置台1の上に蒸し器2が設置され、該蒸し器2の仕切り板3に食品を載置し、蒸気発生ノズル4から蒸し器2に蒸気を噴射して食品Fを蒸す構成としている。前記仕切り板3は、蒸気が抜けるように多数穴3aがあいており、蒸し器2内の蒸気は食品Fを加熱した後、蒸し器2の壁面で結露し、結露した水滴は蒸し器の底部に溜まって残水5となる。
【0005】
前記加熱調理器具では蒸気発生ノズル4から加熱室6内に蒸気を噴射し、加熱室6内で結露した水は蒸し器2の底部に溜まると共に、食品Fを載置している蒸し器2の仕切り板3には多数の穴3aがあいているため、蒸す際に食品Fから水分や油脂分も蒸し器2の底部に溜まって残水となる。蒸し工程後、該蒸し器2の蓋を取って底部に溜まった残水5を捨てても、食品の成分を含んだ水分や油脂分が底部に付着するため、底部の洗浄が必要となり手間がかかる。また、食品のうまみ成分を含んだ水分が結露水と共に底部に流れてしまうため、該水分をその後の料理に有効利用することができない。
【0006】
さらに、従来提供されている蒸し器は、蒸し器専用であって、該蒸し器を餅つき器として兼用できる構成とはされていない。
よって、蒸し器と餅つき器の両方が必要な場合、2個の調理器を購入して保管しておく必要がある。特に、餅つき器は、通常、定期的に利用されることが少ないため、保管スペースが必要となる。一般的な家庭において、炊飯器を含め、電子レンジ、トースター、オーブン、ジューサー等は所持しており、さらに、蒸し器、餅つき器、パン焼き器、フードプロセッサー等の種々の調理器を保持しようとすると、それらの保管スペースが問題となる。よって、多機能に使用できる調理器であることが好ましい。特に、餅つき器は比較的使用頻度が少ない割りに大型の調理器であるため、他の調理機器と兼用できるようにすることが望ましい。
【0007】
【特許文献1】特開2007−271104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、食品を蒸し器で蒸す際に食品から出る水分や油脂分と食品とを分離すると共に、蒸気発生用の水とは混合させず、食品より発生する旨み成分を有する水分を後の調理に有効利用することができ、さらに、餅つき器としても兼用可能な調理機器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、蒸気発生手段により発生する蒸気が下端の貫通穴から導入されて加熱蒸気槽となるホッパーと、
前記ホッパーの上端開口に取り付ける蓋と、
前記ホッパー内部に着脱自在に収容すると共に、収容時に該ホッパーの底面およびホッパーの内周面と蒸気導通用の間隔をあけて支持される蒸し台を備え、
前記蒸し台は、穴を有しない底壁と、周壁を有する形状とし、前記底壁は高低差を付けて隆起部と窪み部を設け、窪み部から食品支持片を間隔をあけて立設し、該食品支持片の上面を食品載置面とし、該食品載置面と前記底壁との間に液体を分離してためる液溜め部を設け、
かつ、前記ホッパーの下端の貫通穴を通して攪拌羽根を備えた回転軸を該ホッパーの下部に突出可能とし、該回転軸および攪拌羽根の上部に前記蒸し台を位置させ、該蒸し台の非収容時には前記ホッパーを餅つき容器と兼用可能であることを特徴とする調理機器を提供している。
【0010】
本発明の調理機器では、下端の貫通穴から蒸気が導入されるホッパー内に蒸し台を配置することにより蒸し器となり、該蒸し台は、餅つき器とする場合に撹拌羽根の上部に配置する構成としているため、該蒸し台を取り除くと撹拌羽根がホッパー内に露出して餅つき器として利用することができる。あるいは、蒸し台を取り除き、回転軸を前記貫通穴を通して回転駆動手段に連結することで、餅つき器とすることができる。
即ち、餅つき器では、まず、糯米を蒸すことより、この蒸す動作が蒸し器と同様の機能と同じであるため、蒸し器と餅つき器とを兼用できる構成としている。
【0011】
特に、本発明では、ホッパー内に配置する蒸し台は従来の蒸し台とは異なり蒸気噴出用の穴を設けておらず、蒸気は、ホッパーの底面と蒸し台の底面との間から、蒸し台の外周面とホッパーの内周面の隙間を通り、蒸し台の上方へと流入して、食品を蒸している。
このように食品を蒸すことにより、食品から出る油分や水分は、食品を載置している食品支持片から蒸し台上の液溜め部に溜めることができ、蒸し台の底壁に穴がないため、ホッパーの底壁側へと落下しない。よって、ホッパーに食品の水分や油脂分が付着することがなく、簡単に取り出すことのできる蒸し台を洗浄するだけで済み、加熱蒸気層であるホッパーまで洗浄する必要がないため、ホッパーを洗浄する手間を省くことができる。
また、食品支持片上の食品から出る油脂分や水分のみを液溜め部に溜めることができ、蒸気発生用の水と混合されないため、その後の調理に再利用することができる。
【0012】
さらに、蒸し台は、ホッパーの内周面と蒸気導通用の間隔をあけて支持されているため、ホッパーの内周面を伝って流れる結露水が蒸し台内部に浸入することはなく、蒸し台に載置している食品に結露水が付着するのを防止することができる。
前記ホッパーの上端開口に取り付ける蓋は上方に膨らんだ円弧状としているのが好ましく、その場合、蓋の内面側の結露水は円弧状の蓋内面に沿って流れ、その後、ホッパー内周面を伝って流れていく。そのため、結露水が蒸し台に載置した食品に直接落ちることがないため、布巾などを食品に被せる必要がない。
【0013】
本発明の調理機器の蒸し台は、家庭で使用する一人または二人用などの少人数用の調理機器としている。 また、前記蒸し台は底壁に穴があいていないため、蒸し上がった食品を載置した状態で取り出し、そのまま食器としても使用することができる。
前記蒸し台の底壁の高低差は、1〜15mmが好ましく、特に、2〜8mmが好ましい。
なお、前記攪拌羽根は回転軸に着脱自在に取り付け可能とするのが好ましいか、一体としてもよい。
【0014】
前記ホッパーの下端貫通穴から予め前記回転軸を突出させ、該回転軸に前記攪拌羽根を取り付けて餅つき容器としており、前記ホッパーの下部に前記蒸気発生手段の電気加熱式のボイラを配置すると共に前記回転を回転駆動させるモータとを配置し、これらホッパー、ボイラおよびモータをケース内部に収容し、
かつ、前記蒸し台は前記底壁から支持脚を突設し、該支持脚を前記ホッパーの底壁に定置させて前記回転軸および攪拌羽根の上部に位置させていることが好ましい。
【0015】
蒸し器として使用する場合には、ボイラで発生した蒸気で食品を蒸す一方、餅つき容器で使用する場合には、ボイラで発生させた蒸気で糯米を蒸した後、蒸した糯米をモータで回転させる撹拌羽根でこねて搗いていく。このように、蒸す機能を蒸し器と餅つき器とで共通化させている。
また、蒸し台の底壁から支持脚を突設させていることで、ホッパー下端の蒸気孔となる貫通穴から所定の距離を保持することができるため、食品に均等に熱を通すことができると共に、餅つき用の撹拌羽根および回転軸を装着した状態でも食品を蒸すことが可能となる。
【0016】
前記蒸し台の底壁は中央に前記隆起部を設け、該隆起部から周縁にむけた下方傾斜させて前記窪み部を周状に設け、かつ、
前記食品支持片は中央の隆起部から周縁にむけて放射状に立設させ、あるいは複数の突設部を所定間隔をあけて立設させ、これら食品支持片の上面は同一高さすると共に、前記周壁の高さは食品支持片の高さ以上としているのが好ましい。
【0017】
蒸し台の底壁を周縁に向けて下方に傾斜させていることで、食品から出た水分が該底壁の周縁に向かって流れていくため、確実に食品から出た水分や油脂分と食品とを分離することができる。
なお、蒸し台の底壁の傾斜角度は、3〜30度が好ましく、特に、5〜15度が好ましく、食品支持片は周方向に5〜30度の間隔をあけて設けているのが好ましく、特に、10〜15度が好ましい。
【0018】
前記蓋に開口面積を調節可能とした蒸気排出孔を設け、かつ、
前記蒸し台は、周壁上端に一対の取手部を備え、あるいは前記底壁の中央部から把持用掴み部を突設しているのが好ましい。
前述したように、蓋に蒸気排出孔を設けると、食品ごとにホッパー内の蒸気量を調整することができると共に、蒸し時間の調整もすることができ、食品をおいしく調理することができる。
【発明の効果】
【0019】
前述したように、本発明によれば、蒸し器専用ではなく、餅つき器と兼用できる調理機器としているため、使い勝手が良いと共に保管スペースを取らない利点がある。
また、餅つき器と共用で用いるホッパー内に載置する蒸し台には、蒸気噴出用の穴は設けず、蒸し台の外周面とホッパーの内周面の隙間から蒸気を噴出させ、かつ、蒸し台に突設する食品支持片に食品を載置し、食品から出る水分あるいは不要な油脂分を液溜め部に流れ出させているため、食品から出る水分あるいは油脂分を蒸し台の液溜め部に食品と分離して溜めることができる、かつ、ホッパーの底部側へ流れてホッパーに付着することはないため、ホッパーを洗浄する手間が不要となる。
さらに、蒸し台の液溜め部には、食品から発生する油脂分や水分のみが溜まるため、その後の調理に該水分を有効利用することができる。
さらにまた、前記蒸し台は、ホッパーの内周面と蒸気導通用の間隔をあけて支持されているため、ホッパーの内周面を伝って流れる結露水が蒸し台内部に浸入することはなく、蒸し台に載置している食品に結露水が付着するのを防止することができる。
【0020】
また、蒸し台の底壁から支持脚を突設させるとすると、ホッパー下端の蒸気孔となる貫通穴から所定の距離を保持することができるため、食品に均等に熱を通すことができると共に、餅つき用の撹拌羽根および回転軸を装着した状態でも食品を蒸すことができる。
さらに、蒸し台の底壁を周縁に向けて下方に傾斜させると、食品から出た水分が該底壁の周縁に向かって流れていくため、確実に食品から出た水分や油脂分と食品とを分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に本発明の第1実施形態を示す。
本発明の調理機器10は加熱蒸気層となるホッパー12と、該ホッパー12の上端開口に取り付ける蓋13と、ホッパー12内に着脱自在に収容する蒸し台14とを備えている。ホッパー12の下部には蒸気発生手段のボイラ15および回転駆動手段のモータ16を配置し、前記ホッパー12、ボイラ15およびモータ16をケース11内部に収容している。
本発明の調理機器10は、主に食品を蒸す蒸し器として使用するものであるが、糯米を蒸してつく餅つき器としても使用できるものであり、家庭で使用する少人数用の調理機器としている。
【0022】
前記蒸し台14は、食品Fを載置してホッパー12に収容するものであるが、餅つき器として使用する場合はホッパー12内から取り出している。
該蒸し台14は耐熱樹脂製であり、図2(A)(B)に示すように、円形状の底壁14aから周壁14bを立設させた円形容器状としている。該蒸し台14の周壁14bは、ホッパー12への収容時にホッパー12内周面と間隔をあけて配置可能な径に設定しており、後述するホッパー周壁12dの内周面と蒸し台周壁14bの外周面との隙間S1は蒸気導通用の隙間となる。
【0023】
前記底壁14a内面の中央には隆起部14cを設け、該隆起部14cから周縁に向けて下方に傾斜させ、窪み部14dを周状に設けている。前記隆起部14cからは、上面に食品を載置する細幅の食品支持片14gを間隔をあけて放射状に立設している。該食品支持片14gの上面は隆起部14cと同一高さとしており、該食品支持片14gと底壁14aとの間には、食品から発生した液体Uを分離して溜める断面三角形状の液溜め部14hを形成している。
本実施形態では、食品支持片14gの周方向の角度βは約21度としている。
【0024】
また、前記底壁14aの隆起部14cからは上方に向けて把持用掴み部14eを突設しており、該把持用掴み部14eを手で掴んでホッパー12に蒸し台14を出し入れできるようにしている。該把持用掴み部の高さ14eは、蒸し台14の周壁14bよりも高く設定しており、先端にはすべり止め用の複数の凹部14fを設けている。
蒸し台14の底壁14aからは4本の支持脚14iを突設し、後述するホッパー12の底面12cに該支持脚14iを定置させ、ホッパー底面12cと蒸気導通用の間隔S2をあけて支持している。
なお、本実施形態では、底壁14aの傾斜角度αは5度とし、底壁14aの高低差Hを5mmとしている。
【0025】
前記ホッパー12は、底面12cから周壁12dがすり鉢状に立設した形状としており、ケース11に着脱自在に取り付け可能としている。該底面12cの中央部には貫通穴12aを設け、該貫通穴12aはホッパー12下部のボイラ15と連通し、該貫通穴12aを通してボイラ15からの蒸気をホッパー12内部に導入している。
【0026】
前記調理機器10を餅つき器と兼用できるものとしているため、回転軸21をホッパー12の底面12cより突出し、前記貫通穴12aに回転軸21の軸部を突出している。回転軸21には糯米の搗きこね用の攪拌羽根17を着脱自在に取り付けており、該攪拌羽根17および回転軸17を装着させた状態で、前記蒸し台14を攪拌羽根17および回転軸21の上部に位置させている。
ホッパー12の底面12cには、貫通穴12aを囲むように溝部12bを設けており、該溝部12bに後述する撹拌羽根17のスカート部17bを嵌合している。
なお、回転軸21と撹拌羽根17とは一体としてもよい。
【0027】
前記ホッパー12下部には、前述したように、ボイラ15を固定しており、ボイラ15に入れた水をボイラ15窪み部の裏面に設けたヒータ18により加熱して蒸気としている。該ボイラ15は中央に挿通孔15bを設けた円環状としており、該挿通孔15bにホッパー12の貫通穴12aから挿入した回転軸21を挿通可能としている。
前記回転軸21を装着した状態で、ボイラ15の蒸気は、ボイラ蓋部15aからホッパー12の貫通穴12aと回転軸21との隙間を通ってホッパー12内に導入している。
【0028】
ボイラ15からホッパー12に導入された蒸気は、ホッパー底面12cと蒸し台14の底壁14aとの隙間S2を通り、ホッパー周壁12dの内周面と蒸し台周壁14bの外周面との隙間S1を通って、蒸し台14内に蒸気を充満させて食品Fを蒸している。
ボイラ15の周壁にはボイラ15の温度を検知するサーモスタット19を取り付けている。
【0029】
搗きこね用の撹拌羽根17は、図3に示すように、円筒部17aの下部から円錐状のスカート部17bを突出させ、先端の円筒部およびスカート部17bの周壁面から放射方向に突出させた突起状の羽根部17cを設けている。
【0030】
前記ホッパー12の上端開口を閉鎖する蓋13は、上方に膨らんだ円弧状とし、中央部には開口面積を調節可能とした蒸気排出孔13aを設け、該蒸気排出孔13aから余分な蒸気を外部に排出している。該蒸気排出孔13aにはスライド式調整弁13bを付設しており、該スライド式調整弁13bをスライドさせることで、蒸気排出孔13aの開口面積を調整している。
前記モータ16はボイラ15の下部にボルト締め固定しており、モータ16の回転を直接回転軸21に伝えている。前記回転軸21はモータ16に着脱自在としている。
【0031】
前記ケース11の正面の外側面にスイッチ部20を設けている。該スイッチ部20は、図4に示すように、「切」、「蒸す」、「つく」のボタン20a〜20cと、調理機器10が蒸している間に点灯するランプ20dを設けている。さらに、ケース11内のスイッチ部20周辺に食品あるいは糯米が蒸し上がったことを報知するためのブザー(図示せず)を設けている。
【0032】
次に、本発明の調理機器を蒸し器として使用する場合の作動について説明する。
蒸し台14の食品支持片14gに野菜や肉などの食品Fを載置した状態で、蒸し台14をホッパー12内に収容する。その後、蓋13をホッパー12上面開口に被せ、蒸気排出孔13aのスライド式調整弁13bを調整し、食品に応じた開口面積に設定する。
ついで、スイッチ部20の「蒸す」ボタン20bを押すと、ヒータ18に通電し、ボイラ15の水が沸騰して蒸気が発生する。蒸気はホッパー12の貫通穴12a、ホッパー12内周面と蒸し台該周面との隙間S1を通って蒸し台14内に入り食品Fを蒸す。設定時間になると、ヒータ18への通電が停止する。ホッパー12内で発生した結露水は、ホッパー周壁12dを伝って底面12cに溜まり、残水Qとなる。
ボイラ15の水が無くなった場合は、ボイラ15の温度が上昇し、設定温度に達するとサーモスタット19が検知してヒータ18への通電を停止する。
【0033】
次に、本発明の調理機器を餅つき器として使用する場合の作動について説明する。
餅つき器として使用する場合は、図3に示すように、ホッパー12内から蒸し台14を取り出した状態で、回転軸21をホッパー12の貫通穴12aに装着してモータ16と連結させ、回転軸21に撹拌羽根17を取り付ける。
ついで、ホッパー12内に所定量の吸水した糯米を入れ、蓋13を被せる。スイッチ部20の「蒸し」ボタン20bを押すと、前述した蒸し器の場合と同様にボイラ15が作動して糯米を蒸す。次に、蓋13を取り外し、スイッチ部20の「つく」ボタン20cを押して、モータ16を駆動させ、回転軸21を回転させて蒸しあがった糯米Mを羽根部17cで搗きこねする。搗きこねる作動が終了すると、スイッチ部20の「切る」20aボタンを押して、撹拌羽根17の作動を停止させる。
【0034】
前記構成とすると、蒸し台14の食品支持片14gに食品Fを載置しており、食品Fから出る水分あるいは不要な油脂分を液溜め部14hに流れ出させることで、該水分あるいは油脂分などの液体Uと食品Fとを分離することができる。よって、肉や魚などの余分な油脂分を取り除くことができると共に、野菜などの食品Fから出る水分を採取することができるため、その後の調理に該水分を有効利用することができる。
【0035】
また、ホッパー周壁12dの内周面と蒸し台周壁14bの外周面との蒸気導入用の隙間S1を設けているため、ホッパー12の内周面に付着した結露水が、蒸し台14に入ることを防止することができる。
さらに、蒸し台14の底壁から支持脚14iを突設させていることで、ホッパー12下端の蒸気孔となる貫通穴12aから所定の距離を保持することができるため、食品Fに均等に熱を通すことができると共に、餅つき用の撹拌羽根17および回転軸21を装着した状態でも食品Fを蒸すことができる。
【0036】
図5に本発明の第2実施形態の調理機器を示す。
本実施形態の調理機器は、蒸し台14の底壁14a中央部に把持用掴み部14eを設けるのではなく、周壁14b上端に一対の取手部14jを突設している点を第1実施形態と相違させている。
前記取手部14jは蒸し台14と一体成形されているが、取手部14jを蒸し台14とは別体とし、蒸し台14と取手部14jとの連結部を上下方向に可動させ、ホッパー12に収容する際に周壁14bに沿って折りたためる構成としてもよい。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図6に本発明の第3実施形態の調理機器を示す。
本実施形態では、蒸し台14の食品支持片を放射状に設けているのではなく、複数の突起部14kを所定間隔をあけて立設している点を第1実施形態と相違させている。前記突起部14kは細幅としており、長さ方向を同一としている。なお、本実施形態では突起部は8個としているが個数は限定されず、配置パターンも限定されない。
他の構成および作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、蒸し器として使用する場合の調理機器の正面断面図である。
【図2】蒸し台を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図3】餅つき器として使用する場合の正面断面図である。
【図4】スイッチ部の説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示し、蒸し台の斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示し、(A)は蒸し台の斜視図、(B)は(A)の平面図である。
【図7】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 調理機器
11 ケース
12 ホッパー
12a貫通穴
13 蓋
13a 蒸気排出孔
14 蒸し台
14a 底壁
14b 周壁
14c 隆起部
14d 窪み部
14e 把持用掴み部
14g 食品支持片
14h 液溜め部
14i 支持脚
14j 取手部
15 ボイラ
16 モータ
17 撹拌羽根
21 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生手段により発生する蒸気が下端の貫通穴から導入されて加熱蒸気槽となるホッパーと、
前記ホッパーの上端開口に取り付ける蓋と、
前記ホッパー内部に着脱自在に収容すると共に、収容時に該ホッパーの底面およびホッパーの内周面と蒸気導通用の間隔をあけて支持される蒸し台を備え、
前記蒸し台は、穴を有しない底壁と、周壁を有する形状とし、前記底壁は高低差を付けて隆起部と窪み部を設け、窪み部から食品支持片を間隔をあけて立設し、該食品支持片の上面を食品載置面とし、該食品載置面と前記底壁との間に液体を分離してためる液溜め部を設け、
かつ、前記ホッパーの下端の貫通穴を通して攪拌羽根を備えた回転軸を該ホッパーの下部に突出可能とし、該回転軸および攪拌羽根の上部に前記蒸し台を位置させ、該蒸し台の非収容時には前記ホッパーを餅つき容器と兼用可能であることを特徴とする調理機器。
【請求項2】
前記ホッパーの下端貫通穴から予め前記回転軸を突出させ、該回転軸に前記攪拌羽根を取り付けて餅つき容器としており、前記ホッパーの下部に前記蒸気発生手段の電気加熱式のボイラを配置すると共に前記回転を回転駆動させるモータとを配置し、これらホッパー、ボイラおよびモータをケース内部に収容し、
かつ、前記蒸し台は前記底壁から支持脚を突設し、該支持脚を前記ホッパーの底壁に定置させて前記回転軸および攪拌羽根の上部に位置させている請求項1に記載の調理機器。
【請求項3】
前記蒸し台の底壁は中央に前記隆起部を設け、該隆起部から周縁にむけた下方傾斜させて前記窪み部を周状に設け、かつ、
前記食品支持片は中央の隆起部から周縁にむけて放射状に立設させ、あるいは複数の突設部を所定間隔をあけて立設させ、これら食品支持片の上面は同一高さとすると共に、前記周壁の高さは食品支持片の高さ以上としている請求項1または請求項2に記載の調理機器。
【請求項4】
前記蓋に開口面積を調節可能とした蒸気排出孔を設け、かつ、
前記蒸し台は、周壁上端に一対の取手部を備え、あるいは前記底壁の中央部から把持用掴み部を突設している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の調理機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−131366(P2009−131366A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308701(P2007−308701)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】