説明

調理用成型容器及びその製造方法

【課題】
脱落繊維がなく、調理性、離型性に優れた、通気性を有する調理用成型容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
不織布(A)と、熱可塑性フイルム(B)との積層シートを該積層シートのフイルム面を内側にして一体成型した成型容器であって、該積層シートのフイルム面に直径が0.1mm〜1mm、個数が10〜250個/cm2の孔を有し、該積層シートの温度100℃下の破断伸度が50%以上であり、該成型容器の展開比(深さ/口径)が0.2〜1.0であり、該成型容器の収縮率が10%以下である調理用成型容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用成型容器及びその製造方法に関し、特に蒸し調理に適した通気性を有し、繊維の付着が少なく、食品との離型性が良好な、調理用成型容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤飯、饅頭、パン、などの蒸し調理に、クッキングペーパー、硫酸紙等が使用されている。蒸し調理性を向上させる目的で、孔の大きさや間隔が大きい孔開け加工シートが利用されている。しかし、食品の底面部分が孔の部分からのスチーム加熱であり、調理時間がかかるなどの蒸し調理性が不十分であることなどの問題がある。
又、通気性を有する不織布の成型容器があるが、通気性は十分であるが、食品が不織布の繊維間隙に食い込むなどで離型性が悪いこと、また、表面が毛羽立ち易く、脱落繊維が付着することなどの問題がある。
【0003】
特許文献1には、耐熱性プラスチックと無数の小孔を設けたフイルムとのラミネートした食品蒸し用トレイが開示されているが、水蒸気の通過する小孔の間隔があることや、廃棄処理の問題がある。
【特許文献1】特開平04−242574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、蒸し調理に適した均一な通気性を有し、食品に繊維の付着が少なく、食品との離型性が良好な、調理用成型容器及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために、不織布とフィルムを積層した熱成形性を有する積層シートを用い、フィルム面に特定範囲の微小な開孔を持たせ、特定範囲の展開比で一体成型することで、調理用に適した成型容器を見出し、本発明に到達した。即ち、本発明は、以下の通りである。
(1)不織布(A)と、熱可塑性フイルム(B)との積層シートを該積層シートのフイルム面を内側にして一体成型した成型容器であって、該積層シートのフイルム面に直径が0.1mm〜1mm、個数が10〜250個/cm2の孔を有し、該積層シートの温度100℃下の破断伸度が50%以上であり、該成型容器の展開比(深さ/口径)が0.2〜1.0であり、該成型容器の収縮率が10%以下であることを特徴とする調理用成型容器。
(2)前記積層シートのフイルム面に直径が0.15〜0.8mm、間隔が0.5〜5mm、個数が20〜200個/cm2の孔を有していることを特徴とする上記(1)記載の調理用成型容器。
(3)前記不織布(A)の平均繊維径が10〜25μm、目付けが50〜300g/m2、前記フイルム(B)の厚みが15〜100μmであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の調理用成型容器。
【0006】
(4)前記不織布(A)の融点が、前記フイルム(B)の融点より30℃以上高いことを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の調理用成型容器。
(5)前記不織布(A)が、温度100℃下の破断伸度が50%以上のポリエステル系長繊維不織布であり、前記フイルム(B)がポリオレフイン系樹脂からなることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の調理用成型容器。
(6)前記不織布(A)が脂肪族ポリエステル系繊維からなることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の調理用成型容器。
(7)熱可塑性樹脂をTダイから押し出したフイルム(B)と、該フイルム(B)の厚みの2倍以上で、融点が30℃以上高い不織布(A)とを貼り合わせて積層シートとし、該積層シートのフイルム(B)の上面からレーザーを照射して、実質的にフイルム(B)面のみを加熱融解して孔加工をした後、該積層シートのフイルム面を成型容器の内側とし、展開比(深さ/口径)が0.2〜1.0となるように一体成型加工することを特徴とする調理用成型容器の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調理用の成型容器は、不織布とフィルムを積層した熱成形性を有する積層シートを用いて、フイルム面を内側にして一体成型された容器であり、フイルム面に微細な孔が小さい間隔で均一に多数存在しているため、蒸気の通気性が良好であり、容器の各部位で通気性が均一であり、斑のない蒸し処理が可能となる。さらに、容器の内側がフィルム面であり、不織布を構成する繊維のフィルム面の孔からの飛び出しを防止でき、食品への繊維の付着がなく、食品と容器の離型性、剥離性がよい。また、食品を入れた状態で密封でき、収縮率が少なく容器の寸法安定性が良好であり、蒸し、加熱、再加熱、燻製等の調理ができ、しかも、調理後は、食品容器としても利用ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の成型容器に用いる積層シートは、不織布(A)(以下、不織布とも言う。)とフイルム(B)(以下、フィルムともいう。)との積層した積層シートであり、特殊な開孔構造を有している。具体的には、積層シートのフイルム面には、直径0.1mm以上1mm以下の微小な孔が、小さい間隔で、多数有しており、特に、この開孔は実質的にフィルム層にのみ貫通した開孔を有し、不織布層には、貫通していないことが特徴である。
【0009】
本発明の成型容器は、積層シートのフイルム面を内側にして、展開比が0.2〜1.0の容器状に一体成型加工してなる調理用の成型容器である。従って、該成型容器は、フイルム面の微細な孔により、通気性を発現でき、且つ、フイルム面と食品が接触するために、不織布の構成繊維が食品に付着することを防止でき、更に、不織布面に孔あけ加工による貫通孔がないため、食品容器として用いることができる。
【0010】
本発明に用いる積層シートのフイルム面の微細な孔の直径は、0.1mm以上1mm以下で、好ましくは、0.15mm以上0.8mm以下、より好ましくは、0.20mm以上0.6mm以下である。孔の直径が0.1mm未満では、孔開け加工性が悪くなり、孔に樹脂溜りなどが生じ易く、均一な孔を形成できない。一方1mmを超えると、樹脂溜りが少なくなり加工性は良くなるが、開孔径が大きくなり過ぎ、単位面積あたりの孔個数を多数にする事ができなくなり、また、孔の間隔が大きくなるという問題がある。
【0011】
また、孔の間隔は、0.5〜5mm、好ましくは0.7〜4mm、より好ましくは1.0〜3mmであり、孔の個数は、10〜250個/cm2、好ましくは、20〜200個/cm2、より好ましくは、30〜180個/cm2である。孔の間隔を小さくすること、個数を多くすることは、加工性が悪くなり,加工コストが高くなる。一方、孔の間隔を大きくすること、個数を少なくすることは、加工性が良くなり、コストが低くなるが、調理時間がながくなること、食材の水分が多くなりべとつくなどの問題が生じる。
【0012】
本発明に用いる不織布(A)は、フイルム(B)より融点が高く、且つ容器形状に一体成型加工できることが必要である。具体的には、構成する繊維の融点は、積層する熱可塑性フイルムの融点より30℃以上高いことが好ましく、より好ましくは50℃以上高いことである。その理由は、接着の加工、孔あけ加工、及び成型加工で、収縮、変形などの問題が生じないためである。
【0013】
不織布(A)は熱成型加工できることが必要である。例えば、真空成型、圧空成型、真空圧空成型、熱プレス成型などでシートを、温度80〜230℃に加熱、加圧展伸して成型容器を得る。加熱時の延伸特性としては、100℃温度で50%以上の破断伸度が必要であり、好ましくは80%以上、より好ましくは100〜400%の破断伸度があることである。従って、不織布の構成繊維としては、単糸の伸度が100%以上、好ましくは120%〜300%の高伸長性を有する繊維が好ましく用いられる。
【0014】
本発明に用いる不織布を構成する繊維として、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン-6、ナイロン-66、共重合ナイロンなどのポリアミド系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどの組み合わせから成る芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの繊維などが用いられる。これらの構成繊維は、短繊維、長繊維の単独でもよく、又2種以上の繊維を積層又は混合して用いることもできる。繊維の断面形状は、丸型、及び扁平型、T型などの異形断面などが用いられる。
【0015】
本発明における不織布の製造は、従来公知のスパンボンド法、フラッシュ紡糸法、スパンレース法
ニードルパンチ法などで得られる。特にスパンボンド法から得られる高伸長性の長繊維不織布は好ましく用いられる。
【0016】
本発明の不織布(A)の構成繊維の平均繊維径は10〜30μmであり、好ましくは、12〜20μmである。次いで、不織布の構成繊維は、単独の繊維径でも良いが、細い繊維と太い繊維の混合又は積層して用いることもできる。
平均繊維径が10μm未満では、繊維強度が弱くなり、且つ、形状の保持性が低くなる。一方、30μm超えると、繊維強度が強く、且つ形状の保持性が高くなり、繊維間の結合が低下し、毛羽立ちやすくなる。
【0017】
不織布(A)の目付は、50〜300g/m2であり、好ましくは、60〜250g/m2である。
目付が、50g/m2未満では、成型容器の剛性が低くなる。一方、300g/m2を超えると、成型容器の剛性が高くなるが、繊維間の結合が低下し、毛羽立ちやすくなる。
本発明に用いる熱可塑性フイルムの融点は、不織布(A)の融点より30℃以上低いことが好ましく、より好ましくは50℃以上低いことである。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフイン系樹脂、 脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、共重合ナイロンなどのポリアミド系樹脂、エチレン-酢酸ビニール共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフイン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーの単層、または、2層以上の積層フイルムが用いられる。
【0019】
本発明のフイルムの厚みは、孔あけ加工、成型加工時に破れ、破断が生じない範囲が好ましい。
フイルムの厚みは15〜100μmであり、好ましくは20〜70μm、より好ましくは25〜50μmである。厚みが15μm未満では、成型加工によりフイルムの皮膜が破れたり、大きな穴が発現したりする傾向があり、一方、厚みが100μmを超えると、フィルムの皮膜強度は高くなるが、不織布との貼り合わせ加工、微小な孔あけ加工性が低下する傾向にある。
【0020】
本発明の積層シートの不織布(A)と熱可塑性フイルム(B)との重量比は、(51〜90):(49〜10)が好ましく、より好ましくは、(55〜85):(45〜15)の割合である。その理由は、プラスチック容器の廃棄処理の問題があり、不織布比率が多いと、不織布の廃棄処理に準じるが、樹脂比率が多くなるとプラスチック廃棄処理となる。さらに、不織布比率が多いと、成型加工時に不織布の加工方法で行なうことができる。
【0021】
本発明の成型容器に用いるの積層シートの製造方法としては、不織布にフイルムを貼り合わせてから孔あけ加工をする方法や、又は、有孔フイルムと不織布との貼り合わせ方法が挙げられる。
【0022】
本発明に用いるフィルム面への孔開け加工は、公知の方法で行なうことができるが、特に、本発明において好ましい方法は、不織布とフイルムとを貼り合わせてから、実質的にフイルム面のみに孔あけ加工し、不織布面には、孔あけ加工による貫通孔を発現させない加工方法である。具体的には、熱可塑性樹脂をTダイから押し出したフイルムと、フイルム厚みの2倍以上、好ましくは2.5倍以上、より好ましくは3倍以上で、融点が30℃以上、好ましくは50℃以上高い不織布と貼り合わせた積層したシートにおいて、そのフイルム面の上面側から孔開け加工を行なうことが好ましい。
【0023】
孔あけ加工は、炭酸ガスなどのレーザー光をフィルム面に照射し、その際、レーザー光の波長、焦点距離等を調整して、フイルム面の樹脂がちょうど加熱融解する条件に設定して孔あけ加工することが望ましい。孔開け加工は、実質的にフイルム面のみに孔開け加工し、不織布に貫通孔をあけないために、不織布の厚みを2倍以上、融点を30℃以上高くすることが重要である。
【0024】
また、有孔フイルムは、公知の方法のロール上に植えられた針、ロール上の針をフイルムの融点以上に加熱した熱針、レーザー照射、抜き刃などで行うことが出来る。
孔あけ加工の形状及び配置は、丸、楕円、菱形、四角、十字などの形状を、縦、横、斜めに規則的配置に配置することが好ましい。その理由は、本発明の積層シートに孔あけ加工により、通気性を均等に発現させるためである。具体的な加工方法の例を以下に列挙する。
(1)熱可塑性樹脂をTダイから押し出したフイルムと、不織布とを冷却ロール間で接着させる、公知の押し出しラミネート法により、フイルムと不織布を貼り合わせてから、フイルム面から、孔あけ加工する。
(2)孔あけ加工した有孔フイルムと、前記不織布とを、温度80〜200℃、圧力10N〜1000N/cmの加熱ロール間を通して貼りあわせ、熱接着させる。
(3)孔あけ加工した有孔フイルムと、前記不織布とを、ホットメルト系樹脂、ウレタン系の反応性樹脂、アクリル系樹脂などの接着剤を用いて貼り合わせる。
(4)ホッテメルト系のメッシュ状シートを、有孔フイルムと不織布の間に介在させ、加熱ロール間を通して貼りあわせ、熱接着させる。
【0025】
本発明の積層シートの成型加工法は、公知の樹脂シートの成型加工機が用いられる、例えば、熱プレス成型機、真空成型機、真空圧空成型機などで一体成型加工して容器形状にできる。
前記積層シートの成型加工方法の具体例は、該シートを80〜230℃の温度に予熱するか、又は金型の温度を80〜230℃の温度に加熱してから、油圧プレス、空圧プレスなどで加圧し、該シートを展伸することにより、立体形状の一体成型容器が得られる。このとき、フイルム面の温度は、フイルムの融点以下が好ましい。
【0026】
本発明の調理用成型容器の収縮率が10%以下、好ましくは5%以下である。これは、成型品を、温度70〜100℃の雰囲気で蒸し調理など行って変形させないためである。このため、成型加工時に、伸長させてから、温度120〜200℃、数秒〜数十秒間熱セットすることが望ましい。
【0027】
本発明の積層シート、及び成型容器の通気性は、フイルム面に微細な孔があり、且つ不織布面に貫通孔がないことであり、ガーレの透気度(JIS-L-1096)で0.1〜1000秒/100cc、好ましくは、0.2〜500秒/100cc、より好ましくは、0.3〜300秒/100ccである。
透気度が0.1秒/100cc未満では、通気性はよいが、フイルム面の孔の直径が大きくなり、又は個数が多くなり、繊維の付着しやすくなる。一方、1000秒/100ccを超えると、通気性が悪くなり、蒸し調理性が低下する。
【0028】
本発明の成型容器のフランジ部には目的に応じて蓋材で密封することができる。例えば、蓋材としては、熱シール加工しやすく、且つ、剥離し易くするために、低融点のフイルムと、高融点のフイルムとの積層フイルムを用いると、イージーピール性が良くなり、容易に密封することができる。本発明の成型容器は、通気性を有しているため、上記のように密封した状態で調理することができる。また調理後は、粉塵、雑菌などの侵入がし難い食品の安全性に優れた容器として利用できる。
本発明の積層シートのフイルム面に、剥離性を向上させる目的で、シリコーン系樹脂、フッソ系樹脂、ワックス系樹脂などを塗布することもできる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を用いて更に具体的に説明する。本発明の特性は、下記の方法で測定した。
(1)目付(g/m2):縦20cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定し、その平均値 を単位りの質量に換算して求める。(JIS-L-1906)
(2)平均繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、10本の平均値で求める。
(3)透気度(sec/100ml):JIS-L-1096(ガーレ法)に準ずる。
(4)脱落繊維の付着:豚の練り肉を用いて、スモークガス雰囲気中で90℃加熱、30分の 調理を行い調理した食品の表面観察で判定する。
○:繊維の付着がない。△:繊維付着が2個所ある。×:繊維の付着が多くある。
(5)離型性 :豚の練り肉を用いて、スモークガス雰囲気中で90℃加熱、30分の調理 を行い肉の離型性を下記基準で判定する。
○:肉の付着がない。△:肉の付着が少しある。×:肉の付着が多く剥離し難い。
(6)調理性 :豚の練り肉を用いて、スモークガス雰囲気中で90℃加熱、30分の調理を 行い肉の表面の変色状態で判定する。
○:肉の変色がある。△:肉の変色が少しある。×:肉の変色が殆んどない。
(7)熱収縮性:温度105℃で5分間の乾燥機で熱処理し、前後で収縮率を測定する。
【0030】
[実施例1〜4、比較例1〜2]
目付け100g/m2、ポリエステル長繊維不織布(旭化成せんい(株)エルタススマッシュ、融点265℃、100℃の破断伸度が220%、厚み0.25mm)に、ポリプロピレン樹脂(融点165℃)を、Tダイから厚み30μmポリプロピレン樹脂を押し出して、押し出しラミネート方法で積層されたシートを得た。
得られた積層されたシートのフイルム面にレーザー照射を用いて、波長、焦点距離を調整し、フイルム部分のみ融解して孔が開けられる条件に設定して孔開け加工し、本発明の通気性を有する積層シートを得た。次いで、積層シートのフイルム面を内側にして、熱プレス成型機を用い、金型温度150℃で一体成型加工し、調理用の成型容器を得た。但し、成型容器の金型形状は、口径が70mm、底径が40mm、深さ25mmで展開比0.35であった。表1に特性を示す。
【0031】
表1に示したように、実施例1〜4の積層シート、及び成型容器において、脱落繊維の付着がなく、通気性、及び調理性、離型性に優れた成型容器であった。比較例1は、不織布のみの成型容器、比較例2は、孔が大きい積層シート及び成型容器の特性は、脱落繊維の付着があり、調理用の成型容器として不適正であった。
【0032】
【表1】

【0033】
[実施例5〜8、比較例3〜4]
目付け250g/m2、ポリエステル長繊維不織布(旭化成せんい(株)エルタススマッシュ、融点265℃、100℃の破断伸度が230%、厚み0.56mm)と、針の孔径、間隔を変えた有孔ポリプロピレンフイルム(厚み30μ)をポリエステル系ホットメルト接着剤10g/m2塗布し、接着して本発明の積層シートを得た。
次いで、積層シートのフイルム面を内側にして、熱プレス成型機を用いて、金型温度155℃で一体成型加工し、調理用の成型容器を得た。但し、成型容器の金型形状は、口径が70mm、底径が45mm、深さ35mmで展開比0.5であった。表2に特性を示す。
【0034】
表1に示したように、実施例5〜8の積層シート、及び成型容器において、脱落繊維の付着がなく、通気性、及び調理性、離型性に優れた成型容器であった。比較例3は、不織布のみの成型容器、比較例4は、孔が大きい積層シート及び成型容器の特性は、脱落繊維の付着があり、調理用の成型容器として不適正であった。
【0035】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の通気性を有する成型容器は、微細な孔のフイルム面が内側にあり、不織布面には貫通孔がないため、通気性に優れ、不織布を構成する繊維の付着がなく、剥離性に優れている。
【0037】
従って、饅頭、パンなどの蒸し調理用、ハム、練り肉などのスモーク加熱調理、蒲鉾などの練り品の加熱調理、冷凍食品などの再加熱調理などの容器として利用できる。又、容器に食品を充填してから、成型容器のフランジ部にイージーピール性フイルムなどの蓋材をすることにより、調理用容器、及び食品用容器を兼ね備えた成型容器として広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布(A)と、熱可塑性フイルム(B)との積層シートを該積層シートのフイルム面を内側にして一体成型した成型容器であって、該積層シートのフイルム面に直径が0.1mm〜1mm、個数が10〜250個/cm2の孔を有し、該積層シートの温度100℃下の破断伸度が50%以上であり、該成型容器の展開比(深さ/口径)が0.2〜1.0であり、該成型容器の収縮率が10%以下であることを特徴とする調理用成型容器。
【請求項2】
前記積層シートのフイルム面に直径が0.15〜0.8mm、間隔が0.5〜5mm、個数が20〜200個/cm2の孔を有していることを特徴とする請求項1記載の調理用成型容器。
【請求項3】
前記不織布(A)の平均繊維径が10〜25μm、目付けが50〜300g/m2、前記フイルム(B)の厚みが15〜100μmであることを特徴とする請求項1または2記載の調理用成型容器。
【請求項4】
前記不織布(A)の融点が、前記フイルム(B)の融点より30℃以上高いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の調理用成型容器。
【請求項5】
前記不織布(A)が、温度100℃下の破断伸度が50%以上のポリエステル系長繊維不織布であり、前記フイルム(B)がポリオレフイン系樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の調理用成型容器。
【請求項6】
前記不織布(A)が脂肪族ポリエステル系繊維からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の調理用成型容器。
【請求項7】
熱可塑性樹脂をTダイから押し出したフイルム(B)と、該フイルム(B)の厚みの2倍以上で、融点が30℃以上高い不織布(A)とを貼り合わせて積層シートとし、該積層シートのフイルム(B)の上面からレーザーを照射して、実質的にフイルム(B)面のみを加熱融解して孔加工をした後、該積層シートのフイルム面を成型容器の内側とし、展開比(深さ/口径)が0.2〜1.0となるように一体成型加工することを特徴とする調理用成型容器の製造方法。









【公開番号】特開2007−84113(P2007−84113A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275450(P2005−275450)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【出願人】(592132729)服部猛株式会社 (3)
【Fターム(参考)】