調理装置
【課題】焼きそばなどを調理する調理装置において、調理中における食材を効率よく、しかも十分に混ぜ合わせることができ、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができるようにする。
【解決手段】食材を載せて調理に用いられる調理板40と、この調理板40の上方に設けられる一対のハンド部材57を相対近接離反可能にするハンドリング手段50と、このハンドリング手段50の両ハンド部材57をそれらの下端が調理板40の上面に近接乃至接触する高さまで下降させると共にハンドリング手段50が両ハンド部材57を相対近接状態とさせた位置を通る鉛直方向に沿って両ハンド部材57を真っ直ぐに上昇させることができる昇降手段5とを有している。
【解決手段】食材を載せて調理に用いられる調理板40と、この調理板40の上方に設けられる一対のハンド部材57を相対近接離反可能にするハンドリング手段50と、このハンドリング手段50の両ハンド部材57をそれらの下端が調理板40の上面に近接乃至接触する高さまで下降させると共にハンドリング手段50が両ハンド部材57を相対近接状態とさせた位置を通る鉛直方向に沿って両ハンド部材57を真っ直ぐに上昇させることができる昇降手段5とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼きそばなどの調理作業を自動的に行えるようにした調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼きそばなどを自動的に調理する調理装置として、食材を載せて調理(炒め)に用いられる調理板と、この調理板の上方で一対の掻上板によって掻き上げ動作をさせるようにした調理ヘッドとを有したものが知られている(特許文献1参照)。
掻上板は、薄い板材を素材として形成されており、その先端側には互いに所定間隔をおいて複数本の溝が形成され、溝と溝との間に幅のある櫛刃が残るようにされたものである。その外観はフォークと言うよりは恰も潮干狩りに用いるコテの先端形状のようである。
そして調理ヘッドは複雑なリンク機構を有しており、このリンク機構により、調理板における両脇側から板中央部へ向けて掻上板をスライドさせるような動きで調理板上に盛られた食材へ掻上板を突き刺し、板中央部(おそらくは食材の内部)では互いの櫛刃を交互に噛み合わせるようにしつつ、その後、立体楕円軌道を描かせながら元位置へ戻すような動きを繰り返す。
【0003】
このような一対の掻上板の動きで食材を掻き上げることで、その間に起こる食材の撹拌作用(混ぜ合わせ作用)を期待し、具材や調味料との絡め合わせや焦げ付き防止を図るようにしている。
なお、この調理ヘッドは昇降するものではなく、調理板の奥側から手前側、又はその逆方向へ向けて水平移動をするだけのものである。
一方、調理板を深みのある箱形の調理釜として形成し、この調理釜をベルトコンベア式にエンドレス状態で複数連接させ、これら調理釜を、食材(茹で麺)投入ステーションから調理(炒め)ステーションを経て調理品(焼きそば)取出ステーションへと一斉に横送りさせることで、調理を流れ作業的に進めるようにしたライン方式の調理装置も知られている(特許文献2参照)。
【0004】
この調理装置(ライン)で用いられる全ての調理釜には、それらの釜内底部寄りに、回転軸を横に向けてそのまわりで撹拌板を回転させるようにした撹拌装置が設けられている。
【特許文献1】特開2004−113583号公報
【特許文献2】特開平8−38366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の掻上板で調理板上の食材を掻き上げて食材の撹拌作用(混ぜ合わせ作用)を期待する方式の調理ヘッド(特許文献1に記載のもの)では、掻上板が薄い板素材であるが故に、これを調理板上に盛られた食材に突き刺すときや、両方の掻上板が互いの櫛刃を交互に噛み合わせるときに、その側縁や櫛刃で食材をことごとく切ってしまうということになる。
またこの掻上板は、掻き上げ動作をした後、立体楕円軌道の中で櫛刃を調理板から僅かに浮き上がらせるようにも推測されるが、本出願人の実験では、このような動きでは食材に対する撹拌が十分に行えないことが判っている。そのために、具材や調味料の偏り、焦げの発生といった問題も発生することになる。
【0006】
これらの問題は食材が麺類である場合、殊に頻発するものと推測され、料理人が手作業で作ったものとは、見栄え、食感、味などに関して、ほど遠い調理品になってしまうという、重大な問題になっている。
一方、深みのある箱形の調理釜内で撹拌板を回転させる方式の撹拌装置(特許文献2に記載のもの)では、撹拌板や回転軸に食材が絡みつき易く、食材を引き裂いたり押し潰したりしてしまうことになる。しかも撹拌動作が単調であるため混ぜ効果も乏しいものであった。
【0007】
すなわち、仕上がった調理品は見栄え、食感、味が相当に劣るものであることは言うまでもなく、そもそもこの調理品を見た者が食欲をそそらないという、食品としては致命的な問題となる。やはり食材が殊に麺類である場合にはその問題性も顕著で深刻であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、調理中における食材を効率よく、しかも十分に混ぜ合わせることができ、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができるようにした調理装置を提供することを目的とする。
本発明は殊に、焼きそばなどの麺類を調理するときに、好適に使用可能となる調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る調理装置は、食材を載せて調理に用いられる調理板と、この調理板の上方に設けられる一対のハンド部材を互いに略同一高さに維持させつつ少なくとも一方のハンド部材を移動させて他方のハンド部材との間で相対近接離反可能にするハンドリング手段とを有している。
またこの調理装置は昇降手段を有している。この昇降手段は、上記したハンドリング手段の両ハンド部材をそれらの下端が調理板の上面に近接乃至接触する高さまで下降させたり、ハンドリング手段が両ハンド部材を相対近接状態とさせた位置を通る鉛直方向に沿って両ハンド部材を真っ直ぐに上昇させたりする。
【0009】
このような構成であると、昇降手段がハンドリング手段の両ハンド部材を下降させているときに、ハンドリング手段が両ハンド部材を相対近接状態に作動させる、という組み動作を行わせることができる。
これであると、ハンドリング手段は、調理板上の食材を相対近接する両ハンド部材の間で対向押圧状に寄せ集め、この食材を調理板の上方へと持ち上げ可能な状態で保持することができる。なお、実際の持ち上げは昇降手段の作動を待つことになる。
このようにして食材を持ち上げ可能な状態で保持したり、持ち上げたりしても、食材を引き裂いたり押し潰したり、或いは切ったりするということは一切ない。しかも、ハンドリング手段が食材を保持した状態のまま、昇降手段による上昇で食材を持ち上げた後、この上昇位置からハンドリング手段が食材を解放する(振り落とす)といった動作をすれば、食材は調理板上にて高効率で混ぜられることとなり、具材や調味料が偏ったり、焦げが発生したりすることもない。
【0010】
その結果、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができる。
なお、昇降手段によるハンド部材の上昇は、意欲的且つ積極的なものであり、従来の「掻上板(特許文献1記載のもの)」が動作軌跡の中で「調理板から僅かに浮くと推測される点」とは明確に異なる。それらは、上昇高さの差として、また後述するような調理品の「おいしさ」として、顕著に現れることになる。
本発明の調理装置が具備する昇降手段は、ハンド部材を介して持ち上げられる食材と調理板との上下間に空気流通空間を可及的多く確保し、食材を積極的に空気に曝すと共に、調理板自体にも、食材が持ち上げられることに伴う露呈部分、或いは持ち上げられずに残った食材の盛り厚の希薄部分を生じさせ、もって熱発散性を高める(汁気を飛ばしやすくする)効果を期待したものである。
【0011】
ハンドリング手段と昇降手段とにおいて上記のような組み動作を得るために、これらハンドリング手段と昇降手段は、組み動作指示部によって動作制御するとよい。すなわち、この組み動作指示部は、両ハンド部材が上昇位置を維持したままこれら両ハンド部材を相対離反させ、両ハンド部材が相対離反状態を維持したままこれら両ハンド部材を下降させ、両ハンド部材が下降位置を維持したままこれら両ハンド部材を相対近接させ、両ハンド部材が相対近接状態を維持したままこれら両ハンド部材を上昇させるといった順番を1サイクル動作として設定するものである。
【0012】
なお、ハンドリング手段は、両方のハンド部材を対向方向へ向けて同時に近接移動させたり、相反する方向へ向けて同時に離反移動させたりする構成としてもよいし、或いは、一方のハンド部材は不動とし他方のハンド部材だけを近接離反方向へ可動とさせる構成としてもよい。
両方のハンド部材を可動にすれば食材を持ち上げ可能な状態に保持させたり、解放したりする動作が確実なものとなり、またこれらを調理板の板中央部にて行える利点がある。また一方のハンド部材だけを可動にする場合には、それだけ構造簡潔となり、動作制御も容易となる利点がある。
【0013】
ハンドリング手段の両ハンド部材は、少なくとも調理板上で相対近接動作するときには略起立した状態を維持するように設けるのが好適である。
このようにすることで、両ハンド部材の相対近接動作時、即ち、食材を対向押圧状に寄せ集めるときに、食材を傷めない(保護する)効果が一層高くなる。
ハンド部材を起立状にする場合、このハンド部材には互いに対向する起立面に対して調理板上に供給された食材に当接する高さで少なくとも1本の横溝を凹設するのが好適である。
【0014】
このような横溝を設けると、この横溝に食材が引っ掛かりやすくなり、持ち上げ可能な状態にするのが一層、容易、確実となる。従って、持ち上げ可能な状態に保持するときの食材量を多くすることができるので、それだけ食材の混ぜ効果を一層高めることができる。
ハンドリング手段のハンド部材は、その上端部が平面移動を不能とされた揺動支点として下端部が相対近接離反方向に揺動可能とするのがよい。このような構造を採用することで、構造簡潔となる効果が得られる。
【0015】
殊に、両ハンド部材は、揺動支点の相互間隔と両ハンド部材の相対離反時における下端部相互間隔とが略等しくなる配置とするのが好適である。すなわち、両ハンド部材が相対離反された状態のとき、各ハンド部材は略起立状態になり、その下端部が揺動支点の真下に位置付けられるようにする。
このように揺動支点を位置付けると、両ハンド部材を相対近接させたまま(食材を保持したまま)上昇させた後、両ハンド部材を相対離反させたとき、両ハンド部材がそれらの下端部を振り子のように揺動させながら両外側へ開く動作をする。そのため、このハンド部材の揺動につられて、食材が保持状態から解放されるときに末広がり方向への慣性を与えられることになり、食材は調理板上の広い範囲へ拡散状に落とされる。
【0016】
なお、ハンド部材に対して上記したような横溝を設けておけば、食材を調理板上の広い範囲へ拡散状に落とす効果も更に高められる。
これらのことから、調理板上を有効的に広範囲で使用できることになる。このことは、調理板に対する食材の接触機会を多くし、その結果、食材に対する熱伝導を高めることになる。また食材の混ぜ効果も更に一層、高められることになる。
そのため、食材中に含まれる汁気(水分量)を多く飛ばす(蒸発させる)ことができるようになり、炒めなどの調理において「おいしさ」を増す重要な要因を作り出すことになるのである。
【0017】
この調理装置は、食材の主材(具材や調味料を除いた主たる材料)を麺類とする場合に、特に有益なものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る調理装置は、調理中における食材を効率よく、しかも十分に混ぜ合わせることができ、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができるようになった。そのため、焼きそばなどの麺類を調理するときに、好適に使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る調理装置50,51の一実施形態を用いて構築した調理ラインシステム1の一実施形態を示している。以下では、この調理ラインシステム1の概要乃至細部を説明してゆき、その中の要所で各調理装置50,51を説明するものとする。
この調理ラインシステム1は、調理ライン2と食材搬送装置3とを有している。またこの調理ラインシステム1には、そのシステム全体にわたるように架設された昇降バー4を昇降させるための昇降手段5が設けられている。
【0020】
食材搬送装置3は、食材の調理に用いる調理釜6をベルトコンベア式にエンドレス状態で多数連接させ、これら調理釜6を上下循環状に一斉に搬送可能としたものである。調理釜6の搬送方向は図1中において反時計回りとしてあり、上部の搬送路を右から左へ移動させて左端側で下方へ反転後、下部の搬送路を左から右へ移動させて、右端側で上方へ反転するといったことを繰り返す。
これに対して調理ライン2は、この食材搬送装置3の上方域や下方域を取り囲むような配置で複数のステーションが配置されたもので、各ステーションを次々に通過する調理釜6に対して、調理作業やその前処理作業、或いは後処理作業などを流れ作業的に実行するようになっている。
【0021】
本実施形態において、この調理ラインシステム1は、最終的に仕上げる調理品を焼きそばとおいて、これを自動調理するのに好適に使用可能なものを示してある。そこで以下では、使用する食材として、まずその中で主材となるものを茹で麺とおく。また食材には他に、肉や野菜などの具材があり、更にソースやマヨネーズ、場合によっては塩や胡椒などの調味料や、粉かつお、青のり、花かつお、紅生姜などの適宜トッピング材なども含まれるものとする。
また調理作業の主たるものは、食材を加熱しつつ混ぜ合わせる炒め作業であるとする。そして、調理後に仕上げられ、取り出される調理品としての焼きそばは、その後、所定時間(30分)内に冷凍され、冷凍食品とされるものとする。
【0022】
なお、冷凍せず、仕上がった熱いままで、食品として販売等に供することができるのは言うまでもない。
昇降手段5の昇降バー4は、食材搬送装置3の上部搬送路よりも高い位置にて、且つその長手方向を食材搬送装置3の搬送方向に沿わせるように略水平に架設されている。この架設位置は食材搬送装置3の真上ではなく、背後側(図1を正面図とおいて食材搬送装置3よりも後方側を意味する)に位置付けられている。
そして食材搬送装置3の両脇部や、必要に応じたスパン中の適所に設けられた流体圧シリンダ等の昇降駆動具7により、昇降バー4を略水平状態のまま昇降させるようになっている。この昇降バー4によって昇降されるものについては後述する。
【0023】
調理ライン2は、この調理ラインシステム1に対して食材(茹で麺など)を供給するための食材投入ステーション8と、この供給された食材を調理する(炒める)ための調理ステーション9と、調理によって仕上がった調理品(焼きそば)を、この調理ラインシステム1の外へ取り出すための調理品取出ステーション10とを有している。
またこの調理ライン2は、他にも、調理に用いられた調理釜6を調理品取出ステーション10の通過後に洗浄するための洗浄ステーション11や、この洗浄後の調理釜6が食材投入ステーション8にて再使用されるのに先だって予備加熱させるための予熱ステーション12や、この予熱後の調理釜6に対してその表面に油をひくための塗油ステーション13なども有している。
【0024】
食材投入ステーション8及び調理ステーション9には、これらを通過搬送される調理釜6をその下から加熱するためのコンロ14が個々に設けられている。
この調理ライン2において各ステーションの設置台数やそれらの配置順番などは特に限定されるものではなく、仕上げる調理品の種類や、採用する調理方法などに応じて任意且つ柔軟に変更可能である。
例えば、調理ステーション9は上記したように食材を炒めるところとしているが、炒め時間をある程度、長く確保する必要があり、またこの炒め中には食材を十分に混ぜ合わせることが必要であることから、この調理ステーション9は複数のものを相互隣接状に設けるのが好適とされる。
【0025】
また、食材投入ステーション8では、食材の中の主材である茹で麺を調理釜6へ供給する主材供給ステーション17と、調味料としてのソースを調理釜6内へ供給する調味料供給ステーション18とを有したものとした。これは仕上がった焼きそばを、その後、冷凍食品として冷凍させることを前提にしているためである。
しかし冷凍せず、仕上がった熱いまま、食品として販売等に供する場合には、その他に、肉や野菜などの具材を供給する具材供給ステーション(図示略)や、ソース以外の調味料、或いは上記した各種トッピング材を各別に供給する各種の供給ステーション(図示略)を設けるようにしてもよい。
【0026】
その他のステーション(予熱ステーション12等)についても同様であり、必要に応じて複数のものを設けることができる。
本実施形態におけるこれら各ステーションの配置は、食材搬送装置3の上部搬送路ではその上流側(図1右側)から下流側(同左側)へ向かって、塗油ステーション13、食材投入ステーション8、調理ステーション9、調理品取出ステーション10がこの順番で並設されたものとし、食材搬送装置3の下部搬送路ではその上流側(図1左側)から下流側(図1右側)へ向かって、洗浄ステーション11、予熱ステーション12がこの順番で並設されたものとした。
【0027】
そのためこの調理ライン2を、流れ作業から着目するとすれば、食材投入ステーション8を始点とおき、ここをスタートした調理釜6が調理品取出ステーション10を経て、その下流位置で真下へ折り返されて裏向きに反転するまでの搬送区間を、往路搬送帯25とおくことができる。
また、この往路搬送帯25の終端位置を始点とおき、ここをスタートした調理釜6が往路搬送帯25の下部を逆方向へ向かいつつ、洗浄ステーション11及び予熱ステーション12を経て、その下流位置で真上へ折り返されて上向きに反転され、塗油ステーション13を経て食材投入ステーション8に至るまでの搬送区間を、復路搬送帯26とおくことができる。
【0028】
食材搬送装置3は、調理ライン2に含まれる全てのステーションに対応させて各調理釜6を停止させたり、所定の停止時間が経過した後に各ステーション間の1ピッチ分(設置間隔)に合わせて全調理釜6を一斉に横送りさせ、隣接するステーションへ歩進させた時点でまた停止させたりするといったことを繰り返す構成である。
調理釜6は、調理ライン2が有するステーション数と同等数又はそれ以上の台数が、チェン等の連結索28により、ステーション間ピッチと等しい間隔を保持しつつ連接されている。この連結索28はエンドレスになっており、搬送方向の両端位置に設けられたスプロケット29相互間に架け渡され、駆動される。
【0029】
図5、図11、図14等から明らかなように、連結索28は複数本(図例では2本)が平行架設されている。これら連結索28と調理釜6との結合は、両連結索28間に跨って走行枠32が固定され、この走行枠32から正面水平方向へ支持ステー33が突設され、この支持ステー33の突端部で調理釜6が片持ち支持される構造による。
これにより連結索28やスプロケット29と調理釜6との間を離し、機械的にもまた熱影響的にも干渉が起こらないようにしてある。走行枠32には連結索28の両外側へ張り出す位置に複数の車輪34が回転自在に設けられており、これら車輪34が、連結索28と平行に設置されたガイドレール36上を走行することで調理釜6の安定性が確保されている。
【0030】
調理釜6は、恰も、料理用バットを少し大型にしたような嵩の低い箱形に形成されたもので、釜底に相当する部分は、長方形の平らな板面を有した調理板40を形成している。この調理板40の大きさは、一つの調理ステーション9において調理される食材量(例えば一食分に設定)を個別に収容できることを目安に形成されている。
この調理板40の外周部にはそのうちの三辺に周壁41が立ち上げ形成されている。これら周壁41は上広がりとなる方向で若干傾斜しており、これら周壁41と調理板40との間には、連続的な内曲がりのカーブを呈する丸底部42が設けられている。
【0031】
調理釜6において、周壁41が形成されていない辺部は、支持ステー33を介して走行枠32と対向するようになる辺部とは丁度、反対側となる辺部であって、この部分が食材取出口43として開口されている。
なお、本出願人の実験によれば、この調理釜6はアルミ鋳造などによって製作するのが、重量面、製作容易性面、コスト面などで好適であり、この場合、調理板40、周壁41、及び丸底部42を8mm厚以上とすることで、炒め作業に関して好適な仕上がり(調理)が得られることが判っている。
【0032】
この調理釜6の内面(調理板40の上面、丸底部42及び周壁41の各内面)には、フッ素樹脂皮膜が施されている。
図1に示したように、各調理ステーション9には横向き集め型ハンドリング手段50を有したものと、縦向き集め型ハンドリング手段51を有したものとの二種がある。これら横向き集め型ハンドリング手段50と縦向き集め型ハンドリング手段51とは、交互配置で設けられている。
また、これら全てのハンドリング手段50,51は、上記した昇降手段5の昇降バー4に対して設けられており、この昇降手段5による昇降バー4の昇降動作によって一斉に昇降するようになっている。
【0033】
すなわち、この昇降手段5は、食材搬送装置3が調理釜6を横送りするときに、この調理釜6とハンドリング手段50,51との接触干渉を回避させるための機構として有用となっている。
そして、各調理ステーション9に対応して食材搬送装置3の調理釜6が停止されている状態にあって、この調理釜6の釜底を形成している調理板40と、それぞれのハンドリング手段50,51との組み合わせにおいて、本発明に係る二種の調理装置53,54が構成される。
【0034】
図2乃至図4に示すように、この調理装置53が有する横向き集め型ハンドリング手段50は、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される方向に沿って、調理釜6内の食材を寄せ集めるもので、この方向で互いに対向する一対のハンド部材57を有している。
これら両ハンド部材57は、昇降手段5の昇降バー4上に設けられたベース盤60から正面方向へ突き出した2本の揺動支軸61の各突端部で片持ち状に吊り下げられている。
ベース盤60上において揺動支軸61を保持する部分には、ピローブロック等を用いた揺動支点62が用いられているため、揺動支軸61はその軸中心周りで回転自在となっており、結果、両ハンド部材57は、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される方向に沿って揺動自在になっている。従って、両ハンド部材57の揺動方向を相対逆にして揺動させれば、両ハンド部材57は相対近接動作や相対離反動作を行うものとなる。
【0035】
ハンド部材57は、揺動支軸61の突端部に吊り下げ固定された支持アーム63と、この支持アーム63から更に下方へ垂下状に保持される板片状のブレード64とを有している。
図7に示すように、支持アーム63の下端部にはブレード64を上から下へ向けて差し込み可能にする支持枠65が設けられており、ブレード64にはこの支持枠65へ差し込まれたときに下方へ抜け落ちるのを防止するための係合片66が設けられている。
支持枠65内にブレード64が差し込まれ、係合片66が支持枠65の上面に係合した状態では、ブレード64は鉛直方向に沿った起立状態で吊り下げられるが、このときブレード64は支持枠65内で若干のガタツキを生じ得るようになっている。
【0036】
このようなことから、支持アーム63に対し、ブレード64は、支持枠65に係合片66が係合した状態から上方域において上下動自在である。またブレード64は、必要に応じて支持枠65の上方へ引き抜くことも自在に行えるものであり、従ってこのハンドリング手段50においてブレード64は着脱自在である。
ブレード64の着脱が自在であることから、ブレード64を洗浄又は交換するといったことがいとも簡単にでき、ブレード64をいつも綺麗な状態(食材等の付着がない状態)に維持できる。
【0037】
フレード64は樹脂などにより形成されており、その下辺部には複数本の縦溝68が横並び状態で形成されている。縦溝68は下端側が解放されており、縦溝68と縦溝68との間には、縦溝68の溝幅よりやや細くなることを条件として可及的に広幅とした垂下片70が残置形成されている。
なお図7に示したブレード64は、後述する縦向き集め型ハンドリング手段51で使用するものである。そのため、ブレード64の幅方向に対して縦溝68がセンター振り分けで配置されたものとされ、従って垂下片70についてもセンター振り分けの配置となっている。
【0038】
しかし、横向き集め型ハンドリング手段50で使用するブレード64は、図2及び図3に示すように、幅方向で非対称となる配置で縦溝68や垂下片70が設けられている。従って、互いに対向関係にある一対のハンド部材57にあって、一方のハンド部材57で使用するブレード64と、同、他方のハンド部材57で使用するブレード64との間では、互いの縦溝68と垂下片70とが巧く組み合わされて対向する配置となる。
そのため、両ハンド部材57を相対近接方向へ揺動させるとき、垂下片70同士の衝突は避けられ、一方のブレード64の垂下片70が相手側ブレード64の縦溝68内へ嵌って垂下片70同士がクロスする状態となるまで、相対近接を行わせることができる。
【0039】
なお、このような縦溝68(垂下片70)の形成は特に限定されるものではなく、両ハンド部材57を相対近接させるときに、それらの下端部同士が衝突しない範囲でとどめる場合には、ブレード64は平板状に形成させてもよい。
ブレード64には、互いに対向する起立面に横溝71が凹設されている。この横溝71は、食材の主材である茹で麺を引っ掛けるためのものである。従ってこの横溝71は、ブレード64の下端を調理板40上に当接させたとき、この調理板40上に供給された食材に当接する高さに位置付けられている。
【0040】
なお、横溝71の本数は特に限定されるものではない。但し、横溝71の溝幅が狭すぎるとこの溝内で茹で麺を引っ掛けることができなかったり、横溝71内に茹で麺が詰まってしまったりするといった不具合に繋がるので、横溝71の溝幅をある程度確保したうえでなら、調理板40上の食材に当接する範囲に可及的多く設けるのがよい。図例では3本としてある。
また図8に示すように、ブレード64の下端部は、調理板40に対して平面移動する方向に沿った向きでアール面取りが施されている。これにより、食材や調理板40表面に対する摺動容易性を高め、擦り傷などの発生を防止できる。
【0041】
上記したベース盤60上において、揺動支点62は固定されており平面移動不能である。そして、一方のハンド部材57を支持する揺動支点62と、同、他方のハンド部材57を支持する揺動支点62との相互間隔は、両ハンド部材57を相対離反させたときに、それら下端部相互の間隔(ブレード64の相互間隔)と略等しくなる配置となっている。すなわち、両ハンド部材57が相対離反状態のとき、各ハンド部材57(ブレード64)は略起立状態になり、その下端部が揺動支点62の中心軸(揺動支軸62の軸心)に対してその真下に位置付けられる。
【0042】
このハンドリング手段50において、両ハンド部材57を相対近接動作及び相対離反動作を行わせるために、リンク機構80が採用されている。このリンク機構80は、ベース盤60上を通る両ハンド部材57の揺動支軸61に対し、それらの相互間で「逆ハの字」状を呈するように斜め下向きに設けられる従動レバー81と、これら従動レバー81の下方でレバー先端を正面へ向け略水平に突出させた状態で設けられた駆動レバー82と、従動レバー81と駆動レバー82との上下間をリンク接合するリンク杆83と、駆動レバー82を串刺し状態に貫通保持する第1原動軸84とを有している。
【0043】
言うまでもなく、ベース盤60にはリンク杆83の挿通及び従動レバー81の上下揺動を許容するため、逃げ孔86が形成されている。また従動レバー81は揺動支軸61と一体回転可能であり、駆動レバー82は第1原動軸84と一体回転可能になっている。
第1原動軸84は、調理ライン2中において調理ステーション9が設けられる範囲全体に渡るように架設されており、図9に示すように、その一端部には第1原動レバー87が一体回転可能に設けられ、この第1原動レバー87を介して流体圧シリンダ等を用いた第1原動部88と連結されている。
【0044】
これら第1原動軸84や第1原動部88は、昇降手段5の昇降バー4に結合関係をもって設けられており、従って昇降バー4と一緒に昇降する。従って第1原動軸84と駆動レバー82などとの角度関係は、昇降手段5が昇降バー4を昇降させても何ら変化しない。
従って、この第1原動部88が第1原動レバー87を引込方向に作動して第1原動軸84を回動させ、駆動レバー82を上向き揺動させれば、従動レバー81も同様に上向き揺動し、両揺動支軸61は両ハンド部材57を相対近接させる方向に回動する。
反対に、第1原動部88が第1原動レバー87を押出方向に作動して第1原動軸84を回動させ、駆動レバー82を下向き揺動させれば、従動レバー81も同様に下向き揺動し、両揺動支軸61は両ハンド部材57を相対離反させる方向に回動する。
【0045】
ハンドリング手段50の両ハンド部材57が相対近接動作及び相対離反動作を行う際には、昇降手段5による昇降バー4の昇降動作(要するにハンドリング手段50の昇降動作)が組み合わされる。このために、図10に示すように、ハンドリング手段50と昇降手段5は、組み動作指示部90によって動作制御される構成となっている。
この組み動作指示部90は、図4(A)に示すように、両ハンド部材57が上昇位置にあるときには両ハンド部材57を相対離反させたままとし、両ハンド部材57が相対離反状態を維持したまま、これら両ハンド部材57を下降させる。
【0046】
そして、図4(B)に示すように、両ハンド部材57を下降位置に至らせた後は、この下降位置を維持させたまま、両ハンド部材57を相対近接させる。
昇降手段5は、両ハンド部材57を下降させるとき、ブレード64の下端が調理板40の上面又は食材に当接した後も、更に若干の下降を続けさせる。このときブレード64は支持アーム63に対して所定量の持ち上がり状態となるが、このときブレード64は食材に対して自荷重以外の過大負荷を作用させることがないので、食材を押し潰してしまうということはない。
【0047】
従って、この下降位置で両ハンド部材57を相対近接動作させることで、調理板40上の食材を両ハンド部材57によって対向押圧状に寄せ集め、これによって食材を持ち上げ可能な状態に保持することができる。横溝71の存在により、持ち上げ可能な状態にする食材量は十分なほどに多い量となる。
ブレード64は調理板40上において上下方向にフリーの状態で保持されているので、ブレード64が食材との当接で無理な力を受けたとき、ブレード64自体が上方へ逃げ動作を行い、食材を傷つけない(形状的に保護する)ことになる。
【0048】
また、このとき両ハンド部材57(ブレード64)は、略起立状態を保持しているため、上記のような食材の保持の方法では食材を引き裂いたり押し潰したり、或いは切ったりするということは起こらない。
そして、両ハンド部材57を相対近接状態とさせた後は、図4(C)に示すように、この相対近接状態を維持させたまま、両ハンド部材57を上昇させる。この上昇は、両ハンド部材57が相対近接状態とされた位置を通る鉛直方向に沿って真っ直ぐに行われる。
またこのときの上昇高さは、ハンド部材57を介して持ち上げられる食材と調理板40との上下間に空気流通空間を可及的多く確保し、食材を積極的に空気に曝すことができる高さ(おおよそ10cm〜30cm程度。なおこれに限定されない)であり、これに伴って調理板40自体にも、食材が持ち上げられることによる露呈部分、或いは持ち上げられずに残った食材の盛り厚の希薄部分を生じさせることになる。
【0049】
これらのことから、食材や調理板40の熱発散性を高めることができ、食材中の汁気を飛ばしやすくするという効果に繋がる。
組み動作指示部90は、このような順番を1サイクル動作として、これを繰り返すように設定されている。
なお、両ハンド部材57を上昇位置に至らせた後は、次サイクルの開始時点で再び両ハンド部材57を相対離反させることになるので、両ハンド部材57によって持ち上げられている食材は調理板40上へと落下される。
【0050】
このとき、両ハンド部材57の揺動支点62が上記した相互間隔で設けられていることに伴い、両ハンド部材57の相対離反動作はそれらの下端部が振り子のように揺動しながら両外側へ開く動作となる。
そのため、これら両ハンド部材57の揺動につられて、食材が保持状態から解放されるときに末広がり方向への慣性を与えられることになり、食材は調理板40上の広い範囲へ拡散状に落とされることとなる。ハンド部材57のブレード64に対して横溝71が設けられているので、食材を調理板40上の広い範囲へ拡散状に落とす効果も更に高められる。
【0051】
このように調理板40上を有効的に広範囲で使用できることは、調理板40に対する食材の接触機会を多くし、その結果、食材に対する熱伝導を高めることになる。また食材の混ぜ効果も更に一層、高められることになる。そのため、食材中に含まれる汁気(水分量)を多く飛ばす(蒸発させる)ことができるようになり、「おいしさ」を増す重要な要因を作り出すことになるのである。
ところで、前記したように調理釜6は、調理板40の周壁41が上広がり方向の傾斜状態とされ、また周壁41から内曲がりのカーブを呈する丸底部42を経て調理板40へ至るように形成されている。
【0052】
これに対し、ハンドリング手段50の両ハンド部材57は、相対離反状態で調理釜6の上方に待機しているときに、ブレード64の下端が周壁41の上端縁から若干、調理釜6内に入り込むような位置付けとされている。
そのため、図4(A)に示したように、両ハンド部材57を相対離反状態のまま下降させてゆくと、ブレード64は調理釜6の周壁41内面から当接を開始し、内曲がりカーブとなった丸底部42の内面を経て調理板40の上面へ到達するように倣い当接をする。
これにより、丸底部の内面側に形成される内曲がりカーブがカム誘導部91として作用し、ブレード64の下端が調理板40上に当接後、両ハンド部材57が相対近接のため平行移動する際には、ブレード64はその先端が先行方向へ向く方向で傾斜することになる。
【0053】
そのため、調理板40上でのブレード64の平面移動時には、調理板40上の食材を掬い上げるような作用も生じることになり、焦げ付き防止効果などに優れたものとなる。
なお、このハンドリング手段50は、調理釜6内で両ハンド部材57を相対近接させたとき、これら両ハンド部材57間から漏れ出た食材が調理釜6の食材取出口43からこぼれ落ちることがないように、この食材取出口43を塞ぐためのストッパ用ハンド部材93を有している。
このストッパ用ハンド部材93は、L型アーム94を介してベース盤60に固定されているので、昇降手段5による昇降動作で両ハンド部材57と一緒に昇降する。
【0054】
図5及び図6に示すように、この調理装置54が有する縦向き集め型ハンドリング手段51は、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される方向に対し、これと平面直交する方向に沿って、調理釜6内の食材を寄せ集めるもので、この方向で互いに対向する一対のハンド部材57を有している。
この縦向き集め型ハンドリング手段51が上記した横向き集め型ハンドリング手段50と異なるところは、食材を寄せ集める方向が平面直交関係になることに起因する点であり、その他は、横向き集め型ハンドリング手段50と殆ど同じである。そこで以下では、これら両者において顕著に異なる点を重点的に説明する。
【0055】
この縦向き集め型ハンドリング手段51のハンド部材57は、昇降手段5の昇降バー4上から正面方向へ突き出して設けられたベースフレーム100の先端部で、軸心を食材搬送装置3の搬送方向と同方向に向けた揺動支軸101を介して吊り下げ状に保持されている。
ベースフレーム100上において揺動支軸101を保持する部分には、ピローブロック等を用いた揺動支点102が用いられているため、揺動支軸101はその軸中心周りで回転自在となっており、結果、両ハンド部材57は、食材搬送装置3の搬送方向と平面直交する方向に沿って揺動自在になっている。従って、両ハンド部材57の揺動方向を相対逆にして揺動させれば、両ハンド部材57は相対近接動作や相対離反動作を行うものとなる。
【0056】
このハンドリング手段51において、両ハンド部材57を相対近接動作及び相対離反動作を行わせるために、リンク機構105が採用されている。このリンク機構105は、両ハンド部材57の後方でレバー先端を斜め奥上方に突出させた状態で設けられた上部駆動レバー106と、この上部駆動レバー106と一方のハンド部材57の支持アーム63とをリンク接合する上側リンク杆107と、上部駆動レバー106とは逆にレバー先端を斜め手前下方に突出させた状態で設けられた下部駆動レバー108と、この下部駆動レバー108と他方のハンド部材57の支持アーム63とをリンク接合する下側リンク杆109と、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108を共に串刺し状態に貫通保持する第2原動軸110とを有している。
【0057】
言うまでもなく、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108は、いずれも第2原動軸110と一体回転可能になっている。
第2原動軸110は、調理ライン2中において調理ステーション9が設けられる範囲全体に渡るように架設されており、図9に示すように、その一端部には第2原動レバー111が一体回転可能に設けられ、この第2原動レバー111を介して流体圧シリンダ等を用いた第2原動部112と連結されている。
これら第2原動軸110や第2原動部112は、昇降手段5の昇降バー4に結合関係をもって設けられており、従って昇降バー4と一緒に昇降する。従って第2原動軸110と上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108などとの角度関係は、昇降手段5が昇降バー4を昇降させても何ら変化しない。
【0058】
従って、この第2原動部112が第2原動レバー111を押出方向に作動して第2原動軸110を回動させ、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108を図6中の反時計回り方向へ揺動させれば、両揺動支軸101は両ハンド部材57を相対近接させる方向に回動する。
反対に、第2原動部112が第2原動レバー111を引込方向に作動して第2原動軸110を回動させ、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108を図6中の時計回り方向へ揺動させれば、両揺動支軸101は両ハンド部材57を相対離反させる方向に回動する。
【0059】
図10に示すように、このハンドリング手段51も昇降手段5との間で、組み動作指示部90によって動作制御される構成となっている。この組み動作指示部90は、例えばシーケンス回路やコンピュータ回路を組み込んだ電気的制御手段であって、各動作部の動作検出をするセンサ類からの信号やタイマ信号、或いは人的操作によるスイッチ信号に応じて、各動作部の動作タイミングを制御するようになっている。
従って、両ハンド部材57が上昇位置にあるときには両ハンド部材57を相対離反させたままとし、両ハンド部材57が相対離反状態を維持したまま、これら両ハンド部材57を下降させる。また両ハンド部材57を下降位置に至らせた後は、この下降位置を維持させたまま、両ハンド部材57を相対近接させる。そしてこの相対近接状態を維持させたまま、両ハンド部材57を上昇させる、といった順番を1サイクル動作として、これを繰り返すように設定されている。
【0060】
この他、ハンド部材57自体の構造や調理釜6との位置関係、調理釜6の丸底部42の内曲がりカーブをカム誘導部91として利用してハンド部材57(ブレード64)を所定の傾斜状態にさせる点などは、横向き集め型ハンドリング手段50の場合と略同様である。
なお、調理ライン2中の調理ステーション9としては、これら横向き集め型ハンドリング手段50と縦向き集め型ハンドリング手段51とを交互配置で設けておくのが、食材の混ぜ効果を高めるうえで好適となる。
【0061】
図11に示すように、調理品取出ステーション10は、調理ステーション9を通過することで調理釜6内で仕上げられた調理品(焼きそば)を取り出すところであって、1本のハンド部材57を有したハンドリング手段121によって形成されている。
このハンドリング手段121は、昇降手段5の昇降バー4上に設けられたベース盤122を介して正面へ向け突出状態で保持された流体圧シリンダ等の進退駆動具123と、この進退駆動具123によって前後動可能とされるスライダー124とを有しており、このスライダー124の先端部でハンド部材57が片持ち状に吊り下げられている。
【0062】
ハンド部材57は、支持アーム63と、この支持アーム63の下端部で支持枠65を介して下方へ垂下状に保持され、上下動及び着脱自在とされるブレード64とを有したもので、調理ステーション9で採用されたものと略同じである。
但し、この調理品取出ステーション10のハンドリング手段121で採用されたブレード64には、縦溝68や垂下片70は不要であり、また横溝71も特に必要とはされないため、いずれも設けられていない。
なお、スライダー124と支持アーム63とはL型を呈して一体的に形成されたものとしてある。
【0063】
このような調理品取出ステーション10では、昇降手段5が昇降バー4を上昇させているときに、進退駆動具123がスライダー124と共にハンド部材57を引き込み方向(調理釜6の走行枠32側)へ移動させる。
そして昇降手段5が昇降バー4を下降させることで、ハンド部材57が調理釜6の奥方の周壁41(食材取出口43とは対辺側となるもの)に向けて下降し、この周壁41から丸底部42の内曲がりカーブをカム誘導部91として利用しつつ、ハンド部材57(ブレード64)を所定の傾斜状態にさせる。
【0064】
そして進退駆動具123がスライダー124と共にハンド部材57を押出方向へ移動させ、調理釜6の調理板40上を食材取出口43へ向けて移動させる。このようにして、調理釜6内の食材は、食材取出口43を介して装置外へと取り出される。
洗浄ステーション11は、調理ライン2の復路搬送帯26(図1参照)を裏返し状態で搬送される調理釜6の釜内に対し、その下から洗浄動作を行って残滓を落下除去させるところである。
洗浄動作としては、調理釜6の内部、特に釜底内面である調理板40に温水や洗浄水、又は高圧エアなどを吹き付けたり、ブラシやスキージ、拭き布などで擦ったりすればよい。
【0065】
本実施形態では、図12及び図13に示すように、回転ブラシ127と、この回転ブラシ127を調理釜6内へ押し付けたときにブラシ外周面又はブラシ127と調理釜6との当接間などに対して温水を噴射する温水ノズル128とを有したものを採用してある。
回転ブラシ127は、回転軸129の一端部がピローブロック等の軸受け具130によって片持ち状態に支持されて回転自在とされており、電動モータ又はエアモータ等の回転駆動具131によって回転駆動される。また、軸受け具130は、流体圧シリンダ等を用いた上下動具132によって上下動可能とされた台枠133上に設けられ、この台枠133は流体圧シリンダ等を用いたスライダ134によって調理釜6の搬送方向に沿った移動が可能とされている。
【0066】
そのため、食材搬送装置3において調理釜6が搬送されている間は、上下動具132が下降状態となり、またスライダ134は、食材搬送装置3の搬送方向における上流寄り(図12の左側)に台枠133(回転ブラシ127)を位置付けている。
この状態で洗浄ステーション11に対応して調理釜6が停止されたときには、回転ブラシ127が回転されている状態として上下動具132が上昇動作し、スライダ134が回転ブラシ127を食材搬送装置3の下流側(図12の左側)へ向けて移動させる。またこの間、温水ノズル128からは温水が勢いよく噴出される。
【0067】
これらのことにより、調理釜6の内面、殊に、調理板40に残滓が付着していたとしても、この残滓は確実に剥がされ、そのまま下方へ落下することになる。なお、本出願人の実験によれば、温水ノズル128から噴射させる温水の温度は、40℃以上、好ましくは60℃以上にするのが好ましいことが判っている。
ところで、この洗浄ステーション11の温水ノズル128から噴射される温水は、図1に示したように、各ステーションにおいて調理釜6を加熱するコンロ14の下部に設けた製湯タンク139によって作られるようにしてある。
【0068】
この製湯タンク139は、内部が空洞とされた薄い扁平形状をした箱体であって、図14に示すように給水や出湯のために内部連通状態に設けられる配管部140以外には、開口部分がない密閉構造とされている。
この製湯タンク139をコンロ14の下部に設け、内部を水で満たしておくことで、コンロ14で発生する余剰熱や調理釜6からの輻射熱を吸収し、内部の水を湯に変えることができる。すなわち、熱の有効利用ができるものである。のみならず、この製湯タンク139によって雰囲気中の熱回収ができることになるので、断熱効果が得られ、この調理ラインシステム1の周囲で作業する使用者にとって環境改善に繋がる。
【0069】
予熱ステーション12は、調理品取出ステーション10を経て食材投入ステーション8へ戻る食材投入前の調理釜6に対し、少なくとも調理釜6の調理板40を加熱するところである。
この予熱ステーション12は、調理ライン2(図1参照)の往路搬送帯25と復路搬送帯26との上下間にできるスペースを有効利用して、下向きに発熱作用を生じる予熱装置145を設けたものとしてある。この予熱装置145には、下向きに効率的に発熱作用を生じさせることが必要であるため、例えば赤外線バーナ(ガス式)を採用するのが好適である。
【0070】
従ってこの予熱ステーション12では、調理ライン2の復路搬送帯26を裏返し状態で搬送される調理釜6に対して、予熱装置145によって調理板40の裏面を加熱することになる。
なお、本出願人の実験によれば、この予熱ステーション12の出口となる位置で調理釜6は上方へ反転され、その後すぐに塗油ステーション13や食材投入ステーション8が控えていることを考慮すれば、調理板40の表面温度(食材を載せる上面の温度)は180℃以上にすることが好適であることが判っている。
【0071】
そのため、予熱装置145として2台の赤外線バーナを用い、且つこれら赤外線バーナが4台程度の調理釜6に対応する長さを有したものとした。
塗油ステーション13は、調理板40の表面に調理用の油を供給するところである。この塗油ステーション13は、図15に示すように、昇降手段5の昇降バー4上から正面方向へ突き出して設けられたベースフレーム150の先端部で、複数本の吊り軸151を介して吊りベース152が吊り下げ保持され、この吊りベース152上に油噴射器153が設けられている。
【0072】
この油噴射器153には下向きに油を噴射するノズル154が設けられている。使用する油としてはサラダ油などとすればよい。一つの油噴射器153から噴射される油量や、油噴射器153の設置数などは何ら限定されるものではない。
なお、本実施形態では、吊りベース152の下部にダンパー軸155を介して釜カバー156を設けてある。この釜カバー156は、昇降手段5の昇降バー4が下降したときに調理釜6の上部開口に被さり閉塞すると共に、側方の食材取出口43も閉塞可能になっている。これに対応させ、油噴射器153のノズル154は釜カバー156を貫通するようになるまで下方へ長く延ばし、このノズル154に対して釜カバー156が上下動自在となるようにしてある。
【0073】
このような塗油ステーション13では、調理釜6がその対応位置で停止されたとき、昇降手段5が昇降バー4を下降させるのに伴って釜カバー156が調理釜6の上部開口及び食材取出口43を閉塞し、この閉塞状態がダンパー軸155によって付勢された状態となって、各油噴射器153のノズル154から調理釜6内に油が噴射されるものである。
この食材投入ステーション8としては、投入する食材に応じて適宜構造を採用すればよい。殊に主材供給ステーション17などはシュートやコンベア的なものでもよいし、ロボットハンドのようなチャッキング機構などを採用してもよい。
【0074】
図16は、ソースの供給に用いる調味料供給ステーション18の一例を示している。この調味料供給ステーション18では、ソースタンク160の底部に、プッシュ動作を受けるたびに開弁動作する弁部161を介して拡散ヘッド162が下向きに設けられ、また弁部161の上部にはソースタンク160の上方へ突き出すプッシュ軸163が設けられている。
このプッシュ軸163の上端部には円板形をした押し片164が設けられ、この押し片164とソースタンク160の上部に設けられた渡り板165との間に復帰バネ166が挿通されている。従ってこの復帰バネ166により、プッシュ軸163は上昇付勢されることになり、押し片164が下向きに押されない限り、弁部161は閉鎖状態を保つようになっている。
【0075】
また、このプッシュ軸163の更に上方位置に、流体圧シリンダ等を下向きに用いたプッシュ具167が設けられており、このプッシュ具167によってプッシュ軸163の押し片164を押圧可能となっている。
なお、この調味料供給ステーション18では拡散ヘッド162を昇降させる必要がないものとしているので、プッシュ具167は昇降手段5の昇降バー4とは別個独立して設けられた支持柱168により、固定的に支持されるものとしてある。
このようなことから、この調味料供給ステーション18の対応位置に調理釜6が停止されたとき、プッシュ具167の作動で押し片164が下向きに押圧され、拡散ヘッド162を介して所定量のソースが調理釜6内へと供給されるものである。
【0076】
以上、詳説したところから明らかなように、本発明に係る調理装置53,54を用いて構築した調理ラインシステム1では、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される過程で、食材投入ステーション8の主材供給ステーション17にて主材である茹で麺が供給され、次に調味料供給ステーション18にて調味料としてのソースが供給される。
そして、調理ステーション9では調理釜6内の食材が炒めと混ぜ合わせを繰り返し行われる。このとき、食材(殊に主材としての茹で麺)は、略起立状態のハンド部材57(ブレード64)にて対向押圧状に寄せ集められ、その後上昇され、上昇後に落下されるものであり、従来とは異なって、引き裂かれたり押し潰されたり、或いは切られたりするということは決して起こらない。
【0077】
また、この混ぜ合わせのとき、食材が積極的に持ち上げられることで、持ち上げられる食材と調理板40との上下間に空気流通空間が可及的多く確保され、食材は積極的に空気に曝される。しかも、これに伴って調理板40自体にも、食材が持ち上げられることによる露呈部分、或いは持ち上げられずに残った食材の盛り厚の希薄部分が生じる。
更に、持ち上げられた食材が落下するときには末広がり的に拡散され、調理板40上が有効的に広範囲で使用されるので、調理板40に対する食材の接触機会が多くなる。
これらのことから、食材中の汁気は高効率で飛ばされ、また食材の混ぜ効果も高められることになって、おいしい調理品(焼きそば)が得られるものとなる。
【0078】
このように調理ステーション9を経て得られた調理品は、調理品取出ステーション10によって取り出される。
また、この調理品取出ステーション10を経た調理釜6は、洗浄ステーション11で洗浄され、予熱ステーション12で予熱された後、塗油ステーション13にて油が供給されることになる。
このような動作が、以後、繰り返される。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0079】
例えば、本発明に係る調理装置53,54は、調理ラインシステム1に組み込まれることが限定されるものではなく、それ単独として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】調理ラインシステムの一実施形態を示した正面図である。
【図2】横向き集め型ハンドリング手段を具備して構成された本発明に係る調理装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の調理装置を示す側断面図である。
【図4】横向き集め型ハンドリング手段の動作説明図である。
【図5】縦向き集め型ハンドリング手段を具備して構成された本発明に係る調理装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5の調理装置を示す側断面図である。
【図7】ハンド部材の一例を示す分解斜視図である。
【図8】ハンド部材(ブレード)の下端を拡大して示す側面図である。
【図9】横向き集め型ハンドリング手段と縦向き集め型ハンドリング手段の駆動部分を示す斜視図である。
【図10】昇降手段と各ハンドリング手段とが組み動作指示部に接続されていることを説明したブロック図である。
【図11】調理品取出ステーションを示す斜視図である。
【図12】洗浄ステーションを示す正面図である。
【図13】図12のA−A線断面図である。
【図14】予熱ステーションを示す側断面図である。
【図15】塗油ステーションを示す側断面図である。
【図16】調味料供給ステーションを示す側断面図である。
【符号の説明】
【0081】
5 昇降手段
40 調理板
50 ハンドリング手段
51 ハンドリング手段
57 ハンド部材
53 調理装置
54 調理装置
62 揺動支点
71 横溝
90 組み動作指示部
102 揺動支点
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼きそばなどの調理作業を自動的に行えるようにした調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼きそばなどを自動的に調理する調理装置として、食材を載せて調理(炒め)に用いられる調理板と、この調理板の上方で一対の掻上板によって掻き上げ動作をさせるようにした調理ヘッドとを有したものが知られている(特許文献1参照)。
掻上板は、薄い板材を素材として形成されており、その先端側には互いに所定間隔をおいて複数本の溝が形成され、溝と溝との間に幅のある櫛刃が残るようにされたものである。その外観はフォークと言うよりは恰も潮干狩りに用いるコテの先端形状のようである。
そして調理ヘッドは複雑なリンク機構を有しており、このリンク機構により、調理板における両脇側から板中央部へ向けて掻上板をスライドさせるような動きで調理板上に盛られた食材へ掻上板を突き刺し、板中央部(おそらくは食材の内部)では互いの櫛刃を交互に噛み合わせるようにしつつ、その後、立体楕円軌道を描かせながら元位置へ戻すような動きを繰り返す。
【0003】
このような一対の掻上板の動きで食材を掻き上げることで、その間に起こる食材の撹拌作用(混ぜ合わせ作用)を期待し、具材や調味料との絡め合わせや焦げ付き防止を図るようにしている。
なお、この調理ヘッドは昇降するものではなく、調理板の奥側から手前側、又はその逆方向へ向けて水平移動をするだけのものである。
一方、調理板を深みのある箱形の調理釜として形成し、この調理釜をベルトコンベア式にエンドレス状態で複数連接させ、これら調理釜を、食材(茹で麺)投入ステーションから調理(炒め)ステーションを経て調理品(焼きそば)取出ステーションへと一斉に横送りさせることで、調理を流れ作業的に進めるようにしたライン方式の調理装置も知られている(特許文献2参照)。
【0004】
この調理装置(ライン)で用いられる全ての調理釜には、それらの釜内底部寄りに、回転軸を横に向けてそのまわりで撹拌板を回転させるようにした撹拌装置が設けられている。
【特許文献1】特開2004−113583号公報
【特許文献2】特開平8−38366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一対の掻上板で調理板上の食材を掻き上げて食材の撹拌作用(混ぜ合わせ作用)を期待する方式の調理ヘッド(特許文献1に記載のもの)では、掻上板が薄い板素材であるが故に、これを調理板上に盛られた食材に突き刺すときや、両方の掻上板が互いの櫛刃を交互に噛み合わせるときに、その側縁や櫛刃で食材をことごとく切ってしまうということになる。
またこの掻上板は、掻き上げ動作をした後、立体楕円軌道の中で櫛刃を調理板から僅かに浮き上がらせるようにも推測されるが、本出願人の実験では、このような動きでは食材に対する撹拌が十分に行えないことが判っている。そのために、具材や調味料の偏り、焦げの発生といった問題も発生することになる。
【0006】
これらの問題は食材が麺類である場合、殊に頻発するものと推測され、料理人が手作業で作ったものとは、見栄え、食感、味などに関して、ほど遠い調理品になってしまうという、重大な問題になっている。
一方、深みのある箱形の調理釜内で撹拌板を回転させる方式の撹拌装置(特許文献2に記載のもの)では、撹拌板や回転軸に食材が絡みつき易く、食材を引き裂いたり押し潰したりしてしまうことになる。しかも撹拌動作が単調であるため混ぜ効果も乏しいものであった。
【0007】
すなわち、仕上がった調理品は見栄え、食感、味が相当に劣るものであることは言うまでもなく、そもそもこの調理品を見た者が食欲をそそらないという、食品としては致命的な問題となる。やはり食材が殊に麺類である場合にはその問題性も顕著で深刻であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、調理中における食材を効率よく、しかも十分に混ぜ合わせることができ、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができるようにした調理装置を提供することを目的とする。
本発明は殊に、焼きそばなどの麺類を調理するときに、好適に使用可能となる調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る調理装置は、食材を載せて調理に用いられる調理板と、この調理板の上方に設けられる一対のハンド部材を互いに略同一高さに維持させつつ少なくとも一方のハンド部材を移動させて他方のハンド部材との間で相対近接離反可能にするハンドリング手段とを有している。
またこの調理装置は昇降手段を有している。この昇降手段は、上記したハンドリング手段の両ハンド部材をそれらの下端が調理板の上面に近接乃至接触する高さまで下降させたり、ハンドリング手段が両ハンド部材を相対近接状態とさせた位置を通る鉛直方向に沿って両ハンド部材を真っ直ぐに上昇させたりする。
【0009】
このような構成であると、昇降手段がハンドリング手段の両ハンド部材を下降させているときに、ハンドリング手段が両ハンド部材を相対近接状態に作動させる、という組み動作を行わせることができる。
これであると、ハンドリング手段は、調理板上の食材を相対近接する両ハンド部材の間で対向押圧状に寄せ集め、この食材を調理板の上方へと持ち上げ可能な状態で保持することができる。なお、実際の持ち上げは昇降手段の作動を待つことになる。
このようにして食材を持ち上げ可能な状態で保持したり、持ち上げたりしても、食材を引き裂いたり押し潰したり、或いは切ったりするということは一切ない。しかも、ハンドリング手段が食材を保持した状態のまま、昇降手段による上昇で食材を持ち上げた後、この上昇位置からハンドリング手段が食材を解放する(振り落とす)といった動作をすれば、食材は調理板上にて高効率で混ぜられることとなり、具材や調味料が偏ったり、焦げが発生したりすることもない。
【0010】
その結果、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができる。
なお、昇降手段によるハンド部材の上昇は、意欲的且つ積極的なものであり、従来の「掻上板(特許文献1記載のもの)」が動作軌跡の中で「調理板から僅かに浮くと推測される点」とは明確に異なる。それらは、上昇高さの差として、また後述するような調理品の「おいしさ」として、顕著に現れることになる。
本発明の調理装置が具備する昇降手段は、ハンド部材を介して持ち上げられる食材と調理板との上下間に空気流通空間を可及的多く確保し、食材を積極的に空気に曝すと共に、調理板自体にも、食材が持ち上げられることに伴う露呈部分、或いは持ち上げられずに残った食材の盛り厚の希薄部分を生じさせ、もって熱発散性を高める(汁気を飛ばしやすくする)効果を期待したものである。
【0011】
ハンドリング手段と昇降手段とにおいて上記のような組み動作を得るために、これらハンドリング手段と昇降手段は、組み動作指示部によって動作制御するとよい。すなわち、この組み動作指示部は、両ハンド部材が上昇位置を維持したままこれら両ハンド部材を相対離反させ、両ハンド部材が相対離反状態を維持したままこれら両ハンド部材を下降させ、両ハンド部材が下降位置を維持したままこれら両ハンド部材を相対近接させ、両ハンド部材が相対近接状態を維持したままこれら両ハンド部材を上昇させるといった順番を1サイクル動作として設定するものである。
【0012】
なお、ハンドリング手段は、両方のハンド部材を対向方向へ向けて同時に近接移動させたり、相反する方向へ向けて同時に離反移動させたりする構成としてもよいし、或いは、一方のハンド部材は不動とし他方のハンド部材だけを近接離反方向へ可動とさせる構成としてもよい。
両方のハンド部材を可動にすれば食材を持ち上げ可能な状態に保持させたり、解放したりする動作が確実なものとなり、またこれらを調理板の板中央部にて行える利点がある。また一方のハンド部材だけを可動にする場合には、それだけ構造簡潔となり、動作制御も容易となる利点がある。
【0013】
ハンドリング手段の両ハンド部材は、少なくとも調理板上で相対近接動作するときには略起立した状態を維持するように設けるのが好適である。
このようにすることで、両ハンド部材の相対近接動作時、即ち、食材を対向押圧状に寄せ集めるときに、食材を傷めない(保護する)効果が一層高くなる。
ハンド部材を起立状にする場合、このハンド部材には互いに対向する起立面に対して調理板上に供給された食材に当接する高さで少なくとも1本の横溝を凹設するのが好適である。
【0014】
このような横溝を設けると、この横溝に食材が引っ掛かりやすくなり、持ち上げ可能な状態にするのが一層、容易、確実となる。従って、持ち上げ可能な状態に保持するときの食材量を多くすることができるので、それだけ食材の混ぜ効果を一層高めることができる。
ハンドリング手段のハンド部材は、その上端部が平面移動を不能とされた揺動支点として下端部が相対近接離反方向に揺動可能とするのがよい。このような構造を採用することで、構造簡潔となる効果が得られる。
【0015】
殊に、両ハンド部材は、揺動支点の相互間隔と両ハンド部材の相対離反時における下端部相互間隔とが略等しくなる配置とするのが好適である。すなわち、両ハンド部材が相対離反された状態のとき、各ハンド部材は略起立状態になり、その下端部が揺動支点の真下に位置付けられるようにする。
このように揺動支点を位置付けると、両ハンド部材を相対近接させたまま(食材を保持したまま)上昇させた後、両ハンド部材を相対離反させたとき、両ハンド部材がそれらの下端部を振り子のように揺動させながら両外側へ開く動作をする。そのため、このハンド部材の揺動につられて、食材が保持状態から解放されるときに末広がり方向への慣性を与えられることになり、食材は調理板上の広い範囲へ拡散状に落とされる。
【0016】
なお、ハンド部材に対して上記したような横溝を設けておけば、食材を調理板上の広い範囲へ拡散状に落とす効果も更に高められる。
これらのことから、調理板上を有効的に広範囲で使用できることになる。このことは、調理板に対する食材の接触機会を多くし、その結果、食材に対する熱伝導を高めることになる。また食材の混ぜ効果も更に一層、高められることになる。
そのため、食材中に含まれる汁気(水分量)を多く飛ばす(蒸発させる)ことができるようになり、炒めなどの調理において「おいしさ」を増す重要な要因を作り出すことになるのである。
【0017】
この調理装置は、食材の主材(具材や調味料を除いた主たる材料)を麺類とする場合に、特に有益なものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る調理装置は、調理中における食材を効率よく、しかも十分に混ぜ合わせることができ、見栄え、食感、味の良好な調理品に仕上げることができるようになった。そのため、焼きそばなどの麺類を調理するときに、好適に使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る調理装置50,51の一実施形態を用いて構築した調理ラインシステム1の一実施形態を示している。以下では、この調理ラインシステム1の概要乃至細部を説明してゆき、その中の要所で各調理装置50,51を説明するものとする。
この調理ラインシステム1は、調理ライン2と食材搬送装置3とを有している。またこの調理ラインシステム1には、そのシステム全体にわたるように架設された昇降バー4を昇降させるための昇降手段5が設けられている。
【0020】
食材搬送装置3は、食材の調理に用いる調理釜6をベルトコンベア式にエンドレス状態で多数連接させ、これら調理釜6を上下循環状に一斉に搬送可能としたものである。調理釜6の搬送方向は図1中において反時計回りとしてあり、上部の搬送路を右から左へ移動させて左端側で下方へ反転後、下部の搬送路を左から右へ移動させて、右端側で上方へ反転するといったことを繰り返す。
これに対して調理ライン2は、この食材搬送装置3の上方域や下方域を取り囲むような配置で複数のステーションが配置されたもので、各ステーションを次々に通過する調理釜6に対して、調理作業やその前処理作業、或いは後処理作業などを流れ作業的に実行するようになっている。
【0021】
本実施形態において、この調理ラインシステム1は、最終的に仕上げる調理品を焼きそばとおいて、これを自動調理するのに好適に使用可能なものを示してある。そこで以下では、使用する食材として、まずその中で主材となるものを茹で麺とおく。また食材には他に、肉や野菜などの具材があり、更にソースやマヨネーズ、場合によっては塩や胡椒などの調味料や、粉かつお、青のり、花かつお、紅生姜などの適宜トッピング材なども含まれるものとする。
また調理作業の主たるものは、食材を加熱しつつ混ぜ合わせる炒め作業であるとする。そして、調理後に仕上げられ、取り出される調理品としての焼きそばは、その後、所定時間(30分)内に冷凍され、冷凍食品とされるものとする。
【0022】
なお、冷凍せず、仕上がった熱いままで、食品として販売等に供することができるのは言うまでもない。
昇降手段5の昇降バー4は、食材搬送装置3の上部搬送路よりも高い位置にて、且つその長手方向を食材搬送装置3の搬送方向に沿わせるように略水平に架設されている。この架設位置は食材搬送装置3の真上ではなく、背後側(図1を正面図とおいて食材搬送装置3よりも後方側を意味する)に位置付けられている。
そして食材搬送装置3の両脇部や、必要に応じたスパン中の適所に設けられた流体圧シリンダ等の昇降駆動具7により、昇降バー4を略水平状態のまま昇降させるようになっている。この昇降バー4によって昇降されるものについては後述する。
【0023】
調理ライン2は、この調理ラインシステム1に対して食材(茹で麺など)を供給するための食材投入ステーション8と、この供給された食材を調理する(炒める)ための調理ステーション9と、調理によって仕上がった調理品(焼きそば)を、この調理ラインシステム1の外へ取り出すための調理品取出ステーション10とを有している。
またこの調理ライン2は、他にも、調理に用いられた調理釜6を調理品取出ステーション10の通過後に洗浄するための洗浄ステーション11や、この洗浄後の調理釜6が食材投入ステーション8にて再使用されるのに先だって予備加熱させるための予熱ステーション12や、この予熱後の調理釜6に対してその表面に油をひくための塗油ステーション13なども有している。
【0024】
食材投入ステーション8及び調理ステーション9には、これらを通過搬送される調理釜6をその下から加熱するためのコンロ14が個々に設けられている。
この調理ライン2において各ステーションの設置台数やそれらの配置順番などは特に限定されるものではなく、仕上げる調理品の種類や、採用する調理方法などに応じて任意且つ柔軟に変更可能である。
例えば、調理ステーション9は上記したように食材を炒めるところとしているが、炒め時間をある程度、長く確保する必要があり、またこの炒め中には食材を十分に混ぜ合わせることが必要であることから、この調理ステーション9は複数のものを相互隣接状に設けるのが好適とされる。
【0025】
また、食材投入ステーション8では、食材の中の主材である茹で麺を調理釜6へ供給する主材供給ステーション17と、調味料としてのソースを調理釜6内へ供給する調味料供給ステーション18とを有したものとした。これは仕上がった焼きそばを、その後、冷凍食品として冷凍させることを前提にしているためである。
しかし冷凍せず、仕上がった熱いまま、食品として販売等に供する場合には、その他に、肉や野菜などの具材を供給する具材供給ステーション(図示略)や、ソース以外の調味料、或いは上記した各種トッピング材を各別に供給する各種の供給ステーション(図示略)を設けるようにしてもよい。
【0026】
その他のステーション(予熱ステーション12等)についても同様であり、必要に応じて複数のものを設けることができる。
本実施形態におけるこれら各ステーションの配置は、食材搬送装置3の上部搬送路ではその上流側(図1右側)から下流側(同左側)へ向かって、塗油ステーション13、食材投入ステーション8、調理ステーション9、調理品取出ステーション10がこの順番で並設されたものとし、食材搬送装置3の下部搬送路ではその上流側(図1左側)から下流側(図1右側)へ向かって、洗浄ステーション11、予熱ステーション12がこの順番で並設されたものとした。
【0027】
そのためこの調理ライン2を、流れ作業から着目するとすれば、食材投入ステーション8を始点とおき、ここをスタートした調理釜6が調理品取出ステーション10を経て、その下流位置で真下へ折り返されて裏向きに反転するまでの搬送区間を、往路搬送帯25とおくことができる。
また、この往路搬送帯25の終端位置を始点とおき、ここをスタートした調理釜6が往路搬送帯25の下部を逆方向へ向かいつつ、洗浄ステーション11及び予熱ステーション12を経て、その下流位置で真上へ折り返されて上向きに反転され、塗油ステーション13を経て食材投入ステーション8に至るまでの搬送区間を、復路搬送帯26とおくことができる。
【0028】
食材搬送装置3は、調理ライン2に含まれる全てのステーションに対応させて各調理釜6を停止させたり、所定の停止時間が経過した後に各ステーション間の1ピッチ分(設置間隔)に合わせて全調理釜6を一斉に横送りさせ、隣接するステーションへ歩進させた時点でまた停止させたりするといったことを繰り返す構成である。
調理釜6は、調理ライン2が有するステーション数と同等数又はそれ以上の台数が、チェン等の連結索28により、ステーション間ピッチと等しい間隔を保持しつつ連接されている。この連結索28はエンドレスになっており、搬送方向の両端位置に設けられたスプロケット29相互間に架け渡され、駆動される。
【0029】
図5、図11、図14等から明らかなように、連結索28は複数本(図例では2本)が平行架設されている。これら連結索28と調理釜6との結合は、両連結索28間に跨って走行枠32が固定され、この走行枠32から正面水平方向へ支持ステー33が突設され、この支持ステー33の突端部で調理釜6が片持ち支持される構造による。
これにより連結索28やスプロケット29と調理釜6との間を離し、機械的にもまた熱影響的にも干渉が起こらないようにしてある。走行枠32には連結索28の両外側へ張り出す位置に複数の車輪34が回転自在に設けられており、これら車輪34が、連結索28と平行に設置されたガイドレール36上を走行することで調理釜6の安定性が確保されている。
【0030】
調理釜6は、恰も、料理用バットを少し大型にしたような嵩の低い箱形に形成されたもので、釜底に相当する部分は、長方形の平らな板面を有した調理板40を形成している。この調理板40の大きさは、一つの調理ステーション9において調理される食材量(例えば一食分に設定)を個別に収容できることを目安に形成されている。
この調理板40の外周部にはそのうちの三辺に周壁41が立ち上げ形成されている。これら周壁41は上広がりとなる方向で若干傾斜しており、これら周壁41と調理板40との間には、連続的な内曲がりのカーブを呈する丸底部42が設けられている。
【0031】
調理釜6において、周壁41が形成されていない辺部は、支持ステー33を介して走行枠32と対向するようになる辺部とは丁度、反対側となる辺部であって、この部分が食材取出口43として開口されている。
なお、本出願人の実験によれば、この調理釜6はアルミ鋳造などによって製作するのが、重量面、製作容易性面、コスト面などで好適であり、この場合、調理板40、周壁41、及び丸底部42を8mm厚以上とすることで、炒め作業に関して好適な仕上がり(調理)が得られることが判っている。
【0032】
この調理釜6の内面(調理板40の上面、丸底部42及び周壁41の各内面)には、フッ素樹脂皮膜が施されている。
図1に示したように、各調理ステーション9には横向き集め型ハンドリング手段50を有したものと、縦向き集め型ハンドリング手段51を有したものとの二種がある。これら横向き集め型ハンドリング手段50と縦向き集め型ハンドリング手段51とは、交互配置で設けられている。
また、これら全てのハンドリング手段50,51は、上記した昇降手段5の昇降バー4に対して設けられており、この昇降手段5による昇降バー4の昇降動作によって一斉に昇降するようになっている。
【0033】
すなわち、この昇降手段5は、食材搬送装置3が調理釜6を横送りするときに、この調理釜6とハンドリング手段50,51との接触干渉を回避させるための機構として有用となっている。
そして、各調理ステーション9に対応して食材搬送装置3の調理釜6が停止されている状態にあって、この調理釜6の釜底を形成している調理板40と、それぞれのハンドリング手段50,51との組み合わせにおいて、本発明に係る二種の調理装置53,54が構成される。
【0034】
図2乃至図4に示すように、この調理装置53が有する横向き集め型ハンドリング手段50は、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される方向に沿って、調理釜6内の食材を寄せ集めるもので、この方向で互いに対向する一対のハンド部材57を有している。
これら両ハンド部材57は、昇降手段5の昇降バー4上に設けられたベース盤60から正面方向へ突き出した2本の揺動支軸61の各突端部で片持ち状に吊り下げられている。
ベース盤60上において揺動支軸61を保持する部分には、ピローブロック等を用いた揺動支点62が用いられているため、揺動支軸61はその軸中心周りで回転自在となっており、結果、両ハンド部材57は、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される方向に沿って揺動自在になっている。従って、両ハンド部材57の揺動方向を相対逆にして揺動させれば、両ハンド部材57は相対近接動作や相対離反動作を行うものとなる。
【0035】
ハンド部材57は、揺動支軸61の突端部に吊り下げ固定された支持アーム63と、この支持アーム63から更に下方へ垂下状に保持される板片状のブレード64とを有している。
図7に示すように、支持アーム63の下端部にはブレード64を上から下へ向けて差し込み可能にする支持枠65が設けられており、ブレード64にはこの支持枠65へ差し込まれたときに下方へ抜け落ちるのを防止するための係合片66が設けられている。
支持枠65内にブレード64が差し込まれ、係合片66が支持枠65の上面に係合した状態では、ブレード64は鉛直方向に沿った起立状態で吊り下げられるが、このときブレード64は支持枠65内で若干のガタツキを生じ得るようになっている。
【0036】
このようなことから、支持アーム63に対し、ブレード64は、支持枠65に係合片66が係合した状態から上方域において上下動自在である。またブレード64は、必要に応じて支持枠65の上方へ引き抜くことも自在に行えるものであり、従ってこのハンドリング手段50においてブレード64は着脱自在である。
ブレード64の着脱が自在であることから、ブレード64を洗浄又は交換するといったことがいとも簡単にでき、ブレード64をいつも綺麗な状態(食材等の付着がない状態)に維持できる。
【0037】
フレード64は樹脂などにより形成されており、その下辺部には複数本の縦溝68が横並び状態で形成されている。縦溝68は下端側が解放されており、縦溝68と縦溝68との間には、縦溝68の溝幅よりやや細くなることを条件として可及的に広幅とした垂下片70が残置形成されている。
なお図7に示したブレード64は、後述する縦向き集め型ハンドリング手段51で使用するものである。そのため、ブレード64の幅方向に対して縦溝68がセンター振り分けで配置されたものとされ、従って垂下片70についてもセンター振り分けの配置となっている。
【0038】
しかし、横向き集め型ハンドリング手段50で使用するブレード64は、図2及び図3に示すように、幅方向で非対称となる配置で縦溝68や垂下片70が設けられている。従って、互いに対向関係にある一対のハンド部材57にあって、一方のハンド部材57で使用するブレード64と、同、他方のハンド部材57で使用するブレード64との間では、互いの縦溝68と垂下片70とが巧く組み合わされて対向する配置となる。
そのため、両ハンド部材57を相対近接方向へ揺動させるとき、垂下片70同士の衝突は避けられ、一方のブレード64の垂下片70が相手側ブレード64の縦溝68内へ嵌って垂下片70同士がクロスする状態となるまで、相対近接を行わせることができる。
【0039】
なお、このような縦溝68(垂下片70)の形成は特に限定されるものではなく、両ハンド部材57を相対近接させるときに、それらの下端部同士が衝突しない範囲でとどめる場合には、ブレード64は平板状に形成させてもよい。
ブレード64には、互いに対向する起立面に横溝71が凹設されている。この横溝71は、食材の主材である茹で麺を引っ掛けるためのものである。従ってこの横溝71は、ブレード64の下端を調理板40上に当接させたとき、この調理板40上に供給された食材に当接する高さに位置付けられている。
【0040】
なお、横溝71の本数は特に限定されるものではない。但し、横溝71の溝幅が狭すぎるとこの溝内で茹で麺を引っ掛けることができなかったり、横溝71内に茹で麺が詰まってしまったりするといった不具合に繋がるので、横溝71の溝幅をある程度確保したうえでなら、調理板40上の食材に当接する範囲に可及的多く設けるのがよい。図例では3本としてある。
また図8に示すように、ブレード64の下端部は、調理板40に対して平面移動する方向に沿った向きでアール面取りが施されている。これにより、食材や調理板40表面に対する摺動容易性を高め、擦り傷などの発生を防止できる。
【0041】
上記したベース盤60上において、揺動支点62は固定されており平面移動不能である。そして、一方のハンド部材57を支持する揺動支点62と、同、他方のハンド部材57を支持する揺動支点62との相互間隔は、両ハンド部材57を相対離反させたときに、それら下端部相互の間隔(ブレード64の相互間隔)と略等しくなる配置となっている。すなわち、両ハンド部材57が相対離反状態のとき、各ハンド部材57(ブレード64)は略起立状態になり、その下端部が揺動支点62の中心軸(揺動支軸62の軸心)に対してその真下に位置付けられる。
【0042】
このハンドリング手段50において、両ハンド部材57を相対近接動作及び相対離反動作を行わせるために、リンク機構80が採用されている。このリンク機構80は、ベース盤60上を通る両ハンド部材57の揺動支軸61に対し、それらの相互間で「逆ハの字」状を呈するように斜め下向きに設けられる従動レバー81と、これら従動レバー81の下方でレバー先端を正面へ向け略水平に突出させた状態で設けられた駆動レバー82と、従動レバー81と駆動レバー82との上下間をリンク接合するリンク杆83と、駆動レバー82を串刺し状態に貫通保持する第1原動軸84とを有している。
【0043】
言うまでもなく、ベース盤60にはリンク杆83の挿通及び従動レバー81の上下揺動を許容するため、逃げ孔86が形成されている。また従動レバー81は揺動支軸61と一体回転可能であり、駆動レバー82は第1原動軸84と一体回転可能になっている。
第1原動軸84は、調理ライン2中において調理ステーション9が設けられる範囲全体に渡るように架設されており、図9に示すように、その一端部には第1原動レバー87が一体回転可能に設けられ、この第1原動レバー87を介して流体圧シリンダ等を用いた第1原動部88と連結されている。
【0044】
これら第1原動軸84や第1原動部88は、昇降手段5の昇降バー4に結合関係をもって設けられており、従って昇降バー4と一緒に昇降する。従って第1原動軸84と駆動レバー82などとの角度関係は、昇降手段5が昇降バー4を昇降させても何ら変化しない。
従って、この第1原動部88が第1原動レバー87を引込方向に作動して第1原動軸84を回動させ、駆動レバー82を上向き揺動させれば、従動レバー81も同様に上向き揺動し、両揺動支軸61は両ハンド部材57を相対近接させる方向に回動する。
反対に、第1原動部88が第1原動レバー87を押出方向に作動して第1原動軸84を回動させ、駆動レバー82を下向き揺動させれば、従動レバー81も同様に下向き揺動し、両揺動支軸61は両ハンド部材57を相対離反させる方向に回動する。
【0045】
ハンドリング手段50の両ハンド部材57が相対近接動作及び相対離反動作を行う際には、昇降手段5による昇降バー4の昇降動作(要するにハンドリング手段50の昇降動作)が組み合わされる。このために、図10に示すように、ハンドリング手段50と昇降手段5は、組み動作指示部90によって動作制御される構成となっている。
この組み動作指示部90は、図4(A)に示すように、両ハンド部材57が上昇位置にあるときには両ハンド部材57を相対離反させたままとし、両ハンド部材57が相対離反状態を維持したまま、これら両ハンド部材57を下降させる。
【0046】
そして、図4(B)に示すように、両ハンド部材57を下降位置に至らせた後は、この下降位置を維持させたまま、両ハンド部材57を相対近接させる。
昇降手段5は、両ハンド部材57を下降させるとき、ブレード64の下端が調理板40の上面又は食材に当接した後も、更に若干の下降を続けさせる。このときブレード64は支持アーム63に対して所定量の持ち上がり状態となるが、このときブレード64は食材に対して自荷重以外の過大負荷を作用させることがないので、食材を押し潰してしまうということはない。
【0047】
従って、この下降位置で両ハンド部材57を相対近接動作させることで、調理板40上の食材を両ハンド部材57によって対向押圧状に寄せ集め、これによって食材を持ち上げ可能な状態に保持することができる。横溝71の存在により、持ち上げ可能な状態にする食材量は十分なほどに多い量となる。
ブレード64は調理板40上において上下方向にフリーの状態で保持されているので、ブレード64が食材との当接で無理な力を受けたとき、ブレード64自体が上方へ逃げ動作を行い、食材を傷つけない(形状的に保護する)ことになる。
【0048】
また、このとき両ハンド部材57(ブレード64)は、略起立状態を保持しているため、上記のような食材の保持の方法では食材を引き裂いたり押し潰したり、或いは切ったりするということは起こらない。
そして、両ハンド部材57を相対近接状態とさせた後は、図4(C)に示すように、この相対近接状態を維持させたまま、両ハンド部材57を上昇させる。この上昇は、両ハンド部材57が相対近接状態とされた位置を通る鉛直方向に沿って真っ直ぐに行われる。
またこのときの上昇高さは、ハンド部材57を介して持ち上げられる食材と調理板40との上下間に空気流通空間を可及的多く確保し、食材を積極的に空気に曝すことができる高さ(おおよそ10cm〜30cm程度。なおこれに限定されない)であり、これに伴って調理板40自体にも、食材が持ち上げられることによる露呈部分、或いは持ち上げられずに残った食材の盛り厚の希薄部分を生じさせることになる。
【0049】
これらのことから、食材や調理板40の熱発散性を高めることができ、食材中の汁気を飛ばしやすくするという効果に繋がる。
組み動作指示部90は、このような順番を1サイクル動作として、これを繰り返すように設定されている。
なお、両ハンド部材57を上昇位置に至らせた後は、次サイクルの開始時点で再び両ハンド部材57を相対離反させることになるので、両ハンド部材57によって持ち上げられている食材は調理板40上へと落下される。
【0050】
このとき、両ハンド部材57の揺動支点62が上記した相互間隔で設けられていることに伴い、両ハンド部材57の相対離反動作はそれらの下端部が振り子のように揺動しながら両外側へ開く動作となる。
そのため、これら両ハンド部材57の揺動につられて、食材が保持状態から解放されるときに末広がり方向への慣性を与えられることになり、食材は調理板40上の広い範囲へ拡散状に落とされることとなる。ハンド部材57のブレード64に対して横溝71が設けられているので、食材を調理板40上の広い範囲へ拡散状に落とす効果も更に高められる。
【0051】
このように調理板40上を有効的に広範囲で使用できることは、調理板40に対する食材の接触機会を多くし、その結果、食材に対する熱伝導を高めることになる。また食材の混ぜ効果も更に一層、高められることになる。そのため、食材中に含まれる汁気(水分量)を多く飛ばす(蒸発させる)ことができるようになり、「おいしさ」を増す重要な要因を作り出すことになるのである。
ところで、前記したように調理釜6は、調理板40の周壁41が上広がり方向の傾斜状態とされ、また周壁41から内曲がりのカーブを呈する丸底部42を経て調理板40へ至るように形成されている。
【0052】
これに対し、ハンドリング手段50の両ハンド部材57は、相対離反状態で調理釜6の上方に待機しているときに、ブレード64の下端が周壁41の上端縁から若干、調理釜6内に入り込むような位置付けとされている。
そのため、図4(A)に示したように、両ハンド部材57を相対離反状態のまま下降させてゆくと、ブレード64は調理釜6の周壁41内面から当接を開始し、内曲がりカーブとなった丸底部42の内面を経て調理板40の上面へ到達するように倣い当接をする。
これにより、丸底部の内面側に形成される内曲がりカーブがカム誘導部91として作用し、ブレード64の下端が調理板40上に当接後、両ハンド部材57が相対近接のため平行移動する際には、ブレード64はその先端が先行方向へ向く方向で傾斜することになる。
【0053】
そのため、調理板40上でのブレード64の平面移動時には、調理板40上の食材を掬い上げるような作用も生じることになり、焦げ付き防止効果などに優れたものとなる。
なお、このハンドリング手段50は、調理釜6内で両ハンド部材57を相対近接させたとき、これら両ハンド部材57間から漏れ出た食材が調理釜6の食材取出口43からこぼれ落ちることがないように、この食材取出口43を塞ぐためのストッパ用ハンド部材93を有している。
このストッパ用ハンド部材93は、L型アーム94を介してベース盤60に固定されているので、昇降手段5による昇降動作で両ハンド部材57と一緒に昇降する。
【0054】
図5及び図6に示すように、この調理装置54が有する縦向き集め型ハンドリング手段51は、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される方向に対し、これと平面直交する方向に沿って、調理釜6内の食材を寄せ集めるもので、この方向で互いに対向する一対のハンド部材57を有している。
この縦向き集め型ハンドリング手段51が上記した横向き集め型ハンドリング手段50と異なるところは、食材を寄せ集める方向が平面直交関係になることに起因する点であり、その他は、横向き集め型ハンドリング手段50と殆ど同じである。そこで以下では、これら両者において顕著に異なる点を重点的に説明する。
【0055】
この縦向き集め型ハンドリング手段51のハンド部材57は、昇降手段5の昇降バー4上から正面方向へ突き出して設けられたベースフレーム100の先端部で、軸心を食材搬送装置3の搬送方向と同方向に向けた揺動支軸101を介して吊り下げ状に保持されている。
ベースフレーム100上において揺動支軸101を保持する部分には、ピローブロック等を用いた揺動支点102が用いられているため、揺動支軸101はその軸中心周りで回転自在となっており、結果、両ハンド部材57は、食材搬送装置3の搬送方向と平面直交する方向に沿って揺動自在になっている。従って、両ハンド部材57の揺動方向を相対逆にして揺動させれば、両ハンド部材57は相対近接動作や相対離反動作を行うものとなる。
【0056】
このハンドリング手段51において、両ハンド部材57を相対近接動作及び相対離反動作を行わせるために、リンク機構105が採用されている。このリンク機構105は、両ハンド部材57の後方でレバー先端を斜め奥上方に突出させた状態で設けられた上部駆動レバー106と、この上部駆動レバー106と一方のハンド部材57の支持アーム63とをリンク接合する上側リンク杆107と、上部駆動レバー106とは逆にレバー先端を斜め手前下方に突出させた状態で設けられた下部駆動レバー108と、この下部駆動レバー108と他方のハンド部材57の支持アーム63とをリンク接合する下側リンク杆109と、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108を共に串刺し状態に貫通保持する第2原動軸110とを有している。
【0057】
言うまでもなく、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108は、いずれも第2原動軸110と一体回転可能になっている。
第2原動軸110は、調理ライン2中において調理ステーション9が設けられる範囲全体に渡るように架設されており、図9に示すように、その一端部には第2原動レバー111が一体回転可能に設けられ、この第2原動レバー111を介して流体圧シリンダ等を用いた第2原動部112と連結されている。
これら第2原動軸110や第2原動部112は、昇降手段5の昇降バー4に結合関係をもって設けられており、従って昇降バー4と一緒に昇降する。従って第2原動軸110と上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108などとの角度関係は、昇降手段5が昇降バー4を昇降させても何ら変化しない。
【0058】
従って、この第2原動部112が第2原動レバー111を押出方向に作動して第2原動軸110を回動させ、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108を図6中の反時計回り方向へ揺動させれば、両揺動支軸101は両ハンド部材57を相対近接させる方向に回動する。
反対に、第2原動部112が第2原動レバー111を引込方向に作動して第2原動軸110を回動させ、上部駆動レバー106及び下部駆動レバー108を図6中の時計回り方向へ揺動させれば、両揺動支軸101は両ハンド部材57を相対離反させる方向に回動する。
【0059】
図10に示すように、このハンドリング手段51も昇降手段5との間で、組み動作指示部90によって動作制御される構成となっている。この組み動作指示部90は、例えばシーケンス回路やコンピュータ回路を組み込んだ電気的制御手段であって、各動作部の動作検出をするセンサ類からの信号やタイマ信号、或いは人的操作によるスイッチ信号に応じて、各動作部の動作タイミングを制御するようになっている。
従って、両ハンド部材57が上昇位置にあるときには両ハンド部材57を相対離反させたままとし、両ハンド部材57が相対離反状態を維持したまま、これら両ハンド部材57を下降させる。また両ハンド部材57を下降位置に至らせた後は、この下降位置を維持させたまま、両ハンド部材57を相対近接させる。そしてこの相対近接状態を維持させたまま、両ハンド部材57を上昇させる、といった順番を1サイクル動作として、これを繰り返すように設定されている。
【0060】
この他、ハンド部材57自体の構造や調理釜6との位置関係、調理釜6の丸底部42の内曲がりカーブをカム誘導部91として利用してハンド部材57(ブレード64)を所定の傾斜状態にさせる点などは、横向き集め型ハンドリング手段50の場合と略同様である。
なお、調理ライン2中の調理ステーション9としては、これら横向き集め型ハンドリング手段50と縦向き集め型ハンドリング手段51とを交互配置で設けておくのが、食材の混ぜ効果を高めるうえで好適となる。
【0061】
図11に示すように、調理品取出ステーション10は、調理ステーション9を通過することで調理釜6内で仕上げられた調理品(焼きそば)を取り出すところであって、1本のハンド部材57を有したハンドリング手段121によって形成されている。
このハンドリング手段121は、昇降手段5の昇降バー4上に設けられたベース盤122を介して正面へ向け突出状態で保持された流体圧シリンダ等の進退駆動具123と、この進退駆動具123によって前後動可能とされるスライダー124とを有しており、このスライダー124の先端部でハンド部材57が片持ち状に吊り下げられている。
【0062】
ハンド部材57は、支持アーム63と、この支持アーム63の下端部で支持枠65を介して下方へ垂下状に保持され、上下動及び着脱自在とされるブレード64とを有したもので、調理ステーション9で採用されたものと略同じである。
但し、この調理品取出ステーション10のハンドリング手段121で採用されたブレード64には、縦溝68や垂下片70は不要であり、また横溝71も特に必要とはされないため、いずれも設けられていない。
なお、スライダー124と支持アーム63とはL型を呈して一体的に形成されたものとしてある。
【0063】
このような調理品取出ステーション10では、昇降手段5が昇降バー4を上昇させているときに、進退駆動具123がスライダー124と共にハンド部材57を引き込み方向(調理釜6の走行枠32側)へ移動させる。
そして昇降手段5が昇降バー4を下降させることで、ハンド部材57が調理釜6の奥方の周壁41(食材取出口43とは対辺側となるもの)に向けて下降し、この周壁41から丸底部42の内曲がりカーブをカム誘導部91として利用しつつ、ハンド部材57(ブレード64)を所定の傾斜状態にさせる。
【0064】
そして進退駆動具123がスライダー124と共にハンド部材57を押出方向へ移動させ、調理釜6の調理板40上を食材取出口43へ向けて移動させる。このようにして、調理釜6内の食材は、食材取出口43を介して装置外へと取り出される。
洗浄ステーション11は、調理ライン2の復路搬送帯26(図1参照)を裏返し状態で搬送される調理釜6の釜内に対し、その下から洗浄動作を行って残滓を落下除去させるところである。
洗浄動作としては、調理釜6の内部、特に釜底内面である調理板40に温水や洗浄水、又は高圧エアなどを吹き付けたり、ブラシやスキージ、拭き布などで擦ったりすればよい。
【0065】
本実施形態では、図12及び図13に示すように、回転ブラシ127と、この回転ブラシ127を調理釜6内へ押し付けたときにブラシ外周面又はブラシ127と調理釜6との当接間などに対して温水を噴射する温水ノズル128とを有したものを採用してある。
回転ブラシ127は、回転軸129の一端部がピローブロック等の軸受け具130によって片持ち状態に支持されて回転自在とされており、電動モータ又はエアモータ等の回転駆動具131によって回転駆動される。また、軸受け具130は、流体圧シリンダ等を用いた上下動具132によって上下動可能とされた台枠133上に設けられ、この台枠133は流体圧シリンダ等を用いたスライダ134によって調理釜6の搬送方向に沿った移動が可能とされている。
【0066】
そのため、食材搬送装置3において調理釜6が搬送されている間は、上下動具132が下降状態となり、またスライダ134は、食材搬送装置3の搬送方向における上流寄り(図12の左側)に台枠133(回転ブラシ127)を位置付けている。
この状態で洗浄ステーション11に対応して調理釜6が停止されたときには、回転ブラシ127が回転されている状態として上下動具132が上昇動作し、スライダ134が回転ブラシ127を食材搬送装置3の下流側(図12の左側)へ向けて移動させる。またこの間、温水ノズル128からは温水が勢いよく噴出される。
【0067】
これらのことにより、調理釜6の内面、殊に、調理板40に残滓が付着していたとしても、この残滓は確実に剥がされ、そのまま下方へ落下することになる。なお、本出願人の実験によれば、温水ノズル128から噴射させる温水の温度は、40℃以上、好ましくは60℃以上にするのが好ましいことが判っている。
ところで、この洗浄ステーション11の温水ノズル128から噴射される温水は、図1に示したように、各ステーションにおいて調理釜6を加熱するコンロ14の下部に設けた製湯タンク139によって作られるようにしてある。
【0068】
この製湯タンク139は、内部が空洞とされた薄い扁平形状をした箱体であって、図14に示すように給水や出湯のために内部連通状態に設けられる配管部140以外には、開口部分がない密閉構造とされている。
この製湯タンク139をコンロ14の下部に設け、内部を水で満たしておくことで、コンロ14で発生する余剰熱や調理釜6からの輻射熱を吸収し、内部の水を湯に変えることができる。すなわち、熱の有効利用ができるものである。のみならず、この製湯タンク139によって雰囲気中の熱回収ができることになるので、断熱効果が得られ、この調理ラインシステム1の周囲で作業する使用者にとって環境改善に繋がる。
【0069】
予熱ステーション12は、調理品取出ステーション10を経て食材投入ステーション8へ戻る食材投入前の調理釜6に対し、少なくとも調理釜6の調理板40を加熱するところである。
この予熱ステーション12は、調理ライン2(図1参照)の往路搬送帯25と復路搬送帯26との上下間にできるスペースを有効利用して、下向きに発熱作用を生じる予熱装置145を設けたものとしてある。この予熱装置145には、下向きに効率的に発熱作用を生じさせることが必要であるため、例えば赤外線バーナ(ガス式)を採用するのが好適である。
【0070】
従ってこの予熱ステーション12では、調理ライン2の復路搬送帯26を裏返し状態で搬送される調理釜6に対して、予熱装置145によって調理板40の裏面を加熱することになる。
なお、本出願人の実験によれば、この予熱ステーション12の出口となる位置で調理釜6は上方へ反転され、その後すぐに塗油ステーション13や食材投入ステーション8が控えていることを考慮すれば、調理板40の表面温度(食材を載せる上面の温度)は180℃以上にすることが好適であることが判っている。
【0071】
そのため、予熱装置145として2台の赤外線バーナを用い、且つこれら赤外線バーナが4台程度の調理釜6に対応する長さを有したものとした。
塗油ステーション13は、調理板40の表面に調理用の油を供給するところである。この塗油ステーション13は、図15に示すように、昇降手段5の昇降バー4上から正面方向へ突き出して設けられたベースフレーム150の先端部で、複数本の吊り軸151を介して吊りベース152が吊り下げ保持され、この吊りベース152上に油噴射器153が設けられている。
【0072】
この油噴射器153には下向きに油を噴射するノズル154が設けられている。使用する油としてはサラダ油などとすればよい。一つの油噴射器153から噴射される油量や、油噴射器153の設置数などは何ら限定されるものではない。
なお、本実施形態では、吊りベース152の下部にダンパー軸155を介して釜カバー156を設けてある。この釜カバー156は、昇降手段5の昇降バー4が下降したときに調理釜6の上部開口に被さり閉塞すると共に、側方の食材取出口43も閉塞可能になっている。これに対応させ、油噴射器153のノズル154は釜カバー156を貫通するようになるまで下方へ長く延ばし、このノズル154に対して釜カバー156が上下動自在となるようにしてある。
【0073】
このような塗油ステーション13では、調理釜6がその対応位置で停止されたとき、昇降手段5が昇降バー4を下降させるのに伴って釜カバー156が調理釜6の上部開口及び食材取出口43を閉塞し、この閉塞状態がダンパー軸155によって付勢された状態となって、各油噴射器153のノズル154から調理釜6内に油が噴射されるものである。
この食材投入ステーション8としては、投入する食材に応じて適宜構造を採用すればよい。殊に主材供給ステーション17などはシュートやコンベア的なものでもよいし、ロボットハンドのようなチャッキング機構などを採用してもよい。
【0074】
図16は、ソースの供給に用いる調味料供給ステーション18の一例を示している。この調味料供給ステーション18では、ソースタンク160の底部に、プッシュ動作を受けるたびに開弁動作する弁部161を介して拡散ヘッド162が下向きに設けられ、また弁部161の上部にはソースタンク160の上方へ突き出すプッシュ軸163が設けられている。
このプッシュ軸163の上端部には円板形をした押し片164が設けられ、この押し片164とソースタンク160の上部に設けられた渡り板165との間に復帰バネ166が挿通されている。従ってこの復帰バネ166により、プッシュ軸163は上昇付勢されることになり、押し片164が下向きに押されない限り、弁部161は閉鎖状態を保つようになっている。
【0075】
また、このプッシュ軸163の更に上方位置に、流体圧シリンダ等を下向きに用いたプッシュ具167が設けられており、このプッシュ具167によってプッシュ軸163の押し片164を押圧可能となっている。
なお、この調味料供給ステーション18では拡散ヘッド162を昇降させる必要がないものとしているので、プッシュ具167は昇降手段5の昇降バー4とは別個独立して設けられた支持柱168により、固定的に支持されるものとしてある。
このようなことから、この調味料供給ステーション18の対応位置に調理釜6が停止されたとき、プッシュ具167の作動で押し片164が下向きに押圧され、拡散ヘッド162を介して所定量のソースが調理釜6内へと供給されるものである。
【0076】
以上、詳説したところから明らかなように、本発明に係る調理装置53,54を用いて構築した調理ラインシステム1では、食材搬送装置3によって調理釜6が搬送される過程で、食材投入ステーション8の主材供給ステーション17にて主材である茹で麺が供給され、次に調味料供給ステーション18にて調味料としてのソースが供給される。
そして、調理ステーション9では調理釜6内の食材が炒めと混ぜ合わせを繰り返し行われる。このとき、食材(殊に主材としての茹で麺)は、略起立状態のハンド部材57(ブレード64)にて対向押圧状に寄せ集められ、その後上昇され、上昇後に落下されるものであり、従来とは異なって、引き裂かれたり押し潰されたり、或いは切られたりするということは決して起こらない。
【0077】
また、この混ぜ合わせのとき、食材が積極的に持ち上げられることで、持ち上げられる食材と調理板40との上下間に空気流通空間が可及的多く確保され、食材は積極的に空気に曝される。しかも、これに伴って調理板40自体にも、食材が持ち上げられることによる露呈部分、或いは持ち上げられずに残った食材の盛り厚の希薄部分が生じる。
更に、持ち上げられた食材が落下するときには末広がり的に拡散され、調理板40上が有効的に広範囲で使用されるので、調理板40に対する食材の接触機会が多くなる。
これらのことから、食材中の汁気は高効率で飛ばされ、また食材の混ぜ効果も高められることになって、おいしい調理品(焼きそば)が得られるものとなる。
【0078】
このように調理ステーション9を経て得られた調理品は、調理品取出ステーション10によって取り出される。
また、この調理品取出ステーション10を経た調理釜6は、洗浄ステーション11で洗浄され、予熱ステーション12で予熱された後、塗油ステーション13にて油が供給されることになる。
このような動作が、以後、繰り返される。
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0079】
例えば、本発明に係る調理装置53,54は、調理ラインシステム1に組み込まれることが限定されるものではなく、それ単独として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】調理ラインシステムの一実施形態を示した正面図である。
【図2】横向き集め型ハンドリング手段を具備して構成された本発明に係る調理装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の調理装置を示す側断面図である。
【図4】横向き集め型ハンドリング手段の動作説明図である。
【図5】縦向き集め型ハンドリング手段を具備して構成された本発明に係る調理装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5の調理装置を示す側断面図である。
【図7】ハンド部材の一例を示す分解斜視図である。
【図8】ハンド部材(ブレード)の下端を拡大して示す側面図である。
【図9】横向き集め型ハンドリング手段と縦向き集め型ハンドリング手段の駆動部分を示す斜視図である。
【図10】昇降手段と各ハンドリング手段とが組み動作指示部に接続されていることを説明したブロック図である。
【図11】調理品取出ステーションを示す斜視図である。
【図12】洗浄ステーションを示す正面図である。
【図13】図12のA−A線断面図である。
【図14】予熱ステーションを示す側断面図である。
【図15】塗油ステーションを示す側断面図である。
【図16】調味料供給ステーションを示す側断面図である。
【符号の説明】
【0081】
5 昇降手段
40 調理板
50 ハンドリング手段
51 ハンドリング手段
57 ハンド部材
53 調理装置
54 調理装置
62 揺動支点
71 横溝
90 組み動作指示部
102 揺動支点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を載せて調理に用いられる調理板(40)と、この調理板(40)の上方に設けられる一対のハンド部材(57)を互いに略同一高さに維持させつつ少なくとも一方のハンド部材(57)を移動させて他方のハンド部材(57)との間で相対近接離反可能にするハンドリング手段(50)(51)と、このハンドリング手段(50)(51)の両ハンド部材(57)をそれらの下端が調理板(40)の上面に近接乃至接触する高さまで下降させると共にハンドリング手段(50)(51)が両ハンド部材(57)を相対近接状態とさせた位置を通る鉛直方向に沿って両ハンド部材(57)を真っ直ぐに上昇させることができる昇降手段(5)とを有していることを特徴とする調理装置。
【請求項2】
前記ハンドリング手段(50)(51)と前記昇降手段(5)とは、両ハンド部材(57)が上昇位置を維持したままこれら両ハンド部材(57)を相対離反させ、両ハンド部材(57)が相対離反状態を維持したままこれら両ハンド部材(57)を下降させ、両ハンド部材(57)が下降位置を維持したままこれら両ハンド部材(57)を相対近接させ、両ハンド部材(57)が相対近接状態を維持したままこれら両ハンド部材(57)を上昇させるといった順番を1サイクル動作に設定する組み動作指示部(90)によって動作制御可能とされていることを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項3】
前記ハンドリング手段(50)(51)は、両方のハンド部材(57)を対向方向へ向けて同時に近接移動可能にされていると共に、相反する方向へ向けて同時に離反移動可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の調理装置。
【請求項4】
前記ハンドリング手段(50)(51)の両ハンド部材(57)は、少なくとも調理板(40)上で相対近接動作するときには略起立した状態を維持するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の調理装置。
【請求項5】
前記ハンドリング手段(50)(51)のハンド部材(57)には、互いに対向する起立面に対して調理板(40)上に供給された食材に当接する高さで少なくとも1本の横溝(71)が凹設されていることを特徴とする請求項4記載の調理装置。
【請求項6】
前記ハンドリング手段(50)(51)のハンド部材(57)は、その上端部が平面移動を不能とされた揺動支点(62)(102)として下端部が相対近接離反方向に揺動可能とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の調理装置。
【請求項7】
前記ハンドリング手段(50)(51)の両ハンド部材(57)は、揺動支点(62)(102)の相互間隔と両ハンド部材(57)の相対離反時における下端部相互間隔とが略等しくなる配置とされていることを特徴とする請求項6記載の調理装置。
【請求項8】
前記調理の対象とする食材の主材は麺類であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の調理装置。
【請求項1】
食材を載せて調理に用いられる調理板(40)と、この調理板(40)の上方に設けられる一対のハンド部材(57)を互いに略同一高さに維持させつつ少なくとも一方のハンド部材(57)を移動させて他方のハンド部材(57)との間で相対近接離反可能にするハンドリング手段(50)(51)と、このハンドリング手段(50)(51)の両ハンド部材(57)をそれらの下端が調理板(40)の上面に近接乃至接触する高さまで下降させると共にハンドリング手段(50)(51)が両ハンド部材(57)を相対近接状態とさせた位置を通る鉛直方向に沿って両ハンド部材(57)を真っ直ぐに上昇させることができる昇降手段(5)とを有していることを特徴とする調理装置。
【請求項2】
前記ハンドリング手段(50)(51)と前記昇降手段(5)とは、両ハンド部材(57)が上昇位置を維持したままこれら両ハンド部材(57)を相対離反させ、両ハンド部材(57)が相対離反状態を維持したままこれら両ハンド部材(57)を下降させ、両ハンド部材(57)が下降位置を維持したままこれら両ハンド部材(57)を相対近接させ、両ハンド部材(57)が相対近接状態を維持したままこれら両ハンド部材(57)を上昇させるといった順番を1サイクル動作に設定する組み動作指示部(90)によって動作制御可能とされていることを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項3】
前記ハンドリング手段(50)(51)は、両方のハンド部材(57)を対向方向へ向けて同時に近接移動可能にされていると共に、相反する方向へ向けて同時に離反移動可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の調理装置。
【請求項4】
前記ハンドリング手段(50)(51)の両ハンド部材(57)は、少なくとも調理板(40)上で相対近接動作するときには略起立した状態を維持するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の調理装置。
【請求項5】
前記ハンドリング手段(50)(51)のハンド部材(57)には、互いに対向する起立面に対して調理板(40)上に供給された食材に当接する高さで少なくとも1本の横溝(71)が凹設されていることを特徴とする請求項4記載の調理装置。
【請求項6】
前記ハンドリング手段(50)(51)のハンド部材(57)は、その上端部が平面移動を不能とされた揺動支点(62)(102)として下端部が相対近接離反方向に揺動可能とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の調理装置。
【請求項7】
前記ハンドリング手段(50)(51)の両ハンド部材(57)は、揺動支点(62)(102)の相互間隔と両ハンド部材(57)の相対離反時における下端部相互間隔とが略等しくなる配置とされていることを特徴とする請求項6記載の調理装置。
【請求項8】
前記調理の対象とする食材の主材は麺類であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の調理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−212350(P2006−212350A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31073(P2005−31073)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成16年10月20日から10月23日 社団法人大阪国際見本市委員会開催の「フードテック2004・ジャパンフード2004」に出品
【出願人】(591002290)株式会社山田製作所 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成16年10月20日から10月23日 社団法人大阪国際見本市委員会開催の「フードテック2004・ジャパンフード2004」に出品
【出願人】(591002290)株式会社山田製作所 (9)
【Fターム(参考)】
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