説明

調理装置

【課題】被加熱物が設定調理プログラムによって加熱調理されたとき、被加熱物は作業者が希望通りの加熱が得られたものかを確認できる調理装置を提供する。
【解決手段】調理装置1は、調理室3と、この調理室3内の複数の被加熱物aを一斉に加熱する加熱手段11とを備える。調理装置1は、調理室3内の複数の被加熱物aのうちの一部の被加熱物aの芯温を検知する芯温検知手段31と、設定調理プログラムに従って加熱手段11を制御する制御手段41とを備える。制御手段41は、芯温検知手段からの信号に基づいて、被加熱物aの芯温が設定確認時間の間、継続して設定確認芯温以上であったか否かを判断する。制御手段41は、その判断結果を報知手段43に報知させるとともに、その判断結果に拘わらず設定調理プログラムに従って加熱手段11を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物が設定調理プログラムによって加熱調理されたとき、被加熱物は作業者が希望通りの加熱が得られたものかを確認できる調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された調理装置が知られている。
【0003】
この従来の調理装置は、食材等の被加熱物を入れる調理室と、調理室に入れられた複数の被加熱物を一斉に加熱する加熱手段と、調理室に入れられた複数の被加熱物のうちの一部の被加熱物の芯温を検知する芯温検知手段と、設定調理プログラムに従って加熱手段を制御する制御手段とを備えている。
【0004】
そして、制御手段は、芯温検知手段からの信号に基づいて、被加熱物の芯温が設定時間の間、継続して設定温度以上であったか否かを判断し、その判断結果が否定的な場合には、設定調理プログラムに変更を加え、加熱手段による加熱時間を延長する。
【特許文献1】特開2005−180858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の調理装置では、一部の被加熱物に対する判断結果が否定的な場合に、本来、被加熱物に適した加熱温度と加熱時間を予め設定された設定調理プログラムが自動変更されて加熱手段による加熱時間が必ず延長されるため、一部の被加熱物に対する判断結果が残りの被加熱物に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
すなわち例えばサンプルとして選ばれた1つの被加熱物が、たまたま大きなものであった場合に、その大きな1つのサンプルに対する否定的な判断結果によりそのサンプルのみに合わせて芯温が設定温度以上で設定時間継続されるまで加熱手段による加熱時間が延長されることとなり、その結果、サンプルより小さな残りの被加熱物が加熱超過される。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、一部の被加熱物に対する判断結果が残りの被加熱物に悪影響を及ぼす不具合を防止できる調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の調理装置は、調理室と、この調理室に入れられた複数の被加熱物を一斉に加熱する加熱手段と、前記調理室に入れられた複数の被加熱物のうちの一部の被加熱物の芯温を検知する芯温検知手段と、設定調理プログラムに従って前記加熱手段を制御する制御手段と、報知手段とを備え、前記制御手段は、前記芯温検知手段からの信号に基づいて、被加熱物の芯温が設定確認時間の間、継続して設定確認芯温以上であったか否かを判断し、その判断結果を前記報知手段に報知させるとともに、その判断結果に拘わらず設定調理プログラムに従って前記加熱手段を制御するものである。
【0009】
請求項2記載の調理装置は、請求項1記載の調理装置において、調理室に対して被加熱物を出し入れするための開口部と、この開口部を開閉する開閉扉と、この開閉扉に設けられ、前記調理室に入れられた被加熱物を見るための覗き窓とを備えるものである。
【0010】
請求項3記載の調理装置は、請求項1または2記載の調理装置において、報知手段は、設定調理プログラムに従った加熱調理が終了した時点で、判断結果を報知するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、一部の被加熱物に対する判断結果が否定的な場合であっても、設定調理プログラムが自動変更されることはないため、一部の被加熱物に対する判断結果が残りの被加熱物に悪影響を及ぼす不具合を防止でき、また、報知手段による報知により、被加熱物の芯温が設定確認時間の間、継続して設定確認芯温以上であったか否かを容易に知ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、制御手段による判断結果が否定的であった場合に、覗き窓から調理室内の被加熱物の状態を確認した上で、加熱手段による再加熱が必要かどうかを決定できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、設定調理プログラムに従った加熱が終了した時点で、被加熱物の芯温が設定確認時間の間、継続して設定確認芯温以上であったか知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の調理装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1ないし図5において、1は調理装置で、この調理装置1は、複数の被加熱物(例えば魚の切身等の食材)aを、熱気(ホットエアー)および蒸気(スチーム)の少なくともいずれか一方を利用して加熱調理するコンビオーブンである。
【0016】
調理装置1は、外形略直方体状の装置本体2を備えている。装置本体2は、複数の被加熱物aを例えばホテルパン等のトレイb上に載せて入れる調理室3を内部に有している、調理室3には、トレイbを支持する前後方向長手状のトレイ支持体4が上下方向に間隔をおいて配設されている。
【0017】
また、装置本体2は、調理室3に対して被加熱物aを出し入れするための開口部5を前面部に有している。装置本体2には、開方向への回動により開口部5を開口させ、閉方向への回動により開口部5を閉塞する開閉扉6が上下方向の軸7を中心として回動可能に設けられている。
【0018】
開閉扉6には、この開閉扉6を回動操作する際に把持する取手8が設けられている。また、開閉扉6には、調理室3に入れられた複数の被加熱物aを見るための窓部である覗き窓9が設けられている。覗き窓9は、調理室3内に入れられた複数の被加熱物aの略全域を可視可能とする大きさのもので、例えば透明や半透明のガラス製或いは合成樹脂製の板部材10にて構成されている。
【0019】
また、調理装置1は、調理室3に入れられた複数の被加熱物aを一斉に加熱する加熱手段11を備えている。加熱手段11は、調理室3に熱気を供給する熱気供給手段12と、調理室3に蒸気を供給する蒸気供給手段13とに構成されている。
【0020】
熱気供給手段12は、ガスバーナ等からなる熱源15、調理室3に配設され熱源15からの燃焼熱が通る熱交換パイプ16、この熱交換パイプ16からの排熱を外部に排出する排熱口17、熱交換パイプ16にて加熱された熱気を被加熱物a側へ送るファン18、このファン18を回転させるモータ(図示せず)等を有している。
【0021】
蒸気供給手段13は、ボイラー等からなる蒸気発生源21、この蒸気発生源21からの蒸気が通るパイプ22、このパイプ22に設けられ蒸気を調理室3に供給する蒸気供給口23、蒸気発生源21での燃焼後の排気を外部に排出する排気口24等を有している。
【0022】
さらに、調理装置1は、調理室3に入れられた複数の被加熱物aのうちの一部、すなわち例えば任意に選ばれた1つの被加熱物aの芯温(つまり被加熱物aの略中心部の温度)を検知する芯温検知手段31と、調理室3の上部に配設され調理室3の室内温度である室温を検知する室温検知手段32とを備えている。
【0023】
芯温検知手段31は、調理室3に配設され上端部が被取付部33に取り付けられた可撓性のある紐状部34と、この紐状部34の下端部に設けられた摘み部35と、この摘み部35から突出する針部36とを有している。そして、芯温検知手段31は、図5に示すように、摘み部35を摘んで持ち、針部36をトレイb上に焼網cを介して載置された1つの被加熱物aの略中心部まで差し込んで使用する。
【0024】
また、調理装置1は、予め設定された設定調理プログラム(例えば設定室温、設定芯温および設定加熱時間等)に従って加熱手段11、つまり熱気供給手段12および蒸気供給手段13を制御する制御手段41を備えている。
【0025】
なお、設定調理プログラムは、調理開始前に調理対象物である被加熱物aの種類や状態等によって各々適切な加熱温度と加熱時間が設定されるもので、例えば「サバの塩焼きの場合、熱気による加熱で、設定室温280度、設定加熱時間16分」、「南瓜の旨煮の場合、蒸気による加熱で、設定室温100度、設定加熱時間20分」、「肉じゃがの場合、熱気および蒸気による加熱で、設定室温150度、設定加熱時間35分」、「ローストビーフの場合、芯温調理モードにおいて、熱気による加熱で、設定芯温68度」等である。
【0026】
制御手段41には、加熱手段11、芯温検知手段31および室温検知手段32が電気的に接続されているとともに、操作手段42および表示手段(報知手段)43が電気的に接続されている。
【0027】
操作手段42は、例えば押しボタン式の複数の操作スイッチ44および回動操作可能なジョグダイアル45にて構成され、操作スイッチ44およびジョグダイアル45は装置本体2の前面部に設けられている。そして、調理開始前において操作手段42の操作により設定調理プログラムを予め設定可能である。また、設定調理プログラムの設定とは別に、調理開始前において操作手段42の操作により被加熱物aの芯温に関する設定確認時間(例えば1分)および設定確認芯温(例えば75度)を予め設定可能である。
【0028】
これは、設定調理プログラムの設定によって、被加熱物aに適した加熱調理が行われたとき、この被加熱物aが作業者の希望した芯温以上で所定時間継続されたかどうか確認することができるものである。
【0029】
なお、設定確認時間は、例えば1分〜99分の範囲内で設定可能であり、設定確認芯温は、例えば20度〜99度の範囲内で設定可能である。
【0030】
表示手段43は、例えば液晶表示装置47にて構成され、この液晶表示装置47は装置本体2の前面部に設けられている。
【0031】
次に、上記調理装置1の作用等を説明する。
【0032】
調理装置1を使用して調理する場合、作業者は、調理開始前に、操作手段42を操作して、設定調理プログラム、被加熱物aの芯温に関する設定確認時間および設定確認芯温を設定する。また、作業者は、調理室3内の複数の被加熱物aの中からサンプルとして選択した1つの被加熱物aに芯温検知手段31の針部36を差し込む。
【0033】
そして、制御手段41によって加熱手段11が設定調理プログラムに従って制御され、調理室3内の複数の被加熱物aの全部に対して設定調理プログラムに従った加熱調理が行われる。
【0034】
ここで、制御手段41は、芯温検知手段31からの信号に基づいて、サンプルである1つの被加熱物aの芯温が予め設定された設定確認時間の間、継続して予め設定された設定確認芯温以上であったか否かを判断し、その判断結果を表示手段43に表示させるとともに、その判断結果に拘わらず予め設定された設定調理プログラムに従って加熱手段11を制御する。
【0035】
すなわち制御手段41は、芯温検知手段31からの信号に基づいて、加熱調理中にサンプルである1つの被加熱物aの芯温が設定確認芯温以上になり、この設定確認芯温以上の状態が設定確認時間維持されたかどうかを判断する。
【0036】
そして、その判断結果は、設定調理プログラムに従った加熱調理が終了した時点において、表示手段43にて表示されることにより作業者に報知される。判断結果が肯定的な場合には表示手段43に例えば「OK」と表示され、否定的な場合には例えば「NG」と表示される。
【0037】
調理終了後、判断結果が否定的で「NG」と表示された場合、作業者は、開閉扉6を開くことなく、覗き窓9から調理室3内の複数の被加熱物aの状態、例えば被加熱物aの焼き具合等を確認した上で、加熱手段11による再加熱が必要かどうかを決定する。
【0038】
例えば調理室3内のすべての被加熱物aに熱を加えた焼き具合の方がさらに良い仕上げとなる場合には加熱手段11による再加熱を行う。また、サンプルの被加熱物aのみに熱を加えて焼き具合の調整をした方が良い場合にはその被加熱物aのみを別途加熱手段で再加熱する。
【0039】
このように調理装置1によれば、設定調理プログラムによって被加熱物aに適した加熱調理が行われたとき、作業者が希望する芯温とその芯温以上での所定時間継続されたかどうかの確認が得られるため、すべての被加熱物aに対してそのまま再加熱した方がより良い仕上りとなるのかを間違えることなく、判断することができる。
【0040】
よって、例えばサンプルである被加熱物aが他のものに比べて大きかった場合、その被加熱物aの加熱前温度が他のものに比べて低かった場合、或いは調理室3内での熱の流れ方等に起因してサンプルである被加熱物に対する加熱が他のものに比べて不十分であった場合等においても、設定調理プログラムによって被加熱物aに適した加熱調理が行われた状態で確認できることから、サンプルである被加熱物a以外の残りの被加熱物aを加熱超過してしまうことを防止できる。
【0041】
また、開閉扉6を開方向に回動操作することなく、表示手段43による表示報知により、被加熱物aの芯温が設定確認時間の間、継続して設定確認芯温以上であったか否かを容易に知ることができ、つまり開閉扉6を開けずに被加熱物aの芯温確認チェックを容易に行うことができる。
【0042】
さらに、制御手段41による判断結果が否定的であった場合に、覗き窓9から調理室3内の被加熱物aの状態を確認した上で、加熱手段11による再加熱が必要かどうかを決定できるため、もし再加熱を行うことになったとしても、開閉扉6を一旦開けて調理室3内の熱を放出させてしまうのではなく、調理室3内に充満して残された熱をそのまま有効利用できる。
【0043】
なお、制御手段41による判断結果を報知手段は、表示手段43には限定されず、音で判断結果を報知する音発生手段、判断結果を紙媒体等に印字する手段等でもよい。
【0044】
また、調理装置1は、加熱手段11が熱気供給手段12および蒸気供給手段13にて構成されたコンビオーブンには限定されず、加熱手段として熱気供給手段のみを有する構成や、加熱手段として蒸気供給手段のみを有する構成、或いは加熱手段としてヒーターや誘導加熱コイル等を有する構成等でもよい。
【0045】
さらに、判断結果が否定的な場合に、表示手段43等の報知手段が例えば「NG」となった理由(例えば不足温度、不足時間)を数値表示や音等により報知するようにしてもよい。
【0046】
また、設定調理プログラムに従った加熱調理が終了した時点のみ報知手段が判断結果を報知する構成には限定されず、調理中つまり設定調理プログラムの実行中に肯定的な判断結果がでた時点で、報知手段がその肯定的な判断結果を報知するようにしてもよい。
【0047】
さらに、調理中において設定確認時間や設定確認芯温への進捗状況を報知手段が数値表示や音等により随時報知するようにしてもよい。
【0048】
また、判断結果として、否定的な場合は、加熱調理後に再加熱するかどうかの判断に用いるだけでなく、例えば被加熱物aの芯温が設定温度以上で設定時間継続して加熱されることを望まないとき、作業者が許される上限設定として「NG」と「OK」を逆に解釈して用いる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係る調理装置の正面視断面図である。
【図2】同上調理装置の正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】同上調理装置の平面図である。
【図5】同上調理装置の調理室内を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 調理装置
3 調理室
5 開口部
6 開閉扉
9 覗き窓
11 加熱手段
31 芯温検知手段
41 制御手段
43 報知手段である表示手段
a 被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理室と、
この調理室に入れられた複数の被加熱物を一斉に加熱する加熱手段と、
前記調理室に入れられた複数の被加熱物のうちの一部の被加熱物の芯温を検知する芯温検知手段と、
設定調理プログラムに従って前記加熱手段を制御する制御手段と、
報知手段とを備え、
前記制御手段は、前記芯温検知手段からの信号に基づいて、被加熱物の芯温が設定確認時間の間、継続して設定確認芯温以上であったか否かを判断し、その判断結果を前記報知手段に報知させるとともに、その判断結果に拘わらず設定調理プログラムに従って前記加熱手段を制御する
ことを特徴とする調理装置。
【請求項2】
調理室に対して被加熱物を出し入れするための開口部と、
この開口部を開閉する開閉扉と、
この開閉扉に設けられ、前記調理室に入れられた被加熱物を見るための覗き窓とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の調理装置。
【請求項3】
報知手段は、設定調理プログラムに従った加熱調理が終了した時点で、判断結果を報知する
ことを特徴とする請求項1または2記載の調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−178358(P2009−178358A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20364(P2008−20364)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】