説明

調節可能な機械的冷却液ポンプ

本発明は、内燃機関用の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)に関する。ポンプ(10)は、軸方向入口を備えたポンプロータホイール(14)を有する。ポンプロータホイール(14)は冷却液を半径方向外方へ圧送する。ポンプは、ポンプロータホイール(14)の半径方向外側にかつポンプロータホイール(14)と同心に旋回可能に配置された、複数の可変ポンプステータブレード(40)を有する。制御リング(32)が設けられており、この制御リング(32)は、制御リング(32)が回転させられたときにブレード(40)を同時に旋回させる。制御リング(32)はアクチュエータによって回転させられ、これにより、ブレード(40)を開放位置と閉鎖位置との間で旋回させる。ポンプハウジングボディ(12)はポンプステータブレード(40)と制御リング(32)とを支持している。本発明によれば、ポンプステータブレード(40)及び制御リング(32)は、ポンプハウジングボディ(12)に取り付けられた別個の固定のブレード保持フレーム(18)に囲まれて取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の調節可能な機械的冷却液ポンプに関する。
【0002】
燃焼機関の冷却液必要量は、エンジン温度、環境温度、有効エンジンパワー等の多くのファクタに依存する。機械的冷却液ポンプは、内燃機関によって直接に駆動されるので、ポンプの回転速度は燃焼機関の回転速度に厳密に比例する。その結果、機械的冷却液ポンプは燃焼機関の冷却液必要量を考慮しない。
【0003】
したがって、より精密な機械的冷却液ポンプが、様々な種類の弁機構によって調節可能にされている。国際公開第2007/025375号において、調節可能な機械的冷却液ポンプには、ポンプロータホイールを取り囲む旋回可能なポンプステータブレードが設けられている。ステータブレードは入口弁を形成しているので、冷却液がポンプロータホイールによって半径方向内方へ圧送される前に冷却液は開放した入口弁を流過する。ステータブレードが閉鎖位置にありかつロータホイールが高速で回転しているときには、キャビテーションが生じる恐れがあり、これは望ましくない効果を生じる。
【0004】
ステータブレードは軸方向で2つの取付けリングの間に旋回可能に取り付けられており、一方の取付けリングを取り囲む別個の制御リングによって旋回させられる。組立て作業中に、取付けリング及び制御リングがポンプハウジングボディに固定されていないと、制御リングは取付けリングから落下する恐れがある。制御リングが落下すると、全てのステータブレードが再び制御リングと組み立てられなければならず、これは時間のかかる作業である。
【0005】
本発明の課題は、キャビテーション条件が改善されかつ組立て作業が改善された調節可能な機械的冷却液ポンプを提供することである。
【0006】
前記課題は、本発明によれば請求項1の特徴によって解決された。
【0007】
調節可能な機械的冷却液ポンプには、軸方向入口及び半径方向出口を備えたポンプロータホイールが設けられている。ロータホイールは冷却液を半径方向外方へ、つまり中心から半径方向に外側に向かって圧送する。可変のポンプステータブレードのセットは一つの円に配置されており、この円は、ポンプロータホイールと同心にかつポンプロータホイールの半径方向外側に配置されているので、ポンプステータブレードは、入口弁ではなく環状の出口弁を形成している。ポンプステータブレードによって形成された弁のこの配列は、ステータブレードが閉鎖位置にあるときにキャビテーションを防止し、これにより、高い回転速度の際にも冷却液流を最小限にする。
【0008】
別個の固定のブレード保持フレームが設けられており、このブレード保持フレームには全てのポンプステータブレード及び制御リングが囲まれて、つまり外れないように、取り付けられている。ブレード保持フレームがポンプハウジングボディに取り付けられる前に、ポンプステータブレード及び制御リングは、ブレード保持フレームに解離不能に予備的に組み付けられる。フレームがポンプハウジングボディに取り付けられるときには、ポンプステータブレードも制御リングもブレード保持フレームから落下することはできない。これは、冷却液ポンプの組立てを容易にし、制御リング及びステータブレードの時間のかかる再組立てを確実に回避する。
【0009】
発明の好適な実施の形態によれば、ブレード保持フレームは、第1のフレームリング及び第2のフレームリングを有する。制御リングは軸方向で第2のフレームリングとブレードとの間に取り付けられている。ステータブレード及び制御リングは2つのフレームリングの間に挟持されている。この配列は、ブレード保持フレームがポンプハウジングボディに取り付けられるまで制御リングがブレード保持フレームに固定されて落下することができないことを保証する。
【0010】
好適には、第2のフレームリングには制御リングのそれぞれの案内開口と協働する軸方向案内突出部が設けられており、これにより、制御リングの回転が許容され、制御リングは第2のフレームリングに対して半径方向に移動することができない。その代わりに案内開口を第2のフレームリングに、突出部を制御リングに設けることもできることはもちろんである。
【0011】
発明の好適な実施の形態によれば、2つのフレームリングは、少なくとも2つ、好適に3つの軸方向結合ねじによって互いに堅く結合される。2つのフレームリング及び結合ねじは共同で、ポンプステータブレード及び制御リングの受け台であるブレード保持フレームを形成する。
【0012】
好適には、制御リングには、全ての結合ボルトのための長孔が設けられており、結合ボルトはこの長孔を貫通する。長孔は、円形の同軸の向きを有する。制御リングは、制御リングが所定の回転角度の範囲で回転することができるように結合ねじによって案内される。
【0013】
好適な実施の形態によれば、結合スペーサスリーブには軸方向ボアが設けられている。結合ねじは、2つのフレームリングの一定の軸方向距離を規定するスリーブの軸方向ボアを貫通している。
【0014】
好適な実施の形態によれば、ポンプステータブレードには軸方向ピボットピンが設けられている。ピボットピンは、ステータブレードの回転軸線に位置しており、第1のフレームリングのそれぞれのピボットボアにはめ込まれている。
【0015】
好適には、ポンプステータブレードには、制御リングのそれぞれの作動長孔内に突入した軸方向作動ピンが設けられている。作動長孔の向きは同心円ではないので、制御リングの回転は全てのステータブレードの同期した旋回運動を生ぜしめる。制御リングを移動させることにより、ステータブレードは閉鎖位置又は開放位置へ移動させられる。閉鎖位置において、ステータブレードは接線方向の前端部及び後端部において互いに重なり合っており、ポンプロータホイールの半径方向出口を完全に閉鎖している。
【0016】
以下は図面に関連した発明の詳細な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】調節可能な機械的冷却液ポンプの縦断面図である。
【図2】図1の開放した冷却液ポンプの上面図である。
【図3】図1のポンプの詳細を示す断面図である。
【図4】図1の冷却液ポンプのブレード保持フレームを示す斜視図である。
【図5】図1の冷却液ポンプの可変ポンプステータブレードを示す図である。
【図6】図4のブレード保持フレームの第1のフレームリングを示す図である。
【図7】図4のブレード保持フレームの第2のフレームリングを示す図である。
【図8】図4のブレード保持フレームの軸方向結合ボルトを示す図である。
【図9】図4のブレード保持フレームの制御リングを示す図である。
【0018】
図1及び図2には調節可能な機械的冷却液ポンプ10が示されている。この機械的冷却液ポンプ10は、典型的にはトラック内燃機関用の冷却液を供給するよう構成されている。
【0019】
冷却液ポンプ10は、2つの金属ポンプハウジングボディ12,13から成るハウジング11を有する。図2は、1つのポンプハウジングボディ12を示す開放したポンプハウジングの上面図を示している。このポンプハウジングには、別個のブレード保持フレーム18とポンプロータホイール14とが設けられている。
【0020】
ポンプロータホイール14には軸方向入口開口20が設けられており、この軸方向入口開口20は、エンジンブロック(図示せず)から軸方向に流入する冷却液用の軸方向入口を形成している。ポンプロータホイール14は、駆動ベルト24によって駆動される駆動ホイール16に接続されており、この駆動ホイール16と一緒に回転する。駆動ベルト24は、燃焼機関の回転速度に比例した回転速度でポンプロータホイール14が回転するように、燃焼機関によって駆動される。
【0021】
ポンプロータホイールは半径方向で、固定のブレード保持フレーム18によって包囲されており、このブレード保持フレーム18は、多数の可変ポンプステータブレード40のセットを有している。これらの可変ポンプステータブレード40は、同軸の円状に配置されており、軸方向回転軸線を中心にして、開放位置と閉鎖位置との間をそれぞれ旋回可能となっている。ポンプステータブレード40が開放位置にありかつポンプロータ14が回転しているとき、冷却液はポンプロータ14によって半径方向外方へ出口ボリュート(渦形室)22内へ、及び出口ボリュート22から出口チャネル25内へ圧送される。ポンプステータブレード40が閉鎖位置にあるとき、ポンプステータブレード40はポンプホイール14の周囲に閉じたリングを形成し、冷却液は回転するポンプホイール14から出ることはできない。
【0022】
ブレード保持フレーム18が図4に詳細に示されている。ブレード保持フレーム18は、第1のフレームリング28と、第2のフレームリング30とを有する。第2のフレームリング30は、3つの軸方向結合ねじ46と、軸方向ねじ穴50を備えたスペーサスリーブ34とによって、第1のフレームリング28に対して一定の軸方向距離で、堅くかつ緩まないように結合されている。軸方向で第1のフレームリング28に隣接して、複数のポンプステータブレード40が配置されており、軸方向でポンプステータブレード40と、第2のフレームリング30との間には、制御リング32が配置されている。
【0023】
各ポンプステータブレード40には、軸方向ピボットピン42と、軸方向案内ピン44と、軸方向作動ピン43とが設けられている。ピボットピン42及び案内ピン44は軸方向で一列に配置されており、ポンプステータブレード40の回転軸線を規定している。ブレード40のピボットピン42は、第1のフレームリング28のそれぞれのピボットボア36にはめ込まれている。軸方向で反対側の案内ピン44は、制御リング32のそれぞれの案内長孔62にはめ込まれている。案内長孔62及び案内ピン44は、ステータブレード40を半径方向の力に対して支持する。案内ピン44は、第2のフレームリング30のそれぞれのボアにはめ込むことができる。
【0024】
ステータブレード40の各作動ピン43は、制御リング32の複数の作動長孔64の各々の中に突き出し、各々の作動長孔64によって案内される。この複数の作動長孔64の延在方向は、制御リング32が回転させられるときにポンプステータブレード40が開放位置と閉鎖位置との間で旋回させられるように、同軸の円状ではない。
【0025】
制御リング32には作動ボア68が設けられており、この作動ボア68にはアクチュエータ(図示せず)が結合されている。このアクチュエータは、例えば電気作動モータ(図示せず)である。
【0026】
第2のフレームリング30は、第1のフレームリング28と同じ外径を有するが、より小さな内径を有する。第2のフレームリング30の外側環状部分には3つのねじ穴54が設けられており、これらのねじ穴54には結合ねじが螺合させられている。内側へ突出した第2のフレームリング30の内側環状部分は、3つの組立てボア56を備えた組立て環状部分である。第2のフレームリング30には、制御リング32の作動ボア68の移動範囲でアクチュエータ切欠52が設けられている。
【0027】
ポンプ組立て作業は以下のように行われる。
【0028】
まず、固定のブレード保持フレーム18と、フレーム18に取り付けられる全ての構成部材とが組み立てられる。ブレード40のピボットピン42は第1のフレームリング28のそれぞれのピボットボア36に挿入される。次いで、制御リング32が取り付けられ、ブレード40の案内ピン44及び作動ピン43がそれぞれの長孔62,64に挿入される。最後に、第2のフレームリング30は制御リング32に取り付けられ、第1のフレームリング28及び第2のフレームリング30は、スペーサスリーブ34及び結合ねじ46によって堅く結合される。結合ボルト34は例えば、螺合によってフレームリング28,30に結合される。
【0029】
ブレード保持フレーム18が完全に組み立てられた後、ブレード保持フレーム18は、第2のフレームリング30のそれぞれの組立てボア56を貫通した3つの組立てねじ70によって、ポンプハウジングボディ12に固定される。次いで、電気作動モータを含む作動機構(図示せず)が取り付けられ、作動機構は制御リング32の作動ボア68と結合される。
【0030】
その後、ポンプホイール14及び駆動ホイール16はロータシャフト26に取り付けられる。最後に、別のポンプハウジングボディ13が第1のポンプハウジングボディ12に取り付けられてポンプハウジング11を閉鎖するが、その際、ポンプホイール14は、ブレード保持フレーム18によって規定された円形の開口に挿入される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向入口を備えたポンプロータホイール(14)であって、該ポンプロータホイール(14)は冷却液を半径方向外方へ圧送する、ポンプロータホイール(14)と、
該ポンプロータホイール(14)と同心円の半径方向外方に、旋回可能に配置された可変ポンプステータブレード(40)と、
制御リング(32)であって、該制御リング(32)が回転させられたときに前記可変ポンプステータブレード(40)を同時に旋回させる制御リング(32)と、
該制御リング(32)を回転させこれにより前記可変ポンプステータブレード(40)を開放位置と閉鎖位置との間で旋回させるアクチュエータと、
前記可変ポンプステータブレード(40)と前記制御リング(32)とを支持するポンプハウジングボディ(12)と、を備え、
前記可変ポンプステータブレード(40)と前記制御リング(32)とが、前記ポンプハウジングボディ(12)に取り付けられた別個の固定のブレード保持フレーム(18)に囲まれて取り付けられていることを特徴とする、内燃機関用の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。
【請求項2】
前記ブレード保持フレーム(18)は、第1のフレームリング(28)及び第2のフレームリング(30)を含み、前記制御リング(32)は、軸方向で前記第2のフレームリング(30)と前記可変ポンプステータブレード(40)との間に取り付けられている、請求項1記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。
【請求項3】
前記第2のフレームリング(30)には、前記制御リング(32)の回転を許容するように前記制御リング(32)のそれぞれの案内開口と協働する軸方向案内突出部(56)が設けられている、請求項2記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。
【請求項4】
2つの前記フレームリング(28,30)は、少なくとも2つの軸方向結合ねじ(46)によって互いに堅く結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。
【請求項5】
前記制御リング(32)には、固定長孔(60)であって、該固定長孔(60)を全ての前記軸方向結合ねじ(46)が貫通する、固定長孔(60)が設けられている、請求項4記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ。
【請求項6】
スペーサスリーブ(34)に軸方向ボア(50)が設けられており、2つの前記フレームリング(28,30)が互いに対して一定の固定された距離に保たれるように前記結合ねじ(46)は前記軸方向ボア(50)を貫通している、請求項4又は5記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。
【請求項7】
前記可変ポンプステータブレード(40)にそれぞれ軸方向ピボットピン(42)が設けられており、該軸方向ピボットピン(42)は、前記第1のフレームリング(28)のそれぞれのピボットボア(36)にはめ込まれている、請求項1から6までのいずれか1項記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。
【請求項8】
前記可変ポンプステータブレード(40)にそれぞれ軸方向作動ピン(43)が設けられており、該軸方向作動ピン(43)は、前記制御リング(32)の複数の作動長孔(64)の各々の中に突き出しており、前記複数の作動長孔の延在方向は同軸の円状ではない、請求項1から7までのいずれか1項記載の調節可能な機械的冷却液ポンプ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−521435(P2013−521435A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556387(P2012−556387)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052796
【国際公開番号】WO2011/107153
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(311013845)ピールブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Alfred−Pierburg−Strasse 1,D−41460 Neuss,Germany
【Fターム(参考)】