説明

警報器

【課題】ある警報状態を示す電圧の有電圧信号に、電圧が既定値よりも上昇又は低下する異常が生じた場合に、その異常が有電圧信号を故障発生時の電圧に変化させるべき警報状態に該当しない場合であっても、故障であることを外部に報知すること。
【解決手段】検査信号生成手段9によって生成される、有電圧信号の電圧に応じた検査信号の電圧が、検査信号に対応する有電圧信号の生成の基となる指令信号のパターンに対応する、有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致していないと判定手段Aによって判定されると、電圧異常報知手段Bが行う報知動作によって、強制的に故障発生時の電圧に変更させた有電圧信号が外部に出力されて、有電圧信号の電圧の異常が外部に報知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスや不完全燃焼等の監視対象に警報状態が発生した際に、発生した警報状態毎に異なる電圧の有電圧信号を外部に出力する警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば住宅においてガス漏れや燃焼機器によるガスの不完全燃焼の発生を監視する警報器においては、監視対象に警報状態が発生した際にその内容を有線や無線で接続された他の警報器や遠隔地の監視センターに報知するために、発生した警報状態毎に電圧の異なる有電圧信号を外部出力端子から警報器の外部に出力する外部出力回路が設けられている。
【0003】
このような警報器では一般に、外部出力回路の出力する有電圧信号の電圧が、警報状態の未発生時(通常時)にDC6V、ガス漏れ警報時(例えば都市ガスの場合はメタンガス検出時)にDC12V、不完全燃焼警報時(一酸化炭素ガス検出時)にDC18Vと定められており、また、停電やセンサの断線といった警報器の故障時には有電圧信号の電圧が0Vとなる(以上、例えば特許文献1,2)。
【0004】
尚、それぞれの有電圧信号の電圧には実際には許容範囲が定められており、例えば0Vについては0V〜DC3Vの間、DC6VについてはDC5V〜6Vの間、DC12VについてはDC11V〜13Vの間、DC18VについてはDC18V〜22Vの間にそれぞれ収まっていれば、0V、DC6V、DC12V、DC18Vの各有電圧信号と認識される。
【特許文献1】特開2001−34861号公報
【特許文献2】特開2002−279548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の警報器においては、停電や断線時のように0Vにはならないものの、外部出力回路の内部の故障等により有電圧信号の電圧が許容範囲を超えて上昇又は低下することがある。
【0006】
そのような場合、有電圧信号の受信側においては、有電圧信号の電圧が許容範囲内に収まっていないので、現実にはガス漏れや不完全燃焼が発生しているにも拘わらずその状態を認識することができず、かといって、有電圧信号が0Vになっている訳ではないので、警報器が故障していると認識することもできない。
【0007】
そのため、実際には警報器がガス漏れやガスの不完全燃焼の発生を正常に監視できない状態であるにも拘わらず、有電圧信号からその旨を認識することができないことにないことになってしまう恐れがある。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、有電圧信号の生成箇所の故障等により、ある警報状態を示す電圧の有電圧信号に、電圧が既定値よりも上昇又は低下する異常が生じた場合に、その異常が有電圧信号を故障発生時の電圧に変化させるべき警報状態に該当しない場合であっても、故障であることを外部に報知することができる警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1に記載した本発明の警報器は、図1に基本構成図で示すように、ガスや不完全燃焼等の監視対象に警報状態が発生した際に、発生した警報状態に応じたパターンの指令信号に基づいて生成される、発生した警報状態毎に異なる電圧の有電圧信号を外部に出力する警報器において、前記有電圧信号の電圧に応じた電圧の検査信号を生成する検査信号生成手段9と、前記検査信号の電圧が、該検査信号に対応する前記有電圧信号の生成の基となる前記指令信号のパターンに対応する、前記有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致しているか否かを判定する判定手段Aと、前記検査信号の電圧が、該検査信号に対応する前記有電圧信号の生成の基となる前記指令信号のパターンに対応する、前記有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致していないと、前記判定手段Aが判定した場合に、前記有電圧信号の電圧の異常を外部に報知する報知動作を行う電圧異常報知手段Bとを備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載した本発明の警報器は、請求項1に記載した本発明の警報器において、前記有電圧信号は、故障発生時に前記監視対象の警報状態の発生時とは異なる電圧で外部に出力され、前記電圧異常報知手段Bは、前記検査信号の電圧が、該検査信号に対応する前記有電圧信号の生成の基となる前記指令信号のパターンに対応する、前記有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致していないと、前記判定手段Aが判定した場合に、強制的に故障発生時の電圧に変更させた前記有電圧信号を外部に出力させるように構成されているものとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した本発明の警報器によれば、検査信号生成手段9によって生成される、有電圧信号の電圧に応じた検査信号の電圧が、検査信号に対応する有電圧信号の生成の基となる指令信号のパターンに対応する、有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致していないと判定手段Aによって判定されると、電圧異常報知手段Bが行う報知動作によって、有電圧信号の電圧の異常が外部に報知されるので、有電圧信号の生成箇所の故障等により、ある警報状態を示す電圧の有電圧信号に電圧が既定値よりも上昇又は低下する異常が生じた場合に、その異常が有電圧信号を故障発生時の電圧に変化させるべき警報状態に該当しない場合であっても、故障であることを外部に報知することができる。
【0012】
また、請求項2に記載した本発明の警報器によれば、請求項1に記載した本発明の警報器において、電圧異常報知手段Bが行う報知動作によって、強制的に故障発生時の電圧に変更させた有電圧信号が外部に出力されるので、有電圧信号を故障発生時の電圧に変化させるべき警報状態に該当しない、ある警報状態を示す電圧の有電圧信号に電圧が既定値よりも上昇又は低下する異常が生じた場合にも、その異常を有電圧信号の電圧により相手側に報知、認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の警報器の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図2は本発明の第1実施形態に係るガス警報器の正面図であり、図2中引用符号1で示す本実施形態のガス警報器は、その前面1aに、雰囲気取込孔1cを有する検知部1bと、電源オン時に緑色点灯する電源インジケータ1dと、一酸化炭素の濃度が警報濃度レベルに達した時に黄色点灯する不完全燃焼ガスインジケータ1eと、メタンガスや水素の濃度が警報濃度レベルに達した時に赤色点灯するガス漏れインジケータ1fと、音声出力用のスピーカ1gとを備えている。
【0015】
前記検知部1bには、図3にガス警報器1の電気的な概略構成のブロック図で示すように、都市ガス(メタンガス)と不完全燃焼ガス(一酸化炭素ガス)を検出するガス検出回路3が収容されており、このガス検出回路3は、電源インジケータ1d、不完全燃焼ガスインジケータ1e、ガス漏れインジケータ1f、及び、スピーカ1gや、このスピーカ1gから出力する音声メッセージが複数格納された音声IC5、そして、外部出力回路7と、外部出力回路7が出力する有電圧信号の電圧に応じた電圧の検査信号を生成する検査信号生成回路9と共に、これらの動作を制御するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略記する。)11のCPU11aに接続されている。
【0016】
尚、前記ガス検出回路3は、ガスが存在した場合に抵抗変化を示す感知素子(図示せず)と、白金(Pt)等の金属抵抗体で形成されて感知素子を加熱するヒータ(図示せず)とを有しており、ヒータを高温加熱(約400℃)している際に都市ガス(メタンガス)のガス濃度を検出すると共に、ヒータを低温加熱(約100℃)している際に一酸化炭素ガス(COガス)の濃度を検出する。
【0017】
前記外部出力回路7は、図4に回路図で示すように、マイコン11のCPU11aの3つのポートP2〜P4に接続されており、各ポートP2〜P4のON/OFFの状態の組み合わせに応じて、図5の説明図に示すように、0V、DC6V、DC12V、DC18Vの有電圧信号を、それぞれの正常範囲の範囲内の電圧で出力するように構成されている。
【0018】
図4に示す前記検査信号生成回路9は、外部出力回路7から実際に出力された有電圧信号の電圧を抵抗R1,R2で分圧した検査信号を、マイコン11のA/Dコンバータ内蔵のポートP1に入力させるように構成されている。尚、図4における13はサージ回路を示す。
【0019】
前記マイコン11は、CPU11aの他にRAM11b及びROM11cを有しており、これらRAM11b及びROM11cもCPU11aに接続されている。
【0020】
前記RAM11bは、各種データ記憶用のデータエリア及び各種処理作業に用いるワークエリアを有しており、ROM11cには、CPU11aに各種処理動作を行わせるための制御プログラムが格納されている。
【0021】
そして、マイコン11のCPU11aは、ガス警報器1の電源コード(図示せず)がコンセントに接続されて電源が供給され始めると、電源インジケータ1dを緑色で低速点滅させ、その後、予め定められた待機時間(例えば1分)が経過すると、電源インジケータ1eを緑色点灯させて通常モードに入り、ROM11cに格納されたガスの監視に関する制御プログラムに従い、ガス監視モードの処理を実行する。
【0022】
このガス監視モードの処理においてマイコン11のCPU11aは、ガス検出回路3のヒータに対する高電圧と低電圧との交互通電により高低2段階に交互加熱されている感知素子の、高温加熱期間の終わりにおける抵抗値に応じたガス検出回路3の出力から、メタンガスの濃度を算出する。
【0023】
算出したメタンガスの濃度が予め定められた警報レベルに達すると、ガス漏れインジケータ1fを赤色点灯させると共に、「ピッピッピッ、ガスが漏れていませんか。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、また、ポートP2〜P4をそれぞれOFF、ON、OFFとして、外部出力回路7からDC12Vの有電圧信号を出力させる(ガス漏れ警報状態)。
【0024】
同様に、マイコン11のCPU11aは、ガス検出回路3のヒータに対する低温加熱期間の終わりにおける感知素子の抵抗値に応じたガス検出回路3の出力から、一酸化炭素ガスの濃度を算出する。
【0025】
算出した一酸化炭素ガスの濃度が予め定められた警報レベルに達すると、不完全燃焼ガスインジケータ1eを黄色点灯させると共に、「ピッポピッポ、空気が汚れて危険です。窓を開けて換気をして下さい。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、また、ポートP2〜P4をそれぞれOFF、OFF、ONとして、外部出力回路7からDC18Vの有電圧信号を出力させる(不完全燃焼警報状態)。
【0026】
尚、メタンガス及び一酸化炭素ガスの濃度がいずれも警報レベルに達していない場合、ガス検出回路3の断線等のガス警報器1の故障時には、マイコン11のCPU11aは、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「故障などが発生しています。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、また、ポートP2〜P4をそれぞれON、OFF、OFFとして、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧を0Vとする(故障警報状態)。
【0027】
また、メタンガス及び一酸化炭素ガスの濃度がいずれも警報レベルに達していない場合、ガス検出回路3の断線等のガス警報器1の故障が発生していなければ、マイコン11のCPU11aは、電源インジケータ1dを緑色点灯させたまま、ポートP2〜P4をいずれもOFFとして、外部出力回路7からDC6Vの有電圧信号を出力させる。
【0028】
続いて、上述したガス監視モード中に、ROM11cに格納された制御プログラムに従いCPU11aが行う、有電圧信号の電圧の監視に関する処理を、図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
ガス警報器1の電源への接続によりマイコン11が起動しプログラムがスタートすると、CPU11aは、まず、図6のフローチャートに示すように、ガス検出回路3の出力から算出したメタンガスの濃度や一酸化炭素ガスの濃度が、予め定められたそれぞれの警報レベルに達して警報動作が行われている状態(警報発生状態)にあるか否かを確認し(ステップS1)、警報発生状態にない場合は(ステップS1でN)、後述するステップS19に進む。
【0030】
一方、警報発生状態にある場合は(ステップS1でY)、ポートP2〜P4のパターンがOFF、ON、OFFである(ガス漏れ警報状態)か否かを確認し(ステップS3)、OFF、ON、OFFでない場合は(ステップS3でN)、後述するステップS11に進み、OFF、ON、OFFである場合は(ステップS3でY)、検査信号生成回路9からポートP1に入力される検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC11V〜13Vの範囲にある時の値であるか否かを確認する(ステップS5)。
【0031】
検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC11V〜13Vの範囲にある時の値である場合は(ステップS5でY)、ガス漏れインジケータ1fを赤色点灯させると共に、「ピッピッピッ、ガスが漏れていませんか。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させるという、ガス漏れ警報状態を継続したまま(ステップS7)、ステップS1にリターンする。
【0032】
これに対し、検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC11V〜13Vの範囲にある時の値でない場合は(ステップS5でN)、ステップS7と同様にガス漏れ警報状態を継続したまま、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が強制的に0Vとされるように、ポートP2〜P4をそれぞれON、OFF、OFFと(有電圧異常警報状態)した後(ステップS9)、ステップS1にリターンする。
【0033】
また、ステップS3において、ポートP2〜P4のパターンがOFF、ON、OFF(ガス漏れ警報状態)でない(N)場合に進むステップS11では、ポートP2〜P4のパターンがOFF、OFF、ONである(不完全燃焼警報状態)か否かを確認し、OFF、OFF、ONでない場合は(ステップS11でN)、ステップS1にリターンし、OFF、OFF、ONである場合は(ステップS11でY)、検査信号生成回路9からポートP1に入力される検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC18V〜22Vの範囲にある時の値であるか否かを確認する(ステップS13)。
【0034】
検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC18V〜22Vの範囲にある時の値である場合は(ステップS13でY)、不完全燃焼ガスインジケータ1eを黄色点灯させると共に、「ピッポピッポ、空気が汚れて危険です。窓を開けて換気をして下さい。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させるという、不完全燃焼警報状態を継続したまま(ステップS15)、ステップS1にリターンする。
【0035】
これに対し、検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC18V〜22Vの範囲にある時の値でない場合は(ステップS13でN)、ステップS15と同様に不完全燃焼警報状態を継続したまま、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が強制的に0Vとされるように、ポートP2〜P4をそれぞれON、OFF、OFFと(有電圧異常警報状態)した後(ステップS17)、ステップS1にリターンする。
【0036】
次に、ステップS1において、警報発生状態にガス検出回路3の出力から算出したメタンガスの濃度や一酸化炭素ガスの濃度が、予め定められたそれぞれの警報レベルに達して警報動作が行われている状態(警報発生状態)にない(N)場合に進むステップS19では、図7のフローチャートに示すように、ポートP2〜P4のパターンがON、OFF、OFFである(故障警報状態)か否かを確認する。
【0037】
ポートP2〜P4のパターンがON、OFF、OFFでない場合は(ステップS19でN)、後述するステップS27に進み、ON、OFF、OFFである場合は(ステップS19でY)、検査信号生成回路9からポートP1に入力される検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧が0V〜DC3Vの範囲にある時の値であるか否かを確認する(ステップS21)。
【0038】
検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧が0V〜DC3Vの範囲にある時の値である場合は(ステップS21でY)、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「故障などが発生しています。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させるという、故障警報状態を継続したまま(ステップS23)、図6のステップS1にリターンする。
【0039】
これに対し、検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧が0V〜DC3Vの範囲にある時の値でない場合は(ステップS21でN)、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させるという、有電圧異常警報状態を開始した後、あるいは、既に開始されている有電圧異常警報状態を継続したまま(ステップS25)、図6のステップS1にリターンする。
【0040】
また、ステップS19において、ポートP2〜P4のパターンがON、OFF、OFFでない(N)場合に進むステップS27では、ポートP2〜P4のパターンがOFF、OFF、OFFであるものとして、検査信号生成回路9からポートP1に入力される検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC5V〜6Vの範囲にある時の値であるか否かを確認する。
【0041】
検査信号のA/D変換値が、有電圧信号の実際の電圧がDC5V〜6Vの範囲にある時の値である場合は(ステップS27でY)、図6のステップS1にリターンし、DC5V〜6Vの範囲にある時の値でない場合は(ステップS27でN)、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が強制的に0Vとされるように、ポートP2〜P4をそれぞれON、OFF、OFFと(有電圧異常警報状態)した後(ステップS29)、図6のステップS1にリターンする。
【0042】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態のガス警報器1では、図6のフローチャートにおけるステップS1乃至ステップS5、ステップS11、及び、ステップS13と、図7のフローチャートにおけるステップS19、ステップS21、及び、ステップS27とが、請求項中の判定手段Aに対応する処理となっており、図6中のステップS9及びステップS17と、図7中のステップS25及びステップS29とが、請求項中の電圧異常報知手段Bに対応する処理となっている。
【0043】
このように構成された本実施形態のガス警報器1では、不図示の電源コードをコンセントに接続し、その後例えば1分の待機時間が経過して、通常モードによるガス監視動作に入ると、次のような動作が行われる。
【0044】
まず、ヒータの高温加熱期間の終わりにおける感知素子の抵抗値に応じたガス検出回路3の出力から算出されるメタンガスの濃度や、ヒータの低温加熱期間の終わりにおける感知素子の抵抗値に応じたガス検出回路3の出力から算出される一酸化炭素ガスの濃度が、いずれも警報レベルに達していない状態では、以下の動作が行われる。
【0045】
DC6Vの信号として外部出力回路7から出力されているはずの有電圧信号の実際の電圧が、許容範囲であるDC5V〜6Vの範囲から外れると、電源インジケータ1dが緑色で高速点滅すると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージがスピーカ1gから鳴動(音声出力)される。
【0046】
そして、この時点以後、メタンガスの濃度や一酸化炭素ガスの濃度がいずれも警報レベルに達していない状態で外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧は、マイコン11のCPU11aの3つのポートP2〜P4の出力をON、OFF、OFFに切り換えることにより、本来のDC6Vから強制的に0Vに変更されるよう制御される。
【0047】
次に、ヒータの高温加熱期間の終わりにおける感知素子の抵抗値に応じたガス検出回路3の出力から算出されるメタンガスの濃度が警報レベルに達している状態で、DC12Vの信号として外部出力回路7から出力されているはずの有電圧信号の実際の電圧が、許容範囲であるDC11V〜13Vの範囲から外れると、電源インジケータ1dが緑色で高速点滅すると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージがスピーカ1gから鳴動(音声出力)される。
【0048】
そして、この時点以後、メタンガスの濃度の濃度が警報レベルに達している状態で外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧は、マイコン11のCPU11aの3つのポートP2〜P4の出力をON、OFF、OFFに切り換えることにより、本来のDC12Vから強制的に0Vに変更されるよう制御される。
【0049】
続いて、ヒータの低温加熱期間の終わりにおける感知素子の抵抗値に応じたガス検出回路3の出力から算出される一酸化炭素ガスの濃度が警報レベルに達している状態で、DC18Vの信号として外部出力回路7から出力されているはずの有電圧信号の実際の電圧が、許容範囲であるDC18V〜22Vの範囲から外れると、電源インジケータ1dが緑色で高速点滅すると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージがスピーカ1gから鳴動(音声出力)される。
【0050】
そして、この時点以後、一酸化炭素ガスの濃度の濃度が警報レベルに達している状態で外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧は、マイコン11のCPU11aの3つのポートP2〜P4の出力をON、OFF、OFFに切り換えることにより、本来のDC18Vから強制的に0Vに変更されるよう制御される。
【0051】
また、ガス検出回路3の断線等のガス警報器1の故障時に、0Vの信号として外部出力回路7から出力されているはずの有電圧信号の実際の電圧が、許容範囲である0V〜DC3Vの範囲から外れると、電源インジケータ1dが緑色で高速点滅すると共に、「故障などが発生しています。」等の音声メッセージがスピーカ1gから鳴動(音声出力)される。
【0052】
尚、有電圧信号の実際の電圧が許容範囲から外れている際、その原因が、マイコン11のCPU11aの3つのポートP2〜P4のON/OFFの状態の組み合わせに応じて、出力する有電圧信号の電圧を切り換える外部出力回路7の内部の例えばリレー等の故障によるものである場合には、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が、本来のDC12Vから強制的に0Vに変更されるように、マイコン11のCPU11aが3つのポートP2〜P4の出力をON、OFF、OFFに切り換えても、実際に外部出力回路7が出力する有電圧信号の電圧が0V(0V〜DC3V)には変更されないこともあり得る。
【0053】
しかしその場合にも、電源インジケータ1dの緑色での高速点滅と、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージのスピーカ1gからの鳴動(音声出力)は、確実に実行される。
【0054】
このように、本実施形態のガス警報器1によれば、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が許容範囲から外れると、その旨が電源インジケータ1dの高速点滅やスピーカ1gからの音声メッセージの出力によって外部に報知されるので、外部出力回路7の内部の故障等により有電圧信号の電圧が許容範囲を超えて上昇又は低下した場合に、有電圧信号が故障時の0Vにならなくても、電源インジケータ1dの点滅やスピーカ1gからの音声メッセージの出力により、ガス警報器1が故障であることを外部に報知することができる。
【0055】
尚、上述した実施形態では、マイコン11と外部出力回路7とを有線接続する構成としたが、例えば図8に本発明の第2実施形態に係るガス警報器の検査信号生成回路の回路図で示すように、CPU11aのポートP2〜P4と外部出力回路7とを、フォトカプラを構成するCPU11a側の発光ダイオードLED2〜LED4と外部出力回路7側のフォトトランジスタPT2〜PT4とで接続し、CPU11aのポートP1と外部出力回路7の信号出力ラインとを、フォトカプラを構成する外部出力回路7側の発光ダイオードLED1とCPU11a側のフォトトランジスタPT1とで接続して、マイコン11を外部出力回路7から絶縁して構成することもできる。
【0056】
但し、マイコン11を外部出力回路7から絶縁すると、外部出力回路7とマイコン11とが個別に接地されるので双方の接地電位の同一性が担保できなくなり、その結果、外部出力回路7から出力された有電圧信号の電圧をマイコン11のCPU11aでA/D変換して取り込んでも、外部出力回路7側の接地電位に対応するA/D変換値をCPU11aが持たないことから、有電圧信号の電圧のデジタル値を正確にCPU11aで取得することができなくなる。
【0057】
そこで、第2実施形態に係るガス警報器1の検査信号生成回路9では、抵抗R1,R2とフォトカプラとの間にコンパレータ/ロジック回路15を挿入して、このコンパレータ/ロジック回路15により検査信号を用いた有電圧信号の電圧判定を行わせると共に、マイコン11のCPU11aにはその判定結果のみを取り込んで、有電圧信号の電圧異常を報知するための電源インジケータ1dの高速点滅やスピーカ1gからの音声メッセージの出力を、CPU11aに専ら行わせるようにしている。
【0058】
ここで、コンパレータ/ロジック回路15は、図9の回路図に示すように、0V用、DC6V用、DC12V用、DC18V用の4つの検査部15a〜15dを有しており、0V用の検査部15aには上限値判定用のコンパレータ15ahが、それ以外の各検査部15b〜15dには、上限値判定用のコンパレータ15bh,15ch,15dhと下限値判定用のコンパレータ15bl,15cl,15dlとが、それぞれ設けられていると共に、各検査部15a〜15dの判定出力用の論理和否定回路NOR1〜NOR4と、全体判定出力用の論理和否定回路NOR5とをを有している。
【0059】
各検査部15a〜15dの上限値判定用のコンパレータ15ah,15bh,15ch,15dhの−端子には、直列接続された抵抗R11,R12、抵抗R21,R22、抵抗R31,R32、R41,R42の接続点a11,a21,a31,a41に現れる、0V用、DC6V用、DC12V用、DC18V用の各検査信号の上限値が入力され、+端子には、アンプAMPによる増幅後の検査信号が入力される。
【0060】
また、各検査部15b〜15dの下限値判定用のコンパレータ15bl,15cl,15dlの+端子には、直列接続された抵抗R22,R23、抵抗R32,R33、R42,R43の接続点a22,a32,a42に現れる、0V用、DC6V用、DC12V用、DC18V用の各検査信号の下限値が入力され、−端子には、アンプAMPによる増幅後の検査信号が入力される。
【0061】
このように構成されたコンパレータ/ロジック回路15では、有電圧信号の電圧が0V、DC6V、DC12V、DC18Vの各許容範囲に収まっていると、対応する検査部15a〜15dのみ、上限値判定用のコンパレータ15ah,15bh,15ch,15dhの出力と、下限値判定用のコンパレータ15bl,15cl,15dlの出力とが、いずれも「L」となり、他の3つの検査部15a〜15dでは、上限値判定用のコンパレータ15ah,15bh,15ch,15dhの出力と、下限値判定用のコンパレータ15bl,15cl,15dlの出力とのどちらかが「L」、もう一方が「H」となって、論理和否定回路NOR1〜NOR4の出力が1つだけ「H」となり、残る3つが「L」となるので、論理和否定回路NOR5の出力が「L」となる。
【0062】
一方、有電圧信号の電圧が0V、DC6V、DC12V、DC18Vの各許容範囲の上限値を超えるか、あるいは、有電圧信号の電圧がDC6V、DC12V、DC18Vの各許容範囲の下限値を下回ると、異常の生じた電圧に対応する検査部15a〜15dについても、他の3つの検査部15a〜15dと同様に、上限値判定用のコンパレータ15ah,15bh,15ch,15dhの出力と、下限値判定用のコンパレータ15bl,15cl,15dlの出力とのどちらかが「L」、もう一方が「H」となり、全ての論理和否定回路NOR1〜NOR4の出力が「L」となるので、論理和否定回路NOR5の出力が「H」に反転する。
【0063】
そのため、検査信号生成回路9の動作としては、0V、DC6V、DC12V、DC18Vのいずれの有電圧信号についても、その電圧が許容範囲内にある間は、コンパレータ/ロジック回路15の発光ダイオードLED1が消灯しており、フォトトランジスタPT1が非導通状態にあって、CPU11aのポートP1の入力が「H」となっているが、有電圧信号の電圧に異常が生じると、発光ダイオードLED1が点灯しフォトトランジスタPT1の導通によりCPU11aのポートP1の入力が「L」になる。
【0064】
よって、第2実施形態に係るガス警報器1では、マイコン11のCPU11aがROM11cに格納された制御プログラムに従って行う、有電圧信号の電圧の監視に関する処理が、CPU11aのポートP1の入力が「H」であるか否かの確認と、CPU11aのポートP1の入力が「H」である場合に行う、図6中のステップS9及びステップS17や図7中のステップS25及びステップS29と同様の、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が強制的に0Vとされるように、ポートP2〜P4をそれぞれON、OFF、OFFと(有電圧異常警報状態)する処理に変更される。
【0065】
そして、第2実施形態に係るガス警報器1では、マイコン11のCPU11aが行う、CPU11aのポートP1の入力が「H」であるか否かの確認処理と、検査信号生成回路9のコンパレータ/ロジック回路15とで、請求項中の判定手段Aが構成されることになる。
【0066】
また、第2実施形態に係るガス警報器1では、CPU11aのポートP1の入力が「H」である場合に行う、電源インジケータ1dを緑色で高速点滅させると共に、「出力信号に電圧異常があります。」等の音声メッセージを音声IC5から読み出してスピーカ1gにより鳴動(音声出力)させ、外部出力回路7から出力される有電圧信号の電圧が強制的に0Vとされるように、ポートP2〜P4をそれぞれON、OFF、OFFと(有電圧異常警報状態)する処理が、第1実施形態のガス警報器1でマイコン11のCPU11aが行う、図6中のステップS9及びステップS17や図7中のステップS25及びステップS29と同様に、請求項中の電圧異常報知手段Bに対応する処理となる。
【0067】
このように構成された第2実施形態に係るガス警報器1によっても、第1実施形態に係るガス警報器1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
尚、上述した各実施形態のガス警報器1では、有電圧信号の電圧に異常が生じた場合の報知を、インジケータの点灯表示と音声メッセージの鳴動という表示及び音声の両方で行う場合について説明したが、そのどちらか一方で報知を行うようにしてもよく、また、インジケータで行う報知は、上述した各実施形態のガス警報器1のような、電源インジケータ1dの点滅によって行うものとすれば、不完全燃焼ガスインジケータ1eやガス漏れインジケータ1fによる不完全燃焼状態やガス漏れ状態の警報表示を、有電圧信号の電圧異常の表示と同時に並行して実行することができる。
【0069】
また、有電圧信号の電圧異常の表示を、ガス漏れ警報状態でない時のガス漏れインジケータ1fの赤色による高速点滅や、不完全燃焼警報状態でない時の不完全燃焼ガスインジケータ1eの黄色による高速点滅、あるいは、電源インジケータ1d、不完全燃焼ガスインジケータ1e、及び、ガス漏れインジケータ1fの全てによる緑色、黄色、赤色での高速点滅等、第1及び第2実施形態のガス警報器1で行った電源インジケータ1dの緑色による高速点滅とは異なる形態で行うようにしてもよい。
【0070】
さらに、異常が生じた有電圧信号の電圧を強制的に0Vとするように制御する構成は、省略してもよいが、上述した実施形態のように、異常が生じた有電圧信号の電圧を強制的に0Vとするように制御する構成を設ければ、有電圧信号の受信側において、許容範囲内の電圧の有電圧信号の受信時のように、具体的にどのような異常が生じたのかを把握することまではできなくても、許容範囲から外れた電圧の有電圧信号を受信しているため異常の発生自体を把握できないというのではなく、ガス漏れや不完全燃焼等の何らかの異常が生じたことだけでも把握することができるようになるので、かかる構成を設けない場合に比べて有利である。
【0071】
また、上述した各実施形態のガス警報器1では、有電圧信号を抵抗R1,R2で分圧して小さい電圧とした検査信号により、有電圧信号の電圧が許容範囲から外れたか否かを判別する構成について説明したが、全ての有電圧信号の電圧をそのまま検出できる回路構成にすることができるのであれば、有電圧信号をそのまま検査信号として用いて判別するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の警報器の基本構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るガス警報器の正面図である。
【図3】図2のガス警報器の電気的な概略構成を示すブロック図である。
【図4】図3の外部出力回路の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【図5】有電圧信号の許容範囲を示す説明図である。
【図6】図4のマイクロコンピュータのROMに格納された制御プログラムに従いCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図7】図4のマイクロコンピュータのROMに格納された制御プログラムに従いCPUが行う処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係るガス警報器の検査信号生成回路の回路図である。
【図9】図8のコンパレータ/ロジック回路の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0073】
9 検査信号生成手段
A 判定手段
B 電圧異常報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスや不完全燃焼等の監視対象に警報状態が発生した際に、発生した警報状態に応じたパターンの指令信号に基づいて生成される、発生した警報状態毎に異なる電圧の有電圧信号を外部に出力する警報器において、
前記有電圧信号の電圧に応じた電圧の検査信号を生成する検査信号生成手段と、
前記検査信号の電圧が、該検査信号に対応する前記有電圧信号の生成の基となる前記指令信号のパターンに対応する、前記有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致しているか否かを判定する判定手段と、
前記検査信号の電圧が、該検査信号に対応する前記有電圧信号の生成の基となる前記指令信号のパターンに対応する、前記有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致していないと、前記判定手段が判定した場合に、前記有電圧信号の電圧の異常を外部に報知する報知動作を行う電圧異常報知手段と、
を備えることを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記有電圧信号は、故障発生時に前記監視対象の警報状態の発生時とは異なる電圧で外部に出力され、前記電圧異常報知手段は、前記検査信号の電圧が、該検査信号に対応する前記有電圧信号の生成の基となる前記指令信号のパターンに対応する、前記有電圧信号の正常な電圧に応じた電圧又はその前後の許容範囲内の電圧帯に合致していないと、前記判定手段が判定した場合に、強制的に故障発生時の電圧に変更させた前記有電圧信号を外部に出力させるように構成されている請求項1記載の警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−207020(P2007−207020A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25917(P2006−25917)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】