説明

警報装置

【課題】運転者の覚醒度に応じて、周囲に対して警報を行う警報装置を提供する。
【解決手段】車両Aと歩行者Cとの衝突リスクを判定する衝突確率算出部14と、車両Aの運転者Bの覚醒度を判定するドライバ状態認識部13と、を備え、衝突リスクに基づいて歩行者Cに対して警報を発する際に、覚醒度に応じて警報の度合いを変更することを特徴とする、警報装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者に対する警報装置としては、例えば、特許文献1のように車両に設けられ、車両の運転者(ドライバ)の操作によって所定の音を発し、自車両の接近を周囲に報知する車両用接近告知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−162477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記装置のように、ドライバの操作によって、周囲の歩行者等に自車両の接近を報知する場合、ドライバが居眠り運転をしているなど覚醒度が低い状況では、周囲に対する報知が遅れてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、歩行者等との衝突リスクを判定し、ドライバの覚醒度が低い場合であっても遅れずに、歩行者等に対して報知することができる警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、車両と物体との衝突リスクを判定する衝突リスク判定手段と、車両の運転者の覚醒度を判定する覚醒度判定手段と、を備え、衝突リスクに基づいて物体に対して警報を発する際に、覚醒度に応じて警報の度合いを変更することを特徴とする、警報装置である。
【0007】
上記警報装置においては、車両と物体との衝突リスクを判定する衝突リスク判定手段と、車両の運転者の覚醒度を判定する覚醒度判定手段とを備えることによって、衝突リスクに基づいて物体に対して警報を発する際に、覚醒度に応じて警報の度合いを変更する。これにより、歩行者等との衝突リスクを判定し、運転者の覚醒度が低い場合であっても遅れずに警報することができる。その結果、例えば歩行者の車両への接近の抑制や回避などにより、車両と歩行者等が接触する危険性を低減することが可能となる。
【0008】
また、上記警報装置においては、上記覚醒度が低いほど、警報の度合いを大きくすることが好ましい。車両の運転手の覚醒度が低いほど、例えば、周囲の物体への警報を発するタイミングが遅れやすいことから、警報の度合いを大きくすることによって、より十分に車両の周囲の歩行者等に対して遅れずに適切に警報することができる。
【0009】
さらに、上記警報装置において、衝突リスクを判定するために車両の将来位置を予測する将来位置予測手段をさらに備え、将来位置予測手段は、覚醒度に応じて車両の将来位置を予測することが好ましい。上記警報装置が将来位置予測手段をさらに備え、車両の運転者の覚醒度に応じて車両の将来位置を予測することによって、衝突リスクがより高く判定されやすくなる。その結果、車両の周囲の歩行者等に対して、例えばより早いタイミングで警報を行うことができ、車両と歩行者等が接触する危険性をより低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歩行者等との衝突リスクを判定し、ドライバの覚醒度が低い場合であっても遅れずに、歩行者等に対して報知することができる警報装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態に係る警報装置の構成概要図である。
【図2】第一実施形態における警報判定の手順を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップ6における警報内容の決定手順を示すフローチャートである。
【図4】車両の運転者の覚醒度と衝突リスクの度合いによる警報内容を選定するマップを示す説明図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る警報装置の構成概要図である。
【図6】車両の運転者の覚醒度と車両の将来位置の予測との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0013】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る警報装置の構成概要図である。警報装置1は、車両Aに搭載され、車両Aの周囲の物体である例えば歩行者Cを認識するとともに、車両Aの将来位置を予測し、車両Aと歩行者Cとの衝突確率(衝突リスク)を算出し、また、車両Aの運転者(ドライバ)Bの覚醒度を認識し、衝突リスクに基づいて歩行者Cに警報を発する際に覚醒度に応じて警報の度合いを変更する装置である。警報装置1は、警報判定ECU(Electric Control Unit)10を備え、警報判定ECU10は、カメラ(歩行者用)2、車輪速センサ3、加速度センサ4、ヨーレートセンサ5及びカメラ(ドライバ用)6と電気的に接続されている。
【0014】
カメラ(歩行者用)2は、車両Aの周囲を撮影するためのカメラであり、例えば車両Aが走行する方向を中心に撮影する。撮影された画像は画像信号として歩行者認識部11へ送信される。
【0015】
車輪速センサ3は、車両Aの各車輪に配置され、車輪Aの回転速度を検出するものであり、検出された回転速度は回転速度信号として自車将来位置予測部12へ送信される。
【0016】
加速度センサ4は、車両Aの加速度の方向及び大きさを検出するものであり、検出された車両Aの加速度は加速度信号として自車将来位置予測部12へ送信される。
【0017】
ヨーレートセンサ5は、車両Aのヨーレート(車両が回転する速度)を検出するものであり、検出された車両Aのヨーレートはヨーレート信号として自車将来位置予測部12へ送信される。
【0018】
カメラ(ドライバ用)6は、例えば運転席の前側に取り付けられ、車両Aを運転するドライバBの表情を撮影するためのカメラであり、撮影された画像は画像信号としてドライバ状態認識部13へ送信される。
【0019】
上述した警報判定ECU10は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等を備え、CPUがROMに記憶されている制御プログラムに従い、RAMに対するデータの読み書きを行いながら作動するものであり、上述の歩行者認識部11、自車将来位置予測部12、ドライバ状態認識部13に加え、衝突確率算出部14及び警報判定部15を備える。
【0020】
歩行者認識部11は、歩行者を認識する機能を有する。例えば、カメラ(歩行者用)2により撮影された画像中から物体、例えば歩行者Cを検出し、歩行者Cの現在位置や進行方向、速度などを推定することができる。また、認識された歩行者のT秒後の存在位置の確率分布を計算し、出力することもできる。
【0021】
自車将来位置予測部12は、自車両の将来の位置を予測する機能を有する。例えば、車輪速センサ3から送信された車両Aの車輪の回転速度をもとに車両Aの速度を算出することができ、加速度センサ4から送信された車両Aの加速度、ヨーレートセンサ5から送信された車両Aのヨーレートなどをもとに、一定時間後の自車(車両A)の存在位置、速度の確率分布を求めることができる。
【0022】
ドライバ状態認識部13は、ドライバの状態を認識する機能を有する。例えば、カメラ(ドライバ用)6により撮影された画像中のドライバBの顔をもとに、顔向きやわき見状態を判定することができる。また、ドライバBの目やまぶたの動きなどの閉眼状態などから、覚醒度低下状態を検出することができる。
【0023】
衝突確率算出部14は、自車両と歩行者等が衝突する確率を算出する機能を有する。例えば、歩行者Cと車両Aとの一定時間後の存在確率の確率分布をもとに衝突確率を演算することができる。
【0024】
警報判定部15は、警報を作動させるか否かを判定する機能を有する。例えば、所定の衝突確率に該当する物体、例えば歩行者Cを選定し、選定された歩行者Cの存在方向に対して車両Aの接近を報知する警報を作動させるか否かの判定を行い、警報を発生させる場合には警報発生部20へ指示する。
【0025】
警報発生部20は、警報を発生させる機能を有する。例えば、警報判定部15からの指示に基づき、音や光などの警報を発生させる。
【0026】
図2は、上記第一実施形態における警報判定の手順について、フローチャートで示したものであり、この動作手順は、警報判定ECU10で所定の周期で繰り返し実施される。動作が開始されると、まず、S2として、衝突確率算出部14において衝突確率の演算が行われる。
【0027】
S4においては、S2で演算された衝突確率をもとに、衝突確率の高い対象(歩行者Cなどの物体)がいるかいないかが判定される。衝突確率の高い対象がいない場合には、スキップして終了する。一方、衝突確率の高い対象がいる場合には、S6において、ドライバ状態に応じた警報内容が決定される。S8においては、S6で決定された警報内容に応じて警報が実行される。
【0028】
ここで、S6におけるドライバ状態に応じた警報内容の決定の具体的な手順を図3に示す。まずS10において、ドライバBの覚醒度がドライバ状態認識部13によって判定される。その結果、S12において、ドライバBの覚醒度が閾値以下の場合は、例えば、ドライバの覚醒度が低いとみなされ、第一の警報内容、例えば設定値より大きく、速い警報が選択される(S14)。一方、覚醒度が閾値より大きい場合は、ドライバBの覚醒度は高いと判定され、第二の警報内容として、設定値より小さく、遅い警報が選択される(S16)。
【0029】
警報判定部15は、例えば図4に示すように、車両Aの運転者Bの覚醒度と衝突リスクの度合いから警報内容を選定する選定マップを有しており、当該マップ上のエリアに応じて警報内容の度合いが変更される。警報内容の選定マップは、例えば領域が図4のようにa〜cの3領域に分けられる。
【0030】
領域aは、衝突確率が高いか、もしくは衝突確率が低くてもドライバBの覚醒度が低い状態であり、このような状態においては、歩行者Cへ車両Aの接近の危険性を報知する必要性が高いことから、より緊急性を強調した警報内容が選定される。
【0031】
領域bは、ドライバBの覚醒度が中間的な場合や、衝突リスクが高くても覚醒度も高い状態であり、このような状態においては、歩行者Cへ車両Aの接近を認知させる程度でよいことから、標準的な警報内容が選定される。
【0032】
領域cは、ドライバBの覚醒度が高く、衝突確率も高くない状態であることから、このような状態においては、歩行者Cへ車両Aの接近の認知させる必要性はなく、警報は不要と判定される。
【0033】
上記領域aにおいては、上述のとおり、より緊急性を強調した警報内容が選定されるが、緊急性を強調した警報内容の具体的な例としては、警報音の音量を大きくすることや周期を早くすること、周波数を高くすることなどが挙げられる。また、領域bにおいては警報は断続的に行われる場合が想定されることから、その断続間隔を短くすることや、光が用いられる場合は、その投光角度をあげ、ロービームからハイビームに変更することなどが挙げられる。また、一定の投光から断続的な投光へと変化させるような、パッシングなどのパターンで一定時間投光することで歩行者Cに接近する車両Aを認知させることもできる。
【0034】
このように、衝突リスクが高く、かつ、覚醒度が低いほど、衝突確率が高いと判定する警報内容の選定手段(選定マップ)を有するため、緊急性を強調した警報内容を選択することによって、歩行者Cに対して、通常の車両接近時と異常時(ドライバBの覚醒度が低下している場合)の車両接近時との違いを認識させることも可能となる。そして、歩行者Cに対してより適切な警報を行うことで、車両Aへの注意を喚起させ、歩行者Cが車両Aに接近することを抑制したり、回避するなど、車両Aと歩行者Cの接触の危険性を低減させることができる。
【0035】
以上、本発明の第一実施形態に係る警報装置により、歩行者等との衝突リスクを判定し、ドライバの覚醒度が低い場合であっても遅れずに、歩行者等に対して報知することが可能となる。
【0036】
(第二実施形態)
図5は、本発明の第二実施形態に係る警報装置の構成概要図である。本発明の第一実施形態(図1)においては、ドライバ状態認識部13の検出結果は警報判定部15へ出力されたが、第二実施形態においては、ドライバ状態認識部13の検出結果を自車将来位置予測部12へ出力する点で第一実施形態と相違している。
【0037】
自車将来位置予測部12においては、一定時間T秒後の自車(車両A)の位置を求めるために、例えば確率分布が次式の正規分布に従うと仮定する。進行方向(x方向)における位置xの確率密度関数は、現在の速度をV0、加速度をA0とすると、平均は、μx=X(T)=V0・T+0.5・A0・T、標準偏差は、δx=0.5・A0・Tとしたときの次式(1)に従うものとする(ただし、加速度は進行方向と同一の加速側を正とする)。
【0038】
【数1】

【0039】
上記と同様に、横方向の位置は現在の車線中央からのオフセットをy0、ヨーレートをγ0とすると、平均は、μy=y0−0.5・V0・γ・T、標準偏差は、δy=0.5・V0・γ・Tとする。ドライバ状態から入力される情報をα(α≧0)とすると、ドライバ状態(覚醒度)を加味したヨーレートγはγ=γ+αとする。αは、ドライバBの覚醒度が低下したり、わき見をしている時間が長いほど大きい値をとるものとする。
【0040】
図6は、車両Aの運転者Bの覚醒度と車両Aの将来位置の予測との関係を示す説明図である。図6に示すように、ドライバBの覚醒度が低下すると、車両AのT秒後の存在範囲が拡大して予測される。これに伴って、歩行者CのT秒後の存在予測位置との交わりが大きくなり、従来よりも衝突確率が高く算出されやすくなる。この結果、警報タイミングが早まったり、これまで警報対象とならなかった物体(例えば歩行者D)も警報対象となるなど、より広く警報することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の第二実施形態に係る警報装置によっても、歩行者等との衝突リスクを判定し、ドライバの覚醒度が低い場合であっても遅れずに、歩行者等に対して報知することが可能となる。
【0042】
なお、上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば歩行者Cを認識するための情報を取得するには、上述のカメラ(歩行者用)2で画像を取得する以外にも、例えばミリ波レーダーやレーザーレーダーなどを用いてもよく、またそれらを併用して用いてもよい。
【0043】
自車将来位置予測部12においては、車輪速センサ3、加速度センサ4、ヨーレートセンサ5という測定センサ以外にも、例えばアクセル、ブレーキ、ステアリングなどのドライバBの操作量を検知し、予測に用いてもよい。
【0044】
同様に、ドライバ状態認識部13においても、カメラ(ドライバ用)6以外に、例えば、ドライバBのステアリング操作や車両Aの横方向への蛇行度合いなどから、ドライバBの覚醒状態を推定する手法を用いてもよい。
【0045】
また、衝突確率の演算には、上記以外に従来から用いられるTTC(Time To Collision)などの指標を用いてもよい。
【0046】
さらに、車両Aの運転者Bの覚醒度と衝突リスクの度合いからなる警報内容選定マップは、図4のようなマップの形式ではなく、評価関数として定式化されたものであってもよい。
【0047】
また、緊急性を強調した警報内容の具体的な例は、上述のものに加え、光や音の発光、発音領域を絞り込まずより広範囲に拡大することや、領域Bにおいて有指向性発音を使用した場合には領域Aでは無指向性発音に切り替えることが挙げられる。また、領域Bにおいて発光を用いる場合には、領域Aでは発音に切り替えることなども挙げることができる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・警報装置、2・・・カメラ(歩行者用)、3・・・車輪速センサ、4・・・加速度センサ、5・・・ヨーレートセンサ、6・・・カメラ(ドライバ用)、10・・・警報判定ECU、11・・・歩行者認識部、12・・・自車将来位置予測部(将来位置予測手段)、13・・・ドライバ状態認識部(覚醒度判定手段)、14・・・衝突確率算出部(衝突リスク判定手段)、15・・・警報判定部、20・・・警報発生部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と物体との衝突リスクを判定する衝突リスク判定手段と、
前記車両の運転者の覚醒度を判定する覚醒度判定手段と、を備え、
前記衝突リスクに基づいて前記物体に対して警報を発する際に、前記覚醒度に応じて前記警報の度合いを変更することを特徴とする、警報装置。
【請求項2】
前記覚醒度が低いほど、前記警報の度合いを大きくする、請求項1記載の警報装置。
【請求項3】
前記衝突リスクを判定するために前記車両の将来位置を予測する将来位置予測手段をさらに備え、
前記将来位置予測手段は、前記覚醒度に応じて前記車両の将来位置を予測する、請求項1又は2記載の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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