説明

負極およびその製造方法、並びに電池

【課題】活物質層と負極リードとの密着性を高め、電気抵抗の上昇を抑えることができる負極およびその製造方法、並びにそれを備えた電池を提供する。
【解決手段】集電体12Aに、ケイ素を構成元素として含む活物質層12Bが設けられ、活物質層12Bには負極リード12Cが接合されている。負極リード12Cの活物質層12Bとの接合領域12Dの少なくとも一部は、銅または銅を含む合金により構成されている。これにより、負極リード12Cを活物質層12Bに接合しても電気抵抗の上昇が抑えられる。負極リード12Cは、銅または銅を含む合金により構成されていてもよく、また、基材の表面に、銅または銅を含む合金よりなる被覆層が設けられていてもよい。更に、負極リード12Cをニッケルなどにより構成し、銅または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リード12Cと活物質層12Bとを接合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられた負極およびその製造方法、並びにそれを備えた電池に係り、特に、活物質層を気相法により形成する場合に好適な負極およびその製造方法、並びにそれを備えた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器の高性能化および多機能化に伴い、それらの電源である二次電池の高容量化が要求されている。この要求に応える二次電池としてはリチウムイオン二次電池があるが、現在実用化されているものは負極に黒鉛を用いているので、電池容量は飽和状態にあり、大幅な高容量化は難しい。そこで、負極にケイ素などを用いることが検討されており、最近では、気相法などにより集電体に活物質層を形成することも報告されている。ケイ素などは充放電に伴う膨張収縮が大きいので、微粉化によるサイクル特性の低下が問題であったが、気相法などによれば、微細化を抑制することができると共に、集電体と活物質層とを一体化することができるので負極における電子伝導性が極めて良好となり、容量的にもサイクル寿命的にも高性能化が期待されている。
【0003】
一般に、電池では、電池内の電気化学反応により生じた電子を集電体およびリードを介して外部に取り出す必要がある。従来では、溶接性を良くするため、集電体の一部に活物質層を形成しない露出部分を残しておき、その露出部分に負極リードを超音波溶接などにより取付けるようにしている。気相法により負極の活物質層を形成する場合については、例えば、シャッターやマスクなどを用いて集電体に所定のパターンで活物質層を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−162999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シャッター機構によるパターン成膜は装置構成の複雑化を招き、生産性低下の原因にもなってしまっていた。また、マスク等を用いる場合においても、多量の材料を成膜する際にはマスクに多量の付着物が生じてしまい、電池電極製造において実用的とはいえなかった。
【0005】
一方、気相法により集電体の全面に活物質層を形成し、活物質層にニッケル(Ni)よりなる負極リードを溶接した場合、活物質層と負極リードとの密着性が低下したり、電気抵抗が上昇してしまっていた。そのため、電池電圧の低下やばらつき、電池容量の低下やばらつき、サイクル特性の劣化などの問題が生じていた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、活物質層と負極リードとの密着性を高め、電気抵抗の上昇を抑えることができる負極およびその製造方法、並びにそれを備えた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の負極は、集電体に、ケイ素を構成元素として含む活物質層が設けられたものであって、活物質層には負極リードが接合されており、この負極リードは、活物質層との接合領域の少なくとも一部が、銅(Cu)または銅を含む合金により構成されているものである。
【0008】
本発明による第2の負極は、集電体に、ケイ素を構成元素として含む活物質層が設けられたものであって、活物質層には、銅または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードが接合されているものである。
【0009】
本発明による第1の負極の製造方法は、集電体に、ケイ素を構成元素として含む活物質層が設けられた負極を製造するものであって、活物質層に対して、活物質層との接合領域の少なくとも一部が銅または銅を含む合金よりなる負極リードを接合する工程を含むようにしたものである。
【0010】
本発明による第2の負極の製造方法は、集電体に、ケイ素を構成元素として含む活物質層が設けられた負極を製造するものであって、活物質層に対して、銅または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードを接合する工程を含むようにしたものである。
【0011】
本発明による第1の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、集電体に、ケイ素を構成元素として含む活物質層が設けられ、活物質層には負極リードが接合されており、この負極リードは、活物質層との接合領域の少なくとも一部が、銅または銅を含む合金により構成されているものである。
【0012】
本発明による第2の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、集電体に、ケイ素を構成元素として含む活物質層が設けられ、活物質層には、銅または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードが接合されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の負極によれば、負極リードの活物質との接合領域の少なくとも一部を、銅または銅を含む合金により構成するようにしたので、また、本発明の第2の負極によれば、活物質層に、銅または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードを接合するようにしたので、負極リードと活物質層との密着性を高めることができ、負極リードを活物質層に接合しても電気抵抗の上昇を抑えることができる。よって、この負極を用いて本発明の第1の電池または本発明の第2の電池を構成することにより、電池電圧の低下やばらつき、または電池容量の低下やばらつきを低減し、サイクル特性の劣化を抑えることができる。
【0014】
本発明の第1の負極の製造方法によれば、活物質層に対して、活物質層との接合領域の少なくとも一部が銅または銅を含む合金よりなる負極リードを接合するようにしたので、また、本発明の第2の負極の製造方法によれば、活物質層に対して、銅または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードを接合するようにしたので、本発明の第1の負極または第2の負極を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の構成を表すものであり、図2は、図1に示した電極巻回体のII−II線に沿った断面構造を表すものである。この二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池であり、偏平状の電極巻回体10をフィルム状の外装部材21の内部に収容した構成を有している。
【0017】
電極巻回体10は、正極11と負極12とをセパレータ13および電解質層14を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ15により保護されている。
【0018】
正極11は、集電体11Aに活物質層11Bが設けられた構成を有している。集電体11Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
【0019】
活物質層11Bは、例えば、正極活物質としてリチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電材およびポリフッ化ビニリデンなどのバインダーを含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、一般式Lix MIO2 で表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。リチウム含有金属複合酸化物は、高電圧を発生可能であると共に、高密度であるため、二次電池の更なる高容量化を図ることができるからである。なお、MIは1種類以上の遷移金属であり、例えばコバルトおよびニッケルのうちの少なくとも一方が好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム含有金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 あるいはLiNiO2 などが挙げられる。
【0020】
正極11には、巻回中心側の端部に、正極リード11Cが取り付けられている。正極リード11Cは、例えばアルミニウム(Al)により構成されており、外装部材21の内部から外部に向かい導出されている。
【0021】
負極12は、集電体12Aに、ケイ素を構成元素として含む活物質層12Bが設けられた構成を有している。ケイ素はリチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。ケイ素は、単体で含まれていてもよく、合金で含まれていてもよく、化合物で含まれていてもよい。この負極12は、活物質層12Bの側が正極11の活物質層11Bと対向するように配置されている。
【0022】
集電体12Aは、リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素を含む金属材料により構成されていることが好ましい。リチウムと金属間化合物を形成すると、充放電に伴い膨張および収縮し、構造破壊が起こって、集電性が低下する他、活物質層12Bを支える能力が小さくなるからである。なお、本明細書において金属材料には、金属元素の単体だけでなく、2種以上の金属元素あるいは1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とからなる合金も含める。リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素としては、例えば、銅,ニッケル(Ni),チタン(Ti),鉄(Fe)あるいはクロム(Cr)が挙げられる。
【0023】
また、集電体12Aは、活物質層12Bと合金化することが可能な金属元素を含む方がより好ましい場合もある。合金化により集電体12Aと活物質層12Bとの密着性をより向上させることができるからである。リチウムと金属間化合物を形成せず、活物質層12Bと合金化する金属元素、すなわちケイ素と合金化する金属元素としては、銅,ニッケルあるいは鉄が挙げられる。
【0024】
集電体12Aは、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。その場合、活物質層12Bと接する層を活物質層12Bと合金化しやすい金属材料により構成し、他の層を他の金属材料により構成するようにしてもよい。
【0025】
更に、集電体12Aは、表面が粗化されていることが好ましい。
【0026】
活物質層12Bは、例えば、気相法により形成されたものであることが好ましい。充放電に伴う活物質層12Bの膨張・収縮による破壊を抑制することができると共に、集電体12Aと活物質層12Bとを一体化することができ、活物質層12Bにおける電子伝導性を向上させることができるからである。
【0027】
活物質層12Bは、また、集電体12Aとの界面の少なくとも一部において集電体12Aと合金化していることが好ましい。具体的には、界面において集電体12Aの構成元素が活物質層12Bに、または活物質層12Bの構成元素が集電体12Aに、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。密着性を向上させることができ、活物質層12Bが膨張収縮により集電体12Aから脱落してしまうことを抑制することができるからである。なお、本願では、上述した元素の拡散も合金化の一形態に含める。
【0028】
負極12には、例えばの巻回中心側の端部に、負極リード12Cが設けられている。負極リード12Cは、外装部材21の内部から外部に向かい例えば正極リード11Cと同一方向に導出されている。
【0029】
負極リード12Cは、活物質層12Bに接合され、活物質層12Bとの接合領域12Dの少なくとも一部が銅または銅を含む合金により構成されている。これにより、この負極12では、負極リード12Cと活物質層12Bとの密着性を高め、電気抵抗の上昇を抑えることができるようになっている。負極リード12Cは、活物質層12Bと界面の一部において合金化していることが好ましい。密着性をより向上させることができるからである。
【0030】
負極リード12Cは、例えば図3に示したように、銅または銅を含む合金により構成してもよく、また、例えば図4に示したように、基材12Eに、銅または銅を含む合金よりなる被覆層12Fが設けられていてもよい。基材12Eの構成材料としては、ニッケル,ニッケルを含む合金,鉄または鉄を含む合金が挙げられる。なお、被覆層12Fは、基材12Eの表面全体に設けられている必要はなく、接合領域12Dの少なくとも一部に設けられていればよい。
【0031】
図2に示したセパレータ13は、正極11と負極12とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ13は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンにより構成されている。
【0032】
図2に示した電解質層14は、高分子化合物よりなる保持体に電解液を保持させたいわゆるゲル状の電解質により構成されている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。高分子材料としては、例えばポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0033】
電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでおり、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ジメチル,炭酸ジエチルあるいは炭酸エチルメチルなどの非水溶媒が挙げられる。溶媒はいずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
電解質塩としては、例えば、LiPF6 ,LiCF3 SO3 あるいはLiClO4 などのリチウム塩が挙げられる。電解質塩は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
図1に示した外装部材21は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材21は、例えば、ポリエチレンフィルム側と電極巻回体10とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0036】
外装部材21と正極リード11Cおよび負極リード12Cとの間には、正極リード11Cおよび負極リード12Cと、外装部材21の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム22が挿入されている。密着フィルム22は、正極リード11Cおよび負極リード12Cに対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0037】
なお、外装部材21は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0038】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0039】
まず、例えば、正極活物質と導電材とバインダーとを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーとする。次いで、この正極合剤スラリーを、集電体11Aに塗布し乾燥させたのち、圧縮成型し活物質層11Bを形成する。続いて、集電体11Aに正極リード11Cを、例えば超音波溶接により接合し、正極11を形成する。
【0040】
また、集電体12Aに気相法により活物質層12Bを成膜する。気相法としては、例えば、物理堆積法あるいは化学堆積法が挙げられ、具体的には、真空蒸着法,スパッタ法,イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法,CVD(Chemical Vapor Deposition ;化学気相成長)法あるいは溶射法などが挙げられる。
【0041】
なお、活物質層12Bの成膜時に、活物質層12Bと集電体12Aとの合金化が同時に起こる場合もあるが、活物質層12Bを成膜したのちに、真空雰囲気下または非酸化性雰囲気下で熱処理を行い、合金化するようにしてもよい。
【0042】
続いて、活物質層12Bに負極リード12Cを接合し、負極12を形成する。負極リード12Cの接合は、例えば抵抗溶接により行うことが好ましい。密着性をより高めることができるからである。
【0043】
そののち、集電体11A,12A上の活物質層11B,12Bの表面に、それぞれに、保持体に電解液を保持させた電解質層14を形成する。
【0044】
電解質層14を形成したのち、正極11と負極12とをセパレータ13を介して積層し、巻回して、最外周部に保護テープ15を接着して電極巻回体10を形成する。続いて、例えば、外装部材21の間に電極巻回体10を挟み込み、外装部材21の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード11Cおよび負極リード12Cと外装部材21との間には密着フィルム22を挿入する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0045】
また、この二次電池は、次のようにして製造してもよい。まず、集電体11A,12Aに活物質層11B,12Bをそれぞれ形成し、正極リード11Cおよび負極リード12Cをそれぞれ取り付けて正極11および負極12を形成する。次いで、正極11および負極12とをセパレータ13を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ15を接着して、電極巻回体10の前駆体である巻回体を形成する。続いて、この巻回体を外装部材21に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状としたのち、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を、外装部材21の内部に注入する。続いて、外装部材21の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封し、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層14を形成する。これにより、図1および図2に示した二次電池が完成する。
【0046】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極11からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極12に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極12からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極11に吸蔵される。ここでは、負極リード12Cの活物質層12Bとの接合領域12Dの少なくとも一部が銅または銅を含む合金により構成されているので、活物質層12Bと負極リード12Cとの密着性が高くなっている。よって、電気抵抗の上昇が抑えられる。
【0047】
このように本実施の形態では、負極リード12Cの活物質層12Bとの接合領域12Dの少なくとも一部を銅または銅を含む合金により構成するようにしたので、活物質層12Bと負極リード12Cとの密着性を高めることができ、負極リード12Cを活物質層12Bに接合しても電気抵抗の上昇を抑えることができる。よって、電池電圧の低下やばらつき、または、電池容量の低下やばらつきを低減し、サイクル特性の劣化を抑えることができる。また、負極リード12Cの接合性を向上させ、電池の信頼性を高めることができる。
【0048】
また、集電体12Aに活物質層12Bをパターン形成することが不要となるので、様々な仕様の電池に対応することができると共に、装置構成の複雑化を回避し、製造コスト低減および生産性向上を図ることができる。
【0049】
特に、負極リード12Cを銅または銅を含む合金により構成すれば、電気抵抗をより低減することができ、より高い効果を得ることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の負極リードの構成を、その長手方向に沿って表したものである。この二次電池は、活物質層12Bに、銅または銅を含む合金よりなる接合材31を介して、負極リード12Cが接合されていることを除いては、上記第1の実施の形態で説明した二次電池と同一の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0051】
接合材31は、活物質層12Bと少なくとも一部において合金化していることが好ましい。密着性をより向上させることができるからである。また、接合材31は、負極リード12Cと少なくとも一部において合金化していてもよい。
【0052】
負極リード12Cは、例えば、ニッケル,ニッケルを含む合金,鉄または鉄を含む合金により構成されている。
【0053】
この二次電池は、活物質層12Bに対して、銅または銅を含む合金よりなる接合材31を介して、負極リード12Cを接合することを除いては、上記第1の実施の形態と同様にして製造することができる。また、同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0054】
更に、本発明の具体的な実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0055】
(実施例1)
まず、厚みが18μmであり表面粗度がRz=2μm程度の銅箔よりなる集電体12Aを用意し、この集電体12A上に、電子線加熱方式を用いた真空蒸着法(電子ビーム蒸着法)により、厚さ5μm〜6μmのケイ素よりなる活物質層12Bを形成した。その際、電子ビーム蒸着の条件としては、原材料として結晶シリコンインゴット、蒸着源として電子ビームを用い、1×10-2Pa以下の雰囲気で成膜を行った。成膜速度は50nm/secとした。
【0056】
次いで、図3に示したような厚み75μmの銅よりなる負極リード12Cを用意し、この負極リード12Cを活物質層12Bに接合した。接合は、2点スポット式抵抗溶接にて5点(10スポット)行った。
【0057】
また、正極活物質である平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2 )粉末92質量部と、導電材であるカーボンブラック3質量部と、バインダーであるポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合し、これを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに投入してスラリーとした。次いで、これを厚み15μmのアルミニウム箔よりなる集電体11Aに塗布して乾燥させたのち加圧して活物質層11Bを形成した。続いて、集電体11Aに正極リード11Cを接合し、正極11を形成した。
【0058】
そののち、炭酸エチレン37.5質量%と、炭酸プロピレン37.5質量%と、炭酸ビニレン10質量%と、LiPF6 15質量%とを混合して電解液を調整し、この電解液30質量%と、重量平均分子量60万のブロック共重合体であるポリフッ化ビニリデン10質量%と、炭酸ジメチル60質量%とを混合した前駆溶液を活物質層11B,12Bにそれぞれ塗布し、常温で8時間放置して炭酸ジメチルを揮発させることにより電解質層14を形成した。
【0059】
電解質層14を形成したのち、正極11と負極12とをセパレータ13を間にして積層して巻回し、電極巻回体10を形成した。その際、電池設計容量は800mAhとなるようにした。この電極巻回体10を、アルミラミネートフィルムよりなる外装部材21に封入した。これにより実施例1の二次電池を得た。
【0060】
比較例1として、ニッケルよりなる負極リードを用いたことを除き、他は実施例1と同様にして二次電池を作製した。
【0061】
(実施例2)
活物質層12Bに、図5に示したような接合材31を介して負極リード12Cを接合したことを除いては、実施例1と同様にして二次電池を作製した。その際、負極リード12Cとしては、厚み75μmのニッケルよりなるものを用い、接合材31としては、厚み12μmの銅箔よりなるものを用いた。
【0062】
(実施例3)
負極リード12Cとして、図4に示したような厚み75μmのニッケルよりなる基材12Eに、クラッド処理により厚み20μmの銅よりなる被覆層12Fを形成したものを用いたことを除いては、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
【0063】
(実施例4)
負極リード12Cとして、図4に示したような厚み75μmのニッケルよりなる基材12Eに、めっき処理により厚み15μmの銅よりなる被覆層12Fを形成したものを用いたことを除いては、実施例1と同様にして二次電池を作製した。
【0064】
得られた実施例1〜4および比較例1の二次電池について、25℃の条件下で充放電試験を行い、平均電池容量および電池容量標準偏差を調べた。実施例1〜4および比較例1は各々N数5での評価を行った。なお、平均電池容量は、各電池について下記の充放電条件により2サイクル充放電を行い、2サイクル目の放電容量を電池容量としてその平均を算出したものである。得られた結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
充放電条件は以下の通りである。1サイクル目では、充電は、0.1Cの定電流レートにて電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流レートが0.05Cに達するまで行い、放電は、0.1Cの定電流レートで電池電圧が2.5Vに達するまで行った。2サイクル目では、充電は、0.2Cの定電流レートにて電池電圧が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流レートが0.05Cに達するまで行い、放電は、0.2Cの定電流レートで電池電圧が2.5Vに達するまで行った。なお、充電を行う際には、負極12の容量の利用率が90%となるようにし、負極12に金属リチウムが析出しないようにした。なお、1Cは、電池容量を1時間で放電しきる電流値である。
【0067】
表1に示したように、実施例1〜4では、平均電池容量および電池容量標準偏差のいずれについても、比較例1に比べて良好な結果が得られた。更に、比較例1では、負極リードと活物質層または集電体との物理的接合性も悪く、負極リードが剥がれやすいものもあった。これは、実施例1〜4では負極リード12Cの接合性が良好であり、溶接部位での抵抗が小さくなり、抵抗ばらつきも低減されたのに対して、比較例1では溶接部位の抵抗が増大し、抵抗ばらつきも大きくなってしまったからであると考えられる。
【0068】
すなわち、実施例1,3,4のように負極リード12Cの活物質層12Bとの接合領域12Dを、銅または銅を含む合金により構成するようにすれば、または、実施例2のように銅または銅を含む合金よりなる接合材31を介して、負極リード12Cを接合するようにすれば、活物質層12Bと負極リード12Cとの密着性を高め、電気抵抗の上昇を抑えることができ、電池電圧の低下やばらつきを低減することができることが分かった。
【0069】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、接合領域12Dの全体に銅または銅を含む合金よりなる被覆層12Fを形成した場合について説明したが、被覆層12Fは、接合領域12Dの少なくとも一部、例えば溶接点のみに形成するようにしてもよい。接合材31についても同様である。
【0070】
また、例えば、上記実施の形態および実施例では、いわゆるゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、液状の電解質である電解液、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0071】
なお、固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。高分子固体電解質の高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはリン酸リチウムなどを含むもの用いることができる。
【0072】
更に、上記実施の形態および実施例では、巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、本発明は、コイン型,円筒型,角型,ボタン型,薄型,大型あるいは積層ラミネート型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池のII−II線に沿った構造を表す断面図である。
【図3】図1に示した負極リードの構成を、負極リードの長手方向に沿って表す断面図である。
【図4】図1に示した負極リードの他の構成を、負極リードの長手方向に沿って表す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る二次電池の負極リードの構成を、負極リードの長手方向に沿って表す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10…電極巻回体、11…正極、11A,12A…集電体、11B,12B…活物質層、11C…正極リード、12…負極、12C…負極リード、12D…接合領域、12E…基材、12F…被覆層、13…セパレータ、14…電解質層、15…保護テープ、21…外装部材、22…密着フィルム、31…接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体に、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられた負極であって、
前記活物質層には負極リードが接合されており、
この負極リードは、前記活物質層との接合領域の少なくとも一部が、銅(Cu)または銅を含む合金により構成されている
ことを特徴とする負極。
【請求項2】
前記負極リードは、銅または銅を含む合金よりなることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項3】
前記負極リードは、基材と、この基材の少なくとも一部に設けられた銅または銅を含む合金よりなる被覆層とを有することを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項4】
前記負極リードは、前記活物質層と界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項5】
前記活物質層は、気相法により形成されたことを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項6】
前記活物質層は、前記集電体と界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項7】
集電体に、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられた負極であって、
前記活物質層には、銅(Cu)または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードが接合されている
ことを特徴とする負極。
【請求項8】
前記接合材は、前記活物質層と少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項7記載の負極。
【請求項9】
前記活物質層は、気相法により形成されたことを特徴とする請求項7記載の負極。
【請求項10】
前記活物質層は、前記集電体と界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項7記載の負極。
【請求項11】
集電体に、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられた負極の製造方法であって、
前記活物質層に対して、前記活物質層との接合領域の少なくとも一部が銅(Cu)または銅を含む合金よりなる負極リードを接合する工程を含むことを特徴とする負極の製造方法。
【請求項12】
前記負極リードを抵抗溶接により接合することを特徴とする請求項11記載の負極の製造方法。
【請求項13】
集電体に、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられた負極の製造方法であって、
前記活物質層に対して、銅(Cu)または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードを接合する工程を含むことを特徴とする負極の製造方法。
【請求項14】
前記負極リードを抵抗溶接により接合することを特徴とする請求項13記載の負極の製造方法。
【請求項15】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、集電体に、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられ、
前記活物質層には負極リードが接合されており、
この負極リードは、前記活物質層との接合領域の少なくとも一部が、銅(Cu)または銅を含む合金により構成されている
ことを特徴とする電池。
【請求項16】
前記負極リードは、銅または銅を含む合金よりなることを特徴とする請求項15記載の電池。
【請求項17】
前記負極リードは、基材と、この基材の少なくとも一部に設けられた銅または銅を含む合金よりなる被覆層とを有することを特徴とする請求項15記載の電池。
【請求項18】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、集電体に、ケイ素(Si)を構成元素として含む活物質層が設けられ、
前記活物質層には、銅(Cu)または銅を含む合金よりなる接合材を介して、負極リードが接合されている
ことを特徴とする電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−115421(P2007−115421A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302631(P2005−302631)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】