説明

負極活物質、それを含む電極、それを採用したリチウム電池及びその製造方法

【課題】負極活物質、それを含む電極、それを採用したリチウム電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】規則的な多孔性マンガン酸化物を含み、該マンガン酸化物の気孔が二重サイズ分布を有する負極活物質、それを含む電極、それを採用したリチウム電池及び該負極活物質の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、それを含む電極、それを採用したリチウム電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池のような電池(battery)を含む電気化学電池(electrochemical cell)に使われる負極活物質の代表的な例は、黒鉛のような炭素系材料である。黒鉛は、容量維持特性及び電位特性にすぐれ、リチウムとの合金形成時に体積変化がないので、電池の安定性が高いが、最近要求される高容量の電池材料としては限界がある。
【0003】
また、上記負極活物質として、リチウムと合金が可能な金属が使われもする。
【0004】
リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Alなどである。前記リチウムと合金可能な金属は、電気容量が非常に大きいが、前記リチウムと合金可能な金属は、充放電時に体積膨脹を伴い、電極内で短絡される活物質を発生させ、これによって、電池の容量維持特性が急激に低下する。
【0005】
高容量の電池のために、向上した性能の負極活物質開発の必要性がだんだんと高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、新しい構造を有する多孔性マンガン酸化物を含む負極活物質を提供することである。
【0007】
本発明の他の一側面は、前記負極活物質を含む負極を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の一側面は、前記電極を採用したリチウム電池を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の一側面は、前記電極を採用したキャパシタを提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の一側面は、前記負極活物質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によって、規則的な多孔性(ordered porous)マンガン酸化物を含み、前記マンガン酸化物が、下記化学式1で表示される負極活物質が提供される。
【0012】
[化1]
Mn
前記化学式1で、1≦x≦3、1≦y≦4、2≦x+y≦7、0<y/x<2である。
【0013】
本発明の他の一側面によって、前記負極活物質を含む電極が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の一側面によって、前記電極を採用したリチウム電池が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の一側面によって、前記電極を採用したキャパシタが提供される。
【0016】
本発明のさらに他の一側面によって、多孔性化合物にマンガン前駆体を含む液体を含浸させる段階と、前記液体が含浸された多孔性化合物を焼成させる段階と、前記焼成の結果物をエッチング液でエッチングする段階と、を含む負極活物質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、多孔性マンガン酸化物を含むことによって、放電容量及び寿命特性が向上しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】実施例1で製造された多孔性MnのX線回折実験結果である。
【図1B】実施例1で製造された多孔性MnのX線回折実験結果である。
【図1C】比較例1で使われたバルクMnの低角X線回折実験結果である。
【図2A】実施例5で製造された多孔性MnのX線回折実験結果である。
【図2B】実施例5で製造された多孔性MnのX線回折実験結果である。
【図2C】比較例2で使われたバルクMnの低角X線回折実験結果である。
【図3A】実施例6で製造された多孔性MnOのX線回折実験結果である。
【図3B】実施例6で製造された多孔性MnOのX線回折実験結果である。
【図3C】比較例3で使われたバルクMnOの低角X線回折実験結果である。
【図4】実施例1で製造された多孔性Mnの分布図である。
【図5】実施例5で製造された多孔性Mnの気孔分布図である。
【図6】実施例6で製造された多孔性MnOの気孔分布図である。
【図7A】実施例1で製造された多孔性Mnの透過電子顕微鏡(TEM)イメージである。
【図7B】実施例1で製造された多孔性Mnの透過電子顕微鏡(TEM)イメージである。
【図8】実施例7及び比較例5で製造されたリチウム電池の充放電実験結果である。
【図9】実施例11及び比較例6で製造されたリチウム電池の充放電実験結果である。
【図10】実施例12及び比較例7で製造されたリチウム電池の充放電実験結果である。
【図11】実施例7及び比較例5で製造されたリチウム電池の充放電実験結果の電圧(V)対比の容量変化率(dQ)プロファイルである。
【図12】実施例11及び比較例6で製造されたリチウム電池の充放電実験結果の電圧(V)対比の容量変化率(dQ)プロファイルである。
【図13】実施例12及び比較例7で製造されたリチウム電池の充放電実験結果の電圧(V)対比の容量変化率(dQ)プロファイルである。
【図14】例示的な一具現例によるリチウム電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な一具現例による負極活物質、前記負極活物質を含む電極、前記電極を採用したリチウム電池及びキャパシタ、並びに前記負極活物質の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0020】
一具現例による負極活物質は、規則的な多孔性(ordered-porous)マンガン酸化物を含み、前記マンガン酸化物が、下記化学式1で表示される:
【0021】
[化1]
Mn
前記化学式1で、1≦x≦3、1≦y≦4、2≦x+y≦7、0<y/x<2である。
【0022】
前記多孔性マンガン酸化物は、規則的な多数のナノサイズの気孔(pore)を含むことによって、充放電時に、マンガン酸化物の体積変化を容易に受容することができる。
【0023】
前記多孔性マンガン酸化物は、ナノサイズの気孔によって比表面積が非常に広く、これは、電解質との接触面積を拡大させ、また前記多孔性マンガン酸化物自体の骨格(framework)厚が、数nmレベルであるために、リチウムイオンの骨格内での拡散経路が短縮され、高率特性が向上しうる。図7A及び図7Bに図示されるこのような骨格の例示について、以下で説明する。
【0024】
前記多孔性マンガン酸化物の骨格と同じ大きさのナノ粒子は、粒子間の抵抗が発生するが、多孔性マンガン酸化物の骨格は、ネットワークをなしており、粒子間の抵抗が発生せず、電力損失を減らすことができる。
【0025】
前記気孔が規則的に配列されることにより、均一な電気化学反応が可能であり、負極活物質の局部的な損失や劣化を回避することができる。
【0026】
また、前記多孔性マンガン酸化物は、前記マンガン酸化物の気孔が、二重サイズ分布(bimodal size distribution)を有してもよい。
【0027】
前記多孔性マンガン酸化物の気孔が、二重サイズ分布を有することによって、充放電時に、マンガン酸化物の内部構造差による膨張率差によって発生するストレスを容易に受容することができる。前記気孔が二重サイズ分布を有するということは、窒素吸着実験で得られるBJH(Barrett-Joyner-Halenda)気孔サイズ分布で、2個の気孔径ピーク(pore diameter peak)が示されるということを意味する。
【0028】
前記気孔の二重サイズ分布で、前記気孔は、1nmないし5nm範囲の第1ピーク、及び10nmないし20nm範囲の第2ピークを含んでもよい。例えば、前記気孔は、2nmないし5nm範囲の第1ピーク、及び16ないし20nm範囲の第2ピークを含む。すなわち、前記多孔性マンガン酸化物は、規則的な10nm未満の第1ナノ気孔、及び規則的な10nm超過の第2ナノ気孔を含んでもよい。
【0029】
前記規則的な多孔性マンガン酸化物は、規則的なメソ多孔性(mesoporous)マンガン酸化物であってもよい。前記メソ多孔性マンガン酸化物の気孔の具体的な規則性は、低角X線回折スペクトル(low angle X-ray diffraction spectrum)で得られるピークから確認される。
【0030】
前記多孔性マンガン酸化物は、低角X線回折スペクトルで、(110)面に係わるピークが、Bragg2θ角0.6±0.2°で示される。
【0031】
例えば、前記多孔性マンガン酸化物は、低角X線回折スペクトルで、典型的なTetragonal I4/a(または、その下部構造)のメゾ構造を示している。これは、多孔性マンガン酸化物の高度の規則性(highly ordering)三次元的な気孔構造及び骨格構造を示す。特に、(110)面に係わる回折ピークは、前記気孔の二重サイズ分布で、第2ピークに該当する気孔と関連性がある。すなわち、前記気孔の二重サイズ分布で、第2ピークに該当する気孔が存在するならば、必ずX線回折スペクトルで、(110)面に該当するピークが存在する。
【0032】
また、前記多孔性マンガン酸化物の低角X線回折スペクトルで、(110)面に係わるピークと、(221)面に係わるピークとの強度比I(110)/I(221)が、0.1以上であってもよい。例えば、前記(110)面に係わるピークと、(221)面に係わるピークとの強度比I(110)/I(221)が、0.1ないし10である。前記(221)面に係わる回折ピークは、前記気孔の二重サイズ分布で、第1ピークに該当する気孔に係わるものである。
【0033】
前記多孔性マンガン酸化物のナノ気孔間の壁を形成する骨格の厚みは、5nm以上であってもよい。例えば、前記骨格の厚みは、5nmないし20nmである。例えば、前記骨格の厚みは、5nmないし10nmである。例えば、前記骨格の厚みは、10nmないし20nmである。例えば、前記骨格の厚みは、10nmないし15nmである。前記骨格厚が5nm未満であるならば、マンガン酸化物の結晶化がなされ難く、前記骨格厚が20nm以上であるマンガン酸化物は、このような骨格が収容される空間を有するテンプレートの製造が困難であり、実質的に製造し難い。
【0034】
前記多孔性マンガン酸化物の結晶サイズは、5nm以上であってもよい。例えば、前記骨格の厚みは、5nmないし30nmである。
【0035】
前記多孔性マンガン酸化物の比表面積は、50m/gないし250m/gであってもよい。例えば、前記多孔性マンガン酸化物の比表面積は、100m/gないし150m/gである。前記範囲の比表面積を有する多孔性マンガン酸化物が、前記多孔性マンガン酸化物を採用したリチウム電池、キャパシタなどの性能向上にさらに適している。前記比表面積は、気孔サイズや骨格サイズ(または厚み)によって調節される。前記比表面積が過度に狭ければ、リチウムイオンの移動及び拡散の経路確保が困難であり、前記比表面積が過度に広ければ、前記多孔性マンガン酸化物の安定性が低下しうる。
【0036】
前記多孔性マンガン酸化物の気孔体積は、0.1cm/gないし2cm/gであってもよい。例えば、前記多孔性マンガン酸化物の気孔体積が、0.5m/gないし1cm/gである。前記範囲の気孔体積を有する多孔性マンガン酸化物が、前記多孔性マンガン酸化物を採用したリチウム電池、キャパシタなどの性能向上にさらに適している。前記気孔体積は、気孔サイズや骨格サイズ(または厚み)によって調節される。前記気孔体積が過度に小さければ、リチウムイオンの移動及び拡散の経路確保が困難であり、前記気孔体積が過度に広ければ、前記多孔性マンガン酸化物単位体積当たり容量が低下しうる。
【0037】
前記負極活物質で、前記多孔性マンガン酸化物の気孔が互いに連結されてチャネルを形成することができる。このようなチャネルの形成によって、マンガン酸化物内部に、電解液の浸透及びリチウムイオンの移動が容易になる。
【0038】
前記負極活物質で、前記多孔性マンガン酸化物の気孔が1nmないし20nmの直径を有しつつ規則的に配列され、気孔間の壁を形成する骨格が、5nmないし20nmの骨格厚を有して規則的に配列されてもよい。このような範囲の気孔サイズ及びマンガン酸化物骨格サイズが、前記負極活物質を採用したリチウム電池、キャパシタなどの性能向上にさらに適している。
【0039】
例えば、前記気孔間の壁を形成する骨格は、図7Aで黒色で表示される部分である。前記骨格の厚みは、図7Bで空間に矢印で表示された部分である。前記気孔は、前記図7Bで骨格間の空間に該当する。
【0040】
前記多孔性マンガン酸化物は、実質的に気孔率が80%以下であってもよい。例えば、前記多孔性マンガン酸化物の気孔率は、10%ないし70%である。前記気孔率は、多孔性マンガン酸化物の全体体積のうち、気孔が占める体積を意味する。前記気孔率が過度に低ければ、寿命特性が低下し、前記気孔率が過度に高ければ、前記多孔性マンガン酸化物のエネルギー密度が低下しうる。
【0041】
前記多孔性マンガン酸化物は、800mAh/g以上の単位重量当たり放電容量、及び1,000mAh/cc以上の単位体積当たり放電容量を提供することができる。
【0042】
さらに具体的には、前記負極活物質で、前記多孔性マンガン酸化物は、下記化学式2で表示されてもよい:
【0043】
[化2]
MnO
前記化学式2で、1≦z<2である。
【0044】
例えば、前記負極活物質で、前記多孔性マンガン酸化物は、MnO、Mn、Mnまたはそれらの混合物であってもよい。例えば、前記多孔性マンガン酸化物は、Mnである。
【0045】
他の一具現例による負極は、前記による負極活物質を含んでもよい。
【0046】
例えば、前記負極は、次の通り製造される。
【0047】
前記規則的な多孔性マンガン酸化物を含む負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、これを銅集電体に直接コーティングして負極極板を製造することができる。代案としては、前記負極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションして負極極板を製造することができる。
【0048】
前記導電剤としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ、炭素ナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属ファイバまたは金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使われるが、それらに限定されるものではなく、当技術分野で導電材として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0049】
結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子の混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使われ、溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使われるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0050】
場合によっては、負極活物質組成物に可塑剤をさらに付加し、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0051】
前記負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電材、結合剤及び溶媒のうち一つ以上が省略されてもよい。
【0052】
また、前記負極活物質は、前述の多孔性マンガン酸化物を含む負極活物質以外に、他の一般的な負極活物質をさらに含むことができる。前記一般的な負極活物質は、当技術分野で、リチウム電池の負極活物質として使われるものであるならば、いずれも可能である。例えば、前記一般的な負極活物質は、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0053】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si−T合金(前記Tは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、イットリウム(Y)またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn−Z合金(前記Zは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、イットリウム(Y)またはそれらの組み合わせ元素であり、Snはない)などであってもよい。前記元素T及びZとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0054】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物である。
【0055】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO、SiO(0<x<2)などであってもよい。
【0056】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物であってもよい。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛であって、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェースピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどであってもよい。
【0057】
また、前記負極は、リチウム電池以外に、スーパーキャパシタなど他の電気化学電池(electrochemical cell)に使われるために、前述の負極活物質を含むことを除いては、製造方法、電極造成、電極構造などが適切に変更されてもよい。
【0058】
例えば、キャパシタ用G電極は、伝導性基板上に金属構造体を配置し、前記金属構造体上に、前述の負極活物質をコーティングして製造することができる。代案としては、前記伝導性基板上に、前述の負極活物質を直接コーティングして製造することができる。
【0059】
さらに他の一具現例によるリチウム電池は、前記負極を採用する。前記リチウム電池は、例えば、次の通り製造することができる。
【0060】
まず、前述のように、一具現例による負極を製造する。
【0061】
次に、正極が次の通り製造されてもよい。前記正極は、前記負極活物質の代わりに、正極活物質として使用することを除いては、負極と同じ方法をもって製造されてもよい。
【0062】
正極活物質組成物で、導電剤、結合剤及び溶媒は、負極の場合と同じものを使用することができる。正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合し、正極活物質組成物を準備する。前記正極活物質組成物を、アルミニウム集電体上に直接コーティングして乾燥させ、正極活物質層の形成された正極極板を製造することができる。代案としては、前記正極活物質組成物を、別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを、前記アルミニウム集電体上にラミネーションし、正極活物質層の形成された正極極板を製造することができる。
【0063】
前記正極活物質は、リチウム含有金属酸化物として、当業界で一般的に使われるものであるならば、制限なしにいずれも使われる。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち、1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、Li1−b(前記式で、0.90≦a≦1.8及び0≦b≦0.5である);LiaE1−b2−c(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2−b4−c(前記式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1−b−cCoα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1−b−cCo2−αα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cCo2−α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cMnα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1−b−cMn2−αα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cMn2−α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である。);LiNiCoMn(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である。);LiNiG(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiCoG(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiMnGbO(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);LiMnGbO(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI
;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用することができる。
【0064】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Xは、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0065】
例えば、LiCoO、LiMn2x(x=1、2)、LiNi1−xMn2x(0<x<1)、Ni1−x−yCoMn(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、LiFePOなどである。
【0066】
前記化合物表面に、コーティング層を有するものも使用することができることは言うまでもなく、または、前記化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできる。このコーティング層は、コーティング元素の酸化物・水酸化物、コーティング元素のオキシ水酸化物、コーティング元素のオキシ炭化物、またはコーティング元素のヒドロキシ炭化物を含むことができる。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。コーティング層の形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレー・コーティング、浸漬法など)でコーティングすることができれば、いかなるコーティング方法を使用しても差し支えなく、これについては、当分野の当業者に周知の内容であるから、詳細な説明は省略する。
【0067】
前記正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含有量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。次に、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータを準備する。前記セパレータは、リチウム電池で一般的に使われるものであるならば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、電解液含湿能にすぐれるものが使われる。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの化合物のうちから選択されたものであり、不織布形態または織布形態であってもよい。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使われ、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使われる。例えば、前記セパレータは、下記方法によって製造されてもよい。
【0068】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物を準備する。前記セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティングされて乾燥され、セパレータが形成される。または、前記セパレータ組成物が、支持体上にキャスティングされて乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータ・フィルムが電極上部にラミネーションされてセパレータが形成される。
【0069】
前記セパレータ製造に使われる高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合材に使われる物質であるならば、いずれも使われる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使われる。
【0070】
次に、電解質を準備する。
【0071】
例えば、前記電解質は、有機電解液であってもよい。また、前記電解質は、固体であってもよい。例えば、ボロン酸化物、リチウムオキシナイトライドなどであるが、それらに限定されるものではなく、当技術分野で、固体電解質として使われるものであるならば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリングなどの方法によって、前記負極上に形成される。
【0072】
例えば、有機電解液を準備する。有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
【0073】
前記有機溶媒は、当技術分野で有機溶媒として使われるものであるならば、いずれも使われる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物などである。
【0074】
前記リチウム塩も、当技術分野で、リチウム塩として使われるものであるならば、いずれも使用することができる。例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ただx、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0075】
図14から分かるように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られたり折りたたまれ、電池ケース5に収容される。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6で密封され、リチウム電池1が完成する。前記電池ケースは、円筒形、角形、薄膜型などであってもよい。例えば、前記リチウム電池は、大型薄膜型電池である。前記リチウム電池は、リチウムイオン電池であってもよい。
【0076】
前記正極と負極との間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。前記電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成する。
【0077】
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、このような電池パックが、高容量及び高出力が要求されるあらゆる機器に使われる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などに使われてもよい。
【0078】
また、前記リチウム電池は、高温で、保存安定性、寿命特性及び高率特性にすぐれるので、電気車両に使われる。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車両に使われてもよい。
【0079】
前記リチウム電池は、負極活物質単位重量当たり800mAh/g以上の放電容量を提供することができる。また、前記リチウム電池は、負極活物質単位体積当たり1,000mAh/cc以上の放電容量を提供することができる。
【0080】
前記リチウム電池は、充放電実験の最初の充電サイクルで得られる電圧(V)による充電容量変化率(dQ)を図示した場合、リチウム対比2.2ないし3Vの電圧範囲で、さらなるピークを有することができる。
【0081】
前記さらなるピークは、電極反応の電気化学的な可逆性増大を意味し、このような電気化学的な可逆性増大により、理論容量に近接するメソ多孔性マンガン酸化物の電気容量に寄与すると判断される。
【0082】
さらに他の一具現例によるキャパシタは、前記負極を採用する。例えば、前記キャパシタは、蓄電容量が非常に大きいスーパーキャパシタ(super capacitor)であってもよい。
【0083】
前記キャパシタは、前述の負極活物質を含む負極を採用することができる。前記キャパシタは、正極及び負極を配置し、それらの間にセパレータを配置し、前記セパレータに電解液を注入して製造することができる。前記正極は、当業界で使われるものであるならば、いずれも使用可能である。
【0084】
前記電解液に使われる溶媒は、アセトニトリル、アセトン及びプロピレンカーボネートからなる群から選択された一つ以上の溶媒であってもよい。前記電解液に使われる電解質は、前記溶媒に対する溶解度が、0.01mole/L以上であり、前記キャパシタの作動電圧範囲で、電気的に不活性であるアルカリ金属塩である。例えば、リチウムパークロレート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムヘキサフルオロホスフェートなどである。前記電解液は、キャパシタの物性を向上させるためのさらなる添加剤を含んでもよい。例えば、安定剤、増粘剤などである。
【0085】
一方、前記リチウム電池及び/またはキャパシタは、正極活物質として、前記化学式1で表示される多孔性マンガン酸化物を含んでもよい。例えば、前記正極活物質は、MnO、Mn、Mnまたはそれらの混合物であってもよい。
【0086】
さらに他の一具現例による負極活物質の製造方法は、多孔性化合物に、マンガン前駆体またはマンガン前駆体を含む液体を含浸させる段階と、前記液体が含浸された多孔性化合物を焼成させる段階と、前記焼成の結果物をエッチング液でエッチングする段階と、を含む。
【0087】
前記負極活物質の製造方法で、前記多孔性化合物は、シリカ(SiO)、Al、ZnO、MgO、カーボン、及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。前記多孔性化合物は、多孔性マンガン酸化物製造のテンプレートとして作用する。前記多孔性化合物に、マンガン前駆体またはマンガン前駆体を含む液体を含浸させ、気孔を充填した後、前記溶液が含浸された多孔性化合物を焼成させ、多孔性化合物とマンガン前駆体との複合体を収得する。次に、前記複合体で、多孔性化合物をエッチング液で除去し、多孔性マンガン酸化物を得る。
【0088】
前記マンガン前駆体は、Mn(NO・6HO、Mn(CHCOO)・4HO及びMnCl・4HOからなる群から選択される一つ以上であってもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で、マンガン酸化物の前駆体として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0089】
前記マンガン前駆体を含む液体は、前記マンガン前駆体を加熱して得られる溶融物であるか、あるいは前記マンガン前駆体を、水、アルコールなどの溶媒に溶解させて得られる溶液であってもよい。
【0090】
前記焼成させる段階の焼成温度は、約300℃ないし約700℃であってもよい。例えば、前記焼成温度は、約500℃ないし約550℃である。前記範囲の焼成温度が、規則的な多孔性マンガン酸化物の製造に適している。前記焼成温度が過度に低ければ、結晶形成が困難であり、前記焼成温度が過度に高ければ、メゾ構造形成が困難である。
【0091】
前記焼成は、酸化性雰囲気または還元性雰囲気で行われる。前記還元性雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム及び水素からなる群から選択された一つ以上のガスを含む雰囲気であってもよい。前記酸化性雰囲気は、酸素を含む雰囲気である。例えば、空気である。
【0092】
前記負極活物質の製造方法で、前記エッチング液は、フッ酸(HF)、NaOH、HF−NHF(バッファ)からなる群から選択されてもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で、エッチング液として使われるものであるならば、いずれも可能である。前記エッチング液は、酸または塩基である。
【0093】
以下の実施例及び比較例を介して、例示的な具現例についてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は、技術的思想を例示するためのものであり、それらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0094】
(負極活物質の製造)
実施例1(Mnの合成)
Mn(NO・6HOを加熱して溶かした溶融物を、多孔性SiOに注入した。前記SiO 100重量部に対し、Mn 40重量部の比率になるように、Mn(NO・6HO溶融物を、多孔性SiOに注入した。次に、前記Mn(NO・6HOが注入された多孔性SiOを大気雰囲気で、550℃で3時間焼成させ、SiO−Mn複合体を得た。前記複合体を2M NaOH水溶液に投入し、1時間反応させる過程を2回反復し、SiOテンプレートを除去した後で濾過し、多孔性Mnを得た。
【0095】
図7Bから分かるように、製造された多孔性Mnの気孔間の壁を形成する骨格の厚みは、7nmであった。
【0096】
実施例2(Mnの合成)
100℃で水熱合成された多孔性SiOの代わりに、140℃で水熱合成された多孔性SiOを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で、多孔性Mnを製造した。
【0097】
製造された多孔性Mnの気孔間の壁を形成する骨格の厚みは、11nmであった。
【0098】
実施例3(Mnの合成)
140℃で水熱合成された多孔性SiOの代わりに、150℃で水熱合成された多孔性SiOを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で、多孔性Mnを製造した。
【0099】
製造された多孔性Mnの気孔間の壁を形成する骨格の厚みは、12.5nmであった。
【0100】
実施例4(Mnの合成)
150℃で水熱合成された多孔性SiOの代わりに、160℃で水熱合成された多孔性SiOを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で、多孔性Mnを製造した。
【0101】
製造された多孔性Mnの気孔間の壁を形成する骨格の厚みは、14nmであった。
【0102】
実施例5(Mnの合成)
Mn(NO・6HOを加熱して溶かした溶融物を、多孔性SiOに注入した。前記SiO 100重量部に対し、Mn 40重量部の比率になるように、Mn(NO・6HO溶融物をSiOに注入した。次に、前記Mn(NO・6HOが注入された多孔性SiOを大気雰囲気で550℃で3時間焼成させ、SiO−Mn複合体を得た。得られたSiO−Mn複合体を、混合ガス(H:N=1:1、体積比)を使用した還元雰囲気で300℃で3時間熱処理し、SiO−Mn複合体を得た。前記複合体を2M NaOH水溶液に投入し、1時間反応させる過程を2回反復し、SiOテンプレートを除去した後で濾過し、多孔性Mnを得た。
【0103】
実施例6(MnOの合成)
Mn(NO・6HOを加熱して溶かした溶融物を、多孔性SiOに注入した。前記SiO 100重量部に対し、Mn 40重量部の比率になるように、Mn(NO・6HO溶融物をSiOに注入した。次に、前記Mn(NO・6HOが注入された多孔性SiOを、大気雰囲気で550℃で3時間焼成させ、SiO−Mn複合体を得た。得られたSiO−Mn複合体を、混合ガス(H:N=1:1、体積比)を使用した還元雰囲気で300℃で3時間熱処理し、SiO−Mn複合体を得た。前記複合体を2M NaOH水溶液に投入し、1時間反応させる過程を2回反復してSiOテンプレートを除去した後で濾過し、多孔性Mnを得た。多孔性Mnを、Hガスを利用した還元雰囲気で、400℃で2時間熱処理し、多孔性MnOを得た。
【0104】
比較例1
気孔のないバルク(bulk)Mnをそのまま入手して使用した。
【0105】
比較例2
気孔のないバルク(bulk)Mnをそのまま入手して使用した。
【0106】
比較例3
気孔のないバルク(bulk)MnOをそのまま入手して使用した。
【0107】
比較例4
100mL蒸溜水に、5mmolニトリロトリ酢酸(nitrilotriacetate acid)及び5mmol Mn(CHCOO)を溶かした。この溶液を、オートクレーブ(autoclave)を利用して、180℃で6時間水熱処理した。このような方法で、得られた白色の沈殿物を、円心分離を介して分離した後、80℃で8時間乾燥させた。前記乾燥物に対する600℃での3時間の熱処理を介して、不規則な気孔を有する多孔性Mnを合成した。
【0108】
(負極及びリチウム電池の製造)
実施例7
前記実施例1で製造された多孔性Mn粉末70mg、炭素導電剤(Super−P、Timcal Inc.)15mg、及びバインダ(ポリアミド/イミド、PAI)15mgを、15mLのN−メチルピロリドン(NMP)と共にメノウ乳鉢(agate mortar)で混合してスラリを製造した。前記スラリを、ドクターブレードを使用して銅集電体上に、約50μm厚に塗布し、常温で2時間乾燥した後、真空、200℃の条件で2時間さらに乾燥させて負極板を製造した。
【0109】
前記負極板を使用し、リチウム金属を相対電極とし、セパレータとしてポリプロピレン・セパレータ(Cellgard(登録商標)3510)を使用し、1.3M LiPFがエチレンカーボネート(EC)+ジエチルカーボネート(DEC)(3:7重量比)に溶けている溶液を電解質として使用し、CR−2016規格のコインセルを製造した。
【0110】
実施例8ないし12
前記実施例1で製造されたマンガン酸化物の代わりに、前記実施例2ないし6で製造されたマンガン酸化物を使用したことを除いては、前記実施例7と同じ方法で製造した。
【0111】
比較例5ないし8
前記実施例1で製造されたマンガン酸化物の代わりに、前記比較例1ないし4で製造されたマンガン酸化物を使用したことを除いては、前記実施例7と同じ方法で製造した。
【0112】
評価例1:X線回折実験
前記実施例1で製造されたMn粉末に対し、X線回折(X−ray diffraction)実験を行い、その結果を図1Aに示し、低角X線回折実験を行い、その結果を図1Bに示した。
【0113】
図1A及び図1Bから分かるように、実施例1で、規則的なナノサイズの気孔を有するメソ多孔性Mnが製造されたということを確認した。図1Aから、合成されたマンガン酸化物の相は、結晶性Mnであるということを確認することができる。図1Aに表示されるJCPDS 78−0390 Mnは、公知のMnであり、本発明に使われたMnのX線回折パターンに係わるレファレンスとして使われた。また、(222)面に係わるScherrer式による結晶サイズは、10.5nmと計算される。
【0114】
図1Bに表示される低角X線回折スペクトルで、(110)面に係わるピークが、Bragg2θ角0.6±0.2°で現れ、(221)面に係わるピークが、Bragg2θ角1.0±0.2°で現れた。前記(110)面及び(221)面は、多孔性マンガン酸化物で、高度な規則性を有する(highly ordered)三次元的な骨格構造及び気孔構造の一面に該当する。前記低角X線回折スペクトルは、ナノサイズを有する規則的な骨格構造及び気孔の配列による回折パターンである。前記結果から、規則的なナノサイズの気孔を有するメソ多孔性Mnが合成されたということが確認された。
【0115】
前記実施例5で製造されたMn粉末についても、X線回折実験を行い、その結果を図2Aに示して、低角X線回折実験を行い、その結果を図2Bに示した。
【0116】
図2A及び図2Bから、規則的なナノサイズの気孔を有するメソ多孔性Mnが合成されたということが確認された。また、(220)面に係わるScherrer式による結晶サイズは、10.1nmと計算される。
【0117】
前記実施例6で製造されたMnO粉末についてもX線回折実験を行い、その結果を図3Aに示し、低角X線回折実験を行い、その結果を図3Bに示した。
【0118】
図3A及び図3Bから、規則的なナノサイズの気孔を有するメソ多孔性MnOが合成されたということが確認された。また、(200)面に係わるScherrer式による結晶サイズは、8.1nmと計算される。
【0119】
図1A、図2A、図3Aに表示されたバーは、レファレンスに記載されたマンガン酸化物のピーク位置を示す。
【0120】
図1B、図2B、図3Bとの比較のために、比較例1ないし3で使われたバルクMn、バルクMn及びバルクMnOの低角X線回折実験を行い、その結果を図1C、図2C及び図3Cに各々示した。
【0121】
評価例2:窒素吸着実験
前記実施例1で製造されたMn粉末に対し、窒素吸着実験を行った。
【0122】
窒素吸着実験で、ナノ気孔を有する材料に窒素を吸着及び脱着させ、吸着及び脱着される窒素量の違いを介して、前記材料の比表面積、気孔体積を計算し、気孔サイズ分布図を得た。図4に、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)気孔サイズ分布を示した。図4から分かるように、2個の気孔径ピーク(pore diameter peak)を有する二重サイズ分布(pore size distribution)が得られた。
【0123】
具体的には、窒素吸着実験で得られた窒素吸脱着グラフから、BET(Brunauer-Emmett-Teller)方法を使用し、気孔の比表面積を計算し、気孔の総体積は、窒素吸脱着グラフのY軸から直接導き出され、BJH方法を使用し、気孔サイズ分布を示した。
【0124】
実施例1で製造されたMnがナノサイズの気孔を有するということを確認し、前記気孔の比表面積が、137m/gであり、気孔の総体積が0.53cc/gであり、二重サイズ分布で気孔ピークは、それぞれ3.5nm及び17.4nmであった。
【0125】
前記実施例5で製造されたMn粉末についても、窒素吸着実験を行った。BJH気孔サイズ分布を図5に示した。Mnがナノサイズの気孔を有するということを確認し、前記気孔の比表面積が125m/gであり、気孔の総体積が0.61cc/gであり、二重サイズ分布で気孔ピークは、それぞれ3.3nm及び16.7nmであった。
【0126】
前記実施例6で製造されたMnO粉末についても、窒素吸着実験を行った。BJH気孔サイズ分布を図6に示した。MnOがナノサイズの気孔を有するということを確認し、前記気孔の比表面積が93m/gであり、気孔の総体積が0.47cc/gであり、二重サイズ分布で気孔ピークは、それぞれ2.8nm及び14.5nmであった。
【0127】
その結果を、下記表1に示した。
【0128】
【表1】

【0129】
評価例3:電子透過顕微鏡(TEM)実験
前記実施例1で製造された負極活物質粉末に対して電子透過顕微鏡(TEM)実験を行い、その結果を図7Aないし図7Bに示した。
【0130】
図7A及び図7Bから分かるように、実施例1で製造されたMnは、規則的に配列されており、互いに連結されてチャネルを形成するナノサイズの気孔を含んでいる。前記ナノ気孔間の壁を形成する骨格の厚みは、約7nmであった。
【0131】
実施例1ないし6で製造された多孔性マンガン酸化物でも、前記ナノ気孔の規則的配列と、チャネル形成とが確認された。それらの気孔間の壁を形成する骨格厚を下記表2に示した。
【0132】
【表2】

【0133】
評価例4:充放電実験
前記実施例7ないし12及び比較例5ないし8で製造されたリチウム電池に対し、負極活物質1g当たり100mAの電流で、電圧が0.001V(vs.Li)に至るまで充電し、また同じ電流で、電圧が3V(vs.Li)に至るまで放電した。次に、同じ電流と電圧との区間で、充電及び放電を50回反復した。
【0134】
実施例7及び比較例5のリチウム電池に係わる最初及び2回目のサイクルでの充放電結果を図8に示した。実施例11及び比較例6のリチウム電池に係わる最初及び2回目のサイクルでの充放電結果を図9に示した。実施例12及び比較例7のリチウム電池に係わる最初及び2回目のサイクルでの充放電結果を図10に示した。実施例7ないし12及び比較例5ないし8のリチウム電池の最初のサイクルでの放電容量、初期充放電効率及び容量維持率のうち一部を下記表3に示した。容量維持率は、下記数式1で定義され、初期充放電効率をは、記数式2で定義される。
【0135】
[数1]
容量維持率[%]=[50回目のサイクル放電容量/1回目のサイクル放電容量]×100(ただし、比較例8は、30回目のサイクル放電容量を使用)
【0136】
[数2]
初期充放電効率[%]=[1回目のサイクル放電容量/1回目のサイクル充電容量]×100
【0137】
【表3】

【0138】
図8ないし図10及び前記表3から分かるように、3Vで、比較例5ないし7のリチウム電池の放電容量は、500mAh/g未満であったが、実施例7,8,11,12のリチウム電池の放電容量は、830mAh/g以上であった。特に、実施例7のリチウム電池の放電容量は、Mnの理論放電容量である1,019mAh/gに近接している。
【0139】
また、実施例7,8,11,12のリチウム電池は、比較例5ないし8のリチウム電池に比べ、初期充放電効率及び容量維持率が顕著に向上している。
【0140】
また、図8ないし図10で、実施例7,11,12及び比較例5ないし7の最初のサイクルでの充電プロファイルを、電圧(V)による容量変化率(dQ)に対して図示し、図11ないし図13にそれぞれ示した。
【0141】
図11ないし図13から分かるように、実施例7,11,12は、2.2ないし3V区間でピークが現れたが、比較例5ないし7では、ピークが示されていない。このようなピークの存在は、電気化学的な可逆性の増大を意味する。
【0142】
このような電気化学的な可逆性の増大により、実施例1,5,6のマンガン酸化物が、理論容量に近接する電気容量を発現するのに寄与すると判断される。
【符号の説明】
【0143】
1 リチウム電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップ・アセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的な多孔性マンガン酸化物を含み、
前記マンガン酸化物が、下記化学式1で表示される負極活物質:
[化1]
Mn
前記化学式1で、1≦x≦3、1≦y≦4、2≦x+y≦7、0<y/x<2である。
【請求項2】
前記マンガン酸化物の気孔が、二重サイズ分布を有することを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記気孔が、1nmないし5nm範囲の第1ピーク、及び10nmないし20nm範囲の第2ピークを含むことを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記気孔が、2nmないし5nm範囲の第1ピーク、及び16ないし20nm範囲の第2ピークを含むことを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記多孔性マンガン酸化物の低角X線回折スペクトルで、(110)面に係わるピークが、Bragg2θ角0.6±0.2°で示されることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記多孔性マンガン酸化物の低角X線回折スペクトルで、(110)面に係わるピークと、(221)面に係わるピークとの強度比I(110)/I(221)が、0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記多孔性マンガン酸化物の低角X線回折スペクトルで、(110)面に係わるピークと、(221)面に係わるピークとの強度比I(110)/I(221)が、0.1ないし10であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項8】
前記多孔性マンガン酸化物の骨格厚が、5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項9】
前記多孔性マンガン酸化物の骨格厚が、5nmないし20nmであることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項10】
前記多孔性マンガン酸化物の結晶サイズが、5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項11】
前記多孔性マンガン酸化物の結晶サイズが、5nmないし30nmであることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項12】
前記多孔性マンガン酸化物の気孔体積が、0.1cm/gないし2cm/gであることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項13】
前記多孔性マンガン酸化物の気孔体積が、0.5m/gないし1cm/gであることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項14】
前記多孔性マンガン酸化物の気孔が互いに連結され、チャネルを形成することを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項15】
前記多孔性マンガン酸化物の気孔が、1nmないし20nmの直径を有し、気孔間の壁を形成する骨格が、5nmないし20nmの厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項16】
前記多孔性マンガン酸化物が、MnO、Mn及びMnからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の負極活物質。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16のうち、いずれか1項に記載の負極活物質を含む負極。
【請求項18】
請求項17に記載の負極を採用したリチウム電池。
【請求項19】
負極活物質単位重量当たり放電容量が、800mAh/g以上であることを特徴とする請求項18に記載のリチウム電池。
【請求項20】
前記リチウム電池が、充放電実験の最初の充電サイクルで得られる電圧(V)による充電容量(Q)の変化率(dQ)が、リチウム対比で、2.2ないし3Vの電圧範囲でピークを示すことを特徴とする請求項18に記載のリチウム電池。
【請求項21】
請求項17に記載の負極を採用したキャパシタ。
【請求項22】
多孔性化合物にマンガン前駆体を含む液体を含浸させる段階と、
前記液体が含浸された多孔性化合物を焼成させる段階と、
前記焼成の結果物をエッチング液でエッチングする段階と、を含む負極活物質の製造方法。
【請求項23】
前記多孔性化合物が、シリカ(SiO)、Al、ZnO、MgO、及びそれらの混合物からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項24】
前記マンガン前駆体が、Mn(NO・6HO、Mn(CHCOO)・4HO及びMnCl・4HOからなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項25】
前記液体が、前記マンガン前駆体の溶融物または前記マンガン前駆体を溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項26】
前記焼成段階の焼成温度が、300℃ないし700℃であることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項27】
前記焼成が、酸化性雰囲気または還元性雰囲気で行われることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項28】
前記還元性雰囲気が、窒素、アルゴン、ヘリウム及び水素からなる群から選択された一つ以上のガス雰囲気であることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項29】
前記エッチング液が、フッ酸(HF)、NaOH及びHF−NHFからなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項22に記載の負極活物質の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−16481(P2013−16481A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142806(P2012−142806)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】