説明

貨幣処理装置

【課題】所定期間内に大量の貨幣が出金されることを防止し、金融機関内に保有されている貨幣が不足することを防止すること。
【解決手段】貨幣を両替することができる貨幣処理装置1は、貨幣を出金するための貨幣出金部22,23,35と、貨幣の両替を指示するための入力部61と、所定期間内で出金可能な貨幣の金種に対応した上限数量に関する情報を含む複数の異なる両替設定情報から、所定の条件に応じて、両替設定情報を選択する制御部15と、を備えている。制御部15は、入力部61で両替が指示され、かつ、出金される貨幣の金種毎の数量が選択された両替設定情報の当該金種の上限数量の範囲内である場合に、貨幣出金部22,23,35から貨幣を出金させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入金された貨幣を両替することができる貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金融機関などに設置されている貨幣処理装置として、入金した貨幣を使用者が選択した金種に両替することができる貨幣処理装置が知られている。このような貨幣処理装置によれば、例えば、入金した紙幣を新しい紙幣である新券へ両替することができる。
【0003】
このように、新券へ両替することができる貨幣処理装置の場合、金融機関などが保有している貨幣(例えば新券)の量には限りがあるため、顧客のランクに応じて一取引における新券の出金枚数(払出枚数)を制限することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−190056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、一取引における出金可能な枚数の制限を設定しただけであり、1日に金融機関から出金できる枚数の上限(以下、出金上限枚数とする)が設定されていない。このため、例えば、保有量に限りのある新券の出金取引が1日に大量に行われた場合、1日を通じて大量に新券が出金されてしまい、次の日に必要な新券がなくなってしまうという問題があった。
【0006】
また、金融機関などに設置されている貨幣処理装置の他の例として自動預払機(ATM)がある。この自動預払機では、出金する際に万円紙幣を千円紙幣に両替して出金する、一部両替と言われるものが知られている。この一部両替においても1日に金融機関から出金できる出金上限枚数が設定されていないため、上述した問題と同様に、例えば、一部両替が一日を通じて大量に行われた場合、次の日に必要な千円紙幣がなくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、所定期間内に大量の貨幣が出金されることを防止し、金融機関内に保有されている貨幣が不足することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による貨幣処理装置は、
貨幣を両替することができる貨幣処理装置であって、
貨幣を出金するための貨幣出金部と、
貨幣の両替を指示するための入力部と、
所定期間内で出金可能な貨幣の金種に対応した上限数量に関する情報を含む複数の異なる両替設定情報から、所定の条件に応じて、両替設定情報を選択する制御部と、を備え、
前記制御部が、前記入力部で両替が指示され、かつ、出金される貨幣の金種毎の数量が、選択された両替設定情報の当該金種の上限数量の範囲内である場合に、前記貨幣出金部から貨幣を出金させる。
【0009】
本発明による貨幣処理装置において、
前記両替設定情報の各々は、所定期間内で出金可能な貨幣の形態、金種および上限数量に関する情報を含み、
前記制御部は、前記入力部で両替が指示され、かつ、出金される貨幣の形態における金種毎の数量が、選択された両替設定情報の当該形態における当該金種の上限数量の範囲内である場合に、前記貨幣出金部から貨幣を出金させてもよい。
【0010】
本発明による貨幣処理装置は、
所定情報が記憶されたカードを受け付けるカード受付部と、
前記カード受付部で受け付けられたカードに記憶された前記所定情報を読み取るカード処理部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記カード処理部で読み取った前記所定情報に基づいて顧客の区分を特定し、この特定した顧客の区分を前記所定の条件としてもよい。
【0011】
本発明による貨幣処理装置は、
両替に係る手数料を算出する手数料算出部をさらに備え、
前記制御部は、前記手数料算出部で算出された手数料に加算する追加手数料の徴収を許可する選択がされたことを前記所定の条件としてもよい。
【0012】
本発明による貨幣処理装置において、
複数の前記両替設定情報のうちの少なくとも一部は、前記手数料の額に応じて設定された、貨幣の金種に対応した上限数量に関する情報を含み、当該情報は、前記手数料の額が上がると上限数量が上がる内容からなっていてもよい。
【0013】
本発明による貨幣処理装置において、
前記制御部は、日にちまたは時間帯を前記所定の条件としてもよい。
【0014】
本発明による貨幣処理装置において、
前記制御部は、出金される貨幣の金種毎の数量が、前記所定の条件に係わらず前記所定期間内で出金可能な貨幣の最終上限数量の範囲内である場合にのみ、前記貨幣出金部から貨幣を出金させてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定期間内で出金可能な貨幣の金種に対応した上限数量に関する情報を含む複数の異なる両替設定情報から、所定の条件に応じて、適切な両替設定情報が選択される。そして、出金される貨幣の金種毎の数量が選択された両替設定情報の当該金種の上限数量の範囲内である場合に、貨幣出金部から貨幣を出金させる。このため、所定期間内に大量の貨幣が出金されることを防止し、金融機関内に保有されている貨幣が不足することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態による貨幣両替機を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態による貨幣両替機内の信号伝達を説明するための構成図。
【図3】本発明の実施の形態による貨幣両替機の記憶部に記憶されている、顧客の区分に応じた、所定期間内で出金可能な貨幣の両替形態、金種および上限数量に関する情報を表で示した図。
【図4】本発明の実施の形態による貨幣両替機の記憶部に記憶されている、追加手数料の額に応じた、所定期間内で出金可能な貨幣の両替形態、金種および上限数量に関する情報を表で示した図。
【図5】本発明の実施の形態による貨幣両替機の記憶部に記憶されている、所定期間内で出金可能な貨幣の両替形態、金種および最終上限数量に関する情報を表で示した図。
【図6】本発明の実施の形態による貨幣両替機での処理のフローを示した図。
【図7】本発明の実施の形態の変形例による貨幣両替機の記憶部に記憶されている、日にちまたは時間帯に応じた、所定期間内で出金可能な貨幣の両替形態、金種および上限数量に関する情報を表で示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
以下、本発明に係る貨幣を両替することができる貨幣処理装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図7は本発明の実施の形態を示す図である。なお、本実施の形態では、貨幣処理装置として、以下、貨幣を両替する貨幣両替機1を用いて説明するが、これに限られることはなく、自動預払機(ATM)などであってもよい。
【0018】
図1に示すように、貨幣両替機1は、筐体60と、筐体60に設けられて貨幣を入金するための貨幣入金部21,35と、筐体60に設けられて貨幣を出金するための貨幣出金部22,23,35と、貨幣入金部21,35に入金された貨幣の合計金額の範囲内で、貨幣出金部22,23,35から出金する両替金種、両替形態(形態)および数量、すなわち両替パターンを指定するための操作パネル(入力部)61と、を備えている。
【0019】
このうち、貨幣入金部21,35は、図1に示すように、硬貨を入金するための硬貨入金口21と、紙幣入出金口35と、を有している。他方、貨幣出金部22,23,35は、バラ硬貨を出金するためのバラ硬貨出金口22と、包装硬貨、すなわち棒金を出金するための棒金出金口23と、紙幣を入出金するための紙幣入出金口35とを有している。なお、本願において、貨幣入金部21,35と貨幣出金部22,23,35は別々の部分から構成される必要はなく、同じ部分から構成されてもよい(現に、本実施の形態では、紙幣入出金口35が紙幣を入出金するために用いられている。)。
【0020】
ところで、貨幣両替機1は、図1に示すように、硬貨を処理するための硬貨処理部20と、紙幣を処理するための紙幣処理部30とを備えている。そして、硬貨処理部20が、上述の硬貨入金口21と、バラ硬貨出金口22と、棒金出金口23とを有している。他方、紙幣処理部30が上述の紙幣入出金口35を有している。なお、読み取ることができなかった紙幣や搬送異常を起こした紙幣は、当該紙幣入出金口35から返却されることとなる。また、筐体60には、識別することができなかった硬貨や、入金された貨幣に混入していた異物などを返却する返却口25が設けられている。
【0021】
また、図2に示すように、硬貨処理部20は、硬貨や棒金を計数する計数部26と、バラ硬貨を処理するバラ硬貨処理部28と、棒金を処理する棒金処理部29とを有している。また、紙幣処理部30は、紙幣を計数する計数部36と、新券を処理する新券処理部37とを有している。
【0022】
また、図1に示すように、貨幣両替機1は、カードが挿入されて受け付けられるカード挿入口(カード受付部)41と、カード挿入口41から挿入されたカードに関するデータ処理を行うカード処理部(利用者識別部)45と、行われた処理に基づいて両替金額や両替金種などをレシートに印字するレシート処理部55と、レシート処理部55で印字されたレシートを発行するレシート発行口51と、筐体60に設けられて処理状態を表示する状態表示部62も、備えている。なお、本実施の形態では、利用者識別部としてカード処理部45を用いて説明しているが、これに限られることはなく、例えば、人の指の静脈を認証する静脈認証部などを用いることもできる。
【0023】
また、図2に示すように、貨幣両替機1は、カード処理部45で識別された利用者の情報に基づいて当該利用者の顧客区分を特定する顧客特定部19と、両替に係る手数料を算出する手数料算出部18と、を有する制御部15も備えている。なお、この制御部15はROM16とRAM17も有している。
【0024】
また、図2に示すように、貨幣両替機1は、所定期間内で出金可能な貨幣の金種毎の上限数量(金種に対応した上限数量)に関する情報を含む複数の異なる両替設定情報を設定するための上限設定部10と、このようにして設定された複数の異なる両替設定情報を記憶する記憶部70も、備えている。また、制御部15は、記憶部70に記憶された複数の異なる両替設定情報から、「所定の条件」に応じて、適切な両替設定情報を選択するように構成されている。なお、記憶部70には、顧客の取引履歴、口座情報などの顧客情報と、貨幣両替機1内に収容されている貨幣の数量に関する機内在高情報と、手数料に関する手数料設定情報と、貨幣両替機1内から出金した貨幣の形態毎および金種毎の数量(累積値)などの取引データも記憶されている。また、上限設定部10は、保守やメンテナンスの時に係員が使用する係員操作部11に設けられている。
【0025】
記憶部70に記憶された両替設定情報の各々は、所定期間内で出金可能な貨幣の両替形態(ばら紙幣、新券、ばら硬貨および棒金などの形態)、金種(一円〜一万円までの金種)および上限数量(ばら紙幣、新券およびばら硬貨の枚数と、棒金の本数)に関する情報を含んでいる(図3参照)。そして、制御部15は、操作パネル61で両替が指示され、かつ、出金される貨幣の両替形態における金種毎の数量が、選択された両替設定情報の当該両替形態における当該金種の上限数量の範囲内である場合に、貨幣出金部22,23,35から貨幣を出金させるように制御する。なお、両替設定情報は、必ずしも全ての貨幣の両替形態や金種に対して設定される必要はなく、必要な貨幣の両替形態や金種に対してのみに、両替設定情報が設定される態様であってもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、カード挿入口41に挿入されるカードには利用者を識別するための顧客に関する情報やカード種別情報などからなる所定情報が記憶されており、カード処理部45は当該所定情報を読み取るように構成されている。なお、利用者識別部として静脈認証部を用いる場合には、利用者の静脈に関する情報が顧客に関する情報の一種である顧客特定情報になる。
【0027】
そして、本実施の形態の制御部15の顧客特定部19は、カード処理部45で読み取った顧客に関する情報に基づいて顧客の区分を特定し、この特定した顧客の区分を上述した「所定の条件」とする。
【0028】
具体的には、制御部15は、顧客に関する情報に基づいて、利用者を、一見客/他行客、自行客/一般客、第一優遇顧客および第二優遇顧客の四つの区分で判別する。他方、記憶部70には、一見客/他行客、自行客/一般客、第一優遇顧客および第二優遇顧客の四つに区分された両替設定情報が記憶されている(図3参照)。そして、制御部15は、判別された顧客の区分に基づいて、対応する両替設定情報を選択する。(本実施の形態の「両替設定情報」とは、図3の一行毎の情報のことを意味している。)
【0029】
ところで、利用者が両替専用に金融機関が発行する両替カードを用いて両替する際には、一般客、第一優遇顧客および第二優遇顧客のいずれに区分されるかが、カードに記憶された顧客に関する情報に基づいて、顧客特定部19で判別される。顧客に関する情報とは、例えば、カード自体に記憶された口座在高や両替に関する取引回数などの顧客情報であってもよいし、カード自体に記憶されたカード番号や口座番号などの顧客特定情報でもあってもよい。そして、顧客に関する情報として顧客特定情報を用いる場合には、当該顧客特定情報にひも付けされて記憶部70に記憶された顧客情報が、顧客特定部19によって読み出されて、顧客の区分が判別されることとなる。なお、一般客とは、自店舗に取引口座(普通口座、当座口座など)を有する顧客のことであり、第一優遇顧客とは、自店舗に取引口座を有した上で定期預金などの貯蓄性の高い口座も備えた顧客のことである。また、第二優遇顧客とは、自店舗に取引口座を有した上で定期預金などの貯蓄性の高い口座も備え、両替の頻度や両替額が多い顧客のことである。
【0030】
他方、利用者が口座開設の際に金融機関が発行するキャッシュカードを用いて両替する際には、自行客および他行客のいずれに区分されるかが、カードに記憶されたカード種別情報(例えば、利用されたキャッシュカードが自行のものか他行のものかに関する情報)に基づいて、顧客特定部19で判別される。
【0031】
なお、利用者がカードを用いずに両替する場合には、操作パネル61上のカード無しボタンが利用者によって押下(押圧)されることで、当該利用者は初めて来店する一見客とみなされる。
【0032】
また、本実施の形態の制御部15は、手数料算出部18で算出された追加手数料の徴収を許可する選択がされたことも上述した「所定の条件」とする。より具体的には、記憶部70には、追加手数料に対応した両替設定情報(以下、この両替設定情報のことを追加両替設定情報という。)として、一見客/他行客、自行客/一般客、第一優遇顧客および第二優遇顧客の四つの区分に対応した情報が、追加手数料の額毎に(追加手数料の額に応じて)記憶されている。そして、制御部15は、利用者によって追加手数料の徴収を許可する選択がされたことを確認すると、対応する追加両替設定情報を読み出して選択するように構成されている。
【0033】
なお、追加両替設定情報の各々は、貨幣の両替形態、金種および追加上限数量に関する情報を含んでいる(図4(a)(b)参照)。また、追加両替設定情報に含まれている情報は、追加手数料の額が上がると上限数量が上がる内容からなっている。本実施の形態では、100円の追加手数料を支払った場合には、追加手数料を支払わない場合の2倍の量が両替可能となり(図4(a)参照)、200円の追加手数料を支払った場合には、追加手数料を支払わない場合の3倍の量が両替可能となる(図4(b)参照)。
【0034】
また、上限設定部10は、出金される貨幣の金種毎の数量が「所定の条件」に係わらず所定期間内で出金可能な貨幣の最終上限数量も設定可能となっている。そして、記憶部70には、上限設定部10で設定された最終上限数量が貨幣の両替形態と金種毎に記憶されている(図5参照)。そして、制御部15は、「所定の条件」に係わらず、最終上限数量の範囲内である場合にのみ、貨幣出金部22,23,35から貨幣を出金させるように構成されている。
【0035】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用および効果について説明する。
【0036】
まず、利用者によって、カード挿入口41からカードが挿入されるとともに、操作パネル61で両替を行うことが指示される。その後、カード処理部45によって、カードに記憶された顧客に関する情報やカード種別情報などからなる所定情報(カードデータ)が読み取られる(図6のS11参照)。
【0037】
次に、制御部15の顧客特定部19によって、利用者が、一見客/他行客、自行客/一般客、第一優遇顧客および第二優遇顧客のいずれの区分に属するかが特定され(図6のS12参照)、その後、制御部15によって、判別された区分に基づいて、対応する両替設定情報が選択される(図6のS13参照)。
【0038】
次に、硬貨入金口21や紙幣入出金口35に投入された硬貨や紙幣などの入金貨幣の枚数が、計数部26,36によって金種別に計数される(図6のS14参照)。
【0039】
次に、両替パターンを選択するための画面が操作パネル61に表示されて、利用者によって、操作パネル61を介して両替パターンが選択されて確定される(図6のS15参照)。
【0040】
次に、制御部15によって、記憶部70に記憶された機内在高情報に基づいて選択された両替パターンで出金可能か、判断される(図6のS21参照)。
【0041】
ここで機内在高から選択された両替パターンで出金できないときには、投入された貨幣を返却するかが操作パネル61を介して利用者に問いかけられる(図6のS41参照)。このとき、利用者が貨幣の返却を選択すると投入された貨幣が返却されて(図6のS42参照)、処理が終了する。他方、利用者が貨幣の返却を選択しなければ、再度、両替パターンを選択するための画面が操作パネル61に表示される(図6のS15参照)。
【0042】
上述と異なり、貨幣両替機1の機内在高から両替パターンで出金できるときには、次に、制御部15によって、出金される貨幣の両替形態における金種毎の数量が、顧客区分に基づいて選択された両替設定情報の当該両替形態における当該金種の上限数量の範囲内であるかが判断される(図6のS22参照)。
【0043】
ここで、出金される貨幣の両替形態における金種毎の数量が、顧客区分に基づいて選択された両替設定情報の当該両替形態における当該金種の上限数量の範囲内である(両替形態毎の全金種で上限数量の範囲内になっている)場合には、制御部15の手数料算出部18によって、記憶部に記憶された手数料設定情報に基づいて、手数料が算出される(図6のS23参照)。
【0044】
次に、操作パネル61に算出された両替手数料が表示され(図6のS24参照)、その後、
制御部15によって両替手数料の徴収が確認される(図6のS25参照)。
【0045】
次に、操作パネル61で指定された両替パターンからなる貨幣(両替金)が出金される(図6のS26参照)。
【0046】
次に、制御部15によって、記憶部70に記憶されている機内在高情報と、出金された貨幣の形態毎および金種毎の数量などの取引データが更新される(図6のS27参照)。
【0047】
次に、カード挿入口41に挿入されていたカードが利用者のもとに返却されるとともに、行われた処理内容がレシート処理部55でレシートに印字されて、当該レシートがレシート発行口51から発行される(図6のS28参照)。
【0048】
他方、上述とは異なり、出金される貨幣の両替形態における金種毎の数量が、顧客区分に基づいて選択された両替設定情報の当該両替形態における当該金種の上限数量の範囲外である(両替形態毎の金種のうちの一種類でも上限数量を超える)場合には、次に、制御部15によって、追加両替設定情報の両替形態における金種毎の数量が、最終上限数量の範囲内であるかが判断される(図6のS31参照)。
【0049】
ここで、追加手数料毎のいずれの追加両替設定情報においても、両替形態毎における金種毎の数量が最終上限数量の範囲外である場合には(本実施の形態では100円の追加手数料に対応する追加両替設定情報と200円の追加手数料に対応する追加両替設定情報のいずれにおいても、両替形態毎における金種毎の数量が一種類でも最終上限数量の範囲外である場合には)、投入された貨幣を返却するかが操作パネル61を介して利用者に問いかけられる(図6のS41参照)。このとき、利用者が貨幣の返却を選択すると(図6のS42参照)、投入された貨幣が返却されて処理が終了する。他方、利用者が貨幣の返却を選択しなければ、再度、両替パターンを選択するための画面が操作パネル61に表示される(図6のS15参照)。
【0050】
他方、追加両替設定情報の両替形態毎における金種毎の数量が最終上限数量の範囲内である場合(両替形態毎の全金種で最終上限数量の範囲内になっている場合)には、制御部15によって、操作パネル61を介して、利用者に追加手数料を支払うかが問いかけられる(図6のS32参照)。なお、当該追加手数料は手数料算出部18で算出される。
【0051】
このように、操作パネル61を介して、利用者に追加手数料を支払うかが問いかけられたときに、利用者が追加手数料の徴収依頼を拒否すると、次に、投入された貨幣を返却するかが操作パネル61を介して利用者に問いかけられる(図6のS41参照)。ここで、利用者が貨幣の返却を選択すると(図6のS42参照)、投入された貨幣が返却されて処理が終了する。他方、利用者が貨幣の返却を選択しなければ、再度、両替パターンを選択するための画面が操作パネル61に表示される(図6のS15参照)。なお、利用者が追加手数料の徴収を拒否する際には、操作パネル61に表示された追加手数料の徴収を拒否する旨のボタンが利用者によって押下(押圧)されることになる。
【0052】
他方、利用者が追加手数料の徴収依頼に応じて、制御部15によって追加手数料の徴収を許可する選択がされたことが確認されると、当該制御部15によって対応する追加両替設定情報が読み出されて選択される。なお、利用者が追加手数料の徴収を許可する際には、操作パネル61に表示された追加手数料の徴収を許可する旨のボタンが利用者によって押下(押圧)されることになる。
【0053】
次に、制御部15の手数料算出部18によって追加手数料を含む手数料が算出される(図6のS23参照)。
【0054】
次に、操作パネル61に算出された両替手数料が表示され(図6のS24参照)、その後、制御部15によって両替手数料が徴収されたかが確認される(図6のS25参照)。ここで、両替手数料の徴収が確認されなければ(つまり利用者が両替手数料の徴収を拒否すると)投入された貨幣が返却されて(図6のS42参照)、処理が終了する。他方、両替手数料の徴収が確認されれば、操作パネル61で指定された両替パターンからなる貨幣(両替金)が出金される(図6のS26参照)。
【0055】
次に、制御部15によって、記憶部70に記憶されている機内在高情報と、出金された貨幣の形態毎および金種毎の数量などの取引データが更新される(図6のS27参照)。
【0056】
最後に、カード挿入口41に挿入されていたカードが利用者のもとに返却されるとともに、行われた処理内容がレシート処理部55でレシートに印字されて、当該レシートがレシート発行口51から発行される(図6のS28参照)。
【0057】
上述のように、本実施の形態によれば、所定期間内で出金可能な貨幣の金種毎の上限数量を設定することができるので、所定期間内に大量の貨幣が出金されることを防止し、金融機関内に保有されている貨幣が不足することを防止することができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、条件に応じた両替設定情報を選択することができるので、顧客へのサービス低下を低減することができる。
【0059】
より具体的には、本実施の形態では、特定した顧客の区分を「所定の条件」としており、判別された顧客の区分に基づいて、対応する両替設定情報を選択することができる。このため、利用者が、自行に貢献している顧客の場合には上限数量を多くすることができ、他方、自行に貢献していない一見客や他行の顧客であれば上限数量を少なくすることができる。なお、自行に貢献している顧客の中でも、第二優遇顧客、第一優遇顧客並びに自行客および一般客の順番で、上限数量を多くすることができ、自行への貢献度合いに応じたサービスを提供することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、手数料算出部18で算出された追加手数料の徴収を許可する選択がされたことも「所定の条件」としている。このため、緊急に貨幣(例えば新券)が必要な顧客に対して、両替サービスが低下することを防止することができる。なお、選択される追加両替設定情報は、追加手数料の額が上がると上限数量が上がる内容からなっているので、金融機関に提供される金銭の額に応じたサービスを提供することができる。
【0061】
また、出金される貨幣の両替形態(例えば「棒金」や「新券」)における金種毎の数量が、選択された両替設定情報の当該両替形態における当該金種の上限数量の範囲内である場合に、貨幣が出金される。このため、特に保有量に限りのある新券や棒金が大量に出金されることを防止し、新券や棒金が、突然、不足してしまうことを防止することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態では、「所定の条件」に係わらず、最終上限数量の範囲内である場合にのみ、貨幣出金部22,23,35から貨幣を出金させる。このため、所定期間で、絶対に引き出すことができない貨幣の数量を設定することができ、金融機関が保有する貨幣が必要以上に不足してしまうことを防止することができる。
【0063】
なお、本実施の形態の所定期間は、週単位、日単位、時間単位などで設定することができる。また、このような態様の他に、「カセットに次の貨幣が装填されるまでの間」のような期間でも設定することができる。
【0064】
また、所定期間を、カセット内に最初に入れられている貨幣の数量を基準として設定してもよく、貨幣両替機1の機内在高が所定の在高になるまでを所定期間としてもよい。例えば、カセット内に最初に入れられている貨幣の数量の80%が無くなるまでを所定期間としてもよい。
【0065】
ところで、上限設定部10で設定される上限数量や最終上限数量は、カセット内の貨幣の数量に基づいて設定してもよいし、カセット内の貨幣だけでなく金融機関の金庫内の貨幣の数量も考慮して設定してもよい。
【0066】
[変形例]
上記では、特定した顧客の区分、および、手数料の徴収を許可する選択がされたことが、「所定の条件」となっている態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、例えば、日にちまたは時間帯を「所定の条件」としてもよい。以下、このような態様からなる変形例について説明する。
【0067】
まず、日にちを「所定の条件」とした態様について説明する。
【0068】
このような態様における制御部15は、日にちが平日であるか休日であるかを判別することができるように構成されている。他方、記憶部70には、日にちが平日であるか休日であるかによって区分された両替設定情報が記憶されている(図7参照)。そして、制御部15は、判別された日にちに基づいて、対応する両替設定情報を選択する。
【0069】
次に、時間帯を「所定の条件」とした態様について説明する。
【0070】
このような態様における制御部15は、時間帯が営業時間内であるか営業時間外であるかを判別することができるように構成されている。他方、記憶部70には、時間帯が営業時間内であるか営業時間外であるかによって区分された両替設定情報が記憶されている(図7参照)。そして、制御部15は、判別された時間帯に基づいて、対応する両替設定情報を選択する。
【0071】
本変形例によれば、日にちや時間帯に応じて、貨幣の上限数量を選択することができる。このため、その日にちや時間帯に適した数量、すなわち補充を行う頻度や利用者が両替を利用する頻度などを考慮した数量を上限数量とすることができ、その都度、上限数量の設定を変更する手間を省くことができる。
【0072】
なお、上述した変形例では、日にちで区分する態様と時間帯で区分する態様とを別々に用いて説明したが、これに限られることはなく、日にちと時間帯の両方の情報を用いて区分してもよい。この場合には、例えば、平日かつ営業時間、平日かつ営業時間外および休日の3つに分類することができ、より適切な数量を上限数量とすることができる。
【0073】
ところで、上述した実施の形態と変形例を組み合わせてもよく、この場合には、記憶部70に、日にちや時間帯毎に顧客区分が記憶されることとなる。そして、制御部15が、記憶部70に記憶された日にちや時間帯毎の顧客区分を選択する。
【0074】
より具体的には、例えば、記憶部70には、平日かつ営業時間、平日かつ営業時間外および休日の3つの分類毎に、一見客/他行客、自行客/一般客、第一優遇顧客および第二優遇顧客の四つの区分の両替設定情報が記憶されている。(このため、3×4=12種類の両替設定情報が記憶部70に記憶されていることになる。)そして、制御部15が、この12種類の両替設定情報から、日にち、時間帯および顧客区分に応じた適切な両替設定情報を選択する。
【0075】
なおこの場合において、追加両替設定情報は、追加手数料毎(100円の追加手数料と200円の追加手数料毎)に、日にち、時間帯および顧客区分に応じた12種類の情報を含むことになってもよい。
【0076】
このような態様によれば、金融機関内に保有されている貨幣が不足することをさらに確実に防止することができるとともに、詳細な条件に応じて、顧客へのサービス低下をより確実に低減することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 上限設定部
15 制御部
18 手数料算出部
19 顧客特定部
21 硬貨入金口
22 バラ硬貨出金口
23 棒金出金口
35 紙幣入出金口(紙幣返却口)
41 カード挿入口(カード受付部)
45 カード処理部(利用者識別部)
51 レシート発行口
55 レシート処理部
60 筐体
61 操作パネル
70 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を両替することができる貨幣処理装置において、
貨幣を出金するための貨幣出金部と、
貨幣の両替を指示するための入力部と、
所定期間内で出金可能な貨幣の金種に対応した上限数量に関する情報を含む複数の異なる両替設定情報から、所定の条件に応じて、両替設定情報を選択する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記入力部で両替が指示され、かつ、出金される貨幣の金種毎の数量が、選択された両替設定情報の当該金種の上限数量の範囲内である場合に、前記貨幣出金部から貨幣を出金させることを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記両替設定情報の各々は、所定期間内で出金可能な貨幣の形態、金種および上限数量に関する情報を含み、
前記制御部は、前記入力部で両替が指示され、かつ、出金される貨幣の形態における金種毎の数量が、選択された両替設定情報の当該形態における当該金種の上限数量の範囲内である場合に、前記貨幣出金部から貨幣を出金させることを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
所定情報が記憶されたカードを受け付けるカード受付部と、
前記カード受付部で受け付けられたカードに記憶された前記所定情報を読み取るカード処理部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記カード処理部で読み取った前記所定情報に基づいて顧客の区分を特定し、この特定した顧客の区分を前記所定の条件とすることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
両替に係る手数料を算出する手数料算出部をさらに備え、
前記制御部は、前記手数料算出部で算出された手数料に加算する追加手数料の徴収を許可する選択がされたことを前記所定の条件とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
複数の前記両替設定情報のうちの少なくとも一部は、前記手数料の額に応じて設定された、貨幣の金種に対応した上限数量に関する情報を含み、当該情報は、前記手数料の額が上がると上限数量が上がる内容からなっていることを特徴とする請求項4に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、日にちまたは時間帯を前記所定の条件とすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、出金される貨幣の金種毎の数量が、前記所定の条件に係わらず前記所定期間内で出金可能な貨幣の最終上限数量の範囲内である場合にのみ、前記貨幣出金部から貨幣を出金させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の貨幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197906(P2011−197906A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62749(P2010−62749)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】