説明

貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム

【課題】GPSを利用した従来の車両運行管理システムでは、軌道車両毎に航法のための装置を設置するので、複数の機関車に加えて、多数の台車や貨車に同様な構成を採用すると非常に高価なシステムとなってしまう。
【解決手段】本発明では、センター側管理装置7と、機関車8毎に設置した移動側管理装置9と、構内配線1に沿って設定した複数のチェックポイント10に設置したICタグ読取装置11を要素として、これらの間で通信可能に構成し、移動側管理装置にはGPSによる他律航法とマップマッチング機能を有する自律航法を実行可能な航法手段13とICタグ読取手段14と、表示手段を設置すると共に、ICタグ読取手段により読取可能なICタグ16aを、チェックポイントに設置し、ICタグ読取装置により読み取り可能なICタグ16bを台車・貨車17に設置した貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道の貨物ターミナル駅等の構内において、構内配線の軌道上を走行する軌道車両、即ち、機関車、台車及び貨車の動静を管理するための軌道車両動静管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の貨物ターミナル駅等の構内において軌道車両の位置情報等を検出して動静を管理するシステムにGPS(衛星航法システム)を利用する場合、構内には高い建物があったり、車両よりも高い位置に配管等が架設されていて、上空の見通しが悪く、GPS信号をGPSアンテナで受信することが困難な場所があることが予想され、GPSのみを利用して位置情報を得るシステムでは、位置情報をリアルタイムに常時確実に得ることが困難である。
【0003】
そこで、従来から提案されているGPSを利用して車両の運行を管理するシステムにおいては、GPSによる他律航法と、モーションセンサ等を利用した自律航法とを併存して行うようにすることも提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、車両側で地上に敷設した物体感知器より電波信号を受信して車両が定点位置を通過したことを検出すると共に、GPS衛星からの電波信号により車両の現在位置を連続的に検出し、これらの情報を無線によりセンターへ送信して、予め登録されている線路地図データと、定点位置情報から車両が走行中の線路区間を算出し、更に車両から送られてきた連続位置情報から線路区間内に限定して車両の現在位置を補正して、表示を行うことで鉄道の運行管理を行うシステムが記載されている。また特許文献2には、複数の鉄道車両からなる列車に複数のGPSアンテナを分散配置して、列車全体の在線位置と向きを検出するシステムが記載されている。一方、特許文献3には、距離センサと角度センサを用いた自律航法とGPSによる他律航法が持つ弱点を互いに補完して、簡易な方法により車載用のナビゲーションを正確に行うようにしたシステムが記載されている。
【特許文献1】特開2003−81093号公報
【特許文献2】特開2004−168216号公報
【特許文献3】特開2005−9970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1や特許文献2等に示されるように、GPSを利用した従来の車両運行管理システムでは、アンテナと受信機等から成るGPSによる他律航法のための装置やICタグ読取装置等の位置検出装置を、車両毎に設けることを前提としている。
【0006】
しかしながら本発明が対象とする鉄道の貨物ターミナル駅等の構内において、構内配線の軌道上を走行する軌道車両は、複数の機関車に加えて、多数の台車や貨車があるため、これらの軌道車両毎に上述した航法のための装置を設置するのでは、非常に高価なシステムとなってしまうという課題がある。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決することを目的の一つとすると共に、機器が高価なシステムを用いずにGPSの精度を向上することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明では、管理センターに設置したセンター側管理装置と、機関車毎に設置した移動側管理装置と、例えば、構内配線のポイント近傍と、管理を行うゾーン対応個所等の、構内配線に沿って設定した複数のチェックポイントに設置したICタグ読取装置とを要素とし、これらの要素に通信手段を設けて、センター側管理装置と、移動側管理装置及びICタグ読取装置との間で通信可能に構成し、機関車の移動側管理装置には、GPSによる他律航法と、マップマッチング機能を有する自律航法を実行可能な航法手段と、ICタグ読取手段と、現在位置関係表示手段を設置すると共に、このICタグ読取手段により読取可能なICタグを、上記ICタグ読取装置の近傍に設置し、また上記ICタグ読取装置により読み取り可能なICタグを台車と貨車に設置した構成の貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムを提案する。
【0009】
また本発明では、上記の構成において、センター側管理装置と、移動側管理装置及びICタグ読取装置との通信手段は、無線LANとして構成し、その中継装置を構内の複数個所に設置した貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムを提案する。
【0010】
また本発明では、上記の構成において、GPSによる他律航法は、DGPS方式により行う構成とし、DGPS基地局を構内に設置し、DGPS補正信号の中継装置を構内の複数個所に設置した貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムを提案する。
【0011】
また本発明では、上記の構成において、GPSによる他律航法は、DGPS方式により行う構成とし、DGPS基地局を構内に設置し、DGPS補正信号と無線LANの信号を中継する中継装置を構内の複数個所に設置した貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムを提案する。
【0012】
また本発明では、上記の構成において、複線が隣接する区間において、夫々の線に対応するICタグ読取装置を、線路の長さ方向にずらして線間に設置する貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムを提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、機関車は構内配線を走行する際、自体に設置した移動側管理装置に設けた航法手段により位置情報を得て、その位置を現在位置関係表示手段に表示すると共に、位置情報は、通信手段により、管理センターに設置したセンター側管理装置に送信する。
【0014】
この際、移動側管理装置の航法手段は、機関車の位置が必要数のGPS衛星からの信号を良好に受信できている場合には、GPSによる他律航法で位置情報を求め、一方、高い建物や配管等によりアンテナが遮られて、必要数のGPS衛星からの信号を良好に受信できない場合には、マップマッチング機能を有する自律航法により位置情報を求める。
【0015】
更に、移動側管理装置に設けたICタグ読取手段により、チェックポイントに設置しているICタグの情報を読み取ることにより、機関車がチェックポイントに至ったことを検出することができ、この検出信号により、航法手段で求められた位置情報を補正することができる。
【0016】
センター側管理装置には、通信手段を介して、複数の機関車の夫々から位置情報が収集され、管理用のデータ表示手段に各機関車の位置が表示される。またセンター側管理装置から各機関車に、通信手段を介して、他の複数の機関車の位置情報が送信され、機関車側では移動側管理装置の現在位置関係表示手段に、自体の位置と共に、他の複数の機関車の位置関係が表示される。
【0017】
一方、台車や貨車については、機関車に連結されて走行している場合には、チェックポイントに至った際に、チェックポイントに設置されているICタグ読取装置が台車や貨車に設置されているICタグの情報を読み取ることにより、ICタグに記録された情報により特定される台車や貨車が当該チェックポイントを通過したことを検出することができ、検出されたICタグの情報は、通信手段を介してICタグ読取装置から管理センターのセンター側管理装置に送信される。一方、台車や貨車が機関車から分離された場合においては、直近と、その前に台車や貨車のICタグを検出したICタグ読取装置を特定することにより、台車や貨車の現在位置を、夫々のICタグ読取装置を設けているチェックポイントに対応するゾーン内として特定することができる。
【0018】
こうしてセンター側管理装置においては、各機関車のリアルタイムの位置情報に加えて、センター側管理装置との通信手段を有していない台車や貨車の位置情報も収集することができ、これらをデータ表示手段に表示することにより、輻輳や繰り返しのない的確な車両の管理を行うことができる。
【0019】
データ表示手段における機関車、台車及び貨車の表示は、構内配線図の表示中に、機関車、台車及び貨車に対応する表示を重畳することにより行うことができ、この際、機関車、台車及び貨車は、長さを持った形状により表示を行うことができる。また、機関車に連結状態の台車及び貨車の表示は、走行している機関車のリアルタイムの表示と共に移動させた表示とすることができる。
【0020】
センター側管理装置と、移動側管理装置及びICタグ読取装置との通信手段は、無線LANとして構成することにより、配線を不要とし、ランニングコストを実質的に発生させない。またその中継装置を構内の複数個所に設置することにより、通信距離の短縮化を図ることができるため、通信に要する電力が低減され、移動側管理装置及びICタグ読取装置の通信手段には、小電力の通信機を設置すれば良いのでコストの低減が図れる。また構内の建物等が通信の障害になることも防ぐことができ、走行中の機関車の移動側管理装置とセンター側管理装置との通信を常時良好に行うことができる。
【0021】
GPSによる他律航法は、DGPS基地局を構内に設置して、DGPS方式により行う構成とすれば、RTK−GPS方式と比較して、安価で高精度のGPS測位を利用することができ、DGPS補正信号の中継装置を構内の複数個所に設置することにより、上述と同様に通信距離の短縮化を図ることができるため、通信に要する電力が低減され、この点においても移動側管理装置の通信手段には、小電力の通信機を設置すれば良いのでコストの低減が図れる。また構内の建物等が通信の障害になることを防いで、走行中の機関車の移動側管理装置によるDGPS補正信号の受信を常時良好に行うことができる。
【0022】
無線LANの中継装置と、DGPS補正信号の中継装置は、同一場所に設置することができる。
【0023】
複線が隣接する区間において、夫々の線に対応するICタグ読取装置を、線路の長さ方向にずらして線間に設置することにより、それらのICタグ読取装置の干渉による通信エラーを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明に係る軌道車両動静管理システムの実施の形態を添付図面を参照して説明する。
まず図1は本発明に係る軌道車両動静管理システムを適用した貨物ターミナル駅等の構内の構成を構内配線図と共に模式的に表した説明図である。
図に示すようにこの構内の配線は、概ね、複線1a,1bが隣接する複線線路により構成されている。符号2は構内配線に設けられているポイントを示すものであり、符号2uは複線が分岐するポイント、2vはダブルクロッシングのポイント、2wはシングルクロッシングのポイントを示すものである。また図中符号3は管理センター、4はDGPS基地局、5a,5b,5c,…は中継装置を示すものである。更に図中破線を並記している線路は、予備的に用いる側線6を示すものである。
【0025】
図2は本発明に係る軌道車両動静管理システムの構成を模式的に表した系統説明図であり、このシステムは、管理センター3に設置したセンター側管理装置7と、機関車8毎に設置した移動側管理装置9と、構内配線1に沿って設定した複数のチェックポイント10a,10b,10c,10d,…に設置したICタグ読取装置11を要素としている。この実施の形態では、チェックポイント10は、構内配線1のポイント2の近傍と、管理を行うゾーン対応個所、この場合、線路のセクション毎に構成している。符号を付しているチェックポイント10a,10b,10cはポイント2の近傍に対応するもので、またチェックポイント10d,10eはセクションに対応して設定したものである。
【0026】
以上の各要素に通信手段12a,12b,12cを設けて、センター側管理装置7と、移動側管理装置9及びICタグ読取装置11との間で通信可能に構成している。この実施の形態においては、通信手段12a,12b,12cは、無線LAN装置を用いている。また機関車8の移動側管理装置9には、GPSによる他律航法と、マップマッチング機能を有する自律航法を実行可能な航法手段13と、ICタグ読取手段14と、現在位置関係表示装置15を設けており、このICタグ読取手段14により読取可能なICタグ16aを、上記チェックポイント10に設置している。そして台車・貨車17には、上記各チェックポイント10に設置したICタグ読取装置11により読み取り可能なICタグ16bを台車・貨車17に設置してシステムを構成している。
【0027】
図2に示すように管理センター3のセンター側管理装置7には、概ね、上述した通信手段12aに加えて、センターデータ収録装置18、データ表示装置19及び指示情報入力装置20を有しており、これらはコンピュータ応用装置として構成することができる。
【0028】
一方、機関車8の移動側管理装置9には、上述した要素に加え、航法手段13として、GPSアンテナとGPS受信機等を要素とするGPS装置21と、モーションセンサーやマップ記録手段等を備え、マップマッチング機能を有する自律航法装置22とロータリーエンコーダー23を設けており、そしてこれらからのデータを収集するデータ収録送受信装置24を設けている。
【0029】
図3は機関車の側面図、図4は平面図であり、この実施の形態では、機関車8の屋根の四隅の夫々にGPSアンテナ25を設置しており、これらの4つのGPSアンテナ25を用いて測位を行うことにより、測位の精度を向上させている。また機関車8には、自律航法装置22の要素として、三軸加速度センサ、三軸角速度センサ、三軸角磁界センサ等のセンサを設置している。また屋根には、上記中継装置5a,5b,5c,…及びセンター側管理装置7と通信を行うためのアンテナ26を設置しており、このアンテナは無線LANの信号と、DGPS補正信号に対応させている。また上述したとおり、中継装置5a,5b,5c,…は、無線LANの信号の中継機能とDGPS補正信号の中継機能の両者を持たせることができる。
【0030】
次に図5は、複線1a,1bが隣接して複線線路により構成されている構内配線において、各チェックポイント10におけるICタグ読取装置11の設置構成の実施の形態を示すものである。図5において線路1aは走行線、1bは側線6であり、それらの線路1a,1bの夫々の近傍にICタグ読取用アンテナ27a,27bを立設している。例えば線路1a,1bの線路中心距離が6m、台車・貨車17の接触限界3.5m、台車・貨車17間の間隔1.75mとし、ICタグ読取用アンテナ27a,27bと台車・貨車17に設置したICタグ16bとの読取距離間隔が最大50cmとすると、線路1b側の台車・貨車17に設置されたICタグ16bと、線路1a側の台車・貨車17に設置されたICタグ16bとの間隔は3m以上となるので、夫々の線路1a,1bに対応したICタグ読取用アンテナ27a,27bにより、他の線路1b,1a側に位置する台車・貨車17に設置したICタグ16bが反応してしまう誤動作を防止することができる。
【0031】
一方、図6に示すように、線路1a,1bに対応するICタグ読取用アンテナ27a,27bを背向させて、線路1a,1b間に設置する場合には、図7に示すように線路1a,1bの長さ方向に対応する位置を揃えずに、図8に示すように線路1a,1bの長さ方向にずらすことにより、夫々のICタグ読取用アンテナ27a,27bの干渉による通信エラーを防止することができる。
【0032】
以上の構成において、機関車8は構内配線の線路1a,1bを走行する際、自体に設置した移動側管理装置9に設けた航法手段13により、自体の位置情報を得て、その位置を現在位置関係表示装置15に表示する。また自体の位置情報は、通信手段12b,12aを介して管理センター3に設置したセンター側管理装置7に送信する。
【0033】
機関車8の移動側管理装置9の航法手段13は、機関車8の位置が必要数のGPS衛星からの信号を良好に受信できている場合には、GPSによる他律航法で位置情報を求め、一方、高い建物や配管等によりGPSアンテナが遮られて、必要数のGPS衛星からの信号を良好に受信できない場合には、マップマッチング機能を有する自律航法装置22により位置情報を求める。
【0034】
このようにGPSによる他律航法と、モーションセンサーやマップマッチング手段等を用いた自律航法を組み合わせて途切れのない測位を行う手法自体は、例えば上述した特許文献1や特許文献2に示されるような手法や、いわゆるカーナビゲーションシステムに用いられる適宜の手法を利用することができる。
【0035】
機関車8が走行してチェックポイント10に至ると、移動側管理装置9に設けたICタグ読取手段14により、チェックポイント10のICタグ読取装置11と共に設置されているICタグ16aの情報を読み取ることができ、従って機関車がICタグ16aの情報によって特定されるチェックポイント10に至ったことを検出することができ、この検出信号により、航法手段13で求められた位置情報を補正することができる。このような補正の手法も、従来のナビゲーションシステムにおいて用いられている適宜の手法を利用することができる。
【0036】
このようにしてセンター側管理装置3には、通信手段12b,12aを介して、複数の機関車8の夫々から位置情報が収集され、管理用のデータ表示装置19に各機関車8の夫々位置が表示される。
【0037】
一方、センター側管理装置7から各機関車8の移動側管理装置9に、通信手段12a,12bを介して、他の複数の機関車8の位置情報が送信されるので、機関車8側では移動側管理装置9の現在位置関係表示装置15に、自体の位置と共に、他の複数の機関車8の位置関係が表示される。
【0038】
一方、台車・貨車17については、機関車8に連結されて走行している場合には、各チェックポイント10に至った際に、各チェックポイント10に設置されているICタグ読取装置11が台車・貨車17に設置されているICタグ16bの情報を読み取り、その情報は、通信手段12c,12aを介して管理センター3のセンター側管理装置7に送信される。
【0039】
こうしてセンター側管理装置7においては、ICタグ読取装置11から送信された、ICタグ16bに記録された情報により特定される台車・貨車17が、送信元のICタグ読取装置11から特定されるチェックポイント10を通過したことを検出することができる。
【0040】
一方、台車・貨車17が機関車8から分離された場合においては、直近と、その前に台車・貨車のICタグ16bを検出したICタグ読取装置11を特定することにより、台車・貨車17の現在位置を、ICタグ読取装置11を設けている夫々のチェックポイント10に対応するゾーン内として特定することができる。こうして、台車・貨車17は、走行していない場合においても、センター側管理装置7においてゾーン管理を行うことができる。
【0041】
こうしてセンター側管理装置7においては、各機関車8からの、そのリアルタイムの位置情報に加えて、センター側管理装置7との通信手段を有していない台車・貨車17の位置情報も収集することができ、これらをデータ表示装置19に表示することにより、輻輳や繰り返しのない的確な車両の管理を行うことができる。
【0042】
データ表示装置19における機関車8と台車・貨車17の表示は、構内配線図の表示中に、機関車8と台車・貨車17に対応する表示を重畳することにより行うことができ、この際、機関車8と台車・貨車17は、長さを持った形状により表示を行うことができる。また機関車8に連結状態の台車・貨車17の表示は、走行している機関車8のリアルタイムの表示と共に移動させた表示とすることができる。
【0043】
センター側管理装置7と、各機関車8の移動側管理装置9及びICタグ読取装置11との通信手段12a,12b,12cは、無線LANとして構成することにより、配線を不要とし、ランニングコストを実質的に発生させない。
【0044】
また無線LANの中継装置5a,5b,5c,…を、子局として、構内の複数個所に設置することにより、通信距離の短縮化を図ることができるため、通信に要する電力が低減され、移動側管理装置9及びICタグ読取装置11の通信手段12b,12cには、小電力の通信機を設置すれば良いのでコストの低減が図れる。また構内の建物等が通信の障害になることも防ぐことができ、走行中の機関車8の移動側管理装置9とセンター側管理装置7との通信を常時良好に行うことができる。
【0045】
一方、本発明において、GPSによる他律航法は、DGPS基地局4を構内に設置して、DGPS方式により行う構成とすれば、RTK−GPS方式と比較して、安価で高精度のGPS測位を利用することができる。
【0046】
そしてこの場合においても、DGPS補正信号の中継装置5a,5b,5c,…を構内の複数個所に設置することにより、上述と同様に通信距離の短縮化を図ることができるため、通信に要する電力が低減され、この点においても移動側管理装置9の通信手段12bには、小電力の通信機を設置すれば良いのでコストの低減が図れる。また構内の建物等が通信の障害になることを防いで、走行中の機関車8の移動側管理装置9によるDGPS補正信号の受信を常時良好に行うことができる。
【0047】
実施の形態においては、無線LANの中継装置と、DGPS補正信号の中継装置を同一場所に設置しているが、場合によっては、これらを別に設置することもできる。
【0048】
また無線LANの中継装置5a,5b,5c,…は、センター側管理装置7と、各機関車8の移動側管理装置9及びICタグ読取装置11との通信の中継機能に加えて、演算機能を持たせ、センター側管理装置7と移動側管理装置9の処理負荷の低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述したとおり本発明に係る貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムでは、GPSによる他律航法と、マップマッチング機能を有する自律航法を実行可能な航法手段は、機関車のみに設置し、台車や貨車には、ICタグを設置して、これをチェックポイントに設けたICタグ読取装置により読み取ることにより位置情報を得るようにしているので、軌道車両毎に航法のための装置を設置する従来のシステムと比較して、システムを非常に安価に構成することができるという特徴がある。
【0050】
更に、センター側管理装置と、移動側管理装置及びICタグ読取装置との通信手段は、無線LANとして構成することにより、配線を不要とし、ランニングコストを実質的に発生させない。またその中継装置を構内の複数個所に設置することにより、通信距離の短縮化を図ることができるため、通信に要する電力が低減され、移動側管理装置及びICタグ読取装置の通信手段には、小電力の通信機を設置すれば良いのでコストの低減が図れるという特徴がある。
【0051】
更に、GPSによる他律航法は、DGPS基地局を構内に設置して、DGPS方式により行う構成とすることにより、RTK−GPS方式と比較して、安価で高精度のGPS測位を利用することができ、またDGPS補正信号の中継装置を構内の複数個所に設置することにより、上述と同様に通信距離の短縮化を図ることができるため、通信に要する電力が低減され、この点においても移動側管理装置の通信手段には、小電力の通信機を設置すれば良いのでコストの低減が図れ、また構内の建物等が通信の障害になることを防いで、走行中の機関車の移動側管理装置によるDGPS補正信号の受信を常時良好に行うことができるという特徴がある。
【0052】
本発明は以上のような数々の特徴を有するものであり、貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システムとして非常に産業上の利用可能性が大である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る軌道車両動静管理システムを適用した貨物ターミナル駅等の構内の構成を構内配線図と共に模式的に表した説明図である。
【図2】本発明に係る軌道車両動静管理システムの構成を模式的に表した系統説明図である。
【図3】本発明を適用した機関車の側面図である。
【図4】本発明を適用した機関車の平面図である。
【図5】ICタグ読取装置の設置構成の実施の形態を示す正面図である。
【図6】ICタグ読取装置の設置構成の他の実施の形態を示す正面図である。
【図7】ICタグ読取装置の設置構成の例を示す平面図である。
【図8】ICタグ読取装置の設置構成の実施の形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0054】
1(1a,1b) 線路(構内配線)
2(2u,2v,2d) ポイント
3 管理センター
4 DGPS基地局
5(5a,5b,5c,…) 中継装置
6 側線
7 センター側管理装置
8 機関車
9 移動側管理装置
10a,10b,10c,10d,… チェックポイント
11 ICタグ読取装置
12a,12b,12c,12c,… 通信手段
13 航法手段
14 ICタグ読取手段
15 現在位置関係表示装置
16a,16b ICタグ
17 台車・貨車
18 センターデータ収録装置
19 データ表示装置
20 指示情報入力装置
21 GPS装置
22 自律航法装置
23 ロータリーエンコーダー
24 データ収録送受信装置
25 GPSアンテナ
26 アンテナ
27a,27b ICタグ読取用アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理センターに設置したセンター側管理装置と、機関車毎に設置した移動側管理装置と、構内配線に沿って設定した複数のチェックポイントに設置したICタグ読取装置を要素とし、これらの要素に通信手段を設けて、センター側管理装置と、移動側管理装置及びICタグ読取装置との間で通信可能に構成し、機関車の移動側管理装置には、GPSによる他律航法と、マップマッチング機能を有する自律航法を実行可能な航法手段と、ICタグ読取手段と、現在位置関係表示手段を設置すると共に、このICタグ読取手段により読取可能なICタグを、上記チェックポイントに設置し、また上記ICタグ読取装置により読み取り可能なICタグを台車と貨車に設置したことを特徴とする貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム。
【請求項2】
チェックポイントは、構内配線のポイント近傍と、管理を行うゾーン対応個所に設定したことを特徴とする請求項1に記載の貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム。
【請求項3】
センター側管理装置と、移動側管理装置及びICタグ読取装置との通信手段は、無線LANとして構成し、その中継装置を構内の複数個所に設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム。
【請求項4】
GPSによる他律航法は、DGPS方式により行う構成とし、DGPS基地局を構内に設置し、DGPS補正信号の中継装置を構内の複数個所に設置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム。
【請求項5】
GPSによる他律航法は、DGPS方式により行う構成とし、DGPS基地局を構内に設置し、DGPS補正信号と無線LANの信号を中継する中継装置を構内の複数個所に設置したことを特徴とする請求項3に記載の貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム。
【請求項6】
複線が隣接する区間において、夫々の線に対応するICタグ読取装置を、線路の長さ方向にずらして線間に設置することを特徴とする請求項1又は2に記載の貨物ターミナル駅等の構内における軌道車両動静管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−100239(P2010−100239A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275445(P2008−275445)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(501404804)住友金属物流株式会社 (13)
【出願人】(505378714)株式会社アーク・ジオ・サポート (4)
【Fターム(参考)】