説明

貨物及び物品の能動的非侵入性検査及び確認を行うシステム及び方法

貨物の非侵入性検査及び確認を行うためのシステム及び/又は方法を開示する。代表的な一実施形態では、元素シグネチャーを供給チェーンの第1地点で特定し、該供給チェーンの第2地点に送信する。物品が第2地点に到着すると、該物品の元素シグネチャーを測定し、元々の元素シグネチャーに対して確認できる。別の実施形態では、元素シグネチャーを測定して物品の起点を確認したり物品を識別したりできる。幾つかの実施形態では、こうした元素シグネチャーは発送済み物品及び/又は梱包材料に固有とする。他の実施形態では、元素シグネチャーは発送品にタグ物質として付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、2005年11月9日付けで提出された米国特許仮出願第60/734,915号の優先権を主張し、その米国仮出願は参照して本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、貨物及び/又は物品を確認するための能動的な非侵入性検査技術を用いたシステム及び方法に関わる。
【背景技術】
【0003】
背景情報
製造物、原材料、機器、貯蔵品、補給品、及び様々な他の物品は、陸路、空路、海路、或いは宇宙空間さえも介して世界中に日常的に発送されている。こうした物品は、貨物専用コンテナなどの密封容器に入れて輸送されることが多い。こうした容器の内容物を識別且つ/又は確認するための効果的な手段への必要性は、それらを輸送又は取り扱う関係者には政府や民間企業を問わず重要な問題である。次に例を挙げる。
・税関や法執行当局は、禁制品、麻薬、及び爆発物又は核物質などのテロの脅威を検出し、阻止したいと望むことがある。
・商品の受領者は、正しい物品が配達されたかを確認したいときがある。
・出荷者は、物品が安全且つ正しく輸送され、保管されていることを徹底したいことがある。
・生産者及び購入者は、受領した物品が正しい物品であり且つ偽造品でないことを確かめたいことがある。
【0004】
物品の識別及び確認が最重要である場合がこれ以外にもあり、それらは当業者であれば容易に理解するはずである。しかし、こうした識別及び確認は、次のような様々な要因によりコスト的に見合わないか、実際的でないなどの困難さを伴うことがある。
・人手による検査での内容物確認はコスト高であり、物品の出荷に実用的でないほどの遅れを生じることがある。
・容器の開梱や破壊を必要とする破壊的技法による確認は実用的でない場合がある。
・容器はいたずら防止手段がとられていたり、開梱不可能か困難となっていたりすることがある。
・確認が望ましい物品が容器内部の深くに埋もれていたり、そこまで到達したりするのが困難である場合がある。
・物品を取り巻く環境が人手による検査は危険か不適切であることがある。
【0005】
上述のシナリオや、当業者なら理解可能な他のシナリオでは、容器の内容物を識別且つ/又は確認するには非破壊的且つ非侵入性の手段を用いるのが好ましいことがある。
【0006】
あらゆる物流において、一般に起点(生産者、製造者、発送者など)と、運送経路(梱包、発送、転送、一時保管、受け取りなどを含みうる)と、税関検査所、購入者、又はエンドユーザなどの受取人による送達品受け取りによって示される終点とを含む供給チェーンが存在する。物品を識別するための非侵入性手段は、この供給チェーンにおける多数の点で有用となりうる。現時点で、上述のような理由によって、供給チェーンにおける多数地点で物品の起点、質、及び他の特徴を確かめる実用に供し得る方法が存在しない場合がある。更に、多くの場合は、目視検査又は他の現在使用されている分析方法では本物と模造品とを区別できないことがある。
【0007】
発明の概要
我々は、発送された物品の容器、梱包、封入容器、包装、又は他の封入材料を開くことなく、当該物品の非侵入性識別及び/又は確認を行うシステム及び方法を開発した。本明細書に記載したシステム及び方法は、物品の発送を含む業務のコストや時間を実用的でなくなるほど増大させることなく供給チェーンの安全を向上させうる。
【0008】
我々が開発したシステム及び方法の利点は、これらによって供給チェーンの関係者が真正且つ正しい物品を確実に発送且つ/又は受け取ることができる点である。更に、容器の開梱は物品の流れを実用的でなくなるほど遅らせて取引のコスト及び時間を増大させてしまうが、開示したシステム及び方法により、上記は容器又は封入容器を開梱することなく可能である。本明細書に記載したシステム及び方法によれば、供給チェーンの関係者は、容器の内容物がいたずらされておらず、物品の状態が改変されていないことを確認できる。本明細書に記載されているシステム及び方法は、容器の内容物の詳細を識別でき且つ与えることができる元素シグネチャーを使用する。後述するように、この元素シグネチャーは容器及び/又はその内容物に固有としてもよいし、製造時、梱包後、或いは供給チェーンの後の地点で容器又はその内容物に塗布又は付加してもよい。
【0009】
状況によっては、供給チェーンの関係者に容器の内容物を開示しなくても、発送品が真正で全く改変されていないことを該関係者が証明できるだけの情報があるのが望ましいことがある。例えば、内容物を開示することなくこうした確認ができることで、軍事、外交又は他の秘密若しくは機密状況で有利となりうる。これらの場合、後述するように、必ずしも内容物を記述し或いは内容物の識別を可能とすることなく、容器及び/又はその内容物の存在を確証する元素シグネチャーを用いればよい。こうした元素シグネチャーを用いて、具体的な記述語なしで容器とその内容物を全体として識別できる。こうした元素シグネチャーを用いるシステムは、発送品が意図したように到着し、改変又は悪戯されていないことを確認する迅速且つ効率的な方法を提供できる。
【0010】
代表的な一実施形態では、貨物専用コンテナ又はその内容物の元素シグネチャーは、供給チェーンの第1地点で測定できる。元素シグネチャーは、デジタル符号化し且つ供給チェーンにおけるその後の任意地点へ送信できる。容器が後の地点に到着すると、元素シグネチャーを再び測定し、第1地点で測定された元素シグネチャーと比較できる。従って、本発明は、輸送中に容器の内容物がいたずらされたり、それ以外の方法で改変さたりしていないことを確認する方法を提供できる。
【0011】
別の代表的な実施形態では、予期した元素シグネチャーは、容器及びその内容物の元素若しくは同位体組成、並びに/又は容器の内容物の空間的分布に基づいて予想できる。例えば、こうして予想した元素シグネチャーは、貨物明細書又は容器内容物の他のリストに基づいて計算してもよい。供給チェーンの任意地点において、容器及びその内容物の元素シグネチャーを測定し、予期した元素シグネチャーと比較してもよい。こうすれば、容器の内容物を非侵入確認できる。
【0012】
別の代表的な実施形態では、製造、梱包、又は供給チェーンにおける他の地点で、「タグ物質」を発送容器及び/又はその内容物に導入できる。そうしたタグ物質は、物品の起点又は製造者若しくは供給者を一意に識別できるように選択すればよい。供給チェーンにおける任意の後の地点で、タグ物質の元素シグネチャーを測定でき、それによってタグ物質により識別された起点又は製造者若しくは供給者を確認できる。
【0013】
更に別の代表的な実施形態では、複数のタグ物質を容器内に配置して、一定の条件下では、該条件が発生したか否かを検出するのに用いられる測定可能な元素シグネチャーの変化を引き起こすようにしてもよい。
【0014】
例示的実施形態の詳細な説明
全体的な理解を可能とするため、幾つかの例示的な実施形態を次に説明するが、通常の技能を備えた当業者であれば、本明細書に記載された装置及び方法を変更及び修正して、他の適切な応用例となる装置及び方法を提供できることや、それ以外の追加及び修正が、本明細書に記載されたシステム及び方法の範囲から逸脱することなく可能であることは理解するはずである。
【0015】
特記しない限り、これらの例示的な実施形態は、ある実施形態の詳細を変える典型的な特徴の実現として理解できるはずである。従って、特記しない限り、実例の特徴、構成要素、モジュール、及び/又は様態を、開示した装置又は方法から逸脱することなく、他の方法で、組み合わせたり、指定したり、交換したり、且つ/或いは再編成したりすることができる。加えて、構成要素の形状及びサイズはまた、代表的なものであり、特記しない限り、開示した装置又は方法に影響を与えることなく変更できる。
【0016】
本明細書に記載したシステム及び方法は、核共鳴蛍光画像化(NRFI)、実効原子番号(実効Z)測定、X線透過画像化、その他の能動的な非侵入性問い合わせ技術、又はこうした測定値の組合せを容器内容物の非侵入性識別及び/又は確認の基礎として用いることもできる。
【0017】
NRFI測定は、標的に入射する光子ビームが先ず標的内で核共鳴すなわち励起状態を発生させることができ、続いて標的が蛍光を発するという事実を利用できる。励起スペクトル及び得られた発光スペクトルは、この標的内に含まれる固有の同位体によって一意に決まる。空間情報を分解する能力を備えた検出器システム又は検出器アレーによってこれらのスペクトルが検出されると、照射された体積内に含まれる同位体の空間的分布の測定が可能となる。非侵入性走査の用途でNRFI測定を用いた幾つかの代表的システムが、「制動放射線の共鳴蛍光を用いた爆発物検出」と題した米国特許第5,115,459号、「制動放射線による共鳴蛍光、共鳴吸収、及び他の電磁処理を用いた爆発物及び他の物質の検出」と題した米国特許第5,420,905号、及び「核共鳴蛍光画像化を用いた物質の適応走査」と題した米国特許第7,120,226号に記載されており、これらの内容は参照して本明細書で援用する。
【0018】
NRFI測定(共鳴散乱の特徴的な振動数を利用して走査対象となる試料に存在する同位体を特定できる)以外にも、走査対象となる標的から非共鳴的に散乱する光子のエネルギースペクトルを分析すると、標的の組成に関する情報も得られる。例えば、その内容を引用して本明細書に援用する米国特許出願第11/177,758号に記載されているように、光子の非共鳴散乱の分析により標的の照光部分の平均又は実効原子番号(実効Z)の測定値が得られる。こうした非共鳴スペクトルが、空間情報を分解可能な検出器システム又は検出器アレーによって検出されると、標的内における実効Zの空間的分布の測定値が得られる。
【0019】
NRFI及び/又は実効Zの非侵入性走査方法を用いる1つの利点は、確認が迅速なので物品の運送に大きな遅れが生じないことである。
【0020】
NRFI又は実効Z走査から得られる信号は、走査している物質の組成に依存するので、NRFI又は実効Z走査を用いて走査対象の標的の「元素シグネチャー」を生成できる。(代表的な実施形態では、動作原理の説明のために貨物専用コンテナを用いたが、これら動作原理を用いて空輸、海洋、若しくは陸上貨物、手荷物、又は貨物空輸される物品を含む任意種類の発送品を確認できることは理解すべきである。)
【0021】
NRFIにより得られる信号は元素情報に加え同位体情報も含みうる。従って、いわゆる「元素シグネチャー」は、NRFI測定が用いられ場合は同位体シグネチャーにもなりうる。更に、本発明の幾つかの実施形態では、このシグネチャーは、従来のX線透過画像で得られる密度測定値又は投影密度マップでよい。従って、本明細書に記載する実施形態は、実効Zシグネチャー、NRFIシグネチャー、又はX線透過シグネチャー、或いはそれらシグネチャーの組合せを用いて任意発送品の内容物又は起点を非侵入的に確認できる。本明細書では、「元素シグネチャー」という用語は、それが実効Z、NRFI、又はX線透過測定のいずれから得られたものであっても、或いはそうした測定の組合せから得られたものであってもそれら全てのシグネチャーを示すものとして一般的に使用する。更に、「元素シグネチャー」という用語は、標的の一部又は標的全体の元素又は同位体の組成を特定するために、当該標的から散乱或いは標的を透過する光子を分析することによって得られる任意シグネチャーを含むと理解されるべきである。こうした元素シグネチャーは、標的全体又はその一部における密度、元素、又は同位体組成のバルク測定;標的全体又はその一部における1つ又は複数の元素又は同位体成分の全存在度又は相対存在度;及び/或いは標的全体又はその一部における密度、元素若しくは同位体組成の一次元、二次元、又は三次元空間分布、或いは複数成分の全存在度又は相対存在度の一次元、二次元、又は三次元空間分布を含むことができる。こうした元素シグネチャーの特定の実施形態は後述する。
【0022】
任意の元素シグネチャーは貨物専用コンテナ内の単一品目に対応していてもよいし、貨物専用コンテナ全体に対応してもよいし、コンテナとその内容物の三次元の下位体積(ボクセル)や、それらの間の他の任意関係に対応させてもよい。幾つかの実施形態では、元素シグネチャーは、NRFI技法で測定される同位体とそれらの全存在度又は相対存在度とからなるリストを含むことがある。幾つかの実施形態では、元素シグネチャーはNRFスペクトル線のリスト、すなわちコンテナ全体、コンテナのボクセル、又はコンテナの内容物の任意部分に対応可能なエネルギー及び絶対又は相対信号強度を含むことができる。更なる実施形態では、単一の同位体存在度又は単一のスペクトル線でさえ元素シグネチャーとしては十分となることもある。同様に、貨物専用コンテナ全体、コンテナのボクセル、又はコンテナの内容物の任意部分に対応する実効Z情報を含んでもよい。NRFI及び実効Z測定で三次元マッピングが可能なため、貨物専用コンテナ(又はその一部又は副次的単位)の元素シグネチャーは、具体的な用途に必要な任意解像度で得られる三次元同位体マップとなりうる。用途によっては、貨物専用コンテナ全体の大まかなNRFI又は実効Z測定で十分な場合もあるが、他の用途ではより詳細な空間的元素シグネチャーが有用となりうることは理解可能なはずである。
【0023】
図1は、本明細書に記載するシステム及び方法の代表的な実施形態を使用可能な供給チェーンを示す。ステップ102は供給チェーンの起点を表し、この起点では発送される品目(例えば、原材料、製造された物品、その他任意の物資)が製造且つ/又は貨物専用コンテナ内に梱包される。
【0024】
ステップ104では、NRFI走査システム或いは実効Z走査システムを用いて、この貨物専用コンテナ及び/又はその内容物の元素シグネチャーを起点において特定する。起点における元素シグネチャーは図1では項目112で表されており、幾つかの方法のうち任意方法で特定すればよい。
【0025】
代表的な一方法では、個別物品、個別容器、又は容器内容物の他の副次的単位の元素シグネチャーを知ることができる。例えば、これらはNRFI又は実効Z測定システムを用いて製造場所又は梱包場所で測定できる。或いは、これらは発送される物品又は物資の既知の組成に基づいて判定してもよい。例えば、製造済み物品について、推測的な(原語:a
priori)元素シグネチャーが一定の許容範囲とともに当該物品の製造仕様として与えられていれば、個々の元素シグネチャーを全ての構成単位について測定する必要はない。
【0026】
容器内容物の副次的単位の元素シグネチャーが判れば、容器内の各個別副次的単位の既知の梱包位置と組み合わせることで、容器全体の推測的な空間的元素シグネチャーを得ることができる。例えば、製造済み物品のNRFI元素シグネチャーを、当該物品が発送容器に梱包される前に測定且つ記録できる。容器内のこの製造済み物品の分布が判れば、容器のNRFI走査の予測三次元マップ、すなわち容器から得られるNRFI信号の予測空間分布が得られる。
【0027】
実施形態によっては、予測元素シグネチャー自体を、物品の起点における元素シグネチャー112として採用してもよい。代替的な実施形態では、物品が正しく製造され且つ/又は梱包されているかを更に確認するため、元素シグネチャーを起点で別個に測定し、予想元素シグネチャーと比較してもよい。
【0028】
別法として、発送容器内の個別物品の元素シグネチャーが未知か考慮されないこともある。この場合は、容器全体にわたる平均信号又は容器からの測定信号の空間的分布を起点で測定し、それを起点において特定の容器の元素シグネチャー112として生成するために用いればよい。
【0029】
物品の起点(供給チェーンの任意地点)で測定された元々の元素シグネチャー112又は上述のような予測或いは計算された推測的な元素シグネチャーを、デジタル符号化し且つ供給チェーンにおけるその後の任意地点へ送信するかそれ以外の様態で送信できる。例えば、図1に示したように、元素シグネチャー112は、インターネット114を介して中間地点又は最終目的地である発送品の送付先に送信できる。当業者に公知の他の送信手段を使用してもよい。更に、これらのシステム及び方法は、物品が保管且つ輸送される前後に使用したり、或いは輸送せずに保管される前後に使用したりできる。更に、本明細書でいう起点又は目的地に言及する際は、物品が保管される前後の時間も包含し、又はそうした時間を示すものとする。
【0030】
一方、図1でステップ108として示したように、貨物専用コンテナが発送される。ステップ110で表したように目的地或いは中間地点では、第2のNRFI又は実効Z走査システムを用いて、元素シグネチャー118を目的地又は中間地点で特定する。ステップ120では、起点で特定された元素シグネチャー112が、目的地或いは中間地点で特定された元素シグネチャー118と比較される。この比較は、目的地若しくは中間地点、又は任意の遠隔地点に設置されたプロセッサ(すなわち、インターネットを介して上述の目的地或いは中間地点でプロセッサに接続されている)により自動的に実行されるものとしてよい。このプロセッサは、目的地或いは中間地点の元素シグネチャー118が、元々の元素シグネチャー112と所定の許容誤差範囲で一致するかを判定するためヒューリスティックスを用いてプログラムされたものでもよい。代表的な一実施形態では、一致の許容誤差は、起点で実行する走査の信号対雑音比に基づいている。従って、一致の許容誤差は、起点で特定された元素シグネチャー112と目的地或いは中間地点で特定された元素シグネチャー118との統計的分析に基づくことができる。例えば、このプロセッサをプログラムして、目的地或いは中間地点で特定された元素シグネチャー118の1つ又は複数の特徴が、起点で特定された元素シグネチャー112の1つ又は複数の対応する特徴から1σを超えて逸脱していれば一致の失敗を識別するものとしてよい。この特定で考慮できる特徴には、特定のスペクトル線におけるカウント数、特定の同位体若しくは元素の全存在度若しくは相対存在度、容器全体若しくはその一部の推定実効Z、及び/又は走査で得られる散乱若しくは透過の生データから抽出できる任意情報と対応する統計的エラーバーを含むことができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、起点における元素シグネチャー112の測定をしなくてもよい。その代わり、上述したように、推測的なシグネチャーを計算し、目的地或いは中間地点で特定される元素シグネチャー118と比較できるように目的地或いは中間地点まで送信すればよい。或いは、代替的な実施形態では、予測元素シグネチャーを、積荷目録、証明書、又は送品若しくは事前に提供された他の情報に基づいて目的地或いは中間地点で計算できる。こうした実施形態では、容器の内容物が想定されているものであるかを確認するため、目的地或いは中間地点で特定された元素シグネチャー118を予測元素シグネチャーと比較できる。
【0032】
目的地或いは中間地点で特定された元素シグネチャー118が許可基準を満たす場合(供給チェーンの任意地点で計算された予想元素シグネチャーとの比較によるものであれ、出荷起点で測定された元素シグネチャーとの比較によるものであれ)、ステップ128で示したように、発送品は配達承認されるか、必要に応じて更なる処理が必要と判断される。ステップ124で示したように、元素シグネチャーが一致しない場合は、発送品を送付者に返送、再走査、人手検査、或いは用途に適した他の動作を示す目印を付ければよい。供給チェーンにおける2地点で測定された元素シグネチャー間(或いは予測元素シグネチャーと測定された元素シグネチャーとの間)の不一致は、容器がいたずらされたか物品が改変されたことを示すことがある。対照的に、供給チェーンにおける2地点において測定された元素シグネチャー間(或いは予測元素シグネチャーと測定された元素シグネチャーとの間)の一致は、発送品の保全性を確認するものと判断できる。
【0033】
一実施形態では、出荷品の予期される内容物を列挙した証明受取証を供給チェーンの最終地点で使用できる。NRFI走査は、発送品内部の同位体の内容及び/又は同位体の空間的分布を特定し、それらを、受取証に列挙されている貨物から予想されうるNRFI信号と比較できる。このように、所望なら容器の内容物を確認し、それらを積荷明細書又は貨物明細書と比較することもできる。
【0034】
元素シグネチャーを用いて発送品を確認する一例としては、家電製品の出荷品を確認することが望ましいシナリオがある。こうした元素シグネチャーは、発送予定の電子製品と関連した梱包材料の元素組成を含むことができ、この組成は、NRFI分析により梱包前に特定するか、或いは該電子製品と梱包材料の組成に関する情報から推測的に計算されたものとすればよい。容器にはこうした電子製品と梱包材料しか積み込まれていないと判っていれば、容器全体はこれら内容物と一致したシグネチャーを持っているはずである。従って、内容物に適切な製品が起点で積み込まれたことが確認可能である。更に、供給チェーンにおける後の段階でNRFI走査を行えば、改変が行われていないことを再確認できる。
【0035】
別の例では、確認する発送品が、推測的分布が既知でもなく予測もされていない異種物質の混合体を含むことがある。そうしたシナリオでは、実効Z走査を供給チェーンの起点で実行して、容器の元素シグネチャーを特定できる。供給チェーンにおける後の地点で、新たに実効Z走査を行い、元素シグネチャーを確認し且つ内容物が運送中に改変されていないか判定してもよい。
【0036】
元素シグネチャーは、物品の非侵入性検査及び/又は確認のための幅広い用途で使用できる。上述のように、元素シグネチャーは、貨物とその物品とをからなる全体に関して、或いは容器内の任意の副次的単位に関して得ることができる。こうした実施形態では、元素シグネチャーは、貨物の元素内容と容器物質そのものとに対応する。しかし、製品、貨物、又は容器に取り付けた他の品目の元素シグネチャーを読み取り且つ検出することもできる。これらは、製造者、発送者、又は供給チェーンにおける他の関係者が導入することによって、自分たちの作業が完了したことを保証し、その質、量、又は信頼性を証明できる。これらの元素シグネチャーを用いて信用性証明又は無改変証明を発行できる。代替的な実施形態は、輸送コンテナの内容物(物品及び/又は梱包材料を含む)へのこうした「タグ物質」の付加を利用する。こうしたタグ物質は、製品、製造者、起点、製造日若しくは発送日、又は容器の内容物のその他任意特徴に固有である特別に設計した元素シグネチャーであって、非侵入性検査で確認することが望ましいシグネチャー機能を実現可能である。
【0037】
こうしたタグ物質を梱包した貨物は、発送品中に当該タグ物質の存在を識別するNRFI又は実効Z走査を行うことで確認できる。タグ物質は既知の同位体を既知の割合で含む混合物とすることができる。タグ物質は一般的な物質でもよいが、その選択に当たっては、当該タグ物質の元素シグネチャーが、当該用途で発送される貨物又は、一般的な貨物、貨物専用コンテナ、若しくは梱包材料において一般的でないよう選択するのが特に好ましい。こうしたタグの一例は11ボロンであって、市販製品では広範囲に存在せず、複数の強いNRF状態を持っている。
【0038】
更に、製造者や供給者は、自分たちの製品の識別元素シグネチャーを開発するのが有利と考える事もあろう。こうしたタグ物質は発送品にばら荷で付加したり、梱包材料に含めたり、製造物品に直接組み込んだり、或いはスプレー塗装などで品目又は容器の外装に塗布する溶液若しくは乳濁液に組み込めばよい。
【0039】
上述のタグ物質を用いて、発送した物品の出所又は発送品の起点若しくは輸送地点を確認できる。例えば、物品の供給源に関連付けられたタグ物質の組成(又はNRFI若しくは実効Zシグネチャー)は、供給チェーンの目的地或いは中間地点で知ることができる。その目的地或いは中間地点では、発送品をNRFI又は実効Z走査システムで走査し、タグ物質の存在を検出できる。従って、物品の起点は、その物質又はその元素シグネチャーが判る供給チェーンの任意地点で確認できる。従って、確認が行われる供給チェーンにおけるこの段階で、物品の識別情報或いはその同位体組成物でさえも判る必要がない。これは例えば、軍事利用で望ましい可能性があり、こうした場合、供給チェーンの関係者に内容物を知られることなく供給チェーンで発送品を確認することが有用であろう。また、外交又は諜報作戦においては、供給チェーンの関係者に内容物を知られることなく電子製品又はその他任意の内密の又は秘密機器の発送品を確認することが望ましいことがある。
【0040】
代替的な実施形態では、本明細書に記載のシステム及び方法を用いて、供給チェーンにおける2地点間で特定の条件が発生したか否かを判定できる。そうした実施形態では、保管又は輸送時に供給チェーンにおける任意地点で特定の事象又は条件が発生すれば、タグ物質の元素シグネチャーが変更されるように、1つ又は複数のタグ物質を発送品内に配置してもよい。供給チェーンにある後の地点でこの変更(又はそうした変更が無いこと)を検出することで、当該事象又は条件が発生したかを判定できる。タグ物質の元素シグネチャーにおける変更として適切なものには、元素シグネチャーの測定により検出できる任意変更が含まれ、元素及び/若しくは同位体組成の空間分布並びに/又は密度の空間分布の変化などがある。
【0041】
こうした実施形態の一例では、タグ物質は条件感知装置の中に設けられていて、当該装置内部では、別個の元素シグネチャーを備えた2つのタグ物質が、バルブ、薄膜、又は一定の条件が発生すると破損する他の遮断物により分離されている。例えば、こうした遮断物は外部センサに結合されたバルブとして、当該バルブが一定の閾値温度(上限、下限、又は両方)、湿度(上限、下限、又は両方)、振動又は加速度閾値などで開くものとしてもよい。特定のガス(二酸化炭素など)の存在、一定の化学又は生物学的条件への曝露、又は放射線への曝露など、その他任意の測定可能な条件用のセンサを用いて遮断物の開放又は破損をトリガさせてもよい。
【0042】
代表的な一実施形態では、こうしたタグ物質は、遮断物が破損すると自動的に混合するガス又は液体でよい。他の実施形態では、条件感知装置は、選択したセンサ条件が発生すると固体タグ物質を混合する攪拌又は混合手段(例えば攪拌パドル又はブレード)を含むことができる。粉末状タグ物質などの固体タグ物質が使用される幾つかの実施形態では、これらタグ物質間の遮断物は必要ではない。こうした実施形態では、攪拌又は混合手段のトリガ後でなければこれら物質は混ざり合わないからである。
【0043】
特定条件の発生による条件感知装置のトリガ後の、これら複数タグ物質の混合によって、当該装置の容積内で元素、同位体、又は密度の分布が新しくなる。供給チェーンの任意地点でこうした変更を検出するに十分な空間解像度で元素シグネチャーが測定される構成の場合は、これらを用いて、当該トリガ条件が供給チェーンのそれ以前の任意地点で発生したかどうかを検出できる。
【0044】
これらの方法及びシステムは、特定の実施形態に関連して説明してきたが、それに限定されない。言うまでもなく、上述の教示を参考にすれば、多くの修正及び変更が可能なことが明らかとなることもあろう。
【0045】
代表的な実施形態を参照しつつ本明細書に開示したシステム及び方法を具体的に示し且つ説明してきたが、通常の技能を備えた当業者であれば、形式及び細部は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更できることは理解するはずである。当業者であれば、ここに具体的に記載した代表的な実施形態の多くの等価物を理解し、或いは、通常の実験を行うだけでそれらを特定できるはずである。こうした同等物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
後述の記載は添付の図面を参照する。
【図1】本明細書に記載したシステム及び方法の実施形態を用いて物品を確認する代表的な手順を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内容物を確認する方法であって、
a) 前記内容物の第1元素シグネチャーを得る段階と、
b) 前記内容物の第2元素シグネチャーを得る段階であって、該第2元素シグネチャーは前記容器が輸送且つ/又は保管された後に特定される、得る段階と、
c) 前記第1元素シグネチャーと前記第2元素シグネチャーとを比較する段階と、
d) 前記第1元素シグネチャーと前記第2元素シグネチャーとの前記比較が所定の検査に合格した後に、前記内容物を確認する段階とを含む、方法。
【請求項2】
前記内容物がタグ物質を含み、前記第1及び第2元素シグネチャーが該タグ物質の元素シグネチャーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2元素シグネチャーが、核共鳴蛍光画像化により特定される前記内容物の同位体又は元素組成に関する情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2元素シグネチャーが、実効原子番号の測定値により特定される前記内容物の同位体又は元素組成に関する情報を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2元素シグネチャーが、前記容器内での前記内容物の空間的分布に関する情報を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記内容物の前記空間的分布に関する前記情報が、少なくとも部分的にはX線透過測定値に基づいた、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2元素シグネチャーが、前記容器内での前記内容物の空間的分布に関する情報を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記内容物の前記空間的分布に関する前記情報が、少なくとも部分的にはX線透過測定値に基づいた、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2元素シグネチャーが、実効原子番号の測定値により特定される前記内容物の同位体又は元素組成に関する情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2元素シグネチャーが、前記容器内での前記内容物の空間的分布に関する情報を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記内容物の前記空間的分布に関する前記情報が、少なくとも部分的にはX線透過測定値に基づいた、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1元素シグネチャーが、前記内容物の核共鳴蛍光画像化の測定値又は実効原子番号の測定値を用いないで、少なくとも部分的には前記内容物の同位体又は元素組成に基づいて計算又は予測された情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1元素シグネチャーが、前記内容物の核共鳴蛍光画像化の測定値又は実効原子番号の測定値によって少なくとも部分的には特定された情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1及び第2元素シグネチャーが、少なくとも1つの指定同位体の少なくとも1つの指定スペクトル線の存在及び/又は強度に関する情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
輸送及び/又は保管時に所定の環境条件の発生がセンサにより検出され、前記容器内の前記内容物の空間的分布が、輸送及び/又は保管時における前記所定の環境条件の前記検出に基づいて変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の環境条件が所定値を下回る温度又は湿度である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記所定の環境条件が所定値を上回る温度又は湿度である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の環境条件が所定値を下回る振動又は加速度である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記所定の環境条件が所定値を上回る振動又は加速度である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記所定の環境条件が所定値を上回る特定物質の存在である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記第1元素シグネチャーと前記第2元素シグネチャーとの前記比較により、前記内容物が、輸送及び/又は保管時に前記所定の環境条件を経たかが判断される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記内容物が前記容器の前記内容物の一部を含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−515190(P2009−515190A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540145(P2008−540145)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/043427
【国際公開番号】WO2007/056420
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506174337)パスポート システムズ, インク. (4)
【氏名又は名称原語表記】PASSPORT SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】15 Craig Road, Acton, MA 01720(US)
【Fターム(参考)】