説明

貫通接続体を備えるマイクロバッテリ及びその製造方法

本発明は、貫通接続体を備えるマイクロバッテリ及びその製造方法に関する。本発明のマイクロバッテリは、前面(2)と後面(3)とを有する支持体(1)と、支持体(1)の前面(2)に配置された第1(4)および第2(5)のカレントコレクタとを備えている。カレントコレクタ(4,5)上には、電解液(7)によって分離されたアノード(6)およびカソード(8)を備える積層体が配置されている。アノードおよびカソードはそれぞれ、第1(4)および第2(5)のカレントコレクタと接触している。前記積層体は保護層(9)で覆われている。また、マイクロバッテリは、支持体(1)をその前面(2)から後面(3)まで貫通し且つ第1(4)および第2(5)のカレントコレクタと接触する接続体(10)を備えている。積層体は、支持体(1)の前面(2)のほぼ全体を覆っていることが好ましい。また、本発明はマイクロバッテリの製造方法に関し、この方法は、支持体(1)の厚さよりも小さい深さを有するキャビティを支持体(1)の前面(2)にエッチングするステップと、導電材料をキャビティに充填するステップと、支持体(1)から後面(3)の層を除去して、キャビティ内に封入された導電材料を露出させるステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面と後面とを有する支持体と、支持体の前面に配置された第1および第2のカレントコレクタと、電解液によって分離されたアノードおよびカソードを備え、アノードおよびカソードがそれぞれ第1および第2のカレントコレクタと接触する積層体と、前記積層体を覆う保護層と、第1および第2のカレントコレクタと接触する電気接続手段と、を備えるマイクロバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示されるように、マイクロバッテリは、従来、前面2および後面3を有する支持体1を備えており、支持体上には、第1のカレントコレクタ4および第2のカレントコレクタ5と、電解液7によって分離されたアノード6およびカソード8を備える積層体とが配置されている。アノード6およびカソード8はそれぞれ第1および第2のカレントコレクタ4,5と接触している。カレントコレクタ4,5は、通常、外部電気負荷を第1および第2のカレントコレクタ4,5に対して接続することによりマイクロバッテリのアノード6およびカソード8に対して接続するための導体パッドを備えている。導体パッドは、一般に、上記積層体の両側で支持体上に配置されており、例えばカレントコレクタ4,5の延在部によって形成されている。外部電気負荷に対して接続するために接点ワイヤが導体パッドに溶接されている。積層体の厚さは50μm未満となり得る。
【0003】
バッテリに蓄えられるエネルギは、基本的に、電極の表面、すなわち、アノード6およびカソード8の表面に依存している。したがって、バッテリのサイズを減少させるには、非常に薄い層を使用して電極および電解液を得る必要がある。また、マイクロバッテリが集積回路チップ上に取り付けられる場合には、多くの場合、利用可能な表面が非常に限られてしまう。
【0004】
幾つかのマイクロバッテリを電気的に直列に或いは並列に結合することができる。この場合、複数のバッテリを備えるデバイスのサイズを最小にするためには、導体パッドのサイズを最小限に抑えることが求められる。
【0005】
従来、バッテリの製造は、アノード、電解液、カソードを構成する連続活性層のコーティングプロセスを含んでいる。アノード、カソード、電解液は、非常に反応性の高い材料によって構成されており、通常、バッテリ全体が保護層またはコーティング層で覆われる。導体パッドだけが覆われる必要がなく、それを達成することは特に完成されたデバイスにおいては難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、これらの欠点を改善することであり、特に、マイクロバッテリのサイズを最小にして、製造の最終段階における接点の局所的な開口ステップを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、この目的は、添付の請求項によって達成され、特に、電気接続手段が支持体をその前面から後面まで貫通する接続体を備えているという事実によって達成される。
【0008】
本発明の更なる目的は、
支持体の厚さよりも小さい深さを有するキャビティを支持体の前面にエッチングすることによって形成するステップと、
支持体を貫通する接続体を構成するようになっている導電材料をキャビティに充填するステップと、
支持体の前面に、第1および第2のカレントコレクタと、積層体と、保護層とを連続的に堆積させるステップと、
支持体の後面の層を除去して、キャビティ内に封入された導電材料を露出させるステップと、
を連続的に含む本発明に係るマイクロバッテリを製造するための方法を提供することである。
【0009】
他の利点および特徴は、非限定的な単なる実施例として与えられ且つ添付図面に示された本発明の特定の実施形態の以下の説明から更に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図2に示されるマイクロバッテリは、好ましくはシリコンから形成され且つ前面2および後面3を有する支持体1を備えている。シリコン支持体1は、マイクロエレクトロニクス技術に基づく堆積方法に適合するという利点を与える。支持体1の前面2には第1のカレントコレクタ4および第2のカレントコレクタ5が配置されている。カレントコレクタ4,5上には、電解液7によって分離されたカソード8およびアノード(負極)6を備える積層体が配置されている。アノード6およびカソード8はそれぞれ、第1のカレントコレクタ4および第2のカレントコレクタ5と接触している。保護層9が前記積層体を覆っており、これにより、保護層9はマイクロバッテリを確実に密封している。第1および第2のカレントコレクタ4,5は、支持体2をその前面2から後面3へと貫通する接続体10と接触している。
【0011】
図2に示される特定の実施形態において、積層体は、支持体1の前面2のほぼ全体を覆っている。したがって、想定し得る導体パッドにおいて表面損失を何ら伴うことなく、支持体1の前面2の全体がマイクロバッテリ積層体のためだけに使用される。図2において、マイクロバッテリは、導体パッド12を備える電気負荷11、例えば集積回路上に配置されている。貫通接続体10の後面14は、例えば可融性のマイクロペレット13により、電気負荷11の導体パッド12に対して接続されている。したがって、貫通接続体10の後面14は、支持体1の後面3で、マイクロバッテリの後側接続端子の機能を果たす。この接続端子により、マイクロバッテリは、1つ以上の更なるマイクロバッテリ、電子チップ、任意の電気負荷に対して接続することができる。バッテリは、例えば、互いに直接に接続することができ、後面同士を接続することができ、直列に接続することができ、あるいは、並列に接続することができる。また、貫通接続体10の後面14上に導体パッドを配置することも考えられ得る。含まれているマイクロバッテリ、積層体および支持体1の全体の厚さは、約0.1mmであっても良い。
【0012】
図3〜図6は、本発明に係るマイクロバッテリを製造するための特定の方法の連続するステップを示している。図3に示されるように、支持体1の厚さよりも小さい深さを有するキャビティ15が支持体1の前面2にエッチングにより形成され、それにより、非貫通穴が形成される。エッチングは、化学エッチング法により、または、プラズマエッチング法により行なうことができる。キャビティ15の深さは例えば50μmであり、支持体1の厚さは100μmである。図3において、キャビティ15は、支持体1の後面の方向に向かって先細っている。
【0013】
図4に示されるように、キャビティ15には、その後、支持体1を貫通する接続体10を構成するようになっている導電材料16が充填される。導電材料16によるキャビティ15の充填は、例えば銅の電解成長により達成されることが好ましい。図4に示される特定の実施形態において、支持体1の前面2および導電材料16は共通の平坦な表面を形成する。そのような共通の平坦な表面を得るため、特に、キャビティ15が充填された後に導電材料16が支持体1の前面を越えて延びるときに、更なる平坦化ステップを行なうことができる。
【0014】
図5には、支持体1の前面2上に対する第1および第2のカレントコレクタ4,5、積層体、保護層9の連続的な堆積が示されている。この場合、マイクロバッテリの積層体およびカレントコレクタは、支持体1を貫通する接続体をその後に形成するようになっている導電材料16上に形成される。したがって、導電材料16は、カレントコレクタ4,5と支持体1の材料との間でキャビティ15内に条件付で封入され、方法の最後に露出される。
【0015】
アノード6は、例えばリチウムの熱蒸発によって得られ、好ましくは3〜5μmの厚さを有している。電解液7は、LiPONの名で良く知られているリチウムおよびリンオキシナイトライドなどのリチウム化合物を含むことができる。電解液7は1〜2μmの厚さを有することが好ましい。カレントコレクタ4,5は例えば0.2〜0.5μmの厚さを有している。また、積層体およびカレントコレクタ4,5は、物理蒸着(PVD)法または低温蒸発によって得ることもできる。
【0016】
その後、図6に示されるように、支持体1の後面3の層が除去され、キャビティ15内に封じ込められた導電材料16が露出される。このように、支持体が例えば50μmの厚さを除去することにより薄くされて、マイクロバッテリの接続端子が解放され、バッテリの背面で接続端子があらわになる。支持体1の後面3の前記層の除去は化学機械研磨によって行なわれることが好ましい。
【0017】
本発明は前述した特定の実施形態に限定されない。特に、支持体1は、ガラス、セラミック(ジルコン、アルミナ)または高分子化合物(ポリエーテル−エーテル−ケトンPEEK;ポリイミド)によって形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術に係るマイクロバッテリを示している。
【図2】本発明に係るマイクロバッテリの特定の実施形態を示している。
【図3】本発明に係るマイクロバッテリを製造するための方法の特定の実施形態のステップを示している。
【図4】本発明に係るマイクロバッテリを製造するための方法の特定の実施形態のステップを示している。
【図5】本発明に係るマイクロバッテリを製造するための方法の特定の実施形態のステップを示している。
【図6】本発明に係るマイクロバッテリを製造するための方法の特定の実施形態のステップを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面(2)と後面(3)とを有する支持体(1)と、
前記支持体(1)の前面(2)に配置された第1および第2のカレントコレクタ(4)、(5)と、
電解液(7)によって分離されたアノード(6)およびカソード(8)を備え、前記アノードおよび前記カソードがそれぞれ前記第1および第2のカレントコレクタ(4)、(5)と接触する積層体と、
前記積層体を覆う保護層(9)と、
前記第1および第2のカレントコレクタ(4)、(5)と接触する電気接続手段と、
を備えるマイクロバッテリであって、
前記電気接続手段は、支持体(1)をその前面(2)から後面(3)まで貫通する接続体(10)を備えていることを特徴とする、マイクロバッテリ。
【請求項2】
前記支持体(1)の後面(3)に配置された接続端子を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロバッテリ。
【請求項3】
前記積層体が前記支持体(1)の前面(2)のほぼ全体を覆っていることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロバッテリ。
【請求項4】
前記支持体(1)がシリコン、ガラス、セラミックまたは高分子化合物によって形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマイクロバッテリ。
【請求項5】
全体の厚さが約0.1mmであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマイクロバッテリ。
【請求項6】
前記支持体(1)の厚さよりも小さい深さを有するキャビティ(15)を前記支持体(1)の前面(2)にエッチングによって形成するステップと、
前記支持体(1)を貫通する接続体(10)を構成する導電材料(16)を前記キャビティ(15)に充填するステップと、
前記支持体(1)の前面(2)に、前記第1および第2のカレントコレクタ(4)、(5)と、前記積層体と、前記保護層(9)とを連続的に堆積させるステップと、
前記支持体(1)の後面(3)の層を除去して、前記キャビティ(15)内に封入された導電材料(16)を露出させるステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマイクロバッテリを製造するための方法。
【請求項7】
前記エッチングが化学蒸着法またはプラズマ蒸着法によって行なわれることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キャビティ(15)に対する前記導電材料(16)の充填が電解成長によって行なわれることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体(1)の後面(3)の前記層の除去が化学機械研磨によって達成されることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−509512(P2008−509512A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524361(P2007−524361)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001771
【国際公開番号】WO2006/024721
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】