説明

貯湯式給湯機

【課題】湯はり運転時において、高温湯が浴槽内に流入してくるときには、その旨を使用者に告知し、これにより使用上の安全性を向上することが可能な貯湯式給湯機を提供する。
【解決手段】貯湯タンク2と、浴槽4と、貯湯タンク2内の高温湯で浴槽4内の温湯を加熱して追い焚きを行う風呂用熱交換器3とを備えている。浴槽4内の残湯量と残湯温度とに基づいて、温水供給部から浴槽へ温湯を供給する追加注湯運転と、風呂用熱交換器3で浴槽4内の温湯を加熱する追い焚き運転とを併用し、浴槽4内が目標湯量で、かつ目標湯温となるように湯はり運転を行う。温水供給部から浴槽4へと供給される温湯温度が所定温度以上であるときに高温警告信号を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ加熱源で加熱された高温湯を貯留する貯湯タンクと、浴槽と、浴槽の追い焚き(保温)を行うための浴槽用熱交換器とを備えた貯湯式給湯機は公知である(例えば、特許文献1、2参照)。この種の貯湯式給湯機においては、浴槽の湯はり、追い焚き、高温たし湯、保温などの運転が行われる。
【特許文献1】特開2003−106672号公報
【特許文献2】特開2005−106440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の貯湯式給湯機給湯機においては、追い焚き、高温たし湯のように高温湯を浴槽内に流入させる場合には、事前にリモコンにその旨を表示したり、リモコンから音声でその旨を告知したりして安全性を確保している。
【0004】
しかしながら、浴槽への湯はり運転に際しては、その旨の告知は行われていないのが実情である。それは従来から、湯はり運転は浴槽内に残湯が存在せず、空の浴槽内に適温に調整された温湯を供給することによって湯はりが行われてきたためであり、湯はり運転時に高温湯が浴槽内に流入してくることを想定していなかったためである。
【0005】
ところが、貯湯式給湯機におけるエネルギ効率の向上を図る必要性が極めて高くなった近年の状況下においては、浴槽内の残湯が有するエネルギを有効に活用しようとする動きが顕著に現れてきている。そのため、残湯の残存する浴槽内に高温湯を流入させて残湯と混合し、これを風呂用熱交換器で加熱する方式の湯はり運転が一般的に行われている。
【0006】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、湯はり運転時において、高温湯が浴槽内に流入してくるときには、その旨を使用者に告知し、これにより使用上の安全性を向上することが可能な貯湯式給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1の貯湯式給湯機は、貯湯タンク2と、浴槽4と、貯湯タンク2内の高温湯で浴槽4内の温湯を加熱して追い焚きを行う風呂用熱交換器3とを備え、温水供給部から浴槽へ温湯を供給する追加注湯運転と、風呂用熱交換器3で浴槽4内の温湯を加熱する追い焚き運転とを併用し、浴槽4内が目標湯量で、かつ目標湯温となるように湯はり運転を行う貯湯式給湯機であって、温水供給部から浴槽4へと供給される温湯温度が所定温度以上であるときに高温警告信号を発することを特徴としている。
【0008】
請求項2の貯湯式給湯機は、上記浴槽4内の残湯量と残湯温度とに基づいて、温水供給部から浴槽4へと供給する温湯の湯温と湯量とを算出すると共に、必要な追い焚き時間を算出すべく構成してなり、上記高温警告信号は、上記算出された供給温湯の湯温が所定温度以上であるときに高温警告信号を発することを特徴としている。
【0009】
請求項3の貯湯式給湯機は、上記温水供給部に温度センサ24を配置しておき、この温度センサ24での検出湯温が所定温度以上であるときに高温警告信号を発することを特徴としている。
【0010】
請求項4の貯湯式給湯機は、上記高温警告信号の出力によって、高温警告が風呂用リモコンRに可視的に及び/又は音により表示されることを特徴としている。
【0011】
請求項5の貯湯式給湯機は、上記温水供給部は、上記貯湯タンク2から供給される高温水と外部から供給される水とを混合することにより、上記浴槽4内に供給する温水を追加注湯温度に調整するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜請求項5の貯湯式給湯機では、高温湯が浴槽4内に供給されるときには、使用者のその旨が告知されるので、使用上の安全性を確保できる。この場合、請求項2のように構成すれば温度センサが不要であるため構成を簡素化できるし、請求項3のように温度センサ24を用いれば、制御の確実性が向上する。特に、請求項4にように、風呂用リモコンRに表示するようにすれば、一段と安全性が向上する。また、請求項5のように構成すれば、追加注湯温度への調整を確実に行えることから、浴槽4内に目標湯量でかつ目標温度の温湯を確実にはることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、この発明の貯湯式給湯機の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、この発明の貯湯式給湯機の実施形態を示す構成図である。貯湯式給湯機は、同図に示すように、加熱部の一例としてのヒートポンプユニット1と、上記ヒートポンプユニット1により加熱された温水を貯える貯湯タンク2と、上記貯湯タンク2から供給された温水と浴槽4内の湯との間で熱交換する追い焚き用の風呂用熱交換器3と、制御装置10とを備えている。
【0014】
上記ヒートポンプユニット1の入力側に配管31の一端を接続し、配管31の他端を貯湯タンク2の下側に接続している。一方、ヒートポンプユニット1の出力側に配管32の一端を接続し、配管32の他端を貯湯タンク2の上側に接続している。上記配管31にポンプ11を介設し、ポンプ11により貯湯タンク2内の温水(または水)を配管31、ヒートポンプユニット1、配管32を介して循環させる。
【0015】
また、貯湯タンク2の下側に給水配管33を接続すると共に、その給水配管33に給水配管34の一端を接続している。この給水配管34の他端を混合弁25の一方の入力に接続し、混合弁25の他方の入力を給湯配管35を介して貯湯タンク2の上側に接続している。
【0016】
また、上記貯湯タンク2の上側と風呂用熱交換器3の一次側かつ上側とを配管36を介して接続し、貯湯タンク2の下側と風呂用熱交換器3の一次側かつ下側とを配管37を介して接続している。上記配管37にポンプ12を介設し、ポンプ12により貯湯タンク2内の温水を配管36、風呂用熱交換器3、配管37を介して循環させる。
【0017】
また、上記風呂用熱交換器3の二次側かつ下側と浴槽4の循環口20とを配管38を介して接続し、風呂用熱交換器3の二次側かつ上側と浴槽4の循環口20とを配管38を介して接続している。上記配管38にポンプ13を介設し、ポンプ13により浴槽4内の湯を配管38、風呂用熱交換器3、配管39を介して循環させる。上記風呂用熱交換器3の二次側を介して浴槽4内の湯が循環することによって、貯湯タンク2内から供給される温水との熱交換により浴槽4内の湯が加熱される。
【0018】
上記配管38に、浴槽4内の水位を検出する湯量センサの一例としての水位センサ21と、浴槽4内の湯温を検出するための温度センサ22を配設している。
【0019】
また、上記混合弁25の出口に給湯配管40の一端が接続され、その給湯配管40の他端を配管39に接続している。上記給湯配管40に、給湯湯量を検出するための流量センサ23と、給湯温度を検出するための温度センサ24を配設している。上記給水配管33、34と混合弁25と給湯配管35、40とで温水供給部を構成している。上記貯湯タンク2内の温水は、給水配管33からの給水により押し上げられて、貯湯タンク2内の上部の高温水が給湯配管35から押し出されて給湯される。
【0020】
図示しないが、上記ヒートポンプユニット1は、圧縮機、凝縮器(水加熱器)、膨張手段、蒸発器が環状に接続された冷媒回路を備え、凝縮器で発生する熱を利用してポンプ11により循環された温水を加熱する。この実施形態では、ヒートポンプユニット1により貯湯タンク2内の上部に供給される高温水の温度を80℃にしている。
【0021】
上記制御装置10は、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、水位センサ21、温度センサ22、流量センサ23、温度センサ24からの検出信号に基づいて、ヒートポンプユニット1、ポンプ11、混合弁25などを制御する。また、上記制御装置10は、湯量センサである水位センサ21より検出された水位(残り湯の湯量に相当)と目標湯量に基づいて、追加注湯運転において目標湯量にするための追加注湯量(目標湯量−残り湯の湯量)を算出する追加注湯量算出部10aと、上記追加注湯量算出部10aにより算出された追加注湯量と、追加注湯運転において温水供給部から供給される温水の温度である追加注湯温度と、湯量センサにより検出された残り湯の湯量と、温度センサにより検出された残り湯の湯温と、湯はり終了時の浴槽4内の目標湯温に基づいて、追い焚き熱量を算出する追い焚き熱量算出部10bと、上記追い焚き熱量算出部10bにより算出された追い焚き熱量に基づいて、追加注湯運転後に浴槽4内の湯を温める追い焚き運転が必要か否かを判別する追い焚き運転判別部10cとを有している。
【0022】
図2は上記貯湯式給湯機の制御装置10の動作を説明するフローチャートを示しており、図2に従って制御装置10の湯はり処理の動作を以下に説明する。
【0023】
まず、ステップS1で残り湯があると判別すると、ステップS2に進む一方、残り湯がないと判別すると、ステップS10に進み、通常の湯はり運転を行って処理を終了する。ここで、制御装置10は、水位センサ21により検出された浴槽4内の水位に基づいて、浴槽4内の残り湯の有無を判別する。また、通常の湯はり運転は、制御装置10により混合弁25を制御して、貯湯タンク2内の温水と給水配管34からの水を混合して目標湯温の温水を目標湯量だけ浴槽4内に給湯する。
【0024】
次に、ステップS2で残り湯の湯量と温度を検出する。ここで、制御装置10は、水位センサ21により検出された浴槽4内の水位に基づいて、浴槽4内の湯量を推定する。すなわち、浴槽4内は水位に応じて水平断面形状が異なるので、予め水位に応じた湯量を測定(または計算)し、その測定データ(または計算データ)を用いて浴槽4内の湯量を推定するのである。また、浴槽4内の残り湯の温度は、ポンプ13を所定時間運転して浴槽4内の残り湯を配管38、風呂用熱交換器3、配管39を介して循環させて、温度センサ22により検出する。
【0025】
次に、ステップS3に進み、追加注湯量と追加注湯温度を算出する。ここで、追加注湯量は、ステップS2で検出された残り湯の湯量と目標湯量に基づいて、追加注湯量算出部10aにより目標湯量にするための追加注湯量を算出する。また、追加注湯温度は、できるだけ追加注湯運転後に浴槽4内の湯温が目標湯温になるように設定するが、安全上、上限温度を60℃としている。
【0026】
そして、次のステップS4においては、追加注湯温度が50℃以上であるのか否かの判断を行い、50℃よりも温度の低い場合には、ステップS5で、そのまま追加注湯運転を行い、50℃以上の高温である場合には、ステップS6において、リモコンに高温警告信号を出力してからステップS5に移行して追加注湯運転を行う。
【0027】
追加注湯運転は、制御装置10により混合弁25を制御して、貯湯タンク2内の温水と給水配管L14からの水を混合して追加注湯温度の温水を生成し、生成した追加注湯温度の温水を給湯配管40、配管39を介して浴槽4内に供給する。このとき、流量センサ23により検出された流量に基づいて、混合された温水を追加注湯量だけ浴槽4内に供給する。
【0028】
次に、ステップS7に進み、ステップS3において追加注湯量算出部10aにより算出された追加注湯量および追加注湯温度と、ステップS2で検出された残り湯の湯量および湯温と、浴槽4内の目標湯温に基づいて、追い焚き熱量算出部10bにより追い焚き熱量を算出する。
【0029】
次に、ステップS8に進み、追い焚き運転が必要と判別すると、ステップS9に進む。ここで、ステップS7で算出された追い焚き熱量に基づいて、追い焚き運転判別部10cにより追加注湯運転後の浴槽4内の残り湯を温める追い焚き運転が必要か否かを判別する。そして、ステップS9では、追い焚き運転を行い、この処理を終了する。
【0030】
ここで、追い焚き運転は、ポンプ13により風呂用熱交換器3を介して浴槽4内の湯を循環させて、風呂用熱交換器3により貯湯タンク2内の温水と浴槽4内の湯との間で熱交換することにより、浴槽4内の残り湯に対してステップS7で追い焚き熱量算出部10bにより算出された追い焚き熱量分の追い焚きを行う。
【0031】
一方、ステップS8で追い焚き運転が必要ないと判別すると、ステップS9をスキップして、この処理を終了する。
【0032】
上記フローチャートにおいて、追加注湯温度が50℃以上の高温である場合には、ステップS6において、リモコンに高温警告信号を出力するが、そのときの風呂用リモコンRの表示状態を図3に示している。すなわち、(a)湯はり開始前の状態、(b)湯はりを開始した状態、(c)湯はり中であって、高温警告信号が出力されて「高温警告」をしている状態、(d)湯はりの完了した状態を順番に表示していくのである。一方、ステップS4において、高温警告信号を出力しない場合には、上記同様に、(a)(b)の表示を行った後、同図(e)のように、湯はり中である旨の表示を行うのみで、その後、(d)の状態へと移行して通常表示へと復帰する。
【0033】
上記風呂用リモコンRにおいては、文字によって警告を行っているが、これは他の記号を用いて警告を行うようにしてもよいし、これらに代え、あるいはこれらと共に、音声、あるいは他の音によって警告をしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、フローチャートのステップS4において、ステップS3における追加注湯温度の算出結果に基づいて、高温警告信号を出力するようにしているが、給湯配管40に取付けた温度センサ24での検出温度に基づいて高温警告信号を出力するように構成してもよい。さらに、ステップS3での算出結果と温度センサ24での検出温度との両者によって高温警告信号を出力するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の貯湯式給湯機の実施形態の全体回路図である。
【図2】上記実施形態における制御方式を説明するフローチャート図である。
【図3】上記実施形態において用いる風呂用リモコンの動作状態を経時的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
2・・貯湯タンク、3・・風呂用熱交換器、24・・温度センサ、R・・風呂用リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンク(2)と、浴槽(4)と、貯湯タンク(2)内の高温湯で浴槽(4)内の温湯を加熱して追い焚きを行う風呂用熱交換器(3)とを備え、温水供給部から浴槽へ温湯を供給する追加注湯運転と、風呂用熱交換器(3)で浴槽(4)内の温湯を加熱する追い焚き運転とを併用し、浴槽(4)内が目標湯量で、かつ目標湯温となるように湯はり運転を行う貯湯式給湯機であって、温水供給部から浴槽(4)へと供給される温湯温度が所定温度以上であるときに高温警告信号を発することを特徴とする貯湯式給湯機。
【請求項2】
上記浴槽(4)内の残湯量と残湯温度とに基づいて、温水供給部から浴槽(4)へと供給する温湯の湯温と湯量とを算出すると共に、必要な追い焚き時間を算出すべく構成してなり、上記高温警告信号は、上記算出された供給温湯の湯温が所定温度以上であるときに高温警告信号を発することを特徴とする請求項1の貯湯式給湯。
【請求項3】
上記温水供給部に温度センサ(24)を配置しておき、この温度センサ(24)での検出湯温が所定温度以上であるときに高温警告信号を発することを特徴とする請求項1の貯湯式給湯機。
【請求項4】
上記高温警告信号の出力によって、高温警告が風呂用リモコンRに可視的に及び/又は音により表示されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの貯湯式給湯機。
【請求項5】
上記温水供給部は、上記貯湯タンク(2)から供給される高温水と外部から供給される水とを混合することにより、上記浴槽(4)内に供給する温水を追加注湯温度に調整するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの貯湯式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−52760(P2009−52760A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217284(P2007−217284)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】